JP2004251293A - トーンホイール付シールリング及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】シールリングに対するトーンホイールの接着強度が強く、また前処理等の効率化により安価に供給し得る新規なトーンホイール付シールリング及びその製造方法を提供する。
【解決手段】軸受シールリング5回転側芯金51表面にトーンホイール7貼着したトーンホイール付シールリングであって、上記芯金51の表面を、硝酸とふっ酸の混合液による硝ふっ酸処理をした後、クロメート処理若しくは鉄系水和酸化物を主体とする被膜形成処理を施し、この処理面50に上記トーンホイール7を接着剤で貼着一体としたものとする。
【選択図】図2
【解決手段】軸受シールリング5回転側芯金51表面にトーンホイール7貼着したトーンホイール付シールリングであって、上記芯金51の表面を、硝酸とふっ酸の混合液による硝ふっ酸処理をした後、クロメート処理若しくは鉄系水和酸化物を主体とする被膜形成処理を施し、この処理面50に上記トーンホイール7を接着剤で貼着一体としたものとする。
【選択図】図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、自動車の車輪を懸架装置に対し回転自在に支持する転がり軸受ユニットを密封するシールリングに関し、更に詳しくは、このシールリングの回転側にトーンホイールを貼着し、転がり軸受により支持された車輪の回転速度を検出するエンコーダを構成し得るようにしたトーンホイール付シールリング及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持するとともに、アンチロックブレーキシステム(ABS)やトラクションコントロールシステム(TCS)を制御すべく、車輪の回転速度を検出するために、軸受シールリングの回転側芯金(スリンガ)にトーンホイールを貼着し、車体側にセンサーを配置し、このトーンホイールとセンサーとによりエンコーダを構成する方式が採用されるようになった。このような例としては特許文献1に示されたものが知られている。
【0003】
上記トーンホイールは、ゴム材中に磁性剤を混在させ上記回転側芯金の形状に合わせて成形したゴムリング体からなり、且つその周方向にN極、S極を交互に着磁させたゴム磁石からなる。このトーンホイールは、ステンレス鋼等からなる上記芯金の外面に加硫接着等により貼着されるが、その接着性を向上させるために、スリンガ用芯金表面を事前に粗面化して接着面積を大きくする処置がなされる。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−62305号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1には、この粗面化する具体的な方法については記載されていないが、通常粗面化はショットブラスト処理によりなされる。しかし、ショットブラスト処理の場合、ブラスト粒の衝撃により内部応力等が発生し、これにより芯金が変形し、部品精度に問題を生じることがある。また、装置が大掛かりである上に、ブラスト粒の消耗等、ランニングコストが嵩む原因にもなっていた。更に、パックシールタイプのスリンガの場合、接着面のみに狙いを定めて、或いは他の面をマスキングしてブラスト処理をする必要があるために、1枚ずつの処理となり、技量を要する上に処理時間もかかり、また煩わしさも伴うものであり、処理効率の低下を来していた。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、シールリングに対するトーンホイールの接着強度が強く、また前処理等の効率化により安価に供給し得る新規なトーンホイール付シールリング及びその製造方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1の発明に係るトーンホイール付シールリングは、軸受シールリングの回転側芯金表面にトーンホイールを貼着したトーンホイール付シールリングであって、上記芯金表面は、化学的な粗面加工がなされた後化成処理が施されたものであり、上記トーンホイールはこの処理面に接着剤で貼着一体とされていることを特徴とする。この化学的な粗面加工処理法としては、硝酸とふっ酸の混合液による硝ふっ酸処理法が望ましく採用され(請求項2、9)、また、上記化成処理法としてはクロメート処理法(請求項3、10)或いは鉄系水和酸化物を主体とする被膜形成処理法(請求項4、11)が望ましく採用される。
