JP2004250402A - 皮膚外用剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】皮膚への安全性が高く各種化学物質、紫外線、乾燥、熱、低温などの外的環境ストレスに対して保護効果を有する皮膚のバリヤー機能を向上させる。すなわち、これらの外的刺激から皮膚を保護し、修復し、さらに保湿作用があり、肌老化や肌あれの改善と予防に優れた効果を有する皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に使用される植物、主に松(Pinus Pinaster, Pinaceae)葉由来のステロール類を硫酸化して得られる硫酸シトステロール及びその塩、特にβ−シトステロール硫酸Naを主成分とする皮膚バリアー保護強化剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤とする。
【解決手段】本発明に使用される植物、主に松(Pinus Pinaster, Pinaceae)葉由来のステロール類を硫酸化して得られる硫酸シトステロール及びその塩、特にβ−シトステロール硫酸Naを主成分とする皮膚バリアー保護強化剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤とする。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は皮膚外用剤に関する。さらに詳細に説明するならば、皮膚への安全性が高く、乾燥、温度ストレス、化学物質や紫外線に対して保護効果を有する皮膚のバリヤー機能を向上させ、これらの外的刺激から皮膚を保護し、修復し、さらに保湿作用を有し、肌老化や肌あれの改善と予防に優れた効果を有する皮膚外用剤を提供することにある。
【0002】
【従来の技術】
従来から皮膚のバリヤー機能保護強化、免疫機能保護、保湿などを怠ることにより長期的にはしわ、しみなど皮膚の老化の原因となることが言われており、乾燥、温度ストレス、化学物質や紫外線等による、免疫不全などが要因とされる。これらのためには紫外線保護効果を有する成分、多価アルコール、自然保湿因子(NMF成分)、コラーゲン、酸性ムコ多糖類などの保湿性を有する成分や、乾燥など外部からの刺激因子からの保護作用を有する成分として動物性コレステロールやセラミド及びこれらの誘導体を配合した皮膚外用剤などが知られている。
【0003】
しかしながら、いずれの場合にも限定された効果、安定性などの製剤配合の点から問題があり、従来から配合性も容易であり、広範囲な効果を有する優れた成分を配合した皮膚外用剤の出現が期待されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、皮膚への安全性が高く、化学物質や紫外線に対して保護効果を有する皮膚のバリヤー機能を向上させ、乾燥や温度ストレス等の外的刺激から皮膚を保護し、修復し、さらに保湿作用を有し、肌老化や肌あれの改善と予防に優れた効果を有する皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述のような実情に鑑み、本発明者らは長期間、鋭意研究を重ねた結果、植物、主に松(Pinus Pinaster, Pinaceae)の葉から抽出したステロール類を、硫酸化して得られる硫酸シトステロール及びその塩、特にβ−シトステロール硫酸Naを主成分とする皮膚バリアー保護強化剤が、セラミドや硫酸コレステロールと同様に物理的には脂質二重層の接着を改善する、すなわち皮膚構造とそのバリヤー機能を強化したり、即効且つ、持続的保湿作用を有することが判明した。生物学的には皮膚代謝の調節する、すなわちケラチン分化、合成促進作用やランゲルハンス細胞の保護、肌荒れ改善、抗炎症作用を有することを見出した。発明者はこの事実に基づき本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は皮膚の安全性が高く、各種化学物質、紫外線、乾燥、熱、低温などに対して保護効果を有する皮膚のバリヤー機能を向上させるとともに、これらの外的刺激から皮膚を保護し、修復し、さらに保湿作用を有し、肌老化や肌あれの改善と予防に優れた効果を有する皮膚外用剤である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に記載する。本発明に使用される植物、主に松(Pinus Pinaster, Pinaceae)葉由来のステロール類を硫酸化して得られる硫酸シトステロール及びその塩、特にβ−シトステロール硫酸Naを主成分とする皮膚バリアー保護強化剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【0008】
