JP2004247697A - 巻線型チップインダクタ用コア - Google Patents
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Abstract
【課題】コアに直接に端子電極が設けられている、横置き型のオールフェライトコアにおいて、Q値を効果的に向上せしめた、巻線型チップインダクタ用コアを提供すること。
【解決手段】コア10を、透磁率が7〜100のフェライト材料を用いて、二つの脚部14とそれら脚部14,14を一体的に連結する巻線部12とを有する逆U字形又はH字形の形状に形成すると共に、コア10の全高、つまり脚部14の高さ(H)を1としたときに、巻線部12の高さ(h)が0.45〜0.60の範囲内の寸法となるようにして、構成した。
【選択図】 図1
【解決手段】コア10を、透磁率が7〜100のフェライト材料を用いて、二つの脚部14とそれら脚部14,14を一体的に連結する巻線部12とを有する逆U字形又はH字形の形状に形成すると共に、コア10の全高、つまり脚部14の高さ(H)を1としたときに、巻線部12の高さ(h)が0.45〜0.60の範囲内の寸法となるようにして、構成した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【技術分野】
本発明は、巻線型チップインダクタ用コアに係り、特に、フェライト製のコアの脚部に直接に電極が設けられてなる巻線型チップインダクタ用コアの改良された構造に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来より、携帯電話等の小型の電子機器における高周波回路等に用いられるチップインダクタとして、ドラム状のコアの端面に形成されたリード端子に、該コアに巻かれたインダクタを形成する巻線の両端部が接続された後、外装を樹脂モールドして固定せしめた、所謂モールド巻線タイプと呼ばれる巻線型チップインダクタが用いられている。
【0003】
しかしながら、このような構造とされた巻線型チップインダクタにあっては、インダクタによって発生する磁束が、コア端面に形成されたリード端子を形成する金属を貫く方向に発生するため、そのような磁束と金属との交差によって、渦電流損を発生してしまい、インダクタのQ特性が低下してしまうという問題を内在していた。
【0004】
そこで、そのような問題を回避すべく、かかるコアの端部に設けられるリード端子の形状や、その取り回し或いは接続方法の工夫が、各種行われてきたが、そのようなリード端子の構造の複雑化により、製造工程の複雑化といった新たな問題を惹起せしめることとなっていた。加えて、そのようなリード端子を介してインダクタの巻線と電子回路との電気的接続を行っていたため、導通不良を起こしやすいといった問題も内在するものであった。加えて、このようなリード端子を用いる構造は、コアの端面からリードが突出するため、チップインダクタの小型化に限界があったのである。
【0005】
このため、従来から、インダクタを形成するコアに直接電極を塗布形成し、電極の位置をインダクタが発生する磁束の影響が少ない部位に移動したり、その面積を低減することによって、Q値を向上せしめた巻線型チップインダクタが、種々提案されている(例えば、特許文献1,2等参照)。而して、それら特許文献1及び2においては、コア形状を、インダクタを形成する巻線を巻回する巻線部の両端に、該巻線部の高さよりも高くされた脚部を設けた、略U字型又は略H字型の形状とすると共に、該コアの前記脚部の下端部または上端部に端子電極を形成し、前記巻線部に巻回した巻線の両端部を、それぞれの端子電極と接続して、電子回路と巻線が電気的に接続せしめられる構造とした、巻線型チップインダクタが示されている。
【0006】
要するに、このような巻線型チップインダクタにあっては、従来、コアの両端面に設けられていたリード端子(電極)がコアの下面に移動したところから、巻線部に巻回されたコイルによって発生する磁束が、端子電極を形成する金属を貫通することを低減することが可能となるため、かかる端子電極と磁束の交差によって発生する渦電流損を抑えることが出来、以て、インダクタのQ値を向上することが可能となったのである。更に、巻線の両端が直接に端子電極に対して接続せしめられているところから、導通不良の発生も、効果的に抑制することが出来る。
【0007】
