JP2004247503A - 窒化物半導体素子およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】特性が高く、かつ、再現性、歩留まり、生産性が高い窒化物半導体素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】窒化物半導体からなる活性層と、前記活性層上に形成され少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなる第1の窒化物半導体層と、前記第1の窒化物半導体層上に当該層に接して形成され、少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなり、p型不純物濃度が前記第1の窒化物半導体層よりも高い第2の窒化物半導体層と、前記第2の窒化物半導体層上に当該層に接して形成され、少なくともアルミニウムと窒素とを含み前記第1および第2の窒化物半導体よりもアルミニウム組成が高い窒化物半導体からなり、前記第1の窒化物半導体層および前記第2の窒化物半導体層よりもバンドギャップが大きく、p型不純物濃度が前記第1の窒化物半導体層よりも高い第3の窒化物半導体層と、を備えることを特徴とする窒化物半導体素子を提供する。
【選択図】 図5
【解決手段】窒化物半導体からなる活性層と、前記活性層上に形成され少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなる第1の窒化物半導体層と、前記第1の窒化物半導体層上に当該層に接して形成され、少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなり、p型不純物濃度が前記第1の窒化物半導体層よりも高い第2の窒化物半導体層と、前記第2の窒化物半導体層上に当該層に接して形成され、少なくともアルミニウムと窒素とを含み前記第1および第2の窒化物半導体よりもアルミニウム組成が高い窒化物半導体からなり、前記第1の窒化物半導体層および前記第2の窒化物半導体層よりもバンドギャップが大きく、p型不純物濃度が前記第1の窒化物半導体層よりも高い第3の窒化物半導体層と、を備えることを特徴とする窒化物半導体素子を提供する。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化物半導体素子に関し、特に窒化物半導体レーザに関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化物半導体は、GaN、AlGaN、InGaN、等の窒素を含むIII−V族化合物半導体であり、バンドギャップが約3eVと大きく、直接遷移型であり、短波長発光素子用材料として利用が急速に拡大している。特に、窒化物半導体を活性層に用い、波長405nm前後の青紫色光を放射する半導体レーザは、DVD用の光源等として、製品化が進んでいる。
【0003】
図7は、従来の窒化物半導体レーザの一例を示す図である。サファイア基板301上に、低温成長GaNからなる低温バッファー層302、GaNからなるバッファー層303、GaNからなるラテラル成長層305、SiドープGaNからなるn側コンタクト層306、Siドープn側クラッド層307、GaNからなるn側ガイド層308、多重量子井戸構造のInGaN/InGaNからなる活性層309、が順次形成されている。この活性層309上には、アンドープGaNからなる膜厚20〜40nmのp側光導波層310が形成されている。このp側光導波層310上には、MgドープAlGaNからなるキャップ層312、MgドープAlGaNとGaNとを交互に多周期積層した超格子構造からなるp側クラッド層313、MgドープGaNからなるp側コンタクト層314、が順次形成されている。このp側コンタクト層314、p側クラッド層313の一部はエッチングによりリッジ状に形成される。そして、p側コンタクト層314上には一方側の電極であるp側電極316が形成されている。他方側の電極であるn側電極317は、エッチングにより露出されたn側コンタクト層306上の一部に形成されている。これらのp側電極316およびn側電極317以外の部分の素子表面には、絶縁膜315が形成されている。このような半導体レーザは、例えば、特開2002−261395号公報(特に図6)に示されている。
【0004】
この図7の窒化物半導体レーザでは、活性層309にp型不純物であるMgが含まれないようにして、活性層309の内部吸収損失を減らし、光出力が高くなるようにしている。また、活性層309へのp側不純物の拡散を防止するため、この活性層309の直上のp側光導波層310をアンドープにしている。また、キャップ層312をバンドギャップが大きいAlGaNにより構成して、活性層309からp型クラッド層313へのキャリアの漏洩(オーバーフロー)を効果的に防止している。また、このAlGaNからなるキャップ層312を、高濃度のMgがドープされるように設計している(例えば、特許文献2参照。)。Alが混ざった窒化物半導体(AlGaN)は、p型不純物の活性化率が低く、正孔濃度が低くなりやすいので、高濃度のMgをドープして、正孔濃度が高くなるようにする。
【0005】
このように、従来の窒化物半導体レーザでは、キャップ層312を、バンドギャップが大きいAlGaNからなり、かつ、p型不純物濃度が高くなるように設計して、特性が高くなるようにしている。これにより、実用可能なレベルの特性が得られるようになっている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−261395号公報
【特許文献2】
特許第3314666号明細書
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、窒化物半導体レーザでは、実用可能なレベルの特性が得られるようになっている。しかし、従来の窒化物半導体レーザには、他の材料系の半導体レーザに比べ、再現性、歩留まり、および生産性が悪いという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づくもので、その目的は、特性が高く、かつ、再現性、歩留まり、生産性が高い窒化物半導体素子およびその製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の窒化物半導体素子は、窒化物半導体からなる活性層と、前記活性層上に形成され少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなる第1の窒化物半導体層と、前記第1の窒化物半導体層上に当該層に接して形成され、少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなり、p型不純物濃度が前記第1の窒化物半導体層よりも高い第2の窒化物半導体層と、前記第2の窒化物半導体層上に当該層に接して形成され、少なくともアルミニウムと窒素とを含み前記第1および第2の窒化物半導体よりもアルミニウム組成が高い窒化物半導体からなり、前記第1の窒化物半導体層および前記第2の窒化物半導体層よりもバンドギャップが大きく、p型不純物濃度が前記第1の窒化物半導体層よりも高い第3の窒化物半導体層と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の窒化物半導体素子は、少なくともアルミニウムと窒素とを含む窒化物半導体からなるn型クラッド層と、前記n型クラッド層上に形成され窒化物半導体からなる活性層と、前記活性層上に形成され少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなる第1の窒化物半導体層と、前記第1の窒化物半導体層上に形成され、少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなり、p型不純物濃度が前記第1の窒化物半導体層よりも高い第2の窒化物半導体層と、前記第2の窒化物半導体層上に当該層に接して形成され、少なくともアルミニウムと窒素とを含み前記第1および第2の窒化物半導体よりもアルミニウム組成が高い窒化物半導体からなり、前記第1の窒化物半導体層および前記第2の窒化物半導体層よりもバンドギャップが大きく、p型不純物濃度が前記第1の窒化物半導体層よりも高い第3の窒化物半導体層と、前記第3の窒化物半導体層上に形成され、少なくともアルミニウムと窒素とを含む窒化物半導体からなるp型クラッド層と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の窒化物半導体素子の製造方法は、窒化物半導体からなる活性層を形成する工程と、前記活性層上に、p型不純物原料を用いずに、少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなる第1の窒化物半導体層を形成する工程と、p型不純物原料を用いて、前記第1の窒化物半導体層上に当該層に接してp型不純物が添加され少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなる第2の窒化物半導体層を形成する工程と、p型不純物原料を用いて、前記第2の窒化物半導体層上に当該層に接してp型不純物が添加され少なくともアルミニウムと窒素とを含む窒化物半導体からなる第3の窒化物半導体層を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
上記の製造方法では、前記第1乃至第3の窒化物半導体層の成長温度が活性層側からその反対側に向かって同じであるかまたは高くなり、前記活性層から前記第3の窒化物半導体層まで成長中断することなく連続で、成長温度を変化させて成長することが好ましい。
【0013】
なお、本発明において、窒化物半導体とは、組成式InbGacAl1−b−cN(0≦b≦1、0≦c≦1、0≦1−b−c≦1)からなる半導体を意味し、これにはボロン(B)、砒素(As)、リン(P)等が微量(組成0.01以下)に添加されたものも含まれるものとする。また、本発明において、InxGa1−xNには、拡散等により微量(組成0.01以下)のAlが添加されたものも含まれるものとする。また、本発明において、AlzGa1−zNには、拡散等により微量(組成0.01以下)のInが添加されたものも含まれるものとする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細な説明を行う前に、本発明の前提となる、本発明者の独自の実験の結果について説明する。
【0015】
従来、AlGaN層に高濃度のMgをドープする場合、このAlGaN層の下地層の材質と、AlGaN層のMg濃度の分布と、の関係はほとんど検討されていなかった。また、このようにAlGaN層に高濃度のMgをドープする場合、通常の技術者は、多数製造した素子の中で最も特性が高い素子だけに着目して設計を行っており、再現性や面内分布を考慮した設計はほとんど行っていなかった。しかしながら、本発明者は、再現性や面内分布を考慮して実験を行った結果、上記のAlGaN層の下地層の材質と、AlGaN層のMg濃度の分布と、には密接な関連があることを知得した。そして、この知得に基づき、AlGaN層の下地層の材質を特定のものにすることで、AlGaN層のMg濃度の分布を、高い再現性かつ良好な面内分布で、設計値どおりにできることが分かった。
