JP2004253583A - 投影光学系の調整方法、投影光学系の製造方法、投影光学系、露光装置、および露光方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】たとえば蛍石のような結晶材料を用いても、その固有複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を有する投影光学系を光学調整により実現することのできる調整方法。
【解決手段】固有複屈折性を有する結晶材料で形成された複数の結晶透過部材を含み、第1面の像を第2面上に形成する投影光学系の調整方法。組み立てられた投影光学系の結像性能を評価する結像性能評価工程(S4)と、結像性能評価工程の評価結果に基づいて、複数の結晶透過部材のうちの少なくとも1つの結晶透過部材を光軸廻りに回転させて光学調整を行う光学調整工程(S6)とを含む。光学調整工程は、結晶透過部材を光軸廻りに微小角度だけ回転させる微小角度回転工程や、光学的に等価な別の結晶軸方位関係になるように結晶透過部材を光軸廻りに所定角度だけ回転させる所定角度回転工程を含む。
【選択図】 図2
【解決手段】固有複屈折性を有する結晶材料で形成された複数の結晶透過部材を含み、第1面の像を第2面上に形成する投影光学系の調整方法。組み立てられた投影光学系の結像性能を評価する結像性能評価工程(S4)と、結像性能評価工程の評価結果に基づいて、複数の結晶透過部材のうちの少なくとも1つの結晶透過部材を光軸廻りに回転させて光学調整を行う光学調整工程(S6)とを含む。光学調整工程は、結晶透過部材を光軸廻りに微小角度だけ回転させる微小角度回転工程や、光学的に等価な別の結晶軸方位関係になるように結晶透過部材を光軸廻りに所定角度だけ回転させる所定角度回転工程を含む。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、投影光学系の調整方法、投影光学系の製造方法、投影光学系、露光装置、および露光方法に関する。さらに詳細には、本発明は、半導体素子などのマイクロデバイスをフォトリソグラフィ工程で製造する際に使用される露光装置に好適な投影光学系の光学調整に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体素子の製造や半導体チップ実装基板の製造では、微細化がますます進んでおり、パターンを焼き付ける露光装置ではより解像力の高い投影光学系が要求されてきている。この高解像の要求を満足するには、露光光を短波長化するとともに、NA(投影光学系の開口数)を大きくしなければならない。しかしながら、露光光の波長が短くなると、光の吸収のため実用に耐える光学材料の種類が限られてくる。
【0003】
たとえば波長が200nm以下の真空紫外域の光、特にF2レーザー光(波長157nm)を露光光として用いる場合、投影光学系を構成する光透過性光学材料としては、フッ化カルシウム(蛍石:CaF2)やフッ化バリウム(BaF2)等のフッ化物結晶を多用せざるを得ない。実際には、露光光としてF2レーザー光を用いる露光装置では、基本的に蛍石だけで投影光学系を形成する設計が想定されている。蛍石は、立方晶系(等軸晶系)に属する結晶材料であり、光学的には等方的で、複屈折が実質的にないと思われていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最近、このように波長の短い紫外線に対しては、蛍石においても、固有複屈折が存在することが報告されている。具体的には、蛍石の固有複屈折は、結晶軸[111]方向およびこれと等価な結晶軸[−111],[1−11],[11−1]方向、並びに結晶軸[100]方向およびこれと等価な結晶軸[010],[001]方向ではほぼ零であるが、その他の方向では実質的に零でない値を有する。
【0005】
特に、結晶軸[110],[−110],[101],[‐101],[011],[01−1]の6方向では、波長157nmの光に対して最大で11.2nm/cm、波長193nmの光に対して最大で3.4nm/cmの複屈折の値を有する。電子デバイスの製造に用いられる投影光学系のような超高精度の光学系においては、レンズ材料の複屈折に伴って生じる収差は致命的であり、固有複屈折の影響を実質的に回避したレンズ構成およびレンズ設計の採用が不可欠である。
【0006】
しかしながら、固有複屈折の影響を実質的に回避したレンズ構成およびレンズ設計を採用しても、蛍石の結晶軸方位の計測誤差、蛍石レンズの結晶軸方位に関する加工誤差、蛍石レンズの位置決め誤差などに起因して、最終的に製造された投影光学系において蛍石の固有複屈折の影響を良好に抑えることが困難であり、ひいては良好な光学性能(特に線幅均一性)を確保することが困難であるという不都合があった。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、たとえば蛍石のような結晶材料を用いても、その固有複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を有する投影光学系を光学調整により実現することのできる調整方法および製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、結晶材料の固有複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を有する投影光学系を用いて、高解像で高精度な投影露光を行うことのできる露光装置および露光方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、固有複屈折性を有する結晶材料で形成された複数の結晶透過部材を含み、第1面の像を第2面上に形成する投影光学系の調整方法において、
組み立てられた前記投影光学系の結像性能を評価する結像性能評価工程と、
前記結像性能評価工程の評価結果に基づいて、前記複数の結晶透過部材のうちの少なくとも1つの結晶透過部材を光軸廻りに回転させて光学調整を行う光学調整工程とを含むことを特徴とする調整方法を提供する。
【0009】
第1形態の好ましい態様によれば、前記結像性能評価工程は、前記投影光学系の収差を計測する収差計測工程を含む。また、前記結像性能評価工程は、前記投影光学系を介して前記第2面上に形成される空間像を計測する空間像計測工程を含むことが好ましい。また、前記結像性能評価工程は、前記投影光学系を介して感光性基板上に焼き付けられる感光像を計測する感光像計測工程を含むことが好ましい。ここで、感光像とは、レジストなどの感光性材料が塗布された基板に形成される潜像を現像して得られるパターン像、あるいは潜像そのものを指す。
【0010】
また、第1形態の好ましい態様によれば、前記複数の結晶透過部材のうちの一対の結晶透過部材は、その結晶軸[111]が前記光軸とほぼ一致するように配置されている。また、前記光学調整工程は、前記複数の結晶透過部材のうちの少なくとも1つの結晶透過部材を前記光軸廻りに微小角度だけ回転させる微小角度回転工程を含むことが好ましい。
【0011】
また、第1形態の好ましい態様によれば、前記光学調整工程は、前記複数の結晶透過部材のうちの少なくとも1つの結晶透過部材を、光学的に等価な別の結晶軸方位関係になるように、前記光軸廻りに所定角度だけ回転させる所定角度回転工程を含む。この場合、前記所定角度回転工程では、結晶軸[100]と前記光軸との角度Aが0.5度以上で7度以下に配置された結晶透過部材を、前記光軸廻りに約90度の整数倍だけ回転させることが好ましい。
【0012】
また、第1形態の好ましい態様によれば、前記所定角度回転工程では、結晶軸[111]と前記光軸との角度Bが0.5度以上で7度以下に配置された結晶透過部材を、前記光軸廻りに約120度の整数倍だけ回転させる。第1形態では、前記複数の結晶透過部材を所定の形状に加工した後に各結晶透過部材の結晶軸方位を計測する方位計測工程をさらに含むことが好ましい。
【0013】
本発明の第2形態では、固有複屈折性を有する結晶材料で形成された複数の結晶透過部材を含み、第1面の像を第2面上に形成する投影光学系の製造方法において、
前記複数の結晶透過部材の各結晶軸方位を計測する方位計測工程と、
前記方位計測工程の計測結果に基づいて、仮想的に組み立てた前記投影光学系の結像性能を評価するシミュレーション工程と、
前記シミュレーション工程の評価結果に基づいて、各結晶透過部材における所定結晶軸の光軸廻りの回転角度位置を最適化する最適化工程とを含むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0014】
第2形態の好ましい態様によれば、前記方位計測工程は、前記複数の結晶透過部材を所定の形状に加工した後に各結晶透過部材の結晶軸方位を計測する工程を含む。また、前記最適化工程は、前記複数の結晶透過部材のうちの少なくとも1つの結晶透過部材を前記光軸廻りに微小角度だけ仮想的に回転させる微小角度回転工程を含むことが好ましい。また、前記最適化工程は、前記複数の結晶透過部材のうちの少なくとも1つの結晶透過部材を、光学的に等価な別の結晶軸方位関係になるように、前記光軸廻りに所定角度だけ仮想的に回転させる所定角度回転工程を含むことが好ましい。
【0015】
また、第2形態の好ましい態様によれば、前記所定角度回転工程では、結晶軸[100]と前記光軸との角度Aが0.5度以上で7度以下に配置された結晶透過部材を、前記光軸廻りに約90度の整数倍だけ仮想的に回転させる。また、前記所定角度回転工程では、結晶軸[111]と前記光軸との角度Bが0.5度以上で7度以下に配置された結晶透過部材を、前記光軸廻りに約120度の整数倍だけ仮想的に回転させることが好ましい。
【0016】
本発明の第3形態では、固有複屈折性を有する結晶材料で形成された複数の結晶透過部材を含み、第1面の像を第2面上に形成する投影光学系の製造方法において、
前記複数の結晶透過部材を所定の形状に加工する加工工程と、
各結晶透過部材を通過する光線と光軸とがなす角度の最大値をCとし、各結晶透過部材の中心厚をDとし、使用光の波長をWL×10−6とするとき、
0.04<sinC・D/WL
の条件を満足する結晶透過部材の半数以上の結晶透過部材について、前記加工工程を経た後に各結晶透過部材の結晶軸方位を計測する方位計測工程を含むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0017】
本発明の第4形態では、曲面反射鏡と、該曲面反射鏡への入射光および前記曲面反射鏡からの反射光の双方が通過するように配置されて固有複屈折性を有する結晶材料で形成された結晶レンズとを含み、第1面の像を第2面上に形成する反射屈折型の投影光学系の製造方法において、
前記結晶レンズを所定の形状に加工する加工工程と、
前記加工工程の後に前記結晶レンズの結晶軸方位を計測する方位計測工程とを含むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0018】
本発明の第5形態では、固有複屈折性を有する結晶材料で形成された複数の結晶透過部材を含み、第1面の像を第2面上に形成する投影光学系の製造方法において、
第1形態の調整方法にしたがって前記投影光学系を調整する工程を含むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0019】
本発明の第6形態では、第1形態の調整方法を用いて製造されたことを特徴とする投影光学系を提供する。
【0020】
本発明の第7形態では、第2形態〜第5形態の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする投影光学系を提供する。
【0021】
本発明の第8形態では、第6形態または第7形態の投影光学系を備え、
前記第1面に配置されたマスクのパターンを前記投影光学系を介して前記第2面に配置された感光性基板上に露光することを特徴とする露光装置を提供する。
【0022】
本発明の第9形態では、第1形態の調整方法を用いて製造された投影光学系を介して、前記第1面に配置されたマスクのパターンを前記第2面に配置された感光性基板上に露光することを特徴とする露光方法を提供する。
【0023】
本発明の第10形態では、第1形態の調整方法を用いて調整された投影光学系を介して、前記第1面に配置されたマスクのパターンを前記第2面に配置された感光性基板上に露光することを特徴とする露光方法を提供する。
【0024】
本発明の第11形態では、第2形態〜第5形態の製造方法を用いて製造された投影光学系を介して、前記第1面に配置されたマスクのパターンを前記第2面に配置された感光性基板上に露光することを特徴とする露光方法を提供する。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。なお、図1において、投影光学系PLの光軸AXに平行にZ軸を、光軸AXに垂直な面内において図1の紙面に平行にY軸を、図1の紙面に垂直にX軸をそれぞれ設定している。本実施形態にかかる露光装置は、紫外領域の照明光を供給するための光源LSとして、たとえばArFエキシマレーザー光源(発振中心波長193nm)またはF2レーザー光源(発振中心波長157nm)を備えている。
【0026】
光源LSから射出された光は、照明光学系ILを介して、所定のパターンが形成されたレチクル(マスク)Rを重畳的に照明する。なお、光源LSと照明光学系ILとの間の光路はケーシング(不図示)で密封されており、光源LSから照明光学系IL中の最もレチクル側の光学部材までの空間は、露光光の吸収率が低い気体であるヘリウムガスや窒素などの不活性ガスで置換されているか、あるいはほぼ真空状態に保持されている。
【0027】
レチクルRは、レチクルホルダRHを介して、レチクルステージRS上においてXY平面に平行に保持されている。レチクルRには転写すべきパターンが形成されており、パターン領域全体のうちX方向に沿って長辺を有し且つY方向に沿って短辺を有する矩形状(スリット状)のパターン領域が照明される。レチクルステージRSは、図示を省略した駆動系の作用により、レチクル面(すなわちXY平面)に沿って二次元的に移動可能であり、その位置座標はレチクル移動鏡RMを用いた干渉計RIFによって計測され且つ位置制御されるように構成されている。
【0028】
レチクルRに形成されたパターンからの光は、投影光学系PLを介して、感光性基板であるウェハW上にレチクルパターン像を形成する。投影光学系PLは、蛍石で形成された一対のレンズ、すなわち蛍石レンズLaおよびLbを含む多数のレンズを備えている。ウェハWは、ウェハテーブル(ウェハホルダ)WTを介して、ウェハステージWS上においてXY平面に平行に保持されている。そして、レチクルR上での矩形状の照明領域に光学的に対応するように、ウェハW上ではX方向に沿って長辺を有し且つY方向に沿って短辺を有する矩形状の露光領域にパターン像が形成される。
【0029】
ウェハステージWSは、図示を省略した駆動系の作用によりウェハ面(すなわちXY平面)に沿って二次元的に移動可能であり、その位置座標はウェハ移動鏡WMを用いた干渉計WIFによって計測され且つ位置制御されるように構成されている。また、投影光学系PLを構成する光学部材のうち最もレチクル側に配置された光学部材と最もウェハ側に配置された光学部材との間で投影光学系PLの内部が気密状態を保つように構成され、投影光学系PLの内部の気体はヘリウムガスや窒素などの不活性ガスで置換されているか、あるいはほぼ真空状態に保持されている。
【0030】
