JP2004249683A - 液体噴射装置、及び、液体噴射による小突起形成方法 - Google Patents

液体噴射装置、及び、液体噴射による小突起形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】装置構成を簡素化すると共に、汎用性を持たせることが容易な液体噴射装置を提供する。
【解決手段】記録ヘッドから、記録紙への浸透性が低く堆積性を有する小突起形成用顔料インクと、記録紙への浸透性及び固化時における耐擦性が小突起形成用顔料インクよりも高いクリアインクと、これらのインクとは異なる印刷用顔料インクとを吐出可能に構成する。制御部は、選択したモードが記録紙の表面に点字用突起43を形成可能な点字形成モードの場合に、小突起形成用顔料インクを吐出させることで核44を記録紙上に形成した後、この核を覆うようにクリアインクを吐出させてコーティング層45を形成する。また、制御部は、選択したモードが印刷モードの場合に印刷用顔料インクを吐出させることで画像等を印刷する。
【選択図】 図6

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種の液体をノズル開口から吐出可能な液体噴射ヘッドを有し、噴射した液体を固化させて吐出対象物の表面に小突起を形成可能な液体噴射装置、及び、吐出させた液体によって吐出対象物の表面に小突起を形成する液体噴射による小突起形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体噴射ヘッドから吐出させた液体を固化させて吐出対象物の表面に小突起を形成可能な液体噴射装置としては、所謂点字プリンタ、立体画像プリンタ、3次元造形装置などが提案されている。
【0003】
従来、このような液体噴射装置は、小突起を形成(作製)するための専用の機構が必須であった。上記の点字プリンタにおいては、例えば、書き込み工程にて、インクよりなるドット像を印刷記録媒体上に形成し、その後、加熱工程にて、このインクを熱膨張させている(例えば、特許文献1)。このため、加熱工程で使用するヒータが必須の構成となっている。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−115199号公報(第2,4頁,第1−2図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の液体噴射装置では、液体を吐出させる機構の他に小突起を形成するための機構が必要となっていたので、装置が複雑化してしまう問題があった。また、小突起が形成される対象も限られてしまい、この液体噴射装置の汎用化を妨げる一因となっていた。これにより、装置が専用化して用途が限定され、使い勝手が損なわれてしまっていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置構成を簡素化すると共に、汎用性を持たせることが容易な液体噴射装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、液体供給源から供給された液体をノズル開口から液滴の状態で吐出可能な液体噴射ヘッドを備え、吐出させた液体によって吐出対象物の表面に小突起を形成可能な液体噴射装置において、
複数の噴射モードの中から1つの噴射モードを選択し、選択した噴射モードに応じて前記噴射ヘッドの動作を制御する駆動制御手段を備え、
前記噴射ヘッドは、吐出対象物への浸透性が低く堆積性を有する第1液と、吐出対象物への浸透性及び固化時における耐擦性が前記第1液よりも高い第2液と、これらの第1液及び第2液とは異なる第3液とを吐出可能に構成され、
前記駆動制御手段は、
前記噴射モードが吐出対象物の表面に小突起を形成可能な小突起形成モードの場合に、前記第1液を吐出させることで小突起基部を吐出対象物上に形成した後、該小突起基部を覆うように前記第2液を吐出させることでコーティング層を形成し、
前記選択された噴射モードが小突起形成モードとは異なる他噴射モードの場合に前記第3液を吐出させることを特徴とすることを特徴とする。そして、この構成において、小突起形成モードが吐出対象物の表面に点字用突起を形成する点字形成モードであることが好ましい。
なお、「小突起」は面方向に連続させて形成することができると共に、高さ方向に重ねて形成することもできる。また、「耐擦性」とは、指等によって擦られた際の耐性を意味する。
【0008】
また、本発明は、液体供給源から供給された液体を液体噴射ヘッドのノズル開口から液滴の状態で吐出させ、該吐出させた液体によって吐出対象物の表面に小突起を形成する液体噴射による小突起形成方法において、
吐出対象物への浸透性が低く堆積性を有する第1液を吐出することで小突起基部を吐出対象物上に形成し、
吐出対象物への浸透性及び固化時における耐擦性が前記第1液よりも高い第2液を、前記小突起基部を覆うように吐出することでコーティング層を形成することを特徴とする。
【0009】
これらの発明によれば、第1液を吐出させることで小突起基部を形成し、第2液を吐出させることでコーティング層を形成するので、液体の吐出によって吐出対象物上に小突起を形成できる。このように、液体の吐出機構を備えれば足りるので、装置構成が簡素化でき、装置に汎用性を持たせることが容易となる。また、第2液でコーティング層を形成するので、第1液に耐擦性の低い液体を使用したとしても、小突起基部はコーティング層によって保護される。これにより、形成された小突起の耐久性を高めることができる。
【0010】
上記発明において、前記第1液及び第2液が化学反応を生じる反応性液体であり、第1液と第2液の化学反応によってこれらの液体を固化させる構成とすることが好ましい。この構成において、第1液がアニオン樹脂を含有する液体であり、第2液がカチオン樹脂を含有する液体であることが好ましい。
これらの発明では、第2液が第1液に接触することで化学反応が開始し、小突起が固化するので、固化のための特別な機構が不要となり、装置構成の簡素化が図れる。
