JP2004243292A - ステンレス鋼線ネットスクリーン式分離装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】バグフィルタを通過させるよりも遥かに高い温度の排ガスを流通させてもそれに耐えて随伴ダストを捕捉できること、設備面での負担軽減や消費動力の低減を実現できること。
【解決手段】ステンレス鋼線ネットスクリーン式分離装置3は、排ガス発生炉1と熱交換器4との間に配置される。その煙道には、線径10ないし70μmのステンレススティールワイヤを編んで150ないし300メッシュとしたネットスクリーン5が、流れに交差するように複数並べられる。除塵装置3の上流側で排ガス2に生石灰粉末が混入され、含塵排ガス2からダイオキシンの発生要因となる塩素系物質が除去され、ダストを除去した浄化ガスを熱交換器4へ導出させて熱エネルギを回収する。熱交換器でのトラブル発生は抑えられ、排気ファンの能力低減による機器の小型化や動力消費量の節減が図られる。
【選択図】 図1
【解決手段】ステンレス鋼線ネットスクリーン式分離装置3は、排ガス発生炉1と熱交換器4との間に配置される。その煙道には、線径10ないし70μmのステンレススティールワイヤを編んで150ないし300メッシュとしたネットスクリーン5が、流れに交差するように複数並べられる。除塵装置3の上流側で排ガス2に生石灰粉末が混入され、含塵排ガス2からダイオキシンの発生要因となる塩素系物質が除去され、ダストを除去した浄化ガスを熱交換器4へ導出させて熱エネルギを回収する。熱交換器でのトラブル発生は抑えられ、排気ファンの能力低減による機器の小型化や動力消費量の節減が図られる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はステンレス鋼線ネットスクリーン式分離装置に係り、詳しくは、排ガス中に浮遊するダストを高温のまま捕捉できるようにして排ガスからのエネルギ回収とその利用の途を大幅に拡大し、またダイオキシンを発生させることのないようにした高温微細物捕捉装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図4は例えば高炉1からの排ガス2を処理する系統の一例であるが、高炉排ガスに含まれるダストを除去するために、一般的にはバグフィルタ21が使用される。その高炉からの排ガスは1,000℃にも及ぶので、除塵するだけでなく熱エネルギーの回収も排ガス処理の工程で積極的におこなわれる。
【0003】
バグフィルタの中でダストを分離するバグ(集塵用袋)21aは通常布製であり、耐熱温度は200ないし250℃である。グラスファイバを混じえるなどして耐熱性を上げる努力がなされているが、それでも300℃程度に止まる。
従って、高温の排ガス2Aを直接バグフィルタへ導入することはできず、一般的にはブロア22により大量の空気を排ガスに加え、降温させた状態で排ガス2Bをバグ21aへ通すようにしている。
【0004】
バグフィルタの耐熱性が300℃に止まるのは、通常、バグフィルタは、繊維の表面にカーボン粉末や二硫化モリブデンをダスト剥離剤として塗布し、ガラス繊維間の潤滑剤としてシリコン油を塗布しているが、300℃以上ではシリコン油が蒸発し潤滑剤の効果を失ってしまうためである。つまり、繊維のみでは1200℃以上の対熱性を実現することは可能となっても、それに見合うダスト剥離剤や潤滑剤が開発されていないために、現在のところ300℃を超える耐熱性をもつバグフィルタは得られていないのが実情である。
かかる実情に鑑みて、ガラス繊維の表面に酸化クロムの皮膜を形成することで、耐熱性を向上させたバグフィルタも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−253914号公報
【0006】
しかしながら、このようなバグフィルタによっても耐熱温度は700℃に止まり、1000℃にも及ぶ高炉からの排ガスに耐えることはできず、また後述するようなバグフィルタ固有の問題を解決できるものでもなかった。
【0007】
一方、排ガスからの熱回収にあたっては、熱交換時の保有温度が高い冷却前の排ガス2Aと熱交換させることが好ましい。高温排ガスとの熱交換によれば、高炉吹き込み用空気の予熱源として利用できるだけでなく、発電設備用ボイラ等の熱源としても供し得るからである。それ故、図4に示したように、熱交換器23は排ガス発生源である高炉1の直後に置かれる。この場合、排ガスはダストを含んだまま熱交換器に供給されることになるが、冷却用空気が混入されて降温した排ガスから熱回収する場合の用途が限られたものになることに比べれば、その熱回収効果は多大なものとなる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、熱交換器23に含塵ガス2Aが直接導入されることになると、ダストが内部の熱交換器材に付着するなどして熱交換機能を低下させる。また、流通路の閉塞を招くなどトラブルも大なり小なり発生し、点検作業や保守作業が頻繁に強いられるという難点がある。
【0009】
ところで、ダイオキシンは、300ないし400℃で生成することがよく知られている。従って、塩素系物質が含まれている排ガスをバグに通すことができるようにするため降温させると、その時点でダイオキシンが発生することは避けられない。そこで、バグフィルタに導入される直前の300℃程度まで降温された排ガスに消石灰を吹き込むなどして、発生したダイオキシンを吸着させるなどの対策が採られる。
【0010】
しかし、排ガスからダイオキシンを完全に除去できたとしても、ダイオキシンを吸着させた消石灰の廃棄処理には大きな問題が残り、結果的にはダイオキシン問題を根本的に解決したことにはならない。そのため、排ガスの温度が300℃程度まで下がる以前に塩素系物質を除去してダイオキシン発生要因を取り除いておかなければならないことになる。
【0011】
ところが、冷却空気混入前の排ガスに塩素系物質除去剤を投入すると、これが熱交換器の上流である場合には熱交換器の運転を大なり小なり阻害する。熱交換器の下流である場合には、直後に混入される冷却空気によって増大する排ガス流量に見合った大量の投入が余儀なくされる。
【0012】
