JP2004244346A - 水処理用殺菌剤、水処理方法および水処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】海水淡水化などの膜分離装置において、殺菌効果が高く、かつ、腐食抑制効果および保存安定化効果の高い水処理用殺菌剤を提供する。
【解決手段】酸と腐食抑制剤を含有する水処理用殺菌剤であって、ここにポリビニルピロリドン、ポリアルコール、ポリアミドおよびポリイミドから選ばれ、かつ、溶解度パラメーターの値が26〜47(MPa)1/2の範囲にある高分子化合物を添加することにより保存安定性を高めた水処理用殺菌剤。
【選択図】なし
【解決手段】酸と腐食抑制剤を含有する水処理用殺菌剤であって、ここにポリビニルピロリドン、ポリアルコール、ポリアミドおよびポリイミドから選ばれ、かつ、溶解度パラメーターの値が26〜47(MPa)1/2の範囲にある高分子化合物を添加することにより保存安定性を高めた水処理用殺菌剤。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、膜分離装置を有する水処理装置の殺菌剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
膜による分離技術は、海水およびかん水の淡水化、医療、工業用純水、超純水の製造、工業廃水処理、食品工業など幅広い分野に利用されている。これら膜分離において、微生物による分離装置の汚染は、得られる透過水の水質悪化や、膜の透過性、分離性能の低下をもたらす。このような重大な問題を回避するため、膜分離装置の殺菌法が種々提案されているが、一般的には殺菌剤を常時、あるいは間欠的に供給液に添加する方法がとられている。殺菌剤としては、実績があり、価格、操作面でも有利な塩素系殺菌剤を0.1〜50ppm程度の濃度になるよう添加するのが最も一般的である。また、安価な硫酸を添加して、膜分離装置の供給液のpHを4以下に下げることにより効果的に殺菌を行う方法も開発されている(特許文献1参照)。しかし、膜分離装置の配管には通常ステンレスなどの耐海水性金属が使われているが、硫酸の添加により酸性条件が厳しくなると、配管の腐食が起こりやすくなる。そのため、殺菌効果をさらに上げるために殺菌の頻度を多くしたり、pHを下げることができないという問題点があった。
【0003】
そこで、腐食抑制剤を添加することが考えられる。特許文献2には酸の添加の際に同時に腐食抑制剤を添加し、配管腐食を抑制する方法および酸の水溶液に腐食抑制剤を加えた殺菌剤について開示されている。さらに、保存安定化剤として炭素数8個以下のカルボン酸を加えている。該技術の殺菌剤は、酸性条件での殺菌の際に腐食抑制剤が配管へのダメージを減らし、効果的な殺菌を行うことができる。
【0004】
しかし、この技術を用いても、カルボン酸とキレートを形成しやすい金属イオンなどを含有している溶液系では、十分な腐食抑制効果や保存安定化効果が得られなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2000−237555号公報
【0006】
【特許文献2】国際公開第02/080671号パンフレット
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、殺菌効果が高く、かつ、腐食抑制効果および保存安定化効果の高い水処理用殺菌剤を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、酸、腐食抑制剤、および、ポリビニルピロリドン、ポリアルコール、ポリアミドおよびポリイミドから選ばれ、かつ、溶解度パラメーターの値が26〜47(MPa)1/2の範囲にある高分子化合物を含む水処理用殺菌剤によって達成される。
【0009】
また、本発明の目的は、分離膜を用いる水処理工程において、膜分離工程以前のいずれかの工程において、被処理液に、上記の殺菌剤を添加する水処理方法によって達成される。
【0010】
また、本発明の目的は、膜分離装置を有する水処理装置であって、該膜分離装置へ供給される被処理液に、酸、腐食抑制剤および、ポリビニルピロリドン、ポリアルコール、ポリアミドおよびポリイミドから選ばれ、かつ、溶解度パラメーターの値が26〜47(MPa)1/2の範囲にある高分子化合物を含む水溶液を添加する手段を有する水処理装置によって達成される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において、水処理とは、海水あるいはかん水の脱塩、分離または淡水化、工業用純水あるいは超純水の製造、工業廃水処理、食品工業における分離または濃縮、廃水からの有価物回収などを行なうプロセスをいう。
【0012】
また本発明において、膜分離装置とは造水、濃縮、分離などの目的で、処理液を加圧下で膜モジュールに供給し、透過液と濃縮液に分離する装置をいう。膜モジュールとしては逆浸透膜モジュール、限外濾過膜モジュール、精密濾過膜モジュールなどがあり、膜分離装置はそこで主に使用する膜モジュールの種類によって逆浸透膜装置、限外濾過膜装置、精密濾過膜装置に分けられる。
【0013】
本発明で好ましく用いられる逆浸透膜装置を例に挙げて説明する。逆浸透膜装置は通常は逆浸透膜エレメント、耐圧容器、加圧ポンプなどで構成される。該逆浸透膜装置に供給される被処理液は、通常、殺菌剤、凝集剤、還元剤、pH調整剤などの薬液を添加され、凝集、沈殿、砂濾過、ポリッシング濾過、活性炭濾過、精密濾過、限外濾過、保安フィルターなどの前処理が行われた後、装置に供給される。例えば、海水の脱塩の場合には、海水を取り込んだ後、沈殿池で粒子などを分離し、また沈殿池に塩素などの殺菌剤を添加して殺菌を行う。さらに塩化鉄、ポリ塩化アルミニウムなどの凝集剤を添加して砂濾過を行う。濾液は貯槽に貯められ、硫酸などでpHを調整した後、送液される。送液中に亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤を添加して殺菌剤を還元除去し、保安フィルターを透過させた後、透過液は高圧ポンプで昇圧されて逆浸透膜モジュールに供給される。ただし、これらの前処理は用いる供給液の種類、用途に応じて適宜採用される。
【0014】
ここで逆浸透膜とは、供給液中の一部の成分、例えば溶媒を透過させ、他の成分を透過させない半透性の膜である。ナノフィルトレーション膜またはルースRO膜なども広い意味では逆浸透膜に含まれる。その素材には酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材が一般的に使用されている。また、その構造としては、膜の少なくとも片側に緻密層を持ち、該緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜や、該非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い活性層を有する複合膜などがある。膜形態には中空糸、平膜がある。通常、中空糸および平膜の膜厚は10μm〜1mm、中空糸の外径は50μm〜4mmが好ましい。また平膜である非対称膜、複合膜は織物、編み物、不織布などの基材で支持されていることが好ましい。しかし、本発明の方法は、逆浸透膜の素材、膜構造や膜形態によらず利用することができ、いずれも効果がある。