しかしながら、このような構造とされたチップインダクタにあっては、U字型又はH字型とされたコアの材質にフェライト材を適用すると、かかるフェライト製コアの下面に磁束を導いてしまうこととなるため、該フェライト製コアの下面に形成された電極を磁束が貫通することによって、渦電流損が非常に大きくなってしまい、コアに、直接、塗布形成される電極の形状をどのように工夫したとしても、高いQ値を得ることは困難であった。更に、かかるフェライト製コアの下面に磁束が導かれてしまうところから、かかるチップインダクタが実装される電子回路基板のパターン上の金属と磁束が交差することによっても渦電流損が発生してしまい、塗布形成される電極の形状の工夫によるQ値の改善には限界があったのである。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−335152号公報
【特許文献1】
特開2002−280226号公報
【0009】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、フェライト材料にて形成されたコアに電極が直接に設けられてなる構造の巻線型チップインダクタにおいて、高いQ値を得ることが出来る巻線型チップインダクタ用コアを提供することにある。
【0010】
【解決手段】
そして、本発明者等は、そのような課題を解決するために種々の検討を重ねた結果、チップインダクタ用コアを構成するフェライト材料の透磁率と、該コアの構造の見直しを行うことによって、フェライト製のコアに直接電極を塗布形成した、横置き型のオールフェライトコアにおいても、Q値の効果的な向上が可能となることを見出したのである。
【0011】
すなわち、本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであって、その特徴とするところは、二つの脚部とそれら脚部を一体的に連結する巻線部とを有する逆U字形又はH字形の形状を呈し、それら二つの脚部の下端部に電極が直接に設けられてなる構造の巻線型チップインダクタ用コアにして、該コアを、透磁率が7〜100のフェライト材料にて形成すると共に、該コアの全高を1としたときに、前記巻線部の高さ方向の幅が0.45〜0.60の範囲内の寸法となるように構成したことにある。
【0012】
要するに、かかる本発明に従う巻線型チップインダクタ用コアにあっては、かかるコアが、巻線部と一体的に連結された二つの脚部をもつ逆U字形又はH字形の形状を呈し、それら二つの脚部の下端部に電極が直接に設けられているところから、従来のチップインダクタ用コアにおいて、コアの両端部に設けられた電極と磁束が交差することにより発生していた渦電流損の発生を、効果的に低減することが可能となり、Q値が有利に向上せしめられることとなるのである。
【0013】
また、そのような本発明によれば、コアが透磁率が7〜100のフェライト材料にて形成されているところから、Q値が有利に向上せしめられることとなる。これは、透磁率が7より小さくなると、AL値(かかるコアに巻線を1回巻いた時のL値)の低下が顕著となる上に、Rdc(直流抵抗値)が増加し、Q値の向上効果が充分達成されなくなるからである。逆に、透磁率が100を超えた場合には、前記したAL値が向上すると共に、Rdcの低減効果は発揮されるものの、Q値の向上効果があまり得られないのである。
【0014】
更にまた、かかる本発明に従う巻線型チップインダクタ用コアによれば、該コアの全高、つまり、前述した巻線部の両端に設けられた脚部の高さを1としたきに、かかる巻線部の高さ方向の幅が0.45〜0.60の範囲内の寸法とされているところから、フェライト材にて巻線部と一体的に形成された脚部へと磁束が導かれても、該脚部の下端部に設けられた電極の金属と磁束との交差による影響を受け難くなるため、インダクタのQ値を効果的に向上することが可能となるのである。また、コア高さ1に対し、巻線部の高さが0.45より小さくなると、かかる巻線部に巻回される巻線の膨らみ(=コイルの幅)に対して、かかるコアの巻線部の太さが小さくなり過ぎてしまい、Q値の向上効果が充分に発揮され得ないと共に、コアの機械的強度が低下してしまうのである。一方、かかるコアの巻線部の高さが0.60より大きくなると、逆に巻線の膨らみに対してコアの巻線部の太さが大きくなるため、Q値が低下すると共に、Rdcも悪化してしまうのである。
【0015】
加えて、本発明によれば、チップインダクタ用コアの脚部の下端面に、直接に電極が設けられて、該電極と巻線とが接続されているといるところから、巻線を電子回路に接続するための端子として複雑なリード端子を形成したり、リードフレーム等を使用してフェライトコアを電極面から離すという複雑な構造をとる必要がないところから、インダクタと電子回路との接続不良等が発生し難くなり、信頼性が向上すると共に、生産性が向上し、コストダウンにも有利に貢献することとなるのである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成をより具体的に明らかにするために、本発明に従う巻線型チップインダクタ用コアについて、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0017】
