JP2004243287A - 光触媒性部材 - Google Patents

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Kenji Iida
健二 飯田
Satoru Okada
岡田  知
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Mitsui Chemicals Inc
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Mitsui Chemicals Inc
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Abstract

【課題】高透明かつ高分解性・高親水性を有する光触媒性部材を提供する。
【解決手段】基材表面に微細な2次元凸凹周期構造を作製し、その微細構造表面に光触媒性酸化チタン薄膜を形成することで触媒の接触表面積が大きくなり、光触媒機能が向上することで高い分解性と高い親水性を持った部材を実現できる。また、微細な2次元凸凹周期構造を有することで、外部から入射する光に対する屈折率の急激な変化が抑えられ、高い透明性も実現できる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物や車、テレビなどにの表面保護に用いられるガラスやプラスチック部材などの表面において高度な親水性・分解性を実現することにより、表面が汚れたり曇ったりすることを防止し、且つ部材の透明性をも向上する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、基板表面が汚れたり曇ったりするのを防止するために、光触媒活性を有する酸化チタンを基板表面に被覆するとよいことが知られている。これは酸化チタンに紫外線が照射されると、その表面にO2−(スーパーオキサイドイオン)と−OH(水酸ラジカル)という分解力を持つ2種の活性酸素が発生し、それによって有機物などによる汚れを防ぐものである。同時に、紫外線が照射されることで酸化チタン表面に−OH(親水基)が発生し親水性を有するため、表面の曇りも防止できるのである。
【0003】
このような光触媒活性を有する酸化チタンは、眼鏡のレンズ、自動車の窓ガラスやバックミラー、建物の窓ガラスや建物自体の表層面、便器や風呂場のタイルの表層面などと幅広い分野に適用されている。中でもレンズや窓ガラス、ミラーなどといった透明部材において汚れや曇りは作業性や安全性に大きく関わるため、重要な問題である。
【0004】
透明部材に酸化チタン薄膜を形成する際に必要なのは、高い光触媒活性効果を得ることと、部材の透明性の維持である。しかしながら酸化チタンは他の透明材料と比較して屈折率が高いため、その膜厚を厚くしすぎると光の屈折や干渉などにより透明性が失われる。一方で、その膜厚を薄くしすぎても、光触媒活性効果が抑制され、分解性や親水性が悪くなるといった問題がある。このようなことから、特開平11−91030、特開2002−53345、特開2002−166169などでは、酸化チタン薄膜の最適膜厚範囲を設定することで、適度な光触媒活性効果と透明性を持った部材を実現することを提案している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら酸化チタン薄膜の最適膜厚範囲を設定する方法では、部材設計の自由度を制限する上に、汚れや曇りを完全に除去するほどの光触媒活性効果は得られず、且つ部材自体の透明性を維持することもできないといった問題がある。
【0006】
本発明の目的は、上記の課題を克服するため基材表面に微細な2次元凸凹周期構造を作製し、その微細構造表面に光触媒性酸化チタン薄膜を形成することで光触媒機能を向上し、それによって高い分解性と高い親水性を持った部材を実現することである。さらには微細な2次元凸凹周期構造を有することで、外部から入射する光に対する屈折率の急激な変化を抑え、部材の高透明性を実現することである。これによって、従来技術では無し得なかった光触媒活性効果の向上と高い透明性の両立を図る。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基材表面に微細な2次元凸凹周期構造を所要し、且つその微細構造表面に光触媒性酸化チタン薄膜層が形成されていることを特徴とする光触媒性部材である。本発明に従えば、微細な2次元凸凹周期構造により光触媒性酸化チタン薄膜層の接触表面積が大きくなるので、光触媒活性効果が増大し、表面の分解性や親水性が向上する。また、基材表面を2次元凸凹周期構造とすることで、外部から入射する光に対する屈折率の急激な変化を抑えることができ、反射防止効果により高い透明性を実現することができる。