【0008】
上記トーンホイ−ルとしては、ゴム材中に磁性剤を混在させたゴムリング体からなり、周方向にN極とS極を交互に等間隔で着磁形成したものが採用される(請求項5、12)。このゴム材は、NBR、H−NBR、ACM、AEM、FKMのいずれかから選ばれる(請求項6、13)。また、上記芯金としてはステンレス鋼からなるものが採用される(請求項7、14)。特に、ステンレス鋼は、表面に酸化クロム層が形成されて防錆処理がなされているが、上記硝ふっ酸処理をすれば、この酸化クロム層が一部剥離されて粗面化される。そして、この上にクロメート処理を施すことにより、酸化クロム層が一部剥離された部分の防錆効果が回復すると共に、細かなひび割れ状の凹凸粗面が形成されて実質上表面積が増大し、上記トーンホイ−ルの接着保持力を高めることになる。
【0009】
また、ステンレス鋼も近時脱クロム化の傾向にあるが、このような場合、上記硝ふっ酸処理をして表面を粗面化した後、鉄系水和酸化物を主体とする被膜形成処理を施せば、トーンホイ−ルの接着保持力がより強固となる。因みに、この被膜形成処理は、ステンレス鋼の表面に、鉄系水和酸化物としてのFeO(OH)の被膜を形成するものであるが、FeO(OH)の被膜は、接着剤とのぬれ性を良好なものとし、ファン・デル・ワールス力或いは水素結合により接着剤の結合力を高めるものであり、上記粗面化とも相俟って、芯金表面に対するトーンホイ−ルの接着保持力を高めることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明のトーンホイール付シールリングが組み込まれた軸受ユニットの使用例を示す断面図、図2は図1におけるX部の拡大図、図3(a)(b)(c)は、本発明の製造方法を説明する図であり、(a)は硝ふっ酸処理工程を、(b)はクロメート処理工程若しくは鉄系水和酸化物を主体とする被膜形成処理工程を、(c)はトーンホイールの接着工程を示す。
【0011】
図1は自動車の車輪を転がり軸受ユニット1により支持する構造の一例を示すものであり、内輪を構成するハブ2にボルト21によりタイヤホイール(不図示)が固定される。また、22はハブ2に形成されたスプライン孔であり、このスプライン孔22には駆動シャフト(不図示)がスプライン嵌合されて、該駆動シャフトの回転駆動力がタイヤホイールに駆動伝達される。23は内輪部材であり、上記ハブ2とにより内輪が構成される。
【0012】
3は外輪であり、車体の懸架装置(不図示)に取付固定される。この外輪3と上記内輪(ハブ2及び内輪部材23)との間に2列の転動体(玉)4…がリテーナ41で保持された状態で介装されている。5、6は上記転動体4…の転動部に装填される潤滑剤の漏出を防止するためのシールリングであり、外輪3と内輪(ハブ2及び内輪部材23)との間に圧入される。8は検出器であり、磁気センサー81を含み、後記するトーンホイール7とによりエンコーダを構成してタイヤホイールの回転速度を検出する。
【0013】
図2は、車体側シールリング5の拡大断面図を示し、該シールリング5は、上記内輪部材23の外周に一体嵌合されるスリンガ(芯金)51と、外輪3の内周に一体嵌合されるシールリング(芯金)52と、該シールリング52に固着されゴム等の弾性材からなるシールリップ53とにより図のように組合せ構成されている。図例のスリンガ51は、パックシールタイプのスリンガであって、筒状部51aと外向鍔状部51bとよりなり、筒状部51aが上記内輪部材23の外周に圧嵌め固定されると共に、上記シールリップ53はこの鍔状部51bの内面側に摺接するよう配置される。鍔状部51bの反対面、即ち車体側の面50にはトーンホイール7が貼着されており、このトーンホイール7に対向するよう前記検出器8が車体に取付けられている。尚、トーンホイール7は回転側の芯金表面に貼着されるものであり、図例では内輪が回転側であるので、スリンガ51に貼着されるが、外輪側が回転側の場合は内向鍔状部を有する筒状のシールリング52に貼着されることになる。従って、この場合はシールリング52の表面に同様の粗面化処理が施されることになる。
【0014】