β−シトステロール硫酸Naの構造式を示す。
【化1】
【0009】
本発明者らは植物、主に松(Pinus Pinaster, Pinaceae)葉をエチルアルコール抽出して得られた植物ステロール類を硫酸化して得られる硫酸シトステロール及びその塩、特にβ−シトステロール硫酸Naを主成分とする皮膚バリアー保護強化剤を本皮膚外用剤に配合した。
【0010】
一般的にシトステロールは植物油脂成分の未分化物分画の主要成分であるが本発明における皮膚バリアー保護強化剤はこのシトステロールのC3位の水酸基を硫酸化したものをろ過、乾燥したもので、白色から淡黄色の粉体で特異なにおいがある。
【0011】
本発明において皮膚バリアー保護強化剤は皮膚外用剤、特にスキンケア剤に0.01%から10.0%、好ましくは0.1%から5.0%が推奨できる範囲で充分効果が発揮され、好ましい。一方、この濃度範囲以上の配合は実なる効果が発揮され難く製品の配合上、使用感や安定性の点からも好ましくない。
【0012】
皮膚バリアー保護強化剤の熱安定性は高く、70−80℃で乳化物に使用しても安定である。また、本物質の溶解性は80℃以上のプロピレングリコールに溶解することができる。
【0013】
一方、皮膚バリアー保護強化剤の安全性については皮膚一次刺激性試験、皮膚感作性試験、急性経口毒性試験、眼粘膜刺激性試験、光毒性試験、変異原性試験およびヒトパッチテスト(皮膚貼付試験)を実施し、いずれも問題はなかった。
【0014】
つぎに皮膚バリアー保護強化剤の皮膚への効果を確認するためにインビトロレベルにより、下記のごとく皮膚保護作用、紫外線曝露後の免疫細胞、すなわちランゲルハンス細胞やサイトカイン発現に関する効果があることを発見した。
【0015】
<皮膚保護作用>
(1)化学的刺激に対する皮膚バリアー保護強化剤の生体膜保護効果
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液を用いて生体膜の形態学的変化あるいは細胞死誘発性についての実験を行なった。8穴プレート培養器であるLabtek(Life Technologie TM, Nune labtek)でフィブロブラストを培養した。その細胞を0.5%皮膚バリアー保護強化剤で前処理し、1.0% SDSを添加し24時間培養した。インキュベート終了後、Hematoxylin/Eosine染色をおこない、その細胞数を数え、さらにその構造と形態を観察した。培地として10%牛胎児血清、50μg/mlゲンタマイシンと1g/lのグルコース(GIBCO)を添加したDMEMを使用した。同様にプラセボとして皮膚バリアー保護強化剤無処理の試料を対照品とした。その結果、皮膚バリアー保護強化剤で前処置した細胞についてはSDS投与の影響はほとんど見られず細胞膜は保護されていることが判明した。一方未処理の細胞については SDS投与の影響を受け、各細胞は形態学的変化を受け60%の細胞が死滅した。
【0016】
(2)ケラチン合成に関する皮膚バリアー保護強化剤の効果
正常なヒトケラチノサイトと10%牛胎児血清、50μg/mlゲンタマイシンと1g/lのグルコース(GIBCO)を添加したDMEM培地として使用し、8穴プレート培養器であるLabtek(Life TechnologieTM,Nunelabtek)で培養した。同様にプラセボとして無処理の試料を対照品とした。 60%の発育状態の細胞を1.0%皮膚バリアー保護強化剤で前処理した。数種のタイプの抗体を用いてAvdin−Biotin(VECTOR)システムとKit Substrat Peroxydase(DAB, VECTOR )を使用し、Pan−ケラチン免疫染色をおこなった。その結果、皮膚バリアー保護強化剤は細胞の分化を誘発し、ケラチン細胞発現を促す効果があり、皮膚の保護に必要な皮膚バリヤーの合成を促進していることが示唆された。
【0017】
<紫外線曝露後の免疫細胞に対する効果>
(1)紫外線曝露後の皮膚バリアー保護強化剤の保護効果
ヒトケラチノサイトとフィブロブラストを48時間皮膚バリアー保護強化剤1.0%で処理し、100mj/cm2の単回UVB照射をおこない、p53免疫染色および免疫ブロッティングをおこなった。その結果、UVB照射ケラチノサイトは皮膚バリアー保護強化剤で処理した細胞が未処理細胞に比較してp53の産生が著しく減少した。すなわち、皮膚バリアー保護強化剤で処理した細胞UVBの影響が少なく、UVBによって誘発される変化が少なくなることを示している。なお、このUVB保護効果は48時間持続した。
