JP2004256599A5 - - Google Patents

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JP2004256599A5
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Description

【書類名】明細書
【発明の名称】粘着剤組成物及びそれを用いた粘着性光学シート部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が40万〜250万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(以下、A成分という)と、重量平均分子量が1,000〜50,000の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(以下、B成分という)を含む粘着剤組成物。
【請求項2】
A成分とB成分との重量配合比がA/B=0.5〜20であることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
A成分のガラス転移温度(Tg)が0℃以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
B成分のガラス転移温度(Tg)が−80〜230℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
樹脂フィルムの少なくとも片面に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物が塗工されてなる粘着シート部材。
【請求項6】
光学用途に使用されることを特徴とする請求項5に記載の粘着シート部材。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材に対する優れた耐久性及びリワーク性を調整できる粘着剤組成物及びそれを用いた粘着性光学シート部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ディスプレイ装置(例えば、CRT、液晶パネル、プラズマディスプレパネル等)の画面等には、種々の機能を有する光学フィルム部材が貼り付けられている。このような光学フィルム部材としては、例えば、反射防止フィルム、電磁波遮蔽フィルム、近赤外線遮蔽フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、防眩フィルムなどが挙げられる。これらのフィルムを画面等に貼り付ける際には、通常、フィルムの一方の面に予め粘着剤層を設けた粘着性の光学フィルムが使用される。
【0003】
上記粘着性光学フィルムに用いられる粘着剤としては、例えば、ベースポリマーとして極性基を有するアクリル系ポリマーと多官能性化合物を含有する粘着剤組成物が一般に用いられている。
【0004】
粘着性光学フィルムに用いられる粘着剤は、基材との密着性に優れると同時に、例えば、貼り合わせミスをした際に、被着体に転着することなく剥がすことができる性能(リワーク性)が必要とされる。
【0005】
ここで、リワーク性は、光学フィルムを被着体表面に貼り合わせる際、貼り合わせ位置がズレたり、フィルムと被着体との間に異物を噛み込むこともあり、このような場合に、光学フィルムを被着体から剥がすことを可能にするために要求される特性である。
リワーク性が悪いと、フィルムの貼り合わせに失敗し、フィルムを剥がす場合、被着体である高価なディスプレイ装置を破損する恐れがある。
【0006】
また、最近では用途に応じて高粘着力のものも含む種々の粘着力の製品を提供することが求められている。例えば、ディスプレイ用途では、UL規格に適合させるため、強粘着力が要求される場合もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記現状に鑑み、本発明者は、耐久性能を損なわずに、リワーク性、すなわち粘着力を調整できる粘着剤組成物を見出すことを課題とした。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者は鋭意研究を行い、特定範囲の平均分子量を有する2種類の(メタ)アクリル酸エステル共重合体を併用すること、更に、これらの組成及び配合比を変化させることで、耐久性能を損なわずに、種々の粘着力の粘着剤組成物を提供できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)重量平均分子量が40万〜250万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(以下、A成分という)と、重量平均分子量が1,000〜50,000の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(以下、B成分という)を含む粘着剤組成物;
(2)A成分とB成分との重量配合比がA/B=0.5〜20であることを特徴とする上記(1)に記載の粘着剤組成物;
(3)A成分のガラス転移温度(Tg)が0℃以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の粘着剤組成物;
(4)B成分のガラス転移温度(Tg)が−80〜230℃であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の粘着剤組成物;
(5)樹脂フィルムの少なくとも片面に、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の粘着剤組成物が塗工されてなる粘着シート部材;及び
(6)光学用途に使用されることを特徴とする上記(5)に記載の粘着シート部材