さらに、照明光学系ILと投影光学系PLとの間の狭い光路には、レチクルRおよびレチクルステージRSなどが配置されているが、レチクルRおよびレチクルステージRSなどを密封包囲するケーシング(不図示)の内部に窒素やヘリウムガスなどの不活性ガスが充填されているか、あるいはほぼ真空状態に保持されている。また、投影光学系PLとウェハWとの間の狭い光路には、ウェハWおよびウェハステージWSなどが配置されているが、ウェハWおよびウェハステージWSなどを密封包囲するケーシング(不図示)の内部に窒素やヘリウムガスなどの不活性ガスが充填されているか、あるいはほぼ真空状態に保持されている。このように、光源LSからウェハWまでの光路の全体に亘って、露光光がほとんど吸収されることのない雰囲気が形成されている。
【0031】
上述したように、投影光学系PLによって規定されるレチクルR上の照明領域およびウェハW上の露光領域(すなわち実効露光領域)は、Y方向に沿って短辺を有する矩形状である。したがって、駆動系および干渉計(RIF、WIF)などを用いてレチクルRおよびウェハWの位置制御を行いながら、矩形状の露光領域および照明領域の短辺方向すなわちY方向に沿ってレチクルステージRSとウェハステージWSとを、ひいてはレチクルRとウェハWとを同期的に移動(走査)させることにより、ウェハW上には露光領域の長辺に等しい幅を有し且つウェハWの走査量(移動量)に応じた長さを有する領域に対してレチクルパターンが走査露光される。
【0032】
図2は、本実施形態の露光装置に搭載された投影光学系の製造方法を概略的に示すフローチャートである。本実施形態の製造方法は、図2に示すように、蛍石材料を準備してその各結晶軸方位を計測する結晶軸方位計測工程S1と、蛍石レンズ(一般には結晶透過部材)を含むすべての構成レンズを所定の形状に加工するレンズ加工工程S2と、所定の形状に加工された複数のレンズを用いて投影光学系PLを組み立てる組立工程S3と、組立工程S3を経て組み立てられた投影光学系PLまたは後述の光学調整工程S6を経て光学調整された投影光学系PLの波面収差を計測する収差計測工程S4と、収差計測工程S4で計測した投影光学系PLの波面収差が許容範囲内に収まっているか否かを判定する判定工程S5と、判定工程S5の判定結果にしたがって投影光学系PL中の少なくとも1つの蛍石レンズを光軸廻りに回転させて光学調整を行う光学調整工程S6とを有する。以下、各工程S1〜S6について順次説明する。
【0033】
結晶軸方位計測工程S1では、投影光学系PLが使用される波長(本実施形態では露光光であるF2レーザ光)に対して光透過性を有する等軸晶系(結晶軸の単位長さが互いに等しく、それぞれの結晶軸の交点における各結晶軸がなす角度が全て90度である晶系)の結晶材料として蛍石を準備し、準備した蛍石材料の各結晶軸方位を計測する。なお、等軸晶系の結晶材料として、蛍石以外に、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化リチウム(LiF2)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化ストロンチウム(SrF2)などが挙げられる。
【0034】
一般に、結晶材料の各結晶軸方位の計測に際して、例えばラウエ(Laue)測定を行い結晶軸の方位を直接的に測定する手法か、結晶材料の複屈折を測定し、既知の結晶軸方位と複屈折量との関係に基づいて、測定された複屈折から結晶軸方位を定める手法を適用することができる。
【0035】
図3は、結晶軸方位計測工程S1の詳細を示すフローチャートである。図3を参照すると、ステップS11では、結晶材料としての蛍石のための粉末原料を脱酸素化反応させる前処理を行う。紫外域または真空紫外域で使用される蛍石単結晶をブリッジマン法により育成する場合には、人工合成の高純度原料を使用することが一般的である。さらに、原料のみを融解して結晶化すると白濁して失透する傾向を示すため、スカベンジャーを添加して加熱することにより、白濁を防止する処置を施している。蛍石単結晶の前処理や育成において使用される代表的なスカベンジャーとしては、フッ化鉛(PbF2)が挙げられる。
【0036】
なお、原料中に含有される不純物と化学反応し、これを取り除く作用をする添加物質のことを一般にスカベンジャーという。本実施形態における前処理では、まず、高純度な粉未原料にスカベンジャーを添加して良く混合させる。その後、スカベンジヤーの融点以上で、蛍石の融点未満の温度まで加熱昇温させることにより脱酸素化反応を進める。その後、そのまま室温まで降温して焼結体としても良いし、或いはさらに温度を上昇させて一旦原料を融解させた後、室温まで降温して多結晶体としても良い。以上のようにして脱酸素化がなされた焼結体や多結晶体を前処理品という。
【0037】
次に、ステップS12では、この前処理品を用いてさらに結晶成長させることにより単結晶インゴットを得る。結晶成長の方法は、融液の固化、溶液からの析出、気体からの析出、固体粒子の成長に大別できることが広く知られているが、本実施形態においては垂直ブリッジマン法により結晶成長させる。まず、前処理品を容器に収納し、垂直ブリッジマン装置(結晶成長炉)の所定位置に設置する。その後、容器内に収納された前処理品を加熱して融解させる。前処理品の融点に到達した後は、所定時間を経過させた後に結晶化を開始する。融液のすべてが結晶化したら、室温まで徐冷してインゴットとして取り出す。
【0038】
ステップS13では、インゴットを切断して、最終的に形成すべき結晶透過部材(本実施形態では蛍石レンズLa,Lbなどの光学部材)の大きさおよび形状に応じたサイズを有するディスク材を得る。ここで、最終的に形成すべき結晶透過部材がレンズである場合には、ディスク材の形伏を薄い円柱形状とすることが好ましく、円柱形伏のディスク材の口径および厚さは、レンズの有効径(外径)および光軸方向の厚さに合わせて定められることが望ましい。ステップS14では、蛍石単結晶インゴットより切り出されたディスク材に対してアニール処理を行う。これらのステップS11〜S14を実行することにより、蛍石単結晶からなる結晶材料が得られる。
【0039】
最後に、ステップS15では、準備した結晶材料すなわち加工前の結晶透過部材の各結晶軸方位を計測する。このとき、上述したように、結晶軸の方位を直接的に測定する第1の測定手法と、結晶材料の複屈折を測定して間接的に結晶軸方位を定める第2の測定手法とが考えられる。まず、結晶軸の方位を直接的に測定する第1の測定手法について説明する。第1の測定手法では、X線結晶解析の手法を用いて、結晶材料の結晶構造を、ひいては結晶軸を直接的に測定する。このような測定手法としては、例えばラウエ(Laue)法が知られている。
【0040】
以下、第1の測定手法としてラウエ法を適用した場合について図4を参照して簡単に説明する。図4は、ラウエカメラを概略的に示す図である。図4に示すように、ラウエ法による結晶軸測定を実現するためのラウエカメラは、X線源100と、このX線源100からのX線101を試料としての結晶材料(本実施形態では蛍石)103へ導くためのコリメータ102と、結晶材料103から回折される回折X線104により露光されるX線感光部材105とを備えている。なお、図4では不図示であるが、X線感光部材105を貫通しているコリメータ102の内部には、対向する一対のスリットが設けられている。
【0041】
第1の測定手法においては、まず、準備した結晶材料103にX線101を照射して、この結晶材料103から回折X線104を発生させる。そして、この回折X線104で、結晶材料103のX線入射側に配置されたX線フィルムやイメージングプレート等のX線感光部材105を露光し、このX線感光部材105上に結晶構造に対応した模様の可視像(回折像)を形成する。この回折像(ラウエ図形)は、結晶材料が単結晶のときには斑点状となり、この斑点はラウエ斑点と呼ばれる。本実施形態で用いている結晶材料は蛍石でありその結晶構造は既知であるため、このラウエ斑点を解析することにより、結晶軸方位が明らかになる。
【0042】
なお、結晶軸を直接測定する第1の測定手法としては、ラウエ法に限定されることなく、結晶を回転又は振動させながらX線を照射する回転法又は振動法、ワイセンベルグ法、ブリセッション法などのような他のX線結晶解析の手法や、結晶材料の劈開性を利用した方法、結晶材料の塑性変形を与えることにより結晶材料表面に現れる特有の形状を持つ圧像(或いは打像)を観察する方法等の機械的な手法などを用いても良い。
【0043】
次に、結晶材料の複屈折を測定して間接的に結晶軸方位を定める第2の測定手法について簡単に説明する。第2の測定手法では、まず結晶材料の結晶軸方位とその方位における複屈折量との対応づけを行う。このとき、上述の第1の測定手法を用いて結晶材料のサンプルの結晶軸方位を測定する。そして、結晶材料サンプルの複数の結晶軸毎に複屈折の測定を行う。
【0044】
図5は、複屈折測定機の概略的な構成を示す図である。図5において、光源110からの光は、偏光子111により水平方向(X方向)からπ/4だけ傾いた振動面を有する直線偏光に変換される。そして、この直線偏光は、光弾性変調器112により位相変調を受けて、結晶材料サンプル113に照射される。すなわち、位相の変化する直線偏光が結晶材料サンプル113に入射する。結晶材料サンプル113を透過した光は検光子114に導かれ、水平方向(X方向)に振動面を有する偏光のみが検光子114を透過して光検出器115で検出される。
【0045】
光弾性変調器112により発生する所定の位相遅れのときに、どれだけの光量が光検出器115で検出されるのかを、位相遅れの量を変えなから測定することにより、遅相軸の方向とその屈折率、および進相軸における屈折率を求めることができる。なお、試料に複屈折が存在する場含、屈折率の差により、当該試料を通過する振動面(偏光面)が直交した2つの直線偏光の光の位相が変化する。すなわち、一方の偏光に対して他方の偏光の位相が進んだり遅れたりすることになるが、位相が進む方の偏光方向を進相軸と呼び、位相が遅れる方の偏光方向を遅相軸と呼ぶ。
【0046】
ここで、図6を参照して、蛍石の結晶軸方位について簡単に説明する。図6を参照すると、蛍石の結晶軸は、等方晶系のXYZ座標系に基づいて規定される。すなわち、+X軸に沿って結晶軸[100]が、+Y軸に沿って結晶軸[010]が、+Z軸に沿って結晶軸[001]がそれぞれ規定される。また、XZ平面において結晶軸[100]および結晶軸[001]と45度をなす方向に結晶軸[101]が、XY平面において結晶軸[100]および結晶軸[010]と45度をなす方向に結晶軸[110]が、YZ平面において結晶軸[010]および結晶軸[001]と45度をなす方向に結晶軸[011]がそれぞれ規定される。さらに、+X軸、+Y軸および+Z軸に対して等しい鋭角をなす方向に結晶軸[111]が規定される。
【0047】
なお、図6では、+X軸、+Y軸および+Z軸で規定される空間における結晶軸のみを図示しているが、他の空間においても同様に結晶軸が規定される。蛍石では、図6中実線で示す結晶軸[111]方向、およびこれと等価な不図示の結晶軸[−111],[1−11],[11−1]方向では、複屈折がほぼ零(最小)である。同様に、図6中実線で示す結晶軸[100],[010],[001]方向においても、複屈折がほぼ零(最小)である。一方、図6中破線で示す結晶軸[110],[101],[011],およびこれと等価な不図示の結晶軸[−110],[−101],[01−1]方向では、複屈折が最大である。
【0048】
本実施形態では、上記第1の測定手法により結晶軸方位が既知となった結晶材料サンプルの結晶軸毎の複屈折測定を行い、結晶材料の結晶軸方位とその方位における複屈折量との対応づけを行う。このとき、測定する結晶材料の結晶軸として、[100],[110]および[111]という代表的な結晶軸の他に、[112],[210]および[211]などの結晶軸を用いても良い。なお、結晶軸[010],[001]は上記結晶軸[100]と等価な結晶軸であり、結晶軸[011],[101]は上記結晶軸[110]と等価な結晶軸である。また、測定された結晶軸の中間の結晶軸に関しては、所定の補間演算式を用いて補間しても良い。
【0049】
以上のように、第2の測定手法を適用する場合、図5に示す複屈折測定機を用いて、準備した結晶材料の複屈折の測定を行う。そして、結晶軸方位と複屈折との対応関係が予め求められているため、この対応関係を用いて、測定された複屈折から結晶軸方位を算出する。このように、第2の測定手法によれば、直接的に結晶軸方位を測定しなくとも結晶材料の結晶軸方位を求めることかできる。
【0050】
なお、本願明細書中において、「結晶軸と等価な結晶軸」とは、ある結晶軸に対して、当該結晶軸の指数の順序を入れ替えた結晶軸と、さらにそれらの各指数の少なくとも一部についての符号を反転した結晶軸であり、例えばある結晶軸が[abc]結晶軸である場合は、[acb]、[bac]、[bca]、[cab]、[cba]、[−abc]、[−acb]、[−bac]、[−bca]、[−cab]、[−cba]、[a−bc]、[a−cb]、[b−ac]、[b−ca]、[c−ab]、[c−ba]、[ab−c]、[ac−b]、[ba−c]、[bc−a]、[ca−b]、[cb−a]、[−a−bc]、[−a−cb]、[−b−ac][−b−ca]、[−c−ab]、[−c−ba]、[a−b−c]、[a−c−b]、[b−a−c]、[b−c−a]、[c−a−b]、[c−b−a]、[−a−b−c]、[−a−c−b]、[−b−a−c]、[−b−c−a]、[−c−a−b]、[−c−b−a]などが等価な結晶軸である。
【0051】
次いで、レンズ加工工程S2では、蛍石レンズを含むすべての構成レンズを所定の形状に加工する。すなわち、周知の研磨工程にしたがって、設計値を目標として各レンズの表面を研磨加工する。研磨工程では、各レンズの面形状の誤差を干渉計で計測しながら研磨を繰り返し、各レンズの面形状を目標面形状に近づける。こうして、各レンズの面形状誤差が所定の範囲に入ると、各レンズの面形状の誤差を、たとえばフィゾーレンズを用いる更に精密な干渉計装置を用いて計測する。なお、レンズの面形状誤差の干渉計による計測に関する詳細については、たとえば特開平7−12535号、特開平7−113609号、特開平10−154657号公報などを参照することができる。
【0052】
次いで、組立工程S3では、所定の形状に加工された複数のレンズを用いて投影光学系PLを組み立てる。具体的には、所定の組立装置を用い、設計にしたがって1つまたは複数のレンズを各分割鏡筒に組み込み、1つまたは複数のレンズをそれぞれ収納した複数の分割鏡筒を組み立てることにより投影光学系を得る。なお、各分割鏡筒へのレンズの組込みおよび複数の分割鏡筒の組立てに用いられる組立装置に関する詳細については、たとえば特開2002−258131号公報などを参照することができる。
【0053】
次いで、収差計測工程S4では、組立工程S3を経て組み立てられた投影光学系PLの波面収差を計測する。具体的には、たとえば特開2000−97616号公報に開示された、いわゆるPDI(Phase Diffraction Interferometer:位相回折干渉計)方式の波面収差測定機を用いて、ArFエキシマレーザー光源を使用する投影光学系やF2レーザー光源を使用する投影光学系の波面収差を計測することもできる。図7は、ArFエキシマレーザー光源やF2レーザー光源を使用する投影光学系の波面収差を計測するPDI方式の波面収差測定機の構成を概略的に示す図である。
【0054】