【0018】
(2)紫外線曝露後のサイトカインに対する皮膚バリアー保護強化剤の効果
生検切片からなる皮膚サンプルを10mgリポポリサッカライド(LPS)に曝露し、未処理および2時間皮膚バリアー保護強化剤1.0%で処理したケラチノサイトでのIL−1α、 IL−1レセプター(IL−1r), IL−8レセプター(IL−8r)の免疫染色を行なった。その結果、 IL−8レセプター(IL−8r)は20%まで減少し、IL−1α、IL−1レセプター(IL−1r)についても多少ではあるが減少した。このことにより皮膚バリアー保護強化剤はサイトカイン発現を適度に調節し、炎症反応を適度に低下させる作用があることが示唆された。
【0019】
本発明である皮膚外用剤の製剤化は上記物質に加えて本発明の効果を損なわない範囲内で、通常の医薬品等の皮膚外用剤、医薬部外品や化粧品に用いられる他の成分、例えば陰イオン(高級脂肪酸アルカリ金属塩、高級脂肪酸アミン塩、アミノ酸系界面活性剤)や非イオン界面活性剤、リン脂質ステロールエステルなどの界面活性剤、炭化水素(流動パラフィン、スクワラン、ワセリンなど)、油脂(動植物油、トリグリセリド、ワックスエステル、高級アルコール、高級脂肪酸、シリコーン、エステル油、ロウ類など)など、湿潤剤(多価アルコール、糖類、生体高分子、アミノ酸、ペプチド類など)、アルコール(エチルアルコール)、皮膜形成剤(ポリビニルアルコール、ペクチン)や水溶性ないし油溶性高分子、樹脂、紫外線吸収剤、殺菌防腐剤、抗酸化剤、金属封鎖剤、着色剤(天然色素、合成色素)、各種香料の他、各種の植物および動物抽出物、油溶性ビタミン、水溶性ビタミンや美白剤としてのアルブチン、コウジ酸、エラグ酸、肌荒れ防止剤として尿素、アラントイン、抗炎症剤としてグルチルレチン酸、グリチルリチン酸、アズレンなど、収斂剤としてパラフェノールスルフォン酸亜鉛や 、クエン酸およびその塩などを含めた有機酸類とその塩等、そして有機あるいは無機系粉体等を、必要に応じて適宜配合もしくは併用することができる。
【0020】
また、本発明の皮膚外用剤の用途も任意であり、洗顔料、乳液、クリーム、化粧水、パック、美溶液等のスキンケア化粧料はもとより、ファンデーションなどのベースメークアップや口紅、アイシャドウ、アイライナー、アイブロー、マスカラなどのポイントメークやシャンプー、リンス、コンディショナーや頭皮ケア剤などを含めたヘアケア製品やその他、爪用化粧品、浴用剤、芳香性化粧料等にも使用することができる。用途別にはサンケア商品、ボディケア商品、美白商品や抗老化用商品にも適用可能である。
【0021】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を詳しく説明する。本発明の技術的範囲はこれによって限定されるものではない。なお、実施例中の記載配合量はすべて重量%である。
【0022】
<保湿性改善試験>
23才から65才までのボランティア健常人10名(男性2名、女性8名)の前腕内側皮膚に皮膚バリアー保護強化剤配合製品およびプラセボ(皮膚バリアー保護強化剤未配合製品)とを2mg/cm2相当量を塗布しダブルブラインド試験を実施した。つぎに3時間までの皮膚の保湿性の測定をおこなった。保湿性の測定はCorneometerCM825にておこなった。判定基準は健常人の平均コンダクタンス値が各測定時間(塗布後30分後、60分後、90分後、120分後、150分後および180分後の計六回)において上昇している場合は1点、同じ値の場合には0点、劣っている場合には−1点とした。
<保湿性に対する改善効果の評価>
◎ (対照クリームより保湿性が高い) :評点の合計が+6点から+1点
○(対照クリームと保湿性が同程度) :評点の合計が+1点から−1点
×(対照クリームの方が保湿性が高い) :評点の合計が−1点から−6点
【0023】
<試料の調整>
皮膚バリアー保護強化剤は皮膚外用剤、医薬部外品、化粧料に配合する場合には下記の組成にしたがって実施例1、2および比較例1、2を調整した。内容成分は医薬品、医薬部外品や化粧品に使用されている規格成分により調整することができる。
【0024】
【実施例1および比較例1】クリームは下記の表にしめす組成にしたがって調整し、皮膚保湿性改善効果試験をおこなった。
【表1】
