JP2004254781A - 医療用ペースト混練注入器及び医療用ペースト混練注入器材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一端にノズル部を備え、かつ他端を開口すると共に外側に延在するフランジを備えた有底筒状のシリンダと、
前記シリンダの内部に収容空間を形成し、前後進可能な仕切り具、前記仕切り具を挿通し、前後進可能に、また回転可能に設けられたシャフト部、前記シリンダに装着された前記仕切り具により形成された前記収容空間内に配置可能に、前記シャフト部の一端に設けられた混練部、及び前記シリンダの外部に配置可能に、前記シャフト部の他端に設けられたハンドル部を備えて成るピストンと、
前記仕切り具を前記シリンダの他端側で前記シリンダに固定するストッパとを備えて成る医療用ペースト混練注入器において、
前記ストッパは、前記フランジに取り付けるフランジ装着部と、前記仕切り具を前記シリンダ内で前後進不能にする仕切り具係止部とを備えて成ることを特徴とする医療用ペースト混練注入器及び医療用ペースト混練注入器材。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、医療用ペースト混練注入器及び医療用ペースト混練注入器材に関し、更に詳しくは、例えば医科又は歯科の治療に使用される医療用ペースト例えば骨ペーストを調合することができるとともに、調合した前記医療用ペーストを注入することのできる医療用ペースト混練注入器及びその医療用ペースト混練注入器内に医療用粉体を、又はこの医療用粉体と液体とを収容して成る医療用ペースト混練注入器材に関する。
【0002】
【従来技術】
この種の医療用ペーストはリン酸カルシウム系粉体を主成分とするペーストであり、この医療用ペーストは生体骨や歯の組織を構成する無機成分と同様のハイドロキシアパタイトを形成して硬化するので、生体親和性が高いという特長があり、歯科や整形や形成等の医療分野でよく使われている。
【0003】
この医療用ペーストは、リン酸カルシウム系粉末と液体例えば硬化液とを特定の器具例えば乳鉢に入れて混練し、その後に得られた医療用ペーストを注射器等に移し替え、この医療用ペーストを注射器で患部に塗布等している。したがって、この混練には熟練を要したり、注射器に充填する作業が煩雑であったり、あるいは、開放容器内で操作を行うために、混練中や注射器に充填する際に異物が混入するおそれがあった。
【0004】
このような不都合を解消するものとして、特許文献1において、リン酸カルシウム系セメント用混練器具が提案されている。
【0005】
このリン酸カルシウム系セメント用混練器具は、「円筒部11と該円筒部の一端側に設けられるノズル部12とを具備するシリンダ1と、該円筒部内を摺動可能に設けられる仕切り具2と、該仕切り具を挿通し上下移動並びに回転可能に設けられるシャフト部31、該シャフト部の一端に設けられる混練部32、及び該シャフト部の他端に設けられるハンドル部34とを具備するピストン3と、該シリンダの該ノズル部の先端に設けられる蓋4と、該仕切り具を該シリンダの他端側に固定するストッパ5と、を備えることを特徴とする」。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−287208号公報(請求項1、段落番号[0004]以降、図1〜図7)
このようなリン酸カルシウム系セメント用混練器具によれば、シリンダのノズルに蓋をし、ノズル部を下に向け、シリンダの開口部を上にした状態で所定量のリン酸カルシウム系セメントの粉体と硬化液とをシリンダ内部に入れる。ついで、ピストンを混練部がシリンダ内になるように挿入し、仕切り具をストッパでシリンダの端部側で止める。
【0007】
そして、ハンドルを一定方向例えば時計回りに回転させて混練部をノズル側近くまで移動させたり、ハンドルを前記とは逆方向例えば反時計回りに回転させて混練部を仕切り具近くにまで移動させたりすることにより、リン酸カルシウム系セメントの粉末と硬化液とを均一になるように充分に混練する。この混練操作は前記特許文献1に詳述されている。