ところで、バグフィルタ固有の問題として、以下の点が挙げられる。まず、バグがケーシング内に幾つも入っているので、一つでも破損すると捕捉されていたダストがケーシング内に飛散する。拡散したダストが他のバグで浄化された排ガスに混入すると、バグフィルタの浄化機能は損なわれる。また、他のバグの外面も飛散ダストで汚染されることになり、その清掃に多大の手間ひまを要したり、結局全部のバグを交換しなければならなくなる。
【0013】
バグは通常目の異なる布を重ねて袋状にしているが、排ガスがいずれのバグを通過しても差し支えないようにしているので、バグの劣化や傷が無い限り各バグの捕集効率に大差はない。即ち、濾過機能が同じであるので粒度別捕捉という思想は適用できず、全般的には目詰まりが早まる。重ねている布間にダストが進入すると以後の動きがとれなくなり、通気目の閉塞を助長させる原因の一つともなるからである。
【0014】
また、バグは個々にリテイナによって開口部を支持するなどしてケーシングに固定されるので、通過するガスの流れは上下左右へと曲折する。従って、圧損が大きくなりがちで、排気ファン11としては能力の大きいものが要求される。それに応じてサイレンサの大型化も余儀なくされる。
【0015】
排ガスの温度を下げるためには上記したように外気が導入されるが、場合によっては冷却塔で強制冷却した空気、さらには冷却水を吹き込むといったことも行われる。外気等を導入しても湿気を少なからず持ち込むことになるので、いずれにしても降温操作は排ガスの乾燥度に影響を及ぼし、これも目詰まりの原因を助長していると言える。
【0016】
このようにバグの目詰まりは不可避なことであり、そのためのメンテナンスも大変な労力を要する。甚だしくはケーシング内に入ってバグに付着したダストを払い落とすといったことまで行わなければならなくなる。それにも増して厄介なことは、バグフィルタにホットダストが排ガスに伴われて紛れ込むことである。バグが部分的とはいえ焼損することは致命的なことであり、交換作業などの対応に迫られたときプラント自体の運転にも大きな影響を与える。
【0017】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたもので、その目的は、従来のバグフィルタを通過させるよりも遥かに高い温度の排ガスを流通させてもそれに耐えて随伴ダストを捕捉できること、熱交換器へは高温かつ粉塵の少ない排ガスを供給できるようにして内部器材でのトラブル発生を可及的に少なくすること、ダスト捕捉の多段化を可能にして粗粒や細粒の分別捕集による集塵効率の向上が図られること、集塵装置の運転を維持した状態で点検や保守作業が可能となること、排ガスを降温させる希釈用空気を供給しなくてもよいようにして排気ファンの小能力化等設備面での負担軽減や消費動力の低減ができること、を実現したステンレス鋼線ネットスクリーン式分離装置を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、流れの場に配置されたネットによって浮遊物を流れから補足できるようにした分離装置に適用される。その特徴とするところは、ネットが線径10ないし70μmのステンレススティールワイヤで編まれ、150ないし300メッシュとされていることである。
【0019】
ネットはステンレススティールワイヤを編んだ後にロールによって加圧され、鋼線を押し潰して、目開きが小さくされたものでもよい。
【0020】
図1を参照して、排ガス発生炉1と熱交換器4との間に配置され、線径10ないし70μmのステンレススティールワイヤを編んで150ないし300メッシュとしたネットスクリーン5が、流れに交差するように複数下流に向けて並べられ、生石灰粉末10(図3を参照)を混入させた含塵排ガス2からダストを除去した浄化ガスを、熱交換器4へ導出させるようにしていることである。
【0021】
ネットスクリーン5は流れの場から流れに対して直角方向に延びる閉鎖空間9(図2を参照)内に引き出されて、シェイキングされるようにしておく。また、複数のネットスクリーン5は、下流になるにつれてその目開きが小さくなるように配置されることが好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係るステンレス鋼線ネットスクリーン式分離装置を、その実施の形態を表した図面を基にして詳細に説明する。図3は、流れの場に配置されたネットによってダストを排ガスから取り除くようにした除塵装置を含むプラントの一例が表されている。
【0023】
具体的には、高炉1からの排ガス2を処理する系統を示しており、高炉排ガスに含まれるダストを除去するためのネットスクリーン式の除塵装置3が、高炉1と熱交換器4との間に設けられている。従って、排ガスが高温のまま直接除塵装置3に導入されるようになっており、その内部温度は排ガス温度近くなるまで上昇する。
【0024】
その除塵装置3は例えば図1に示すような直線流路を形成する煙道3Aとその下の集塵箱3Bとが主たる構造をなし、煙道でのガスの流れに交差するようにして複数のネットスクリーン5が下流に向けて順次並べられているネットスクリーン式分離装置である。そのネットスクリーンに使用されているのは、線径10ないし70μmの極めて細いワイヤを編んで150〜300メッシュとしたステンレススティールネット6であり、そのネットは周囲をフレーム7に固定するなどして面状に張られている。
【0025】
そのステンレススティールワイヤは極めて細い糸であり、これを横糸と縦糸にしてネットに編まれる。スティールワイヤネット6はクロスを織る場合の要領と似ているとはいえ、特殊技能をもった作業者に委ねなければならないほど簡単に織れるものではない。しかし、織ってしまえば適宜の大きさに鋏で簡単に切断できフレームに保持させれば1枚のネットスクリーンとすることができる。
【0026】
このようなネットスクリーン5を使用した除塵装置3の具体的構造の一例を、図1と図2を参照しながら述べる。煙道3Aには数枚のスクリーン5が並べられ、ネットスクリーンで流通が阻止されたダストを床面に堆積させることができる。そして、スクリーン直下の床の動きによって、溜まったダストを集塵箱3Bに集めることができるようになっている。
【0027】
