JP2004241596A - 露光用マスクパターンの補正方法、並びに露光用マスクの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ステンシルマスクのたわみ等による露光用マスクパターンの歪みを精度良く、且つ高速に補正する方法、並びにこの補正方法を適用した露光用マスクの製造方法を提供すること。
【解決手段】位置ずれ測定用パターン2を有する露光用マスクによる露光、及び位置ずれ測定用パターン1を有する光用マスクによる露光を、ウエハ上の感光層に対して重ねて行う。感光層上で、光用マスクのパターン1を基準として、露光用マスクのパターン2の位置(x1 〜x4 及びy1 〜y4 )を測定する。この測定を、マスクパターンが形成されるメンブレンの全領域で行い、マスク歪み分布を取得する。このデータに基づいて、マスク歪みを相殺する補正を、マスクパターン設計データに対し一括して行う。1つのマスクに対して取得されたマスク歪み分布は、そのマスクとマスク材質及びマスク構造が同じマスクである場合には、そのまま利用することが可能である。
【選択図】 図1
【解決手段】位置ずれ測定用パターン2を有する露光用マスクによる露光、及び位置ずれ測定用パターン1を有する光用マスクによる露光を、ウエハ上の感光層に対して重ねて行う。感光層上で、光用マスクのパターン1を基準として、露光用マスクのパターン2の位置(x1 〜x4 及びy1 〜y4 )を測定する。この測定を、マスクパターンが形成されるメンブレンの全領域で行い、マスク歪み分布を取得する。このデータに基づいて、マスク歪みを相殺する補正を、マスクパターン設計データに対し一括して行う。1つのマスクに対して取得されたマスク歪み分布は、そのマスクとマスク材質及びマスク構造が同じマスクである場合には、そのまま利用することが可能である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置製造のリソグラフィ工程に好適な露光用マスクパターンの補正方法、並びに露光用マスクの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体デバイスはますます微細化され、光リソグラフィの解像限界を超えようとしている。このため、電子ビーム又はイオンビーム等の荷電粒子線やX線を用いて微細な回路パターンを描画する微細加工技術が開発されている。
【0003】
例えば、従来の、収束させた電子ビームによってウエハ等を走査して露光させる直描方式は、微細パターンになるほどデータ量が多くなり、描画時間が長くなって、生産性(スループット)が低下する。
【0004】
そこで、所定の回路パターンを有する露光用マスクに電子ビーム又はイオンビーム等を照射し、ウエハ上に回路パターンを一括転写する、電子ビーム露光装置又はイオンビーム露光装置が提案されている。
【0005】
これらの露光技術には、例えば、高エネルギーの電子ビームを使用する電子ビーム転写リソグラフィ(EPL:Electron Projection Lithography,H.C.Pfeifferet al.,Jpn.J.Appl.Phys.,(1995),34,6658参照。)、低エネルギーの電子ビームを使用する低速電子ビーム近接転写リソグラフィ(LEEPL:Low Energy Electron−beam Proximity projection Lithography,T.Utsumi,U.S.Patent No.5831272(3 November 1998) 参照。)、イオンビームを使用するイオンビーム転写リソグラフィ(IPL:Ion Projection Lithography,H.Loeschner et al.,J.Vac.Sci.Technol.,(2001),B19,2520参照。)等がある。
【0006】
上記の低速電子ビーム近接転写リソグラフィは、線幅100nm以下のパターンに適用できる、高スループットの電子ビーム露光技術の一つである。この方法では、ウエハと露光用マスクとの間隔を、例えば約50μmに近接配置した状態で、平行低加速電圧電子ビームをウエハに照射することにより、マスクパターンをウエハに等倍転写する。
【0007】
ここで用いられる露光用マスクは、従来の光リソグラフィで用いられてきたマスクとは構造が異なるステンシル様のマスクで、ステンシルマスクと呼ばれる。ステンシルマスクは、露光用ビームを透過しないメンブレン(薄膜)に、ビームが通過するための露光ビーム通過孔(以下、省略してビーム通過孔と呼ぶことがある。)が設けられたものであり、ビーム通過孔は所望のパターン形状に形成される。
【0008】
ステンシルマスクにおいては、ビーム通過孔を通過するビームが孔の側壁で反射し、パターン精度が損なわれるのを防止する目的で、非常に薄いメンブレンが用いられる。また、ビーム通過孔をエッチングにより高精度で加工するためにも、メンブレンは薄い方がよい。このため、微細パターン形成用のステンシルマスクでは、非常に薄いメンブレンが用いられる。具体的には、厚さ100nm〜10μ程度のSi、SiC又はダイアモンド等の薄膜がメンブレンとして用いられる。
【0009】
図10は、ステンシルマスクの1例50の平面図(a)、及び平面図(a)に示したX−X’線における断面図(b)である。図10に示すように、ステンシルマスク50は、電子ビームを通過させるための幅0.03〜0.04μmの複数の露光ビーム通過孔52が形成された、厚さ0.4〜0.5μmのメンブレン(薄膜)51を有している(なお、図10では、簡略化して示すため、多数ある露光ビーム通過孔を数個分の露光ビーム通過孔52で代表させて示している。)。このメンブレン51は、ビーム通過孔52の周囲に形成された開口部55を有するSiO2膜53を介して、Siウエハ54に支持されている。ステンシルマスク50の全厚は、例えば725μmである。
【0010】
次に、図11及び12を参照しながら、ステンシルマスク50を用いた電子ビーム露光処理工程及びエッチング工程を説明する。
【0011】
まず、図11(a)に示すように、Si基板61上にSiO2膜62及び配線パターン等に加工される金属薄膜層63を所定の厚さに積層して形成し、更に、図11(b)に示すように、金属薄膜層63の上に電子ビームレジスト層64を形成する。
【0012】
次に、図11(c)に示すように、電子ビームレジスト層64の上の所定の位置にステンシルマスク50を配置し、少し離した状態で電子ビーム65を照射し、露光ビーム通過孔52を通じて電子ビームレジスト層64を所定の露光パターンで露光する。
【0013】
次に、電子ビームレジスト層64を現像して、不要部を除去する。例えば上記の電子ビームレジスト64がネガ型であれば、図12(d)に示すように、電子ビーム65で照射されたレジスト部分のみが残り、照射されなかったレジスト部分は除かれる。
【0014】
次に、図12(e)に示すように、所定のパターンに加工された電子ビームレジスト層64をマスクとして、金属薄膜層63をSiO2膜62の表面に至るまでドライエッチングで除去する。
【0015】
次に、図12(f)に示すように、レジスト64をアッシング等により除去すると、配線パターン等の、所望の形状を有する金属薄膜層63を形成することができる。
【0016】
ステンシルマスクは、パターンと同じ形状の露光ビーム通過孔を有するため、パターン形状やメンブレンの材質、厚さ等の条件によっては、1枚のマスクでパターン全体を形成することができない場合がある。例えばドーナツ形のパターンのように、露光ビーム通過孔の中に孤立した島状のメンブレンを残すパターンは、孤立したメンブレンを支持できないので、1枚のマスクで形成することはできない。
【0017】
このような場合には、複数の相補形マスクを用いる方式(相補分割)が採用される。この方式では、所望のパターンを複数のマスクに分割して形成し、それぞれのマスクで同一のウエハ上に重ねて露光を行うことにより、各マスクパターンをウエハ上で合成して、所望のパターンを完成させる。