【0008】
混練が終了したところで、混練部を仕切り具まで戻した後、ストッパと蓋とを順次に外してリン酸カルシウム系セメント用混練器具を注射器として使用する。
【0009】
これにより、簡単に混練ができ、異物の混入のおそれもなく、更には注射器に充填する必要もなく、直ぐに、患部等に塗布することができる、とされている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の医療用ペースト混練注入器においては、混練作業を開始する前に、仕切り具を少なくとも2つのストッパでシリンダの端部側に止める必要があり、また、混練が終了したところで、混練部を仕切り具まで戻した後に、少なくとも2つのストッパを外すなどの作業が必要となり、前記作業が困難で煩雑であった。例えば、前記仕切り具をシリンダの端部側でストッパにより固定するには、先ず、仕切り具に設けられたストッパ用の雌ネジ部の開口とシリンダに設けられたところの、ストッパを挿通するための挿通孔とが一致するように位置合わせをしなければならないところ、この位置合わせ作業がかなり困難である。前記雌ネジ部の開口と前記挿通孔とが少しでもずれているとストッパの螺合による取り付けが円滑に行かず、ストッパの装着に何度かの失敗を重ねてしまう。また、わざわざ2つのストッパを取り付けるのも煩雑である。
【0011】
この発明は、上述した欠点を解消し、ストッパにより仕切り具をシリンダの他端開口部側で簡単に固定状態とし、また固定状態を簡単に解除することのできる医療用ペースト混練注入器及び医療用ペースト混練注入器材を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決しようとする手段】
前記課題を解決しようとする手段として、
請求項1は、一端にノズル部を備え、かつ他端を開口すると共に外側に延在するフランジを備えた有底筒状のシリンダと、
前記シリンダの内部に収容空間を形成し、前後進可能な仕切り具、前記仕切り具を挿通し、前後進可能に、また回転可能に設けられたシャフト部、前記シリンダに装着された前記仕切り具により形成された前記収容空間内に配置可能に、前記シャフト部の一端に設けられた混練部、及び前記シリンダの外部に配置可能に、前記シャフト部の他端に設けられたハンドル部を備えて成るピストンと、
前記仕切り具を前記シリンダの他端側で前記シリンダに固定するストッパとを備えて成る医療用ペースト混練注入器において、
前記ストッパは、前記フランジに取り付けるフランジ装着部と、前記仕切り具を前記シリンダ内で前後進不能にする仕切り具係止部とを備えて成ることを特徴とする医療用ペースト混練注入器であり、
請求項10は、前記ストッパが、前記仕切り具を前記シリンダ内で回転不能にする第2仕切り具係止部を備えて成る前記請求項1に記載の医療用ペースト混練注入器であり、
請求項3は、前記仕切り具が、その軸線方向に直交する平面とこれに相対向する平面とで形成されて成る溝を備え、前記ストッパにおける仕切り具係止部が、前記溝に嵌め込まれる装入板状部であることを特徴とする前記請求項1又は2に記載の医療用ペースト混練注入器であり、
請求項4は、前記仕切り具が前記溝内に突起を備え、前記ストッパにおける第2仕切り具係止部が前記突起と係合する係合部を備えて成る前記請求項2又は3に記載の医療用ペースト混練注入器であり、
請求項5は、前記ストッパは、一端に形成されたフランジ装着部と他端に形成された仕切り具係止部とを有する板状体を有して成ることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の医療用ペースト混練注入器であり、
請求項6は、前記ストッパにおけるフランジ装着部は、フランジを挟み込む一対の相対向面を備えて形成されたフランジ装入溝を有して成る前記請求項1〜5の何れか一項に記載の医療用ペースト混練注入器であり、
請求項7は、前記請求項1〜6の何れか一項に記載の医療用ペースト混練注入器と、前記シリンダの内部に収容された医療ペーストの粉末成分とを有してなることを特徴とする医療用ペースト混練注入器材であり、