(製法)(1),(2),(3),(4),(5),(6),(7),(10),(13)を秤量し75℃に加温、混合し(油相)、(8),(9),(11),(12),(14),(16)を秤量し、同様に75℃に加温、混合し(水相)、水相、油相を混合乳化し35℃で(15)を加えクリームを調整する。保湿性改善試験結果は実施例である皮膚バリアー保護強化剤配合クリームは比較例である皮膚バリアー保護強化剤未配合クリームに比較して6点(◎)のスコアであり、すなわち、保湿性が高いという結果を得た。
【0025】
これらの結果から老化皮膚や肌荒れ用に有効であることが証明された。また、保湿効果は持続性が認められ、実施例を塗布した後、少なくとも3時間後も継続した。また、皮膚疾患の兆候がない乾燥肌である27才から52才までの女性被験者4人に対して脚の内側皮膚に60cm2の2箇所、それぞれの脚の一方に 皮膚バリアー保護強化剤1%上記クリームをもしくはプラセボクリームをランダムに塗布した。コントロールとして無塗布部分も設けた。1回の塗布量は5mg/cm2とし、皮膚の基礎的写真は三箇所撮られ、クリーム塗布後2、4、8時間後にその部位の撮影を行なった。その結果、プラセボクリームに対してすべての被験者に短時間ではあるが保湿性改善がみられた。皮膚バリアー保護強化剤1%クリームにて処理した皮膚は塗布後8時間もの間、保湿性が維持された。しかもこの差異は肉眼でも観察された。
【0026】
【実施例2】ローションの下記の表にしめす組成を調製し上記皮膚効果試験をおこなった。
【表2】
(製法)(11)に (2),(3),(4),(8), (9),(10)を溶解し(水相)、この水相に(1)に(5),(6),(7)を溶解したものを添加、混合し、ローションを調整した。
この実施例2もまた、クリーム剤型と同様に老化皮膚や肌荒れ用に効果がみとめられた。
【0027】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の皮膚外用剤は、皮膚への安全性が高く、各種化学物質、紫外線、乾燥、熱、低温などの外的環境ストレスに対して保護効果を有する皮膚のバリヤー機能を向上させる。すなわち、これらの外的刺激から皮膚を保護し、修復し、さらに保湿作用を有し、肌老化や肌あれの改善及び予防に優れた効果を有する皮膚外用剤を提供する。
【発明の属する技術分野】
本発明は皮膚外用剤に関する。さらに詳細に説明するならば、皮膚への安全性が高く、乾燥、温度ストレス、化学物質や紫外線に対して保護効果を有する皮膚のバリヤー機能を向上させ、これらの外的刺激から皮膚を保護し、修復し、さらに保湿作用を有し、肌老化や肌あれの改善と予防に優れた効果を有する皮膚外用剤を提供することにある。
【0002】
【従来の技術】
従来から皮膚のバリヤー機能保護強化、免疫機能保護、保湿などを怠ることにより長期的にはしわ、しみなど皮膚の老化の原因となることが言われており、乾燥、温度ストレス、化学物質や紫外線等による、免疫不全などが要因とされる。これらのためには紫外線保護効果を有する成分、多価アルコール、自然保湿因子(NMF成分)、コラーゲン、酸性ムコ多糖類などの保湿性を有する成分や、乾燥など外部からの刺激因子からの保護作用を有する成分として動物性コレステロールやセラミド及びこれらの誘導体を配合した皮膚外用剤などが知られている。
【0003】
しかしながら、いずれの場合にも限定された効果、安定性などの製剤配合の点から問題があり、従来から配合性も容易であり、広範囲な効果を有する優れた成分を配合した皮膚外用剤の出現が期待されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、皮膚への安全性が高く、化学物質や紫外線に対して保護効果を有する皮膚のバリヤー機能を向上させ、乾燥や温度ストレス等の外的刺激から皮膚を保護し、修復し、さらに保湿作用を有し、肌老化や肌あれの改善と予防に優れた効果を有する皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述のような実情に鑑み、本発明者らは長期間、鋭意研究を重ねた結果、植物、主に松(Pinus Pinaster, Pinaceae)の葉から抽出したステロール類を、硫酸化して得られる硫酸シトステロール及びその塩、特にβ−シトステロール硫酸Naを主成分とする皮膚バリアー保護強化剤が、セラミドや硫酸コレステロールと同様に物理的には脂質二重層の接着を改善する、すなわち皮膚構造とそのバリヤー機能を強化したり、即効且つ、持続的保湿作用を有することが判明した。