【0008】
前記2次元凸凹周期構造の周期間隔が1um以下であることが好ましい。周期間隔を1um以下にすることで光の波長オーダーとなり、反射防止効果が発現する波長帯を可視光領域にまで下げることができ、窓ガラスや眼鏡レンズ、ミラーなどへの適用が可能となる。
【0009】
さらに本発明に用いる前記基材が可視光線に対して70%以上の透過率を示す高透明な樹脂で作製されていることが好ましい。このように可視光に対して70%以上の透過率を持つことで、人間の見た目には問題にならないぐらい透明に見え、窓ガラスや眼鏡レンズ、ミラーなどへの適用が可能となる。また、基材に樹脂を適用することで、射出成形やホットエンボスなどの各種転写成形技術を用いた前記2次元凸凹周期構造の転写成形が可能となり、部材の量産性向上と低コスト化が実現できる。
【0010】
さらに本発明において、前記基材と光触媒性酸化チタン薄膜層との間に、保護層として透明な薄いセラミックス層を有することが好ましい。このように間に透明な薄いセラミックス層を有することで、基材の透明性を維持しながら、光触媒性酸化チタン薄膜の有機物を分解する作用と同様に樹脂製の基材表面を分解・劣化させることを防止することができる。
【0011】
さらに本発明において、前記光触媒性酸化チタン薄膜層が前記2次元凸凹周期構造表面にスパッタリング法により形成されていることが好ましい。スパッタリング法を用いることで、ナノメートルオーダーで膜厚制御しながら凸凹周期構造表面に一様に酸化チタン薄膜を形成することができる。
【0012】
また本発明において、前記光触媒性酸化チタン薄膜層が前記2次元凸凹周期構造表面に酸化チタン微粒子を含むコーティング液によって表面コート形成されていてもよい。このようにコーティング液によって酸化チタン微粒子を表面コートする手法を用いることで、より簡便に酸化チタン薄膜層を形成することが可能となり、部材の量産性向上と低コスト化が実現できる。
【0013】
【発明の実施形態】
基材表面に微細な2次元凸凹周期構造を作製し、その微細構造表面に光触媒性酸化チタン薄膜を形成すれば、触媒接触表面積の増大と屈折率の急激な変化の抑制により、高い光触媒活性効果と高い透明性の両立が可能であることを見出した。したがって本発明では、前記2次元微細凸凹周期構造を基板表面に作製し、その微細構造表面に光触媒性酸化チタン薄膜を形成することで触媒の接触表面積を大きくし、光触媒機能が向上した高分解性・高親水性の部材を実現する。また、前記2次元微細凸凹周期構造によって、外部から入射する光に対する屈折率の急激な変化を抑え、部材の高透明性も実現する。
【0014】
以下に、実施形態例を挙げ、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を具体的かつ詳細に説明する。
【0015】
(作成法1)
本発明の一例の断面形状を図1に示す。この構造は、表面に微細な2次元凸凹周期構造3が形成された基板1上に光触媒性酸化チタン薄膜2が成膜された構造をしている。前記2次元凸凹周期構造3は、例えば円錐や四角錐の形状をした微細構造物が上から見た図として図2に示す用に面内に分布した構造をしている。この例では微細構造物が正方格子形状をして面内分布をしているが、光触媒活性や透明性をより向上したい場合には、三角格子形状などの面内密度が高い形状が好ましい。
【0016】
この作製方法について、その一例を図3を用いて説明する。まず高透明なガラス基板面5上に四角形状の構造物が周期的に並んだ構造を、マスクアライナーや2光束干渉法、EB(電子線)描画法などの手法を用いたレジストパターニングによって面内に形成する(図3(a))。この際、レジストパターン6の周期は1um以下であることが好ましい。次にドライエッチングでガラス基板面を所望の深さエッチングする。ガラスをドライエッチングする際にはレジストマスク下へのエッチングの廻り込みが生じる。そのためエッチング後レジストを除去すると、自然と円錐もしくは四角錐形状の構造物が2次元周期的に並んだ形状が得られる(図3(b)、(c))。以上の過程で得られた2次元微細周期構造7を有したガラス基板表面上に、酸化チタン薄膜8スパッタリング法により成膜する(図3(d))。この際、酸化チタンの結晶構造がルチル型よりもアナターゼ型となるように基盤温度や成膜速度などの成膜条件を最適化するのが好ましい。このようにして、高い光触媒活性と透明性を兼ね合わせた部材を作製できる。