図7に示すように、光源LS(図7では不図示)から射出されて照明光学系ILを介した露光用照明光が、マスク設定位置に位置決めされた第1のピンホール71に入射する。第1のピンホール71を介して形成された球面波は、被検光学系としての投影光学系PLを透過して、グレーティング(一次元回折格子)72に入射する。グレーティング72をそのまま透過した0次回折光は、マスク73に形成された第2のピンホール(不図示)に入射する。
【0055】
一方、グレーティング72で回折作用を受けて発生した1次回折光は、マスク73に形成された開口部(不図示)のほぼ中央に入射する。第2のピンホールを介した0次回折光および開口部を通過した1次回折光は、コリメータレンズ74を介して、CCDのような撮像素子75に達する。こうして、第2のピンホールを介して形成された球面波を参照波面とし、開口部を通過した1次回折光の波面を測定波面とし、参照波面と測定波面との干渉に基づいて投影光学系PLに残存する波面収差が計測される。
【0056】
同様に、たとえば特開平10−38757号公報に開示されたフィゾー干渉計方式の波面収差測定機を用いて、KrFエキシマレーザー光源を使用する投影光学系の波面収差を計測することができる。また、たとえば特開平10−38758号公報に開示されたフィゾー干渉計方式の波面収差測定機を用いて、超高圧水銀ランプ(たとえばi線)を使用する投影光学系の波面収差を計測することもできる。
【0057】
次いで、判定工程S5では、収差計測工程S4で計測した投影光学系PLの波面収差が許容範囲内に収まっているか否かを判定する。判定工程S5において投影光学系PLの波面収差が許容範囲内に収まっていると判定した場合(図2中YESの場合)、本実施形態の製造方法は終了する。一方、判定工程S5において投影光学系PLの波面収差が許容範囲内に収まっていないと判定した場合(図2中NOの場合)、本実施形態における特徴的な工程である光学調整工程S6に移行する。光学調整工程S6では、判定工程S5の判定結果にしたがって投影光学系PL中の少なくとも1つの蛍石レンズを光軸廻りに回転させて光学調整を行う。以下、光学調整工程S6の説明に先立って、蛍石の固有複屈折の影響を受けにくいレンズ構成を実現する手法について簡単に説明する。
【0058】
第1手法では、一対の蛍石レンズ(一般には蛍石で形成された透過部材であって平行平面板を含む)の光軸と結晶軸[111](または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸)とを一致させ、且つ光軸を中心として一対の蛍石レンズを約60度だけ相対的に回転させる。ここで、結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸とは、たとえば結晶軸[−111],[1−11],[11−1]である。また、一方の蛍石レンズと他方の蛍石レンズとを光軸を中心として約60度だけ相対的に回転させるとは、一方の蛍石レンズおよび他方の蛍石レンズにおける光軸とは異なる方向に向けられる所定の結晶軸(たとえば結晶軸[−111]、[11−1]、または[1−11])同士の光軸を中心とした相対的な角度が約60度であることを意味する。
【0059】
具体的には、たとえば一方の蛍石レンズにおける結晶軸[−111]と、他方の蛍石レンズにおける結晶軸[−111]との光軸を中心とした相対的な角度が約60度であることを意味する。そして、光軸を中心として約60度だけ相対的に回転させるということは、光軸を中心として約60度+(n×120度)だけ相対的に回転させること、すなわち60度、180度、または300度・・・だけ相対的に回転させることと同じ意味である(ここで、nは整数である)。換言すれば、一対の蛍石レンズの光軸と結晶軸[111](または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸)とを一致させる場合、上述の結晶軸方位関係から一方の蛍石レンズを光軸廻りに120度の整数倍だけ回転させると、光学的に等価な別の結晶軸方位関係が得られる。
【0060】
第2手法では、一対の蛍石レンズの光軸と結晶軸[100](または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸)とを一致させ、且つ光軸を中心として一対の蛍石レンズを約45度だけ相対的に回転させる。ここで、結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸とは、たとえば結晶軸[010],[001]である。また、一方の蛍石レンズと他方の蛍石レンズとを光軸を中心として約45度だけ相対的に回転させるとは、一方の蛍石レンズおよび他方の蛍石レンズにおける光軸とは異なる方向に向けられる所定の結晶軸(たとえば結晶軸[010],[001],[011]または[01−1])同士の光軸を中心とした相対的な角度が約45度であることを意味する。
【0061】
具体的には、たとえば一方の蛍石レンズにおける結晶軸[010]と、他方の蛍石レンズにおける結晶軸[010]との光軸を中心とした相対的な角度が約45度であることを意味する。そして、光軸を中心として約45度だけ相対的に回転させるということは、光軸を中心として約45度+(n×90度)だけ相対的に回転させること、すなわち45度、135度、225度、または315度・・・だけ相対的に回転させることと同じ意味である(ここで、nは整数である)。換言すれば、一対の蛍石レンズの光軸と結晶軸[100](または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸)とを一致させる場合、上述の結晶軸方位関係から一方の蛍石レンズを光軸廻りに90度の整数倍だけ回転させると、光学的に等価な別の結晶軸方位関係が得られる。
【0062】
したがって、本実施形態では、投影光学系PL中の一対の蛍石レンズ(La,Lbなど)に対して、上述の第1手法や第2手法などを適用することになる。このとき、蛍石の固有複屈折の影響を実質的に回避するために第1手法や第2手法などを採用しても、結晶軸方位計測工程S1において蛍石の各結晶軸方位の計測に際して発生する計測誤差、レンズ加工工程S2において所望の結晶軸方位関係を満たすように蛍石レンズを加工する際に発生する結晶軸方位に関する加工誤差、組立工程S3において蛍石レンズを投影光学系PLに組み込む際に発生する位置決め誤差などが発生する。その結果、各結晶軸方位の計測誤差、結晶軸方位に関する加工誤差、位置決め誤差などに起因して、組み立てられた投影光学系PLにおいて蛍石の固有複屈折の影響を良好に抑えることが困難であり、ひいては良好な光学性能(特に線幅均一性)を確保することが困難である。
【0063】
具体的には、蛍石レンズが所望の結晶軸方位状態から光軸廻りに微小角度だけ回転位置ずれした場合、同じ線幅に形成されるべきパターンにおいて水平パターンの線幅と鉛直パターンの線幅との間に線幅の差が発生し、この線幅差がパターンの形成位置に応じて変化するという現象が発生する。特に、本実施形態のようにY方向に沿ってスキャンする露光装置では、スキャンの平均化効果により走査方向であるY方向に沿って線幅差の変化はほとんど発生しないが、非走査方向であるX方向に沿って線幅差の変化が顕著に発生する。
【0064】
同様に、蛍石レンズの光軸と一致する結晶軸が所望の結晶軸方位状態から光軸に対して傾いた場合にも、同じ線幅に形成されるべきパターンにおいて水平パターンの線幅と鉛直パターンの線幅との間に線幅の差が発生し、この線幅差がパターンの形成位置に応じて変化するという現象が発生する。特に、本実施形態のようにY方向に沿ってスキャンする露光装置では、蛍石レンズの光軸と一致する結晶軸が光軸に対してY方向に傾いた場合、スキャンの平均化効果により走査方向であるY方向に沿って線幅差の変化はほとんど発生しないが、非走査方向であるX方向に沿って線幅差の変化が顕著に発生する。
【0065】
図8は、蛍石レンズが所望の結晶軸方位状態から光軸廻りに微小角度だけ回転位置ずれした場合に、非走査方向であるX方向に沿って発生する線幅差の変化を模式的に示す図である。また、図9は、蛍石レンズの光軸と一致する結晶軸が所望の結晶軸方位状態から光軸に対して走査方向であるY方向に傾いた場合に、非走査方向であるX方向に沿って発生する線幅差の変化を模式的に示す図である。図8を参照すると、蛍石レンズが所望の結晶軸方位状態から光軸廻りに微小角度だけ回転位置ずれした場合、X方向に沿って発生する線幅差はX座標に関する奇関数分布にしたがって変化することがわかる。また、図9を参照すると、蛍石レンズの光軸と一致する結晶軸が所望の結晶軸方位状態から光軸に対して走査方向であるY方向に傾いた場合、X方向に沿って発生する線幅差はX座標に関する偶関数分布にしたがって変化することがわかる。
【0066】
したがって、蛍石レンズを光軸廻りに微小角度だけ積極的に回転させる微小角度回転操作と、蛍石レンズを光軸に対して積極的に傾ける傾斜操作とを組み合わせることにより、様々な分布にしたがう線幅差の変化を補正すること、すなわち計測誤差、加工誤差、位置決め誤差などに起因して発生した蛍石の固有複屈折の影響を低減することができる。ここで、蛍石レンズを光軸に対して積極的に傾ける傾斜操作は、所定の結晶軸(結晶軸[111]や[100]など)と光軸とがわずかに一致していない蛍石レンズを、光学的に等価な別の結晶軸方位関係になるように光軸廻りに所定角度だけ回転させる所定角度回転操作と光学的に等価である。
【0067】
そこで、本実施形態の光学調整工程S6では、収差計測工程S4で計測した投影光学系PLの波面収差情報に基づき必要に応じて、投影光学系PL中の一対の蛍石レンズ(La,Lbなど)のうちの少なくとも1つの蛍石レンズを光軸廻りに微小角度だけ回転させることにより、計測誤差、加工誤差、位置決め誤差などに起因して発生した蛍石の固有複屈折の影響を低減する。また、光学調整工程S6では、投影光学系PLの波面収差情報に基づき必要に応じて、投影光学系PL中の一対の蛍石レンズ(La,Lbなど)のうちの少なくとも1つの蛍石レンズを、光学的に等価な別の結晶軸方位関係になるように光軸廻りに所定角度だけ回転させることにより、計測誤差、加工誤差、位置決め誤差などに起因して発生した蛍石の固有複屈折の影響を低減する。なお、前述したように、蛍石レンズの光軸が結晶軸[111]とほぼ一致している場合、上述の所定角度は120度の整数倍である。また、蛍石レンズの光軸が結晶軸[100]とほぼ一致している場合、上述の所定角度は90度の整数倍である。
【0068】
ところで、光学調整工程S6において線幅差の分布を比較的容易に均一化するには、結晶軸[100]が光軸とほぼ一致するように配置された一対の蛍石レンズに対してよりも、結晶軸[111]が光軸とほぼ一致するように配置された一対の蛍石レンズに対して微小角度回転操作や所定角度回転操作を行うことが好ましい。また、結晶軸[100]と光軸との角度Aが0.5度以上で7度以下に配置された一対の蛍石レンズや、結晶軸[111]と光軸との角度Bが0.5度以上で7度以下に配置された一対の蛍石レンズに対して、所定角度回転操作を行うことが好ましい。
【0069】
ここで、角度AおよびBが0.5度よりも小さいと、蛍石レンズを光軸廻りに所定角度だけ回転させても結晶軸[100]や[111]を光軸に対して十分に傾けることができず、結果として光学調整能力が不足するので好ましくない。一方、角度AおよびBが7度よりも大きいと、蛍石レンズを光軸廻りに所定角度だけ回転させると結晶軸[100]や[111]の光軸に対する傾きが大きくなり過ぎて、結果として光学調整能力が過剰になるので好ましくない。
【0070】
次いで、光学調整工程S6を経て光学調整された投影光学系PLの波面収差を再び計測する(S4)。そして、収差計測工程S4で計測した投影光学系PLの波面収差が許容範囲内に収まっているか否かを再度判定する(S5)。判定工程S5において投影光学系PLの波面収差が許容範囲内に収まっていると判定した場合には、本実施形態の製造方法が終了する。しかしながら、判定工程S5において投影光学系PLの波面収差が許容範囲内に収まっていないと判定した場合には、判定工程S5においてYESの判定が得られるまで、光学調整工程S6および収差計測工程S4をさらに繰り返す。こうして、本実施形態では、レチクルRのパターン像をウェハ(感光性基板)W上に形成するための投影光学系PLを上述の製造方法を用いて製造し、製造された投影光学系PLを所定の位置に組み込むことにより露光装置が得られる。
【0071】
以上のように、本実施形態の製造方法では、投影光学系PLの波面収差情報に基づき必要に応じて、投影光学系PL中の一対の蛍石レンズ(La,Lbなど)のうちの少なくとも1つの蛍石レンズを、光軸廻りに微小角度だけ回転させることにより、または光学的に等価な別の結晶軸方位関係になるように光軸廻りに所定角度だけ回転させることにより、計測誤差、加工誤差、位置決め誤差などに起因して発生した蛍石の固有複屈折の影響を低減することができる。その結果、蛍石の固有複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を有する投影光学系PLを光学調整により実現することができる。
【0072】
なお、上述の実施形態では、投影光学系PLの結像性能を評価するために、投影光学系PLの波面収差を計測している。しかしながら、これに限定されることなく、投影光学系PLを介してその像面上に形成されるテストレチクルパターンの空間像を計測することにより、投影光学系PLの結像性能を評価することもできる。あるいは、テストレチクルのパターンを投影光学系PLを介して感光性基板上に焼き付けられる感光像(レジストなどの感光性材料が塗布された基板に形成される潜像を現像して得られるパターン像、あるいは潜像そのもの)を計測することにより、投影光学系PLの結像性能を評価することもできる。
【0073】
また、上述の実施形態では、レンズ加工工程S2に先立って蛍石の各結晶軸方位を計測しているが、これに限定されることなく、レンズ加工工程S2を経て形成された蛍石レンズの各結晶軸方位を計測することもできる。この場合、結晶軸方位に関する加工誤差を正確に把握することができ、この加工誤差情報(たとえば角度AやBに関する情報)を参照して光学調整工程S6における光学調整(特に所定角度回転操作)を効率的に行うことができる。
【0074】
また、上述の実施形態では、投影光学系PLの製造方法(ひいては露光装置の製造方法)における光学調整に対して本発明を適用している。しかしながら、これに限定されることなく、製造済みの投影光学系PLの調整方法(ひいては製造済みの露光装置の調整方法)における光学調整に対して本発明を適用することもできる。この場合、上述の結晶軸方位計測工程S1、レンズ加工工程S2および組立工程S3を行うことなく、収差計測工程S4、判定工程S5および光学調整工程S6だけを行うことになる。
【0075】
また、上述の実施形態では、実際に組み立てた投影光学系PLの結像性能を評価し、その評価結果に基づいて微小角度回転操作や所定角度回転操作のような光学調整を行っている。しかしながら、本発明では、これに限定されることなく、投影光学系PLの組立に先立って、仮想的に組み立てた投影光学系PLの結像性能をシミュレーションにより評価し、このシミュレーション結果に基づいて、各蛍石レンズ(各結晶透過部材)における所定結晶軸の光軸廻りの回転角度位置を最適化する第2実施形態も可能である。
【0076】
第2実施形態の製造方法では、レンズ加工工程S2に先立って蛍石の各結晶軸方位を計測するか、あるいはレンズ加工工程S2を経て形成された蛍石レンズの各結晶軸方位を計測する。次いで、計測により得られた結晶軸方位情報を含むレンズデータに基づいて、仮想的に組み立てた投影光学系PLにおいて発生が予想される波面収差などを光学シミュレーションにより求める。こうして、光学シミュレーションで得られた波面収差などを指標として、微小角度回転操作や所定角度回転操作を仮想的に行って、各蛍石レンズにおける所定結晶軸の光軸廻りの回転角度位置を最適化する。
