JP2004245586A - 超音波流量計および超音波による流量計測方法 - Google Patents
超音波流量計および超音波による流量計測方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】超音波流量計は、超音波を送受信し、壁面により規定される流体の計測用流路中に超音波の伝播経路を形成するように配置される第1および第2の超音波振動子1、2と、第1の超音波振動子1および第2の超音波振動子2との間で双方向に超音波が送受信されるよう、第1の超音波振動子1および第2の超音波振動子2を駆動し、超音波を受信する送信部3および受信部6と、受信部6において受信した受信信号を検知する検知部48と、受信部6と検知部48との間に接続され、超音波が壁面において反射することによって生じる反射波の影響を除去する第1の適応フィルタ14とを備え、検知部における検知に基づいて、伝播経路間を伝播する超音波の双方向の伝播時間差を求めることにより流体の流量を計測する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は超音波を用いて流体の流量を測定する超音波流量計および超音波による流量計測方法に関する。また、本発明はガスメータにも関する。
【0002】
【従来の技術】
超音波流量計は、構造が簡単である、機械的可動部分が少ない、流量の測定可能な範囲が広い、流量計による圧力損失がないなどの特徴を備えている。また、近年のエレクトロニクス技術の進歩によって、超音波流量計の計測精度を向上させることも可能になってきた。このため、ガスメータをはじめ、気体や液体の流量の計測が必要なさまざまな分野において超音波流量計を用いる研究がなされている。
【0003】
以下、従来の超音波流量計の構造および測定原理を説明する。図10は、従来の超音波流量計の一例を示すブロック図である。図10に示す超音波流量計は、たとえば文献1に開示されている。図10に示すように、流体が流れる流路12を挟むように超音波振動子1および2が配置される。超音波振動子1および2は、それぞれ、送信器および受信器として機能する。具体的には、超音波振動子1を送信器として用いる場合には超音波振動子2を受信器として用い、超音波振動子2を送信器として用いる場合には超音波振動子1を受信器として用いる。図10に示すように、超音波振動子1および2の間に形成される超音波の伝搬路は流体の流れる方向に対して角度θだけ傾いている。
【0004】
超音波振動子1から超音波振動子2へ超音波を伝搬させる場合、超音波は流体の流れに対して順方向に進むため、その速度は速くなる。一方、超音波振動子2から超音波振動子1へ超音波を伝搬させる場合、超音波は流体の流れに対して逆方向に進むため、その速度は遅くなる。従って、超音波振動子1から超音波振動子2へ超音波が伝搬する時間と超音波振動子2から超音波振動子1へ超音波が伝搬する時間との差から、流体の速度を求めることができる。また、流路12の断面積と流速との積から流量を求めることができる。
【0005】
上述の原理に従って流体の流量を求める具体的な方法として、シングアラウンド法による計測方法を具体的に説明する。
【0006】
図10に示すように、超音波流量計は送信部3および受信部6を備え、超音波振動子1は切り替え部10によって送信部3または受信部6の一方と選択的に接続される。この時、超音波振動子2は、超音波振動子1が接続されなかった送信部3または受信部6の他方と接続される。
【0007】
送信部3と超音波振動子1とが接続される場合、送信部3が超音波振動子1を駆動し、発生した超音波は流体の流れを横切って超音波振動子2に到達する。超音波振動子2によって受信された超音波は、電気信号に変換され、受信信号が受信部6によって増幅される。
【0008】
図11は、従来の超音波流量計におけるゼロクロス検知の一例を示している。ピークホールド部13は、受信信号18からピークホールド信号19を生成する。レベル検知部5は、ピークホールド信号19が所定のレベル36に達したことを検知し、検知信号37を生成する。ゼロクロス検知部7は、検知信号37が生成された直後におけるゼロクロスポイントを検知し、ゼロクロス検知信号38を生成する。ゼロクロスポイントとは受信信号の振幅が正から負または負から正へ変化する点をいう。このゼロクロスポイントを超音波振動子2において超音波が到達した時間としている。ゼロクロス検知信号38に基づいて、遅延部4にて所定の時間遅らせたタイミングでトリガ信号を生成し、繰り返し部8にて繰り返すかどうかを判断し、繰り返す場合には送信部3へ入力する。ゼロクロス検知信号38の生成からトリガ信号の生成までの時間を遅延時間と呼ぶ。
【0009】
送信部3はトリガ信号に基づいて超音波振動子1を駆動し、次の超音波を発生させる。このように超音波の送信−受信−増幅・遅延−送信のループを繰り返すことをシングアラウンドと呼び、ループの回数をシングアラウンド回数と呼ぶ。
【0010】
計時部9では、所定の回数、ループを繰り返すのに要した時間を計測し、測定結果が流量算出部11へ送られる。次に、切り替え部10を切り換えて、超音波振動子2を送信器として用い、超音波振動子1を受信器として用いて、同様に計測を行う。
【0011】
上述の方法によって計測した時間から遅延時間とシングアラウンド回数とを乗じた値を引き、さらにシングアラウンド回数で除した値が超音波の伝搬時間となる。
【0012】
超音波振動子1を送信側にしたときの伝搬時間をt1とし、超音波振動子2を送信側にしたときの伝搬時間をt2とする。また、図10に示すように、超音波振動子1と超音波振動子2との間の距離をLとし、流体の流速および超音波の音速をそれぞれVおよびCとする。この時、t1およびt2は以下の式で表される。
【0013】
【数1】
これらの式から流速Vは以下の式で表される。
【0014】
【数2】
流体の流速Vが求まれば、流路12の断面積と流速Vとの積から流量Qが求まる。
【0015】
図12(a)および(b)は、従来の超音波流量計の流量12における、流体の流れる方向に平行な断面および垂直な断面をそれぞれ示している。図12(a)において、矢印15は流体の流速の大きさを示している。図12(a)に示すように流体の粘性のため、流路12を規定している壁面12’近傍では流体の流速は遅くなる。このような流速分布が生じるため、超音波振動子1、2を用いて計測される流量と実際に流路12を通過した流体の量とは一致しない。このため、計測値と実際の流量とを整合させるための補正係数を導入し、計測値に補正係数をかけ合わせたものを用いて流量を求める。
