JP2004250367A - 親油性化合物を含有する粒子の製造方法および製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】水、光、酸素などに不安定な親油性化合物の液滴表面を被覆剤によって被覆し、均一な粒子径の親油性化合物を含有する粒子の製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】ディスペンサー1内の脂溶性ビタミン類を含有する乳化分散液2を、ディスペンサー1の先端の有口針3からフィーダー7から供給される被覆剤8に滴下し、乳化分散液2の液滴表面を被覆剤8によって被覆し、被覆粒子4とする。被覆粒子4は、篩10によって過剰の被覆剤8と分離される。分離された被覆粒子4を加熱することにより、被覆粒子4中の水分を乾燥する。これにより、ディスペンサー1の先端の有口針3の直径とほぼ同じ大きさの被覆粒子4を得ることができる。つまり、不安定な脂溶性ビタミン類を、均一な粒子径の粒子として提供することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】ディスペンサー1内の脂溶性ビタミン類を含有する乳化分散液2を、ディスペンサー1の先端の有口針3からフィーダー7から供給される被覆剤8に滴下し、乳化分散液2の液滴表面を被覆剤8によって被覆し、被覆粒子4とする。被覆粒子4は、篩10によって過剰の被覆剤8と分離される。分離された被覆粒子4を加熱することにより、被覆粒子4中の水分を乾燥する。これにより、ディスペンサー1の先端の有口針3の直径とほぼ同じ大きさの被覆粒子4を得ることができる。つまり、不安定な脂溶性ビタミン類を、均一な粒子径の粒子として提供することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、親油性化合物を含有する粒子の製造方法および製造装置に関し、特に、医薬品や食品の添加物として利用されている光、熱、または酸素などにより劣化しやすい脂溶性ビタミンおよびカロチノイドなどの脂溶性ビタミン類を含有する乾燥粒子の製造に好適に利用できる脂溶性ビタミン類の製造方法および製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ビタミンA誘導体であるビタミンAアセテートをはじめとする脂溶性ビタミンやβ−カロチンなどのカロチノイドは、医薬品、動物飼料、および食品の添加剤をして幅広く利用されている。しかし、脂溶性ビタミンやカロチノイドは、光、熱、または酸素などの影響で容易に劣化し、活性が低下しやすい化合物である。
【0003】
このため、医薬品、動物飼料、および食品として製造・加工される条件でも、脂溶性ビタミンやカロチノイドの活性を維持させるために、一般的には、脂溶性ビタミンやカロチノイドが、還元性糖類とゼラチンとからなるマトリックスに埋め込まれた形の粒子として製造される。
【0004】
従来、このような粒子の製造方法として、噴霧法による製造方法が数多く開発されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
具体的には、特許文献1に記載の製造方法では、噴霧槽内の上方から下方へ被覆剤を含む気体を対流させると共に、脂溶性ビタミンやカロチノイドを分散し、糖類とゼラチンとを含む乳化分散液を噴霧槽内に噴霧している。これによって、前記乳化分散液の液滴表面から水分が被覆剤に移動したのち、ただちに、乾燥させることによって水分が除去されるとともに、乾燥時の加熱によって還元性糖類とゼラチンがマトリックスを生成して脂溶性ビタミンやカロチノイドを埋め込み、内部にマトリックス、外部に被覆剤を有する乾燥粒子を製造している。
【0006】
このように、光、熱、または酸素などに不安定な脂溶性ビタミンやカロチノイドは、マトリックスと被覆剤で保護することにより、安定な粒子として製造されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−158063号公報(公開日1997年11月26日)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、噴霧法によって乾燥粒子を製造すると、均一な粒子径の粒子を製造することができないという問題点を有している。これは、乳化分散液を噴霧槽内で噴霧するために、粒子径に分布を持つ液滴が生成する上、さらに、噴霧した液滴同士が付着して、得られる乾燥粒子の粒子径が制御できないためであると考えられる。
【0009】
そこで、本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、例えば、光、熱、または酸素などに不安定な脂溶性ビタミンやカロチノイドなどの親油性化合物を含有する粒子を、均一な粒子径で製造する方法およびを当該粒子の製造装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の親油性化合物を含有する粒子の製造方法は、上記の課題を解決するために、親油性化合物が分散された乳化分散液の液滴表面を、親水性の被覆剤により被覆して被覆粒子を形成した後、該被覆粒子を乾燥する、親油性化合物を含有する粒子の製造方法であって、上記乳化分散液を、上記被覆剤に滴下することを特徴としている。
【0011】
上記の方法によれば、親油性化合物が分散された乳化分散液が、被覆剤に滴下される。滴下される乳化分散液は親油性が大きく、被覆剤は親水性であるので、滴下された乳化分散液は、表面張力により被覆剤上で球状の液滴となる。つまり、乳化分散液は、均一な粒子径の液滴として被覆剤に滴下される。滴下された液滴の表面は、被覆剤によって被覆される。すなわち、乳化分散液層の表面が被覆剤層で覆われた被覆粒子が形成される。被覆剤は親水性であるので、被覆粒子では、乳化分散液層の水分が被覆剤層へ移動して吸収される。被覆剤層に移動した水分を乾燥することによって、球状、すなわち均一な粒子径の親油性化合物を含有する粒子を確実に製造することができる。
【0012】
本発明の粒子の製造方法において、上記被覆剤を振動させながら乳化分散液を滴下してもよい。これにより、乳化分散液の液滴の表面を、確実に被覆剤によって被覆することができる。
【0013】
また、本発明の粒子の製造方法において、上記の構成に加えて、被覆剤を水平方向に移動させながら乳化分散液を滴下してもよい。これにより、乳化分散液の液滴の表面を、一層確実に被覆剤によって被覆することができる。
【0014】
本発明の粒子の製造方法において、上記親油性化合物は、脂溶性ビタミンおよび/またはカロチノイドであってもよい。これにより、光、熱、または酸素などに不安定な脂溶性ビタミンおよび/またはカロチノイドを含有する粒子を、安定な粒子として提供できる。この粒子は、医薬品、食品、動物飼料などに利用できる。
【0015】
本発明の粒子の製造方法において、上記被覆剤は、粉末状の糖類、ケイ酸またはステアリン酸から選ばれる少なくとも1種類の化合物であってもよい。粉末状の糖類、ケイ酸またはステアリン酸は、医薬品や食品の添加物として利用される。したがって、例えば、被覆剤を上記のようにすると、医薬品や食品などとして利用できる粒子を製造できる。
【0016】
本発明の粒子の製造方法において、上記乳化分散液は、アミノ基を有する乳化剤と、還元性糖類とを含んでいてもよい。これにより、アミノ基と還元性糖類とのメイラード反応が進行しやすくなり、マトリックスが形成される。その結果、マトリックスに、親油性化合物を埋め込むことができる。それゆえ、光、熱または酸素などにより不安定な親油性化合物を、マトリックスによっても保護することができる。
【0017】
乳化剤は、ゼラチンであってもよい。これにより、容易にマトリックスに、親油性化合物を埋め込むことができ、不安定な親油性化合物を、マトリックスによっても保護することができる。
【0018】
本発明の親油性化合物を含有する粒子の製造装置は、上記の課題を解決するために、親水性の被覆剤を供給する供給手段と、該供給手段から供給される被覆剤を振動させながら水平方向に搬送する搬送手段と、該搬送手段にて搬送される被覆剤に、親油性化合物が分散された乳化分散液を滴下する滴下手段とを備えていることを特徴としている。