【0077】
なお、第2実施形態においても、レンズ加工工程S2を経て形成された蛍石レンズの各結晶軸方位を計測する方が、結晶軸方位に関する加工誤差を正確に把握することができ、この加工誤差情報(たとえば角度AやBに関する情報)を参照して仮想的な所定角度回転操作を効率的に行うことができる。また、第2実施形態では、投影光学系PLを実際に組み立てた後に、上述の収差計測工程S4、判定工程S5および光学調整工程S6を行っても良いし、投影光学系PLを実際に組み立てた状態で製造方法を終了することもできる。
【0078】
また、本発明では、次の条件式(1)を満足する蛍石レンズの半数以上の蛍石レンズについて、その加工後に各結晶軸方位を計測する第3実施形態も可能である。条件式(1)において、Cは各蛍石レンズ(各結晶透過部材)を通過する光線と光軸とがなす角度の最大値であり、Dは各蛍石レンズの中心厚であり、WL×10−6は使用光の波長である。
0.04<sinC・D/WL (1)
【0079】
一般に、条件式(1)を満足する蛍石レンズは、ウェハWに比較的近い位置に配置される比較的厚い蛍石レンズであって、所望の結晶軸方位状態からの結晶軸のずれに伴って固有複屈折の影響が特に敏感に発生し易い。第3実施形態の製造方法では、条件式(1)を満足する蛍石レンズの半数以上の蛍石レンズについて加工後に各結晶軸方位を計測するので、固有複屈折の影響が特に敏感に発生し易い蛍石レンズの結晶軸方位に関する加工誤差を正確に把握することができる。その結果、第1実施形態と同様に、この加工誤差情報(たとえば角度AやBに関する情報)を参照して光学調整工程S6における光学調整(特に所定角度回転操作)を効率的に行うことができる。また、第2実施形態と同様に、投影光学系PLの組立に先立って、光学シミュレーションにより各蛍石レンズにおける所定結晶軸の光軸廻りの回転角度位置を最適化することができる。
【0080】
ところで、本出願人は、たとえば特願2001−243320号明細書および図面において、F2レーザー光を用いる投影光学系として、凹面反射鏡(一般には曲面反射鏡)と、この凹面反射鏡への入射光および凹面反射鏡からの反射光の双方が通過するように配置された蛍石レンズ(結晶レンズ)とを含む反射屈折型の投影光学系を提案している。本発明では、このタイプの反射屈折型の投影光学系において、凹面反射鏡に対する入射光および反射光が通過する蛍石レンズについて、その加工後に各結晶軸方位を計測する第4実施形態も可能である。
【0081】
一般に、凹面反射鏡に対する入射光および反射光が通過する蛍石レンズでは、光軸対する角度の比較的大きい光線が2回通過するので、所望の結晶軸方位状態からの結晶軸のずれに伴って固有複屈折の影響が特に敏感に発生し易い。第4実施形態の製造方法では、凹面反射鏡に対する入射光および反射光が通過する蛍石レンズについて加工後に各結晶軸方位を計測するので、固有複屈折の影響が特に敏感に発生し易い蛍石レンズの結晶軸方位に関する加工誤差を正確に把握することができる。その結果、第1実施形態と同様に、この加工誤差情報(たとえば角度AやBに関する情報)を参照して光学調整工程S6における光学調整(特に所定角度回転操作)を効率的に行うことができる。また、第2実施形態と同様に、投影光学系PLの組立に先立って、光学シミュレーションにより各蛍石レンズにおける所定結晶軸の光軸廻りの回転角度位置を最適化することができる。
【0082】
上述の実施形態の露光装置では、照明装置によってレチクル(マスク)を照明し(照明工程)、投影光学系を用いてマスクに形成された転写用のパターンを感光性基板に露光する(露光工程)ことにより、マイクロデバイス(半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等)を製造することができる。以下、本実施形態の露光装置を用いて感光性基板としてのウェハ等に所定の回路パターンを形成することによって、マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法の一例につき図10のフローチャートを参照して説明する。
【0083】
先ず、図10のステップ301において、1ロットのウェハ上に金属膜が蒸着される。次のステップ302において、そのlロットのウェハ上の金属膜上にフォトレジストが塗布される。その後、ステップ303において、本実施形態の露光装置を用いて、マスク上のパターンの像がその投影光学系を介して、その1ロットのウェハ上の各ショット領域に順次露光転写される。その後、ステップ304において、その1ロットのウェハ上のフォトレジストの現像が行われた後、ステップ305において、その1ロットのウェハ上でレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことによって、マスク上のパターンに対応する回路パターンが、各ウェハ上の各ショット領域に形成される。
【0084】
その後、更に上のレイヤの回路パターンの形成等を行うことによって、半導体素子等のデバイスが製造される。上述の半導体デバイス製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する半導体デバイスをスループット良く得ることができる。なお、ステップ301〜ステップ305では、ウェハ上に金属を蒸着し、その金属膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチングの各工程を行っているが、これらの工程に先立って、ウェハ上にシリコンの酸化膜を形成後、そのシリコンの酸化膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチング等の各工程を行っても良いことはいうまでもない。
【0085】
また、本実施形態の露光装置では、プレート(ガラス基板)上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得ることもできる。以下、図11のフローチャートを参照して、このときの手法の一例につき説明する。図11において、パターン形成工程401では、本実施形態の露光装置を用いてマスクのパターンを感光性基板(レジストが塗布されたガラス基板等)に転写露光する、所謂光リソグラフィ工程が実行される。この光リソグラフィー工程によって、感光性基板上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光された基板は、現像工程、エッチング工程、レジスト剥離工程等の各工程を経ることによって、基板上に所定のパターンが形成され、次のカラーフィルター形成工程402へ移行する。
【0086】
次に、カラーフィルター形成工程402では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列されたり、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルターの組を複数水平走査線方向に配列されたりしたカラーフィルターを形成する。そして、カラーフィルター形成工程402の後に、セル組み立て工程403が実行される。セル組み立て工程403では、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板、およびカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルター等を用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。セル組み立て工程403では、例えば、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板とカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルターとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。
【0087】
その後、モジュール組み立て工程404にて、組み立てられた液晶パネル(液晶セル)の表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。上述の液晶表示素子の製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する液晶表示素子をスループット良く得ることができる。
【0088】
なお、上述の実施形態では、露光装置に搭載される投影光学系に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、他の一般的な投影光学系に対して本発明を適用することもできる。また、上述の実施形態では、ArFエキシマレーザー光源またはF2 レーザー光源を用いているが、これに限定されることなく、所定の波長光を供給する他の適当な光源を用いることもできる。
【0089】
また、上述の実施形態では、マスクおよび基板を投影光学系に対して相対移動させながら基板の各露光領域に対してマスクパターンをスキャン露光するステップ・アンド・スキャン方式の露光装置に対して本発明を適用している。しかしながら、これに限定されることなく、マスクと基板とを静止させた状態でマスクのパターンを基板へ一括的に転写し、基板を順次ステップ移動させて各露光領域にマスクパターンを逐次露光するステップ・アンド・リピート方式の露光装置に対して本発明を適用することもできる。
【0090】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、たとえば投影光学系の波面収差情報に基づき必要に応じて、複数の結晶透過部材のうちの少なくとも1つの結晶透過部材を、光軸廻りに微小角度だけ回転させることにより、または光学的に等価な別の結晶軸方位関係になるように光軸廻りに所定角度だけ回転させることにより、計測誤差、加工誤差、位置決め誤差などに起因して発生した結晶材料の固有複屈折の影響を低減することができる。
【0091】
その結果、本発明では、結晶材料の固有複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を有する投影光学系を光学調整により実現することができる。したがって、本発明の露光装置および露光方法では、結晶材料の固有複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を有する投影光学系を用いて、高解像で高精度な投影露光を行うことができ、ひいては良好なマイクロデバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】本実施形態の露光装置に搭載された投影光学系の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【図3】結晶軸方位計測工程S1の詳細を示すフローチャートである。
【図4】ラウエカメラを概略的に示す図である。
【図5】複屈折測定機の概略的な構成を示す図である。
【図6】蛍石の結晶軸方位について説明する図である。
【図7】ArFエキシマレーザー光源やF2レーザー光源を使用する投影光学系の波面収差を計測するPDI方式の波面収差測定機の構成を概略的に示す図である。
【図8】蛍石レンズが所望の結晶軸方位状態から光軸廻りに微小角度だけ回転位置ずれした場合に、非走査方向であるX方向に沿って発生する線幅差の変化を模式的に示す図である。
【図9】蛍石レンズの光軸と一致する結晶軸が所望の結晶軸方位状態から光軸に対して走査方向であるY方向に傾いた場合に、非走査方向であるX方向に沿って発生する線幅差の変化を模式的に示す図である。
【図10】マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法のフローチャートである。
【図11】マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得る際の手法のフローチャートである。
【符号の説明】
LS 光源
IL 照明光学系
R レチクル
RS レチクルステージ
PL 投影光学系
W ウェハ
WS ウェハステージ
La,Lb 一対の蛍石レンズ
【発明の属する技術分野】
本発明は、投影光学系の調整方法、投影光学系の製造方法、投影光学系、露光装置、および露光方法に関する。さらに詳細には、本発明は、半導体素子などのマイクロデバイスをフォトリソグラフィ工程で製造する際に使用される露光装置に好適な投影光学系の光学調整に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体素子の製造や半導体チップ実装基板の製造では、微細化がますます進んでおり、パターンを焼き付ける露光装置ではより解像力の高い投影光学系が要求されてきている。この高解像の要求を満足するには、露光光を短波長化するとともに、NA(投影光学系の開口数)を大きくしなければならない。しかしながら、露光光の波長が短くなると、光の吸収のため実用に耐える光学材料の種類が限られてくる。
【0003】
たとえば波長が200nm以下の真空紫外域の光、特にF2レーザー光(波長157nm)を露光光として用いる場合、投影光学系を構成する光透過性光学材料としては、フッ化カルシウム(蛍石:CaF2)やフッ化バリウム(BaF2)等のフッ化物結晶を多用せざるを得ない。実際には、露光光としてF2レーザー光を用いる露光装置では、基本的に蛍石だけで投影光学系を形成する設計が想定されている。蛍石は、立方晶系(等軸晶系)に属する結晶材料であり、光学的には等方的で、複屈折が実質的にないと思われていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最近、このように波長の短い紫外線に対しては、蛍石においても、固有複屈折が存在することが報告されている。具体的には、蛍石の固有複屈折は、結晶軸[111]方向およびこれと等価な結晶軸[−111],[1−11],[11−1]方向、並びに結晶軸[100]方向およびこれと等価な結晶軸[010],[001]方向ではほぼ零であるが、その他の方向では実質的に零でない値を有する。
【0005】
特に、結晶軸[110],[−110],[101],[‐101],[011],[01−1]の6方向では、波長157nmの光に対して最大で11.2nm/cm、波長193nmの光に対して最大で3.4nm/cmの複屈折の値を有する。電子デバイスの製造に用いられる投影光学系のような超高精度の光学系においては、レンズ材料の複屈折に伴って生じる収差は致命的であり、固有複屈折の影響を実質的に回避したレンズ構成およびレンズ設計の採用が不可欠である。
【0006】
しかしながら、固有複屈折の影響を実質的に回避したレンズ構成およびレンズ設計を採用しても、蛍石の結晶軸方位の計測誤差、蛍石レンズの結晶軸方位に関する加工誤差、蛍石レンズの位置決め誤差などに起因して、最終的に製造された投影光学系において蛍石の固有複屈折の影響を良好に抑えることが困難であり、ひいては良好な光学性能(特に線幅均一性)を確保することが困難であるという不都合があった。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、たとえば蛍石のような結晶材料を用いても、その固有複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を有する投影光学系を光学調整により実現することのできる調整方法および製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、結晶材料の固有複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を有する投影光学系を用いて、高解像で高精度な投影露光を行うことのできる露光装置および露光方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、固有複屈折性を有する結晶材料で形成された複数の結晶透過部材を含み、第1面の像を第2面上に形成する投影光学系の調整方法において、
