JP2004237810A - バンパ構造 - Google Patents

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JP2004237810A JP2003027338A JP2003027338A JP2004237810A JP 2004237810 A JP2004237810 A JP 2004237810A JP 2003027338 A JP2003027338 A JP 2003027338A JP 2003027338 A JP2003027338 A JP 2003027338A JP 2004237810 A JP2004237810 A JP 2004237810A
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Kenichi Sato
顯一 佐藤
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Abstract

【課題】対人衝突時の安全性を確保しながら、車体の損傷防止を図ることが可能であり、片当たり時の局部的な衝撃圧力に対しても有効に車体保護機能を発揮することができる。
【解決手段】車幅方向に延びたバンパビーム1とこのバンパビーム1の衝撃受け面側に装着された衝撃吸収材2とを備える。衝撃吸収材2は幅L毎に縦割りで複数に分割されており、それぞれが独立して衝撃吸収を担うことができる複数のセル2A〜2A12によって形成されている。各セル2Anの衝撃受け面の全面には高強度板3が設けられている。この高強度板3はバンパが受けて衝撃吸収を行う程度の衝撃圧力では変形しない強度を有する材料(高強度樹脂等)で形成される。また、この高強度板3が設けられた衝撃吸収材2の衝撃受け面側は衝撃圧力を周辺に分散させないバンパフェイス4で覆われている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のバンパ構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両のバンパは車両の前端部や後端部に装備される保護部材であって、車幅方向に延びたバンパビームに衝撃吸収材が装着され、それを覆うバンパカバーが設けられる構造が知られている(下記特許文献1参照)。通常、バンパの機能は、軽衝突時の車体損傷防止にあり、衝突時における衝撃吸収材の変形ストローク(衝突ストローク)は短くなるように設定されている。下記の特許文献1に記載された従来技術によると、衝撃圧力を衝撃吸収材に広く分散させることで衝突ストロークを短くすることが開示されている。しかしながら、これによると、衝突時の初期荷重の立ち上がりが大きくなってしまい、対人衝突時の安全対策としては不利になってしまうという問題が生じる。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−129372号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、対人衝突時の安全対策と対物(対壁・対車両)衝突時の車体損傷防止の両機能を両立させることが求められており、その有効な手段として、対人衝突時には比較的衝撃圧力が小さく且つ衝突作用幅が狭く、対物衝突時には比較的衝撃圧力は大きいが衝突作用幅が広いことに着目し、車幅方向に広く装着された衝撃吸収材を縦割りに複数分割し、個々に分割された衝撃吸収材のセルが独立して衝撃吸収を担うようにすることが考えられる。
【0005】
このような分割セル構造にすることで、衝突作用幅が狭い対人衝突時には1,2個の少ない数のセルが独立して衝撃吸収を担うことになるので、各セルを適度に柔軟に形成することで、大きな衝突ストロークを得ることが可能になり、また、衝突作用幅が広い対物衝突時には、多数のセルが衝撃吸収を担うことになるので、衝撃圧力が複数のセルに分散されて各セルの衝突ストロークを短く抑えることが可能になる。これによって、対人衝突時の初期荷重の立ち上がりを小さく抑え、且つ対物衝突時には衝突ストロークを短くして車体の損傷を防止することができる。
【0006】
しかしながら、このようなバンパ構造によると以下に示すような問題が顕在化する。これを図12を参照しながら説明する。同図は、車幅方向に延びたバンパビーム100に衝撃吸収材200が装着されたバンパに対して、衝突物Fが衝突した状況を示しており、同図(a)は衝撃吸収材200の各セルの全面で衝撃を受け止めた状態、同図(b)は衝撃吸収材200の上半分に集中して衝突物Fが衝突した片当たり衝突の状態を示している。
【0007】
