JP3368305B2 - 超音波流量計 - Google Patents

超音波流量計

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JP3368305B2
JP3368305B2 JP2000170419A JP2000170419A JP3368305B2 JP 3368305 B2 JP3368305 B2 JP 3368305B2 JP 2000170419 A JP2000170419 A JP 2000170419A JP 2000170419 A JP2000170419 A JP 2000170419A JP 3368305 B2 JP3368305 B2 JP 3368305B2
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博朗 石川
星川  賢
和義 清水
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、測定対象の流体中
に超音波を伝播させ、流路の上流方向と下流方向への伝
播時間の差から流体の流速や流量を測定する超音波流量
計に関するものであり、特に、微小流量の測定に適した
超音波流量計に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、超音波を測定対象の流路内の流体
に伝播させ、この超音波が流路の上流/下流双方向に伝
播する際の伝播時間差を利用して流体の流速(流量) を
測定する超音波流量計が汎用されてきた。従来の超音波
流量計では、超音波信号の受信時点の検出手法の典型的
な一つとして、ゼロクロス法が採用されている。このゼ
ロクロス法では、受信信号の振幅が所定の閾値を越えた
直後に振幅がゼロになる時点が受信時点と見做される。
【0003】ところで、医療など各種の技術分野におい
て、極めて微量の流量を測定することがある。しかしな
がら、流体の流量、従って流速が小さくなるにつれて測
定誤差が大きくなって測定精度が確保できなくなるとい
う問題があり、ニーズを十分に満足するような計測器は
現状では存在しない。一般に微小な流量を取り扱う場
合、流路の径は数mmm 以下となり、計測器の開発が困難
になる。測定部で流路の径を拡大して計測することも可
能であるが、この結果、流速が極めて小さくなりその検
出が困難となる。
【0004】例えば、特開平10ー153464号公報には、内
径2mm〜4mmの弗化樹脂(4弗化エチレン)のチューブ
に測定対象の流体を流し、この流体中に超音波を伝播さ
せて流速を測定する方法が開示されている。この方法で
は、円環形状のトランスジューサ(圧電変換素子)の中
心に形成された開口に樹脂製の細管が嵌合され、超音波
の励振と受信が行われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の超音波流量
計で採用されてきたゼロクロス法では、雑音の影響を受
け易く、このため測定精度が低下するという問題があ
る。従って、本発明の一つの目的は、雑音の影響を受け
にくく、高い測定精度を実現できる超音波流量計を提供
することにある。
【0006】また、本発明者は、上記特開平10ー153464
号に開示された先行技術と同様の構成による流量の測定
を試みたが、内径が1mm程度の細管では、良好な結果が
得られなかった。これは、4弗化エチレン製の細管を使
用する構成では、4弗化エチレンの剛性が小さくしかも
伝播損失が大きいため、細管が超音波の振動吸収材とし
て機能してしまい十分な距離にわたって超音波を伝播さ
せることができないことによると推定された。樹脂など
の剛性の小さな素材についても同様と推定される。この
推定は、本発明者による多数の実験結果から得られたも
のである。従って、本発明の目的は、この推定の正当性
を確認しつつ十分に実用的な超音波流量計を提供するこ
とにある。
【0007】上記従来技術の課題を解決する第1の発明
の超音波流量計は、内部に流体の流路を形成すると共
に、閉ループ部分を有する管路と、この閉ループ部分の
交差箇所において2本の管路のそれぞれを中心部に嵌合
させる受信用または送信用超音波トランスジューサと
この閉ループ部分から前後に離れたそれぞれの箇所にお
いて管路を中心部に嵌合させる送信用または受信用超音
波トランスジューサと前記送信用超音波トランスジュ
ーサから前記管路内に放射され、前記受信用超音波トラ
ンスジューサに受信された超音波信号のうち、前記閉ル
ープ部分を通過することなく受信された受信信号成分
と、前記閉ループ部分を通過したのち受信された受信信
号成分との間に遅延時間を付与して両成分の相関値を算