【0019】
上記の構成によれば、滴下手段から親水性化合物を含有する乳化分散液が、供給手段から供給される親水性の被覆剤上または被覆剤中に滴下される。供給手段から供給される被覆剤は、搬送手段によって振動させながら水平方向に搬送されるので、滴下手段から滴下された乳化分散液の液滴の表面は、被覆剤によって被覆された被覆粒子を形成する。さらに、搬送されている間、被覆粒子中の水分は、被覆剤によって吸収される。このようにして、親油性化合物が被覆剤によって保護された均一な粒子径の粒子を提供することができる。
【0020】
本発明の粒子の製造装置において、上記滴下手段は、直径1mm以下の滴下口から乳化分散液を滴下してもよい。これにより、ほぼ均一な粒子径の乳化分散液を滴下することができ、得られる粒子の粒子径分布をほぼ単一にすることができる。さらに、1mm以下の小さい粒子径の粒子を製造できるので、該粒子は、水分量が少なくなる。その結果、この粒子を短時間で速やかに乾燥したり、マトリックスを形成することができ、結果として、粒子に含有される親油性化合物の光や熱に対する安定性が向上する。
【0021】
本発明の粒子の製造装置において、上記滴下手段は、9.8kPa(ゲージ圧)以上、すなわち0.1kgf/cm2G以上に加圧されて上記乳化分散液を滴下してもよい。このように、9.8kPa以上の一定の圧力で乳化分散液を滴下すれば、一定の粒子径の乳化分散液を滴下することができる。すなわち、均一な粒子径の乳化分散液の液滴を得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について、以下に説明する。
【0023】
本発明の親油性化合物を含有する粒子の製造方法(以下、「本製造方法」と称する)は、親油性化合物を分散させた乳化分散液を、粉末状、粒状などの固形の親水性被覆剤に滴下することにより、前記乳化分散液の液滴表面を前記被覆剤によって被覆する方法である。
【0024】
親油性化合物は、例えば、熱、酸素、光などに対して不安定な化合物が挙げられ、具体的には、脂溶性ビタミンやカロチノイドなどが例示される。
【0025】
脂溶性ビタミンとしては、例えば、ビタミンAアセテート、ビタミンAパルミテート、ビタミンA(レチノール)、ビタミンAアルデヒド(レチナール)、ビタミンA酸(レチノイン酸)またはこれらの誘導体などのビタミンA類;コレカルシフェロール(ビタミンD3)、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、1α、25−ジヒドロキシコレカルシフェロール(活性型ビタミンD3)、またはこれらの誘導体などのビタミンD類;α−トコフェロール、5,7,8−トリメチルトコトリエノールなどのビタミンE類;2−ファルネシル−3−メチル1,4−ナフトキノン(ビタミンK3)などのビタミンK類などを挙げることができる。
【0026】
また、カロチノイドとしては、β−カロチン、カンタキサンチン、アスタキサンチン、ルテインなどを挙げることができる。
【0027】
なお、以下の説明では、特に断らない限り、上記脂溶性ビタミンおよびカロチノイドを併せて、「脂溶性ビタミン類」と称する。
【0028】
脂溶性ビタミン類は、医薬品をはじめ、食品や動物飼料など、幅広い分野で利用されているが、分子内にポリエン構造やキノン構造を有しているため不安定であり劣化しやすい。このため、脂溶性ビタミン類の粒子の表面が、被覆剤によって被覆されている。すなわち、脂溶性ビタミン類が被覆剤により被覆され、粒子状の脂溶性ビタミン類とすることにより安定化されている。
【0029】
本製造方法は、このような脂溶性ビタミン類の製造に特に好適である。
【0030】
以下の説明では、上記親油性化合物が上記脂溶性ビタミン類である場合を例に挙げて、本製造方法を説明する。
【0031】
本製造方法では、まず、脂溶性ビタミン類を分散した乳化分散液が、被覆剤に滴下される。これにより、乳化分散液の液滴表面が、被覆剤によって被覆される。
【0032】
被覆剤は、液滴中の乳化分散液の水分を効率よく吸収できる親水性の被覆剤である。これにより、乳化分散液から被覆剤に水分が移動するので、乾燥が容易になる。
【0033】
被覆剤としては、例えば、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マルトース、ラクトース、デンプンなどの室温で粉末状の糖類、ケイ酸、ステアリン酸、およびそれらの誘導体などを挙げることができる。ここで、デンプンとしては、例えば、馬鈴薯やトウモロコシなどから取得された生デンプンであってもよいし、例えば、酸化デンプン、アセチル化デンプン、メチル化デンプン、カルボキシメチル化デンプンなどの変性デンプンであってもよい。被覆剤は、1種類を用いてもよいし、複数の被覆剤を任意の割合で混合した混合物を用いてもよい。
【0034】
被覆剤の粒子径は、通常、200メッシュ(開口:74μm)の篩を通過する範囲である(JIS Z8801−1982の篩分析による)。
【0035】
被覆剤の使用量は、通常、乳化分散液の液量に対して、0.7〜15重量倍、好ましくは、2〜6重量倍の範囲である。
【0036】
なお、被覆剤は、親油性化合物の粉衣剤ということもできる。
【0037】
乳化分散液を被覆剤に滴下する方法としては、例えば、先端に有口針を備えたディスペンサーに上記乳化分散液を充填し、9.8kPa(ゲージ圧、0.1kgf/cm2G)以上、好ましくは、390〜800kPa(ゲージ圧、4〜8kgf/cm2G)程度の一定の圧力で加圧して押し出すことにより、被覆剤に滴下する方法が挙げられる。これにより、一定の粒子径を有する乳化分散液の液滴が、ディスペンサーの先端から、被覆剤に滴下することができる。すなわち、均一な粒子径の乳化分散液の液滴を得ることができる。
【0038】
液滴を生成するためにディスペンサーに加圧する圧力が9.8kPa以上であると、粒子の製造速度が向上する傾向にあることから好ましく、中でも、390kPa以上であると滴下口とほぼ同じ直径の粒子径を得ることができる。
【0039】
尚、800kPa以下であると、滴下した液滴同士が接触しにくい傾向があることから好ましい。
【0040】
また、滴下口と被覆剤との距離としては、通常、1〜1000mm程度、好ましくは、10〜300mm程度である。滴下口と被覆剤との距離が1mm以上であると、滴下口に被覆剤が付着することを抑制する傾向があることから好ましく、1000mm以下であると、滴下の際に液滴が塵芥などに付着することを抑制する傾向にあることから好ましい。
【0041】
また、乳化分散液は、厚さが10〜100mm程度、好ましくは20〜60mmの被覆剤に滴下することが好ましい。これにより、乳化分散液の液滴表面全体が、均一に被覆剤によって被覆させることができる。
【0042】
ここで、乳化分散液の作製方法について説明する。
【0043】
乳化分散液は、脂溶性ビタミン類を水などの親水性溶媒中に分散させることにより作製する。乳化分散液には、少なくとも脂溶性ビタミン類が分散されてればよいが、さらに、乳化剤、乳糖、ブドウ糖などの単糖類、マルトース、ラクトースなどの還元性少糖類、水飴、糖蜜などの還元性多糖類、油脂、酸化防止剤、などの添加剤が、さらに添加されていてもよい。
【0044】
上記乳化剤は、親油性化合物の乳化を促進するためのものである。乳化剤としては、例えば、ゼラチンなどを挙げることができる。
【0045】
上記ゼラチンとしては、酸処理ゼラチンであるタイプAおよびアルカリ処理ゼラチンであるタイプBが容易に入手することができるが、本製造方法では、どちらのタイプを使用してもよい。
【0046】
乳化剤の添加量は、通常、乳化分散液の合計量に対して5〜20重量%であり、脂溶性ビタミン類に対して、0.5〜1.5重量倍の範囲であることが好ましく、0.75〜1.5重量倍の範囲であることがより好ましい。
【0047】
乳化剤が上記範囲内であると、脂溶性ビタミン類が乳化分散液に分散しやすい傾向にあり、しかも経済的である。