この例においては床が固定床8Aと可動床8Bからなり、可動床の回転動作によってダストを落とすようにしている。固定床8Aはネットスクリーン5の下縁を支持するようになっていて、次に述べる図2のチャンバ9へのネットスクリーンの進退に際し移動ガイドとして機能するようにも配慮されている。
【0028】
各ネットスクリーン5は、図2からも分かるように、流れの場から流れに対して直角な方向へ延びる閉鎖空間内に引き出されたり、そこから煙道へ押し出したりできるようになっている。その空間はネットスクリーンを交換し、またスクリーンをシェイキングしてダストを払ったりするために確保されるもので、薄いが一枚のネットスクリーンをすっぽりと収容できるチャンバ9を形成する。なお、ネットスクリーンを上方へ引き出す構造としてもよいが、図2のように左右にチャンバを設けておくと、図1に示した集塵箱3Bによってスクリーンの動きや扱いに制約が生じるのを避けておくことができ、都合がよい。
【0029】
ネットスクリーン自体はそのネットの目開きを何種類も準備しておくことができるが、一般的には図1中の矢印の濃さから分かるように、スクリーンを通過するごとにダストを薄れさせることができる。ましてや、下流になるにつれて目開きが小さくなるように配置されていれば、最も上流側の位置で粗採りして徐々に捕捉粒度を落とすことで、目詰まりの発生頻度を少なくすることができる。
【0030】
このような構成の除塵装置3においては、高温の排ガスが各種サイズの塵を伴って導入され、それが各スクリーンを通過すると、上で述べたように粗いものから細かいものという順序で次々とダストの移行がスクリーンで阻止され、それぞれの可動床8Bに溜まって、排ガスの浄化が図られる。
【0031】
排ガスは例えば600ないし1,000℃といった高温であるため、実質的には乾燥した状態にある。ダストもサラサラするので、スクリーンに付着することがあっても、大部分はネット面に沿って滑り落ちる。なお、ダストの大きさから言えば70μm径のワイヤを用いたネットの150メッシュ(目開き約100μm)まででよく、それより大きければ背後には多くのスクリーンが必要となってしまい好ましくない。一方、36μm径のワイヤを用いた300メッシュ(同約50μm)を通過する小さいものは、排ガス発生炉から出るガス中には通常極めて少ない。従って、150ないし300メッシュのネットを採用すれば十分であるが、場合によっては、10μm径のワイヤで目開き50μmもしくはそれ以下といったものを製作し使用しても何ら差し支えない。
【0032】
いずれにしても目開きをどのように選定するかは、排ガス発生炉で処理する物質にも左右されるので、常に好適な目開きのネットが存在するとは限らない。そのような場合には、ステンレススティールワイヤを編んだ後に圧延ロール等を用いてネットを加圧し、鋼線を押し潰して目開きを小さくしておくということもできる。これによって織機操作が容易でないステンレススティールワイヤの太さの種類を少なくして、ネットスクリーンの低廉化を図ることもできる。
【0033】
ところで、排ガスが除塵装置3に導入される以前の段階で、図3に示すように生石灰粉末10を混入するようにしておく。これを含塵排ガス中の塩素系物質に反応させると、ダイオキシンの発生源を絶っておくことができるからである。生石灰は微細な粉末であり、図3に示した排気ファン11で誘引される排ガスに混入させやすい。一方、煙道にはスクリーンが立ちはだかっているので、生石灰の流出はスクリーンごとに一旦くい止められ、ネット面において排ガスとの接触時間を長くすることができる。それが各スクリーンで繰り返されるために、塩素系物質の除去効果は増大する。生成された塩化カルシウムは、ダストと共に落下して床上に集積される。
【0034】
床に溜まったダストは、図1に仮想線で示したようにヒンジを中心に可動床8Bを回転させると、集塵箱3Bに落とされる。可動床8Bは一斉に動かしてもよいし、時間をずらせてもよい。可動床8Bを図のように垂れ下げている間は、排気ファン11(図3を参照)によって煙道3Aに作用する負圧で集塵箱3B内の空気が吸い上げられ、それに伴って発塵しそうになるが、可動床8Bを短時間のうちに戻せば殆ど問題となることはない。集塵箱3Bに溜まったダストは、その後に図示しないレーキを作動させるなどしてホッパ12に掻き集められる。
【0035】
排ガスが高温であることによりダストの乾燥度が高いこともあって、ネットスクリーン5にダストが付着することは少ないが、運転時間が長くなると大なり小なり目詰まりが生じるのは避けられない。またネットに破れがないかどうかも点検する必要がある。そこで、保守・点検をしようとするスクリーン5が位置するところの側方にあるチャンバ9が使用される。
【0036】
図2を参照して、スクリーン5Aの一方の側のチャンバ9Lには既に新しいスクリーン5Mが格納されている。このスクリーン5Mを図示しないプッシュロッドなどによって煙道3Aの方向へ押すと、これがスクリーン5Aを他方のチャンバ9Rへ押し出す。煙道3Aに排ガス2が流れていることによってスクリーン5Mが風圧を受けても、固定床8Aの案内溝8aに載せられかつ天井溝3a(図1を参照)に嵌まっているので流されることはない。
【0037】
スクリーン5Mが煙道3Aに完全に進出すると、スクリーン5Aはチャンバ9Rに格納される。この間、煙道3Aには2枚のスクリーンが連なって排ガスの流れに立ちはだかることになるので、除塵作用に間断が生じることはない。この図の例で言えば3つの位置で同時にスクリーン5A、5B、5Cを入れ換えても、プラント稼動に全く支障をきたさない。
【0038】
チャンバ9Rに退避させられたスクリーン5Aは、そこでフレーム7に打撃が与えられるなどして振動が与えられ、ネットに付着したダストが落とされる。そのダストは、図示しない傾斜路等を介して集塵箱3(図1を参照)に滑り落とされる。スクリーン5Aのリフレッシュが図られると、逆の操作によっていずれスクリーン5Mと入れ替えればよい。
【0039】
使用済みのスクリーンを廃棄するとか異なる目開きのスクリーンに入れ替える場合には、チャンバ9の端部に設けた引き戸9aを開けばよい。煙道3Aは負圧であるので、引き戸のところから外気が進入することがあっても、ダストを伴った排ガスが吹き出ることはない。
