JP2004251978A - 無端ベルト及びその製造方法並びにそれからなる中間転写体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(イ)ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層1と、(ロ)該基体層1の表面にポリアミド酸から形成された配向されたポリイミド樹脂で構成される表面層2と、を有する無端ベルト3とする。前記無端ベルト3は、(a)ポリイミド系樹脂で構成される円筒膜の外表面をラビングして、ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層1を形成する工程、(b)ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層1の表面にポリアミド酸ワニスを塗布してポリアミド酸塗布膜を形成する工程、及び、(c)ポリアミド酸塗布膜を加熱硬化させて配向されたポリイミド樹脂で構成される表面層2を形成する工程、を順次経ることによって製造される。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面層の反射光沢度を向上させた無端ベルト及びその製造方法並びにそれからなる中間転写体に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機、プリンタ等の画像形成装置による画像形成の分野において、感光体上に各色のトナー画像を形成し、続いて、中間転写体である無端ベルト上に順次多重転写して、無端ベルト上に多色画像を形成した後、この多色画像を転写材に静電的に一括して再転写することにより、画像ずれのない多色画像を形成することは、斯界で知られている。
【0003】
このような無端ベルト上に多色画像を形成するために、その基体層上に高電気抵抗の表面層を設けることは、高画質化するための有効な手段となっている。また、単層の基体でもかなり良好な画像が得られるようになっているが、単層の基体では、▲1▼表面と裏面との表面電気抵抗値を違ったものにすることは困難であること、▲2▼表面の電気抵抗値が低すぎると転写チリという異常画像が発生すること、及び、▲3▼裏面の電気抵抗値が高すぎると電荷注入が不充分となって異常放電によるムラが発生すること、といった問題があり、このような問題を回避しようとすると、電気的な特性値の許容範囲は非常に狭いものとなるので、製造が困難となる。また、中間転写体である無端ベルトの表面に付着したトナーのクリーニングをし易くするには、その表面層が離型性を有することも必要である。
【0004】
高画質を得るためには、画像濃度を正しく検知し、検知した情報をフィードバックしてトナーの供給量を調整する必要があるが、その検知方法としては、トナーの乗っている状態と乗っていない状態での感光体や中間転写体からの反射光を検知する方法が採用されている。
【0005】
中間転写体を構成する無端ベルトには、伸び縮みしないような機械強度の強い材料を用いるが、転写時のニップ幅を確保するためには、無端ベルトに弾性層を設ける例が多い。しかし、このような弾性層を設けない場合もある。弾性層が設けられた場合でも、また、設けられない場合でも、トナーのクリーニング性は必要であるので、一般的には、無端ベルトの表面に離型性を有する表面層が設けられる。
【0006】
中間転写体として使用される無端ベルトは、画像パターンを忠実に再現するために伸縮性が少ない材質を用いなければならない。また、難燃性、強度、及び、電気安定性が要求され、それらを満たす基材としてポリイミド樹脂等の耐熱性樹脂が用いられている(特許文献1を参照。)。これらのポリイミド樹脂等の耐熱性樹脂は、平滑な膜を形成すると、それ自体は、反射光沢度が100以上のかなりの光沢性が得られるが、中間転写体として離型性を持たせるために、この膜を基体とし、そして、その上に表面層を形成すると、その表面層は、膜厚が薄いために配向秩序性がなくなる。それ故、このように形成された表面層では、光吸収や乱反射が起こり、反射光沢度が低下する。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−235765号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような基体の表面に離型性を有する表面層が設けられた無端ベルトにおいては、その基体層の表面の光沢度が高くても、基体層の表面で反射した反射光が表面層で乱反射されたり吸収されたりするので、表面層の反射光沢度が低下し、そのために、表面層からの反射光の検出感度が低下するという問題があった。
【0009】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。