【0018】
図13は、相補形ステンシルマスクを概念的に説明するための平面図である。図13(a)に示す露光パターン56は、中央部のメンブレン51aを支持することができないので、1枚のステンシルマスクで形成することはできない。しかし、図13(b)のように相補分割して、上半分の露光パターン56Aを形成できるステンシルマスク50Aを用いた露光と、下半分の露光パターン56Bを形成できるステンシルマスク50Bを用いた露光を同一ウエハ上に重ねて行うことで、図13(c)のように、図13(a)の露光パターン56を形成することができる。
【0019】
前述したように、ステンシルマスクは、非常に薄いメンブレン(薄膜)の上にマスクパターンが形成されているため、メンブレンの変形によって、マスクパターンに歪みを生じやすい。マスクパターンが歪んで最も懸念される問題は、パターン精度が劣化することであるが、それとともに、相補形マスクであれば、各マスクによって形成される露光パターン間のつなぎ精度(整合性)が劣化する問題もある。
【0020】
この歪みを補正する方法として、露光ビームの照射角度を調整するなど、露光装置によって補正する方法がある。しかし、一括露光を行う場合には、露光箇所ごとに異なる補正を露光装置によって行うのは、不可能である。
【0021】
歪みを補正する別の方法として、前もって何らかの方法で歪みの量を求めておき、この歪みと相殺する補正を加えたパターンを、ステンシルマスク上に形成する方法がある。この方法では、露光箇所ごとに異なる補正を詳細に行うことも不可能ではないから、歪みの量が予測できる場合には、非常に有効な方法であると考えられる。
【0022】
既に、特許文献1には、デバイスパターンを感応基板上に転写露光するための原パターンをレチクル上に描画するに際し、正規のパターンデータとともに、パターン変形の傾向を描画装置に入力し、このパターン変形の傾向に基づいて正規のパターンデータを補正し、この補正したデータでマスクパターンを描画する方法が提案されている。しかしながら、特許文献1には、パターン変形の傾向の具体的内容やその求め方等は、記載されていない。
【0023】
【特許文献1】
特開2000−356848号公報(第2及び6頁、図1)
【0024】
【発明に至る経過】
本出願人は、鋭意検討した結果、上記のステンシルマスクを作製するときに生じるマスクパターンの歪みの原因に、次の2つが含まれていることを明らかにした。
【0025】
その1つは、メンブレンに露光ビーム通過孔を形成する際に生ずる、メンブレン内部の応力の変化に起因する歪みである(以下、この応力の変化による歪みを、応力歪みと呼ぶことにする。)。図14は、その1例を示す小メンブレン領域4の平面図である。なお、小メンブレン領域4とは、メンブレンを多数の小区画に区分したときの1区画であり、歪みの補正を行う際、一括処理できる単位領域として扱うことのできる領域である(この点に関しては、実施の形態の項で後述する。)。図14に示すように、小メンブレン領域4に設計パターン通りに露光ビーム通過孔3を形成しても、最終的に得られる露光ビーム通過孔の位置や形状は、設計値と異なったものになる。その原因が、応力歪みである。
【0026】
即ち、ステンシルマスクの作製工程において、露光ビーム通過孔を形成する前のメンブレンでは、メンブレンを構成する結晶層が成長する時に生じた初期応力や、応力調整のためになされるドーピングによる変化や、マスク構造に起因する応力等の様々な内部応力が残留し、これらの応力がビーム通過孔を形成する前のメンブレンの形状でバランスを保っている(なお、この内部応力は、メンブレンが重力によってたわむのを抑制する働きもしている。)。
【0027】
このメンブレンに、露光ビーム通過孔が形成されると、ビーム通過孔の部分の内部応力が解放されるため、内部応力のバランスが崩れ、ビーム通過孔の周囲のメンブレンが変形し、ビーム通過孔の位置や形状が歪むとともに、周囲のビーム通過孔にも歪みが生じる。特に、メンブレンが薄い場合、材質によっては歪みが大きくなり、ビーム通過孔の形成によるパターンの歪みは無視できない。
【0028】
この応力歪みは、ビーム通過孔の形状、及びメンブレン上でビーム通過孔を取り囲んでいる周囲の状態に応じて変化する。従って、応力歪みの補正は、各ビーム通過孔ごとに行う必要がある。
【0029】
この応力歪みについては、本出願者は、既に、有限要素法に基づいて信頼性高く、高速に計算して、マスクパターンを補正する方法を提案した(特願2002−119845;以下、特願2002−119845に係る発明を先願発明と称する。)。この方法では、メンブレンを複数の要素領域に均等に分割し、各要素領域における開孔部(露光ビーム通過孔)の面積密度の大小に応じて各要素領域の仮想的厚さを設定する。更に、開孔部の形状の特徴に応じて疑似弾性マトリックスを割り当てる。そして、開孔部を有する一定厚さの各要素の弾性マトリックスを、開孔部を持たない仮想的厚さの要素の疑似弾性マトリックスで近似して、有限要素法により歪みの大きさを高速で計算する。
【0030】
【発明が解決しようとする課題】
マスクパターンの歪みを生ずるもう1つの原因は、メンブレンに作用する重力等によるメンブレン全体のたわみ(変形)である。図15に示すように、ステンシルマスクは、マスクにパターンを形成している時と、ウエハへの露光を行う時とでは、マスクの向きが上下反転する。このため、重力が逆向きに作用して、ウエハへの露光時にステンシルマスクが歪むという問題が生じる(メンブレン全体のたわみ(変形)によるマスクパターンの歪みをマスク歪みと呼ぶことにする。重力以外の歪みの原因として、電子ビームの吸収によるマスクの熱膨張等も考えられる。)。
【0031】
マスク歪みを前もって調べる方法の1つに数値解析がある。しかし、精度の良い解析には計算時間がかかり、又、結果を保証できる十分な検討がなされていない計算は、実用的ではない。そのため、簡潔で、且つ、精度の良い補正方法が求められている。
【0032】
本発明の目的は、上記のような実情に鑑み、メンブレンのたわみ等による露光用マスクパターンの歪みを精度良く、且つ高速に補正する方法、並びにこの補正方法を適用した露光用マスクの製造方法を提供することにある。
【0033】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の第1の発明は、薄膜に露光ビーム通過孔が形成され、前記露光ビーム通過孔を通じて所定パターンに露光を行うのに用いられる露光用マスクのマスクパターンの補正方法において、前記薄膜の変形による前記露光ビーム通過孔の歪みを相殺する補正をマスクパターンに対し一括して行う露光用マスクパターンの補正方法に係わるものである。
【0034】
また、本発明の第2の発明は、薄膜に露光ビーム通過孔が形成され、前記露光ビーム通過孔を通じて所定パターンに露光を行うのに用いられる露光用マスクのマスクパターンの補正方法において、前記露光用マスクを用いて得られた露光パターンと、基準マスクによる基準露光パターンとを比較して、前記薄膜の各領域ごとの歪みの分布データを取得する工程と、この歪みの分布データを用いて、前記薄膜の変形による前記露光ビーム通過孔の歪みを相殺する補正を行う工程とを有する、露光用マスクパターンの補正方法に係わるものである。
【0035】
更に、本発明は、前記露光用マスクのマスクパターンの補正方法を実施して、前記所定パターンの露光用マスクを設計する、露光用マスクの製造方法にも係わるものである。
【0036】
本発明の第1の発明によれば、前記薄膜に形成されマスクパターンの補正方法において、前記薄膜の変形による前記露光ビーム通過孔の歪みを相殺する補正をマスクパターンに対し一括して行う。この結果、前記露光ビーム通過孔の歪みを精度良く、且つ高速に補正することができる。また、この補正を適用することで、前記所定パターン通りの露光を行うことのできる前記露光用マスクを作製することができる。
【0037】