【0048】
乳化分散剤に添加してもよい単糖類、還元性少糖類および還元性多糖類(以下、総称して還元性糖類という)は、ゼラチンなどのアミノ基とメイラード反応と呼ばれる架橋反応を起こし、マトリックスを形成して脂溶性ビタミン類を埋め込むことができることから好適に用いられる。還元性糖類は、還元性があればよく、被覆剤として用いられる糖類と同じ種類であってもよい。
【0049】
還元性糖類の添加量は、通常、脂溶性ビタミン類の重量に対して、0.7〜3重量倍の範囲が好ましい。
【0050】
乳化分散液における水の量は、通常、脂溶性ビタミン類の重量に対して、1〜10重量倍の範囲である。
【0051】
乳化分散液中の水分の大部分は、後述する乾燥によって除去される。このため、水が10重量倍以下であると、後続の乾燥時間を短縮することができる。例えば、従来の噴霧法における乳化分散液の濃度よりも、本製造方法における上記乳化分散液の濃度を高くすれば、乾燥時間が従来よりも短縮できる。
【0052】
また、上記油脂は、脂溶性ビタミンを溶解したり、乳化分散液の粘度を調整するための希釈剤として用いられる。油脂としては、例えば、ピーナッツ油、大豆油、菜種油、コーン油、グリセリンなどが挙げられる。油脂の添加量は、脂溶性ビタミン類の種類によって異なるが、通常、上記乳化分散液の合計量に対して、0.2〜15重量%であり、例えば、脂溶性ビタミンがビタミンAアセテートである場合、上記脂溶性ビタミン類の重量に対して、0.01〜0.75重量倍であることが好ましい。
【0053】
上記酸化防止剤は、親油性化合物が酸素に不安定な場合に、酸化による劣化を防止するために用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジt−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール(BHA)、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ2,2,4−トリメチルキノリン(エトキシキン)等が挙げられる。酸化防止剤の添加量は、通常、上記乳化分散液の合計量に対して、6〜30重量%であり、上記脂溶性ビタミン類の重量に対して、0.3〜1重量倍であることが好ましい。
【0054】
酸化防止剤が上記範囲内であると親油性化合物の酸化が低減される傾向にあることから好ましく、しかも経済的である。
【0055】
乳化分散液を調製する方法としては、例えば、乳化剤であるゼラチン水溶液に、脂溶性ビタミン類、必要に応じて、油脂、酸化防止剤などの添加剤を添加・混合して混合液を得た後、当該混合液をホモジナイザー等で乳化分散させて(すなわち乳濁化させて)上記乳化分散液を得る方法などが挙げられる。
【0056】
乳化分散液の調製を行う温度としては、通常、室温〜80℃程度、好ましくは、50℃〜70℃で実施される。上記温度が室温以上であると脂溶性ビタミン類の分散性が向上する傾向があり、50℃以上であると、乳化剤としてゼラチンを用いた場合にゼラチンが溶解されやすい傾向にあることから、一層好ましい。上記温度が80℃以下であると、熱による脂溶性ビタミン類の劣化が低減される傾向にあることから好ましい。
【0057】
続いて、乳化分散液に塩基を添加して、pHを6〜10に調整する。乳化剤としてゼラチンと還元性糖類を用い、上記乳化分散液のpHを調整することにより、メイラード反応と呼ばれる架橋反応が進行しやすい傾向があることから好ましい。塩基の添加は、上記乳化分散液の調製前(すなわち、上記混合液の段階)、上記乳化分散液の調製中、または乳化分散液の調製後、のいずれの段階で行ってもよい。乳化分散液の調製前(すなわち、上記混合液)の段階、または乳化分散液の調製後の段階でpHを調整する場合には、乳化分散液調製の条件を維持してpHの調整を行うことが好ましい。すなわち、乳化分散液のpHを調整する時の温度は、60℃を基準として、室温〜80℃で実施すればよく、50℃〜70℃であることが好ましい。この温度は、前記した混合液の調整、乳化液の調整の温度である室温〜80℃の範囲であることから、混合液の調製温度または乳化分散液の調製温度を著しく変化させることなく簡便にpHを調整することができる。
【0058】
上記塩基としては、乳化分散液中に含まれる脂溶性ビタミン類と反応して活性を低下させないものが好ましく、例えば、アンモニア、アンモニウム塩のなどが挙げられる。
【0059】
上記アンモニアとしては、気体のアンモニア、液体アンモニア、アンモニア水、アンモニウム塩等を挙げることができる。これらのうち、容易に取り扱うことできるアンモニア水が好ましい。
【0060】
なお、アンモニウム塩としては、ギ酸アンモニウム、などのカルボン酸アンモニウム塩、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等の水溶性アンモニウム塩などを挙げることができる。
【0061】
上記塩基の添加量は、上記乳化液のpHを6〜10に調整できればよい。塩基として、アンモニア水を使用した場合の添加量は、通常、上記脂溶性ビタミン類に対して、アンモニア換算で0.01〜1重量倍である。
【0062】
調整したpHの確認は、例えば、pHを調整した上記乳化液または混合液中に、pHメータ等のpH計測器を挿入することにより行うことができる。例えば、pH計測器で示されるpHを確認しながら、目的のpHまで、塩基を添加すればよい。
【0063】
このようにしてpHの調整を行った上記乳化分散液は、被覆剤に滴下される。
【0064】
乳化分散液を被覆剤に滴下する方法としては、例えば、先端に有口針を備えたディスペンサーに乳化分散液を充填し、該乳化分散液を一定の圧力で加圧して押し出すことにより、被覆剤に滴下する方法が挙げられる。これにより、乳化分散液の液滴が、ディスペンサーの先端から、上記被覆剤に滴下できる。
【0065】
図1を用いて、より詳細に説明すると以下の通りである。図1は、本製造方法を実施するのに好適な製造装置である。この製造装置は、ディスペンサー1、加圧用ボンベ5、フィーダー7、篩10を備えている。
【0066】
ディスペンサー(滴下手段)1には、上記乳化分散液2が充填されており、乳化分散液2を滴下する。フィーダー(供給手段)7は、上記被覆剤8を連続的に一定量、ベルト(搬送手段)9上に供給する。なお、ベルト9は、フィーダー7から供給される被覆剤を振動させながら水平方向に搬送する。
【0067】
ディスペンサー1に充填された乳化分散液2は、調節弁6により、加圧用ボンベ5の窒素の量を制御してディスペンサー1が加圧されると、ディスペンサー1の先端に備えられた有口針(滴下口)3から乳化分散液2の液滴が下方の被覆剤8に滴下される。この乳化分散液2の液滴の粒子径は、有口針3の直径と同じになるので、常に均一な粒子径の液滴を被覆剤8に滴下できる。つまり、有口針3の直径を選択することにより、目的とする被覆粒子4の粒子径を調節できる。
【0068】
また、有口針3と被覆剤8との距離としては、通常、1〜1000mm程度、好ましくは、10〜300mmである。有口針3と被覆剤8との距離が1mm以上であると、滴下口に被覆剤が付着することを抑制する傾向があることから好ましく、1000mm以下であると、滴下の際の塵芥などの付着が低減される傾向にあることから好ましい。
【0069】
ディスペンサー1を加圧する圧力としては、9.8kPa(ゲージ圧、0.1kgf/cm2G)以上である。中でも、390〜800kPa(ゲージ圧、4〜8kgf/cm2G)にて加圧することにより、有口針の直径とほぼ同一の直径の液滴を得ることができることから好ましい。
【0070】
有口針3の直径は、目的とする粒子の粒子径に合わせて、適宜設定すればよい。医薬品や食品の材料として粒子を製造する場合、有口針3の直径は直径1mm以下、好ましくは0.1〜0.6mmである。
【0071】