を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の粘着剤組成物(以下、本発明の組成物ということがある)は、重量平均分子量が40万〜250万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(以下、A成分という)と、重量平均分子量が1,000〜50,000の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(以下、B成分という)を含むことを特徴とする。以下、A成分とB成分の共通する事項をまとめて説明した後に、成分毎に個別の事項を説明し、更にA成分とB成分を含む粘着剤組成物に関して説明する。そして、被着体に関して説明する。
【0011】
(A)A成分とB成分に関して:
本発明の組成物のA成分とB成分は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体である。ここで、「(メタ)アクリル酸エステル」は、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル及びこれら両者の混合物を示す語句である。
【0012】
上記A成分及びB成分の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、架橋され得る架橋点を有するものが用いられる。このような架橋点を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては特に制限はなく、従来粘着剤の樹脂成分として慣用されている(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような架橋点を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルと、活性水素をもつ官能基を有する単量体と、所望により用いられる他の単量体との共重合体を好ましく挙げることができる。
【0013】
ここで、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
一方活性水素をもつ官能基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのアクリルアミド類;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらの単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
また、A成分及びB成分の共重合成分として、他の単量体を用いることもできる。所望により用いられる他の単量体の例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリドなどのハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体;ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系単量体;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドなどのN,N−ジアルキル置換アクリルアミド類などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明の組成物において、A成分及びB成分として用いられる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、その共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
また、本発明の組成物においては、このA成分及びB成分の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、それぞれ1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
A成分及びB成分である(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、各種公知の方法により製造することができ、例えば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等のラジカル重合法を適宜選択することができる。ラジカル重合開始剤としては、過酸化ラウロイル(LPO)、過酸化ベンゾイル(BPO)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等の公知のものを使用することができる。重合条件としては、例えば、溶液重合の場合は、反応温度は、通常、50〜150℃であり、反応時間は、通常3〜15時間程度である。重合に際して用いられる溶媒としては、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン、ヘキサン、アセトン等が用いられる。また、A成分及びB成分として、市販の(メタ)アクリル酸エステル共重合体を用いてもよい。
【0018】
(B)A成分に関して:
A成分は、重量平均分子量が40万〜250万の範囲であることが必要である。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
A成分において、重量平均分子量を40万〜250万の範囲で設定したのは、重量平均分子量が40万未満ではフィルムとの密着性や耐久性能(信頼性)が不十分となるおそれがあるし、250万を超えると粘度が高くなり塗工生不良を起こす原因となるからである。特に、A成分の重量平均分子量は、80万〜180万であることが好ましく、120万〜160万であることがより好ましい。
【0019】
A成分のガラス転移温度(Tg)は、0℃以下であることが好ましく、−70℃〜0℃の範囲であることがより好ましい。A成分のガラス転移温度が0℃より高いと、低温で使用する際にタック(粘着性)が不十分となり、粘性を示さないため好ましくない。ここで、A成分のガラス転移温度(Tg)は、常法によって求められる計算値、または実測値を示す。該計算値は、下記式、
(1/Tg)=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+……+(Wn/Tgn