即ち、本発明は、難燃性、電気安定性及び強度において優れていると共に、表面層からの反射光の検出感度を向上させた無端ベルト及びその製造方法並びにそれよりなる中間転写体を低コストで提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、(イ)ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層と、(ロ)該基体層の表面にポリアミド酸から形成された配向されたポリイミド樹脂で構成される表面層と、を有することを特徴とする無端ベルトである。
【0011】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、(イ)ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層と、(ロ)該基体層の表面にフッ素化ポリアミド酸から形成された配向された部分的フッ素化ポリイミド樹脂で構成される表面層と、を有することを特徴とする無端ベルトである。
【0012】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記基体層の表面が、無端ベルトの周方向にラビングされていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記基体層の表面が、無端ベルトの軸方向にラビングされていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に記載された発明は、請求項1〜4のいずれかに記載された発明において、前記無端ベルトのJIS Z 8741(入射角60度)による反射光沢度が、100%以上であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6に記載された発明は、(a)ポリイミド系樹脂で構成される円筒膜の外表面をラビングして、ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層を形成する工程、
(b)ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層の表面にポリアミド酸ワニスを塗布してポリアミド酸塗布膜を形成する工程、及び、
(c)ポリアミド酸塗布膜を加熱硬化させて配向されたポリイミド樹脂で構成される表面層を形成する工程、
を順次経て無端ベルトを製造することを特徴とする無端ベルトの製造方法である。
【0016】
請求項7に記載された発明は、(a)ポリイミド系樹脂で構成される円筒膜の外表面をラビングして、ラビングされた表面を有するポリイミド樹脂で構成される基体層を形成する工程、
(b)ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層の表面にフッ素化ポリアミド酸ワニスを塗布してフッ素化ポリアミド酸塗布膜を形成する工程、及び、
(c)フッ素化ポリアミド酸塗布膜を加熱硬化させて配向されたフッ素化ポリイミド樹脂で構成される表面層を形成する工程、
を順次経て無端ベルトを製造することを特徴とする無端ベルトの製造方法である。
【0017】
請求項8に記載された発明は、請求項6又は7に記載された発明において、前記基体層の表面を無端ベルトの周方向にラビングしたことを特徴とするものである。
【0018】
請求項9に記載された発明は、請求項6又は7に記載された発明において、前記基体層の表面を無端ベルトの軸方向にラビングしたことを特徴とするものである。
【0019】
請求項10に記載された発明は、請求項1〜5のいずれかに記載された積層無端ベルトからなることを特徴とする中間転写ベルトである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施の形態を示す無端ベルトであって、(a)は、その縦断面図であり、(b)は、横断面図である。図2は、無端ベルトの表面をラビングローラで周方向にラビングすることを示す説明図である。図3は、無端ベルトの表面をリング状に成形したラビング布で軸方向にラビングすることを示す説明図である。
【0021】
図1に示すように、本発明の無端ベルトは、(イ)ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層1と、(ロ)該基体層1の表面にポリアミド酸から形成された配向されたポリイミド樹脂で構成される表面層2と、を有している。
【0022】