【0015】
代表的な逆浸透膜としては、例えば酢酸セルロース系やポリアミド系の非対称膜およびポリアミド系、ポリ尿素系の活性層を有する複合膜などがあげられる。これらの中でも、酢酸セルロース系の非対称膜、ポリアミド系の複合膜に本発明の方法が有効であり、さらに芳香族系のポリアミド複合膜では効果が大きい。
【0016】
逆浸透膜モジュールとは、上記逆浸透膜を実際に使用するために形状化したものである。逆浸透膜の形態が平膜の場合は、スパイラル、チューブラーあるいはプレート・アンド・フレームのモジュールに組み込んで、また中空糸の場合は束ねた上でモジュールに組み込んで使用することができる。本発明はこれらの逆浸透膜モジュールの構成形態によらず適用することができる。
【0017】
逆浸透膜装置の運転圧力は0.1MPa〜15MPaの範囲であり、被処理液の種類、運転方法などで適宜使い分けられる。かん水や超純水など浸透圧の低い溶液を被処理液とする場合には比較的低圧で、海水や工業廃水などを被処理液とする場合には比較的高圧で使用される。
【0018】
逆浸透膜装置の運転温度は0℃から100℃の範囲が好ましい。0℃よりも低いと被処理液が凍結する恐れがあり、100℃よりも高い場合には被処理液の蒸発が起こる恐れがある。
【0019】
また、分離装置の回収率は、5から100%まで分離操作、装置に応じて設定することができる。逆浸透膜装置の回収率は5〜98%の間で適宜選択することができる。ただし、被処理液や濃縮液の性状、濃度、浸透圧に応じて前処理、運転圧力を考慮し、回収率を決定しなければならない。例えば海水淡水化の場合には、通常10〜40%の回収率が設定され、高効率の装置の場合には40〜70%の回収率が設定される。かん水淡水化や超純水製造の場合には通常70%以上、必要に応じ90〜95%の高回収率で運転することもできる。ここで回収率とは、逆浸透膜を透過した液量を被処理液量で割り、100倍した値を言う。
【0020】
逆浸透膜装置の構成はおもに高圧ポンプと逆浸透膜モジュールからなる。高圧ポンプは装置の運転圧力に応じて最適のポンプを選択することができる。
【0021】
また、逆浸透膜モジュールの配列は1段で使用することもできるが、被処理液に対して直列、または並列に多段に配列することができる。直列に配列する場合は逆浸透膜モジュールの間に昇圧ポンプを設置することができる。海水淡水化の際は装置コストの観点から特に直列2段の配列が好ましく用いられる。その際、直列に配列したモジュールの間に昇圧ポンプを設置して被処理液を1.0〜5.0MPaに昇圧して後段のモジュールに供給することが好ましい。被処理液に対して逆浸透膜モジュールを直列に配列した場合には膜モジュールと被処理液が接触する時間が長いので本発明の効果が大きい。
【0022】
さらに、逆浸透膜モジュールは、透過液に対して直列に配列することもできる。透過液の質が不十分な場合や透過水中の溶質成分を回収したい場合に好ましい方法である。ここで、透過液に対して逆浸透膜モジュールを直列に配置する場合には、逆浸透膜モジュール間にポンプを設置し、透過液を再加圧するか、前段で十分な圧力をかけておき背圧をかけて膜分離することができる。また、透過液に対して逆浸透膜モジュールを直列に配置する場合は、後ろの逆浸透膜モジュール部分の殺菌を行うために酸の添加装置を逆浸透膜モジュール間に設けるのが好ましい。
【0023】
逆浸透膜の装置において、被処理液のうち膜を透過しなかった部分は濃縮液として逆浸透膜モジュールから取り出される。この濃縮液は利用したり、廃棄することができ、さらに他の方法で濃縮することもできる。また、濃縮液はその一部または全てを被処理液に循環することもできる。膜を透過した透過液は、利用したり、廃棄することができ、被処理液にその一部または全てを循環することもできる。
【0024】
一般に逆浸透膜装置の濃縮液は圧力エネルギーを有しており、運転コストの低減化のためには、このエネルギーを回収することが好ましい。エネルギー回収の方法としては、任意の部分の高圧ポンプに取り付けたエネルギー回収装置で回収することができるが、高圧ポンプの前後や、モジュール間に取り付けた専用のタービンタイプのエネルギー回収ポンプで回収することが好ましい。
【0025】
本発明が使用される膜分離装置の処理能力は、一日あたりの処理水量が0.5m3〜100万m3であることが好ましい。
【0026】
また、本発明が使用される膜分離装置において、装置内の配管はできるだけ滞留部の少ない構造とすることが好ましい。
【0027】
本発明の水処理用殺菌剤を使用した水処理方法では、無機酸および腐食抑制剤を含む水溶液を水処理装置の供給液に添加する。無機酸の添加は、殺菌効果を提供する上で極めて重要であり、特に海水を供給液として使用する膜濾過においてこの効果は顕著である。微生物の死滅するpHは個々の微生物に特有であり、例えば大腸菌の場合生育の下限はpH4.6であるが、死滅はpH3.4以下でおこる。一方海水中にも多種多様の微生物が存在し、それぞれ死滅するpHが異なる。しかし、通常、被処理液をpH4以下に一定時間保持すれば、微生物の50〜100%を死滅させることが可能である。無機酸および腐食抑制剤を添加された被処理液のpHは3.9以下が好ましく、3.7以下がさらに好ましく、3.4以下が特に好ましい。pHの下限は特に限定されないが、装置の腐食予防の観点から、1.5以上が好ましく、特に2.0以上が好ましい。
【0028】
本発明で使用する無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等のいずれを用いても良いが、経済的な面を考えると、硫酸を用いることが好ましい。
【0029】
本発明で使用する腐食抑制剤は、水処理装置の腐食を予防し、殺菌効果を上げるために重要である。本発明に使用する腐食抑制剤としては、分子中にカルボン酸基を少なくとも6個有するポリカルボン酸、エチレンジアミン四酢酸、亜硝酸およびそれらのアルカリ金属塩から選ばれた化合物が好ましく用いられる。ここで、ポリカルボン酸としては、下記一般式(1)
【0030】
【化1】
【0031】
(式中、nは3以上の整数、X、Yは水素またはアルカリ金属)で表されるポリエポキシこはく酸、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸またはその共重合体などから選ばれる1種の化合物が好ましく用いられる。
【0032】
腐食抑制剤としては、ポリエポキシこはく酸、エチレンジアミン四酢酸、ポリアクリル酸およびそれらのアルカリ金属塩から選ばれた化合物が特に好ましい。これらは、分子中に酸素、窒素などの電気陰性度の大きい原子を持つので、金属表面への吸着性に優れており好ましい。
【0033】
中でもポリアクリル酸は、食品安全性が高く、かつ、腐食抑制効果が高いのでもっとも好ましい。ポリアクリル酸は、水処理が飲料水の製造を目的とする場合に、特に好ましい。
【0034】
ポリアクリル酸の重量平均分子量は、水処理条件、例えばpHや温度などによって最適な範囲が変化するので、条件にあった重量平均分子量を有するポリアクリル酸を選択する必要がある。ポリアクリル酸の重量平均分子量は、500〜10,000の範囲が好ましく、より好ましくは1,000〜8,000の範囲である。重量平均分子量が500未満であると、十分な腐食抑制効果が得られにくく、10,000を超えると殺菌剤の保存安定性が悪くなりやすい。