【0016】
図13は、この補正係数とレイノルズ数との関係を示している。図14に示すように、レイノルズ数が小さく、流体の流れが層流となっている領域21aと、レイノルズ数が大きく、流体の流れが乱流となっている領域21bとでは、補正係数が大きく異なる。また、層流と乱流との遷移領域では、流速の分布が不安定になる。計測のための超音波が伝播しない領域において、層流と乱流とで流速が大きく変化するからである。このため、流体の速度によって補正係数を変化させる必要があったり、補正係数を変化させても遷移領域では流量を正確に計測できないという問題が生じる。
【0017】
この問題を解決するために、特許文献1は流路の断面形状を扁平にして、流路の断面全体に超音波を伝播させることによって、層流および乱流における補正係数の変化を小さくすることを開示している。図14は流路の断面が扁平になっている超音波流量計を示している。図14(a)および(b)に示すように、流体の流れに垂直な断面を矩形にし、超音波振動子1、2が設けられる辺(x方向)を短くすることによって、流速分布が生じている流路の断面全体を計測のための超音波が伝播するようにしている。
【0018】
図15は、図14に示す超音波流量計に用いる補正係数レイノルズ数との関係を示している。図15に示すように、レイノルズ数が小さく、流体の流れが層流となっている領域34aと、レイノルズ数が大きく、流体の流れが乱流となっている領域34bとにおいて、補正係数はほぼ等しい。また、層流と乱流との遷移領域においても補正係数の変化は小さい。このように、扁平な断面をもつ流路を形成することにより、層流と乱流とにおける補正係数の変化を小さくすることができる。
【0019】
【特許文献1】
特開平8−233628号公報
【特許文献2】
特開平8−37480号公報
【特許文献3】
特開平5−46182号公報
【非特許文献1】
日本電気計測器工業会規格、JEMIS 5032「超音波による流量測定法」(社)日本電気計測工業会、1987年
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
このような扁平な断面をもつ流路を形成しても、なお、計測に誤差を与える要因がある。これを図16(a)および(b)を参照して説明する。
【0021】
図16(a)および(b)に示すように、矢印18で示す流速分布を有する流体の流れに対して上流側および下流側に超音波振動子1および超音波振動子2を配置して流量を計測する場合を考える。矢印18は流速の分布を示している。流体の流れに対し直交する断面は図14(b)に示す形状であるとする。超音波振動子1から超音波を送信し、超音波振動子2で受信する場合、図16(a)に示すように、受信波形は、流れの速い中心部分を伝播する直接波16と流れの遅い壁面付近を伝播する直接波33との合成により得られる。また、超音波振動子2から超音波を送信し、超音波振動子1で受信する場合、図16(b)に示すように、受信波形は、流れの速い中心部分を伝播する直接波20と流れの遅い壁面付近を伝播する直接波19との合成により得られる。
【0022】
しかし、実際に得られる受信波形は、これら以外に、矢印17で示されるように、超音波振動子1または2の中心付近から壁面に向かって進行し、壁面において反射した後、超音波振動子2または1の中心付近に到達する反射波が存在する。また、超音波振動子1が振動することにより、流路を規定する壁面を直接伝播する振動成分31も存在する。この場合、流速分布を正確に反映する直接波19以外に反射波17および振動成分31が受信波形に影響することによって、受信波形が変形してしまう。したがって、ゼロクロス検知法におけるゼロクロスポイントも受信波形の変形により変動し、計測誤差が生じる。
【0023】
本発明は、このような従来の問題を解決し、精度の高い測定を行うことが可能な超音波流量計および流量の計測方法を提供することを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明の超音波流量計は、超音波を送受信し、壁面により規定される流体の計測用流路中に前記超音波の伝播経路を形成するように配置される第1および第2の超音波振動子と、前記第1の超音波振動子および第2の超音波振動子との間で双方向に超音波が送受信されるよう、前記第1の超音波振動子および第2の超音波振動子を駆動し、超音波を受信する送信部および受信部と、前記受信部において受信した受信信号を検知する検知部と、前記受信部と前記検知部との間に接続され、前記超音波が前記壁面において反射することによって生じる反射波の影響を除去する第1の適応フィルタとを備え、前記検知部における検知に基づいて、前記伝播経路間を伝播する超音波の双方向の伝播時間差を求めることにより流体の流量を計測する。
【0025】
ある好ましい実施形態において、前記第1の適応フィルタは、壁面からの反射が抑制された参照流路に前記計測用流路に形成された伝播経路とおなじ伝播経路を形成するように前記第1および第2の超音波振動子を配置し、前記参照流路に所定の流量の流体を流して、超音波を送受信することにより得られる参照受信信号と、前記計測用流路所定の流量の流体を流して、超音波を送受信することにより得られる受信信号とに基づいて設定されている。
【0026】
ある好ましい実施形態において、前記超音波の伝播経路における前記超音波の伝播方向と直交する方向の計測用流路の最大幅は、その方向における前記第1または第2の超音波振動子の送受波面の幅より小さいかまたはほぼ等しくなっている。
【0027】
ある好ましい実施形態において、超音波流量計は、前記受信部と前記検知部との間に接続され、前記超音波が前記壁面において反射することによって生じる反射波の影響を除去する第2の適応フィルタと、前記第1の適応フィルタまたは前記第2の適応フィルタを選択する選択部とをさらに備え、前記第1の適応フィルタにおいて前記反射波の影響が最小となるよう最適化されている流量範囲は、前記第2の適応フィルタ前記反射波の影響が最小となるよう最適化されている流量範囲と異なっている。
【0028】