乳化分散液2の液滴が被覆剤8に滴下されると、乳化分散液2の液滴表面は、被覆剤8によって被覆され被覆粒子4となる。すなわち、被覆粒子4は、乳化分散液2層が被覆剤8層に覆われた2層構造となっている。ここで、乳化分散液2層中の水分は、親水性である被覆剤8層に移動する。また、乳化分散液2の水分は、ベルト9上を移動する間にも、過剰の被覆剤8にも移動する。つまり、篩10によって分離される被覆粒子4の水分量は滴下直後よりも少なくなっている。
【0072】
なお、有口針3から乳化分散液2が被覆剤8に滴下されると液滴表面がすぐに被覆剤8によって被覆されるので、被覆粒子4同士が付着することはない。また、被覆剤8は、篩10に向かって移動するベルト9に供給されているので、ベルト9の移動による小さな振動により、乳化分散液2の液滴表面全体が均一に被覆剤8によって被覆される。被覆粒子4の表面全体が被覆剤8によって被覆されていない場合は、被覆されるように被覆剤8をさらに添加すればよい。
【0073】
なお、乳化分散液2の液滴表面全体を均一に被覆剤8によって被覆させることができる被覆剤の厚みとしては、10〜100mm、好ましくは20〜60mmである。
【0074】
このような被覆粒子4は、ベルト9の移動と共に篩10へ移動する。篩10では、過剰の被覆剤8と被覆粒子4とが分離される。被覆粒子4は、後続する乾燥工程で、被覆剤8層中の水分が乾燥される。一方、過剰の被覆剤8は、再利用できる。
【0075】
なお、図1では、被覆剤8をベルト9に拡散して被覆床を形成している。その他にも、例えば、金属またはプラスチック製の円形、四角形のパン(トレイ)、回転駆動部を付属する円形パンに、上記被覆剤を拡散して被覆床を形成してもよい。被覆床の形式は、通常は図1のように、簡便なベルト形式を用いる。ベルト9は、例えば、緩やかに移動可能な幅50〜1800mmとすればよい。
【0076】
乾燥方法としては、静置乾燥法、通風乾燥法、減圧乾燥法などが例示され、乾燥温度としては、通常、40〜140℃程度であり、乾燥時間としては、5分〜1時間程度である。脂溶性ビタミン類の安定性を考慮すれば、通常、乾燥温度が高いほど短い時間で乾燥を実施し、乾燥温度が低いと長い時間で乾燥を実施する。
【0077】
以上のように、本製造方法によれば、有口針3の直径を選択して乳化分散液2を被覆剤8に滴下することにより、均一な粒子径の脂溶性ビタミン類を含有する粒子を製造することができる。また、従来の噴霧法のように大型の噴霧槽が不要であり、コンパクトな製造装置とすることができるので、少量多品種の親油性化合物粒子を製造するために特に適している。
【0078】
このようにして製造された親油性化合物を含有する粒子は、熱水中でも崩壊しない。ここで、上記「熱水中でも崩壊」しないとは、製造された親油性化合物を含有する粒子を熱水(60℃)に添加して1分経過後も、熱水中に上記親油性化合物が溶出しないことを示す。
【0079】
以上、親油性化合物として脂溶性ビタミン類の製造方法を例にあげて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、脂溶性ビタミン類以外の親油性化合物を製造する場合、乳化分散剤の組成(添加剤の種類や量)および調製条件、ディスペンサーの有口径の直径、ディスペンサーからの押し出し圧力、などは、親油性化合物の種類によって適宜設定すればよい。
【0080】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0081】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例中の「部」および「%」は、それぞれ、「重量部」および「重量%」を示す。
【0082】
〔実施例1〕
ゼラチン(タイプB、100ブルーム)4.4部と、水40部との混合物に、水あめ(固形分85%)10部を添加し、60℃で混合した。得られた混合液に、加熱溶解したビタミンAアセテート4部(290万IU/g)、植物油0.8部およびBHT2部を添加・混合し、混合物を得た。この混合物に28%アンモニア水(0.1mL)を添加して、混合物の溶液のpHを8.4に調整した後、ホモジナイザーを用いて60℃で2分間乳濁化し、ビタミンAアセテートを含有する乳化液を得た。得られた乳化液をディスペンサーニードル(口径0.5mm)を用いて、588kPa(ゲージ圧、6kgf/cm2G)で加圧して、被覆剤としてトウモロコシデンプンを厚さ20mmとなるように広げた、幅150mmのベルト上に、ベルトから200mmの高さから押し出した。なお被覆剤を広げたベルトは、手で小刻みに振動させた。これにより、乳化液の液滴の表面がトウモロコシデンプンで被覆されてなる微粒子が得られた。この微粒子を130℃の乾燥機を用いて5分間加熱処理を行い、ビタミンAアセテート含有粒子(粉末状)(ビタミンAアセテートの含有量52IU/g)14部を得た。得られた粒子(粉末状)を顕微鏡観察した結果、平均粒径は500μmであり、ディスペンサーニードルの口径とほぼ同じに保たれた。
【0083】
なお、加熱処理において、過剰に用いたトウモロコシデンプンの粒子は乾燥空気流によって除去された。また、最終的に得られた粒子(粉末状)を水に入れ、1分間熱水に浸析したが、粒状体はわずかに膨潤しただけで、形状は保持され、ビタミンAアセテートの熱水への溶出は認めなかった。
【0084】
〔実施例2〕
ゼラチン(タイプB、100ブルーム)4.4部と、水40部との混合物に、水あめ(固形分85%)10部を添加し、60℃で混合した。得られた混合液に、加熱溶解したビタミンAアセテート4部(290万IU/g)、植物0.8部およびBHT2部を添加・混合し、混合物を得た。この混合物に28%アンモニア水(0.1mL)を添加して、混合物の溶液のpHを8.4に調整した後、ホモジナイザーを用いて60℃で2分間乳濁化し、ビタミンAアセテートを含有する乳化液を得た。得られた乳化液をディスペンサーニードル(口径0.3mm)を用いて、588kPa(ゲージ圧、6kgf/cm2G)で加圧して、被覆剤としてトウモロコシデンプンを広げた厚さ20mm、幅150mmのベルト上に、ベルトから200mmの高さから押し出した。なお被覆剤を広げたベルトは、手で小刻みに振動させた。これにより、乳化液の液滴の表面がトウモロコシデンプンで被覆されてなる微粒子が得られた。この微粒子を、乾燥機を用いて130℃で5分間加熱処理を行い、ビタミンAアセテート含有粒子(粉末状)(ビタミンAアセテートの含有量52IU/g)8部を得た。得られた粒子(粉末状)を顕微鏡観察した結果、平均粒径は目的とする300μmであり、ディスペンサーニードルの口径とほぼ同じに保たれた。
【0085】
【発明の効果】
以上のように、本発明の親油性化合物を含有する粒子の製造方法は、親油性化合物が分散された乳化分散液の液滴表面を、親水性の被覆剤により被覆して被覆粒子を形成し、前記被覆粒子を加熱して乾燥する親油性化合物を含有する粒子の製造方法であって、上記乳化分散液は、上記被覆剤に滴下される構成である。
【0086】
また、本発明の親油性化合物を含有する粒子の製造装置は、親水性の被覆剤を供給する供給手段と、該供給手段から供給される被覆剤を振動させながら水平方向に搬送する搬送手段と、該搬送手段にて搬送される被覆剤に、親油性化合物が分散された乳化分散液を滴下する滴下手段とを備えている構成である。
【0087】
それゆえ、ほぼ均一な粒子径で、粒子径分布がほぼ単一な乳化分散液を滴下できるので、均一な粒子径の親油性化合物を含有する粒子を製造することができる。また、被覆剤によって親油性化合物が保護されているので、例えば、光、熱、または酸素などに不安定な脂溶性ビタミンやカロチノイドであっても、安定性が向上した粒子として製造できる。このような粒子は、医薬品や食品などの分野で幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる親油性化合物を含有する粒子の製造装置の概略構成を示す正面図である。
【符号の説明】
1 ディスペンサー(滴下手段)
2 乳化分散液
3 有口針(滴下口)
4 被覆粒子
5 加圧ボンベ
6 調整弁
7 フィーダー(供給手段)
8 被覆剤
9 ベルト(搬送手段)
10 篩
【発明の属する技術分野】