【0011】
また、上記発明において、前記第2液は吐出対象物に対して高い浸透性を有し、前記コーティング層の一部を吐出対象物内に浸透させた状態で形成する構成が好ましい。また、この第2液が透明樹脂を含有したクリアインクである構成が好ましい。
これらの発明では、その一部が吐出対象物内に浸透した状態でコーティング層が固化するので、浸透した部分がアンカーと同様に機能し、コーティング層の吐出対象物に対する接合強度を高めることができる。その結果、形成した小突起を吐出対象物から剥がれ難くすることができる。
【0012】
また、上記発明において、前記他噴射モードが印刷記録媒体上に文字や画像を印刷する印刷モードであり、前記第3液が印刷用のインクである構成が好ましい。そして、この構成において、前記第3液が溶媒中に顔料樹脂を分散させてなる印刷用顔料インクであり、前記第1液が顔料樹脂の濃度を印刷用顔料インクよりも高めた小突起形成用顔料インクである構成が好ましい。
これらの発明では、第1液と第3液が何れも顔料インクであるので、同一の液体噴射ヘッドからこれらの液体を支障無く吐出させることが容易である。このため、一つの噴射ヘッドを多用途に用いることができ、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0013】
また、上記発明において、前記液体供給源を、前記第1液、第2液、第3液を個別に貯留した液体カートリッジによって構成すると共に、前記噴射ヘッドが取り付けられるキャリッジには該液体カートリッジを装着可能なカートリッジ装着部を設け、前記噴射モードが小突起形成モードの場合には前記第1液及び第2液を貯留した液体カートリッジをカートリッジ装着部へ装着可能とし、他噴射モードの場合には前記第3液を貯留した液体カートリッジをカートリッジ装着部へ装着可能とする構成が好ましい。
この発明では、使用する液体がカートリッジ単位で纏められているので、取り扱いが容易で使い勝手がよい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明は、小突起を形成可能な液体噴射装置の例として点字プリンタを挙げることとし、この点字プリンタによって記録紙等の印刷記録媒体上に画像や文字をも記録可能とした構成について行う。
【0015】
まず、図1に基づき、点字プリンタ1の全体構造について説明する。例示した点字プリンタ1は、カートリッジ装着部2と記録ヘッド3(本発明の液体噴射ヘッドの一種)とを設けたキャリッジ4を有する。このキャリッジ4は、ガイドロッド5に軸支されて記録紙6の幅方向(主走査方向)に移動可能に取り付けられている。このキャリッジ4には、駆動プーリー7と遊転プーリー8との間に掛け渡したタイミングベルト9が接続されている。そして、この駆動プーリー7はパルスモータ10の回転軸に接合されている。従って、キャリッジ4は、パルスモータ10の作動によって記録紙6の幅方向に移動する。キャリッジ4の移動範囲内における端部領域には、ホームポジションが設定されている。このホームポジションには、記録ヘッド3のノズルプレート11(図2参照)の表面をクリーニングするためのワイパー機構12と、このノズル形成面を封止可能なキャッピング機構13とが配設されている。
【0016】
上記の記録ヘッド3としては種々の構成が提案されているが、図2に例示した記録ヘッド3は、振動子ユニット15、この振動子ユニット15を収納可能なケース16、ケース16の先端面に接合される流路ユニット17等を備えている。
【0017】
上記のケース16は、振動子ユニット15を収納するための収納空部18を有するブロック状部材であり、例えば樹脂(エポキシ樹脂等)を成型することで作製される。上記の振動子ユニット15は、櫛歯状に形成した複数の圧電振動子19と、各圧電振動子19が接合される固定板20と、各圧電振動子19に駆動信号等を供給するためのフレキシブルケーブル21とを備えている。
【0018】
上記の圧電振動子19は圧力発生素子の一種である。本実施形態の圧電振動子19は、例えば、圧電体層と電極層とを交互に積層した圧電板を櫛歯状に切り分けることで作製された積層型の圧電振動子であって、積層方向に直交する方向に伸縮可能な縦振動モードの圧電振動子である。上記の固定板20は、厚さが1ミリ程度の板状部材であり、圧電振動子19からの反力を受け止める部材である。本実施形態では、固定板20を、金属材料の一種であるステンレスによって作製している。上記のフレキシブルケーブル21は、可撓性を有するフィルム状の配線部材である。そして、フレキシブルケーブル21の一端部は圧電振動子19の表面に半田付けされ、他端部は配線基板22に半田付けされている。
【0019】
この圧電振動子19を構成する圧電体層に電界を作用させると、即ち、フレキシブルケーブル21を介して駆動信号を供給すると、上記の自由端部分が素子長手方向(積層方向とは直交する方向)に伸縮する。例えば、充電によって振動子電位を上昇させると圧電振動子19は素子長手方向に収縮し、放電によって振動子電位を下降させると圧電振動子19は素子長手方向に伸長する。
【0020】
上記の流路ユニット17は、液体供給口23から圧力室24を経てノズル開口25に至る一連の個別液体流路を有する板状の部材である。この流路ユニット17は、圧力室24や液体供給口23となる空部や溝部等を有する流路形成基板26と、これらの空部や溝部の開口を封止して圧力室24や液体供給口23の一部を区画する弾性板27と、ノズル開口25が複数穿設されたノズルプレート11を備えている。そして、流路形成基板26の一方の表面、即ち、ケース側の表面に弾性板27を接合し、流路形成基板26の他方の表面、即ち、弾性板接合面とは反対側の表面にノズルプレート11を接合している。
【0021】
上記のノズルプレート11は、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル開口25を列状に穿設した金属製の薄いプレートである。本実施形態では、このノズルプレート11をステンレス製の板材によって構成し、図3に示すように、ノズル開口25の列(ノズル列28)を横並びに8列設けている。そして、1つのノズル列28は、180個のノズル開口25によって構成されている。このため、1つの記録ヘッド3あたり1440個のノズル開口25を備えている。
