以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、代表的なインクジェット式記録装置であるインクジェットプリンタの斜視図である。まず、図1に基づき、全体構成について説明する。
インクジェットプリンタ1は、キャリッジ2がガイド軸3に移動可能に取り付けられており、このキャリッジ2は駆動プーリ4と遊転プーリ5との間に掛け渡したタイミングベルト6に接続されている。駆動プーリ4はパルスモータ7の回転軸に接合されており、パルスモータ7の駆動によってキャリッジ2が記録紙8の幅方向(主走査方向)に移動される。キャリッジ2には、その上側にインクカートリッジ9が着脱可能に取り付けられており、記録紙8との対向面(下面)に記録ヘッド10が取り付けられている。また、ガイド軸3の下方には、これと平行にプラテン12が配置されている。
このプラテン12は、記録紙8を案内する板状部材によって構成されている。そして、このプラテン12における紙送り方向(副走査方向に相当)の上流側には、図2に示すように、ローラ窓部12aに臨ませた状態で一対の紙送りローラ13a,13bを配置している。これらの紙送りローラ13a,13bは、紙送りモータ13cの作動によって回転駆動し、記録紙8を紙送り方向に移送する。
ガイド軸3の一方の端部には、ギャップ調整機構を設けている。本実施形態のギャップ調整機構は、記録ヘッド10を上下方向に移動させることで、記録ヘッド10のノズル開口33(図4参照)からプラテン12までのギャップ(以下、プラテンギャップと称する。)を調整する機構である。このギャップ調整機構は、図2に示すように、ガイド軸3を回動中心からずれた偏心状態で支持する偏心カム14と、この偏心カム14に連結された操作レバー15と、操作レバー15の移動範囲に対応する位置に設けられ、操作レバー15の位置に応じて作動状態が変化するプラテンギャップ検出センサ16とから構成されている。
このギャップ調整機構では、調整レバー15を支軸15aを中心に回動することにで偏心カム14が回動し、ガイド軸3が上下方向に移動する。そして、このガイド軸3の上下方向への移動に伴ってキャリッジ2が上下方向に移動し、プラテンギャップが変更される。例えば、調整レバー15を<0>側に倒すと、図2中に実線で示すように、ガイド軸3が下側に移動する。この状態では、キャリッジ2や記録ヘッド10(ノズル開口33)がプラテン12に接近した通常状態となる。一方、調整レバー15を<+>側に倒すと、図2中に二点鎖線の仮想線で示すように、ガイド軸3が上方に移動する。この状態では、記録ヘッド10(ノズル開口33)が、通常状態よりもプラテン12から離隔し、プラテンギャップが拡大される。なお、以下の説明では、プラテンギャップが拡大された状態を「ギャップ大」の状態ということにする。
そして、普通紙等の比較的薄手の記録紙では、調整レバー15を<0>側(薄紙側)に倒してプラテンギャップを通常状態に設定する。一方、ボード紙等の比較的厚手の記録紙8では、調整レバー15を<+>側(厚紙側)に倒してガイド軸3を引き上げてプラテンギャップをギャップ大の状態にする。このようにプラテンギャップを調整することで、ノズル開口33から記録紙8の記録面までのギャップを記録に適した所定範囲内に収めるようにしている。
また、プラテンギャップ検出センサ16は、本発明のギャップ検出手段の一種であり、本実施形態ではいわゆるマイクロスイッチによって構成している。そして、プラテンギャップ検出センサ16は、調整レバー15が<+>側に倒されると、検出センサ16のスイッチ部が調整レバー15と当接して押されオン状態になる。また、調整レバー15が<+>側の位置から<0>側に向けて倒されると、スイッチ部と調整レバー15との当接状態が解除されてオフ状態に切り替わる。従って、このプラテンギャップ検出センサ16からの検出信号を監視することにより、ノズル開口33から記録紙8までのギャップが通常状態(ギャップ小の状態)であるのか、ギャップ大の状態であるのかを検出することができる。そして、本実施形態では、プラテンギャップ検出センサ16からの検出信号を制御部46(図5参照)に出力しており、プラテンギャップを制御部46で認識可能に構成している。
次に、記録ヘッド10の構造について説明する。図3に示すように、例示した記録ヘッド10は、複数の圧電振動子20…、固定板21、及びフレキシブルケーブル22等をユニット化した振動子ユニット23と、この振動子ユニット23を収納可能なケース24と、ケース24の先端面に接合される流路ユニット25とを備えている。
ケース24は、先端と後端が共に開放した収納空部26を形成した合成樹脂製のブロック状部材であり、収納空部26内には振動子ユニット23が収納固定されている。この振動子ユニット23は、圧電振動子20の櫛歯状先端(即ち、先端面部)を先端側開口に臨ませた姿勢とされており、固定板21が収納空部26の壁面に接着されている。
圧電振動子20は、圧力発生素子の一種であり、電気機械変換素子の一種でもある。この圧電振動子20は、ニードル状に切り分けられた櫛歯状をしており、基端側部分が固定板21上に接合されている。そして、各圧電振動子20…の先端面部は、それぞれ流路ユニット25の島部29に当接固定されている。また、フレキシブルケーブル22は、固定板21とは反対側となる振動子の基端部側面で、各圧電振動子20…と電気的に接続されている。
流路ユニット25は、図4に示すように、流路形成基板30を間に挟んでノズルプレート31を流路形成基板30の一方の面側に配置し、弾性板32をノズルプレート31とは反対側となる他方の面側に配置して積層することで構成されている。
ノズルプレート31は、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル開口33…を列状に開設したステンレス鋼製の薄いプレートである。本実施形態では、180dpiのピッチで96個のノズル開口33…を開設し、これらのノズル開口33…によってノズル列を構成する。そして、このノズル列を、吐出可能なインクの種類(例えば色)に対応させて複数列形成する。
