JP2004244385A - 防齲蝕性を有する乳幼児用の口腔内洗浄液 - Google Patents
防齲蝕性を有する乳幼児用の口腔内洗浄液 Download PDFInfo
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Abstract
【効果】本発明によれば、口腔内の液体を移動させて、自発的に吐き出すことができない乳幼児に食後あるいはおやつの後に飲用させるだけで、乳幼児の齲歯の発生を予防することができる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、口腔内のミュータント菌等の口腔内細菌を除去して齲歯の発生を防止するための乳幼児用の口腔内洗浄液に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
一般に齲歯は、ミュータント菌などの口腔内細菌が歯牙の表面に付着し、この細菌に含まれる酵素によって産生されるグルカンによってブラーク(歯垢)が形成されることから始まる。このブラーク中で口腔内細菌が砂糖、でんぷん等を代謝することにより成生される酸によって歯牙が侵食されることにより齲歯が生ずる。他方、唾液中にはカルシウムとリン酸塩が存在し、これらが侵食された歯牙の部分に析出して再石灰化することにより、齲歯を自動的に修復するという作用がある。このような歯牙表面における侵食と修復とが一定のバランスを保っていると齲歯には至らないが、ブラークが増大すると両者の均衡が崩れて齲蝕が進行する。
【0003】
したがって、ミュータント菌等の口腔内細菌の繁殖を抑制することができれば、口腔内でブラークが生成しにくくなる。
また、前述のように、一般に齲歯は、歯牙の表面に付着したブラーク(歯垢)内で口腔内細菌が、糖質、でんぷんなどを代謝することにより生成される酸によって歯牙の侵食が生ずるのであり、口腔内細菌の代謝物である糖類、でんぷんなどを口腔内から除去し、その状態を維持する時間が長くすることができれば、口腔内において口腔内細菌が代謝できなくなり、齲歯の発生を有効に防止することができる。
【0004】
ミュータント菌などの口腔内細菌の代謝物となる糖類、でんぷんなどは、食物を食した後に、口腔内における量がもっとも多くなる。
したがって、食物を食した直後に口腔内を洗浄することができれば、ミュータント菌などの口腔内細菌の活動を抑えることができ、齲歯の発生を抑制することができるのであり、食後に歯磨きをしたりあるいは食後にうがいをして口腔内を清潔に保つことを習慣にする人が多くなっている。
【0005】
このような食後の歯磨きあるいは食後のうがいは、口腔内で液体を移動させて吐き出すという行為を伴うものであり、こうした行為は、通常に人々にとってはなんら困難な行為ではない。ところが、口腔内の液体を自発的に吐き出すという動作は、人が生来有する機能に基くものではなく、後天的に取得する動作である。すなわち、生後24ヶ月くらいまでの乳幼児は、口腔内の液体を自発的に吐き出すことができない。この口腔内に液体を入れ、これを口腔内で移動させ、さらにこの液体を吐き出すという動作を連続して行う「うがい」または「ゆすぐ」という行為は、乳幼児にとってきわめて難しい行為であり、36ヶ月の時点においても50%以上の乳幼児が上手に「うがい」ができず、多くの乳幼児がうがいをできるようになるのは3才を過ぎてからとなる。また、この時期の乳幼児は「うがい」という行為を嫌がることもあり、習慣化することが難しい。一方、乳幼児の歯は、生後6ヶ月くらいから生え始め、生後30ヶ月までには通常20本程度の歯が生え揃ってしまうのであり、歯の生え始めから自発的に歯磨きができるようになるまでの間に齲歯が発生することが多いのである。
【0006】