組み立てられた前記投影光学系の結像性能を評価する結像性能評価工程と、
前記結像性能評価工程の評価結果に基づいて、前記複数の結晶透過部材のうちの少なくとも1つの結晶透過部材を光軸廻りに回転させて光学調整を行う光学調整工程とを含むことを特徴とする調整方法を提供する。
【0009】
第1形態の好ましい態様によれば、前記結像性能評価工程は、前記投影光学系の収差を計測する収差計測工程を含む。また、前記結像性能評価工程は、前記投影光学系を介して前記第2面上に形成される空間像を計測する空間像計測工程を含むことが好ましい。また、前記結像性能評価工程は、前記投影光学系を介して感光性基板上に焼き付けられる感光像を計測する感光像計測工程を含むことが好ましい。ここで、感光像とは、レジストなどの感光性材料が塗布された基板に形成される潜像を現像して得られるパターン像、あるいは潜像そのものを指す。
【0010】
また、第1形態の好ましい態様によれば、前記複数の結晶透過部材のうちの一対の結晶透過部材は、その結晶軸[111]が前記光軸とほぼ一致するように配置されている。また、前記光学調整工程は、前記複数の結晶透過部材のうちの少なくとも1つの結晶透過部材を前記光軸廻りに微小角度だけ回転させる微小角度回転工程を含むことが好ましい。
【0011】
また、第1形態の好ましい態様によれば、前記光学調整工程は、前記複数の結晶透過部材のうちの少なくとも1つの結晶透過部材を、光学的に等価な別の結晶軸方位関係になるように、前記光軸廻りに所定角度だけ回転させる所定角度回転工程を含む。この場合、前記所定角度回転工程では、結晶軸[100]と前記光軸との角度Aが0.5度以上で7度以下に配置された結晶透過部材を、前記光軸廻りに約90度の整数倍だけ回転させることが好ましい。
【0012】
また、第1形態の好ましい態様によれば、前記所定角度回転工程では、結晶軸[111]と前記光軸との角度Bが0.5度以上で7度以下に配置された結晶透過部材を、前記光軸廻りに約120度の整数倍だけ回転させる。第1形態では、前記複数の結晶透過部材を所定の形状に加工した後に各結晶透過部材の結晶軸方位を計測する方位計測工程をさらに含むことが好ましい。
【0013】
本発明の第2形態では、固有複屈折性を有する結晶材料で形成された複数の結晶透過部材を含み、第1面の像を第2面上に形成する投影光学系の製造方法において、
前記複数の結晶透過部材の各結晶軸方位を計測する方位計測工程と、
前記方位計測工程の計測結果に基づいて、仮想的に組み立てた前記投影光学系の結像性能を評価するシミュレーション工程と、
前記シミュレーション工程の評価結果に基づいて、各結晶透過部材における所定結晶軸の光軸廻りの回転角度位置を最適化する最適化工程とを含むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0014】
第2形態の好ましい態様によれば、前記方位計測工程は、前記複数の結晶透過部材を所定の形状に加工した後に各結晶透過部材の結晶軸方位を計測する工程を含む。また、前記最適化工程は、前記複数の結晶透過部材のうちの少なくとも1つの結晶透過部材を前記光軸廻りに微小角度だけ仮想的に回転させる微小角度回転工程を含むことが好ましい。また、前記最適化工程は、前記複数の結晶透過部材のうちの少なくとも1つの結晶透過部材を、光学的に等価な別の結晶軸方位関係になるように、前記光軸廻りに所定角度だけ仮想的に回転させる所定角度回転工程を含むことが好ましい。
【0015】
また、第2形態の好ましい態様によれば、前記所定角度回転工程では、結晶軸[100]と前記光軸との角度Aが0.5度以上で7度以下に配置された結晶透過部材を、前記光軸廻りに約90度の整数倍だけ仮想的に回転させる。また、前記所定角度回転工程では、結晶軸[111]と前記光軸との角度Bが0.5度以上で7度以下に配置された結晶透過部材を、前記光軸廻りに約120度の整数倍だけ仮想的に回転させることが好ましい。
【0016】
本発明の第3形態では、固有複屈折性を有する結晶材料で形成された複数の結晶透過部材を含み、第1面の像を第2面上に形成する投影光学系の製造方法において、
前記複数の結晶透過部材を所定の形状に加工する加工工程と、
各結晶透過部材を通過する光線と光軸とがなす角度の最大値をCとし、各結晶透過部材の中心厚をDとし、使用光の波長をWL×10−6とするとき、
0.04<sinC・D/WL
の条件を満足する結晶透過部材の半数以上の結晶透過部材について、前記加工工程を経た後に各結晶透過部材の結晶軸方位を計測する方位計測工程を含むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0017】
本発明の第4形態では、曲面反射鏡と、該曲面反射鏡への入射光および前記曲面反射鏡からの反射光の双方が通過するように配置されて固有複屈折性を有する結晶材料で形成された結晶レンズとを含み、第1面の像を第2面上に形成する反射屈折型の投影光学系の製造方法において、
前記結晶レンズを所定の形状に加工する加工工程と、
前記加工工程の後に前記結晶レンズの結晶軸方位を計測する方位計測工程とを含むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0018】
本発明の第5形態では、固有複屈折性を有する結晶材料で形成された複数の結晶透過部材を含み、第1面の像を第2面上に形成する投影光学系の製造方法において、
第1形態の調整方法にしたがって前記投影光学系を調整する工程を含むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0019】
本発明の第6形態では、第1形態の調整方法を用いて製造されたことを特徴とする投影光学系を提供する。
【0020】
本発明の第7形態では、第2形態〜第5形態の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする投影光学系を提供する。
【0021】
本発明の第8形態では、第6形態または第7形態の投影光学系を備え、
前記第1面に配置されたマスクのパターンを前記投影光学系を介して前記第2面に配置された感光性基板上に露光することを特徴とする露光装置を提供する。
【0022】
本発明の第9形態では、第1形態の調整方法を用いて製造された投影光学系を介して、前記第1面に配置されたマスクのパターンを前記第2面に配置された感光性基板上に露光することを特徴とする露光方法を提供する。
【0023】
本発明の第10形態では、第1形態の調整方法を用いて調整された投影光学系を介して、前記第1面に配置されたマスクのパターンを前記第2面に配置された感光性基板上に露光することを特徴とする露光方法を提供する。
【0024】
本発明の第11形態では、第2形態〜第5形態の製造方法を用いて製造された投影光学系を介して、前記第1面に配置されたマスクのパターンを前記第2面に配置された感光性基板上に露光することを特徴とする露光方法を提供する。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。なお、図1において、投影光学系PLの光軸AXに平行にZ軸を、光軸AXに垂直な面内において図1の紙面に平行にY軸を、図1の紙面に垂直にX軸をそれぞれ設定している。本実施形態にかかる露光装置は、紫外領域の照明光を供給するための光源LSとして、たとえばArFエキシマレーザー光源(発振中心波長193nm)またはF2レーザー光源(発振中心波長157nm)を備えている。
【0026】
光源LSから射出された光は、照明光学系ILを介して、所定のパターンが形成されたレチクル(マスク)Rを重畳的に照明する。なお、光源LSと照明光学系ILとの間の光路はケーシング(不図示)で密封されており、光源LSから照明光学系IL中の最もレチクル側の光学部材までの空間は、露光光の吸収率が低い気体であるヘリウムガスや窒素などの不活性ガスで置換されているか、あるいはほぼ真空状態に保持されている。
【0027】
レチクルRは、レチクルホルダRHを介して、レチクルステージRS上においてXY平面に平行に保持されている。レチクルRには転写すべきパターンが形成されており、パターン領域全体のうちX方向に沿って長辺を有し且つY方向に沿って短辺を有する矩形状(スリット状)のパターン領域が照明される。レチクルステージRSは、図示を省略した駆動系の作用により、レチクル面(すなわちXY平面)に沿って二次元的に移動可能であり、その位置座標はレチクル移動鏡RMを用いた干渉計RIFによって計測され且つ位置制御されるように構成されている。
【0028】
レチクルRに形成されたパターンからの光は、投影光学系PLを介して、感光性基板であるウェハW上にレチクルパターン像を形成する。投影光学系PLは、蛍石で形成された一対のレンズ、すなわち蛍石レンズLaおよびLbを含む多数のレンズを備えている。ウェハWは、ウェハテーブル(ウェハホルダ)WTを介して、ウェハステージWS上においてXY平面に平行に保持されている。そして、レチクルR上での矩形状の照明領域に光学的に対応するように、ウェハW上ではX方向に沿って長辺を有し且つY方向に沿って短辺を有する矩形状の露光領域にパターン像が形成される。
【0029】
ウェハステージWSは、図示を省略した駆動系の作用によりウェハ面(すなわちXY平面)に沿って二次元的に移動可能であり、その位置座標はウェハ移動鏡WMを用いた干渉計WIFによって計測され且つ位置制御されるように構成されている。また、投影光学系PLを構成する光学部材のうち最もレチクル側に配置された光学部材と最もウェハ側に配置された光学部材との間で投影光学系PLの内部が気密状態を保つように構成され、投影光学系PLの内部の気体はヘリウムガスや窒素などの不活性ガスで置換されているか、あるいはほぼ真空状態に保持されている。
【0030】
さらに、照明光学系ILと投影光学系PLとの間の狭い光路には、レチクルRおよびレチクルステージRSなどが配置されているが、レチクルRおよびレチクルステージRSなどを密封包囲するケーシング(不図示)の内部に窒素やヘリウムガスなどの不活性ガスが充填されているか、あるいはほぼ真空状態に保持されている。また、投影光学系PLとウェハWとの間の狭い光路には、ウェハWおよびウェハステージWSなどが配置されているが、ウェハWおよびウェハステージWSなどを密封包囲するケーシング(不図示)の内部に窒素やヘリウムガスなどの不活性ガスが充填されているか、あるいはほぼ真空状態に保持されている。このように、光源LSからウェハWまでの光路の全体に亘って、露光光がほとんど吸収されることのない雰囲気が形成されている。
【0031】
上述したように、投影光学系PLによって規定されるレチクルR上の照明領域およびウェハW上の露光領域(すなわち実効露光領域)は、Y方向に沿って短辺を有する矩形状である。したがって、駆動系および干渉計(RIF、WIF)などを用いてレチクルRおよびウェハWの位置制御を行いながら、矩形状の露光領域および照明領域の短辺方向すなわちY方向に沿ってレチクルステージRSとウェハステージWSとを、ひいてはレチクルRとウェハWとを同期的に移動(走査)させることにより、ウェハW上には露光領域の長辺に等しい幅を有し且つウェハWの走査量(移動量)に応じた長さを有する領域に対してレチクルパターンが走査露光される。
【0032】
図2は、本実施形態の露光装置に搭載された投影光学系の製造方法を概略的に示すフローチャートである。本実施形態の製造方法は、図2に示すように、蛍石材料を準備してその各結晶軸方位を計測する結晶軸方位計測工程S1と、蛍石レンズ(一般には結晶透過部材)を含むすべての構成レンズを所定の形状に加工するレンズ加工工程S2と、所定の形状に加工された複数のレンズを用いて投影光学系PLを組み立てる組立工程S3と、組立工程S3を経て組み立てられた投影光学系PLまたは後述の光学調整工程S6を経て光学調整された投影光学系PLの波面収差を計測する収差計測工程S4と、収差計測工程S4で計測した投影光学系PLの波面収差が許容範囲内に収まっているか否かを判定する判定工程S5と、判定工程S5の判定結果にしたがって投影光学系PL中の少なくとも1つの蛍石レンズを光軸廻りに回転させて光学調整を行う光学調整工程S6とを有する。以下、各工程S1〜S6について順次説明する。
【0033】
結晶軸方位計測工程S1では、投影光学系PLが使用される波長(本実施形態では露光光であるF2レーザ光)に対して光透過性を有する等軸晶系(結晶軸の単位長さが互いに等しく、それぞれの結晶軸の交点における各結晶軸がなす角度が全て90度である晶系)の結晶材料として蛍石を準備し、準備した蛍石材料の各結晶軸方位を計測する。なお、等軸晶系の結晶材料として、蛍石以外に、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化リチウム(LiF2)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化ストロンチウム(SrF2)などが挙げられる。
【0034】
一般に、結晶材料の各結晶軸方位の計測に際して、例えばラウエ(Laue)測定を行い結晶軸の方位を直接的に測定する手法か、結晶材料の複屈折を測定し、既知の結晶軸方位と複屈折量との関係に基づいて、測定された複屈折から結晶軸方位を定める手法を適用することができる。
【0035】
図3は、結晶軸方位計測工程S1の詳細を示すフローチャートである。図3を参照すると、ステップS11では、結晶材料としての蛍石のための粉末原料を脱酸素化反応させる前処理を行う。紫外域または真空紫外域で使用される蛍石単結晶をブリッジマン法により育成する場合には、人工合成の高純度原料を使用することが一般的である。さらに、原料のみを融解して結晶化すると白濁して失透する傾向を示すため、スカベンジャーを添加して加熱することにより、白濁を防止する処置を施している。蛍石単結晶の前処理や育成において使用される代表的なスカベンジャーとしては、フッ化鉛(PbF2)が挙げられる。
【0036】
なお、原料中に含有される不純物と化学反応し、これを取り除く作用をする添加物質のことを一般にスカベンジャーという。本実施形態における前処理では、まず、高純度な粉未原料にスカベンジャーを添加して良く混合させる。その後、スカベンジヤーの融点以上で、蛍石の融点未満の温度まで加熱昇温させることにより脱酸素化反応を進める。その後、そのまま室温まで降温して焼結体としても良いし、或いはさらに温度を上昇させて一旦原料を融解させた後、室温まで降温して多結晶体としても良い。以上のようにして脱酸素化がなされた焼結体や多結晶体を前処理品という。
【0037】
次に、ステップS12では、この前処理品を用いてさらに結晶成長させることにより単結晶インゴットを得る。結晶成長の方法は、融液の固化、溶液からの析出、気体からの析出、固体粒子の成長に大別できることが広く知られているが、本実施形態においては垂直ブリッジマン法により結晶成長させる。まず、前処理品を容器に収納し、垂直ブリッジマン装置(結晶成長炉)の所定位置に設置する。その後、容器内に収納された前処理品を加熱して融解させる。前処理品の融点に到達した後は、所定時間を経過させた後に結晶化を開始する。融液のすべてが結晶化したら、室温まで徐冷してインゴットとして取り出す。