定し、この相関値が最大の時点で付与されている遅延時
間に基づき前記超音波信号が前記折り返し部分を上流、
下流両方向に伝播するのに要した時間を算定する伝播時
間算定手段とを備えることにより、雑音の妨害を受けに
くい受信波形の相関処理により、しかも少数の超音波ト
ランスジューサを使用することにより、伝搬時間を検出
するように構成されている。
【0008】上記従来技術の課題解決する第2の発明
の超音波流量計は、内部に流体の流路を形成すると共
に、折り返し部分を有する管路とこの折り返し部分の
管路の第1の箇所において2本の管路のそれぞれを中心
部に嵌合させる送信用超音波トランスジューサと、この
折り返し部分の管路の第2の箇所において2本の管路の
それぞれを中心部に嵌合させる受信用超音波トランスジ
ューサと、前記送信用超音波トランスジューサから前記
管路内に放射され、前記受信用超音波トランスジューサ
に受信された超音波信号のうち、前記折り返し部分の先
端部を通過する前に受信された受信信号成分と、前記折
り返し部分の先端部を通過したのちに受信された受信信
号成分との間に遅延時間を付与して両成分の相関値を算
定し、この相関値が最大の時点で付与されている遅延時
間に基づき前記超音波信号が前記折り返し部分を上流、
下流両方向に伝播するのに要した時間を算定する伝播時
間算定手段とを備えることにより、雑音の妨害を受けに
くい受信波形の相関処理により、しかも少数の超音波ト
ランスジューサを使用することにより、伝搬時間を検出
するように構成されている
【0009】
【発明の実施の形態】上記第の発明の一つの好適な実
施の形態によれば、上記折り返し部分の2本の管路は上
記第1の箇所と第2の箇所との間において異なる長さに
設定されている。
【0010】上記第1,第2の発明の好適な実施の形態
によれば、上記二つの受信信号成分の間の相関値は、各
成分の設定周期分のゼロクロス点間の区間のサンプリン
グ・データを用いて算定されるように構成されている。
【0011】上記第1,第2の発明の他の好適な実施の
形態によれば、上記二つの受信信号成分の相関を最大に
する遅延時間の付与量は、この相関値の最大値の前後に
出現する複数のゼロクロス点の平均値に基づき算定され
るように構成されている。
【0012】
【実施例】図1と図2は本発明の一実施例の超音波流量
計を示す図であり、図1は全体の構成を示す全体構成
図、図2は送信用トランスジューサTuと、受信用トラ
ンスジューサRと、流体の管路Pの一部を拡大して示す
部分拡大斜視図である。
【0013】流体の管路Pには閉じた折り返し部分(閉
ループ)が形成されており、その交差箇所には受信用超
音波トランスジューサRが配置される。この閉じた折り
返し部分の外側(手前)の上流側には送信用トランスジ
ューサTuが配置され、同じく下流側には送信用トラン
スジューサTdが配置される。管路P内を流れる流体
は、図中の矢印で示すように、左側から右側に流れるも
のとし、この場合、Tuは上流側の送信用トランスジュ
ーサ、Tdは下流側の送信用トランスジューサと称す
る。
【0014】受信用、送信用超音波トランスジューサ
R,Tu,Tdのそれぞれは、送信用トランスジューサ
についてはTuで代表して図2の斜視図に示すように、
円形断面の管路Pの径よりも大きな直径を有する円環形
状を呈している。そして、送信用トランスジューサTu
の中心部に形成された開口内にステンレス鋼を素材とす
る管路Pが嵌合せしめられる。また、受信用トランスジ
ューサRの中心部に形成された二つの開口内のそれぞれ
に、管路Pの往路部分と復路部分とが嵌合せしめられ
る。この嵌合による管路とトランスジューサの接合面に
は予め接着剤が塗布される。
【0015】図1に示すように、送信用トランスジュー
サTu,Tdにはそれぞれ送信回路TXu,TXdが接
続され、受信用トランスジューサRには受信回路RXが
接続される。受信回路RXには、アナログ受信信号をデ
ィジタル受信信号に変換するA/D変換回路(A/D)
が接続され、このA/D変換回路のディジタル受信信号
は、ディジタル・データ・プロセッサ(DDP)に供給
される。ディジタル・データ・プロセッサDDPで算定
された流量などのデータは、液晶パネルなどで構成され
る表示装置(図示せず)に表示される。
【0016】送信回路TXuは、ディジタル・データ・
プロセッサ(DDP)から供給される所定周期のトリガ
パルスに同期して、パルス電圧を発生し、上流側の送信
用トランスジューサTuを駆動する。駆動された送信用
トランスジューサTuは、超音波信号を発生する。発生
された超音波信号のうち下流側に伝播する成分は、流路
に沿って折り返し部分に伝播し、交差箇所に配置された
