JP2004254488A - 電源装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】マイナー制御器に対する伝達関数204を介して出力電圧Voを、電力変換部に対応する伝達関数KpとLCフィルタ部に対応する伝達関数Hとに対して正帰還することにより、マイナーループ部2000を導入する。このマイナーループ部2000により擬似的な積分要素を構成すると共に、電源装置全体の安定性を確保する。また、マイナーループ内に積分要素が構成されるので、メイン制御器において積分制御要素を導入する必要がなく、比例要素のみで制御することができるようになる。このようにシステムの次数を減らすことも可能となる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電源装置に関し、より詳しくは電源装置におけるフィードバック制御技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のPID制御器による電源装置1000の回路構成を図32に示す。電源装置1000は、降圧型の電源装置であって、LCフィルタ部1010と、PID制御器である制御部1020と、電力変換部1030とから構成される。なお、PID制御器は、応答性を上げるために全体のゲインを調整する比例(P:Proportional)要素、定常偏差を少なくするために低周波ゲインを上げる積分(I:Integral)要素及びゲインを上げたときの位相補償を行う微分(D:Derivative)要素を組み合わせた制御器である。
【0003】
制御部1020は、抵抗R21乃至R24と、キャパシタC21及びC22と、増幅器1021と、基準電圧電源1022とを含む。抵抗R21及びキャパシタC21は、LCフィルタ部1010の負荷Roの正極側の端子に接続されている。すなわち、出力電圧Voが入力される。キャパシタC21と抵抗R22は直列に接続されており、キャパシタC21及び抵抗R22は抵抗R21と並列に接続されている。従って、その一端がキャパシタC21に接続している抵抗R21の他端は、抵抗R22に接続されている。また、抵抗R21及びR22は、増幅器1021の負極側入力端子に接続されており、さらに抵抗R23及びキャパシタC22に接続されている。キャパシタC22と抵抗R24は直列に接続されており、キャパシタC22及び抵抗R24は抵抗R23と並列に接続されている。従って、その一端がキャパシタC22に接続している抵抗R23の他端は、抵抗R24と接続されている。また、抵抗R23及びR24は増幅器1021の出力端子に接続されている。増幅器1021の正極側の入力端子は基準電圧電源1022の正極側端子に接続されており、基準電圧電源1022の負極側端子は接地されている。
【0004】
電力変換部1030は、三角波発振器1031と、PWM比較器1032と、ドライブ回路1033と、ダイオード1034と、MOSFET1035と、入力電源1036とから構成される。PWM比較器1032の第1の入力端子は制御部1020の増幅器1021の出力端子に接続され、第2の入力端子は三角波発振器1031に接続される。PWM比較器1032の出力はドライブ回路1033に接続される。ドライブ回路1033の出力は、MOSFET1035のゲートに接続される。MOSFET1035のドレインは、入力電源1036の正極側端子に接続されており、ソースはダイオード1034のカソード及びチョークコイルLに接続されている。入力電源1036の負極側端子は、ダイオード1034のアノードとキャパシタCと負荷Roの負極側端子とに接続される。
【0005】
LCフィルタ部1010は、チョークコイルLと、キャパシタCと、負荷Roとが含まれる。その一端がMOSFET1035のソース及びダイオード1034のカソードに接続されているチョークコイルLの他端は、キャパシタC及び負荷Roの正極側端子に接続されている。上で述べたように、その一端がチョークコイルL及び負荷Roの正極側端子に接続されたキャパシタCの他端は、負荷Roの負極側端子とダイオード1034のアノードと入力電源1036の負極側端子と接続されている。
【0006】
図32に示すような制御部1020の伝達関数Gは、以下のように表される。
【数4】
【0007】
但し、E0、E1、E2、F0及びF1は係数であって、抵抗R21乃至R24及びキャパシタC21及びC22との関係は以下のとおりである。
【数5】
【0008】
より具体的には図33のテーブルのような回路定数を使用する。すなわち、R21=1KΩ、R22=24Ω、R23=180KΩ、R24=150Ω、C21=10nF、C22=50nFである。そうすると(1)式は、以下に示すようになる。
【数6】
【0009】
なお、電源装置1000の仕様及び他の回路定数は図34に示すものを使用するものとする。すなわち、入力電圧Vi=6V、出力電圧Vo=2.5V、出力電流Io=1A(最大)、チョークコイルLのリアクタンスL=3μH、キャパシタCのキャパシタンスC=9.4μF、負荷Ro=2.5Ω、基準電圧Vref=2.5V、電力変換回路のゲインKp=20dBである。
【0010】
図32の電源回路1000をブロック線図で表すと図35のようになる。すなわち、出力電圧Voが負帰還されて目標電圧Vrefから引き算され、その結果である(Vref−Vo)が制御器1020の伝達関数Gに入力される。この伝達関数Gの出力は、フィードフォワードされた目標電圧Vrefと加算されて、加算結果が制御対象の伝達関数Hに入力され、当該伝達関数Hの出力が出力電圧Voとなる。伝達関数Gは上で述べた(1)式の形になる。制御対象の伝達関数Hは以下のような式で表される。
【数7】
【0011】
これはLCフィルタ部1010と電力変換部1030を合わせた伝達関数である。図34で述べた数値を代入すると以下のとおりになる。
【数8】
【0012】
一巡伝達関数は、(1)式及び(3)式を掛け合わせたものとなる。より具体的には、(2)式と(4)式を掛け合わせたものとなる。
【0013】
(4)式をボード線図で表すと図36のようになる。図36において上段はゲインの周波数特性を表し、下段は位相の周波数特性を表す。図36の例では、3×104HzあたりにLCフィルタの共振周波数があり、位相が大幅に遅れることが示されている。(2)式をボード線図で表すと図37のようになる。図37において上段はゲインの周波数特性を表し、下段は位相の周波数特性を表す。ゲインは、10Hz程度までほぼ一定で、10Hz以降約2×104Hzまで減少するが、それ以上の周波数帯域では上昇する。位相は、約4×102Hzまで遅れるが、それ以上の周波数帯域では位相遅れが減少し、約2×104Hz以降になると位相進み補償が行われるようになっている。このように(2)式及び(4)式から計算される、PID制御器を採用した場合の一巡伝達関数のボード線図は図38のようになる。
【0014】
帰還系制御システムでは安定性が重要なため、従来から図38で示したように一巡伝達関数のボード線図又はナイキスト線図上で安定判別する。安定性は、ゲインが0dBのときの−180°からの位相角度を表す位相余裕、位相が−180°遅れた際のマイナス側のゲイン量であるゲイン余裕の量により判断される。一般的に、ゲイン余裕は6dB、位相余裕は45°乃至60°必要であると言われている。さらに、このような制御理論的な安定判別の他、一巡伝達関数のゲイン交差周波数(ゲインが0dBとなる周波数)が、その電源のスイッチング周波数以上にならないという条件も満たす必要がある。その理由は、スイッチング周波数以上でゲインを有することになると、そのスイッチング周波数成分のリップル電圧が制御系内に取り込まれ、発振や乱調が生じやすくなるためである。一般的には、スイッチング周波数の1/10以下にゲイン交差周波数がなるように設計する。
【0015】
スイッチング周波数は1MHzであり、図38では、ゲイン交差周波数100KHz、ゲイン余裕60dB以上、位相余裕64°の安定なシステムになっていることが分かる。
【0016】
しかしながら電源のシステムには、安定性を前提として更に高速応答性、すなわち負荷等の変動時にも高速に応答し、出力電圧を維持する能力が求められる。図32で示したシステムが高速応答かを図38から判断すると、共振周波数近辺でのゲインの落ち込みや、安定性を優先させるために全体的にゲインが低くなっていることから、満足のゆく応答性が得られていない。このように従来手法では安定性と高速応答性を両立するのは難しい。
【0017】
さらに、米国特許第5583752号公報(特許文献1)には、図39に示すような電源装置のブロック線図が示されている。すなわち、出力電圧Voが負帰還されて目標電圧Vrefとの差が計算され、その計算結果である(Vref−Vo)が制御器に対応する伝達関数1101に入力される。図39において各ブロック内に表される式は伝達関数であり、α,a0,c0,c1,b1,b2は係数である。なお、伝達関数1103のLCは、LCフィルタによる伝達関数を表しており、比例要素を表すものではない。また、出力電圧Voは伝達関数1104にも入力されており、当該伝達関数1104の出力と伝達関数1101の出力との差が計算される。すなわち、伝達関数1104を経由するマイナーループ1106は、目標電圧Vrefに対する負帰還となるメインループ1105と同様に負帰還となっている。伝達関数1104の出力と伝達関数1101の出力との差は、伝達関数1102に入力され、伝達関数1102の出力はLCフィルタに対応する伝達関数1103に入力され、出力電圧Voが計算される。