【0040】
このような除塵装置3からは浄化された排ガス2が導出され、それが熱交換器4に導入される。ダストを殆ど伴わない排ガスが通過する熱交換器ではトラブルの発生が極めて少なくなり、保守作業は著しく軽減される。熱交換によって300℃程度まで降温することがあっても、ダイオキシン発生要因は既に取り除かれており、排ガスの大気放出に問題が生じることはない。
【0041】
ところで、一枚のスクリーンに使用するネットは一重でもよいし、二つ折りにしてもよい。複数枚を多重にしておくこともできる。また、目開きの異なるものを重ねるということも用途に応じて行えばよい。また、ネットスクリーンを流れに対して傾斜するように、即ち、スクリーン5Dを図1中に仮想線で示したように前倒し姿勢で設置することもできる。
【0042】
いずれにしても、スクリーンとスクリーンとの間隔も大きく確保する理由は特になく、通常はスクリーン間隔を50センチメートル程度にしておけば十分である。従って、バグフィルタに比べ、除塵装置の飛躍的な小型化が可能となる。そして、流れを直線状に維持しておくことができるので、ネットスクリーンが並んでいるとはいっても圧損は極めて低くなる。条件にもよるが、本発明者らのテストによれば、バグフィルタの場合の1/6以下に留まることを確認した。
【0043】
耐熱性について述べれば、1,200℃に曝した場合にネットが脆くなることは否定できないが、1,000℃では少し赤化するものの、除塵のための強度としては十分であることを確認した。ワイヤがステンレススティールであるので静電気も発生しにくく、他の金属ネットで生じるそれに原因する目詰まりを起すこともない。
【0044】
排ガスの温度を下げるための希釈用空気が混入されることもないので、そのためのブロアは必要でない。風量も炉からの排出量のみであり、排気ファンに要求される負荷も少なくなる。総じて、設備コスト・運転費用の大幅な低減が図られる。
【0045】
なお、本発明はワイヤステンレス鋼線ネットを使用したものであるが、これは上記した除塵装置に適用するだけでなく、流体からそれに含まれる混入物や浮遊物といったものを分離するためにも使用できる。そして、平面のネットとしてもよいし、籠状に成形して使用することもできる。また、ステンレススティールは熱伝導性が他の金属に比べて低いことから、用途としては遮光ネットや遮熱ネットとしても使用することができる。耐蝕性も良いことを考え合わせると、農業用等屋外で使用する各種ネットとしても利用の途が広がる。
【0046】
本発明によれば、ネットスクリーンが10ないし70μmのステンレススティールの細線を150ないし300メッシュに編んで形成できるので、1,000℃近くもの高熱に耐えかつ微細なダストまで捕捉できる。排ガス流は高温であるから乾燥した状態を維持して、ネットの目が細かくてもダストの付着は著しく少なくなり、付着しても払落しは極めて容易となる。ホットダストが紛れ込んでも簡単に焼損してしまうことはなく、除塵装置の故障が理由でプラントの運転に支障をきたすようなことは回避される。
【0047】
ネットスクリーンで集塵された排ガスは多少の温度降下が見られるがバグフィルタを通したときほどの落差はなく、例えば800℃以上の高い温度を保有できることが多く、場合によっては大量の熱エネルギを回収することが可能となる。排ガスを積極的に冷却する必要はなく、従って空気吹込用ブロアは不要であり、排気ファンの小能力化も図られる。
【0048】
ステンレススティールワイヤを編んだ後にロール加圧すれば、鋼線を押し潰して目開きを小さくしておくことができる。これによって目開きの種類を豊富に準備しておかなくても、ダストのサイズや性状に応じて予め簡単な加工を施しておくだけで、排ガスに応じた集塵効果を発揮させることができるようになる。
【0049】
ネットスクリーンを流れに交差して複数下流に向けて並べておけば、単純な形状の流れ場となって圧損が可及的に少なく抑えられ、排気ファンの低圧化をはじめ駆動系における動力消費量が大きく節減される。ネットスクリーンは簡単には破損することはないが、たとえ途中の一つが損傷しても他のネットスクリーンで捕捉でき、浄化ガスにダストが混入することはない。
【0050】
高温の排ガスに対して生石灰を投入散布するようにしているので、ダイオキシンの発生原因となる塩素系物質が高温状態下で予め取り除かれ、系外排出に先立ち300℃前後にまで排ガスを降温させても、ダイオキシンを発生させることがない。ブロアによる排ガスのボリュームアップもしないので、生石灰の大量投入も避けられる。投入された生石灰はCaCl2などとなって毒性がなく、これをネットスクリーンで捕捉しても、その後の処理に特別な問題を生じさせることもない。
【0051】
熱交換器へはネットスクリーンから出た浄化ガスを供給でき、熱交換器材に対してはメンテナンスフリーに近い状態にまでもっていくことができる。塩素系物質も除去された後での導入であり、熱交換器での腐蝕等の発生も大いに軽減される。
【0052】
ネットスクリーンを流れの場から流れに対して直角方向へ延びる閉鎖空間内に引き出すようにしておけば、ネットスクリーンの交換は容易となる。また流路から退避した位置でシェイキングさせるなどすれば、作業員が外部からの操作で簡単に清掃できる除塵装置を構成させることができる。
【0053】
ネットスクリーンの目開きを下流になるにつれて小さくなるように配列しておくなら、粗粒から細粒までを分別して捕捉でき、目詰まりの発生はますます遠のき、流速を上げて処理能力を高く維持させることができきるようにもなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るステンレス鋼線ネットスクリーン式分離装置の縦断面図である。
【図2】図1中のII−II線矢視図である。
【図3】排ガス発生炉とその下流の除塵装置、熱交換器を備えた排ガス処理系統図である。
【図4】排ガス発生炉とその排ガス処理系統にバグフィルタを設けた場合の従来技術例である。
【符号の説明】
1 高炉(排ガス発生炉)
2 排ガス
3 除塵装置
4 熱交換器
5 ネットスクリーン
6 ステンレススティールネット
9 チャンバ(閉鎖空間)
10 生石灰
【発明の属する技術分野】