すなわち、生後歯が生え始めてうがいができるようになるまでの間の乳幼児には、簡便な齲歯の発生を防止する方法がなく、母親などの保護者が行う歯磨きによって、かろうじて乳幼児の口腔内を清潔に保たれているというのが現状である。
ところで、特許文献1(特許第2979514号公報)には、茶葉の抽出液から分離される成分であるカテキン類が齲蝕防止剤として有効であることが開示されている。特にカラムを用いて分離されるB分画に含まれるL−エピガロカテキンガラートが齲蝕防止効果が高いことが示されており、また特許文献2(特公平6−62408号公報)にも(−)−エピガロカテキンガラートが齲蝕防止効果が高いことが示されている。そして、この特許文献1には、具体的に粗カテキンエステル型分画成分を配合した練歯磨、マウスウォッシュの組成が例示されており、特許文献2にも(−)−エピガロカテキンガラートを用いた歯磨剤、含嗽剤、トローチ剤、チューインガムなどの組成が例示されている。
【0007】
しかしながら、このような練歯磨あるいはマウスウォッシュを使用するためには、口腔内の液体を自発的に吐き出すという基本動作ができることが必要であり、口腔内の液体を上手に吐き出すことができない乳幼児に、特許文献1に記載されているような齲蝕防止方法を有効に利用することができない。
上記のような茶葉抽出物であるカテキン類には、抗菌作用、抗ウイルス作用などがあり、このようなカテキン類の有する抗菌作用あるいは抗ウイルス作用を利用して、カテキン類は食品などの保存剤として使用されている。
【0008】
例えば、特許文献3(特開平11−127826号公報)には、茶抽出物と抗菌剤として有する乳化剤を含有する乳化剤を含有してなる食品が開示されている。特許文献4(特許第3253678号公報)には、容器に収納された茶抽出物を200ppm以下の静菌効果発生量を含有させたことを特徴とする麦茶が開示されている。特許文献5(特許第3329799号公報)には、(A)非エビ体カテキン類と(B)エビ体カテキン類のカテキン類を溶解して含有し、それらの含有重量が容器付けされた飲料500ml当り、(A)+(B)=460〜2500mg、(A)=160〜2250mg、(A)/(B)=0.67〜5.67であり、pHが3.7である容器詰飲料が開示されている。また、特許文献6(特開平5−5370号公報)には、飲料中に(+)−カテキン、(+)−ガロカテキン、(+)−ガロカテキンガレート、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピカロカテキンガレートからなるポリフェノール化合物の混合物(カテキン類)を含有することを特徴とする飲料の静菌方法が開示されている。
【0009】
しかしながら、これらの特許文献に記載されている発明は、飲料を容器に充填した際に、この容器中の飲料を防菌するためにカテキン類を防腐剤として添加するものである。このように特許公報3〜6には、飲料などの食品にカテキン類を配合して、飲料などの食品の安全に賞味できる期限を長くするものである。したがって、たとえば200ppm以下のカテキン類を配合した容器入りの麦茶などが開示されているとしても、このような麦茶は、この麦茶が耐熱性の低い容器に充填され、その充填工程における作業により混入することもある細菌を有効に静菌状態にさせることができにくかったので、この細菌を静菌状態にするために200ppm以下の茶葉抽出物を配合しているのであり、このような麦茶を乳幼児の口腔内の衛生状態を清潔に維持するという効果は奏し得ないものであり、さらに、うがいのできない乳幼児にこのような麦茶を与えたとしても、茶葉抽出物の含有率が200ppm以下と低いために、口腔内細菌の減少させることはできない。
【0010】