を用いて算出することができる。式中、Tgは、ガラス転移温度(℃)を示し、W1、W2、……、Wnは、単量体組成物a〜f中の各単量体の重量分率を示し、Tg1、Tg2、……、Tgnは、対応する単量体の単独重合体のガラス転移温度(℃)を示す。尚、単独重合体のガラス転移温度は、例えば、便覧等の刊行物に記載されている数値を採用すればよい。
【0020】
本発明において好ましいA成分の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、iso−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びマレイン酸ブチルなどのカルボキシル基を含有するモノマー、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びアリルアルコールなどの水酸基を含有するモノマー、アミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート及びビニルピリジンなどのアミノ基を含有するモノマー、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基を含有するモノマー、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアセトアセチル基を含有するモノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの3級アミノ基を含有するモノマー、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのアミド基又はN−置換アミド基を含有するモノマー、及びアクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル、フマロニトリルなどのニトリル基を含有するモノマー等が挙げられる。これらは、単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0021】
(C)B成分に関して:
B成分は、重量平均分子量が1,000〜50,000の範囲であることが必要である。ここで、B成分の重量平均分子量は、A成分と同様に測定した値である。
B成分において、重量平均分子量を1,000〜50,000の範囲で設定したのは、重量平均分子量が1,000未満ではブリードアウトし、被着体に貼り付けたフィルムを剥がす際に被着体を汚染するおそれがあるし、50,000を超えるとA成分との相溶性が低下し、塗工性不良を起こす原因となるからである。特に、B成分の重量平均分子量は、1,000〜40,000であることが好ましく、1,000〜20,000であることがより好ましい。
【0022】
B成分のガラス転移温度(Tg)は、−80〜230℃の範囲であることが好ましく、−50〜150℃の範囲であることがより好ましい。B成分のガラス転移温度が−80℃より低いと、ブリードアウトによる被着体汚染の恐れがあり、230℃を超えると重合性が悪化するため、好ましくない。
ここで、B成分のガラス転移温度はA成分と同様に測定した値である。
【0023】
本発明において好ましいB成分の具体例としては、上述した好ましいA成分の他、酢酸ビニル、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド及びN−メチルアクリルアミド等が挙げられる。これらは、単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0024】
(D)A成分とB成分を含む粘着剤組成物に関して:
A成分とB成分との重量配合比は、A/B=0.5〜20の範囲が好ましく、1〜5の範囲がより好ましい。配合比が0.5未満では重量平均分子量の低すぎるものが含まれて、ブリードアウトを生ずるおそれがあり、20を超えると粘着力調整の効果が発揮されないからである。
【0025】
更に、本発明の粘着剤組成物は、上記A成分及びB成分それぞれの組成及びA成分とB成分の配合比を変化させることにより、耐久性能を損なわずに、その粘着力を任意に調節することが可能である。例えば、UL規格等の基準を満足する高粘着力の粘着剤組成物を得ることができる。
【0026】
本発明の組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、従来粘着剤組成物に使用されている公知の各種添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、可塑剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、架橋剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、顔料、染料、有機又は無機粉体などの充填剤、耐電防止剤、粘度調整剤等が挙げられる。
【0027】
なお、架橋剤としては、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アミン系化合物、金属キレート化合物及びアジリジン系化合物が挙げられる。
【0028】
イソシアネート系化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート及びこれらのトリメチロールプロパンなどポリオールとのアダクト体などが挙げられる。
【0029】
エポキシ系化合物の例としては、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン及び1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0030】
アミン系化合物の例としては、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラミン、イソホロンジアミン、アミノ樹脂及びメチレン樹脂などが挙げられる。
【0031】