本発明はステンレス鋼線ネットスクリーン式分離装置に係り、詳しくは、排ガス中に浮遊するダストを高温のまま捕捉できるようにして排ガスからのエネルギ回収とその利用の途を大幅に拡大し、またダイオキシンを発生させることのないようにした高温微細物捕捉装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図4は例えば高炉1からの排ガス2を処理する系統の一例であるが、高炉排ガスに含まれるダストを除去するために、一般的にはバグフィルタ21が使用される。その高炉からの排ガスは1,000℃にも及ぶので、除塵するだけでなく熱エネルギーの回収も排ガス処理の工程で積極的におこなわれる。
【0003】
バグフィルタの中でダストを分離するバグ(集塵用袋)21aは通常布製であり、耐熱温度は200ないし250℃である。グラスファイバを混じえるなどして耐熱性を上げる努力がなされているが、それでも300℃程度に止まる。
従って、高温の排ガス2Aを直接バグフィルタへ導入することはできず、一般的にはブロア22により大量の空気を排ガスに加え、降温させた状態で排ガス2Bをバグ21aへ通すようにしている。
【0004】
バグフィルタの耐熱性が300℃に止まるのは、通常、バグフィルタは、繊維の表面にカーボン粉末や二硫化モリブデンをダスト剥離剤として塗布し、ガラス繊維間の潤滑剤としてシリコン油を塗布しているが、300℃以上ではシリコン油が蒸発し潤滑剤の効果を失ってしまうためである。つまり、繊維のみでは1200℃以上の対熱性を実現することは可能となっても、それに見合うダスト剥離剤や潤滑剤が開発されていないために、現在のところ300℃を超える耐熱性をもつバグフィルタは得られていないのが実情である。
かかる実情に鑑みて、ガラス繊維の表面に酸化クロムの皮膜を形成することで、耐熱性を向上させたバグフィルタも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−253914号公報
【0006】
しかしながら、このようなバグフィルタによっても耐熱温度は700℃に止まり、1000℃にも及ぶ高炉からの排ガスに耐えることはできず、また後述するようなバグフィルタ固有の問題を解決できるものでもなかった。
【0007】
一方、排ガスからの熱回収にあたっては、熱交換時の保有温度が高い冷却前の排ガス2Aと熱交換させることが好ましい。高温排ガスとの熱交換によれば、高炉吹き込み用空気の予熱源として利用できるだけでなく、発電設備用ボイラ等の熱源としても供し得るからである。それ故、図4に示したように、熱交換器23は排ガス発生源である高炉1の直後に置かれる。この場合、排ガスはダストを含んだまま熱交換器に供給されることになるが、冷却用空気が混入されて降温した排ガスから熱回収する場合の用途が限られたものになることに比べれば、その熱回収効果は多大なものとなる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、熱交換器23に含塵ガス2Aが直接導入されることになると、ダストが内部の熱交換器材に付着するなどして熱交換機能を低下させる。また、流通路の閉塞を招くなどトラブルも大なり小なり発生し、点検作業や保守作業が頻繁に強いられるという難点がある。
【0009】
ところで、ダイオキシンは、300ないし400℃で生成することがよく知られている。従って、塩素系物質が含まれている排ガスをバグに通すことができるようにするため降温させると、その時点でダイオキシンが発生することは避けられない。そこで、バグフィルタに導入される直前の300℃程度まで降温された排ガスに消石灰を吹き込むなどして、発生したダイオキシンを吸着させるなどの対策が採られる。
【0010】
しかし、排ガスからダイオキシンを完全に除去できたとしても、ダイオキシンを吸着させた消石灰の廃棄処理には大きな問題が残り、結果的にはダイオキシン問題を根本的に解決したことにはならない。そのため、排ガスの温度が300℃程度まで下がる以前に塩素系物質を除去してダイオキシン発生要因を取り除いておかなければならないことになる。
【0011】
ところが、冷却空気混入前の排ガスに塩素系物質除去剤を投入すると、これが熱交換器の上流である場合には熱交換器の運転を大なり小なり阻害する。熱交換器の下流である場合には、直後に混入される冷却空気によって増大する排ガス流量に見合った大量の投入が余儀なくされる。
【0012】
ところで、バグフィルタ固有の問題として、以下の点が挙げられる。まず、バグがケーシング内に幾つも入っているので、一つでも破損すると捕捉されていたダストがケーシング内に飛散する。拡散したダストが他のバグで浄化された排ガスに混入すると、バグフィルタの浄化機能は損なわれる。また、他のバグの外面も飛散ダストで汚染されることになり、その清掃に多大の手間ひまを要したり、結局全部のバグを交換しなければならなくなる。
【0013】
バグは通常目の異なる布を重ねて袋状にしているが、排ガスがいずれのバグを通過しても差し支えないようにしているので、バグの劣化や傷が無い限り各バグの捕集効率に大差はない。即ち、濾過機能が同じであるので粒度別捕捉という思想は適用できず、全般的には目詰まりが早まる。重ねている布間にダストが進入すると以後の動きがとれなくなり、通気目の閉塞を助長させる原因の一つともなるからである。
【0014】
また、バグは個々にリテイナによって開口部を支持するなどしてケーシングに固定されるので、通過するガスの流れは上下左右へと曲折する。従って、圧損が大きくなりがちで、排気ファン11としては能力の大きいものが要求される。それに応じてサイレンサの大型化も余儀なくされる。
【0015】
排ガスの温度を下げるためには上記したように外気が導入されるが、場合によっては冷却塔で強制冷却した空気、さらには冷却水を吹き込むといったことも行われる。外気等を導入しても湿気を少なからず持ち込むことになるので、いずれにしても降温操作は排ガスの乾燥度に影響を及ぼし、これも目詰まりの原因を助長していると言える。
【0016】