【0022】
上記の弾性板27は、支持板29の表面に弾性体膜30を積層した二重構造である。本実施形態では、金属板の一種であるステンレス板を支持板29とし、この支持板29の表面にPPS(ポリフェニレンサルファイド)やPI(ポリイミド)製の樹脂フィルムを弾性体膜30としてラミネートした複合板材を用いて弾性板27を作製している。この弾性板27には、圧力室容積を変化させるダイヤフラム部が設けられている。また、この弾性板27には、リザーバ40の一部を封止するコンプライアンス部が設けられている。
【0023】
上記のダイヤフラム部は、エッチング加工等によって支持板29を部分的に除去することで作製される。即ち、このダイヤフラム部は、圧電振動子19の先端面が接合される島部31と、この島部31を囲う薄肉弾性部32とからなる。上記のコンプライアンス部は、リザーバ40に貯留された液体の圧力変動を吸収するための部分である。このダンパー部分もまた、貯留空部の開口面に対向する領域の支持板29をエッチング加工等によって除去し、弾性体膜30のみにすることで作製される。
【0024】
そして、上記の島部31には圧電振動子19の先端面が接合されているので、自由端部を伸縮させることで圧力室容積を変化させることができる。例えば、圧電振動子19を充電して自由端部を素子長手方向に収縮させると島部31が引っ張られる。これにより島部31が移動し、圧電振動子19の放電状態と比べて、圧力室容積を増大させることができる。また、充電状態の圧電振動子19を放電して自由端部を素子長手方向に伸長させると、島部31が圧力室24側に押される。これにより、圧電振動子19の充電状態に比べて、圧力室容積を減少させることができる。
【0025】
上記のカートリッジ装着部2には供給針ユニット33が設けられている。この供給針ユニット33は液体を貯留した液体カートリッジ34(本発明の液体供給源の一種,図1参照)と接続される部分であり、この供給針ユニット33を介して液体カートリッジ34に貯留された液体が記録ヘッド3内に供給される。なお、液体供給源としては、液体カートリッジ34に限らず、液体貯留パック(液体を貯留した袋体)を用いてもよい。そして、本実施形態のように、使用する液体の種類毎にカートリッジに収納すると、取り扱いが容易で使い勝手がよい。
【0026】
本実施形態における供給針ユニット33は、液体供給針35と針ホルダ36とから概略構成されている。液体供給針35は、液体カートリッジ34の内部に挿入される部材であり、液体カートリッジ34内に貯留された液体を針内に導入する。この液体供給針35の先端部は円錐状に尖っており、針内外を連通する液体導入孔が複数穿設されている。針ホルダ36は、液体供給針35を取り付けるための部材であり、その表面には液体供給針35の根本部分を止着するための台座37を形成している。
【0027】
この供給針ユニット33は、ケース16の取付面上に配設されている。この配設状態において、液体出口とケース16の接続突起とは、パッキン38を介して液密状態で連通される。そして、接続突起の内側には、ケース16内を貫通する液体供給路39が形成されている。この液体供給路39は、流路ユニット17のリザーバ40に連通している。従って、液体カートリッジ34内に貯留された液体は、液体供給路39を通じてリザーバ40に流入する。
【0028】
従って、これらの記録ヘッド3及び供給針ユニット33では、液体供給針35からリザーバ40及び圧力室24を通ってノズル開口25に至る一連の液体流路が形成される。そして、圧電振動子19を作動させると、上記したように圧力室容積を変化させることができる。この圧力室容積の変動により、圧力室24内の液体には圧力変動が生じるので、圧力室24内における液体圧力を変化させることができ、ノズル開口25から液滴を吐出させることができる。例えば、圧電振動子19を充電して圧力室24を膨張させ、その後、圧電振動子19を急激に放電して圧力室24を収縮させると、圧力室24の膨張によって圧力室24内に流入した液体が急激に加圧され、ノズル開口25から液滴が吐出される。
ここで、本実施形態では、圧電振動子19の機械的な変形を利用して液滴を吐出させているので、液滴の吐出時に熱が生じ難い。従って、インクを変質させることなく吐出することができる。
【0029】
次に、この記録ヘッド3から吐出させるインクについて説明する。このプリンタは、2種類のモード(本発明における噴射モードの一種)で記録動作が行える。具体的には、第1のモードが点字形成モードであり、第2のモードが印刷モードである。ここで、点字形成モードとは、コピー用紙等の記録紙6の表面に、点字を構成する突起(本発明における小突起の一種。以下、点字用突起43という。図6参照。)を形成するモードであり、本発明における小突起形成モードの一種である。また、印刷モードとは、記録紙6上に文字や画像を印刷するモードであり、本発明の他噴射モードの一種である。なお、上記の記録紙6は、本発明における吐出対象物の一種であり、印刷記録媒体の一種でもある。
【0030】
上記の点字形成モードにおいて、記録ヘッド3は2種類の液体を吐出する。即ち、点字用突起の核44(本発明における小突起基部の一種,図6参照)を形成するための小突起形成用顔料インクと、コーティング層45を形成するためのクリアインクとを選択的に吐出する。小突起形成用顔料インクは、本発明の第1液の一種であり、記録紙6への浸透性が低く堆積性を有したインクが用いられる。また、クリアインクは、本発明の第2液の一種であり、記録紙6への浸透性が小突起小突起形成用顔料インクよりも高く、表面張力が小突起形成用顔料インクよりも低く調整されたクリアインクが用いられる。
【0031】
