JP2004255804A - 中空成形機のクロスヘッド - Google Patents
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Abstract
【課題】流れ方向を大きく変える部分、つまり流入後に2分された樹脂が再び合流する合流部13において、ウエルドライン等の縦筋が発生し易い。
【解決手段】中子5の外周壁に、ハウジング4の流入部3に連通するマニホールド溝(30)と、マニホールド溝(30)の下流に配置される少なくとも1組の溢流リング31及びプレッシャーリリーフ溝32とを形成させ、かつ、マニホールド溝(30)に隣接する溢流リング31には、側面視で、流入部3と反対側の合流部30aの位置を含む中心軸線O−Oを横切り、上端がマニホールド溝(30)に連通し、下端がプレッシャーリリーフ溝32に連通するバイパス溝33を有し、流入部3からマニホールド溝(30)に流入する溶融樹脂が、溢流リング31を乗り越えると共にバイパス溝33を通過し、プレッシャーリリーフ溝32に流入する。
【選択図】 図1
【解決手段】中子5の外周壁に、ハウジング4の流入部3に連通するマニホールド溝(30)と、マニホールド溝(30)の下流に配置される少なくとも1組の溢流リング31及びプレッシャーリリーフ溝32とを形成させ、かつ、マニホールド溝(30)に隣接する溢流リング31には、側面視で、流入部3と反対側の合流部30aの位置を含む中心軸線O−Oを横切り、上端がマニホールド溝(30)に連通し、下端がプレッシャーリリーフ溝32に連通するバイパス溝33を有し、流入部3からマニホールド溝(30)に流入する溶融樹脂が、溢流リング31を乗り越えると共にバイパス溝33を通過し、プレッシャーリリーフ溝32に流入する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、中空成形機のクロスヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
従来の中空成形機のクロスヘッドとして、例えば図7,図8に示すものが知られている(特許第3100874号)。これは、ハウジング4の内孔に挿通され、その間に環状の樹脂流路を形成する中子5を有する中空成形機のクロスヘッドにおいて、中子5の外周壁には順次、マニホールド溝10、スパイラル溝11及びプレッシャーリリーフ溝12が形成され、マニホールド溝10は、その上方の稜線が下方向に傾斜され、コートハンガー状に合流部13に近づくにつれて徐々に絞られており、スパイラル溝11は少なくとも4条スパイラルとされ、プレッシャーリリーフ溝12は少なくとも2段設けられていることを特徴とする。
【0003】
スパイラル溝11は、マニホールド溝10からの入口が最も深く、該入口から回転して切り上がり、切り上がつてスパイラル溝11がなくなつた部分は、中子5の外周と同一寸法とされている。また、プレッシャーリリーフ溝12は、断面台形のリング溝である。
【0004】
押出機17で溶融混練された樹脂は、アダプタ20を介して流入部3からクロスヘッド1に流入し、マニホールド溝10を水平方向に流れ、次に水平方向から下向きに流れを変えて、吐出部36から吐出されて所定のサイズのパリソン14を成形する。図7に示される符号6はコア、7はスピンドル、8はダイホルダ、9はダイ、16はスクリュ、18はシリンダ、19はブレーカプレート、20はアダプタ、21はヒータ、22はフランジ、42はクロスヘッド本体である。また、図8に示される符号Dはマニホールド溝10の上方に位置する中子5の外径、Lはその長さである。
【0005】
しかしながら、このような従来の中空成形機のクロスヘッドにあつては、流れ方向を大きく変える部分、つまりハウジング4に流入後に2分された樹脂が再び合流する合流部13において、パリソン14の外観又は強度上の欠点となるウエルドライン等の縦筋が発生し易い。縦筋が発生する理由は、次の通りである。先ず、マニホールド溝10に入つた溶融樹脂は、円周方向の圧力を受けながら流れ、一部が合流部13にまで達した後に流下し始めるが、合流部13では溶融樹脂が滞留・熱劣化し、壁面に付着するなどして硬くなり易く、これによつて流路を狭めるのでパリソン14に縦筋を生じることになる。
【0006】
すなわち、マニホールド溝10は、流入部3自体の断面積よりも大きい断面積を有して全周に形成されているため、圧力損失をほとんど生ずることなく分流して合流部13に達する。このため、合流部13での融着は行われ易い構造であるといえる。その反面、マニホールド溝10を流れる溶融樹脂の流速が低く、また、流路が大きく長いため、合成樹脂の焼けによる劣化物や樹脂に分散させたチタン白などのカラーリング材がマニホールド溝10の壁面に付着し易くなる。また、マニホールド溝10の流入部3と180°離れる反対位置の合流部13付近では、一般に、溶融樹脂の押し合う圧力が小さくなるため、十分な融着が得られず、パリソン14に縦筋を生じ易い。
【0007】
このような流入部3と180°離れる位置の合流部13付近の融着不良、劣化物及びカラーリング材の付着に起因して、溶融樹脂にウエルドラインなどの縦筋を形成する。
【0008】
この溶融樹脂に生ずる縦筋は、マニホールド溝10よりも下流に位置する4条スパイラル溝11に流入することで消去される傾向にある。しかし、4条スパイラル溝11が中子5の外周壁の全周に形成されているので、マニホールド溝10から流下する溶融樹脂の全体に回転流を生じさせ、縦筋が周方向に移動するのみで消去され難い。加えて、マニホールド溝10及び4条スパイラル溝11の接続部の溝底がほぼ同一の深さであることもあつて、深さが漸減する4条スパイラル溝11内で薄く伸ばされるものの縦筋が完全には消去れず、樹脂の表面に残り、パリソンの成形不良の要因となることがある。
【0009】
更に、4条スパイラル溝11を通過した溶融樹脂は、下流のプレッシャーリリーフ溝12に至り、薄く流れの速いフィルム状の樹脂を急激に広い溝に流入させ、流速を下げると共に乱流を生じさせ、溶融樹脂を混合させて縦筋を消去させる。しかし、プレッシャーリリーフ溝12の断面形状が台形をなし、かつ、大きな断面積を有しているため、有効に機能せず、パリソン14の表面に縦筋を残すことがある。