ここで、歩行者保護の目的に重点を置いて、衝撃吸収材200の分割された各セルを比較的柔軟な材料にすると、同図(a)に示したようにセルの全体で衝撃を受けた状況では個々のセル全体に衝撃が分散するので、衝突ストロークSを比較的短く抑えることができるが、同図(b)に示したような片当たり衝突の場合には、片当たりされた部分に衝撃圧力が集中し、充分な衝撃圧力の分散がなされず、セルの全体で衝撃を受け止める場合と比較して衝突ストロークSが大きくなってしまう。
【0008】
したがって、想定される以上に衝突ストロークが延びてしまい、車体に損傷を与えてしまう虞がある。これを回避しようとして過度に衝撃吸収材の厚さを厚くすると、コスト面での問題が生じると共に外観デザイン的にも好ましくない。
【0009】
また、対物衝突であっても車体の斜め前又は斜め後ろからの衝突や電柱等の幅が狭い対象との衝突時には、局部的に衝撃圧力が加わることがある。このような場合には、比較的大きな衝撃圧力が分散されず集中的に少ない数のセルに作用するので、想定する以上に衝突ストロークが延び、その結果、車体を損傷する虞がある。特にフロントグリルやランプ等の周辺にこのような局部的な衝撃圧力が加わると、高価な部品を損傷してしまうという問題が生じる。
【0010】
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものであって、バンパ構造において、対人衝突時の安全性を確保しながら、車体の損傷防止を図ることが可能であること、また、片当たり時の局部的な衝撃圧力に対しても有効に車体保護機能を発揮することができること、また、グリルやランプといった高価部品の損傷を効果的に防ぐことできること等を目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明によるバンパ構造は、以下の各請求項に係る特徴を具備するものである。
【0012】
請求項1に係る発明は、車両の端部に装備され、車幅方向に延びたバンパビームに衝撃吸収材が装着されたバンパ構造であって、前記衝撃吸収材は、所定幅毎に複数縦割りに分割され、独立して衝撃吸収を担うことができる複数のセルからなり、各セルの衝撃受け面に高強度板を設けていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明は、前述のバンパ構造を前提として、前記高強度板は、前記衝撃受け面の少なくとも上下に渡って設けられることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明は、前述のバンパ構造を前提として、前記高強度板は、前記衝撃受け面の全面に設けられることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明は、前述のバンパ構造を前提として、前記複数のセルは、一部のセルにおいて異なる硬さを有することを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明は、前述のバンパ構造を前提として、前記複数のセルは、グリル又はランプの周辺で硬さが硬く形成されることを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る発明は、前述のバンパ構造を前提として、前記衝撃吸収部材は、軟質材で形成されたバンパフェイスで覆われていることを特徴とする。
【0018】
請求項7に係る発明は、前述のバンパ構造を前提として、前記各セルの幅Lは、対人衝突時の想定衝突作用幅d以下であり、且つL≒d/n(n=2,3,…)であることを特徴とする。
【0019】
このような特徴を有する各請求項に係るバンパ構造は、以下の作用を有するものである。
【0020】
第1には、車幅方向に延びたバンパビームに衝撃吸収材が装着されたバンパ構造であって、衝撃吸収材は、所定幅毎に複数縦割りに分割され、独立して衝撃吸収を担うことができる複数のセルからなることを前提としている。これによると、衝突作用幅が狭い対人衝突時には1,2個の少ない数のセルが独立して衝撃吸収を担うので、個々のセルを柔軟にすることで衝突ストロークを大きくすることが可能になり、また、衝突作用幅が広い対物衝突時には、多数のセルが衝撃吸収を担うことになるので、衝撃圧力が複数のセルに分散されて各セルの衝突ストロークを短く抑えることが可能になる。したがって、対人衝突時の初期荷重の立ち上がりを小さく抑え、且つ対物衝突時には衝突ストロークを短くして車体の損傷を防止することができ、対人衝突時の安全性と車体損傷防止機能を両立させることができる。
【0021】
そして、第2には、前述した衝撃吸収材における各セルの衝撃受け面に高強度板を設けているので、複数セルの上半分又は下半分に集中して車両衝突がなされる片当たり衝突の場合であっても、衝撃受け面にけられる高強度板の作用によって一つのセル全体で衝撃を吸収することが可能になり、片当たりされた部分に衝撃圧力が集中することがなく、充分に衝撃圧力を分散させることができて、衝突ストロークを設定以下に抑えることができる。この高強度板は、衝撃受け面の上下に渡って設けることで、前述したような上下にシフトした片当たり衝突時に有効に作用させることが可能であり、衝突受け面の全面に設けることで、より効果的に各セル全体での衝撃吸収を可能にする。
