JP2004254608A - 細胞培養担体 - Google Patents
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Abstract
【課題】細胞を長期間培養することができ、培養後の強度にも優れた細胞培養担体を提供する。
【解決手段】キトサンを含むゲル層と該ゲル層に隣接して設けられた無機層(例えばステンレス層又はアルミニウム層などの金属及び/又は金属酸化物を含む層など)とを含み、好ましくは該無機層が直径10μm以上の穴を少なくとも1つ有する細胞培養担体。
【解決手段】キトサンを含むゲル層と該ゲル層に隣接して設けられた無機層(例えばステンレス層又はアルミニウム層などの金属及び/又は金属酸化物を含む層など)とを含み、好ましくは該無機層が直径10μm以上の穴を少なくとも1つ有する細胞培養担体。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、細胞培養の技術に関し、より具体的には、細胞培養担体及び該細胞培養担体を利用した細胞の培養方法、並びに該培養方法により得られる細胞培養物に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子含水ゲルは、生体に類似した構造を持ち、温度、酸性・アルカリ性等の外部条件によって膨張、収縮する性質を有するため、人工筋肉などの人工臓器・組織への応用、内部に薬剤を封入して放出量をコントロールする医療分野への応用のみならず、各種サイトカイン等を含むゲルとして細胞を培養する際に細胞成長の足場としての利用も試みられている。
【0003】
細胞は生体内で組織を形成する際に極性を持って配列することが知られている。例えば、肝細胞は血管内皮細胞側から血液成分を吸収し、逆側から胆汁酸などの代謝物を排泄する。この胆汁酸は細胞毒性が強いため、通常の培養用シャーレに細胞を付着させて培養したのでは、長期間の安定な培養が難しい問題がある。また、細胞に対して一方向から刺激を与えることで細胞の極性が発現することも知られているが、通常の培養用シャーレに細胞を付着させて培養したのでは刺激を接着側から与えられない問題がある。
【0004】
このような問題を解決し、細胞の両面を違った培地で培養する細胞培養用材料として、株式会社高研から細胞培養用透過性コラーゲン膜MEN−01が発売されている。しかしながら、この製品ではコラーゲン膜の培地による膨潤が大きく、培養中に大きく歪み培養状態を観察するのが困難であった。また、多孔質膜と該多孔質膜上にアルギン酸ゲル層と細胞外マトリックス成分ゲル層又は細胞外マトリックス成分スポンジ層とを重層化した細胞培養担体が提案されているが(特許文献1)、ミクロフィルター層を有しているため細胞の生育状況を光学顕微鏡で確認することができなかった。さらに、キトサンとアニオン性セルロース誘導体の高分子錯体が細胞培養担体として提案されているが(特許文献2)、キトサンとアニオン性セルロース誘導体とが混合直後にゲル化するため、平滑な表面の細胞培養担体を得ることが困難であった。
【0005】
さらなる問題として、このようなゲルは培地に浸漬することにより膨潤し強度が落ちるため細胞培養物を培地中から取り出すことが困難であること、および微小な空間のみにゲルを取り付けることができないため細胞を細かな空間に区切って培養する細胞チップの構築にも不向きであった。
【特許文献1】
特開2001−120267号公報
【特許文献2】
特開平6−277038号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段】
本発明の課題は、上記の問題を解決した細胞培養担体を提供することにある。より具体的には、細胞の両面を異なる培地として培養でき、かつ細胞の生育状況を光学顕微鏡で簡便に観察できる細胞培養用材料を提供することが本発明の課題であり、さらに、上記の特徴を有する細胞培養担体であって、培養後の強度に優れた細胞培養担体を提供することが本発明の課題である。本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意研究を行い、下記の手段により上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、キトサンを含むゲル層と該ゲル層に隣接して設けられた無機層とを含む細胞培養担体を提供するものである。本発明の好ましい態様によれば、無機層は金属及び/又は金属酸化物を含む層であり、無機微粒子を含有する層として形成されていてもよい。好ましい無機層としてステンレス層又はアルミニウム層などを例示することができる。また、さらに好ましい態様によれば、該無機層が直径10μm以上の穴を少なくとも1つ、好ましくは2以上有する細胞培養担体が提供される。
【0008】
さらに好ましい態様によれば、細胞接着性成分を含むゲル層が少なくとも1つ重層化された上記の細胞培養担体;細胞接着成分がコラーゲン及びアルギン酸からなる群から選ばれる上記の細胞培養担体;コラーゲン層及びアルギン酸層からなる群から選ばれるゲル層が少なくとも1つ重層化された上記の細胞培養担体;コラーゲン層及びアルギン酸層が交互に重層化された上記の細胞培養担体;さらに1以上の重層化されたキトサン層を含む上記の細胞培養担体が提供される。
【0009】
また、別の観点からは、上記の細胞培養担体を用いて細胞を培養する工程を含む細胞培養方法、及び上記の方法で得られた細胞培養物が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の細胞培養担体は、キトサンを含むゲル層と該ゲル層に隣接して設けられた無機層とを含むことを特徴としている。「細胞培養担体」とは、細胞を培養する際の担体又は支持体となり得るものを意味する。本明細書において「細胞培養担体」とは、細胞を培養する際の担体又は支持体となり得るものを意味する。例えば、多孔質膜上にアルギン酸ゲル層と細胞接着性成分ゲル層として細胞外マトリックス成分ゲル層とを重層化させた細胞培養担体が特開2001−120267号公報に記載されているが、本発明の細胞培養担体は上記公報に記載された細胞培養担体と同様な技術分野での培養に用いることができる。
【0011】
キトサンを含むゲルとはキトサンゲルを主成分として含むゲルである。キトサンゲルとしては、細胞培養を行う中性域で溶解しないゲルを用いることができる。例えば、キトサンの分子中のアミノ基を中和することにより細胞培養を行う中性域で溶解しないゲルを形成したもの、キトサンとアニオン残基を有する有機高分子化合物とが塩を形成してゲルを形成したもの、架橋剤で架橋することによりゲルを形成したものなどが利用できる。アニオン残基を有する有機高分子化合物としては、例えば、ポリアスパラギン酸、アルギン酸、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ポリスチレンスルホン酸などの天然又は合成高分子化合物を用いることができる。架橋剤としては、例えば、アミノ基やヒドロキシル基と反応する基を複数有するグルタルアルデヒド、ジビニルスルホン、ハロゲン化トリアジンなどや、予め活性エステル化した複数のカルボン酸基を有する化合物などが挙げられる。
【0012】