本発明は、親油性化合物を含有する粒子の製造方法および製造装置に関し、特に、医薬品や食品の添加物として利用されている光、熱、または酸素などにより劣化しやすい脂溶性ビタミンおよびカロチノイドなどの脂溶性ビタミン類を含有する乾燥粒子の製造に好適に利用できる脂溶性ビタミン類の製造方法および製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ビタミンA誘導体であるビタミンAアセテートをはじめとする脂溶性ビタミンやβ−カロチンなどのカロチノイドは、医薬品、動物飼料、および食品の添加剤をして幅広く利用されている。しかし、脂溶性ビタミンやカロチノイドは、光、熱、または酸素などの影響で容易に劣化し、活性が低下しやすい化合物である。
【0003】
このため、医薬品、動物飼料、および食品として製造・加工される条件でも、脂溶性ビタミンやカロチノイドの活性を維持させるために、一般的には、脂溶性ビタミンやカロチノイドが、還元性糖類とゼラチンとからなるマトリックスに埋め込まれた形の粒子として製造される。
【0004】
従来、このような粒子の製造方法として、噴霧法による製造方法が数多く開発されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
具体的には、特許文献1に記載の製造方法では、噴霧槽内の上方から下方へ被覆剤を含む気体を対流させると共に、脂溶性ビタミンやカロチノイドを分散し、糖類とゼラチンとを含む乳化分散液を噴霧槽内に噴霧している。これによって、前記乳化分散液の液滴表面から水分が被覆剤に移動したのち、ただちに、乾燥させることによって水分が除去されるとともに、乾燥時の加熱によって還元性糖類とゼラチンがマトリックスを生成して脂溶性ビタミンやカロチノイドを埋め込み、内部にマトリックス、外部に被覆剤を有する乾燥粒子を製造している。
【0006】
このように、光、熱、または酸素などに不安定な脂溶性ビタミンやカロチノイドは、マトリックスと被覆剤で保護することにより、安定な粒子として製造されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−158063号公報(公開日1997年11月26日)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、噴霧法によって乾燥粒子を製造すると、均一な粒子径の粒子を製造することができないという問題点を有している。これは、乳化分散液を噴霧槽内で噴霧するために、粒子径に分布を持つ液滴が生成する上、さらに、噴霧した液滴同士が付着して、得られる乾燥粒子の粒子径が制御できないためであると考えられる。
【0009】
そこで、本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、例えば、光、熱、または酸素などに不安定な脂溶性ビタミンやカロチノイドなどの親油性化合物を含有する粒子を、均一な粒子径で製造する方法およびを当該粒子の製造装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の親油性化合物を含有する粒子の製造方法は、上記の課題を解決するために、親油性化合物が分散された乳化分散液の液滴表面を、親水性の被覆剤により被覆して被覆粒子を形成した後、該被覆粒子を乾燥する、親油性化合物を含有する粒子の製造方法であって、上記乳化分散液を、上記被覆剤に滴下することを特徴としている。
【0011】
上記の方法によれば、親油性化合物が分散された乳化分散液が、被覆剤に滴下される。滴下される乳化分散液は親油性が大きく、被覆剤は親水性であるので、滴下された乳化分散液は、表面張力により被覆剤上で球状の液滴となる。つまり、乳化分散液は、均一な粒子径の液滴として被覆剤に滴下される。滴下された液滴の表面は、被覆剤によって被覆される。すなわち、乳化分散液層の表面が被覆剤層で覆われた被覆粒子が形成される。被覆剤は親水性であるので、被覆粒子では、乳化分散液層の水分が被覆剤層へ移動して吸収される。被覆剤層に移動した水分を乾燥することによって、球状、すなわち均一な粒子径の親油性化合物を含有する粒子を確実に製造することができる。
【0012】
本発明の粒子の製造方法において、上記被覆剤を振動させながら乳化分散液を滴下してもよい。これにより、乳化分散液の液滴の表面を、確実に被覆剤によって被覆することができる。
【0013】
また、本発明の粒子の製造方法において、上記の構成に加えて、被覆剤を水平方向に移動させながら乳化分散液を滴下してもよい。これにより、乳化分散液の液滴の表面を、一層確実に被覆剤によって被覆することができる。
【0014】
本発明の粒子の製造方法において、上記親油性化合物は、脂溶性ビタミンおよび/またはカロチノイドであってもよい。これにより、光、熱、または酸素などに不安定な脂溶性ビタミンおよび/またはカロチノイドを含有する粒子を、安定な粒子として提供できる。この粒子は、医薬品、食品、動物飼料などに利用できる。
【0015】
本発明の粒子の製造方法において、上記被覆剤は、粉末状の糖類、ケイ酸またはステアリン酸から選ばれる少なくとも1種類の化合物であってもよい。粉末状の糖類、ケイ酸またはステアリン酸は、医薬品や食品の添加物として利用される。したがって、例えば、被覆剤を上記のようにすると、医薬品や食品などとして利用できる粒子を製造できる。
【0016】
本発明の粒子の製造方法において、上記乳化分散液は、アミノ基を有する乳化剤と、還元性糖類とを含んでいてもよい。これにより、アミノ基と還元性糖類とのメイラード反応が進行しやすくなり、マトリックスが形成される。その結果、マトリックスに、親油性化合物を埋め込むことができる。それゆえ、光、熱または酸素などにより不安定な親油性化合物を、マトリックスによっても保護することができる。
【0017】
乳化剤は、ゼラチンであってもよい。これにより、容易にマトリックスに、親油性化合物を埋め込むことができ、不安定な親油性化合物を、マトリックスによっても保護することができる。
【0018】
本発明の親油性化合物を含有する粒子の製造装置は、上記の課題を解決するために、親水性の被覆剤を供給する供給手段と、該供給手段から供給される被覆剤を振動させながら水平方向に搬送する搬送手段と、該搬送手段にて搬送される被覆剤に、親油性化合物が分散された乳化分散液を滴下する滴下手段とを備えていることを特徴としている。
【0019】
上記の構成によれば、滴下手段から親水性化合物を含有する乳化分散液が、供給手段から供給される親水性の被覆剤上または被覆剤中に滴下される。供給手段から供給される被覆剤は、搬送手段によって振動させながら水平方向に搬送されるので、滴下手段から滴下された乳化分散液の液滴の表面は、被覆剤によって被覆された被覆粒子を形成する。さらに、搬送されている間、被覆粒子中の水分は、被覆剤によって吸収される。このようにして、親油性化合物が被覆剤によって保護された均一な粒子径の粒子を提供することができる。
【0020】
本発明の粒子の製造装置において、上記滴下手段は、直径1mm以下の滴下口から乳化分散液を滴下してもよい。これにより、ほぼ均一な粒子径の乳化分散液を滴下することができ、得られる粒子の粒子径分布をほぼ単一にすることができる。さらに、1mm以下の小さい粒子径の粒子を製造できるので、該粒子は、水分量が少なくなる。その結果、この粒子を短時間で速やかに乾燥したり、マトリックスを形成することができ、結果として、粒子に含有される親油性化合物の光や熱に対する安定性が向上する。
【0021】
本発明の粒子の製造装置において、上記滴下手段は、9.8kPa(ゲージ圧)以上、すなわち0.1kgf/cm2G以上に加圧されて上記乳化分散液を滴下してもよい。このように、9.8kPa以上の一定の圧力で乳化分散液を滴下すれば、一定の粒子径の乳化分散液を滴下することができる。すなわち、均一な粒子径の乳化分散液の液滴を得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について、以下に説明する。
【0023】