また、本発明の第2の発明によれば、前記薄膜に形成されマスクパターンの補正方法において、前記露光用マスクを用いて得られた露光パターンと、基準マスクによる基準露光パターンとを比較して、前記薄膜の各領域ごとの歪みの分布データを取得し、この歪みの分布データを用いて、前記薄膜の変形による前記露光ビーム通過孔の歪みを相殺する補正を行う。この結果、前記基準露光パターンを基準とする補正を行うことができる。また、この補正を適用することで、前記基準露光パターンを基準として、高い精度で露光を行うことのできる、前記露光用マスクを作製することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の発明においても、前記露光用マスクを用いて得られた露光パターンと、基準マスクによる基準露光パターンとを比較して、前記薄膜の各領域ごとの歪みの分布データを取得し、このデータに基づき前記露光ビーム通過孔の歪みを相殺する補正を行うのがよい。これにより、本発明の第2の発明と同様に、前記基準露光パターンを基準とする補正を行うことができる。また、この補正を適用することで、前記基準露光パターンを基準として、高い精度で露光を行うことのできる前記露光用マスクを作製することができる。
【0039】
本発明において、前記露光用マスクによる露光と、前記基準マスクによる露光とを共通の感光層に対して行い、この感光層の露光パターン(露光後の現像で得られた感光層パターン)を実測して比較し、前記歪みの分布データを取得するのがよい。前記基準マスクとしては、特に限定されるものではないが、通常、重力等による変形のないガラス基板等の上に形成された光マスクが好ましい。これにより、前記露光用マスクの変形による露光パターンの歪みを確実に除去することができる。また、相補形のステンシルマスクでは、そのうちの1枚を基準マスクとすることもできる。これにより、各相補形マスクによって形成される露光パターン間のつなぎ精度(整合性)が効果的に改善される。
【0040】
また、前記歪みの分布データによって、前記基準マスクによる基準の露光において発生するパターン歪みに対して前記露光ビーム通過孔の歪みを比較して合わせ込み、前記補正を行うのがよい。例えば、ステンシルマスクを用いた電子ビーム露光と、光マスクを用いた光露光とを併用する場合、光マスクとその露光装置とにより発生するパターン歪み、プレスメントエラーに対して、電子ビーム露光の合わせ込みをすることになり、電子ビーム露光と光露光との精度の良いミックスアンドマッチ(又はハイブリッド露光)が可能になる。
【0041】
本発明に基づくマスクパターン補正方法は、電子ビーム、イオンビーム又はX線によるリソグラフィで用いられる、前記露光用マスクの製造に適用するのがよい。
【0042】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図面参照下に具体的に説明する。
【0043】
実施の形態1
図4は、本実施の形態における歪み補正工程のフロー図である。所望の回路パターンに対応するマスクパターン設計データは、そのままマスクパターン描画データとして使われるのではなく、応力歪み及びマスク歪みと相殺する補正を加えられた後、マスクパターン描画データとして使われる。図4では、先に応力歪みを補正し、次にマスク歪みを補正する流れになっているが、この順序は逆でもよい。
【0044】
応力歪みの補正は、必要に応じて行えばよいが、前述した先願発明の応力歪みの計算方法を用い、高速且つ信頼性の高い処理を行うことができる。
【0045】
マスク歪みの補正に対しては、露光用マスクによる露光と、基準マスクによる露光とを共通の感光層に対して行い、この感光層の露光パターンを実測して、マスク歪みによる位置ずれのデータを取得する。そして、このデータに基づいて、マスク歪みを相殺する補正を、マスクパターン設計データに対し一括して行う。基準マスクとしては、光用マスクを使用する。
【0046】
以下、マスク歪み分布の測定法を具体的に説明する。図1(a)及び(b)は、マスク歪み分布を得るための位置ずれ測定用パターン1及び2の例を示す。光用マスクには、図1(a)に示すように、光学系の収差等による歪みの少ない十字形のパターン1がよい。ステンシルマスクには、例えば図1(b)に示す正方形パターンが形成されている。
【0047】
図1(c)は、露光によってウエハ上の感光層に形成された、それぞれのパターン1及び2を示す。ウエハ上では、光用マスクの位置ずれ測定用パターン(十字形)1を基準として、これに対するステンシルマスクの位置ずれ測定用パターン(正方形)2の位置、即ち、図中の矢印で示した距離x1 〜x4 及びy1 〜y4 を測定する。これらの値の設計値からの変化分から、対応する小メンブレン領域4の位置のずれを検出することができる。
【0048】
距離x1 〜x4 及びy1 〜y4 を実際に測定する主な方法は、2通りある。その1つは、走査型電子顕微鏡を用いる方法である。この方法では、パターン1及び2を含む領域を電子ビームで走査し、表面から放出される2次電子を測定して走査領域の画像情報を取得し、パターン1及び2のエッジを検出して、その距離を測定する。もう1つは、光学的に行う方法である。この方法では、パターン1及び2を含む領域に光を照射し、反射光の強度変化からパターン1及び2のエッジを検出して、その距離を測定する。
【0049】
上記の測定を、マスクパターンが形成されるメンブレンの全領域で繰り返して行い、マスク歪み分布を取得する。即ち、位置ずれ測定用パターン(十字形)1及び位置ずれ測定用パターン(正方形)2を、それぞれ、各マスク全体に配置し、図2に示すように同一のウエハ上の感光層へ転写し、感光層上のパターンを比較する。ここで、全メンブレン領域を小メンブレン領域4に分割する数や、そこに形成する位置ずれ測定用パターンの形状は、適宜選択すればよい。小メンブレン領域4のサイズを小さくするほど、より詳細なマスク歪み分布を取得することができるが、そのために必要となる作業量は急激に増加する。従って、要求される精度を考慮して、適切な小メンブレン領域4のサイズを決める必要がある。
【0050】
また、このマスク歪み分布の取得は複数回繰り返し、図3のフローのようにマスク歪分布の平均化を行うことでより精度が向上する。取得したマスク歪み分布をもとにして、図5に示すように、マスクパターン設計データに補正を加え、マスクパターン描画データを作成する。
【0051】
次に、図6及び7を参照しながら、マスク歪みの補正法を説明する。メンブレンのたわみ等によるマスク歪みは、パターン形状に依存しない変形である。このようなメンブレンの変形では、メンブレンを十分小さい多数の小区画(これを小メンブレン領域と呼んでいる。)に区分して考えると、各小メンブレン領域自体は、ほとんど形を変えないまま、ある方向に位置をずらせているにすぎないと考えられる。つまり、各小メンブレン領域の変形は、小メンブレン領域ではほとんど無視できるほど小さい変形であるが、メンブレン全体では、それらが多数積算されて、メンブレンの変形を生み出している。
【0052】
図6(a)は、上記の、マスク歪みにおける変形の特徴を表す図である。パターン形成時の配置(左図)とウエハ露光時の配置(右図)とをを比べると、小メンブレン領域4は、形を変えないまま、本来の位置4Aから4Bに位置のずれ(d)5を起こし、その結果として小メンブレン領域4の上のすべての露光ビーム通過孔3が同じ方向にdだけずれている。
【0053】
図6(b)は、その補正法を示す平面図である。ここでは、予め位置のずれ(d)5を見込んでそれと相殺するように、逆方向に補正(−d)6を加えた位置に露光ビーム通過孔3を配置する(右図)。
【0054】
次に、図7(c)に示すように、この補正されたパターンで作製されたマスクを用いてウエハを露光すると、ウエハ露光時に生ずる位置ずれ(d)5と予め加えておいた補正分(−d)とが相殺して、小メンブレン領域4のすべての露光ビーム通過孔3が適正な位置に配置される。ここでの補正操作をまとめておくと、次式の通りである。
補正後の座標 = 補正前の座標 + 補正量