【0035】
ポリエポキシこはく酸またはそのアルカリ金属塩は、例えば次のような方法で合成される。すなわち、マレイン酸塩を、タングステン酸ナトリウムを触媒として過酸化水素にてエポキシ化し、エポキシこはく酸塩とする。次にエポキシこはく酸塩を、アルカリ水溶液中で水酸化カルシウムを触媒として開環重合すると、ポリエポキシこはく酸塩が得られる。また、マレイン酸共重合体としては、マレイン酸とオレフィンの共重合体、マレイン酸とメチルビニルエーテルの共重合体などが好ましく用いられる。
【0036】
水処理装置に供給する被処理液に、酸および腐食抑制剤を添加する際には、別々に添加しても良いし、あらかじめ両者を混合した殺菌剤を作製して添加しても良い。あらかじめ水処理用殺菌剤を作製すると、殺菌処理を効率的に行うことができ好ましい。
【0037】
本発明の殺菌剤中の酸および腐食抑制剤の濃度はそれぞれ、50ppm(重量)〜50重量%が好ましい。酸および腐食抑制剤のいずれかあるいは両方の濃度が50重量%を越えると、殺菌剤の保存安定性が悪くなりやすい。また、酸および腐食抑制剤のいずれかあるいは両方の濃度が50ppmより低い場合、水処理用殺菌剤の添加量を増やすことが必要で、殺菌効率が悪くなりやすい。
【0038】
本発明の水処理用殺菌剤は様々な水処理工程で使用することができるが、微生物の影響が大きい分離膜を用いる水処理工程で使用されるのが好ましい。
【0039】
さらに、分離膜としては逆浸透膜、限外濾過膜、精密濾過膜等があるが、殺菌剤として一般的に使用されている塩素等の酸化剤を使用することができない逆浸透膜を用いる水処理工程で本発明の水処理用殺菌剤を使用するのが好ましい。
【0040】
水処理装置に供給する被処理液に、酸および腐食抑制剤を添加する方法としては、別々に添加しても良いし、あらかじめ両者を混合した水処理用殺菌剤を作製して添加しても良い。あらかじめ水処理用殺菌剤を作製すると、殺菌処理を効率的に行うことができ好ましい。
【0041】
水処理用殺菌剤は、被処理液中で、10ppm(重量)〜10重量%の範囲で添加されていることが好ましい。殺菌剤の添加量を10ppmより低くする場合は、高い殺菌効果を得るために、殺菌剤中の酸および腐食抑制剤の濃度を高くする必要があり、水処理用殺菌剤の保存安定性が悪くなる可能性がある。また、水処理用殺菌剤の添加量を10重量%より多くする場合は、水処理用殺菌剤の添加装置に大きな負荷がかかり、エネルギー消費量が大きくなるため、経済的に不利になることがある。
【0042】
水処理用殺菌剤の添加は、間欠的に実施することが好ましい。1回あたりの添加時間は、0.5〜2.5時間の範囲が好ましく、添加頻度は、1日〜1ヶ月に1回の頻度が好ましい。添加時間と添加頻度は、膜の透過水量の変動、濃縮液の生菌数や含有有機炭素の変動、差圧の上昇などを監視しながら、適宜変動させるのが好ましい。膜の除菌については、水処理装置の休止時に、膜を酸および腐食抑制剤を含む水溶液に浸漬することで実施することも可能であるが、膜分離を行いながら被処理液に水処理用殺菌剤を添加する方法が効率的であり好ましい。
【0043】
本発明の水処理方法において、酸と腐食抑制剤を別々に被処理液に添加することもできる。被処理液への酸の添加量は、殺菌効果の点から、10ppm(重量)以上が好ましく、経済性や配管等の設備の腐食を予防する点から、1重量%以下が好ましい。
【0044】
本発明の水処理用殺菌剤に使用する水は、純水が好ましい。使用する水に不純物が含まれると、酸あるいは腐食抑制剤と反応して析出物が生じるなど、保存安定性が悪くなる場合がある。
【0045】
酸と腐食抑制剤の混合物は保存安定性が悪い場合もあるので、水処理用殺菌剤にさらに保存安定化剤を添加することが好ましい。本発明においては、保存安定化剤として、ポリビニルピロリドン、ポリアルコール、ポリアミドおよびポリイミドから選ばれ、かつ、溶解度パラメーターの値が26〜47(MPa)1/2の範囲にある高分子化合物が好ましく用いられる。溶解度パラメーターの値は、より好ましくは26〜41(MPa)1/2の範囲である。
【0046】
このような保存安定化剤を添加することにより、酸と腐食抑制剤を混合して長時間保存しても、安定に保存することができる。また、このような化合物は、水処理装置の分離膜へのダメージを減らし、殺菌効果も低減させない。ここで、ポリアルコールとは、分子中に複数の水酸基を有するポリマーであり、ポリビニルアルコール、酢酸セルロースなどが挙げられる。これらの高分子化合物は1種類だけ使用しても良いし、2種類以上添加しても良い。これらの中でもポリビニルピロリドンまたはポリビニルアルコールが最も好ましい。
【0047】
溶解度パラメーターが13未満であると、水への溶解性が悪く均一な殺菌剤として使用することができない。一方、溶解度パラメーターが23より大きいと十分な保存安定効果が得られにくくなる。
【0048】
ここで、溶解度パラメーターとは、各高分子化合物のモル蒸発熱をΔH(J/mol)、モル体積をV(m3/mol)とするとき、δ=(ΔH/V)1/2(MPa)1/2で定義される量をいう。溶解度パラメーターδはモル蒸発熱ΔHおよびモル体積Vを実測により測定し計算から求めるか、あるいは分子内の各成分の溶解度パラメーターの値から文献の方法(松浦剛著「合成膜の基礎」、1985、25−35p)に従って計算することができる。
【0049】
また、使用する高分子化合物の重量平均分子量は、100〜200,000の範囲が好ましく、より好ましくは500〜50,000の範囲である。重量平均分子量が100未満であると、十分な保存安定効果が得られにくく、200,000を超えると膜への影響が大きくなる。
【0050】
また、前記の保存安定化剤は、海水などを処理する水処理プラントにおいて、腐食抑制効果を高めるのにも有効である。一般に海水中には、マグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛等の多価金属イオンが多く含まれており、これらの金属イオンはカルボン酸等のアニオン性基を有する有機化合物とキレートを形成することが知られている。カルボン酸を多く有する腐食抑制剤は、キレートを形成すると、配管等の金属表面への吸着が抑制され、十分な腐食抑制効果が得られないことがある。この場合に、殺菌剤中へ前記の保存安定化剤を添加することにより、殺菌剤溶液の保存安定性を高めるのと同時に、腐食抑制剤と保存安定化剤の相互作用により、海水中の多価金属イオンと腐食抑制剤のキレート形成を抑制し、腐食抑制効果を上げることができる。
【0051】
殺菌剤中の保存安定化剤の濃度は、殺菌剤中の酸および腐食抑制剤の濃度によって最適範囲が変化するが、50ppm(重量)〜50重量%が好ましい。
【0052】
本発明において、酸および腐食抑制剤は、供給液が膜分離装置に供給される前の工程であれば、どこに添加しても良い。膜分離装置の殺菌のためには、膜分離装置の直前において、添加することが好ましい。水処理を行いながら、殺菌処理を実施することが好ましいが、休止時に殺菌処理を行っても良い。
【0053】
本発明の膜分離装置を有する水処理装置は、例えば以下に示す構成のシステムである。
A.取水装置。これは原水を取り込む装置であって、通常取水ポンプ、薬品注入設備などで構成される。
