JP2004238305A - 異常増殖性細胞増殖抑制剤 - Google Patents
異常増殖性細胞増殖抑制剤 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】本発明は、新規な異常増殖性細胞増殖抑制剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、式(I)で示されるGM3アナログと重合可能なエチレン二重結合を有する化合物との水溶性共重合体を有効成分として含む、異常増殖性細胞増殖抑制剤を提供する。本発明は、式(II)で示されるGM3アナログがアミノ基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基からなる群から選ばれる官能基を有するオリゴマーまたはポリマーと結合した水溶性分子を有効成分として含む、異常増殖性細胞増殖抑制剤をも提供する。
【選択図】なし
【解決手段】本発明は、式(I)で示されるGM3アナログと重合可能なエチレン二重結合を有する化合物との水溶性共重合体を有効成分として含む、異常増殖性細胞増殖抑制剤を提供する。本発明は、式(II)で示されるGM3アナログがアミノ基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基からなる群から選ばれる官能基を有するオリゴマーまたはポリマーと結合した水溶性分子を有効成分として含む、異常増殖性細胞増殖抑制剤をも提供する。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガングリオシドGM3アナログを含有する水溶性分子を有効成分として含む、各種の癌および異常増殖性細胞の増殖に起因する各種病態の処置、並びにGM3との相互作用を有する生体内物質が発症原因である疾患の処置に用いるための異常増殖性細胞増殖抑制剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガングリオシドは、シアル酸を含むスフィンゴ糖脂質ファミリーの総称であって、シアル酸を含む糖鎖がセラミドと呼ばれる脂質に共有結合で結合している分子である。今日では、様々な糖鎖構造のガングリオシドが知られており、GM3はその生合成経路における最初のガングリオシド分子である(図1を参照。)。
【0003】
GM3はヒトを含む哺乳動物の種々の細胞に広く発現していることから、その生理学的な機能および病態生理学的な意義が注目されている。これまでに、例えばヒトの脳に存在する多数のガングリオシド分子が単離されている(例えば、非特許文献1を参照。)。
【0004】
【非特許文献1】
ラルス・スベネルホルム(Lars Svennerholm),「ヒト脳ガングリオシドのクロマトグラフィー法による分離(Chromatographic separation of human brain gangliosides」,(北アイルランド),第10版,ジャーナル・オブ・ニューロケミストリー(J. Neurochem.),1963年,p.613−623
【0005】
また、細胞の癌化はガングリオシドの組成に変化をもたらすことが知られている。通常、細胞の癌化により、GM1およびGD1bなどのオリゴ糖からGM3およびGD3などの単純なガングリオシドに変化し得る(例えば、非特許文献2および3を参照。)。
【0006】
【非特許文献2】
フェデリコ・A・キュマル(federico A. Cumar),外4名,「DNAウイルスで形質転換された腫瘍化マウスセルライン中のガングリオシド合成における酵素による遮断(Enzymatic Block in the Synthesis of Gangliosides in DNA Virus−Transformed Tumorigenic Mouse Cell Lines)」(米国),第67版,プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.),1970年,p.757−764
【0007】
【非特許文献3】
センイチロー・ハコモリ(Sen−itiroh Hakomori),「細胞間相互作用、分化および腫瘍形成におけるグリコスフィンゴリピド(Glycosphingolipid in Cellular Interaction, Differentiation, and Oncogenesis)」(米国),第50版,アニュアル・レビュー・オブ・バイオケミストリー(Annu. Rev. Biochem.),1981年,p.733−764
【0008】
培養細胞実験において、GM3が細胞増殖を調節する可能性はこれまで多数報告されている。例えば、細胞培養液ヘ高濃度のGM3を添加することにより、A431ヒト類表皮癌腫細胞においては、上皮細胞成長因子(EGF)で誘導される細胞増殖が抑制され(例えば、非特許文献4参照。)、また仔ハムスター腎臓(BHK)細胞においては、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)で誘導される細胞増殖は抑制される(例えば、非特許文献5参照。)。
【0009】
【非特許文献4】
エリック・G・ブレマー(Eric. G. Bremer),外2名,「ガングリオシドが媒介する細胞増殖の調節(Ganglioside−mediated Modulation of Cell Growth」,(米国),第261版,ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.),1986年,p.2334−2440
【0010】
【非特許文献5】
エリック・G・ブレマー(Eric. G. Bremer),外1名,「GM3ガングリオシドは、化学的な規定培地においてハムスター線維芽細胞の成長の抑制を誘発する:ガングリオシドは成長因子受容体の機能を調節し得る(GM3 Ganglioside Induces Hamster Fibroblast Growth Inhibition in Chemically−Defined Medium: Ganglioside May Regulate Growth Factor Receptor Function」,(米国),第106版,バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem. Biophys. Res. Commun.),1982年,p.711−718
【0011】
しかしながら、その他の多くの癌細胞については、高濃度のGM3の添加による細胞増殖抑制効果は認められていない。そのため、癌化などを含めた生物作用への外因性GM3の一般的な応用は困難であった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、GM3を含有する水溶性高分子を創製し、該高分子が癌および他の異常増殖性細胞の増殖に起因する様々な疾患における増殖抑制に及ぼす効果を調べた。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、式:
【化3】
[式中、
R1は、直鎖または分枝の炭素数が1〜24個の二価のアルキレン基である。
R2は、直鎖または分枝の炭素数が1〜24個のアルキル基である。そして、
Z1は、アクリロイルアミノ基、アクリロイルオキシ基、ビニルオキシカルボニル基、メタクリロイルオキシ基からなる群から選ばれる]
で示されるGM3アナログと重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物との水溶性共重合体を有効成分として含む、異常増殖性細胞増殖抑制剤に関する。
【0014】
本発明は、式:
【化4】
[式中、
R1 ’は、直鎖または分枝の炭素数が1〜24個の二価のアルキレン基である。
R2 ’は、直鎖または分枝の炭素数が1〜24個のアルキル基である。そして、
Z1 ’は、アミノ基、カルボキシル基およびハロゲン基からなる群から選ばれる]
で示されるGM3アナログが、アミノ基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基からなる群から選ばれる官能基を有するオリゴマーまたはポリマーと結合した水溶性分子を有効成分として含む、異常増殖性細胞増殖抑制剤にも関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に記載する。
用語「GM3アナログ」とは、上記の式(I)または(II)によって示される、天然のGM3分子の構造に類似した構造を有する分子を意味する。すなわち、シアリルラクトース部分がβ−グルコシド結合によって天然のセラミド(すなわち、N−アシルスフィンゴシン骨格)に類似する構造の脂質と結合した化合物を意味する。ここで、該類似する構造とは、天然のGM3と同様なL−セリンの立体配置を有しており、且つ二本鎖(これは、−NH−C(=O)−R1−Zおよび−NH−C(=O)−R1 ’−Z’で示される鎖、または−C(=O)−NH−R2および−C(=O)−NH−R2 ’で示される鎖である)を有することを特徴とする。上記二本鎖において、R1およびR1 ’は、直鎖または分枝の炭素数が1〜24個の二価のアルキレン基である。また、R2およびR2 ’は、直鎖または分枝の炭素数が1〜24個の二価のアルキル基である。
【0016】
R1またはR1 ’基における用語「二価のアルキレン基」とは、直鎖または分枝の炭素数が1〜24個の二価のアルキレン基である。該基は、炭素数が4〜24個であることがより好ましい。
【0017】
R2またはR2 ’基における用語「アルキル基」とは、直鎖または分枝の炭素数が1〜24個の二価のアルキル基である。該基は、炭素数が4〜24個であることがより好ましい。
【0018】
本発明のGM3アナログ含有の高分子の製造方法は、主に2つの方法に大別される。第1の方法は、重合反応を用いた、重合可能なエチレン性二重結合を有するGM3アナログと重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物との共重合による水溶性共重合体の生成による方法である。
【0019】
第2の方法は、GM3アナログを天然もしくは合成のオリゴマーもしくはポリマーと連結する方法である。従って、本発明のGM3アナログは、上記の二本鎖中にZ1またはZ1 ’基で示されるGM3アナログ含有高分子の形成に必要な官能基を有する。
【0020】
まず、前者の重合反応を用いるGM3アナログ含有の重合体の製造について説明する。この場合に、Z1基は重合可能なエチレン性二重結合を有する官能基である。該基は、例えばアクリロイルアミノ基、アクリロイルオキシ基、ビニルオキシカルボニル基、メタクリロイルオキシ基からなる群から選ばれる。アクリロイルアミノ基であることが好ましい。
【0021】
用語「重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物」とは、少なくとも1つの重合可能なエチレン性二重結合を有することにより、GM3アナログと共重合することができる化合物を意味する。該化合物としては高分子化学の分野において共重合可能であると一般的に知られる化合物が含まれ、例えば、アクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸アルキル、メタクリル酸、メタクリル酸アルキルおよびカルボン酸ビニルを含むが、これらに限定されない。アクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチルおよび酢酸ビニルが好ましく、アクリルアミドが特に好ましい。