【0016】
図1は、本発明者がこの実験に用いた窒化物半導体素子のサンプルを示す断面図である。サファイア基板1上には、低温成長GaNからなる低温バッファー層2、GaNからなるバッファー層3、SiO2からなる絶縁膜4、GaNからなるラテラル成長層5、SiドープGaNからなるn側コンタクト層6、SiドープAlGaNとGaNとを交互に多周期積層した超格子構造からなるn側クラッド層7、が順次形成されている。このn型クラッド層7上には、膜厚6nmのIn0.02Ga0.98Nからなる障壁層と、膜厚3nmのIn0.18Ga0.82Nからなる井戸層と、を交互に4.5周期成長させた総膜厚42nmのInGaN層9が形成されている。このInGaN層9上には、3×1019/cm3の濃度のMgがドープされるように設計した膜厚50nmのp型GaN層11、3×1019/cm3の濃度のMgがドープされるように設計した膜厚15nmのAlzGa1−zN(z=0.20)からなるp型AlGaN層12、3×1019/cm3の濃度のMgがドープされるように設計したGaNからなるコンタクト層13、が順次形成されている。
【0017】
この図1のサンプルの製造には有機金属気相成長法(MOCVD法)を用いている。成長原料としては、Ga原料としてトリメチルガリウム(TMG)、Al原料としてトリメチルアルミニウム(TMA)、In原料としてトリメチルインジウム(TMI)、N原料としてアンモニア(NH3)、Si原料としてシラン(SiH4)、Mg原料としてシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)、を用いている。主要部分の成長温度は、InGaN層9が830℃、p型GaN層11が1080℃、p型AlGaN層12が1080℃、である。
【0018】
一方、図2は、比較サンプルを示す断面図である。この比較サンプルが図1のサンプルと異なる点は、p型GaN層11が形成されていない点である。製造方法は図1のサンプルと同様であり、主要部分の成長温度は、InGaN層9が830℃、p型AlGaN層12が1080℃、である。なお、この成長温度は、各層の特性が高くなるように最適化された温度である。
【0019】
上記の図1のサンプルおよび図2の比較サンプルのMg濃度のプロファイルを、それぞれ、図3および図4に示す。図3は、直径5cmのサファイア基板1を用いて同一の製造条件で図1の構造を複数回製造し、それぞれの基板を壁開して500μm×500μmの多数の素子を切り出し、それぞれの基板から切り出した多数の素子のうち複数個ずつの素子を任意に選んで、合計数百個の素子のMg濃度を測定し、その平均値を取ったものである。図4も同様の平均値を取ったものである。
【0020】
まず、図2の比較サンプルのMg濃度を示す図4から、アンドープのInGaN層9の直上にMgドープのp型AlGaN層12を形成すると、Mgの取り込まれに遅れが生じやすく、所望のMg濃度を再現性良くドープできないことが分かる。この場合、厚さ15nmのp型AlGaN層5のMg濃度は、設計値が3×1019/cm3であるのに、実際の平均値は1×1019/cm3程度以下である。また、InGaN層9中に、Mgが、深さ35nm程度まで拡散していることが分かる。このように、アンドープのInGaN層9の直上にMgドープのp型AlGaN層12を形成すると、Mgのドーピング・プロファイルを設計値どおりにすることが困難となる。なお、前述のように、図4は数百個の素子の平均値であり、Mgのドーピング・プロファイルは素子によりばらつきがある。
【0021】
これに対し、図1のサンプルのMg濃度を示す図3から、Mgドープのp型GaN層11の直上にMgドープのp型AlGaN層12を形成すると、Mgが極めて取り込まれやすくなることが分かる。そして、これにより、厚さ15nmのp型AlGaN層12のMg濃度が、ほぼ設計値どおりになることが分かる。また、InGaN層9中に拡散するMgの深さが、10nm程度に留まることが分かる。また、この図1のサンプルでは、素子によるばらつきが少ない。
【0022】
以上説明した図3では、p型AlGaN層12をAlzGa1−zN(z=0.20)で構成した場合を示したが、これをAlzGa1−zN(0<z≦0.30)で構成しても、ほぼ同様の結果が得られた。また、図3では、このp型AlGaN層12の下地層としてp型GaN層11を用いたが、これをp型InGaN層としてもほぼ同様の結果が得られた。他方で、図3に示すMgドープのp型GaN層11をアンドープのGaN層やInGaN層に代えると、図4のようにMgの取り込まれに遅れが生じてしまった。
【0023】
以上の結果から、p型AlGaN層5の下地層の材質と、p型AlGaN層5のMg濃度の分布と、には密接な関連があることが分かる。そして、p型AlGaN層の下地層の材質を、図4のようなアンドープのInGaN層9またはGaN層ではなく、図3のようなMgドープのp型GaN層11またはp型InGaN層とすることで、p型AlGaN層12のMg濃度の分布を、高い再現性かつ良好な面内分布で、設計値どおりにできることが分かる。この理由について、本発明者は、Mg原料(Cp2Mg)とAl原料(TMA)とをほぼ同時に反応炉内に入れはじめると、原料およびその反応生成物が反応炉内壁に付着することにより、本来予定していない反応が起こり易くなり、Mgの取り込まれが阻害されやすくなるからではないかと考えている。また、図4のようにアンドープのInGaN層9またはGaN層上にMgドープのp型AlGaN層12を形成するとMgの拡散が多くなるが、図3のようにアンドープのInGaN層9またはGaN層上にMgドープのp型GaN層11を形成するとMgの拡散が少なくなることが分かる。この理由については、後述する。
【0024】
以上のようにして得られた実験結果を基にして、本発明者は、特性が高く、かつ、再現性、歩留まり、生産性が高い窒化物半導体素子およびその製造方法を得ることができた。以下、第1および第2の実施の形態で、このような窒化物半導体発光素子の具体的な構造および製造方法について、図面を参照にしつつ、説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
図5は、本発明の第1の実施の形態の窒化物半導体素子の断面図である。図5の素子は、窒化物半導体レーザである。サファイア基板101上には、低温成長GaNからなる低温バッファー層102、GaNからなるバッファー層103、SiO2からなる絶縁膜104、GaNからなるラテラル成長層105、SiドープGaNからなるn側コンタクト層106、AlGaNとSiドープGaNとを交互に多周期積層した超格子構造からなるn型クラッド層107、SiドープGaNからなるn側ガイド層108が順次形成されている。このn側ガイド層108上には、膜厚6nmのIn0.02Ga0.98Nと、膜厚3nmのIn0.18Ga0.82Nと、を交互に4.5周期積層した多重量子井戸構造の活性層109、が形成されている。この活性層109は、発光効率を高くするため、p型不純物がドープされないように形成される。この活性層109上には、アンドープのIn0.02Ga0.98Nからなる膜厚100nmのp側ガイド層(第1の窒化物半導体層)110が形成される。このp側ガイド層110上には3×1019/cm3の濃度のMgがドープされたp型GaNからなる膜厚50nmのp型中間層(第2の窒化物半導体層)111が形成されている。このMgドープのp型中間層111を設けたことが、本実施形態の特徴の1つである。このp型中間層111上には、3×1019/cm3の濃度のMgがドープされたp型Al0.20Ga0.80Nからなるキャリアオーバーフロー防止層(第3の窒化物半導体層)112が形成されている。このキャリアオーバーフロー防止層112上には、膜厚2.5nmのGaN(Mg濃度3×1019/cm3)と膜厚2.5nmのAl0.14Ga0.86Nとを交互に120周期積層した超格子構造からなる総膜厚0.6μmのp側クラッド層113、1×1020/cm3の濃度のMgがドープされたGaNからなるp型コンタクト層114、が順次形成されている。このp型コンタクト層114、p側クラッド層113は表面からエッチングされ、リッジ状に形成される。このリッジ状のp側コンタクト層114上には、一方側の電極であるp電極116が形成されている。他方側の電極であるn側電極117は、エッチングして露出されたn側コンタクト層106上の一部に形成されている。これらのp側電極116およびn側電極117以外の部分の素子表面には、絶縁膜115が形成されている。またp側電極116およびn側電極117に接して、p側パッド電極118およびn側パッド電極119がそれぞれ形成されている。なお、図1は概念図であり、理解を容易にするため、各層の倍率を変えて示している。
【0026】
上記の図5の窒化物半導体レーザでは、p側電極116と、n側電極117と、から活性層109に電流が注入される。この電流の注入により、活性層109から、波長約405nmの光を放射される。この光は、増幅されて、レーザ光となり、紙面と垂直な方向に放射される。
【0027】
次に、図5の窒化物半導体レーザの製造方法について説明する。以下では、MOCVD法により窒化物半導体層を形成してレーザを製造する例について説明する。
【0028】
(1)まず、直径約5cmのc面サファイア基板101を反応炉に設置し、基板温度500℃で、TMG、NH3を用い、低温成長GaNからなる低温バッファー層102を20nmの膜厚で成長させる。その後、基板温度を1080℃まで上げ、TMG、NH3を用いて、膜厚2μmのGaNからなるバッファー層103を成長させる。
【0029】
(2)次に、基板を反応炉から取り出し、膜厚200nmのSiO2膜を蒸着する。そして、このSiO2膜を、フォトリソグラフィーとエッチングにより加工して、ストライプ状の開口を有する絶縁膜104を形成する。
【0030】
(3)次に、再度基板を反応炉に設置し、基板温度1080℃で、TMG、NH3を用いて、膜厚5μmのラテラル成長GaNからなるバッファー層105を成長させる。その後、TMG、NH3、SiH4を用いて、膜厚4μm、Si濃度3×1018/cm3のGaNからなるn側コンタクト層106を成長させる。続けて、TMA、TMG、NH3、SiH4を用いて、膜厚2.5nmのAl0.14Ga0.86Nと膜厚2.5nm、Si濃度3×1018/cm3のGaNを交互に240周期積層した超格子構造からなる総膜厚1.2μmのn側クラッド層107を成長させる。さらに、TMG、NH3、SiH4を用いて、膜厚0.1μm、Si濃度1.5×1018/cm3のGaNからなるn側ガイド層108を成長させる。
【0031】
(4)次に、温度を830℃に低下させ、TMG、TMI、NH3を用いて、膜厚6nmのIn0.02Ga0.98Nからなる障壁層と、膜厚3nmのIn0.18Ga0.82Nからなる井戸層と、を交互に4.5周期成長させ、総膜厚42nmの多重量子井戸構造の活性層109を成長させる。
【0032】
(5)次に、830℃で、TMG、TMI、NH3を用いて、膜厚100nmのIn0.02Ga0.98Nからなる第1の窒化物半導体層110を成長させる。この第1の窒化物半導体層110の成長では、p型不純物(Mg)原料を用いない。この第1の窒化物半導体層110は、p側の光ガイド層として働く。
【0033】