【0018】
この図39のブロック線図では、マイナーループ1106は負帰還されており、例えば仮に伝達関数1104を比例要素のみにすると、伝達関数1102と伝達関数1103と伝達関数1104にて構成される閉ループの伝達関数の周波数特性において、2次系の伝達関数の特性を示す減衰係数ζがさらに共振的になることにより、制御器による制御が困難になる。
【0019】
また、他の従来技術として特開昭59−144364号(特許文献2)には、電流の負帰還をマイナーループとして行う電源装置が示されているが、電流の負帰還を行うために電流検出器が必要となり、電源装置の設計上問題がある。
【0020】
【特許文献1】
米国特許第5583752号
【特許文献2】
特開昭59−144364号
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来技術では、安定性を保持しつつ十分に応答性を向上させることのできる電源装置は困難であった。
【0022】
従って、本発明の目的は、安定性を保持しつつ高速応答を可能とする新規な電源装置を提供することである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の態様に係る電源装置は、入力直流電源からの入力電圧を変換する電力変換回路と、電力変換回路の出力を平滑して負荷に供給するLCフィルタと、LCフィルタの出力電圧に基づいて電力変換回路を制御する制御回路とを具備し、上記制御回路が、
【数9】
(a0、b0及びb1は係数)で表される伝達関数を実現し、当該伝達関数を介して出力電圧を正帰還させるための第1回路と、出力電圧と基準電圧との差に比例する信号を出力する第2回路とを含む。
【0024】
このように(5)式で表される1次の伝達関数を実現するマイナー制御器を正帰還において導入することにより、LCフィルタ及び電力変換回路とを含む制御対象の伝達関数の周波数特性を変化させ、メイン制御器を比例制御要素としても安定性を確保しつつ高速応答を実現できるようになる。
【0025】
なお、上で述べた第1回路により、電力変換回路及びLCフィルタを含む制御対象に対して擬似的な積分制御要素を構成するようにしてもよい。このように擬似的な積分制御要素が構成されると、システム全体の次数を低下させることができ、安定性が増し、メイン制御器に基づく高ゲイン化により高速応答も実現できるようになる。
【0026】
また、電力変換回路及びLCフィルタを含む制御対象の伝達関数と第1回路の伝達関数とにより構成される閉ループの伝達関数の分母の定数項が0又は実質的に0になるように少なくともa0及びb0が設定されるようにしてもよい。定数項が0又は実質的に0となるような場合には、制御対象の伝達関数と第1回路の伝達関数とにより構成される閉ループの伝達関数において1/sが形成されることになり、積分制御要素が構成されることになる。マイナー制御部を含む閉ループの伝達関数自体に積分特性が含まれることになるため、実際の回路として積分制御要素を構成せずに済む。また、第1回路の伝達関数により制御対象の位相遅れを高周波側に移動させることができれば、位相余裕が増加し、安定性が向上する。
【0027】
本発明の第2の態様に係る電源装置は、入力直流電源からの入力電圧を変換する電力変換回路と、電力変換回路の出力を平滑して負荷に供給するLCフィルタと、LCフィルタの出力電圧に基づいて電力変換回路を制御する制御回路とを具備し、上記制御回路が、出力電圧に比例する信号を正帰還する第1回路と、
【数10】
(D0、N0及びN1は係数)で表される伝達関数を実現し、出力電圧と基準電圧との差に応じた信号を出力する第2回路とを含む。
【0028】
このように比例要素で表される0次の伝達関数を実現するマイナー制御器を正帰還において導入することにより、LCフィルタ及び電力変換回路とを含む制御対象の伝達関数の周波数特性を変化させ、(6)式を実現する第2回路により容易に安定性を確保しつつ高速応答を実現できるようになる。
【0029】
また、上で述べた第1回路により、電力変換回路及びLCフィルタを含む制御対象に対して擬似的な積分制御要素を構成するようにしてもよい。このように擬似的な積分制御要素が構成されると、システム全体の次数を低下させることができ、実際の回路を設けなくとも定常偏差を減少させることができる。
【0030】
また、電力変換回路及びLCフィルタを含む制御対象の伝達関数と第1回路の比例要素のみからなる伝達関数とにより構成される閉ループの伝達関数の分母の定数項が0又は実質的に0になるように第1回路の比例要素の係数が設定されるようにしてもよい。定数項が0又は実質的に0となるような場合には、制御対象の伝達関数と第1回路により実現される伝達関数とにより構成される閉ループの伝達関数において1/sが形成されることになり、積分制御要素が構成されることになる。これにより、メイン制御部において積分制御要素を設けずに済む。
【0031】
本発明の第3の態様に係る、入力直流電源からの入力直流電圧を変換し、LCフィルタを介して負荷に出力電圧を出力する電源装置は、出力電圧に基づき入力直流電圧の変換を制御するための信号を出力し、出力電圧に基づき正帰還を行い且つ少なくともLCフィルタを含む制御対象に対して擬似的な積分制御要素を構成するための制御回路を有する。
【0032】
また、上で述べた制御回路が、少なくともLCフィルタを含む制御対象の伝達関数の次数より低い次数の伝達関数を実現し、出力電圧と基準電圧との差に応じた信号を出力する回路を含むようにしてもよい。擬似的な積分制御要素が構成されているため、メイン制御部及びマイナー制御部の次数を下げても、十分高速性及び安定性を確保することができるようになる。
【0033】
本発明の第4の態様に係る電源装置は、入力直流電源からの入力電圧を変換する電力変換回路と、電力変換回路の出力を平滑して負荷に供給するLCフィルタと、LCフィルタの出力電圧に基づいて電力変換回路を制御する制御回路とを具備し、上記制御回路が、出力電圧に基づき正帰還を行い且つ電力変換回路及びLCフィルタを含む制御対象に対して擬似的な1次遅れ要素を構成するための回路を含む。
【0034】
本発明の第5の態様に係る電源装置は、入力直流電源からの入力電圧を変換する電力変換回路と、電力変換回路の出力を平滑して負荷に供給するLCフィルタと、LCフィルタの出力電圧に基づいて電力変換回路を制御する制御回路とを具備し、上記制御回路が、第1の伝達関数を実現し、当該第1の伝達関数を介して出力電圧を正帰還させるための第1回路と、第2の伝達関数を実現し、出力電圧と基準電圧との差に応じた信号を出力する第2回路とを含み、上記第1の伝達関数と上記第2の伝達関数の分母を同一とする。
【0035】
このようにすることにより、全体の閉ループ伝達関数において約分される項が出てくるため、全体の次数を増加させることが無く、LCフィルタ及び電力変換回路とを含む制御対象の伝達関数の周波数特性を変化させ、安定性を確保しつつ高速応答性を実現できるようになる。
【0036】
また、上で述べた第1回路により、電力変換回路及びLCフィルタを含む制御対象に対して擬似的な積分制御要素を構成するようにしてもよい。
【0037】
さらに、上で述べた第1の伝達関数が、
【数11】
(c0、d0及びd1は係数)で表され、電力変換回路及びLCフィルタを含む制御対象の伝達関数と第1回路の伝達関数とにより構成される閉ループの伝達関数の分母の定数項が0又は実質的に0になるように少なくともc0及びd0が設定されるようにしてもよい。
【0038】
なお、以下でも具体的に説明するが、本発明の第1乃至第5の態様に係る電源装置を実現する回路は多数存在し、いずれであってもよい。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下で述べる本発明の第1乃至第3の実施の形態は、帰還系制御を行うメイン制御器において、定常偏差を解消するために使用していた積分器を省略して低次元化し、代わりに制御対象である電源装置のLCフィルタ部及び電力変換部に正帰還のマイナーループを構成するマイナー制御器を加えることにより、擬似的な積分要素を構成し、定常偏差を解消する構成を有する。このような構成により、メイン制御器側に遅れ要素を省略して低次元化したことによる安定性の向上、及びその安定性の上に成り立つ応答性の向上が期待できる。
【0040】
[実施の形態1]
理解を容易にするため、まず本発明の第1の実施の形態に係る電源回路のブロック線図を図1に示す。
【0041】