本発明の親油性化合物を含有する粒子の製造方法(以下、「本製造方法」と称する)は、親油性化合物を分散させた乳化分散液を、粉末状、粒状などの固形の親水性被覆剤に滴下することにより、前記乳化分散液の液滴表面を前記被覆剤によって被覆する方法である。
【0024】
親油性化合物は、例えば、熱、酸素、光などに対して不安定な化合物が挙げられ、具体的には、脂溶性ビタミンやカロチノイドなどが例示される。
【0025】
脂溶性ビタミンとしては、例えば、ビタミンAアセテート、ビタミンAパルミテート、ビタミンA(レチノール)、ビタミンAアルデヒド(レチナール)、ビタミンA酸(レチノイン酸)またはこれらの誘導体などのビタミンA類;コレカルシフェロール(ビタミンD3)、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、1α、25−ジヒドロキシコレカルシフェロール(活性型ビタミンD3)、またはこれらの誘導体などのビタミンD類;α−トコフェロール、5,7,8−トリメチルトコトリエノールなどのビタミンE類;2−ファルネシル−3−メチル1,4−ナフトキノン(ビタミンK3)などのビタミンK類などを挙げることができる。
【0026】
また、カロチノイドとしては、β−カロチン、カンタキサンチン、アスタキサンチン、ルテインなどを挙げることができる。
【0027】
なお、以下の説明では、特に断らない限り、上記脂溶性ビタミンおよびカロチノイドを併せて、「脂溶性ビタミン類」と称する。
【0028】
脂溶性ビタミン類は、医薬品をはじめ、食品や動物飼料など、幅広い分野で利用されているが、分子内にポリエン構造やキノン構造を有しているため不安定であり劣化しやすい。このため、脂溶性ビタミン類の粒子の表面が、被覆剤によって被覆されている。すなわち、脂溶性ビタミン類が被覆剤により被覆され、粒子状の脂溶性ビタミン類とすることにより安定化されている。
【0029】
本製造方法は、このような脂溶性ビタミン類の製造に特に好適である。
【0030】
以下の説明では、上記親油性化合物が上記脂溶性ビタミン類である場合を例に挙げて、本製造方法を説明する。
【0031】
本製造方法では、まず、脂溶性ビタミン類を分散した乳化分散液が、被覆剤に滴下される。これにより、乳化分散液の液滴表面が、被覆剤によって被覆される。
【0032】
被覆剤は、液滴中の乳化分散液の水分を効率よく吸収できる親水性の被覆剤である。これにより、乳化分散液から被覆剤に水分が移動するので、乾燥が容易になる。
【0033】
被覆剤としては、例えば、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マルトース、ラクトース、デンプンなどの室温で粉末状の糖類、ケイ酸、ステアリン酸、およびそれらの誘導体などを挙げることができる。ここで、デンプンとしては、例えば、馬鈴薯やトウモロコシなどから取得された生デンプンであってもよいし、例えば、酸化デンプン、アセチル化デンプン、メチル化デンプン、カルボキシメチル化デンプンなどの変性デンプンであってもよい。被覆剤は、1種類を用いてもよいし、複数の被覆剤を任意の割合で混合した混合物を用いてもよい。
【0034】
被覆剤の粒子径は、通常、200メッシュ(開口:74μm)の篩を通過する範囲である(JIS Z8801−1982の篩分析による)。
【0035】
被覆剤の使用量は、通常、乳化分散液の液量に対して、0.7〜15重量倍、好ましくは、2〜6重量倍の範囲である。
【0036】
なお、被覆剤は、親油性化合物の粉衣剤ということもできる。
【0037】
乳化分散液を被覆剤に滴下する方法としては、例えば、先端に有口針を備えたディスペンサーに上記乳化分散液を充填し、9.8kPa(ゲージ圧、0.1kgf/cm2G)以上、好ましくは、390〜800kPa(ゲージ圧、4〜8kgf/cm2G)程度の一定の圧力で加圧して押し出すことにより、被覆剤に滴下する方法が挙げられる。これにより、一定の粒子径を有する乳化分散液の液滴が、ディスペンサーの先端から、被覆剤に滴下することができる。すなわち、均一な粒子径の乳化分散液の液滴を得ることができる。
【0038】
液滴を生成するためにディスペンサーに加圧する圧力が9.8kPa以上であると、粒子の製造速度が向上する傾向にあることから好ましく、中でも、390kPa以上であると滴下口とほぼ同じ直径の粒子径を得ることができる。
【0039】
尚、800kPa以下であると、滴下した液滴同士が接触しにくい傾向があることから好ましい。
【0040】
また、滴下口と被覆剤との距離としては、通常、1〜1000mm程度、好ましくは、10〜300mm程度である。滴下口と被覆剤との距離が1mm以上であると、滴下口に被覆剤が付着することを抑制する傾向があることから好ましく、1000mm以下であると、滴下の際に液滴が塵芥などに付着することを抑制する傾向にあることから好ましい。
【0041】
また、乳化分散液は、厚さが10〜100mm程度、好ましくは20〜60mmの被覆剤に滴下することが好ましい。これにより、乳化分散液の液滴表面全体が、均一に被覆剤によって被覆させることができる。
【0042】
ここで、乳化分散液の作製方法について説明する。
【0043】
乳化分散液は、脂溶性ビタミン類を水などの親水性溶媒中に分散させることにより作製する。乳化分散液には、少なくとも脂溶性ビタミン類が分散されてればよいが、さらに、乳化剤、乳糖、ブドウ糖などの単糖類、マルトース、ラクトースなどの還元性少糖類、水飴、糖蜜などの還元性多糖類、油脂、酸化防止剤、などの添加剤が、さらに添加されていてもよい。
【0044】
上記乳化剤は、親油性化合物の乳化を促進するためのものである。乳化剤としては、例えば、ゼラチンなどを挙げることができる。
【0045】
上記ゼラチンとしては、酸処理ゼラチンであるタイプAおよびアルカリ処理ゼラチンであるタイプBが容易に入手することができるが、本製造方法では、どちらのタイプを使用してもよい。
【0046】
乳化剤の添加量は、通常、乳化分散液の合計量に対して5〜20重量%であり、脂溶性ビタミン類に対して、0.5〜1.5重量倍の範囲であることが好ましく、0.75〜1.5重量倍の範囲であることがより好ましい。
【0047】
乳化剤が上記範囲内であると、脂溶性ビタミン類が乳化分散液に分散しやすい傾向にあり、しかも経済的である。
【0048】
乳化分散剤に添加してもよい単糖類、還元性少糖類および還元性多糖類(以下、総称して還元性糖類という)は、ゼラチンなどのアミノ基とメイラード反応と呼ばれる架橋反応を起こし、マトリックスを形成して脂溶性ビタミン類を埋め込むことができることから好適に用いられる。還元性糖類は、還元性があればよく、被覆剤として用いられる糖類と同じ種類であってもよい。
【0049】
還元性糖類の添加量は、通常、脂溶性ビタミン類の重量に対して、0.7〜3重量倍の範囲が好ましい。
【0050】
乳化分散液における水の量は、通常、脂溶性ビタミン類の重量に対して、1〜10重量倍の範囲である。
【0051】
乳化分散液中の水分の大部分は、後述する乾燥によって除去される。このため、水が10重量倍以下であると、後続の乾燥時間を短縮することができる。例えば、従来の噴霧法における乳化分散液の濃度よりも、本製造方法における上記乳化分散液の濃度を高くすれば、乾燥時間が従来よりも短縮できる。
【0052】
また、上記油脂は、脂溶性ビタミンを溶解したり、乳化分散液の粘度を調整するための希釈剤として用いられる。油脂としては、例えば、ピーナッツ油、大豆油、菜種油、コーン油、グリセリンなどが挙げられる。油脂の添加量は、脂溶性ビタミン類の種類によって異なるが、通常、上記乳化分散液の合計量に対して、0.2〜15重量%であり、例えば、脂溶性ビタミンがビタミンAアセテートである場合、上記脂溶性ビタミン類の重量に対して、0.01〜0.75重量倍であることが好ましい。
【0053】