補正量 =(−1)× 歪み量
【0055】
既述したように、小メンブレン領域4のすべての露光ビーム通過孔3が同じ方向にdだけずれるので、小メンブレン領域4内の露光ビーム通過孔3全体に一括して補正を行う。図7(d)のように、領域4内の露光ビーム通過孔3の1つ1つに補正を加える方法は、計算が煩雑になるので、本実施の形態では行わない。
【0056】
上記のように、1つの小メンブレン領域4における位置のずれが一定であるという条件を満たすためには、小メンブレン領域4内の位置の違いによる歪みの変化が無視できるほど、小メンブレン領域4のサイズが十分小さく設定されていなければならない。一方、既述したように、小メンブレン領域4のサイズを小さくするほど、マスク歪み分布を取得するために必要となる作業量は急激に増加する。従って、要求される精度を考慮して、適切な小メンブレン領域4のサイズを決める必要がある。
【0057】
本実施の形態によれば、マスク歪分布を一度作成するだけで、容易に精度良くマスク歪みの補正を行うことができる。マスク歪み分布は、応力歪みと異なり、マスクパターンの影響を受けにくい。このため、1つのマスクに対して取得されたマスク歪み分布は、再現性が高く、そのマスクとマスク材質及びマスク構造が同じマスクである場合には、そのまま利用することが可能である。
【0058】
本方法は、ステンシルマスクを使用する、電子ビーム、イオンビーム、及びX線によるリソグラフィに応用することが出来る。
【0059】
実施の形態2
実施の形態1の方法は、図4に示されているように、応力歪みの補正とマスク歪みの補正とを分けて行うことを前提としているため、歪みの補正に2工程を必要とする。また、小メンブレン領域4のサイズを小さくとる必要のあるマスク歪みに対しては、必要な作業量が多くなる傾向がある。従って、場合によっては、ウエハ上で露光用マスクを用いて得られた露光パターンと、基準マスクを用いて得られた基準露光パターンとを直接比較して、個々の露光ビーム通過孔に対し1つ1つ補正を行う方が容易である場合も考えられる。本実施の形態は、そのような補正方法の1例である。基準マスクとしては、光用マスクを使用する。
【0060】
図8は、本実施の形態で行う、マスクパターンの位置ずれの測定を示している。位置ずれの測定方法は、図1を用いて説明した実施の形態1の方法と同様であるが、位置ずれの測定は、個々の露光ビーム通過孔に対して行う。即ち、位置ずれ測定用パターン(十字形)1を有する光マスクと、設計パターン通りにマスクパターンを形成したステンシルマスクとを用いて、同一ウエハに重ねて露光し、感光層上で両パターンを比べて、例えば、露光ビーム通過孔13の位置ずれ(D1)15及び露光ビーム通過孔14の位置ずれ(D2)16を測定する。
【0061】
図8中、正方形の露光ビーム通過孔14の位置ずれ(D2)16は、主にマスク歪みのみによるのに対し、L字形の露光ビーム通過孔13の位置ずれ(D1)15には、マスク歪みの他に応力歪みが付け加わっているため、両者は異なっている。
【0062】
本実施の形態の歪み補正の方法では、位置ずれ(D)の原因の解析は不要で、基準露光パターン1を用いて露光ビーム通過孔ごとに位置ずれ(D)を実測するのみでよい。位置ずれ(D)が求まれば、補正の方法は実施の形態1と同様である。つまり、設計パターンの位置に位置ずれ(D)と相殺する補正(−D)を加えた位置に露光ビーム通過孔を形成する。例えば、図9(a)に示すように、露光ビーム通過孔13に対しては−D1の補正17を行い、露光ビーム通過孔14に対しては−D2の補正18を行う。このようにすると、図9(b)に示すように、ウエハ露光時においては、露光ビーム通過孔13及び露光ビーム通過孔14のいずれもが、本来の位置に設置されることになる。
【0063】
本実施の形態で重要なことは、露光ビーム通過孔ごとに位置ずれ(D)が実測できることであり、そのために基準露光パターン1が本質的に重要な役割をはたしている。
【0064】
以上に述べた実施の形態は、本発明の技術的思想に基づいて適宜変更可能である。
【0065】
【発明の作用効果】
本発明の第1の発明によれば、薄膜に露光ビーム通過孔が形成され、露光ビーム通過孔を通じて所定パターンに露光を行うのに用いられる露光用マスクのマスクパターンの補正方法において、薄膜の変形による露光ビーム通過孔の歪みを相殺する補正をマスクパターンに対し一括して行う。この結果、露光ビーム通過孔の歪みを精度良く、且つ高速に補正することができる。また、この補正を適用することで、所定パターン通りの露光を行うことのできる露光用マスクを作製することができる。
【0066】
また、本発明の第2の発明によれば、薄膜に露光ビーム通過孔が形成され、露光ビーム通過孔を通じて所定パターンに露光を行うのに用いられる露光用マスクのマスクパターンの補正方法において、露光用マスクを用いて得られた露光パターンと、基準マスクによる基準露光パターンとを比較して、薄膜の各領域ごとの歪みの分布データを取得し、この歪みの分布データを用いて、薄膜の変形による露光ビーム通過孔の歪みを相殺する補正を行う。この結果、基準露光パターンを基準とする補正を行うことができる。また、この補正を適用することで、基準露光パターンを基準として、高い精度で露光を行うことのできる、露光用マスクを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に基づき、小メンブレン領域の位置のずれを測定する方法を示す平面図である。
【図2】同、メンブレン全体でのマスク歪み分布データを取得する方法を示す平面図である。
【図3】同、マスク歪み測定データの精度の向上法を示すフロー図である。
【図4】同、マスクパターンの歪みを補正する工程を示すフロー図である。
【図5】同、マスク歪みを補正する工程を示すフロー図である。
【図6】同、マスク歪みを補正する方法を示す平面図である。
【図7】同、マスク歪みを補正する方法を示す平面図である。
【図8】本発明の実施の形態2に基づき、マスクパターンの位置ずれを測定する方法を示す平面図である。
【図9】同、マスクパターンの歪みを補正する方法を示す平面図である。
【図10】ステンシルマスクの1例の平面図(a)、及びそのX−X’線における断面図(b)である。
【図11】同、ステンシルマスクによる露光処理工程を順次示す断面図である。
【図12】同、ステンシルマスクによる露光処理工程後のエッチング工程を順次示す断面図である。
【図13】相補ステンシルマスクの概念を説明する平面図である。
【図14】内部応力変化によってマスクパターンの歪みが生じることを示す小メンブレン領域の平面図である。
【図15】重力の作用によってマスクパターンの歪みが生じることを示すステンシルマスクの要部概略断面図である。
【符号の説明】
1…位置ずれ測定用パターン(十字形)、
2…位置ずれ測定用パターン(正方形)、3…露光ビーム通過孔、
3A…本来の露光ビーム通過孔の位置、
3B…歪みでずれた露光ビーム通過孔の位置、
3C…予め−dだけ補正した露光ビーム通過孔の位置、4…小メンブレン領域、
4A…本来の小メンブレン領域の位置、
4B…歪みでずれた小メンブレン領域の位置、5…位置のずれ(d)、
6…位置の補正(−d)、11…座標基準線、13、14…露光ビーム通過孔、
13A、14A…本来の露光ビーム通過孔の位置、
13B、14B…歪みでずれた露光ビーム通過孔の位置、
15…位置のずれ(D1)、16…位置のずれ(D2)、
17…位置の補正(−D1)、18…位置の補正(−D2)、
50…ステンシルマスク、51…メンブレン(薄膜)、
52…露光ビーム通過孔、53…SiO2膜、54…Siウエハ、
55…開口部、61…Si基板、62…SiO2膜、63…金属薄膜層、
64…電子ビームレジスト、65…電子ビーム
x1 〜x4 …x軸方向位置ずれ測定データ、y1 〜y4 …y軸方向位置ずれ測定データ