受信用トランスジューサRに受信される。この超音波信
号は、更に、折り返し部分を流路に沿って伝播し続け、
再び受信用トランスジューサRに受信される。
【0017】受信用トランスジューサRに受信された超
音波信号は、等化増幅器や濾波器などで構成される受信
回路RXで増幅されたのち、A/D変換回路に供給さ
れ、ここでディジタル信号に変換され、ディジタル・デ
ータ・プロセッサDDPに供給される。このディジタル
信号は、図3の波形図に示すように、折り返し部分を経
ることなくトランスジューサRに受信された成分Xと、
こののち折り返し部分を経て再度トランスジューサRに
受信された成分Yとから構成されている。
【0018】ディジタル・データ・プロセッサ(DD
P)では、先に出現する超音波信号X(t) に対して遅延
時間τが付与され、この遅延された超音波信号X(t+
τ) と後に出現する超音波信号Y(t) との相関値 RXY(τ)=∫〔X(t+τ)*Y(t) 〕dt ・・・(1) が算定される。
【0019】そして、ディジタル・データ・プロセッサ
(DDP)は、遅延時間を少しずつずらしながら相関値
Rの算定を反復し、この相関値が最大になった時点で付
与した遅延時間τo を検出する。この遅延時間τoは、
上流側に設置された送信用トランスジューサTuから流
路内に放射された超音波信号が既知の長さの閉ループ内
を流体の流れの方向に伝播するのに要した伝播所要時間
に他ならない。
【0020】このように、受信用トランスジューサR
に、最初に受信された受信信号成分と二度目に受信され
た受信信号成分との相関値を算定する方法においては、
二つの受信信号成分に含まれる雑音は相互に全く相関が
ないため互いに相殺され、互いに相関を有する信号成分
からほぼ除去される。従って、雑音の影響をほとんど受
けないで伝播所要時間が精度良く算定できる。
【0021】上記閉ループ内の上流側から下流側への超
音波の伝播所要時間の測定と前後して、逆方向への超音
波の伝播所要時間の測定が行われる。すなわち、下流側
の送信用超音波トランスジューサTdから流路内に超音
波信号が送信され、このうち上流側に伝播する成分が、
受信用トランスジューサRに二度にわたって受信され
る。そして、各受信信号成分について上述したような遅
延時間の付与と相関値の算定が反復され、相関値が最大
となった時点で付与された遅延時間が、既知の長さの閉
ループ内を上流方向に伝播する超音波の伝播所要時間と
して算定される。
【0022】上記相関値の算定に際しては、受信信号X
(t) とY(t) のどのような区間を算定の対象とするかが
演算速度を向上させる上での問題となる。この相関値の
算定の対象となる区間として、例えば、図4の(A)と
(B)とに示すように、設定周期分のゼロクロス点間、
例えば、2周期分のゼロクロス点間によって切り取られ
る区間が選択される。この抽出区間を常に安定して検出
することによって演算精度が高まる。そして、算定され
た相関値RXY (τ) を最大にする遅延時間の付与量はτ
0 は、この相関値の最大値の前後に出現する複数のゼロ
クロス点の対(τ11'), (τ22'), (τ33'),
44')・・・の平均値τ0m τ0m= 1Σn 〔(τi +τi ')/n〕 に従って算定される。
【0023】図5は、図1に示した実施例の超音波流量
計のうち、管路Pと超音波トランスジューサTu,T
d、Rとを含むフロントエンド部分の好適な構成の一例
を示す斜視図(A)と断面図(B)である。管路の内径
は、0.1 mm乃至1mmの範囲の値に設定されると共
に、その肉厚は、0.1 mm以下の値に設定されている。
この極く細の管路Pは、その上下に配置される厚み数m
m程度のシリコンゴム板RSの間に挟持され、このシリ
コンゴムRS板は、それぞれの上下に配置される合成樹
脂PLの間に挟持される。
【0024】上下のシリコンゴム板RSと、それぞれの
上下に配置される合成樹脂板PLには超音波トランスジ
ューサTu,Td、Rのそれぞれを収容するための溝が
形成され、これらの溝の内部に超音波トランスジューサ
が電気/機械変換特性に影響を与えないような非圧迫状
態で収容される。最上部にはプリント配線板PBが載置
され、上記シリコンゴム板RSと、合成樹脂板PLとプ
リント配線板PBは、それぞれの周辺部においてネジ止
めされる。最上部のプリント配線板PB上に、図1に示
した、ディジタル・データ・プロセッサ(DDP)、送
信回路TX、受信回路RX、A/D変換回路などが形成
される。
【0025】上述のようにこの実施例ではステンレス鋼
を素材とする管路Pの内径は、1mmから0.1mmの範
囲に設定され、肉厚は0.1mm以下に設定されている。