ある好ましい実施形態において、超音波流量計は、前記受信部と前記検知部との間に接続され、前記超音波が前記壁面において反射することによって生じる反射波の影響を除去する第2の適応フィルタと、前記第1の適応フィルタまたは前記第2の適応フィルタを選択する選択部とをさらに備え、前記第1の適応フィルタにおいて前記反射波の影響が最小となるよう最適化されている壁面を構成する配管の種類と、前記第2の適応フィルタにおいて前記反射波の影響が最小となるよう最適化されている壁面を構成する配管の種類とは異なっている。
【0029】
ある好ましい実施形態において、超音波流量計は、前記受信部と前記検知部との間に接続され、前記超音波が前記壁面において反射することによって生じる反射波の影響を除去する第2の適応フィルタと、前記第1の適応フィルタまたは前記第2の適応フィルタを選択する選択部とをさらに備え、前記第1の適応フィルタは、前記第1の超音波振動子を用いて前記超音波を受信する場合に前記反射波の影響が最小となるよう最適化されており、前記第2の適応フィルタは、前記第2の超音波振動子を用いて前記超音波を受信する場合に前記反射波の影響が最小となるよう最適化されている。
【0030】
また、本発明の超音波流量計は、超音波を送受信し、壁面により規定される流体の計測用流路中に前記超音波の伝播経路を形成するように配置される第1および第2の超音波振動子と、前記第1の超音波振動子および第2の超音波振動子との間で双方向に超音波が送受信されるよう、前記第1の超音波振動子および第2の超音波振動子を駆動し、超音波を受信する送信部および受信部と、前記受信部において受信した受信信号を検知する検知部と、前記受信部と前記検知部との間に接続され、前記壁面を伝播する超音波による影響を除去する第1の適応フィルタとを備え、前記検知部における検知に基づいて、前記伝播経路間を伝播する超音波の双方向の伝播時間差を求めることにより流体の流量を計測する。
【0031】
ある好ましい実施形態において、超音波流量計は、前記壁面の振動を検出するための検出器をさらに備える。
【0032】
また、本発明のガスメータは、ガスが流れる流路に設けられた上記いずれかに記載の超音波流量計と、前記流路を流れるガスを遮断する遮断弁と、前記超音波流量計および遮断弁を制御する制御装置とを備えたガスメータ。
【0033】
また、本発明の超音波による流量計測方法は、流体の計測用流路中に超音波の伝播経路を形成するように配置される第1および第2の超音波振動子との間で双方向に超音波を送受信し、伝播経路間を伝播する超音波の双方向の伝播時間差を検知することにより流体の流量を計測する。流量計測方法は、前記超音波の受信信号から、前記超音波が前記計測用流路を規定する壁面において反射することによって生じる反射波の影響を除去するステップと、反射波の影響が除去された受信信号を検知して伝播時間を求めるステップとを包含する。
【0034】
ある好ましい実施形態において、前記反射波の影響を除去するステップは、適応フィルタに前記受信信号を通過させることにより実行される。
【0035】
ある好ましい実施形態において、前記適応フィルタは、壁面からの反射が抑制された参照流路に前記計測用流路に形成された伝播経路とおなじ伝播経路を形成するように前記第1および第2の超音波振動子を配置し、前記参照流路に所定の流量の流体を流して、超音波を送受信することにより得られる参照受信信号と、前記計測用流路所定の流量の流体を流して、超音波を送受信することにより得られる受信信号とに基づいて決定された特性を有する。
【0036】
ある好ましい実施形態において、前記超音波の伝播経路における前記超音波の伝播方向と直交する方向の計測用流路の最大幅は、その方向における前記第1または第2の超音波振動子の送受波面の幅より小さいかまたはほぼ等しくなっている。
【0037】
ある好ましい実施形態において、前記反射波の影響を除去するステップは、それぞれ異なる流量範囲において前記反射波の影響が最小となるよう最適化されている複数の適応フィルタから、前記流体の流量に応じた1つを選択し、選択した適応フィルタに前記受信信号を通過させることにより実行される。
【0038】
ある好ましい実施形態において、前記反射波の影響を除去するステップは、壁面を構成する配管の種類に応じて前記反射波の影響が最小となるよう最適化されている複数の適応フィルタから、前記配管の種類に応じた1つを選択し、選択した適応フィルタに前記受信信号を通過させることにより実行される。
【0039】
ある好ましい実施形態において、前記反射波の影響を除去するステップは、超音波の伝播方向に応じて前記反射波の影響が最小となるよう最適化されている2つの適応フィルタから、前記超音波の伝播方向に応じた1つを選択し、選択した適応フィルタに前記受信信号を通過させることにより実行される。
【0040】
また、本発明の超音波による流量計測方法は、体の計測用流路中に超音波の伝播経路を形成するように配置される第1および第2の超音波振動子との間で双方向に超音波を送受信し、伝播経路間を伝播する超音波の双方向の伝播時間差を検知することにより流体の流量を計測する。流量計測方法は、前記超音波の受信信号から、前記計測用流路を規定する壁面を伝播する超音波による影響を除去するステップと、反射波の影響が除去された受信信号を検知して伝播時間を求めるステップとを包含する。
【0041】
ある好ましい実施形態において、前記除去ステップは、前記壁面の振動を検出するステップと、前記受信信号の前記壁面の振動による信号成分をキャンセルする信号を前記検出した壁面の振動に基づいて特性が決定される適応フィルタを用いて生成するステップとを包含する。
【0042】
また本発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上記いずれかの超音波による流量計測方法に規定した各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムを記録している。
【0043】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
図1は、本発明による超音波流量計の第1の実施形態を示すブロック図である。超音波流量計101は、流体の流路37中に超音波の伝搬経路を形成するように配置される第1の超音波振動子1および第2の超音波振動子2と、送信部3と、受信部6とを備えている。