トーンホイール7は、ゴム材にフェライト等の磁性粉末を混練して、この混練物を金型に注入してスリンガ51の外周面に沿うようなリング形状に成形加工し、更にその周方向に沿ってN極及びS極を交互且つ等間隔に着磁形成したものである。尚、上記混練物をシート状にした上で上記形状に沿うようスリンガ51の外周面に添着させることも除外するものではない。このトーンホイール7は、上記スリンガ51の車体側面50に貼着されているから、タイヤホイールの回転に伴い軸回転する。そして、検出器8の磁気センサー81が、このトーンホイール7の回転に伴うN極及びS極による磁気変化を検出し、これをタイヤホイールの回転数として計測するのである。
【0015】
スリンガ51は、ステンレス鋼によって成形加工されたものが採用される。ステンレス鋼は、上述の通り表面に酸化クロム層が形成されて防錆処理がなされており、図3(a)に示すように、硝ふっ酸混液(望ましくは、HNO3:HFの重量比=6:1)の処理槽Aに浸漬することにより、この酸化クロム層が一部剥離されて粗面化される。この時、スリンガ51が図例のようなパックシールタイプの場合は、鍔状部51bのトーンホイール7が貼着される面50のみ浸漬し、シールリップ53が摺接する内面側やその他の面は、マスキングをするなどして硝ふっ酸混液に触れないようにし、平滑性を維持するようになすことが望ましい。
【0016】
上記のようにスリンガ51を硝ふっ酸混液により粗面化した後、クロメート処理(例えば、リン酸とクロム酸との混液による処理)が施される。即ち、図3(b)に示すようにクロメート処理槽Bにスリンガ51を浸漬し、このクロメート処理により、上記酸化クロム層が一部剥離された部分も化成処理がなされて防錆効果が回復すると共に、細かなひび割れ状の凹凸粗面が形成されて、実質上スリンガ51の表面積が増大する。このような化学的処理により、スリンガ51の表面粗度は、接着強度を確保するに適した1.0〜1.5Raとなる。尚、図例では、便宜上硝ふっ酸処理槽A及びクロメート処理槽Bにスリンガ51を1個ずつ浸漬して処理する例を示しているが、実際には要領の大きな処理槽で多数のスリンガを一括処理するものであることは当然である。
【0017】
上記のように粗面化処理がなされた上記鍔状部51bの車体側表面(処理面)50には、図3(c)に示すように接着剤(不図示)により上記トーンホイ−ル7が貼着一体とされる。この接着剤としては、特開昭63−248884号公報に開示された塩素化系ポリマーを主成分とする一液型接着剤が望ましく採用される。このような接着剤の採用により、水や塩水のかかり易い環境下でも、後記する凹凸粗面の効果と相俟って接着強度が一層強化される。
【0018】
上記のようにトーンホイ−ル7が貼着された鍔状部51bの車体側表面50は、細かな凹凸粗面により実質上表面積が増大しているから、トーンホイ−ル7の接着保持力が大となり、自動車のような過酷な使用環境にあっても、トーンホイ−ル7が剥離・落下するようなことがない。しかも、粗面化処理が化学的な処理によりなされるから、ショットブラスト処理による場合のように、ブラスト粒の衝撃に伴う内部応力によるスリンガ51の変形がなく、シールリングとしての本来の機能が維持されると共に、エンコーダとしての回転数測定の精度が低下することもない。
【0019】
化成処理として、上記鉄系水和酸化物を主体とする被膜形成処理を採用する場合は、図3(b)のクロメート処理槽BをFeO(OH)槽Bとし、このFeO(OH)槽Bに上記粗面化処理がなされたスリンガ51を浸漬し、表面にFeO(OH)の被膜を形成させた後、上記同様図3(c)に示すように接着剤(不図示)により上記トーンホイ−ル7が貼着一体とされる。このような処理は脱クロム化の趨勢にも対応できるものであり、クロメート処理と共に望ましく採用される。
【0020】
尚、上記実施の形態では、自動車用タイヤホイールの軸受ユニットに適用した例について述べたが、その他のエンコーダを構成する為のト−ンホイール付シールリングにも採用可能であること、及びその他の形状の軸受ユニットにも適用可能であることは言うまでもない。また、ステンレス鋼製のスリンガ51に、硝ふっ酸処理及びクロメート処理を施した例について述べたが、アルミニウム等その他の金属によってスリンガ51が構成される場合でも、本発明と同様の化学的な粗面化処理を施すことによって、トーンホイールの接着強度を強化させることができる。
【0021】
【発明の効果】