流路形成基板30は、ノズルプレート31の各ノズル開口33…に対応させて圧力室34となる空部を隔壁で区画した状態で複数形成するとともに、インク供給口35及び共通インク室36となる空部を形成した板状の部材であり、例えばシリコンウエハーをエッチング加工することにより形成されている。圧力室34は、偏平な凹室で構成されている。また、圧力室34における共通インク室36から最も離れた位置には、ノズル開口33と圧力室34とを連通するノズル連通口38を板厚方向に貫通させて設ける。
弾性板32は、圧力室34の一方の開口面を封止するダイヤフラム部と、共通インク室36の一方の開口面を封止するコンプライアンス部とを兼ねており、ステンレス鋼鈑39上にPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂フィルム40をラミネート加工した二重構造である。そして、ダイヤフラム部として機能する部分のステンレス鋼鈑39を、環状にエッチング加工して島部29を形成している。
上記した構成を有する記録ヘッド10では、圧電振動子20を放電して振動子長手方向(つまり、縦方向)に伸長させることにより、島部29がノズルプレート31側に押圧され、ダイヤフラム部を構成する樹脂フィルム40が変形して圧力室34が収縮する。また、圧電振動子20を充電して振動子長手方向に収縮させると、樹脂フィルム40の弾性により圧力室34が膨張する。そして、圧力室34の膨張や収縮を制御することにより、圧力室34内のインク圧力が変動してノズル開口33からインク滴が吐出される。
以上のように構成されたプリンタ1は、記録動作の起動指令により、キャリッジ2の紙幅方向への移動に同期させて記録ヘッド10からインク滴を吐出させて主走査すると共に、キャリッジ2の往復移動に連動させて紙送りローラ13a,13bを回転して記録紙8を紙送り方向に移動させて副走査する。その結果、記録紙8には、印刷データに基づく画像や文字等が記録される。
また、このプリンタ1では、階調情報とインク滴の量の対応関係が相違する複数の記録モードで動作することができる。例えば、記録速度の高速化に重点をおいた高速記録モードと、高速記録モードよりも記録の解像度を高めた第1高解像度記録モードと、第1高解像度記録モードよりもさらに記録の解像度を高めた第2高解像度記録モードとによる動作が可能である。
さらに、このプリンタ1では、記録紙8の全域に亘って印刷する縁無し印刷モードでの記録動作が可能である。この縁なし印刷モードでは、主走査のスキャン幅を記録紙8の幅方向一杯まで拡大して幅方向の全域に亘って印刷する。また、記録紙8の前後側についても縁まで一杯に印刷する。この記録動作では、記録紙8の面積よりも幾分広い範囲の印刷データを用意して4辺を越えた領域にまでインク滴を吐出させる。そして、記録紙8に着弾しなかったインク滴による汚れを防止するため、プラテン12における記録紙8の4辺に対応する位置には吸収体窓部17を板厚方向に貫通させて設け、プラテン12の裏面側に、この吸収体窓部17に臨ませて吸収体18を配置する。
この吸収体18は、インクを吸収して内部に保持し得る部材によって構成される。例えば、スポンジ等のフォーム部材や高分子吸収体が好適に用いられる。そして、記録紙8の各縁よりも外側で吐出されたインク滴を吸収体18によって吸収し、保持する。
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。例示したプリンタは、図5に示すように、プリンタコントローラ41とプリントエンジン42とを備えている。
プリンタコントローラ41は、図示しないホストコンピュータ等からの印刷データ等を受信するインターフェース43(以下、外部I/F43という)と、各種データの記憶等を行うRAM44と、各種データ処理のための制御ルーチン等を記憶したROM45と、CPU等からなる制御部46と、クロック信号(CK)を発生する発振回路47と、記録ヘッド10へ供給する駆動信号(COM)を生成する駆動信号生成回路48と、印刷データをドット毎に展開した印字データ(SI)及び駆動信号等をプリントエンジン42に送信するためのインターフェース49(以下、内部I/F49という)とを備えている。
外部I/F43は、例えばキャラクタコード、グラフィック関数、イメージデータの何れか1つのデータまたは複数のデータからなる印刷データをホストコンピュータ等から受信する。また、ホストコンピュータから送信される記録モードを指定する制御コマンド(記録モード設定情報)や、縁無し印刷モードを指定する制御コマンド(縁無し印刷モード設定情報)も、この外部I/F43を通じて入力される。一方、外部I/F43からは、ホストコンピュータに対してビジー信号(BUSY)やアクノレッジ信号(ACK)等を出力する。また、プラテンギャップや縁なし印刷モードの設定により、記録モード設定情報に基づく記録モードが使用できない場合には、不適合の旨を報知するためのエラーコードを外部I/F43を通じてホストコンピュータに送信する。
RAM44は、受信バッファ、中間バッファ、出力バッファ及びワークメモリ(図示せず)等として利用されるものである。受信バッファには、外部I/F43が受信したホストコンピュータからの印刷データが一時的に記憶される。中間バッファには、制御部46によって中間コードに変換された中間コードデータが記憶される。出力バッファには、ドット毎の印字データ(ドットパターンデータ)が展開される。ROM45は、制御部46によって実行される各種制御ルーチン、フォントデータ及びグラフィック関数、各種手続き等を記憶している。
駆動信号生成回路48は、本発明における駆動信号生成手段の一種であり、記録モードに対応して複数種類の駆動信号を生成する。例えば、インク滴の体積量が異なる複数種類の駆動パルスを含ませた駆動信号や、インク滴の体積量が等しい駆動パルスを複数一連に接続した駆動信号を生成する。そして、本実施形態の駆動信号生成回路48は、高速記録モードで使用される第1駆動信号VSD1と、第1高解像度記録モードで使用される第2駆動信号VSD2と、第2高解像度記録モードで使用される第3駆動信号VSD3とからなる3種類の駆動信号を生成可能である。そして、これらの駆動信号では、最小インク量がそれぞれ相違している。なお、各駆動信号については後で詳しく説明する。