本実施形態では、小突起形成用顔料インクとクリアインクとを、互いに化学反応を生じさせる反応性液体によって構成し、化学反応によってこれらのインクを固化させている。具体的に説明すると、小突起形成用顔料インクは負に帯電した顔料樹脂(アニオン樹脂)を溶媒中に分散させたインクであり、クリアインクは正に帯電した顔料樹脂(カチオン樹脂)を溶媒中に分散させたインクである。この組み合わせにより、クリアインクを小突起形成用顔料インクに重ねて吐出させると、両インクの接触によって化学反応(固化反応)が生じる。そして、この化学反応によって点字用突起43が形成される。従って、液滴吐出後における特別な処理が不要となり、点字用突起43を形成するための専用機構を省略することができる。このため、装置構成の簡素化を図ることができ、画像等の印刷機能(即ち、他の機能)を比較的容易に組み込むことができる。
【0032】
上記の小突起形成用顔料インクには、色材を構成する顔料樹脂、即ち、印刷用の顔料インクと同じ顔料樹脂が用いられる。ここで、顔料樹脂の含有濃度を印刷用の顔料インクと同じに設定してしまうと、堆積性の面で十分とはいえない。このため、本実施形態では、小突起形成用顔料インクとして、樹脂濃度及び保湿剤濃度を印刷用の顔料インクよりも高めた顔料インクを用いている。
なお、上記構造の記録ヘッド3では、樹脂濃度を15重量%程度まで高めても液滴として吐出できることが確認されている。このため、小突起形成用顔料インクとしては、樹脂濃度を15重量%まで高めたものを用いている。
【0033】
上記のクリアインクには、例えば、ポリアリルアミン等のアミン/イミン系の樹脂が好適に用いられる。これは、固化時における耐擦性が小突起形成用顔料インクよりも高いこと、記録紙6に対する浸透性が高いこと、及び、表面張力が極めて低い等の理由による。なお、クリアインクの表面張力を低くするため、トリエチレングリコールモノブチルエーテルやヘキサンジオール等の界面活性剤や浸透性溶剤を添加してもよい。
【0034】
そして、上記のように、小突起形成用顔料インクと印刷用顔料インクを共に顔料インクで構成すると、インクの物性を容易に揃えることができ、同一の記録ヘッド3からこれらの液体を支障無く吐出させることができる。これにより、記録ヘッド3を多用途に使用でき、装置の汎用性を高めることができる。
【0035】
一方、上記の印刷モードにおいて記録ヘッド3は、1種類の液体を吐出する。即ち、記録ヘッド3は、溶媒中に顔料樹脂を分散させた印刷用の顔料インクを吐出する。この印刷用顔料インクは、本発明における第3液の一種であり、顔料濃度や保湿剤濃度等が画像印刷等の用途に適するように調整されている。そして、この印刷用顔料インクは、1種類の液体ではあるが、本実施形態では7色を用意している。具体的には、ブラックインク、ライトブラックインク、シアンインク、ライトシアンインク、マゼンタインク、ライトマゼンタインク、イエローインクが用意されている。そして、ブラックインクについては2列のノズル列28から吐出させ、他のインクについてはそれぞれ1列のノズル列28から吐出させている。
なお、顔料濃度に関しては、ブラックインクが6.5重量%、ライトブラックインクが1.0重量%、シアンインクが4.0重量%、ライトシアンインクが1.0重量%、マゼンタインクが6.0重量%、ライトマゼンタインクが0.9重量%、イエローインクが5.0重量%となっており、何れの含有量も小突起形成用顔料インクより低い。
【0036】
これらの各液体、即ち、小突起形成用顔料インク、クリアインク、印刷用顔料インクは、それぞれ別体の液体カートリッジ34に貯留されている。この液体カートリッジ34は、液体の貯留空部を内部に形成すると共に、液体供給針35が挿入される針挿入部を備えたブロック状の部材であり、カートリッジ装着部2に装着される。即ち、点字形成モードでは、小突起形成用顔料インクを貯留した液体カートリッジ34とクリアインクを貯留した液体カートリッジ34とがカートリッジ装着部2に装着される。また、印刷モードでは、印刷用顔料インクを貯留した液体カートリッジ34がカートリッジ装着部2に装着される。そして、小突起形成用顔料インクは、8列のノズル列28の内、7列のノズル列28から吐出され、クリアインクは1列のノズル列28から吐出される。一方、印刷用顔料インクは、8列全てのノズル列28から吐出される。
【0037】
ここで、液体カートリッジ34に関し、小突起形成用顔料インク、クリアインク、印刷用顔料インクをそれぞれ別体の液体カートリッジ34に貯留するものに限らない。例えば、小突起形成用顔料インクとクリアインクとを個別に貯留した液体カートリッジ34を一体に形成してもよい。即ち、使用する液体を噴射モード毎に纏めて液体カートリッジ34に貯留してもよい。
そして、この場合には、この液体カートリッジと印刷用顔料インクを貯留した液体カートリッジ34とを、モードに応じて差し替える。このように構成すると、ユーザーは噴射モード毎に液体カートリッジ34を選択してカートリッジ装着部に装着すれば足りるので、操作が容易になって使い勝手が向上する。
【0038】
なお、小突起形成用顔料インクは、核44が形成できれば良いので、何色のインクであっても用いることができる。ここで、小突起形成用顔料インクと印刷用顔料インクとは、顔料濃度や保湿剤濃度等が相違するものの基本的な液体組成は同じである。このため、小突起形成用顔料インクを印刷用顔料インクと同色の組み合わせで構成し、同じノズル列28から吐出させる構成が好ましい。これは、小突起形成用顔料インクと印刷用顔料インクとを交換した際に、混色によるインク流路内の汚れを最小限に抑えることができるからである。
仮に、上記のクリアインクがイエローインクと同じノズル列28から吐出されるとした場合、残り6色のインク、即ち、ブラックインク、ライトブラックインク、…、ライトマゼンタインクを、小突起形成用顔料インクと印刷用顔料インクとの間で同色に揃え、同じノズル列28から吐出させる構成が好ましい。このように構成することにより、混色に伴うインク流路内の汚れが防止でき、クリーニング時に消費するインク量を抑えることができる。
【0039】