このように従来技術において、乳幼児はうがいができないということに着目して、うがいができるようになるまで、乳幼児の歯に簡便な方法で齲歯の発生を防止する有効な方法は存在していなかったのである。
【0011】
【特許文献1】
特許第2979514号公報
【特許文献2】
特公平6−62408号公報
【特許文献3】
特開平11−127826号公報
【特許文献4】
特許第3253678号公報
【特許文献5】
特許第3329799号公報
【特許文献6】
特開平5−5370号公報
【0012】
【発明の目的】
本発明は、うがいができない乳幼児の歯牙を、ミュータント菌の口腔内細菌を減少させ、さらにミュータント菌の代謝物の供給を断つことにより、簡便に保護するための口腔内洗浄液を提供することを目的としている。
さらに、本発明は、うがいのできない乳幼児の口腔内に、ブラーク(歯垢)が形成される際に口腔内細菌の代謝物となる、糖類、でんぷんなどを効率よく除去することができる口腔内洗浄液を提供することを目的としている。
【0013】
またさらに、本発明は、口腔内に一定時間滞留することによって、口腔内の細菌の繁殖を抑制することができる乳幼児用の口腔内洗浄液を提供することを目的している。
また、本発明は、上記のようにして食物残渣を洗い出すと共に、口腔内に所定時間滞留させるだけで、口腔内細菌の代謝物の量を低減し、さらに、口腔内細菌を増加させずに、好適には減少させ、さらに、このようにして使用された口腔内洗浄液を吐き出すことなく飲み込んでしまうことができる乳幼児用の口腔内洗浄液を提供することを目的としている。
【0014】
さらに、口腔内細菌は、母子感染することが多く、母親と乳幼児とが共に使用することにより、口腔内細菌の母子感染をも防止できる乳幼児用の口腔内洗浄液を提供することを目的としている。
【0015】
【発明の概要】
本発明の防齲蝕性を有する乳幼児用の口腔内洗浄液は、食物を摂取した後に乳幼児の口腔内に一定時間滞留して、該乳幼児の口腔内に残存する食物残渣を洗い出すと共に、該口腔内の口腔内細菌を減少させて齲歯の発生を防止するための乳幼児用の口腔内洗浄液であり、該口腔内洗浄液が、(−)−エピガロカテキンガレートを100〜300ppmの範囲内の濃度で含有すると共に、アスコルビン酸を100〜400ppmの範囲内の量で含有し、カフェイン含有量が10ppm以下に調整された麦茶であることを特徴としている。
【0016】
また、本発明の防齲蝕性を有する乳幼児用の口腔内洗浄液は、上記口腔内洗浄液の25℃におけるpH値が、アスコルビン酸の量により、5.6〜6.9の範囲内に調整されていることが好ましい。
本発明の口腔内洗浄液は、使用者が生後6ヶ月〜40ヶ月までの乳幼児である。このような乳幼児は口腔内の液体を自発的に吐き出すことができない。生後30ヶ月までには、通常20本程度の歯牙が生えそろってしまうにも拘らず、この時期の乳幼児には簡便で有効な齲歯の発生を防止する有効な手段がないのである。
【0017】
本発明はこのような「うがい」ができないかあるいはうがいが上手にできない乳幼児における齲歯の発生を防止するための新たな手段として、食後あるいはおやつの後に、優れた防齲歯成分である(−)−エピガロカテキンガレートを、齲歯の発生の原因となるミュータント菌などの口腔内細菌の増殖を防止することができるような濃度で含有する麦茶を使用する。この麦茶にはさらにアスコルビン酸によってpH値が弱酸性である5.6〜6.9の範囲内に調整されており、さらに、乳幼児が摂取することを考慮してカフェイン濃度は10ppm以下に調整されている。
【0018】
乳幼児は、前述のように生後36ヶ月程度までは、口腔内の液体を移動させ、自発的にはきだすことができず、したがって、うがいなどは当然に行うことはでいない。