制御部46は、受信バッファ内の印刷データを読み出して中間コードに変換し、この中間コードデータを中間バッファに記憶する。また、制御部46は、中間バッファから読み出した中間コードデータを解析し、ROM45内のフォントデータ及びグラフィック関数等を参照して中間コードデータを上記の印字データに展開する。この印字データは、例えば2ビットの階調情報で構成される。
この展開された印字データは出力バッファに記憶されて、記録ヘッド10の1行分に相当する印字データが得られると、この1行分の印字データ(SI)は、内部I/F49を介して記録ヘッド10にシリアル伝送される。出力バッファから1行分の印字データが送信されると、中間バッファの内容が消去されて、次の中間コードに対する変換が行われる。
また、制御部46は、内部I/F49を通じて記録ヘッド10にラッチ信号(LAT)やチャンネル信号(CH)を供給する。これらのラッチ信号やチャンネル信号は、駆動信号(COM)を構成するパルス信号の供給開始タイミングを規定する。
また、制御部46は、記録モード設定手段としても機能し、ホストコンピュータからの記録モード設定情報に基づき、上記した複数の記録モードの中から一つの記録モードを設定する。さらに、印刷モード設定手段としても機能し、ホストコンピュータからの縁無し印刷モード設定情報に基づき、縁無し印刷モード又は通常印刷モード(縁有り印刷モード)を設定する。
さらに、制御部46は、記録モード制限手段としても機能し、プラテンギャップ検出センサ16からの検出信号に基づいてプラテンギャップを把握し、把握したプラテンギャップに応じて、使用可能な記録モードを3種類の記録モード(高速記録モード、第1高解像度記録モード、第2高解像度記録モード)の一部に制限する。また、縁なし印刷モードの設定の有無に応じても、使用可能な記録モードを3種類の記録モードの一部に制限する。なお、この記録モード制限手段の詳細な動作については、後述する。
プリントエンジン42は、記録ヘッド10の電気駆動系11と、キャリッジ2を走行させるパルスモータ7と、紙送りモータ13c等から構成される。
記録ヘッド10の電気駆動系11は、第1シフトレジスタ50及び第2シフトレジスタ51からなるシフトレジスタ回路と、第1ラッチ回路52と第2ラッチ回路53とからなるラッチ回路と、デコーダ54と、制御ロジック55と、レベルシフタ56と、スイッチ回路57と、圧電振動子20とを備えている。そして、各シフトレジスタ50,51、各ラッチ回路52,53、デコーダ54、レベルシフタ56、スイッチ回路57、及び圧電振動子20は、それぞれ記録ヘッド10の各ノズル開口33に対応して複数設けられる。
この記録ヘッド10は、プリンタコントローラ41からの印字データ(階調情報)に基づいてインク滴を吐出する。つまり、プリンタコントローラ41からの印字データ(SI)は、発振回路47からのクロック信号(CK)に同期して、内部I/F49から第1シフトレジスタ50及び第2シフトレジスタ51にシリアル伝送される。プリンタコントローラ41からの印字データは、2ビットのデータであり、非記録、小ドット、中ドット、大ドットからなる4階調を表す。本実施形態では、非記録が階調情報(00)であり、小ドットが階調情報(01)であり、中ドットが階調情報(10)であり、大ドットが階調情報(11)である。
この印字データは、各ドット毎、即ち、各ノズル開口33毎に設定される。そして、全てのノズル開口33に関する下位ビット(ビット0)のデータが第1シフトレジスタ50に入力され、全てのノズル開口33に関する上位ビット(ビット1)のデータが第2シフトレジスタ51に入力される。そして、プリンタコントローラ41からのラッチ信号(LAT)が各ラッチ回路52,53に入力されると、第1ラッチ回路52は印字データの下位ビットのデータをラッチし、第2ラッチ回路53は印字データの上位ビットをラッチする。
各ラッチ回路52,53でラッチされた印字データは、対応するデコーダ54に入力される。このデコーダ54は、2ビットの印字データ(階調情報)を翻訳してパルス選択データを生成する。このパルス選択データは複数ビットで構成されており、各ビットは駆動信号(COM)を構成する各パルス信号に対応している。そして、各ビットの内容[例えば、(0),(1)]に応じて圧電振動子20に対するパルス信号の供給或いは非供給が選択される。なお、パルス信号の供給制御については後で説明する。また、各デコーダ54には、制御ロジック55からのタイミング信号も入力されている。この制御ロジック55は、ラッチ信号(LAT)やチャンネル信号(CH)に基づいてタイミング信号を発生する。
各デコーダ54によって翻訳されたパルス選択データは、上位ビット側から順に、タイミング信号によって規定されるタイミングが到来する毎にレベルシフタ56に入力される。例えば、印刷周期における最初のタイミングではパルス選択データの最上位ビットのデータがレベルシフタ56に入力され、2番目のタイミングではパルス選択データにおける2番目のビットのデータがレベルシフタ56に入力される。
このレベルシフタ56は、電圧増幅器として機能し、パルス選択データが(1)の場合には、スイッチ回路57を駆動できる電圧、例えば数十ボルト程度の電圧に昇圧された電気信号を出力する。レベルシフタ56で昇圧された(1)のパルス選択データは、スイッチ回路57に供給される。このスイッチ回路57は、パルス選択データに基づいて駆動信号に含まれる駆動パルスを選択的に圧電振動子20に供給する。そして、スイッチ回路57の入力側には駆動信号生成回路48からの駆動信号(COM)が供給されており、出力側には圧電振動子20が接続されている。
