JP2004249685A - 液体噴射装置、及び、液体噴射による小突起形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡単な装置構成で耐摩擦性の高い小突起を容易に形成することが可能な液体噴射装置を提供する。
【解決手段】記録ヘッド3Aを、常温で固体状のホットメルトインクを液滴として吐出可能に構成し、記録ヘッド3Bを、記録紙6への浸透性及び固化時における耐摩耗性がホットメルトインクよりも高いクリアインクと印刷用インクとを吐出可能に構成する。制御部は、選択したモードが記録紙の表面に点字用突起80を形成可能な点字形成モードの場合に、記録ヘッド3Aからホットメルトインクを吐出させることで核81を記録紙6上に形成した後、この核81を覆うように記録ヘッド3Bからクリアインクを吐出させてコーティング層82を形成する。また、制御部は、選択したモードが印刷モードの場合に記録ヘッド3Bから印刷用インクを吐出させることで画像等を印刷する。
【選択図】 図7
【解決手段】記録ヘッド3Aを、常温で固体状のホットメルトインクを液滴として吐出可能に構成し、記録ヘッド3Bを、記録紙6への浸透性及び固化時における耐摩耗性がホットメルトインクよりも高いクリアインクと印刷用インクとを吐出可能に構成する。制御部は、選択したモードが記録紙の表面に点字用突起80を形成可能な点字形成モードの場合に、記録ヘッド3Aからホットメルトインクを吐出させることで核81を記録紙6上に形成した後、この核81を覆うように記録ヘッド3Bからクリアインクを吐出させてコーティング層82を形成する。また、制御部は、選択したモードが印刷モードの場合に記録ヘッド3Bから印刷用インクを吐出させることで画像等を印刷する。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体噴射ヘッドによって噴射した液体を固化させて吐出対象物の表面に小突起を形成可能な液体噴射装置、及び、吐出させた液体によって吐出対象物の表面に小突起を形成する液体噴射による小突起形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体噴射ヘッドから吐出させた液体を固化させて吐出対象物の表面に小突起を形成可能な液体噴射装置としては、所謂点字プリンタ、立体画像プリンタ、3次元造形装置などが提案されている。
【0003】
従来、このような液体噴射装置には、吐出対象物に液体を着弾させ、この着弾部分に熱膨張性を有する粉体を吹きつけて粉体像を形成し、この粉体像を加熱機構によって加熱することにより膨張させて小突起を形成するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−353907号公報(第3頁、第1図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の液体噴射装置では、粉体を噴射するための機構、及び、粉体を加熱して膨張させる機構が必要となっていたので、装置が複雑化してしまう問題があった。
また、このようにして形成された小突起は単に加熱のみによって定着させただけなので耐摩耗性が低く、例えば、上記点字の場合、指先等によって擦られることにより小突起が摩耗したり剥がれたりする虞があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成で耐摩耗性に優れた小突起を形成可能な液体噴射装置及び液体噴射による小突起形成方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、常温で固体状の吐出素材を加熱手段により加熱して液状にし、液状となった前記吐出素材をノズル開口から第1液として液滴状態で吐出可能な第1液体噴射ヘッドと、
吐出対象物への浸透性を有すると共に固化時における耐摩耗性が前記第1液よりも高い第2液をノズル開口から液滴状態で吐出可能な第2液体噴射ヘッドと、
前記第1液体噴射ヘッド及び第2液体噴射ヘッドの動作を制御する駆動制御手段とを備え、
該駆動制御手段は、吐出対象物の表面に小突起を形成可能な小突起形成モードにおいて、前記第1液体噴射ヘッドから前記第1液を吐出させることで小突起基部を吐出対象物上に形成した後、該小突起基部を覆うように前記第2液体噴射ヘッドから前記第2液を吐出させることでコーティング層を形成することを特徴とする。そして、この構成において、小突起形成モードが吐出対象物の表面に点字用突起を形成する点字形成モードであり、前記第1液がホットメルトインクであることが好ましい。
なお、「耐摩耗性」とは、指等によって擦られた際の耐性を意味する。
【0008】
また、本発明は、常温で固体状の吐出素材を加熱して液状にし、
液状となった前記吐出素材を第1液体噴射ヘッドから第1液として液滴状態で吐出させることで小突起基部を吐出対象物上に形成し、
該小突起基部を覆うように、吐出対象物への浸透性を有すると共に固化時における耐摩耗性が前記第1液よりも高い第2液を第2液体噴射ヘッドから液滴状態で吐出させることでコーティング層を形成することを特徴とする。そして、この構成において、前記吐出素材がホットメルトインクであることが好ましい。
【0009】
これらの発明によれば、第1液を吐出させることで小突起基部を形成し、第2液を吐出させることでコーティング層を形成するので、液体の吐出によって吐出対象物上に小突起を形成できる。また、吐出対象物上で堆積し易いホットメルトインクを第1液として吐出することで、容易に小突起基部を形成することができる。このように、液体の吐出機構を備えれば足りるので、簡単な装置構成で小突起を形成することが可能となる。また、第2液でコーティング層を形成するので、小突起基部はこのコーティング層によって表面を保護される。これにより、形成された小突起の耐久性を高めることができる。
【0010】
上記発明において、前記第2液体噴射ヘッドは、前記第1液及び前記第2液とは異なる第3液を吐出可能に構成され、
前記駆動制御手段は、前記小突起形成モードを含む複数の噴射モードの中から1つの噴射モードを選択可能であり、
選択された噴射モードが前記小突起形成モードとは異なる他噴射モードである場合に、前記駆動制御手段は、前記第2液体噴射ヘッドから前記第3液を吐出させる構成とすることが好ましい。そして、この構成において、前記他噴射モードが印刷記録媒体上に文字や画像を印刷する印刷モードであり、前記第3液が印刷用インクである構成が好ましい。これにより、一つの液体噴射装置を多用途に用いることができ、装置の汎用性が向上する。
【0011】
また、上記発明において、液体を貯留する液体カートリッジが装着されるカートリッジ装着部を前記第2液体噴射ヘッドが取り付けられたキャリッジに設け、
該カートリッジ装着部に、前記第2液を貯留した液体カートリッジを装着する構成が好ましい。そして、この構成において、前記第3液を貯留した液体カートリッジを、前記他噴射モードにおいて前記第2液が貯留された液体カートリッジに替えて前記カートリッジ装着部に装着可能に構成にすることが好ましい。
これらの発明では、第2液体噴射ヘッドが吐出する液体を容易に交換することが可能となり、液体噴射ヘッドに複数の用途を持たせることが容易となる。
【0012】
また、上記発明において、前記コーティング層を、その一部を吐出対象物内に浸透させた状態で形成する構成とするのが好ましい。また、この第2液が透明樹脂を含有したクリアインクである構成が好ましい。
これにより、一部が吐出対象物内に浸透した状態でコーティング層が固化するので、浸透した部分がアンカーと同様に機能し、コーティング層の吐出対象物に対する接合強度を高めることができる。その結果、形成した小突起を吐出対象物から剥がれ難くすることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下において、小突起を形成可能な液体噴射装置の例としてインクジェット式記録プリンタ(以下、単にプリンタという)1を挙げて説明する。
【0014】
まず、図1に基づき、プリンタ1の全体構造について説明する。例示したプリンタ1は、カートリッジ装着部2、記録ヘッド3A(本発明の第1液体噴射ヘッドの一種)、及び、記録ヘッド3B(本発明の第2液体噴射ヘッドの一種)を取り付けたキャリッジ4を有する。このキャリッジ4は、ガイドロッド5に軸支されて記録紙6(吐出対象物の一種)の幅方向(主走査方向)に移動可能に取り付けられている。このキャリッジ4には、駆動プーリー7と遊転プーリー8との間に掛け渡したタイミングベルト9が接続されている。そして、この駆動プーリー7はパルスモータ10の回転軸に固定されている。従って、キャリッジ4は、パルスモータ10の作動によって記録紙6の幅方向に往復移動する。キャリッジ4の移動範囲内における端部領域には、ホームポジションが設定されている。このホームポジションには、記録ヘッド3A,3Bのノズルプレートの表面をクリーニングするためのワイパー機構12と、このノズルプレートのノズル形成面を封止可能なキャッピング機構13とが配設されている。
【0015】
まず、上記記録ヘッド3Aについて説明する。図2に示すように、記録ヘッド3Aは、固体インク供給部15と、流路ユニット16と、アクチュエータユニット17とから概略構成されている。
【0016】
固体インク供給部15は常温で固体状のホットメルトインク(本発明の吐出素材の一種)が供給される部分である。この固体インク供給部15の底面には、インク導入口19の一部となる通孔が開設されており、また、この固体インク供給部15の周面には溶解用ヒータ20(本発明の加熱手段の一種)が配置されている。この溶解用ヒータ20は、例えばステンレス箔をポリイミド等の絶縁材によって被覆したラミネート構造とされており、ステンレス箔部分の電極(図示せず)に電圧を印加することにより発熱し、固体インク供給部15内に固体状で供給されたホットメルトインクを常温より高温(例えば、70℃〜120℃)に加熱して溶解するようになっている。
【0017】
流路ユニット16は、インク導入口19、インク供給口(オリフィス)22、及びノズル連通口23の一部となる通孔を開設した供給口形成基板24と、共通インク室(リザーバ)25となる通孔及びノズル連通口23の一部となる通孔を開設したインク室形成基板26と、ノズル開口27を開設したノズルプレート28から構成されている。
ノズル開口27は、ヘッド副走査方向に複数個列設した状態でノズルプレート28に所定ピッチで開設される。そして、列設された複数のノズル開口27によってノズル列が構成されている。
【0018】
これらの供給口形成基板24、インク室形成基板26、ノズルプレート28は、例えば、ステンレス製の板材をプレス加工することで作製されている。そして、流路ユニット16は、インク室形成基板26の一方の表面に(図2中下側)にノズルプレート28を、他方の表面(同上側)に供給口形成基板24をそれぞれ配置し、これらを接合することで作製される。
【0019】
アクチュエータユニット17は、ヘッドチップとも呼ばれる部材である。このアクチュエータユニット17は、インク導入口19となる通穴及び圧力室30となる通孔を開設した圧力室形成基板31と、インク導入口19となる通穴が開設され、圧力室30の一部を区画する振動板32と、インク導入口19の一部となる通穴、供給側連通口33の一部となる通孔、及びノズル連通口23の一部となる通孔を開設した蓋部材34と、圧電振動子35とによって構成される。