キトサン(β−ポリ−D−グルコサミン)は、キチン(β−ポリ−N−アセチル−D−グルコサミン)を濃アルカリ溶液と加熱するか又はカリウム融解した後、脱アセチル化することにより得られる。本発明の細胞培養担体の製造には、任意のキトサンを用いることができる。例えば、膜強度の大きな膜を形成させる観点からは、脱アセチル化度が60%以上100%以下で、かつ1質量%酢酸水溶液に0.5質量%となるように溶解した場合に溶液粘度が10cP以上10000cP以下になるキトサンが好ましい。さらに好ましいキトサンは、脱アセチル化度が70%以上100%以下、粘度が40cP以上5000cP以下のものである。
【0013】
キトサンのゲル化は、常法に従って行なうことができる。例えば、キトサンの酸性溶液を基板に塗布して乾燥した後、中和処理することによりゲル化させることができる。より具体的には、酢酸水溶液にキトサンを溶解して調製した塗布液を所望の厚さで基板表面上に塗布して乾燥し、得られた膜を水酸化ナトリウム水溶液中又は中性付近のpHを有する緩衝液中に浸漬することでキトサンが中和され、キトサンゲルが得られる。キトサンを含むゲル層の乾燥時の膜厚は特に限定されないが、例えば1〜20000μmであることが好ましく、5〜500μmであることがさらに好ましい。本明細書において、ゲル層の乾燥時の膜厚とは、通常、ゲルを十分に乾燥した状態、例えばゲルに含まれる水分がゲル全重量に対して100質量%未満である場合に測定したゲルの厚さのことである。
【0014】
キトサンを含むゲルは化学結合、イオン結合で架橋されていてもよい。化学結合による架橋にはジアルデヒド類(グルタルアルデヒドなど)、ジビニルスルホン類(ジビニルスルホニルメタン、N,N’−ジ(1−ビニルスルホニルアセチル)エチレンジアミンなど)、トリアジン類(塩化シアヌル、2,4−ジクロロ−1−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンなど)などの反応性基を複数有する化合物が好ましく用いられる。イオン結合による架橋には多塩基酸(フタル酸、マレイン酸、アジピン酸など)、合成アニオン性高分子化合物(アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸など酸基含有モノマーの重合体や他のモノマーとの共重合体)、天然あるいは天然物から誘導されるアニオン性高分子化合物(アルギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、アガロペクチン、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースなど)、両性高分子(ゼラチンなど)が好ましく用いられる。
【0015】
キトサンゲルを調製する際のキトサン水溶液の濃度としては0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5質量%以下が特に好ましい。また、キトサンの溶解性が不足する場合には酸を添加して溶解させてもよい。例えば、酸として酢酸、塩酸、又はリン酸等を用いることができる。キトサンゲルを調製するためのキトサンの酸性溶液には、表面張力や粘度を調製するために界面活性剤や有機溶剤のほか、ゲルの調製に通常用いられる各種の添加物を1種又は2種以上含んでいてもよい。また、キトサンゲルの調製に際して、キトサンの酸性溶液の塗布前に該溶液に内包される気泡を除去するための脱泡工程を付加してもよい。脱泡方法は特に限定されず、例えば、液膜脱泡、減圧脱泡、遠心脱泡、超音波脱泡、又はこれらの組み合わせが好ましく用いられる。
【0016】
本発明の細胞培養担体において、無機層はキトサンを含むゲル層に隣接して配置される。本明細書において用いられる「隣接」という用語は、一般的にはそれぞれ平面として形成されるキトサンを含むゲル層の片面と無機層の片面とが、両者の面の大部分において接触している状態を意味しており、好ましくはキトサンを含むゲル層及び無機層の間には他の層が介在せずに両者が密着した状態を保っている。
【0017】
無機層は、例えば金属及び金属酸化物からなる群から選ばれる物質の層であってもよい。金属としては、非腐食性の金属であればその種類は特に限定されないが、例えば、ステンレスのほか、アルミニウム、シリコン、金、白金、鉄、チタン、ブリキなどを用いることができる。金属酸化物としては水に難溶性のものであれば特に限定されず任意のものを用いることができる。例えば酸化チタン、酸化アルミ、酸化ジルコニウム、酸化シリコン、酸化鉄などを例示することができる。無機層は水難溶性の無機塩を含むものであってもよい。
【0018】
また、無機層は無機粒子を含むものであってもよい。無機粒子としては、例えば粒径1nm以上1mm以下の粒子を用いることができる。より具体的には、無機粒子は金属、水に難溶性の金属酸化物、及び水に難溶性の無機塩などからなる群から選ばれる粒子であり、好ましくは10nm以上100μm以下の粒径を有するものである。無機粒子を含む無機層を形成するためには、通常、バインダーを用いることができるが、バインダーの種類は特に限定されず、有機又は無機のバインダーの1種又は2種以上を含む層として形成することができる。
【0019】
例えば無機層としてステンレス層を用いる場合には、ステンレス薄板をそのまま無機層として用いてもよい。他の金属薄板についても同様である。あるいは、無機層は高分子基板や紙製基板などの他の基板のうえに形成されていてもよい。例えば、高分子基板の表面に蒸着されたアルミニウム薄膜をアルミニウム層として用いることもできる。無機層の厚さは特に限定されないが、例えば、1nm以上10mm以下の厚さであることが好ましく、10nm以上2mm以下であることがさらに好ましい。
【0020】
無機層は10μm以上の穴を1つ以上有することが好ましい。穴の口径は特に限定されないが、例えば、10μm以上1m以下が好ましく、20μm以上30cm以下がさらに好ましく、50μm以上10cm以下が特に好ましい。上記の穴を通じて細胞が培地側のみならず、培養担体側からも物質の給排出を受けることが可能になり、あわせて透過型の倒立顕微鏡を用いることにより細胞培養担体上に形成された細胞層や細胞の形態観察が可能となる。穴の個数は特に限定されないが、12個以上10万個以下が好ましい。1平方メートルあたり、穴の面積の総計が0.01〜0.99平方メートル、好ましくは0.1〜0.9平方メートルとなるように穴の大きさと個数を調節することが好ましい。
【0021】
本発明の細胞培養担体では、無機層の片面又は両面にキトサンを含むゲル層が設けられていることが望ましい。キトサンを含むゲルの表面のうち、無機層に隣接していない面を最表層として細胞培養に用いることができるが、このキトサン表面には、細胞接着性成分を含むゲル層が少なくとも1つ重層化されていてもよい。本明細書において「重層」とは2以上の層が積層された状態を意味している。細胞接着成分としては、例えば、コラーゲン、アルギン酸、又はキトサンなどを用いることができる。このようなゲル層が多層を形成していることも好ましい。例えば、アルギン酸を含むゲル層及びキトサンを含むゲル層が重層されていることが好ましく、アルギン酸を含むゲル層及びキトサンを含むゲル層が交互に少なくとも2層、好ましくは3層以上重層されていることが好ましい。同一の成分を含む複数の層が重層化されていてもよい。最表層はアルギン酸を含むゲル層又はキトサンを含むゲル層のいずれであってもよいが、さらに中間層又は最表層としてコラーゲンを含むゲル層を設けてもよい。
【0022】