パルス選択データは、スイッチ回路57の動作を制御する。例えば、スイッチ回路57に加わるパルス選択データが(1)である期間中は、スイッチ回路57が接続状態になって駆動信号が圧電振動子20に供給され、この駆動信号に応じて圧電振動子20の電位レベルが変化する。一方、スイッチ回路57に加わるパルス選択データが(0)の期間中は、レベルシフタ56からはスイッチ回路57を動作させる電気信号が出力されない。このため、スイッチ回路57が切断状態になって圧電振動子20へは駆動信号が供給されない。そして、このパルス選択データが(0)の期間において圧電振動子20の電位レベルは、パルス選択データが(0)に切り換わる直前の電位レベルを維持する。
次に、駆動信号生成回路48が生成する駆動信号(COM)と、この駆動信号によるインク滴の吐出制御について説明する。この駆動信号生成回路48は、設定された記録モードに応じて、同じ印字データ(階調情報)であっても吐出インク量が相違する複数種類の駆動信号を生成する。ここで、図6は、高速記録モードで使用される第1駆動信号VSD1、及び、この第1駆動信号VSD1における駆動パルスDP1〜DP3を示す波形図である。図7は、第1高解像度記録モードで使用される第2駆動信号VSD2、及び、この第2駆動信号VSD2における駆動パルスVP1,DP4,DP5を示す波形図である。図8は、第2高解像度記録モードで使用される第3駆動信号VSD3、及び、この第3駆動信号VSD3における駆動パルスVP2,DP6,DP7を示す波形図である。
まず、第1駆動信号VSD1について説明する。図6に示すように、この第1駆動信号VSD1は、第1駆動パルスDP1と、第2駆動パルスDP2と、第3駆動パルスDP3とを印刷周期TA内に一連に含ませてあり、印刷周期TAで繰り返し発生する信号である。
これらの第1駆動パルスDP1、第2駆動パルスDP2、及び第3駆動パルスDP3は何れも同じ波形形状であり、中間電位VMから最大電位VHまでインク滴を吐出させない程度の一定勾配で電位を上昇させる膨張要素と、最大電位VHを所定時間維持する膨張ホールド要素と、最大電位VHから最低電位VLまで急激に電位を下降させる吐出要素と、最低電位VLを所定時間維持する制振ホールド要素と、最低電位VLから中間電位VMまで電位を上昇させる制振要素を順に接続することで構成されている。これらの駆動パルスDP1〜DP3は、それぞれが単独でインク滴を吐出可能な信号である。つまり、一つの駆動パルスが圧電振動子20に供給されると、小ドットを形成し得る体積量のインク滴がノズル開口33から吐出される。このとき吐出されるインク滴の量は、例えば13.3pL程度になる。つまり、この第1駆動信号VSD1は、インク体積が等しいインク滴を複数回吐出させ得る信号となっている。
この第1駆動信号VSD1を用いる高速記録モードでは、圧電振動子20に供給する駆動パルスの数を増減することにより階調制御を行っている。例えば、駆動パルスを1つ供給することで小ドットの記録を行い、駆動パルスを2つ供給することで中ドットの記録を行い、駆動パルスを3つ供給することで大ドットの記録を行っている。
従って、デコーダ54は、非記録の印字データ(階調情報00)、小ドットの印字データ(階調情報01)、中ドットの印字データ(階調情報10)、大ドットの印字データ(階調情報11)に応じて3ビットのパルス選択データを生成する。そして、このパルス選択データの各ビットは、各パルス信号に対応している。つまり、パルス選択データの最上位ビットがの第1駆動パルスDP1に対応し、2番目のビットが第2駆動パルスDP2に対応し、最下位のビットが第3駆動パルスDP3に対応している。このため、デコーダ54は、非記録の印字データを翻訳することによりパルス選択データ(000)を生成し、小ドットの印字データを翻訳することによりパルス選択データ(010)を生成する。同様に、中ドットの印字データを翻訳することによりパルス選択データ(101)を生成し、大ドットの印字データを翻訳することによりパルス選択データ(111)を生成する。
これにより、小ドットの印字データに基づき、対応する圧電振動子20には、第2駆動パルスDP2だけが供給される。同様に中ドットの印字データに基づいて第1駆動パルスDP1と第3駆動パルスDP3とが供給され、大ドットの印字データに基づいて第1駆動パルスDP1、第2駆動パルスDP2、及び第3駆動パルスDP3が続けて供給される。その結果、小ドットの印字データに対応してノズル開口33からは約13.3pLのインク滴が1回吐出し、記録紙8上には小ドットが形成される。また、中ドットの印字データに対応してノズル開口33からは約13.3pLのインク滴が2回続けて吐出し、記録紙8上には合計26.6pL程度のインク滴による中ドットが形成される。同様に、大ドットの印字データに対応してノズル開口33からは約13.3pLのインク滴が3回連続して吐出し、記録紙8上には合計40pL程度のインク滴による大ドットが形成される。従って、この高速記録モード(第1駆動信号VSD1)における最小インク量は、約13.3pLである。
次に、第2駆動信号VSD2について説明する。この第2駆動信号VSD2は、インク量が異なる複数種類の駆動パルスを含ませた信号である。つまり、図7に示すように、メニスカスを微振動させる微振動パルスVP1と、小ドットのインク滴を吐出させる小ドット駆動パルスDP4と、中ドットのインク滴を吐出させる中ドット駆動パルスDP5とを印刷周期TB内に一連に含ませてあり、印刷周期TBで繰り返し発生する信号である。
微振動パルスVP1は、最低電位VLからこの最低電位VLよりも少し高い第2最低電位VL1まで、インク滴を吐出させない程度の比較的緩やかな電位勾配で電位を上昇させる微振動膨張要素と、第2最低電位VL1を所定時間維持する微振動ホールド要素と、第2最低電位VL1から最低電位VLまで比較的緩やかな電位勾配で電位を下降させる微振動収縮要素とから構成される。この微振動パルスVP1が圧電振動子20に供給されると、圧力室34内には比較的緩やかな圧力変動が生じ、この圧力変動によってメニスカスが微振動する。
小ドット駆動パルスDP4は、最低電位VLから最大電位VHまで比較的急峻な勾配で電位を上昇させる膨張要素と、最大電位VHを極く短い時間維持する膨張ホールド要素と、最大電位VHからこの最大電位VHよりも少し低い第2最大電位VH1まで比較的急峻な勾配で電位を下降させる吐出要素と、第2最大電位VH1を極く短い時間維持する吐出ホールド要素と、第2最大電位VH1から最低電位VLまで電位を下降させる制振要素とを順に接続した信号によって構成される。この小ドット駆動パルスDP4が圧電振動子20に供給されると、小ドットを形成し得る少量、例えば5.5pL程度のインク滴がノズル開口33から吐出される。