請求項8は、前記請求項1〜6の何れか一項に記載の医療用ペースト混練注入器と、前記シリンダの内部に収容された医療ペーストの粉末成分及び液体とを有してなることを特徴とする医療用ペースト混練注入器材であり、
請求項9は、前記医療用ペーストの粉末成分がリン酸カルシウム系粉体である前記請求項7又は8に記載の医療用ペースト混練注入器材である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1において、この発明の実施の形態に係る医療用ペースト混練注入器1は、シリンダ3と、ピストン5と、キャップ7と、ストッパ9とを備える。
【0015】
前記シリンダ3は、所定長さの円筒体30と、前記円筒体30の一端側に設けられたノズル部31と、前記円筒体30の他端開口部に設けられたフランジ32とを備える。このシリンダ3は、他端を開口し、ノズル部31を底とすることにより全体として有底筒状体をなす。
【0016】
前記フランジ32は、図1及び図2に示すように、前記円筒体30の他端開口部側において、前記円筒体30の軸線方向に直交する方向に延在し、かつ互いに平行に形成された一対の直行辺32aと、前記一方の直行辺32aの端部から他方の直行辺32aの端部へと湾曲して連絡する湾曲辺32bとで区画されるところの、厚みの薄い板状部材である。このフランジ32の前記ノズル部31とは反対側の面は、円筒体30の他端開口部の端面と面一に形成される。このフランジ32は、前記円筒体30と一体に形成されてなる。つまり、このフランジ32と円筒体30とを有してなるシリンダ3は、一体成形加工により形成することができる。
【0017】
前記シリンダ3の本体でもある円筒体30の、前記フランジ32とは反対側の端部には、前記円筒体30の内容物を排出し、またこの円筒体30内に内容物を導入するノズル部31が突出して設けられる。このノズル部31の突出外周部には、キャップ7を装着するための装着部材例えば雄ネジ(図示せず。)が設けてあり、この雄ネジに螺合することによりこのノズル部31の突出外周部にキャップ7が装着される。このキャップ7は、前記ノズル部31に装着されると、ノズル部31における開口部を閉鎖する機能を発揮する。
【0018】
前記ピストン5は、仕切り具51と、シャフト部52と、混練部53と、ハンドル部54とを有して形成される。
【0019】
前記仕切り具51は、シール部材55(図1及び図6参照)と、これを装着した仕切り具本体56(図1及び図5参照)とを組み合わせて形成される。
【0020】
図5に示されるように、前記仕切り具本体56は、管体56aと、環状第1鍔体56bと、環状第2鍔体56cと、環状第3鍔体56dと、補強部材56eと、位置決め補強部材56fと、係合凸部56gとを有して、例えば合成樹脂を一体成形することにより形成されて成る。
【0021】
前記管体56aは、前記シリンダ3の円筒体30の内径よりも小さな外径を有し、シャフト部52を装入配置することのできる内径を有するシャフト部装入用貫通孔56hを有し、そのシャフト部装入用貫通孔56hの開口部が管体56aの両端に開口されて成る。前記シャフト部装入用貫通孔56hの内周面には、ネジが形成されて成る。
【0022】
前記環状第1鍔体56bは、この管体56aの一端開口部に形成され、この管体56aの軸線に直交する方向に延在し、前記円筒体30の内径よりも僅かに小さな直径を有するように環状かつ板状に形成されて成る。
【0023】
前記環状第2鍔体56cは、前記環状第1鍔体56bに対して所定の間隔を有すると共にこの管体56aの軸線方向に直交する方向に延在し、前記環状第1鍔体56bの直径と実質的に同じ直径を有するように環状かつ板状に形成されて成る。
【0024】
前記環状第3鍔体56dは、この管体56aの他端寄りの位置に形成され、この管体56aの軸線に直交する方向に延在し、前記環状第1鍔体56b及び環状第2鍔体56cの直径と実質的に同じ直径を有するように環状かつ板状に形成されて成る。
【0025】