【0017】
(作成法2)
別の作製方法について、図4を用いて説明する。まず表面に円錐、もしくは四角錐などの窪み形状を表面に2次元周期的に並べられた金型(転写型)を作製する。この斜視図を図4(a)に、断面図を図4(b)に示す。金型に形成された2次元周期構造10の周期は1um以下が好ましい。また金型は電鋳などによって作製された金属製の金型が一般的だが、ガラス製もしくはシリコン製の金型を用いることもできる。この金型を用いて、射出成形もしくはホットエンボスなどの転写成形法により、PMMAなどの高透明な樹脂11に微細な2次元凸凹周期構造を転写成形する(図4(c))。成形された基板の微細構造表面上に、光触媒として不活性であり且つ透明な酸化シリコン薄膜や酸化アルミニウム薄膜などのセラミックス薄膜12を薄く成膜する(図4(d))。さらにその表面に、酸化チタン微粒子を含むコーティング液をスピンコート法やスプレーコート法により薄くコーティングする。その後、乾燥して溶媒を飛ばして酸化チタン微粒子を表面に密着させることで、微細な2次元凸凹周期構造表面上に光触媒性酸化チタン薄膜13を薄く成膜できる(図4(e))。この際、酸化チタン微粒子の結晶構造がルチル型よりはアナターゼ型である方が好ましい。このように微細加工には転写成形法を用い、成膜にはコーティング法を用いれば、高い光触媒活性と透明性を兼ね合わせた部材の量産性が向上し低コストに作製できる。
【0018】
【発明の効果】
以上のように、本発明の光触媒性部材を用いれば、基材表面に微細な2次元凸凹周期構造を有するために触媒の接触表面積が大きくなり、光触媒機能が向上することで高い分解性と高い親水性を持った部材を実現できる。また、微細な2次元凸凹周期構造を有することで、外部から入射する光に対する屈折率の急激な変化が抑えられ、高い透明性も実現できる。このようにして、高透明かつ高分解性・高親水性を有する光触媒性部材の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光触媒性部材の断面図である。
【図2】本発明の光触媒部材表面形状を2次元的に説明する図である。
【図3】光触媒部材の作製手順を説明する図である。
【図4】光触媒部材の別の作製手順を説明する図である。
【符号の説明】
1: 基板、 2: 光触媒性酸化チタン薄膜
3: 2次元凸凹周期構造、 4: 円錐形状の微細構造物
5: ガラス基板、 6: レジストパターン
7: 2次元凸凹周期構造、 8: 酸化チタン薄膜
9: 金型(転写型)、
10: 金型表面に形成された2次元凸凹周期構造
11: 高透明な樹脂、 12: セラミックス薄膜
13: 光触媒性酸化チタン薄膜

Claims (6)

  1. 基材表面に微細な2次元凸凹周期構造を備え、且つその微細構造表面に光触媒性酸化チタン薄膜層が形成されていることを特徴とする光触媒性部材。
  2. 前記2次元凸凹周期構造の周期間隔が1um以下であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒性部材。
  3. 前記基材が可視光線に対して70%以上の透過率を示す高透明な樹脂で作製されていることを特徴とする請求項1及至請求項2に記載の光触媒性部材。
  4. 前記基材と光触媒性酸化チタン薄膜層との間に、保護層として透明な薄いセラミックス層を有することを特徴とする請求項1及至請求項3に記載の光触媒性部材。
  5. 前記光触媒性酸化チタン薄膜層が前記2次元凸凹周期構造表面にスパッタリング法により形成されていることを特徴とする請求項1及至請求項4に記載の光触媒性部材。
  6. 前記光触媒性酸化チタン薄膜層が前記2次元凸凹周期構造表面に酸化チタン微粒子を含むコーティング液を表面コート、及び焼成することで形成されていることを特徴とする請求項1及至請求項4に記載の光触媒性部材。
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