上記酸化防止剤は、親油性化合物が酸素に不安定な場合に、酸化による劣化を防止するために用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジt−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール(BHA)、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ2,2,4−トリメチルキノリン(エトキシキン)等が挙げられる。酸化防止剤の添加量は、通常、上記乳化分散液の合計量に対して、6〜30重量%であり、上記脂溶性ビタミン類の重量に対して、0.3〜1重量倍であることが好ましい。
【0054】
酸化防止剤が上記範囲内であると親油性化合物の酸化が低減される傾向にあることから好ましく、しかも経済的である。
【0055】
乳化分散液を調製する方法としては、例えば、乳化剤であるゼラチン水溶液に、脂溶性ビタミン類、必要に応じて、油脂、酸化防止剤などの添加剤を添加・混合して混合液を得た後、当該混合液をホモジナイザー等で乳化分散させて(すなわち乳濁化させて)上記乳化分散液を得る方法などが挙げられる。
【0056】
乳化分散液の調製を行う温度としては、通常、室温〜80℃程度、好ましくは、50℃〜70℃で実施される。上記温度が室温以上であると脂溶性ビタミン類の分散性が向上する傾向があり、50℃以上であると、乳化剤としてゼラチンを用いた場合にゼラチンが溶解されやすい傾向にあることから、一層好ましい。上記温度が80℃以下であると、熱による脂溶性ビタミン類の劣化が低減される傾向にあることから好ましい。
【0057】
続いて、乳化分散液に塩基を添加して、pHを6〜10に調整する。乳化剤としてゼラチンと還元性糖類を用い、上記乳化分散液のpHを調整することにより、メイラード反応と呼ばれる架橋反応が進行しやすい傾向があることから好ましい。塩基の添加は、上記乳化分散液の調製前(すなわち、上記混合液の段階)、上記乳化分散液の調製中、または乳化分散液の調製後、のいずれの段階で行ってもよい。乳化分散液の調製前(すなわち、上記混合液)の段階、または乳化分散液の調製後の段階でpHを調整する場合には、乳化分散液調製の条件を維持してpHの調整を行うことが好ましい。すなわち、乳化分散液のpHを調整する時の温度は、60℃を基準として、室温〜80℃で実施すればよく、50℃〜70℃であることが好ましい。この温度は、前記した混合液の調整、乳化液の調整の温度である室温〜80℃の範囲であることから、混合液の調製温度または乳化分散液の調製温度を著しく変化させることなく簡便にpHを調整することができる。
【0058】
上記塩基としては、乳化分散液中に含まれる脂溶性ビタミン類と反応して活性を低下させないものが好ましく、例えば、アンモニア、アンモニウム塩のなどが挙げられる。
【0059】
上記アンモニアとしては、気体のアンモニア、液体アンモニア、アンモニア水、アンモニウム塩等を挙げることができる。これらのうち、容易に取り扱うことできるアンモニア水が好ましい。
【0060】
なお、アンモニウム塩としては、ギ酸アンモニウム、などのカルボン酸アンモニウム塩、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等の水溶性アンモニウム塩などを挙げることができる。
【0061】
上記塩基の添加量は、上記乳化液のpHを6〜10に調整できればよい。塩基として、アンモニア水を使用した場合の添加量は、通常、上記脂溶性ビタミン類に対して、アンモニア換算で0.01〜1重量倍である。
【0062】
調整したpHの確認は、例えば、pHを調整した上記乳化液または混合液中に、pHメータ等のpH計測器を挿入することにより行うことができる。例えば、pH計測器で示されるpHを確認しながら、目的のpHまで、塩基を添加すればよい。
【0063】
このようにしてpHの調整を行った上記乳化分散液は、被覆剤に滴下される。
【0064】
乳化分散液を被覆剤に滴下する方法としては、例えば、先端に有口針を備えたディスペンサーに乳化分散液を充填し、該乳化分散液を一定の圧力で加圧して押し出すことにより、被覆剤に滴下する方法が挙げられる。これにより、乳化分散液の液滴が、ディスペンサーの先端から、上記被覆剤に滴下できる。
【0065】
図1を用いて、より詳細に説明すると以下の通りである。図1は、本製造方法を実施するのに好適な製造装置である。この製造装置は、ディスペンサー1、加圧用ボンベ5、フィーダー7、篩10を備えている。
【0066】
ディスペンサー(滴下手段)1には、上記乳化分散液2が充填されており、乳化分散液2を滴下する。フィーダー(供給手段)7は、上記被覆剤8を連続的に一定量、ベルト(搬送手段)9上に供給する。なお、ベルト9は、フィーダー7から供給される被覆剤を振動させながら水平方向に搬送する。
【0067】
ディスペンサー1に充填された乳化分散液2は、調節弁6により、加圧用ボンベ5の窒素の量を制御してディスペンサー1が加圧されると、ディスペンサー1の先端に備えられた有口針(滴下口)3から乳化分散液2の液滴が下方の被覆剤8に滴下される。この乳化分散液2の液滴の粒子径は、有口針3の直径と同じになるので、常に均一な粒子径の液滴を被覆剤8に滴下できる。つまり、有口針3の直径を選択することにより、目的とする被覆粒子4の粒子径を調節できる。
【0068】
また、有口針3と被覆剤8との距離としては、通常、1〜1000mm程度、好ましくは、10〜300mmである。有口針3と被覆剤8との距離が1mm以上であると、滴下口に被覆剤が付着することを抑制する傾向があることから好ましく、1000mm以下であると、滴下の際の塵芥などの付着が低減される傾向にあることから好ましい。
【0069】
ディスペンサー1を加圧する圧力としては、9.8kPa(ゲージ圧、0.1kgf/cm2G)以上である。中でも、390〜800kPa(ゲージ圧、4〜8kgf/cm2G)にて加圧することにより、有口針の直径とほぼ同一の直径の液滴を得ることができることから好ましい。
【0070】
有口針3の直径は、目的とする粒子の粒子径に合わせて、適宜設定すればよい。医薬品や食品の材料として粒子を製造する場合、有口針3の直径は直径1mm以下、好ましくは0.1〜0.6mmである。
【0071】
乳化分散液2の液滴が被覆剤8に滴下されると、乳化分散液2の液滴表面は、被覆剤8によって被覆され被覆粒子4となる。すなわち、被覆粒子4は、乳化分散液2層が被覆剤8層に覆われた2層構造となっている。ここで、乳化分散液2層中の水分は、親水性である被覆剤8層に移動する。また、乳化分散液2の水分は、ベルト9上を移動する間にも、過剰の被覆剤8にも移動する。つまり、篩10によって分離される被覆粒子4の水分量は滴下直後よりも少なくなっている。
【0072】
なお、有口針3から乳化分散液2が被覆剤8に滴下されると液滴表面がすぐに被覆剤8によって被覆されるので、被覆粒子4同士が付着することはない。また、被覆剤8は、篩10に向かって移動するベルト9に供給されているので、ベルト9の移動による小さな振動により、乳化分散液2の液滴表面全体が均一に被覆剤8によって被覆される。被覆粒子4の表面全体が被覆剤8によって被覆されていない場合は、被覆されるように被覆剤8をさらに添加すればよい。
【0073】
なお、乳化分散液2の液滴表面全体を均一に被覆剤8によって被覆させることができる被覆剤の厚みとしては、10〜100mm、好ましくは20〜60mmである。
【0074】
このような被覆粒子4は、ベルト9の移動と共に篩10へ移動する。篩10では、過剰の被覆剤8と被覆粒子4とが分離される。被覆粒子4は、後続する乾燥工程で、被覆剤8層中の水分が乾燥される。一方、過剰の被覆剤8は、再利用できる。
【0075】
なお、図1では、被覆剤8をベルト9に拡散して被覆床を形成している。その他にも、例えば、金属またはプラスチック製の円形、四角形のパン(トレイ)、回転駆動部を付属する円形パンに、上記被覆剤を拡散して被覆床を形成してもよい。被覆床の形式は、通常は図1のように、簡便なベルト形式を用いる。ベルト9は、例えば、緩やかに移動可能な幅50〜1800mmとすればよい。
【0076】
乾燥方法としては、静置乾燥法、通風乾燥法、減圧乾燥法などが例示され、乾燥温度としては、通常、40〜140℃程度であり、乾燥時間としては、5分〜1時間程度である。脂溶性ビタミン類の安定性を考慮すれば、通常、乾燥温度が高いほど短い時間で乾燥を実施し、乾燥温度が低いと長い時間で乾燥を実施する。