【0020】
このアクチュエータユニット17は、圧力室形成基板31の一方の表面に蓋部材34を、他方の表面に振動板32をそれぞれ配置して各部材を接合し、その後、振動板32の表面に圧電振動子35を形成することで作製される。
これらの各部材の中で圧力室形成基板31、振動板32、及び、蓋部材34は、アルミナや酸化ジルコニウム等のセラミックスで作製されており、焼成によって接合される。
【0021】
上記の圧電振動子35は、所謂撓みモードの圧電振動子であり、圧力室30とは反対側の振動板32の表面に圧力室30毎に形成されている。この圧電振動子35の幅は、圧力室30の幅と略等しく、長さは圧力室30の長さよりも少し長い。即ち、圧電振動子35は、圧力室30の長手方向を覆うように形成されている。この圧電振動子35は、圧電体層37と駆動電極38と共通電極39とによって構成される多層構造であり、駆動電極38と共通電極39とによって圧電体層37を挟んでいる。駆動電極38には、駆動信号の供給源(図示せず)が導通、即ち、電気的に接続される。そして、共通電極39は、例えば接地電位に調整される。
【0022】
駆動電極38に駆動信号が供給されると、駆動電極38と共通電極39との間には電位差に応じた電場が発生する。この電場は圧電体層37に付与され、圧電体層37は付与された電場の強さに応じて変形する。即ち、駆動電極38の電位を高くする程、圧電体層37は電場と直交する方向に収縮し、圧力室30の容積を少なくするように振動板32を変形させる。
【0023】
そして、このアクチュエータユニット17と上記の流路ユニット16とは、これらの間に保温用ヒータ40を介在させた状態で接合される。例えば、蓋部材34と保温用ヒータ40との間、及び、保温用ヒータ40と供給口形成基板24との間にシート状の接着剤を介在させ、加圧することで接着される。
【0024】
保温用ヒータ40は、上記溶解用ヒータ20と同様に、ステンレス箔をポリイミド等の絶縁材によってラミネートした構成とされており、ステンレス箔部分の電極(図示せず)に通電することにより発熱し、記録ヘッド3Aの流路内に満たされたホットメルトインクの温度が低下して固化しないように保温する役目を果たす。この保温用ヒータ40には、インク導入口19、供給側連通口33、及びノズル連通口23の一部となる通孔が開設されている。
【0025】
このように構成された記録ヘッド3Aには、固体インク供給部15からインク導入口19、共通インク室25がノズル列毎に形成され、共通インク室25から供給側連通口33、圧力室30、及びノズル連通口23を通じてノズル開口27に至る一連の液体流路がノズル開口27毎に形成されている。使用時において、この液体流路内は、溶解用ヒータ20によって加熱されて液状に溶解したホットメルトインクで満たされている。そして、圧電振動子35を変形させることで対応する圧力室30が収縮或いは膨張し、圧力室30内のホットメルトインクに圧力変動が生じる。このインク圧力を制御することで、ノズル開口27からホットメルトインクをインク滴(液滴の一種)として吐出させることができる。例えば、定常容積の圧力室30を一旦膨張させた後に急激に収縮させると、圧力室30内の膨張に伴ってホットメルトインクが充填され、その後の急激な収縮により圧力室30内のホットメルトインクが加圧されてインク滴が吐出される。
【0026】
次に、記録ヘッド3Bについて説明する。図3に例示した記録ヘッド3Bは、振動子ユニット43、この振動子ユニット43を収納可能なケース44、このケース44の先端面に接合される流路ユニット45等を備えている。
【0027】
上記のケース44は、振動子ユニット43を収納するための収納空部46を有するブロック状部材であり、例えば樹脂(エポキシ樹脂等)を成型することで作製される。上記の振動子ユニット43は、櫛歯状に形成した複数の圧電振動子47と、各圧電振動子47が接合される固定板48と、各圧電振動子47に駆動信号等を供給するためのフレキシブルケーブル49とを備えている。
【0028】
圧電振動子47は、例えば、圧電体層と電極層とを交互に積層した圧電板を櫛歯状に切り分けることで作製された積層型の圧電振動子であって、積層方向に直交する方向に伸縮可能な縦振動モードの圧電振動子である。上記の固定板48は、厚さが1ミリ程度の板状部材であり、圧電振動子47からの反力を受け止める部材である。本実施形態では、固定板48を、金属材料の一種であるステンレスによって作製している。上記のフレキシブルケーブル49は、可撓性を有するフィルム状の配線部材である。そして、フレキシブルケーブル49の一端部は圧電振動子47の表面に半田付けされ、他端部は配線基板50に半田付けされている。
【0029】
この圧電振動子47を構成する圧電体層に電場を付与すると、即ち、フレキシブルケーブル49を介して駆動信号を供給すると、上記の自由端部分が素子長手方向(積層方向とは直交する方向)に伸縮する。例えば、充電によって振動子電位を上昇させると圧電振動子47は素子長手方向に収縮し、放電によって振動子電位を下降させると圧電振動子47は素子長手方向に伸長する。
【0030】
上記の流路ユニット45は、液体供給口52から圧力室53を経てノズル開口54に至る一連の個別液体流路を有する板状の部材である。この流路ユニット45は、圧力室53や液体供給口52となる空部や溝部等を有する流路形成基板55と、これらの空部や溝部の開口を封止して圧力室53や液体供給口52の一部を区画する振動板56と、ノズル開口54が複数穿設されたノズルプレート57を備えている。そして、流路形成基板55の一方の表面、即ち、ケース側の表面に振動板56を接合し、流路形成基板55の他方の表面、即ち、振動板接合面とは反対側の表面にノズルプレート57を接合している。
【0031】
上記のノズルプレート57は、ドット形成密度に対応したピッチで複数(例えば180個)のノズル開口54を列状に穿設した金属製の薄いプレートである。本実施形態では、このノズルプレート57をステンレス製の板材によって構成している。
【0032】
上記の振動板56は、支持板58の表面に弾性体膜59を積層した二重構造である。本実施形態では、金属板の一種であるステンレス板を支持板58とし、この支持板58の表面にPPS(ポリフェニレンサルファイド)やPI(ポリイミド)製の樹脂フィルムを弾性体膜59としてラミネートした複合板材を用いて振動板56を作製している。この振動板56には、圧力室容積を変化させるダイヤフラム部が設けられている。また、この振動板56には、リザーバ60の一部を封止するコンプライアンス部が設けられている。
【0033】
上記のダイヤフラム部は、エッチング加工等によって支持板58を部分的に除去することで作製される。即ち、このダイヤフラム部は、圧電振動子47の先端面が接合される島部61と、この島部61を囲う薄肉弾性部62とからなる。上記のコンプライアンス部は、リザーバ60に貯留された液体の圧力変動を吸収するためのダンパー部分である。このダンパー部分もまた、貯留空部の開口面に対向する領域の支持板58をエッチング加工等によって除去し、弾性体膜59のみにすることで作製される。
【0034】
そして、上記の島部61には圧電振動子47の先端面が接合されているので、自由端部を伸縮させることで圧力室容積を変化させることができる。例えば、圧電振動子47を充電して自由端部を素子長手方向に収縮させると島部61が引っ張られる。これにより島部61が移動し、圧電振動子47の放電状態と比べて、圧力室容積を増大させることができる。また、充電状態の圧電振動子47を放電して自由端部を素子長手方向に伸長させると、島部61が圧力室53側に押される。これにより、圧電振動子47の充電状態に比べて、圧力室容積を減少させることができる。
【0035】
上記のキャリッジ4内のカートリッジ装着部2には液体を貯留した液体カートリッジ63(図1参照)が装着されており、供給針ユニット64を介して液体カートリッジ63に貯留された液体が記録ヘッド3B内に供給される。なお、液体供給源としては、液体カートリッジ63に限らず、液体貯留パック(液体を貯留した袋体)を用いてもよい。
【0036】
本実施形態における供給針ユニット64は、液体供給針65と針ホルダ66とから概略構成されている。液体供給針65は、液体カートリッジ63の内部に挿入される部材であり、液体カートリッジ63内に貯留された液体を針内に導入する。この液体供給針65の先端部は円錐状に尖っており、針内外を連通する液体導入孔が複数穿設されている。針ホルダ66は、液体供給針65を取り付けるための部材であり、その表面には液体供給針65の根本部分を止着するための台座66´を形成している。
【0037】
この供給針ユニット64は、ケース44の取付面上に配設されている。この配設状態において、液体出口とケース44の接続突起とは、パッキン67を介して液密状態で連通される。そして、接続突起の内側には、ケース44内を貫通する液体供給路68が形成されている。この液体供給路68は、流路ユニット45のリザーバ60に連通している。従って、液体カートリッジ63内に貯留された液体は、液体供給路68を通じてリザーバ60に流入する。
【0038】
従って、これらの記録ヘッド3B及び供給針ユニット64では、液体供給針65からリザーバ60及び圧力室53を通ってノズル開口54に至る一連の液体流路が形成される。そして、圧電振動子47を作動させると、上記したように圧力室容積を変化させることができる。この圧力室容積の変動により、圧力室53内の液体には圧力変動が生じるので、圧力室53内における液体圧力を変化させることができ、ノズル開口54から液滴を吐出させることができる。例えば、圧電振動子47を充電して圧力室53を膨張させ、その後、圧電振動子47を急激に放電して圧力室53を収縮させると、圧力室53の膨張によって圧力室53内に流入した液体が急激に加圧され、ノズル開口54から液滴が吐出される。
【0039】
次に、上記記録ヘッド3A,3Bから吐出させる液体(インク)について説明する。このプリンタは、複数種類のモード(本発明における噴射モードの一種)で記録動作が行える。具体的には、点字形成モードと印刷モードの2種類である。ここで、点字形成モードとは、コピー用紙等の記録紙6の表面に、点字を構成する突起(本発明における小突起の一種。以下、点字用突起80という。図7参照。)を形成するモードであり、本発明における小突起形成モードの一種である。また、印刷モードとは、記録紙6上に文字や画像を印刷するモードであり、本発明における他噴射モードの一種である。なお、上記の記録紙6は、本発明における吐出対象物の一種であり、印刷記録媒体の一種でもある。
【0040】
上記の点字形成モードにおいて、記録ヘッド3Aは点字用突起の核81(本発明における小突起基部の一種,図7参照)を形成するためのホットメルトインクを本発明の第1液として吐出し、記録ヘッド3Bはコーティング層82(図7参照)を形成するためのクリアインクを第2液として吐出する。また上記の印刷モードにおいて、記録ヘッド3Bは、印刷用インク(印刷用インク)を第3液として吐出する。この際、印刷用インクが貯留された液体カートリッジを、クリアインクが貯留されたカートリッジに替えてカートリッジ装着部2に装着する。これにより、記録ヘッド3Bが吐出する液体を容易に交換することが可能であり、記録ヘッド3Bに印刷機能とコーティング層形成機能の2つの用途を持たせることが容易となる。