このブロック線図では、出力電圧Voは負帰還されて基準電圧Vrefとの差が計算され、その計算結果である(Vref−Vo)がメイン制御器に対応する伝達関数201に入力される。伝達関数201は、図1にも示されているようにK1という比例定数のみである。また、出力電圧Voはマイナー制御器に対応する伝達関数204に入力された後に正帰還され、伝達関数201の出力と加算される。伝達関数204は、図1に示したように(5)式で表される。メイン制御器に対応する伝達関数201の出力の値とマイナー制御器に対応する伝達関数204の出力の値の加算結果は、電力変換部に対応する伝達関数Kp(202)に入力され、伝達関数Kp(202)の出力はLCフィルタ部に対応する伝達関数H(203)に入力され、当該伝達関数H(203)の出力が出力電圧Voとなる。なお、伝達関数Kp(202)及び伝達関数H(203)から求められる伝達関数は、(3)式で表される。図34で示した電源の仕様及び回路定数は本実施の形態でもそのまま使用するものとする。
【0042】
このようなブロック線図において、伝達関数Kp(202)、伝達関数H(203)及び伝達関数204からなるマイナーループ部2000における閉ループの伝達関数を考える。ここで伝達関数204をG2とすると、KpH/(1−KpHG2)であるから、(3)式及び(5)式を用いて以下のように計算される。
【数12】
ここで(7)式の分母の定数項に注目し、a0及びb0を以下の条件を満たすように設定する。すなわち、定数項を0にするような条件である。
【数13】
そうすると(7)式は以下のように変形される。
【数14】
【0043】
(9)式を見れば分母にsが生じているので、積分器が構成されたことが分かる。このように、(5)式のような伝達関数204を介して出力電圧Voを正帰還することにより、LCフィルタ部及び電力変換部を含む制御対象の周波数特性を変更することができるようになる。
【0044】
例えばa0=1.516×106、b0=1.516×105、b1=−2.018と設定すると、(5)式は以下のようになる。
【数15】
【0045】
(10)式のボード線図を図2に示す。図2において上段はゲインの周波数特性を表し、下段は位相の周波数特性を表す。ゲインは、約3×103Hzまではほぼフラットであるが、約3×103Hzから約1×106Hzまでの帯域では上昇している。また、約1×106Hz以上の帯域では再度フラットとなっている。一方位相は、約200Hzから徐々に−180°に向けて遅れてゆく特性となっている。
【0046】
そして(4)式及び(10)式から計算される、マイナーループ部2000における閉ループの伝達関数は以下のようになる。
【数16】
この(11)式をボード線図に表すと図3のようになる。図3において上段はゲインの周波数特性を表し、下段は位相の周波数特性を表す。ゲインは、約1×105Hzまで第1の傾きで減少し、それ以上の周波数帯域では第1の傾きより大きい第2の傾きで減少している。位相は、約3×103Hzまでは−90°でフラットであるが、それ以上の周波数帯域では約1×106Hzで−180°となるまで遅れが生じている。
【0047】
ここで図36に示したマイナーループ部2000が設けられていない場合におけるLCフィルタ部及び電力変換部を含む制御対象の周波数特性と、図3に示したマイナーループ部2000導入後におけるLCフィルタ部と電力変換部とマイナー制御器とによる閉ループの伝達関数の周波数特性とを図4を用いて比較してみる。図4の上段はゲインの周波数特性を表しており、下段は位相の周波数特性を示している。ゲイン曲線41はマイナーループ部2000が設けられていない場合のゲイン曲線であり、ゲイン曲線42はマイナーループ部2000導入後のゲイン曲線である。ゲインについては、約1×105Hz以上の帯域は同じであるが、それより低周波域では周波数特性が変化している。すなわち、共振周波数付近のピークがなくなり、フラットであった低周波域に積分要素の特性が現れている。これによりメイン制御器側には積分器を設ける必要がなくなる。よって図1のブロック線図で示したようにメイン制御器に対応する伝達関数201は比例定数K1のみで良くなる。
【0048】
また、位相曲線43はマイナーループ部2000が設けられていない場合の位相曲線であり、位相曲線44はマイナーループ部2000導入後の位相曲線である。位相については、高周波域において位相が−180°遅れるのは同じであるが、位相遅れが緩やかになり、且つ約3×104Hzから約6×105Hzまで位相遅れが小さくなっている。すなわち、高周波域での位相余裕が増加しているため、安定性の向上を図ることができるようになる。このように、擬似的な積分器をマイナーループ部2000により形成することにより安定性を向上させ、システムの次数を下げるなど構成を簡易にすることができる。
【0049】
次に、メイン制御器を含む、図1に示したブロック線図の一巡伝達関数を考える。マイナーループ部2000を導入して擬似的な積分要素を形成し、安定性の向上が図られているので、メイン制御器としては安定性を維持しつつ、設計条件に合わせたゲイン調整をするだけである。すなわち、メイン制御器としてはゲイン調整だけでよいから0次(比例要素)となる。この結果、マイナー制御器及びメイン制御器を合わせても1次のシステムとなる。図1に示したようにメイン制御器の伝達関数201は比例定数K1であって、ここではゲイン交差周波数を100KHz以下とするためにK1=0.46(=−6.7dB)とする。伝達関数201をボード線図で表すと図5のようになる。上段はゲインの周波数特性を表し、下段は位相の周波数特性を表す。ゲインは−6.7dBでフラットであり、位相も0°でフラットである。
【0050】
図1に示したブロック線図の一巡伝達関数は(11)式とK1(=0.46)の積であって、図3に示したゲイン曲線を6.7dBだけ下に移動させた形となる。位相については図5に示したように0°でフラットであるから図3に示した位相曲線と変わらない。念のため図6に一巡伝達関数のボード線図を示しておく。ゲイン交差周波数は上で設定したとおり100K(=105)Hz以下であり、その際の位相遅れは112°であって、位相余裕は68°となり、安定なシステムであることが分かる。
【0051】
図1に示したようなブロック線図を実現する電源装置の回路図を図7及び図8に示す。図7に示すように、電源装置10は、降圧型の電源装置であって、LCフィルタ部1と、制御部2と、電力変換部3とから構成される。制御部2は、メイン制御器及びマイナー制御器の両方を含み、これらについては図8で詳細に述べる。
【0052】
電力変換部3は、三角波発振器31と、PWM比較器32と、ドライブ回路33と、ダイオード34と、MOSFET35と、入力電源36とから構成される。PWM比較器32の第1の入力端子は制御部2の出力端子に接続され、第2の入力端子は三角波発振器31に接続される。PWM比較器32の出力はドライブ回路33に接続される。ドライブ回路33の出力は、MOSFET35のゲートに接続される。MOSFET35のドレインは、入力電源36の正極側端子に接続されており、ソースはダイオード34のカソード及びチョークコイルLに接続されている。入力電源36の負極側端子は、ダイオード34のアノードとキャパシタCと負荷Roの負極側端子とに接続される。
【0053】
LCフィルタ部1は、チョークコイルLと、キャパシタCと、負荷Roとが含まれる。その一端がMOSFET35のソース及びダイオード34のカソードに接続されているチョークコイルLの他端は、キャパシタC及び負荷Roの正極側端子に接続されている。上で述べたように、その一端がチョークコイルL及び負荷Roの正極側端子に接続されたキャパシタCの他端は、負荷Roの負極側端子とダイオード34のアノードと入力電源36の負極側端子と接続されている。
【0054】
図7に示した電源装置10の動作を簡単に説明すると、制御部2は負荷Roに現れる出力電圧Voと基準電圧Vrefに基づいて制御信号uを生成する。この制御信号uはPWM比較器32において三角波発振器31から出力される三角波信号と比較され、制御信号uの電圧に応じたパルス幅の信号が出力される。PWM比較器32の出力信号はドライブ回路33を介してMOSFET35をオン又はオフする。入力電源36の入力電圧Viは、MOSFET35のオン及びオフに従って変換され、ダイオード34とチョークコイルL及びキャパシタCとにより構成されるLCフィルタとにより平滑化されて負荷Roに出力電圧Voとして出力される。これにより出力電圧Vo及び基準電圧Vrefに基づき安定的な制御がなされる。
【0055】
図8に制御部2の詳細な回路図を示す。制御部2は、オペアンプ21乃至25と、基準電圧電源26と、抵抗R1乃至R6、Ra、Rb、Rk,Rl,Rm,Rn,Rp,Rq,Rr並びにRsと、キャパシタC1とを含む。キャパシタC1と抵抗R2は、LCフィルタ部1の負荷Roの正極側の端子に接続されている。すなわち、出力電圧Voが入力される。キャパシタC1の他端は抵抗R3とに接続されている。抵抗R3の他端は、抵抗R4とオペアンプ21の負極側入力端子に接続されている。抵抗R2の他端は、オペアンプ21の正極側入力端子及び抵抗R1に接続されている。抵抗R1はオペアンプ21の正極側入力端子に接続されており、抵抗R1の他端は接地されている。抵抗R4の他端は、オペアンプ21の出力端子及び抵抗Rpに接続されている。