【0044】
第1の超音波振動子1および第2の超音波振動子2は、それぞれが送信器および受信器として機能する。第1の超音波振動子1から送信された超音波は第2の超音波振動子2により受信され、第2の超音波振動子2から送信された超音波は第1の超音波振動子1により受信する。これら双方向の伝搬路は、流路37を流れる流体の流れる方向に対して角度θをなしている。角度θの大きさは、10〜40度の範囲内から選択される。
【0045】
第1の超音波振動子1および第2の超音波振動子2としては、厚み振動モード、横すべり振動モード、縦振動モード等の振動モードにより、おおよそ20kHz以上の周波数で駆動され、超音波流量計として従来から使用される種々の超音波振動子を用いることができる。測定すべき流体の状態や種類、また予測される流速に応じて最適な周波数が適宜選択される。本実施形態では、例えば厚み振動モードで振動し、500kHzの共振周波数をもつ超音波振動子が用いられる。
【0046】
第1の超音波振動子1は、切り替え部10を介して送信部3または受信部6の一方と選択的に接続される。この時、第2の超音波振動子2は、切り替え部10によって、第1の超音波振動子1が接続されなかった受信部3または送信部6の他方と接続される。切り替え部10は、トグルスイッチのような機械的なものであってもよいし、電子回路等により構成されるものであってもよい。
【0047】
超音波流量計は、タイミング部39、遅延部40、A/Dコンバータ22、平均処理部23および適応フィルタ14をさらに備える。タイミング部39は、所定のタイミングおよび所定の繰り返し回数で送信部3に信号を出力する。送信部3はタイミング部39からの出力信号に基づいて第1の超音波振動子1または第2の超音波振動子2を駆動する。第1の超音波振動子1または第2の超音波振動子2から送信された超音波は、流路37を流れる流体中を伝播し、第2の超音波振動子2または第1の超音波振動子1に到達する。第2の超音波振動子2または第1の超音波振動子1に到達した超音波は電気信号に変換され、受信信号が受信部6によって増幅される。第2の超音波振動子2または第1の超音波振動子1に到達した超音波による電気信号が十分大きい場合には必ずしも受信部6は受信信号を増幅しなくてもよい。
【0048】
また、タイミング部39からの出力信号を遅延部40は受け取り、所定の遅延時間の経過後にトリガ信号をA/Dコンバータ22へ出力する。A/Dコンバータ22は、トリガ信号を受け取ったタイミングで受信部6から受け取る信号を多値のデジタル信号に変換する。タイミング部39からの出力信号ごとにこの処理を繰り返し、得られ受信信号を平均処理部23において平均化する。
【0049】
平均処理部23の出力は、適応フィルタ14に入力される。以下において詳述するように適応フィルタ14は、第1の超音波振動子1または第2の超音波振動子2から送信される超音波が流路37を規定する壁面において反射することによって生じる反射波の影響を除去する。
【0050】
超音波流量計101はさらにレベル検知処理部47、ゼロクロス検知部48、計時処理部49および流量算出部11を備えている。
【0051】
レベル検知処理部47は、適応フィルタ14を通過した受信信号45が所定のレベル35に達したかどうかを判断する。ゼロクロス検知部48は、レベル検知処理部47が所定のレベル35に達したと判断した直後のゼロクロスポイントを検知する。計時処理部49は、検知したゼロクロスポイントに基づいて、遅延部40の設定した遅延時間を含めた超音波の伝播時間を計算する。
【0052】
流量算出手段は、第1の超音波振動子1と第2の超音波振動子2との間で双方向に超音波を伝播させたときの伝播時間を求め、その差から流体の流速および流量を求める。
【0053】
図2(a)および(b)は、第1の超音波振動子1および第2の超音波振動子2近傍の流路37における、流体の流れる方向37dに平行な断面および垂直な断面をそれぞれ示している。
【0054】
図2(a)に示すように流路37の流体の流れる方向37dに平行な断面において流体は矢印18で示す流速分布を有している。また、図2(b)に示すように、流体の流れる方向37dに垂直な断面は、第1の超音波振動子1と第2の超音波振動子2との間で超音波が伝播する方向zの長さHがその方向に垂直な方向xの長さW2よりも長い扁平形状を備えている。
【0055】
また、超音波の伝播する方向zと直交する方向xの流路37の最大幅w2は、その方向における第1の超音波振動子1および第2の超音波振動子2の送受波面1f、2fの幅w1より小さいかほぼ等しくなっている。このため流路37を移動する流体はかならず、第1の超音波振動子1と第2の超音波振動子2との間の超音波の伝播経路を横切るようになっている。これにより、流体の流速が大きく変化しても流量の補正係数はほぼ一定の値を保つようになる。
【0056】
次に適応フィルタ14について説明する。本発明で用いる適応フィルタは、未知のシステムから除去したい信号を推定し、その信号を除去するために用いられる。たとえば、長距離回線において回線経路に回りこむエコー成分を除去するためのエコーキャンセラ(特許文献2など)や雑音の多い環境においてその雑音を除去するためのノイズキャンセラ(特許文献3など)として利用されている。
【0057】
本発明では、流路を構成する壁面における超音波反射波の影響を受けていない場合の受信信号を参照信号とし、壁面における超音波反射波の影響を受けた受信信号から、壁面における超音波反射波の影響を取り除く適応フィルタを学習することにより作成する。
【0058】
図3(a)および(b)は、参照信号を作成するための流路41の流体の移動する方向と平行な断面および垂直な断面をそれぞれ示している。流路41には、超音波流量計101に用いる第1の超音波振動子1および第2の超音波振動子2または超音波流量計101に用いる第1の超音波振動子1および第2の超音波振動子2と同じ特性を有する第1の超音波振動子および第2の超音波振動子を配置する。そして、超音波流量計101の流路37に形成された超音波の伝播経路とおなじ伝播経路を形成するように第1の超音波振動子1および第2の超音波振動子2を流路41に配置する。
【0059】