補強部材56eは、前記環状第2鍔体56cと前記環状第3鍔体56dとの間に、しかもこの環状第2鍔体56cと前記環状第3鍔体56dとを連結するように位置し、前記管体56aの周面から管体56aの軸線方向に直交する方向における端縁部までの長さが前記環状第2鍔体56c及び前記環状第3鍔体56dにおける半径方向長さと実質的に同じに設定されてなり、前記管体56aの軸線方向からみると互いに直交する方向に十文字状に延在する4枚の板体で形成される。この補強部材56eは、互いに平行な位置関係をもって形成されてなる前記環状第2鍔体56c及び前記環状第3鍔体56dの位置関係を維持するように前記環状第2鍔体56c及び環状第3鍔体56dを補強すると共に、仕切り具本体56の全体的強度を確保し、またこの仕切り具本体56が円筒体30の内部を移動する際に仕切り具本体56の円滑な移動を確保する。
【0026】
前記位置決め補強部材56fは、前記環状第1鍔体56bと環状第2鍔体56cとの間に位置し、この環状第1鍔体56bと環状第2鍔体56cとを連結するように形成され、かつ互いに平行な位置関係を有しつつ、前記管体56aの周面に立設され、前記管体56aの周面から管体56aの軸線方向に直交する方向における端縁部までの長さが前記環状第1鍔体56b及び前記環状第2鍔体56cにおける半径方向長さよりも大きくならないように適宜の長さに設定されてなり、前記管体56aにおけるシャフト部装入用貫通孔56hの開口部を形作る円の接線方向に延在する一対の平行なガイド板体56i(図2参照)と、前記環状第1鍔体56bと環状第2鍔体56cとの間に位置し、この環状第1鍔体56bと環状第2鍔体56cとを連結するように形成され、前記ガイド板体56iとは平行かつ反対方向に延在し、前記管体56aの周面から管体56aの軸線方向に直交する方向における端縁部までの長さが前記環状第1鍔体56b及び前記環状第2鍔体56cにおける半径方向長さよりも大きくならないように適宜の長さに設定されてなり、前記ストッパ9を前記フランジ32に装着すると前記仕切り具51を円筒体30内で軸線を中心にして回動不能に仕切り具51の動きを規制する規制板体56jとを有する。
【0027】
前記係合凸部56gは、前記管体56aの環状第1鍔体56bとは反対側の端部に形成され、管体56aの外径よりも大きな外径を有し、前記管体56aの端部から軸線方向に突出するように環状に形成されて成る。
【0028】
一方、シール部材55は、柔軟な弾性部材で一体成形されて成り、図1及び図6に示すように、前記円筒体30の内径よりやや小さいが前記環状第3鍔体56dの直径と実質的に同じ外径に形成され、かつ前記係合凸部56gの軸線方向長さよりも長く形成されて成る円柱体55aを備える。この円柱体55aは、その中心に、軸線方向に前記シャフト部52を貫通させるように開設された貫通孔55bと、前記円柱体55aの内部に前記円柱体55aの一方の側から前記係合凸部56gが収容されるように形成された係合凹部55cと、前記円柱体55aの外周における、その円柱体55aの一端側及び他端側それぞれに設けられたところの、前記円筒体30の内周面を摺動し、かつ前記シール部材55と前記円筒体30の内周面とをシールする外側シール部である環状の外周突起55dと、前記円柱体55aにおける他端側に開口する貫通孔55bの内周面に設けられたところの、前記シャフト部52に摺動し、前記シャフト部52の外周面と前記貫通孔55bの内周面とをシールする内側シール部である環状の内周突起55eとを有して成る。ここで、外周突起55dの外径は、円筒体30の内径と同じか、円筒体30の内径よりも大きく設計される。円筒体30の内径よりも大きく外周突起55dの外径が決定される場合は、シリンダ3内に仕切り具51を装填したときに、外周突起55dが弾性的に変形した状態となって円筒体30の内周面に当接する。
【0029】