そこで、本発明では、食後あるいはおやつの後など、食物を摂取した後に、本発明の口腔内洗浄液を飲用させることにより、口腔内に残存する食物残渣を洗い出し、さらに優れた防齲歯成分有する(−)−エピガロカテキンガレートによって、ミュータント菌などの口腔内細菌の繁殖を防止して口腔内を防蝕性に維持するものである。このそして(−)−エピガロカテキンガレートは、カテキン類(あるいはポリフェノール)に分類される化合物であるが、他のカテキン類と比較して、この(−)−エピガロカテキンガレートは、ミュータント菌などの口腔内細菌に対して卓越した静菌効果あるいは殺菌効果がある。本発明の口腔内洗浄液は、上記のように防蝕性を有するように成分が調製された麦茶であり、乳幼児がこの口腔内洗浄液である麦茶を飲み込んだとしても全く問題がない。
【0019】
また、ミュータント菌などのような口腔内細菌は、母子感染より乳幼児が汚染されることが多いが、乳幼児だけでなく、母親も本発明の口腔内洗浄液を使用することにより、母子感染の防止に非常に有効である。
【0020】
【発明の具体的な説明】
次に本発明の口腔内洗浄液について、具体的に説明する。
本発明の口腔内洗浄液は、口腔内の液体を自発的には上手くはきだすことができない乳幼児が食物を摂取した後に、口腔内に一定時間留まって、口腔内に残存する食物の残渣を洗い出すと共に、該口腔内の口腔内細菌を減少させて齲歯の発生を防止するための乳幼児用の口腔内洗浄液である。そして、乳幼児はこの口腔内の洗浄液を吐き出すことができないから、この洗浄剤は、一定時間は口腔内に留まるが、通常の場合、その後飲み込まれてしまう。
【0021】
したがって、本発明の口腔内洗浄液は、口腔内に残留する食物残渣を洗い出すと共に、短時間で口腔内細菌を減少させることができ、さらには、これを飲み込んだとしても乳幼児に悪影響を与え得ないように形成されている。
本発明では、この口腔内洗浄液として、麦茶を用い、この麦茶に、上記のような特異的な作用効果を有するような成分を配合する。
【0022】
本発明の口腔内洗浄液は、(−)−エピカロカテキンガレートを100〜300ppmと、アスコルビン酸またはその塩とを含有する麦茶である。
本発明で使用する(−)−エピカロカテキンガレートは次式[I]で表すことができる。
【0023】
【化1】
【0024】
この(−)−エピカロカテキンガレートは、非常に優れた抗菌性を有しており、本発明の口腔内洗浄液を口に入れることにより、口腔内に生息するミュータント菌などの口腔内細菌を減少させることができる。
本発明の口腔内洗浄液には、上記の(−)−エピカロカテキンガレートが、100〜300ppmの範囲内の量で含有されていることが必要であり、さらに150〜250ppmの範囲内の量で含有されていることが好ましい。本発明の口腔内洗浄液は、乳幼児がこの口腔内洗浄液を口に入れることにより、口腔内に生息するミュータント菌などの口腔内細菌の増殖を抑制するか、あるいは口腔内細菌の少なくとも一部が死滅するような量でこの(−)−エピカロカテキンガレートが含有されていることが必要であり、このためには、本発明の口腔内洗浄液には、少なくとも100ppmの(−)−エピカロカテキンガレートが含有されていることが必要である。さらに、(−)−エピカロカテキンガレートの含有率を150ppm以上にすることにより、本発明の口腔内洗浄液の口腔内滞留時間が短時間であっても口腔内細菌に対して有効に作用する。しかしながら、この(−)−エピカロカテキンガレートの含有率が100ppmに満たない(例えば80ppm以下である)と、本発明の飲料の保存のための静菌剤としては有効であるけれども、口腔内細菌に対する殺菌性あるいは口腔内細菌に対する強い増殖抑制性は発現しない。また、(−)−エピカロカテキンガレートの含有率が300ppmを超えて配合しても、本発明の口腔内洗浄液の味覚が損なわれることがあり、飲用者が乳幼児であるために、苦さやしぶさが増すと、本発明の口腔内洗浄液を摂取することを嫌がる。