【0022】
用語「GM3アナログと重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物との水溶性共重合体」とは、上記の式Iによって示されるGM3アナログモノマーと、上記の重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物モノマーとの共重合によって生成する、水溶性共重合体を意味する。それらの共重合体におけるGM3アナログ(x)と重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物(y)との比率は、該共重合体の製造時における両方のモノマーの仕込み比率を調節することによって変えることができ、所望する比率の共重合体を得ることができる。該比率は、通常、モルで1:1〜1:40である。分子量は、約10,000〜約500,000であり、好ましくは約10,000〜約100,000である。
【0023】
以下のスキーム1に、GM3アナログモノマーと重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物との水溶性共重合体の製造方法を具体的に説明する。
【化5】
まず、N−ベンジルオキシカルボニルL−セリンと、R2−NH2で示されるアミンとを、例えばN−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQと略す)等の脱水縮合剤の存在下で反応させて、N−ベンジルオキシカルボニルセリンのアミド体(1)を得る。該化合物(1)をトリフルオロメタンスルホン酸銀の存在下でラクトースハライドと反応させることにより、該アミド体とラクトースとが結合したO−ラクトシル−N−ベンジルオキシカルボニルセリンのアミド体(2)を得ることができる。次いで、例えばパラジウム−炭素触媒を用いた接触水素化還元反応を行なって、ベンジルオキシカルボニル基の脱保護反応を行って、化合物(3)を得る。該化合物(3)と、Z1基中に重合可能なエチレン性二重結合を有するHOOC−R1−Z1化合物とを、例えばEEDQまたはジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCと略す)等の縮合剤の存在下で反応させることにより、二本鎖を有する化合物(4)を得ることができる。次いで、該化合物(4)を例えば、メトキシナトリウム等の適当な塩基を用いて反応させて脱アセチル化を行なって、脱アセチル化された化合物(5)を得ることができる。
上記で製造した化合物(5)を例えば過硫酸アンモニウム等のラジカル重合反応開始剤の存在下で重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物と共重合させることによって、ラクトース誘導体の共重合体を得ることができる。ここで、該化合物(5)と重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物との仕込み率を変えることによって、所望する比率の高分子構成単位を有するラクトース誘導体の共重合体を得ることができる。最後に、該共重合体を、上記と同様に、シアル酸転移酵素の存在下でシチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミン酸(CMP−NeuAc)と反応させることにより、最終的な目的物である、GM3アナログと重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物との水溶性共重合体を得ることができる。
【0024】
次に、GM3アナログと天然もしくは合成のオリゴマーもしくはポリマーとを直接に連結する方法に説明する。この場合に、用語「アミノ基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基からなる群から選ばれる官能基を有するオリゴマーまたはポリマー」とは、生体にとって非毒性の天然または合成のオリゴマーまたはポリマーを意味する。ここで、用語「オリゴマー」とは、分子量が約500〜10,000のものを意味する。また、用語「ポリマー」とは、分子量が約10,000以上のものを意味する。
【0025】
アミノ基を有するオリゴマーまたはポリマーとしては、例えば天然の高分子(例えば、キトサンおよびその誘導体等の多糖系高分子、並びにポリリジンおよびその誘導体等のペプチド系高分子)および合成高分子(例えば、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミンおよびポリアリルアミン等)を含むが、これらに限定されない。
【0026】
カルボキシル基を有するオリゴマーまたはポリマーとしては、天然の高分子(例えば、ヒアルロン酸およびその誘導体等の多糖系高分子、並びにポリグルタミン酸およびその誘導体等のペプチド系高分子)および合成高分子(例えば、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸、並びにそれらの誘導体)を含むが、これらに限定されない。
【0027】
また、ヒドロキシル基を有するオリゴマーまたはポリマーとしては、例えば天然の高分子(例えば、デンプン、デキストランおよびシクロデキストリンおよびその誘導体等の多糖系高分子、並びにポリトレオニンおよびその誘導体等のペプチド系高分子)および合成高分子(例えば、ポリビニルアルコール)を含むが、これらに限定されない。それらのオリゴマーまたはポリマーの形状としては、鎖状高分子および環状高分子(例えば、デンドリマー)のいずれであってもよい。
【0028】
本方法の場合には、該GM3アナログはポリマー等と連結することが可能なZ1 ’基を有する。該基は、アミノ基、カルボキシル基およびハロゲン基からなる群から選ばれる。例えば、該連結可能な官能基におけるハロゲン基としては、クロロ基、ブロモ基またはヨード基であることが好ましく、ブロモ基またはヨード基であることがより好ましい。
【0029】
用語「GM3アナログが、アミノ基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基からなる群から選ばれる官能基を有するオリゴマーまたはポリマーと結合した水溶性分子」において、GM3アナログとオリゴマーまたはポリマーとの結合は、アミド結合、エステル結合、エーテル結合またはアミノ基のアルキル化によって行なわれる。例えば、Z1 ’基がアミノ基であって、ポリマー上の官能基がカルボキシル基である場合、またはZ1 ’基がカルボキシル基であって、ポリマー上の官能基がアミノ基である場合には、アミド結合によって連結することが可能である。Z1 ’基がカルボキシル基であって、ポリマー上の官能基がヒドロキシル基である場合には、エステル結合によって連結することも可能である。また、Z1 ’基がハロゲン基であって、ポリマー上の官能基がアミノ基である場合にはアミノ基のアルキル化によって連結することも可能である。更に、Z1 ’基がハロゲン基であって、ポリマー上の官能基がヒドロキシル基である場合にはエーテル結合によって連結することも可能である。
【0030】
上記のGM3アナログと、オリゴマーまたはポリマーのアミノ基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基からなる群から選ばれる官能基との比率は、通常、モルで1:1〜1:40である。
【0031】
次いで、「GM3アナログが、アミノ基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基からなる群から選ばれる官能基を有するオリゴマーまたはポリマーと結合した水溶性分子」の製造方法をスキーム2に具体的に説明する。
【化6】
まず、上記のGM3アナログの水溶性(共)重合体の製造方法と同様の方法を用いて、化合物(1’)、(2’)、(3’)、(4’)および(5’)を得ることができる。次いで、該化合物(5’)を上で定義した天然または合成のオリゴマーまたはポリマーと連結させることによって、ラクトース誘導体を含有する水溶性分子(6’)を得ることができる。
【0032】
ここで、アミド結合によって連結した水溶性分子の製造は、例えばZ1 ’基がベンジルオキシカルボニル基等で保護されたアミノ基である式:HOOC−R1 ’−Z1 ’の化合物と、製造した化合物(3’)とを例えば、DCC等の縮合剤の存在下で縮合させる。次いで、例えばパラジウム−炭素触媒の存在下で水素を用いた接触水素化反応を用いて脱保護した後に、例えばメトキシナトリウム等の適当な塩基を用いて脱アシル化させて化合物(5’)を得て、得られた該化合物(5’)をEEDQもしくはDCC等の縮合剤の存在下でオリゴマーまたはポリマーのカルボキシル基と反応させることによって得ることができる。あるいは、例えばZ1 ’基がメチルエステル基等で保護されたカルボキシル基である式:HOOC−R1 ’−Z1 ’の化合物と、製造した化合物(3’)とを例えば、DCC等の縮合剤の存在下で縮合させ、次いで、例えばメトキシナトリウム等の適当な塩基を用いて脱保護および脱アシル化を行なって化合物(5’)を得て、得られた該化合物(5’)をEEDQまたはDCC等の縮合剤の存在下でオリゴマーまたはポリマーのアミノ基と反応させることによって得ることもできる。
【0033】
エステル結合によって連結した水溶性分子の製造は、まず上記と同様の方法によりZ1 ’基が例えばメチルエステル基等で保護されたカルボキシル基である式:HOOC−R1 ’−Z1 ’の化合物を出発として化合物(5’)を得る。次いで、該化合物(5’)を例えばp−ニトロフェニルエステルなどを用いた活性化エステル法を用いたり、またはEEDQもしくはDCC等の縮合剤を用いて滴下反応させることによって、オリゴマーまたはポリマーのヒドロキシル基と反応させることによって得ることができる。
【0034】
更に、エーテル結合によって連結した水溶性分子の製造は、例えばZ1 ’基にハロゲン基を有する式:HOOC−R1 ’−Z1 ’の化合物と、製造した化合物(3’)とを例えば、DCC等の縮合剤の存在下で縮合させ、次いでメトキシナトリウム等の適当な塩基を用いて脱アシル化させて化合物(5’)を得る。得られた該化合物(5’)を、例えばトリエチルアミンまたはピリジンなどの適当な塩基の存在下でオリゴマーまたはポリマーのヒドロキシル基と反応させることによって得ることができる。
【0035】
更に、アミノ基のアルキル化によって連結した水溶性分子の製造は、、まず上記と同様の方法によりZ1 ’基にハロゲン基を有する式:HOOC−R1 ’−Z1 ’の化合物と、製造した化合物(3’)とを例えば、DCC等の縮合剤の存在下で縮合させ、次いでメトキシナトリウム等の適当な塩基を用いて脱アシル化させて化合物(5’)を得る。得られた該化合物(5’)を、例えば水酸化ナトリウム、トリエチルアミンまたはピリジンなどの適当な塩基の存在下でオリゴマーまたはポリマーのアミノ基と反応させることによって得ることができる。
【0036】
該水溶性分子の該オリゴマーまたはポリマーに対する比率を調節することによって、該ポリマーなどのアミノ基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基からなる群から選ばれる官能基との比率を制御することができる。該比率は、通常1:1〜1:40である。
【0037】