前記係合凹部55cは、前記円柱体55aの一端からその内部に向けて形成され、前記係合凸部56gを収容する空間である。この係合凹部55cは、前記円柱体55aの一方の端部側から挿入された管体56aにおける前記係合凸部56gと環状第3鍔体56dとで挟まれる管体56a周面部分が嵌り合う直径に、かつ前記管体56aにおける環状第3鍔体56dから係合凸部56gまでの軸線方向長さと同じに形成されて成る挿通孔部55fと、前記係合凸部56gの外部形状に倣う内部形状を有し、かつ前記挿通孔部55f及び貫通孔55bに連通し、前記係合凸部56gを収容することができるように形成された環状穴部55gとを備える。挿通孔部55fには、前記円柱体55aの一方の側に仕切り具本体56の係合凸部56gを挿入しやすくするためのテーパ55hが形成されている。
【0030】
前記仕切り具本体56とシール部材55とを、前記係合凸部56gを前記係合凹部55cに嵌め込むことにより一体化されて、仕切り具51が形成される。
【0031】
前記シャフト部52は、その外周面に雄ネジを形成して成る。図1にも示されるように、シリンダ3内のこのシャフト部52の先端部には、混練部53が取り付けられ、シャフト部52の後端部にはハンドル部54が取り付けられる。ハンドル部54は、前記シャフト部52に回転力を与える機能を有し、図1に示すように、例えば略円形板体に形成されて成る。前記混練部53は、このシャフト部52の軸線方向から見ると、軸線を中心にして外側に十文字状に延在する混練羽根(図示せず。)を備える。
【0032】
なお、ピストン5は、前記シャフト部52とその先端にある混練部53とを予め一体に形成してなる混練部付きシャフト部における前記シャフト部を仕切り具51に貫通装着し、仕切り具51の後端面から突出するシャフト部の先端部にハンドル部54を取り付けることにより、組み立てることもできる。
【0033】
なお、このピストン5の他の例として、前記シャフト部52とその後端にあるハンドル部54とを予め一体に形成して成るハンドル部付きシャフト部における前記シャフト部を仕切り具51に貫通装着し、仕切り具51の先端面から突出するシャフト部の先端部に混練部53aを取り付けることにより、組み立てることもできる。
【0034】
前記ストッパ9は、合成樹脂例えばポリカーボネート、並びにポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂で形成される。このストッパ9は、前記仕切り具51を、前記円筒体30の他端開口部で、回転不能及び前後進不能に、固定する機能を有する。
【0035】
このストッパ9は、図3及び図4に示されるように、ハンドル部54に向かう第1基板91、円筒体30に向かう第2基板92、及びこの第1基板91及び第2基板92を連結する縁壁体93とを有する。
【0036】
第1基板91は、基本的には、前記フランジ32の外形に倣う形状を有する板状体である。この第1基板91は、フランジ32における一対の直行辺32a同士の間隔よりも大きな間隔を有するように互いに平行に形成された一対の平行辺94と、この一対の平行辺94における一方の端部に形成された滑り止め凸部94aから他方の平行辺94の端部に形成された滑り止め凸部94aへとフランジ32における湾曲辺32bと同じ湾曲形状をもって連なる湾曲縁辺95と、この湾曲縁辺95に対向する側に形成された切り欠き装入部96とを備えて、板状に形成されて成る。なお、前記滑り止め凸部94aは、ストッパ9を指でつまんで外すときの滑り止めの作用を発揮する。
【0037】
前記切り欠き装入部96は、図2及び図3に示されるように、前記第1基板91における一対の平行辺94と平行に、かつ前記一対のガイド板体56iを挟み込むように形成されて成る一対の平行直線辺97と、この一対の平行直線辺97に連なって前記管体56aの外周面に倣う湾曲内周辺98と、この湾曲内周辺98に、前記規制板体56jを嵌め込むことができるように形成された規制溝99とを備えて成る。
【0038】