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置製造のリソグラフィ工程に好適な露光用マスクパターンの補正方法、並びに露光用マスクの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体デバイスはますます微細化され、光リソグラフィの解像限界を超えようとしている。このため、電子ビーム又はイオンビーム等の荷電粒子線やX線を用いて微細な回路パターンを描画する微細加工技術が開発されている。
【0003】
例えば、従来の、収束させた電子ビームによってウエハ等を走査して露光させる直描方式は、微細パターンになるほどデータ量が多くなり、描画時間が長くなって、生産性(スループット)が低下する。
【0004】
そこで、所定の回路パターンを有する露光用マスクに電子ビーム又はイオンビーム等を照射し、ウエハ上に回路パターンを一括転写する、電子ビーム露光装置又はイオンビーム露光装置が提案されている。
【0005】
これらの露光技術には、例えば、高エネルギーの電子ビームを使用する電子ビーム転写リソグラフィ(EPL:Electron Projection Lithography,H.C.Pfeifferet al.,Jpn.J.Appl.Phys.,(1995),34,6658参照。)、低エネルギーの電子ビームを使用する低速電子ビーム近接転写リソグラフィ(LEEPL:Low Energy Electron−beam Proximity projection Lithography,T.Utsumi,U.S.Patent No.5831272(3 November 1998) 参照。)、イオンビームを使用するイオンビーム転写リソグラフィ(IPL:Ion Projection Lithography,H.Loeschner et al.,J.Vac.Sci.Technol.,(2001),B19,2520参照。)等がある。
【0006】
上記の低速電子ビーム近接転写リソグラフィは、線幅100nm以下のパターンに適用できる、高スループットの電子ビーム露光技術の一つである。この方法では、ウエハと露光用マスクとの間隔を、例えば約50μmに近接配置した状態で、平行低加速電圧電子ビームをウエハに照射することにより、マスクパターンをウエハに等倍転写する。
【0007】
ここで用いられる露光用マスクは、従来の光リソグラフィで用いられてきたマスクとは構造が異なるステンシル様のマスクで、ステンシルマスクと呼ばれる。ステンシルマスクは、露光用ビームを透過しないメンブレン(薄膜)に、ビームが通過するための露光ビーム通過孔(以下、省略してビーム通過孔と呼ぶことがある。)が設けられたものであり、ビーム通過孔は所望のパターン形状に形成される。
【0008】
ステンシルマスクにおいては、ビーム通過孔を通過するビームが孔の側壁で反射し、パターン精度が損なわれるのを防止する目的で、非常に薄いメンブレンが用いられる。また、ビーム通過孔をエッチングにより高精度で加工するためにも、メンブレンは薄い方がよい。このため、微細パターン形成用のステンシルマスクでは、非常に薄いメンブレンが用いられる。具体的には、厚さ100nm〜10μ程度のSi、SiC又はダイアモンド等の薄膜がメンブレンとして用いられる。
【0009】
図10は、ステンシルマスクの1例50の平面図(a)、及び平面図(a)に示したX−X’線における断面図(b)である。図10に示すように、ステンシルマスク50は、電子ビームを通過させるための幅0.03〜0.04μmの複数の露光ビーム通過孔52が形成された、厚さ0.4〜0.5μmのメンブレン(薄膜)51を有している(なお、図10では、簡略化して示すため、多数ある露光ビーム通過孔を数個分の露光ビーム通過孔52で代表させて示している。)。このメンブレン51は、ビーム通過孔52の周囲に形成された開口部55を有するSiO2膜53を介して、Siウエハ54に支持されている。ステンシルマスク50の全厚は、例えば725μmである。
【0010】
次に、図11及び12を参照しながら、ステンシルマスク50を用いた電子ビーム露光処理工程及びエッチング工程を説明する。
【0011】
まず、図11(a)に示すように、Si基板61上にSiO2膜62及び配線パターン等に加工される金属薄膜層63を所定の厚さに積層して形成し、更に、図11(b)に示すように、金属薄膜層63の上に電子ビームレジスト層64を形成する。
【0012】
次に、図11(c)に示すように、電子ビームレジスト層64の上の所定の位置にステンシルマスク50を配置し、少し離した状態で電子ビーム65を照射し、露光ビーム通過孔52を通じて電子ビームレジスト層64を所定の露光パターンで露光する。
【0013】
次に、電子ビームレジスト層64を現像して、不要部を除去する。例えば上記の電子ビームレジスト64がネガ型であれば、図12(d)に示すように、電子ビーム65で照射されたレジスト部分のみが残り、照射されなかったレジスト部分は除かれる。
【0014】
次に、図12(e)に示すように、所定のパターンに加工された電子ビームレジスト層64をマスクとして、金属薄膜層63をSiO2膜62の表面に至るまでドライエッチングで除去する。
【0015】
次に、図12(f)に示すように、レジスト64をアッシング等により除去すると、配線パターン等の、所望の形状を有する金属薄膜層63を形成することができる。
【0016】
ステンシルマスクは、パターンと同じ形状の露光ビーム通過孔を有するため、パターン形状やメンブレンの材質、厚さ等の条件によっては、1枚のマスクでパターン全体を形成することができない場合がある。例えばドーナツ形のパターンのように、露光ビーム通過孔の中に孤立した島状のメンブレンを残すパターンは、孤立したメンブレンを支持できないので、1枚のマスクで形成することはできない。
【0017】
このような場合には、複数の相補形マスクを用いる方式(相補分割)が採用される。この方式では、所望のパターンを複数のマスクに分割して形成し、それぞれのマスクで同一のウエハ上に重ねて露光を行うことにより、各マスクパターンをウエハ上で合成して、所望のパターンを完成させる。
【0018】
図13は、相補形ステンシルマスクを概念的に説明するための平面図である。図13(a)に示す露光パターン56は、中央部のメンブレン51aを支持することができないので、1枚のステンシルマスクで形成することはできない。しかし、図13(b)のように相補分割して、上半分の露光パターン56Aを形成できるステンシルマスク50Aを用いた露光と、下半分の露光パターン56Bを形成できるステンシルマスク50Bを用いた露光を同一ウエハ上に重ねて行うことで、図13(c)のように、図13(a)の露光パターン56を形成することができる。
【0019】
前述したように、ステンシルマスクは、非常に薄いメンブレン(薄膜)の上にマスクパターンが形成されているため、メンブレンの変形によって、マスクパターンに歪みを生じやすい。マスクパターンが歪んで最も懸念される問題は、パターン精度が劣化することであるが、それとともに、相補形マスクであれば、各マスクによって形成される露光パターン間のつなぎ精度(整合性)が劣化する問題もある。
【0020】
この歪みを補正する方法として、露光ビームの照射角度を調整するなど、露光装置によって補正する方法がある。しかし、一括露光を行う場合には、露光箇所ごとに異なる補正を露光装置によって行うのは、不可能である。
【0021】
歪みを補正する別の方法として、前もって何らかの方法で歪みの量を求めておき、この歪みと相殺する補正を加えたパターンを、ステンシルマスク上に形成する方法がある。この方法では、露光箇所ごとに異なる補正を詳細に行うことも不可能ではないから、歪みの量が予測できる場合には、非常に有効な方法であると考えられる。
【0022】
既に、特許文献1には、デバイスパターンを感応基板上に転写露光するための原パターンをレチクル上に描画するに際し、正規のパターンデータとともに、パターン変形の傾向を描画装置に入力し、このパターン変形の傾向に基づいて正規のパターンデータを補正し、この補正したデータでマスクパターンを描画する方法が提案されている。しかしながら、特許文献1には、パターン変形の傾向の具体的内容やその求め方等は、記載されていない。