【0056】
また抵抗R5も、LCフィルタ部1の負荷Roの正極側の端子に接続されている。すなわち、出力電圧Voが入力される。抵抗R5の他端は、オペアンプ22の負極側入力端子と抵抗R6に接続されている。抵抗R6の他端は、オペアンプ22の出力端子と抵抗Rlとに接続されている。オペアンプ22の正極側入力端子は、基準電圧電源26の正極側端子と抵抗Raに接続されている。基準電圧電源26の負極側端子は接地されている。抵抗Raの他端は抵抗Rbとオペアンプ24の正極側入力端子に接続されている。抵抗Rbはオペアンプ24の正極側入力端子と抵抗Raに接続されており、その他端は接地されている。オペアンプ24の負極側入力端子はオペアンプ24の出力端子と抵抗Rmとに接続されている。この抵抗Rmの他端はオペアンプ25の負極側入力端子と抵抗Rnとに接続されている。抵抗Rnは、オペアンプ25の負極側入力端子と抵抗Rmとに接続されており、その他端はオペアンプ25の出力端子と抵抗Rqに接続されている。
【0057】
オペアンプ22の出力端子に接続されている抵抗Rlの他端は抵抗Rkとオペアンプ25の正極側入力端子に接続されている。抵抗Rkは、オペアンプ25の正極側入力端子と抵抗Rlに接続されており、その他端は接地されている。
【0058】
オペアンプ21の出力端子に接続されている抵抗Rpの他端はオペアンプ23の正極側入力端子と抵抗Rqに接続されている。オペアンプ25の出力端子に接続されている抵抗Rqの他端は、抵抗Rpとオペアンプ23の正極側入力端子に接続されている。オペアンプ23の出力端子は抵抗Rrに接続されており、抵抗Rrの他端はオペアンプ23の負極側入力端子及び抵抗Rsに接続されている。抵抗Rsは、抵抗Rr及びオペアンプ23の負極側入力端子に接続されており、その他端は接地されている。このオペアンプ23の出力が、電力変換部3に対する制御信号uとなる。
【0059】
図8中、オペアンプ21とキャパシタC1と抵抗R1乃至R4とを含む回路803は、マイナー制御器を実現しており、図1のブロック線図における伝達関数204を表す(5)式の各係数は以下のように表される。
【数17】
【0060】
図8中、オペアンプ22と抵抗R5及びR6とを含む回路801と、オペアンプ24及び25と抵抗Ra,Rb,Rk,Rl,Rm及びRnとを含む回路802とにより図1のブロック線図における(Vref−Vo)の演算器及び伝達関数201が実現される。なお回路801において以下のような演算がなされる。
【数18】
すなわち、K1=R6/R5(=0.46)となっているが、Vrefが余分に加算されているため回路802にてその分を減算する。この回路802にて減算されるのは以下に表される数である。
【数19】
原理的にはVrefが減算されれば十分であるが、実際には電力変換部3での三角波オフセット(ここで三角波はVp2=2VとVp1=1.4Vとの間で増減するため、Vref−Vp1=1.1V)を考慮して減算量を調整している。抵抗Ra及びRbにて抵抗分割しているのはその調整のためである。Vref=2.5Vであるから、以下のようにRa及びRbが決定される。
【数20】
【0061】
以上の説明をまとめると、図9に示すような回路定数にする必要がある。すなわち、R1=10KΩ,R2=90KΩ,R3=10KΩ,R4=23.5KΩ,R5=10KΩ,R6=4.6KΩ,Rk,Rl,Rm,Rn,Rp,Rq,Rr及びRs=10KΩ,Ra=28KΩ,Rb=22KΩ,C1=66pFである。
【0062】
なお回路804は、図1の伝達関数201の出力と伝達関数204の出力とを加算する演算器に相当する。
【0063】
[実施の形態2]
理解を容易にするため、まず本発明の第2の実施の形態に係る電源回路のブロック線図を図10に示す。
【0064】
このブロック線図では、出力電圧Voは負帰還されて基準電圧Vrefとの差が計算され、その計算結果である(Vref−Vo)がメイン制御器に対応する伝達関数301に入力される。伝達関数301は、図10にも示されているように1次の伝達関数であり、(6)式にて表される。また、出力電圧Voはマイナー制御器に対応する伝達関数304に入力された後に正帰還され、伝達関数301の出力と加算される。伝達関数304は、図10に示したように比例定数K2で表される。メイン制御器に対応する伝達関数301の出力の値とマイナー制御器に対応する伝達関数304の出力の値の加算結果は、電力変換部に対応する伝達関数Kp(302)に入力され、伝達関数Kp(302)の出力はLCフィルタ部に対応する伝達関数Ha(303)に入力され、当該伝達関数Ha(303)の出力が出力電圧Voとなる。
【0065】
本実施の形態では、チョークコイルLにその内部抵抗RLとキャパシタCに等価直列抵抗Rcを加えたモデルを考える。従って、伝達関数Kp(302)及び伝達関数Ha(303)から求められる伝達関数は、(3)式ではなく、以下のように表される。
【数21】
図34で示した電源の仕様及び回路定数は本実施の形態でもそのまま使用するものとする。また、RL=100mΩ、Rc=4mΩとする。そうすると、(12)式は以下のように表される。
【数22】
(13)式をボード線図に示すと図11に示すようになる。図11において上段はゲインの周波数特性を表し、下段は位相の周波数特性を表す。図36で示した制御対象のボード線図と比較すると、内部抵抗RL及び等価直列抵抗Rcにより共振ピークが下がっている。また、高周波域で位相遅れが減少している。
【0066】
なお、伝達関数304はK2であり、K2=0.108とすると図12のようなボード線図となる。図12において上段はゲインの周波数特性を表し、下段は位相の周波数特性を表し、ゲインも位相もフラットであることが分かる。
【0067】
このようなブロック線図において、伝達関数Kp(302)、伝達関数Ha(303)及び伝達関数304からなるマイナーループ部3000における閉ループの伝達関数を考える。この閉ループの伝達関数は、KpHa/(1−KpHaK2)であるから、(12)式から以下のように計算される。
【数23】
ここで(14)式の分母の定数項に注目し、K2を以下の条件を満たすように設定する。すなわち、定数項を0にするような条件である。
【数24】
そうすると(14)式は以下のように変形される。
【数25】
【0068】
(16)式を見れば分母にsが生じているので、積分器が構成されることとなる。このように、比例定数である伝達関数304を介して出力電圧Voを正帰還することにより、LCフィルタ部及び電力変換部を含む制御対象の周波数特性を変更することができるようになる。マイナーループ部3000における閉ループの伝達関数は、より具体的には(13)式及びK2=0.108より計算され、以下のようになる。
【数26】
【0069】
(17)式をボード線図に示すと図13のようになる。図13では、上段にゲインの周波数特性が示され、下段に位相の周波数特性が示されている。ゲインは、ほぼ単調に減少しており、位相は約100Hzにおける−90°から約3×105Hzで−170°程度まで遅れ、そして107Hzで−110°程度まで位相遅れが減少する。
【0070】
ここで図11に示した、マイナーループ部3000が設けられていない場合におけるLCフィルタ部及び電力変換部を含む制御対象の周波数特性と、図13に示した、マイナーループ部3000導入後におけるLCフィルタ部と電力変換部とマイナー制御器とによる閉ループの伝達関数の周波数特性とを図14を用いて比較してみる。図14の上段はゲインの周波数特性を表しており、下段は位相の周波数特性を示している。ゲイン曲線52はマイナーループ部3000が設けられていない場合のゲイン曲線であり、ゲイン曲線51はマイナーループ部3000導入後のゲイン曲線である。ゲインについては、約105Hz以降は同じであるが、それより低周波域では周波数特性が変化している。すなわち、共振周波数付近のピークがなくなり、フラットであった低周波域に積分要素の特性が現れている。これによりメイン制御器側には積分器を設ける必要がなくなる。
【0071】
また、位相曲線54はマイナーループ部3000が設けられていない場合の位相曲線であり、位相曲線53はマイナーループ部3000導入後の位相曲線である。位相については、約105Hz以上の高周波域において−170°程度の位相遅れから次第に位相遅れが減少するのは同じであるが、低周波域においてはマイナーループ部3000導入後の位相遅れが大きくなっている。これはマイナー制御器が0次の伝達関数で表されるため第1の実施の形態のように位相進み補償の効果はないからである。従って、メイン制御器により位相進み補償を行う必要がある。なお、高周波域において位相遅れが減少するのは、等価直列抵抗Rcのためであって、これらによって位相進み補償がないわけではない。このように、擬似的な積分器をマイナーループ部3000により形成することにより、システムの次数を下げるなど構成を簡易にすることができる。