【0025】
この(−)−エピカロカテキンガレートは、融点248〜249℃の柱状結晶物であり、水に可溶な化合物である。この(−)−エピカロカテキンガレートは、単独化合物として用いることもできるし、また、この(−)−エピカロカテキンガレートを茶葉タンニン中に含有されるカテキン類として用いることもできる。この(−)−エピカロカテキンガレートを茶葉タンニン中に含有されるカテキン類として使用する場合には、このカテキン類には、(−)−エピカロカテキンガレート以外に、(+)−カテキン、(−)−カテキン、(+)−ガロカテキン、(+)−エピガロカテキン、(+)−ガロカテキンガレート、(+)−エピガロカテキンガレート、(−)−エピカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(−)−カテキンガレート、(−)−エピガロカテキン、(−)−ガロカテキン、(−)−ガロカテキンガレート、テアフラビンモノガレートA、テアフロビンバラートB、テアフラビンジガレート、遊離テアフラビンジガレートなどの他のカテキン化合物が含有されることがあるが、本発明の口腔内洗浄液中に(−)−エピカロカテキンガレート以外に、他のカテキン化合物が含有されていてもよい。本発明の口腔内洗浄液中におけるこれらの他のカテキン化合物を含んだ場合のカテキン類の含有率は通常は50〜300ppm、好ましくは100〜250ppmの範囲内にある。
【0026】
本発明の口腔内洗浄液中におけるカフェインの含有率は、10ppm以下であることが必要である。すなわち、本発明の口腔内洗浄液は、乳児が生え始めるが、うがいができないか、あるいはうがいが上手にできない乳幼児、例えば、生後6ヶ月から40ヶ月程度の乳幼児が主に使用するものであり、このような乳幼児にはカフェインをできるだけ摂取させないことが望ましい。本発明の口腔内洗浄液は、基剤が麦茶であり、麦茶中には通常はカフェインは含有されておらず、本発明の口腔内洗浄液中のカフェインは、(−)−エピカロカテキンガレートとして、茶葉抽出物を用いた場合に、(−)−エピカロカテキンガレートの添加に伴って含有されるものである。そして、本発明の口腔内洗浄液中に含有されるカフェインの量が10ppm以下であるという意味は、(−)−エピカロカテキンガレートとして茶葉抽出物を使用する場合に、茶葉抽出物中に含有されるカフェインをできる限り除去した後に使用することを意味する。麦茶のように複数の有機物質を含有する水溶性溶液中の含有されるカフェインを一般的な分析方法(例えば液体クロマトグラフィなど)で分析する際のカフェインの分析限界は10ppm程度であり、本発明の口腔内洗浄液中におけるカフェインの含有率が10ppm以下であるということは、本発明の口腔内洗浄液中に含有されるカフェイン量は、通常の分析装置における分析限界よりも少ないことを意味する。したがって、本発明の口腔内洗浄液中におけるカフェインの含有率は、10ppmよりもはるかに低いことが好ましく、さらに実質的にカフェインが含有されていないことが特に好ましい。カフェフィンの含有率をこのように少なくするためには、(−)−エピカロカテキンガレートとして茶葉抽出物を使用する場合には、積極的にカフェインを除去した茶葉抽出物を使用する。
【0027】
本発明の口腔内洗浄液には、アスコルビン酸が、通常は一部は塩を形成して含有されている。本発明の口腔内洗浄液において、アスコルビン酸は、本発明の口腔内洗浄液が弱酸性になるような量で使用される。すなわち、本発明の口腔内洗浄液のpH値が通常は5.6〜6.9の範囲内、好ましくは5.6〜6.4の範囲内になるようにアスコルビン酸が配合されており、その一部が中和されていてもよい。
【0028】
