JP2004244580A - フタロシアニン系近赤外色素および薄膜とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】市販の安価な試薬の混合物をある適当な条件で加熱するだけで精製が容易で、生産コストが低く、しかも一般の有機溶媒に高い溶解性を持ち製膜が容易なフタロシアニン系赤外色素を提供する。
【解決手段】次式;
【化1】
Figure 2004244580

(式中のRは、各々のベンゼン環に結合する1以上の置換基であって、同一または別異であってよく、炭化水素基および異種原子を有する置換炭化水素基から選択されたものを示す)
で表わされる陽イオンと対陰イオンとによって構成される錯体により近赤外色素とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、フタロシアン系近赤外色素およびその薄膜とその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、半導体レーザー用感光色素、プラズマディスプレー(PDP)やシリコン受光素子(SDP)用の近赤外線カットフィルター等として有用な、フタロシアニン系近赤外色素およびその薄膜とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
CCD(電荷結合素子)やフォトダイオードに使用されるSPDの感度は可視域から近赤外線まで及ぶが、その感度を人間の視感度に合わせるために700〜1000nmの近赤外線を遮断する目的で、またPDPが放つ無用の近赤外域の雑音の悪影響からSPDを用いた機器(リモコン付家電等)を保護する必要性等から近赤外吸収材の重要性が高まっている。一方で、光コピー、レーザープリンター、そして光ディスク(CD−R)等、半導体レーザーを用いる産業においては、近赤外光を積極的に利用するために、レーザー光の波長に応じた感度を持つ安定した感光色素が必要であり、これらの波長域に感度を持つ色素としてフタロシアニン系の化合物が頻繁に用いられている。そして、一般にフタロシアニンの光吸収極大波長は可視域(典型的には660〜690nm)に存在しているために上記の波長域から離れていることから、この波長の差を克服するために、従来は、フタロシアニンの結晶系を制御することにより吸収を広幅化させて対応する方法や分子骨格に特殊な置換基を導入することによる吸収極大波長を長波長シフトさせる方法、フタロシアニンのπ電子系を拡張したナフタロシアニンの誘導体を用いて近赤外に吸収を持たせる方法などが採用されている。しかしながら、これら従来の方法はいずれも多大な労力を必要とする他、薄膜化が困難であることや、高価な試薬を用いて数段階の反応経路を必要とする等の欠点を有している。また、薄膜化した場合に会合の影響による短波長シフトのために十分な吸収強度を持てない等の問題点がある。
【0003】
このような状況において、この出願の発明者らは、五価のアンチモンのフタロシアニン系錯体に注目して近赤外色素とすることを検討してきた(文献1〜3)。また、この検討の過程において特許出願も行っている(特願2002−172451号)。
【0004】
だが、上記のような課題についての解決策としては必ずしも実用的に満足できないでいた。
【0005】
【文献】
1:Y.Kagaya, H.Isago, Chem.Lett., 1994,1957−1960
2:H.Isago, Y.Kagaya, S.Nakajima, Chem.Lett., 32,112−113(2003)
3:Y.Kagaya, H.Isago, Bull.Chem.Soc.Jpn., 70,2179−2185(1997)
そこで、この出願の発明は、上記のとおりの問題点を解消し、合成、精製、そして製膜が容易で、近赤外吸収特性に優れた、新しい近赤外色素とその薄膜、並びにその製造方法を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、
次式;
【0007】
【化2】
Figure 2004244580
【0008】
(式中のRは、各々のベンゼン環に結合する1以上の置換基であって、同一または別異であってよく、炭化水素基および異種原子を有する置換炭化水素基から選択されたものを示す)
で表わされる陽イオンと対陰イオンとによって構成される錯体であるフタロシアニン系近赤外色素を提供し、また、第2には、上記炭化水素基が直鎖または分枝鎖状のアルキル基であるフタロシアニン系近赤外色素を、そして、第3には上記色素が成膜されたものであることを特徴とするフタロシアニン系近赤外色素薄膜を、そして、この出願の発明は、第4には、ベンゼン環に、同一または別異の、1以上の、炭化水素基および異種原子を有する置換炭化水素基から選択された置換基を結合するフタトニトリルと三価アンチモン塩との混合物を加熱する上記フタロシアニン系近赤外色素の製造方法を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
そこで、以下に発明の実施の形態について説明する。
【0010】
この出願の発明においては、フタロシアニン骨格上の置換基としては、比較的炭素数の少ない炭化水素を含む置換基が立体構造学的に安定性が良く、このような炭化水素としてはアルキル基等が特に好ましいが、アルキル基だけでなくアルコキシ基、アルキルチオ基等も考慮されてよい。また、炭化水素部分は直鎖炭化水素だけでなく、tert−ブチル基のような枝分かれした炭化水素も対象になることは言うまでもない。
【0011】
また、この出願の発明における対陰イオンは化合物の物性にほとんど関係がないので、それ自身が安定であり、かつアンチモン−フタロシアニンの陽イオン部分と反応さえしなければどのようなものでも使用可能である。
【0012】
この出願の発明を、ベンゼン環の1個をtert−ブチル基で置換されたフタロニトリルと三価のヨウ化アンチモンを例に説明すると、フタロニトリルの4モルと三価のヨウ化アンチモンの1モルとの混合物(モル比4:1)を6時間から8時間程度加熱することにより、テトラ−tert−ブチルフタロシアニナト)アンチモン(III)(〔Sb(tbpc)〕+;tbpc=C48H48N8 2−)の三ヨウ化物(I3 −)を単離することができる。
【0013】