本発明のトーンホイール付シールリングによれば、軸受シールリングの回転側芯金にトーンホイールが強固に貼着一体とされているから、自動車等のタイヤホイールの回転数検出用エンコーダを構成する軸受ユニットに適用すれば、その機能が長く維持される。また、このようなトーンホイールの接着強度を強固にする為の手段として、ショットブラスト処理ではなく、硝ふっ酸処理やクロメート処理或いは鉄系水和酸化物を主体とする被膜形成処理などの化学的処理手段が採用されるから、ブラスト粒の衝撃に伴う内部応力による芯金の変形がなく、精度の高い回転速度検出が約束される。しかも、このような化学的処理は、ショットブラスト処理に比べランニングコストが小さい上に処理工数が少なくて済み、且つ煩わしさを伴わないから、軸受用シールリングを安価に供給することができる(請求項1〜14)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のトーンホイール付シールリングが組み込まれた軸受ユニットの使用例を示す断面図である。
【図2】図1におけるX部の拡大図である。
【図3】(a)(b)(c)は、本発明の製造方法を説明する図であり、(a)は硝ふっ酸処理工程を、(b)はクロメート処理工程若しくは鉄系水和酸化物を主体とする被膜形成処理工程を、(c)はトーンホイールの接着工程を示す。
【符号の説明】
1 軸受ユニット
5 シールリング
50 処理面
51 回転側芯金(スリンガ)
7 トーンホイール
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、自動車の車輪を懸架装置に対し回転自在に支持する転がり軸受ユニットを密封するシールリングに関し、更に詳しくは、このシールリングの回転側にトーンホイールを貼着し、転がり軸受により支持された車輪の回転速度を検出するエンコーダを構成し得るようにしたトーンホイール付シールリング及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持するとともに、アンチロックブレーキシステム(ABS)やトラクションコントロールシステム(TCS)を制御すべく、車輪の回転速度を検出するために、軸受シールリングの回転側芯金(スリンガ)にトーンホイールを貼着し、車体側にセンサーを配置し、このトーンホイールとセンサーとによりエンコーダを構成する方式が採用されるようになった。このような例としては特許文献1に示されたものが知られている。
【0003】
上記トーンホイールは、ゴム材中に磁性剤を混在させ上記回転側芯金の形状に合わせて成形したゴムリング体からなり、且つその周方向にN極、S極を交互に着磁させたゴム磁石からなる。このトーンホイールは、ステンレス鋼等からなる上記芯金の外面に加硫接着等により貼着されるが、その接着性を向上させるために、スリンガ用芯金表面を事前に粗面化して接着面積を大きくする処置がなされる。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−62305号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1には、この粗面化する具体的な方法については記載されていないが、通常粗面化はショットブラスト処理によりなされる。しかし、ショットブラスト処理の場合、ブラスト粒の衝撃により内部応力等が発生し、これにより芯金が変形し、部品精度に問題を生じることがある。また、装置が大掛かりである上に、ブラスト粒の消耗等、ランニングコストが嵩む原因にもなっていた。更に、パックシールタイプのスリンガの場合、接着面のみに狙いを定めて、或いは他の面をマスキングしてブラスト処理をする必要があるために、1枚ずつの処理となり、技量を要する上に処理時間もかかり、また煩わしさも伴うものであり、処理効率の低下を来していた。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、シールリングに対するトーンホイールの接着強度が強く、また前処理等の効率化により安価に供給し得る新規なトーンホイール付シールリング及びその製造方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1の発明に係るトーンホイール付シールリングは、軸受シールリングの回転側芯金表面にトーンホイールを貼着したトーンホイール付シールリングであって、上記芯金表面は、化学的な粗面加工がなされた後化成処理が施されたものであり、上記トーンホイールはこの処理面に接着剤で貼着一体とされていることを特徴とする。この化学的な粗面加工処理法としては、硝酸とふっ酸の混合液による硝ふっ酸処理法が望ましく採用され(請求項2、9)、また、上記化成処理法としてはクロメート処理法(請求項3、10)或いは鉄系水和酸化物を主体とする被膜形成処理法(請求項4、11)が望ましく採用される。