コラーゲンを含むゲル層を設ける場合、アルギン酸を含むゲル層又はキトサンを含むゲル層のコラーゲンによる表面修飾はいかなる方法で行ってもよい。例えば、塗布法または浸漬法で実施することが好ましい。塗布法とはキトサンゲル表面にコラーゲン水溶液を塗布することで行い、塗布後に水洗や乾燥する工程を任意に導入することができる。浸漬法とはコラーゲンの水溶液にキトサンゲル膜を浸漬することで表面にコラーゲンのゲル層を付着させる方法であり、浸漬後に水洗や乾燥する工程を任意に導入することができる。コラーゲンの種類は特に限定されず、I型、II型、III型、IV型、V型などいずれでもよく、酵素により低分子化したもの、テロペプチドを切断したもの、遺伝子工学により合成したものなどがあげられるが、酸性溶液に可溶化したものが好ましく用いられる。コラーゲンによる表面修飾を行う場合のコラーゲン水溶液の濃度としては1ng/l以上50mg/l以下が好ましく、1μg/l以上10mg/ml以下が特に好ましい。
【0023】
アルギン酸ゲルとは、アルギン酸の分子中のカルボン酸基と多価金属イオンとがキレート構造を形成してゲル化したものを意味しており、「アルギン酸ゲル層」とは層状のアルギン酸ゲルを意味する。アルギン酸は、グルクロン酸(G)とマンヌロン酸(M)よりなるブロック共重合体であり、Mブロックが有するポケット構造に多価金属カチオンが侵入してエッグボックスを形成し、ゲル化すると考えられている。アルギン酸のゲル化を引き起こし得る多価金属カチオンの具体例としては、バリウム、鉛、銅、ストロンチウム、カドミウム、カルシウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、マグネシウム等の金属イオンを例示できる。これらのうち二価金属イオンが好ましく、例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオンを例示できるが、特に好ましいのはカルシウムイオンである。「アルギン酸ゲル」はアルギン酸とカチオン残基を有する有機高分子化合物のポリイオンコンプレックスゲルでもよい。カチオン残基を有する有機高分子化合物としては、ポリリジン、キトサン、ゼラチン、コラーゲンなどの複数のアミノ基を有する化合物が挙げられる。アルギン酸のゲル化方法は特に限定されず、常法に従って行なうことができる。例えばイオン交換を利用してアルギン酸のゲル化を行なうことができる。例えば、アルギン酸ナトリウム水溶液にカルシウムイオンを添加すると速やかにイオン交換が生じ、アルギン酸カルシウムゲルが得られる。
【0024】
アルギン酸は、褐藻類の細胞壁構成多糖又は細胞間充填物質として天然に存在しており、これらを原料として採取可能である。原料褐藻類の具体例としては、ヒバマタ目ダービリア科ダービリア属(例えばD. potatorum)、ヒバマタ目ヒバマタ科アスコフィラム属(例えばA. nodosum)、コンブ目コンブ科コンブ属(例えばマコンブ、ナガコンブ)、コンブ目コンブ科アラメ属(例えばアラメ)、コンブ目コンブ科カジメ属(例えばカジメ、ウロメ)、コンブ目レッソニア科レッソニア属(例えばL. flavikans)の褐藻類を例示できる。また、市販のアルギン酸を使用することもできる。アルギン酸のG/Mの比は特に限定されないが、G/Mの比が大きいほどゲル形成能が大きいので、G/Mの比は大きい方が好ましく、具体的には0.1〜1であるのが好ましく、0.2〜0.5であるのがさらに好ましい。アルギン酸ゲルを調製する場合のアルギン酸ナトリウム水溶液の濃度としては1mg/l以上10g/l以下が好ましく、10mg/l以上5g/ml以下が特に好ましい。
【0025】
キトサンを含むゲル層を形成する場合、層形成は任意の方法で行うことができるが、上記に説明した方法が好ましく用いられる。例えば、表面修飾を塗布法または浸漬法で実施することが好ましい。塗布法ではゲル表面にキトサン水溶液を塗布し、塗布後に水洗や乾燥する工程を任意に導入することができる。浸漬法はキトサン水溶液にゲル膜を浸漬することで表面にキトサンを含むゲル層を付着させる方法であり、浸漬後に水洗や乾燥する工程を任意に導入することができる。表面修飾に用いるキトサン水溶液の濃度としては1mg/l以上10g/l以下が好ましく、10mg/l以上5g/ml以下が特に好ましい。
【0026】
様々な高分子化合物を含むゲル層を順次ゲル表面に修飾していく方法としては当業界で利用可能な任意の方法を採用することができるが、いわゆるLayer−by−layer法(Gero Decher著、Science誌、277号、1997年8月29日、1232−1237頁)が好ましく用いられる。Layer−by−layerとは各種高分子化合物の水溶液に膜を浸漬したのち水洗し、新たな高分子化合物の水溶液に浸漬することを繰り返す方法である。無機層の片面に設けられたキトサンを含むゲルの表面修飾を行うにあたっては、上記塗布による修飾法もしくは上記浸漬による修飾法の際に無機層が浸漬液に触れないようにカバーをつける方法が好ましく用いられる。ゲル化の際には、必要に応じてゲル化剤を使用してもよい。
【0027】
本発明の細胞培養担体は、最表層の表面上に細胞を培養することができる。培養し得る細胞の主対は特に限定されないが、具体例としては、繊維芽細胞、血管内皮細胞、軟骨細胞、肝細胞、小腸上皮細胞、表皮角化細胞、骨芽細胞、骨髄間葉細胞、胚性幹細胞、体性幹細胞等を例示できる。細胞の培養の際には、通常、細胞濃度1〜1.5万cells/mlの培養液(例えば、D−MEM培地、MEM培地、HamF12培地、HamF10培地)を細胞接着性ゲル層上に添加する。細胞の培養条件は、培養する細胞に従って適宜選択し得る。細胞接着性ゲル層上で細胞を培養する場合には、通常、細胞接着性ゲル層上にコンフルエントな単層の細胞層が形成されるまで培養を継続することができる。
【0028】
本発明の細胞培養担体を用いた細胞の培養は具体的には次のようにして行なうことができる。細胞培養担体をシャーレ等の内部に設置し、シャーレ内に適当な培養液(例えば、D−MEM培地、MEM培地、HamF12培地、HamF10培地)を添加して5分浸漬後培地交換することを3回繰り返したのち12〜24時間放置し、培養液を細胞培養担体中に浸潤させる。シャーレ内の培養液を捨て、細胞培養担体の最表層上に細胞を播き、シャーレ内に適当な培養液(例えば、D−MEM培地、MEM培地、HamF12培地、HamF10培地)を添加する。37℃で1〜2時間放置し、最表層のゲル表面に細胞をに保持(接着)させた後、37℃で培養を続ける。培養の際には、必要に応じて培養液を交換してもよい。通常は培養0.5〜2日ごとに培養液を交換する。このようにして得られる細胞培養物は、上記の細胞培養担体と該細胞培養担体に保持された細胞層とを含む。「細胞培養担体に保持された細胞層」は細胞培養担体の最表層の表面に形成された細胞層である。
【0029】
本発明の細胞培養担体はいかなる方法で滅菌されてもよいが、電子線、γ線、X線、紫外線などの放射線による滅菌が好ましく用いられ、電子線、γ線、紫外線がさらに好ましく用いられ、電子線滅菌が特に好ましい。本発明の電子線滅菌の照射線量としては0.1kGy以上65kGy以下が好ましく、1kGy以上40kGy以下が特に好ましい。エチレンオキサイドガス滅菌などの化学滅菌、高圧蒸気ガス滅菌などの高熱をかける滅菌はキトサンゲルを含むゲル層やアルギン酸ゲル層を分解するため好ましくない。このように滅菌した細胞培養担体は無菌条件下であれば長期間に渡って室温保管が可能である。上記の滅菌法は単独もしくは複数種の組み合わせで実施されてもよく、同一種の滅菌法を繰り返し使用してもよい。