【0010】
本発明は、溶融樹脂の合流部よりも下流に位置させて、バイパス溝を有する溢流リング及びプレッシャーリリーフ溝を設けて縦筋を消去するようにし、更には強制偏流リングを設けて縦筋の消去を効果的に行い、縦筋のない品質良好なパリソンを安定的に成形可能なクロスヘッドを提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような従来の技術的課題に鑑みてなされたものであり、その構成は次の通りである。
請求項1に係る発明の構成は、ハウジング4の内孔に挿入される中子5により、上端が流入部3に連通する環状の樹脂流路を形成し、該樹脂流路の下端に有する吐出部36からパリソン14を吐出させる中空成形機のクロスヘッドにおいて、中子5の外周壁に、ハウジング4の流入部3に連通するマニホールド溝(30)と、マニホールド溝(30)の下流に配置される少なくとも1組の溢流リング31及び環状のプレッシャーリリーフ溝32とを形成させ、かつ、マニホールド溝(30)に隣接する溢流リング31には、側面視で、流入部3と反対側の合流部30aの位置を通る中心軸線O−Oを斜めに横切るバイパス溝33を半周以下の範囲で設け、流入部3からマニホールド溝(30)に流入する溶融樹脂が、溢流リング31を乗り越えると共にバイパス溝33を通過し、プレッシャーリリーフ溝32に流入することを特徴とする中空成形機のクロスヘッドである。
請求項2の発明の構成は、前記バイパス溝33は、上端がマニホールド溝(30)に連通し、下端がプレッシャーリリーフ溝32に連通していることを特徴とする請求項1の中空成形機のクロスヘッドである。
請求項3の発明の構成は、前記吐出部36がハウジング4の下側に設けるダイ9に形成されると共に、ハウジング4の下端部に強制偏流リング24が配設され、該強制偏流リング24が溶融樹脂に偏流を与える凸部24aを周方向の一部内面に有することを特徴とする請求項1又は2の中空成形機のクロスヘッドである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の1実施の形態について図1〜図6を参照して説明する。
図1において符号1はクロスヘッドであり、クロスヘッド1には、押出機17からの溶融樹脂が供給される。押出機17は、シリンダ18に回転自在に内挿させたスクリュ16によつて溶融樹脂を押し出す。押出機17の先端から押し出された溶融樹脂は、ブレーカプレート19を通してアダプタ20の樹脂流路に流入し、クロスヘッド1のハウジング4の流入部3から供給され、上端が流入部3に連通する環状の樹脂流路を流下して後記する吐出部36から吐出される。21は、ヒータである。
【0013】
クロスヘッド1は、ハウジング4及び中子5を有する。中子5は、円筒状のハウジング4の内孔に挿入されて、上端部がハウジング4に液密に嵌合し、ハウジング4の流入部3よりも下側の内周壁との間に環状の樹脂流路を区画する。中子5の中心部には、スピンドル7及びコア6が上下動自在かつ液密に挿通され、先端が円錐状をなすコア6を上下動させることにより、樹脂流路の下端の吐出部36の大きさを調節することができるようになつている。
【0014】
ハウジング4の下側には、ダイ9がダイホルダ8によつて取付けられ、ダイ9が、ハウジング4の下端に後記する強制偏流リング24を介して接続している。コア6とダイ9との間の流路の下端が吐出部36を形成する。ダイ9は、ダイホルダ8に螺合させた複数本の調節ボルト39の螺合量の調節により放射方向への移動が可能であり、これによつて吐出部36から吐出するパリソン14の偏肉を調節することができる。
【0015】
中子5には、図2に示すように円筒外周壁に、上部から順次にマニホールド溝である流入リング溝30と、組をなす溢流リング31及びプレッシャーリリーフ溝32が形成され、下端部は円筒状部5a及び円錐状部5bを順次に形成している。なお、上部の大径部5cが、ハウジング4の内孔に嵌合する。また、円筒状部5aは、後記するランド部131よりも小径をなしている。
【0016】
流入リング溝30は、環状溝を形成し、ハウジング4の流入部3が連通する。流入リング溝30は、溶融樹脂の圧力損失を抑制しながら、円周方向に均一な流れに整える機能を有すると共に、溶融樹脂に適正な流速を与えて溝壁面に樹脂やカラーリング材が付着し劣化しないように配慮して形成する。このため、流入リング溝30は、樹脂が滞留し易い角部の少ない半円形状断面にし、かつ、その断面積を周方向で均一にすると共に、円形状断面を有する流入部3の断面積のほぼ1/2の大きさに形成してある。
【0017】
また、流入リング溝30は、流入部3から流入リング溝30に流入して2つに分流した溶融樹脂が最短距離の流動で流入部3と180°離れる反対位置に達して合流し、合流部30aで十分な圧着力が樹脂に与えられて良好な融着がなされるように形成する。このため、上記所定の断面積を与える流入リング溝30を、水平に形成してある。
【0018】
溢流リング31は、中心軸線方向に少なくとも1つ(図示の例では4段)形成され、ハウジング4の内壁との間に狭い隙間を形成し、ここを通る樹脂を薄く伸ばし下流のプレッシャーリリーフ溝32に溢れさせて流入させる機能を有する。このため、溢流リング31は、水平に形成され、図4に示すようにハウジング4の内壁との間に狭い隙間を形成する環状のランド部131と、環状のランド部131の上下両側に接続する円錐状斜面132とを有する。各円錐状斜面132は、流入リング溝30又はプレッシャーリリーフ溝32に、それぞれ滑らかに接続する機能を有する。但し、最上位置の溢流リング31のランド部131の上側に接続する円錐状斜面132は、短筒部130を介して流入リング溝30に接続している。従つて、溢流リング31を乗り越えて通過する樹脂は、滞留を生ずることなく流速が高まり、かつ、圧力が上昇するので、ランド部131及びハウジング4の内壁面に密着しながら表面が滑らかなフィルム状に引き伸ばされる。なお、2段目以降の溢流リング31には、符号31にa〜cを順次に付してある。