生物学的には皮膚代謝の調節する、すなわちケラチン分化、合成促進作用やランゲルハンス細胞の保護、肌荒れ改善、抗炎症作用を有することを見出した。発明者はこの事実に基づき本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は皮膚の安全性が高く、各種化学物質、紫外線、乾燥、熱、低温などに対して保護効果を有する皮膚のバリヤー機能を向上させるとともに、これらの外的刺激から皮膚を保護し、修復し、さらに保湿作用を有し、肌老化や肌あれの改善と予防に優れた効果を有する皮膚外用剤である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に記載する。本発明に使用される植物、主に松(Pinus Pinaster, Pinaceae)葉由来のステロール類を硫酸化して得られる硫酸シトステロール及びその塩、特にβ−シトステロール硫酸Naを主成分とする皮膚バリアー保護強化剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【0008】
β−シトステロール硫酸Naの構造式を示す。
【化1】
【0009】
本発明者らは植物、主に松(Pinus Pinaster, Pinaceae)葉をエチルアルコール抽出して得られた植物ステロール類を硫酸化して得られる硫酸シトステロール及びその塩、特にβ−シトステロール硫酸Naを主成分とする皮膚バリアー保護強化剤を本皮膚外用剤に配合した。
【0010】
一般的にシトステロールは植物油脂成分の未分化物分画の主要成分であるが本発明における皮膚バリアー保護強化剤はこのシトステロールのC3位の水酸基を硫酸化したものをろ過、乾燥したもので、白色から淡黄色の粉体で特異なにおいがある。
【0011】
本発明において皮膚バリアー保護強化剤は皮膚外用剤、特にスキンケア剤に0.01%から10.0%、好ましくは0.1%から5.0%が推奨できる範囲で充分効果が発揮され、好ましい。一方、この濃度範囲以上の配合は実なる効果が発揮され難く製品の配合上、使用感や安定性の点からも好ましくない。
【0012】
皮膚バリアー保護強化剤の熱安定性は高く、70−80℃で乳化物に使用しても安定である。また、本物質の溶解性は80℃以上のプロピレングリコールに溶解することができる。
【0013】
一方、皮膚バリアー保護強化剤の安全性については皮膚一次刺激性試験、皮膚感作性試験、急性経口毒性試験、眼粘膜刺激性試験、光毒性試験、変異原性試験およびヒトパッチテスト(皮膚貼付試験)を実施し、いずれも問題はなかった。
【0014】
つぎに皮膚バリアー保護強化剤の皮膚への効果を確認するためにインビトロレベルにより、下記のごとく皮膚保護作用、紫外線曝露後の免疫細胞、すなわちランゲルハンス細胞やサイトカイン発現に関する効果があることを発見した。
【0015】
<皮膚保護作用>
(1)化学的刺激に対する皮膚バリアー保護強化剤の生体膜保護効果
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液を用いて生体膜の形態学的変化あるいは細胞死誘発性についての実験を行なった。8穴プレート培養器であるLabtek(Life Technologie TM, Nune labtek)でフィブロブラストを培養した。その細胞を0.5%皮膚バリアー保護強化剤で前処理し、1.0% SDSを添加し24時間培養した。インキュベート終了後、Hematoxylin/Eosine染色をおこない、その細胞数を数え、さらにその構造と形態を観察した。培地として10%牛胎児血清、50μg/mlゲンタマイシンと1g/lのグルコース(GIBCO)を添加したDMEMを使用した。同様にプラセボとして皮膚バリアー保護強化剤無処理の試料を対照品とした。その結果、皮膚バリアー保護強化剤で前処置した細胞についてはSDS投与の影響はほとんど見られず細胞膜は保護されていることが判明した。一方未処理の細胞については SDS投与の影響を受け、各細胞は形態学的変化を受け60%の細胞が死滅した。
【0016】
(2)ケラチン合成に関する皮膚バリアー保護強化剤の効果
正常なヒトケラチノサイトと10%牛胎児血清、50μg/mlゲンタマイシンと1g/lのグルコース(GIBCO)を添加したDMEM培地として使用し、8穴プレート培養器であるLabtek(Life TechnologieTM,Nunelabtek)で培養した。同様にプラセボとして無処理の試料を対照品とした。 60%の発育状態の細胞を1.0%皮膚バリアー保護強化剤で前処理した。数種のタイプの抗体を用いてAvdin−Biotin(VECTOR)システムとKit Substrat Peroxydase(DAB, VECTOR )を使用し、Pan−ケラチン免疫染色をおこなった。その結果、皮膚バリアー保護強化剤は細胞の分化を誘発し、ケラチン細胞発現を促す効果があり、皮膚の保護に必要な皮膚バリヤーの合成を促進していることが示唆された。