【0008】
上記トーンホイ−ルとしては、ゴム材中に磁性剤を混在させたゴムリング体からなり、周方向にN極とS極を交互に等間隔で着磁形成したものが採用される(請求項5、12)。このゴム材は、NBR、H−NBR、ACM、AEM、FKMのいずれかから選ばれる(請求項6、13)。また、上記芯金としてはステンレス鋼からなるものが採用される(請求項7、14)。特に、ステンレス鋼は、表面に酸化クロム層が形成されて防錆処理がなされているが、上記硝ふっ酸処理をすれば、この酸化クロム層が一部剥離されて粗面化される。そして、この上にクロメート処理を施すことにより、酸化クロム層が一部剥離された部分の防錆効果が回復すると共に、細かなひび割れ状の凹凸粗面が形成されて実質上表面積が増大し、上記トーンホイ−ルの接着保持力を高めることになる。
【0009】
また、ステンレス鋼も近時脱クロム化の傾向にあるが、このような場合、上記硝ふっ酸処理をして表面を粗面化した後、鉄系水和酸化物を主体とする被膜形成処理を施せば、トーンホイ−ルの接着保持力がより強固となる。因みに、この被膜形成処理は、ステンレス鋼の表面に、鉄系水和酸化物としてのFeO(OH)の被膜を形成するものであるが、FeO(OH)の被膜は、接着剤とのぬれ性を良好なものとし、ファン・デル・ワールス力或いは水素結合により接着剤の結合力を高めるものであり、上記粗面化とも相俟って、芯金表面に対するトーンホイ−ルの接着保持力を高めることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明のトーンホイール付シールリングが組み込まれた軸受ユニットの使用例を示す断面図、図2は図1におけるX部の拡大図、図3(a)(b)(c)は、本発明の製造方法を説明する図であり、(a)は硝ふっ酸処理工程を、(b)はクロメート処理工程若しくは鉄系水和酸化物を主体とする被膜形成処理工程を、(c)はトーンホイールの接着工程を示す。
【0011】
図1は自動車の車輪を転がり軸受ユニット1により支持する構造の一例を示すものであり、内輪を構成するハブ2にボルト21によりタイヤホイール(不図示)が固定される。また、22はハブ2に形成されたスプライン孔であり、このスプライン孔22には駆動シャフト(不図示)がスプライン嵌合されて、該駆動シャフトの回転駆動力がタイヤホイールに駆動伝達される。23は内輪部材であり、上記ハブ2とにより内輪が構成される。
【0012】
3は外輪であり、車体の懸架装置(不図示)に取付固定される。この外輪3と上記内輪(ハブ2及び内輪部材23)との間に2列の転動体(玉)4…がリテーナ41で保持された状態で介装されている。5、6は上記転動体4…の転動部に装填される潤滑剤の漏出を防止するためのシールリングであり、外輪3と内輪(ハブ2及び内輪部材23)との間に圧入される。8は検出器であり、磁気センサー81を含み、後記するトーンホイール7とによりエンコーダを構成してタイヤホイールの回転速度を検出する。
【0013】
図2は、車体側シールリング5の拡大断面図を示し、該シールリング5は、上記内輪部材23の外周に一体嵌合されるスリンガ(芯金)51と、外輪3の内周に一体嵌合されるシールリング(芯金)52と、該シールリング52に固着されゴム等の弾性材からなるシールリップ53とにより図のように組合せ構成されている。図例のスリンガ51は、パックシールタイプのスリンガであって、筒状部51aと外向鍔状部51bとよりなり、筒状部51aが上記内輪部材23の外周に圧嵌め固定されると共に、上記シールリップ53はこの鍔状部51bの内面側に摺接するよう配置される。鍔状部51bの反対面、即ち車体側の面50にはトーンホイール7が貼着されており、このトーンホイール7に対向するよう前記検出器8が車体に取付けられている。尚、トーンホイール7は回転側の芯金表面に貼着されるものであり、図例では内輪が回転側であるので、スリンガ51に貼着されるが、外輪側が回転側の場合は内向鍔状部を有する筒状のシールリング52に貼着されることになる。従って、この場合はシールリング52の表面に同様の粗面化処理が施されることになる。
【0014】