また、例示した液体カートリッジ34は、情報記憶素子の一種である接点ROM46(図4参照)を備えている。この接点ROM46は、記憶内容を外部から書き換え可能であって、カートリッジ装着部2から取り外した状態においても記憶内容を保持可能な素子によって構成されている。
この接点ROM46には、その液体カートリッジ34に貯留されている液体の種類を示す液体種類情報、液体の残量を示す液体残量情報、最初に装着された日を示す使用開始日情報といった各種情報が記憶されている。そして、この接点ROM46は、カートリッジ装着部2への装着状態でカートリッジ装着部2に設けられた接点端子47(図4参照)に電気的に接続される。なお、この接点端子47は制御部48と電気的に接続されている。
【0040】
次に、点字プリンタ1の電気的構成について説明する。図4に示すように、この点字プリンタ1は、プリンタコントローラ51と、プリントエンジン52とから概略構成されている。
【0041】
プリンタコントローラ51は、CPU,ROM,RAMを備えた制御部48や、記録ヘッド3に供給するための駆動信号を発生する駆動信号発生回路53等を備えている。一方、プリントエンジン52は、パルスモータ10と、紙送りモータ54と、記録ヘッド3等を備えている。そして、これらの各部は、上記の制御部48によってその動作が制御可能である。
【0042】
上記の制御部48は、この点字プリンタ1における制御を行う部分である。この制御部48は、接点端子47と電気的に接続されているので、装着された液体カートリッジ34の接点ROM46に記憶された各種情報を読み出せる。このため、制御部48は、読み出した情報に基づいて液体カートリッジ34に貯留されている液体の種類等を認識できる。また、制御部48は、接点ROM46に記憶された各種情報を書き換えることもできる。
【0043】
この制御部48は、本発明における駆動制御手段としても機能する。即ち、制御部48は、複数のモード(即ち、噴射モード)の中から1つのモードを選択し、選択したモードに応じて記録ヘッド3の動作を制御する。本実施形態では、制御部48は、点字形成モードと印刷モードの何れか一方のモードを選択できる。このモードの選択は、選択スイッチ(図示せず)の操作によって行ってもよく、制御部48に選択させてもよい。そして、制御部48に選択させる場合には、接点ROM46に記憶された情報を利用する構成が好ましい。これは、本実施形態では吐出させる液体の種類がモード毎に相違することによる。即ち、接点ROM46に記憶された情報を参照することで、制御部48は、カートリッジ装着部2に装着されたカートリッジ(貯留された液体)の種類を認識できるので、使用するモードを自動的に決定できる。
【0044】
点字形成モードにおいて、制御部48は、ホストコンピュータ等の上位装置から送信されてくる点字形成データに基づき、点字用突起43を形成する場所、点字用突起43の大きさ(着弾面積)、点字用突起43の高さ(液滴の吐出量)等を決定し、記録ヘッド3を制御するためのドットパターンデータを生成する。そして、制御部48は、この生成したドットパターンデータを記録ヘッド3に転送する。また、制御部48は、駆動信号設定手段としても機能し、点字用突起43の形成に適した波形形状の点字用駆動信号を設定し、この点字用駆動信号を駆動信号発生回路53から発生させる。さらに、制御部48は、パルスモータ10を作動させてキャリッジ4(記録ヘッド3)を所望の位置に移動させたり、紙送りモータ54を作動させて記録紙6を送り出したりもする。
【0045】
印刷モードにおいて、制御部48は、上位装置から送信されてくる印刷データに基づいて色毎のドットパターンデータを生成し、記録ヘッド3に転送する。また、制御部48(駆動信号設定手段)は、印刷に適した波形形状の印刷用駆動信号を設定し、この印刷用駆動信号を駆動信号発生回路53から発生させる。そして、この印刷モードにおいても、制御部48は、パルスモータ10を作動させてキャリッジ4(記録ヘッド3)を所望の位置に移動させたり、紙送りモータ54を作動させて記録紙6を送り出したりする。
【0046】
上記の駆動信号発生回路53は、駆動信号発生手段として機能する部分であり、制御部48による制御の下、記録ヘッド3に供給するための駆動信号を発生する。本実施形態の駆動信号発生回路53は、図5に示すように、点字形成モードにおいて1種類の点字用駆動信号(COM1)を発生し、印刷モードにおいて3種類の印刷用駆動信号(COM2〜COM4)の何れかを選択的に発生する。
【0047】
以下、各駆動信号について説明する。上記の点字用駆動信号は、図5(a)に示すように、液滴の吐出量を可及的に増やす様に設定した点字駆動パルスDP1を、1単位周期内に3個等間隔で発生させる一連の信号である。この点字駆動パルスDP1は、駆動電圧、即ち、最大電位と最低電位の電位差を、圧電振動子19が許容し得る程度まで可及的に高く設定した駆動パルスである。そして、この点字駆動パルスDP1が1つ圧電振動子19に供給される毎に、ノズル開口25からは最大量のインク滴(この例では約17pL)が吐出される。従って、1単位周期では、約50pLのインク滴を吐出させることができる。
【0048】
上記の印刷用駆動信号は、例えば、高速印刷に適した第1印刷用駆動信号COM2と、高解像度の印刷時に用いられる第2印刷用駆動信号COM3と、超高解像度の印刷時に用いられる第3印刷用駆動信号COM4とからなる。
【0049】
第1印刷用駆動信号COM2及び第2印刷用駆動信号COM3は、スモールドット、ミドルドット、及び、ラージドットからなるドットセットを選択的に記録可能な駆動信号である。即ち、これらの駆動信号では、非記録を含めて、各ドットを4階調で記録することができる。そして、第1印刷用駆動信号COM2と第2印刷用駆動信号COM3とは、各ドットにおけるインク量の組み合わせが相違する。
【0050】