B.取水装置に連通した前処理装置。これは分離膜装置に供給する水を前処理して所望の程度まで精製するものである。例えば以下の順に構成することができる。
B−1 凝集濾過装置。
B−2 ポリッシング濾過装置。ただし前記B−1、B−2の替わりに限外濾過装置や精密濾過装置を用いても良い。
B−3 凝集剤、殺菌剤、pH調整剤などの薬品注入設備。
C.前処理装置に連通し必要に応じて設置される中間槽。これは水量調節、水質の緩衝作用の機能を提供するものである。
D.Cを設置する場合には中間槽に連通し、またはCを設置しない場合には前処理装置から連通したフィルター。これは膜分離装置に供給される水の固形不純物を除去する。
E.膜分離装置。高圧ポンプおよび分離膜モジュールからなる。膜分離装置は複数設置して、これらを並列に設置しても、直列に設置してもよい。直列に設定する場合には、後段の分離膜装置に供給する水圧を上げるためのポンプを膜分離装置間に設けることができる。
F.膜分離装置の膜透過側出口部分に連通した後処理装置。以下の装置が例示される。
F−1 脱気装置。これは脱炭酸の機能を有するものである。
F−2 カルシウム塔
F−3 塩素注入
G.膜分離装置の原水側出口部分に連通した後処理装置。以下の装置が例示される。
G−1 pHを4とした供給液を処理する装置。例えば中和装置。
G−2 放流設備。
H.その他、廃水の処理装置を適宜設けても良い。
【0054】
本発明の水処理装置は、任意の場所にポンプを設けることができる。また、酸および腐食抑制剤またはそれらの水溶液を添加する手段は、Aの取水装置、Bの前処理装置もしくは前処理装置の前、およびDのフィルターの前もしくはフィルターの後の、いずれか1箇所以上に設けることが好ましい。特に、膜分離装置の前、すなわち、Dのフィルターの前もしくはフィルターの後が好ましい。
【0055】
本発明の水処理用殺菌剤を使用する水処理装置の構成部材、例えば配管、バルブなどはpH4以下の条件で腐食しにくいものを使用することが好ましい。供給する被処理液のpHを4以下とすることによって、高い殺菌効果が得られると同時に、配管内のスケールを除去できるという効果も得ることができる。塩素などの酸化物による膜劣化を防止するために亜硫酸水素ナトリウムを添加する場合があるが、本発明の水処理用殺菌剤を用いることによって、その添加量を著しく低減できることがある。
【0056】
本発明の水処理用殺菌剤を用いた水処理方法および装置は、膜分離装置を用いる水処理に好適に使用できる。特に海水の淡水化や、かん水の淡水化、工業用水の製造、超純水、純水の製造、医薬用純水の製造、水道原水の除濁、水道における高度処理等の水の精製工程などで好適に使用できる。また、食品の濃縮等において、従来の酸化性殺菌剤で分解しやすい有機物等を分離または濃縮する場合にも、殺菌による分解無しで有機物を濃縮または回収することができ、本発明の効果は大きい。また、飲料水製造の場合には塩素殺菌によるトリハロメタン発生を防止できる効果がある。さらに本発明の水処理用殺菌剤を使用した食品安全性の高い化合物のみの使用により殺菌を行うことができるので、飲料水製造に特に適している。
【0057】
【実施例】
実施例において、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<腐食抑制効果の評価方法>
表面を320番のヤスリで研磨処理したSUS304製のステンレス試験片(20mm×30mm×1mm)を超音波洗浄器を用いて60分間純水で洗浄後、アセトンで60分間洗浄し、風乾する。その後、50℃の20%硝酸水にステンレス試験片をいれ、1時間不動態化処理を行ってから試験片を取り出し、アセトンで洗浄し風乾する。本発明の水処理用殺菌剤を海水(電導度100mS/cm)で100倍に希釈(殺菌剤濃度1wt%)して、全体が100mLの試験液(pH1.4)とし、100mLポリ容器に入れ、前記ステンレス試験片を1個ずつ浸漬する。該ポリ容器を80℃の恒温室内に静置し、浸漬開始から6日目に試験片を取り出す。取り出した試験片は純水で5秒間洗浄後、アセトンで5秒間洗浄し、風乾後、シリカゲル乾燥雰囲気中、0.01mgまで秤量可能な電子天秤を用いて重量測定を行う。腐食による 試験片の重量減少を、以下のように計算する。
重量減少(g/m2)=(浸漬前の試験片重量−浸漬後の試験片重量)/試験片表面積
<殺菌効果の評価方法>
塩濃度6.9重量%の海水を30℃で一晩静置し、生菌数を安定させた後、滅菌水で塩濃度3.5重量%に希釈する(これをA液と呼ぶ)。A液に、本発明の水処理用殺菌剤を0.1重量%加え(pH3.1)、30℃で30分間置く(これをB液と呼ぶ)。A液、B液の生菌数測定を行う。生菌数測定は1/2ORI培地(海洋性細菌測定用培地)を用い30℃で6日間培養した後、出現したコロニー数を数え、下式で計算する。
生菌数残存率(%)=(B液の生菌数)/(A液の生菌数) ×100
<保存安定化効果の評価方法>
本発明の水処理用殺菌剤を、調整後25℃の恒温室に静置し、19日目に溶液状態を確認した。
【0058】
実施例1〜3、比較例1〜3
純水(電導度10μS/cm)に硫酸20wt%、表1に示す腐食抑制剤0.1wt%を加えて水処理用殺菌剤を調整した。実施例1、2については、表1に示す保存安定化剤を0.5wt%添加した。結果を表1に示す。(表中、ポリアクリル酸をPA、ポリビニルアルコールをPVA、ポリビニルピロリドンをPVP、クエン酸NaをCA、リンゴ酸をMAと略記する。)
【0059】
【表1】
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、膜分離装置を用いる水処理工程において、装置配管の腐食を抑えつつ、効果的に殺菌をすることができる。そのため、殺菌の頻度を多くしたり、pHをさらに下げることが可能となり、殺菌効果を増大させることができる。
【0061】
また、本発明の水処理用殺菌剤には保存安定化剤を添加することにより、殺菌効果および腐食抑制効果を保ったまま、高い保存安定性を実現できる。
【0062】
本発明は、海水淡水化、かん水淡水化などの工程に特に好適に用いることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、膜分離装置を有する水処理装置の殺菌剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
膜による分離技術は、海水およびかん水の淡水化、医療、工業用純水、超純水の製造、工業廃水処理、食品工業など幅広い分野に利用されている。これら膜分離において、微生物による分離装置の汚染は、得られる透過水の水質悪化や、膜の透過性、分離性能の低下をもたらす。このような重大な問題を回避するため、膜分離装置の殺菌法が種々提案されているが、一般的には殺菌剤を常時、あるいは間欠的に供給液に添加する方法がとられている。殺菌剤としては、実績があり、価格、操作面でも有利な塩素系殺菌剤を0.1〜50ppm程度の濃度になるよう添加するのが最も一般的である。また、安価な硫酸を添加して、膜分離装置の供給液のpHを4以下に下げることにより効果的に殺菌を行う方法も開発されている(特許文献1参照)。しかし、膜分離装置の配管には通常ステンレスなどの耐海水性金属が使われているが、硫酸の添加により酸性条件が厳しくなると、配管の腐食が起こりやすくなる。そのため、殺菌効果をさらに上げるために殺菌の頻度を多くしたり、pHを下げることができないという問題点があった。