先ず、図1には、本発明に従う構造とされた巻線型チップインダクタ用コアの一例が、その斜視図において、概略的に示されている。そして、かかる図1からも明らかなように、コア10は、巻線部12と、該巻線部12の両側に一体的に設けられた脚部14,14とからなる、逆U字形状を呈しているのである。
【0018】
また、そのようなコア10は、本発明に従って、透磁率が7〜100である各種のフェライト材料を用いて、形成されることとなるが、特に、本発明にあっては、透磁率が7〜100のNi−Zn系フェライト材料が、好適に用いられることとなる。この種のフェライト材料を用いることによって、Q値が効果的に向上せしめられることとなるのである。これは、透磁率が7よりも小さいフェライト材料を用いてコアを形成した場合にあっては、AL値(コアに巻線を1回巻いた時のL値)の低下が顕著となる上に、Rdc(直流抵抗値)が増加し、Q値の向上効果が充分に得られないからである。一方、透磁率が100よりも大きなフェライト材料にてコアを形成した場合にあっては、前記したAL値が向上すると共に、Rdcの低減効果は発揮されるものの、Q値の向上効果が充分に得られないためである。
【0019】
そして、そのような本発明に従うコア10にあっては、巻線部12の両側に設けられた脚部14の高さ(H)を1としたときに、前記巻線部12の高さ(h)を0.45〜0.60の高さとすることによって、Q値の効果的な向上が図られ得るのである。これは、脚部14の高さ(H)=1に対して、巻線部12の高さ(h)が0.45より小さくなった場合にあっては、かかる巻線部12に巻回される巻線の膨らみ(=コイルの幅)に対して、巻線部12の太さが小さくなり過ぎてしまい、Q値の向上効果が充分に発揮され得ないためである。一方、巻線部12の高さ(h)が0.60より大きくなった場合にあっては、逆に、巻線の膨らみに対してコアの巻線部の太さが大きくなり、Q値が低下すると共に、Rdcも悪化してしまうのである。
【0020】
ところで、このようなフェライト製コアの製造方法としては、例えば、よく知られているように、所望の透磁率が得られるように選定された各種フェライト原材料を粉砕した後に混合せしめ、かくして得られた混合物を形成するコアの形状に成形し、それを大気中或いは加圧状態下において焼成する手法等、各種の公知の手法によって、形成されるのである。
【0021】
そして、そのような、巻線部12と脚部14とからなる、逆U字形状に形成されたコア10の脚部14の下部端面に、金属ペースト等の導電性材料を直接塗布する等して、図示しない端子電極が形成されることによって、巻線型チップインダクタ用コアが形成されているのであり、このようにして得られたコア10の巻線部12に銅線等の巻線を巻回し、かかる巻線の両端部を、前記脚部14の下部端面に形成された端子電極を接続せしめることによって、所望の巻線型チップインダクタが形成されるのである。
【0022】
また、本発明に従う巻線型チップインダクタ用コアの別の望ましい態様の一つとしては、コア10の形状は、脚部18,18の上面が巻線部16よりも突出している形状、例えば図2に示されるような、H字形状とされていてもよい。このようなH字形状とされたコア20にあっても、脚部18の高さ(H)を1としたとき、巻線部16の高さ(h)は、前述した逆U字形状の場合と同様に0.45〜0.60の範囲とすることによって、Q値の向上が効果的に図られ得ることとなるが、特に、このようなH字形状のコアにあっては、脚部18のうち、巻線部16よりも下とされた足部18aの高さ(l)は、0.25以上とされることが望ましい。これは、かかる足部18aの高さが0.25以下になると、巻線部16に巻回された巻線と実装された基板上の回路パターンとの距離が近くなるために、渦電流損が増加し、Q値が低下してしまったり、巻線と回路パターン間の浮遊容量が増加することによって、SRF(自己共振周波数)が低下してしまうといった問題を惹起せしめるのである。
【0023】
【実施例】
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明の特徴を更に明確にすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。
【0024】