【0041】
ホットメルトインクとしては、フタル酸エステル化合物に樹脂を混合したものをビヒクルとし、このビヒクルに色材を加えたものを使用する。このホットメルトインクの組成には添加物の種類と添加量とによって種々の組み合わせがあるが、代表として図4に示すような4つのタイプを挙げることができる。
このホットメルトインクは、融点が例えば70℃〜120℃の常温よりも高い範囲にある。そして、記録ヘッド3A内の高温に保たれた液体流路内から常温下に吐出された後、記録紙6に着弾すると熱が奪われ固化していく。即ち、ホットメルトインクは、記録紙6への浸透性が低く堆積性を有するため、このホットメルトインクを第1液として吐出することにより記録紙6上に点字用突起の核81を容易に形成することができる。また、記録ヘッド3Aのノズル開口27の開口径は、記録ヘッド3Bのノズル開口54のものと比べて大きめに設定されている。これにより、一度により多くの液体を吐出させることができ、より高速に点字用突起の核81を形成することができる。
【0042】
上記のクリアインクには、例えば、ポリアリルアミン等のアミン/イミン系の樹脂が好適に用いられる。これは、固化時における耐摩耗性がホットメルトインクよりも高いこと、記録紙6に対する浸透性が高いこと、及び、表面張力が極めて低い等の理由による。なお、クリアインクの表面張力を低くするため、トリエチレングリコールモノブチルエーテルやヘキサンジオール等の界面活性剤や浸透性溶剤を添加してもよい。
【0043】
上記の印刷用インクは、顔料濃度や保湿剤濃度等が画像印刷等の用途に適するように調整されている。そして、本実施形態では4色の印刷用インクを用意している。具体的には、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクが用意されている。そして各色の印刷用インクはそれぞれ1列のノズル列から吐出させている。
【0044】
また、例示した液体カートリッジ63は、情報記憶素子の一種である接点ROM70(図5参照)を備えている。この接点ROM70は、記憶内容を外部から書き換え可能であって、カートリッジ装着部2から取り外した状態においても記憶内容を保持可能な素子によって構成されている。
この接点ROM70には、その液体カートリッジ63に貯留されている液体の種類を示す液体種類情報、液体の残量を示す液体残量情報、最初に装着された日を示す使用開始日情報といった各種情報が記憶されている。そして、この接点ROM70は、カートリッジ装着部2への装着状態でカートリッジ装着部2に設けられた接点端子71(図5参照)に電気的に接続される。なお、この接点端子71は制御部72と電気的に接続されている。
【0045】
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。図5に示すように、このプリンタ1は、プリンタコントローラ75と、プリントエンジン76とから概略構成されている。
【0046】
プリンタコントローラ75は、CPU,ROM,RAMを備えた制御部72や、記録ヘッド3A,3Bに供給するための駆動信号を発生する駆動信号発生回路77等を備えている。一方、プリントエンジン76は、パルスモータ10と、紙送りモータ78と、記録ヘッド3A,3B等を備えている。そして、これらの各部は、上記の制御部72によってその動作が制御可能である。
【0047】
上記の制御部72は、このプリンタ1における制御を行う部分である。この制御部72は、接点端子71と電気的に接続されているので、装着された液体カートリッジ63の接点ROM70に記憶された各種情報を読み出せる。このため、制御部72は、読み出した情報に基づいて液体カートリッジ63に貯留されている液体の種類等を認識できる。また、制御部72は、接点ROM70に記憶された各種情報を書き換えることもできる。
【0048】
この制御部72は、本発明における駆動制御手段としても機能する。即ち、制御部72は、複数の噴射モードの中から1つのモードを選択し、選択したモードに応じて記録ヘッド3A,3Bの動作を制御する。本実施形態では、制御部72は、点字形成モードと印刷モードの何れか一方のモードを選択できる。このモードの選択は、選択スイッチ(図示せず)の操作によって行ってもよく、制御部72に選択させてもよい。そして、制御部72に選択させる場合には、接点ROM70に記憶された情報を利用する構成が好ましい。これは、本実施形態では吐出させる液体の種類がモード毎に相違することによる。即ち、接点ROM70に記憶された情報を参照することで、制御部72は、カートリッジ装着部2に装着されたカートリッジ(貯留された液体)の種類を認識できるので、使用するモードを自動的に決定できる。
【0049】
点字形成モードにおいて、制御部72は、ホストコンピュータ等の上位装置から送信されてくる点字形成データに基づき、点字用突起80を形成する場所、点字用突起80の大きさ(着弾面積)、点字用突起80の高さ(液滴の吐出量)等を決定し、記録ヘッド3A,3Bを制御するためのドットパターンデータを生成する。そして、制御部72は、この生成したドットパターンデータを記録ヘッド3に転送する。また、制御部72は、駆動信号設定手段としても機能し、点字用突起80の形成に適した波形形状の点字用駆動信号を設定し、この点字用駆動信号を駆動信号発生回路77から発生させる。また、制御部72は、記録ヘッド3Aの液体流路内のホットメルトインクが液状を維持するように溶解用ヒータ20及び保温用ヒータ40の温度を制御する。さらに、制御部72は、パルスモータ10を作動させてキャリッジ4(記録ヘッド3A,3B)を所望の位置に移動させたり、紙送りモータ78を作動させて記録紙6を送り出したりもする。
【0050】
印刷モードにおいて、制御部72は、上位装置から送信されてくる印刷データに基づいて色毎のドットパターンデータを生成し、記録ヘッド3Bに転送する。また、制御部72(駆動信号設定手段)は、印刷に適した波形形状の印刷用駆動信号を設定し、この印刷用駆動信号を駆動信号発生回路77から発生させる。そして、この印刷モードにおいても、制御部72は、パルスモータ10を作動させてキャリッジ4(記録ヘッド3A,3B)を所望の位置に移動させたり、紙送りモータ78を作動させて記録紙6を送り出したりする。
【0051】
上記の駆動信号発生回路77は、駆動信号発生手段として機能する部分であり、制御部72による制御の下、記録ヘッド3A,3Bに供給するための駆動信号を発生する。本実施形態の駆動信号発生回路77は、図6に示すように、点字形成モードにおいて1種類の点字用駆動信号(COM1)を発生し、印刷モードにおいて3種類の印刷用駆動信号(COM2〜COM4)の何れかを選択的に発生する。
【0052】
以下、各駆動信号について説明する。上記の点字用駆動信号は、図6(a)に示すように、液滴の吐出量を可及的に増やす様に設定した点字駆動パルスDP1を、1単位周期内に3個等間隔で発生させる一連の信号であり、記録ヘッド3Aの圧電振動子35に供給される。この点字駆動パルスDP1は、駆動電圧、即ち、最大電位と最低電位の電位差を、圧電振動子35が許容し得る程度まで可及的に高く設定した駆動パルスである。そして、この点字駆動パルスDP1が1つ圧電振動子35に供給される毎に、ノズル開口27からは最大量のインク滴(この例では約20pL)が吐出される。従って、1単位周期では、約60pLのインク滴を吐出させることができる。
【0053】
上記の印刷用駆動信号は、例えば、高速印刷に適した第1印刷用駆動信号COM2と、高解像度の印刷時に用いられる第2印刷用駆動信号COM3と、超高解像度の印刷時に用いられる第3印刷用駆動信号COM4とからなる。これらの印刷用駆動信号は記録ヘッド3Bの圧電振動子47に供給される。
【0054】
第1印刷用駆動信号COM2及び第2印刷用駆動信号COM3は、スモールドット、ミドルドット、及び、ラージドットからなるドットセットを選択的に記録可能な駆動信号である。即ち、これらの駆動信号では、非記録を含めて、各ドットを4階調で記録することができる。そして、第1印刷用駆動信号COM2と第2印刷用駆動信号COM3とは、各ドットにおけるインク量の組み合わせが相違する。
【0055】
上記の第1印刷用駆動信号COM2は、第1スモールドット駆動パルスDP2を1単位周期内に3個等間隔で発生させる一連の信号である。この第1スモールドット駆動パルスDP2は、約13pLのインク滴をノズル開口54から吐出させる駆動パルスであり、基本的な波形形状は上記の点字駆動パルスDP1と同じである。但し、この第1スモールドット駆動パルスDP2では、駆動電圧を上記の点字駆動パルスDP1よりも低く設定している点に相違がある。また、この第1スモールドット駆動パルスDP2では、使用環境の温度情報等に応じて、この駆動パルスを構成している波形要素の発生時間や電位差を変更している点も相違する。
【0056】
この第1印刷用駆動信号COM2では、記録階調が非記録の場合、何れの第1スモールドット駆動パルスDP2も圧電振動子47に供給しない。そして、記録階調がスモールドットの場合には1単位周期あたり1つの第1スモールドット駆動パルスDP2を圧電振動子47に供給し、ミドルドットの場合には2つの第1スモールドット駆動パルスDP2を圧電振動子47に供給する。同様に、記録階調がラージドットの場合には3つの第1スモールドット駆動パルスDP2すべてを圧電振動子47に供給する。これにより、記録階調が非記録の場合にはインク滴は吐出されない。また、スモールドットの場合には約13pLのインク滴が1単位周期内に1回吐出され、記録紙6上にはこのインク滴によるスモールドットが記録される。記録階調がミドルドットの場合には、約13pLのインク滴が1単位周期内に2回吐出され、記録紙6上には約26pLのインク滴によるミドルドットが記録される。記録階調がラージドットの場合には約13pLのインク滴が1単位周期内に3回続けて吐出され、記録紙6上には約40pLのインク滴によるラージドットが記録される。
【0057】
上記の第2印刷用駆動信号COM3は、微振動パルスDP3と、第2スモールドット駆動パルスDP4と、ミドルドット駆動パルスDP5とを1単位周期内に備えた一連の信号である。微振動パルスDP3は、メニスカス、即ち、ノズル開口54で露出しているインクの自由表面を、インク滴を吐出させない程度に移動させる信号である。第2スモールドット駆動パルスDP4は、上記の第1スモールドット駆動パルスDP2での吐出量よりも少ない量のインク滴を吐出させる駆動パルスである。本実施形態では、約4pLのインク滴を吐出させる信号として構成されている。ミドルドット駆動パルスDP5は、ミドルドットの形成に適した量のインク滴を吐出させる駆動パルスである。本実施形態では、約12pLのインク滴を吐出させる信号として構成されている。なお、このミドルドット駆動パルスDP5では、直前に第2スモールドット駆動パルスDP4が供給されると、上記の量(約12pL)よりも多い量のインク滴が吐出される。
【0058】