【0003】
そこで、腐食抑制剤を添加することが考えられる。特許文献2には酸の添加の際に同時に腐食抑制剤を添加し、配管腐食を抑制する方法および酸の水溶液に腐食抑制剤を加えた殺菌剤について開示されている。さらに、保存安定化剤として炭素数8個以下のカルボン酸を加えている。該技術の殺菌剤は、酸性条件での殺菌の際に腐食抑制剤が配管へのダメージを減らし、効果的な殺菌を行うことができる。
【0004】
しかし、この技術を用いても、カルボン酸とキレートを形成しやすい金属イオンなどを含有している溶液系では、十分な腐食抑制効果や保存安定化効果が得られなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2000−237555号公報
【0006】
【特許文献2】国際公開第02/080671号パンフレット
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、殺菌効果が高く、かつ、腐食抑制効果および保存安定化効果の高い水処理用殺菌剤を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、酸、腐食抑制剤、および、ポリビニルピロリドン、ポリアルコール、ポリアミドおよびポリイミドから選ばれ、かつ、溶解度パラメーターの値が26〜47(MPa)1/2の範囲にある高分子化合物を含む水処理用殺菌剤によって達成される。
【0009】
また、本発明の目的は、分離膜を用いる水処理工程において、膜分離工程以前のいずれかの工程において、被処理液に、上記の殺菌剤を添加する水処理方法によって達成される。
【0010】
また、本発明の目的は、膜分離装置を有する水処理装置であって、該膜分離装置へ供給される被処理液に、酸、腐食抑制剤および、ポリビニルピロリドン、ポリアルコール、ポリアミドおよびポリイミドから選ばれ、かつ、溶解度パラメーターの値が26〜47(MPa)1/2の範囲にある高分子化合物を含む水溶液を添加する手段を有する水処理装置によって達成される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において、水処理とは、海水あるいはかん水の脱塩、分離または淡水化、工業用純水あるいは超純水の製造、工業廃水処理、食品工業における分離または濃縮、廃水からの有価物回収などを行なうプロセスをいう。
【0012】
また本発明において、膜分離装置とは造水、濃縮、分離などの目的で、処理液を加圧下で膜モジュールに供給し、透過液と濃縮液に分離する装置をいう。膜モジュールとしては逆浸透膜モジュール、限外濾過膜モジュール、精密濾過膜モジュールなどがあり、膜分離装置はそこで主に使用する膜モジュールの種類によって逆浸透膜装置、限外濾過膜装置、精密濾過膜装置に分けられる。
【0013】
本発明で好ましく用いられる逆浸透膜装置を例に挙げて説明する。逆浸透膜装置は通常は逆浸透膜エレメント、耐圧容器、加圧ポンプなどで構成される。該逆浸透膜装置に供給される被処理液は、通常、殺菌剤、凝集剤、還元剤、pH調整剤などの薬液を添加され、凝集、沈殿、砂濾過、ポリッシング濾過、活性炭濾過、精密濾過、限外濾過、保安フィルターなどの前処理が行われた後、装置に供給される。例えば、海水の脱塩の場合には、海水を取り込んだ後、沈殿池で粒子などを分離し、また沈殿池に塩素などの殺菌剤を添加して殺菌を行う。さらに塩化鉄、ポリ塩化アルミニウムなどの凝集剤を添加して砂濾過を行う。濾液は貯槽に貯められ、硫酸などでpHを調整した後、送液される。送液中に亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤を添加して殺菌剤を還元除去し、保安フィルターを透過させた後、透過液は高圧ポンプで昇圧されて逆浸透膜モジュールに供給される。ただし、これらの前処理は用いる供給液の種類、用途に応じて適宜採用される。
【0014】
ここで逆浸透膜とは、供給液中の一部の成分、例えば溶媒を透過させ、他の成分を透過させない半透性の膜である。ナノフィルトレーション膜またはルースRO膜なども広い意味では逆浸透膜に含まれる。その素材には酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材が一般的に使用されている。また、その構造としては、膜の少なくとも片側に緻密層を持ち、該緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜や、該非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い活性層を有する複合膜などがある。膜形態には中空糸、平膜がある。通常、中空糸および平膜の膜厚は10μm〜1mm、中空糸の外径は50μm〜4mmが好ましい。また平膜である非対称膜、複合膜は織物、編み物、不織布などの基材で支持されていることが好ましい。しかし、本発明の方法は、逆浸透膜の素材、膜構造や膜形態によらず利用することができ、いずれも効果がある。
【0015】
代表的な逆浸透膜としては、例えば酢酸セルロース系やポリアミド系の非対称膜およびポリアミド系、ポリ尿素系の活性層を有する複合膜などがあげられる。これらの中でも、酢酸セルロース系の非対称膜、ポリアミド系の複合膜に本発明の方法が有効であり、さらに芳香族系のポリアミド複合膜では効果が大きい。
【0016】
逆浸透膜モジュールとは、上記逆浸透膜を実際に使用するために形状化したものである。逆浸透膜の形態が平膜の場合は、スパイラル、チューブラーあるいはプレート・アンド・フレームのモジュールに組み込んで、また中空糸の場合は束ねた上でモジュールに組み込んで使用することができる。本発明はこれらの逆浸透膜モジュールの構成形態によらず適用することができる。
【0017】
逆浸透膜装置の運転圧力は0.1MPa〜15MPaの範囲であり、被処理液の種類、運転方法などで適宜使い分けられる。かん水や超純水など浸透圧の低い溶液を被処理液とする場合には比較的低圧で、海水や工業廃水などを被処理液とする場合には比較的高圧で使用される。
【0018】
逆浸透膜装置の運転温度は0℃から100℃の範囲が好ましい。0℃よりも低いと被処理液が凍結する恐れがあり、100℃よりも高い場合には被処理液の蒸発が起こる恐れがある。
【0019】
また、分離装置の回収率は、5から100%まで分離操作、装置に応じて設定することができる。逆浸透膜装置の回収率は5〜98%の間で適宜選択することができる。ただし、被処理液や濃縮液の性状、濃度、浸透圧に応じて前処理、運転圧力を考慮し、回収率を決定しなければならない。例えば海水淡水化の場合には、通常10〜40%の回収率が設定され、高効率の装置の場合には40〜70%の回収率が設定される。かん水淡水化や超純水製造の場合には通常70%以上、必要に応じ90〜95%の高回収率で運転することもできる。ここで回収率とは、逆浸透膜を透過した液量を被処理液量で割り、100倍した値を言う。
【0020】
逆浸透膜装置の構成はおもに高圧ポンプと逆浸透膜モジュールからなる。高圧ポンプは装置の運転圧力に応じて最適のポンプを選択することができる。
【0021】