【0030】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例により限定されることはない。
例1:細胞培養担体の作製と物理強度の評価
(1)キトサンゲル膜
▲1▼キトサン塗布液の調製
キトサン(和光純薬製 Chirosan 100)2.5gを1質量%の酢酸水溶液98gで溶解し、この溶液を富士写真フイルム株式会社製フィルターPPEカートリッジPPECG30S(ISO/TC131SC6(1973)に基づく捕捉効率99.95%が25.7μm)で濾過して塗布液を得た。
【0031】
▲2▼キトサンゲル膜の調製
1 mmの厚さでポリエチレンテレフタレート基板上にキトサン塗布液を塗布し、塗布物を40℃で30分間水分を蒸発させた。このキトサン膜に無機層としてステンレス(SUS316)製の厚さ100μmの板を貼り付けた後、40℃で5時間乾燥した。乾燥した無機層付キトサン膜をポリエチレンテレフタレート基板から剥離し、1.9質量%の水酸化ナトリウムを含むメタノール溶液に30分間浸漬したのち、哺乳類動物細胞に等張のpH1.0リン酸緩衝液に30分間浸漬した。こうして処理したキトサンゲル膜を流水で30分間洗浄したのち、室温で乾燥したものを試料1とした。
【0032】
また、ポリエチレンテレフタレート基板の代わりに塩化ビニール基板を用い、ステンレス板の代わりに厚さ175μmのポリエチレンテレフタレートのシートを用いたものを試料2、ポリエチレンテレフタレート基板を用い、ステンレス板の代わりに厚さ175μmのポリエチレンテレフタレートのシート(表面に50nmの厚さでアルミニウムを蒸着したもの)を用いたものを試料3とした。試料1でステンレス板を用いない以外は同様に製造したキトサン単独膜を試料4とした。なお、試料4は膜が変形しないように4辺を挟んだ状態で乾燥した。キトサン層の厚さはいずれも20μmであった。
(2)細胞培養担体の物理強度の評価
(a)密着性
試料1〜4をEagle最小培地10%牛胎児血清中50℃で24時間震蕩しつづけたのち、キトサン膜の剥離状態を観察した。
(b)強度
試料1〜4をEagle最小培地10%牛胎児血清に浸漬しピンセットで持ち上げたときの状況を観察した。
結果を表1に示す。本発明の細胞培養担体は強度が高く、しかも膜に乱れを生じないという優れた効果を有している。。
【0033】
例2:穴空き基板での細胞培養担体の調製
(1)キトサンゲル膜
例1における試料1のステンレス基板の代わりに中央に口径25mmの穴が空いたステンレス基板を用いたものを試料5とした。
(2)キトサンゲル膜の表面修飾
▲1▼アルギン酸水溶液の調製
アルギン酸ナトリウム(和光純薬製アルギン酸ナトリウム100〜150cP)を1質量%となるように水で溶解した。
▲2▼キトサン水溶液の調製
キトサン(和光純薬製 Chirosan 100)0.1gを1質量%の酢酸水溶液99.9gで溶解した。
▲3▼コラーゲン水溶液の調製
CellmatrixIC(新田ゼラチン製typeIコラーゲン水溶液)を0.03mg/mlとなるように水で希釈した。
【0034】
▲4▼アルギン酸修飾ゲル膜の作成
上記(1)で得た試料5を乾燥せずにアルギン酸水溶液に5分間浸漬したのち、流水で2秒間洗浄した。さらに、キトサン水溶液に2秒間浸漬したのち、流水で2秒間洗浄した。以上の操作を3回繰り返した。次いで、アルギン酸水溶液に2秒間浸漬したのち、流水で1時間洗浄したのち、室温で乾燥し試料6を得た。
▲5▼キトサン修飾ゲル膜の作成
試料6を乾燥せずにキトサン水溶液に2秒間浸漬したのち、流水で1時間洗浄したのち、室温で乾燥し試料7を得た。
▲6▼コラーゲン修飾ゲル膜の調製
試料6および7を乾燥せずにコラーゲン水溶液に1時間浸漬したのち、流水で1時間洗浄したのち、35℃、30%RHで乾燥し試料8および9を得た。
【0035】
(3)細胞培養担体の物理強度の評価
例1と同様に密着性と強度を評価した結果を表1に示す。本発明の細胞培養担体はいずれも良好な性能を有することがわかる。
【0036】
【表1】
【0037】
例3:滅菌
例2の試料6〜9にUV滅菌3時間または電子線滅菌20kGyを施したところ、いずれも菌が確認されなかった。このとき、滅菌処理を施していないサンプルからは5000個/m2の菌が確認された。
【0038】
例4:細胞培養担体を用いた細胞の培養
次のようにして細胞培養担体を用いた細胞の培養を行なった。
(1)使用細胞
CHL(Chinese Hamster Lung Cell)
(2)使用培地
Eagle最小培地、10%牛胎児血清
(3)細胞培養担体
例2で2種類の滅菌を施した試料6〜9の細胞培養担体および株式会社高研製の細胞培養用透過性コラーゲン膜MEN−01(比較例)をポリスチレン製細胞培養用に入れ、培地を添加して5分浸漬後培地交換することを3回繰り返したのち一晩放置し、培地を細胞培養担体中に浸潤させた。使用した細胞培養担体と滅菌法の組み合わせを表2に示す。
【0039】
(4)細胞の播種
予め培養しておいた細胞をトリプシン処理で回収し、細胞濃度を50000cell/mlに調整した。セル及びシャーレ内の培地を捨てた後、この細胞液を細胞数10000cell/cm2となるようにシャーレ内に播種し培地を添加した。
(5)培養
CO2インキュベーターを用いて37℃で2日間培養した。
(6)評価
膜の変形は培地に1日浸漬して膜周辺から突出した中央部の高さを評価した。突出が大きいほど光学顕微鏡での観察が困難であり、また5mm以上になると膜が培養用ディッシュに接触し裏面からの物質供給が不充分となる。さらに、細胞を光学顕微鏡で観察することにより細胞接着性及び毒性を評価した。このとき培養用ディッシュ上での生育状況をタイプとした。結果を表2に示す。本発明の細胞培養担体では毒性がなく細胞接着性が良好であり、かつ膜の変形も極めて少なかった。さらに、無機層に穴を設けることで物質透過性が高くなり、長期間の培養が可能であった。
【0040】
【表2】
【0041】
例5:複数の穴の空いた無機層を有する細胞培養担体
例4の試料9においてステンレス板を300μmの間隔で100μmの穴が縦400個、横400個の合計16000個空いた板とした以外は同様にした細胞培養担体を調製した。得られた細胞培養担体について同様に評価を行ったところ、物理強度、細胞接着性、及び毒性についていずれも良好な結果を得た。
【0042】
【発明の効果】
本発明により提供される細胞培養担体は密着性及び強度が高く、膜の変形が小さいという特徴がある。また、細胞毒性が低く、長期間の細胞培養が可能になるという特徴も有している。
【発明の属する技術分野】
本発明は、細胞培養の技術に関し、より具体的には、細胞培養担体及び該細胞培養担体を利用した細胞の培養方法、並びに該培養方法により得られる細胞培養物に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子含水ゲルは、生体に類似した構造を持ち、温度、酸性・アルカリ性等の外部条件によって膨張、収縮する性質を有するため、人工筋肉などの人工臓器・組織への応用、内部に薬剤を封入して放出量をコントロールする医療分野への応用のみならず、各種サイトカイン等を含むゲルとして細胞を培養する際に細胞成長の足場としての利用も試みられている。
【0003】