この第2印刷用駆動信号COM3では、記録階調が非記録の場合には微振動パルスDP3を圧電振動子47に供給する。これにより、メニスカスが微振動し、インクの増粘が防止される。また、記録階調がスモールドットの場合には第2スモールドット駆動パルスDP4を圧電振動子47に供給し、ミドルドットの場合にはミドルドット駆動パルスDP5を圧電振動子47に供給する。これにより、各々のインク量に応じた大きさのドットが記録紙6上に記録される。さらに、記録階調がラージドットの場合には第2スモールドット駆動パルスDP4とミドルドット駆動パルスDP5とを続けて圧電振動子47に供給する。この場合、第2スモールドット駆動パルスDP4とミドルドット駆動パルスDP5の相乗効果によって約20pLのインク滴が吐出され、このインク滴によってラージドットが記録される。
【0059】
上記の第3印刷用駆動信号COM4は、超高解像度の印刷時に用いられる駆動信号であり、1単位周期内に、1つの微振動パルスDP6と1つの第3スモールドット駆動パルスDP7とを有する一連の信号である。ここで、微振動パルスDP6は、上記した微振動パルスDP3と同様の機能を発揮し、インクの増粘を防止するものである。第3スモールドット駆動パルスDP7は、上記の第2スモールドット駆動パルスDP4よりもさらに少量のインク滴を吐出させる駆動パルスであり、本実施形態では約2pLのインク滴を吐出させる。また、この第3印刷用駆動信号COM4における単位周期の長さは、上記の第1印刷用駆動信号COM2や第2印刷用駆動信号COM3の単位周期の長さよりも短い。
【0060】
この第3印刷用駆動信号COM4では、全てのドットを第3スモールドット駆動パルスDP7による極小のスモールドットで記録する。即ち、ドットを記録する場合には第3スモールドット駆動パルスDP7を圧電振動子47に供給し、非記録の場合には微振動パルスDP6を圧電振動子47に供給する。
【0061】
次に、上記構成のプリンタ1における動作について説明する。
【0062】
電源が投入されると制御部72は、所定のイニシャライズ動作を実行する。このイニシャライズ動作では、キャリッジ4を主走査方向に動かしてキャリッジ4(記録ヘッド3A,3B)の位置認識等を行ったり、ワークエリア内の不要な情報をクリアしたりする。イニシャライズ動作を行ったならば、制御部72は、接点端子71を通じて接点ROM70にアクセスし、記憶されている各種情報を読み出す。そして、制御部72(駆動制御手段)は、読み出した情報に基づき、装着されている液体カートリッジ63の種類、即ち貯留されている液体の種類を認識し、モードを設定する。この場合、制御部72は、装着されている液体カートリッジ63が印刷用インクを貯留している場合には印刷モードを設定する。また、装着されている液体カートリッジ63がクリアインクを貯留している場合には点字形成モードを設定する。
【0063】
印刷モードにおいて制御部72(駆動制御手段)は、上記の印刷用インクを吐出させる。このとき、制御部72は、上位装置からの印刷データに基づき、第1印刷用駆動信号COM2〜第3印刷用駆動信号COM4の何れかを選択して駆動信号発生回路77から発生させる。また、制御部72は、パルスモータ10や紙送りモータ78を制御し、キャリッジ4を主走査方向に移動させると共に記録紙6を副走査方向に送り出す。さらに、制御部72は、キャリッジ4や記録紙6の移動に同期させて、駆動パルスDP2〜CP7の圧電振動子47への供給を制御する。この一連の動作によって、記録紙6上には、印刷データに基づく画像等が記録される。
【0064】
一方、点字形成モードにおいて制御部72(駆動制御手段)は、記録ヘッド3Aからホットメルトインクを吐出させ、記録ヘッド3Bからはクリアインクを吐出させる。即ち、制御部72は、先ず核形成工程を行い、ホットメルトインクを記録紙6上に着弾させて点字用突起の核81を形成する。この場合、図7(a)及び(b)に示すように、記録ヘッド3Aの主走査に連動させて突起を形成する領域に対し、規定量のホットメルトインクを着弾させる。上記したように、このホットメルトインクは、記録ヘッド3Aから吐出された後、熱が奪われることにより固化していき記録紙6上に堆積し易い。そのため点字用突起の核81を容易に形成することができる。このため、固化のための特別な機構が不要であり、装置構成の簡素化が図れる。
【0065】
点字用突起の核81を形成したならば、コーティング工程に移行し、この核81を覆うようにクリアインクを吐出させる。このコーティング工程では、例えば、図7(c)に示すように、核81よりも少し広い領域にクリアインクを吐出させる。
このクリアインクは、固化することで点字用突起の核81を保護するコーティング層82となる。点字は、点字用突起80を指先で触れることで認識されるものであり、高い耐摩耗性が要求される。本実施形態のように、クリアインクでコーティング層82を形成すると、指先で擦ったりしても点字用突起80が剥がれたりせず耐久性を高めることができる。さらに、コーティング層82が核81を保護するので、ホットメルトインクのような耐摩耗性の低い液体を使用することができる。これにより、核81の形成に用いる液体について選択の自由度を高めることができる。
【0066】
また、このクリアインクは、吐出対象物としての記録紙6に対して高い浸透性を有する。このため、図8に示すように、吐出したクリアインクの一部82aが記録紙内に浸透した状態で固化する。これにより、記録紙内に浸透した部分82aがアンカーと同様に機能し、コーティング層82の記録紙6に対する接合強度を高める。その結果、形成した点字用突起80を記録紙6から剥がれ難くすることができ、耐久性を高めることができる。なお、このアンカー効果を高めるべく、クリアインクに含まれるスチレンアクリル系の樹脂(アクリル樹脂やウレタン樹脂等)の濃度を高めることが好ましい。
また、ホットメルトインク或いはクリアインクの吐出量を制御し、点字用突起80のエッジ部分(図7に符号Rで示す部分)をなだらかな曲面で構成することが好ましい。このように構成することで、突起自体にかかる力に関し、単位面積当たりの負荷を分散することができる。即ち、面圧を下げることができる。これにより、点字用突起80の耐久性を高めることができる。
【0067】
さらに、このクリアインクを記録紙6の全面に塗布し、記録紙6の表面をコーティング層で覆ってもよい。この場合、コーティング層が透明であるので、クリアインクを介して点字用突起80を視認することができる。このように、点字用突起80を視認可能にすると、点字作成者が作成された点字を確認する際に便利である。
【0068】
以上説明したように、このプリンタ1では、ホットメルトインクとクリアインクとを吐出することで点字用突起80を形成できる。このため、インク吐出後において特別な処理を行わなくて済み、装置構成を簡素化できる。即ち、インクを吐出させる機構があれば足り、簡単な装置構成で耐摩擦性の高い小突起を容易に形成することが可能となる。
【0069】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
【0070】
例えば、点字用突起の核81を形成するホットメルトインク(第1液)に関し、例示したものに限らず、記録紙6等の吐出対象物への浸透性が低く堆積性を有するものであればよい。
【0071】
また、本発明はプリンタ1に限定されるものではない。例えば、立体画像プリンタや3次元造形装置等、吐出対象物の表面に小突起を形成可能な液体噴射装置であれば、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プリンタの構成を説明する斜視図である。
【図2】記録ヘッド3Aの部分拡大断面図である。
【図3】記録ヘッド3Bの部分拡大断面図である。
【図4】ホットメルトインクの組成別タイプを示した図である。
【図5】プリンタの電気的構成を説明するブロック図である。
【図6】(a)〜(d)は、駆動信号発生回路から発生する駆動信号を説明する図である。
【図7】(a)〜(c)は、点字用突起の形成を説明する模式図である。
【図8】点字用突起を説明する断面図である。
【符号の説明】
1…プリンタ,2…カートリッジ装着部,3A,3B…記録ヘッド,4…キャリッジ,5…ガイドロッド,6…記録紙,7…駆動プーリー,8…遊転プーリー,9…タイミングベルト,10…パルスモータ,12…ワイパー機構,13…キャッピング機構,15…固体インク供給部,16…流路ユニット,17…アクチュエータユニット,18…供給部,19…インク導入口,20…溶解用ヒータ,22…インク供給口,23…ノズル連通口,24…供給口形成基板,25…共通インク室,26…インク室形成基板,27…ノズル開口,28…ノズルプレート,30…圧力室,31…圧力室形成基板,32…振動板,33…供給側連通口,34…蓋部材,35…圧電振動子,37…圧電体層,38…駆動電極,39…共通電極,40…保温用ヒータ,43…振動子ユニット,44…ケース,45…流路ユニット,46…収納空部,47…圧電振動子,48…固定板,50…配線基板,52…液体供給口,53…圧力室,54…ノズル開口,55…流路形成基板,56…振動板,57…ノズルプレート,58…支持板,59…弾性体膜,60…リザーバ,61…島部,63…液体カートリッジ,64…供給針ユニット,65…液体供給針,66…針ホルダ,66´…台座,67…パッキン,68…液体供給路,70…接点ROM,71…接点端子,72…制御部,75…プリンタコントローラ,76…プリントエンジン,77…駆動信号発生回路,78…紙送りモータ,80…点字用突起,81…点字用突起の核,82…コーティング層
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体噴射ヘッドによって噴射した液体を固化させて吐出対象物の表面に小突起を形成可能な液体噴射装置、及び、吐出させた液体によって吐出対象物の表面に小突起を形成する液体噴射による小突起形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体噴射ヘッドから吐出させた液体を固化させて吐出対象物の表面に小突起を形成可能な液体噴射装置としては、所謂点字プリンタ、立体画像プリンタ、3次元造形装置などが提案されている。
【0003】
従来、このような液体噴射装置には、吐出対象物に液体を着弾させ、この着弾部分に熱膨張性を有する粉体を吹きつけて粉体像を形成し、この粉体像を加熱機構によって加熱することにより膨張させて小突起を形成するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−353907号公報(第3頁、第1図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の液体噴射装置では、粉体を噴射するための機構、及び、粉体を加熱して膨張させる機構が必要となっていたので、装置が複雑化してしまう問題があった。
また、このようにして形成された小突起は単に加熱のみによって定着させただけなので耐摩耗性が低く、例えば、上記点字の場合、指先等によって擦られることにより小突起が摩耗したり剥がれたりする虞があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成で耐摩耗性に優れた小突起を形成可能な液体噴射装置及び液体噴射による小突起形成方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、常温で固体状の吐出素材を加熱手段により加熱して液状にし、液状となった前記吐出素材をノズル開口から第1液として液滴状態で吐出可能な第1液体噴射ヘッドと、