最後に、上記で製造したラクトース誘導体含有の水溶性分子を、シアル酸転移酵素の存在下でCMP−NeuAcと反応させることにより、最終的な目的物である「GM3アナログが、アミノ基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基からなる群から選ばれる官能基を有するオリゴマーまたはポリマーと結合した水溶性分子」を得ることができる。
【0038】
本明細書で使用する用語「異常増殖性細胞増殖抑制剤」とは、ヒトを含む哺乳動物における異常増殖性細胞の増殖に起因する疾患、すなわち細胞が未分化な状態で異常増殖を呈することに基づく各種の疾患を処置するための薬剤を意味する。該疾患としては、例えば良性腫瘍(子宮筋腫など);固形癌(食道癌、大腸癌、肺癌、胃癌、膵臓癌、肝癌などを含む扁平上皮癌および腺癌、または脳腫癌)、神経膠腫、白血病、悪性リンパ腫などを含む悪性腫瘍もしくは癌(癌腫、肉腫);腎炎(糸球体腎炎など)、ヒト自己免疫性リンパ球増殖性症候群、リンパ球増殖性疾患、血管免疫芽細胞性リンパ節症、全身性エリトマト−デス、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎等)、進行性全身性硬化症、多発性筋炎(皮膚筋炎)、シェ−グレン症候群、骨髄異形成症候群、強皮症、リウマチ、乾癬、創傷の過形成(肉芽等)などの疾患を含むが、これらに限定されない。該疾患は、悪性腫瘍癌であることが好ましく、固形癌であることが特に好ましい。また、本発明における処置とは、上記の疾患の治療、すなわち症状の改善を含めた軽減または悪化防止を含めた維持、あるいは該疾患の予防を意味する。
【0039】
本発明で製造した水溶性分子を有効成分として含む薬剤の製造方法を以下に示す。例えば、担体、賦形剤、その他の添加物と共に、経口または非経口的に投与する錠剤とすることができる。経口製剤としては、例えば散剤、顆粒剤、カプセル剤および錠剤等の固形製剤、並びに例えばシロップ剤、エリキシル剤および乳剤等の液状製剤を挙げることができる。散剤は、例えば乳糖、デンプン、結晶セルロース、乳酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムおよび無水ケイ酸等の賦形剤と混合して得ることができる。顆粒剤は、上記賦形剤以外に必要に応じて、例えば白糖、ヒドロキシプロピルセルロースおよびポリビニルピロリドン等の結合剤、並びに例えばカルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤を加え、湿式または乾式で造粒して得ることができる。錠剤は、上記散剤もしくは顆粒剤をそのままで、またはステアリン酸マグネシウムおよびタルク等の滑沢剤を加えて打錠して得ることができる。上記賦形剤または顆粒剤は、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸メチル共重合体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートおよびヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネート等の腸溶性基剤で被覆し、これらを腸溶性または持続性の製剤にすることができる。カプセル剤における硬カプセル剤は、上記散剤または顆粒剤を硬カプセルに充填して得ることができる。軟カプセル剤は、本発明の化合物を、例えばグリセリン、ポリエチレングリコールおよびゴマ油等に溶解し、これをゼラチン膜で被覆して得ることができる。
【0040】
シロップ剤は、例えば白糖、ソルビトールおよびグリセリン等の甘味剤と本発明の化合物とを一緒に水に溶解して得ることができる。また、該甘味剤および水のほかに、例えば精油およびエタノール等を加えてエリキシル剤としたり、あるいは例えばアラビアゴム、トラガント、ポリソルベート類(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80およびポリソルベート80(トウィーン80)等)およびカルボキシメチルセルロースナトリウム等を加えて乳剤または懸濁剤とすることもできる。更に、例えば着色剤および保存剤等を加えることもできる。
【0041】
非経口製剤としては、例えば注射剤、直腸投与剤、ペッサリー、皮膚外用剤、吸入剤、エアゾール剤および点眼剤等を含む。注射剤は、本発明の化合物に、必要に応じて例えばポリソルベート類等の非イオン界面活性剤;例えば塩酸、水酸化ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウム等のpH調整剤;例えば塩化ナトリウムおよびブドウ糖等の等張化剤;例えばアミノ酸類等の安定化剤;並びに、例えば注射用蒸留水または生理食塩水を加え、滅菌濾過し、アンプルに充填して得ることができる。更に例えばマンニトール、デキストランおよびゼラチン等を加えて真空凍結乾燥し、用時溶解型の注射剤とすることができる。その他、粉末充填型の注射剤とすることもできる。また本発明の化合物に、例えばレシチン、ポリソルベート類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油およびマクロゴール等の乳化剤を加え、水中で乳化させることにより注射用乳化剤とすることができる。
【0042】
また、注射剤としては、溶解性および目標臓器への移行速度の改善が可能なリポソーム製剤およびリピッドマイクロスフェア等が挙げられる。リポソーム製剤は公知のリポソーム調製法(ナイト(Knight), C.G.によるLiposomes: From Physical Structure to Therapeutic applications, pp.51−82, Elsevler, Amsterdam(1981); Proc. Natl.Acad. Sci., U.S.A., Vol. 75, 4198 (1978))に従って調製することができる。
【0043】
すなわち、リポソーム膜を形成する両親媒性物質としては、例えば天然リン脂質(例えば、卵質レシチン、大豆レシチン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリロール、ホスファチジルエタノールアミンおよびカルジオリピン等)、合成リン脂質(例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジバルミトイルホスファチジルコリンおよびジバルミトイルホスファチジルエタノールアミン等)等のリン脂質が使用される。また、膜の安定性、流動性および薬剤の膜透過性を改善するために、例えばコレステロール類(例えば、コレステロール、エルゴステロール、フィトステロール、シトスステロールおよびスチグマステロール等)、リポソームに負電荷を付与することが知られる物質(例えば、ホスファチジン酸およびジセチルホスフェート等)、正電荷を付与することが知られる物質(例えば、ステアリルアミンおよびステアリルアミンアセテート等)、酸化防止剤(例えば、トコフェロール等)および油性物質(例えば、大豆油、綿実油、ゴマ油および肝油等)等の種々の公知の添加剤を使用できる。
【0044】
リポソームの製造は、例えば、以下の方法で行うことができる。上記の両親媒性物質および添加剤、並びに本発明化合物を、有機溶媒(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、エタノール、メタノールおよびヘキサン等の単一または混合溶媒)にそれぞれ溶解し、得られた両方の溶液を混合し、フラスコ等の容器中、不活性ガス(例えば、窒素ガスおよびアルゴンガス等)の存在下で該有機溶媒を除去し、該器壁に薄膜を付着させる。次いで、この薄膜を適当な水性媒体(例えば、生理食塩水、緩衝液およびリン酸緩衝生理食塩水等)に加え、撹拌機で撹拌する。小粒径のリポソームを得るためには、超音波乳化機、加圧型乳化機、フレンチプレス細胞破砕機等を用いて更に分散させる。このようにリポソーム化に必要な両親媒性物質等と本発明の化合物とが水性媒体に分散した液をメンブランフィルター処理することによってリポソーム化が進行し、粒径分布が制御されたナノスフェアリポソーム(脂質超微粒子;粒径約25〜50nm)を得ることができる。また、リポソームについて限外濾過、遠心分離およびゲル濾過等の分画処理を行って、担持されなかった薬剤を徐去することもできる。
【0045】
また、上記の両媒性物質および添加剤の他に、膜形成質としてβ−オクチルグルコシド、L−チロシン−7−アミド−4−メチルクマリンおよびフェニルアミノマンノシドまたはスルファチドを添加することによって得られる、グルコース残基、チロシン残基、マンノース残基またはスルファチド残基を膜上に有するリポソームに、本発明のガングリオシドポリマーのアミノアルコール誘導体を担持させることもできる。
【0046】
リピッドマイクロスフェアは、例えば本発明の化合物を大豆油およびゴマ油等に溶解し、天然リン脂質、グリセリンおよび水等を加え、撹拌機で撹拌し、更に超音波乳化機、加圧型乳化機およびフレンチプレス細胞破砕機等を用いて分散させることにより得られる。
【0047】
直腸投与剤は、本発明の化合物にカカオ脂肪酸のモノ、ジまたはトリグリセリド、ポリエチレングリコール等の坐剤用基剤を加え、加湿して溶融し、これを型に流し込んで冷却するか、あるいは本発明の化合物をポリエチレングリコールおよび大豆油等に溶融し、ゼラチン膜で被覆して得ることができる。皮膚外用剤は、本発明の化合物に例えば、白色ワセリン、ミツロウ、流動パラフィンおよびポリエチレングリコール等を加え、必要に応じて加温し、混融して得ることができる。テープ剤は、本発明の化合物にロジンおよびアクリル酸アルキルエステル重合体等の粘着剤を混融し、これを不織布等に展延して得ることができる。吸入剤は、例えば薬学的に許容される不活性ガス等の噴射剤に本発明の化合物を溶解または分散し、これを耐圧容器に充填して得ることができる。
【0048】
本発明の化合物を有効成分として含む上記の薬剤の投与方法は特に限定されないが、特に異常増殖性細胞の増殖に起因する疾患の治療に使用する場合には、筋肉内注射、静脈内注射、皮下注射もしくは腹腔内注射等の注射、経直腸投与または経肺投与などが好ましい。異常増殖性疾患の治療法としては、疾患部位に直接投与する方法(例えば、局所注射および塗布等)をも挙げられる。
【0049】
本発明の化合物の投与量および投与回数などは、例えば患者の年齢、症状および体重等に応じ適宜決定するが、一般には0.25〜200mg/kg、好ましくは0.5〜100mg/kgを1日1回あるいは数回に分けて投与する。
【0050】
以下に本発明を実施例をもって説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではないことは無論である。
【0051】
【実施例】
実施例1
水溶性GM3アナログ−アクリルアミド共重合体の合成
以下のスキーム3にしたがって、水溶性GM3アナログ−アクリルアミド共重合体の製造を行った。
【化7】
【0052】
実施例1.水溶性GM3アナログ−アクリルアミド共重合体(x:y=1:5)の合成
すでに報告されている合成法(ニシムラ(Nishimura), S.およびヤマダ(Yamada), K.によるJ. Am. Chem. Soc. 119, 10555−10556, 1997)に従って、図2に示すようにして水溶性GM3アナログ−アクリルアミド共重合体を合成した。
【0053】
A.N−ベンジルオキシカルボニルセリンオクチルアミド(1)の合成
【化8】
N−ベンジルオキシカルボニルセリン(12g)をエタノール:ベンゼン=1:1の混合溶媒(120mL)に溶解させた後、N−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)(13.6g)およびオクチルアミン(11.1mL)を加えて室温で一晩撹拌した。反応液を減圧濃縮した後、トルエンから再結晶して、目的物(1)(12.64g)を得た。