細胞は生体内で組織を形成する際に極性を持って配列することが知られている。例えば、肝細胞は血管内皮細胞側から血液成分を吸収し、逆側から胆汁酸などの代謝物を排泄する。この胆汁酸は細胞毒性が強いため、通常の培養用シャーレに細胞を付着させて培養したのでは、長期間の安定な培養が難しい問題がある。また、細胞に対して一方向から刺激を与えることで細胞の極性が発現することも知られているが、通常の培養用シャーレに細胞を付着させて培養したのでは刺激を接着側から与えられない問題がある。
【0004】
このような問題を解決し、細胞の両面を違った培地で培養する細胞培養用材料として、株式会社高研から細胞培養用透過性コラーゲン膜MEN−01が発売されている。しかしながら、この製品ではコラーゲン膜の培地による膨潤が大きく、培養中に大きく歪み培養状態を観察するのが困難であった。また、多孔質膜と該多孔質膜上にアルギン酸ゲル層と細胞外マトリックス成分ゲル層又は細胞外マトリックス成分スポンジ層とを重層化した細胞培養担体が提案されているが(特許文献1)、ミクロフィルター層を有しているため細胞の生育状況を光学顕微鏡で確認することができなかった。さらに、キトサンとアニオン性セルロース誘導体の高分子錯体が細胞培養担体として提案されているが(特許文献2)、キトサンとアニオン性セルロース誘導体とが混合直後にゲル化するため、平滑な表面の細胞培養担体を得ることが困難であった。
【0005】
さらなる問題として、このようなゲルは培地に浸漬することにより膨潤し強度が落ちるため細胞培養物を培地中から取り出すことが困難であること、および微小な空間のみにゲルを取り付けることができないため細胞を細かな空間に区切って培養する細胞チップの構築にも不向きであった。
【特許文献1】
特開2001−120267号公報
【特許文献2】
特開平6−277038号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段】
本発明の課題は、上記の問題を解決した細胞培養担体を提供することにある。より具体的には、細胞の両面を異なる培地として培養でき、かつ細胞の生育状況を光学顕微鏡で簡便に観察できる細胞培養用材料を提供することが本発明の課題であり、さらに、上記の特徴を有する細胞培養担体であって、培養後の強度に優れた細胞培養担体を提供することが本発明の課題である。本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意研究を行い、下記の手段により上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、キトサンを含むゲル層と該ゲル層に隣接して設けられた無機層とを含む細胞培養担体を提供するものである。本発明の好ましい態様によれば、無機層は金属及び/又は金属酸化物を含む層であり、無機微粒子を含有する層として形成されていてもよい。好ましい無機層としてステンレス層又はアルミニウム層などを例示することができる。また、さらに好ましい態様によれば、該無機層が直径10μm以上の穴を少なくとも1つ、好ましくは2以上有する細胞培養担体が提供される。
【0008】
さらに好ましい態様によれば、細胞接着性成分を含むゲル層が少なくとも1つ重層化された上記の細胞培養担体;細胞接着成分がコラーゲン及びアルギン酸からなる群から選ばれる上記の細胞培養担体;コラーゲン層及びアルギン酸層からなる群から選ばれるゲル層が少なくとも1つ重層化された上記の細胞培養担体;コラーゲン層及びアルギン酸層が交互に重層化された上記の細胞培養担体;さらに1以上の重層化されたキトサン層を含む上記の細胞培養担体が提供される。
【0009】
また、別の観点からは、上記の細胞培養担体を用いて細胞を培養する工程を含む細胞培養方法、及び上記の方法で得られた細胞培養物が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の細胞培養担体は、キトサンを含むゲル層と該ゲル層に隣接して設けられた無機層とを含むことを特徴としている。「細胞培養担体」とは、細胞を培養する際の担体又は支持体となり得るものを意味する。本明細書において「細胞培養担体」とは、細胞を培養する際の担体又は支持体となり得るものを意味する。例えば、多孔質膜上にアルギン酸ゲル層と細胞接着性成分ゲル層として細胞外マトリックス成分ゲル層とを重層化させた細胞培養担体が特開2001−120267号公報に記載されているが、本発明の細胞培養担体は上記公報に記載された細胞培養担体と同様な技術分野での培養に用いることができる。
【0011】
キトサンを含むゲルとはキトサンゲルを主成分として含むゲルである。キトサンゲルとしては、細胞培養を行う中性域で溶解しないゲルを用いることができる。例えば、キトサンの分子中のアミノ基を中和することにより細胞培養を行う中性域で溶解しないゲルを形成したもの、キトサンとアニオン残基を有する有機高分子化合物とが塩を形成してゲルを形成したもの、架橋剤で架橋することによりゲルを形成したものなどが利用できる。アニオン残基を有する有機高分子化合物としては、例えば、ポリアスパラギン酸、アルギン酸、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ポリスチレンスルホン酸などの天然又は合成高分子化合物を用いることができる。架橋剤としては、例えば、アミノ基やヒドロキシル基と反応する基を複数有するグルタルアルデヒド、ジビニルスルホン、ハロゲン化トリアジンなどや、予め活性エステル化した複数のカルボン酸基を有する化合物などが挙げられる。
【0012】
キトサン(β−ポリ−D−グルコサミン)は、キチン(β−ポリ−N−アセチル−D−グルコサミン)を濃アルカリ溶液と加熱するか又はカリウム融解した後、脱アセチル化することにより得られる。本発明の細胞培養担体の製造には、任意のキトサンを用いることができる。例えば、膜強度の大きな膜を形成させる観点からは、脱アセチル化度が60%以上100%以下で、かつ1質量%酢酸水溶液に0.5質量%となるように溶解した場合に溶液粘度が10cP以上10000cP以下になるキトサンが好ましい。さらに好ましいキトサンは、脱アセチル化度が70%以上100%以下、粘度が40cP以上5000cP以下のものである。
【0013】
キトサンのゲル化は、常法に従って行なうことができる。例えば、キトサンの酸性溶液を基板に塗布して乾燥した後、中和処理することによりゲル化させることができる。より具体的には、酢酸水溶液にキトサンを溶解して調製した塗布液を所望の厚さで基板表面上に塗布して乾燥し、得られた膜を水酸化ナトリウム水溶液中又は中性付近のpHを有する緩衝液中に浸漬することでキトサンが中和され、キトサンゲルが得られる。キトサンを含むゲル層の乾燥時の膜厚は特に限定されないが、例えば1〜20000μmであることが好ましく、5〜500μmであることがさらに好ましい。本明細書において、ゲル層の乾燥時の膜厚とは、通常、ゲルを十分に乾燥した状態、例えばゲルに含まれる水分がゲル全重量に対して100質量%未満である場合に測定したゲルの厚さのことである。
【0014】