【0038】
ステップS13では、インゴットを切断して、最終的に形成すべき結晶透過部材(本実施形態では蛍石レンズLa,Lbなどの光学部材)の大きさおよび形状に応じたサイズを有するディスク材を得る。ここで、最終的に形成すべき結晶透過部材がレンズである場合には、ディスク材の形伏を薄い円柱形状とすることが好ましく、円柱形伏のディスク材の口径および厚さは、レンズの有効径(外径)および光軸方向の厚さに合わせて定められることが望ましい。ステップS14では、蛍石単結晶インゴットより切り出されたディスク材に対してアニール処理を行う。これらのステップS11〜S14を実行することにより、蛍石単結晶からなる結晶材料が得られる。
【0039】
最後に、ステップS15では、準備した結晶材料すなわち加工前の結晶透過部材の各結晶軸方位を計測する。このとき、上述したように、結晶軸の方位を直接的に測定する第1の測定手法と、結晶材料の複屈折を測定して間接的に結晶軸方位を定める第2の測定手法とが考えられる。まず、結晶軸の方位を直接的に測定する第1の測定手法について説明する。第1の測定手法では、X線結晶解析の手法を用いて、結晶材料の結晶構造を、ひいては結晶軸を直接的に測定する。このような測定手法としては、例えばラウエ(Laue)法が知られている。
【0040】
以下、第1の測定手法としてラウエ法を適用した場合について図4を参照して簡単に説明する。図4は、ラウエカメラを概略的に示す図である。図4に示すように、ラウエ法による結晶軸測定を実現するためのラウエカメラは、X線源100と、このX線源100からのX線101を試料としての結晶材料(本実施形態では蛍石)103へ導くためのコリメータ102と、結晶材料103から回折される回折X線104により露光されるX線感光部材105とを備えている。なお、図4では不図示であるが、X線感光部材105を貫通しているコリメータ102の内部には、対向する一対のスリットが設けられている。
【0041】
第1の測定手法においては、まず、準備した結晶材料103にX線101を照射して、この結晶材料103から回折X線104を発生させる。そして、この回折X線104で、結晶材料103のX線入射側に配置されたX線フィルムやイメージングプレート等のX線感光部材105を露光し、このX線感光部材105上に結晶構造に対応した模様の可視像(回折像)を形成する。この回折像(ラウエ図形)は、結晶材料が単結晶のときには斑点状となり、この斑点はラウエ斑点と呼ばれる。本実施形態で用いている結晶材料は蛍石でありその結晶構造は既知であるため、このラウエ斑点を解析することにより、結晶軸方位が明らかになる。
【0042】
なお、結晶軸を直接測定する第1の測定手法としては、ラウエ法に限定されることなく、結晶を回転又は振動させながらX線を照射する回転法又は振動法、ワイセンベルグ法、ブリセッション法などのような他のX線結晶解析の手法や、結晶材料の劈開性を利用した方法、結晶材料の塑性変形を与えることにより結晶材料表面に現れる特有の形状を持つ圧像(或いは打像)を観察する方法等の機械的な手法などを用いても良い。
【0043】
次に、結晶材料の複屈折を測定して間接的に結晶軸方位を定める第2の測定手法について簡単に説明する。第2の測定手法では、まず結晶材料の結晶軸方位とその方位における複屈折量との対応づけを行う。このとき、上述の第1の測定手法を用いて結晶材料のサンプルの結晶軸方位を測定する。そして、結晶材料サンプルの複数の結晶軸毎に複屈折の測定を行う。
【0044】
図5は、複屈折測定機の概略的な構成を示す図である。図5において、光源110からの光は、偏光子111により水平方向(X方向)からπ/4だけ傾いた振動面を有する直線偏光に変換される。そして、この直線偏光は、光弾性変調器112により位相変調を受けて、結晶材料サンプル113に照射される。すなわち、位相の変化する直線偏光が結晶材料サンプル113に入射する。結晶材料サンプル113を透過した光は検光子114に導かれ、水平方向(X方向)に振動面を有する偏光のみが検光子114を透過して光検出器115で検出される。
【0045】
光弾性変調器112により発生する所定の位相遅れのときに、どれだけの光量が光検出器115で検出されるのかを、位相遅れの量を変えなから測定することにより、遅相軸の方向とその屈折率、および進相軸における屈折率を求めることができる。なお、試料に複屈折が存在する場含、屈折率の差により、当該試料を通過する振動面(偏光面)が直交した2つの直線偏光の光の位相が変化する。すなわち、一方の偏光に対して他方の偏光の位相が進んだり遅れたりすることになるが、位相が進む方の偏光方向を進相軸と呼び、位相が遅れる方の偏光方向を遅相軸と呼ぶ。
【0046】
ここで、図6を参照して、蛍石の結晶軸方位について簡単に説明する。図6を参照すると、蛍石の結晶軸は、等方晶系のXYZ座標系に基づいて規定される。すなわち、+X軸に沿って結晶軸[100]が、+Y軸に沿って結晶軸[010]が、+Z軸に沿って結晶軸[001]がそれぞれ規定される。また、XZ平面において結晶軸[100]および結晶軸[001]と45度をなす方向に結晶軸[101]が、XY平面において結晶軸[100]および結晶軸[010]と45度をなす方向に結晶軸[110]が、YZ平面において結晶軸[010]および結晶軸[001]と45度をなす方向に結晶軸[011]がそれぞれ規定される。さらに、+X軸、+Y軸および+Z軸に対して等しい鋭角をなす方向に結晶軸[111]が規定される。
【0047】
なお、図6では、+X軸、+Y軸および+Z軸で規定される空間における結晶軸のみを図示しているが、他の空間においても同様に結晶軸が規定される。蛍石では、図6中実線で示す結晶軸[111]方向、およびこれと等価な不図示の結晶軸[−111],[1−11],[11−1]方向では、複屈折がほぼ零(最小)である。同様に、図6中実線で示す結晶軸[100],[010],[001]方向においても、複屈折がほぼ零(最小)である。一方、図6中破線で示す結晶軸[110],[101],[011],およびこれと等価な不図示の結晶軸[−110],[−101],[01−1]方向では、複屈折が最大である。
【0048】
本実施形態では、上記第1の測定手法により結晶軸方位が既知となった結晶材料サンプルの結晶軸毎の複屈折測定を行い、結晶材料の結晶軸方位とその方位における複屈折量との対応づけを行う。このとき、測定する結晶材料の結晶軸として、[100],[110]および[111]という代表的な結晶軸の他に、[112],[210]および[211]などの結晶軸を用いても良い。なお、結晶軸[010],[001]は上記結晶軸[100]と等価な結晶軸であり、結晶軸[011],[101]は上記結晶軸[110]と等価な結晶軸である。また、測定された結晶軸の中間の結晶軸に関しては、所定の補間演算式を用いて補間しても良い。
【0049】
以上のように、第2の測定手法を適用する場合、図5に示す複屈折測定機を用いて、準備した結晶材料の複屈折の測定を行う。そして、結晶軸方位と複屈折との対応関係が予め求められているため、この対応関係を用いて、測定された複屈折から結晶軸方位を算出する。このように、第2の測定手法によれば、直接的に結晶軸方位を測定しなくとも結晶材料の結晶軸方位を求めることかできる。
【0050】
なお、本願明細書中において、「結晶軸と等価な結晶軸」とは、ある結晶軸に対して、当該結晶軸の指数の順序を入れ替えた結晶軸と、さらにそれらの各指数の少なくとも一部についての符号を反転した結晶軸であり、例えばある結晶軸が[abc]結晶軸である場合は、[acb]、[bac]、[bca]、[cab]、[cba]、[−abc]、[−acb]、[−bac]、[−bca]、[−cab]、[−cba]、[a−bc]、[a−cb]、[b−ac]、[b−ca]、[c−ab]、[c−ba]、[ab−c]、[ac−b]、[ba−c]、[bc−a]、[ca−b]、[cb−a]、[−a−bc]、[−a−cb]、[−b−ac][−b−ca]、[−c−ab]、[−c−ba]、[a−b−c]、[a−c−b]、[b−a−c]、[b−c−a]、[c−a−b]、[c−b−a]、[−a−b−c]、[−a−c−b]、[−b−a−c]、[−b−c−a]、[−c−a−b]、[−c−b−a]などが等価な結晶軸である。
【0051】
次いで、レンズ加工工程S2では、蛍石レンズを含むすべての構成レンズを所定の形状に加工する。すなわち、周知の研磨工程にしたがって、設計値を目標として各レンズの表面を研磨加工する。研磨工程では、各レンズの面形状の誤差を干渉計で計測しながら研磨を繰り返し、各レンズの面形状を目標面形状に近づける。こうして、各レンズの面形状誤差が所定の範囲に入ると、各レンズの面形状の誤差を、たとえばフィゾーレンズを用いる更に精密な干渉計装置を用いて計測する。なお、レンズの面形状誤差の干渉計による計測に関する詳細については、たとえば特開平7−12535号、特開平7−113609号、特開平10−154657号公報などを参照することができる。
【0052】
次いで、組立工程S3では、所定の形状に加工された複数のレンズを用いて投影光学系PLを組み立てる。具体的には、所定の組立装置を用い、設計にしたがって1つまたは複数のレンズを各分割鏡筒に組み込み、1つまたは複数のレンズをそれぞれ収納した複数の分割鏡筒を組み立てることにより投影光学系を得る。なお、各分割鏡筒へのレンズの組込みおよび複数の分割鏡筒の組立てに用いられる組立装置に関する詳細については、たとえば特開2002−258131号公報などを参照することができる。
【0053】
次いで、収差計測工程S4では、組立工程S3を経て組み立てられた投影光学系PLの波面収差を計測する。具体的には、たとえば特開2000−97616号公報に開示された、いわゆるPDI(Phase Diffraction Interferometer:位相回折干渉計)方式の波面収差測定機を用いて、ArFエキシマレーザー光源を使用する投影光学系やF2レーザー光源を使用する投影光学系の波面収差を計測することもできる。図7は、ArFエキシマレーザー光源やF2レーザー光源を使用する投影光学系の波面収差を計測するPDI方式の波面収差測定機の構成を概略的に示す図である。
【0054】
図7に示すように、光源LS(図7では不図示)から射出されて照明光学系ILを介した露光用照明光が、マスク設定位置に位置決めされた第1のピンホール71に入射する。第1のピンホール71を介して形成された球面波は、被検光学系としての投影光学系PLを透過して、グレーティング(一次元回折格子)72に入射する。グレーティング72をそのまま透過した0次回折光は、マスク73に形成された第2のピンホール(不図示)に入射する。
【0055】
一方、グレーティング72で回折作用を受けて発生した1次回折光は、マスク73に形成された開口部(不図示)のほぼ中央に入射する。第2のピンホールを介した0次回折光および開口部を通過した1次回折光は、コリメータレンズ74を介して、CCDのような撮像素子75に達する。こうして、第2のピンホールを介して形成された球面波を参照波面とし、開口部を通過した1次回折光の波面を測定波面とし、参照波面と測定波面との干渉に基づいて投影光学系PLに残存する波面収差が計測される。
【0056】
同様に、たとえば特開平10−38757号公報に開示されたフィゾー干渉計方式の波面収差測定機を用いて、KrFエキシマレーザー光源を使用する投影光学系の波面収差を計測することができる。また、たとえば特開平10−38758号公報に開示されたフィゾー干渉計方式の波面収差測定機を用いて、超高圧水銀ランプ(たとえばi線)を使用する投影光学系の波面収差を計測することもできる。
【0057】
次いで、判定工程S5では、収差計測工程S4で計測した投影光学系PLの波面収差が許容範囲内に収まっているか否かを判定する。判定工程S5において投影光学系PLの波面収差が許容範囲内に収まっていると判定した場合(図2中YESの場合)、本実施形態の製造方法は終了する。一方、判定工程S5において投影光学系PLの波面収差が許容範囲内に収まっていないと判定した場合(図2中NOの場合)、本実施形態における特徴的な工程である光学調整工程S6に移行する。光学調整工程S6では、判定工程S5の判定結果にしたがって投影光学系PL中の少なくとも1つの蛍石レンズを光軸廻りに回転させて光学調整を行う。以下、光学調整工程S6の説明に先立って、蛍石の固有複屈折の影響を受けにくいレンズ構成を実現する手法について簡単に説明する。
【0058】
第1手法では、一対の蛍石レンズ(一般には蛍石で形成された透過部材であって平行平面板を含む)の光軸と結晶軸[111](または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸)とを一致させ、且つ光軸を中心として一対の蛍石レンズを約60度だけ相対的に回転させる。ここで、結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸とは、たとえば結晶軸[−111],[1−11],[11−1]である。また、一方の蛍石レンズと他方の蛍石レンズとを光軸を中心として約60度だけ相対的に回転させるとは、一方の蛍石レンズおよび他方の蛍石レンズにおける光軸とは異なる方向に向けられる所定の結晶軸(たとえば結晶軸[−111]、[11−1]、または[1−11])同士の光軸を中心とした相対的な角度が約60度であることを意味する。
【0059】
具体的には、たとえば一方の蛍石レンズにおける結晶軸[−111]と、他方の蛍石レンズにおける結晶軸[−111]との光軸を中心とした相対的な角度が約60度であることを意味する。そして、光軸を中心として約60度だけ相対的に回転させるということは、光軸を中心として約60度+(n×120度)だけ相対的に回転させること、すなわち60度、180度、または300度・・・だけ相対的に回転させることと同じ意味である(ここで、nは整数である)。換言すれば、一対の蛍石レンズの光軸と結晶軸[111](または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸)とを一致させる場合、上述の結晶軸方位関係から一方の蛍石レンズを光軸廻りに120度の整数倍だけ回転させると、光学的に等価な別の結晶軸方位関係が得られる。
【0060】
第2手法では、一対の蛍石レンズの光軸と結晶軸[100](または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸)とを一致させ、且つ光軸を中心として一対の蛍石レンズを約45度だけ相対的に回転させる。ここで、結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸とは、たとえば結晶軸[010],[001]である。また、一方の蛍石レンズと他方の蛍石レンズとを光軸を中心として約45度だけ相対的に回転させるとは、一方の蛍石レンズおよび他方の蛍石レンズにおける光軸とは異なる方向に向けられる所定の結晶軸(たとえば結晶軸[010],[001],[011]または[01−1])同士の光軸を中心とした相対的な角度が約45度であることを意味する。
【0061】
具体的には、たとえば一方の蛍石レンズにおける結晶軸[010]と、他方の蛍石レンズにおける結晶軸[010]との光軸を中心とした相対的な角度が約45度であることを意味する。そして、光軸を中心として約45度だけ相対的に回転させるということは、光軸を中心として約45度+(n×90度)だけ相対的に回転させること、すなわち45度、135度、225度、または315度・・・だけ相対的に回転させることと同じ意味である(ここで、nは整数である)。換言すれば、一対の蛍石レンズの光軸と結晶軸[100](または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸)とを一致させる場合、上述の結晶軸方位関係から一方の蛍石レンズを光軸廻りに90度の整数倍だけ回転させると、光学的に等価な別の結晶軸方位関係が得られる。