金属キレート化合物の例としては、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム及びジルコニウムなどの多価金属がアセチルアセトンやアセト酢酸エチルに配位した化合物などが挙げられる。
【0032】
アジリジン系化合物の例としては、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキサイド)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサイド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート及びテトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネートなどが挙げられる。
【0033】
上記各種添加剤のうち、特にシランカップリング剤を粘着剤組成物に添加すると、湿熱条件下における被着体(特に、ガラス)に対する粘着性を向上させ、基材とガラス板界面の浮きや剥がれが生じにくくなる。このシランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、粘着剤成分との相溶性がよく、かつ光透過性を有するもの、例えば実質上透明なものが好適である。
【0034】
このようなシランカップリング剤としては、例えばビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、その添加量は、粘着剤組成物100重量部に対し、0.001〜10重量部の範囲が好ましく、特に0.005〜5重量部の範囲がより好ましい。
【0035】
次に、本発明の組成物の製造方法について説明する。
A成分とB成分を、所望の重量比で配合し、任意に添加剤を加えて混合することによって粘着剤組成物を得る。
【0036】
(E)被着体に関して:
本発明の組成物が粘着する被着体の材質は、特に制限されないが、通常は、ディスプレイ装置等の画面を構成する素材である、ガラス、アクリル板、PETフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート(PC)等である。
【0037】
次に、本発明の粘着シート部材について説明する。
本発明の粘着シート部材は、樹脂フィルムの少なくとも片面に、上記本発明の粘着剤組成物が塗工されてなることを特徴とする。
【0038】
本発明の粘着シート部材は、光学用途に用いられることが好ましい。上記本発明の組成物は、光学用途で要求される耐久性能や透明性を満足することができる。耐久性能としては、例えば、80℃乾燥下、60℃にて1000時間後、及び相対湿度90%にて1000時間後の発泡、剥がれ、浮きが無いこと;フェードメーター150時間後における全光線透過率の変化が1%以下であることなどが必要とされ、透明性としては、ヘイズ値が2%以下であるなどである。
【0039】
本発明の粘着シート部材は、基材(通常、樹脂フィルム)からなるシート部材と、その少なくとも片面に粘着剤組成物が塗工されてなる粘着層からなる。
【0040】
基材としては、例えばグラシン紙、コート紙、キャストコート紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリメチルペンテンなどのポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、酢酸セルロース系フィルムなどのプラスチックフィルムや、これらを含む積層シートなどが挙げられ、粘着シートの用途により、適宜選択される。
【0041】
この粘着シートは、被着体に粘着層を転写するための部材(すなわち、剥離シート)として用いることができるし、また該粘着シートを所望の被着体に貼着するための部材としても用いることができる。前者の用途に用いる場合には、基材に、通常シリコーン樹脂などの剥離剤が塗布される。
【0042】
粘着シートを、剥離シートとして用いる場合、基材の厚さとしては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。粘着シートを所望の被着体に貼着するための部材として用いる場合には、基材の種類及び厚さは、その用途に応じて適当なものが選定される。また、この場合、粘着層の上に、所望により、通常の剥離シートを設けることができる。
【0043】
粘着層の厚さは、5〜100μm程度、特に10〜60μmの範囲が好ましい。
【0044】
粘着層の形成方法としては、特に制限されず、樹脂フィルムに粘着剤組成物(溶液)を、転写印刷、ナイフコーター、ロールコーター、グラビアコーター等の通常使用される塗布方法により樹脂フィルムの片面に塗布し、赤外線、熱風、蒸気等により加熱乾燥する方法、粘着層を設けた離型シートにより転写する方法等が挙げられる。
【0045】
【実施例】
以下、実施例、試験例を参照しながら、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例、試験例によって何ら制限されるものではない。
【0046】
(実施例1)
重量平均分子量100万のアクリル酸エステル共重合体79.9質量部(A成分(粘着剤主ポリマー):アクリル酸ブチル単位97質量%、アクリル酸単位3質量%、Tg:−52℃)及び重量平均分子量5000のアクリル酸エステル共重合体ポリマー20質量部(B成分(添加用ポリマー):アクリル酸イソノニル単位100質量%、Tg:−58℃)に、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアナート(架橋剤)0.1質量部を、トルエン200質量部に加えて粘着剤溶液を調製した。
【0047】
次に、片面にシリコーン樹脂を塗布した厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、商品名:MRF75)からなる剥離フィルムのシリコーン樹脂塗布面上に、上記粘着剤溶液を塗布し、100℃にて1分間乾燥処理し、厚さ25μmの粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
【0048】