前記第2基板92は、フランジ32における直行辺32aと直行辺32aとの間隔よりも僅かに大きな間隔を有するように互いに平行に形成された一対の平行辺94’と、この一対の平行辺94’における一方の平行辺94’の端部から他方の平行辺94’の端部へとフランジ32における湾曲辺と同じ湾曲形状をもって連なる湾曲縁辺95’と、この湾曲縁辺95’に対向する側に形成され、前記円筒体30の胴を装入することのできる円筒体装入部100とを備えたところの板状部を備えて形成されて成る。前記円筒体装入部100の縁には、この円筒体30の胴部を半周程回り込むように湾曲板状に形成された円筒体固定部101が、前記板状部から直角に立ち上がるように、形成されて成る。
【0039】
前記縁壁体93は、前記第1基板91の平行辺94と前記第2基板92の平行辺94’とを結合する直線状縁壁部93aと、前記第1基板91の湾曲縁辺95と前記第2基板92の湾曲縁辺95’とを結合する湾曲状縁壁部93bとを備える。この縁壁体93の高さ、つまり第1基板91と第2基板92との間隔は、前記フランジより僅かに厚く設計される。第1基板91とこの縁壁体93と第2基板92とで、フランジに装着されるフランジ装着部103が形成される。また、前記第1基板91における平行辺94と切り欠き装入部96における平行直線辺97とで挟まれた板状部分は、このストッパ9をフランジ32に装着すると、仕切り具51を円筒体30内で前後進不能に規制する仕切り具係止部102である。
【0040】
以上構成の医療用ペースト混練注入器は次のように作用する。
【0041】
まず、シリンダ3のノズル部31にキャップ7を装着する。ついで、キャップ7を下側にして、シリンダ3の円筒体30にリン酸カルシウム系粉体と硬化液とを所定量入れる。
【0042】
ついで、このピストン5の仕切り具52を円筒体30の他端側にある開口部から円筒体30の内部に少し入れ、フランジ32の平面と仕切り具本体56における環状第2鍔体56cの、前記環状第1鍔体56bに向かう平面とを面一にするとともに、規制板体56jの長手方向をフランジ32の直行辺32aに平行に位置するように、仕切り具52の位置決めを行う。
【0043】
次いで、ストッパ9をフランジ32に装着する。すなわち、第1基板91をハンドル部54に向けてフランジ装着部103にフランジ32の湾曲辺32bが装入するように、ストッパ9を押し込む。ストッパ9を押し込むと、切り欠き装入部96における平行直線辺97が仕切り具本体56におけるガイド板体56iに当接する。このとき、一対のガイド板体56iの延在方向が前記平行直線辺97の延在方向と完全に一致していなくても、更にストッパ9を押し進めると、ストッパ9の進行により前記一対のガイド板体56iが強制的に前記平行直線辺97の延在方向に沿わせられ、つまり仕切り具51がその軸線を中心にして僅かに回転し、前記ガイド板体56iの延在方向と前記平行直線辺97の延在方向とが一致する。
【0044】
第2基板92にあっては、ストッパ9をフランジ32に向けて押し進めると、円筒体30の胴に円筒体挿入部100が嵌り込む。これによって、ストッパ9の装着が確固としたものになる。
【0045】
更にストッパ9を押し進めると、ガイド板体56iに前記平行直線辺97が案内されてフランジ32の湾曲辺32bがストッパ9におけるフランジ装着部103に向かっていく。更にストッパ9を押し進めると、フランジ32の湾曲辺32bが、フランジ装着部103における、第1基板91と第2基板92とに挟まれて成る溝の中に入り込む。フランジ32の湾曲辺32bが前記フランジ装着部103に装着された状態にあっては、規制溝99の中に規制板材56jが嵌り込んでおり、また、第1基板91における平行直線辺97と平行辺94との間に位置する仕切り具係止部102が、環状第1鍔体56bと環状第2鍔体56cとの間隙に挿入されるとともに、仕切り具係止部102が、環状第1鍔対56bの平面と環状第2鍔体56cの平面とフランジ32の平面とに当接している。
【0046】
これによって、仕切り具51は、シリンダ3における円筒体30内で円筒体30の軸線を中心にして回転することができなくなり、かつ、円筒体30の軸線方向に沿って仕切り具51は前後進ができなくなる。
【0047】