一般に人の皮膚、口腔内などは、本質的には弱酸性であり、本発明の口腔内洗浄液は、こうした人体が本質的に有しているpH値の範囲内のpH値を有しており、本発明の口腔内洗浄液は刺激性がほとんどない。そして、本発明の口腔内洗浄液のpH値を上記の範囲内にするために本発明では所定量のアスコルビン酸を配合するとともに、この口腔内洗浄液のpH値を、炭酸水素ナトリウムを用いて、溶存しているアスコルビン酸の一部を中和することにより調整することが好ましい。
【0029】
さらに、本発明の口腔内洗浄液中には、酸化されやすい(−)−エピカロカテキンガレートが含有されており、この、(−)−エピカロカテキンガレートの経時酸化を防止するためにアスコルビン酸を配合することが好ましく、本発明の口腔内洗浄液中は、100〜400ppm、好ましくは200〜300ppmのアスコルビン酸を含有し、その一部が炭酸水素ナトリウムの添加によって中和されることにより、この口腔内洗浄液のpH値が5.6〜6.9の範囲内、好ましくは5.6〜6.4の範囲内になるように中和されていることが最も望ましい。
【0030】
本発明の口腔内洗浄液の基剤は麦茶である。麦茶は、小麦、大麦などを焙煎して得られる麦焙煎物と水(好ましくは温水または熱湯)との接触により水に抽出される液体である。
本発明では、焙煎された麦100重量部に対して、500〜2000重量部の水(好ましくは温水または熱湯)に焙煎された麦を通常は5分〜1時間、好ましくは10〜30分間接触させる。このときの水の温度は80〜100℃、好ましくは80〜98℃である。
【0031】
本発明の口腔内洗浄液は、最初に焙煎された麦と温水とを接触させて、所定時間静置した後、麦を濾別して、麦茶を調製する。このとき焙煎された麦を導入する前に抽出装置に少量の炭酸水素ナトリウムを予め添加しておくことにより、抽出効率が向上する。
得られた麦茶を室温付近にまで冷却した後、(−)−エピカロカテキンガレートを添加する。ここで(−)−エピカロカテキンガレートは、予め少量の水に溶解した水溶液として麦茶に添加することが好ましい。
【0032】
次いで、ここに水に溶解したアスコルビン酸を加えて均一に攪拌し、pH値を測定しながら、炭酸水素ナトリウムの水溶液を添加して、本発明の口腔内洗浄液を調製する。なお、(−)−エピカロカテキンガレートとして茶抽出物を使用する場合には、得られる口腔内洗浄液中のカフェイン量が10ppmを超えないように茶抽出物中におけるカフェイン濃度を測定し、必要により、カフェインを除去した後使用することが好ましい。
【0033】
こうして得られた口腔内洗浄液は、生後6ヶ月くらいから40ヶ月くらいまで乳幼児に、食後、あるいはおやつの後などに与えることにより、齲歯の発生を有効に防止することができる。すなわち、乳幼児は生後6ヶ月くらいから歯が生え始め、20ヶ月までに20本程度の歯が生え揃うが、乳幼児のほとんどが口腔内のものをいどうさせ、自発的に吐き出すうがいができるようになるのはおよそ生後36ヶ月以降である。
【0034】
齲歯は、ミュータント菌などの口腔内細菌が、口腔内にある食物残渣を代謝して酸を産生し、この酸が歯牙を侵食することにより生ずる。したがって、口腔内をミュータント菌などの口腔内細菌が増殖できない環境にするか、あるいは、口腔内細菌の代謝物である食物残渣を口腔内から除去すれば、齲歯の発生を防止することができる。
【0035】