管路の肉厚をこのように薄くしても、その管壁内を伝播
する超音波信号の成分は相当に大きな値となる。この管
壁の内部を伝播する超音波信号を減衰させるために、管
路Pの外周面をシリコンゴム板内に埋め込むことによっ
て管路Pの外周部分にシリコンゴムの層を密着させ、振
動吸収層を形成する。
【0026】4弗化エチレンや樹脂などの柔らかな素材
で管路を構成した超音波流量計がうまく動作しない原因
の一つとして、超音波振動の励振効率が低下することも
考えられる。すなわち、円環形状のトランスジューサの
中心に管路を嵌合させた図2の(B)に示す構成では、
トランスジューサに発生する厚み方向の振動成分と径方
向への振動成分のうち、後者の成分によって管路がその
中心軸と直交する方向に伸縮する。
【0027】この伸縮が圧縮/膨張に関して等方性を有
する液体などの流体中で管軸方向への圧力と密度の疎密
波(縦波)に変換されて、流路の方向に伝播する超音波
信号となる。この際、管路Pの素材が樹脂のように柔ら
か過ぎると、これ自体が振動吸収体として作用し、あた
かも振動吸収体を通して流体中に超音波を伝達するよう
な結果となり、励振効率が大幅に低下するおそれがあ
る。
【0028】従って、本実施例のように管路Pを大きな
剛性のステンレス鋼などの金属や、同等あるいはそれ以
上の剛性を有するシリカなどの素材で構成すると共に、
このような管路の外周面上に樹脂やゴムなどの柔らかな
素材から成る振動吸収層を形成することにより管壁内を
伝播する超音波信号成分を減衰させる必要がある。これ
は、この液体中の伝播速度に比べて管壁内の伝播速度は
かなり大きいが、管路の各所で生ずる多重反射に起因し
てかなりの長時間にわたる残響が発生するため、流体中
を伝播した流速に依存して変化する成分と、管壁内を伝
播した流速に依存しない部分とが混在することにより、
測定の精度が大幅に低下することになるからである。
【0029】図1の実施例では、閉ループの交差部分に
受信用トランスジューサRを設置すると共に、この閉ル
ープの外側の上流側と下流側のそれぞれに送信用トラン
スジューサTuとTdとを設置した。しかしながら、こ
れらの受信用トランスジューサと送信用トランスジュー
サの配置を完全に入れ換えることもできる。
【0030】図6は、そのような実施例の超音波流量計
の全体構成を示す図である。この実施例では、ループの
交差部分に送信用トランスジューサTが設置されると共
に、この閉ループの外側の上流側と下流側のそれぞれに
受信用トランスジューサRuとRdとが設置されてい
る。
【0031】図6の超音波流量計では、交差箇所に配置
された送信用トランスジューサTから流路内に放射され
た超音波信号のうち流路の下流側に伝播する成分は、閉
ループを経ることなく直ちに下流側の受信用トランスジ
ューサRdに向けて伝播しこれに受信される成分と、閉
ループを経た後下流側のトランスジューサRdに受信さ
れる成分とから成る。これら受信用トランスジューサR
dに受信された二つの信号成分が出現する時間差に基づ
き、閉ループ内を下流に向けて伝播する超音波信号の伝
播遅延時間が測定される。
【0032】同様に、交差箇所に配置された送信用トラ
ンスジューサTから流路内に放射された超音波信号のう
ち上流側に伝播する成分は、閉ループを経ることなく直
ちに上流側の受信用トランスジューサRuに向けて伝播
しこれに受信される成分と、閉ループを経た後この上流
側のトランスジューサRuに受信される成分とから成
る。これら受信用トランスジューサRuに受信された二
つの信号成分が出現する時間差に基づき、閉ループ内を
下流に向けて伝播する超音波信号の伝播遅延時間が測定
される。
【0033】図7は、本発明の他の実施例の超音波流量
計の全体構成を示す全体構成図である。この実施例は、
折り返し部分が交差箇所を有しない開いたループを形成
している。この折り返し部分の手前に受信用超音波トラ
ンスジューサRが設置されており、このトランスジュー
サRの設置箇所の更に外側(上流側と下流側)に送信用
超音波トランスジューサTが設置されている。送信用ト
ランスジューサTと受信用トランスジューサRの間の往
路と復路の両管路は異なる長さに設定されている。
【0034】送信用トランスジューサTから流路内に放
射された超音波信号のうち流路の下流側に伝播する成分
は、開ループを経ることなく直ちに受信用トランスジュ
ーサRに向けて伝播しこれに受信される成分と、この開
ループを経たのち受信用トランスジューサRに受信され
る成分とから成る。これら受信用トランスジューサRに
受信された二つの信号成分が出現する時間差に基づき、
開ループ内を下流に向けて伝播する超音波信号の伝播遅
延時間が測定される。