【0023】
【特許文献1】
特開2000−356848号公報(第2及び6頁、図1)
【0024】
【発明に至る経過】
本出願人は、鋭意検討した結果、上記のステンシルマスクを作製するときに生じるマスクパターンの歪みの原因に、次の2つが含まれていることを明らかにした。
【0025】
その1つは、メンブレンに露光ビーム通過孔を形成する際に生ずる、メンブレン内部の応力の変化に起因する歪みである(以下、この応力の変化による歪みを、応力歪みと呼ぶことにする。)。図14は、その1例を示す小メンブレン領域4の平面図である。なお、小メンブレン領域4とは、メンブレンを多数の小区画に区分したときの1区画であり、歪みの補正を行う際、一括処理できる単位領域として扱うことのできる領域である(この点に関しては、実施の形態の項で後述する。)。図14に示すように、小メンブレン領域4に設計パターン通りに露光ビーム通過孔3を形成しても、最終的に得られる露光ビーム通過孔の位置や形状は、設計値と異なったものになる。その原因が、応力歪みである。
【0026】
即ち、ステンシルマスクの作製工程において、露光ビーム通過孔を形成する前のメンブレンでは、メンブレンを構成する結晶層が成長する時に生じた初期応力や、応力調整のためになされるドーピングによる変化や、マスク構造に起因する応力等の様々な内部応力が残留し、これらの応力がビーム通過孔を形成する前のメンブレンの形状でバランスを保っている(なお、この内部応力は、メンブレンが重力によってたわむのを抑制する働きもしている。)。
【0027】
このメンブレンに、露光ビーム通過孔が形成されると、ビーム通過孔の部分の内部応力が解放されるため、内部応力のバランスが崩れ、ビーム通過孔の周囲のメンブレンが変形し、ビーム通過孔の位置や形状が歪むとともに、周囲のビーム通過孔にも歪みが生じる。特に、メンブレンが薄い場合、材質によっては歪みが大きくなり、ビーム通過孔の形成によるパターンの歪みは無視できない。
【0028】
この応力歪みは、ビーム通過孔の形状、及びメンブレン上でビーム通過孔を取り囲んでいる周囲の状態に応じて変化する。従って、応力歪みの補正は、各ビーム通過孔ごとに行う必要がある。
【0029】
この応力歪みについては、本出願者は、既に、有限要素法に基づいて信頼性高く、高速に計算して、マスクパターンを補正する方法を提案した(特願2002−119845;以下、特願2002−119845に係る発明を先願発明と称する。)。この方法では、メンブレンを複数の要素領域に均等に分割し、各要素領域における開孔部(露光ビーム通過孔)の面積密度の大小に応じて各要素領域の仮想的厚さを設定する。更に、開孔部の形状の特徴に応じて疑似弾性マトリックスを割り当てる。そして、開孔部を有する一定厚さの各要素の弾性マトリックスを、開孔部を持たない仮想的厚さの要素の疑似弾性マトリックスで近似して、有限要素法により歪みの大きさを高速で計算する。
【0030】
【発明が解決しようとする課題】
マスクパターンの歪みを生ずるもう1つの原因は、メンブレンに作用する重力等によるメンブレン全体のたわみ(変形)である。図15に示すように、ステンシルマスクは、マスクにパターンを形成している時と、ウエハへの露光を行う時とでは、マスクの向きが上下反転する。このため、重力が逆向きに作用して、ウエハへの露光時にステンシルマスクが歪むという問題が生じる(メンブレン全体のたわみ(変形)によるマスクパターンの歪みをマスク歪みと呼ぶことにする。重力以外の歪みの原因として、電子ビームの吸収によるマスクの熱膨張等も考えられる。)。
【0031】
マスク歪みを前もって調べる方法の1つに数値解析がある。しかし、精度の良い解析には計算時間がかかり、又、結果を保証できる十分な検討がなされていない計算は、実用的ではない。そのため、簡潔で、且つ、精度の良い補正方法が求められている。
【0032】
本発明の目的は、上記のような実情に鑑み、メンブレンのたわみ等による露光用マスクパターンの歪みを精度良く、且つ高速に補正する方法、並びにこの補正方法を適用した露光用マスクの製造方法を提供することにある。
【0033】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の第1の発明は、薄膜に露光ビーム通過孔が形成され、前記露光ビーム通過孔を通じて所定パターンに露光を行うのに用いられる露光用マスクのマスクパターンの補正方法において、前記薄膜の変形による前記露光ビーム通過孔の歪みを相殺する補正をマスクパターンに対し一括して行う露光用マスクパターンの補正方法に係わるものである。
【0034】
また、本発明の第2の発明は、薄膜に露光ビーム通過孔が形成され、前記露光ビーム通過孔を通じて所定パターンに露光を行うのに用いられる露光用マスクのマスクパターンの補正方法において、前記露光用マスクを用いて得られた露光パターンと、基準マスクによる基準露光パターンとを比較して、前記薄膜の各領域ごとの歪みの分布データを取得する工程と、この歪みの分布データを用いて、前記薄膜の変形による前記露光ビーム通過孔の歪みを相殺する補正を行う工程とを有する、露光用マスクパターンの補正方法に係わるものである。
【0035】
更に、本発明は、前記露光用マスクのマスクパターンの補正方法を実施して、前記所定パターンの露光用マスクを設計する、露光用マスクの製造方法にも係わるものである。
【0036】
本発明の第1の発明によれば、前記薄膜に形成されマスクパターンの補正方法において、前記薄膜の変形による前記露光ビーム通過孔の歪みを相殺する補正をマスクパターンに対し一括して行う。この結果、前記露光ビーム通過孔の歪みを精度良く、且つ高速に補正することができる。また、この補正を適用することで、前記所定パターン通りの露光を行うことのできる前記露光用マスクを作製することができる。
【0037】
また、本発明の第2の発明によれば、前記薄膜に形成されマスクパターンの補正方法において、前記露光用マスクを用いて得られた露光パターンと、基準マスクによる基準露光パターンとを比較して、前記薄膜の各領域ごとの歪みの分布データを取得し、この歪みの分布データを用いて、前記薄膜の変形による前記露光ビーム通過孔の歪みを相殺する補正を行う。この結果、前記基準露光パターンを基準とする補正を行うことができる。また、この補正を適用することで、前記基準露光パターンを基準として、高い精度で露光を行うことのできる、前記露光用マスクを作製することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の発明においても、前記露光用マスクを用いて得られた露光パターンと、基準マスクによる基準露光パターンとを比較して、前記薄膜の各領域ごとの歪みの分布データを取得し、このデータに基づき前記露光ビーム通過孔の歪みを相殺する補正を行うのがよい。これにより、本発明の第2の発明と同様に、前記基準露光パターンを基準とする補正を行うことができる。また、この補正を適用することで、前記基準露光パターンを基準として、高い精度で露光を行うことのできる前記露光用マスクを作製することができる。
【0039】
本発明において、前記露光用マスクによる露光と、前記基準マスクによる露光とを共通の感光層に対して行い、この感光層の露光パターン(露光後の現像で得られた感光層パターン)を実測して比較し、前記歪みの分布データを取得するのがよい。前記基準マスクとしては、特に限定されるものではないが、通常、重力等による変形のないガラス基板等の上に形成された光マスクが好ましい。これにより、前記露光用マスクの変形による露光パターンの歪みを確実に除去することができる。また、相補形のステンシルマスクでは、そのうちの1枚を基準マスクとすることもできる。これにより、各相補形マスクによって形成される露光パターン間のつなぎ精度(整合性)が効果的に改善される。
【0040】