図3(b)に示すように、流体の移動方向と垂直な断面において、第1の超音波振動子1と第2の超音波振動子2の送受波面1f、2fと平行な方向xにおける断面の長さW2は送受波面1f、2fの長さw1に比べて十分長くなっている。さらに流路41を規定する壁面41’を超音波の反射を吸収する吸音材44で構成する。吸音材44の表面は流体の流速分布を乱さないよう滑らかになっていることが好ましい。断面のz方向の長さHは超音波流量計101の流路37と同じにする。また、第1の超音波振動子1と第2の超音波振動子2との距離Lも超音波流量計101と同じにする。
【0060】
このような流路41では、壁面において超音波の反射が生じにくく、また、反射波が生じたとしても、第1の超音波振動子1および第2の超音波振動子2に到達しにくくなっている。このため、流路41を用いて計測した参照信号は反射波の影響をほとんど受けていない。
【0061】
この流路41に音速ノズル気体流量校正器を用いて基準となる所定の流量の流体を流し、流速Vを計測する。また、第1の超音波振動子1および第2の超音波振動子2を用いて超音波を送受信させ、受信波である参照信号を取得する。一方、超音波流量計101を用い、同様に、音速ノズル気体流量校正器を用いて、流速Vが得られるように流体を流す。そして、第1の超音波振動子1および第2の超音波振動子2を用いて超音波を送受信させ、受信波である計測信号を取得する。
【0062】
図4は、適応フィルタ14を学習させるために用いる回路を示すブロック図であり、図5は適応フィルタ14の構成を示すブロック図である。本実施形態では適応フィルタ14としてFIR型のものを選ぶ。図5に示すように、FIR型の適応フィルタ14は、遅延素子42、乗算器である係数器43および加算器54を含むDSP(デジタルシグナルプロセッサ)により構成され、流路を伝播する超音波に生じる反射や減衰など、周囲の状況による遅れを伴って生じる超音波の伝播現象を記述するために、最も適していると考えられる。推定する係数の数は、経験値とする。係数の数をNとした場合、適応フィルタ14はNタップのFIR型デジタルフィルタで構成され、遅延要素D1、D2・・・・DN−1および各遅延要素の係数W0(n)、W1(n)、・・・WN−1(n)により表現できる。流路41の受信波である参照信号および流路37の受信波である計測信号を図4に示すよう回路に入れ、LMS(Least Mean Squire)のアルゴリズムにしたがって、流路41の受信波(参照信号)から適応フィルタ14を通過した流路37の受信波(計測信号)を引くことによって得られる残差の累積二乗和がゼロとなるよう、係数変更器32を用いて、各係数器43のフィルタ係数を更新する。これにより壁面の反射がある場合の受信信号から壁面における反射がない場合の受信信号を生成するフィルタ、つまり壁面における反射の影響を除去する特性を備えた適応フィルタを作ることができる。
【0063】
次に、超音波流量計101を用いて流体の流量を計測する手順を説明する。以下に説明する手順は、マイコン等のコンピュータを用いて各構成要素を順次制御することによって行われ、その手順をコンピュータに実行させるためのプラグラムが、ROMやRAM、ハードディスク、磁気記録媒体などの情報記録媒体に保存されている。
【0064】
まず、図1に示すように、切り替え部10を用いて、送信部3を第1の超音波振動子1へ接続し、受信部6を第2の超音波振動子2へ接続する。
【0065】
タイミング部39から所定のタイミングおよび所定の繰り返し回数で送信部3に信号を出力し、タイミング部39からの出力信号に基づいて送信部3が第1の超音波振動子1を駆動する。第1の超音波振動子1から送信された超音波は、流路37を流れる流体中を伝播し、第2の超音波振動子2または第1の超音波振動子1に到達する。第2の超音波振動子2に到達した超音波は電気信号に変換され、受信信号が受信部6によって増幅される。
【0066】
タイミング部39からの出力信号に基づいて遅延部40は所定の遅延時間の経過後にトリガ信号をA/Dコンバータ22へ出力する。A/Dコンバータ22トリガ信号を受け取ったタイミングで受信部6から受け取る信号を多値のデジタル信号に変換する。タイミング部39からの出力信号ごとにこの処理を繰り返し、得られ受信信号を平均処理部23で平均化する。
【0067】
平均処理部23から得られる受信信号は、適応フィルタ14に入力される。ここで上述したように第1の超音波振動子1から送信される超音波が流路37を規定する壁面において反射することによって生じる反射波の影響が除去される。
【0068】
図6は、適応フィルタ14を通過した受信信号45を示している。レベル検知処理部47は、受信信号45が所定のレベル35に達したかどうかを判断する。ゼロクロス検知部48は、レベル検知処理部47が所定のレベル35に達したと判断した直後のゼロクロスポイント46を検知する。計時処理部49は、検知したゼロクロスポイント46に基づいて、遅延部40の設定した遅延時間を含めた超音波の伝播時間を計算する。この伝播時間は式(1)におけるt1であり、流量算出部11へ出力される。
【0069】
次に、切り替え手段10を用いて、送信部3を第2の超音波振動子2へ接続し、第2の切り替え部14を第1の超音波振動子1へ接続する。そして上述の手順と同様の手順により、第2の超音波振動子2から超音波を発生させ、第1の超音波振動子1で超音波を受信する。伝播時間を求める、この値は式(1)に示すt2である。
【0070】
流量算出部11は、式(2)に、t1およびt2の値と角度θを代入することによって、流体の流速Vを求める。さらに流路37の断面積をSとして、流量QをV×Sによって求める。この流量Qは、単位時間あたりに流量が移動する量であり、流量Qを積分することによって流体の量を求めることができる。
【0071】
このように、本実施形態によれば、流路を規定する壁面における超音波の反射波の影響を適応フィルタによって除去することができ、反射波等により、受信波に遅れが生じることがなくなる。このため、非常に高い精度で超音波の伝播時間の真値を求めることができ、これにより、精度の高い流量計が得られる。
【0072】
(第2の実施形態)
図7は、本発明による超音波流量計の第2の実施形態を示すブロック図である。図7において、第1の実施形態の超音波流量計101と同じ構成要素には同じ参照番号を付している。図7に示す超音波流量計102は、切り替え部29および適応フィルタ26、27、28を備えている点で第1の実施形態の超音波流量計101と異なっている。