【0017】
<紫外線曝露後の免疫細胞に対する効果>
(1)紫外線曝露後の皮膚バリアー保護強化剤の保護効果
ヒトケラチノサイトとフィブロブラストを48時間皮膚バリアー保護強化剤1.0%で処理し、100mj/cm2の単回UVB照射をおこない、p53免疫染色および免疫ブロッティングをおこなった。その結果、UVB照射ケラチノサイトは皮膚バリアー保護強化剤で処理した細胞が未処理細胞に比較してp53の産生が著しく減少した。すなわち、皮膚バリアー保護強化剤で処理した細胞UVBの影響が少なく、UVBによって誘発される変化が少なくなることを示している。なお、このUVB保護効果は48時間持続した。
【0018】
(2)紫外線曝露後のサイトカインに対する皮膚バリアー保護強化剤の効果
生検切片からなる皮膚サンプルを10mgリポポリサッカライド(LPS)に曝露し、未処理および2時間皮膚バリアー保護強化剤1.0%で処理したケラチノサイトでのIL−1α、 IL−1レセプター(IL−1r), IL−8レセプター(IL−8r)の免疫染色を行なった。その結果、 IL−8レセプター(IL−8r)は20%まで減少し、IL−1α、IL−1レセプター(IL−1r)についても多少ではあるが減少した。このことにより皮膚バリアー保護強化剤はサイトカイン発現を適度に調節し、炎症反応を適度に低下させる作用があることが示唆された。
【0019】
本発明である皮膚外用剤の製剤化は上記物質に加えて本発明の効果を損なわない範囲内で、通常の医薬品等の皮膚外用剤、医薬部外品や化粧品に用いられる他の成分、例えば陰イオン(高級脂肪酸アルカリ金属塩、高級脂肪酸アミン塩、アミノ酸系界面活性剤)や非イオン界面活性剤、リン脂質ステロールエステルなどの界面活性剤、炭化水素(流動パラフィン、スクワラン、ワセリンなど)、油脂(動植物油、トリグリセリド、ワックスエステル、高級アルコール、高級脂肪酸、シリコーン、エステル油、ロウ類など)など、湿潤剤(多価アルコール、糖類、生体高分子、アミノ酸、ペプチド類など)、アルコール(エチルアルコール)、皮膜形成剤(ポリビニルアルコール、ペクチン)や水溶性ないし油溶性高分子、樹脂、紫外線吸収剤、殺菌防腐剤、抗酸化剤、金属封鎖剤、着色剤(天然色素、合成色素)、各種香料の他、各種の植物および動物抽出物、油溶性ビタミン、水溶性ビタミンや美白剤としてのアルブチン、コウジ酸、エラグ酸、肌荒れ防止剤として尿素、アラントイン、抗炎症剤としてグルチルレチン酸、グリチルリチン酸、アズレンなど、収斂剤としてパラフェノールスルフォン酸亜鉛や 、クエン酸およびその塩などを含めた有機酸類とその塩等、そして有機あるいは無機系粉体等を、必要に応じて適宜配合もしくは併用することができる。
【0020】
また、本発明の皮膚外用剤の用途も任意であり、洗顔料、乳液、クリーム、化粧水、パック、美溶液等のスキンケア化粧料はもとより、ファンデーションなどのベースメークアップや口紅、アイシャドウ、アイライナー、アイブロー、マスカラなどのポイントメークやシャンプー、リンス、コンディショナーや頭皮ケア剤などを含めたヘアケア製品やその他、爪用化粧品、浴用剤、芳香性化粧料等にも使用することができる。用途別にはサンケア商品、ボディケア商品、美白商品や抗老化用商品にも適用可能である。
【0021】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を詳しく説明する。本発明の技術的範囲はこれによって限定されるものではない。なお、実施例中の記載配合量はすべて重量%である。
【0022】
<保湿性改善試験>
23才から65才までのボランティア健常人10名(男性2名、女性8名)の前腕内側皮膚に皮膚バリアー保護強化剤配合製品およびプラセボ(皮膚バリアー保護強化剤未配合製品)とを2mg/cm2相当量を塗布しダブルブラインド試験を実施した。つぎに3時間までの皮膚の保湿性の測定をおこなった。保湿性の測定はCorneometerCM825にておこなった。判定基準は健常人の平均コンダクタンス値が各測定時間(塗布後30分後、60分後、90分後、120分後、150分後および180分後の計六回)において上昇している場合は1点、同じ値の場合には0点、劣っている場合には−1点とした。