【0072】
次に、メイン制御器を含む、図10に示したブロック線図の一巡伝達関数を考える。マイナーループ部3000を導入して擬似的な積分要素を形成しているので、メイン制御器としては安定性を確保するための制御を行う。すなわち、メイン制御器としては位相進み補償を行って位相余裕を確保する。この結果、マイナー制御器及びメイン制御器を合わせても1次のシステムとなる。
【0073】
メイン制御器の伝達関数を表す(6)式の各係数をN1=2.82,N0=9.26×105及びD0=1.54×106とすると、(6)式は以下のように変形される。
【数27】
(18)式をボード線図で表すと図15のようになる。図15において上段はゲインの周波数特性を、下段は位相の周波数特性を表す。ゲインは約2×104Hzまでフラットであるが、それ以上の周波数帯域では上昇している。位相は、約5×102Hzから約105Hzまで位相進みが大きくなり、約105Hz以上の周波数帯域は位相進みが少なくなっている。
【0074】
次にマイナーループ部3000の伝達関数((17)式)とメイン制御部に対応する伝達関数301((18)式)とから計算される一巡伝達関数を図16に示す。図16において上段はゲインの周波数特性を表し、下段は位相の周波数特性を表す。上で述べたようにゲイン交差周波数は100KHzに設定されており、ゲインはほぼ単調に減少している。一方位相は、約103Hzまで−90°でフラットであり、約103Hzから約106Hzでは位相遅れが徐々に大きくなるが、約106Hz以上の周波数帯域では位相遅れが減少する。なお、位相余裕は約51°であり、安定なシステムであると言える。
【0075】
図10に示したようなブロック線図を実現する電源装置の回路図を図17及び図18に示す。図17に示すように、電源装置10aは、降圧型の電源装置であって、LCフィルタ部1aと、制御部2aと、電力変換部3とから構成される。制御部2aは、メイン制御器及びマイナー制御器の両方を含み、これらについては図18で詳細に述べる。
【0076】
電力変換部3は、三角波発振器31と、PWM比較器32と、ドライブ回路33と、ダイオード34と、MOSFET35と、入力電源36とから構成される。PWM比較器32の第1の入力端子は制御部2の出力端子に接続され、第2の入力端子は三角波発振器31に接続される。PWM比較器32の出力はドライブ回路33に接続される。ドライブ回路33の出力は、MOSFET35のゲートに接続される。MOSFET35のドレインは、入力電源36の正極側端子に接続されており、ソースはダイオード34のカソード及びチョークコイルLに接続されている。入力電源36の負極側端子は、ダイオード34のアノードとキャパシタC(キャパシタCの等価回路直列抵抗Rc)と負荷Roの負極側端子とに接続される。
【0077】
LCフィルタ部1aは、チョークコイルLと、キャパシタCと、負荷Roとが含まれる。なお、本実施の形態では、上で述べたようにチョークコイルLの内部抵抗RL及びキャパシタCの等価直列抵抗Rcも含まれる。その一端がMOSFET35のソース及びダイオード34のカソードに接続されているチョークコイルL及び内部抵抗RLの他端は、キャパシタC及び等価直列抵抗Rc並びに負荷Roの正極側端子に接続されている。上で述べたように、その一端がチョークコイルL及び内部抵抗RL及び負荷Roの正極側端子に接続されたキャパシタC及び等価直列抵抗Rcの他端は、負荷Roの負極側端子とダイオード34のアノードと入力電源36の負極側端子と接続されている。
【0078】
図17に示した電源装置10aの動作を簡単に説明すると、制御部2aは負荷Roに現れる出力電圧Voと基準電圧Vrefに基づいて制御信号uを生成する。この制御信号uはPWM比較器32において三角波発振器31から出力される三角波信号と比較され、制御信号uの電圧に応じたパルス幅の信号が出力される。PWM比較器32の出力信号はドライブ回路33を介してMOSFET35をオン又はオフする。入力電源36の入力電圧Viは、MOSFET35のオン及びオフに従って変換され、ダイオード34とチョークコイルL及びキャパシタCと等価直列抵抗RL及びRcにより構成されるLCフィルタとにより平滑化されて負荷Roに出力電圧Voとして出力される。これにより出力電圧Vo及び基準電圧Vrefに基づき安定的な制御がなされる。
【0079】
図18に制御部2aの詳細な回路図を示す。制御部2aは、オペアンプ41乃至45と、基準電圧電源46と、抵抗R41乃至R45、R4a、R4b、R4k,R4l,R4m,R4n,R4p,R4q,R4r並びにR4sと、キャパシタC41とを含む。抵抗R44は、LCフィルタ部1aの負荷Roの正極側の端子に接続されている。すなわち、出力電圧Voが入力される。抵抗R44の他端は抵抗R45とオペアンプ41の正極側入力端子と接続されている。抵抗R45は、抵抗R44とオペアンプ41の正極側入力端子に接続されており、その他端は接地されている。オペアンプ41の負極側入力端子は当該オペアンプ41の出力端子に接続されている。オペアンプ41の出力端子はまた抵抗R4pに接続されている。
【0080】
また抵抗R41及びR42も、LCフィルタ部1aの負荷Roの正極側の端子に接続されている。すなわち、出力電圧Voが入力される。抵抗R42はキャパシタC41と直列に接続されており、抵抗R42及びキャパシタC41は抵抗R41と並列に接続されている。すなわち、抵抗R41の他端は、抵抗R43及びキャパシタC41とオペアンプ42の負極側入力端子に接続されている。また、その一端が抵抗R42に接続されているキャパシタC41の他端もオペアンプ42の負極側入力端子に接続されている。抵抗R43は、抵抗R41及びキャパシタC41とオペアンプ42の負極側入力端子とに接続されており、その他端はオペアンプ42の出力端子と抵抗R4lとに接続されている。オペアンプ42の正極側入力端子は基準電圧電源46の正極側端子と抵抗R4aとに接続されている。基準電圧電源46の負極側端子は接地されている。
【0081】
抵抗R4aの他端は抵抗R4bとオペアンプ44の正極側入力端子に接続されている。抵抗R4bは、抵抗R4aとオペアンプ44の正極側入力端子に接続されており、その他端は接地されている。オペアンプ44の負極側入力端子はオペアンプ44の出力端子と抵抗R4mとに接続されている。この抵抗R4mの他端はオペアンプ45の負極側入力端子と抵抗R4nとに接続されている。抵抗R4nは、オペアンプ45の負極側入力端子と抵抗R4mとに接続されており、他端はオペアンプ45の出力端子と抵抗R4qに接続されている。
【0082】
オペアンプ42の出力端子に接続されている抵抗R4lの他端は抵抗R4kとオペアンプ45の正極側入力端子に接続されている。抵抗R4kは、オペアンプ45の正極側入力端子と抵抗R4lに接続されており、その他端は接地されている。
【0083】
オペアンプ41の出力端子に接続されている抵抗R4pの他端はオペアンプ43の正極側入力端子と抵抗R4qに接続されている。オペアンプ45の出力端子に接続されている抵抗R4qの他端は、抵抗R4pとオペアンプ43の正極側入力端子に接続されている。オペアンプ43の出力端子は抵抗R4rに接続されており、抵抗R4rの他端はオペアンプ43の負極側入力端子及び抵抗R4sに接続されている。抵抗R4sは、抵抗R4r及びオペアンプ43の負極側入力端子に接続されており、その他端は接地されている。このオペアンプ43の出力が、電力変換部3に対する制御信号uとなる。
【0084】
図18中、オペアンプ41と抵抗R44及びR45を含む回路1813は、マイナー制御器に対応する図10のブロック線図における伝達関数304の比例定数K2を実現している。すなわち、K2=R45/(R45+R44)である。
【0085】
図18中、オペアンプ42と抵抗R41乃至R43とキャパシタC41とを含む回路1811と、オペアンプ44及び45と抵抗R4a,R4b,R4k,R4l,R4m及びR4nとを含む回路1812とにより図10のブロック線図における(Vref−Vo)の演算器及び伝達関数301が実現される。なお回路1811において以下のような演算がなされる。
【数28】
図10のブロック図に従えば(6)式と(Vref−Vo)との積が計算されるが、ここではVrefが余分に加算されている。従って、N0,N1,D0は以下のようになる。
【数29】
【0086】
余分に加算されているVrefを回路1812で減算する。この回路1812にて減算されるのは以下に表される数である。
【数30】
原理的にはVrefが減算されれば十分であるが、実際には電力変換部3での三角波オフセット(ここでは三角波はVp2=2VとVp1=1.4Vとの間で増減するため、Vref−Vp1=1.1V)を考慮して減算量を調整している。抵抗R4a及びR4bにて抵抗分割しているのはその調整のためである。Vref=2.5Vであるから、以下のようにR4a及びR4bが決定される。
【数31】