【0054】
B.O−(2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチル)ラクトシル−N−ベンジルオキシカルボニルセリンオクチルアミド(2)の合成
【化9】
よく乾燥させたA部で得たN−ベンジルオキシカルボニルセリンオクチルアミド(1)(4.0g)をジクロロエタン(80mL)に溶解させ、活性化させたモレキュラーシーブ4A(8.0g)と2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチルラクトシルブロミド(12.0g)を加えた。氷冷下、トリフルオロメタンスルホン酸銀(4.40g)を加え、徐々に室温に戻しながら、窒素気流下で一晩撹拌した。反応液をセライトでろ過し、ろ液を飽和食塩水で2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、硫酸マグネシウムをろ別し、ろ液を減圧濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相、トルエン:酢酸エチル=5:1)によって目的物を分離した。目的物を含む溶出画分を減圧濃縮して、目的物(2)(5.32g)を得た。
【0055】
C.O−(2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチル)ラクトシルセリンオクチルアミド(3)の合成
【化10】
B部で得たO−(2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチル)ラクトシル−N−ベンジルオキシカルボニルセリンオクチルアミド(2)(4.0g)をメタノール(60mL)に溶解させ、5%パラジウム−炭素を触媒とし、常圧下、室温で接触水素化還元を行った。反応後触媒をろ別し、反応液を減圧濃縮して、目的物(3)(3.42)gを得た。
【0056】
D.O−(2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチル)ラクトシル−N−[(6−アクリロイルアミノ)ヘキサノイル]セリンオクチルアミド(4)の合成
【化11】
6−アクリロイルアミノヘキサン酸(278mg)とEEDQ(371mg)をエタノール:ベンゼン=1:1の混合溶媒(40mL)に加え、十分溶解させ、C部で得たO−(2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチル)ラクトシルセリンオクチルアミド(3)(1.14g)を加え、室温で一晩撹拌した。反応液を減圧濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(移動相、クロロホルム:メタノール=100:1)により目的物を分離した。目的物を含む溶出画分を減圧濃縮して、目的物(4)(1.06g)を得た。
【0057】
E.O−ラクトシル−N−[(6−アクリロイルアミノ)ヘキサノイル]セリンオクチルアミド(5)の合成
【化12】
D部で得たO−(2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチル)ラクトシル−N−[(6−アクリロイルアミノ)ヘキサノイル]セリンオクチルアミド(4)(400mg)をメタノールに溶解させ、ナトリウムメトキシド(8.49mg)を加えて、室温で2時間撹拌した。H+型の陽イオン交換樹脂ドエックス(Dowex)50W(ダウケミカル社製)を加えて中和した。ろ過によりイオン交換樹脂を除き、ろ液を減圧濃縮し、エタノールから再結晶して、目的物(5)(270mg)を得た。
【0058】
F.O−ラクトシル−N−[(6−アクリロイルアミノ)ヘキサノイル]セリンオクチルアミド−アクリルアミド共重合体(LacCerポリマーと略す)(6)の合成
【化13】
E部で得たO−ラクトシル−N−[(6−アクリロイルアミノ)ヘキサノイル]セリンオクチルアミド(5)(150mg、0.21mmol、1当量)とアクリルアミド(60.25mg、0.84mmol、4当量)をDMSO:水=1:1の混合溶媒に溶解し、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)(12μL)と過硫酸アンモニウム(7.67mg)を加え、50℃で一晩重合させた。目的物を、蒸留水で平衡化したセファデックスG−25(ファルマシア社製)カラムクロマトグラフィーで精製した。目的物の溶出画分を凍結乾燥して、目的物(6)(200mg)(分子量は約300,000)を得た。1H−NMRスペクトル分析により、O−ラクトシル−N−[(6−アクリロイルアミノ)ヘキサノイル]セリンオクチルアミド(x)の含有量は20モル%であった。
【0059】
G.α−2,3−シアル酸転移酵素によるN−アセチルノイラミン酸残基の転移反応を用いた、水溶性GM3アナログ−アクリルアミド共重合体(GM3アナログポリマーと略す)(7)の合成
【化14】
F部で得たO−ラクトシル−N−[(6−アクリロイルアミノ)ヘキサノイル]セリンオクチルアミド−アクリルアミド共重合体(6)(30mg)、CMP−NeuAc(30mg)、ウシ血清アルブミン(8mg)、塩化マンガン(II)(1.2mg)、仔ウシ由来アルカリフォスファターゼ(20U)を含む50mM カコジル酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)(2mL)に、α−2,3−シアル酸転移酵素(0.3U)を添加し、37℃で72時間反応させた。反応後、セファデックスG−25(ファルマシア社製)カラムクロマトグラフィー(移動相;50mM ギ酸アンモニウム)により生成物を分離し、凍結乾燥することにより、生成物(7)(27mg)を得た。得られた生成物の1H−NMRスペクトルを測定して、N−アセチルノイラミン酸残基が転移した生成物であることを確認した。
【0060】
実施例2.水溶性GM3アナログ−アクリルアミド共重合体(x:y=1:20)の合成
実施例1において、実施例1のE部で得たO−ラクトシル−N−[(6−アクリロイルアミノ)ヘキサノイル]セリンオクチルアミド(5)とアクリルアミドの仕込みのモル比率を1:20とした以外には、実施例1と同様にして水溶性重合体を得た。
【0061】
実施例3.水溶性GM3アナログ−アクリルアミド共重合体(x:y=1:40)の合成
実施例1において、実施例1のE部で得たO−ラクトシル−N−[(6−アクリロイルアミノ)ヘキサノイル]セリンオクチルアミド(5)とアクリルアミドの仕込みのモル比率を1:40とした以外には、実施例1と同様にして水溶性重合体を得た。
【0062】
実施例4:GM3アナログポリマーの肺癌細胞に対する増殖抑制効果
実施例1、2および3で製造した、アクリルアミドモノマーに対してGM3アナログのモル比率がそれぞれ、1:4、1:20および1:40であるGM3アナログポリマーがマウス3LLルイス肺癌細胞の細胞増殖に及ぼす効果を調べた。同様に、比較例として天然のGM3分子および実施例1によって製造したラクトシルセラミド(LacCer)ポリマー(x:y=1:4)(6)についても調べた。具体的には、プラスチック培養皿中のマウス3LLルイス肺癌細胞の培養液(RPMI1640/10%ウシ胎児血清)にGM3アナログポリマー、天然のGM3分子およびLacCerポリマーをそれぞれ添加し、24時間培養後の細胞の生存率をMTT法を用いて計測した。該GM3アナログポリマーおよびLacCerポリマーについてはそれぞれ20μMの濃度で、天然のGM3分子についてはより高濃度の50、200および200μMの濃度で調べた。その結果を図3に示す。GM3アナログポリマーの場合のみに著しい増殖抑制効果が認められた。一方で、天然のGM3分子をGM3アナログポリマーの10倍の濃度である200μMの高濃度で添加しても24時間培養後の細胞数は無添加のコントロールと比較して全く変化がなかった。また、同濃度のLacCerポリマーについても全く抑制効果が観察されなかったことより、該GM3アナログのシアル酸残基が細胞増殖抑制活性に必須であることが判明した。これらの結果から、GM3アナログポリマーの細胞増殖抑制活性は、該ポリマーにおけるGM3残基の含有量が大きいほど高いことが認められた。
【0063】
実施例5:GM3アナログポリマーのマウスB16メラノーマ細胞に対する増殖抑制効果
実施例4において、GM3アナログポリマーがマウスの肺癌に対する増殖抑制効果が確認されたことから、他の癌細胞における効果についても調べた。具体的には、プラスチック培養皿中のマウスB16メラノーマ細胞の培養液(DMEM/10%ウシ胎児血清)にGM3アナログの水溶性共重合体およびLacCerポリマーをそれぞれ3μMおよび15μMの濃度で添加し、24時間培養後の細胞の生存率を、MTT法を用いて計測した。該計測の結果および無添加のコントロールの結果、並びにプラスチック培養皿中の顕微鏡写真を図4に示す。GM3アナログポリマーはマウスB16メラノーマ細胞に対して、用量依存的な著しい増殖抑制効果を示した。一方、LacCerポリマーの該効果はほとんど認められなかった。
【0064】
実施例6:GM3アナログポリマーのヒト皮膚癌細胞に対する増殖抑制効果
実施例5と同様な方法を用いて、GM3アナログポリマーがヒトの自然発症皮膚癌であるHaCaT細胞に対する増殖抑制効果を調べた。具体的には、プラスチック培養皿中のマウスB16メラノーマ細胞の培養液(DMEM/10%ウシ胎児血清)にGM3アナログポリマーおよびLacCerポリマーをそれぞれ3μMおよび15μMの濃度で添加し、24時間培養後の細胞の生存率を、MTT法を用いて計測した。該計測の結果および無添加のコントロールの結果、並びにプラスチック培養皿中の顕微鏡写真を図5に示す。GM3アナログポリマーはHaCaT細胞に対して、用量依存的な著しい増殖抑制効果を示した。一方、LacCerポリマーの該効果はほとんど認められなかった。
【0065】
【発明の効果】
本発明で製造したGM3アナログ含有の水溶性高分子には、糖鎖のクラスター効果を期待できる。本発明のGM3アナログポリマーについて、様々な癌細胞に対する増殖抑制効果を調べた結果、天然のGM3分子およびLacCerポリマーと比較して著しい増殖抑制効果を得た。従って、本発明のGM3アナログ含有の水溶性分子を有効成分として含む薬剤の使用は、癌および乾癬などの異常増殖性細胞の増殖に起因する疾患の処置のために有用であることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、各種ガングリオシドの生合成経路を示す図である。
【図2】図2は、GM3およびGM3アナログ−アクリルアミド共重合体の各々の構造を示す図である。
【図3】図3は、マウス3LL肺癌細胞に対するGM3アナログ−アクリルアミド共重合体の増殖抑制効果を示す図である。
【図4】図4は、マウスB16メラノーマ細胞に対するGM3アナログ−アクリルアミド共重合体の増殖抑制効果、およびプラスチック培養皿中の顕微鏡写真を示す図である。