また、逆浸透膜モジュールの配列は1段で使用することもできるが、被処理液に対して直列、または並列に多段に配列することができる。直列に配列する場合は逆浸透膜モジュールの間に昇圧ポンプを設置することができる。海水淡水化の際は装置コストの観点から特に直列2段の配列が好ましく用いられる。その際、直列に配列したモジュールの間に昇圧ポンプを設置して被処理液を1.0〜5.0MPaに昇圧して後段のモジュールに供給することが好ましい。被処理液に対して逆浸透膜モジュールを直列に配列した場合には膜モジュールと被処理液が接触する時間が長いので本発明の効果が大きい。
【0022】
さらに、逆浸透膜モジュールは、透過液に対して直列に配列することもできる。透過液の質が不十分な場合や透過水中の溶質成分を回収したい場合に好ましい方法である。ここで、透過液に対して逆浸透膜モジュールを直列に配置する場合には、逆浸透膜モジュール間にポンプを設置し、透過液を再加圧するか、前段で十分な圧力をかけておき背圧をかけて膜分離することができる。また、透過液に対して逆浸透膜モジュールを直列に配置する場合は、後ろの逆浸透膜モジュール部分の殺菌を行うために酸の添加装置を逆浸透膜モジュール間に設けるのが好ましい。
【0023】
逆浸透膜の装置において、被処理液のうち膜を透過しなかった部分は濃縮液として逆浸透膜モジュールから取り出される。この濃縮液は利用したり、廃棄することができ、さらに他の方法で濃縮することもできる。また、濃縮液はその一部または全てを被処理液に循環することもできる。膜を透過した透過液は、利用したり、廃棄することができ、被処理液にその一部または全てを循環することもできる。
【0024】
一般に逆浸透膜装置の濃縮液は圧力エネルギーを有しており、運転コストの低減化のためには、このエネルギーを回収することが好ましい。エネルギー回収の方法としては、任意の部分の高圧ポンプに取り付けたエネルギー回収装置で回収することができるが、高圧ポンプの前後や、モジュール間に取り付けた専用のタービンタイプのエネルギー回収ポンプで回収することが好ましい。
【0025】
本発明が使用される膜分離装置の処理能力は、一日あたりの処理水量が0.5m3〜100万m3であることが好ましい。
【0026】
また、本発明が使用される膜分離装置において、装置内の配管はできるだけ滞留部の少ない構造とすることが好ましい。
【0027】
本発明の水処理用殺菌剤を使用した水処理方法では、無機酸および腐食抑制剤を含む水溶液を水処理装置の供給液に添加する。無機酸の添加は、殺菌効果を提供する上で極めて重要であり、特に海水を供給液として使用する膜濾過においてこの効果は顕著である。微生物の死滅するpHは個々の微生物に特有であり、例えば大腸菌の場合生育の下限はpH4.6であるが、死滅はpH3.4以下でおこる。一方海水中にも多種多様の微生物が存在し、それぞれ死滅するpHが異なる。しかし、通常、被処理液をpH4以下に一定時間保持すれば、微生物の50〜100%を死滅させることが可能である。無機酸および腐食抑制剤を添加された被処理液のpHは3.9以下が好ましく、3.7以下がさらに好ましく、3.4以下が特に好ましい。pHの下限は特に限定されないが、装置の腐食予防の観点から、1.5以上が好ましく、特に2.0以上が好ましい。
【0028】
本発明で使用する無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等のいずれを用いても良いが、経済的な面を考えると、硫酸を用いることが好ましい。
【0029】
本発明で使用する腐食抑制剤は、水処理装置の腐食を予防し、殺菌効果を上げるために重要である。本発明に使用する腐食抑制剤としては、分子中にカルボン酸基を少なくとも6個有するポリカルボン酸、エチレンジアミン四酢酸、亜硝酸およびそれらのアルカリ金属塩から選ばれた化合物が好ましく用いられる。ここで、ポリカルボン酸としては、下記一般式(1)
【0030】
【化1】
【0031】
(式中、nは3以上の整数、X、Yは水素またはアルカリ金属)で表されるポリエポキシこはく酸、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸またはその共重合体などから選ばれる1種の化合物が好ましく用いられる。
【0032】
腐食抑制剤としては、ポリエポキシこはく酸、エチレンジアミン四酢酸、ポリアクリル酸およびそれらのアルカリ金属塩から選ばれた化合物が特に好ましい。これらは、分子中に酸素、窒素などの電気陰性度の大きい原子を持つので、金属表面への吸着性に優れており好ましい。
【0033】
中でもポリアクリル酸は、食品安全性が高く、かつ、腐食抑制効果が高いのでもっとも好ましい。ポリアクリル酸は、水処理が飲料水の製造を目的とする場合に、特に好ましい。
【0034】
ポリアクリル酸の重量平均分子量は、水処理条件、例えばpHや温度などによって最適な範囲が変化するので、条件にあった重量平均分子量を有するポリアクリル酸を選択する必要がある。ポリアクリル酸の重量平均分子量は、500〜10,000の範囲が好ましく、より好ましくは1,000〜8,000の範囲である。重量平均分子量が500未満であると、十分な腐食抑制効果が得られにくく、10,000を超えると殺菌剤の保存安定性が悪くなりやすい。
【0035】
ポリエポキシこはく酸またはそのアルカリ金属塩は、例えば次のような方法で合成される。すなわち、マレイン酸塩を、タングステン酸ナトリウムを触媒として過酸化水素にてエポキシ化し、エポキシこはく酸塩とする。次にエポキシこはく酸塩を、アルカリ水溶液中で水酸化カルシウムを触媒として開環重合すると、ポリエポキシこはく酸塩が得られる。また、マレイン酸共重合体としては、マレイン酸とオレフィンの共重合体、マレイン酸とメチルビニルエーテルの共重合体などが好ましく用いられる。
【0036】
水処理装置に供給する被処理液に、酸および腐食抑制剤を添加する際には、別々に添加しても良いし、あらかじめ両者を混合した殺菌剤を作製して添加しても良い。あらかじめ水処理用殺菌剤を作製すると、殺菌処理を効率的に行うことができ好ましい。
【0037】
本発明の殺菌剤中の酸および腐食抑制剤の濃度はそれぞれ、50ppm(重量)〜50重量%が好ましい。酸および腐食抑制剤のいずれかあるいは両方の濃度が50重量%を越えると、殺菌剤の保存安定性が悪くなりやすい。また、酸および腐食抑制剤のいずれかあるいは両方の濃度が50ppmより低い場合、水処理用殺菌剤の添加量を増やすことが必要で、殺菌効率が悪くなりやすい。
【0038】
本発明の水処理用殺菌剤は様々な水処理工程で使用することができるが、微生物の影響が大きい分離膜を用いる水処理工程で使用されるのが好ましい。
【0039】
さらに、分離膜としては逆浸透膜、限外濾過膜、精密濾過膜等があるが、殺菌剤として一般的に使用されている塩素等の酸化剤を使用することができない逆浸透膜を用いる水処理工程で本発明の水処理用殺菌剤を使用するのが好ましい。
【0040】
水処理装置に供給する被処理液に、酸および腐食抑制剤を添加する方法としては、別々に添加しても良いし、あらかじめ両者を混合した水処理用殺菌剤を作製して添加しても良い。あらかじめ水処理用殺菌剤を作製すると、殺菌処理を効率的に行うことができ好ましい。
【0041】
水処理用殺菌剤は、被処理液中で、10ppm(重量)〜10重量%の範囲で添加されていることが好ましい。殺菌剤の添加量を10ppmより低くする場合は、高い殺菌効果を得るために、殺菌剤中の酸および腐食抑制剤の濃度を高くする必要があり、水処理用殺菌剤の保存安定性が悪くなる可能性がある。また、水処理用殺菌剤の添加量を10重量%より多くする場合は、水処理用殺菌剤の添加装置に大きな負荷がかかり、エネルギー消費量が大きくなるため、経済的に不利になることがある。