【0087】
以上の説明をまとめると、図19に示すような回路定数にする必要がある。すなわち、R41=10KΩ,R42=2.7KΩ,R43=6KΩ,R44=10KΩ,R45=1.21KΩ,R4k,R4l,R4m,R4n,R4p,R4q,R4r及びR4s=10KΩ,R4a=28KΩ,R4b=22KΩ,C41=240pFである。
【0088】
なお回路1814は、図10の伝達関数301の出力と伝達関数304の出力を加算する演算器に相当する。
【0089】
[実施の形態3]
理解を容易にするため、まず本発明の第3の実施の形態に係る電源回路のブロック線図を図20に示す。
【0090】
このブロック線図では、出力電圧Voは負帰還されて基準電圧Vrefとの差が計算され、その計算結果である(Vref−Vo)がメイン制御器に対応する伝達関数401に入力される。伝達関数401は、図20にも示されているように以下に示す式で表される。
【数32】
また、出力電圧Voはマイナー制御器に対応する伝達関数404に入力された後に正帰還され、伝達関数401の出力と加算される。伝達関数404は、図20に示したように以下の式で表される。
【数33】
メイン制御器に対応する伝達関数401の出力の値とマイナー制御器に対応する伝達関数404の出力の値の加算結果は、電力変換部に対応する伝達関数Kp(402)に入力され、伝達関数Kp(402)の出力はLCフィルタ部に対応する伝達関数H(403)に入力され、当該伝達関数H(403)の出力が出力電圧Voとなる。なお、伝達関数Kp(402)及び伝達関数H(403)から求められる伝達関数は、(3)式で表される。また、図34で示した電源の仕様及び回路定数は本実施の形態でもそのまま使用するものとする。
【0091】
このようなブロック線図において、伝達関数Kp(402)、伝達関数H(403)及び伝達関数404からなるマイナーループ部4000における閉ループの伝達関数を考える。ここで伝達関数404をG3とすると、KpH/(1−KpHG3)であるから、(3)式及び(20)式を用いて以下のように計算される。
【数34】
ここで(21)式の分母の定数項に注目し、c0及びd0を以下の条件を満たすように設定する。すなわち、定数項を0にするような条件である。
【数35】
そうすると(21)式は以下のように変形される。
【数36】
【0092】
(22)式を見れば分母にsが生じているので、積分器が構成されたことが分かる。このように、(20)式のような伝達関数404を介して出力電圧Voを正帰還することにより、LCフィルタ部及び電力変換部を含む制御対象の周波数特性を変更することができるようになる。
【0093】
例えばc0=1.515×106、d0=1.515×105、d1=−2.510と設定すると、(20)式は以下のようになる。
【数37】
【0094】
(23)式のボード線図を図21に示す。図21において上段はゲインの周波数特性を表し、下段は位相の周波数特性を表す。ゲインは、約3×103Hzまではほぼフラットであるが、約3×103Hzから約6×105Hzまでの帯域では上昇している。また、約6×105Hz以上の帯域では再度フラットとなっている。一方位相は、約200Hzから徐々に−180°に向けて遅れてゆく特性となっている。
【0095】
そして(4)式及び(23)式から計算される、マイナーループ部4000における閉ループの伝達関数は以下のようになる。
【数38】
【0096】
この(24)式をボード線図に表すと図22のようになる。図22において上段はゲインの周波数特性を表し、下段は位相の周波数特性を表す。ゲインは、約1×105Hzまで第1の傾きで減少し、それ以上の周波数帯域では第1の傾きより大きい第2の傾きで減少している。位相は、約1×103Hzまでは−90°でフラットであるが、それ以上の周波数帯域において約1×106Hzで−180°となるまで遅れが生じている。
【0097】
ここで図36に示したマイナーループ部4000が設けられていない場合におけるLCフィルタ部及び電力変換部を含む制御対象の周波数特性と、図22に示したマイナーループ部4000導入後におけるLCフィルタ部と電力変換部とマイナー制御器とによる閉ループの伝達関数の周波数特性とを図23を用いて比較してみる。図23の上段はゲインの周波数特性を表しており、下段は位相の周波数特性を示している。ゲイン曲線61はマイナーループ部4000が設けられていない場合のゲイン曲線であり、ゲイン曲線62はマイナーループ部4000導入後のゲイン曲線である。ゲインについては、約1×105Hz以上は同じであるが、それより低周波域では周波数特性が変化している。すなわち、共振周波数付近のピークがなくなり、フラットであった低周波域に積分要素の特性が現れている。これによりメイン制御器側には積分器を設ける必要がなくなる。なお、本実施の形態においては、メイン制御器において(19)式に示したように一次遅れ要素を設けているが、以下でも詳細に説明するように、(19)式の分母と(20)式の分母を同一とすることにより、メイン制御器側の一次遅れ要素をキャンセルしている。
【0098】
また、位相曲線63はマイナーループ部4000が設けられていない場合の位相曲線であり、位相曲線64はマイナーループ部4000導入後の位相曲線である。位相については、高周波域において位相が−180°遅れるのは同じであるが、位相遅れが緩やかになり、且つ約3×104Hzから約6×105Hzまで位相遅れが小さくなっている。すなわち、高周波域での位相余裕が増加しているため、安定性の向上を図ることができるようになる。このように、擬似的な積分器をマイナーループ部4000により形成することにより安定性を向上させ、システムの次数を下げることが可能となる。
【0099】
次に、メイン制御器を含む、図20に示したブロック線図の一巡伝達関数を考える。メイン制御器の伝達関数は(19)式であり、c0=1.515×106,及びe0=7.215×105とするならば、(19)式は以下の式で表される。
【数39】
(25)式で表される伝達関数401のボード線図を図24に示す。上段はゲインの周波数特性を表し、下段は位相の周波数特性を表す。ゲインは、約1×105Hzまではフラットであるが、約1×105Hz以上では徐々に減少している。位相は、約5×103Hzまでは0°であるが、徐々に遅れて約107Hzでは90°遅れた状態になる。
【0100】
図20に示したブロック線図の一巡伝達関数は(24)式と(25)式の積であって、以下に示す式で表される。
【数40】
(26)式で表される一巡伝達関数のボード線図を図25に示す。上段はゲインの周波数特性を表し、下段は位相の周波数特性を表す。ゲインは、約1×105Hzまで第1の傾きで減少し、約1×105Hz以上の周波数帯域では第1の傾きより大きい第2の傾きで減少している。また、ゲイン交差周波数は約4×104Hzとなっている。さらに、位相については、約1K(=103)Hzまでは90°の位相遅れ、約1KHz以上の周波数帯域では徐々に遅れが大きくなって約107Hzでは270°の位相遅れになっている。なお、位相余裕は約70°となっており、安定的なシステムであることが分かる。図25を第1の実施の形態に係る一巡伝達関数を示す図6と比較すると、ゲイン曲線はほぼ同じような曲線であるが約105Hz以降の傾きが図25の方が大きくなっていること、及び位相曲線がさらに90°遅れるようになっていることが分かる。これらは図24に示した伝達関数401の影響である。
【0101】
このように本実施の形態と第1の実施の形態ではメイン制御器の伝達関数201(0次)と伝達関数401(1次)とが異なるにもかかわらず、図25に示したように一巡伝達関数のゲイン曲線がほぼ同じとなっており、その理由は以下のとおりである。すなわち、マイナーループ部4000の閉ループ伝達関数は(22)式に示すとおりであるから、メイン制御器の伝達関数401((19)式)を用いると、全体の一巡伝達関数は以下の式で表される。
【数41】
(27)式に示すように、メイン制御器の伝達関数401の分母(s+c0)はマイナーループ部4000の閉ループ伝達関数の分子(s+c0)と約分される。なお、マイナーループ部4000の閉ループ伝達関数の分子における(s+c0)は伝達関数404の分母(s+c0)に由来する。従って、全体の一巡伝達関数((28)式)では、メイン制御器の伝達関数の分母の影響は消え去っており、全体の一巡伝達関数((28)式)の分母の次数(3次)は第1の実施の形態における次数((9)式)と同じになっている。従って、本実施の形態における全体の一巡伝達関数のゲイン曲線は第1の実施の形態における全体の一巡伝達関数のゲイン曲線とほぼ同じになっている。よって、メイン制御器の次数を1次にしても、メイン制御器の伝達関数401の分母とマイナーループ部4000の伝達関数404の分母とを一致させることにより、メイン制御器の次数を0次とした場合とほぼ同じ効果を得ることができる。すなわち、メイン制御器とマイナー制御器の次数は共に1次であるが制御器全体としても1次とほぼ同じになる。但し、上で説明したように、メイン制御器の伝達関数401の分母(s+c0)はマイナーループ部4000の閉ループ伝達関数の分子(s+c0)と約分されてしまうので、その分全体の一巡伝達関数における分子の次数が1減ってしまう。従って、位相進み要素が減ってしまったことになるため、位相は270°まで遅れるようになる。