生後36ヶ月に満たない乳幼児の多くは、口に液体を含んでうがいをするという動作をすることはできないが、本発明の口腔内洗浄液は、飲用される際に口腔内細菌と通常は0.1〜10秒間程度、好ましくは1〜5秒間程度、接触することにより、口腔内細菌は少なくともその増殖が抑制される。また、食後あるいはおやつの後などに、本発明の口腔内洗浄液が乳幼児の口腔内を通過することにより、口腔内細菌の代謝物となる食物残渣を除去することができる。そして、本発明の口腔内洗浄液を使用する乳幼児は、うがいができないか、上手にはできない乳幼児であるから、本発明の口腔内洗浄液を口腔内に入れることは、この口腔内洗浄液を飲み込むのとほぼ同義である。本発明の口腔内洗浄液は、基剤が麦茶であり、この基剤に溶存されている(−)−エピカロカテキンガレートは、口腔内細菌の増殖を抑制し、さらには口腔内細菌を死滅させるには充分であるが、乳幼児の健康には全く影響を及ぼさない範囲内の量で含有されおり、本発明の口腔内洗浄液を乳幼児が飲み込んだとしても問題が生ずる可能性は全くない。むしろ、本発明の口腔内洗浄液は、自発的に口腔内液体を吐き出すことができない乳幼児を対象にしており、このような乳幼児に、食後あるいはおやつの後に、乳幼児にこの口腔内洗浄液を与えることにより、口腔内に残存する食物残渣を洗い出して飲み込ませるとともに、この口腔内洗浄液が口腔内を通過する際に接触した部分の口腔内細菌の増殖を抑制するか、その接触時間を多少長くするか、あるいは、繰り返し接触することにより口腔内細菌の少なくとも一部を死滅することも可能である。さらに、本発明で使用する(−)−エピカロカテキンガレートは、生体内、すなわち乳幼児の体内に飲み込まれた後は、生体内に対する抗酸化剤として作用し、生体内における活性酸素の生成を抑制することができる。
【0036】
また、この時期の乳幼児の口腔内細菌は、母子感染によることが多く、乳幼児が食後あるいはおやつの後に本発明の口腔内洗浄液を飲用して、乳幼児の口腔内の細菌を減少させるとともに、外部感染源である母親が本発明の口腔内洗浄液を飲用することにより、母親の口腔内細菌をも減少させることができ、母子感染による乳幼児の口腔内を、母子接触による汚染から防止することができる。
【0037】
さらに、本発明の口腔内洗浄液の基剤は麦茶であり、麦茶は、苦味、渋みなどがなく、また口当たりがやわらかく、独特のくせがないために、生後まもなくの乳幼児であっても特に違和感がなく、ほとんどの乳幼児が特段の拒絶感を抱かずに本発明の口腔内洗浄液を飲用するという、麦茶を基剤として用いた特異的な効果も認められる。なお、(−)−エピカロカテキンガレートの規定量の摂取や残量の汚染を防ぐよう、この時期の乳幼児の一回の飲用量を考慮すると、本発明の口腔内洗浄液は50〜250cc、好ましくは100〜150ccの容器に密封充填されていることが望ましい。
【0038】
このように本発明の口腔内洗浄液は、歯の生え始めから歯が生え揃う時期の乳幼児が口腔内の液体を自発的に吐き出すことができないとい実情およびこの時期に乳幼児の齲歯が発生しやすいという実情を直視し、さらに齲蝕の形成を助長させるような成分を含まず、柔らかな味覚で乳幼児にとっても口当たりのよい麦茶を基剤として用いることによって、ほとんどの乳幼児が特に抵抗なく本発明の口腔内洗浄液を食後あるいはおやつの後など、口腔内の食物残渣が残存し、口腔内細菌のとって好適な条件のときに抵抗なく飲用して、口腔内の環境を齲歯の発生を防止するのに適した状態にすることができる。
【0039】
【発明の効果】
本発明の口腔内洗浄液によれば、乳幼児における齲歯の発生を有効に防止することができる。特に本発明の口腔内洗浄液は、うがいができないか、あるいは上手にできない乳幼児が使用するものであり、この口腔内洗浄液を使用する乳幼児は、この口腔内洗浄液を飲み込んでしまい、たとえばうがいをするようにこの口腔内洗浄液が比較的長い時間口腔内にとどまることはないが、飲み込む際の比較的短時間口腔内に滞留するだけで口腔内細菌の増殖を抑制するか、接触した口腔内細菌を死滅させることができる。さらに、この口腔内洗浄液は引用することにより、口腔内に残存して口腔内細菌の代謝物となる食物残渣を洗い出すことができる。したがって、この口腔内洗浄液を食後あるいはおやつの後などに飲用することにより、口腔内を齲歯の発生しにくい環境に維持することができる。