【0019】
また、マニホールド溝30に隣接する最上位置の溢流リング31には、溶融樹脂が合流する合流部30aで左右両側から圧着されて生じた縦筋を受け入れて分散させるバイパス溝33を形成する。すなわち、図2,図3に示す流入部3と反対側からの側面視で、合流部30aの位置を通る中心軸線O−Oを斜めに横切る直線状のバイパス溝33を中子5の外周壁の半周以下の範囲で形成する。このバイパス溝33は、上端がマニホールド溝30に連通し、下端がプレッシャーリリーフ溝32に連通するように、中心軸線O−Oから傾斜しているので、少なくともランド部131の全幅にわたつて形成されている。なお、バイパス溝33と中心軸線O−Oとの交点は、図3に示すように流入リング溝30の短筒部130付近に位置している。
【0020】
従つて、バイパス溝33は、その上端が、合流部30aから少しずれた位置に形成されて流入リング溝30に開口し、中間部が、図2,図3に示す側面視で合流部30aを通る中心軸線O−Oを横切り、下端が、最上位置のプレッシャーリリーフ溝32に開口している。合流部30a付近の溶融樹脂は、その多くがバイパス溝33の流入リング溝30に臨む上部から流入し、また、一部は溢流リング31を乗り越えながらバイパス溝33に流入する。バイパス溝33に流入した溶融樹脂は、その一部がバイパス溝33の下端開口部から流出し、また、多くは溢流リング31を次第に乗り越えながら、最上位置のプレッシャーリリーフ溝32へ勢い良く放出される。バイパス溝33に流入せずに溢流リング31を乗り越えた多くの溶融樹脂は、堰き止め状態が解放されて最上位置のプレッシャーリリーフ溝32へ勢い良く放出される。この点は、2段目以降の溢流リング31a〜31cを乗り越える溶融樹脂でも同様である。
【0021】
プレッシャーリリーフ溝32は、溶融樹脂を乱流として、流入リング溝30の合流部30aで生じて上側に隣接する溢流リング31を通過した溶融樹脂の筋を更に消す機能を有し、中心軸線方向に少なくとも1つ(図示の例では4段)設けてある。このため、プレッシャーリリーフ溝32は、環状をなし、樹脂が滞留しないように半円形状断面にして水平に形成されている。なお、2段目以降のプレッシャーリリーフ溝32には、符号32にa〜cを順次に付してある。
【0022】
最上位置のプレッシャーリリーフ溝32においては、最上位置の溢流リング31から溢れて薄く引き伸ばされたフィルム状の樹脂が、この溝32内で流速が急低下し、ハウジング4の内壁面に沿つて流れてきた樹脂は、次位の溢流リング31aの円錐状斜面132の傾斜壁にも突き当たり、上向きに流れを変えて、半円形の溝底に沿つて循環流(乱流)となり、循環しながら十分に混合されて縦筋が消滅する。なお、プレッシャーリリーフ溝32は水平環状に形成されているので、上方から流入する溶融樹脂は、全周でほぼ均一にプレッシャーリリーフ溝32を通過して流下する。
【0023】
更に、ハウジング4の下端部に、溶融樹脂に偏流を与える凸部24aを周方向の一部内面に有する強制偏流リング24を配設する。強制偏流リング24は、図5,図6に示すように短筒状をなす本体の下端に外向きのフランジ部24bを有し、本体の内面が下方に向けて次第に縮径する円錐状面24cを形成し、この円錐状面24cの一部に凸部24aを有する。凸部24aの上下左右は、円錐状面24cに滑らかに接続している。強制偏流リング24は、その本体をハウジング4の内孔に摺動自在に挿入嵌合させ、フランジ部24bをハウジング4とダイ9との間に液密に挟装させて取り付けてある。
【0024】
凸部24aの形成角度θは、図6(A)に示すように平面視で30〜120度程度の角度範囲が良く、また、凸部24aの突出高さは、流路の隙間を決定するため、樹脂の種類等に応じて適正な寸法が選択される。但し、凸部24aは、中子5の外周壁と接触せず、その間に樹脂流路が残存する高さ寸法で形成する。なお、凸部24aの形成位置は、ハウジング4内の樹脂流路を流下する縦筋を受けて偏流させる位置とするものであり、図示の例では、図6(A)に示すように樹脂の流入方向つまり流入部3からの流入方向に対し、平面視で時計回り方向に90度程度ずれた位置が最良である。
【0025】
なお、ハウジング4の内孔及び中子5等の流路面に滑り性の良い表面処理、例えばテフロン(登録商標)のコーティング又はその含浸メッキなどを行えば、チタン白などのカラーリング材の付着固化を抑制することができる。
【0026】
次に、作用について説明する。
押出機17によつて溶融・混練された樹脂は、アダプタ20を通り、クロスヘッド1のハウジング4の流入部3から流入リング溝30に入り、左右両方向に分かれて周方向に流れる。流入リング溝30では、溶融樹脂が円周方向に押し合いながら流動し、適宜に方向を変えて下向きに流れ、溢流リング31を通過すると共に、一部が合流部30aに達する。合流部30aに達した溶融樹脂は、バイパス溝33に効果的に流入し、斜め下方向に導かれながら、一部はバイパス溝33を通過して最上位置のプレッシャーリリーフ溝32に流入し、一部はバイパス溝33から次第に溢れて溢流リング31を通過する。
【0027】
このように、合流部30aに達した溶融樹脂は、そのほとんどがバイパス溝33に直接又は溢流リング31を乗り越えながら流入するが、溶融樹脂は全体として下向きの流れを有するため、バイパス溝33を整然と流れるのではなく、溢流リング31を乗り越えてくる溶融樹脂が上側からバイパス溝33に流入しながら、バイパス溝33から下側の溢流リング31及びプレッシャーリリーフ溝32に向けて溢れ出る。このような複雑な流れを行いながら、合流部30aに達して密着し合つた溶融樹脂が分散されながら流下する。しかも、溢流リング31を通過する溶融樹脂は、薄くフィルム状に伸ばされながら圧力が加わるので、バイパス溝33付近を流れる溶融樹脂が良好に融着する。その結果、パリソン14の筋の発生が、実用上問題のない程度にまで防止される。