先ず、巻線型チップインダクタ用コアとして、公知のNi−Zn系フェライト材を用いて、図1に示されるような逆U字形状をもち、かかるフェライト材の透磁率や巻線部の高さが本発明に従う範囲内である、実施例1及び2のコアを、それぞれ作製した。一方、比較例として、形状及びフェライト材の透磁率は同じであるが、巻線部の高さが本発明よりも大きな値である、比較例1及び比較例2のコアを、それぞれ形成した。それら実施例1,2及び比較例1,2に係る各コアの透磁率及び巻線部の高さを、下記表1に示す。なお、巻線部の高さは、図1に示されるように、コア10における脚部14の高さ(H)を1とした場合の、巻線部12の高さ(h)の比率を表している。
【0025】
次いで、このようにして得られた4つのフェライト製コアを用いてインダクタを作製し、それら各インダクタのQ特性の測定を行い、その結果を図3に示すと共に、それぞれのインダクタにおける最大のQ値及びその際のRdc(直流抵抗)を測定し、下記表1に併せ示した。なお、各コアを用いてインダクタを作製する際には、それぞれのL値が同一になるように、巻数等を調整した。
【0026】
【表1】
【0027】
かかる表1及び図3から明らかなように、低透磁率のフェライト材料にてコアを形成した実施例1の場合には、同じ透磁率のフェライト材料にてコアを形成した比較例1の場合よりも、Q値が大きく向上していると共に、Rdcも低減していることが認められる。また、高透磁率のフェライト材料にてコアを形成した実施例2の場合にあっても、同じ透磁率の比較例2の場合と比して、Q値が向上していると共に、Rdcの低減していることを確認することが出来るが、実施例1と比較例1の場合ほどのQ値の向上効果が得られていない。つまり、適当な透磁率とコア形状比率を組み合わせることによって、初めて、Q値の向上効果が最大限に発揮されることが認められるのである。
【0028】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に従う巻線型チップインダクタ用コアによれば、フェライト材料にて形成されたコアに電極が直接に設けられた構造とされた巻線型チップインダクタにおいて、巻線部の高さと、コアを形成するフェライト材料の透磁率を適宜選択することによって、高いQ値を得ることが出来る巻線型チップインダクタを提供することが可能となったのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う巻線型チップインダクタ用コアの一例を示す斜視説明図である。
【図2】本発明に従う巻線型チップインダクタ用コアの別の一例を示す斜視説明図である。
【図3】実施例において製造されたコアを用いて形成したそれぞれのインダクタのQ特性を示すグラフであって、(a)は実施例1及び比較例1のQ特性を示し、(b)は実施例2及び比較例2のQ特性を示している。
【符号の説明】
10 コア
12 巻線部
14 脚部
【技術分野】
本発明は、巻線型チップインダクタ用コアに係り、特に、フェライト製のコアの脚部に直接に電極が設けられてなる巻線型チップインダクタ用コアの改良された構造に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来より、携帯電話等の小型の電子機器における高周波回路等に用いられるチップインダクタとして、ドラム状のコアの端面に形成されたリード端子に、該コアに巻かれたインダクタを形成する巻線の両端部が接続された後、外装を樹脂モールドして固定せしめた、所謂モールド巻線タイプと呼ばれる巻線型チップインダクタが用いられている。
【0003】
しかしながら、このような構造とされた巻線型チップインダクタにあっては、インダクタによって発生する磁束が、コア端面に形成されたリード端子を形成する金属を貫く方向に発生するため、そのような磁束と金属との交差によって、渦電流損を発生してしまい、インダクタのQ特性が低下してしまうという問題を内在していた。
【0004】
そこで、そのような問題を回避すべく、かかるコアの端部に設けられるリード端子の形状や、その取り回し或いは接続方法の工夫が、各種行われてきたが、そのようなリード端子の構造の複雑化により、製造工程の複雑化といった新たな問題を惹起せしめることとなっていた。加えて、そのようなリード端子を介してインダクタの巻線と電子回路との電気的接続を行っていたため、導通不良を起こしやすいといった問題も内在するものであった。加えて、このようなリード端子を用いる構造は、コアの端面からリードが突出するため、チップインダクタの小型化に限界があったのである。
【0005】
このため、従来から、インダクタを形成するコアに直接電極を塗布形成し、電極の位置をインダクタが発生する磁束の影響が少ない部位に移動したり、その面積を低減することによって、Q値を向上せしめた巻線型チップインダクタが、種々提案されている(例えば、特許文献1,2等参照)。而して、それら特許文献1及び2においては、コア形状を、インダクタを形成する巻線を巻回する巻線部の両端に、該巻線部の高さよりも高くされた脚部を設けた、略U字型又は略H字型の形状とすると共に、該コアの前記脚部の下端部または上端部に端子電極を形成し、前記巻線部に巻回した巻線の両端部を、それぞれの端子電極と接続して、電子回路と巻線が電気的に接続せしめられる構造とした、巻線型チップインダクタが示されている。