中ドット駆動パルスDP5は、インク滴を吐出する吐出パルスPS1とこの吐出パルスPS1の後に発生されてインク滴吐出後におけるメニスカスの振動を抑制する制振パルスPS2とを備える。吐出パルスPS1は、最低電位VLから第3最大電位VH2までインク滴を吐出させない程度の勾配で電位を上昇させる膨張要素と、第3最大電位VH2を所定時間維持する膨張ホールド要素と、第3最大電位VH2から最低電位VLまで比較的急峻な勾配で電位を下降させる吐出要素とから構成される。なお、第3最大電位VH2は、最大電位VHよりも低く第2最大電位VH1よりも高い電位に設定される。この中ドット駆動パルスDP5が圧電振動子20に供給されると、中ドットを形成し得る量、例えば11.5pL程度のインク滴がノズル開口33から吐出される。
この第2駆動信号VSD2を用いる第1高解像度記録モードでは、小ドット駆動パルスDP4を圧電振動子20に供給することで小ドットの記録を行う。また、中ドット駆動パルスDP5を圧電振動子20に供給することで中ドットの記録を行い、小ドット駆動パルスDP4と中ドット駆動パルスDP5とを連続的に供給することで大ドットの記録を行っている。即ち、デコーダ54は、非記録の印字データを翻訳することによりパルス選択データ(100)を生成し、小ドットの印字データを翻訳することによりパルス選択データ(010)を生成する。同様に、中ドットの印字データを翻訳することによりパルス選択データ(001)を生成し、大ドットの印字データを翻訳することによりパルス選択データ(011)を生成する。
これにより、非記録の印字データに基づいて対応するノズル開口33のメニスカスが微振動する。また、小ドットの印字データに基づいて対応するノズル開口33からは5.5pL程度のインク滴が吐出し、記録紙8上には小ドットが形成される。同様に、中ドットの印字データに基づいて対応するノズル開口33からは11.5pL程度のインク滴が吐出し、記録紙8上には中ドットが形成される。さらに、大ドットの印字データに基づいて対応するノズル開口33からは合計23pL程度のインク滴が吐出され、記録紙8上には大ドットが形成される。従って、この第1高解像度記録モード(第2駆動信号VSD2)における最小インク量は、約5.5pLである。
そして、この第1高解像度記録モードにおける大中小の各ドットは、高速記録モードの各ドットよりもそれぞれ小さい。このため高解像度で高画質な記録が行える。
次に、第3駆動信号VSD3について説明する。この第3駆動信号VSD3もインク量が異なる複数種類の駆動パルスを含ませた信号である。つまり、図8に示すように、メニスカスを微振動させる微振動パルスVP2と、小ドットのインク滴を吐出させる小ドット駆動パルスDP6と、中ドットのインク滴を吐出させる中ドット駆動パルスDP7とを印刷周期TC内に一連に含ませてあり、印刷周期TCで繰り返し発生する信号である。
微振動パルスVP2は、最低電位VLからこの最低電位VLよりも少し高い第3最低電位VL2まで、インク滴を吐出させない程度の比較的緩やかな電位勾配で電位を上昇させる微振動膨張要素と、第3最低電位VL2を所定時間維持する微振動ホールド要素と、第3最低電位VL2から最低電位VLまで比較的緩やかな電位勾配で電位を下降させる微振動収縮要素とから構成される。この微振動パルスVP1が圧電振動子20に供給されると、圧力室34内には比較的緩やかな圧力変動が生じ、この圧力変動によってメニスカスが微振動する。なお、この微振動パルスVP2における第3最低電位VL2は、微振動パルスVP1の第2最低電位VL1よりも少し低い電位に設定されている。
小ドット駆動パルスDP6は、最低電位VLから最大電位VH´まで比較的急峻な勾配で電位を上昇させる膨張要素と、最大電位VH´を極く短い時間維持する膨張ホールド要素と、最大電位VH´からこの最大電位VH´よりも少し低い第2最大電位VH1´まで比較的急峻な勾配で電位を下降させる吐出要素と、第2最大電位VH1´を極く短い時間維持する吐出ホールド要素と、第2最大電位VH1´から最低電位VLまで電位を下降させる制振要素とを順に接続した信号によって構成される。この小ドット駆動パルスDP6が圧電振動子20に供給されると、小ドットを形成し得る極く少量、例えば2.0pL程度の超微小インク滴がノズル開口33から吐出される。
中ドット駆動パルスDP7は、最低電位VLから中間電位VMまでインク滴を吐出させない程度の一定勾配で電位を上昇させる予備膨張要素と、中間電位VMを所定時間維持する予備ホールド要素と、中間電位VMから最大電位VH´までインク滴を吐出させない程度の一定勾配で電位を上昇させる膨張要素と、最大電位VH´を所定時間維持する膨張ホールド要素と、最大電位VH´から最低電位VLまで急激に電位を下降させる吐出要素と、最低電位VLを所定時間維持する第1制振ホールド要素と、最低電位VLから中間電位VMまで電位を上昇させる制振要素と、中間電位VMを所定時間維持する第2制振ホールド要素と、中間電位VMから最低電位VLまで電位を下降させる復帰要素とから構成される。この中ドット駆動パルスDP7が圧電振動子20に供給されると、中ドットを形成し得る量、例えば5.5pL程度のインク滴がノズル開口33から吐出される。
この第3駆動信号VSD3を用いる第2高解像度記録モードでは、小ドット駆動パルスDP6を圧電振動子20に供給することで小ドットの記録を行う。また、中ドット駆動パルスDP7を圧電振動子20に供給することで中ドットの記録を行い、小ドット駆動パルスDP6と中ドット駆動パルスDP7とを連続的に供給することで大ドットの記録を行っている。即ち、デコーダ54は、非記録の印字データを翻訳することによりパルス選択データ(100)を生成し、小ドットの印字データ(階調情報01)を翻訳することによりパルス選択データ(010)を生成する。同様に、中ドットの印字データ(階調情報10)を翻訳することによりパルス選択データ(001)を生成し、大ドットの印字データ(階調情報11)を翻訳することによりパルス選択データ(011)を生成する。