【0028】
最上位置の溢流リング31を通過する溶融樹脂は、薄く伸ばされた後に組をなす最上位置のプレッシャーリリーフ溝32に流入し、減圧され、続いて次段の溢流リング31aの外周壁(ランド部131)で薄くフィルム状に伸ばされ、組をなすプレッシャーリリーフ溝32aに流入し、同様の圧力低下状態及び圧力上昇状態とが交互に与えられる。溶融樹脂は、プレッシャーリリーフ溝32内で環状の流れを伴う乱流になるので、合流部30aに起因して生じ、バイパス溝33及び最上位置の溢流リング31の通過によつては消去できなかつた筋が、消滅して行く。溶融樹脂の筋は、第2組以降の溢流リング31a〜31c及びプレッシャーリリーフ溝32a〜32cの通過により、更に消滅して行く。
【0029】
4組の溢流リング31,31a〜31c及びプレッシャーリリーフ溝32,32a〜32cを通過した溶融樹脂は、続いてハウジング4と中子5の円筒状部5a及び円錐状部5bとの間の隙間で整流とされて流下し、ダイ9とコア6との間の隙間で所定の直径及び肉厚が与えられてクロスヘッド1の吐出部36から吐出され、円筒状のパリソン14となる。
【0030】
しかして、合流部30aで合流する際に樹脂が両側から圧着されて生じた筋が、最上位置の溢流リング31の壁に衝突して薄く伸ばされながら、バイパス溝33の放出流に引き込まれて分散し、更に最上位置のプレッシャーリリーフ溝32内に至り、循環流(乱流)となつて混合され、良好に消失する。
【0031】
そして、更に下流に流れた樹脂は、第2〜第4の組をなす溢流リング31a,31b,31c及びプレッシャーリリーフ溝32a,32b,32c内で同様の混合が繰り返されることになる。
【0032】
溢流リング31,31a,31b,31c及びプレッシャーリリーフ溝32,32a,32b,32cの組数は、1組以上であれば良く、樹脂の種類並びに樹脂への添加物の種類及び量により、適宜変更して適正な数が選択される。
【0033】
更に、全ての組の溢流リング31,31a,31b,31c及びプレッシャーリリーフ溝32,32a,32b,32cを通過し、その後、円筒状部5aとの間の隙間からなる流路で整流された樹脂は、中子5の円錐状部5bに対応させて設けられ、ダイ9への入口に位置する強制偏流リング24に至り、多くは強制偏流リング24の円錐状面24cと中子5の円錐状部5bとの間の流路を流れて整流され、一部は強制偏流リング24の凸部24aに接して偏流が加えられ、残存する縦筋が消去される。続いて、強制偏流リング24を通過した溶融樹脂は、図5に示す中子5の円錐状部5bとダイ9の上側の円錐状部9aとの間の流路を流れて整流され、更にコア6の円筒面とダイ9の円筒面9bとの間の流路を流れて整流され、引続き所定の直径及び肉厚が与えられてクロスヘッド1の吐出部36から吐出される。これにより、円筒状のパリソン14となる。
【0034】
【発明の効果】
以上の説明によつて理解されるように、本発明に係る中空成形機のクロスヘッドによれば、次の効果が得られる。
マニホールド溝の下流に隣接させて配置するバイパス溝を有する溢流リング及びプレッシャーリリーフ溝の機能により、中空成形機のクロスヘッドの合流部で発生し易いウエルドラインからなるパリソンの筋が、良好に防止される。これは、特に、マニホールド溝の合流部に達して密着し合つた溶融樹脂が斜めのバイパス溝に流入し、溢れを伴いながら斜めに流下して分散されることにより、効果的に得られる。バイパス溝は、中子の外周壁の半周以下の範囲で形成されているので、マニホールド溝から流下する溶融樹脂の全体に大きな回転流を生じさせることなく、合流部から流下する溶融樹脂を効果的に分散させる。
【0035】
また、クロスヘッドの樹脂流路に樹脂の滞留箇所が存在しない構造となし得るので、溶融樹脂の劣化物やカラーリング材等の添加物の特に合流部付近への蓄積・付着を解消させ、これらの蓄積・付着に起因して生じていた縦筋を消滅させることができる。これにより、縦筋の存在によるパリソンの強度低下を防止することができると共に、パリソンの円周方向の肉厚の均一性が良好になり、成形品の品質が向上する。
【0036】
加えて、中空成形機のクロスヘッドの樹脂流路に樹脂の滞留箇所が存在しない構造とすることにより、樹脂の種類の交換及び色替えを短時間で行うことが可能になる。
【0037】
請求項2に係る発明によれば、バイパス溝の両端が開放されているので、溶融樹脂がバイパス溝を円滑に流動し、樹脂の滞留箇所にならない。加えて、溶融樹脂の全体に回転流を生じさせないこととも相まつて、溢流リングを乗り越えながらバイパス溝に上方から流入する樹脂量が増加するので、溶融樹脂がバイパス溝を単純に乗り越え、或いはバイパス溝に沿つてのみ流下することを抑制しながら、合流部から流下する溶融樹脂を効果的に分散させることができる。その結果、パリソンの筋の発生が、良好に防止される。
【0038】
請求項3に係る発明によれば、縦筋に対応させて凸部を位置させることにより、縦筋を更に効果的に消滅させることが可能となり、品質良好な成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施の形態に係る中空成形機のクロスヘッドを示す断面図。
【図2】同じく中子を一部切開して示す図。
【図3】同じくクロスヘッドの要部を示す断面図。
【図4】同じく流入リング溝、溢流リング及びプレッシャーリリーフ溝の作用説明図。
【図5】同じく強制偏流リングを備えるクロスヘッドの下端部を拡大して示す断面図。
【図6】同じく強制偏流リングを示し、図6(A)は平面図、図6(B)は図6(A)のB−B線断面図。
【図7】従来の中空成形機のクロスヘッドを示す断面図。
【図8】同じく中子を一部切開して示す図。
【符号の説明】
1:クロスヘッド、3:流入部、4:ハウジング、5:中子、6:コア、7:スピンドル、8:ダイホルダ、9:ダイ、14:パリソン、17:押出機、24:強制偏流リング、24a:凸部、24b:フランジ部、30:流入リング溝(マニホールド溝)、30a:合流部、31,31a,31b,31c:溢流リング、32,32a,32b,32c:プレッシャーリリーフ溝、33:バイパス溝、36:吐出部、O−O:中心軸線。
