JP2004252219A - フィルターアタッチメント及びこのフィルターアタッチメントを有する撮影装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】水中等の空気より屈折率の大きい媒質内において、カメラ全体の大型化及び大幅なコストアップを招くことなく、色収差を良好に補正し良好な画質を得ることのできるフィルターアタッチメントを提供する。
【解決手段】内部にカメラ60を密閉・格納したハウジング51と、カメラ60が有する撮影レンズPLの光軸上に位置しこのハウジング51に設けられた光学窓WLを有するカメラハウジング50により構成された撮影装置40を、空気より屈折率の大きい媒体内に入れてカメラ60で外部の物体を撮影する場合に、撮影レンズPLに回折光学面Gfが形成されたフィルターアタッチメントFAを取付けて諸収差を補正する。
【選択図】 図1
【解決手段】内部にカメラ60を密閉・格納したハウジング51と、カメラ60が有する撮影レンズPLの光軸上に位置しこのハウジング51に設けられた光学窓WLを有するカメラハウジング50により構成された撮影装置40を、空気より屈折率の大きい媒体内に入れてカメラ60で外部の物体を撮影する場合に、撮影レンズPLに回折光学面Gfが形成されたフィルターアタッチメントFAを取付けて諸収差を補正する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、撮影レンズと組み合わせて収差特性を変化させるフィルターアタッチメントに関し、特に、空気より屈折率の大きい媒質内で用いるカメラハウジング内で撮影レンズと共に用いるフィルターアタッチメントに関する。さらに、カメラ、撮影装置などの水中用カメラハウジング内で用いるフィルターアタッチメントを有する撮影装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、水中において撮影を行う場合、撮影レンズを装着した一眼レフレックスカメラやデジタルスチルカメラを水中用ハウジング内に密閉・格納して水からカメラを保護している。ハウジングにはカメラが有する撮影レンズの光軸上に位置するように透明な光学窓が設けられており、この光学窓を通してハウジング内のカメラで水中内にある物体(被写体)を撮影する。
【0003】
しかし、水は屈折率と分散が空気と異なり、d線に対する屈折率が空気に比べて約4/3であり、分散はアッベ数で62となっている。このため、空気中で使用しているカメラ又は光学系をそのままハウジングに入れて、ガラスやプラスチックで形成された通常の透明な光学材料からなる光学窓を通して水中の物体を撮影すると、画角は約3/4倍になるにも拘わらず、諸収差が発生して画質の低下を招く。特に倍率色収差による色ズレが顕著であり、画質の劣化を招くことが従来より問題とされていた。最近では、デジタルスチルカメラ等の固体撮像素子を有するカメラが一般的となっているが、この諸収差の発生はその撮像素子の数画素分にも及ぶことが多く、解像度の低下のみならず、色調・色再現性までも影響が及ぶことがある。そのため、このような諸収差補正のために、水中撮影時には補助的な光学系を付加する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−159689号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、補助的な光学系を付加する場合、カメラ全体の大型化を招き好ましくなく、また、補助的な光学系による大幅なコストアップ等も課題となっている。
【0006】
本発明は、以上の課題に鑑みなされたものであり、水中等の空気より屈折率の大きい媒質内において、カメラ全体の大型化及び大幅なコストアップを招くことなく、色収差を良好に補正し良好な画質を得ることのできる、カメラハウジング内で用いるフィルターアタッチメントを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明に係るフィルターアタッチメントは、物体からの光線を撮像面上に結像する撮影レンズの物体側におけるこの撮影レンズの光軸上に配置され、短波長の倍率色収差を負側にシフトする機能を有する回折光学面が形成される。
【0008】
なお、本発明に係るフィルターアタッチメントは、光軸方向厚さをdとし、最も像側の面の曲率半径をR2としたとき、次式
0.0 ≦ d/R2 < 1.0
を満足することが好ましい。
【0009】
また、回折光学面の有効径をCとしたとき、次式
1.0 < C/d < 30.0
を満足することが好ましい。
【0010】
また、全体の焦点距離をfとしたとき、次式
−0.1 < 1/f (m−1) < 0.0
を満足することが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係るフィルターアタッチメントに形成された回折光学面は、屈折率の異なる複数の光学材料からなる複層の格子構造により構成されることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るフィルターアタッチメントを有する撮影装置は、ハウジングとこのハウジングに設けられた光学窓とを有するカメラハウジングの内部に、撮影レンズの光軸上に光学窓が位置するようにこの撮影レンズを有するカメラを密閉・格納し、空気より屈折率の大きい媒質内において、カメラにより物体を撮影するものであり、光学窓が、媒質のd線に対する屈折率との差が0.1以上である光学材料により形成され、撮影レンズの最も物体側の面と光学窓の最も像側の面との間における撮影レンズ及び光学窓の光軸上に上記に記載のフィルターアタッチメントを有して構成される。
【0013】
なお、本発明に係るフィルターアタッチメントを有する撮影装置は、光学窓の最も像側の面から回折光学面までの光軸上の距離をd1とし、撮影レンズの最も物体側の面から回折光学面までの光軸上の距離をd2としたとき、次式
0.2 < d1/d2 < 15.0
を満足することが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係るフィルターアタッチメントを水や液体などの媒質中で用いるカメラハウジング内に配設して撮影装置40を構成した場合を示している。カメラハウジング50は、内部に空間を有するハウジング51と、このハウジング51に配設された光学窓WLとから構成され、このハウジング51の内部空間にカメラ60を密閉・格納し、水中等の媒質内においてカメラ60で物体(被写体)を撮影するものである。カメラ60は、物体からの光線をフィルム面(撮像面)61に結像させる(像面Iを撮像面61に一致させる)撮影レンズPLを有しており、この撮影レンズPLの物体側の光軸上にフィルターアタッチメントFAが取付けられている。また、カメラハウジング50の光学窓WLは、内部に格納されたカメラ60の撮影レンズPL及びフィルターアタッチメントFAの光軸上に位置するように配設されている。この光学窓WLは、カメラハウジング50の外部にある物体からの光線を透過してカメラ60で撮影するために透明な光学材料で形成されており、光学窓WL、フィルターアタッチメントFA及び撮影レンズPLで合成光学系を構成している。また、光学窓WLは水等の媒質との屈折率の差が0.1以上の光学材料が用いられる。なお、以降の説明では、撮影装置40を水中内で使用する場合について説明する。
【0015】
本発明に係るフィルターアタッチメントFAには、回折光学面Gfが形成されており、この回折光学面Gfによって諸収差を補正し、特に倍率色収差の補正を効果的に行うように構成されている。図4は後述する第1実施例においてフィルターアタッチメントFAを取り外した(回折光学面Gfがない)場合に撮影装置40を水中に入れたときの収差図を示している。一方、図5は空気中での収差図を示しており、図4及び図5に示した諸収差図を比較すると、水中においては大きく収差が劣化しており、特に短波長の光線(g線)に対する倍率色収差が正側に大きく変位していることが分かる。そのため、フィルターアタッチメントFAを回折光学面Gfが形成された回折光学素子とすることにより、図3に示すように短波長の光線(g線)に対する倍率色収差を元の収差値近くまで補正している。
【0016】