つまり、仕切り具51が円筒体30の開口部でその位置を固定した状態となる。この状態で、ハンドル部54を一定方向に回転させると、シャフト部52の雄ネジと管体56aにおけるシャフト部挿入用貫通孔56hの内周面に形成された雌ネジとが螺合しているので、混練部53がノズル部31に向かって前進することになる。
【0048】
そして、ハンドル部54を一定方向例えば時計回りに回転させて混練部53をノズル部31近くまで移動させたり、ハンドル部54を一定方向例えば反時計回りに回転させて混練部53を仕切り具51の近くにまで移動させたりして、これらを繰り返すことにより、水硬性リン酸カルシウム系粉末と硬化液とを混練する。
【0049】
混練が終了したところで、混練部53を仕切り具51まで戻した後、ストッパ9をフランジ32から取り外し、かつキャップ7をノズル部31から取り外して医療用ペースト混練注入器1を注射器として使用する。
【0050】
このように形成された医療用ペースト混練注入器1のシリンダ3の内部には、用途に応じて各種の医療用ペーストの粉末成分を収容することができる。つまり、前記シリンダ3の内部に医療用ペーストの粉末成分を収容しておくことにより、この発明に係る医療用ペースト混練注入器材が構成される。シリンダ内に収容される医療用ペーストの粉末成分が液体と混練されるべきものであれば、シリンダ内に予め医療用ペーストの粉末成分と液体とを分別状態、混合可能な状態及び混合状態の何れかの状態で収容しておくこともできる。この何れかの状態で医療用ペーストの粉末成分と液体とをシリンダ内に収容乃至装填しておくことにより、この発明に係る医療用ペースト混練注入器材が構成される。
【0051】
シリンダ内に収容される医療用ペーストの粉末成分として、水硬性のリン酸カルシウム系粉体を好適例として挙げることができる。水硬性のリン酸カルシウム系粉体は液体例えば硬化液により、硬化していく。この発明における液体は、医療用ペーストを硬化させる機能を有する硬化液とし、又は医療用ペーストの粉末成分によっては単にペーストを形成する機能を有する混練液とすることもできる。
【0052】
以上において、この発明の一実施態様について説明をしたが、この発明は前記実施態様に限定されるものではなく、この発明の要旨の範囲内において様々に設計変更をすることができる。
【0053】
前記実施態様においては、シリンダ3を形成する円筒体30は有底筒状の円筒体であるが、この発明においては、シリンダ3は筒体である限り様々の形状を採用することができ、例えば軸線方向に直交する断面が方形である角筒体、軸線方向に直交する断面形状が楕円形である楕円筒体であっても良い。
【0054】
この発明におけるストッパ9は、フランジに装着されることができること、フランジに装着した状態において、仕切り具の軸線を中心にして前記仕切り具を回転不能にするとともに前記仕切り具をその軸線に沿った方向で前後進不能にすることができる機能を有する限り、様々の構成を採用することができる。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したようにこの発明によると、ワンタッチでストッパをフランジに装着することができるので、ストッパの装着操作が容易であり、ストッパのワンタッチ装着だけで仕切り具のシリンダ内での回転阻止及び前後進阻止を実現することができる医療用ペースト混練注入器及び医療用ペースト混練基材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の実施の形態に係る医療用ペースト混練注入器を示す構成図である。
【図2】図2は、この発明の実施の形態に係る医療用ペースト混練注入器の断面図であって、図1のA−A線に沿って示す断面図である。
【図3】図3は、この発明の実施の形態に係る医療用ペースト混練注入器において、ストッパを示す平面図である。
【図4】図4は、この発明の実施の形態に係る医療用ペースト混練注入器において、ストッパを示す断面図である。
【図5】図5は、この発明の実施の形態に係る医療用ペースト混練注入器において、仕切り具本体を示す断面図である。