【0006】
要するに、このような巻線型チップインダクタにあっては、従来、コアの両端面に設けられていたリード端子(電極)がコアの下面に移動したところから、巻線部に巻回されたコイルによって発生する磁束が、端子電極を形成する金属を貫通することを低減することが可能となるため、かかる端子電極と磁束の交差によって発生する渦電流損を抑えることが出来、以て、インダクタのQ値を向上することが可能となったのである。更に、巻線の両端が直接に端子電極に対して接続せしめられているところから、導通不良の発生も、効果的に抑制することが出来る。
【0007】
しかしながら、このような構造とされたチップインダクタにあっては、U字型又はH字型とされたコアの材質にフェライト材を適用すると、かかるフェライト製コアの下面に磁束を導いてしまうこととなるため、該フェライト製コアの下面に形成された電極を磁束が貫通することによって、渦電流損が非常に大きくなってしまい、コアに、直接、塗布形成される電極の形状をどのように工夫したとしても、高いQ値を得ることは困難であった。更に、かかるフェライト製コアの下面に磁束が導かれてしまうところから、かかるチップインダクタが実装される電子回路基板のパターン上の金属と磁束が交差することによっても渦電流損が発生してしまい、塗布形成される電極の形状の工夫によるQ値の改善には限界があったのである。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−335152号公報
【特許文献1】
特開2002−280226号公報
【0009】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、フェライト材料にて形成されたコアに電極が直接に設けられてなる構造の巻線型チップインダクタにおいて、高いQ値を得ることが出来る巻線型チップインダクタ用コアを提供することにある。
【0010】
【解決手段】
そして、本発明者等は、そのような課題を解決するために種々の検討を重ねた結果、チップインダクタ用コアを構成するフェライト材料の透磁率と、該コアの構造の見直しを行うことによって、フェライト製のコアに直接電極を塗布形成した、横置き型のオールフェライトコアにおいても、Q値の効果的な向上が可能となることを見出したのである。
【0011】
すなわち、本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであって、その特徴とするところは、二つの脚部とそれら脚部を一体的に連結する巻線部とを有する逆U字形又はH字形の形状を呈し、それら二つの脚部の下端部に電極が直接に設けられてなる構造の巻線型チップインダクタ用コアにして、該コアを、透磁率が7〜100のフェライト材料にて形成すると共に、該コアの全高を1としたときに、前記巻線部の高さ方向の幅が0.45〜0.60の範囲内の寸法となるように構成したことにある。
【0012】
要するに、かかる本発明に従う巻線型チップインダクタ用コアにあっては、かかるコアが、巻線部と一体的に連結された二つの脚部をもつ逆U字形又はH字形の形状を呈し、それら二つの脚部の下端部に電極が直接に設けられているところから、従来のチップインダクタ用コアにおいて、コアの両端部に設けられた電極と磁束が交差することにより発生していた渦電流損の発生を、効果的に低減することが可能となり、Q値が有利に向上せしめられることとなるのである。
【0013】
また、そのような本発明によれば、コアが透磁率が7〜100のフェライト材料にて形成されているところから、Q値が有利に向上せしめられることとなる。これは、透磁率が7より小さくなると、AL値(かかるコアに巻線を1回巻いた時のL値)の低下が顕著となる上に、Rdc(直流抵抗値)が増加し、Q値の向上効果が充分達成されなくなるからである。逆に、透磁率が100を超えた場合には、前記したAL値が向上すると共に、Rdcの低減効果は発揮されるものの、Q値の向上効果があまり得られないのである。
【0014】