このように、水中では短波長の光線(g線)に対する倍率色収差が正側に発生するため、その補正のために回折光学面Gfでは負側にシフトさせている(曲げている)。そのため、回折光学面Gfに正の屈折力を持たせて、倍率色収差を負側に曲げることができる。このため、回折光学面Gfは正の屈折力を有することが必要であり、このとき、近軸屈折力は0であっても構わない。より具体的には、凸面を1波長ごとに輪帯状に並べた格子面として回折光学面Gfを形成することで実現することができ、このような格子形状は製造上も作り易く、好都合である。
【0017】
フィルターアタッチメントFAは、通常、撮影レンズPLが配設されているケーシングに取付けられる。そのため、フィルターアタッチメントFAの物体側の面に回折光学面Gfが形成されていると、外部と接して回折光学面Gfの損傷や面品質の低下(細かな傷、表面の荒れ、格子の変形等)を起こしやすく、良好な画質を得られないため、回折光学面GfはフィルターアタッチメントFAの像側の面に形成されることが好ましい。なお、フィルターアタッチメントFAの像側の面は、撮影レンズPLのケーシング内に位置して密閉されているため、回折光学面Gfの損傷等は起こらない。
【0018】
また、フィルターアタッチメントFAの像側の面は、諸収差補正のために所定の曲率半径を有して形成されていることが好ましく、かつ、回折光学面Gfでのフレア発生を低減させるためには、像側に凹面となるように形成されていることが好まし。
【0019】
次に、回折光学面を有する回折光学素子(フィルターアタッチメントFA)について説明する。一般に、光線を曲げる方法は屈折と反射が知られているが、第3番目の方法として、回折が知られている。回折光学素子とは、光の回折現象を利用した光学素子であって、屈折や反射とは異なる振る舞いを示すことが知られている。この回折の性質として、負の分散値(アッベ数=−3.452)を有していて、色収差補正に極めて有効であることが知られている(ガラスのアッベ数は通常30〜70程度であるため、回折光学素子のアッベ数の大きさはその1/10倍以下である)。換言すると、回折光学素子においては長い波長の光ほど大きく曲がる。このため、通常のガラスでは達成し得ない良好な色収差補正が可能となることや、高価な特殊低分散ガラスでしか達成し得ない良好な色収差補正が可能であることが知られている。
【0020】
本発明においては、ガラスやプラスチック等で形成された光学部材の表面に回折格子やフレネルゾーンプレートのように回折現象を応用して光線を曲げる作用を有する面を形成して、その作用により良好な光学性能を得ようというものであり、このように回折現象を応用して光線を曲げる作用を有する面を回折光学面と呼ぶことにする。そして、このような面を有する光学素子を回折光学素子と一般に呼んでいる。なお、回折光学素子等については、「『回折光学素子入門』応用物理学会日本光学会監修平成9年第1版発行」に詳しい。
【0021】
さて、一般に、光学系の回折光学面を通過する光線の角度は、できるだけ小さい事が好ましい。これは回折光学面を通過する光線の角度が大きくなると回折光学面によるフレア(ブレーズした所定次数以外の光が有害光となって像面に達する現象)が発生し易くなり、画質を損ねてしまうからである。そのため、回折光学面で発生するフレアがあまり影響を及ぼさずに良好な画像を得るためには、本光学系の場合、回折光学面を通過する光線の角度を15度以下とすることが望ましく、本発明に係るフィルターアタッチメントFAをこのような条件を満たすように構成することが好ましい。上述のように、フィルターアタッチメントFAは、諸収差を補正するために、像側の面が凹面状に形成されているため、このような光線の角度に関する条件を満足することは容易である。
【0022】
なお、フレアを抑制する効果を十分に得るためには、回折光学面を通過する光線の角度を10度以下にすることが好ましい。ただし、水中においては水の濁りがあることや水中を光が通過する際に水に吸収されるため照度の低い物体(被写体)を撮影することが多いことなどから、回折光学面でフレアが発生してもあまり目立たない状況が多い。
【0023】
本発明に係るフィルターアタッチメントFA及びこのフィルターアタッチメントFAを有する撮影装置40を構成する条件について以下に説明する。本発明に係る撮影装置40は、光学窓WLの最も像側の面から回折光学面Gfまでの光軸上の距離をd1とし、撮影レンズPLの最も物体側の面から回折光学面Gfまでの光軸上の距離をd2としたとき、下の条件式(1)を満足するように構成されていることが好ましい。
【0024】
【数1】
0.2 < d1/d2 < 15.0 (1)
【0025】
条件式(1)は、フィルターアタッチメントFA、光学窓WL及び撮影レンズPLの適切な位置を規定している。ハウジング51内では、その容積に限界があるため、カメラ60(撮影レンズPL)やフィルターアタッチメントFAに許容されるスペースが限られている。このため、適正な配置を取ることは重要である。条件式(1)の上限を上回ると、d1が大きくなりすぎてしまい、結果、フィルターアタッチメントFAが撮影レンズPL側に接近しすぎるため、メカニカルな干渉という不都合が生じる。また、フィルターアタッチメントFAが撮影レンズPLの入射瞳に近づくため、倍率色収差の補正が難しくなる。このため、倍率色収差の補正のために回折光学面Gfを構成する回折格子のピッチが細くなり、製造しづらくなるとともに、この回折光学面Gfにおいて画角によるフレアが発生しやすくなる不都合が生じる。一方、条件式(1)の下限を下回ると、d2が大きくなりすぎてしまい、フィルターアタッチメントFAが撮影レンズPLから離れてしまうため、その径の増大を招き、大型化してしまう不都合が生じる。なお、本発明の効果を十分に発揮するには、条件式(1)の上限を10.0とし、下限を1.5とすることが望ましい。
【0026】
また、フィルターアタッチメントFAの光軸方向厚さをdとし、最も像側の曲率半径をR2としたとき、下の条件式(2)を満足するように構成されていることが好ましい。
【0027】
【数2】
0.0 ≦ d/R2 < 1.0 (2)
【0028】
条件式(2)は、回折光学面Gfを有する面の曲率半径の適切な範囲を規定する。条件式(2)の上限を上回ると、回折光学面の曲率半径が小さくなりすぎてしまい、回折光学素子の製造が困難となる不都合が生じるばかりか、コマ収差や像面歪曲収差の発生が甚大となってしまい、良好な画質が得られない。なお、回折光学面Gfが、平面上に形成されているときは、R2は無限大となるためd/R2=0となる。一方、条件式(2)の下限を下回ると、フィルターアタッチメントFAの像側の面が像側に凸面状となるため、回折光学面Gfに入射する光線の入射角度が大きくなりやすく、回折光学面Gfにおけるフレア発生が大きくなってしまい不都合である。なお、本発明の効果を十分に発揮するには、上限を0.7、下限を0.005とすることが望ましい。
【0029】
さらに良好な性能を得るためには、以下の条件式(3),(4)を満たすことが好ましい。ただし、条件式(3),(4)において、Cは回折光学面Gfの有効径(直径)であり、fはフィルターアタッチメントFA全体の焦点距離である。なお、回折光学面Gfが複層の格子構造により形成されている場合は、Cは空気との界面の径を指すものとする。また、条件式(4)において、焦点距離fの単位は「m」で表されているものとする。
【0030】
【数3】
1.0 < C/d < 30.0 (3)
−0.1 < 1/f (m−1) < 0.0 (4)
【0031】
条件式(3)は、回折光学面Gfの有効径(直径)の適切な範囲を規定している。条件式(3)の上限を上回ると、径が大きくなりすぎ、回折光学面Gfの製造が困難となりコストアップにつながる。また、回折光学面Gfに外部からの有害光が入りやすくなり、フレア等による画質の低下を招きやすくなる。反対に、条件式(3)の下限を下回ると、径が小さくなりすぎ、回折光学面Gfの格子ピッチが小さくなる傾向が強まり、回折光学面Gfの製造が困難となりコストアップにつながるばかりか、回折光学面Gfの格子によるフレア発生が大きくなり画質低下を招きやすい。なお、本発明の効果を十分に発揮するには、上限を15.0、下限を3.0とすることが望ましい。
【0032】