吐出対象物への浸透性を有すると共に固化時における耐摩耗性が前記第1液よりも高い第2液をノズル開口から液滴状態で吐出可能な第2液体噴射ヘッドと、
前記第1液体噴射ヘッド及び第2液体噴射ヘッドの動作を制御する駆動制御手段とを備え、
該駆動制御手段は、吐出対象物の表面に小突起を形成可能な小突起形成モードにおいて、前記第1液体噴射ヘッドから前記第1液を吐出させることで小突起基部を吐出対象物上に形成した後、該小突起基部を覆うように前記第2液体噴射ヘッドから前記第2液を吐出させることでコーティング層を形成することを特徴とする。そして、この構成において、小突起形成モードが吐出対象物の表面に点字用突起を形成する点字形成モードであり、前記第1液がホットメルトインクであることが好ましい。
なお、「耐摩耗性」とは、指等によって擦られた際の耐性を意味する。
【0008】
また、本発明は、常温で固体状の吐出素材を加熱して液状にし、
液状となった前記吐出素材を第1液体噴射ヘッドから第1液として液滴状態で吐出させることで小突起基部を吐出対象物上に形成し、
該小突起基部を覆うように、吐出対象物への浸透性を有すると共に固化時における耐摩耗性が前記第1液よりも高い第2液を第2液体噴射ヘッドから液滴状態で吐出させることでコーティング層を形成することを特徴とする。そして、この構成において、前記吐出素材がホットメルトインクであることが好ましい。
【0009】
これらの発明によれば、第1液を吐出させることで小突起基部を形成し、第2液を吐出させることでコーティング層を形成するので、液体の吐出によって吐出対象物上に小突起を形成できる。また、吐出対象物上で堆積し易いホットメルトインクを第1液として吐出することで、容易に小突起基部を形成することができる。このように、液体の吐出機構を備えれば足りるので、簡単な装置構成で小突起を形成することが可能となる。また、第2液でコーティング層を形成するので、小突起基部はこのコーティング層によって表面を保護される。これにより、形成された小突起の耐久性を高めることができる。
【0010】
上記発明において、前記第2液体噴射ヘッドは、前記第1液及び前記第2液とは異なる第3液を吐出可能に構成され、
前記駆動制御手段は、前記小突起形成モードを含む複数の噴射モードの中から1つの噴射モードを選択可能であり、
選択された噴射モードが前記小突起形成モードとは異なる他噴射モードである場合に、前記駆動制御手段は、前記第2液体噴射ヘッドから前記第3液を吐出させる構成とすることが好ましい。そして、この構成において、前記他噴射モードが印刷記録媒体上に文字や画像を印刷する印刷モードであり、前記第3液が印刷用インクである構成が好ましい。これにより、一つの液体噴射装置を多用途に用いることができ、装置の汎用性が向上する。
【0011】
また、上記発明において、液体を貯留する液体カートリッジが装着されるカートリッジ装着部を前記第2液体噴射ヘッドが取り付けられたキャリッジに設け、
該カートリッジ装着部に、前記第2液を貯留した液体カートリッジを装着する構成が好ましい。そして、この構成において、前記第3液を貯留した液体カートリッジを、前記他噴射モードにおいて前記第2液が貯留された液体カートリッジに替えて前記カートリッジ装着部に装着可能に構成にすることが好ましい。
これらの発明では、第2液体噴射ヘッドが吐出する液体を容易に交換することが可能となり、液体噴射ヘッドに複数の用途を持たせることが容易となる。
【0012】
また、上記発明において、前記コーティング層を、その一部を吐出対象物内に浸透させた状態で形成する構成とするのが好ましい。また、この第2液が透明樹脂を含有したクリアインクである構成が好ましい。
これにより、一部が吐出対象物内に浸透した状態でコーティング層が固化するので、浸透した部分がアンカーと同様に機能し、コーティング層の吐出対象物に対する接合強度を高めることができる。その結果、形成した小突起を吐出対象物から剥がれ難くすることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下において、小突起を形成可能な液体噴射装置の例としてインクジェット式記録プリンタ(以下、単にプリンタという)1を挙げて説明する。
【0014】
まず、図1に基づき、プリンタ1の全体構造について説明する。例示したプリンタ1は、カートリッジ装着部2、記録ヘッド3A(本発明の第1液体噴射ヘッドの一種)、及び、記録ヘッド3B(本発明の第2液体噴射ヘッドの一種)を取り付けたキャリッジ4を有する。このキャリッジ4は、ガイドロッド5に軸支されて記録紙6(吐出対象物の一種)の幅方向(主走査方向)に移動可能に取り付けられている。このキャリッジ4には、駆動プーリー7と遊転プーリー8との間に掛け渡したタイミングベルト9が接続されている。そして、この駆動プーリー7はパルスモータ10の回転軸に固定されている。従って、キャリッジ4は、パルスモータ10の作動によって記録紙6の幅方向に往復移動する。キャリッジ4の移動範囲内における端部領域には、ホームポジションが設定されている。このホームポジションには、記録ヘッド3A,3Bのノズルプレートの表面をクリーニングするためのワイパー機構12と、このノズルプレートのノズル形成面を封止可能なキャッピング機構13とが配設されている。
【0015】
まず、上記記録ヘッド3Aについて説明する。図2に示すように、記録ヘッド3Aは、固体インク供給部15と、流路ユニット16と、アクチュエータユニット17とから概略構成されている。
【0016】
固体インク供給部15は常温で固体状のホットメルトインク(本発明の吐出素材の一種)が供給される部分である。この固体インク供給部15の底面には、インク導入口19の一部となる通孔が開設されており、また、この固体インク供給部15の周面には溶解用ヒータ20(本発明の加熱手段の一種)が配置されている。この溶解用ヒータ20は、例えばステンレス箔をポリイミド等の絶縁材によって被覆したラミネート構造とされており、ステンレス箔部分の電極(図示せず)に電圧を印加することにより発熱し、固体インク供給部15内に固体状で供給されたホットメルトインクを常温より高温(例えば、70℃〜120℃)に加熱して溶解するようになっている。
【0017】
流路ユニット16は、インク導入口19、インク供給口(オリフィス)22、及びノズル連通口23の一部となる通孔を開設した供給口形成基板24と、共通インク室(リザーバ)25となる通孔及びノズル連通口23の一部となる通孔を開設したインク室形成基板26と、ノズル開口27を開設したノズルプレート28から構成されている。
ノズル開口27は、ヘッド副走査方向に複数個列設した状態でノズルプレート28に所定ピッチで開設される。そして、列設された複数のノズル開口27によってノズル列が構成されている。
【0018】
これらの供給口形成基板24、インク室形成基板26、ノズルプレート28は、例えば、ステンレス製の板材をプレス加工することで作製されている。そして、流路ユニット16は、インク室形成基板26の一方の表面に(図2中下側)にノズルプレート28を、他方の表面(同上側)に供給口形成基板24をそれぞれ配置し、これらを接合することで作製される。
【0019】
アクチュエータユニット17は、ヘッドチップとも呼ばれる部材である。このアクチュエータユニット17は、インク導入口19となる通穴及び圧力室30となる通孔を開設した圧力室形成基板31と、インク導入口19となる通穴が開設され、圧力室30の一部を区画する振動板32と、インク導入口19の一部となる通穴、供給側連通口33の一部となる通孔、及びノズル連通口23の一部となる通孔を開設した蓋部材34と、圧電振動子35とによって構成される。
【0020】
このアクチュエータユニット17は、圧力室形成基板31の一方の表面に蓋部材34を、他方の表面に振動板32をそれぞれ配置して各部材を接合し、その後、振動板32の表面に圧電振動子35を形成することで作製される。
これらの各部材の中で圧力室形成基板31、振動板32、及び、蓋部材34は、アルミナや酸化ジルコニウム等のセラミックスで作製されており、焼成によって接合される。
【0021】
上記の圧電振動子35は、所謂撓みモードの圧電振動子であり、圧力室30とは反対側の振動板32の表面に圧力室30毎に形成されている。この圧電振動子35の幅は、圧力室30の幅と略等しく、長さは圧力室30の長さよりも少し長い。即ち、圧電振動子35は、圧力室30の長手方向を覆うように形成されている。この圧電振動子35は、圧電体層37と駆動電極38と共通電極39とによって構成される多層構造であり、駆動電極38と共通電極39とによって圧電体層37を挟んでいる。駆動電極38には、駆動信号の供給源(図示せず)が導通、即ち、電気的に接続される。そして、共通電極39は、例えば接地電位に調整される。
【0022】
駆動電極38に駆動信号が供給されると、駆動電極38と共通電極39との間には電位差に応じた電場が発生する。この電場は圧電体層37に付与され、圧電体層37は付与された電場の強さに応じて変形する。即ち、駆動電極38の電位を高くする程、圧電体層37は電場と直交する方向に収縮し、圧力室30の容積を少なくするように振動板32を変形させる。
【0023】
そして、このアクチュエータユニット17と上記の流路ユニット16とは、これらの間に保温用ヒータ40を介在させた状態で接合される。例えば、蓋部材34と保温用ヒータ40との間、及び、保温用ヒータ40と供給口形成基板24との間にシート状の接着剤を介在させ、加圧することで接着される。
【0024】
保温用ヒータ40は、上記溶解用ヒータ20と同様に、ステンレス箔をポリイミド等の絶縁材によってラミネートした構成とされており、ステンレス箔部分の電極(図示せず)に通電することにより発熱し、記録ヘッド3Aの流路内に満たされたホットメルトインクの温度が低下して固化しないように保温する役目を果たす。この保温用ヒータ40には、インク導入口19、供給側連通口33、及びノズル連通口23の一部となる通孔が開設されている。
【0025】
このように構成された記録ヘッド3Aには、固体インク供給部15からインク導入口19、共通インク室25がノズル列毎に形成され、共通インク室25から供給側連通口33、圧力室30、及びノズル連通口23を通じてノズル開口27に至る一連の液体流路がノズル開口27毎に形成されている。使用時において、この液体流路内は、溶解用ヒータ20によって加熱されて液状に溶解したホットメルトインクで満たされている。そして、圧電振動子35を変形させることで対応する圧力室30が収縮或いは膨張し、圧力室30内のホットメルトインクに圧力変動が生じる。このインク圧力を制御することで、ノズル開口27からホットメルトインクをインク滴(液滴の一種)として吐出させることができる。例えば、定常容積の圧力室30を一旦膨張させた後に急激に収縮させると、圧力室30内の膨張に伴ってホットメルトインクが充填され、その後の急激な収縮により圧力室30内のホットメルトインクが加圧されてインク滴が吐出される。
【0026】
次に、記録ヘッド3Bについて説明する。図3に例示した記録ヘッド3Bは、振動子ユニット43、この振動子ユニット43を収納可能なケース44、このケース44の先端面に接合される流路ユニット45等を備えている。