【0040】
したがって、うがいができないか上手にできず、また歯磨きなどを母親が行わなければならず、とかく口腔内の衛生状態が齲歯防止に適した状態に保たれにくいが、新たな歯牙が次々と生え揃う乳幼児における、齲歯の発生を有効に防止することができる。
また、このような時期は、乳幼児の口腔内は母子感染により口腔内細菌が増殖しやすい時期であるが、本発明の口腔内洗浄液を乳幼児と母親とが使用することにより、乳幼児の口腔への細菌の母子感染による危険性を低減することができる。
【0041】
なお、本発明の口腔内洗浄液を乳幼児が使用する際には、乳幼児はこの口腔内洗浄液を飲み込むのが一般的であり、こうして飲み込まれたとしても本発明の口腔内洗浄液は、乳幼児に健康に全く悪影響を与えることはないが、母親が使用する際には、本発明の口腔内洗浄液を用いてうがいをした後、この洗浄剤を飲み込むことができるが、通常の口腔内洗浄液と同様に吐き出すこともできるのは勿論である。
【0042】
【実施例】
次に本発明の実施例を示して、本発明の口腔内洗浄液について説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0043】
【実施例1】
焙煎した国産二条麦60kgを用意した。
ニーダー型抽出機に予め炭酸水素ナトリウム470gを投入し、上記焙煎した二条麦を入れ、さらに94℃±1℃の熱湯1020リットルを入れて14分間抽出を行い、麦を濾別して、麦茶を製造した。
【0044】
得られた麦茶を20℃に冷却後、この麦茶100重量部に対して、0.03重量部の(−)−エピカロカテキンガレートを加えた。この(−)−エピカロカテキンガレートは、シグマ社製の緑茶抽出物試薬であり、純度は95%以上であり、(−)−エピカロカテキンガレート以外に茶葉由来のカテキン類を微量含有しているが、カフェインは実質的に含有されていない。
【0045】
さらに、この麦茶に0.25gのアスコルビン酸を加え、攪拌した後、炭酸水素ナトリウムの水溶液を加えてpH値を6.17に調整して本発明の口腔内洗浄液を調製した。
この口腔内洗浄液について、高速液体クロマトグラフィーを用いて、カフェインの含有率を測定したところ、カフェインの含有率は分析限界(10ppm)以下であり、検出することができなかった。
【0046】
上記のようにして得られた口腔内洗浄液を培地として用いて、人の口腔内から採取した口腔内細菌を培養しようと試みたが、3時間後において、口腔内細菌の菌数の有効な増加は認められなかった。
上記のようにして調製された本発明の口腔内洗浄液を、生後6ヶ月目から乳幼児に、食後およびおやつの後与え続けているが、24ヶ月経過しても齲歯の発生は認められていない。
Claims (2)
- 食物を摂取した後に乳幼児の口腔内に一定時間滞留して、該乳幼児の口腔内に残存する食物残渣を洗い出すと共に、該口腔内の口腔内細菌を減少させて齲歯の発生を防止するための乳幼児用の口腔内洗浄液であり、該口腔内洗浄液が、(−)−エピガロカテキンガレートを100〜300ppmの範囲内の濃度で含有すると共に、アスコルビン酸を100〜300ppmの範囲内の量で含有し、カフェイン含有量が10ppm以下に調整された麦茶であることを特徴とする防齲蝕性を有する乳幼児用の口腔内洗浄液。
- 上記口腔内洗浄液の25℃におけるpH値が、アスコルビン酸あるいはその塩の量により、5.6〜6.9の範囲内に調整されていることを特徴とする請求項第1項記載の防齲蝕性を有する乳幼児用の口腔内洗浄液。
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