【0102】
次に図20に示したようなブロック線図を実現する電源装置の回路図を説明する。なお、基本的な構成は図7に示したとおりである。図7に示すように、電源装置10は、LCフィルタ部1と、制御部2と、電力変換部3とから構成される。制御部2は、メイン制御器及びマイナー制御器の両方を含み、これらについては以下図26で詳細に述べる。
【0103】
図26に制御部2の詳細な回路図を示す。制御部2は、オペアンプ21乃至25と、基準電圧電源26と、抵抗R1乃至R6、Ra、Rb、Rk,Rl,Rm,Rn,Rp,Rq,Rr並びにRsと、キャパシタC1及びC2とを含む。キャパシタC2が追加されたことが図8との差である。キャパシタC1と抵抗R2は、LCフィルタ部1の負荷Roの正極側の端子に接続されている。すなわち、出力電圧Voが入力される。キャパシタC1の他端は抵抗R3とに接続されている。抵抗R3の他端は、抵抗R4とオペアンプ21の負極側入力端子に接続されている。抵抗R2の他端は、オペアンプ21の正極側入力端子及び抵抗R1に接続されている。抵抗R1はオペアンプ21の正極側入力端子に接続されており、抵抗R1の他端は接地されている。抵抗R4の他端は、オペアンプ21の出力端子及び抵抗Rpに接続されている。
【0104】
また抵抗R5も、LCフィルタ部1の負荷Roの正極側の端子に接続されている。すなわち、出力電圧Voが入力される。抵抗R5の他端は、オペアンプ22の負極側入力端子と抵抗R6及びキャパシタC2に接続されている。抵抗R6及びキャパシタC2の他端は、オペアンプ22の出力端子と抵抗Rlとに接続されている。キャパシタC2と抵抗R6は並列に接続されている。オペアンプ22の正極側入力端子は、基準電圧電源26の正極側端子と抵抗Raに接続されている。基準電圧電源26の負極側端子は接地されている。抵抗Raの他端は抵抗Rbとオペアンプ24の正極側入力端子に接続されている。抵抗Rbはオペアンプ24の正極側入力端子と抵抗Raに接続されており、その他端は接地されている。オペアンプ24の負極側入力端子はオペアンプ24の出力端子と抵抗Rmとに接続されている。この抵抗Rmの他端はオペアンプ25の負極側入力端子と抵抗Rnと接続されている。抵抗Rnは、オペアンプ25の負極側入力端子と抵抗Rmとに接続されており、その他端はオペアンプ25の出力端子と抵抗Rqに接続されている。
【0105】
オペアンプ22の出力端子に接続されている抵抗Rlの他端は抵抗Rkとオペアンプ25の正極側入力端子に接続されている。抵抗Rkは、オペアンプ25の正極側入力端子と抵抗Rlに接続されており、その他端は接地されている。
【0106】
オペアンプ21の出力端子に接続されている抵抗Rpの他端はオペアンプ23の正極側入力端子と抵抗Rqに接続されている。オペアンプ25の出力端子に接続されている抵抗Rqの他端は、抵抗Rpとオペアンプ23の正極側入力端子に接続されている。オペアンプ23の出力端子は抵抗Rrに接続されており、抵抗Rrの他端はオペアンプ23の負極側入力端子及び抵抗Rsに接続されている。抵抗Rsは、抵抗Rr及びオペアンプ23の負極側入力端子に接続されており、その他端は接地されている。このオペアンプ23の出力が、電力変換部3に対する制御信号uとなる。
【0107】
図26中、オペアンプ21とキャパシタC1と抵抗R1乃至R4とを含む回路803は、マイナー制御器を実現しており、図20のブロック線図における伝達関数404を表す(20)式の各係数は以下のように表される。
【数42】
【0108】
図26中、オペアンプ22と抵抗R5及びR6とキャパシタC2とを含む回路801aと、オペアンプ24及び25と抵抗Ra,Rb,Rk,Rl,Rm及びRnとを含む回路802とにより図20のブロック線図における(Vref−Vo)の演算器及び伝達関数401が実現される。なお回路801aにおいて以下のような演算がなされる。
【数43】
すなわち、c0=1/(C2R6)、e0=1/(C2R5)となっているが、Vrefが余分に加算されているため回路802にてその分を減算する。この回路802にて減算されるのは以下に表される数である。
【数44】
【0109】
原理的にはVrefが減算されれば十分であるが、実際には電力変換部3での三角波オフセット(ここで三角波はVp2=2VとVp1=1.4Vとの間で増減するため、Vref−Vp1=1.1V)を考慮して減算量を調整している。抵抗Ra及びRbにて抵抗分割しているのはその調整のためである。Vref=2.5Vであるから、以下のようにRa及びRbが決定される。
【数45】
【0110】
以上の説明をまとめると、図27に示すような回路定数にする必要がある。すなわち、R1=10KΩ,R2=90KΩ,R3=10KΩ,R4=29KΩ,R5=21KΩ,R6=10KΩ,Rk,Rl,Rm,Rn,Rp,Rq,Rr及びRs=10KΩ,Ra=28KΩ,Rb=22KΩ,C1=66pF,C2=66pFである。
【0111】
なお回路804は、図20の伝達関数401の出力と伝達関数404の出力を加算する演算器に相当する。
【0112】
ここで第1乃至第3の実施の形態における効果をまとめておく。従来技術で説明したPID制御器、第1の実施の形態、第2の実施の形態、第3の実施の形態では、いずれもゲイン交差周波数を100KHz以下となるように設計した。これは、応答性を上げるにはゲイン交差周波数を高くすれば良いが、実際にはスイッチング周波数という限界があるため自由に高くすることはできない。そこで、ゲイン交差周波数をある条件の下で設計し、その中での性能比較を行うためである。ここでは応答性を過渡特性の評価基準として確立されている閉ループ伝達関数の極配置で判断する。
【0113】
閉ループ伝達関数の分母を0とした時の根が閉ループ伝達関数の極であり、この極をs平面上にプロットした時に、極の全てが左半平面にくればそのシステムは安定であり、1つでも右半面にくればそのシステムは不安定である。また、左半平面にある極の位置でステップ入力に対する応答が分かり、極が虚軸に近くなるほどその応答は振動的になり、極の実部が大きいほど応答が速く収束することが知られている。なお、極が複数ある場合には虚軸に最も近い極が代表極としてシステムの応答性に影響を与える。
【0114】
図28(a)では、縦軸が虚軸、横軸が実軸であるs平面を使って、従来技術で説明したPID制御器を用いた場合の閉ループ伝達関数の極(図中の×印)と、第1の実施の形態における閉ループ伝達関数の極(図中の□印)を表している。図28(b)は同じくs平面を使って、従来技術で説明したPID制御器を用いた場合の閉ループ伝達関数の極(図中の×印)と、第2の実施の形態における閉ループ伝達関数の極(図中の*印)を表している。図29は同じくs平面を使って、従来技術で説明したPID制御器を用いた場合の閉ループ伝達関数の極(図中の×印)と、第3の実施の形態における閉ループ伝達関数の極(図中の星印)を表している。いずれも右半平面には極はないので、左半平面のみを示している。従って、従来技術でも、第1乃至第3の実施の形態でも安定したシステムであることが分かる。ここでPID制御器を用いた場合の極は虚軸にかなり近い。それに対し、第1の実施の形態における極、第2の実施の形態における極及び第3の実施の形態における極とも、従来技術の場合より虚軸から遠くなっている。このように、極の実部は従来技術より第1乃至第3の実施の形態とも大きくなっており、応答性が向上していることが分かる。
【0115】
[実施の形態4]
実施の形態1乃至3では、降圧型の電源装置の例を示したが、本発明は、昇圧型及び昇降圧型の電源装置にも適用可能である。降圧型の電源装置との差は、図7の回路100の回路構成である。
【0116】
図30に図7における回路100に相当する昇圧型の回路110を示す。回路110は、入力電源111、チョークコイル112、MOSFET113と、ダイオード114と、キャパシタ115と、負荷116とを含む。入力電源111の正極側端子はチョークコイル112に接続されている。チョークコイルの他端はMOSFET113のドレイン及びダイオード114のアノードに接続されている。ダイオード114のカソードは、キャパシタ115及び負荷116の正極側端子に接続されている。キャパシタ115の他端及び負荷116の負極側端子は、MOSFET113のソース及び入力電源111の負極側端子と接続されている。なお、図示されていないが、MOSFET113のゲートは電力変換部3のドライブ回路に接続されており、負荷116の正極側端子は制御部に接続されている。
【0117】