【図5】図5は、ヒト皮膚癌HaCaT細胞に対するGM3アナログ−アクリルアミド共重合体の増殖抑制効果、およびプラスチック培養皿中の顕微鏡写真を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガングリオシドGM3アナログを含有する水溶性分子を有効成分として含む、各種の癌および異常増殖性細胞の増殖に起因する各種病態の処置、並びにGM3との相互作用を有する生体内物質が発症原因である疾患の処置に用いるための異常増殖性細胞増殖抑制剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガングリオシドは、シアル酸を含むスフィンゴ糖脂質ファミリーの総称であって、シアル酸を含む糖鎖がセラミドと呼ばれる脂質に共有結合で結合している分子である。今日では、様々な糖鎖構造のガングリオシドが知られており、GM3はその生合成経路における最初のガングリオシド分子である(図1を参照。)。
【0003】
GM3はヒトを含む哺乳動物の種々の細胞に広く発現していることから、その生理学的な機能および病態生理学的な意義が注目されている。これまでに、例えばヒトの脳に存在する多数のガングリオシド分子が単離されている(例えば、非特許文献1を参照。)。
【0004】
【非特許文献1】
ラルス・スベネルホルム(Lars Svennerholm),「ヒト脳ガングリオシドのクロマトグラフィー法による分離(Chromatographic separation of human brain gangliosides」,(北アイルランド),第10版,ジャーナル・オブ・ニューロケミストリー(J. Neurochem.),1963年,p.613−623
【0005】
また、細胞の癌化はガングリオシドの組成に変化をもたらすことが知られている。通常、細胞の癌化により、GM1およびGD1bなどのオリゴ糖からGM3およびGD3などの単純なガングリオシドに変化し得る(例えば、非特許文献2および3を参照。)。
【0006】
【非特許文献2】
フェデリコ・A・キュマル(federico A. Cumar),外4名,「DNAウイルスで形質転換された腫瘍化マウスセルライン中のガングリオシド合成における酵素による遮断(Enzymatic Block in the Synthesis of Gangliosides in DNA Virus−Transformed Tumorigenic Mouse Cell Lines)」(米国),第67版,プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.),1970年,p.757−764
【0007】
【非特許文献3】
センイチロー・ハコモリ(Sen−itiroh Hakomori),「細胞間相互作用、分化および腫瘍形成におけるグリコスフィンゴリピド(Glycosphingolipid in Cellular Interaction, Differentiation, and Oncogenesis)」(米国),第50版,アニュアル・レビュー・オブ・バイオケミストリー(Annu. Rev. Biochem.),1981年,p.733−764
【0008】
培養細胞実験において、GM3が細胞増殖を調節する可能性はこれまで多数報告されている。例えば、細胞培養液ヘ高濃度のGM3を添加することにより、A431ヒト類表皮癌腫細胞においては、上皮細胞成長因子(EGF)で誘導される細胞増殖が抑制され(例えば、非特許文献4参照。)、また仔ハムスター腎臓(BHK)細胞においては、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)で誘導される細胞増殖は抑制される(例えば、非特許文献5参照。)。
【0009】
【非特許文献4】
エリック・G・ブレマー(Eric. G. Bremer),外2名,「ガングリオシドが媒介する細胞増殖の調節(Ganglioside−mediated Modulation of Cell Growth」,(米国),第261版,ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.),1986年,p.2334−2440
【0010】
【非特許文献5】
エリック・G・ブレマー(Eric. G. Bremer),外1名,「GM3ガングリオシドは、化学的な規定培地においてハムスター線維芽細胞の成長の抑制を誘発する:ガングリオシドは成長因子受容体の機能を調節し得る(GM3 Ganglioside Induces Hamster Fibroblast Growth Inhibition in Chemically−Defined Medium: Ganglioside May Regulate Growth Factor Receptor Function」,(米国),第106版,バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem. Biophys. Res. Commun.),1982年,p.711−718
【0011】
しかしながら、その他の多くの癌細胞については、高濃度のGM3の添加による細胞増殖抑制効果は認められていない。そのため、癌化などを含めた生物作用への外因性GM3の一般的な応用は困難であった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、GM3を含有する水溶性高分子を創製し、該高分子が癌および他の異常増殖性細胞の増殖に起因する様々な疾患における増殖抑制に及ぼす効果を調べた。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、式:
【化3】
[式中、
R1は、直鎖または分枝の炭素数が1〜24個の二価のアルキレン基である。
R2は、直鎖または分枝の炭素数が1〜24個のアルキル基である。そして、
Z1は、アクリロイルアミノ基、アクリロイルオキシ基、ビニルオキシカルボニル基、メタクリロイルオキシ基からなる群から選ばれる]
で示されるGM3アナログと重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物との水溶性共重合体を有効成分として含む、異常増殖性細胞増殖抑制剤に関する。
【0014】
本発明は、式:
【化4】
[式中、
R1 ’は、直鎖または分枝の炭素数が1〜24個の二価のアルキレン基である。
R2 ’は、直鎖または分枝の炭素数が1〜24個のアルキル基である。そして、
Z1 ’は、アミノ基、カルボキシル基およびハロゲン基からなる群から選ばれる]
で示されるGM3アナログが、アミノ基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基からなる群から選ばれる官能基を有するオリゴマーまたはポリマーと結合した水溶性分子を有効成分として含む、異常増殖性細胞増殖抑制剤にも関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に記載する。
用語「GM3アナログ」とは、上記の式(I)または(II)によって示される、天然のGM3分子の構造に類似した構造を有する分子を意味する。すなわち、シアリルラクトース部分がβ−グルコシド結合によって天然のセラミド(すなわち、N−アシルスフィンゴシン骨格)に類似する構造の脂質と結合した化合物を意味する。ここで、該類似する構造とは、天然のGM3と同様なL−セリンの立体配置を有しており、且つ二本鎖(これは、−NH−C(=O)−R1−Zおよび−NH−C(=O)−R1 ’−Z’で示される鎖、または−C(=O)−NH−R2および−C(=O)−NH−R2 ’で示される鎖である)を有することを特徴とする。上記二本鎖において、R1およびR1 ’は、直鎖または分枝の炭素数が1〜24個の二価のアルキレン基である。また、R2およびR2 ’は、直鎖または分枝の炭素数が1〜24個の二価のアルキル基である。
【0016】
R1またはR1 ’基における用語「二価のアルキレン基」とは、直鎖または分枝の炭素数が1〜24個の二価のアルキレン基である。該基は、炭素数が4〜24個であることがより好ましい。
【0017】
R2またはR2 ’基における用語「アルキル基」とは、直鎖または分枝の炭素数が1〜24個の二価のアルキル基である。該基は、炭素数が4〜24個であることがより好ましい。
【0018】
本発明のGM3アナログ含有の高分子の製造方法は、主に2つの方法に大別される。第1の方法は、重合反応を用いた、重合可能なエチレン性二重結合を有するGM3アナログと重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物との共重合による水溶性共重合体の生成による方法である。
【0019】
第2の方法は、GM3アナログを天然もしくは合成のオリゴマーもしくはポリマーと連結する方法である。従って、本発明のGM3アナログは、上記の二本鎖中にZ1またはZ1 ’基で示されるGM3アナログ含有高分子の形成に必要な官能基を有する。
【0020】
まず、前者の重合反応を用いるGM3アナログ含有の重合体の製造について説明する。この場合に、Z1基は重合可能なエチレン性二重結合を有する官能基である。該基は、例えばアクリロイルアミノ基、アクリロイルオキシ基、ビニルオキシカルボニル基、メタクリロイルオキシ基からなる群から選ばれる。アクリロイルアミノ基であることが好ましい。
【0021】
用語「重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物」とは、少なくとも1つの重合可能なエチレン性二重結合を有することにより、GM3アナログと共重合することができる化合物を意味する。該化合物としては高分子化学の分野において共重合可能であると一般的に知られる化合物が含まれ、例えば、アクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸アルキル、メタクリル酸、メタクリル酸アルキルおよびカルボン酸ビニルを含むが、これらに限定されない。アクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチルおよび酢酸ビニルが好ましく、アクリルアミドが特に好ましい。
【0022】
用語「GM3アナログと重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物との水溶性共重合体」とは、上記の式Iによって示されるGM3アナログモノマーと、上記の重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物モノマーとの共重合によって生成する、水溶性共重合体を意味する。それらの共重合体におけるGM3アナログ(x)と重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物(y)との比率は、該共重合体の製造時における両方のモノマーの仕込み比率を調節することによって変えることができ、所望する比率の共重合体を得ることができる。該比率は、通常、モルで1:1〜1:40である。分子量は、約10,000〜約500,000であり、好ましくは約10,000〜約100,000である。
【0023】
以下のスキーム1に、GM3アナログモノマーと重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物との水溶性共重合体の製造方法を具体的に説明する。
【化5】