このようにバグの目詰まりは不可避なことであり、そのためのメンテナンスも大変な労力を要する。甚だしくはケーシング内に入ってバグに付着したダストを払い落とすといったことまで行わなければならなくなる。それにも増して厄介なことは、バグフィルタにホットダストが排ガスに伴われて紛れ込むことである。バグが部分的とはいえ焼損することは致命的なことであり、交換作業などの対応に迫られたときプラント自体の運転にも大きな影響を与える。
【0017】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたもので、その目的は、従来のバグフィルタを通過させるよりも遥かに高い温度の排ガスを流通させてもそれに耐えて随伴ダストを捕捉できること、熱交換器へは高温かつ粉塵の少ない排ガスを供給できるようにして内部器材でのトラブル発生を可及的に少なくすること、ダスト捕捉の多段化を可能にして粗粒や細粒の分別捕集による集塵効率の向上が図られること、集塵装置の運転を維持した状態で点検や保守作業が可能となること、排ガスを降温させる希釈用空気を供給しなくてもよいようにして排気ファンの小能力化等設備面での負担軽減や消費動力の低減ができること、を実現したステンレス鋼線ネットスクリーン式分離装置を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、流れの場に配置されたネットによって浮遊物を流れから補足できるようにした分離装置に適用される。その特徴とするところは、ネットが線径10ないし70μmのステンレススティールワイヤで編まれ、150ないし300メッシュとされていることである。
【0019】
ネットはステンレススティールワイヤを編んだ後にロールによって加圧され、鋼線を押し潰して、目開きが小さくされたものでもよい。
【0020】
図1を参照して、排ガス発生炉1と熱交換器4との間に配置され、線径10ないし70μmのステンレススティールワイヤを編んで150ないし300メッシュとしたネットスクリーン5が、流れに交差するように複数下流に向けて並べられ、生石灰粉末10(図3を参照)を混入させた含塵排ガス2からダストを除去した浄化ガスを、熱交換器4へ導出させるようにしていることである。
【0021】
ネットスクリーン5は流れの場から流れに対して直角方向に延びる閉鎖空間9(図2を参照)内に引き出されて、シェイキングされるようにしておく。また、複数のネットスクリーン5は、下流になるにつれてその目開きが小さくなるように配置されることが好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係るステンレス鋼線ネットスクリーン式分離装置を、その実施の形態を表した図面を基にして詳細に説明する。図3は、流れの場に配置されたネットによってダストを排ガスから取り除くようにした除塵装置を含むプラントの一例が表されている。
【0023】
具体的には、高炉1からの排ガス2を処理する系統を示しており、高炉排ガスに含まれるダストを除去するためのネットスクリーン式の除塵装置3が、高炉1と熱交換器4との間に設けられている。従って、排ガスが高温のまま直接除塵装置3に導入されるようになっており、その内部温度は排ガス温度近くなるまで上昇する。
【0024】
その除塵装置3は例えば図1に示すような直線流路を形成する煙道3Aとその下の集塵箱3Bとが主たる構造をなし、煙道でのガスの流れに交差するようにして複数のネットスクリーン5が下流に向けて順次並べられているネットスクリーン式分離装置である。そのネットスクリーンに使用されているのは、線径10ないし70μmの極めて細いワイヤを編んで150〜300メッシュとしたステンレススティールネット6であり、そのネットは周囲をフレーム7に固定するなどして面状に張られている。
【0025】
そのステンレススティールワイヤは極めて細い糸であり、これを横糸と縦糸にしてネットに編まれる。スティールワイヤネット6はクロスを織る場合の要領と似ているとはいえ、特殊技能をもった作業者に委ねなければならないほど簡単に織れるものではない。しかし、織ってしまえば適宜の大きさに鋏で簡単に切断できフレームに保持させれば1枚のネットスクリーンとすることができる。
【0026】
このようなネットスクリーン5を使用した除塵装置3の具体的構造の一例を、図1と図2を参照しながら述べる。煙道3Aには数枚のスクリーン5が並べられ、ネットスクリーンで流通が阻止されたダストを床面に堆積させることができる。そして、スクリーン直下の床の動きによって、溜まったダストを集塵箱3Bに集めることができるようになっている。
【0027】
この例においては床が固定床8Aと可動床8Bからなり、可動床の回転動作によってダストを落とすようにしている。固定床8Aはネットスクリーン5の下縁を支持するようになっていて、次に述べる図2のチャンバ9へのネットスクリーンの進退に際し移動ガイドとして機能するようにも配慮されている。
【0028】
各ネットスクリーン5は、図2からも分かるように、流れの場から流れに対して直角な方向へ延びる閉鎖空間内に引き出されたり、そこから煙道へ押し出したりできるようになっている。その空間はネットスクリーンを交換し、またスクリーンをシェイキングしてダストを払ったりするために確保されるもので、薄いが一枚のネットスクリーンをすっぽりと収容できるチャンバ9を形成する。なお、ネットスクリーンを上方へ引き出す構造としてもよいが、図2のように左右にチャンバを設けておくと、図1に示した集塵箱3Bによってスクリーンの動きや扱いに制約が生じるのを避けておくことができ、都合がよい。
【0029】
ネットスクリーン自体はそのネットの目開きを何種類も準備しておくことができるが、一般的には図1中の矢印の濃さから分かるように、スクリーンを通過するごとにダストを薄れさせることができる。ましてや、下流になるにつれて目開きが小さくなるように配置されていれば、最も上流側の位置で粗採りして徐々に捕捉粒度を落とすことで、目詰まりの発生頻度を少なくすることができる。
【0030】
このような構成の除塵装置3においては、高温の排ガスが各種サイズの塵を伴って導入され、それが各スクリーンを通過すると、上で述べたように粗いものから細かいものという順序で次々とダストの移行がスクリーンで阻止され、それぞれの可動床8Bに溜まって、排ガスの浄化が図られる。
【0031】