(6)次に、温度を1080℃に上昇させ、TMG、NH3、Cp2Mgを用いて、p型不純物であるMgの濃度が3×1019/cm3になるように各原料ガスの流量を調整して、膜厚50nmのp型GaNからなる第2の窒化物半導体層111を成長させる。
【0034】
(7)次に、1080℃で、TMA、TMG、NH3、Cp2Mgを用いて、Mg濃度が3×1019/cm3になるように各原料ガスの流量を調整して、膜厚15nmのAl0.20Ga0.80Nからなる第3の窒化物半導体層112を成長させる。第3の窒化物半導体層はキャリアオーバーフロー防止層として働く。
【0035】
(8)次に、1080℃で、TMA、TMG、NH3、Cp2Mgを用いて、膜厚2.5nmでMg濃度3×1019/cm3のGaNと、膜厚2.5nmのAl0.14Ga0.86Nと、を交互に120周期積層した超格子構造からなる総膜厚0.6μmのp側クラッド層113を成長させる。続けて、TMG、NH3、Cp2Mgを用いて、膜厚100nm、Mg濃度1×1020/cm3のGaNからなるp側コンタクト層114を成長させる。
【0036】
(8)次に、成長終了後、反応炉にNH3と窒素を流しながら温度を800℃まで下げ、NH3を止めて窒素中で20分間熱処理してp型不純物を含む層を低抵抗化する。その後、窒化物半導体層を成長させた基板を反応炉から取り出し、p側コンタクト層114とp側クラッド層113をRIBE装置によりエッチングして、図1の如く2μmのストライプ幅を有するリッジ形状を形成する。そして、表面のp側コンタクト層114の側からRIE装置によりエッチングして、図1の如くn側コンタクト層106の一部を露出させる。その後、窒化物半導体層の表面にSiO2からなる絶縁膜115を形成する。
【0037】
(9)次に、p側コンタクト層114のリッジ上の絶縁膜115をエッチングして開口し、Ni/Auからなるp電極116を形成する。また、n側コンタクト層106上の絶縁膜115をエッチングして開口し、Ti/Alからなるn電極117を形成する。その後、p電極116上にpパッド電極118形成し、n電極117上にnパッド電極119を形成する。
【0038】
(10)次に、基板を裏面から研磨して200μmの厚さにした後、ストライプ方向と垂直な方向に劈開し、その劈開面にSiO2とZrO2の多層構造からなる誘電体多層膜を形成する。その後、劈開した基板をストライプ方向に切り出して、図5のレーザとなる。ここで、図5のレーザの大きさは、例えば、一辺の長さが約500μmである。この場合、直径5cmの基板から図1のレーザを数千個得ることができる。
【0039】
以上説明した製造方法により得られる図5の窒化物半導体レーザの特徴の1つは、Mgがドープされたp型中間層112を設けたことである。これにより、Mgの取り込まれに遅れが生じにくくなり、前述の図3から分かるように、p型中間層(p型GaN層)112およびキャリアオーバーフロー防止層(p型AlGaN層)113にMgを所望の濃度でドープしやすくすることができる。この結果、繰り返し多数の素子を製造した場合、キャリアオーバーフロー防止層113の正孔濃度の平均値を高くし、閾値電流および閾値電圧の平均値を低くして、再現性、歩留まり、生産性を高くすることができる。
【0040】
また、図5のレーザでは、Mgがドープされたp型中間層(p型GaN層)112を設けたので、前述の図3から分かるように、このp型中間層112を設けない場合に比べ、p側ガイド層(InGaN層)110へのマグネシウムの拡散を抑制することができる。これにより、このp側ガイド層110のさらに下側にある活性層109へのMgの拡散を、顕著に抑制することができる。この結果、繰り返し多数の素子を製造した場合、活性層109の内部吸収損失の平均値を顕著に小さくして、再現性、歩留まり、生産性をさらに高くすることができる。
【0041】
もっとも、図5のようなp型中間層(p型GaN層)111を設けることは、通常の技術者の従来の技術常識に反することである。なぜなら、従来は、アンドープ層110とその直上のMgドープ層とのバンドギャップ差を小さくすると、Mgドープ層からアンドープ層へのMgの拡散が多くなってしまうと考えられていたからである。逆に、アンドープのIn0.02Ga0.98N層110の直上に、図7のように、このアンドープ層110とバンドギャップ差が大きいp型Al0.20Ga0.80N層113を形成すれば、アンドープ層110および活性層109へのMgの拡散が少なくなると考えられていたからである。つまり、従来は、アンドープ層110上にp型層を形成する場合、両層にバンドギャップ差を設けた方が、p型不純物の拡散を抑制できると考えられていた。
【0042】
しかしながら、本発明者の実験によれば、窒化物半導体素子では、アンドープ層110上にp型層を形成する場合、図7のように、両層110、111のバンドギャップ差を小さくする方が、アンドープ層110および活性層109へのMgの拡散が減ることが分かった。この理由について、本発明者は、次のように考えている。すなわち、窒化ガリウム系半導体素子では、他の材料系よりも、バンドギャップ差を変化させた場合の格子定数差の変化が大きい。このため、Mgを含まない層110上にMgを含む層111を形成する場合、両層のバンドギャップ差を大きくすると、両層の格子定数差が大きくなる。このように格子定数差が大きくなると、両層の界面にストレスが集中し、結晶欠陥が発生し易くなる。そして、この結晶欠陥を介して、Mgの拡散が生じやすくなる。このように、窒化ガリウム系半導体素子では、バンドギャップ差が増えることにより拡散が減るメリットよりも、格子定数差が減ることにより結晶欠陥が減るメリットの方が大きい。このため、Mgを含まない層110上にMgを含む層111を形成する場合、両層のバンドギャップ差および格子定数差を小さくした方が、Mgの拡散を減らすことができると考えている。
【0043】
以上説明した図5のレーザでは、第1の窒化物半導体層110をIn0.02Ga0.98N、第2の窒化物半導体層111をGaN、第3の窒化物半導体層112をAl0.20Ga0.80Nとしたが、第1の窒化物半導体層110をInxGa1−xN(0≦x≦1)、第2の窒化物半導体層111をInyGa1−yN(0≦y≦x)、第3の窒化物半導体層112をAlzGa1−zN(0<z≦0.3)、とすることもできる。このようにすると、第1の窒化物半導体層110から第3の窒化物半導体層112に向けてバンドギャップを徐々に大きくし、また格子定数を徐々に小さくして、本発明の効果を高めることができる。ただし、第1の窒化物半導体層110のバンドギャップは、活性層109の井戸層のバンドギャプよりも大きくすることが必要で、好ましくは活性層109の平均のバンドギャップ以上、さらに好ましくは活性層109の障壁層のバンドギャップ以上、が良い。
【0044】
また、図5のレーザでは、第1の窒化物半導体層110の厚さを100nmとしたが、これを20nm以上500nm以下、好ましくは30nm以上200nm以下とすれば、高い特性が得られる。第1の窒化物半導体層110の厚さが20nmよりも薄いと、第2の窒化物半導体層111から第1の窒化物半導体層110および活性層109へのMgの拡散が起こりやすくなる。また、第1の窒化物半導体層110の厚さが500nmよりも厚いと、p型層111、112から活性層109への正孔の注入が不十分となり、特性が低下する。
【0045】
また、図5のレーザでは、第1の窒化物半導体層110を、p型不純物がドープされないように形成したアンドープ層として説明した。このp型不純物のアンドープ層とは、p型不純物濃度が1×1017/cm3以下の層である(図3、図4参照)。
【0046】
また、図5のレーザでは、第2の窒化物半導体層111の厚さを50nmとしたが、これを20nm以上500nm以下、好ましくは30nm以上100nm以下とすれば、高い特性が得られる。第2の窒化物半導体層112の厚さが20nmよりも薄いと、この層112を設ける効果(図3)が得にくくなり、第2の窒化物半導体層111および第3の窒化物半導体層112から第1の窒化物半導体層110および活性層109へのMgの拡散が起こりやすくなる。また、第2の窒化物半導体層111の厚さが500nmよりも大きい場合には、第2の窒化物半導体層111で再結合するキャリアが多くなり、活性層109へキャリアの注入が不十分となり、特性が低下する。
【0047】
また、図5のレーザでは、第2の窒化物半導体層111のp型不純物濃度を3×1019/cm3としたが、これを1×1018/cm3以上1×1021/cm3以下、好ましくは1×1019/cm3以上5×1020/cm3以下とすれば、高い特性が得られる。第2の窒化物半導体層111のp型不純物濃度が1×1018/cm3よりも低いと、抵抗が高くなるとともに、十分な正孔濃度が得られなくなって活性層109への正孔の注入が不十分となり、特性が低下する。また、第2の窒化物半導体層111のp型不純物濃度が1×1021/cm3よりも高いと、結晶が劣化して、第1の窒化物半導体層110および活性層109へのMgの拡散が起こりやすくなり、特性が劣化する。
【0048】
また、図5のレーザでは、第3の窒化物半導体層112を厚さ15nmのAl0.20Ga0.80Nとしたが、これを厚さ5nm以上30nm以下のAlwGa1−wN(0.1≦w≦0.3)とすれば、高いオーバーフロー防止効果が得られ、特性が向上する。また、これを、厚さ95nm以下のAlvGa1−vN(0<v≦0.1)と、この上に形成された厚さ5nm以上30nm以下のAlwGa1−wN(0.1≦w≦0.3)と、からなる総膜厚5nm以上100nm以下のAlzGa1−zN(0<z≦0.3)とすることもできる。Al組成wが0.1以上の部分を厚さ5nm以上設けないと、オーバーフローが起こりやすくなり、特性が低下する。また、Al組成wが0.1以上の部分を30nmよりも厚く設けた場合、または、Al組成zが0.3より高い場合には、結晶が劣化して、抵抗が高くなり、特性が劣化する。
【0049】
また、図5のレーザでは、第3の窒化物半導体層112のp型不純物濃度を3×1019/cm3としたが、これを1×1018/cm3以上1×1021/cm3以下、好ましくは1×1019/cm3以上5×1020/cm3以下とすれば、高い特性が得られる。第3の窒化物半導体層のp型不純物濃度が1×1018/cm3よりも低いと、十分な正孔濃度が得られないために、抵抗が高くなるとともに、活性層109への正孔の注入が不十分となり、特性が低下する。また、第3の窒化物半導体層112のp型不純物濃度が1×1021/cm3よりも高いと、結晶が劣化して、抵抗が高くなるとともに、第1の窒化物半導体層110および活性層109へのMgの拡散が起こりやすくなる。
【0050】
また、図5のレーザでは、p型不純物としてMgを用いているが、このp型不純物として、Zn、Cd、Ca、Be、Sr等の他のII族元素を用いることも出来る。
【0051】
(第2の実施形態)
第2の実施の形態の窒化物半導体レーザが第1の実施の形態(図1)と異なる点は、主に、サファイア基板101に変えてGaN基板201を用いた点、p側ガイド層210をIn組成が連続的に変化するように形成した点、および、キャリアオーバーフロー防止層212AをAl組成が連続的に変化するように形成した点、である。
【0052】
図6は、本発明の第2の実施の形態の窒化物半導体レーザを示す断面図である。
【0053】