条件式(4)は、フィルターアタッチメントFA全体の焦点距離を規定する。条件式(4)の上限を越えると、すなわち、フィルターアタッチメントFAが正の屈折力を有していると、撮影レンズPLと組み合わせた状態での焦点位置が、カメラ60側のピント位置で無限遠を越えてしまい合焦できなくなる。そのため、フィルターアタッチメントFAは、やや弱い負の屈折力を有することが好ましい。ただし、条件式(4)の下限を越えて、負の屈折力が大きくなりすぎると、収差バランスを崩していまうので好ましくない。
【0033】
なお、さらに良好な性能を得るためには、回折光学面Gfを屈折率の異なる2層の光学材料からなる複層の格子構造を有するように形成した場合、その回折光学面Gfを形成する2層の光学材料の屈折率の差をΔnとして、下に示す条件式(5)を満たすことが好ましい。
【0034】
【数4】
Δn > 0.01 (5)
【0035】
条件式(5)は、回折光学面Gfを屈折率の異なる2層の光学材料からなる複層の格子構造を有するように形成した場合の、2層の光学材料の屈折率の差を規定する。2層からなる格子構造の格子高さhは、ブレーズ波長をλとすると、h=λ/Δnで定まるため、格子高さを低くするとともに画角に対するフレアが発生しにくくするためには、Δnはある程度大きいことが望ましい。また、製造上も格子高さが低い方が製造し易くなり、製造時の加工精度確保も容易になるために望ましい。条件式(5)の下限を越えると、画角特性が悪化し、製造時の難易度が上がってしまうため好ましくない。この格子高さは25μmより小さくすることが好ましい。なお、本発明の効果を十分に発揮するには条件式(5)の下限を0.03とすることが望ましい。
【0036】
また、フィルターアタッチメントFAを、アッベ数の異なる2つの光学部材を接合させて構成した場合、それらの光学部材のアッベ数の差をΔνdとして、下に示す条件式(6)を満たすことが好ましい。
【0037】
【数5】
Δνd > 10.0 (6)
【0038】
条件式(6)は、アッベ数の異なる2つの光学部材を接合させてフィルターアタッチメントFAを構成する場合の、アッベ数の差について規定している。条件式(6)の下限を越えると、色消しが不十分となるばかりか、このフィルターアタッチメントFAを構成する2つの光学部材の接合面の曲率半径が小さくなりすぎてしまい、製造が困難となる。この結果、フィルターアタッチメントFAの厚さが大きくなりすぎてしまい、全体の大型化を招く。なお、本発明の効果を十分に発揮するには条件式(6)の下限を15.0とすることが望ましい。さらには、上述のようにフィルターアタッチメントFAは全体で負の屈折力を有することが好ましいので、2つの光学部材のうち凸レンズである光学部材は他方の光学部材に比べてアッベ数を小さくすることが好ましい。
【0039】
実際に回折光学面を創製するには、レンズの表面にフレネルゾーンプレートのように、光軸に対して回転対称な格子構造を作ることが製造上容易であるため好ましい。この際、通常の非球面レンズを製造するのと同じく、精研削でも、ガラスモールド、プラスチックモールドでも可能である。格子を単層構造とした単層型回折光学素子でも十分に倍率色収差の補正効果が得られるが、さらには、格子表面に薄い樹脂層を充填して覆うことにより、複数の格子構造を形成した複層型の回折光学面を構成してもよい。このように複数の格子構造を重ねることにより、回折効率の波長特性や画角特性を向上させることができるので好都合である。後述する第1実施例では回折光学面Gfを複層型の格子構造で構成した場合を示し、第2実施例では単層型の格子構造で構成した場合を示している。
【0040】
また、フィルターアタッチメントFAが、ガラスやプラスチックで形成されている場合には、その像側の面に直接格子構造を形成しても良い。先に述べたように精研削でも、ガラスモールド、プラスチックモールドでも可能である。そして、その表面に樹脂材料を重ねれば、容易に2層の格子構造を作ることができる(このような回折光学面を有する光学素子を「密着複層型回折光学素子」と呼ぶ)。このとき、フィルターアタッチメントFAの光学材料のアッベ数は60以上であることが好ましい。あるいは、2つの格子を光学特性の異なる樹脂材料などで別々に作り、エアギャップを挟んで近接させて2層の格子構造を取ることもできる(このような回折光学面を有する光学素子を「分離複層型回折光学素子」と呼ぶ)。なお、2層の格子構造を形成する光学材料のアッベ数は、回折効率を大きくするためには、高屈折率で低分散の材料と、低屈折率で高分散の材料を組み合わせて構成することが好ましく、そのアッベ数の差は15以上とすることが好ましい。
【0041】
【実施例】
以下、本発明に係るフィルターアタッチメントFA及びこのフィルターアタッチメントFAを有する撮像装置40の具体的な実施例について説明する。下に示す2つの実施例では、図2及び図6に示すように、光学窓WLとフィルターアタッチメントFA及び撮影レンズPLの合成光学系のみを図示しており、物体側から順に、光学窓WL、フィルターアタッチメントFA及び撮影レンズPLを配置して構成されている。
【0042】
各実施例において、回折光学面Gfの位相差は、通常の屈折率と後述する非球面式(7),(8)とを用いて行う超高屈折率法により計算した。超高屈折率法は、非球面形状を表す式と回折光学面の格子ピッチとの間の一定の等価関係を利用するものであり、本実施例において回折光学面は超高屈折率法のデータとして、すなわち、後述する非球面式(7),(8)及びその係数により示している。なお、本実施例では収差特性の算出対象としてd線、g線、C線及びF線を選んだ。本実施例において用いたd線、g線、C線及びF線の波長と各スペクトル線に対して設定した具体的な屈折率の値を下の表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
各実施例において非球面は、光軸に垂直な方向の高さ(入射高)をyとし、非球面の頂点における接平面から高さyにおける非球面上の位置までの光軸に沿った距離(非球面量又はサグ量)をS(y)とし、基準球面の曲率半径をrとし、近軸曲率半径をRとし、円錐係数をκとし、2次の非球面係数をC2、4次の非球面係数をC4、6次の非球面係数をC6、8次の非球面係数をC8、10次の非球面係数をC10としたとき、下の式(7),(8)で表されるものとした。
【0045】
【数6】
【0046】
なお、本実施例において用いた超高屈折率法については、前述の「『回折光学素子入門』応用物理学会日本光学会監修平成9年第1版発行」に詳しい。
【0047】
(第1実施例)
図2に、本発明の第1実施例に係る光学窓WL、フィルターアタッチメントFA及び撮影レンズPLからなる合成光学系のレンズ構成を示す。本第1実施例に用いた光学系における光学窓WLは、図2に示すように、平行平板ガラスからなるフィルターF1で構成されている。なお、光学窓WL(フィルターF1)は、後述するとおり、水のd線に対する屈折率との差が0.1以上である光学材料を用いている。
【0048】
また、フィルターアタッチメントFAは、像側に回折光学面Gfが形成されて物体側に平面を向けた回折光学素子L2Eで構成されている。ここで、回折光学素子L2Eは、物体側に位置し物体側に平面を向けた平凹レンズL2(負レンズ)である第1回折素子要素と、像側に位置する第2回折素子要素とを密接接合し、その接合面に回折光学面Gfが形成された密接複層型回折光学素子として構成されている。
【0049】
さらに、撮影レンズPLは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL3(負レンズ)、両凸レンズL4(正レンズ)、開口絞りP5、両凹レンズL6(負レンズ)と両凸レンズL7(正レンズ)との貼り合わせからなる接合負レンズ、両凸レンズL8(正レンズ)、及びそれぞれ平行平板ガラスからなる2枚のフィルターF8,F9を配置して構成されている。
【0050】
下の表2に、本第1実施例における各レンズの諸元を示す。表2における面番号1〜20は本発明の光学窓WL、フィルターアタッチメントFA及び撮影レンズPLに関するものであり、それぞれ図2における符号1〜20に対応する。また、表2におけるrはレンズ面の曲率半径(非球面の場合は基準球面の曲率半径)を、dはレンズ面の間隔を、n(d)はd線に対する屈折率を、n(g)はg線に対する屈折率ををそれぞれ示している。なお、表2において、非球面形状に形成されたレンズ面には、面番号の右側に*印を付している。また、非球面係数Cn(n=2,4,6,8,10)において「E−09」等は「×10−09」等を示す。以上の表2の記号の説明は、以降の実施例においても同様である。また、以下の全ての諸元値において掲載されている曲率半径r、面間隔dその他の長さの単位は、特記の無い場合一般に「mm」が使われるが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、単位は「mm」に限定されることなく、他の適当な単位を用いることもできる。