キトサンを含むゲルは化学結合、イオン結合で架橋されていてもよい。化学結合による架橋にはジアルデヒド類(グルタルアルデヒドなど)、ジビニルスルホン類(ジビニルスルホニルメタン、N,N’−ジ(1−ビニルスルホニルアセチル)エチレンジアミンなど)、トリアジン類(塩化シアヌル、2,4−ジクロロ−1−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンなど)などの反応性基を複数有する化合物が好ましく用いられる。イオン結合による架橋には多塩基酸(フタル酸、マレイン酸、アジピン酸など)、合成アニオン性高分子化合物(アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸など酸基含有モノマーの重合体や他のモノマーとの共重合体)、天然あるいは天然物から誘導されるアニオン性高分子化合物(アルギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、アガロペクチン、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースなど)、両性高分子(ゼラチンなど)が好ましく用いられる。
【0015】
キトサンゲルを調製する際のキトサン水溶液の濃度としては0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5質量%以下が特に好ましい。また、キトサンの溶解性が不足する場合には酸を添加して溶解させてもよい。例えば、酸として酢酸、塩酸、又はリン酸等を用いることができる。キトサンゲルを調製するためのキトサンの酸性溶液には、表面張力や粘度を調製するために界面活性剤や有機溶剤のほか、ゲルの調製に通常用いられる各種の添加物を1種又は2種以上含んでいてもよい。また、キトサンゲルの調製に際して、キトサンの酸性溶液の塗布前に該溶液に内包される気泡を除去するための脱泡工程を付加してもよい。脱泡方法は特に限定されず、例えば、液膜脱泡、減圧脱泡、遠心脱泡、超音波脱泡、又はこれらの組み合わせが好ましく用いられる。
【0016】
本発明の細胞培養担体において、無機層はキトサンを含むゲル層に隣接して配置される。本明細書において用いられる「隣接」という用語は、一般的にはそれぞれ平面として形成されるキトサンを含むゲル層の片面と無機層の片面とが、両者の面の大部分において接触している状態を意味しており、好ましくはキトサンを含むゲル層及び無機層の間には他の層が介在せずに両者が密着した状態を保っている。
【0017】
無機層は、例えば金属及び金属酸化物からなる群から選ばれる物質の層であってもよい。金属としては、非腐食性の金属であればその種類は特に限定されないが、例えば、ステンレスのほか、アルミニウム、シリコン、金、白金、鉄、チタン、ブリキなどを用いることができる。金属酸化物としては水に難溶性のものであれば特に限定されず任意のものを用いることができる。例えば酸化チタン、酸化アルミ、酸化ジルコニウム、酸化シリコン、酸化鉄などを例示することができる。無機層は水難溶性の無機塩を含むものであってもよい。
【0018】
また、無機層は無機粒子を含むものであってもよい。無機粒子としては、例えば粒径1nm以上1mm以下の粒子を用いることができる。より具体的には、無機粒子は金属、水に難溶性の金属酸化物、及び水に難溶性の無機塩などからなる群から選ばれる粒子であり、好ましくは10nm以上100μm以下の粒径を有するものである。無機粒子を含む無機層を形成するためには、通常、バインダーを用いることができるが、バインダーの種類は特に限定されず、有機又は無機のバインダーの1種又は2種以上を含む層として形成することができる。
【0019】
例えば無機層としてステンレス層を用いる場合には、ステンレス薄板をそのまま無機層として用いてもよい。他の金属薄板についても同様である。あるいは、無機層は高分子基板や紙製基板などの他の基板のうえに形成されていてもよい。例えば、高分子基板の表面に蒸着されたアルミニウム薄膜をアルミニウム層として用いることもできる。無機層の厚さは特に限定されないが、例えば、1nm以上10mm以下の厚さであることが好ましく、10nm以上2mm以下であることがさらに好ましい。
【0020】
無機層は10μm以上の穴を1つ以上有することが好ましい。穴の口径は特に限定されないが、例えば、10μm以上1m以下が好ましく、20μm以上30cm以下がさらに好ましく、50μm以上10cm以下が特に好ましい。上記の穴を通じて細胞が培地側のみならず、培養担体側からも物質の給排出を受けることが可能になり、あわせて透過型の倒立顕微鏡を用いることにより細胞培養担体上に形成された細胞層や細胞の形態観察が可能となる。穴の個数は特に限定されないが、12個以上10万個以下が好ましい。1平方メートルあたり、穴の面積の総計が0.01〜0.99平方メートル、好ましくは0.1〜0.9平方メートルとなるように穴の大きさと個数を調節することが好ましい。
【0021】
本発明の細胞培養担体では、無機層の片面又は両面にキトサンを含むゲル層が設けられていることが望ましい。キトサンを含むゲルの表面のうち、無機層に隣接していない面を最表層として細胞培養に用いることができるが、このキトサン表面には、細胞接着性成分を含むゲル層が少なくとも1つ重層化されていてもよい。本明細書において「重層」とは2以上の層が積層された状態を意味している。細胞接着成分としては、例えば、コラーゲン、アルギン酸、又はキトサンなどを用いることができる。このようなゲル層が多層を形成していることも好ましい。例えば、アルギン酸を含むゲル層及びキトサンを含むゲル層が重層されていることが好ましく、アルギン酸を含むゲル層及びキトサンを含むゲル層が交互に少なくとも2層、好ましくは3層以上重層されていることが好ましい。同一の成分を含む複数の層が重層化されていてもよい。最表層はアルギン酸を含むゲル層又はキトサンを含むゲル層のいずれであってもよいが、さらに中間層又は最表層としてコラーゲンを含むゲル層を設けてもよい。
【0022】
コラーゲンを含むゲル層を設ける場合、アルギン酸を含むゲル層又はキトサンを含むゲル層のコラーゲンによる表面修飾はいかなる方法で行ってもよい。例えば、塗布法または浸漬法で実施することが好ましい。塗布法とはキトサンゲル表面にコラーゲン水溶液を塗布することで行い、塗布後に水洗や乾燥する工程を任意に導入することができる。浸漬法とはコラーゲンの水溶液にキトサンゲル膜を浸漬することで表面にコラーゲンのゲル層を付着させる方法であり、浸漬後に水洗や乾燥する工程を任意に導入することができる。コラーゲンの種類は特に限定されず、I型、II型、III型、IV型、V型などいずれでもよく、酵素により低分子化したもの、テロペプチドを切断したもの、遺伝子工学により合成したものなどがあげられるが、酸性溶液に可溶化したものが好ましく用いられる。コラーゲンによる表面修飾を行う場合のコラーゲン水溶液の濃度としては1ng/l以上50mg/l以下が好ましく、1μg/l以上10mg/ml以下が特に好ましい。
【0023】