【0027】
上記のケース44は、振動子ユニット43を収納するための収納空部46を有するブロック状部材であり、例えば樹脂(エポキシ樹脂等)を成型することで作製される。上記の振動子ユニット43は、櫛歯状に形成した複数の圧電振動子47と、各圧電振動子47が接合される固定板48と、各圧電振動子47に駆動信号等を供給するためのフレキシブルケーブル49とを備えている。
【0028】
圧電振動子47は、例えば、圧電体層と電極層とを交互に積層した圧電板を櫛歯状に切り分けることで作製された積層型の圧電振動子であって、積層方向に直交する方向に伸縮可能な縦振動モードの圧電振動子である。上記の固定板48は、厚さが1ミリ程度の板状部材であり、圧電振動子47からの反力を受け止める部材である。本実施形態では、固定板48を、金属材料の一種であるステンレスによって作製している。上記のフレキシブルケーブル49は、可撓性を有するフィルム状の配線部材である。そして、フレキシブルケーブル49の一端部は圧電振動子47の表面に半田付けされ、他端部は配線基板50に半田付けされている。
【0029】
この圧電振動子47を構成する圧電体層に電場を付与すると、即ち、フレキシブルケーブル49を介して駆動信号を供給すると、上記の自由端部分が素子長手方向(積層方向とは直交する方向)に伸縮する。例えば、充電によって振動子電位を上昇させると圧電振動子47は素子長手方向に収縮し、放電によって振動子電位を下降させると圧電振動子47は素子長手方向に伸長する。
【0030】
上記の流路ユニット45は、液体供給口52から圧力室53を経てノズル開口54に至る一連の個別液体流路を有する板状の部材である。この流路ユニット45は、圧力室53や液体供給口52となる空部や溝部等を有する流路形成基板55と、これらの空部や溝部の開口を封止して圧力室53や液体供給口52の一部を区画する振動板56と、ノズル開口54が複数穿設されたノズルプレート57を備えている。そして、流路形成基板55の一方の表面、即ち、ケース側の表面に振動板56を接合し、流路形成基板55の他方の表面、即ち、振動板接合面とは反対側の表面にノズルプレート57を接合している。
【0031】
上記のノズルプレート57は、ドット形成密度に対応したピッチで複数(例えば180個)のノズル開口54を列状に穿設した金属製の薄いプレートである。本実施形態では、このノズルプレート57をステンレス製の板材によって構成している。
【0032】
上記の振動板56は、支持板58の表面に弾性体膜59を積層した二重構造である。本実施形態では、金属板の一種であるステンレス板を支持板58とし、この支持板58の表面にPPS(ポリフェニレンサルファイド)やPI(ポリイミド)製の樹脂フィルムを弾性体膜59としてラミネートした複合板材を用いて振動板56を作製している。この振動板56には、圧力室容積を変化させるダイヤフラム部が設けられている。また、この振動板56には、リザーバ60の一部を封止するコンプライアンス部が設けられている。
【0033】
上記のダイヤフラム部は、エッチング加工等によって支持板58を部分的に除去することで作製される。即ち、このダイヤフラム部は、圧電振動子47の先端面が接合される島部61と、この島部61を囲う薄肉弾性部62とからなる。上記のコンプライアンス部は、リザーバ60に貯留された液体の圧力変動を吸収するためのダンパー部分である。このダンパー部分もまた、貯留空部の開口面に対向する領域の支持板58をエッチング加工等によって除去し、弾性体膜59のみにすることで作製される。
【0034】
そして、上記の島部61には圧電振動子47の先端面が接合されているので、自由端部を伸縮させることで圧力室容積を変化させることができる。例えば、圧電振動子47を充電して自由端部を素子長手方向に収縮させると島部61が引っ張られる。これにより島部61が移動し、圧電振動子47の放電状態と比べて、圧力室容積を増大させることができる。また、充電状態の圧電振動子47を放電して自由端部を素子長手方向に伸長させると、島部61が圧力室53側に押される。これにより、圧電振動子47の充電状態に比べて、圧力室容積を減少させることができる。
【0035】
上記のキャリッジ4内のカートリッジ装着部2には液体を貯留した液体カートリッジ63(図1参照)が装着されており、供給針ユニット64を介して液体カートリッジ63に貯留された液体が記録ヘッド3B内に供給される。なお、液体供給源としては、液体カートリッジ63に限らず、液体貯留パック(液体を貯留した袋体)を用いてもよい。
【0036】
本実施形態における供給針ユニット64は、液体供給針65と針ホルダ66とから概略構成されている。液体供給針65は、液体カートリッジ63の内部に挿入される部材であり、液体カートリッジ63内に貯留された液体を針内に導入する。この液体供給針65の先端部は円錐状に尖っており、針内外を連通する液体導入孔が複数穿設されている。針ホルダ66は、液体供給針65を取り付けるための部材であり、その表面には液体供給針65の根本部分を止着するための台座66´を形成している。
【0037】
この供給針ユニット64は、ケース44の取付面上に配設されている。この配設状態において、液体出口とケース44の接続突起とは、パッキン67を介して液密状態で連通される。そして、接続突起の内側には、ケース44内を貫通する液体供給路68が形成されている。この液体供給路68は、流路ユニット45のリザーバ60に連通している。従って、液体カートリッジ63内に貯留された液体は、液体供給路68を通じてリザーバ60に流入する。
【0038】
従って、これらの記録ヘッド3B及び供給針ユニット64では、液体供給針65からリザーバ60及び圧力室53を通ってノズル開口54に至る一連の液体流路が形成される。そして、圧電振動子47を作動させると、上記したように圧力室容積を変化させることができる。この圧力室容積の変動により、圧力室53内の液体には圧力変動が生じるので、圧力室53内における液体圧力を変化させることができ、ノズル開口54から液滴を吐出させることができる。例えば、圧電振動子47を充電して圧力室53を膨張させ、その後、圧電振動子47を急激に放電して圧力室53を収縮させると、圧力室53の膨張によって圧力室53内に流入した液体が急激に加圧され、ノズル開口54から液滴が吐出される。
【0039】
次に、上記記録ヘッド3A,3Bから吐出させる液体(インク)について説明する。このプリンタは、複数種類のモード(本発明における噴射モードの一種)で記録動作が行える。具体的には、点字形成モードと印刷モードの2種類である。ここで、点字形成モードとは、コピー用紙等の記録紙6の表面に、点字を構成する突起(本発明における小突起の一種。以下、点字用突起80という。図7参照。)を形成するモードであり、本発明における小突起形成モードの一種である。また、印刷モードとは、記録紙6上に文字や画像を印刷するモードであり、本発明における他噴射モードの一種である。なお、上記の記録紙6は、本発明における吐出対象物の一種であり、印刷記録媒体の一種でもある。
【0040】
上記の点字形成モードにおいて、記録ヘッド3Aは点字用突起の核81(本発明における小突起基部の一種,図7参照)を形成するためのホットメルトインクを本発明の第1液として吐出し、記録ヘッド3Bはコーティング層82(図7参照)を形成するためのクリアインクを第2液として吐出する。また上記の印刷モードにおいて、記録ヘッド3Bは、印刷用インク(印刷用インク)を第3液として吐出する。この際、印刷用インクが貯留された液体カートリッジを、クリアインクが貯留されたカートリッジに替えてカートリッジ装着部2に装着する。これにより、記録ヘッド3Bが吐出する液体を容易に交換することが可能であり、記録ヘッド3Bに印刷機能とコーティング層形成機能の2つの用途を持たせることが容易となる。
【0041】
ホットメルトインクとしては、フタル酸エステル化合物に樹脂を混合したものをビヒクルとし、このビヒクルに色材を加えたものを使用する。このホットメルトインクの組成には添加物の種類と添加量とによって種々の組み合わせがあるが、代表として図4に示すような4つのタイプを挙げることができる。
このホットメルトインクは、融点が例えば70℃〜120℃の常温よりも高い範囲にある。そして、記録ヘッド3A内の高温に保たれた液体流路内から常温下に吐出された後、記録紙6に着弾すると熱が奪われ固化していく。即ち、ホットメルトインクは、記録紙6への浸透性が低く堆積性を有するため、このホットメルトインクを第1液として吐出することにより記録紙6上に点字用突起の核81を容易に形成することができる。また、記録ヘッド3Aのノズル開口27の開口径は、記録ヘッド3Bのノズル開口54のものと比べて大きめに設定されている。これにより、一度により多くの液体を吐出させることができ、より高速に点字用突起の核81を形成することができる。
【0042】
上記のクリアインクには、例えば、ポリアリルアミン等のアミン/イミン系の樹脂が好適に用いられる。これは、固化時における耐摩耗性がホットメルトインクよりも高いこと、記録紙6に対する浸透性が高いこと、及び、表面張力が極めて低い等の理由による。なお、クリアインクの表面張力を低くするため、トリエチレングリコールモノブチルエーテルやヘキサンジオール等の界面活性剤や浸透性溶剤を添加してもよい。
【0043】
上記の印刷用インクは、顔料濃度や保湿剤濃度等が画像印刷等の用途に適するように調整されている。そして、本実施形態では4色の印刷用インクを用意している。具体的には、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクが用意されている。そして各色の印刷用インクはそれぞれ1列のノズル列から吐出させている。
【0044】
また、例示した液体カートリッジ63は、情報記憶素子の一種である接点ROM70(図5参照)を備えている。この接点ROM70は、記憶内容を外部から書き換え可能であって、カートリッジ装着部2から取り外した状態においても記憶内容を保持可能な素子によって構成されている。
この接点ROM70には、その液体カートリッジ63に貯留されている液体の種類を示す液体種類情報、液体の残量を示す液体残量情報、最初に装着された日を示す使用開始日情報といった各種情報が記憶されている。そして、この接点ROM70は、カートリッジ装着部2への装着状態でカートリッジ装着部2に設けられた接点端子71(図5参照)に電気的に接続される。なお、この接点端子71は制御部72と電気的に接続されている。
【0045】
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。図5に示すように、このプリンタ1は、プリンタコントローラ75と、プリントエンジン76とから概略構成されている。
【0046】
プリンタコントローラ75は、CPU,ROM,RAMを備えた制御部72や、記録ヘッド3A,3Bに供給するための駆動信号を発生する駆動信号発生回路77等を備えている。一方、プリントエンジン76は、パルスモータ10と、紙送りモータ78と、記録ヘッド3A,3B等を備えている。そして、これらの各部は、上記の制御部72によってその動作が制御可能である。
【0047】