従来より、ポリイミド樹脂等の樹脂膜の表面をラビングすると、その表面に微小のラダー構造が形成されることは、液晶表示装置の分野において知られていることである。本発明者らは、かかるラッピングされて微小のラダー構造が形成されたポリイミド樹脂で構成される基体層1の表面にポリアミド酸ワニスを塗布したところ、塗布された積層膜を構成するポリアミド酸分子が一定の方向性をもつように形成され、この状態で積層塗膜を乾燥硬化すると、積層塗膜を構成するポリイミド樹脂が配向して高度の反射光沢度をもつ表面層2が形成できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0023】
本発明は、このように、(イ)ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層1と、(ロ)該基体層1の表面にポリアミド酸から形成された配向されたポリイミド樹脂で構成される表面層2と、を有するものであるので、難燃性、電気安定性及び強度において優れていると共に、表面層2からの反射光の検出感度を向上させた無端ベルトを低コストで提供することができる。
【0024】
また、本発明は、(イ)ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層1と、(ロ)該基体層の表面にフッ素化ポリアミド酸から形成された配向された部分的フッ素化ポリイミド樹脂で構成される表面層2と、を有するものであってもよい。
【0025】
本発明は、このように、(イ)ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層1と、(ロ)該基体層1の表面にフッ素化ポリアミド酸から形成された配向された部分的フッ素化ポリイミド樹脂で構成される表面層2と、を有するものであるので、難燃性、電気安定性及び強度において優れていると共に、表面層からの反射光の検出感度を向上させた無端ベルトを低コストで提供することができ、しかも、表面層2が部分的フッ素化ポリイミド樹脂で構成されているので、表面層2の離型性がいっそう向上したものとなる。
【0026】
本発明においては、基体層1の表面は、無端ベルトの周方向にラビングされているか、又は、無端ベルトの軸方向にラビングされている。
このように、基体層1の表面が、無端ベルトの周方向にラビングされているか、又は、無端ベルトの軸方向にラビングされていると、無端ベルトの周方向、又は、軸方向にの反射光沢度を向上させることができる。
【0027】
また、画像形成装置の中間転写体に使用されるベルトでは、検知器にPセンサーやCCDのような一般的な検知器を用いるので、液晶表示装置のようにブレティルト角や偏光を気にする必要がなく、ラビングの方向性は光強度を検出する際の同軸度を取り易い軸方向での反射強度が強ければよい。
【0028】
本発明においては、前記無端ベルトのJIS Z 8741(入射角60度)による反射光沢度は、好ましくは、100%以上である。このように、前記無端ベルトのJIS Z 8741(入射角60度)による反射光沢度が100%以上であると、付着したトナーの乱反射に対してコントラストが取り易く、しかも、センサーの検知能力が向上する。
【0029】
本発明の無端ベルト3は、
(a)ポリイミド系樹脂で構成される円筒膜の外表面をラビングして、ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層1を形成する工程、
(b)ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層1の表面にポリアミド酸ワニスを塗布してポリアミド酸塗布膜を形成する工程、及び、
(c)ポリアミド酸塗布膜を加熱硬化させて配向されたポリイミド樹脂で構成される表面層2を形成する工程、
を順次経ることによって製造される。
【0030】
本発明によれば、無端ベルト3が前記(a)〜(c)の工程を順次経て製造されるので、前記(a)工程において、ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層1が形成され、前記(b)工程において、前記基体層1の表面にポリアミド酸塗布膜が形成され、そして、前記(c)工程において、配向されたポリイミド樹脂で構成される表面層2が形成され、それらのために、高度の反射光沢度をもつ表面層2が形成され、よって、難燃性、電気安定性及び強度において優れていると共に、表面層2からの反射光の検出感度を向上させた無端ベルト3を低コストで提供することができる。
【0031】
また、本発明の無端ベルト3は、
(a)ポリイミド系樹脂で構成される円筒膜の外表面をラビングして、ラビングされた表面を有するポリイミド樹脂で構成される基体層1を形成する工程、
(b)ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層1の表面にフッ素化ポリアミド酸ワニスを塗布してフッ素化ポリアミド酸塗布膜を形成する工程、及び、
(c)フッ素化ポリアミド酸塗布膜を加熱硬化させて配向されたフッ素化ポリイミド樹脂で構成される表面層2を形成する工程、