アルギン酸ゲルとは、アルギン酸の分子中のカルボン酸基と多価金属イオンとがキレート構造を形成してゲル化したものを意味しており、「アルギン酸ゲル層」とは層状のアルギン酸ゲルを意味する。アルギン酸は、グルクロン酸(G)とマンヌロン酸(M)よりなるブロック共重合体であり、Mブロックが有するポケット構造に多価金属カチオンが侵入してエッグボックスを形成し、ゲル化すると考えられている。アルギン酸のゲル化を引き起こし得る多価金属カチオンの具体例としては、バリウム、鉛、銅、ストロンチウム、カドミウム、カルシウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、マグネシウム等の金属イオンを例示できる。これらのうち二価金属イオンが好ましく、例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオンを例示できるが、特に好ましいのはカルシウムイオンである。「アルギン酸ゲル」はアルギン酸とカチオン残基を有する有機高分子化合物のポリイオンコンプレックスゲルでもよい。カチオン残基を有する有機高分子化合物としては、ポリリジン、キトサン、ゼラチン、コラーゲンなどの複数のアミノ基を有する化合物が挙げられる。アルギン酸のゲル化方法は特に限定されず、常法に従って行なうことができる。例えばイオン交換を利用してアルギン酸のゲル化を行なうことができる。例えば、アルギン酸ナトリウム水溶液にカルシウムイオンを添加すると速やかにイオン交換が生じ、アルギン酸カルシウムゲルが得られる。
【0024】
アルギン酸は、褐藻類の細胞壁構成多糖又は細胞間充填物質として天然に存在しており、これらを原料として採取可能である。原料褐藻類の具体例としては、ヒバマタ目ダービリア科ダービリア属(例えばD. potatorum)、ヒバマタ目ヒバマタ科アスコフィラム属(例えばA. nodosum)、コンブ目コンブ科コンブ属(例えばマコンブ、ナガコンブ)、コンブ目コンブ科アラメ属(例えばアラメ)、コンブ目コンブ科カジメ属(例えばカジメ、ウロメ)、コンブ目レッソニア科レッソニア属(例えばL. flavikans)の褐藻類を例示できる。また、市販のアルギン酸を使用することもできる。アルギン酸のG/Mの比は特に限定されないが、G/Mの比が大きいほどゲル形成能が大きいので、G/Mの比は大きい方が好ましく、具体的には0.1〜1であるのが好ましく、0.2〜0.5であるのがさらに好ましい。アルギン酸ゲルを調製する場合のアルギン酸ナトリウム水溶液の濃度としては1mg/l以上10g/l以下が好ましく、10mg/l以上5g/ml以下が特に好ましい。
【0025】
キトサンを含むゲル層を形成する場合、層形成は任意の方法で行うことができるが、上記に説明した方法が好ましく用いられる。例えば、表面修飾を塗布法または浸漬法で実施することが好ましい。塗布法ではゲル表面にキトサン水溶液を塗布し、塗布後に水洗や乾燥する工程を任意に導入することができる。浸漬法はキトサン水溶液にゲル膜を浸漬することで表面にキトサンを含むゲル層を付着させる方法であり、浸漬後に水洗や乾燥する工程を任意に導入することができる。表面修飾に用いるキトサン水溶液の濃度としては1mg/l以上10g/l以下が好ましく、10mg/l以上5g/ml以下が特に好ましい。
【0026】
様々な高分子化合物を含むゲル層を順次ゲル表面に修飾していく方法としては当業界で利用可能な任意の方法を採用することができるが、いわゆるLayer−by−layer法(Gero Decher著、Science誌、277号、1997年8月29日、1232−1237頁)が好ましく用いられる。Layer−by−layerとは各種高分子化合物の水溶液に膜を浸漬したのち水洗し、新たな高分子化合物の水溶液に浸漬することを繰り返す方法である。無機層の片面に設けられたキトサンを含むゲルの表面修飾を行うにあたっては、上記塗布による修飾法もしくは上記浸漬による修飾法の際に無機層が浸漬液に触れないようにカバーをつける方法が好ましく用いられる。ゲル化の際には、必要に応じてゲル化剤を使用してもよい。
【0027】
本発明の細胞培養担体は、最表層の表面上に細胞を培養することができる。培養し得る細胞の主対は特に限定されないが、具体例としては、繊維芽細胞、血管内皮細胞、軟骨細胞、肝細胞、小腸上皮細胞、表皮角化細胞、骨芽細胞、骨髄間葉細胞、胚性幹細胞、体性幹細胞等を例示できる。細胞の培養の際には、通常、細胞濃度1〜1.5万cells/mlの培養液(例えば、D−MEM培地、MEM培地、HamF12培地、HamF10培地)を細胞接着性ゲル層上に添加する。細胞の培養条件は、培養する細胞に従って適宜選択し得る。細胞接着性ゲル層上で細胞を培養する場合には、通常、細胞接着性ゲル層上にコンフルエントな単層の細胞層が形成されるまで培養を継続することができる。
【0028】
本発明の細胞培養担体を用いた細胞の培養は具体的には次のようにして行なうことができる。細胞培養担体をシャーレ等の内部に設置し、シャーレ内に適当な培養液(例えば、D−MEM培地、MEM培地、HamF12培地、HamF10培地)を添加して5分浸漬後培地交換することを3回繰り返したのち12〜24時間放置し、培養液を細胞培養担体中に浸潤させる。シャーレ内の培養液を捨て、細胞培養担体の最表層上に細胞を播き、シャーレ内に適当な培養液(例えば、D−MEM培地、MEM培地、HamF12培地、HamF10培地)を添加する。37℃で1〜2時間放置し、最表層のゲル表面に細胞をに保持(接着)させた後、37℃で培養を続ける。培養の際には、必要に応じて培養液を交換してもよい。通常は培養0.5〜2日ごとに培養液を交換する。このようにして得られる細胞培養物は、上記の細胞培養担体と該細胞培養担体に保持された細胞層とを含む。「細胞培養担体に保持された細胞層」は細胞培養担体の最表層の表面に形成された細胞層である。
【0029】
本発明の細胞培養担体はいかなる方法で滅菌されてもよいが、電子線、γ線、X線、紫外線などの放射線による滅菌が好ましく用いられ、電子線、γ線、紫外線がさらに好ましく用いられ、電子線滅菌が特に好ましい。本発明の電子線滅菌の照射線量としては0.1kGy以上65kGy以下が好ましく、1kGy以上40kGy以下が特に好ましい。エチレンオキサイドガス滅菌などの化学滅菌、高圧蒸気ガス滅菌などの高熱をかける滅菌はキトサンゲルを含むゲル層やアルギン酸ゲル層を分解するため好ましくない。このように滅菌した細胞培養担体は無菌条件下であれば長期間に渡って室温保管が可能である。上記の滅菌法は単独もしくは複数種の組み合わせで実施されてもよく、同一種の滅菌法を繰り返し使用してもよい。
【0030】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例により限定されることはない。
例1:細胞培養担体の作製と物理強度の評価
(1)キトサンゲル膜
▲1▼キトサン塗布液の調製
キトサン(和光純薬製 Chirosan 100)2.5gを1質量%の酢酸水溶液98gで溶解し、この溶液を富士写真フイルム株式会社製フィルターPPEカートリッジPPECG30S(ISO/TC131SC6(1973)に基づく捕捉効率99.95%が25.7μm)で濾過して塗布液を得た。
【0031】
▲2▼キトサンゲル膜の調製
1 mmの厚さでポリエチレンテレフタレート基板上にキトサン塗布液を塗布し、塗布物を40℃で30分間水分を蒸発させた。このキトサン膜に無機層としてステンレス(SUS316)製の厚さ100μmの板を貼り付けた後、40℃で5時間乾燥した。乾燥した無機層付キトサン膜をポリエチレンテレフタレート基板から剥離し、1.9質量%の水酸化ナトリウムを含むメタノール溶液に30分間浸漬したのち、哺乳類動物細胞に等張のpH1.0リン酸緩衝液に30分間浸漬した。こうして処理したキトサンゲル膜を流水で30分間洗浄したのち、室温で乾燥したものを試料1とした。
【0032】