【0035】同様に、送信用トランスジューサTから流
路内に放射された超音波信号のうち上流側に伝播する成
分も、開ループを経ることなく直ちに受信用トランスジ
ューサRに向けて伝播しこれに受信される成分と、この
開ループを経た後この受信用トランスジューサRに受信
される成分とから成る。これら受信用トランスジューサ
Rに受信された二つの信号成分が出現する時間差に基づ
き、開ループ内を下流に向けて伝播する超音波信号の伝
播遅延時間が測定される。
【0036】開ループ内を上流側と下流側に伝播する超
音波の伝播所要時間の測定は、送信用超音波トランスジ
ューサTからの超音波信号の送信を何回かに分けて行う
ことによって行うこともできるが、同時に行うこともで
きる。この場合、超音波信号の受信が重ならないよう
に、トランスジューサTとRとの間の往路部分と復路部
分の二つの管路は長さが異なるように設定されている。
【0037】図7の実施例では、開ループの出入口部分
に受信用トランスジューサRを設置すると共に、この閉
ループの外側の上流側と下流側のそれぞれに送信用トラ
ンスジューサTを設置した。しかしながら、これらの受
信用トランスジューサと送信用トランスジューサの配置
を完全に入れ換えることもできる。
【0038】図8は、そのような実施例の超音波流量計
の全体構成を示す図である。この実施例では、ループの
出入口部分に送信用トランスジューサTが設置されると
共に、ここから離れた上流側と下流側のそれぞれに送信
用トランスジューサTが設置されている。
【0039】送信用トランスジューサTから流路内に放
射された超音波信号のうち流路の下流側に伝播する成分
は、閉ループを経ることなく直ちに受信用トランスジュ
ーサRに向けて伝播しこれに受信される成分と、閉ルー
プを経たのち受信用トランスジューサRに受信される成
分とから成る。これら受信用トランスジューサRに受信
された二つの信号成分が出現する時間差に基づき、閉ル
ープ内を下流に向けて伝播する超音波信号の伝播遅延時
間が測定される。
【0040】同様に、送信用トランスジューサTから流
路内に放射された超音波信号のうち上流側に伝播する成
分も、閉ループを経ることなく直ちに受信用トランスジ
ューサRに向けて伝播しこれに受信される成分と、閉ル
ープを経た後この受信用トランスジューサRに受信され
る成分とから成る。これら受信用トランスジューサRに
受信された二つの信号成分が出現する時間差に基づき、
閉ループ内を下流に向けて伝播する超音波信号の伝播遅
延時間が測定される。
【0041】以上、説明の便宜上、図1や図6などの実
施例において送信回路TXや受信回路RXをそれぞれ独
立に設置したが、これらの回路のうちのいくつかについ
ては信号路切り換えスイッチや方向性結合器や単向回路
などを用いて共用化し、時間をずらして共用する構成と
することができる。
【0042】また、一方の受信信号を遅延させたものと
他方の受信信号との相関をそのまま算定する構成を例示
した。しかしながら、各受信信号のうち所定の閾値を越
えた部分のみについて相関を算定することにより、雑音
の影響を更に軽減するという構成を採用することもでき
る。
【0043】更に、受信信号波形相互の相関の算定によ
り伝播時間を算定する本第1の発明を、微小内径の管路
を使用する第2の発明と共に説明した。これは、微細な
管路を使用する場合は、雑音の影響を特に受け易いこと
によるものである。しかしながら、この第1の発明に関
する限り、管路の内径には原理的には制約がなく、内径
の大きな通常のものにも適用できることは明らかであ
る。
【0044】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本第1の発
明の超音波流量計は、流路に沿って離間して配置したト
ランスジューサの受信信号の一方に遅延時間を付与して
相関をとり、この相関が最大となった時点で付与されて
いる遅延時間から伝播所要時間を算定する伝播時間算定
手段を備える構成であるから、相関のない雑音が互いに
相殺されて除去される。この結果、雑音の妨害を受け難
い高精度の測定が可能になる。
【0045】本第2の発明の超音波流量計は、管路が金
属又はこれと同等の剛性を有する素材から成ると共に、
シリコンゴムその他の弾性層の間に押圧状態で保持され
る構造であるから高能率の励振と、伝播が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の超音波流量計の全体構成図
である。
【図2】上記実施例の超音波トランスジューサの部分を
示す部分拡大斜視図である。
【図3】上記実施例の超音波流量計における受信信号波