【0042】
水処理用殺菌剤の添加は、間欠的に実施することが好ましい。1回あたりの添加時間は、0.5〜2.5時間の範囲が好ましく、添加頻度は、1日〜1ヶ月に1回の頻度が好ましい。添加時間と添加頻度は、膜の透過水量の変動、濃縮液の生菌数や含有有機炭素の変動、差圧の上昇などを監視しながら、適宜変動させるのが好ましい。膜の除菌については、水処理装置の休止時に、膜を酸および腐食抑制剤を含む水溶液に浸漬することで実施することも可能であるが、膜分離を行いながら被処理液に水処理用殺菌剤を添加する方法が効率的であり好ましい。
【0043】
本発明の水処理方法において、酸と腐食抑制剤を別々に被処理液に添加することもできる。被処理液への酸の添加量は、殺菌効果の点から、10ppm(重量)以上が好ましく、経済性や配管等の設備の腐食を予防する点から、1重量%以下が好ましい。
【0044】
本発明の水処理用殺菌剤に使用する水は、純水が好ましい。使用する水に不純物が含まれると、酸あるいは腐食抑制剤と反応して析出物が生じるなど、保存安定性が悪くなる場合がある。
【0045】
酸と腐食抑制剤の混合物は保存安定性が悪い場合もあるので、水処理用殺菌剤にさらに保存安定化剤を添加することが好ましい。本発明においては、保存安定化剤として、ポリビニルピロリドン、ポリアルコール、ポリアミドおよびポリイミドから選ばれ、かつ、溶解度パラメーターの値が26〜47(MPa)1/2の範囲にある高分子化合物が好ましく用いられる。溶解度パラメーターの値は、より好ましくは26〜41(MPa)1/2の範囲である。
【0046】
このような保存安定化剤を添加することにより、酸と腐食抑制剤を混合して長時間保存しても、安定に保存することができる。また、このような化合物は、水処理装置の分離膜へのダメージを減らし、殺菌効果も低減させない。ここで、ポリアルコールとは、分子中に複数の水酸基を有するポリマーであり、ポリビニルアルコール、酢酸セルロースなどが挙げられる。これらの高分子化合物は1種類だけ使用しても良いし、2種類以上添加しても良い。これらの中でもポリビニルピロリドンまたはポリビニルアルコールが最も好ましい。
【0047】
溶解度パラメーターが13未満であると、水への溶解性が悪く均一な殺菌剤として使用することができない。一方、溶解度パラメーターが23より大きいと十分な保存安定効果が得られにくくなる。
【0048】
ここで、溶解度パラメーターとは、各高分子化合物のモル蒸発熱をΔH(J/mol)、モル体積をV(m3/mol)とするとき、δ=(ΔH/V)1/2(MPa)1/2で定義される量をいう。溶解度パラメーターδはモル蒸発熱ΔHおよびモル体積Vを実測により測定し計算から求めるか、あるいは分子内の各成分の溶解度パラメーターの値から文献の方法(松浦剛著「合成膜の基礎」、1985、25−35p)に従って計算することができる。
【0049】
また、使用する高分子化合物の重量平均分子量は、100〜200,000の範囲が好ましく、より好ましくは500〜50,000の範囲である。重量平均分子量が100未満であると、十分な保存安定効果が得られにくく、200,000を超えると膜への影響が大きくなる。
【0050】
また、前記の保存安定化剤は、海水などを処理する水処理プラントにおいて、腐食抑制効果を高めるのにも有効である。一般に海水中には、マグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛等の多価金属イオンが多く含まれており、これらの金属イオンはカルボン酸等のアニオン性基を有する有機化合物とキレートを形成することが知られている。カルボン酸を多く有する腐食抑制剤は、キレートを形成すると、配管等の金属表面への吸着が抑制され、十分な腐食抑制効果が得られないことがある。この場合に、殺菌剤中へ前記の保存安定化剤を添加することにより、殺菌剤溶液の保存安定性を高めるのと同時に、腐食抑制剤と保存安定化剤の相互作用により、海水中の多価金属イオンと腐食抑制剤のキレート形成を抑制し、腐食抑制効果を上げることができる。
【0051】
殺菌剤中の保存安定化剤の濃度は、殺菌剤中の酸および腐食抑制剤の濃度によって最適範囲が変化するが、50ppm(重量)〜50重量%が好ましい。
【0052】
本発明において、酸および腐食抑制剤は、供給液が膜分離装置に供給される前の工程であれば、どこに添加しても良い。膜分離装置の殺菌のためには、膜分離装置の直前において、添加することが好ましい。水処理を行いながら、殺菌処理を実施することが好ましいが、休止時に殺菌処理を行っても良い。
【0053】
本発明の膜分離装置を有する水処理装置は、例えば以下に示す構成のシステムである。
A.取水装置。これは原水を取り込む装置であって、通常取水ポンプ、薬品注入設備などで構成される。
B.取水装置に連通した前処理装置。これは分離膜装置に供給する水を前処理して所望の程度まで精製するものである。例えば以下の順に構成することができる。
B−1 凝集濾過装置。
B−2 ポリッシング濾過装置。ただし前記B−1、B−2の替わりに限外濾過装置や精密濾過装置を用いても良い。
B−3 凝集剤、殺菌剤、pH調整剤などの薬品注入設備。
C.前処理装置に連通し必要に応じて設置される中間槽。これは水量調節、水質の緩衝作用の機能を提供するものである。
D.Cを設置する場合には中間槽に連通し、またはCを設置しない場合には前処理装置から連通したフィルター。これは膜分離装置に供給される水の固形不純物を除去する。
E.膜分離装置。高圧ポンプおよび分離膜モジュールからなる。膜分離装置は複数設置して、これらを並列に設置しても、直列に設置してもよい。直列に設定する場合には、後段の分離膜装置に供給する水圧を上げるためのポンプを膜分離装置間に設けることができる。
F.膜分離装置の膜透過側出口部分に連通した後処理装置。以下の装置が例示される。
F−1 脱気装置。これは脱炭酸の機能を有するものである。
F−2 カルシウム塔
F−3 塩素注入
G.膜分離装置の原水側出口部分に連通した後処理装置。以下の装置が例示される。
G−1 pHを4とした供給液を処理する装置。例えば中和装置。
G−2 放流設備。
H.その他、廃水の処理装置を適宜設けても良い。
【0054】
本発明の水処理装置は、任意の場所にポンプを設けることができる。また、酸および腐食抑制剤またはそれらの水溶液を添加する手段は、Aの取水装置、Bの前処理装置もしくは前処理装置の前、およびDのフィルターの前もしくはフィルターの後の、いずれか1箇所以上に設けることが好ましい。特に、膜分離装置の前、すなわち、Dのフィルターの前もしくはフィルターの後が好ましい。
【0055】
本発明の水処理用殺菌剤を使用する水処理装置の構成部材、例えば配管、バルブなどはpH4以下の条件で腐食しにくいものを使用することが好ましい。供給する被処理液のpHを4以下とすることによって、高い殺菌効果が得られると同時に、配管内のスケールを除去できるという効果も得ることができる。塩素などの酸化物による膜劣化を防止するために亜硫酸水素ナトリウムを添加する場合があるが、本発明の水処理用殺菌剤を用いることによって、その添加量を著しく低減できることがある。
【0056】