【0073】
超音波流量計102において、平均処理部23の出力は切り替え部29に入力される。そして、適応フィルタ26、27、28は並列に切り替え部29とレベル検知処理部47との間に接続される。
【0074】
適応フィルタ26、27、28はそれぞれ異なる流量範囲において第1の実施形態で説明した反射波の影響を除去するよう設定されている。たとえば、適応フィルタ26、27、28はそれぞれ小流量時、中流量時および大流量時において反射波の影響を除去できるように最適化されている。これらの適応フィルタ26、27、28は、音速ノズル気体流量校正器を用い、異なる流量において学習を行わせることによって作製することができる。
【0075】
なお、適応フィルタ26、27、28の流量範囲は異なっておればよい。たとえば、0〜10L/min、10〜20L/min、20〜30L/minというように、最適な流量範囲が全く重ならないように適応フィルタ26、27、28の流量範囲を設定してもよい。あるいは、0〜10L/min、8〜18L/min、16〜26L/minというように、最適な流量範囲の一部が重なるように適応フィルタ26、27、28の流量範囲を設定してもよい。
【0076】
切り替え部29は、流量算出部によって求められる流量に関する信号を受け取り、その信号に基づいて最適な流量範囲のフィルタを適応フィルタ26、27、28から1つ選択する。
【0077】
本実施形態によれば、流量に応じて最適な適応フィルタを切り換えるので、広い流量範囲において高い精度で計測を行うことができる。
【0078】
なお、本実施形態では、異なる流量範囲において反射波の影響が最小となるよう設定された複数の適応フィルタを用いた。しかし、2つの適応フィルタ26、27を採用し、適応フィルタ26、27を第1の超音波振動子1から超音波を送信し、第2の超音波振動子2で受信する場合、および、第2の超音波振動子2から超音波を送信し、第1の超音波振動子1で受信する場合において、流路を規定する壁面において反射することによって生じる反射波の影響を除去するように学習させてもよい。そして、超音波を送受信する方向にあわせて切り替え部29の切り替えによって適応フィルタ26または27を選択するようにしてもよい。
【0079】
また、上述したように異なる流量範囲において反射波の影響が最小となるよう設定された適応フィルタ26、27、28を採用し、各適応フィルタを、第1の超音波振動子1から超音波を送信し、第2の超音波振動子2で受信する場合、および、第2の超音波振動子2から超音波を送信し、第1の超音波振動子1で受信する場合において、流路を規定する壁面において反射することによって生じる反射波の影響を除去するように学習させてもよい。この場合には、超音波を送受信する方向にあわせて、各適応フィルタの係数が切り替わるように各適応フィルタの係数を切り換える切り替え部さらに設ける。
【0080】
このような超音波流量計によれば、第1の超音波振動子1と第2の超音波振動子2との間で伝播方向に対する取り付け角度の差異が生じているようためにそのような差異による反射波の影響が異なっている場合でも、より正確な流量の計測が可能となる。
【0081】
また、流路を規定する壁面を構成し、材質、断面形状、断面積などが異なる複数の配管に超音波流量計102が取り付けられる場合には、適応フィルタ26、27、28をそれぞれ異なる種類の配管に対して反射波の影響が最小となるよう最適化させてもよい。
【0082】
(第3の実施形態)
図8は、本発明による超音波流量計の第3の実施形態を示すブロック図である。図8において、第1の実施形態の超音波流量計101と同じ構成要素には同じ参照番号を付している。図8に示す超音波流量計103では、流路37を規定する壁面の振動を検出し、壁面の振動による影響を受けた受信信号からその振動による影響をキャンセルするための信号を適応フィルタにより生成する。このために、超音波流量計103は、ピックアップ50と、A/Dコンバータ51と、平均処理部52と加減算器55とを備えている。
【0083】
ピックアップ50は、超音波振動子などから構成され、流路37を規定する壁面の振動を検出するよう壁面に取り付けられている。ピックアップ50の出力はA/Dコンバータ51に入力され、遅延部40が出力する信号のタイミングで、デジタル信号に変換される。このタイミングは、第1の超音波振動子1または第2の超音波振動子2が超音波を受信し、受信部6によって増幅された受信信号がA/Dコンバータ22によってデジタル信号に変換されるタイミングに一致している。つまり、A/Dコンバータ51により変換される信号は、計測のための超音波を受信して得られる受信信号と同じ時刻に得られたものである。A/Dコンバータ51の出力は平均処理部52へ入力され、複数回入力されたA/Dコンバータ51の出力の平均が求められる。
【0084】
適応フィルタ14は、平均処理部52の出力信号x(n)を受け取り、信号y(n)を出力する。加減算器55は、平均処理部23から出力される受信信号の平均値と出力信号x(n)とを受け取り、受信信号の平均値から出力信号x(n)を減じた信号をレベル検知処理部47へ出力する。また、この信号はエラー信号e(n)として適応フィルタ14へ入力される。適応フィルタ14は、たとえば、第1の実施形態で説明した図5に示す構造を備えており、LMSのアルゴリズムにしたがって、エラー信号e(n)のパワーが最小となるよう各係数器フィルタ係数を決定する。これにより、適応フィルタ14から出力される信号y(n)は、受信信号に含まれる壁面の振動による信号成分をキャンセルする。したがって、受信信号から壁面の振動による影響が除去される。この学習は、リアルタイムで行われ、ピックアップ50により検出した信号が変化すれば、適応フィルタ14も信号の変化に応じてエラー信号e(n)のパワーが最小となるよう各係数器フィルタ係数を決定することができる。
【0085】
このように、本実施形態によれば、流路を規定する壁面の振動を検出し、適応フィルタを用いて生成した信号を流量を検出するための受信信号から減じることによって、受信信号に重畳している壁面の振動成分を除去することができる。したがって、非常に高い精度で超音波の伝播時間の真値を求めることができる流量計が得られる。特に本実施形態では、壁面の振動をリアルタイムで検出し、振動の変化に応じて適応フィルタの特性も変化する。したがって、超音波流量計103の周囲の環境変化や、超音波振動子の特性変化が生じても常に高い精度で超音波の伝播時間の真値を求めることができる。