【0051】
本実施例では、フィルターアタッチメントFAにおける面番号4及び5に相当する面が回折光学面Gfに相当している。
【0052】
【表2】
【0053】
このように本第1実施例では、上記条件式(1)〜(5)は全て満たされていることが分かる。
【0054】
また、図3は第1実施例における光学系の諸収差図である。各収差図においてFNOはFナンバーを、Yは像高を、dはd線を、gはg線をそれぞれ示している。また、球面収差図では最大口径に対応するFナンバー値を、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図では像高の最大値をそれぞれ示し、コマ収差図では各像高の値を示す。さらに、非点収差図において、実線はサジタル像面を示し、破線はメリディオナル像面を示している。以上の収差図の説明は、以降の他の収差図についても同様である。各収差図から明らかなように、本第1実施例では諸収差が良好に補正されており、合成光学系(光学窓WL+フィルターアタッチメントFA+撮影レンズPL)全体において、優れた結像性能が確保されていることが分かる。なお、図4及び図5は上述の通り、回折光学面Gfを取り除いた場合の諸収差図を示している。したがって、図3〜図5より明らかなとおり、フィルターアタッチメントFAを取り外して(回折光学面Gfがない)水中に入れたときの収差図(図4)に対して、空気中(この場合は、収差補正のための回折光学素子を必要としない)の諸収差図(図5)と同様に、フィルターアタッチメントFAにより、水中における諸収差(図3)が良好に補正されていることが分かる。
【0055】
(第2実施例)
図6に、本発明の第2実施例に係る光学窓WL、フィルターアタッチメントFA及び撮影レンズPLからなる合成光学系のレンズ構成を示す。本第2実施例に用いた光学系における光学窓WLは、図6に示すように、平行平板ガラスから成るフィルターF11で構成されている。なお、光学窓WL(フィルターF11)は、後述するとおり、水のd線に対する屈折率との差が0.1以上である光学材料を用いている。
【0056】
また、フィルターアタッチメントFAは、物体側から順に、物体に平面を向けた平凸レンズL12(正レンズ)と像側に回折光学面Gfが形成された回折光学素子L13Eとの貼り合わせからなる接合レンズで構成されている。ここで、回折光学素子L13Eは、両凹レンズL13(負レンズ)の像側の面に回折光学面Gfが形成された単層型回折光学素子として構成されている。なお、平凸レンズL12と両凹レンズL13(回折光学素子L13E)には、それぞれアッベ数が40.76と61.09の光学材料を用いている。
【0057】
さらに、撮影レンズPLは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL14(負レンズ)、両凹レンズL15(負レンズ)、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL16(正レンズ)、開口絞りP17、両凸レンズL18(正レンズ)と物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL19(負レンズ)との貼り合わせからなる接合正レンズ、両凸レンズL20(正レンズ)と両凹レンズL21(負レンズ)との貼り合わせからなる接合負レンズ、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL22(負レンズ)、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL23(正レンズ)、両凸レンズL24(正レンズ)、及びそれぞれ平行平板ガラスからなる3枚のフィルターF25,F26,F27を配置して構成されている。なお、フィルターF25,F26は貼り合わされている。
【0058】
下の表3に、本第2実施例における各レンズの諸元を示す。表3における面番号1〜30は本発明の光学窓WL、フィルターアタッチメントFA及び撮影レンズPLに関するものであり、それぞれ図6における符号1〜30に対応する。
【0059】
本実施例では、フィルターアタッチメントFAにおける面番号5及び6に相当する面が回折光学面Gfに相当している。
【0060】
【表3】
【0061】
このように本第2実施例では、上記条件式(1)〜(4)及び(6)を全て満たしていることが分かる。また、図7は第2実施例における光学系の諸収差図である。各収差図から明らかなように、本第2実施例では諸収差が良好に補正されており、合成光学系(光学窓WL+フィルターアタッチメントFA+撮影レンズPL)全体において優れた結像性能が確保されており、さらに、フィルターアタッチメントFAにより、水中における諸収差が良好に補正されていることが分かる。
【0062】
以上の実施例からも分かるように、本発明に係るフィルターアタッチメントFAは、倍率色収差による色ズレを補正するように、回折光学面Gfを有する回折光学素子を用いて色収差の補正を行うものであり、大幅な画質の向上が可能となった。また、回折光学面Gfは光学部材の光学面に形成される一種の回折格子であるため、フィルターアタッチメントFAを薄くできるのでスペースの増大を招くこともない。さらには、近年の金型技術とプラスチック成型技術及びガラス成型技術の進歩により高精度の格子構造を安価にかつ大量に生産できるようになっているため、コストの増加もほとんど無く好都合である。
【0063】
なお、カメラハウジング50に、上述の撮影レンズPLを有するカメラ60に加えて、測光光学系やストロボ光学系を一体に配設することにより、撮影者がより多くの条件で撮影することが可能になる。また、撮影レンズPLのブレ情報を、例えば適当に配置された複数の加速度センサーによって検出し、加速度センサーで検出された加速度等の信号に基づいてブレ量を演算し、撮影レンズ中の所定のレンズ成分を所要量だけ偏心させることにより、防振を行うように構成することもできる。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るフィルターアタッチメントによれば、像側の面に回折光学面を有するように構成することにより、水中等の空気より屈折率の大きい媒質内において、カメラ全体の大型化及び大幅なコストアップを招くことなく、色収差を良好に補正し良好な画質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るフィルターアタッチメントを用いた場合の撮影装置の構成を示す図である。
【図2】第1実施例に係る合成光学系のレンズ構成を示す図である。
【図3】第1実施例における合成光学系の水中での諸収差図である。
【図4】第1実施例において回折光学面を取り除いた場合の水中における合成光学系の諸収差図である。
【図5】第1実施例において回折光学面を取り除いた場合の空気中における合成光学系の諸収差図である。
【図6】第2実施例に係る合成光学系のレンズ構成を示す図である。
【図7】第2実施例における合成光学系の水中での諸収差図である。
【符号の説明】
40 撮影装置
50 カメラハウジング
51 ハウジング
60 カメラ
61 フィルム面(撮像面)
WL 光学窓
FA フィルターアタッチメント
PL 撮影レンズ
Gf 回折光学面
I 像面
【発明の属する技術分野】
本発明は、撮影レンズと組み合わせて収差特性を変化させるフィルターアタッチメントに関し、特に、空気より屈折率の大きい媒質内で用いるカメラハウジング内で撮影レンズと共に用いるフィルターアタッチメントに関する。さらに、カメラ、撮影装置などの水中用カメラハウジング内で用いるフィルターアタッチメントを有する撮影装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、水中において撮影を行う場合、撮影レンズを装着した一眼レフレックスカメラやデジタルスチルカメラを水中用ハウジング内に密閉・格納して水からカメラを保護している。ハウジングにはカメラが有する撮影レンズの光軸上に位置するように透明な光学窓が設けられており、この光学窓を通してハウジング内のカメラで水中内にある物体(被写体)を撮影する。