更にまた、かかる本発明に従う巻線型チップインダクタ用コアによれば、該コアの全高、つまり、前述した巻線部の両端に設けられた脚部の高さを1としたきに、かかる巻線部の高さ方向の幅が0.45〜0.60の範囲内の寸法とされているところから、フェライト材にて巻線部と一体的に形成された脚部へと磁束が導かれても、該脚部の下端部に設けられた電極の金属と磁束との交差による影響を受け難くなるため、インダクタのQ値を効果的に向上することが可能となるのである。また、コア高さ1に対し、巻線部の高さが0.45より小さくなると、かかる巻線部に巻回される巻線の膨らみ(=コイルの幅)に対して、かかるコアの巻線部の太さが小さくなり過ぎてしまい、Q値の向上効果が充分に発揮され得ないと共に、コアの機械的強度が低下してしまうのである。一方、かかるコアの巻線部の高さが0.60より大きくなると、逆に巻線の膨らみに対してコアの巻線部の太さが大きくなるため、Q値が低下すると共に、Rdcも悪化してしまうのである。
【0015】
加えて、本発明によれば、チップインダクタ用コアの脚部の下端面に、直接に電極が設けられて、該電極と巻線とが接続されているといるところから、巻線を電子回路に接続するための端子として複雑なリード端子を形成したり、リードフレーム等を使用してフェライトコアを電極面から離すという複雑な構造をとる必要がないところから、インダクタと電子回路との接続不良等が発生し難くなり、信頼性が向上すると共に、生産性が向上し、コストダウンにも有利に貢献することとなるのである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成をより具体的に明らかにするために、本発明に従う巻線型チップインダクタ用コアについて、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0017】
先ず、図1には、本発明に従う構造とされた巻線型チップインダクタ用コアの一例が、その斜視図において、概略的に示されている。そして、かかる図1からも明らかなように、コア10は、巻線部12と、該巻線部12の両側に一体的に設けられた脚部14,14とからなる、逆U字形状を呈しているのである。
【0018】
また、そのようなコア10は、本発明に従って、透磁率が7〜100である各種のフェライト材料を用いて、形成されることとなるが、特に、本発明にあっては、透磁率が7〜100のNi−Zn系フェライト材料が、好適に用いられることとなる。この種のフェライト材料を用いることによって、Q値が効果的に向上せしめられることとなるのである。これは、透磁率が7よりも小さいフェライト材料を用いてコアを形成した場合にあっては、AL値(コアに巻線を1回巻いた時のL値)の低下が顕著となる上に、Rdc(直流抵抗値)が増加し、Q値の向上効果が充分に得られないからである。一方、透磁率が100よりも大きなフェライト材料にてコアを形成した場合にあっては、前記したAL値が向上すると共に、Rdcの低減効果は発揮されるものの、Q値の向上効果が充分に得られないためである。
【0019】
そして、そのような本発明に従うコア10にあっては、巻線部12の両側に設けられた脚部14の高さ(H)を1としたときに、前記巻線部12の高さ(h)を0.45〜0.60の高さとすることによって、Q値の効果的な向上が図られ得るのである。これは、脚部14の高さ(H)=1に対して、巻線部12の高さ(h)が0.45より小さくなった場合にあっては、かかる巻線部12に巻回される巻線の膨らみ(=コイルの幅)に対して、巻線部12の太さが小さくなり過ぎてしまい、Q値の向上効果が充分に発揮され得ないためである。一方、巻線部12の高さ(h)が0.60より大きくなった場合にあっては、逆に、巻線の膨らみに対してコアの巻線部の太さが大きくなり、Q値が低下すると共に、Rdcも悪化してしまうのである。
【0020】
ところで、このようなフェライト製コアの製造方法としては、例えば、よく知られているように、所望の透磁率が得られるように選定された各種フェライト原材料を粉砕した後に混合せしめ、かくして得られた混合物を形成するコアの形状に成形し、それを大気中或いは加圧状態下において焼成する手法等、各種の公知の手法によって、形成されるのである。
【0021】
そして、そのような、巻線部12と脚部14とからなる、逆U字形状に形成されたコア10の脚部14の下部端面に、金属ペースト等の導電性材料を直接塗布する等して、図示しない端子電極が形成されることによって、巻線型チップインダクタ用コアが形成されているのであり、このようにして得られたコア10の巻線部12に銅線等の巻線を巻回し、かかる巻線の両端部を、前記脚部14の下部端面に形成された端子電極を接続せしめることによって、所望の巻線型チップインダクタが形成されるのである。
【0022】