n型GaN基板201上に、SiドープGaNからなるn型バッファー層206、AlGaNとSiドープGaNとを交互に多周期積層した超格子構造からなるn側クラッド層207、GaNからなるn側ガイド層208、が順次形成されている。このn側ガイド層208上には、膜厚6nmのIn0.02Ga0.98Nと、膜厚3nmのIn0.18Ga0.82Nと、を交互に4.5周期積層した多重量子井戸構造の活性層209が形成されている。この活性層209は、発光効率を高くするため、p型不純物がドープされないように形成される。この活性層209上には、アンドープのInxGa1−xNからなる膜厚100nmのp側ガイド層(第1の窒化物半導体層)110が形成される。このp側ガイド層210のIn組成xは、図中下側から上側に向けて、0.02から0まで連続的に変化する。このp側ガイド層210上には3×1019/cm3の濃度のMgがドープされたp型GaNからなる膜厚30nmのp型中間層(第2の窒化物半導体層)211が形成されている。このp型中間層211上には、3×1019/cm3の濃度のMgがドープされたp型AlzGa1−zNからなる膜厚35nmのキャリアオーバーフロー防止層(第3の窒化物半導体層)212が形成されている。このキャリアオーバーフロー防止層212は、より詳しくは、p型AlvGa1−vN(0≦v≦0.05)からなる第1の部分212Aと、p型AlwGa1−wN(w=0.20)からなる第2の部分212Bと、を有する。第1の部分212Aは、膜厚が20nmで、Al組成vが図中下側から上側に向けて0から0.05まで連続的に変化する。第2の部分212Bは、膜厚が15nmで、Al組成wが0.20である。このキャリアオーバーフロー防止層212上には、膜厚2.5nmのGaN(Mg濃度3×1019/cm3)と膜厚2.5nmのAl0.14Ga0.86Nとを交互に120周期積層した超格子構造からなる総膜厚0.6μmのp側クラッド層213、1×1020/cm3の濃度のMgがドープされたGaNからなるp型コンタクト層214、が順次形成されている。このp型コンタクト層214およびp型クラッド層213は、エッチングによりリッジに形成される。このp型コンタクト層214上にはp電極216が形成されている。このp側電極216の周辺の窒化物半導体層214、215の表面には、絶縁膜215が形成されている。また、このp側電極216に接して、p側パッド電極218が形成されている。他方側の電極であるn側電極219は、GaN基板201の裏側に形成される。
【0054】
次に、図2の窒化物半導体レーザの製造方法について説明する。以下では、MOCVD法により窒化物半導体層を形成してレーザを製造する例について説明する。
【0055】
(1)まず、n型GaN基板201を反応炉に設置し、基板温度1080℃で、TMG、NH3、SiH4を用い、膜厚2μm、Si濃度3×1018/cm3のGaNからなるn型バッファー層206を成長させる。続けて、TMA、TMG、NH3、SiH4を用いて、膜厚2.5nmのAl0.14Ga0.86Nと膜厚2.5nm、Si濃度3×1018/cm3のGaNを交互に240周期積層した超格子構造からなる総膜厚1.2μmのn側クラッド層207を成長させる。その後、TMG、NH3を用いて、膜厚0.1μmのGaNからなるn側ガイド層208を成長させる。
【0056】
(2)次に、温度を830℃に低下させ、TMG、TMI、NH3を用いて、膜厚6nmのIn0.02Ga0.98Nからなる障壁層と、膜厚3nmのIn0.18Ga0.82Nからなる井戸層と、を交互に4.5周期成長させ、総膜厚42nmの多重量子井戸構造の活性層209を成長させる。
【0057】
(3)次に、温度を830℃から900℃に徐々に上げながら、TMG、TMI、NH3を用いて、In組成xが0.02から0に連続的に変化する膜厚100nmのInxGa1−xNからなる第1の窒化物半導体層210を成長させる。第1の窒化物半導体層210はp側ガイド層として働く。
【0058】
(4)次に、温度を900℃から1000℃に徐々に上げながら、TMG、NH3、Cp2Mgを用いて、Mg濃度が3×1019/cm3になるように各原料ガスの流量を調整して、膜厚30nmのp型GaNからなる第2の窒化物半導体層211を成長させる。
【0059】
(5)次に、TMA、TMG、NH3、Cp2Mgを用いて、Mg濃度が3×1019/cm3になるように各原料ガスの流量を調整して、AlzGa1−zNからなる膜厚35nmの第3の窒化物半導体層212を形成する。より詳しくは、まず、温度を1000℃から1080℃に徐々に上げながら、Al組成vが0から0.05まで連続的に変化するように、AlvGa1−vNからなる膜厚20nmの第1の部分212Aを形成する。続けて、温度を1080℃にして、Al組成wが0.20になるように、AlwGa1−wNからなる膜厚15nmの第2の部分212Bを形成する。この第2の部分212Bと第1の部分212Aとからなる第3の窒化物半導体層212は、キャリアオーバーフロー防止層として働く。
【0060】
(6)次に、温度を1080℃に保ちながら、TMA、TMG、NH3、Cp2Mgを用いて、膜厚2.5nm、Mg濃度3×1019/cm3のGaNと膜厚2.5nmのAl0.14Ga0.86Nとを交互に120周期積層した超格子構造からなる総膜厚0.6μmのp側クラッド層213を成長させる。続けて、TMG、NH3、Cp2Mgを用いて、膜厚100nm、Mg濃度1×1020/cm3のGaNからなるp側コンタクト層214を成長させる。
【0061】
(7)以上の成長終了後に、反応炉にNH3と窒素を流しながら温度を800℃まで下げ、NH3を止めて窒素中で20分間熱処理してp型不純物を含む層を低抵抗化する。その後、窒化物半導体層を成長させた基板201を反応炉から取り出し、p型コンタクト層214とp型クラッド層213をRIBE装置によりエッチングして、図6の如く2μmのストライプ幅を有するリッジ形状を形成する。そして、窒化物半導体層の表面にSiO2からなる絶縁膜215を形成する。
【0062】
(8)次に、p型コンタクト層214のリッジ上の絶縁膜215をエッチングして開口を形成し、この開口を用いてNi/Auからなるp側電極216を形成する。このp側電極216上には、p側パッド電極218を形成する。
【0063】
(9)次に、n型GaN基板201を裏面から研磨して200μmの厚さにし、このn型GaN基板201の裏面に、Ti/Alからなるn側電極219を形成する。
【0064】
(10)次に、n型GaN基板201のM面で劈開し、その劈開面にSiO2とZrO2の多層構造からなる誘電体多層膜を形成する。最後に、劈開した基板をストライプ方向に切り出して、レーザ素子とする。
【0065】
以上説明した製造方法により得られる図6の窒化物半導体レーザの特徴は、第1の実施形態における特徴に加えて、第1の窒化物半導体層210および第3の窒化物半導体層212Aの組成を連続的に変化させたことである。これにより、活性層209からキャリアオーバーフロー防止層212Aまでの各層209〜212Aの格子定数を連続的に変化させ、さらにMgの拡散を抑制することができる。これにより、活性層209へのMgの拡散をさらに抑制し、光出力をさらに高くすることができる。
【0066】
また、図6のレーザの製造方法では、活性層209からp型クラッド層213までの各層209〜213の成長温度を連続的に変化させたので、結晶欠陥の発生をさらに抑制し、活性層209へのMgの拡散をさらに抑制することができる。
【0067】
以上説明した図6の窒化物半導体レーザでは、第3の窒化物半導体層212のうち、AlvGa1−vNからなる第1の部分212Aの図中上側のAl組成vを0.05としたが、これを0.03以上0.10以下とすれば、良好な結果が得られる。その他の各層のドーピング濃度、膜厚、混晶組成等は、第1の実施形態と同様にすれば、高い特性が得られる。
【0068】
以上説明した本発明の窒化物半導体素子は、第1および第2の実施の形態のものに限定されることはない。例えば、上記実施形態では、基板としてサファイアおよびGaNを用いたが、SiC、スピネル、ガラス、ZnO、Siなどの他の基板でも良い。また、窒化物半導体層の成長にMOCVD法を用いたが、分子線エピタキシー(MBE)法、ハイドライド気相成長(HVPE)法など他の気相成長法を用いても良い。また、半導体発光素子として半導体レーザについて説明したが、発光ダイオード等の他の発光素子及び受光素子に対しても適用できる。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、窒化物半導体素子において、Alを含まずp型不純物がドープされないように設計された第1の層、Alを含まず高濃度のp型不純物がドープされるように設計された第2の層、Alを含み高濃度のp型不純物がドープされるように設計された第3の層、を順次形成したので、第2の層および第3の層のp型不純物濃度を高い再現性で設計値に近い値にし、また、第1の層へのp型不純物の拡散を抑制することができる。これにより、特性が高く、かつ、再現性、歩留まり、生産性が高い窒化物半導体発光素子およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の前提となる本発明者の実験に用いた窒化物半導体素子のサンプルの断面図。
【図2】本発明の前提となる本発明者の実験に用いた窒化物半導体素子の比較サンプルの断面図。
【図3】図1の素子のMg濃度のプロファイルを示す図。
【図4】図2の素子のMg濃度のプロファイルを示す図。
【図5】本発明の第1の実施の形態の窒化物半導体素子の断面図。
【図6】本発明の第2の実施の形態の窒化物半導体素子の断面図。
【図7】従来の窒化物半導体素子の断面図。
【符号の説明】
109、209 活性層
110、210 第1の窒化物半導体層
111、211 第2の窒化物半導体層
112、212 第3の窒化物半導体層
212A 第3の窒化物半導体層の第1の部分
212B 第3の窒化物半導体層の第2の部分
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化物半導体素子に関し、特に窒化物半導体レーザに関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化物半導体は、GaN、AlGaN、InGaN、等の窒素を含むIII−V族化合物半導体であり、バンドギャップが約3eVと大きく、直接遷移型であり、短波長発光素子用材料として利用が急速に拡大している。特に、窒化物半導体を活性層に用い、波長405nm前後の青紫色光を放射する半導体レーザは、DVD用の光源等として、製品化が進んでいる。
【0003】
図7は、従来の窒化物半導体レーザの一例を示す図である。サファイア基板301上に、低温成長GaNからなる低温バッファー層302、GaNからなるバッファー層303、GaNからなるラテラル成長層305、SiドープGaNからなるn側コンタクト層306、Siドープn側クラッド層307、GaNからなるn側ガイド層308、多重量子井戸構造のInGaN/InGaNからなる活性層309、が順次形成されている。この活性層309上には、アンドープGaNからなる膜厚20〜40nmのp側光導波層310が形成されている。このp側光導波層310上には、MgドープAlGaNからなるキャップ層312、MgドープAlGaNとGaNとを交互に多周期積層した超格子構造からなるp側クラッド層313、MgドープGaNからなるp側コンタクト層314、が順次形成されている。このp側コンタクト層314、p側クラッド層313の一部はエッチングによりリッジ状に形成される。そして、p側コンタクト層314上には一方側の電極であるp側電極316が形成されている。他方側の電極であるn側電極317は、エッチングにより露出されたn側コンタクト層306上の一部に形成されている。これらのp側電極316およびn側電極317以外の部分の素子表面には、絶縁膜315が形成されている。このような半導体レーザは、例えば、特開2002−261395号公報(特に図6)に示されている。