【0003】
しかし、水は屈折率と分散が空気と異なり、d線に対する屈折率が空気に比べて約4/3であり、分散はアッベ数で62となっている。このため、空気中で使用しているカメラ又は光学系をそのままハウジングに入れて、ガラスやプラスチックで形成された通常の透明な光学材料からなる光学窓を通して水中の物体を撮影すると、画角は約3/4倍になるにも拘わらず、諸収差が発生して画質の低下を招く。特に倍率色収差による色ズレが顕著であり、画質の劣化を招くことが従来より問題とされていた。最近では、デジタルスチルカメラ等の固体撮像素子を有するカメラが一般的となっているが、この諸収差の発生はその撮像素子の数画素分にも及ぶことが多く、解像度の低下のみならず、色調・色再現性までも影響が及ぶことがある。そのため、このような諸収差補正のために、水中撮影時には補助的な光学系を付加する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−159689号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、補助的な光学系を付加する場合、カメラ全体の大型化を招き好ましくなく、また、補助的な光学系による大幅なコストアップ等も課題となっている。
【0006】
本発明は、以上の課題に鑑みなされたものであり、水中等の空気より屈折率の大きい媒質内において、カメラ全体の大型化及び大幅なコストアップを招くことなく、色収差を良好に補正し良好な画質を得ることのできる、カメラハウジング内で用いるフィルターアタッチメントを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明に係るフィルターアタッチメントは、物体からの光線を撮像面上に結像する撮影レンズの物体側におけるこの撮影レンズの光軸上に配置され、短波長の倍率色収差を負側にシフトする機能を有する回折光学面が形成される。
【0008】
なお、本発明に係るフィルターアタッチメントは、光軸方向厚さをdとし、最も像側の面の曲率半径をR2としたとき、次式
0.0 ≦ d/R2 < 1.0
を満足することが好ましい。
【0009】
また、回折光学面の有効径をCとしたとき、次式
1.0 < C/d < 30.0
を満足することが好ましい。
【0010】
また、全体の焦点距離をfとしたとき、次式
−0.1 < 1/f (m−1) < 0.0
を満足することが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係るフィルターアタッチメントに形成された回折光学面は、屈折率の異なる複数の光学材料からなる複層の格子構造により構成されることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るフィルターアタッチメントを有する撮影装置は、ハウジングとこのハウジングに設けられた光学窓とを有するカメラハウジングの内部に、撮影レンズの光軸上に光学窓が位置するようにこの撮影レンズを有するカメラを密閉・格納し、空気より屈折率の大きい媒質内において、カメラにより物体を撮影するものであり、光学窓が、媒質のd線に対する屈折率との差が0.1以上である光学材料により形成され、撮影レンズの最も物体側の面と光学窓の最も像側の面との間における撮影レンズ及び光学窓の光軸上に上記に記載のフィルターアタッチメントを有して構成される。
【0013】
なお、本発明に係るフィルターアタッチメントを有する撮影装置は、光学窓の最も像側の面から回折光学面までの光軸上の距離をd1とし、撮影レンズの最も物体側の面から回折光学面までの光軸上の距離をd2としたとき、次式
0.2 < d1/d2 < 15.0
を満足することが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係るフィルターアタッチメントを水や液体などの媒質中で用いるカメラハウジング内に配設して撮影装置40を構成した場合を示している。カメラハウジング50は、内部に空間を有するハウジング51と、このハウジング51に配設された光学窓WLとから構成され、このハウジング51の内部空間にカメラ60を密閉・格納し、水中等の媒質内においてカメラ60で物体(被写体)を撮影するものである。カメラ60は、物体からの光線をフィルム面(撮像面)61に結像させる(像面Iを撮像面61に一致させる)撮影レンズPLを有しており、この撮影レンズPLの物体側の光軸上にフィルターアタッチメントFAが取付けられている。また、カメラハウジング50の光学窓WLは、内部に格納されたカメラ60の撮影レンズPL及びフィルターアタッチメントFAの光軸上に位置するように配設されている。この光学窓WLは、カメラハウジング50の外部にある物体からの光線を透過してカメラ60で撮影するために透明な光学材料で形成されており、光学窓WL、フィルターアタッチメントFA及び撮影レンズPLで合成光学系を構成している。また、光学窓WLは水等の媒質との屈折率の差が0.1以上の光学材料が用いられる。なお、以降の説明では、撮影装置40を水中内で使用する場合について説明する。
【0015】
本発明に係るフィルターアタッチメントFAには、回折光学面Gfが形成されており、この回折光学面Gfによって諸収差を補正し、特に倍率色収差の補正を効果的に行うように構成されている。図4は後述する第1実施例においてフィルターアタッチメントFAを取り外した(回折光学面Gfがない)場合に撮影装置40を水中に入れたときの収差図を示している。一方、図5は空気中での収差図を示しており、図4及び図5に示した諸収差図を比較すると、水中においては大きく収差が劣化しており、特に短波長の光線(g線)に対する倍率色収差が正側に大きく変位していることが分かる。そのため、フィルターアタッチメントFAを回折光学面Gfが形成された回折光学素子とすることにより、図3に示すように短波長の光線(g線)に対する倍率色収差を元の収差値近くまで補正している。
【0016】
このように、水中では短波長の光線(g線)に対する倍率色収差が正側に発生するため、その補正のために回折光学面Gfでは負側にシフトさせている(曲げている)。そのため、回折光学面Gfに正の屈折力を持たせて、倍率色収差を負側に曲げることができる。このため、回折光学面Gfは正の屈折力を有することが必要であり、このとき、近軸屈折力は0であっても構わない。より具体的には、凸面を1波長ごとに輪帯状に並べた格子面として回折光学面Gfを形成することで実現することができ、このような格子形状は製造上も作り易く、好都合である。
【0017】
フィルターアタッチメントFAは、通常、撮影レンズPLが配設されているケーシングに取付けられる。そのため、フィルターアタッチメントFAの物体側の面に回折光学面Gfが形成されていると、外部と接して回折光学面Gfの損傷や面品質の低下(細かな傷、表面の荒れ、格子の変形等)を起こしやすく、良好な画質を得られないため、回折光学面GfはフィルターアタッチメントFAの像側の面に形成されることが好ましい。なお、フィルターアタッチメントFAの像側の面は、撮影レンズPLのケーシング内に位置して密閉されているため、回折光学面Gfの損傷等は起こらない。
【0018】
また、フィルターアタッチメントFAの像側の面は、諸収差補正のために所定の曲率半径を有して形成されていることが好ましく、かつ、回折光学面Gfでのフレア発生を低減させるためには、像側に凹面となるように形成されていることが好まし。
【0019】
次に、回折光学面を有する回折光学素子(フィルターアタッチメントFA)について説明する。一般に、光線を曲げる方法は屈折と反射が知られているが、第3番目の方法として、回折が知られている。回折光学素子とは、光の回折現象を利用した光学素子であって、屈折や反射とは異なる振る舞いを示すことが知られている。この回折の性質として、負の分散値(アッベ数=−3.452)を有していて、色収差補正に極めて有効であることが知られている(ガラスのアッベ数は通常30〜70程度であるため、回折光学素子のアッベ数の大きさはその1/10倍以下である)。換言すると、回折光学素子においては長い波長の光ほど大きく曲がる。このため、通常のガラスでは達成し得ない良好な色収差補正が可能となることや、高価な特殊低分散ガラスでしか達成し得ない良好な色収差補正が可能であることが知られている。