また、ポリエチレンテレフタレート基板の代わりに塩化ビニール基板を用い、ステンレス板の代わりに厚さ175μmのポリエチレンテレフタレートのシートを用いたものを試料2、ポリエチレンテレフタレート基板を用い、ステンレス板の代わりに厚さ175μmのポリエチレンテレフタレートのシート(表面に50nmの厚さでアルミニウムを蒸着したもの)を用いたものを試料3とした。試料1でステンレス板を用いない以外は同様に製造したキトサン単独膜を試料4とした。なお、試料4は膜が変形しないように4辺を挟んだ状態で乾燥した。キトサン層の厚さはいずれも20μmであった。
(2)細胞培養担体の物理強度の評価
(a)密着性
試料1〜4をEagle最小培地10%牛胎児血清中50℃で24時間震蕩しつづけたのち、キトサン膜の剥離状態を観察した。
(b)強度
試料1〜4をEagle最小培地10%牛胎児血清に浸漬しピンセットで持ち上げたときの状況を観察した。
結果を表1に示す。本発明の細胞培養担体は強度が高く、しかも膜に乱れを生じないという優れた効果を有している。。
【0033】
例2:穴空き基板での細胞培養担体の調製
(1)キトサンゲル膜
例1における試料1のステンレス基板の代わりに中央に口径25mmの穴が空いたステンレス基板を用いたものを試料5とした。
(2)キトサンゲル膜の表面修飾
▲1▼アルギン酸水溶液の調製
アルギン酸ナトリウム(和光純薬製アルギン酸ナトリウム100〜150cP)を1質量%となるように水で溶解した。
▲2▼キトサン水溶液の調製
キトサン(和光純薬製 Chirosan 100)0.1gを1質量%の酢酸水溶液99.9gで溶解した。
▲3▼コラーゲン水溶液の調製
CellmatrixIC(新田ゼラチン製typeIコラーゲン水溶液)を0.03mg/mlとなるように水で希釈した。
【0034】
▲4▼アルギン酸修飾ゲル膜の作成
上記(1)で得た試料5を乾燥せずにアルギン酸水溶液に5分間浸漬したのち、流水で2秒間洗浄した。さらに、キトサン水溶液に2秒間浸漬したのち、流水で2秒間洗浄した。以上の操作を3回繰り返した。次いで、アルギン酸水溶液に2秒間浸漬したのち、流水で1時間洗浄したのち、室温で乾燥し試料6を得た。
▲5▼キトサン修飾ゲル膜の作成
試料6を乾燥せずにキトサン水溶液に2秒間浸漬したのち、流水で1時間洗浄したのち、室温で乾燥し試料7を得た。
▲6▼コラーゲン修飾ゲル膜の調製
試料6および7を乾燥せずにコラーゲン水溶液に1時間浸漬したのち、流水で1時間洗浄したのち、35℃、30%RHで乾燥し試料8および9を得た。
【0035】
(3)細胞培養担体の物理強度の評価
例1と同様に密着性と強度を評価した結果を表1に示す。本発明の細胞培養担体はいずれも良好な性能を有することがわかる。
【0036】
【表1】
【0037】
例3:滅菌
例2の試料6〜9にUV滅菌3時間または電子線滅菌20kGyを施したところ、いずれも菌が確認されなかった。このとき、滅菌処理を施していないサンプルからは5000個/m2の菌が確認された。
【0038】
例4:細胞培養担体を用いた細胞の培養
次のようにして細胞培養担体を用いた細胞の培養を行なった。
(1)使用細胞
CHL(Chinese Hamster Lung Cell)
(2)使用培地
Eagle最小培地、10%牛胎児血清
(3)細胞培養担体
例2で2種類の滅菌を施した試料6〜9の細胞培養担体および株式会社高研製の細胞培養用透過性コラーゲン膜MEN−01(比較例)をポリスチレン製細胞培養用に入れ、培地を添加して5分浸漬後培地交換することを3回繰り返したのち一晩放置し、培地を細胞培養担体中に浸潤させた。使用した細胞培養担体と滅菌法の組み合わせを表2に示す。
【0039】
(4)細胞の播種
予め培養しておいた細胞をトリプシン処理で回収し、細胞濃度を50000cell/mlに調整した。セル及びシャーレ内の培地を捨てた後、この細胞液を細胞数10000cell/cm2となるようにシャーレ内に播種し培地を添加した。
(5)培養
CO2インキュベーターを用いて37℃で2日間培養した。
(6)評価
膜の変形は培地に1日浸漬して膜周辺から突出した中央部の高さを評価した。突出が大きいほど光学顕微鏡での観察が困難であり、また5mm以上になると膜が培養用ディッシュに接触し裏面からの物質供給が不充分となる。さらに、細胞を光学顕微鏡で観察することにより細胞接着性及び毒性を評価した。このとき培養用ディッシュ上での生育状況をタイプとした。結果を表2に示す。本発明の細胞培養担体では毒性がなく細胞接着性が良好であり、かつ膜の変形も極めて少なかった。さらに、無機層に穴を設けることで物質透過性が高くなり、長期間の培養が可能であった。
【0040】
【表2】
【0041】
例5:複数の穴の空いた無機層を有する細胞培養担体
例4の試料9においてステンレス板を300μmの間隔で100μmの穴が縦400個、横400個の合計16000個空いた板とした以外は同様にした細胞培養担体を調製した。得られた細胞培養担体について同様に評価を行ったところ、物理強度、細胞接着性、及び毒性についていずれも良好な結果を得た。
【0042】
【発明の効果】
本発明により提供される細胞培養担体は密着性及び強度が高く、膜の変形が小さいという特徴がある。また、細胞毒性が低く、長期間の細胞培養が可能になるという特徴も有している。
Claims (9)
- キトサンを含むゲル層と該ゲル層に隣接して設けられた無機層とを含む細胞培養担体。
- 無機層が金属及び/又は金属酸化物を含む層である請求項1に記載の細胞培養担体。
- 無機層が無機微粒子を含有する層である請求項1に記載の細胞培養担体。
- 無機層がステンレス層又はアルミニウム層である請求項2に記載の細胞培養担体。
- 無機層が直径10μm以上の穴を少なくとも1つ有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の細胞培養担体。
- 細胞接着性成分を含むゲル層が少なくとも1つ重層化された請求項1ないし5のいずれか1項に記載の細胞培養担体。
- 細胞接着成分がコラーゲン、アルギン酸、及びキトサンからなる群から選ばれる請求項6に記載の細胞培養担体。
- 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の細胞培養担体を用いて細胞を培養する方法。
- 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の細胞培養担体を用いて細胞を培養することにより得ることができる細胞培養物。
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JP2006246883A (ja) * | 2005-02-14 | 2006-09-21 | Fuji Photo Film Co Ltd | 細胞培養担体 |
JP2007053972A (ja) * | 2005-08-25 | 2007-03-08 | Fujifilm Corp | 高分子膜を用いた重層化細胞培養物の作製方法 |
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KR100842378B1 (ko) | 2007-04-27 | 2008-07-01 | 양현진 | 비중을 증가시킨 세포 배양용 지지체 및 그 제조방법 |
-
2003
- 2003-02-26 JP JP2003049251A patent/JP2004254608A/ja active Pending
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