まず、N−ベンジルオキシカルボニルL−セリンと、R2−NH2で示されるアミンとを、例えばN−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQと略す)等の脱水縮合剤の存在下で反応させて、N−ベンジルオキシカルボニルセリンのアミド体(1)を得る。該化合物(1)をトリフルオロメタンスルホン酸銀の存在下でラクトースハライドと反応させることにより、該アミド体とラクトースとが結合したO−ラクトシル−N−ベンジルオキシカルボニルセリンのアミド体(2)を得ることができる。次いで、例えばパラジウム−炭素触媒を用いた接触水素化還元反応を行なって、ベンジルオキシカルボニル基の脱保護反応を行って、化合物(3)を得る。該化合物(3)と、Z1基中に重合可能なエチレン性二重結合を有するHOOC−R1−Z1化合物とを、例えばEEDQまたはジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCと略す)等の縮合剤の存在下で反応させることにより、二本鎖を有する化合物(4)を得ることができる。次いで、該化合物(4)を例えば、メトキシナトリウム等の適当な塩基を用いて反応させて脱アセチル化を行なって、脱アセチル化された化合物(5)を得ることができる。
上記で製造した化合物(5)を例えば過硫酸アンモニウム等のラジカル重合反応開始剤の存在下で重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物と共重合させることによって、ラクトース誘導体の共重合体を得ることができる。ここで、該化合物(5)と重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物との仕込み率を変えることによって、所望する比率の高分子構成単位を有するラクトース誘導体の共重合体を得ることができる。最後に、該共重合体を、上記と同様に、シアル酸転移酵素の存在下でシチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミン酸(CMP−NeuAc)と反応させることにより、最終的な目的物である、GM3アナログと重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物との水溶性共重合体を得ることができる。
【0024】
次に、GM3アナログと天然もしくは合成のオリゴマーもしくはポリマーとを直接に連結する方法に説明する。この場合に、用語「アミノ基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基からなる群から選ばれる官能基を有するオリゴマーまたはポリマー」とは、生体にとって非毒性の天然または合成のオリゴマーまたはポリマーを意味する。ここで、用語「オリゴマー」とは、分子量が約500〜10,000のものを意味する。また、用語「ポリマー」とは、分子量が約10,000以上のものを意味する。
【0025】
アミノ基を有するオリゴマーまたはポリマーとしては、例えば天然の高分子(例えば、キトサンおよびその誘導体等の多糖系高分子、並びにポリリジンおよびその誘導体等のペプチド系高分子)および合成高分子(例えば、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミンおよびポリアリルアミン等)を含むが、これらに限定されない。
【0026】
カルボキシル基を有するオリゴマーまたはポリマーとしては、天然の高分子(例えば、ヒアルロン酸およびその誘導体等の多糖系高分子、並びにポリグルタミン酸およびその誘導体等のペプチド系高分子)および合成高分子(例えば、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸、並びにそれらの誘導体)を含むが、これらに限定されない。
【0027】
また、ヒドロキシル基を有するオリゴマーまたはポリマーとしては、例えば天然の高分子(例えば、デンプン、デキストランおよびシクロデキストリンおよびその誘導体等の多糖系高分子、並びにポリトレオニンおよびその誘導体等のペプチド系高分子)および合成高分子(例えば、ポリビニルアルコール)を含むが、これらに限定されない。それらのオリゴマーまたはポリマーの形状としては、鎖状高分子および環状高分子(例えば、デンドリマー)のいずれであってもよい。
【0028】
本方法の場合には、該GM3アナログはポリマー等と連結することが可能なZ1 ’基を有する。該基は、アミノ基、カルボキシル基およびハロゲン基からなる群から選ばれる。例えば、該連結可能な官能基におけるハロゲン基としては、クロロ基、ブロモ基またはヨード基であることが好ましく、ブロモ基またはヨード基であることがより好ましい。
【0029】
用語「GM3アナログが、アミノ基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基からなる群から選ばれる官能基を有するオリゴマーまたはポリマーと結合した水溶性分子」において、GM3アナログとオリゴマーまたはポリマーとの結合は、アミド結合、エステル結合、エーテル結合またはアミノ基のアルキル化によって行なわれる。例えば、Z1 ’基がアミノ基であって、ポリマー上の官能基がカルボキシル基である場合、またはZ1 ’基がカルボキシル基であって、ポリマー上の官能基がアミノ基である場合には、アミド結合によって連結することが可能である。Z1 ’基がカルボキシル基であって、ポリマー上の官能基がヒドロキシル基である場合には、エステル結合によって連結することも可能である。また、Z1 ’基がハロゲン基であって、ポリマー上の官能基がアミノ基である場合にはアミノ基のアルキル化によって連結することも可能である。更に、Z1 ’基がハロゲン基であって、ポリマー上の官能基がヒドロキシル基である場合にはエーテル結合によって連結することも可能である。
【0030】
上記のGM3アナログと、オリゴマーまたはポリマーのアミノ基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基からなる群から選ばれる官能基との比率は、通常、モルで1:1〜1:40である。
【0031】
次いで、「GM3アナログが、アミノ基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基からなる群から選ばれる官能基を有するオリゴマーまたはポリマーと結合した水溶性分子」の製造方法をスキーム2に具体的に説明する。
【化6】
まず、上記のGM3アナログの水溶性(共)重合体の製造方法と同様の方法を用いて、化合物(1’)、(2’)、(3’)、(4’)および(5’)を得ることができる。次いで、該化合物(5’)を上で定義した天然または合成のオリゴマーまたはポリマーと連結させることによって、ラクトース誘導体を含有する水溶性分子(6’)を得ることができる。
【0032】
ここで、アミド結合によって連結した水溶性分子の製造は、例えばZ1 ’基がベンジルオキシカルボニル基等で保護されたアミノ基である式:HOOC−R1 ’−Z1 ’の化合物と、製造した化合物(3’)とを例えば、DCC等の縮合剤の存在下で縮合させる。次いで、例えばパラジウム−炭素触媒の存在下で水素を用いた接触水素化反応を用いて脱保護した後に、例えばメトキシナトリウム等の適当な塩基を用いて脱アシル化させて化合物(5’)を得て、得られた該化合物(5’)をEEDQもしくはDCC等の縮合剤の存在下でオリゴマーまたはポリマーのカルボキシル基と反応させることによって得ることができる。あるいは、例えばZ1 ’基がメチルエステル基等で保護されたカルボキシル基である式:HOOC−R1 ’−Z1 ’の化合物と、製造した化合物(3’)とを例えば、DCC等の縮合剤の存在下で縮合させ、次いで、例えばメトキシナトリウム等の適当な塩基を用いて脱保護および脱アシル化を行なって化合物(5’)を得て、得られた該化合物(5’)をEEDQまたはDCC等の縮合剤の存在下でオリゴマーまたはポリマーのアミノ基と反応させることによって得ることもできる。
【0033】
エステル結合によって連結した水溶性分子の製造は、まず上記と同様の方法によりZ1 ’基が例えばメチルエステル基等で保護されたカルボキシル基である式:HOOC−R1 ’−Z1 ’の化合物を出発として化合物(5’)を得る。次いで、該化合物(5’)を例えばp−ニトロフェニルエステルなどを用いた活性化エステル法を用いたり、またはEEDQもしくはDCC等の縮合剤を用いて滴下反応させることによって、オリゴマーまたはポリマーのヒドロキシル基と反応させることによって得ることができる。
【0034】
更に、エーテル結合によって連結した水溶性分子の製造は、例えばZ1 ’基にハロゲン基を有する式:HOOC−R1 ’−Z1 ’の化合物と、製造した化合物(3’)とを例えば、DCC等の縮合剤の存在下で縮合させ、次いでメトキシナトリウム等の適当な塩基を用いて脱アシル化させて化合物(5’)を得る。得られた該化合物(5’)を、例えばトリエチルアミンまたはピリジンなどの適当な塩基の存在下でオリゴマーまたはポリマーのヒドロキシル基と反応させることによって得ることができる。
【0035】
更に、アミノ基のアルキル化によって連結した水溶性分子の製造は、、まず上記と同様の方法によりZ1 ’基にハロゲン基を有する式:HOOC−R1 ’−Z1 ’の化合物と、製造した化合物(3’)とを例えば、DCC等の縮合剤の存在下で縮合させ、次いでメトキシナトリウム等の適当な塩基を用いて脱アシル化させて化合物(5’)を得る。得られた該化合物(5’)を、例えば水酸化ナトリウム、トリエチルアミンまたはピリジンなどの適当な塩基の存在下でオリゴマーまたはポリマーのアミノ基と反応させることによって得ることができる。
【0036】
該水溶性分子の該オリゴマーまたはポリマーに対する比率を調節することによって、該ポリマーなどのアミノ基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基からなる群から選ばれる官能基との比率を制御することができる。該比率は、通常1:1〜1:40である。
【0037】
最後に、上記で製造したラクトース誘導体含有の水溶性分子を、シアル酸転移酵素の存在下でCMP−NeuAcと反応させることにより、最終的な目的物である「GM3アナログが、アミノ基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基からなる群から選ばれる官能基を有するオリゴマーまたはポリマーと結合した水溶性分子」を得ることができる。
【0038】
本明細書で使用する用語「異常増殖性細胞増殖抑制剤」とは、ヒトを含む哺乳動物における異常増殖性細胞の増殖に起因する疾患、すなわち細胞が未分化な状態で異常増殖を呈することに基づく各種の疾患を処置するための薬剤を意味する。該疾患としては、例えば良性腫瘍(子宮筋腫など);固形癌(食道癌、大腸癌、肺癌、胃癌、膵臓癌、肝癌などを含む扁平上皮癌および腺癌、または脳腫癌)、神経膠腫、白血病、悪性リンパ腫などを含む悪性腫瘍もしくは癌(癌腫、肉腫);腎炎(糸球体腎炎など)、ヒト自己免疫性リンパ球増殖性症候群、リンパ球増殖性疾患、血管免疫芽細胞性リンパ節症、全身性エリトマト−デス、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎等)、進行性全身性硬化症、多発性筋炎(皮膚筋炎)、シェ−グレン症候群、骨髄異形成症候群、強皮症、リウマチ、乾癬、創傷の過形成(肉芽等)などの疾患を含むが、これらに限定されない。該疾患は、悪性腫瘍癌であることが好ましく、固形癌であることが特に好ましい。また、本発明における処置とは、上記の疾患の治療、すなわち症状の改善を含めた軽減または悪化防止を含めた維持、あるいは該疾患の予防を意味する。
【0039】