【0020】
本発明においては、ガラスやプラスチック等で形成された光学部材の表面に回折格子やフレネルゾーンプレートのように回折現象を応用して光線を曲げる作用を有する面を形成して、その作用により良好な光学性能を得ようというものであり、このように回折現象を応用して光線を曲げる作用を有する面を回折光学面と呼ぶことにする。そして、このような面を有する光学素子を回折光学素子と一般に呼んでいる。なお、回折光学素子等については、「『回折光学素子入門』応用物理学会日本光学会監修平成9年第1版発行」に詳しい。
【0021】
さて、一般に、光学系の回折光学面を通過する光線の角度は、できるだけ小さい事が好ましい。これは回折光学面を通過する光線の角度が大きくなると回折光学面によるフレア(ブレーズした所定次数以外の光が有害光となって像面に達する現象)が発生し易くなり、画質を損ねてしまうからである。そのため、回折光学面で発生するフレアがあまり影響を及ぼさずに良好な画像を得るためには、本光学系の場合、回折光学面を通過する光線の角度を15度以下とすることが望ましく、本発明に係るフィルターアタッチメントFAをこのような条件を満たすように構成することが好ましい。上述のように、フィルターアタッチメントFAは、諸収差を補正するために、像側の面が凹面状に形成されているため、このような光線の角度に関する条件を満足することは容易である。
【0022】
なお、フレアを抑制する効果を十分に得るためには、回折光学面を通過する光線の角度を10度以下にすることが好ましい。ただし、水中においては水の濁りがあることや水中を光が通過する際に水に吸収されるため照度の低い物体(被写体)を撮影することが多いことなどから、回折光学面でフレアが発生してもあまり目立たない状況が多い。
【0023】
本発明に係るフィルターアタッチメントFA及びこのフィルターアタッチメントFAを有する撮影装置40を構成する条件について以下に説明する。本発明に係る撮影装置40は、光学窓WLの最も像側の面から回折光学面Gfまでの光軸上の距離をd1とし、撮影レンズPLの最も物体側の面から回折光学面Gfまでの光軸上の距離をd2としたとき、下の条件式(1)を満足するように構成されていることが好ましい。
【0024】
【数1】
0.2 < d1/d2 < 15.0 (1)
【0025】
条件式(1)は、フィルターアタッチメントFA、光学窓WL及び撮影レンズPLの適切な位置を規定している。ハウジング51内では、その容積に限界があるため、カメラ60(撮影レンズPL)やフィルターアタッチメントFAに許容されるスペースが限られている。このため、適正な配置を取ることは重要である。条件式(1)の上限を上回ると、d1が大きくなりすぎてしまい、結果、フィルターアタッチメントFAが撮影レンズPL側に接近しすぎるため、メカニカルな干渉という不都合が生じる。また、フィルターアタッチメントFAが撮影レンズPLの入射瞳に近づくため、倍率色収差の補正が難しくなる。このため、倍率色収差の補正のために回折光学面Gfを構成する回折格子のピッチが細くなり、製造しづらくなるとともに、この回折光学面Gfにおいて画角によるフレアが発生しやすくなる不都合が生じる。一方、条件式(1)の下限を下回ると、d2が大きくなりすぎてしまい、フィルターアタッチメントFAが撮影レンズPLから離れてしまうため、その径の増大を招き、大型化してしまう不都合が生じる。なお、本発明の効果を十分に発揮するには、条件式(1)の上限を10.0とし、下限を1.5とすることが望ましい。
【0026】
また、フィルターアタッチメントFAの光軸方向厚さをdとし、最も像側の曲率半径をR2としたとき、下の条件式(2)を満足するように構成されていることが好ましい。
【0027】
【数2】
0.0 ≦ d/R2 < 1.0 (2)
【0028】
条件式(2)は、回折光学面Gfを有する面の曲率半径の適切な範囲を規定する。条件式(2)の上限を上回ると、回折光学面の曲率半径が小さくなりすぎてしまい、回折光学素子の製造が困難となる不都合が生じるばかりか、コマ収差や像面歪曲収差の発生が甚大となってしまい、良好な画質が得られない。なお、回折光学面Gfが、平面上に形成されているときは、R2は無限大となるためd/R2=0となる。一方、条件式(2)の下限を下回ると、フィルターアタッチメントFAの像側の面が像側に凸面状となるため、回折光学面Gfに入射する光線の入射角度が大きくなりやすく、回折光学面Gfにおけるフレア発生が大きくなってしまい不都合である。なお、本発明の効果を十分に発揮するには、上限を0.7、下限を0.005とすることが望ましい。
【0029】
さらに良好な性能を得るためには、以下の条件式(3),(4)を満たすことが好ましい。ただし、条件式(3),(4)において、Cは回折光学面Gfの有効径(直径)であり、fはフィルターアタッチメントFA全体の焦点距離である。なお、回折光学面Gfが複層の格子構造により形成されている場合は、Cは空気との界面の径を指すものとする。また、条件式(4)において、焦点距離fの単位は「m」で表されているものとする。
【0030】
【数3】
1.0 < C/d < 30.0 (3)
−0.1 < 1/f (m−1) < 0.0 (4)
【0031】
条件式(3)は、回折光学面Gfの有効径(直径)の適切な範囲を規定している。条件式(3)の上限を上回ると、径が大きくなりすぎ、回折光学面Gfの製造が困難となりコストアップにつながる。また、回折光学面Gfに外部からの有害光が入りやすくなり、フレア等による画質の低下を招きやすくなる。反対に、条件式(3)の下限を下回ると、径が小さくなりすぎ、回折光学面Gfの格子ピッチが小さくなる傾向が強まり、回折光学面Gfの製造が困難となりコストアップにつながるばかりか、回折光学面Gfの格子によるフレア発生が大きくなり画質低下を招きやすい。なお、本発明の効果を十分に発揮するには、上限を15.0、下限を3.0とすることが望ましい。
【0032】
条件式(4)は、フィルターアタッチメントFA全体の焦点距離を規定する。条件式(4)の上限を越えると、すなわち、フィルターアタッチメントFAが正の屈折力を有していると、撮影レンズPLと組み合わせた状態での焦点位置が、カメラ60側のピント位置で無限遠を越えてしまい合焦できなくなる。そのため、フィルターアタッチメントFAは、やや弱い負の屈折力を有することが好ましい。ただし、条件式(4)の下限を越えて、負の屈折力が大きくなりすぎると、収差バランスを崩していまうので好ましくない。
【0033】
なお、さらに良好な性能を得るためには、回折光学面Gfを屈折率の異なる2層の光学材料からなる複層の格子構造を有するように形成した場合、その回折光学面Gfを形成する2層の光学材料の屈折率の差をΔnとして、下に示す条件式(5)を満たすことが好ましい。
【0034】
【数4】
Δn > 0.01 (5)
【0035】
条件式(5)は、回折光学面Gfを屈折率の異なる2層の光学材料からなる複層の格子構造を有するように形成した場合の、2層の光学材料の屈折率の差を規定する。2層からなる格子構造の格子高さhは、ブレーズ波長をλとすると、h=λ/Δnで定まるため、格子高さを低くするとともに画角に対するフレアが発生しにくくするためには、Δnはある程度大きいことが望ましい。また、製造上も格子高さが低い方が製造し易くなり、製造時の加工精度確保も容易になるために望ましい。条件式(5)の下限を越えると、画角特性が悪化し、製造時の難易度が上がってしまうため好ましくない。この格子高さは25μmより小さくすることが好ましい。なお、本発明の効果を十分に発揮するには条件式(5)の下限を0.03とすることが望ましい。
【0036】
また、フィルターアタッチメントFAを、アッベ数の異なる2つの光学部材を接合させて構成した場合、それらの光学部材のアッベ数の差をΔνdとして、下に示す条件式(6)を満たすことが好ましい。
【0037】
【数5】
Δνd > 10.0 (6)
【0038】
条件式(6)は、アッベ数の異なる2つの光学部材を接合させてフィルターアタッチメントFAを構成する場合の、アッベ数の差について規定している。条件式(6)の下限を越えると、色消しが不十分となるばかりか、このフィルターアタッチメントFAを構成する2つの光学部材の接合面の曲率半径が小さくなりすぎてしまい、製造が困難となる。この結果、フィルターアタッチメントFAの厚さが大きくなりすぎてしまい、全体の大型化を招く。なお、本発明の効果を十分に発揮するには条件式(6)の下限を15.0とすることが望ましい。さらには、上述のようにフィルターアタッチメントFAは全体で負の屈折力を有することが好ましいので、2つの光学部材のうち凸レンズである光学部材は他方の光学部材に比べてアッベ数を小さくすることが好ましい。