得られた粘着シートを、市販の厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、粘着剤層が接するように転着した後、常温で1週間エージングを行い、縦120mm、横25mmの粘着性部材を作製した。
【0049】
(実施例2)
B成分の組成を、アクリル酸ブチル単位70質量%、メタクリル酸メチル単位30質量%(Tg:−18℃)とした以外は、実施例1と同様に操作を行い、粘着性部材を得た。
【0050】
(実施例3)
A成分の重量平均分子量を150万とした以外は、実施例1と同様に操作を行い、粘着性部材を得た。
【0051】
(実施例4)
B成分の重量平均分子量を2万とした以外は、実施例1と同様に操作を行い、粘着性部材を得た。
【0052】
(実施例5)
A成分の組成を、アクリル酸ブチル75質量部、アクリル酸メチル20質量部、アクリル酸4.9質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1質量部(Tg:−34℃)とした以外は、実施例1と同様に操作を行い、粘着性部材を得た。
【0053】
(実施例6)
B成分の組成を、アクリル酸ブチル単位60質量%、酢酸ビニル単位40質量%(Tg:−23℃)とした以外は、実施例5と同様に操作を行い、粘着性部材を得た。
【0054】
(実施例7)
B成分の組成を、アクリル酸ブチル単位60質量%、メタクリル酸メチル単位35質量%、アクリルアミド単位5質量%(Tg:−4℃)とした以外は、実施例5と同様に操作を行い、粘着性部材を得た。
【0055】
(比較例1)
B成分を添加しない以外は、実施例1と同様に操作を行い、粘着性部材を得た。
【0056】
(比較例2)
B成分を添加しない以外は、実施例5と同様に操作を行い、粘着性部材を得た。
【0057】
試験例1:粘着力の測定
上記実施例及び比較例で製造した粘着性部材からなる幅25mmのテープ状の各試験片の剥離フィルムを剥がし、露出した粘着剤層を介して、重さ2kgのゴムローラを該試験片上で1往復させることによって、被着体である市販の厚さ2mmのソーダライムガラスに転着させた。
【0058】
JIS Z−0237に従い、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、転着してから25分間経過後に、試験片の一端を180°方向に速度300mm/分で引っ張ることにより、試験片をガラス板から剥離した。試験片を剥離するのに要する力(強度)を測定し、この値を粘着力(N/25mm)とした。結果を表1に示す。
【0059】
試験例2:耐久性能の測定
上記実施例及び比較例で製造した粘着性部材からなる縦100mm、横100mmの試験片を作製し、この粘着性部材の剥離フィルムを剥がし、露出した粘着剤層を介して、市販の厚さ2mmのソーダライムガラスに転着させた。80℃、Dryの高温条件で1000時間、及び60℃、90%RHの湿熱条件下で1000時間処理し、耐久性(粘着剤の耐劣化性)の評価を行った。
【0060】
目視により、試験片のガラス板からの浮きや剥がれの有無を観察し、浮きや剥がれが認められないものを○、浮きや剥がれが認められるものを×として、耐久性を評価した。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
Figure 2004256599
【0062】
表1の結果から、本発明の粘着剤組成物(実施例1〜7)は、A成分とB成分との組み合わせを適宜に選択することにより、従来のもの(比較例1及び2)と同等の耐久性を保持しつつ、所望の粘着力を持たせることができることが明らかとなった。
【0063】
試験例3:粘着剤の透明性(光学的特性)の評価
(1)粘着剤の耐変色性
PETフィルムに、上記実施例及び比較例に示す組成を有する粘着剤層を設け、これをガラス板に貼付し、80℃、Dry、1000時間、又は60℃、90%RH、1000時間の条件下に置く前と後の色調の変化を、JIS K 7103に準じて色差計[日本電色工業(株)製「SQ−2000」]により、黄色度(b*)及び赤色度(a*)を測定して求め、以下の基準で耐変色性を評価した。
○:変化が0.5未満、△:変化が0.5以上、1.0未満
結果を表2に示す。
【0064】
(2)耐光堅ろう度
フェードメーター150時間の耐光堅ろう度試験を行い、上記(1)と同様の基準で評価した。結果を表2に示す。
【0065】
(3)透明性(ヘイズ値)
透明性(ヘイズ値)(%)は、JIS−K−7105に準じて、ヘイズメーター(島津製作所製 島津分光光度計UV−2400(PC))を使用して、散乱光強度と全光線透過強度を測定した上で、下記式により求めた。
ヘイズ値(%)=散乱光強度/全光線透過強度×100
結果を表2に示す。
【0066】
【表2】
Figure 2004256599
【0067】
表2の結果から、本発明の粘着剤組成物は、80℃、Dry、1000時間、又は60℃、90%RH、1000時間の条件下でも変色せず、フェードメーター150時間の耐光堅ろう度試験においても高い耐光堅ろう性を示し、長期に渡って透明性を保持できることが明らかとなった。
【0068】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた粘着性、耐久性及びリワーク性を有する粘着剤組成物を提供することができる。このリワーク性に優れた組成物を使用すれば、従来廃棄されていたシート部材が再利用できることとなり、廃棄物を減らし、シート部材の歩留まりを向上させることができる。
【0069】
また、本発明によれば、組成及び配合比を変化させることで、耐久性能を損なわずに、種々の粘着力を有する粘着剤組成物を提供することができる。
本発明の粘着剤組成物は、耐変色性、耐光堅ろう性及び透明性に優れており、光学部材、特に粘着性シート部材に用いることができる。
従って、この組成物を用いた粘着性シート部材は、要求に応じて粘着力を任意に調整することができるため、光学用途に好適である。
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