を順次経ることによっても製造される。
【0032】
本発明によれば、無端ベルト3が前記(a)〜(c)の工程を順次経て製造されるので、前記(a)工程において、ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層1が形成され、前記(b)工程において、前記基体層1の表面にフッ素化ポリアミド酸塗布膜が形成され、そして、前記(c)工程において、配向されたフッ素化ポリイミド樹脂で構成される表面層2が形成され、それらのために、高度の反射光沢度をもつ表面層2が形成され、よって、難燃性、電気安定性及び強度において優れていると共に、表面層2からの反射光の検出感度を向上させた無端ベルトを低コストで提供することができ、しかも、表面層2が部分的フッ素化ポリイミド樹脂で構成されているので、表面層2の離型性がいっそう向上したものとなる。
【0033】
このような無端ベルト3の製造においては、前記基体層1の表面は、無端ベルト3の軸方向にラビングされているか、又は、無端ベルトの周方向にラビングされている。本発明においては、図2に示すように、円筒状の支持体4で支持されたポリイミド系樹脂で構成される円筒膜3を、ラビングローラ5を矢印の方向に回転させると共に円筒膜も矢印の方向に回転させて、周方向にラビングすると、周方向にラビングされた表面を有する基体層1が形成される。また、図3に示すように、円筒状の支持体4で支持されたポリイミド系樹脂で構成される円筒膜3を、リング上に形成されたラビング布6を矢印の方向に移動させて、軸方向にラビングすると、軸方向にラビングされた表面を有する基体層1が形成される。画像形成装置の中間転写体に使用されるベルトでは、検知器にPセンサーやCCDのような一般的な検知器を用いるので、液晶表示装置のようにプレチルド角や偏光を気にする必要がなく、ラビングの方向性は光強度を検出する際の同軸度を取り易い軸方向での反射強度が強ければよい。
【0034】
本発明の中間転写ベルトは、請求項1〜5のいずれかに記載された無端ベルトからなる。このように、中間転写ベルトが請求項1〜5のいずれかに記載された無端ベルトからなっていると、トナー濃度を検知する際に、強いコントラストが取れるので、画像の階調性がよくなり、繰返しによる画像濃度のばらつきが少なくなる。
【0035】
【実施例】
(実施例1)
(a)ポリイミド系樹脂で構成される直径180mm、膜厚100μmの円筒膜を支持体の外部に取り付け、これを回転させながらその外表面をラビングローラでラビングして、ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層を形成する工程、
(b)ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層の表面にポリアミド酸ワニスをスプレー塗布してポリアミド酸塗布膜を形成する工程、及び、
(c)ポリアミド酸塗布膜を乾燥して溶剤を除去した後、これを加熱硬化させて配向されたポリイミド樹脂で構成される表面層を形成する工程、
を順次経て無端ベルトを得た。
【0036】
(実施例2)
実施例1と同様に形成した円筒膜を支持体の外部に取り付け、これにリング状に形成したラビング布を軸方向にこすり付けて円筒膜の表面をラビングした。その後、円筒膜の表面に実施例1と同様に配向性のポリアミド酸ワニスをスプレー塗布して乾燥、加熱硬化して無端ベルトを得た。
【0037】
(実施例3)
実施例1と同様に形成した円筒膜を支持体の外部に取り付け、これに偏光紫外線を照射して円筒膜の表面をラビングした。その後、円筒膜の表面に実施例1と同様に配向性のポリアミド酸ワニスをスプレー塗布して乾燥、加熱硬化して無端ベルトを得た。
【0038】
(実施例4)
(a)ポリイミド系樹脂で構成される直径180mm、膜厚100μmの円筒膜を支持体の外部に取り付け、その外表面を、リング状に形成したラビング布で軸方向にこすり付けてラビングして、ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層を形成する工程、
(b)ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層の表面にフッ素化ポリアミド酸ワニスをスプレー塗布してフッ素化ポリアミド酸塗布膜を形成する工程、及び、
(c)フッ素化ポリアミド酸塗布膜を乾燥して溶剤を除去した後、これを加熱硬化させて配向されたフッ素化ポリイミド樹脂で構成される表面層を形成する工程、
を順次経て無端ベルトを得た。
【0039】
(比較例1)
(a)ポリイミド系樹脂で構成される直径180mm、膜厚100μmの円筒膜(基体層)を支持体の外部に取り付ける工程、
(b)ポリイミド系樹脂で構成される基体層の表面にポリアミド酸ワニスをスプレー塗布してポリアミド酸塗布膜を形成する工程、及び、