【0039】
実際に回折光学面を創製するには、レンズの表面にフレネルゾーンプレートのように、光軸に対して回転対称な格子構造を作ることが製造上容易であるため好ましい。この際、通常の非球面レンズを製造するのと同じく、精研削でも、ガラスモールド、プラスチックモールドでも可能である。格子を単層構造とした単層型回折光学素子でも十分に倍率色収差の補正効果が得られるが、さらには、格子表面に薄い樹脂層を充填して覆うことにより、複数の格子構造を形成した複層型の回折光学面を構成してもよい。このように複数の格子構造を重ねることにより、回折効率の波長特性や画角特性を向上させることができるので好都合である。後述する第1実施例では回折光学面Gfを複層型の格子構造で構成した場合を示し、第2実施例では単層型の格子構造で構成した場合を示している。
【0040】
また、フィルターアタッチメントFAが、ガラスやプラスチックで形成されている場合には、その像側の面に直接格子構造を形成しても良い。先に述べたように精研削でも、ガラスモールド、プラスチックモールドでも可能である。そして、その表面に樹脂材料を重ねれば、容易に2層の格子構造を作ることができる(このような回折光学面を有する光学素子を「密着複層型回折光学素子」と呼ぶ)。このとき、フィルターアタッチメントFAの光学材料のアッベ数は60以上であることが好ましい。あるいは、2つの格子を光学特性の異なる樹脂材料などで別々に作り、エアギャップを挟んで近接させて2層の格子構造を取ることもできる(このような回折光学面を有する光学素子を「分離複層型回折光学素子」と呼ぶ)。なお、2層の格子構造を形成する光学材料のアッベ数は、回折効率を大きくするためには、高屈折率で低分散の材料と、低屈折率で高分散の材料を組み合わせて構成することが好ましく、そのアッベ数の差は15以上とすることが好ましい。
【0041】
【実施例】
以下、本発明に係るフィルターアタッチメントFA及びこのフィルターアタッチメントFAを有する撮像装置40の具体的な実施例について説明する。下に示す2つの実施例では、図2及び図6に示すように、光学窓WLとフィルターアタッチメントFA及び撮影レンズPLの合成光学系のみを図示しており、物体側から順に、光学窓WL、フィルターアタッチメントFA及び撮影レンズPLを配置して構成されている。
【0042】
各実施例において、回折光学面Gfの位相差は、通常の屈折率と後述する非球面式(7),(8)とを用いて行う超高屈折率法により計算した。超高屈折率法は、非球面形状を表す式と回折光学面の格子ピッチとの間の一定の等価関係を利用するものであり、本実施例において回折光学面は超高屈折率法のデータとして、すなわち、後述する非球面式(7),(8)及びその係数により示している。なお、本実施例では収差特性の算出対象としてd線、g線、C線及びF線を選んだ。本実施例において用いたd線、g線、C線及びF線の波長と各スペクトル線に対して設定した具体的な屈折率の値を下の表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
各実施例において非球面は、光軸に垂直な方向の高さ(入射高)をyとし、非球面の頂点における接平面から高さyにおける非球面上の位置までの光軸に沿った距離(非球面量又はサグ量)をS(y)とし、基準球面の曲率半径をrとし、近軸曲率半径をRとし、円錐係数をκとし、2次の非球面係数をC2、4次の非球面係数をC4、6次の非球面係数をC6、8次の非球面係数をC8、10次の非球面係数をC10としたとき、下の式(7),(8)で表されるものとした。
【0045】
【数6】
【0046】
なお、本実施例において用いた超高屈折率法については、前述の「『回折光学素子入門』応用物理学会日本光学会監修平成9年第1版発行」に詳しい。
【0047】
(第1実施例)
図2に、本発明の第1実施例に係る光学窓WL、フィルターアタッチメントFA及び撮影レンズPLからなる合成光学系のレンズ構成を示す。本第1実施例に用いた光学系における光学窓WLは、図2に示すように、平行平板ガラスからなるフィルターF1で構成されている。なお、光学窓WL(フィルターF1)は、後述するとおり、水のd線に対する屈折率との差が0.1以上である光学材料を用いている。
【0048】
また、フィルターアタッチメントFAは、像側に回折光学面Gfが形成されて物体側に平面を向けた回折光学素子L2Eで構成されている。ここで、回折光学素子L2Eは、物体側に位置し物体側に平面を向けた平凹レンズL2(負レンズ)である第1回折素子要素と、像側に位置する第2回折素子要素とを密接接合し、その接合面に回折光学面Gfが形成された密接複層型回折光学素子として構成されている。
【0049】
さらに、撮影レンズPLは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL3(負レンズ)、両凸レンズL4(正レンズ)、開口絞りP5、両凹レンズL6(負レンズ)と両凸レンズL7(正レンズ)との貼り合わせからなる接合負レンズ、両凸レンズL8(正レンズ)、及びそれぞれ平行平板ガラスからなる2枚のフィルターF8,F9を配置して構成されている。
【0050】
下の表2に、本第1実施例における各レンズの諸元を示す。表2における面番号1〜20は本発明の光学窓WL、フィルターアタッチメントFA及び撮影レンズPLに関するものであり、それぞれ図2における符号1〜20に対応する。また、表2におけるrはレンズ面の曲率半径(非球面の場合は基準球面の曲率半径)を、dはレンズ面の間隔を、n(d)はd線に対する屈折率を、n(g)はg線に対する屈折率ををそれぞれ示している。なお、表2において、非球面形状に形成されたレンズ面には、面番号の右側に*印を付している。また、非球面係数Cn(n=2,4,6,8,10)において「E−09」等は「×10−09」等を示す。以上の表2の記号の説明は、以降の実施例においても同様である。また、以下の全ての諸元値において掲載されている曲率半径r、面間隔dその他の長さの単位は、特記の無い場合一般に「mm」が使われるが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、単位は「mm」に限定されることなく、他の適当な単位を用いることもできる。
【0051】
本実施例では、フィルターアタッチメントFAにおける面番号4及び5に相当する面が回折光学面Gfに相当している。
【0052】
【表2】
【0053】
このように本第1実施例では、上記条件式(1)〜(5)は全て満たされていることが分かる。
【0054】
また、図3は第1実施例における光学系の諸収差図である。各収差図においてFNOはFナンバーを、Yは像高を、dはd線を、gはg線をそれぞれ示している。また、球面収差図では最大口径に対応するFナンバー値を、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図では像高の最大値をそれぞれ示し、コマ収差図では各像高の値を示す。さらに、非点収差図において、実線はサジタル像面を示し、破線はメリディオナル像面を示している。以上の収差図の説明は、以降の他の収差図についても同様である。各収差図から明らかなように、本第1実施例では諸収差が良好に補正されており、合成光学系(光学窓WL+フィルターアタッチメントFA+撮影レンズPL)全体において、優れた結像性能が確保されていることが分かる。なお、図4及び図5は上述の通り、回折光学面Gfを取り除いた場合の諸収差図を示している。したがって、図3〜図5より明らかなとおり、フィルターアタッチメントFAを取り外して(回折光学面Gfがない)水中に入れたときの収差図(図4)に対して、空気中(この場合は、収差補正のための回折光学素子を必要としない)の諸収差図(図5)と同様に、フィルターアタッチメントFAにより、水中における諸収差(図3)が良好に補正されていることが分かる。
【0055】
(第2実施例)