排ガスは例えば600ないし1,000℃といった高温であるため、実質的には乾燥した状態にある。ダストもサラサラするので、スクリーンに付着することがあっても、大部分はネット面に沿って滑り落ちる。なお、ダストの大きさから言えば70μm径のワイヤを用いたネットの150メッシュ(目開き約100μm)まででよく、それより大きければ背後には多くのスクリーンが必要となってしまい好ましくない。一方、36μm径のワイヤを用いた300メッシュ(同約50μm)を通過する小さいものは、排ガス発生炉から出るガス中には通常極めて少ない。従って、150ないし300メッシュのネットを採用すれば十分であるが、場合によっては、10μm径のワイヤで目開き50μmもしくはそれ以下といったものを製作し使用しても何ら差し支えない。
【0032】
いずれにしても目開きをどのように選定するかは、排ガス発生炉で処理する物質にも左右されるので、常に好適な目開きのネットが存在するとは限らない。そのような場合には、ステンレススティールワイヤを編んだ後に圧延ロール等を用いてネットを加圧し、鋼線を押し潰して目開きを小さくしておくということもできる。これによって織機操作が容易でないステンレススティールワイヤの太さの種類を少なくして、ネットスクリーンの低廉化を図ることもできる。
【0033】
ところで、排ガスが除塵装置3に導入される以前の段階で、図3に示すように生石灰粉末10を混入するようにしておく。これを含塵排ガス中の塩素系物質に反応させると、ダイオキシンの発生源を絶っておくことができるからである。生石灰は微細な粉末であり、図3に示した排気ファン11で誘引される排ガスに混入させやすい。一方、煙道にはスクリーンが立ちはだかっているので、生石灰の流出はスクリーンごとに一旦くい止められ、ネット面において排ガスとの接触時間を長くすることができる。それが各スクリーンで繰り返されるために、塩素系物質の除去効果は増大する。生成された塩化カルシウムは、ダストと共に落下して床上に集積される。
【0034】
床に溜まったダストは、図1に仮想線で示したようにヒンジを中心に可動床8Bを回転させると、集塵箱3Bに落とされる。可動床8Bは一斉に動かしてもよいし、時間をずらせてもよい。可動床8Bを図のように垂れ下げている間は、排気ファン11(図3を参照)によって煙道3Aに作用する負圧で集塵箱3B内の空気が吸い上げられ、それに伴って発塵しそうになるが、可動床8Bを短時間のうちに戻せば殆ど問題となることはない。集塵箱3Bに溜まったダストは、その後に図示しないレーキを作動させるなどしてホッパ12に掻き集められる。
【0035】
排ガスが高温であることによりダストの乾燥度が高いこともあって、ネットスクリーン5にダストが付着することは少ないが、運転時間が長くなると大なり小なり目詰まりが生じるのは避けられない。またネットに破れがないかどうかも点検する必要がある。そこで、保守・点検をしようとするスクリーン5が位置するところの側方にあるチャンバ9が使用される。
【0036】
図2を参照して、スクリーン5Aの一方の側のチャンバ9Lには既に新しいスクリーン5Mが格納されている。このスクリーン5Mを図示しないプッシュロッドなどによって煙道3Aの方向へ押すと、これがスクリーン5Aを他方のチャンバ9Rへ押し出す。煙道3Aに排ガス2が流れていることによってスクリーン5Mが風圧を受けても、固定床8Aの案内溝8aに載せられかつ天井溝3a(図1を参照)に嵌まっているので流されることはない。
【0037】
スクリーン5Mが煙道3Aに完全に進出すると、スクリーン5Aはチャンバ9Rに格納される。この間、煙道3Aには2枚のスクリーンが連なって排ガスの流れに立ちはだかることになるので、除塵作用に間断が生じることはない。この図の例で言えば3つの位置で同時にスクリーン5A、5B、5Cを入れ換えても、プラント稼動に全く支障をきたさない。
【0038】
チャンバ9Rに退避させられたスクリーン5Aは、そこでフレーム7に打撃が与えられるなどして振動が与えられ、ネットに付着したダストが落とされる。そのダストは、図示しない傾斜路等を介して集塵箱3(図1を参照)に滑り落とされる。スクリーン5Aのリフレッシュが図られると、逆の操作によっていずれスクリーン5Mと入れ替えればよい。
【0039】
使用済みのスクリーンを廃棄するとか異なる目開きのスクリーンに入れ替える場合には、チャンバ9の端部に設けた引き戸9aを開けばよい。煙道3Aは負圧であるので、引き戸のところから外気が進入することがあっても、ダストを伴った排ガスが吹き出ることはない。
【0040】
このような除塵装置3からは浄化された排ガス2が導出され、それが熱交換器4に導入される。ダストを殆ど伴わない排ガスが通過する熱交換器ではトラブルの発生が極めて少なくなり、保守作業は著しく軽減される。熱交換によって300℃程度まで降温することがあっても、ダイオキシン発生要因は既に取り除かれており、排ガスの大気放出に問題が生じることはない。
【0041】
ところで、一枚のスクリーンに使用するネットは一重でもよいし、二つ折りにしてもよい。複数枚を多重にしておくこともできる。また、目開きの異なるものを重ねるということも用途に応じて行えばよい。また、ネットスクリーンを流れに対して傾斜するように、即ち、スクリーン5Dを図1中に仮想線で示したように前倒し姿勢で設置することもできる。
【0042】
いずれにしても、スクリーンとスクリーンとの間隔も大きく確保する理由は特になく、通常はスクリーン間隔を50センチメートル程度にしておけば十分である。従って、バグフィルタに比べ、除塵装置の飛躍的な小型化が可能となる。そして、流れを直線状に維持しておくことができるので、ネットスクリーンが並んでいるとはいっても圧損は極めて低くなる。条件にもよるが、本発明者らのテストによれば、バグフィルタの場合の1/6以下に留まることを確認した。
【0043】
耐熱性について述べれば、1,200℃に曝した場合にネットが脆くなることは否定できないが、1,000℃では少し赤化するものの、除塵のための強度としては十分であることを確認した。ワイヤがステンレススティールであるので静電気も発生しにくく、他の金属ネットで生じるそれに原因する目詰まりを起すこともない。
【0044】