また、前記歪みの分布データによって、前記基準マスクによる基準の露光において発生するパターン歪みに対して前記露光ビーム通過孔の歪みを比較して合わせ込み、前記補正を行うのがよい。例えば、ステンシルマスクを用いた電子ビーム露光と、光マスクを用いた光露光とを併用する場合、光マスクとその露光装置とにより発生するパターン歪み、プレスメントエラーに対して、電子ビーム露光の合わせ込みをすることになり、電子ビーム露光と光露光との精度の良いミックスアンドマッチ(又はハイブリッド露光)が可能になる。
【0041】
本発明に基づくマスクパターン補正方法は、電子ビーム、イオンビーム又はX線によるリソグラフィで用いられる、前記露光用マスクの製造に適用するのがよい。
【0042】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図面参照下に具体的に説明する。
【0043】
実施の形態1
図4は、本実施の形態における歪み補正工程のフロー図である。所望の回路パターンに対応するマスクパターン設計データは、そのままマスクパターン描画データとして使われるのではなく、応力歪み及びマスク歪みと相殺する補正を加えられた後、マスクパターン描画データとして使われる。図4では、先に応力歪みを補正し、次にマスク歪みを補正する流れになっているが、この順序は逆でもよい。
【0044】
応力歪みの補正は、必要に応じて行えばよいが、前述した先願発明の応力歪みの計算方法を用い、高速且つ信頼性の高い処理を行うことができる。
【0045】
マスク歪みの補正に対しては、露光用マスクによる露光と、基準マスクによる露光とを共通の感光層に対して行い、この感光層の露光パターンを実測して、マスク歪みによる位置ずれのデータを取得する。そして、このデータに基づいて、マスク歪みを相殺する補正を、マスクパターン設計データに対し一括して行う。基準マスクとしては、光用マスクを使用する。
【0046】
以下、マスク歪み分布の測定法を具体的に説明する。図1(a)及び(b)は、マスク歪み分布を得るための位置ずれ測定用パターン1及び2の例を示す。光用マスクには、図1(a)に示すように、光学系の収差等による歪みの少ない十字形のパターン1がよい。ステンシルマスクには、例えば図1(b)に示す正方形パターンが形成されている。
【0047】
図1(c)は、露光によってウエハ上の感光層に形成された、それぞれのパターン1及び2を示す。ウエハ上では、光用マスクの位置ずれ測定用パターン(十字形)1を基準として、これに対するステンシルマスクの位置ずれ測定用パターン(正方形)2の位置、即ち、図中の矢印で示した距離x1 〜x4 及びy1 〜y4 を測定する。これらの値の設計値からの変化分から、対応する小メンブレン領域4の位置のずれを検出することができる。
【0048】
距離x1 〜x4 及びy1 〜y4 を実際に測定する主な方法は、2通りある。その1つは、走査型電子顕微鏡を用いる方法である。この方法では、パターン1及び2を含む領域を電子ビームで走査し、表面から放出される2次電子を測定して走査領域の画像情報を取得し、パターン1及び2のエッジを検出して、その距離を測定する。もう1つは、光学的に行う方法である。この方法では、パターン1及び2を含む領域に光を照射し、反射光の強度変化からパターン1及び2のエッジを検出して、その距離を測定する。
【0049】
上記の測定を、マスクパターンが形成されるメンブレンの全領域で繰り返して行い、マスク歪み分布を取得する。即ち、位置ずれ測定用パターン(十字形)1及び位置ずれ測定用パターン(正方形)2を、それぞれ、各マスク全体に配置し、図2に示すように同一のウエハ上の感光層へ転写し、感光層上のパターンを比較する。ここで、全メンブレン領域を小メンブレン領域4に分割する数や、そこに形成する位置ずれ測定用パターンの形状は、適宜選択すればよい。小メンブレン領域4のサイズを小さくするほど、より詳細なマスク歪み分布を取得することができるが、そのために必要となる作業量は急激に増加する。従って、要求される精度を考慮して、適切な小メンブレン領域4のサイズを決める必要がある。
【0050】
また、このマスク歪み分布の取得は複数回繰り返し、図3のフローのようにマスク歪分布の平均化を行うことでより精度が向上する。取得したマスク歪み分布をもとにして、図5に示すように、マスクパターン設計データに補正を加え、マスクパターン描画データを作成する。
【0051】
次に、図6及び7を参照しながら、マスク歪みの補正法を説明する。メンブレンのたわみ等によるマスク歪みは、パターン形状に依存しない変形である。このようなメンブレンの変形では、メンブレンを十分小さい多数の小区画(これを小メンブレン領域と呼んでいる。)に区分して考えると、各小メンブレン領域自体は、ほとんど形を変えないまま、ある方向に位置をずらせているにすぎないと考えられる。つまり、各小メンブレン領域の変形は、小メンブレン領域ではほとんど無視できるほど小さい変形であるが、メンブレン全体では、それらが多数積算されて、メンブレンの変形を生み出している。
【0052】
図6(a)は、上記の、マスク歪みにおける変形の特徴を表す図である。パターン形成時の配置(左図)とウエハ露光時の配置(右図)とをを比べると、小メンブレン領域4は、形を変えないまま、本来の位置4Aから4Bに位置のずれ(d)5を起こし、その結果として小メンブレン領域4の上のすべての露光ビーム通過孔3が同じ方向にdだけずれている。
【0053】
図6(b)は、その補正法を示す平面図である。ここでは、予め位置のずれ(d)5を見込んでそれと相殺するように、逆方向に補正(−d)6を加えた位置に露光ビーム通過孔3を配置する(右図)。
【0054】
次に、図7(c)に示すように、この補正されたパターンで作製されたマスクを用いてウエハを露光すると、ウエハ露光時に生ずる位置ずれ(d)5と予め加えておいた補正分(−d)とが相殺して、小メンブレン領域4のすべての露光ビーム通過孔3が適正な位置に配置される。ここでの補正操作をまとめておくと、次式の通りである。
補正後の座標 = 補正前の座標 + 補正量
補正量 =(−1)× 歪み量
【0055】
既述したように、小メンブレン領域4のすべての露光ビーム通過孔3が同じ方向にdだけずれるので、小メンブレン領域4内の露光ビーム通過孔3全体に一括して補正を行う。図7(d)のように、領域4内の露光ビーム通過孔3の1つ1つに補正を加える方法は、計算が煩雑になるので、本実施の形態では行わない。
【0056】
上記のように、1つの小メンブレン領域4における位置のずれが一定であるという条件を満たすためには、小メンブレン領域4内の位置の違いによる歪みの変化が無視できるほど、小メンブレン領域4のサイズが十分小さく設定されていなければならない。一方、既述したように、小メンブレン領域4のサイズを小さくするほど、マスク歪み分布を取得するために必要となる作業量は急激に増加する。従って、要求される精度を考慮して、適切な小メンブレン領域4のサイズを決める必要がある。
【0057】
本実施の形態によれば、マスク歪分布を一度作成するだけで、容易に精度良くマスク歪みの補正を行うことができる。マスク歪み分布は、応力歪みと異なり、マスクパターンの影響を受けにくい。このため、1つのマスクに対して取得されたマスク歪み分布は、再現性が高く、そのマスクとマスク材質及びマスク構造が同じマスクである場合には、そのまま利用することが可能である。
【0058】
本方法は、ステンシルマスクを使用する、電子ビーム、イオンビーム、及びX線によるリソグラフィに応用することが出来る。
【0059】
実施の形態2
実施の形態1の方法は、図4に示されているように、応力歪みの補正とマスク歪みの補正とを分けて行うことを前提としているため、歪みの補正に2工程を必要とする。また、小メンブレン領域4のサイズを小さくとる必要のあるマスク歪みに対しては、必要な作業量が多くなる傾向がある。従って、場合によっては、ウエハ上で露光用マスクを用いて得られた露光パターンと、基準マスクを用いて得られた基準露光パターンとを直接比較して、個々の露光ビーム通過孔に対し1つ1つ補正を行う方が容易である場合も考えられる。本実施の形態は、そのような補正方法の1例である。基準マスクとしては、光用マスクを使用する。