【0086】
(第4の実施形態)
以下、本発明の超音波流量計を備えたガスメータを説明する。
【0087】
図9は、配管70内を流れるガスの流量を計測するためのガスメータ104のブロック図を示している。配管70内を流れるガスは、天然ガスやプロパンガスなど一般家庭で用いられるもののほか、水素や酸素等、その他の気体であってもよい。
【0088】
ガスメータ104は、配管70内を流れるガスの流量を計測するための超音波流量計71と、緊急時に配管70を流れるガスを遮断する遮断弁72と、超音波流量計71および遮断弁72を制御するマイコンなどの制御装置73と、超音波流量計106を用いて計測した流量や流量の積算値およびその他の情報を表示する表示部74とを備える。超音波流量計71には、第1から第3の実施形態の超音波流量計を用いることができる。
【0089】
超音波流量計71によって計測される流量に関するデータは、マイコン73で処理されて表示部74に表示される。また、マイコン73は、計測する流量に異常がないかを監視する。例えば、突然、大流量のガスが流れ始めた場合には、ガス漏れが生じていると判断して、遮断弁72を動作させ、ガスの供給を停止する。
【0090】
また、第1から第3の実施形態において説明したように、超音波流量計71には適応フィルタが設けられているため、流路を規定する壁面における超音波の反射波の影響あるいは壁面の振動による影響を適応フィルタによって除去することができる。壁面の振動や反射波等により、受信波に遅れが生じることがなく、非常に高い精度で超音波の伝播時間の真値を求めることができる。したがって、ガスメータ104は高い計測精度を備えている。
【0091】
特に、第3の実施形態による超音波流量計71を備えたガスメータの場合、適応フィルタは計測した壁面の振動に基づいてその特性が変化する。このため、ガスメータ104が屋外に設置され、周囲の激しい温度変化に曝されることによって流路を規定する壁面の振動が大きく変化しても、変化に対応してガスメータの計測精度を維持することができる。
【0092】
【発明の効果】
本発明によれば、流路を規定する壁面における超音波の反射の影響または壁面の振動による影響を抑制し、高い精度で流量を計測することにできる超音波流量計が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による超音波流量計の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】(a)および(b)は、図1に示す超音波流量計の流路における、流体の流れる方向に平行な断面および垂直な断面を示している。
【図3】(a)および(b)は、適応フィルタを学習させるために用いる超音波流量計の流路の断面であって、流体の流れる方向に平行な断面および垂直な断面を示している。
【図4】適応フィルタを学習させるための回路を示すブロック図である。
【図5】適応フィルタの構成を示すブロック図である。
【図6】受信信号の検出を説明するための図である。
【図7】本発明による超音波流量計の第2の実施形態を示すブロック図である。
【図8】本発明による超音波流量計の第3の実施形態を示すブロック図である。
【図9】本発明によるガスメータの実施形態を示すブロック図である。
【図10】従来の超音波流量計を示すブロック図である。
【図11】受信波のゼロクロス検知方法を説明する図である。
【図12】(a)および(b)は、従来の超音波流量計の流路における、流体の流れる方向に平行な断面および垂直な断面を示している。
【図13】従来の超音波流量計におけるレイノルズ数と補正係数との関係を示すグラフである。
【図14】(a)および(b)は、従来の他の超音波流量計の流路における、流体の流れる方向に平行な断面および垂直な断面を示している。
【図15】zy14に示す従来の超音波流量計におけるレイノルズ数と補正係数との関係を示すグラフである。
【図16】(a)および(b)は、流路を規定する壁面において反射する超音波を説明する図である。
【符号の説明】
1 第1の超音波振動子
2 第2の超音波振動子
3 送信部
6 受信部
10、29 切り替え部
11 流量算出部
14、26、27、28 適応フィルタ
22、51 A/Dコンバータ
23、52 平均処理部
32 係数変更器
39 タイミング部
40 遅延部
42 遅延素子
43 係数器
54 加算器
48 ゼロクロス検知部
49 計時処理部
101、102、103、104、105 超音波流量計
Claims (19)
- 超音波を送受信し、壁面により規定される流体の計測用流路中に前記超音波の伝播経路を形成するように配置される第1および第2の超音波振動子と、
前記第1の超音波振動子および第2の超音波振動子との間で双方向に超音波が送受信されるよう、前記第1の超音波振動子および第2の超音波振動子を駆動し、超音波を受信する送信部および受信部と、
前記受信部において受信した受信信号を検知する検知部と、
前記受信部と前記検知部との間に接続され、前記超音波が前記壁面において反射することによって生じる反射波の影響を除去する第1の適応フィルタと、
を備え、前記検知部における検知に基づいて、前記伝播経路間を伝播する超音波の双方向の伝播時間差を求めることにより流体の流量を計測する超音波流量計。 - 前記第1の適応フィルタは、壁面からの反射が抑制された参照流路に前記計測用流路に形成された伝播経路とおなじ伝播経路を形成するように前記第1および第2の超音波振動子を配置し、前記参照流路に所定の流量の流体を流して、超音波を送受信することにより得られる参照受信信号と、前記計測用流路所定の流量の流体を流して、超音波を送受信することにより得られる受信信号とに基づいて設定されている請求項1に記載の超音波流量計。
- 前記超音波の伝播経路における前記超音波の伝播方向と直交する方向の計測用流路の最大幅は、その方向における前記第1または第2の超音波振動子の送受波面の幅より小さいかまたはほぼ等しくなっている請求項1に記載の超音波流量計。