【発明の属する技術分野】
本発明は、中空成形機のクロスヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
従来の中空成形機のクロスヘッドとして、例えば図7,図8に示すものが知られている(特許第3100874号)。これは、ハウジング4の内孔に挿通され、その間に環状の樹脂流路を形成する中子5を有する中空成形機のクロスヘッドにおいて、中子5の外周壁には順次、マニホールド溝10、スパイラル溝11及びプレッシャーリリーフ溝12が形成され、マニホールド溝10は、その上方の稜線が下方向に傾斜され、コートハンガー状に合流部13に近づくにつれて徐々に絞られており、スパイラル溝11は少なくとも4条スパイラルとされ、プレッシャーリリーフ溝12は少なくとも2段設けられていることを特徴とする。
【0003】
スパイラル溝11は、マニホールド溝10からの入口が最も深く、該入口から回転して切り上がり、切り上がつてスパイラル溝11がなくなつた部分は、中子5の外周と同一寸法とされている。また、プレッシャーリリーフ溝12は、断面台形のリング溝である。
【0004】
押出機17で溶融混練された樹脂は、アダプタ20を介して流入部3からクロスヘッド1に流入し、マニホールド溝10を水平方向に流れ、次に水平方向から下向きに流れを変えて、吐出部36から吐出されて所定のサイズのパリソン14を成形する。図7に示される符号6はコア、7はスピンドル、8はダイホルダ、9はダイ、16はスクリュ、18はシリンダ、19はブレーカプレート、20はアダプタ、21はヒータ、22はフランジ、42はクロスヘッド本体である。また、図8に示される符号Dはマニホールド溝10の上方に位置する中子5の外径、Lはその長さである。
【0005】
しかしながら、このような従来の中空成形機のクロスヘッドにあつては、流れ方向を大きく変える部分、つまりハウジング4に流入後に2分された樹脂が再び合流する合流部13において、パリソン14の外観又は強度上の欠点となるウエルドライン等の縦筋が発生し易い。縦筋が発生する理由は、次の通りである。先ず、マニホールド溝10に入つた溶融樹脂は、円周方向の圧力を受けながら流れ、一部が合流部13にまで達した後に流下し始めるが、合流部13では溶融樹脂が滞留・熱劣化し、壁面に付着するなどして硬くなり易く、これによつて流路を狭めるのでパリソン14に縦筋を生じることになる。
【0006】
すなわち、マニホールド溝10は、流入部3自体の断面積よりも大きい断面積を有して全周に形成されているため、圧力損失をほとんど生ずることなく分流して合流部13に達する。このため、合流部13での融着は行われ易い構造であるといえる。その反面、マニホールド溝10を流れる溶融樹脂の流速が低く、また、流路が大きく長いため、合成樹脂の焼けによる劣化物や樹脂に分散させたチタン白などのカラーリング材がマニホールド溝10の壁面に付着し易くなる。また、マニホールド溝10の流入部3と180°離れる反対位置の合流部13付近では、一般に、溶融樹脂の押し合う圧力が小さくなるため、十分な融着が得られず、パリソン14に縦筋を生じ易い。
【0007】
このような流入部3と180°離れる位置の合流部13付近の融着不良、劣化物及びカラーリング材の付着に起因して、溶融樹脂にウエルドラインなどの縦筋を形成する。
【0008】
この溶融樹脂に生ずる縦筋は、マニホールド溝10よりも下流に位置する4条スパイラル溝11に流入することで消去される傾向にある。しかし、4条スパイラル溝11が中子5の外周壁の全周に形成されているので、マニホールド溝10から流下する溶融樹脂の全体に回転流を生じさせ、縦筋が周方向に移動するのみで消去され難い。加えて、マニホールド溝10及び4条スパイラル溝11の接続部の溝底がほぼ同一の深さであることもあつて、深さが漸減する4条スパイラル溝11内で薄く伸ばされるものの縦筋が完全には消去れず、樹脂の表面に残り、パリソンの成形不良の要因となることがある。
【0009】
更に、4条スパイラル溝11を通過した溶融樹脂は、下流のプレッシャーリリーフ溝12に至り、薄く流れの速いフィルム状の樹脂を急激に広い溝に流入させ、流速を下げると共に乱流を生じさせ、溶融樹脂を混合させて縦筋を消去させる。しかし、プレッシャーリリーフ溝12の断面形状が台形をなし、かつ、大きな断面積を有しているため、有効に機能せず、パリソン14の表面に縦筋を残すことがある。
【0010】
本発明は、溶融樹脂の合流部よりも下流に位置させて、バイパス溝を有する溢流リング及びプレッシャーリリーフ溝を設けて縦筋を消去するようにし、更には強制偏流リングを設けて縦筋の消去を効果的に行い、縦筋のない品質良好なパリソンを安定的に成形可能なクロスヘッドを提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような従来の技術的課題に鑑みてなされたものであり、その構成は次の通りである。
請求項1に係る発明の構成は、ハウジング4の内孔に挿入される中子5により、上端が流入部3に連通する環状の樹脂流路を形成し、該樹脂流路の下端に有する吐出部36からパリソン14を吐出させる中空成形機のクロスヘッドにおいて、中子5の外周壁に、ハウジング4の流入部3に連通するマニホールド溝(30)と、マニホールド溝(30)の下流に配置される少なくとも1組の溢流リング31及び環状のプレッシャーリリーフ溝32とを形成させ、かつ、マニホールド溝(30)に隣接する溢流リング31には、側面視で、流入部3と反対側の合流部30aの位置を通る中心軸線O−Oを斜めに横切るバイパス溝33を半周以下の範囲で設け、流入部3からマニホールド溝(30)に流入する溶融樹脂が、溢流リング31を乗り越えると共にバイパス溝33を通過し、プレッシャーリリーフ溝32に流入することを特徴とする中空成形機のクロスヘッドである。
請求項2の発明の構成は、前記バイパス溝33は、上端がマニホールド溝(30)に連通し、下端がプレッシャーリリーフ溝32に連通していることを特徴とする請求項1の中空成形機のクロスヘッドである。