排ガスの温度を下げるための希釈用空気が混入されることもないので、そのためのブロアは必要でない。風量も炉からの排出量のみであり、排気ファンに要求される負荷も少なくなる。総じて、設備コスト・運転費用の大幅な低減が図られる。
【0045】
なお、本発明はワイヤステンレス鋼線ネットを使用したものであるが、これは上記した除塵装置に適用するだけでなく、流体からそれに含まれる混入物や浮遊物といったものを分離するためにも使用できる。そして、平面のネットとしてもよいし、籠状に成形して使用することもできる。また、ステンレススティールは熱伝導性が他の金属に比べて低いことから、用途としては遮光ネットや遮熱ネットとしても使用することができる。耐蝕性も良いことを考え合わせると、農業用等屋外で使用する各種ネットとしても利用の途が広がる。
【0046】
本発明によれば、ネットスクリーンが10ないし70μmのステンレススティールの細線を150ないし300メッシュに編んで形成できるので、1,000℃近くもの高熱に耐えかつ微細なダストまで捕捉できる。排ガス流は高温であるから乾燥した状態を維持して、ネットの目が細かくてもダストの付着は著しく少なくなり、付着しても払落しは極めて容易となる。ホットダストが紛れ込んでも簡単に焼損してしまうことはなく、除塵装置の故障が理由でプラントの運転に支障をきたすようなことは回避される。
【0047】
ネットスクリーンで集塵された排ガスは多少の温度降下が見られるがバグフィルタを通したときほどの落差はなく、例えば800℃以上の高い温度を保有できることが多く、場合によっては大量の熱エネルギを回収することが可能となる。排ガスを積極的に冷却する必要はなく、従って空気吹込用ブロアは不要であり、排気ファンの小能力化も図られる。
【0048】
ステンレススティールワイヤを編んだ後にロール加圧すれば、鋼線を押し潰して目開きを小さくしておくことができる。これによって目開きの種類を豊富に準備しておかなくても、ダストのサイズや性状に応じて予め簡単な加工を施しておくだけで、排ガスに応じた集塵効果を発揮させることができるようになる。
【0049】
ネットスクリーンを流れに交差して複数下流に向けて並べておけば、単純な形状の流れ場となって圧損が可及的に少なく抑えられ、排気ファンの低圧化をはじめ駆動系における動力消費量が大きく節減される。ネットスクリーンは簡単には破損することはないが、たとえ途中の一つが損傷しても他のネットスクリーンで捕捉でき、浄化ガスにダストが混入することはない。
【0050】
高温の排ガスに対して生石灰を投入散布するようにしているので、ダイオキシンの発生原因となる塩素系物質が高温状態下で予め取り除かれ、系外排出に先立ち300℃前後にまで排ガスを降温させても、ダイオキシンを発生させることがない。ブロアによる排ガスのボリュームアップもしないので、生石灰の大量投入も避けられる。投入された生石灰はCaCl2などとなって毒性がなく、これをネットスクリーンで捕捉しても、その後の処理に特別な問題を生じさせることもない。
【0051】
熱交換器へはネットスクリーンから出た浄化ガスを供給でき、熱交換器材に対してはメンテナンスフリーに近い状態にまでもっていくことができる。塩素系物質も除去された後での導入であり、熱交換器での腐蝕等の発生も大いに軽減される。
【0052】
ネットスクリーンを流れの場から流れに対して直角方向へ延びる閉鎖空間内に引き出すようにしておけば、ネットスクリーンの交換は容易となる。また流路から退避した位置でシェイキングさせるなどすれば、作業員が外部からの操作で簡単に清掃できる除塵装置を構成させることができる。
【0053】
ネットスクリーンの目開きを下流になるにつれて小さくなるように配列しておくなら、粗粒から細粒までを分別して捕捉でき、目詰まりの発生はますます遠のき、流速を上げて処理能力を高く維持させることができきるようにもなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るステンレス鋼線ネットスクリーン式分離装置の縦断面図である。
【図2】図1中のII−II線矢視図である。
【図3】排ガス発生炉とその下流の除塵装置、熱交換器を備えた排ガス処理系統図である。
【図4】排ガス発生炉とその排ガス処理系統にバグフィルタを設けた場合の従来技術例である。
【符号の説明】
1 高炉(排ガス発生炉)
2 排ガス
3 除塵装置
4 熱交換器
5 ネットスクリーン
6 ステンレススティールネット
9 チャンバ(閉鎖空間)
10 生石灰
Claims (5)
- 流れの場に配置されたネットによって浮遊物を流れから捕捉できるようにした分離装置において、
前記ネットは、線径10ないし70μmのステンレススティールワイヤで編まれ、150ないし300メッシュとされていることを特徴とするステンレス鋼線ネットスクリーン式分離装置。 - 前記ネットは、ステンレススティールワイヤを編んだ後にロールによって加圧され、鋼線を押し潰して、目開きが小さくされたものであることを特徴とする請求項1に記載されたステンレス鋼線ネットスクリーン式分離装置。
- 流れの場に配置したネットによってダストを排ガスから捕捉するようにした分離装置において、
排ガス発生炉と熱交換器との間に配置され、線径10ないし70μmのステンレススティールワイヤを編んで150ないし300メッシュとしたネットスクリーンが、流れに交差するように複数下流に向けて並べられ、生石灰粉末を混入させた含塵排ガスからダストを除去した浄化ガスを、前記熱交換器へ導出させるようにしていることを特徴とするステンレス鋼線ネットスクリーン式分離装置。 - 前記ネットスクリーンは、流れの場から流れに対して直角方向へ延びる閉鎖空間内に引き出されて、シェイキングされるようになっていることを特徴とする請求項3に記載されたステンレス鋼線ネットスクリーン式分離装置。
- 前記複数のネットスクリーンは、下流になるにつれてその目開きが小さくなっていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載されたステンレス鋼線ネットスクリーン式分離装置。
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2003
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