【0062】
したがって、本実施形態では、投影光学系PL中の一対の蛍石レンズ(La,Lbなど)に対して、上述の第1手法や第2手法などを適用することになる。このとき、蛍石の固有複屈折の影響を実質的に回避するために第1手法や第2手法などを採用しても、結晶軸方位計測工程S1において蛍石の各結晶軸方位の計測に際して発生する計測誤差、レンズ加工工程S2において所望の結晶軸方位関係を満たすように蛍石レンズを加工する際に発生する結晶軸方位に関する加工誤差、組立工程S3において蛍石レンズを投影光学系PLに組み込む際に発生する位置決め誤差などが発生する。その結果、各結晶軸方位の計測誤差、結晶軸方位に関する加工誤差、位置決め誤差などに起因して、組み立てられた投影光学系PLにおいて蛍石の固有複屈折の影響を良好に抑えることが困難であり、ひいては良好な光学性能(特に線幅均一性)を確保することが困難である。
【0063】
具体的には、蛍石レンズが所望の結晶軸方位状態から光軸廻りに微小角度だけ回転位置ずれした場合、同じ線幅に形成されるべきパターンにおいて水平パターンの線幅と鉛直パターンの線幅との間に線幅の差が発生し、この線幅差がパターンの形成位置に応じて変化するという現象が発生する。特に、本実施形態のようにY方向に沿ってスキャンする露光装置では、スキャンの平均化効果により走査方向であるY方向に沿って線幅差の変化はほとんど発生しないが、非走査方向であるX方向に沿って線幅差の変化が顕著に発生する。
【0064】
同様に、蛍石レンズの光軸と一致する結晶軸が所望の結晶軸方位状態から光軸に対して傾いた場合にも、同じ線幅に形成されるべきパターンにおいて水平パターンの線幅と鉛直パターンの線幅との間に線幅の差が発生し、この線幅差がパターンの形成位置に応じて変化するという現象が発生する。特に、本実施形態のようにY方向に沿ってスキャンする露光装置では、蛍石レンズの光軸と一致する結晶軸が光軸に対してY方向に傾いた場合、スキャンの平均化効果により走査方向であるY方向に沿って線幅差の変化はほとんど発生しないが、非走査方向であるX方向に沿って線幅差の変化が顕著に発生する。
【0065】
図8は、蛍石レンズが所望の結晶軸方位状態から光軸廻りに微小角度だけ回転位置ずれした場合に、非走査方向であるX方向に沿って発生する線幅差の変化を模式的に示す図である。また、図9は、蛍石レンズの光軸と一致する結晶軸が所望の結晶軸方位状態から光軸に対して走査方向であるY方向に傾いた場合に、非走査方向であるX方向に沿って発生する線幅差の変化を模式的に示す図である。図8を参照すると、蛍石レンズが所望の結晶軸方位状態から光軸廻りに微小角度だけ回転位置ずれした場合、X方向に沿って発生する線幅差はX座標に関する奇関数分布にしたがって変化することがわかる。また、図9を参照すると、蛍石レンズの光軸と一致する結晶軸が所望の結晶軸方位状態から光軸に対して走査方向であるY方向に傾いた場合、X方向に沿って発生する線幅差はX座標に関する偶関数分布にしたがって変化することがわかる。
【0066】
したがって、蛍石レンズを光軸廻りに微小角度だけ積極的に回転させる微小角度回転操作と、蛍石レンズを光軸に対して積極的に傾ける傾斜操作とを組み合わせることにより、様々な分布にしたがう線幅差の変化を補正すること、すなわち計測誤差、加工誤差、位置決め誤差などに起因して発生した蛍石の固有複屈折の影響を低減することができる。ここで、蛍石レンズを光軸に対して積極的に傾ける傾斜操作は、所定の結晶軸(結晶軸[111]や[100]など)と光軸とがわずかに一致していない蛍石レンズを、光学的に等価な別の結晶軸方位関係になるように光軸廻りに所定角度だけ回転させる所定角度回転操作と光学的に等価である。
【0067】
そこで、本実施形態の光学調整工程S6では、収差計測工程S4で計測した投影光学系PLの波面収差情報に基づき必要に応じて、投影光学系PL中の一対の蛍石レンズ(La,Lbなど)のうちの少なくとも1つの蛍石レンズを光軸廻りに微小角度だけ回転させることにより、計測誤差、加工誤差、位置決め誤差などに起因して発生した蛍石の固有複屈折の影響を低減する。また、光学調整工程S6では、投影光学系PLの波面収差情報に基づき必要に応じて、投影光学系PL中の一対の蛍石レンズ(La,Lbなど)のうちの少なくとも1つの蛍石レンズを、光学的に等価な別の結晶軸方位関係になるように光軸廻りに所定角度だけ回転させることにより、計測誤差、加工誤差、位置決め誤差などに起因して発生した蛍石の固有複屈折の影響を低減する。なお、前述したように、蛍石レンズの光軸が結晶軸[111]とほぼ一致している場合、上述の所定角度は120度の整数倍である。また、蛍石レンズの光軸が結晶軸[100]とほぼ一致している場合、上述の所定角度は90度の整数倍である。
【0068】
ところで、光学調整工程S6において線幅差の分布を比較的容易に均一化するには、結晶軸[100]が光軸とほぼ一致するように配置された一対の蛍石レンズに対してよりも、結晶軸[111]が光軸とほぼ一致するように配置された一対の蛍石レンズに対して微小角度回転操作や所定角度回転操作を行うことが好ましい。また、結晶軸[100]と光軸との角度Aが0.5度以上で7度以下に配置された一対の蛍石レンズや、結晶軸[111]と光軸との角度Bが0.5度以上で7度以下に配置された一対の蛍石レンズに対して、所定角度回転操作を行うことが好ましい。
【0069】
ここで、角度AおよびBが0.5度よりも小さいと、蛍石レンズを光軸廻りに所定角度だけ回転させても結晶軸[100]や[111]を光軸に対して十分に傾けることができず、結果として光学調整能力が不足するので好ましくない。一方、角度AおよびBが7度よりも大きいと、蛍石レンズを光軸廻りに所定角度だけ回転させると結晶軸[100]や[111]の光軸に対する傾きが大きくなり過ぎて、結果として光学調整能力が過剰になるので好ましくない。
【0070】
次いで、光学調整工程S6を経て光学調整された投影光学系PLの波面収差を再び計測する(S4)。そして、収差計測工程S4で計測した投影光学系PLの波面収差が許容範囲内に収まっているか否かを再度判定する(S5)。判定工程S5において投影光学系PLの波面収差が許容範囲内に収まっていると判定した場合には、本実施形態の製造方法が終了する。しかしながら、判定工程S5において投影光学系PLの波面収差が許容範囲内に収まっていないと判定した場合には、判定工程S5においてYESの判定が得られるまで、光学調整工程S6および収差計測工程S4をさらに繰り返す。こうして、本実施形態では、レチクルRのパターン像をウェハ(感光性基板)W上に形成するための投影光学系PLを上述の製造方法を用いて製造し、製造された投影光学系PLを所定の位置に組み込むことにより露光装置が得られる。
【0071】
以上のように、本実施形態の製造方法では、投影光学系PLの波面収差情報に基づき必要に応じて、投影光学系PL中の一対の蛍石レンズ(La,Lbなど)のうちの少なくとも1つの蛍石レンズを、光軸廻りに微小角度だけ回転させることにより、または光学的に等価な別の結晶軸方位関係になるように光軸廻りに所定角度だけ回転させることにより、計測誤差、加工誤差、位置決め誤差などに起因して発生した蛍石の固有複屈折の影響を低減することができる。その結果、蛍石の固有複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を有する投影光学系PLを光学調整により実現することができる。
【0072】
なお、上述の実施形態では、投影光学系PLの結像性能を評価するために、投影光学系PLの波面収差を計測している。しかしながら、これに限定されることなく、投影光学系PLを介してその像面上に形成されるテストレチクルパターンの空間像を計測することにより、投影光学系PLの結像性能を評価することもできる。あるいは、テストレチクルのパターンを投影光学系PLを介して感光性基板上に焼き付けられる感光像(レジストなどの感光性材料が塗布された基板に形成される潜像を現像して得られるパターン像、あるいは潜像そのもの)を計測することにより、投影光学系PLの結像性能を評価することもできる。
【0073】
また、上述の実施形態では、レンズ加工工程S2に先立って蛍石の各結晶軸方位を計測しているが、これに限定されることなく、レンズ加工工程S2を経て形成された蛍石レンズの各結晶軸方位を計測することもできる。この場合、結晶軸方位に関する加工誤差を正確に把握することができ、この加工誤差情報(たとえば角度AやBに関する情報)を参照して光学調整工程S6における光学調整(特に所定角度回転操作)を効率的に行うことができる。
【0074】
また、上述の実施形態では、投影光学系PLの製造方法(ひいては露光装置の製造方法)における光学調整に対して本発明を適用している。しかしながら、これに限定されることなく、製造済みの投影光学系PLの調整方法(ひいては製造済みの露光装置の調整方法)における光学調整に対して本発明を適用することもできる。この場合、上述の結晶軸方位計測工程S1、レンズ加工工程S2および組立工程S3を行うことなく、収差計測工程S4、判定工程S5および光学調整工程S6だけを行うことになる。
【0075】
また、上述の実施形態では、実際に組み立てた投影光学系PLの結像性能を評価し、その評価結果に基づいて微小角度回転操作や所定角度回転操作のような光学調整を行っている。しかしながら、本発明では、これに限定されることなく、投影光学系PLの組立に先立って、仮想的に組み立てた投影光学系PLの結像性能をシミュレーションにより評価し、このシミュレーション結果に基づいて、各蛍石レンズ(各結晶透過部材)における所定結晶軸の光軸廻りの回転角度位置を最適化する第2実施形態も可能である。
【0076】
第2実施形態の製造方法では、レンズ加工工程S2に先立って蛍石の各結晶軸方位を計測するか、あるいはレンズ加工工程S2を経て形成された蛍石レンズの各結晶軸方位を計測する。次いで、計測により得られた結晶軸方位情報を含むレンズデータに基づいて、仮想的に組み立てた投影光学系PLにおいて発生が予想される波面収差などを光学シミュレーションにより求める。こうして、光学シミュレーションで得られた波面収差などを指標として、微小角度回転操作や所定角度回転操作を仮想的に行って、各蛍石レンズにおける所定結晶軸の光軸廻りの回転角度位置を最適化する。
【0077】
なお、第2実施形態においても、レンズ加工工程S2を経て形成された蛍石レンズの各結晶軸方位を計測する方が、結晶軸方位に関する加工誤差を正確に把握することができ、この加工誤差情報(たとえば角度AやBに関する情報)を参照して仮想的な所定角度回転操作を効率的に行うことができる。また、第2実施形態では、投影光学系PLを実際に組み立てた後に、上述の収差計測工程S4、判定工程S5および光学調整工程S6を行っても良いし、投影光学系PLを実際に組み立てた状態で製造方法を終了することもできる。
【0078】
また、本発明では、次の条件式(1)を満足する蛍石レンズの半数以上の蛍石レンズについて、その加工後に各結晶軸方位を計測する第3実施形態も可能である。条件式(1)において、Cは各蛍石レンズ(各結晶透過部材)を通過する光線と光軸とがなす角度の最大値であり、Dは各蛍石レンズの中心厚であり、WL×10−6は使用光の波長である。
0.04<sinC・D/WL (1)
【0079】
一般に、条件式(1)を満足する蛍石レンズは、ウェハWに比較的近い位置に配置される比較的厚い蛍石レンズであって、所望の結晶軸方位状態からの結晶軸のずれに伴って固有複屈折の影響が特に敏感に発生し易い。第3実施形態の製造方法では、条件式(1)を満足する蛍石レンズの半数以上の蛍石レンズについて加工後に各結晶軸方位を計測するので、固有複屈折の影響が特に敏感に発生し易い蛍石レンズの結晶軸方位に関する加工誤差を正確に把握することができる。その結果、第1実施形態と同様に、この加工誤差情報(たとえば角度AやBに関する情報)を参照して光学調整工程S6における光学調整(特に所定角度回転操作)を効率的に行うことができる。また、第2実施形態と同様に、投影光学系PLの組立に先立って、光学シミュレーションにより各蛍石レンズにおける所定結晶軸の光軸廻りの回転角度位置を最適化することができる。
【0080】
ところで、本出願人は、たとえば特願2001−243320号明細書および図面において、F2レーザー光を用いる投影光学系として、凹面反射鏡(一般には曲面反射鏡)と、この凹面反射鏡への入射光および凹面反射鏡からの反射光の双方が通過するように配置された蛍石レンズ(結晶レンズ)とを含む反射屈折型の投影光学系を提案している。本発明では、このタイプの反射屈折型の投影光学系において、凹面反射鏡に対する入射光および反射光が通過する蛍石レンズについて、その加工後に各結晶軸方位を計測する第4実施形態も可能である。
【0081】
一般に、凹面反射鏡に対する入射光および反射光が通過する蛍石レンズでは、光軸対する角度の比較的大きい光線が2回通過するので、所望の結晶軸方位状態からの結晶軸のずれに伴って固有複屈折の影響が特に敏感に発生し易い。第4実施形態の製造方法では、凹面反射鏡に対する入射光および反射光が通過する蛍石レンズについて加工後に各結晶軸方位を計測するので、固有複屈折の影響が特に敏感に発生し易い蛍石レンズの結晶軸方位に関する加工誤差を正確に把握することができる。その結果、第1実施形態と同様に、この加工誤差情報(たとえば角度AやBに関する情報)を参照して光学調整工程S6における光学調整(特に所定角度回転操作)を効率的に行うことができる。また、第2実施形態と同様に、投影光学系PLの組立に先立って、光学シミュレーションにより各蛍石レンズにおける所定結晶軸の光軸廻りの回転角度位置を最適化することができる。
【0082】
上述の実施形態の露光装置では、照明装置によってレチクル(マスク)を照明し(照明工程)、投影光学系を用いてマスクに形成された転写用のパターンを感光性基板に露光する(露光工程)ことにより、マイクロデバイス(半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等)を製造することができる。以下、本実施形態の露光装置を用いて感光性基板としてのウェハ等に所定の回路パターンを形成することによって、マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法の一例につき図10のフローチャートを参照して説明する。
【0083】
先ず、図10のステップ301において、1ロットのウェハ上に金属膜が蒸着される。次のステップ302において、そのlロットのウェハ上の金属膜上にフォトレジストが塗布される。その後、ステップ303において、本実施形態の露光装置を用いて、マスク上のパターンの像がその投影光学系を介して、その1ロットのウェハ上の各ショット領域に順次露光転写される。その後、ステップ304において、その1ロットのウェハ上のフォトレジストの現像が行われた後、ステップ305において、その1ロットのウェハ上でレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことによって、マスク上のパターンに対応する回路パターンが、各ウェハ上の各ショット領域に形成される。
【0084】