請求項3の発明の構成は、前記吐出部36がハウジング4の下側に設けるダイ9に形成されると共に、ハウジング4の下端部に強制偏流リング24が配設され、該強制偏流リング24が溶融樹脂に偏流を与える凸部24aを周方向の一部内面に有することを特徴とする請求項1又は2の中空成形機のクロスヘッドである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の1実施の形態について図1〜図6を参照して説明する。
図1において符号1はクロスヘッドであり、クロスヘッド1には、押出機17からの溶融樹脂が供給される。押出機17は、シリンダ18に回転自在に内挿させたスクリュ16によつて溶融樹脂を押し出す。押出機17の先端から押し出された溶融樹脂は、ブレーカプレート19を通してアダプタ20の樹脂流路に流入し、クロスヘッド1のハウジング4の流入部3から供給され、上端が流入部3に連通する環状の樹脂流路を流下して後記する吐出部36から吐出される。21は、ヒータである。
【0013】
クロスヘッド1は、ハウジング4及び中子5を有する。中子5は、円筒状のハウジング4の内孔に挿入されて、上端部がハウジング4に液密に嵌合し、ハウジング4の流入部3よりも下側の内周壁との間に環状の樹脂流路を区画する。中子5の中心部には、スピンドル7及びコア6が上下動自在かつ液密に挿通され、先端が円錐状をなすコア6を上下動させることにより、樹脂流路の下端の吐出部36の大きさを調節することができるようになつている。
【0014】
ハウジング4の下側には、ダイ9がダイホルダ8によつて取付けられ、ダイ9が、ハウジング4の下端に後記する強制偏流リング24を介して接続している。コア6とダイ9との間の流路の下端が吐出部36を形成する。ダイ9は、ダイホルダ8に螺合させた複数本の調節ボルト39の螺合量の調節により放射方向への移動が可能であり、これによつて吐出部36から吐出するパリソン14の偏肉を調節することができる。
【0015】
中子5には、図2に示すように円筒外周壁に、上部から順次にマニホールド溝である流入リング溝30と、組をなす溢流リング31及びプレッシャーリリーフ溝32が形成され、下端部は円筒状部5a及び円錐状部5bを順次に形成している。なお、上部の大径部5cが、ハウジング4の内孔に嵌合する。また、円筒状部5aは、後記するランド部131よりも小径をなしている。
【0016】
流入リング溝30は、環状溝を形成し、ハウジング4の流入部3が連通する。流入リング溝30は、溶融樹脂の圧力損失を抑制しながら、円周方向に均一な流れに整える機能を有すると共に、溶融樹脂に適正な流速を与えて溝壁面に樹脂やカラーリング材が付着し劣化しないように配慮して形成する。このため、流入リング溝30は、樹脂が滞留し易い角部の少ない半円形状断面にし、かつ、その断面積を周方向で均一にすると共に、円形状断面を有する流入部3の断面積のほぼ1/2の大きさに形成してある。
【0017】
また、流入リング溝30は、流入部3から流入リング溝30に流入して2つに分流した溶融樹脂が最短距離の流動で流入部3と180°離れる反対位置に達して合流し、合流部30aで十分な圧着力が樹脂に与えられて良好な融着がなされるように形成する。このため、上記所定の断面積を与える流入リング溝30を、水平に形成してある。
【0018】
溢流リング31は、中心軸線方向に少なくとも1つ(図示の例では4段)形成され、ハウジング4の内壁との間に狭い隙間を形成し、ここを通る樹脂を薄く伸ばし下流のプレッシャーリリーフ溝32に溢れさせて流入させる機能を有する。このため、溢流リング31は、水平に形成され、図4に示すようにハウジング4の内壁との間に狭い隙間を形成する環状のランド部131と、環状のランド部131の上下両側に接続する円錐状斜面132とを有する。各円錐状斜面132は、流入リング溝30又はプレッシャーリリーフ溝32に、それぞれ滑らかに接続する機能を有する。但し、最上位置の溢流リング31のランド部131の上側に接続する円錐状斜面132は、短筒部130を介して流入リング溝30に接続している。従つて、溢流リング31を乗り越えて通過する樹脂は、滞留を生ずることなく流速が高まり、かつ、圧力が上昇するので、ランド部131及びハウジング4の内壁面に密着しながら表面が滑らかなフィルム状に引き伸ばされる。なお、2段目以降の溢流リング31には、符号31にa〜cを順次に付してある。
【0019】
また、マニホールド溝30に隣接する最上位置の溢流リング31には、溶融樹脂が合流する合流部30aで左右両側から圧着されて生じた縦筋を受け入れて分散させるバイパス溝33を形成する。すなわち、図2,図3に示す流入部3と反対側からの側面視で、合流部30aの位置を通る中心軸線O−Oを斜めに横切る直線状のバイパス溝33を中子5の外周壁の半周以下の範囲で形成する。このバイパス溝33は、上端がマニホールド溝30に連通し、下端がプレッシャーリリーフ溝32に連通するように、中心軸線O−Oから傾斜しているので、少なくともランド部131の全幅にわたつて形成されている。なお、バイパス溝33と中心軸線O−Oとの交点は、図3に示すように流入リング溝30の短筒部130付近に位置している。
【0020】
従つて、バイパス溝33は、その上端が、合流部30aから少しずれた位置に形成されて流入リング溝30に開口し、中間部が、図2,図3に示す側面視で合流部30aを通る中心軸線O−Oを横切り、下端が、最上位置のプレッシャーリリーフ溝32に開口している。合流部30a付近の溶融樹脂は、その多くがバイパス溝33の流入リング溝30に臨む上部から流入し、また、一部は溢流リング31を乗り越えながらバイパス溝33に流入する。バイパス溝33に流入した溶融樹脂は、その一部がバイパス溝33の下端開口部から流出し、また、多くは溢流リング31を次第に乗り越えながら、最上位置のプレッシャーリリーフ溝32へ勢い良く放出される。バイパス溝33に流入せずに溢流リング31を乗り越えた多くの溶融樹脂は、堰き止め状態が解放されて最上位置のプレッシャーリリーフ溝32へ勢い良く放出される。この点は、2段目以降の溢流リング31a〜31cを乗り越える溶融樹脂でも同様である。