形の遅延と相関を使用した測定原理を説明するための信
号波形図である。
【図4】上記実施例の超音波流量計における受信信号波
形の遅延と相関を使用した測定原理を説明するための信
号波形図である。
【図5】上記実施例の具体的構成の一例を示す斜視図
(A)と、断面図(B)である。
【図6】本発明の他の実施例の超音波流量計の全体構成
図である。
【図7】本発明の更に他の実施例の超音波流量計の全体
構成図である。
【図8】本発明の更に他の実施例の超音波流量計の全体
構成図である。
【符号の説明】
P 流体の流路を定める管路 T,Tu,Td 送信用トランスジューサ R,Ru,Rd 受信用トランスジューサ TX,TXu,TXd送信回路 RX,RXu,RXd受信回路 A/D A/D変換回路 DDP ディジタル・データ・プロセッサ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高本 正樹 茨城県つくば市梅園1丁目1番4 工業 技術院計量研究所内 (72)発明者 石川 博朗 東京都羽村市栄町3丁目1番地の5 株 式会社 カイジョー内 (72)発明者 星川 賢 東京都羽村市栄町3丁目1番地の5 株 式会社 カイジョー内 (72)発明者 清水 和義 東京都羽村市栄町3丁目1番地の5 株 式会社 カイジョー内 (56)参考文献 特開 平10−9914(JP,A) 特開 平6−213695(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01F 1/66 101

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】内部に流体の流路を形成すると共に、閉ル
    ープ部分を有する管路と、この閉ループ部分の交差箇所において2本の管路のそれ
    ぞれを中心部に嵌合させる受信用または送信用超音波ト
    ランスジューサとこの閉ループ部分から前後に離れたそれぞれの箇所にお
    いて管路を中心部に嵌合させる送信用または受信用超音
    波トランスジューサと前記送信用超音波トランスジューサから前記管路内に放
    射され、前記受信用超音波トランスジューサに受信され
    た超音波信号のうち、前記閉ループ部分を通過すること
    なく受信された受信信号成分と、前記閉ループ部分を通
    過したのち受信された受信信号成分 との間に遅延時間を
    付与して両成分の相関値を算定し、この相関値が最大の
    時点で付与されている遅延時間に基づき前記超音波信号
    が前記折り返し部分を上流、下流両方向に伝播するのに
    要した時間を算定する伝播時間算定手段とを備えたこと
    を特徴とする超音波流量計。
  2. 【請求項2】内部に流体の流路を形成すると共に、折り
    返し部分を有する管路とこの折り返し部分の管路の第1の箇所において2本の管
    路のそれぞれを中心部に嵌合させる送信用超音波トラン
    スジューサと、 この折り返し部分の管路の第2の箇所において2本の管
    路のそれぞれを中心部に嵌合させる受信用超音波トラン
    スジューサと、 前記送信用超音波トランスジューサから前記管路内に放
    射され、前記受信用超音波トランスジューサに受信され
    た超音波信号のうち、前記折り返し部分の先端部を通過
    する前に受信された受信信号成分と、前記折り返し部分
    の先端部を通過したのちに受信された受信信号成分との
    間に遅延時間を付与して両成分の相関値を算定し、この
    相関値が最大の時点で付与されている遅延時間に基づき
    前記超音波信号が前記折り返し部分を上流、下流両方向
    に伝播するのに要した時間を算定する伝播時間算定手段
    を備えた ことを特徴とする超音波流量計。
  3. 【請求項3】請求項2において、前記折り返し部分の2本の管路は前記第1の箇所と第2
    の箇所との間において 異なる長さに設定されたことを特
    徴とする超音波流量計。
  4. 【請求項4】請求項1乃至3のそれぞれにおいて、 前記二つの受信信号成分の間の相関値は、各成分の設定
    周期分のゼロクロス点間の区間のサンプリング・データ
    を用いて算定されることを特徴とする超音波流量計。
  5. 【請求項5】請求項1乃至4のそれぞれにおいて、 前記二つの受信信号成分の相関を最大にする遅延時間の
    付与量は、この相関値の最大値の前後に出現する複数の
    ゼロクロス点の平均値に基づき算定されることを特徴と
    する超音波流量計。
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