また、本発明に従う巻線型チップインダクタ用コアの別の望ましい態様の一つとしては、コア10の形状は、脚部18,18の上面が巻線部16よりも突出している形状、例えば図2に示されるような、H字形状とされていてもよい。このようなH字形状とされたコア20にあっても、脚部18の高さ(H)を1としたとき、巻線部16の高さ(h)は、前述した逆U字形状の場合と同様に0.45〜0.60の範囲とすることによって、Q値の向上が効果的に図られ得ることとなるが、特に、このようなH字形状のコアにあっては、脚部18のうち、巻線部16よりも下とされた足部18aの高さ(l)は、0.25以上とされることが望ましい。これは、かかる足部18aの高さが0.25以下になると、巻線部16に巻回された巻線と実装された基板上の回路パターンとの距離が近くなるために、渦電流損が増加し、Q値が低下してしまったり、巻線と回路パターン間の浮遊容量が増加することによって、SRF(自己共振周波数)が低下してしまうといった問題を惹起せしめるのである。
【0023】
【実施例】
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明の特徴を更に明確にすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。
【0024】
先ず、巻線型チップインダクタ用コアとして、公知のNi−Zn系フェライト材を用いて、図1に示されるような逆U字形状をもち、かかるフェライト材の透磁率や巻線部の高さが本発明に従う範囲内である、実施例1及び2のコアを、それぞれ作製した。一方、比較例として、形状及びフェライト材の透磁率は同じであるが、巻線部の高さが本発明よりも大きな値である、比較例1及び比較例2のコアを、それぞれ形成した。それら実施例1,2及び比較例1,2に係る各コアの透磁率及び巻線部の高さを、下記表1に示す。なお、巻線部の高さは、図1に示されるように、コア10における脚部14の高さ(H)を1とした場合の、巻線部12の高さ(h)の比率を表している。
【0025】
次いで、このようにして得られた4つのフェライト製コアを用いてインダクタを作製し、それら各インダクタのQ特性の測定を行い、その結果を図3に示すと共に、それぞれのインダクタにおける最大のQ値及びその際のRdc(直流抵抗)を測定し、下記表1に併せ示した。なお、各コアを用いてインダクタを作製する際には、それぞれのL値が同一になるように、巻数等を調整した。
【0026】
【表1】
【0027】
かかる表1及び図3から明らかなように、低透磁率のフェライト材料にてコアを形成した実施例1の場合には、同じ透磁率のフェライト材料にてコアを形成した比較例1の場合よりも、Q値が大きく向上していると共に、Rdcも低減していることが認められる。また、高透磁率のフェライト材料にてコアを形成した実施例2の場合にあっても、同じ透磁率の比較例2の場合と比して、Q値が向上していると共に、Rdcの低減していることを確認することが出来るが、実施例1と比較例1の場合ほどのQ値の向上効果が得られていない。つまり、適当な透磁率とコア形状比率を組み合わせることによって、初めて、Q値の向上効果が最大限に発揮されることが認められるのである。
【0028】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に従う巻線型チップインダクタ用コアによれば、フェライト材料にて形成されたコアに電極が直接に設けられた構造とされた巻線型チップインダクタにおいて、巻線部の高さと、コアを形成するフェライト材料の透磁率を適宜選択することによって、高いQ値を得ることが出来る巻線型チップインダクタを提供することが可能となったのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う巻線型チップインダクタ用コアの一例を示す斜視説明図である。
【図2】本発明に従う巻線型チップインダクタ用コアの別の一例を示す斜視説明図である。
【図3】実施例において製造されたコアを用いて形成したそれぞれのインダクタのQ特性を示すグラフであって、(a)は実施例1及び比較例1のQ特性を示し、(b)は実施例2及び比較例2のQ特性を示している。
【符号の説明】
10 コア
12 巻線部
14 脚部
Claims (1)
- 二つの脚部とそれら脚部を一体的に連結する巻線部とを有する逆U字形又はH字形の形状を呈し、それら二つの脚部の下端部に電極が直接に設けられてなる構造の巻線型チップインダクタ用コアにして、該コアを、透磁率が7〜100のフェライト材料にて形成すると共に、該コアの全高を1としたときに、前記巻線部の高さ方向の幅が0.45〜0.60の範囲内の寸法となるように構成したことを特徴とする巻線型チップインダクタ用コア。
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JP2018148078A (ja) * | 2017-03-07 | 2018-09-20 | 株式会社村田製作所 | コモンモードチョークコイル |
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