これにより、非記録の印字データに基づいて対応するノズル開口33のメニスカスが微振動する。また、小ドットの印字データに基づいて対応するノズル開口33からは2.0pL程度の超微小インク滴が吐出し、記録紙8上には小ドットが形成される。同様に、中ドットの印字データに基づいて対応するノズル開口33からは5.5pL程度のインク滴が吐出し、記録紙8上には中ドットが形成される。さらに、大ドットの印字データに基づいて対応するノズル開口33からは合計11.5pL程度のインク滴が吐出され、記録紙8上には大ドットが形成される。従って、この第2高解像度記録モード(第3駆動信号VSD3)における最小インク量は、約2.0pLである。
この第2高解像度記録モードにおける大中小の各ドットは、第1高解像度記録モードの各ドットよりもそれぞれ小さい。このため、より高い解像度で高画質な記録が行える。
次に、このプリンタ1の動作について説明する。
このプリンタ1は、ホストコンピュータから送られてくる印刷データや制御コマンドを受信することで動作を開始する。即ち、これらの印刷データや制御コマンドを受信したならば、制御部46(記録モード設定手段)は、記録モードについての制御コマンド(記録モード設定情報)に基づいて、複数の記録モードの中から一つの記録モードを設定する。例えば、高速記録モード、第1高解像記録モード、及び、第2高解像度記録モードの中から一つの記録モードを設定する。また、制御部46(印刷モード設定手段)は、印刷モードについての制御コマンド(縁無し印刷モード設定情報)に基づき、印刷モードを設定する。即ち、縁有り印刷を行う通常印刷モード、或いは、縁無し印刷を行う縁無し印刷モードの何れか一方を設定する。
記録モードや印刷モードが設定されたならば、制御部46(記録モード情報出力手段)は、駆動信号生成回路48やデコーダ54に制御情報(記録モード情報)を出力する。
この制御情報に基づき、駆動信号生成回路48は、記録モードに応じた駆動信号が生成可能な状態を設定する。例えば、高速記録モードが設定された旨の制御情報を受信したならば第1駆動信号VSD1(図6)を生成可能な状態を設定し、第1高解像度記録モードが設定された旨の制御情報を受信したならば第2駆動信号VSD2(図7)を生成可能な状態を設定し、第2高解像度記録モードが設定された旨の制御情報を受信したならば第3駆動信号VSD3(図8)を生成可能な状態を設定する。
また、デコーダ54は、印字データ(階調情報)とパルス選択データの組み合わせを設定する。例えば、デコーダ54は、記録モード毎に印字データとパルス選択データの組み合わせを定めたテ−ブル情報に基づき、制御部46からの制御情報に基づいて設定された記録モードのテ−ブル情報を選択する。
記録モードが設定されたならば、プリンタ1は設定された記録モードによる記録動作を行う。ここで、本実施形態では、記録動作に先立って制御部46(記録モード制限手段)が、検出されたプラテンギャップや設定された印刷モードに基づく判断を行い、必要があれば、使用可能な記録モードを3種類の記録モードの一部に制限する。
即ち、プラテンギャップに関しては、ギャップが通常状態(ギャップ小の状態)である場合には、高速記録モード、第1高解像度記録モード、及び、第2高解像度記録モードの何れのモードであっても記録を可能とし、ギャップ大の状態では、高速記録モード、及び、第1高解像度記録モードでの記録は可能であるが、第2高解像度記録モードでの記録ができないように制限する。言い換えると、ギャップ小の状態では、第1駆動信号VSD1、第2駆動信号VSD2及び第3駆動信号VSD3、つまり、駆動信号生成回路48が生成し得る全ての駆動信号が使用可能である。一方、ギャップ大の状態では、第1駆動信号VSD1と第2駆動信号VSD2は使用可能であるが、第3駆動信号VSD3は使用できない。
これは、プラテンギャップと使用する記録モードとの組み合わせが、インク滴が容易にミスト化してしまう組み合わせになってしまうことを防ぐためである。例えば、第2高解像度記録モードにおける小ドット用のインク滴、つまり、2pL程度の超微小インク滴がミスト化してしまうのを防止するためである。
このことを図9に基づいて説明する。図9は、インク滴の飛行速度とインク滴の飛行距離(プラテンギャップ)との関係を示す特性図であり、縦軸がインク滴の飛行速度を示し、横軸がインク滴の飛行距離を示す。そして、図9における実線は、上記の第3駆動信号VSD3における超微小インク滴(2pL)の飛行速度と飛行距離の関係を示し、点線が、上記の第2駆動信号VSD2における微小インク滴(5.5pL)の飛行速度と飛行距離の関係を示す。
この超微小インク滴では、空気の粘性抵抗の影響を大きく受けてしまい、飛行距離に対する速度の低下率が大きい。
図9に示すように、2pL程度の超微小インク滴は、飛行距離が2.5mmのところで飛行速度が0m/sになる。そして、ギャップ大の状態では、図10に示すように、プラテンギャップが2.3mmであるため、超微小インク滴は着弾直前で速度がほぼ0m/sになってしまう。このため、ギャップ大の状態では、超微小インク滴は記録紙8に着弾できずにミスト化してしまう虞があり、画像等の記録は困難である。
そこで、本実施形態では、ギャップ大の状態において、第2高解像度記録モードでの記録が行えないように制限することで、超微小インク滴のミスト化を確実に防止している。
なお、5.5pLの微小インク滴は、飛行距離2.3mmにおける飛行速度がほぼ3m/sである。このため、記録紙8へ確実に着弾させることができる。