【0021】
プレッシャーリリーフ溝32は、溶融樹脂を乱流として、流入リング溝30の合流部30aで生じて上側に隣接する溢流リング31を通過した溶融樹脂の筋を更に消す機能を有し、中心軸線方向に少なくとも1つ(図示の例では4段)設けてある。このため、プレッシャーリリーフ溝32は、環状をなし、樹脂が滞留しないように半円形状断面にして水平に形成されている。なお、2段目以降のプレッシャーリリーフ溝32には、符号32にa〜cを順次に付してある。
【0022】
最上位置のプレッシャーリリーフ溝32においては、最上位置の溢流リング31から溢れて薄く引き伸ばされたフィルム状の樹脂が、この溝32内で流速が急低下し、ハウジング4の内壁面に沿つて流れてきた樹脂は、次位の溢流リング31aの円錐状斜面132の傾斜壁にも突き当たり、上向きに流れを変えて、半円形の溝底に沿つて循環流(乱流)となり、循環しながら十分に混合されて縦筋が消滅する。なお、プレッシャーリリーフ溝32は水平環状に形成されているので、上方から流入する溶融樹脂は、全周でほぼ均一にプレッシャーリリーフ溝32を通過して流下する。
【0023】
更に、ハウジング4の下端部に、溶融樹脂に偏流を与える凸部24aを周方向の一部内面に有する強制偏流リング24を配設する。強制偏流リング24は、図5,図6に示すように短筒状をなす本体の下端に外向きのフランジ部24bを有し、本体の内面が下方に向けて次第に縮径する円錐状面24cを形成し、この円錐状面24cの一部に凸部24aを有する。凸部24aの上下左右は、円錐状面24cに滑らかに接続している。強制偏流リング24は、その本体をハウジング4の内孔に摺動自在に挿入嵌合させ、フランジ部24bをハウジング4とダイ9との間に液密に挟装させて取り付けてある。
【0024】
凸部24aの形成角度θは、図6(A)に示すように平面視で30〜120度程度の角度範囲が良く、また、凸部24aの突出高さは、流路の隙間を決定するため、樹脂の種類等に応じて適正な寸法が選択される。但し、凸部24aは、中子5の外周壁と接触せず、その間に樹脂流路が残存する高さ寸法で形成する。なお、凸部24aの形成位置は、ハウジング4内の樹脂流路を流下する縦筋を受けて偏流させる位置とするものであり、図示の例では、図6(A)に示すように樹脂の流入方向つまり流入部3からの流入方向に対し、平面視で時計回り方向に90度程度ずれた位置が最良である。
【0025】
なお、ハウジング4の内孔及び中子5等の流路面に滑り性の良い表面処理、例えばテフロン(登録商標)のコーティング又はその含浸メッキなどを行えば、チタン白などのカラーリング材の付着固化を抑制することができる。
【0026】
次に、作用について説明する。
押出機17によつて溶融・混練された樹脂は、アダプタ20を通り、クロスヘッド1のハウジング4の流入部3から流入リング溝30に入り、左右両方向に分かれて周方向に流れる。流入リング溝30では、溶融樹脂が円周方向に押し合いながら流動し、適宜に方向を変えて下向きに流れ、溢流リング31を通過すると共に、一部が合流部30aに達する。合流部30aに達した溶融樹脂は、バイパス溝33に効果的に流入し、斜め下方向に導かれながら、一部はバイパス溝33を通過して最上位置のプレッシャーリリーフ溝32に流入し、一部はバイパス溝33から次第に溢れて溢流リング31を通過する。
【0027】
このように、合流部30aに達した溶融樹脂は、そのほとんどがバイパス溝33に直接又は溢流リング31を乗り越えながら流入するが、溶融樹脂は全体として下向きの流れを有するため、バイパス溝33を整然と流れるのではなく、溢流リング31を乗り越えてくる溶融樹脂が上側からバイパス溝33に流入しながら、バイパス溝33から下側の溢流リング31及びプレッシャーリリーフ溝32に向けて溢れ出る。このような複雑な流れを行いながら、合流部30aに達して密着し合つた溶融樹脂が分散されながら流下する。しかも、溢流リング31を通過する溶融樹脂は、薄くフィルム状に伸ばされながら圧力が加わるので、バイパス溝33付近を流れる溶融樹脂が良好に融着する。その結果、パリソン14の筋の発生が、実用上問題のない程度にまで防止される。
【0028】
最上位置の溢流リング31を通過する溶融樹脂は、薄く伸ばされた後に組をなす最上位置のプレッシャーリリーフ溝32に流入し、減圧され、続いて次段の溢流リング31aの外周壁(ランド部131)で薄くフィルム状に伸ばされ、組をなすプレッシャーリリーフ溝32aに流入し、同様の圧力低下状態及び圧力上昇状態とが交互に与えられる。溶融樹脂は、プレッシャーリリーフ溝32内で環状の流れを伴う乱流になるので、合流部30aに起因して生じ、バイパス溝33及び最上位置の溢流リング31の通過によつては消去できなかつた筋が、消滅して行く。溶融樹脂の筋は、第2組以降の溢流リング31a〜31c及びプレッシャーリリーフ溝32a〜32cの通過により、更に消滅して行く。
【0029】
4組の溢流リング31,31a〜31c及びプレッシャーリリーフ溝32,32a〜32cを通過した溶融樹脂は、続いてハウジング4と中子5の円筒状部5a及び円錐状部5bとの間の隙間で整流とされて流下し、ダイ9とコア6との間の隙間で所定の直径及び肉厚が与えられてクロスヘッド1の吐出部36から吐出され、円筒状のパリソン14となる。
【0030】
しかして、合流部30aで合流する際に樹脂が両側から圧着されて生じた筋が、最上位置の溢流リング31の壁に衝突して薄く伸ばされながら、バイパス溝33の放出流に引き込まれて分散し、更に最上位置のプレッシャーリリーフ溝32内に至り、循環流(乱流)となつて混合され、良好に消失する。
【0031】
そして、更に下流に流れた樹脂は、第2〜第4の組をなす溢流リング31a,31b,31c及びプレッシャーリリーフ溝32a,32b,32c内で同様の混合が繰り返されることになる。
【0032】