(c)ポリアミド酸塗布膜を乾燥して溶剤を除去した後、これを加熱硬化させてポリイミド樹脂で構成される表面層を形成する工程、
を順次経て無端ベルトを得た。
【0040】
(比較例2)
ポリイミド系樹脂で構成される直径180mm、膜厚100μmの円筒膜を無端ベルトとした。
【0041】
(比較例3)
遠心成型の内周面にポリアミド酸を遠心塗布し、これを不完全にイミド化して20μm厚の不完全イミド化膜(表面層)を形成した後、この不完全イミド化膜の内表面にポリアミド酸を塗布して100μm厚のポリアミド酸膜(基体層)を形成し、続いて、前記不完全イミド化膜及びポリアミド酸膜を完全にイミド化して、基体層及び表面層よりなる120μm厚のポリイミド無端ベルトを得た。
【0042】
以上、実施例1〜4及び比較例1〜3で得たポリイミド多層無端ベルトの表面を光沢度計(日本電色グロスチェッカーPG−1)を用いて入射角度60度で測定したところ、実施例1で得られたサンプルの反射光沢度は、軸方向(図1(a)を参照。):105、周方向(図1(b)を参照。):110であり、実施例2で得られたサンプル及び実施例3で得られたサンプルの反射光沢度は、それぞれ、軸方向:115、周方向:110であり、そして、実施例4で得られたサンプルの反射光沢度は、軸方向:120、周方向:115であった。これらに対して、比較例1で得られたサンプルの反射光沢度は、70であり、そして、比較例2で得られたサンプルの反射光沢度は、100であった。
本実施例で得られた無端ベルトの反射光沢度がアップした理由は、単層膜は電気抵抗を中抵抗に制御するためにカーボンブラックを添加しているが、表面層は電位保持のために抵抗制御剤の添加は無く、透明性を持ちその分表面層での光吸収がないためであると考えられる。
【0043】
また、これらのサンプルを、実機ユニットに取りつけて軸方向、垂直平面での入射反射に配設した光センサー(Pセンサー)で電圧出力を測定したところ、実施例1で得られたサンプルは、4.8Vであり、実施例2で得られたサンプル及び実施例3で得られたサンプルは、5.2Vであり、そして、実施例4で得られたサンプルは、5.4Vであった。これらに対して、比較例1で得られたサンプルは、3Vであり、そして、比較例2で得られたサンプルは、4.5Vであった。
【0044】
さらに、実機での画像を再生してみたところ、画像の階調性は、実施例2〜4で得られたサンプルが一番よく、次いで、実施例1で得られたサンプル、比較例2で得られたサンプル、比較例1で得られたサンプルの順であった。
実施例1で得られたサンプルの画像の階調性と実施例2〜4で得られたサンプルの画像の階調性との差は、配列方向に異方性が生じており、軸方向への配列が良い方が反射光沢度がよいためであると推定される。
また、実施例2で得られたサンプルと実施例3、4で得られたサンプルとを比較すると、画像形成時にスイッチを止めてクリーニングブレードを通過前後のベルト上のトナーの付着状態を観察すると、実施例2のサンプルではコピー10枚目のストップで高濃度画像部で僅かにブレードを通過したトナーが付着していたが、実施例3、4ではまったく観察されなかった。
なお、比較例3で得られたサンプルは、反射光沢度が単層のみと同程度であったが、表面層が厚いために画像形成では画像パターンの乱れがひどく解像度が極端に劣化していた。
【0045】
【発明の効果】
(1)請求項1に記載された発明によれば、(イ)ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層と、(ロ)該基体層の表面にポリアミド酸から形成された配向されたポリイミド樹脂で構成される表面層と、を有しているので、難燃性、電気安定性及び強度において優れていると共に、表面層からの反射光の検出感度を向上させた無端ベルトを低コストで提供することができる。
【0046】
(2)請求項2に記載された発明によれば、(イ)ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層と、(ロ)該基体層の表面にフッ素化ポリアミド酸から形成された配向された部分的フッ素化ポリイミド樹脂で構成される表面層と、を有するものであるので、難燃性、電気安定性及び強度において優れていると共に、表面層からの反射光の検出感度を向上させた無端ベルトを低コストで提供することができ、しかも、表面層が部分的フッ素化ポリイミド樹脂で構成されているので、表面層の離型性がいっそう向上したものとなる。
【0047】
(3)請求項3,8に記載された発明によれば、基体層の表面が、無端ベルトの周方向にラビングされているので、無端ベルトの周方向の反射光沢度を向上させることができる。
(4)請求項4、9に記載された発明によれば、基体層の表面が無端ベルトの軸方向にラビングされているので、軸方向にの反射光沢度を向上させることができる。