本発明の水処理用殺菌剤を用いた水処理方法および装置は、膜分離装置を用いる水処理に好適に使用できる。特に海水の淡水化や、かん水の淡水化、工業用水の製造、超純水、純水の製造、医薬用純水の製造、水道原水の除濁、水道における高度処理等の水の精製工程などで好適に使用できる。また、食品の濃縮等において、従来の酸化性殺菌剤で分解しやすい有機物等を分離または濃縮する場合にも、殺菌による分解無しで有機物を濃縮または回収することができ、本発明の効果は大きい。また、飲料水製造の場合には塩素殺菌によるトリハロメタン発生を防止できる効果がある。さらに本発明の水処理用殺菌剤を使用した食品安全性の高い化合物のみの使用により殺菌を行うことができるので、飲料水製造に特に適している。
【0057】
【実施例】
実施例において、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<腐食抑制効果の評価方法>
表面を320番のヤスリで研磨処理したSUS304製のステンレス試験片(20mm×30mm×1mm)を超音波洗浄器を用いて60分間純水で洗浄後、アセトンで60分間洗浄し、風乾する。その後、50℃の20%硝酸水にステンレス試験片をいれ、1時間不動態化処理を行ってから試験片を取り出し、アセトンで洗浄し風乾する。本発明の水処理用殺菌剤を海水(電導度100mS/cm)で100倍に希釈(殺菌剤濃度1wt%)して、全体が100mLの試験液(pH1.4)とし、100mLポリ容器に入れ、前記ステンレス試験片を1個ずつ浸漬する。該ポリ容器を80℃の恒温室内に静置し、浸漬開始から6日目に試験片を取り出す。取り出した試験片は純水で5秒間洗浄後、アセトンで5秒間洗浄し、風乾後、シリカゲル乾燥雰囲気中、0.01mgまで秤量可能な電子天秤を用いて重量測定を行う。腐食による 試験片の重量減少を、以下のように計算する。
重量減少(g/m2)=(浸漬前の試験片重量−浸漬後の試験片重量)/試験片表面積
<殺菌効果の評価方法>
塩濃度6.9重量%の海水を30℃で一晩静置し、生菌数を安定させた後、滅菌水で塩濃度3.5重量%に希釈する(これをA液と呼ぶ)。A液に、本発明の水処理用殺菌剤を0.1重量%加え(pH3.1)、30℃で30分間置く(これをB液と呼ぶ)。A液、B液の生菌数測定を行う。生菌数測定は1/2ORI培地(海洋性細菌測定用培地)を用い30℃で6日間培養した後、出現したコロニー数を数え、下式で計算する。
生菌数残存率(%)=(B液の生菌数)/(A液の生菌数) ×100
<保存安定化効果の評価方法>
本発明の水処理用殺菌剤を、調整後25℃の恒温室に静置し、19日目に溶液状態を確認した。
【0058】
実施例1〜3、比較例1〜3
純水(電導度10μS/cm)に硫酸20wt%、表1に示す腐食抑制剤0.1wt%を加えて水処理用殺菌剤を調整した。実施例1、2については、表1に示す保存安定化剤を0.5wt%添加した。結果を表1に示す。(表中、ポリアクリル酸をPA、ポリビニルアルコールをPVA、ポリビニルピロリドンをPVP、クエン酸NaをCA、リンゴ酸をMAと略記する。)
【0059】
【表1】
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、膜分離装置を用いる水処理工程において、装置配管の腐食を抑えつつ、効果的に殺菌をすることができる。そのため、殺菌の頻度を多くしたり、pHをさらに下げることが可能となり、殺菌効果を増大させることができる。
【0061】
また、本発明の水処理用殺菌剤には保存安定化剤を添加することにより、殺菌効果および腐食抑制効果を保ったまま、高い保存安定性を実現できる。
【0062】
本発明は、海水淡水化、かん水淡水化などの工程に特に好適に用いることができる。
Claims (25)
- 酸、腐食抑制剤、および、ポリビニルピロリドン、ポリアルコール、ポリアミドおよびポリイミドから選ばれ、かつ、溶解度パラメーターの値が26〜47(MPa)1/2の範囲にある高分子化合物を含む水処理用殺菌剤。
- 腐食抑制剤が分子中にカルボキシル基を6個以上含有するポリカルボン酸、エチレンジアミン四酢酸、亜硝酸およびそれらのアルカリ金属塩から選ばれた化合物である請求項1に記載の水処理用殺菌剤。
- ポリカルボン酸がポリエポキシこはく酸、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸またはその共重合物、およびそれらのアルカリ金属塩から選ばれた化合物である請求項2に記載の水処理用殺菌剤。
- 腐食抑制剤が、ポリアクリル酸である請求項3に記載の水処理用殺菌剤。
- 酸が硫酸である請求項1〜4のいずれかに記載の水処理用殺菌剤。
- 酸の濃度が50ppm(重量)〜50重量%の範囲内にあり、かつ、腐食抑制剤の濃度が50ppm(重量)〜50重量%の範囲内にある請求項1〜5のいずれかに記載の水処理用殺菌剤。
- ポリアクリル酸の分子量が、500以上10,000以下である請求項4に記載の水処理用殺菌剤。
- 溶解度パラメーターの値が26〜47(MPa)1/2の範囲にある高分子化合物が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれかに記載の水処理用殺菌剤。
- 分離膜を用いる水処理工程で使用される請求項1〜8のいずれかに記載の水処理用殺菌剤。
- 分離膜として逆浸透膜を用いる水処理工程で使用される請求項9に記載の水処理用殺菌剤。
- 飲料水を製造する水処理工程で使用される請求項1〜10のいずれかに記載の水処理用殺菌剤。
- 分離膜を用いる水処理工程において、膜分離工程以前のいずれかの工程において、被処理液に、請求項1〜11のいずれかに記載の水処理用殺菌剤を添加する水処理方法。
- 水処理用殺菌剤を、10ppm(重量)〜10重量%の範囲で添加する請求項12に記載の水処理方法。
- 水処理用殺菌剤の添加を間欠的に行う請求項12または13に記載の水処理方法。
- 水処理用殺菌剤を、1回あたり0.5〜2.5時間の範囲内で添加する請求項14に記載の水処理方法。
- 水処理用殺菌剤を、1日〜1ヶ月に1回の頻度で添加する請求項14または15に記載の水処理方法。
- 膜分離を行いながら、水処理用殺菌剤を添加する請求項12〜16のいずれかに記載の水処理方法。
- 分離膜として逆浸透膜を用いる請求項12〜17のいずれかに記載の水処理方法。
- 飲料水を製造する水処理方法である請求項12〜18のいずれかに記載の水処理方法。
- 被処理液として、海水を用いる請求項12〜19のいずれかに記載の水処理方法。
- 膜分離装置を有する水処理装置であって、該膜分離装置へ供給される被処理液に、酸、腐食抑制剤および、ポリビニルピロリドン、ポリアルコール、ポリアミドおよびポリイミドから選ばれ、かつ、溶解度パラメーターの値が26〜47(MPa)1/2の範囲にある高分子化合物を含む水溶液を添加する手段を有する水処理装置。
- 前記水溶液を供給する手段が、水溶液を間欠的に供給する手段である請求項21に記載の水処理装置。
- 分離膜が逆浸透膜である請求項21または22に記載の水処理装置。
- 飲料水を製造する水処理装置である請求項21〜23のいずれかに記載の水処理装置。
- 被処理液が、海水である請求項21〜24のいずれかに記載の水処理装置。
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