【0004】
この図7の窒化物半導体レーザでは、活性層309にp型不純物であるMgが含まれないようにして、活性層309の内部吸収損失を減らし、光出力が高くなるようにしている。また、活性層309へのp側不純物の拡散を防止するため、この活性層309の直上のp側光導波層310をアンドープにしている。また、キャップ層312をバンドギャップが大きいAlGaNにより構成して、活性層309からp型クラッド層313へのキャリアの漏洩(オーバーフロー)を効果的に防止している。また、このAlGaNからなるキャップ層312を、高濃度のMgがドープされるように設計している(例えば、特許文献2参照。)。Alが混ざった窒化物半導体(AlGaN)は、p型不純物の活性化率が低く、正孔濃度が低くなりやすいので、高濃度のMgをドープして、正孔濃度が高くなるようにする。
【0005】
このように、従来の窒化物半導体レーザでは、キャップ層312を、バンドギャップが大きいAlGaNからなり、かつ、p型不純物濃度が高くなるように設計して、特性が高くなるようにしている。これにより、実用可能なレベルの特性が得られるようになっている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−261395号公報
【特許文献2】
特許第3314666号明細書
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、窒化物半導体レーザでは、実用可能なレベルの特性が得られるようになっている。しかし、従来の窒化物半導体レーザには、他の材料系の半導体レーザに比べ、再現性、歩留まり、および生産性が悪いという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づくもので、その目的は、特性が高く、かつ、再現性、歩留まり、生産性が高い窒化物半導体素子およびその製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の窒化物半導体素子は、窒化物半導体からなる活性層と、前記活性層上に形成され少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなる第1の窒化物半導体層と、前記第1の窒化物半導体層上に当該層に接して形成され、少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなり、p型不純物濃度が前記第1の窒化物半導体層よりも高い第2の窒化物半導体層と、前記第2の窒化物半導体層上に当該層に接して形成され、少なくともアルミニウムと窒素とを含み前記第1および第2の窒化物半導体よりもアルミニウム組成が高い窒化物半導体からなり、前記第1の窒化物半導体層および前記第2の窒化物半導体層よりもバンドギャップが大きく、p型不純物濃度が前記第1の窒化物半導体層よりも高い第3の窒化物半導体層と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の窒化物半導体素子は、少なくともアルミニウムと窒素とを含む窒化物半導体からなるn型クラッド層と、前記n型クラッド層上に形成され窒化物半導体からなる活性層と、前記活性層上に形成され少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなる第1の窒化物半導体層と、前記第1の窒化物半導体層上に形成され、少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなり、p型不純物濃度が前記第1の窒化物半導体層よりも高い第2の窒化物半導体層と、前記第2の窒化物半導体層上に当該層に接して形成され、少なくともアルミニウムと窒素とを含み前記第1および第2の窒化物半導体よりもアルミニウム組成が高い窒化物半導体からなり、前記第1の窒化物半導体層および前記第2の窒化物半導体層よりもバンドギャップが大きく、p型不純物濃度が前記第1の窒化物半導体層よりも高い第3の窒化物半導体層と、前記第3の窒化物半導体層上に形成され、少なくともアルミニウムと窒素とを含む窒化物半導体からなるp型クラッド層と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の窒化物半導体素子の製造方法は、窒化物半導体からなる活性層を形成する工程と、前記活性層上に、p型不純物原料を用いずに、少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなる第1の窒化物半導体層を形成する工程と、p型不純物原料を用いて、前記第1の窒化物半導体層上に当該層に接してp型不純物が添加され少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなる第2の窒化物半導体層を形成する工程と、p型不純物原料を用いて、前記第2の窒化物半導体層上に当該層に接してp型不純物が添加され少なくともアルミニウムと窒素とを含む窒化物半導体からなる第3の窒化物半導体層を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
上記の製造方法では、前記第1乃至第3の窒化物半導体層の成長温度が活性層側からその反対側に向かって同じであるかまたは高くなり、前記活性層から前記第3の窒化物半導体層まで成長中断することなく連続で、成長温度を変化させて成長することが好ましい。
【0013】
なお、本発明において、窒化物半導体とは、組成式InbGacAl1−b−cN(0≦b≦1、0≦c≦1、0≦1−b−c≦1)からなる半導体を意味し、これにはボロン(B)、砒素(As)、リン(P)等が微量(組成0.01以下)に添加されたものも含まれるものとする。また、本発明において、InxGa1−xNには、拡散等により微量(組成0.01以下)のAlが添加されたものも含まれるものとする。また、本発明において、AlzGa1−zNには、拡散等により微量(組成0.01以下)のInが添加されたものも含まれるものとする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細な説明を行う前に、本発明の前提となる、本発明者の独自の実験の結果について説明する。
【0015】
従来、AlGaN層に高濃度のMgをドープする場合、このAlGaN層の下地層の材質と、AlGaN層のMg濃度の分布と、の関係はほとんど検討されていなかった。また、このようにAlGaN層に高濃度のMgをドープする場合、通常の技術者は、多数製造した素子の中で最も特性が高い素子だけに着目して設計を行っており、再現性や面内分布を考慮した設計はほとんど行っていなかった。しかしながら、本発明者は、再現性や面内分布を考慮して実験を行った結果、上記のAlGaN層の下地層の材質と、AlGaN層のMg濃度の分布と、には密接な関連があることを知得した。そして、この知得に基づき、AlGaN層の下地層の材質を特定のものにすることで、AlGaN層のMg濃度の分布を、高い再現性かつ良好な面内分布で、設計値どおりにできることが分かった。
【0016】
図1は、本発明者がこの実験に用いた窒化物半導体素子のサンプルを示す断面図である。サファイア基板1上には、低温成長GaNからなる低温バッファー層2、GaNからなるバッファー層3、SiO2からなる絶縁膜4、GaNからなるラテラル成長層5、SiドープGaNからなるn側コンタクト層6、SiドープAlGaNとGaNとを交互に多周期積層した超格子構造からなるn側クラッド層7、が順次形成されている。このn型クラッド層7上には、膜厚6nmのIn0.02Ga0.98Nからなる障壁層と、膜厚3nmのIn0.18Ga0.82Nからなる井戸層と、を交互に4.5周期成長させた総膜厚42nmのInGaN層9が形成されている。このInGaN層9上には、3×1019/cm3の濃度のMgがドープされるように設計した膜厚50nmのp型GaN層11、3×1019/cm3の濃度のMgがドープされるように設計した膜厚15nmのAlzGa1−zN(z=0.20)からなるp型AlGaN層12、3×1019/cm3の濃度のMgがドープされるように設計したGaNからなるコンタクト層13、が順次形成されている。
【0017】
この図1のサンプルの製造には有機金属気相成長法(MOCVD法)を用いている。成長原料としては、Ga原料としてトリメチルガリウム(TMG)、Al原料としてトリメチルアルミニウム(TMA)、In原料としてトリメチルインジウム(TMI)、N原料としてアンモニア(NH3)、Si原料としてシラン(SiH4)、Mg原料としてシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)、を用いている。主要部分の成長温度は、InGaN層9が830℃、p型GaN層11が1080℃、p型AlGaN層12が1080℃、である。
【0018】
一方、図2は、比較サンプルを示す断面図である。この比較サンプルが図1のサンプルと異なる点は、p型GaN層11が形成されていない点である。製造方法は図1のサンプルと同様であり、主要部分の成長温度は、InGaN層9が830℃、p型AlGaN層12が1080℃、である。なお、この成長温度は、各層の特性が高くなるように最適化された温度である。
【0019】
上記の図1のサンプルおよび図2の比較サンプルのMg濃度のプロファイルを、それぞれ、図3および図4に示す。図3は、直径5cmのサファイア基板1を用いて同一の製造条件で図1の構造を複数回製造し、それぞれの基板を壁開して500μm×500μmの多数の素子を切り出し、それぞれの基板から切り出した多数の素子のうち複数個ずつの素子を任意に選んで、合計数百個の素子のMg濃度を測定し、その平均値を取ったものである。図4も同様の平均値を取ったものである。
【0020】
まず、図2の比較サンプルのMg濃度を示す図4から、アンドープのInGaN層9の直上にMgドープのp型AlGaN層12を形成すると、Mgの取り込まれに遅れが生じやすく、所望のMg濃度を再現性良くドープできないことが分かる。この場合、厚さ15nmのp型AlGaN層5のMg濃度は、設計値が3×1019/cm3であるのに、実際の平均値は1×1019/cm3程度以下である。また、InGaN層9中に、Mgが、深さ35nm程度まで拡散していることが分かる。このように、アンドープのInGaN層9の直上にMgドープのp型AlGaN層12を形成すると、Mgのドーピング・プロファイルを設計値どおりにすることが困難となる。なお、前述のように、図4は数百個の素子の平均値であり、Mgのドーピング・プロファイルは素子によりばらつきがある。
【0021】