一方、印刷モードに関しては、通常印刷モード(縁有り印刷モード)が設定されている場合には、高速記録モード、第1高解像度記録モード、及び、第2高解像度記録モードの何れのモードであっても記録を可能とし、縁無し印刷モードが設定されている場合には、高速記録モード、及び、第1高解像度記録モードでの記録が可能であるが、第2高解像度記録モードでの記録ができないように制限する。言い換えると、通常印刷モードでは、第1駆動信号VSD1、第2駆動信号VSD2及び第3駆動信号VSD3、つまり、駆動信号生成回路48が生成し得る全ての駆動信号が使用可能である。一方、縁無し印刷モードでは、第1駆動信号VSD1と第2駆動信号VSD2は使用可能であるが、第3駆動信号VSD3は使用できない。
これは、記録紙8の縁よりも外側で吐出された超微小インク滴がミスト化してしまうのを防止するためである。即ち、この縁無し印刷モードでは、記録紙8の縁より外側でもインク滴が吐出され、このインク滴については吸収体窓部17を通じて吸収体18に吸収させている。ここで、この吸収体18は、プラテン12の裏面側に設けられているので、インク滴を吸収体18に吸収させるためには、プラテンギャップとプラテン12の板厚とを加えた距離だけ飛翔させる必要がある。しかし、超微小インク滴では、空気の粘性抵抗の関係から飛行速度の低下率が大きく、飛行距離が長くなってしまうと速度が不足して吸収体18に着弾できない虞がある。
即ち、図10に示すように、ギャップ小の状態においてノズル開口33から吸収体表面までの距離は、4.5mmである。このため、第3駆動信号VSD3(第2高解像度記録モード)で記録を行うと、図9に示すように、2pL程度の超微小インク滴は吸収体18へ着弾する前、詳しくは、ノズル開口33から2.5mm飛行すると速度が0m/sとなってしまう。従って、この超微小インク滴を吸収体18に回収させることは困難であり、ミスト化してしまう虞がある。
そこで、本実施形態では、記録紙8の4辺よりも外側でもインク滴を吐出する縁無し印刷モードでは、第2高解像度記録モードでの記録が行えないように制限することで、超微小インク滴のミスト化を確実に防止している。
このように、本実施形態では、プラテンギャップに基づく判断と、印刷モードに基づく判断とを併せて行っているので、使用可能な記録モードは図10に示すようになる。即ち、ギャップ小の状態で縁有り印刷モードが設定された場合には、高速記録モード、第1高解像度記録モード、及び、第2高解像度記録モードの各記録モードで記録ができる。そして、ギャップ小の状態で縁無し印刷モードが設定された場合には、高速記録モード及び第1高解像度記録モードでは記録ができるが、第2高解像度記録モードでは記録ができない。また、ギャップ大の状態で縁有り印刷モードが設定された場合、及び、ギャップ大の状態で縁無し印刷モードが設定された場合には、高速記録モード及び第1高解像度記録モードでは記録ができるが、第2高解像度記録モードでは記録ができない。
次に、ホストコンピュータからの制御コマンドによって設定された記録モードが、プラテンギャップや印刷モードに基づく判断によって使用できない記録モードであるかどうかを判断する。この判断で、使用できない記録モードであると判断された場合には、制御部46(報知手段)は、記録モードが不適合である旨のアラートを出力する。このアラートは、例えば、ホストコンピュータのディスプレイ上に、メッセージを表示させることで行う。この場合において、制御部46は、ホストコンピュータに対し、記録モードが不適合である旨のエラーコードを送出する。そして、ホストコンピュータは、このエラーコードを受信することで、ディスプレイ上にメッセージを表示する。
アラートを出力したならば、プリンタ1を記録可能な設定に変更する。この設定の変更は、記録モードを変更すること、プラテンギャップを変更させること、印刷モードを変更することの何れかによってなされる。
例えば、制御コマンドでは第2高解像度記録モードが指定されていたが、縁無し印刷モードも併せて設定されていたために不適合とされた場合には、記録モードを第1高解像度記録モードに変更することで縁無し印刷モードでの記録が可能になる。この設定変更動作において、制御部46は記録モード切換手段として機能する。そして、制御部46は、記録モードの変更に伴って、駆動信号生成回路48に制御信号を出力し、記録に使用する駆動信号を切り換えている。
また、制御コマンドでは第2高解像度記録モードが指定されていたが、ギャップ大の状態であったために不適合とされた場合には、プラテンギャップを通常状態(ギャップ小の状態)に変更することで第2高解像度記録モードでの記録が可能になる。
さらに、制御コマンドでは縁無し印刷モードが指定されていたが、第2高解像度記録モードも併せて設定されていたために不適合とされた場合には、印刷モードを縁有り印刷モードに変更することで第2高解像度記録モードでの記録が可能になる。この場合において、制御部46は印刷モード切換手段として機能し、制御コマンドによって設定された縁なし印刷モードを、縁有り印刷モードに切り換えている。
なお、本実施形態では、アラートを出力することにより、記録モードを切り換えるのか、プラテンギャップを切り換えるのか、印刷モードを切り換えるのかを、プリンタ1の使用者に選択させる構成を採っている。これにより、使用者の好みにあった設定に変更させるようにして、使い勝手の向上を図っている。
このようにして、プリンタ1の設定を変更したならば、設定された記録モードや印刷モードの下で記録紙8に対する記録を行う。
次に、図11のフローチャートを参照し、上記したプラテンギャップや印刷モードに基づく判断動作、及び、記録モードの切換動作の手順について説明する。
ホストコンピュータから送られてくる印刷命令(印刷データや制御コマンド)を受信したならば[S0]、まず、プラテンギャップ検出センサ16からの検出信号に基づいてプラテンギャップの設定値を判定する[S1]。
ここで、ギャップ小の場合には[S1,yes]、制御コマンドに基づいて縁なし印刷が選択されているか否かを判定する[S2]。そして、縁あり印刷モードが選択されている場合は[S2,no]、現在の動作条件を受け入れて通常の制御手順により印刷を実行する[S6]。一方、縁なし印刷モードが選択されている場合[S2,yes]、あるいはギャップ大の場合には[S1,no]、第3駆動信号VSD3による第2高解像度記録モードが選択されているか否かを判定する[S3]。