- 前記受信部と前記検知部との間に接続され、前記超音波が前記壁面において反射することによって生じる反射波の影響を除去する第2の適応フィルタと、
前記第1の適応フィルタまたは前記第2の適応フィルタを選択する選択部と、をさらに備え、
前記第1の適応フィルタにおいて前記反射波の影響が最小となるよう最適化されている流量範囲は、前記第2の適応フィルタ前記反射波の影響が最小となるよう最適化されている流量範囲と異なっている請求項1に記載の超音波流量計。 - 前記受信部と前記検知部との間に接続され、前記超音波が前記壁面において反射することによって生じる反射波の影響を除去する第2の適応フィルタと、
前記第1の適応フィルタまたは前記第2の適応フィルタを選択する選択部と、をさらに備え、
前記第1の適応フィルタにおいて前記反射波の影響が最小となるよう最適化されている壁面を構成する配管の種類と、前記第2の適応フィルタにおいて前記反射波の影響が最小となるよう最適化されている壁面を構成する配管の種類とは異なっている請求項1に記載の超音波流量計。 - 前記受信部と前記検知部との間に接続され、前記超音波が前記壁面において反射することによって生じる反射波の影響を除去する第2の適応フィルタと、
前記第1の適応フィルタまたは前記第2の適応フィルタを選択する選択部と、をさらに備え、
前記第1の適応フィルタは、前記第1の超音波振動子を用いて前記超音波を受信する場合に前記反射波の影響が最小となるよう最適化されており、前記第2の適応フィルタは、前記第2の超音波振動子を用いて前記超音波を受信する場合に前記反射波の影響が最小となるよう最適化されている請求項1に記載の超音波流量計。 - 超音波を送受信し、壁面により規定される流体の計測用流路中に前記超音波の伝播経路を形成するように配置される第1および第2の超音波振動子と、
前記第1の超音波振動子および第2の超音波振動子との間で双方向に超音波が送受信されるよう、前記第1の超音波振動子および第2の超音波振動子を駆動し、超音波を受信する送信部および受信部と、
前記受信部において受信した受信信号を検知する検知部と、
前記受信部と前記検知部との間に接続され、前記壁面を伝播する超音波による影響を除去する第1の適応フィルタと、
を備え、前記検知部における検知に基づいて、前記伝播経路間を伝播する超音波の双方向の伝播時間差を求めることにより流体の流量を計測する超音波流量計。 - 前記壁面の振動を検出するための検出器をさらに備える請求項7に記載の超音波流量計。
- ガスが流れる流路に設けられた請求項1から8のいずれかに記載の超音波流量計と、
前記流路を流れるガスを遮断する遮断弁と、
前記超音波流量計および遮断弁を制御する制御装置と、
を備えたガスメータ。 - 流体の計測用流路中に超音波の伝播経路を形成するように配置される第1および第2の超音波振動子との間で双方向に超音波を送受信し、伝播経路間を伝播する超音波の双方向の伝播時間差を検知することにより流体の流量を計測する、超音波による流量計測方法であって、
前記超音波の受信信号から、前記超音波が前記計測用流路を規定する壁面において反射することによって生じる反射波の影響を除去するステップと、
反射波の影響が除去された受信信号を検知して伝播時間を求めるステップと、
を包含する超音波による流量計測方法。 - 前記反射波の影響を除去するステップは、適応フィルタに前記受信信号を通過させることにより実行される請求項10に記載の超音波による流量計測方法。
- 前記適応フィルタは、壁面からの反射が抑制された参照流路に前記計測用流路に形成された伝播経路とおなじ伝播経路を形成するように前記第1および第2の超音波振動子を配置し、前記参照流路に所定の流量の流体を流して、超音波を送受信することにより得られる参照受信信号と、前記計測用流路所定の流量の流体を流して、超音波を送受信することにより得られる受信信号とに基づいて決定された特性を有する請求項11に記載の超音波による流量計測方法。
- 前記超音波の伝播経路における前記超音波の伝播方向と直交する方向の計測用流路の最大幅は、その方向における前記第1または第2の超音波振動子の送受波面の幅より小さいかまたはほぼ等しくなっている請求項11に記載の超音波による流量計測方法。
- 前記反射波の影響を除去するステップは、それぞれ異なる流量範囲において前記反射波の影響が最小となるよう最適化されている複数の適応フィルタから、前記流体の流量に応じた1つを選択し、選択した適応フィルタに前記受信信号を通過させることにより実行される請求項11に記載の超音波による流量計測方法。
- 前記反射波の影響を除去するステップは、壁面を構成する配管の種類に応じて前記反射波の影響が最小となるよう最適化されている複数の適応フィルタから、前記配管の種類に応じた1つを選択し、選択した適応フィルタに前記受信信号を通過させることにより実行される請求項11に記載の超音波による流量計測方法。
- 前記反射波の影響を除去するステップは、超音波の伝播方向に応じて前記反射波の影響が最小となるよう最適化されている2つの適応フィルタから、前記超音波の伝播方向に応じた1つを選択し、選択した適応フィルタに前記受信信号を通過させることにより実行される請求項11に記載の超音波による流量計測方法。
- 流体の計測用流路中に超音波の伝播経路を形成するように配置される第1および第2の超音波振動子との間で双方向に超音波を送受信し、伝播経路間を伝播する超音波の双方向の伝播時間差を検知することにより流体の流量を計測する、超音波による流量計測方法であって、
前記超音波の受信信号から、前記計測用流路を規定する壁面を伝播する超音波による影響を除去するステップと、
反射波の影響が除去された受信信号を検知して伝播時間を求めるステップと、を包含する超音波による流量計測方法。 - 前記除去ステップは、
前記壁面の振動を検出するステップと、
前記受信信号の前記壁面の振動による信号成分をキャンセルする信号を前記検出した壁面の振動に基づいて特性が決定される適応フィルタを用いて生成するステップと、
を包含する請求項17に記載の超音波による流量計測方法。 - 請求項10から18のいずれかに記載の超音波による流量計測方法に規定した各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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