【0048】
(5)請求項5に記載された発明によれば、無端ベルトのJIS Z 8741(入射角60度)による反射光沢度が100%以上であるので、付着したトナーの乱反射に対してコントラストが取り易く、しかも、センサーの検知能力が向上する。
【0049】
(6)請求項6に記載された発明によれば、無端ベルト3が前記(a)〜(c)の工程を順次経て製造されるので、難燃性、電気安定性及び強度において優れていると共に、表面層からの反射光の検出感度を向上させた無端ベルトを低コストで提供することができる。
【0050】
(7)請求項7に記載された発明によれば、無端ベルト3が前記(a)〜(c)の工程を順次経て製造されるので、難燃性、電気安定性及び強度において優れていると共に、表面層からの反射光の検出感度を向上させた無端ベルトを低コストで提供することができ、しかも、表面層が部分的フッ素化ポリイミド樹脂で構成されているので、表面層の離型性がいっそう向上したものとなる。
【0051】
(8)請求項9に記載された発明によれば、中間転写ベルトが請求項1〜5のいずれかに記載された無端ベルトからなっているので、トナー濃度を検知する際に、強いコントラストがとれるので、画像の階調性がよくなり、繰返しによる画像濃度のばらつきが少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示す無端ベルトであって、(a)は、その縦断面図であり、(b)は、横断面図である。
【図2】無端ベルトの表面をラビングローラで周方向にラビングすることを示す説明図である。
【図3】無端ベルトの表面をリング状に成形したラビング布で軸方向にラビングすることを示す説明図である。
【符号の説明】
1 基体層
2 表面層
3 無端ベルト
4 支持体
5 ラビングローラ
6 リング状に成形したラビング布
Claims (10)
- (イ)ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層と、(ロ)該基体層の表面にポリアミド酸から形成された配向されたポリイミド樹脂で構成される表面層と、を有することを特徴とする無端ベルト。
- (イ)ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層と、(ロ)該基体層の表面にフッ素化ポリアミド酸から形成された配向された部分的フッ素化ポリイミド樹脂で構成される表面層と、を有することを特徴とする無端ベルト。
- 前記基体層の表面が、無端ベルトの周方向にラビングされていることを特徴とする請求項1又は2に記載された無端ベルト。
- 前記基体層の表面が、無端ベルトの軸方向にラビングされていることを特徴とする請求項1又は2に記載された無端ベルト。
- 前記無端ベルトのJIS Z 8741(入射角60度)による反射光沢度が、100%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の無端ベルト。
- (a)ポリイミド系樹脂で構成される円筒膜の外表面をラビングして、ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層を形成する工程、
(b)ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層の表面にポリアミド酸ワニスを塗布してポリアミド酸塗布膜を形成する工程、及び、
(c)ポリアミド酸塗布膜を加熱硬化させて配向されたポリイミド樹脂で構成される表面層を形成する工程、
を順次経て無端ベルトを製造することを特徴とする無端ベルトの製造方法。 - (a)ポリイミド系樹脂で構成される円筒膜の外表面をラビングして、ラビングされた表面を有するポリイミド樹脂で構成される基体層を形成する工程、
(b)ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層の表面にフッ素化ポリアミド酸ワニスを塗布してフッ素化ポリアミド酸塗布膜を形成する工程、及び、
(c)フッ素化ポリアミド酸塗布膜を加熱硬化させて配向されたフッ素化ポリイミド樹脂で構成される表面層を形成する工程、
を順次経て無端ベルトを製造することを特徴とする無端ベルトの製造方法。 - 前記基体層の表面を無端ベルトの周方向にラビングしたことを特徴とする請求項6又は7に記載された無端ベルトの製造方法。
- 前記基体層の表面を無端ベルトの軸方向にラビングしたことを特徴とする請求項6又は7に記載された無端ベルトの製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載された無端ベルトからなることを特徴とする中間転写ベルト。
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