【0077】
以上のように、本製造方法によれば、有口針3の直径を選択して乳化分散液2を被覆剤8に滴下することにより、均一な粒子径の脂溶性ビタミン類を含有する粒子を製造することができる。また、従来の噴霧法のように大型の噴霧槽が不要であり、コンパクトな製造装置とすることができるので、少量多品種の親油性化合物粒子を製造するために特に適している。
【0078】
このようにして製造された親油性化合物を含有する粒子は、熱水中でも崩壊しない。ここで、上記「熱水中でも崩壊」しないとは、製造された親油性化合物を含有する粒子を熱水(60℃)に添加して1分経過後も、熱水中に上記親油性化合物が溶出しないことを示す。
【0079】
以上、親油性化合物として脂溶性ビタミン類の製造方法を例にあげて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、脂溶性ビタミン類以外の親油性化合物を製造する場合、乳化分散剤の組成(添加剤の種類や量)および調製条件、ディスペンサーの有口径の直径、ディスペンサーからの押し出し圧力、などは、親油性化合物の種類によって適宜設定すればよい。
【0080】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0081】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例中の「部」および「%」は、それぞれ、「重量部」および「重量%」を示す。
【0082】
〔実施例1〕
ゼラチン(タイプB、100ブルーム)4.4部と、水40部との混合物に、水あめ(固形分85%)10部を添加し、60℃で混合した。得られた混合液に、加熱溶解したビタミンAアセテート4部(290万IU/g)、植物油0.8部およびBHT2部を添加・混合し、混合物を得た。この混合物に28%アンモニア水(0.1mL)を添加して、混合物の溶液のpHを8.4に調整した後、ホモジナイザーを用いて60℃で2分間乳濁化し、ビタミンAアセテートを含有する乳化液を得た。得られた乳化液をディスペンサーニードル(口径0.5mm)を用いて、588kPa(ゲージ圧、6kgf/cm2G)で加圧して、被覆剤としてトウモロコシデンプンを厚さ20mmとなるように広げた、幅150mmのベルト上に、ベルトから200mmの高さから押し出した。なお被覆剤を広げたベルトは、手で小刻みに振動させた。これにより、乳化液の液滴の表面がトウモロコシデンプンで被覆されてなる微粒子が得られた。この微粒子を130℃の乾燥機を用いて5分間加熱処理を行い、ビタミンAアセテート含有粒子(粉末状)(ビタミンAアセテートの含有量52IU/g)14部を得た。得られた粒子(粉末状)を顕微鏡観察した結果、平均粒径は500μmであり、ディスペンサーニードルの口径とほぼ同じに保たれた。
【0083】
なお、加熱処理において、過剰に用いたトウモロコシデンプンの粒子は乾燥空気流によって除去された。また、最終的に得られた粒子(粉末状)を水に入れ、1分間熱水に浸析したが、粒状体はわずかに膨潤しただけで、形状は保持され、ビタミンAアセテートの熱水への溶出は認めなかった。
【0084】
〔実施例2〕
ゼラチン(タイプB、100ブルーム)4.4部と、水40部との混合物に、水あめ(固形分85%)10部を添加し、60℃で混合した。得られた混合液に、加熱溶解したビタミンAアセテート4部(290万IU/g)、植物0.8部およびBHT2部を添加・混合し、混合物を得た。この混合物に28%アンモニア水(0.1mL)を添加して、混合物の溶液のpHを8.4に調整した後、ホモジナイザーを用いて60℃で2分間乳濁化し、ビタミンAアセテートを含有する乳化液を得た。得られた乳化液をディスペンサーニードル(口径0.3mm)を用いて、588kPa(ゲージ圧、6kgf/cm2G)で加圧して、被覆剤としてトウモロコシデンプンを広げた厚さ20mm、幅150mmのベルト上に、ベルトから200mmの高さから押し出した。なお被覆剤を広げたベルトは、手で小刻みに振動させた。これにより、乳化液の液滴の表面がトウモロコシデンプンで被覆されてなる微粒子が得られた。この微粒子を、乾燥機を用いて130℃で5分間加熱処理を行い、ビタミンAアセテート含有粒子(粉末状)(ビタミンAアセテートの含有量52IU/g)8部を得た。得られた粒子(粉末状)を顕微鏡観察した結果、平均粒径は目的とする300μmであり、ディスペンサーニードルの口径とほぼ同じに保たれた。
【0085】
【発明の効果】
以上のように、本発明の親油性化合物を含有する粒子の製造方法は、親油性化合物が分散された乳化分散液の液滴表面を、親水性の被覆剤により被覆して被覆粒子を形成し、前記被覆粒子を加熱して乾燥する親油性化合物を含有する粒子の製造方法であって、上記乳化分散液は、上記被覆剤に滴下される構成である。
【0086】
また、本発明の親油性化合物を含有する粒子の製造装置は、親水性の被覆剤を供給する供給手段と、該供給手段から供給される被覆剤を振動させながら水平方向に搬送する搬送手段と、該搬送手段にて搬送される被覆剤に、親油性化合物が分散された乳化分散液を滴下する滴下手段とを備えている構成である。
【0087】
それゆえ、ほぼ均一な粒子径で、粒子径分布がほぼ単一な乳化分散液を滴下できるので、均一な粒子径の親油性化合物を含有する粒子を製造することができる。また、被覆剤によって親油性化合物が保護されているので、例えば、光、熱、または酸素などに不安定な脂溶性ビタミンやカロチノイドであっても、安定性が向上した粒子として製造できる。このような粒子は、医薬品や食品などの分野で幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる親油性化合物を含有する粒子の製造装置の概略構成を示す正面図である。
【符号の説明】
1 ディスペンサー(滴下手段)
2 乳化分散液
3 有口針(滴下口)
4 被覆粒子
5 加圧ボンベ
6 調整弁
7 フィーダー(供給手段)
8 被覆剤
9 ベルト(搬送手段)
10 篩
Claims (10)
- 親油性化合物が分散された乳化分散液の液滴表面を、親水性の被覆剤により被覆して被覆粒子を形成した後、該被覆粒子を乾燥する、親油性化合物を含有する粒子の製造方法であって、
上記乳化分散液を、上記被覆剤に滴下することを特徴とする親油性化合物を含有する粒子の製造方法。 - 被覆剤を振動させながら乳化分散液を滴下することを特徴とする請求項1に記載の粒子の製造方法。
- 被覆剤を水平方向に移動させながら乳化分散液を滴下することを特徴とする請求項1または2に記載の粒子の製造方法。
- 親油性化合物が、脂溶性ビタミンおよび/またはカロチノイドであることを特徴とする請求項1、2または3に記載の粒子の製造方法。
- 被覆剤が、粉末状の糖類、ケイ酸またはステアリン酸から選ばれる少なくとも1種類の化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒子の製造方法。
- 乳化分散液が、アミノ基を有する乳化剤と、還元性糖類とを含んでいることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の粒子の製造方法。
- 乳化剤が、ゼラチンであることを特徴とする請求項6に記載の粒子の製造方法。
- 親水性の被覆剤を供給する供給手段と、該供給手段から供給される被覆剤を振動させながら水平方向に搬送する搬送手段と、該搬送手段にて搬送される被覆剤に、親油性化合物が分散された乳化分散液を滴下する滴下手段とを備えていることを特徴とする親油性化合物を含有する粒子の製造装置。
- 上記滴下手段は、直径1mm以下の滴下口から乳化分散液を滴下することを特徴とする請求項8に記載の製造装置。
- 上記滴下手段は、9.8kPaG以上の圧力で上記乳化分散液を滴下することを特徴とする請求項8または9に記載の製造装置。
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