これに対し、図1のサンプルのMg濃度を示す図3から、Mgドープのp型GaN層11の直上にMgドープのp型AlGaN層12を形成すると、Mgが極めて取り込まれやすくなることが分かる。そして、これにより、厚さ15nmのp型AlGaN層12のMg濃度が、ほぼ設計値どおりになることが分かる。また、InGaN層9中に拡散するMgの深さが、10nm程度に留まることが分かる。また、この図1のサンプルでは、素子によるばらつきが少ない。
【0022】
以上説明した図3では、p型AlGaN層12をAlzGa1−zN(z=0.20)で構成した場合を示したが、これをAlzGa1−zN(0<z≦0.30)で構成しても、ほぼ同様の結果が得られた。また、図3では、このp型AlGaN層12の下地層としてp型GaN層11を用いたが、これをp型InGaN層としてもほぼ同様の結果が得られた。他方で、図3に示すMgドープのp型GaN層11をアンドープのGaN層やInGaN層に代えると、図4のようにMgの取り込まれに遅れが生じてしまった。
【0023】
以上の結果から、p型AlGaN層5の下地層の材質と、p型AlGaN層5のMg濃度の分布と、には密接な関連があることが分かる。そして、p型AlGaN層の下地層の材質を、図4のようなアンドープのInGaN層9またはGaN層ではなく、図3のようなMgドープのp型GaN層11またはp型InGaN層とすることで、p型AlGaN層12のMg濃度の分布を、高い再現性かつ良好な面内分布で、設計値どおりにできることが分かる。この理由について、本発明者は、Mg原料(Cp2Mg)とAl原料(TMA)とをほぼ同時に反応炉内に入れはじめると、原料およびその反応生成物が反応炉内壁に付着することにより、本来予定していない反応が起こり易くなり、Mgの取り込まれが阻害されやすくなるからではないかと考えている。また、図4のようにアンドープのInGaN層9またはGaN層上にMgドープのp型AlGaN層12を形成するとMgの拡散が多くなるが、図3のようにアンドープのInGaN層9またはGaN層上にMgドープのp型GaN層11を形成するとMgの拡散が少なくなることが分かる。この理由については、後述する。
【0024】
以上のようにして得られた実験結果を基にして、本発明者は、特性が高く、かつ、再現性、歩留まり、生産性が高い窒化物半導体素子およびその製造方法を得ることができた。以下、第1および第2の実施の形態で、このような窒化物半導体発光素子の具体的な構造および製造方法について、図面を参照にしつつ、説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
図5は、本発明の第1の実施の形態の窒化物半導体素子の断面図である。図5の素子は、窒化物半導体レーザである。サファイア基板101上には、低温成長GaNからなる低温バッファー層102、GaNからなるバッファー層103、SiO2からなる絶縁膜104、GaNからなるラテラル成長層105、SiドープGaNからなるn側コンタクト層106、AlGaNとSiドープGaNとを交互に多周期積層した超格子構造からなるn型クラッド層107、SiドープGaNからなるn側ガイド層108が順次形成されている。このn側ガイド層108上には、膜厚6nmのIn0.02Ga0.98Nと、膜厚3nmのIn0.18Ga0.82Nと、を交互に4.5周期積層した多重量子井戸構造の活性層109、が形成されている。この活性層109は、発光効率を高くするため、p型不純物がドープされないように形成される。この活性層109上には、アンドープのIn0.02Ga0.98Nからなる膜厚100nmのp側ガイド層(第1の窒化物半導体層)110が形成される。このp側ガイド層110上には3×1019/cm3の濃度のMgがドープされたp型GaNからなる膜厚50nmのp型中間層(第2の窒化物半導体層)111が形成されている。このMgドープのp型中間層111を設けたことが、本実施形態の特徴の1つである。このp型中間層111上には、3×1019/cm3の濃度のMgがドープされたp型Al0.20Ga0.80Nからなるキャリアオーバーフロー防止層(第3の窒化物半導体層)112が形成されている。このキャリアオーバーフロー防止層112上には、膜厚2.5nmのGaN(Mg濃度3×1019/cm3)と膜厚2.5nmのAl0.14Ga0.86Nとを交互に120周期積層した超格子構造からなる総膜厚0.6μmのp側クラッド層113、1×1020/cm3の濃度のMgがドープされたGaNからなるp型コンタクト層114、が順次形成されている。このp型コンタクト層114、p側クラッド層113は表面からエッチングされ、リッジ状に形成される。このリッジ状のp側コンタクト層114上には、一方側の電極であるp電極116が形成されている。他方側の電極であるn側電極117は、エッチングして露出されたn側コンタクト層106上の一部に形成されている。これらのp側電極116およびn側電極117以外の部分の素子表面には、絶縁膜115が形成されている。またp側電極116およびn側電極117に接して、p側パッド電極118およびn側パッド電極119がそれぞれ形成されている。なお、図1は概念図であり、理解を容易にするため、各層の倍率を変えて示している。
【0026】
上記の図5の窒化物半導体レーザでは、p側電極116と、n側電極117と、から活性層109に電流が注入される。この電流の注入により、活性層109から、波長約405nmの光を放射される。この光は、増幅されて、レーザ光となり、紙面と垂直な方向に放射される。
【0027】
次に、図5の窒化物半導体レーザの製造方法について説明する。以下では、MOCVD法により窒化物半導体層を形成してレーザを製造する例について説明する。
【0028】
(1)まず、直径約5cmのc面サファイア基板101を反応炉に設置し、基板温度500℃で、TMG、NH3を用い、低温成長GaNからなる低温バッファー層102を20nmの膜厚で成長させる。その後、基板温度を1080℃まで上げ、TMG、NH3を用いて、膜厚2μmのGaNからなるバッファー層103を成長させる。
【0029】
(2)次に、基板を反応炉から取り出し、膜厚200nmのSiO2膜を蒸着する。そして、このSiO2膜を、フォトリソグラフィーとエッチングにより加工して、ストライプ状の開口を有する絶縁膜104を形成する。
【0030】
(3)次に、再度基板を反応炉に設置し、基板温度1080℃で、TMG、NH3を用いて、膜厚5μmのラテラル成長GaNからなるバッファー層105を成長させる。その後、TMG、NH3、SiH4を用いて、膜厚4μm、Si濃度3×1018/cm3のGaNからなるn側コンタクト層106を成長させる。続けて、TMA、TMG、NH3、SiH4を用いて、膜厚2.5nmのAl0.14Ga0.86Nと膜厚2.5nm、Si濃度3×1018/cm3のGaNを交互に240周期積層した超格子構造からなる総膜厚1.2μmのn側クラッド層107を成長させる。さらに、TMG、NH3、SiH4を用いて、膜厚0.1μm、Si濃度1.5×1018/cm3のGaNからなるn側ガイド層108を成長させる。
【0031】
(4)次に、温度を830℃に低下させ、TMG、TMI、NH3を用いて、膜厚6nmのIn0.02Ga0.98Nからなる障壁層と、膜厚3nmのIn0.18Ga0.82Nからなる井戸層と、を交互に4.5周期成長させ、総膜厚42nmの多重量子井戸構造の活性層109を成長させる。
【0032】
(5)次に、830℃で、TMG、TMI、NH3を用いて、膜厚100nmのIn0.02Ga0.98Nからなる第1の窒化物半導体層110を成長させる。この第1の窒化物半導体層110の成長では、p型不純物(Mg)原料を用いない。この第1の窒化物半導体層110は、p側の光ガイド層として働く。
【0033】
(6)次に、温度を1080℃に上昇させ、TMG、NH3、Cp2Mgを用いて、p型不純物であるMgの濃度が3×1019/cm3になるように各原料ガスの流量を調整して、膜厚50nmのp型GaNからなる第2の窒化物半導体層111を成長させる。
【0034】
(7)次に、1080℃で、TMA、TMG、NH3、Cp2Mgを用いて、Mg濃度が3×1019/cm3になるように各原料ガスの流量を調整して、膜厚15nmのAl0.20Ga0.80Nからなる第3の窒化物半導体層112を成長させる。第3の窒化物半導体層はキャリアオーバーフロー防止層として働く。
【0035】
(8)次に、1080℃で、TMA、TMG、NH3、Cp2Mgを用いて、膜厚2.5nmでMg濃度3×1019/cm3のGaNと、膜厚2.5nmのAl0.14Ga0.86Nと、を交互に120周期積層した超格子構造からなる総膜厚0.6μmのp側クラッド層113を成長させる。続けて、TMG、NH3、Cp2Mgを用いて、膜厚100nm、Mg濃度1×1020/cm3のGaNからなるp側コンタクト層114を成長させる。
【0036】
(8)次に、成長終了後、反応炉にNH3と窒素を流しながら温度を800℃まで下げ、NH3を止めて窒素中で20分間熱処理してp型不純物を含む層を低抵抗化する。その後、窒化物半導体層を成長させた基板を反応炉から取り出し、p側コンタクト層114とp側クラッド層113をRIBE装置によりエッチングして、図1の如く2μmのストライプ幅を有するリッジ形状を形成する。そして、表面のp側コンタクト層114の側からRIE装置によりエッチングして、図1の如くn側コンタクト層106の一部を露出させる。その後、窒化物半導体層の表面にSiO2からなる絶縁膜115を形成する。
【0037】
(9)次に、p側コンタクト層114のリッジ上の絶縁膜115をエッチングして開口し、Ni/Auからなるp電極116を形成する。また、n側コンタクト層106上の絶縁膜115をエッチングして開口し、Ti/Alからなるn電極117を形成する。その後、p電極116上にpパッド電極118形成し、n電極117上にnパッド電極119を形成する。
【0038】
(10)次に、基板を裏面から研磨して200μmの厚さにした後、ストライプ方向と垂直な方向に劈開し、その劈開面にSiO2とZrO2の多層構造からなる誘電体多層膜を形成する。その後、劈開した基板をストライプ方向に切り出して、図5のレーザとなる。ここで、図5のレーザの大きさは、例えば、一辺の長さが約500μmである。この場合、直径5cmの基板から図1のレーザを数千個得ることができる。
【0039】
以上説明した製造方法により得られる図5の窒化物半導体レーザの特徴の1つは、Mgがドープされたp型中間層112を設けたことである。これにより、Mgの取り込まれに遅れが生じにくくなり、前述の図3から分かるように、p型中間層(p型GaN層)112およびキャリアオーバーフロー防止層(p型AlGaN層)113にMgを所望の濃度でドープしやすくすることができる。この結果、繰り返し多数の素子を製造した場合、キャリアオーバーフロー防止層113の正孔濃度の平均値を高くし、閾値電流および閾値電圧の平均値を低くして、再現性、歩留まり、生産性を高くすることができる。
【0040】
また、図5のレーザでは、Mgがドープされたp型中間層(p型GaN層)112を設けたので、前述の図3から分かるように、このp型中間層112を設けない場合に比べ、p側ガイド層(InGaN層)110へのマグネシウムの拡散を抑制することができる。これにより、このp側ガイド層110のさらに下側にある活性層109へのMgの拡散を、顕著に抑制することができる。この結果、繰り返し多数の素子を製造した場合、活性層109の内部吸収損失の平均値を顕著に小さくして、再現性、歩留まり、生産性をさらに高くすることができる。