ここで、第3駆動信号VSD3が選択されていなかった場合には[S3,no]、現在の動作条件を受け入れて通常の制御手順により印刷を実行する[S6]。一方、第3駆動信号VSD3が選択されていた場合、つまり、第2高解像度記録モードが選択されていた場合には[S3,yes]、アラートを出力させるためのエラーコードをホストコンピュータに出力し[S4]、待機する。
このエラーコードを受信したホストコンピュータは、ディスプレイにアラートを表示する。ここで、アラートは、例えば、「現在の記録モードではプリンタ内部及び記録紙が汚れます。」及び「記録モードを第1高解像度記録モードに切り替えてください。又は、プラテンギャップを小さくしてください。」とする。
上記の待機中においては、ホストコンピュータからの制御コマンドや、プラテンギャップ検出センサ16からの検出信号を監視しており、記録モードが第1高解像度記録モードに切り替えられて第2駆動信号VSD2が選択されたならば[S5,yes]、現在の動作条件を受け入れて通常の制御手順により印刷を実行する[S6]。あるいは第2駆動信号VSD2に切り替えられていなくても[S5,no]、プラテンギャップが小の状態に切り換えられ、さらに、縁あり印刷モードが設定されているならば[S1,yes],[S2,no]、現在の動作条件を受け入れて通常の制御手順により印刷を実行する[S6]。
なお、上記した手順に関し、図12に示すように、設定を自動的に変更するようにしてもよい。例えば、上記のステップS3にて、第2高解像度記録モードが選択されていた場合には、通知アラートを出して[S40]、記録モードを第1高解像度記録モード(駆動信号VSD2)に自動的に切り替える[S50]。
ところで、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成に基づいて、種々の変更が可能である。
例えば、上記の実施形態では、高速記録モード、第1高解像度記録モード、及び、第2高解像度記録モードからなる3つの記録モードが使用可能であり、プラテンギャップがギャップ大の状態であった場合に、高速記録モード及び第1高解像度記録モードからなる2つの記録モードに制限するように構成したものを例示したが、記録モードは2種類以上であればよい。また、制限する記録モードも最低1種類あればよい。
また、ギャップ検出手段に関し、上記した実施形態では、調整レバー15の回動角度に応じて記録ヘッド10とプラテン12との位置関係を把握し、この位置関係に基づいてプラテンギャップを間接的に検出する構成であったが、この構成に限定されない。例えば、プラテンギャップを直接的に検出しても良いし、ノズル面から記録紙表面までのギャップを検出しても良い。また、ギャップの検出方法に関し、レバー15やキャリッジ2、記録ヘッド10等の可動する部材の位置に基づいて、間接的に検出するようにしても良いし、センサによってギャップを直接検出するようにしてもよい。
また、ギャップ調整機構に関し、上記した実施形態では、ギャップ大と通常(ギャップ小)の2状態に切り換え可能な構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、プラテンギャップを3以上の複数段階に調整可能な機構によってギャップ調整機構を構成してもよい。また、プラテン12を上下動させる機構によってギャップ調整機構を構成することもできる。
また、上記の実施形態では、ホストコンピュータからの制御コマンドに基づいて記録モードを設定する構成であったが、プリンタ1に記録モード設定用のモード設定スイッチを設け、このモード設定スイッチの操作によって記録モードを設定させるように構成してもよい。
また、圧力発生素子に関し、上記の実施形態では、縦振動モードの圧電振動子20を例示したが、この圧電振動子20に代えてたわみ振動モードの圧電振動子を用いてもよい。このたわみ振動モードの圧電振動子は充電により電界と直交する方向に縮み、この縮み変形で圧力室34を収縮させ、放電による伸長変形で圧力室34を膨張させる。また、機械電気変換素子としては、これらの圧電振動子に限定されるものではなく、磁歪素子であってもよい。さらに、圧力発生素子としては、機械電気変換素子に限定されるものではなく、発熱素子であってもよい。発熱素子を用いた記録ヘッドとしては、例えば、発熱素子を急激に加熱することで発熱素子の周りのインクを沸騰させ、この沸騰によって生じた気泡によって圧力室内のインクを加圧し、ノズル開口からインク滴を吐出させる構成のものがある。本発明は、この様な構成の記録ヘッドを備えた記録装置にも適用できる。
また、上記のホストコンピュータに関し、このホストコンピュータは、通信ネットワークを介してプリンタ1やプロッタ等の記録装置に接続されていてもよく、記録装置に直接接続されていてもよい。また、液晶表示部やLED表示部等の情報表示部を備えた記録装置にあっては、報知手段を情報表示部と制御部46とによって構成してもよい。
1 インクジェットプリンタ,2 キャリッジ,3 ガイド軸,4 駆動プーリ,5 遊転プーリ,6 タイミングベルト,7 パルスモータ,8 記録紙,9 インクカートリッジ,10 記録ヘッド,11 記録ヘッドの電気駆動系,12 プラテン,13 紙送りモータ,14 カム機構,15 調整レバー,16 プラテンギャップ検出センサ,17 吸収体窓部,18 吸収体,20 圧電振動子,21 固定板,22 フレキシブルケーブル,23 振動子ユニット,24 ケース,25 流路ユニット,26 収納空部,27 圧電体,28 内部電極,29 島部,30 流路形成基板,31 ノズルプレート,32 弾性板,33 ノズル開口,34 圧力室,35 インク供給口,36 共通インク室,38 ノズル連通口,39 ステンレス鋼鈑,40 樹脂フィルム,41 プリンタコントローラ,42 プリントエンジン,43 外部インターフェース,44 RAM,45 ROM,46 制御部,47 発振回路,48 駆動信号生成回路,49 内部インターフェース,50 第1シフトレジスタ,51 第2シフトレジスタ,52 第1ラッチ回路,53 第2ラッチ回路,54 デコーダ,55 制御ロジック,56 レベルシフタ,57 スイッチ回路