その後、更に上のレイヤの回路パターンの形成等を行うことによって、半導体素子等のデバイスが製造される。上述の半導体デバイス製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する半導体デバイスをスループット良く得ることができる。なお、ステップ301〜ステップ305では、ウェハ上に金属を蒸着し、その金属膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチングの各工程を行っているが、これらの工程に先立って、ウェハ上にシリコンの酸化膜を形成後、そのシリコンの酸化膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチング等の各工程を行っても良いことはいうまでもない。
【0085】
また、本実施形態の露光装置では、プレート(ガラス基板)上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得ることもできる。以下、図11のフローチャートを参照して、このときの手法の一例につき説明する。図11において、パターン形成工程401では、本実施形態の露光装置を用いてマスクのパターンを感光性基板(レジストが塗布されたガラス基板等)に転写露光する、所謂光リソグラフィ工程が実行される。この光リソグラフィー工程によって、感光性基板上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光された基板は、現像工程、エッチング工程、レジスト剥離工程等の各工程を経ることによって、基板上に所定のパターンが形成され、次のカラーフィルター形成工程402へ移行する。
【0086】
次に、カラーフィルター形成工程402では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列されたり、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルターの組を複数水平走査線方向に配列されたりしたカラーフィルターを形成する。そして、カラーフィルター形成工程402の後に、セル組み立て工程403が実行される。セル組み立て工程403では、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板、およびカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルター等を用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。セル組み立て工程403では、例えば、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板とカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルターとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。
【0087】
その後、モジュール組み立て工程404にて、組み立てられた液晶パネル(液晶セル)の表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。上述の液晶表示素子の製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する液晶表示素子をスループット良く得ることができる。
【0088】
なお、上述の実施形態では、露光装置に搭載される投影光学系に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、他の一般的な投影光学系に対して本発明を適用することもできる。また、上述の実施形態では、ArFエキシマレーザー光源またはF2 レーザー光源を用いているが、これに限定されることなく、所定の波長光を供給する他の適当な光源を用いることもできる。
【0089】
また、上述の実施形態では、マスクおよび基板を投影光学系に対して相対移動させながら基板の各露光領域に対してマスクパターンをスキャン露光するステップ・アンド・スキャン方式の露光装置に対して本発明を適用している。しかしながら、これに限定されることなく、マスクと基板とを静止させた状態でマスクのパターンを基板へ一括的に転写し、基板を順次ステップ移動させて各露光領域にマスクパターンを逐次露光するステップ・アンド・リピート方式の露光装置に対して本発明を適用することもできる。
【0090】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、たとえば投影光学系の波面収差情報に基づき必要に応じて、複数の結晶透過部材のうちの少なくとも1つの結晶透過部材を、光軸廻りに微小角度だけ回転させることにより、または光学的に等価な別の結晶軸方位関係になるように光軸廻りに所定角度だけ回転させることにより、計測誤差、加工誤差、位置決め誤差などに起因して発生した結晶材料の固有複屈折の影響を低減することができる。
【0091】
その結果、本発明では、結晶材料の固有複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を有する投影光学系を光学調整により実現することができる。したがって、本発明の露光装置および露光方法では、結晶材料の固有複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を有する投影光学系を用いて、高解像で高精度な投影露光を行うことができ、ひいては良好なマイクロデバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】本実施形態の露光装置に搭載された投影光学系の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【図3】結晶軸方位計測工程S1の詳細を示すフローチャートである。
【図4】ラウエカメラを概略的に示す図である。
【図5】複屈折測定機の概略的な構成を示す図である。
【図6】蛍石の結晶軸方位について説明する図である。
【図7】ArFエキシマレーザー光源やF2レーザー光源を使用する投影光学系の波面収差を計測するPDI方式の波面収差測定機の構成を概略的に示す図である。
【図8】蛍石レンズが所望の結晶軸方位状態から光軸廻りに微小角度だけ回転位置ずれした場合に、非走査方向であるX方向に沿って発生する線幅差の変化を模式的に示す図である。
【図9】蛍石レンズの光軸と一致する結晶軸が所望の結晶軸方位状態から光軸に対して走査方向であるY方向に傾いた場合に、非走査方向であるX方向に沿って発生する線幅差の変化を模式的に示す図である。
【図10】マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法のフローチャートである。
【図11】マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得る際の手法のフローチャートである。
【符号の説明】
LS 光源
IL 照明光学系
R レチクル
RS レチクルステージ
PL 投影光学系
W ウェハ
WS ウェハステージ
La,Lb 一対の蛍石レンズ
Claims (25)
- 固有複屈折性を有する結晶材料で形成された複数の結晶透過部材を含み、第1面の像を第2面上に形成する投影光学系の調整方法において、
組み立てられた前記投影光学系の結像性能を評価する結像性能評価工程と、
前記結像性能評価工程の評価結果に基づいて、前記複数の結晶透過部材のうちの少なくとも1つの結晶透過部材を光軸廻りに回転させて光学調整を行う光学調整工程とを含むことを特徴とする調整方法。 - 前記結像性能評価工程は、前記投影光学系の収差を計測する収差計測工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の調整方法。
- 前記結像性能評価工程は、前記投影光学系を介して前記第2面上に形成される空間像を計測する空間像計測工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の調整方法。
- 前記結像性能評価工程は、前記投影光学系を介して感光性基板上に焼き付けられる感光像を計測する感光像計測工程を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の調整方法。
- 前記複数の結晶透過部材のうちの一対の結晶透過部材は、その結晶軸[111]が前記光軸とほぼ一致するように配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の調整方法。
- 前記光学調整工程は、前記複数の結晶透過部材のうちの少なくとも1つの結晶透過部材を前記光軸廻りに微小角度だけ回転させる微小角度回転工程を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の調整方法。
- 前記光学調整工程は、前記複数の結晶透過部材のうちの少なくとも1つの結晶透過部材を、光学的に等価な別の結晶軸方位関係になるように、前記光軸廻りに所定角度だけ回転させる所定角度回転工程を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の調整方法。
- 前記所定角度回転工程では、結晶軸[100]と前記光軸との角度Aが0.5度以上で7度以下に配置された結晶透過部材を、前記光軸廻りに約90度の整数倍だけ回転させることを特徴とする請求項7に記載の調整方法。
- 前記所定角度回転工程では、結晶軸[111]と前記光軸との角度Bが0.5度以上で7度以下に配置された結晶透過部材を、前記光軸廻りに約120度の整数倍だけ回転させることを特徴とする請求項7または8に記載の調整方法。
- 前記複数の結晶透過部材を所定の形状に加工した後に各結晶透過部材の結晶軸方位を計測する方位計測工程をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の調整方法。
- 固有複屈折性を有する結晶材料で形成された複数の結晶透過部材を含み、第1面の像を第2面上に形成する投影光学系の製造方法において、
前記複数の結晶透過部材の各結晶軸方位を計測する方位計測工程と、
前記方位計測工程の計測結果に基づいて、仮想的に組み立てた前記投影光学系の結像性能を評価するシミュレーション工程と、
前記シミュレーション工程の評価結果に基づいて、各結晶透過部材における所定結晶軸の光軸廻りの回転角度位置を最適化する最適化工程とを含むことを特徴とする製造方法。 - 前記方位計測工程は、前記複数の結晶透過部材を所定の形状に加工した後に各結晶透過部材の結晶軸方位を計測する工程を含むことを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
- 前記最適化工程は、前記複数の結晶透過部材のうちの少なくとも1つの結晶透過部材を前記光軸廻りに微小角度だけ仮想的に回転させる微小角度回転工程を含むことを特徴とする請求項11または12に記載の製造方法。
- 前記最適化工程は、前記複数の結晶透過部材のうちの少なくとも1つの結晶透過部材を、光学的に等価な別の結晶軸方位関係になるように、前記光軸廻りに所定角度だけ仮想的に回転させる所定角度回転工程を含むことを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記所定角度回転工程では、結晶軸[100]と前記光軸との角度Aが0.5度以上で7度以下に配置された結晶透過部材を、前記光軸廻りに約90度の整数倍だけ仮想的に回転させることを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
- 前記所定角度回転工程では、結晶軸[111]と前記光軸との角度Bが0.5度以上で7度以下に配置された結晶透過部材を、前記光軸廻りに約120度の整数倍だけ仮想的に回転させることを特徴とする請求項14または15に記載の製造方法。
- 固有複屈折性を有する結晶材料で形成された複数の結晶透過部材を含み、第1面の像を第2面上に形成する投影光学系の製造方法において、
前記複数の結晶透過部材を所定の形状に加工する加工工程と、
各結晶透過部材を通過する光線と光軸とがなす角度の最大値をCとし、各結晶透過部材の中心厚をDとし、使用光の波長をWL×10−6とするとき、
0.04<sinC・D/WL
の条件を満足する結晶透過部材の半数以上の結晶透過部材について、前記加工工程を経た後に各結晶透過部材の結晶軸方位を計測する方位計測工程を含むことを特徴とする製造方法。 - 曲面反射鏡と、該曲面反射鏡への入射光および前記曲面反射鏡からの反射光の双方が通過するように配置されて固有複屈折性を有する結晶材料で形成された結晶レンズとを含み、第1面の像を第2面上に形成する反射屈折型の投影光学系の製造方法において、
前記結晶レンズを所定の形状に加工する加工工程と、
前記加工工程の後に前記結晶レンズの結晶軸方位を計測する方位計測工程とを含むことを特徴とする製造方法。 - 固有複屈折性を有する結晶材料で形成された複数の結晶透過部材を含み、第1面の像を第2面上に形成する投影光学系の製造方法において、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の調整方法にしたがって前記投影光学系を調整する工程を含むことを特徴とする製造方法。 - 請求項1乃至10のいずれか1項に記載の調整方法を用いて製造されたことを特徴とする投影光学系。
- 請求項11乃至19のいずれか1項に記載の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする投影光学系。
- 請求項20または21に記載の投影光学系を備え、
前記第1面に配置されたマスクのパターンを前記投影光学系を介して前記第2面に配置された感光性基板上に露光することを特徴とする露光装置。 - 請求項1乃至10のいずれか1項に記載の調整方法を用いて製造された投影光学系を介して、前記第1面に配置されたマスクのパターンを前記第2面に配置された感光性基板上に露光することを特徴とする露光方法。
- 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の調整方法を用いて調整された投影光学系を介して、前記第1面に配置されたマスクのパターンを前記第2面に配置された感光性基板上に露光することを特徴とする露光方法。
- 請求項11乃至19のいずれか1項に記載の製造方法を用いて製造された投影光学系を介して、前記第1面に配置されたマスクのパターンを前記第2面に配置された感光性基板上に露光することを特徴とする露光方法。
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JP2003041991A JP2004253583A (ja) | 2003-02-20 | 2003-02-20 | 投影光学系の調整方法、投影光学系の製造方法、投影光学系、露光装置、および露光方法 |
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JP2015126215A (ja) * | 2013-12-27 | 2015-07-06 | キヤノン株式会社 | 光学素子ユニット、回転方向の相対位置の調整方法、露光装置、物品の製造方法 |
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2003
- 2003-02-20 JP JP2003041991A patent/JP2004253583A/ja active Pending
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