トーンホイール7は、ゴム材にフェライト等の磁性粉末を混練して、この混練物を金型に注入してスリンガ51の外周面に沿うようなリング形状に成形加工し、更にその周方向に沿ってN極及びS極を交互且つ等間隔に着磁形成したものである。尚、上記混練物をシート状にした上で上記形状に沿うようスリンガ51の外周面に添着させることも除外するものではない。このトーンホイール7は、上記スリンガ51の車体側面50に貼着されているから、タイヤホイールの回転に伴い軸回転する。そして、検出器8の磁気センサー81が、このトーンホイール7の回転に伴うN極及びS極による磁気変化を検出し、これをタイヤホイールの回転数として計測するのである。
【0015】
スリンガ51は、ステンレス鋼によって成形加工されたものが採用される。ステンレス鋼は、上述の通り表面に酸化クロム層が形成されて防錆処理がなされており、図3(a)に示すように、硝ふっ酸混液(望ましくは、HNO3:HFの重量比=6:1)の処理槽Aに浸漬することにより、この酸化クロム層が一部剥離されて粗面化される。この時、スリンガ51が図例のようなパックシールタイプの場合は、鍔状部51bのトーンホイール7が貼着される面50のみ浸漬し、シールリップ53が摺接する内面側やその他の面は、マスキングをするなどして硝ふっ酸混液に触れないようにし、平滑性を維持するようになすことが望ましい。
【0016】
上記のようにスリンガ51を硝ふっ酸混液により粗面化した後、クロメート処理(例えば、リン酸とクロム酸との混液による処理)が施される。即ち、図3(b)に示すようにクロメート処理槽Bにスリンガ51を浸漬し、このクロメート処理により、上記酸化クロム層が一部剥離された部分も化成処理がなされて防錆効果が回復すると共に、細かなひび割れ状の凹凸粗面が形成されて、実質上スリンガ51の表面積が増大する。このような化学的処理により、スリンガ51の表面粗度は、接着強度を確保するに適した1.0〜1.5Raとなる。尚、図例では、便宜上硝ふっ酸処理槽A及びクロメート処理槽Bにスリンガ51を1個ずつ浸漬して処理する例を示しているが、実際には要領の大きな処理槽で多数のスリンガを一括処理するものであることは当然である。
【0017】
上記のように粗面化処理がなされた上記鍔状部51bの車体側表面(処理面)50には、図3(c)に示すように接着剤(不図示)により上記トーンホイ−ル7が貼着一体とされる。この接着剤としては、特開昭63−248884号公報に開示された塩素化系ポリマーを主成分とする一液型接着剤が望ましく採用される。このような接着剤の採用により、水や塩水のかかり易い環境下でも、後記する凹凸粗面の効果と相俟って接着強度が一層強化される。
【0018】
上記のようにトーンホイ−ル7が貼着された鍔状部51bの車体側表面50は、細かな凹凸粗面により実質上表面積が増大しているから、トーンホイ−ル7の接着保持力が大となり、自動車のような過酷な使用環境にあっても、トーンホイ−ル7が剥離・落下するようなことがない。しかも、粗面化処理が化学的な処理によりなされるから、ショットブラスト処理による場合のように、ブラスト粒の衝撃に伴う内部応力によるスリンガ51の変形がなく、シールリングとしての本来の機能が維持されると共に、エンコーダとしての回転数測定の精度が低下することもない。
【0019】
化成処理として、上記鉄系水和酸化物を主体とする被膜形成処理を採用する場合は、図3(b)のクロメート処理槽BをFeO(OH)槽Bとし、このFeO(OH)槽Bに上記粗面化処理がなされたスリンガ51を浸漬し、表面にFeO(OH)の被膜を形成させた後、上記同様図3(c)に示すように接着剤(不図示)により上記トーンホイ−ル7が貼着一体とされる。このような処理は脱クロム化の趨勢にも対応できるものであり、クロメート処理と共に望ましく採用される。
【0020】
尚、上記実施の形態では、自動車用タイヤホイールの軸受ユニットに適用した例について述べたが、その他のエンコーダを構成する為のト−ンホイール付シールリングにも採用可能であること、及びその他の形状の軸受ユニットにも適用可能であることは言うまでもない。また、ステンレス鋼製のスリンガ51に、硝ふっ酸処理及びクロメート処理を施した例について述べたが、アルミニウム等その他の金属によってスリンガ51が構成される場合でも、本発明と同様の化学的な粗面化処理を施すことによって、トーンホイールの接着強度を強化させることができる。
【0021】