上記の第1印刷用駆動信号COM2は、第1スモールドット駆動パルスDP2を1単位周期内に3個等間隔で発生させる一連の信号である。この第1スモールドット駆動パルスDP2は、約13pLのインク滴をノズル開口25から吐出させる駆動パルスであり、基本的な波形形状は上記の点字駆動パルスDP1と同じである。但し、この第1スモールドット駆動パルスDP2では、駆動電圧を上記の点字駆動パルスDP1よりも低く設定している点に相違がある。また、この第1スモールドット駆動パルスDP2では、使用環境の温度情報等に応じて、この駆動パルスを構成している波形要素の発生時間や電位差を変更している点も相違する。
【0051】
この第1印刷用駆動信号COM2では、記録階調が非記録の場合、何れの第1スモールドット駆動パルスDP2も圧電振動子19に供給しない。そして、記録階調がスモールドットの場合には1単位周期あたり1つの第1スモールドット駆動パルスDP2を圧電振動子19に供給し、ミドルドットの場合には2つの第1スモールドット駆動パルスDP2を圧電振動子19に供給する。同様に、記録階調がラージドットの場合には3つの第1スモールドット駆動パルスDP2すべてを圧電振動子19に供給する。これにより、記録階調が非記録の場合にはインク滴は吐出されない。また、スモールドットの場合には約13pLのインク滴が1単位周期内に1回吐出され、記録紙6上にはこのインク滴によるスモールドットが記録される。記録階調がミドルドットの場合には、約13pLのインク滴が1単位周期内に2回吐出され、記録紙6上には約26pLのインク滴によるミドルドットが記録される。記録階調がラージドットの場合には約13pLのインク滴が1単位周期内に3回続けて吐出され、記録紙6上には約40pLのインク滴によるラージドットが記録される。
【0052】
上記の第2印刷用駆動信号COM3は、微振動パルスDP3と、第2スモールドット駆動パルスDP4と、ミドルドット駆動パルスDP5とを1単位周期内に備えた一連の信号である。微振動パルスDP3は、メニスカス、即ち、ノズル開口25で露出しているインクの自由表面を、インク滴を吐出させない程度に移動させる信号である。第2スモールドット駆動パルスDP4は、上記の第1スモールドット駆動パルスDP2での吐出量よりも少ない量のインク滴を吐出させる駆動パルスである。本実施形態では、約4pLのインク滴を吐出させる信号として構成されている。ミドルドット駆動パルスDP5は、ミドルドットの形成に適した量のインク滴を吐出させる駆動パルスである。本実施形態では、約12pLのインク滴を吐出させる信号として構成されている。なお、このミドルドット駆動パルスDP5では、直前に第2スモールドット駆動パルスDP4が供給されると、上記の量(約12pL)よりも多い量のインク滴が吐出される。
【0053】
この第2印刷用駆動信号COM3では、記録階調が非記録の場合には微振動パルスDP3を圧電振動子19に供給する。これにより、メニスカスが微振動し、インクの増粘が防止される。また、記録階調がスモールドットの場合には第2スモールドット駆動パルスDP4を圧電振動子19に供給し、ミドルドットの場合にはミドルドット駆動パルスDP5を圧電振動子19に供給する。これにより、各々のインク量に応じた大きさのドットが記録紙6上に記録される。さらに、記録階調がラージドットの場合には第2スモールドット駆動パルスDP4とミドルドット駆動パルスDP5とを続けて圧電振動子19に供給する。この場合、第2スモールドット駆動パルスDP4とミドルドット駆動パルスDP5の相乗効果によって約20pLのインク滴が吐出され、このインク滴によってラージドットが記録される。
【0054】
上記の第3印刷用駆動信号COM4は、超高解像度の印刷時に用いられる駆動信号であり、1単位周期内に、1つの微振動パルスDP6と1つの第3スモールドット駆動パルスDP7とを有する一連の信号である。ここで、微振動パルスDP6は、上記した微振動パルスDP3と同様の機能を発揮し、インクの増粘を防止するものである。第3スモールドット駆動パルスDP7は、上記の第2スモールドット駆動パルスDP4よりもさらに少量のインク滴を吐出させる駆動パルスであり、本実施形態では約2pLのインク滴を吐出させる。また、この第3印刷用駆動信号COM4における単位周期の長さは、上記の第1印刷用駆動信号COM2や第2印刷用駆動信号COM3の単位周期の長さよりも短い。
【0055】
この第3印刷用駆動信号COM4では、全てのドットを第3スモールドット駆動パルスDP7による極小のスモールドットで記録する。即ち、ドットを記録する場合には第3スモールドット駆動パルスDP7を圧電振動子19に供給し、非記録の場合には微振動パルスDP6を圧電振動子19に供給する。
【0056】
次に、上記構成の点字プリンタ1における動作について説明する。
【0057】
電源が投入されると制御部48は、所定のイニシャライズ動作を実行する。このイニシャライズ動作では、キャリッジ4を主走査方向に動かしてキャリッジ4(記録ヘッド3)の位置認識等を行ったり、ワークエリア内の不要な情報をクリアしたりする。イニシャライズ動作を行ったならば、制御部48は、接点端子47を通じて接点ROM46にアクセスし、記憶されている各種情報を読み出す。そして、制御部48(駆動制御手段)は、読み出した情報に基づき、装着されている液体カートリッジ34の種類、即ち貯留されている液体の種類を認識し、モードを設定する。この場合、制御部48は、装着されている液体カートリッジ34が印刷用顔料インクを貯留している場合には印刷モードを設定する。また、装着されている液体カートリッジ34が小突起形成用顔料インクとクリアインクとを貯留している場合には点字形成モードを設定する。
【0058】
印刷モードにおいて制御部48(駆動制御手段)は、上記の印刷用顔料インクを吐出させる。このとき、制御部48は、上位装置からの印刷データに基づき、第1印刷用駆動信号COM2〜第3印刷用駆動信号COM4の何れかを選択して駆動信号発生回路53から発生させる。また、制御部48は、パルスモータ10や紙送りモータ54を制御し、キャリッジ4を主走査方向に移動させると共に記録紙6を副走査方向に送り出す。さらに、制御部48は、キャリッジ4や記録紙6の移動に同期させて、駆動パルスDP2〜DP7の圧電振動子19への供給を制御する。この一連の動作によって、記録紙6上には、印刷データに基づく画像等が記録される。