図6に、本発明の第2実施例に係る光学窓WL、フィルターアタッチメントFA及び撮影レンズPLからなる合成光学系のレンズ構成を示す。本第2実施例に用いた光学系における光学窓WLは、図6に示すように、平行平板ガラスから成るフィルターF11で構成されている。なお、光学窓WL(フィルターF11)は、後述するとおり、水のd線に対する屈折率との差が0.1以上である光学材料を用いている。
【0056】
また、フィルターアタッチメントFAは、物体側から順に、物体に平面を向けた平凸レンズL12(正レンズ)と像側に回折光学面Gfが形成された回折光学素子L13Eとの貼り合わせからなる接合レンズで構成されている。ここで、回折光学素子L13Eは、両凹レンズL13(負レンズ)の像側の面に回折光学面Gfが形成された単層型回折光学素子として構成されている。なお、平凸レンズL12と両凹レンズL13(回折光学素子L13E)には、それぞれアッベ数が40.76と61.09の光学材料を用いている。
【0057】
さらに、撮影レンズPLは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL14(負レンズ)、両凹レンズL15(負レンズ)、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL16(正レンズ)、開口絞りP17、両凸レンズL18(正レンズ)と物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL19(負レンズ)との貼り合わせからなる接合正レンズ、両凸レンズL20(正レンズ)と両凹レンズL21(負レンズ)との貼り合わせからなる接合負レンズ、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL22(負レンズ)、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL23(正レンズ)、両凸レンズL24(正レンズ)、及びそれぞれ平行平板ガラスからなる3枚のフィルターF25,F26,F27を配置して構成されている。なお、フィルターF25,F26は貼り合わされている。
【0058】
下の表3に、本第2実施例における各レンズの諸元を示す。表3における面番号1〜30は本発明の光学窓WL、フィルターアタッチメントFA及び撮影レンズPLに関するものであり、それぞれ図6における符号1〜30に対応する。
【0059】
本実施例では、フィルターアタッチメントFAにおける面番号5及び6に相当する面が回折光学面Gfに相当している。
【0060】
【表3】
【0061】
このように本第2実施例では、上記条件式(1)〜(4)及び(6)を全て満たしていることが分かる。また、図7は第2実施例における光学系の諸収差図である。各収差図から明らかなように、本第2実施例では諸収差が良好に補正されており、合成光学系(光学窓WL+フィルターアタッチメントFA+撮影レンズPL)全体において優れた結像性能が確保されており、さらに、フィルターアタッチメントFAにより、水中における諸収差が良好に補正されていることが分かる。
【0062】
以上の実施例からも分かるように、本発明に係るフィルターアタッチメントFAは、倍率色収差による色ズレを補正するように、回折光学面Gfを有する回折光学素子を用いて色収差の補正を行うものであり、大幅な画質の向上が可能となった。また、回折光学面Gfは光学部材の光学面に形成される一種の回折格子であるため、フィルターアタッチメントFAを薄くできるのでスペースの増大を招くこともない。さらには、近年の金型技術とプラスチック成型技術及びガラス成型技術の進歩により高精度の格子構造を安価にかつ大量に生産できるようになっているため、コストの増加もほとんど無く好都合である。
【0063】
なお、カメラハウジング50に、上述の撮影レンズPLを有するカメラ60に加えて、測光光学系やストロボ光学系を一体に配設することにより、撮影者がより多くの条件で撮影することが可能になる。また、撮影レンズPLのブレ情報を、例えば適当に配置された複数の加速度センサーによって検出し、加速度センサーで検出された加速度等の信号に基づいてブレ量を演算し、撮影レンズ中の所定のレンズ成分を所要量だけ偏心させることにより、防振を行うように構成することもできる。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るフィルターアタッチメントによれば、像側の面に回折光学面を有するように構成することにより、水中等の空気より屈折率の大きい媒質内において、カメラ全体の大型化及び大幅なコストアップを招くことなく、色収差を良好に補正し良好な画質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るフィルターアタッチメントを用いた場合の撮影装置の構成を示す図である。
【図2】第1実施例に係る合成光学系のレンズ構成を示す図である。
【図3】第1実施例における合成光学系の水中での諸収差図である。
【図4】第1実施例において回折光学面を取り除いた場合の水中における合成光学系の諸収差図である。
【図5】第1実施例において回折光学面を取り除いた場合の空気中における合成光学系の諸収差図である。
【図6】第2実施例に係る合成光学系のレンズ構成を示す図である。
【図7】第2実施例における合成光学系の水中での諸収差図である。
【符号の説明】
40 撮影装置
50 カメラハウジング
51 ハウジング
60 カメラ
61 フィルム面(撮像面)
WL 光学窓
FA フィルターアタッチメント
PL 撮影レンズ
Gf 回折光学面
I 像面
Claims (7)
- 物体からの光線を撮像面上に結像する撮影レンズの物体側における前記撮影レンズの光軸上に配置されるフィルターアタッチメントであって、
短波長の倍率色収差を負側にシフトする機能を有する回折光学面が形成されていることを特徴とするフィルターアタッチメント。 - 光軸方向厚さをdとし、最も像側の面の曲率半径をR2としたとき、次式
0.0 ≦ d/R2 < 1.0
を満足することを特徴とする請求項1に記載のフィルターアタッチメント。 - 光軸方向厚さをdとし、前記回折光学面の有効径をCとしたとき、次式
1.0 < C/d < 30.0
を満足することを特徴とする請求項1または2に記載のフィルターアタッチメント。 - 全体の焦点距離をfとしたとき、次式
−0.1 < 1/f (m−1) < 0.0
を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のフィルターアタッチメント。 - 前記回折光学面は、屈折率の異なる複数の光学材料からなる複層の格子構造により構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のフィルターアタッチメント。
- ハウジングと前記ハウジングに設けられた光学窓とを有するカメラハウジングの内部に、撮影レンズの光軸上に前記光学窓が位置するように前記撮影レンズを有するカメラを密閉・格納し、空気より屈折率の大きい媒質内において、前記カメラにより物体を撮影する撮影装置であって、
前記光学窓が、前記媒質のd線に対する屈折率との差が0.1以上である光学材料により形成され、
前記撮影レンズの最も物体側の面と前記光学窓の最も像側の面との間における前記撮影レンズ及び前記光学窓の光軸上に請求項1から6のいずれかに記載のフィルターアタッチメントを有することを特徴とする撮影装置。 - 前記光学窓の最も像側の面から前記回折光学面までの光軸上の距離をd1とし、前記撮影レンズの最も物体側の面から前記回折光学面までの光軸上の距離をd2としたとき、次式
0.2 < d1/d2 < 15.0
を満足することを特徴とする請求項6に記載の撮影装置。
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JP2003043265A JP2004252219A (ja) | 2003-02-20 | 2003-02-20 | フィルターアタッチメント及びこのフィルターアタッチメントを有する撮影装置 |
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-
2003
- 2003-02-20 JP JP2003043265A patent/JP2004252219A/ja active Pending
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