溢流リング31,31a,31b,31c及びプレッシャーリリーフ溝32,32a,32b,32cの組数は、1組以上であれば良く、樹脂の種類並びに樹脂への添加物の種類及び量により、適宜変更して適正な数が選択される。
【0033】
更に、全ての組の溢流リング31,31a,31b,31c及びプレッシャーリリーフ溝32,32a,32b,32cを通過し、その後、円筒状部5aとの間の隙間からなる流路で整流された樹脂は、中子5の円錐状部5bに対応させて設けられ、ダイ9への入口に位置する強制偏流リング24に至り、多くは強制偏流リング24の円錐状面24cと中子5の円錐状部5bとの間の流路を流れて整流され、一部は強制偏流リング24の凸部24aに接して偏流が加えられ、残存する縦筋が消去される。続いて、強制偏流リング24を通過した溶融樹脂は、図5に示す中子5の円錐状部5bとダイ9の上側の円錐状部9aとの間の流路を流れて整流され、更にコア6の円筒面とダイ9の円筒面9bとの間の流路を流れて整流され、引続き所定の直径及び肉厚が与えられてクロスヘッド1の吐出部36から吐出される。これにより、円筒状のパリソン14となる。
【0034】
【発明の効果】
以上の説明によつて理解されるように、本発明に係る中空成形機のクロスヘッドによれば、次の効果が得られる。
マニホールド溝の下流に隣接させて配置するバイパス溝を有する溢流リング及びプレッシャーリリーフ溝の機能により、中空成形機のクロスヘッドの合流部で発生し易いウエルドラインからなるパリソンの筋が、良好に防止される。これは、特に、マニホールド溝の合流部に達して密着し合つた溶融樹脂が斜めのバイパス溝に流入し、溢れを伴いながら斜めに流下して分散されることにより、効果的に得られる。バイパス溝は、中子の外周壁の半周以下の範囲で形成されているので、マニホールド溝から流下する溶融樹脂の全体に大きな回転流を生じさせることなく、合流部から流下する溶融樹脂を効果的に分散させる。
【0035】
また、クロスヘッドの樹脂流路に樹脂の滞留箇所が存在しない構造となし得るので、溶融樹脂の劣化物やカラーリング材等の添加物の特に合流部付近への蓄積・付着を解消させ、これらの蓄積・付着に起因して生じていた縦筋を消滅させることができる。これにより、縦筋の存在によるパリソンの強度低下を防止することができると共に、パリソンの円周方向の肉厚の均一性が良好になり、成形品の品質が向上する。
【0036】
加えて、中空成形機のクロスヘッドの樹脂流路に樹脂の滞留箇所が存在しない構造とすることにより、樹脂の種類の交換及び色替えを短時間で行うことが可能になる。
【0037】
請求項2に係る発明によれば、バイパス溝の両端が開放されているので、溶融樹脂がバイパス溝を円滑に流動し、樹脂の滞留箇所にならない。加えて、溶融樹脂の全体に回転流を生じさせないこととも相まつて、溢流リングを乗り越えながらバイパス溝に上方から流入する樹脂量が増加するので、溶融樹脂がバイパス溝を単純に乗り越え、或いはバイパス溝に沿つてのみ流下することを抑制しながら、合流部から流下する溶融樹脂を効果的に分散させることができる。その結果、パリソンの筋の発生が、良好に防止される。
【0038】
請求項3に係る発明によれば、縦筋に対応させて凸部を位置させることにより、縦筋を更に効果的に消滅させることが可能となり、品質良好な成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施の形態に係る中空成形機のクロスヘッドを示す断面図。
【図2】同じく中子を一部切開して示す図。
【図3】同じくクロスヘッドの要部を示す断面図。
【図4】同じく流入リング溝、溢流リング及びプレッシャーリリーフ溝の作用説明図。
【図5】同じく強制偏流リングを備えるクロスヘッドの下端部を拡大して示す断面図。
【図6】同じく強制偏流リングを示し、図6(A)は平面図、図6(B)は図6(A)のB−B線断面図。
【図7】従来の中空成形機のクロスヘッドを示す断面図。
【図8】同じく中子を一部切開して示す図。
【符号の説明】
1:クロスヘッド、3:流入部、4:ハウジング、5:中子、6:コア、7:スピンドル、8:ダイホルダ、9:ダイ、14:パリソン、17:押出機、24:強制偏流リング、24a:凸部、24b:フランジ部、30:流入リング溝(マニホールド溝)、30a:合流部、31,31a,31b,31c:溢流リング、32,32a,32b,32c:プレッシャーリリーフ溝、33:バイパス溝、36:吐出部、O−O:中心軸線。
Claims (3)
- ハウジング(4)の内孔に挿入される中子(5)により、上端が流入部(3)に連通する環状の樹脂流路を形成し、該樹脂流路の下端に有する吐出部(36)からパリソン(14)を吐出させる中空成形機のクロスヘッドにおいて、
中子(5)の外周壁に、ハウジング(4)の流入部(3)に連通するマニホールド溝(30)と、マニホールド溝(30)の下流に配置される少なくとも1組の溢流リング(31)及び環状のプレッシャーリリーフ溝(32)とを形成させ、かつ、マニホールド溝(30)に隣接する溢流リング(31)には、側面視で、流入部(3)と反対側の合流部(30a)の位置を通る中心軸線(O−O)を斜めに横切るバイパス溝(33)を半周以下の範囲で設け、流入部(3)からマニホールド溝(30)に流入する溶融樹脂が、溢流リング(31)を乗り越えると共にバイパス溝(33)を通過し、プレッシャーリリーフ溝(32)に流入することを特徴とする中空成形機のクロスヘッド。 - 前記バイパス溝(33)は、上端がマニホールド溝(30)に連通し、下端がプレッシャーリリーフ溝(32)に連通していることを特徴とする請求項1の中空成形機のクロスヘッド。
- 前記吐出部(36)がハウジング(4)の下側に設けるダイ(9)に形成されると共に、ハウジング(4)の下端部に強制偏流リング(24)が配設され、該強制偏流リング(24)が溶融樹脂に偏流を与える凸部(24a)を周方向の一部内面に有することを特徴とする請求項1又は2の中空成形機のクロスヘッド。
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