【0059】
一方、点字形成モードにおいて制御部48(駆動制御手段)は、上記の小突起形成用顔料インクとクリアインクとを吐出させる。即ち、制御部48は、先ず核形成工程を行い、小突起形成用顔料インクを記録紙6上に着弾させて点字用突起の核44を形成する。この場合、図6(a)及び(b)に示すように、記録ヘッド3の主走査に連動させて突起を形成する領域に対し、規定量の小突起形成用顔料インクを着弾させる。
ここで、標準的な点字用突起43は、直径が1.4mm、中心部の高さが0.7mm程度の半球状をしている。そして、この形状に基づいて単純に計算すると、上記した50pLの液滴を14500回吐出させることで、点字用突起の核44を形成することができる。
なお、本実施形態では、上記したように、1つのノズル列28は180個のノズル開口25を備えており、7列のノズル列28(1260個のノズル開口25)を小突起形成用顔料インクの吐出用に割り当てている。このため、50pLの液滴を1つのノズル開口25あたり11回〜12回吐出させることで、点字用突起の核44が形成できる。
【0060】
点字用突起の核44を形成したならば、コーティング工程に移行し、この核44を覆うようにクリアインクを吐出させる。このコーティング工程では、例えば、図6(c)に示すように、核44よりも少し広い領域にクリアインクを吐出させる。上記したように、このクリアインクはカチオン樹脂を含み、小突起形成用顔料インクを構成するアニオン樹脂と化学反応を生じて固化するので、クリアインクの着弾によって化学反応が開始し、点字用突起43が形成される。このため、固化のための特別な機構が不要であり、装置構成の簡素化が図れる。
【0061】
このクリアインクは、固化することで点字用突起の核44を保護するコーティング層45となる。点字は、点字用突起43を指先で触れることで認識されるものであり、高い耐擦性が要求される。本実施形態のように、クリアインクでコーティング層45を形成すると、指先で擦ったりしても点字用突起43が剥がれたりせず耐久性を高めることができる。さらに、コーティング層45が核44を保護するので、小突起形成用顔料インクとして耐擦性の低い液体を使用することができる。これにより、小突起形成用顔料インクに用いる液体について選択の自由度を高めることができる。
【0062】
また、このクリアインクは、吐出対象物としての記録紙6に対して高い浸透性を有する。このため、図7に示すように、吐出したクリアインクの一部45aが記録紙内に浸透した状態で固化する。これにより、記録紙内に浸透した部分45aがアンカーと同様に機能し、コーティング層45の記録紙6に対する接合強度を高める。その結果、形成した点字用突起43を記録紙6から剥がれ難くすることができ、耐久性を高めることができる。なお、このアンカー効果を高めるべく、クリアインクに含まれるスチレンアクリル系の樹脂(アクリル樹脂やウレタン樹脂等)の濃度を高めることが好ましい。
また、小突起形成用顔料インク或いはクリアインクの吐出量を制御し、点字用突起43のエッジ部分(図7に符号Rで示す部分)をなだらかな曲面で構成することが好ましい。このように構成することで、突起自体にかかる力に関し、単位面積当たりの負荷を分散することができる。即ち、面圧を下げることができる。これにより、点字用突起43の耐久性を高めることができる。
【0063】
さらに、このクリアインクを記録紙6の全面に塗布し、記録紙6の表面をコーティング層で覆ってもよい。この場合、コーティング層が透明であるので、クリアインクを介して点字用突起43を視認することができる。このように、点字用突起43を視認可能にすると、点字作成者が作成された点字を確認する際に便利である。
【0064】
以上説明したように、この点字プリンタ1では、小突起形成用顔料インクとクリアインクとを吐出することで点字用突起43を形成できる。このため、インク吐出後において特別な処理を行わなくて済み、装置構成を簡素化できる。即ち、インクを吐出させる機構があれば足り、固化用の専用機構が不要である。そして、固化用の専用機構が省略できることから、装置に汎用性を持たせることが容易になる。即ち、文字や画像等を印刷する印刷機能を、点字プリンタ1に対して容易に付与できる。
【0065】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
【0066】
例えば、点字用突起の核44を形成する第1液に関し、記録紙6等の吐出対象物への浸透性が低く堆積性を有する液体であればよい。このため、この第1液を、クリアインク(第2液の一種)と化学反応を生じない液体によって構成してもよい。同様に、核44を覆う第2液に関しても着弾後に固化する液体であれば足り、第1液と化学反応を生じない液体によって構成してよい。例えば、この第2液を、ポリエチレンエマルジョンやポリプロピレンエマルジョン等のワックス系の樹脂を含有する液体によって構成してもよい。
【0067】
また、第2液を下地材として記録紙6等の吐出対象物の表面に塗布し、その後、第1液で核44を形成し、さらにその上から第2液を塗布してコーティング層45を形成するようにしてもよい。また、コーティング層45を記録紙6の全面に形成してもよい。
【0068】
また、本発明は点字プリンタ1に限定されるものではない。例えば、立体画像プリンタや3次元造形装置等、吐出対象物の表面に小突起を形成可能な液体噴射装置であれば、本発明を適用することができる。
そして、これらの装置では、小突起を連続させることで突条(線)を形成でき、この線を幅方向に連続させることで隆起部を形成できる。従って、レリーフを作製できるし、油絵を複製することもできる。さらに、立体地図(3次元地図)も作製できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】点字プリンタの構成を説明する斜視図である。
【図2】記録ヘッドの部分拡大断面図である。
【図3】記録ヘッドをノズルプレート側から見た図である。
【図4】点字プリンタの電気的構成を説明するブロック図である。