上記の制御部72は、このプリンタ1における制御を行う部分である。この制御部72は、接点端子71と電気的に接続されているので、装着された液体カートリッジ63の接点ROM70に記憶された各種情報を読み出せる。このため、制御部72は、読み出した情報に基づいて液体カートリッジ63に貯留されている液体の種類等を認識できる。また、制御部72は、接点ROM70に記憶された各種情報を書き換えることもできる。
【0048】
この制御部72は、本発明における駆動制御手段としても機能する。即ち、制御部72は、複数の噴射モードの中から1つのモードを選択し、選択したモードに応じて記録ヘッド3A,3Bの動作を制御する。本実施形態では、制御部72は、点字形成モードと印刷モードの何れか一方のモードを選択できる。このモードの選択は、選択スイッチ(図示せず)の操作によって行ってもよく、制御部72に選択させてもよい。そして、制御部72に選択させる場合には、接点ROM70に記憶された情報を利用する構成が好ましい。これは、本実施形態では吐出させる液体の種類がモード毎に相違することによる。即ち、接点ROM70に記憶された情報を参照することで、制御部72は、カートリッジ装着部2に装着されたカートリッジ(貯留された液体)の種類を認識できるので、使用するモードを自動的に決定できる。
【0049】
点字形成モードにおいて、制御部72は、ホストコンピュータ等の上位装置から送信されてくる点字形成データに基づき、点字用突起80を形成する場所、点字用突起80の大きさ(着弾面積)、点字用突起80の高さ(液滴の吐出量)等を決定し、記録ヘッド3A,3Bを制御するためのドットパターンデータを生成する。そして、制御部72は、この生成したドットパターンデータを記録ヘッド3に転送する。また、制御部72は、駆動信号設定手段としても機能し、点字用突起80の形成に適した波形形状の点字用駆動信号を設定し、この点字用駆動信号を駆動信号発生回路77から発生させる。また、制御部72は、記録ヘッド3Aの液体流路内のホットメルトインクが液状を維持するように溶解用ヒータ20及び保温用ヒータ40の温度を制御する。さらに、制御部72は、パルスモータ10を作動させてキャリッジ4(記録ヘッド3A,3B)を所望の位置に移動させたり、紙送りモータ78を作動させて記録紙6を送り出したりもする。
【0050】
印刷モードにおいて、制御部72は、上位装置から送信されてくる印刷データに基づいて色毎のドットパターンデータを生成し、記録ヘッド3Bに転送する。また、制御部72(駆動信号設定手段)は、印刷に適した波形形状の印刷用駆動信号を設定し、この印刷用駆動信号を駆動信号発生回路77から発生させる。そして、この印刷モードにおいても、制御部72は、パルスモータ10を作動させてキャリッジ4(記録ヘッド3A,3B)を所望の位置に移動させたり、紙送りモータ78を作動させて記録紙6を送り出したりする。
【0051】
上記の駆動信号発生回路77は、駆動信号発生手段として機能する部分であり、制御部72による制御の下、記録ヘッド3A,3Bに供給するための駆動信号を発生する。本実施形態の駆動信号発生回路77は、図6に示すように、点字形成モードにおいて1種類の点字用駆動信号(COM1)を発生し、印刷モードにおいて3種類の印刷用駆動信号(COM2〜COM4)の何れかを選択的に発生する。
【0052】
以下、各駆動信号について説明する。上記の点字用駆動信号は、図6(a)に示すように、液滴の吐出量を可及的に増やす様に設定した点字駆動パルスDP1を、1単位周期内に3個等間隔で発生させる一連の信号であり、記録ヘッド3Aの圧電振動子35に供給される。この点字駆動パルスDP1は、駆動電圧、即ち、最大電位と最低電位の電位差を、圧電振動子35が許容し得る程度まで可及的に高く設定した駆動パルスである。そして、この点字駆動パルスDP1が1つ圧電振動子35に供給される毎に、ノズル開口27からは最大量のインク滴(この例では約20pL)が吐出される。従って、1単位周期では、約60pLのインク滴を吐出させることができる。
【0053】
上記の印刷用駆動信号は、例えば、高速印刷に適した第1印刷用駆動信号COM2と、高解像度の印刷時に用いられる第2印刷用駆動信号COM3と、超高解像度の印刷時に用いられる第3印刷用駆動信号COM4とからなる。これらの印刷用駆動信号は記録ヘッド3Bの圧電振動子47に供給される。
【0054】
第1印刷用駆動信号COM2及び第2印刷用駆動信号COM3は、スモールドット、ミドルドット、及び、ラージドットからなるドットセットを選択的に記録可能な駆動信号である。即ち、これらの駆動信号では、非記録を含めて、各ドットを4階調で記録することができる。そして、第1印刷用駆動信号COM2と第2印刷用駆動信号COM3とは、各ドットにおけるインク量の組み合わせが相違する。
【0055】
上記の第1印刷用駆動信号COM2は、第1スモールドット駆動パルスDP2を1単位周期内に3個等間隔で発生させる一連の信号である。この第1スモールドット駆動パルスDP2は、約13pLのインク滴をノズル開口54から吐出させる駆動パルスであり、基本的な波形形状は上記の点字駆動パルスDP1と同じである。但し、この第1スモールドット駆動パルスDP2では、駆動電圧を上記の点字駆動パルスDP1よりも低く設定している点に相違がある。また、この第1スモールドット駆動パルスDP2では、使用環境の温度情報等に応じて、この駆動パルスを構成している波形要素の発生時間や電位差を変更している点も相違する。
【0056】
この第1印刷用駆動信号COM2では、記録階調が非記録の場合、何れの第1スモールドット駆動パルスDP2も圧電振動子47に供給しない。そして、記録階調がスモールドットの場合には1単位周期あたり1つの第1スモールドット駆動パルスDP2を圧電振動子47に供給し、ミドルドットの場合には2つの第1スモールドット駆動パルスDP2を圧電振動子47に供給する。同様に、記録階調がラージドットの場合には3つの第1スモールドット駆動パルスDP2すべてを圧電振動子47に供給する。これにより、記録階調が非記録の場合にはインク滴は吐出されない。また、スモールドットの場合には約13pLのインク滴が1単位周期内に1回吐出され、記録紙6上にはこのインク滴によるスモールドットが記録される。記録階調がミドルドットの場合には、約13pLのインク滴が1単位周期内に2回吐出され、記録紙6上には約26pLのインク滴によるミドルドットが記録される。記録階調がラージドットの場合には約13pLのインク滴が1単位周期内に3回続けて吐出され、記録紙6上には約40pLのインク滴によるラージドットが記録される。
【0057】
上記の第2印刷用駆動信号COM3は、微振動パルスDP3と、第2スモールドット駆動パルスDP4と、ミドルドット駆動パルスDP5とを1単位周期内に備えた一連の信号である。微振動パルスDP3は、メニスカス、即ち、ノズル開口54で露出しているインクの自由表面を、インク滴を吐出させない程度に移動させる信号である。第2スモールドット駆動パルスDP4は、上記の第1スモールドット駆動パルスDP2での吐出量よりも少ない量のインク滴を吐出させる駆動パルスである。本実施形態では、約4pLのインク滴を吐出させる信号として構成されている。ミドルドット駆動パルスDP5は、ミドルドットの形成に適した量のインク滴を吐出させる駆動パルスである。本実施形態では、約12pLのインク滴を吐出させる信号として構成されている。なお、このミドルドット駆動パルスDP5では、直前に第2スモールドット駆動パルスDP4が供給されると、上記の量(約12pL)よりも多い量のインク滴が吐出される。
【0058】
この第2印刷用駆動信号COM3では、記録階調が非記録の場合には微振動パルスDP3を圧電振動子47に供給する。これにより、メニスカスが微振動し、インクの増粘が防止される。また、記録階調がスモールドットの場合には第2スモールドット駆動パルスDP4を圧電振動子47に供給し、ミドルドットの場合にはミドルドット駆動パルスDP5を圧電振動子47に供給する。これにより、各々のインク量に応じた大きさのドットが記録紙6上に記録される。さらに、記録階調がラージドットの場合には第2スモールドット駆動パルスDP4とミドルドット駆動パルスDP5とを続けて圧電振動子47に供給する。この場合、第2スモールドット駆動パルスDP4とミドルドット駆動パルスDP5の相乗効果によって約20pLのインク滴が吐出され、このインク滴によってラージドットが記録される。
【0059】
上記の第3印刷用駆動信号COM4は、超高解像度の印刷時に用いられる駆動信号であり、1単位周期内に、1つの微振動パルスDP6と1つの第3スモールドット駆動パルスDP7とを有する一連の信号である。ここで、微振動パルスDP6は、上記した微振動パルスDP3と同様の機能を発揮し、インクの増粘を防止するものである。第3スモールドット駆動パルスDP7は、上記の第2スモールドット駆動パルスDP4よりもさらに少量のインク滴を吐出させる駆動パルスであり、本実施形態では約2pLのインク滴を吐出させる。また、この第3印刷用駆動信号COM4における単位周期の長さは、上記の第1印刷用駆動信号COM2や第2印刷用駆動信号COM3の単位周期の長さよりも短い。
【0060】
この第3印刷用駆動信号COM4では、全てのドットを第3スモールドット駆動パルスDP7による極小のスモールドットで記録する。即ち、ドットを記録する場合には第3スモールドット駆動パルスDP7を圧電振動子47に供給し、非記録の場合には微振動パルスDP6を圧電振動子47に供給する。
【0061】
次に、上記構成のプリンタ1における動作について説明する。
【0062】
電源が投入されると制御部72は、所定のイニシャライズ動作を実行する。このイニシャライズ動作では、キャリッジ4を主走査方向に動かしてキャリッジ4(記録ヘッド3A,3B)の位置認識等を行ったり、ワークエリア内の不要な情報をクリアしたりする。イニシャライズ動作を行ったならば、制御部72は、接点端子71を通じて接点ROM70にアクセスし、記憶されている各種情報を読み出す。そして、制御部72(駆動制御手段)は、読み出した情報に基づき、装着されている液体カートリッジ63の種類、即ち貯留されている液体の種類を認識し、モードを設定する。この場合、制御部72は、装着されている液体カートリッジ63が印刷用インクを貯留している場合には印刷モードを設定する。また、装着されている液体カートリッジ63がクリアインクを貯留している場合には点字形成モードを設定する。
【0063】
印刷モードにおいて制御部72(駆動制御手段)は、上記の印刷用インクを吐出させる。このとき、制御部72は、上位装置からの印刷データに基づき、第1印刷用駆動信号COM2〜第3印刷用駆動信号COM4の何れかを選択して駆動信号発生回路77から発生させる。また、制御部72は、パルスモータ10や紙送りモータ78を制御し、キャリッジ4を主走査方向に移動させると共に記録紙6を副走査方向に送り出す。さらに、制御部72は、キャリッジ4や記録紙6の移動に同期させて、駆動パルスDP2〜CP7の圧電振動子47への供給を制御する。この一連の動作によって、記録紙6上には、印刷データに基づく画像等が記録される。
【0064】