<保湿性に対する改善効果の評価>
◎ (対照クリームより保湿性が高い) :評点の合計が+6点から+1点
○(対照クリームと保湿性が同程度) :評点の合計が+1点から−1点
×(対照クリームの方が保湿性が高い) :評点の合計が−1点から−6点
【0023】
<試料の調整>
皮膚バリアー保護強化剤は皮膚外用剤、医薬部外品、化粧料に配合する場合には下記の組成にしたがって実施例1、2および比較例1、2を調整した。内容成分は医薬品、医薬部外品や化粧品に使用されている規格成分により調整することができる。
【0024】
【実施例1および比較例1】クリームは下記の表にしめす組成にしたがって調整し、皮膚保湿性改善効果試験をおこなった。
【表1】
(製法)(1),(2),(3),(4),(5),(6),(7),(10),(13)を秤量し75℃に加温、混合し(油相)、(8),(9),(11),(12),(14),(16)を秤量し、同様に75℃に加温、混合し(水相)、水相、油相を混合乳化し35℃で(15)を加えクリームを調整する。保湿性改善試験結果は実施例である皮膚バリアー保護強化剤配合クリームは比較例である皮膚バリアー保護強化剤未配合クリームに比較して6点(◎)のスコアであり、すなわち、保湿性が高いという結果を得た。
【0025】
これらの結果から老化皮膚や肌荒れ用に有効であることが証明された。また、保湿効果は持続性が認められ、実施例を塗布した後、少なくとも3時間後も継続した。また、皮膚疾患の兆候がない乾燥肌である27才から52才までの女性被験者4人に対して脚の内側皮膚に60cm2の2箇所、それぞれの脚の一方に 皮膚バリアー保護強化剤1%上記クリームをもしくはプラセボクリームをランダムに塗布した。コントロールとして無塗布部分も設けた。1回の塗布量は5mg/cm2とし、皮膚の基礎的写真は三箇所撮られ、クリーム塗布後2、4、8時間後にその部位の撮影を行なった。その結果、プラセボクリームに対してすべての被験者に短時間ではあるが保湿性改善がみられた。皮膚バリアー保護強化剤1%クリームにて処理した皮膚は塗布後8時間もの間、保湿性が維持された。しかもこの差異は肉眼でも観察された。
【0026】
【実施例2】ローションの下記の表にしめす組成を調製し上記皮膚効果試験をおこなった。
【表2】
(製法)(11)に (2),(3),(4),(8), (9),(10)を溶解し(水相)、この水相に(1)に(5),(6),(7)を溶解したものを添加、混合し、ローションを調整した。
この実施例2もまた、クリーム剤型と同様に老化皮膚や肌荒れ用に効果がみとめられた。
【0027】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の皮膚外用剤は、皮膚への安全性が高く、各種化学物質、紫外線、乾燥、熱、低温などの外的環境ストレスに対して保護効果を有する皮膚のバリヤー機能を向上させる。すなわち、これらの外的刺激から皮膚を保護し、修復し、さらに保湿作用を有し、肌老化や肌あれの改善及び予防に優れた効果を有する皮膚外用剤を提供する。
Claims (2)
- 植物、主に 松(Pinus pinaster,Pinaceae) 葉由来のステロール類を硫酸化して得られる硫酸シトステロール及びその塩を主成分として含有することを特徴とする皮膚外用剤
- 植物、主に 松(Pinus pinaster,Pinaceae) 葉由来のステロール類を硫酸化して得られる硫酸シトステロール及びその塩を0.01%から 10.0%を含有することを特徴とする皮膚外用剤
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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FR2880805A1 (fr) * | 2005-01-20 | 2006-07-21 | Clarins Soc Par Actions Simpli | Procede de soin cosmetique de la peau |
JP2014012718A (ja) * | 2013-09-10 | 2014-01-23 | Kinji Ishida | 皮膚バリアー回復能改善剤 |
-
2003
- 2003-02-21 JP JP2003044079A patent/JP2004250402A/ja active Pending
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