【図6】図6は、この発明の実施の形態に係る医療用ペースト混練注入器において、シール部材を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・医療用ペースト混練注入器、3・・・シリンダ、5・・・ピストン、7・・・キャップ、9・・・ストッパ、
30・・・円筒体、31・・・ノズル部、
32・・・フランジ、
32a・・・直行辺、32b・・・湾曲辺、
51・・・仕切り具、52・・・シャフト部、53・・・混練部、
54・・・ハンドル部、
55・・・シール部材、
55a・・・円柱体、55b・・・貫通孔、55c・・・係合凹部、55d・・・外周突起、55e・・・内周突起、55f・・・挿入孔部、55g・・・環状穴部、55h・・・テーパ、
56・・・仕切り具本体、
56a・・・管体、56b・・・環状第1鍔体、56c・・・環状第2鍔体、
56d・・・環状第3鍔体、56e・・・補強部材、
56f・・・位置決め補強部材、56g・・・係合凸部、56h・・・シャフト部装入用貫通孔、56i・・・ガイド板体、56j・・・規制板体、
92・・・第1基板、92・・・第2基板、93・・・縁壁体、
94,94’・・・平行辺、95,95’・・・湾曲縁辺、96・・・切り欠き装入部、97・・・平行直線辺、98・・・湾曲内周辺、99・・・規制溝、
100・・・円筒体装入部、101・・・円筒体固定部、102・・・仕切り具係止部、103・・・フランジ装着部
Claims (9)
- 一端にノズル部を備え、かつ他端を開口すると共に外側に延在するフランジを備えた有底筒状のシリンダと、
前記シリンダの内部に収容空間を形成し、前後進可能な仕切り具、前記仕切り具を挿通し、前後進可能に、また回転可能に設けられたシャフト部、前記シリンダに装着された前記仕切り具により形成された前記収容空間内に配置可能に、前記シャフト部の一端に設けられた混練部、及び前記シリンダの外部に配置可能に、前記シャフト部の他端に設けられたハンドル部を備えて成るピストンと、
前記仕切り具を前記シリンダの他端側で前記シリンダに固定するストッパとを備えて成る医療用ペースト混練注入器において、
前記ストッパは、前記フランジに取り付けるフランジ装着部と、前記仕切り具を前記シリンダ内で前後進不能にする仕切り具係止部とを備えて成ることを特徴とする医療用ペースト混練注入器。 - 前記ストッパは、前記仕切り具を前記シリンダ内で回転不能にする第2仕切り具係止部を備えて成る前記請求項1に記載の医療用ペースト混練注入器。
- 前記仕切り具が、その軸線方向に直交する平面とこれに相対向する平面とで形成されて成る溝を備え、前記ストッパにおける仕切り具係止部が、前記溝に嵌め込まれる装入板状部であることを特徴とする前記請求項1又は2に記載の医療用ペースト混練注入器。
- 前記仕切り具が前記溝内に突起を備え、前記ストッパにおける第2仕切り具係止部が前記突起と係合する係合部を備えて成る前記請求項2又は3に記載の医療用ペースト混練注入器。
- 前記ストッパは、一端に形成されたフランジ装着部と他端に形成された仕切り具係止部とを有する板状体を有して成ることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の医療用ペースト混練注入器。
- 前記ストッパにおけるフランジ装着部は、フランジを挟み込む一対の相対向面を備えて形成されたフランジ装入溝を有して成る前記請求項1〜5の何れか一項に記載の医療用ペースト混練注入器。
- 前記請求項1〜6の何れか一項に記載の医療用ペースト混練注入器と、前記シリンダの内部に収容された医療ペーストの粉末成分とを有してなることを特徴とする医療用ペースト混練注入器材。
- 前記請求項1〜6の何れか一項に記載の医療用ペースト混練注入器と、前記シリンダの内部に収容された医療ペーストの粉末成分及び液体とを有してなることを特徴とする医療用ペースト混練注入器材。
- 前記医療用ペーストの粉末成分がリン酸カルシウム系粉体である前記請求項7又は8に記載の医療用ペースト混練注入器材。
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