一方、点字形成モードにおいて制御部72(駆動制御手段)は、記録ヘッド3Aからホットメルトインクを吐出させ、記録ヘッド3Bからはクリアインクを吐出させる。即ち、制御部72は、先ず核形成工程を行い、ホットメルトインクを記録紙6上に着弾させて点字用突起の核81を形成する。この場合、図7(a)及び(b)に示すように、記録ヘッド3Aの主走査に連動させて突起を形成する領域に対し、規定量のホットメルトインクを着弾させる。上記したように、このホットメルトインクは、記録ヘッド3Aから吐出された後、熱が奪われることにより固化していき記録紙6上に堆積し易い。そのため点字用突起の核81を容易に形成することができる。このため、固化のための特別な機構が不要であり、装置構成の簡素化が図れる。
【0065】
点字用突起の核81を形成したならば、コーティング工程に移行し、この核81を覆うようにクリアインクを吐出させる。このコーティング工程では、例えば、図7(c)に示すように、核81よりも少し広い領域にクリアインクを吐出させる。
このクリアインクは、固化することで点字用突起の核81を保護するコーティング層82となる。点字は、点字用突起80を指先で触れることで認識されるものであり、高い耐摩耗性が要求される。本実施形態のように、クリアインクでコーティング層82を形成すると、指先で擦ったりしても点字用突起80が剥がれたりせず耐久性を高めることができる。さらに、コーティング層82が核81を保護するので、ホットメルトインクのような耐摩耗性の低い液体を使用することができる。これにより、核81の形成に用いる液体について選択の自由度を高めることができる。
【0066】
また、このクリアインクは、吐出対象物としての記録紙6に対して高い浸透性を有する。このため、図8に示すように、吐出したクリアインクの一部82aが記録紙内に浸透した状態で固化する。これにより、記録紙内に浸透した部分82aがアンカーと同様に機能し、コーティング層82の記録紙6に対する接合強度を高める。その結果、形成した点字用突起80を記録紙6から剥がれ難くすることができ、耐久性を高めることができる。なお、このアンカー効果を高めるべく、クリアインクに含まれるスチレンアクリル系の樹脂(アクリル樹脂やウレタン樹脂等)の濃度を高めることが好ましい。
また、ホットメルトインク或いはクリアインクの吐出量を制御し、点字用突起80のエッジ部分(図7に符号Rで示す部分)をなだらかな曲面で構成することが好ましい。このように構成することで、突起自体にかかる力に関し、単位面積当たりの負荷を分散することができる。即ち、面圧を下げることができる。これにより、点字用突起80の耐久性を高めることができる。
【0067】
さらに、このクリアインクを記録紙6の全面に塗布し、記録紙6の表面をコーティング層で覆ってもよい。この場合、コーティング層が透明であるので、クリアインクを介して点字用突起80を視認することができる。このように、点字用突起80を視認可能にすると、点字作成者が作成された点字を確認する際に便利である。
【0068】
以上説明したように、このプリンタ1では、ホットメルトインクとクリアインクとを吐出することで点字用突起80を形成できる。このため、インク吐出後において特別な処理を行わなくて済み、装置構成を簡素化できる。即ち、インクを吐出させる機構があれば足り、簡単な装置構成で耐摩擦性の高い小突起を容易に形成することが可能となる。
【0069】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
【0070】
例えば、点字用突起の核81を形成するホットメルトインク(第1液)に関し、例示したものに限らず、記録紙6等の吐出対象物への浸透性が低く堆積性を有するものであればよい。
【0071】
また、本発明はプリンタ1に限定されるものではない。例えば、立体画像プリンタや3次元造形装置等、吐出対象物の表面に小突起を形成可能な液体噴射装置であれば、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プリンタの構成を説明する斜視図である。
【図2】記録ヘッド3Aの部分拡大断面図である。
【図3】記録ヘッド3Bの部分拡大断面図である。
【図4】ホットメルトインクの組成別タイプを示した図である。
【図5】プリンタの電気的構成を説明するブロック図である。
【図6】(a)〜(d)は、駆動信号発生回路から発生する駆動信号を説明する図である。
【図7】(a)〜(c)は、点字用突起の形成を説明する模式図である。
【図8】点字用突起を説明する断面図である。
【符号の説明】
1…プリンタ,2…カートリッジ装着部,3A,3B…記録ヘッド,4…キャリッジ,5…ガイドロッド,6…記録紙,7…駆動プーリー,8…遊転プーリー,9…タイミングベルト,10…パルスモータ,12…ワイパー機構,13…キャッピング機構,15…固体インク供給部,16…流路ユニット,17…アクチュエータユニット,18…供給部,19…インク導入口,20…溶解用ヒータ,22…インク供給口,23…ノズル連通口,24…供給口形成基板,25…共通インク室,26…インク室形成基板,27…ノズル開口,28…ノズルプレート,30…圧力室,31…圧力室形成基板,32…振動板,33…供給側連通口,34…蓋部材,35…圧電振動子,37…圧電体層,38…駆動電極,39…共通電極,40…保温用ヒータ,43…振動子ユニット,44…ケース,45…流路ユニット,46…収納空部,47…圧電振動子,48…固定板,50…配線基板,52…液体供給口,53…圧力室,54…ノズル開口,55…流路形成基板,56…振動板,57…ノズルプレート,58…支持板,59…弾性体膜,60…リザーバ,61…島部,63…液体カートリッジ,64…供給針ユニット,65…液体供給針,66…針ホルダ,66´…台座,67…パッキン,68…液体供給路,70…接点ROM,71…接点端子,72…制御部,75…プリンタコントローラ,76…プリントエンジン,77…駆動信号発生回路,78…紙送りモータ,80…点字用突起,81…点字用突起の核,82…コーティング層
Claims (11)
- 常温で固体状の吐出素材を加熱手段により加熱して液状にし、液状となった前記吐出素材をノズル開口から第1液として液滴状態で吐出可能な第1液体噴射ヘッドと、
吐出対象物への浸透性を有すると共に固化時における耐摩耗性が前記第1液よりも高い第2液をノズル開口から液滴状態で吐出可能な第2液体噴射ヘッドと、
前記第1液体噴射ヘッド及び第2液体噴射ヘッドの動作を制御する駆動制御手段とを備え、
該駆動制御手段は、吐出対象物の表面に小突起を形成可能な小突起形成モードにおいて、前記第1液体噴射ヘッドから前記第1液を吐出させることで小突起基部を吐出対象物上に形成した後、該小突起基部を覆うように前記第2液体噴射ヘッドから前記第2液を吐出させることでコーティング層を形成することを特徴とする液体噴射装置。 - 前記小突起形成モードが吐出対象物の表面に点字用突起を形成する点字形成モードであり、
前記吐出素材がホットメルトインクであることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。 - 前記第2液体噴射ヘッドは、前記第1液及び前記第2液とは異なる第3液を吐出可能に構成され、
前記駆動制御手段は、前記小突起形成モードを含む複数の噴射モードの中から1つの噴射モードを選択可能であり、
選択された噴射モードが前記小突起形成モードとは異なる他噴射モードである場合に、前記駆動制御手段は、前記第2液体噴射ヘッドから前記第3液を吐出させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置。 - 前記他噴射モードが印刷記録媒体上に文字や画像を印刷する印刷モードであり、
前記第3液が印刷用のインクであることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。 - 液体を貯留する液体カートリッジが装着されるカートリッジ装着部を前記第2液体噴射ヘッドが取り付けられたキャリッジに設け、
該カートリッジ装着部に、前記第2液を貯留した液体カートリッジを装着したことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の液体噴射装置。 - 前記第3液を貯留した液体カートリッジを、前記他噴射モードにおいて前記第2液が貯留された液体カートリッジに替えて前記カートリッジ装着部に装着可能に構成したことを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
- 前記コーティング層を、その一部を吐出対象物内に浸透させた状態で形成することを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の液体噴射装置。
- 前記第2液が透明樹脂を含有したクリアインクであることを特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載の液体噴射装置。
- 常温で固体状の吐出素材を加熱して液状にし、
液状となった前記吐出素材を第1液体噴射ヘッドから第1液として液滴状態で吐出させることで小突起基部を吐出対象物上に形成し、
該小突起基部を覆うように、吐出対象物への浸透性を有すると共に固化時における耐摩耗性が前記第1液よりも高い第2液を第2液体噴射ヘッドから液滴状態で吐出させることでコーティング層を形成することを特徴とする液体噴射による小突起形成方法。 - 前記吐出素材がホットメルトインクであることを特徴とする請求項9に記載の液体噴射による小突起形成方法。
- 前記コーティング層を、その一部を吐出対象物内に浸透させた状態で形成することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の液体噴射による小突起形成方法。
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JP2003044963A JP2004249685A (ja) | 2003-02-21 | 2003-02-21 | 液体噴射装置、及び、液体噴射による小突起形成方法 |
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JP2003044963A JP2004249685A (ja) | 2003-02-21 | 2003-02-21 | 液体噴射装置、及び、液体噴射による小突起形成方法 |
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JP2004249685A true JP2004249685A (ja) | 2004-09-09 |
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JP2003044963A Pending JP2004249685A (ja) | 2003-02-21 | 2003-02-21 | 液体噴射装置、及び、液体噴射による小突起形成方法 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2004249685A (ja) |
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2003
- 2003-02-21 JP JP2003044963A patent/JP2004249685A/ja active Pending
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