【0041】
もっとも、図5のようなp型中間層(p型GaN層)111を設けることは、通常の技術者の従来の技術常識に反することである。なぜなら、従来は、アンドープ層110とその直上のMgドープ層とのバンドギャップ差を小さくすると、Mgドープ層からアンドープ層へのMgの拡散が多くなってしまうと考えられていたからである。逆に、アンドープのIn0.02Ga0.98N層110の直上に、図7のように、このアンドープ層110とバンドギャップ差が大きいp型Al0.20Ga0.80N層113を形成すれば、アンドープ層110および活性層109へのMgの拡散が少なくなると考えられていたからである。つまり、従来は、アンドープ層110上にp型層を形成する場合、両層にバンドギャップ差を設けた方が、p型不純物の拡散を抑制できると考えられていた。
【0042】
しかしながら、本発明者の実験によれば、窒化物半導体素子では、アンドープ層110上にp型層を形成する場合、図7のように、両層110、111のバンドギャップ差を小さくする方が、アンドープ層110および活性層109へのMgの拡散が減ることが分かった。この理由について、本発明者は、次のように考えている。すなわち、窒化ガリウム系半導体素子では、他の材料系よりも、バンドギャップ差を変化させた場合の格子定数差の変化が大きい。このため、Mgを含まない層110上にMgを含む層111を形成する場合、両層のバンドギャップ差を大きくすると、両層の格子定数差が大きくなる。このように格子定数差が大きくなると、両層の界面にストレスが集中し、結晶欠陥が発生し易くなる。そして、この結晶欠陥を介して、Mgの拡散が生じやすくなる。このように、窒化ガリウム系半導体素子では、バンドギャップ差が増えることにより拡散が減るメリットよりも、格子定数差が減ることにより結晶欠陥が減るメリットの方が大きい。このため、Mgを含まない層110上にMgを含む層111を形成する場合、両層のバンドギャップ差および格子定数差を小さくした方が、Mgの拡散を減らすことができると考えている。
【0043】
以上説明した図5のレーザでは、第1の窒化物半導体層110をIn0.02Ga0.98N、第2の窒化物半導体層111をGaN、第3の窒化物半導体層112をAl0.20Ga0.80Nとしたが、第1の窒化物半導体層110をInxGa1−xN(0≦x≦1)、第2の窒化物半導体層111をInyGa1−yN(0≦y≦x)、第3の窒化物半導体層112をAlzGa1−zN(0<z≦0.3)、とすることもできる。このようにすると、第1の窒化物半導体層110から第3の窒化物半導体層112に向けてバンドギャップを徐々に大きくし、また格子定数を徐々に小さくして、本発明の効果を高めることができる。ただし、第1の窒化物半導体層110のバンドギャップは、活性層109の井戸層のバンドギャプよりも大きくすることが必要で、好ましくは活性層109の平均のバンドギャップ以上、さらに好ましくは活性層109の障壁層のバンドギャップ以上、が良い。
【0044】
また、図5のレーザでは、第1の窒化物半導体層110の厚さを100nmとしたが、これを20nm以上500nm以下、好ましくは30nm以上200nm以下とすれば、高い特性が得られる。第1の窒化物半導体層110の厚さが20nmよりも薄いと、第2の窒化物半導体層111から第1の窒化物半導体層110および活性層109へのMgの拡散が起こりやすくなる。また、第1の窒化物半導体層110の厚さが500nmよりも厚いと、p型層111、112から活性層109への正孔の注入が不十分となり、特性が低下する。
【0045】
また、図5のレーザでは、第1の窒化物半導体層110を、p型不純物がドープされないように形成したアンドープ層として説明した。このp型不純物のアンドープ層とは、p型不純物濃度が1×1017/cm3以下の層である(図3、図4参照)。
【0046】
また、図5のレーザでは、第2の窒化物半導体層111の厚さを50nmとしたが、これを20nm以上500nm以下、好ましくは30nm以上100nm以下とすれば、高い特性が得られる。第2の窒化物半導体層112の厚さが20nmよりも薄いと、この層112を設ける効果(図3)が得にくくなり、第2の窒化物半導体層111および第3の窒化物半導体層112から第1の窒化物半導体層110および活性層109へのMgの拡散が起こりやすくなる。また、第2の窒化物半導体層111の厚さが500nmよりも大きい場合には、第2の窒化物半導体層111で再結合するキャリアが多くなり、活性層109へキャリアの注入が不十分となり、特性が低下する。
【0047】
また、図5のレーザでは、第2の窒化物半導体層111のp型不純物濃度を3×1019/cm3としたが、これを1×1018/cm3以上1×1021/cm3以下、好ましくは1×1019/cm3以上5×1020/cm3以下とすれば、高い特性が得られる。第2の窒化物半導体層111のp型不純物濃度が1×1018/cm3よりも低いと、抵抗が高くなるとともに、十分な正孔濃度が得られなくなって活性層109への正孔の注入が不十分となり、特性が低下する。また、第2の窒化物半導体層111のp型不純物濃度が1×1021/cm3よりも高いと、結晶が劣化して、第1の窒化物半導体層110および活性層109へのMgの拡散が起こりやすくなり、特性が劣化する。
【0048】
また、図5のレーザでは、第3の窒化物半導体層112を厚さ15nmのAl0.20Ga0.80Nとしたが、これを厚さ5nm以上30nm以下のAlwGa1−wN(0.1≦w≦0.3)とすれば、高いオーバーフロー防止効果が得られ、特性が向上する。また、これを、厚さ95nm以下のAlvGa1−vN(0<v≦0.1)と、この上に形成された厚さ5nm以上30nm以下のAlwGa1−wN(0.1≦w≦0.3)と、からなる総膜厚5nm以上100nm以下のAlzGa1−zN(0<z≦0.3)とすることもできる。Al組成wが0.1以上の部分を厚さ5nm以上設けないと、オーバーフローが起こりやすくなり、特性が低下する。また、Al組成wが0.1以上の部分を30nmよりも厚く設けた場合、または、Al組成zが0.3より高い場合には、結晶が劣化して、抵抗が高くなり、特性が劣化する。
【0049】
また、図5のレーザでは、第3の窒化物半導体層112のp型不純物濃度を3×1019/cm3としたが、これを1×1018/cm3以上1×1021/cm3以下、好ましくは1×1019/cm3以上5×1020/cm3以下とすれば、高い特性が得られる。第3の窒化物半導体層のp型不純物濃度が1×1018/cm3よりも低いと、十分な正孔濃度が得られないために、抵抗が高くなるとともに、活性層109への正孔の注入が不十分となり、特性が低下する。また、第3の窒化物半導体層112のp型不純物濃度が1×1021/cm3よりも高いと、結晶が劣化して、抵抗が高くなるとともに、第1の窒化物半導体層110および活性層109へのMgの拡散が起こりやすくなる。
【0050】
また、図5のレーザでは、p型不純物としてMgを用いているが、このp型不純物として、Zn、Cd、Ca、Be、Sr等の他のII族元素を用いることも出来る。
【0051】
(第2の実施形態)
第2の実施の形態の窒化物半導体レーザが第1の実施の形態(図1)と異なる点は、主に、サファイア基板101に変えてGaN基板201を用いた点、p側ガイド層210をIn組成が連続的に変化するように形成した点、および、キャリアオーバーフロー防止層212AをAl組成が連続的に変化するように形成した点、である。
【0052】
図6は、本発明の第2の実施の形態の窒化物半導体レーザを示す断面図である。
【0053】
n型GaN基板201上に、SiドープGaNからなるn型バッファー層206、AlGaNとSiドープGaNとを交互に多周期積層した超格子構造からなるn側クラッド層207、GaNからなるn側ガイド層208、が順次形成されている。このn側ガイド層208上には、膜厚6nmのIn0.02Ga0.98Nと、膜厚3nmのIn0.18Ga0.82Nと、を交互に4.5周期積層した多重量子井戸構造の活性層209が形成されている。この活性層209は、発光効率を高くするため、p型不純物がドープされないように形成される。この活性層209上には、アンドープのInxGa1−xNからなる膜厚100nmのp側ガイド層(第1の窒化物半導体層)110が形成される。このp側ガイド層210のIn組成xは、図中下側から上側に向けて、0.02から0まで連続的に変化する。このp側ガイド層210上には3×1019/cm3の濃度のMgがドープされたp型GaNからなる膜厚30nmのp型中間層(第2の窒化物半導体層)211が形成されている。このp型中間層211上には、3×1019/cm3の濃度のMgがドープされたp型AlzGa1−zNからなる膜厚35nmのキャリアオーバーフロー防止層(第3の窒化物半導体層)212が形成されている。このキャリアオーバーフロー防止層212は、より詳しくは、p型AlvGa1−vN(0≦v≦0.05)からなる第1の部分212Aと、p型AlwGa1−wN(w=0.20)からなる第2の部分212Bと、を有する。第1の部分212Aは、膜厚が20nmで、Al組成vが図中下側から上側に向けて0から0.05まで連続的に変化する。第2の部分212Bは、膜厚が15nmで、Al組成wが0.20である。このキャリアオーバーフロー防止層212上には、膜厚2.5nmのGaN(Mg濃度3×1019/cm3)と膜厚2.5nmのAl0.14Ga0.86Nとを交互に120周期積層した超格子構造からなる総膜厚0.6μmのp側クラッド層213、1×1020/cm3の濃度のMgがドープされたGaNからなるp型コンタクト層214、が順次形成されている。このp型コンタクト層214およびp型クラッド層213は、エッチングによりリッジに形成される。このp型コンタクト層214上にはp電極216が形成されている。このp側電極216の周辺の窒化物半導体層214、215の表面には、絶縁膜215が形成されている。また、このp側電極216に接して、p側パッド電極218が形成されている。他方側の電極であるn側電極219は、GaN基板201の裏側に形成される。
【0054】
次に、図2の窒化物半導体レーザの製造方法について説明する。以下では、MOCVD法により窒化物半導体層を形成してレーザを製造する例について説明する。
【0055】
(1)まず、n型GaN基板201を反応炉に設置し、基板温度1080℃で、TMG、NH3、SiH4を用い、膜厚2μm、Si濃度3×1018/cm3のGaNからなるn型バッファー層206を成長させる。続けて、TMA、TMG、NH3、SiH4を用いて、膜厚2.5nmのAl0.14Ga0.86Nと膜厚2.5nm、Si濃度3×1018/cm3のGaNを交互に240周期積層した超格子構造からなる総膜厚1.2μmのn側クラッド層207を成長させる。その後、TMG、NH3を用いて、膜厚0.1μmのGaNからなるn側ガイド層208を成長させる。
【0056】
(2)次に、温度を830℃に低下させ、TMG、TMI、NH3を用いて、膜厚6nmのIn0.02Ga0.98Nからなる障壁層と、膜厚3nmのIn0.18Ga0.82Nからなる井戸層と、を交互に4.5周期成長させ、総膜厚42nmの多重量子井戸構造の活性層209を成長させる。
【0057】