図31に図7における回路100に相当する昇降圧型の回路120を示す。回路120は、入力電源121、チョークコイル122、MOSFET123と、ダイオード124と、キャパシタ125と、負荷126とを含む。入力電源121の正極側端子はMOSFET123のドレインに接続されている。MOSFET123のソースはチョークコイル122とダイオード124のカソードに接続されている。ダイオード124のアノードはキャパシタ125及び負荷126の正極側端子に接続されている。チョークコイル122及びキャパシタ125の他端は、負荷126の負極側端子及び入力電源121の負極側端子に接続されている。なお、図示されていないが、MOSFET123のゲートは電力変換部3のドライブ回路に接続されており、負荷126の正極側端子は制御部に接続されている。
【0118】
以上本発明の実施の形態を説明したが、これらは例にすぎず上記のような設計思想を用いた他の回路を採用しても良い。また、図30及び図31は第2の実施の形態及び第3の実施の形態にも適用できる。
【0119】
また、第3の実施の形態では、メイン制御器及びマイナー制御器の伝達関数の分母を1次とした例を示したが、同一であれば2次以上であってもよい。
【0120】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、安定性を保持しつつ高速応答を可能とする新規な電源装置を提供することでできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態における電源装置のブロック線図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるマイナー制御器の伝達関数のボード線図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるマイナーループ導入後の制御対象の伝達関数のボード線図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるマイナーループ導入前とマイナーループ導入後の制御対象の伝達関数を示すボード線図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態におけるメイン制御器の伝達関数のボード線図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における一巡伝達関数のボード線図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態の電源装置の回路を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における制御部の回路を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態の制御部における回路定数を表すテーブルである。
【図10】本発明の第2の実施の形態におけるブロック線図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態における制御対象の伝達関数のボード線図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態におけるマイナー制御器の伝達関数のボード線図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態におけるマイナーループ導入後の制御対象の伝達関数のボード線図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態におけるマイナーループ導入前とマイナーループ導入後の制御対象の伝達関数を示すボード線図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態におけるメイン制御器の伝達関数のボード線図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態における一巡伝達関数のボード線図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態の電源装置の回路図である。
【図18】本発明の第2の実施の形態の制御部の回路を示す図である。
【図19】図18に示した制御部における回路定数を表すテーブルである。
【図20】本発明の第3の実施の形態における電源装置のブロック線図である。
【図21】本発明の第3の実施の形態におけるマイナー制御器の伝達関数のボード線図である。
【図22】本発明の第3の実施の形態におけるマイナーループ導入後の制御対象の伝達関数のボード線図である。
【図23】本発明の第3の実施の形態におけるマイナーループ導入前とマイナーループ導入後の制御対象の伝達関数を示すボード線図である。
【図24】本発明の第3の実施の形態におけるメイン制御器の伝達関数のボード線図である。
【図25】本発明の第3の実施の形態における一巡伝達関数のボード線図である。
【図26】本発明の第3の実施の形態における制御部の回路を示す図である。
【図27】本発明の第3の実施の形態の制御部における回路定数を表すテーブルである。
【図28】従来技術に対する第1の実施の形態(a)及び第2の実施の形態(b)の効果を説明するためのs平面を表す図である。
【図29】従来技術に対する第3の実施の形態の効果を説明するためのs平面を表す図である。
【図30】昇圧型の電源装置の回路構成例(一部)を示す図である。
【図31】昇降圧型の電源装置の回路構成例(一部)を示す図である。
【図32】従来技術における電源装置の回路図である。
【図33】従来技術における制御部の回路定数を表すテーブルである。
【図34】電源装置の仕様及びLCフィルタ部並びに電力変換部の回路定数を表すテーブルである。
【図35】従来技術における電源装置のブロック線図である。
【図36】LCフィルタ部及び電力変換部を含む制御対象の伝達関数のボード線図である。
【図37】従来技術の制御器の伝達関数のボード線図である。
【図38】従来技術の一巡伝達関数のボード線図である。
【図39】米国特許第5583752号に示されたブロック線図である。
【符号の説明】
1,1a LCフィルタ部 2,2a 制御部
3 電力変換部 34 ダイオード
35 MOSFET 36 入力電源
Claims (12)
- 前記第1回路により、前記電力変換回路及び前記LCフィルタを含む制御対象に対して擬似的な積分制御要素を構成する
ことを特徴とする請求項1記載の電源装置。 - 前記電力変換回路及び前記LCフィルタを含む制御対象の伝達関数と前記第1回路の伝達関数とにより構成される閉ループの伝達関数の分母の定数項が0又は実質的に0になるように少なくともa0及びb0が設定される
ことを特徴とする請求項1記載の電源装置。 - 前記第1回路により、前記電力変換回路及び前記LCフィルタを含む制御対象に対して擬似的な積分制御要素を構成する
ことを特徴とする請求項4記載の電源装置。 - 前記電力変換回路及び前記LCフィルタを含む制御対象の伝達関数と前記第1回路の比例要素のみからなる伝達関数とにより構成される閉ループの伝達関数の分母の定数項が0又は実質的に0になるように前記第1回路により実現される比例要素の係数が設定される
ことを特徴とする請求項4記載の電源装置。 - 入力直流電源からの入力直流電圧を変換し、LCフィルタを介して負荷に出力電圧を出力する電源装置であって、
前記出力電圧に基づき前記入力直流電圧の変換を制御するための信号を出力し、前記出力電圧に基づき正帰還を行い且つ少なくとも前記LCフィルタを含む制御対象に対して擬似的な積分制御要素を構成するための制御回路
を有する電源装置。 - 前記制御回路が、
少なくとも前記LCフィルタを含む制御対象の伝達関数の次数より低い次数の伝達関数を実現し、前記出力電圧と基準電圧との差に応じた信号を出力する回路
を含む請求項7記載の電源装置。 - 入力直流電源からの入力電圧を変換する電力変換回路と、
前記電力変換回路の出力を平滑して負荷に供給するLCフィルタと、
前記LCフィルタの出力電圧に基づいて前記電力変換回路を制御する制御回路と、
を具備し、
前記制御回路が、
前記出力電圧に基づき正帰還を行い且つ前記電力変換回路及び前記LCフィルタを含む制御対象に対して擬似的な1次遅れ要素を構成するための回路を含む
ことを特徴とする電源装置。 - 入力直流電源からの入力電圧を変換する電力変換回路と、
電力変換回路の出力を平滑して負荷に供給するLCフィルタと、
LCフィルタの出力電圧に基づいて電力変換回路を制御する制御回路とを具備し、
前記制御回路が、
第1の伝達関数を実現し、当該第1の伝達関数を介して出力電圧を正帰還させるための第1回路と、
第2の伝達関数を実現し、出力電圧と基準電圧との差に応じた信号を出力する第2回路と
を含み、
前記第1の伝達関数と前記第2の伝達関数の分母が同一である
ことを特徴とする電源装置。 - 前記第1回路により、前記電力変換回路及び前記LCフィルタを含む制御対象に対して擬似的な積分制御要素を構成する
ことを特徴とする請求項10記載の電源装置。
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