【0060】
図8は、本実施の形態で行う、マスクパターンの位置ずれの測定を示している。位置ずれの測定方法は、図1を用いて説明した実施の形態1の方法と同様であるが、位置ずれの測定は、個々の露光ビーム通過孔に対して行う。即ち、位置ずれ測定用パターン(十字形)1を有する光マスクと、設計パターン通りにマスクパターンを形成したステンシルマスクとを用いて、同一ウエハに重ねて露光し、感光層上で両パターンを比べて、例えば、露光ビーム通過孔13の位置ずれ(D1)15及び露光ビーム通過孔14の位置ずれ(D2)16を測定する。
【0061】
図8中、正方形の露光ビーム通過孔14の位置ずれ(D2)16は、主にマスク歪みのみによるのに対し、L字形の露光ビーム通過孔13の位置ずれ(D1)15には、マスク歪みの他に応力歪みが付け加わっているため、両者は異なっている。
【0062】
本実施の形態の歪み補正の方法では、位置ずれ(D)の原因の解析は不要で、基準露光パターン1を用いて露光ビーム通過孔ごとに位置ずれ(D)を実測するのみでよい。位置ずれ(D)が求まれば、補正の方法は実施の形態1と同様である。つまり、設計パターンの位置に位置ずれ(D)と相殺する補正(−D)を加えた位置に露光ビーム通過孔を形成する。例えば、図9(a)に示すように、露光ビーム通過孔13に対しては−D1の補正17を行い、露光ビーム通過孔14に対しては−D2の補正18を行う。このようにすると、図9(b)に示すように、ウエハ露光時においては、露光ビーム通過孔13及び露光ビーム通過孔14のいずれもが、本来の位置に設置されることになる。
【0063】
本実施の形態で重要なことは、露光ビーム通過孔ごとに位置ずれ(D)が実測できることであり、そのために基準露光パターン1が本質的に重要な役割をはたしている。
【0064】
以上に述べた実施の形態は、本発明の技術的思想に基づいて適宜変更可能である。
【0065】
【発明の作用効果】
本発明の第1の発明によれば、薄膜に露光ビーム通過孔が形成され、露光ビーム通過孔を通じて所定パターンに露光を行うのに用いられる露光用マスクのマスクパターンの補正方法において、薄膜の変形による露光ビーム通過孔の歪みを相殺する補正をマスクパターンに対し一括して行う。この結果、露光ビーム通過孔の歪みを精度良く、且つ高速に補正することができる。また、この補正を適用することで、所定パターン通りの露光を行うことのできる露光用マスクを作製することができる。
【0066】
また、本発明の第2の発明によれば、薄膜に露光ビーム通過孔が形成され、露光ビーム通過孔を通じて所定パターンに露光を行うのに用いられる露光用マスクのマスクパターンの補正方法において、露光用マスクを用いて得られた露光パターンと、基準マスクによる基準露光パターンとを比較して、薄膜の各領域ごとの歪みの分布データを取得し、この歪みの分布データを用いて、薄膜の変形による露光ビーム通過孔の歪みを相殺する補正を行う。この結果、基準露光パターンを基準とする補正を行うことができる。また、この補正を適用することで、基準露光パターンを基準として、高い精度で露光を行うことのできる、露光用マスクを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に基づき、小メンブレン領域の位置のずれを測定する方法を示す平面図である。
【図2】同、メンブレン全体でのマスク歪み分布データを取得する方法を示す平面図である。
【図3】同、マスク歪み測定データの精度の向上法を示すフロー図である。
【図4】同、マスクパターンの歪みを補正する工程を示すフロー図である。
【図5】同、マスク歪みを補正する工程を示すフロー図である。
【図6】同、マスク歪みを補正する方法を示す平面図である。
【図7】同、マスク歪みを補正する方法を示す平面図である。
【図8】本発明の実施の形態2に基づき、マスクパターンの位置ずれを測定する方法を示す平面図である。
【図9】同、マスクパターンの歪みを補正する方法を示す平面図である。
【図10】ステンシルマスクの1例の平面図(a)、及びそのX−X’線における断面図(b)である。
【図11】同、ステンシルマスクによる露光処理工程を順次示す断面図である。
【図12】同、ステンシルマスクによる露光処理工程後のエッチング工程を順次示す断面図である。
【図13】相補ステンシルマスクの概念を説明する平面図である。
【図14】内部応力変化によってマスクパターンの歪みが生じることを示す小メンブレン領域の平面図である。
【図15】重力の作用によってマスクパターンの歪みが生じることを示すステンシルマスクの要部概略断面図である。
【符号の説明】
1…位置ずれ測定用パターン(十字形)、
2…位置ずれ測定用パターン(正方形)、3…露光ビーム通過孔、
3A…本来の露光ビーム通過孔の位置、
3B…歪みでずれた露光ビーム通過孔の位置、
3C…予め−dだけ補正した露光ビーム通過孔の位置、4…小メンブレン領域、
4A…本来の小メンブレン領域の位置、
4B…歪みでずれた小メンブレン領域の位置、5…位置のずれ(d)、
6…位置の補正(−d)、11…座標基準線、13、14…露光ビーム通過孔、
13A、14A…本来の露光ビーム通過孔の位置、
13B、14B…歪みでずれた露光ビーム通過孔の位置、
15…位置のずれ(D1)、16…位置のずれ(D2)、
17…位置の補正(−D1)、18…位置の補正(−D2)、
50…ステンシルマスク、51…メンブレン(薄膜)、
52…露光ビーム通過孔、53…SiO2膜、54…Siウエハ、
55…開口部、61…Si基板、62…SiO2膜、63…金属薄膜層、
64…電子ビームレジスト、65…電子ビーム
x1 〜x4 …x軸方向位置ずれ測定データ、y1 〜y4 …y軸方向位置ずれ測定データ
Claims (8)
- 薄膜に露光ビーム通過孔が形成され、前記露光ビーム通過孔を通じて所定パターンに露光を行うのに用いられる露光用マスクのマスクパターンの補正方法において、
前記薄膜の変形による前記露光ビーム通過孔の歪みを相殺する補正をマスクパターンに対し一括して行う
露光用マスクパターンの補正方法。 - 薄膜に露光ビーム通過孔が形成され、前記露光ビーム通過孔を通じて所定パターンに露光を行うのに用いられる露光用マスクのマスクパターンの補正方法において、
前記露光用マスクを用いて得られた露光パターンと、基準マスクによる基準露光パターンとを比較して、前記薄膜の各領域ごとの歪みの分布データを取得する工程と、
この歪みの分布データを用いて、前記薄膜の変形による前記露光ビーム通過孔の歪みを相殺する補正を行う工程と
を有する、露光用マスクパターンの補正方法。 - 前記露光用マスクを用いて得られた露光パターンと、基準マスクによる基準露光パターンとを比較して、前記薄膜の各領域ごとの歪みの分布データを取得する、請求項1に記載した露光用マスクパターンの補正方法。
- 前記露光用マスクによる露光と、前記基準マスクによる露光とを共通の感光層に対して行い、この感光層の露光パターンを実測して比較する、請求項2又は3に記載した露光用マスクパターンの補正方法。
- 前記歪みの分布データによって、前記基準マスクによる露光において発生するパターン歪みに対して前記露光ビーム通過孔の歪みを比較して合わせ込み、前記補正を行う、請求項2又は3に記載した露光用マスクパターンの補正方法。
- 電子ビーム、イオンビーム又はX線によるリソグラフィで用いられる前記露光用マスクの製造に適用する、請求項1又は2に記載した露光用マスクパターンの補正方法。
- 請求項1又は2に記載した前記露光用マスクパターンの補正方法を実施して、前記所定パターンの露光用マスクを設計する、露光用マスクの製造方法。
- 請求項3〜6のいずれか1項に記載した露光用マスクパターンの補正方法を実施する、請求項7に記載した露光用マスクの製造方法。
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