この単離された緑色の粘性の高い融液をジクロロメタン、ベンゼン、ヘキサンを用いて精製する。そして、精製された化合物をスピンコート法に用いられる一般的な溶媒に容易に溶解すると、その溶液は近赤外領域に強い光吸収を示し(ジクロロメタン中で763nm:溶媒によって異なる)、高濃度では分子会合によりさらに長波長側に(860nm)にも吸収を示すものであり、その溶液から製造される溶媒キャスト膜は600−1000nmに及ぶ領域に強い光吸収を示すことも確認することができる。
【0014】
この出願の発明による化合物においては、フタロシアニンとアンチモン(III)との相互作用により吸収極大波長が近赤外まで達しているので、フタロシアニン分子骨格に導入する置換基は、化合物の溶解度さえ向上できればtert−ブチル基の様な単純なものでも差し支えない。また当該発明品の場合、分子会合の影響により、吸収帯が長波長シフトするため、薄膜化した場合に、より広範囲の近赤外域に感度を持つ特徴がある。さらに市販の安価な置換フタロニトリルとヨウ化アンチモンの混合物をある適当な条件で加熱するだけであるので合成が容易であり、収率も高く、また溶解度が高いので精製も容易であるため、生産コストを大変低く抑えることができる。また、この方法は一般の有機溶媒に高い溶解性を持つためスピンコート法や溶媒キャスト法による製膜が容易である。
【0015】
なお、三価のアンチモンのフタロシアニン錯体そのものについてはその溶液中のスペクトルが報告されている(文献4)が、この場合には単離されていないために組成は判明していない。また、結晶構造も報告されている(文献5)が、この報告では色素としての性質やスペクトルデータは何一つ明らかにされていない。
【0016】
【文献】
4:G.Knoer, Inorg.Chem., 35,7916−7917(1996)
5:R.Kubiak, J.Janczak, M.Razik, Inorg.Chim.Acta, 293, 155−159(1999)
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって発明が限定されることはない。
【0017】
【実施例】
1.49gのtert−ブチルフタロニトリルと1.00gの無水ヨウ化アンチモンの混合物を165℃で攪拌しながら7時間加熱して生じた緑色の粘性の高い融液を室温まで放冷し、200mlのジクロロメタンに溶解し、不溶物を除去した後、溶媒を除去する。得られた緑色の固体をベンゼン(約200ml)に縣濁させ、3倍の体積のヘキサンを加えて固体を析出させ、紫色の母液は捨てる。この操作を母液がほとんど無色になるまで(本実施例では3回)繰り返す。さらにジクロロメタン(約20ml)に縣濁させ、上と同様に3倍の体積のヘキサンを加えて固体を析出させ、母液がほとんど無色になるまで(本実施例では2回)繰り返す。析出した固体を集めて60℃で1時間乾燥させて、1.17gの当該発明品の粗生成物を得る。210mgの粗生成物を55mlのジクロロメタンに溶解し、不溶性の黄色固体をろ別した後、溶媒をロータリーエバポレーターを用いて除去する。得られた固体を60mlのジクロロメタンに再度溶解し、3倍の体積のヘキサンを加えて緑色の固体を析出させる(この操作を2回繰り返す)。遠心分離で固体を集めて80℃で2時間乾燥させ、155mg(原料の置換フタロニトリルに対し、収率35%)の当該発明品を得る。元素分析結果;C:46.69%、H:3.77%、N:8.74%(理論値;C:46.52%、H:3.90%、N:9.04%;C48H48N8SbI3として)。色素部分の組成が〔C48H48N8Sb〕+であることを質量分析(図1)から、対陰イオンI3 −の存在はラマンスペクトルにおける特徴的な散乱ピーク(114cm−1)によって確認した。ジクロロメタン、ベンゼン、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド等の溶媒に良く溶け、ヘキサンには全く溶けない。ジクロロメタン希薄溶液中で763nmに光吸収極大(モル吸光係数1.3×105M−1cm−1)を示し、また高濃度では会合体を生じ、859nmを新たな吸収帯を示す。この化合物をジクロロメタンに溶解して約2×10−4M程度の溶液を調整し、約50℃に加熱した石英板上に塗布することにより、溶媒キャスト膜を得た。
【0018】
図2に示すように、この膜は770nmおよび890nmにそれぞれ非会合体および会合体による光吸収帯があり、膜自体としては600−1000nmの範囲に光吸収を示すことが確認された。
【0019】
【発明の効果】
この出願の発明によって、合成、精製、製膜が容易であるため、近赤外吸収色素およびその薄膜が安価に製造でき、しかも、高性能な半導体レーザー用感光色素、プラズマディスプレー(PDP)やシリコン受光素子(SDP)用の近赤外線カットフィルター等に有用な色素とその薄膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フタロシアニン系赤外色素の質量分析結果と安定同位体分布に基づいた理論値との比較図である。
【図2】フタロシアニン系赤外色素のジクロロメタン溶液中および溶媒キャスト膜の光吸収スペクトルならびに濃度依存性を示す図である。

Claims (4)

  1. 次式;
    Figure 2004244580
    (式中のRは、各々のベンゼン環に結合する1以上の置換基であって、同一または別異であってよく、炭化水素基および異種原子を有する置換炭化水素基から選択されたものを示す)
    で表わされる陽イオンと対陰イオンとによって構成される錯体であることを特徴とするフタロシアニン系近赤外色素。
  2. 炭化水素基が直鎖または分枝鎖状のアルキル基であることを特徴とする請求項1のフタロシアニン系近赤外色素。
  3. 請求項1または2の色素が成膜されたものであることを特徴とするフタロシアニン系近赤外色素薄膜。
  4. ベンゼン環に、同一または別異の、1以上の、炭化水素基および異種原子を有する置換炭化水素基から選択された置換基を結合するフタトニトリルと三価アンチモン塩との混合物を加熱することを特徴とするフタロシアニン系近赤外色素の製造方法。
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