本発明で製造した水溶性分子を有効成分として含む薬剤の製造方法を以下に示す。例えば、担体、賦形剤、その他の添加物と共に、経口または非経口的に投与する錠剤とすることができる。経口製剤としては、例えば散剤、顆粒剤、カプセル剤および錠剤等の固形製剤、並びに例えばシロップ剤、エリキシル剤および乳剤等の液状製剤を挙げることができる。散剤は、例えば乳糖、デンプン、結晶セルロース、乳酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムおよび無水ケイ酸等の賦形剤と混合して得ることができる。顆粒剤は、上記賦形剤以外に必要に応じて、例えば白糖、ヒドロキシプロピルセルロースおよびポリビニルピロリドン等の結合剤、並びに例えばカルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤を加え、湿式または乾式で造粒して得ることができる。錠剤は、上記散剤もしくは顆粒剤をそのままで、またはステアリン酸マグネシウムおよびタルク等の滑沢剤を加えて打錠して得ることができる。上記賦形剤または顆粒剤は、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸メチル共重合体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートおよびヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネート等の腸溶性基剤で被覆し、これらを腸溶性または持続性の製剤にすることができる。カプセル剤における硬カプセル剤は、上記散剤または顆粒剤を硬カプセルに充填して得ることができる。軟カプセル剤は、本発明の化合物を、例えばグリセリン、ポリエチレングリコールおよびゴマ油等に溶解し、これをゼラチン膜で被覆して得ることができる。
【0040】
シロップ剤は、例えば白糖、ソルビトールおよびグリセリン等の甘味剤と本発明の化合物とを一緒に水に溶解して得ることができる。また、該甘味剤および水のほかに、例えば精油およびエタノール等を加えてエリキシル剤としたり、あるいは例えばアラビアゴム、トラガント、ポリソルベート類(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80およびポリソルベート80(トウィーン80)等)およびカルボキシメチルセルロースナトリウム等を加えて乳剤または懸濁剤とすることもできる。更に、例えば着色剤および保存剤等を加えることもできる。
【0041】
非経口製剤としては、例えば注射剤、直腸投与剤、ペッサリー、皮膚外用剤、吸入剤、エアゾール剤および点眼剤等を含む。注射剤は、本発明の化合物に、必要に応じて例えばポリソルベート類等の非イオン界面活性剤;例えば塩酸、水酸化ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウム等のpH調整剤;例えば塩化ナトリウムおよびブドウ糖等の等張化剤;例えばアミノ酸類等の安定化剤;並びに、例えば注射用蒸留水または生理食塩水を加え、滅菌濾過し、アンプルに充填して得ることができる。更に例えばマンニトール、デキストランおよびゼラチン等を加えて真空凍結乾燥し、用時溶解型の注射剤とすることができる。その他、粉末充填型の注射剤とすることもできる。また本発明の化合物に、例えばレシチン、ポリソルベート類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油およびマクロゴール等の乳化剤を加え、水中で乳化させることにより注射用乳化剤とすることができる。
【0042】
また、注射剤としては、溶解性および目標臓器への移行速度の改善が可能なリポソーム製剤およびリピッドマイクロスフェア等が挙げられる。リポソーム製剤は公知のリポソーム調製法(ナイト(Knight), C.G.によるLiposomes: From Physical Structure to Therapeutic applications, pp.51−82, Elsevler, Amsterdam(1981); Proc. Natl.Acad. Sci., U.S.A., Vol. 75, 4198 (1978))に従って調製することができる。
【0043】
すなわち、リポソーム膜を形成する両親媒性物質としては、例えば天然リン脂質(例えば、卵質レシチン、大豆レシチン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリロール、ホスファチジルエタノールアミンおよびカルジオリピン等)、合成リン脂質(例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジバルミトイルホスファチジルコリンおよびジバルミトイルホスファチジルエタノールアミン等)等のリン脂質が使用される。また、膜の安定性、流動性および薬剤の膜透過性を改善するために、例えばコレステロール類(例えば、コレステロール、エルゴステロール、フィトステロール、シトスステロールおよびスチグマステロール等)、リポソームに負電荷を付与することが知られる物質(例えば、ホスファチジン酸およびジセチルホスフェート等)、正電荷を付与することが知られる物質(例えば、ステアリルアミンおよびステアリルアミンアセテート等)、酸化防止剤(例えば、トコフェロール等)および油性物質(例えば、大豆油、綿実油、ゴマ油および肝油等)等の種々の公知の添加剤を使用できる。
【0044】
リポソームの製造は、例えば、以下の方法で行うことができる。上記の両親媒性物質および添加剤、並びに本発明化合物を、有機溶媒(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、エタノール、メタノールおよびヘキサン等の単一または混合溶媒)にそれぞれ溶解し、得られた両方の溶液を混合し、フラスコ等の容器中、不活性ガス(例えば、窒素ガスおよびアルゴンガス等)の存在下で該有機溶媒を除去し、該器壁に薄膜を付着させる。次いで、この薄膜を適当な水性媒体(例えば、生理食塩水、緩衝液およびリン酸緩衝生理食塩水等)に加え、撹拌機で撹拌する。小粒径のリポソームを得るためには、超音波乳化機、加圧型乳化機、フレンチプレス細胞破砕機等を用いて更に分散させる。このようにリポソーム化に必要な両親媒性物質等と本発明の化合物とが水性媒体に分散した液をメンブランフィルター処理することによってリポソーム化が進行し、粒径分布が制御されたナノスフェアリポソーム(脂質超微粒子;粒径約25〜50nm)を得ることができる。また、リポソームについて限外濾過、遠心分離およびゲル濾過等の分画処理を行って、担持されなかった薬剤を徐去することもできる。
【0045】
また、上記の両媒性物質および添加剤の他に、膜形成質としてβ−オクチルグルコシド、L−チロシン−7−アミド−4−メチルクマリンおよびフェニルアミノマンノシドまたはスルファチドを添加することによって得られる、グルコース残基、チロシン残基、マンノース残基またはスルファチド残基を膜上に有するリポソームに、本発明のガングリオシドポリマーのアミノアルコール誘導体を担持させることもできる。
【0046】
リピッドマイクロスフェアは、例えば本発明の化合物を大豆油およびゴマ油等に溶解し、天然リン脂質、グリセリンおよび水等を加え、撹拌機で撹拌し、更に超音波乳化機、加圧型乳化機およびフレンチプレス細胞破砕機等を用いて分散させることにより得られる。
【0047】
直腸投与剤は、本発明の化合物にカカオ脂肪酸のモノ、ジまたはトリグリセリド、ポリエチレングリコール等の坐剤用基剤を加え、加湿して溶融し、これを型に流し込んで冷却するか、あるいは本発明の化合物をポリエチレングリコールおよび大豆油等に溶融し、ゼラチン膜で被覆して得ることができる。皮膚外用剤は、本発明の化合物に例えば、白色ワセリン、ミツロウ、流動パラフィンおよびポリエチレングリコール等を加え、必要に応じて加温し、混融して得ることができる。テープ剤は、本発明の化合物にロジンおよびアクリル酸アルキルエステル重合体等の粘着剤を混融し、これを不織布等に展延して得ることができる。吸入剤は、例えば薬学的に許容される不活性ガス等の噴射剤に本発明の化合物を溶解または分散し、これを耐圧容器に充填して得ることができる。
【0048】
本発明の化合物を有効成分として含む上記の薬剤の投与方法は特に限定されないが、特に異常増殖性細胞の増殖に起因する疾患の治療に使用する場合には、筋肉内注射、静脈内注射、皮下注射もしくは腹腔内注射等の注射、経直腸投与または経肺投与などが好ましい。異常増殖性疾患の治療法としては、疾患部位に直接投与する方法(例えば、局所注射および塗布等)をも挙げられる。
【0049】
本発明の化合物の投与量および投与回数などは、例えば患者の年齢、症状および体重等に応じ適宜決定するが、一般には0.25〜200mg/kg、好ましくは0.5〜100mg/kgを1日1回あるいは数回に分けて投与する。
【0050】
以下に本発明を実施例をもって説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではないことは無論である。
【0051】
【実施例】
実施例1
水溶性GM3アナログ−アクリルアミド共重合体の合成
以下のスキーム3にしたがって、水溶性GM3アナログ−アクリルアミド共重合体の製造を行った。
【化7】
【0052】
実施例1.水溶性GM3アナログ−アクリルアミド共重合体(x:y=1:5)の合成
すでに報告されている合成法(ニシムラ(Nishimura), S.およびヤマダ(Yamada), K.によるJ. Am. Chem. Soc. 119, 10555−10556, 1997)に従って、図2に示すようにして水溶性GM3アナログ−アクリルアミド共重合体を合成した。
【0053】
A.N−ベンジルオキシカルボニルセリンオクチルアミド(1)の合成
【化8】
N−ベンジルオキシカルボニルセリン(12g)をエタノール:ベンゼン=1:1の混合溶媒(120mL)に溶解させた後、N−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)(13.6g)およびオクチルアミン(11.1mL)を加えて室温で一晩撹拌した。反応液を減圧濃縮した後、トルエンから再結晶して、目的物(1)(12.64g)を得た。
【0054】
B.O−(2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチル)ラクトシル−N−ベンジルオキシカルボニルセリンオクチルアミド(2)の合成
【化9】
よく乾燥させたA部で得たN−ベンジルオキシカルボニルセリンオクチルアミド(1)(4.0g)をジクロロエタン(80mL)に溶解させ、活性化させたモレキュラーシーブ4A(8.0g)と2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチルラクトシルブロミド(12.0g)を加えた。氷冷下、トリフルオロメタンスルホン酸銀(4.40g)を加え、徐々に室温に戻しながら、窒素気流下で一晩撹拌した。反応液をセライトでろ過し、ろ液を飽和食塩水で2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、硫酸マグネシウムをろ別し、ろ液を減圧濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相、トルエン:酢酸エチル=5:1)によって目的物を分離した。目的物を含む溶出画分を減圧濃縮して、目的物(2)(5.32g)を得た。
【0055】
C.O−(2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチル)ラクトシルセリンオクチルアミド(3)の合成
【化10】