(3)次に、温度を830℃から900℃に徐々に上げながら、TMG、TMI、NH3を用いて、In組成xが0.02から0に連続的に変化する膜厚100nmのInxGa1−xNからなる第1の窒化物半導体層210を成長させる。第1の窒化物半導体層210はp側ガイド層として働く。
【0058】
(4)次に、温度を900℃から1000℃に徐々に上げながら、TMG、NH3、Cp2Mgを用いて、Mg濃度が3×1019/cm3になるように各原料ガスの流量を調整して、膜厚30nmのp型GaNからなる第2の窒化物半導体層211を成長させる。
【0059】
(5)次に、TMA、TMG、NH3、Cp2Mgを用いて、Mg濃度が3×1019/cm3になるように各原料ガスの流量を調整して、AlzGa1−zNからなる膜厚35nmの第3の窒化物半導体層212を形成する。より詳しくは、まず、温度を1000℃から1080℃に徐々に上げながら、Al組成vが0から0.05まで連続的に変化するように、AlvGa1−vNからなる膜厚20nmの第1の部分212Aを形成する。続けて、温度を1080℃にして、Al組成wが0.20になるように、AlwGa1−wNからなる膜厚15nmの第2の部分212Bを形成する。この第2の部分212Bと第1の部分212Aとからなる第3の窒化物半導体層212は、キャリアオーバーフロー防止層として働く。
【0060】
(6)次に、温度を1080℃に保ちながら、TMA、TMG、NH3、Cp2Mgを用いて、膜厚2.5nm、Mg濃度3×1019/cm3のGaNと膜厚2.5nmのAl0.14Ga0.86Nとを交互に120周期積層した超格子構造からなる総膜厚0.6μmのp側クラッド層213を成長させる。続けて、TMG、NH3、Cp2Mgを用いて、膜厚100nm、Mg濃度1×1020/cm3のGaNからなるp側コンタクト層214を成長させる。
【0061】
(7)以上の成長終了後に、反応炉にNH3と窒素を流しながら温度を800℃まで下げ、NH3を止めて窒素中で20分間熱処理してp型不純物を含む層を低抵抗化する。その後、窒化物半導体層を成長させた基板201を反応炉から取り出し、p型コンタクト層214とp型クラッド層213をRIBE装置によりエッチングして、図6の如く2μmのストライプ幅を有するリッジ形状を形成する。そして、窒化物半導体層の表面にSiO2からなる絶縁膜215を形成する。
【0062】
(8)次に、p型コンタクト層214のリッジ上の絶縁膜215をエッチングして開口を形成し、この開口を用いてNi/Auからなるp側電極216を形成する。このp側電極216上には、p側パッド電極218を形成する。
【0063】
(9)次に、n型GaN基板201を裏面から研磨して200μmの厚さにし、このn型GaN基板201の裏面に、Ti/Alからなるn側電極219を形成する。
【0064】
(10)次に、n型GaN基板201のM面で劈開し、その劈開面にSiO2とZrO2の多層構造からなる誘電体多層膜を形成する。最後に、劈開した基板をストライプ方向に切り出して、レーザ素子とする。
【0065】
以上説明した製造方法により得られる図6の窒化物半導体レーザの特徴は、第1の実施形態における特徴に加えて、第1の窒化物半導体層210および第3の窒化物半導体層212Aの組成を連続的に変化させたことである。これにより、活性層209からキャリアオーバーフロー防止層212Aまでの各層209〜212Aの格子定数を連続的に変化させ、さらにMgの拡散を抑制することができる。これにより、活性層209へのMgの拡散をさらに抑制し、光出力をさらに高くすることができる。
【0066】
また、図6のレーザの製造方法では、活性層209からp型クラッド層213までの各層209〜213の成長温度を連続的に変化させたので、結晶欠陥の発生をさらに抑制し、活性層209へのMgの拡散をさらに抑制することができる。
【0067】
以上説明した図6の窒化物半導体レーザでは、第3の窒化物半導体層212のうち、AlvGa1−vNからなる第1の部分212Aの図中上側のAl組成vを0.05としたが、これを0.03以上0.10以下とすれば、良好な結果が得られる。その他の各層のドーピング濃度、膜厚、混晶組成等は、第1の実施形態と同様にすれば、高い特性が得られる。
【0068】
以上説明した本発明の窒化物半導体素子は、第1および第2の実施の形態のものに限定されることはない。例えば、上記実施形態では、基板としてサファイアおよびGaNを用いたが、SiC、スピネル、ガラス、ZnO、Siなどの他の基板でも良い。また、窒化物半導体層の成長にMOCVD法を用いたが、分子線エピタキシー(MBE)法、ハイドライド気相成長(HVPE)法など他の気相成長法を用いても良い。また、半導体発光素子として半導体レーザについて説明したが、発光ダイオード等の他の発光素子及び受光素子に対しても適用できる。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、窒化物半導体素子において、Alを含まずp型不純物がドープされないように設計された第1の層、Alを含まず高濃度のp型不純物がドープされるように設計された第2の層、Alを含み高濃度のp型不純物がドープされるように設計された第3の層、を順次形成したので、第2の層および第3の層のp型不純物濃度を高い再現性で設計値に近い値にし、また、第1の層へのp型不純物の拡散を抑制することができる。これにより、特性が高く、かつ、再現性、歩留まり、生産性が高い窒化物半導体発光素子およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の前提となる本発明者の実験に用いた窒化物半導体素子のサンプルの断面図。
【図2】本発明の前提となる本発明者の実験に用いた窒化物半導体素子の比較サンプルの断面図。
【図3】図1の素子のMg濃度のプロファイルを示す図。
【図4】図2の素子のMg濃度のプロファイルを示す図。
【図5】本発明の第1の実施の形態の窒化物半導体素子の断面図。
【図6】本発明の第2の実施の形態の窒化物半導体素子の断面図。
【図7】従来の窒化物半導体素子の断面図。
【符号の説明】
109、209 活性層
110、210 第1の窒化物半導体層
111、211 第2の窒化物半導体層
112、212 第3の窒化物半導体層
212A 第3の窒化物半導体層の第1の部分
212B 第3の窒化物半導体層の第2の部分
Claims (9)
- 窒化物半導体からなる活性層と、
前記活性層上に形成され少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなる第1の窒化物半導体層と、
前記第1の窒化物半導体層上に当該層に接して形成され、少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなり、p型不純物濃度が前記第1の窒化物半導体層よりも高い第2の窒化物半導体層と、
前記第2の窒化物半導体層上に当該層に接して形成され、少なくともアルミニウムと窒素とを含み前記第1および第2の窒化物半導体よりもアルミニウム組成が高い窒化物半導体からなり、前記第1の窒化物半導体層および前記第2の窒化物半導体層よりもバンドギャップが大きく、p型不純物濃度が前記第1の窒化物半導体層よりも高い第3の窒化物半導体層と、
を備えることを特徴とする窒化物半導体素子。 - 前記第1の窒化物半導体層は、InxGa1−xN(0≦x≦1)からなり、バンドギャップが前記活性層の平均のバンドギャップ以上であり、
前記第2の窒化物半導体層はInyGa1−yN(0≦y≦x)からなり、
前記第3の窒化物半導体層は、AlzGa1−zN(0<z≦0.3)からなることを特徴とする請求項1記載の窒化物半導体素子。 - 前記第1の窒化物半導体層のp型不純物濃度の平均値が1×1017/cm3以下であり、
前記第2の窒化物半導体層のp型不純物濃度の平均値が1×1018/cm3以上1×1021/cm3以下であり、
前記第3の窒化物半導体層のp型不純物濃度の平均値が1×1018/cm3以上1×1021/cm3以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の窒化物半導体素子。 - 前記第1の窒化物半導体層の厚さが20nm以上500nm以下であり、
前記第2の窒化物半導体層の厚さが20nm以上500nm以下であり、
前記第3の窒化物半導体層の厚さが5nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の窒化物半導体素子。 - 前記第3の窒化物半導体層が、厚さ5nm以上30nm以下のAlwGa1−wN(0.1≦w≦0.3)を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の窒化物半導体素子。
- 前記第3の窒化物半導体層が、
前記第2の窒化物半導体層上に当該層に接して形成され、AlvGa1−vN(0<v≦0.1)からなり、Al組成vが前記第2の窒化物半導体層から離れるに従って連続的に大きくなる、第1の部分と、
前記第1の部分上に形成され、厚さ5nm以上30nm以下のAlwGa1−wN(0.1≦w≦0.3)からなる、第2の部分と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の窒化物半導体素子。 - 少なくともアルミニウムと窒素とを含む窒化物半導体からなるn型クラッド層と、
前記n型クラッド層上に形成され窒化物半導体からなる活性層と、
前記活性層上に形成され少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなる第1の窒化物半導体層と、
前記第1の窒化物半導体層上に形成され、少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなり、p型不純物濃度が前記第1の窒化物半導体層よりも高い第2の窒化物半導体層と、
前記第2の窒化物半導体層上に当該層に接して形成され、少なくともアルミニウムと窒素とを含み前記第1および第2の窒化物半導体よりもアルミニウム組成が高い窒化物半導体からなり、前記第1の窒化物半導体層および前記第2の窒化物半導体層よりもバンドギャップが大きく、p型不純物濃度が前記第1の窒化物半導体層よりも高い第3の窒化物半導体層と、
前記第3の窒化物半導体層上に形成され、少なくともアルミニウムと窒素とを含む窒化物半導体からなるp型クラッド層と、
を備えることを特徴とする窒化物半導体素子。 - 前記p型不純物がMgであることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の窒化物半導体素子。
- 窒化物半導体からなる活性層を形成する工程と、
前記活性層上に、p型不純物原料を用いずに、少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなる第1の窒化物半導体層を形成する工程と、
p型不純物原料を用いて、前記第1の窒化物半導体層上に当該層に接してp型不純物が添加され少なくともガリウムと窒素とを含む窒化物半導体からなる第2の窒化物半導体層を形成する工程と、
p型不純物原料を用いて、前記第2の窒化物半導体層上に当該層に接してp型不純物が添加され少なくともアルミニウムと窒素とを含む窒化物半導体からなる第3の窒化物半導体層を形成する工程と、
を備えることを特徴とする窒化物半導体素子の製造方法。
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