【発明の効果】
本発明のトーンホイール付シールリングによれば、軸受シールリングの回転側芯金にトーンホイールが強固に貼着一体とされているから、自動車等のタイヤホイールの回転数検出用エンコーダを構成する軸受ユニットに適用すれば、その機能が長く維持される。また、このようなトーンホイールの接着強度を強固にする為の手段として、ショットブラスト処理ではなく、硝ふっ酸処理やクロメート処理或いは鉄系水和酸化物を主体とする被膜形成処理などの化学的処理手段が採用されるから、ブラスト粒の衝撃に伴う内部応力による芯金の変形がなく、精度の高い回転速度検出が約束される。しかも、このような化学的処理は、ショットブラスト処理に比べランニングコストが小さい上に処理工数が少なくて済み、且つ煩わしさを伴わないから、軸受用シールリングを安価に供給することができる(請求項1〜14)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のトーンホイール付シールリングが組み込まれた軸受ユニットの使用例を示す断面図である。
【図2】図1におけるX部の拡大図である。
【図3】(a)(b)(c)は、本発明の製造方法を説明する図であり、(a)は硝ふっ酸処理工程を、(b)はクロメート処理工程若しくは鉄系水和酸化物を主体とする被膜形成処理工程を、(c)はトーンホイールの接着工程を示す。
【符号の説明】
1 軸受ユニット
5 シールリング
50 処理面
51 回転側芯金(スリンガ)
7 トーンホイール
Claims (14)
- 軸受シールリングの回転側芯金表面にトーンホイールを貼着したトーンホイール付シールリングであって、
上記芯金表面は、化学的な粗面加工がなされた後化成処理が施されたものであり、上記トーンホイールはこの処理面に接着剤で貼着一体とされていることを特徴とするトーンホイール付シールリング。 - 請求項1において、
上記化学的な粗面加工が、硝酸とふっ酸の混合液による硝ふっ酸処理によりなされることを特徴とするトーンホイール付シールリング。 - 請求項1または2において、
上記化成処理が、クロメート処理であることを特徴とするトーンホイール付シールリング。 - 請求項1または2において、
上記化成処理が、鉄系水和酸化物を主体とする被膜形成処理であることを特徴とするトーンホイール付シールリング。 - 請求項1乃至4のいずれかにおいて、
上記トーンホイ−ルが、ゴム材中に磁性剤を混在させたゴムリング体からなり、周方向にN極とS極を交互に等間隔で着磁形成したものであることを特徴とするトーンホイール付シールリング。 - 請求項5において、
上記ゴム材が、NBR、H−NBR、ACM、AEM、FKMから選ばれたいずれかであることを特徴とするトーンホイール付シールリング。 - 請求項1乃至6のいずれかにおいて、
上記芯金がステンレス鋼からなることを特徴とするトーンホイール付シールリング。 - 軸受シールリングの回転側芯金表面にトーンホイールを貼着したトーンホイール付シールリングの製造方法であって、
上記芯金表面を、化学的な粗面加工をした後、化成処理を施し、この処理面に上記トーンホイールを接着剤で貼着一体とすることを特徴とするトーンホイール付シールリングの製造方法。 - 請求項8において、
上記化学的な粗面加工が、硝酸とふっ酸の混合液による硝ふっ酸処理によりなされることを特徴とするトーンホイール付シールリングの製造方法。 - 請求項8または9において、
上記化成処理が、クロメート処理であることを特徴とするトーンホイール付シールリングの製造方法。 - 請求項8または9において、
上記化成処理が、鉄系水和酸化物を主体とする被膜形成処理であることを特徴とするトーンホイール付シールリングの製造方法。 - 請求項7乃至10のいずれかにおいて、
上記トーンホイ−ルが、ゴム材中に磁性剤を混在させたゴムリング体からなり、周方向にN極とS極を交互に等間隔で着磁形成したものであることを特徴とするトーンホイール付シールリングの製造方法。 - 請求項12において、
上記ゴム材が、NBR、H−NBR、ACM、AEM、FKMから選ばれたいずれかであることを特徴とするトーンホイール付シールリングの製造方法。 - 請求項8乃至13のいずれかにおいて、
上記芯金がステンレス鋼からなることを特徴とするトーンホイール付シールリングの製造方法。
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