B部で得たO−(2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチル)ラクトシル−N−ベンジルオキシカルボニルセリンオクチルアミド(2)(4.0g)をメタノール(60mL)に溶解させ、5%パラジウム−炭素を触媒とし、常圧下、室温で接触水素化還元を行った。反応後触媒をろ別し、反応液を減圧濃縮して、目的物(3)(3.42)gを得た。
【0056】
D.O−(2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチル)ラクトシル−N−[(6−アクリロイルアミノ)ヘキサノイル]セリンオクチルアミド(4)の合成
【化11】
6−アクリロイルアミノヘキサン酸(278mg)とEEDQ(371mg)をエタノール:ベンゼン=1:1の混合溶媒(40mL)に加え、十分溶解させ、C部で得たO−(2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチル)ラクトシルセリンオクチルアミド(3)(1.14g)を加え、室温で一晩撹拌した。反応液を減圧濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(移動相、クロロホルム:メタノール=100:1)により目的物を分離した。目的物を含む溶出画分を減圧濃縮して、目的物(4)(1.06g)を得た。
【0057】
E.O−ラクトシル−N−[(6−アクリロイルアミノ)ヘキサノイル]セリンオクチルアミド(5)の合成
【化12】
D部で得たO−(2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチル)ラクトシル−N−[(6−アクリロイルアミノ)ヘキサノイル]セリンオクチルアミド(4)(400mg)をメタノールに溶解させ、ナトリウムメトキシド(8.49mg)を加えて、室温で2時間撹拌した。H+型の陽イオン交換樹脂ドエックス(Dowex)50W(ダウケミカル社製)を加えて中和した。ろ過によりイオン交換樹脂を除き、ろ液を減圧濃縮し、エタノールから再結晶して、目的物(5)(270mg)を得た。
【0058】
F.O−ラクトシル−N−[(6−アクリロイルアミノ)ヘキサノイル]セリンオクチルアミド−アクリルアミド共重合体(LacCerポリマーと略す)(6)の合成
【化13】
E部で得たO−ラクトシル−N−[(6−アクリロイルアミノ)ヘキサノイル]セリンオクチルアミド(5)(150mg、0.21mmol、1当量)とアクリルアミド(60.25mg、0.84mmol、4当量)をDMSO:水=1:1の混合溶媒に溶解し、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)(12μL)と過硫酸アンモニウム(7.67mg)を加え、50℃で一晩重合させた。目的物を、蒸留水で平衡化したセファデックスG−25(ファルマシア社製)カラムクロマトグラフィーで精製した。目的物の溶出画分を凍結乾燥して、目的物(6)(200mg)(分子量は約300,000)を得た。1H−NMRスペクトル分析により、O−ラクトシル−N−[(6−アクリロイルアミノ)ヘキサノイル]セリンオクチルアミド(x)の含有量は20モル%であった。
【0059】
G.α−2,3−シアル酸転移酵素によるN−アセチルノイラミン酸残基の転移反応を用いた、水溶性GM3アナログ−アクリルアミド共重合体(GM3アナログポリマーと略す)(7)の合成
【化14】
F部で得たO−ラクトシル−N−[(6−アクリロイルアミノ)ヘキサノイル]セリンオクチルアミド−アクリルアミド共重合体(6)(30mg)、CMP−NeuAc(30mg)、ウシ血清アルブミン(8mg)、塩化マンガン(II)(1.2mg)、仔ウシ由来アルカリフォスファターゼ(20U)を含む50mM カコジル酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)(2mL)に、α−2,3−シアル酸転移酵素(0.3U)を添加し、37℃で72時間反応させた。反応後、セファデックスG−25(ファルマシア社製)カラムクロマトグラフィー(移動相;50mM ギ酸アンモニウム)により生成物を分離し、凍結乾燥することにより、生成物(7)(27mg)を得た。得られた生成物の1H−NMRスペクトルを測定して、N−アセチルノイラミン酸残基が転移した生成物であることを確認した。
【0060】
実施例2.水溶性GM3アナログ−アクリルアミド共重合体(x:y=1:20)の合成
実施例1において、実施例1のE部で得たO−ラクトシル−N−[(6−アクリロイルアミノ)ヘキサノイル]セリンオクチルアミド(5)とアクリルアミドの仕込みのモル比率を1:20とした以外には、実施例1と同様にして水溶性重合体を得た。
【0061】
実施例3.水溶性GM3アナログ−アクリルアミド共重合体(x:y=1:40)の合成
実施例1において、実施例1のE部で得たO−ラクトシル−N−[(6−アクリロイルアミノ)ヘキサノイル]セリンオクチルアミド(5)とアクリルアミドの仕込みのモル比率を1:40とした以外には、実施例1と同様にして水溶性重合体を得た。
【0062】
実施例4:GM3アナログポリマーの肺癌細胞に対する増殖抑制効果
実施例1、2および3で製造した、アクリルアミドモノマーに対してGM3アナログのモル比率がそれぞれ、1:4、1:20および1:40であるGM3アナログポリマーがマウス3LLルイス肺癌細胞の細胞増殖に及ぼす効果を調べた。同様に、比較例として天然のGM3分子および実施例1によって製造したラクトシルセラミド(LacCer)ポリマー(x:y=1:4)(6)についても調べた。具体的には、プラスチック培養皿中のマウス3LLルイス肺癌細胞の培養液(RPMI1640/10%ウシ胎児血清)にGM3アナログポリマー、天然のGM3分子およびLacCerポリマーをそれぞれ添加し、24時間培養後の細胞の生存率をMTT法を用いて計測した。該GM3アナログポリマーおよびLacCerポリマーについてはそれぞれ20μMの濃度で、天然のGM3分子についてはより高濃度の50、200および200μMの濃度で調べた。その結果を図3に示す。GM3アナログポリマーの場合のみに著しい増殖抑制効果が認められた。一方で、天然のGM3分子をGM3アナログポリマーの10倍の濃度である200μMの高濃度で添加しても24時間培養後の細胞数は無添加のコントロールと比較して全く変化がなかった。また、同濃度のLacCerポリマーについても全く抑制効果が観察されなかったことより、該GM3アナログのシアル酸残基が細胞増殖抑制活性に必須であることが判明した。これらの結果から、GM3アナログポリマーの細胞増殖抑制活性は、該ポリマーにおけるGM3残基の含有量が大きいほど高いことが認められた。
【0063】
実施例5:GM3アナログポリマーのマウスB16メラノーマ細胞に対する増殖抑制効果
実施例4において、GM3アナログポリマーがマウスの肺癌に対する増殖抑制効果が確認されたことから、他の癌細胞における効果についても調べた。具体的には、プラスチック培養皿中のマウスB16メラノーマ細胞の培養液(DMEM/10%ウシ胎児血清)にGM3アナログの水溶性共重合体およびLacCerポリマーをそれぞれ3μMおよび15μMの濃度で添加し、24時間培養後の細胞の生存率を、MTT法を用いて計測した。該計測の結果および無添加のコントロールの結果、並びにプラスチック培養皿中の顕微鏡写真を図4に示す。GM3アナログポリマーはマウスB16メラノーマ細胞に対して、用量依存的な著しい増殖抑制効果を示した。一方、LacCerポリマーの該効果はほとんど認められなかった。
【0064】
実施例6:GM3アナログポリマーのヒト皮膚癌細胞に対する増殖抑制効果
実施例5と同様な方法を用いて、GM3アナログポリマーがヒトの自然発症皮膚癌であるHaCaT細胞に対する増殖抑制効果を調べた。具体的には、プラスチック培養皿中のマウスB16メラノーマ細胞の培養液(DMEM/10%ウシ胎児血清)にGM3アナログポリマーおよびLacCerポリマーをそれぞれ3μMおよび15μMの濃度で添加し、24時間培養後の細胞の生存率を、MTT法を用いて計測した。該計測の結果および無添加のコントロールの結果、並びにプラスチック培養皿中の顕微鏡写真を図5に示す。GM3アナログポリマーはHaCaT細胞に対して、用量依存的な著しい増殖抑制効果を示した。一方、LacCerポリマーの該効果はほとんど認められなかった。
【0065】
【発明の効果】
本発明で製造したGM3アナログ含有の水溶性高分子には、糖鎖のクラスター効果を期待できる。本発明のGM3アナログポリマーについて、様々な癌細胞に対する増殖抑制効果を調べた結果、天然のGM3分子およびLacCerポリマーと比較して著しい増殖抑制効果を得た。従って、本発明のGM3アナログ含有の水溶性分子を有効成分として含む薬剤の使用は、癌および乾癬などの異常増殖性細胞の増殖に起因する疾患の処置のために有用であることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、各種ガングリオシドの生合成経路を示す図である。
【図2】図2は、GM3およびGM3アナログ−アクリルアミド共重合体の各々の構造を示す図である。
【図3】図3は、マウス3LL肺癌細胞に対するGM3アナログ−アクリルアミド共重合体の増殖抑制効果を示す図である。
【図4】図4は、マウスB16メラノーマ細胞に対するGM3アナログ−アクリルアミド共重合体の増殖抑制効果、およびプラスチック培養皿中の顕微鏡写真を示す図である。
【図5】図5は、ヒト皮膚癌HaCaT細胞に対するGM3アナログ−アクリルアミド共重合体の増殖抑制効果、およびプラスチック培養皿中の顕微鏡写真を示す図である。
Claims (6)
- GM3アナログと重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物との仕込みのモル比率が1:1〜1:40である、請求項1に記載の異常増殖性細胞増殖抑制剤。
- 重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物は、アクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸アルキル、メタクリル酸、メタクリル酸アルキルおよびカルボン酸ビニルである、請求項1に記載の異常増殖性細胞増殖抑制剤。
- GM3アナログと、オリゴマーまたはポリマーのアミノ基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基からなる群から選ばれる官能基との比率が1:1〜1:40である、請求項4に記載の異常増殖性細胞増殖抑制剤。
- オリゴマーまたはポリマーは、多糖系またはペプチド系の天然または合成のオリゴマーまたはポリマーである、請求項4に記載の異常増殖性細胞増殖抑制剤。
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Cited By (1)
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JP2015137303A (ja) * | 2014-01-22 | 2015-07-30 | 国立大学法人埼玉大学 | 水溶性ポルフィリン誘導体とそれらの製造方法 |
-
2003
- 2003-02-04 JP JP2003027254A patent/JP2004238305A/ja active Pending
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