【図5】(a)〜(d)は、駆動信号発生回路から発生する駆動信号を説明する図である。
【図6】(a)〜(c)は、点字用突起の形成を説明する模式図である。
【図7】点字用突起を説明する断面図である。
【符号の説明】
1…点字プリンタ,2…カートリッジ装着部,3…記録ヘッド,4…キャリッジ,5…ガイドロッド,6…記録紙,7…駆動プーリー,8…遊転プーリー,9…タイミングベルト,10…パルスモータ,11…ノズルプレート,12…ワイパー機構,13…キャッピング機構,15…振動子ユニット,16…ケース,17…流路ユニット,18…収納空部,19…圧電振動子,20…固定板,21…フレキシブルケーブル,22…配線基板,23…液体供給口,24…圧力室,25…ノズル開口,26…流路形成基板,27…弾性板,28…ノズル列,29…支持板,30…弾性体膜,31…島部,32…薄肉弾性部,33…供給針ユニット,34…液体カートリッジ,35…液体供給針,36…針ホルダ,37…台座,38…パッキン,39…液体供給路,40…リザーバ,43…点字用突起,44…点字用突起の核,45…コーティング層,46…接点ROM,47…接点端子,48…制御部,51…プリンタコントローラ,52…プリントエンジン,53…駆動信号発生回路,54…紙送りモータ

Claims (13)

  1. 液体供給源から供給された液体をノズル開口から液滴の状態で吐出可能な液体噴射ヘッドを備え、吐出させた液体によって吐出対象物の表面に小突起を形成可能な液体噴射装置において、
    複数の噴射モードの中から1つの噴射モードを選択し、選択した噴射モードに応じて前記噴射ヘッドの動作を制御する駆動制御手段を備え、
    前記噴射ヘッドは、吐出対象物への浸透性が低く堆積性を有する第1液と、吐出対象物への浸透性及び固化時における耐擦性が前記第1液よりも高い第2液と、これらの第1液及び第2液とは異なる第3液とを吐出可能に構成され、
    前記駆動制御手段は、
    前記噴射モードが吐出対象物の表面に小突起を形成可能な小突起形成モードの場合に、前記第1液を吐出させることで小突起基部を吐出対象物上に形成した後、該小突起基部を覆うように前記第2液を吐出させることでコーティング層を形成し、
    前記選択された噴射モードが小突起形成モードとは異なる他噴射モードの場合に前記第3液を吐出させることを特徴とすることを特徴とする液体噴射装置。
  2. 前記小突起形成モードが吐出対象物の表面に点字用突起を形成する点字形成モードであることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
  3. 前記第1液及び第2液が化学反応を生じる反応性液体であり、第1液と第2液の化学反応によってこれらの液体を固化させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置。
  4. 前記第1液がアニオン樹脂を含有する液体であり、前記第2液がカチオン樹脂を含有する液体であることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
  5. 前記第2液は吐出対象物に対して高い浸透性を有し、前記コーティング層の一部を吐出対象物内に浸透させた状態で形成することを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の液体噴射装置。
  6. 前記第2液が透明樹脂を含有したクリアインクであることを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
  7. 前記他噴射モードが印刷記録媒体上に文字や画像を印刷する印刷モードであり、
    前記第3液が印刷用のインクであることを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の液体噴射装置。
  8. 前記第3液が溶媒中に顔料樹脂を分散させてなる印刷用顔料インクであり、前記第1液が顔料樹脂の濃度を印刷用顔料インクよりも高めた小突起形成用顔料インクであることを特徴とする請求項7に記載の液体噴射装置。
  9. 前記液体供給源を、前記第1液、第2液、第3液を個別に貯留した液体カートリッジによって構成すると共に、前記噴射ヘッドが取り付けられるキャリッジには該液体カートリッジを装着可能なカートリッジ装着部を設け、
    前記噴射モードが小突起形成モードの場合には前記第1液及び第2液を貯留した液体カートリッジをカートリッジ装着部へ装着可能とし、他噴射モードの場合には前記第3液を貯留した液体カートリッジをカートリッジ装着部へ装着可能としたことを特徴とする請求項1から請求項8の何れかに記載の液体噴射装置。
  10. 液体供給源から供給された液体を液体噴射ヘッドのノズル開口から液滴の状態で吐出させ、該吐出させた液体によって吐出対象物の表面に小突起を形成する液体噴射による小突起形成方法において、
    吐出対象物への浸透性が低く堆積性を有する第1液を吐出することで小突起基部を吐出対象物上に形成し、
    吐出対象物への浸透性及び固化時における耐擦性が前記第1液よりも高い第2液を、前記小突起基部を覆うように吐出することでコーティング層を形成することを特徴とする液体噴射による小突起形成方法。
  11. 前記第1液及び第2液が化学反応を生じる反応性液体であり、第1液と第2液の化学反応によってこれらの液体を固化させることを特徴とする請求項10に記載の液体噴射による小突起形成方法。
  12. 前記第1液がアニオン樹脂を含有する液体であり、前記第2液がカチオン樹脂を含有する液体であることを特徴とする請求項11に記載の液体噴射による小突起形成方法。
  13. 前記第2液は吐出対象物に対して高い浸透性を有し、前記コーティング層の一部を吐出対象物内に浸透させた状態で形成することを特徴とする請求項10から請求項12の何れかに記載の液体噴射による小突起形成方法。
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