【0022】
第3には、前述した複数のセルは、一部のセルにおいて異なる硬さにしているので、特に車体損傷防止機能を強化したいところを部分的に硬いセルにすることで、比較的大きい対物衝突時の衝撃圧力が局部的に作用していた場合にも、車体の損傷を防止することができる。特に、グリルやランプの周辺で硬さが硬いセルを設けることで、この周辺での衝撃吸収材の衝突ストロークを短く抑えることができ、高価なグリルやランプを効果的に保護することが可能になる。
【0023】
第4には、前述した衝撃吸収材を軟質材で形成されたバンパフェイスで覆うことで、衝突作用幅が狭い対人衝突の場合に衝撃圧力が複数のセルに分散されることが無く、少ない数のセルのみで衝撃吸収を担うことが可能になる。これによって、衝突ストロークを大きく確保でき、確実に初期荷重の立ち上がりを抑えて、対人衝突時の安全性を確保できる。
【0024】
第5には、前述した各セルの幅Lを、対人衝突時の想定衝突作用幅d以下であり、且つL≒d/n(n=2,3,…)とすることで、独立した2,3のセルで衝撃吸収を担うことができる。これによっても、前述したように対人衝撃時の安全性を確保できる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態に係るバンパ構造を概念的に示す説明図であり、同図(a)は平面図,同図(b)は側面図を示している。このバンパ構造は、車幅方向に延びたバンパビーム1とこのバンパビーム1の衝撃受け面側に装着された衝撃吸収材2とを備えるものである。
【0026】
衝撃吸収材2は幅L毎に縦割りで複数に分割されており、それぞれが独立して衝撃吸収を担うことができる複数のセル2A〜2A12(以下、個々のセルを2Anと示す。)によって形成されている。ここでは12個のセルに分割した例を示しているがこれに限定されるものではない。また、分割されたセル2A〜2A12は完全に分離してそれぞれがバンパビーム1に装着される構造であってもよいし、或いはバンパビーム1側で部分的に一体化した構造であってもよく、要するにそれぞれが独立して衝撃吸収を担う構造であればよい。
【0027】
そして、各セル2Anの衝撃受け面(フロントバンパの場合は前面)には高強度板3が設けられている。この高強度板3はバンパが受ける軽衝突時の衝撃圧力では変形しない強度を有する材料(高強度樹脂等)で形成される板状部材である。この高強度板3は、衝突受け面の全面に設けられることによって、最も有効に機能するが、それに限らず、図2(a)に示すように、セル2Anの衝突受け面の大半を覆う状態で部分的に設けてもよいし、図2(b)に示すように、セル2Anの上下に渡って設けてもよい。
【0028】
また、この高強度板3が設けられた衝撃吸収材2の衝撃受け面側は、図1に示すように、バンパフェイス4で覆われている。このバンパフェイス4は、衝撃圧力を車幅方向に分散させることなく各セル毎に伝えるものであればよく、特に、軟質プラスチック等の軟質材で形成することが望ましいが、特にこれに限定されるものでない。
【0029】
そして更に特定された実施形態によると、衝撃吸収材2のセル2A〜2A12は、一部のセルにおいて異なる硬さを有する。図1に示した実施形態では、左右両サイドのセル2A,2A,2A11,2A12及び中央部分のセル2A,2Aにおいて、その他のセルの硬さEより硬いE,Eの硬さを有するセルを用いている(例えば、E<E≦E)。
【0030】
このような実施形態の作用を図3及び図4によって説明する。図3は対人衝突の場合における実施形態の作用を示す説明図(同図(a)は平面図,同図(b)が側面図)である。対人衝突の場合には、想定衝突作用幅d(約70mm程度;〜歩行者の足の骨を想定した幅)が狭く、比較的衝撃圧力も低い。そこで、セルの幅LをL≦d,且つL≒d/n(n=2,3,…)と設定することにより、対人衝突時には2,3個のセルのみで衝撃吸収を担うことになり、衝撃圧力が少ない数のセルに集中して作用し、大きな衝突ストロークS1を得ることが可能になる。したがって、歩行者の足に掛かる初期荷重を低く抑えることができ、対人衝突時の安全性を確保できる。
【0031】
一方、図4は対物衝突の場合における実施形態の作用を示す説明図(同図(a)は平面図,同図(b)が側面図)であり、このような対物衝突の場合には、通常、衝突作用幅Hは広いので、衝撃圧力を複数のセルで分散して受けることになり、各セルの衝突ストロークS2を短く抑えることが可能になる。したがって、対物衝突時の車体損傷を確実に防止することができる。
【0032】
また、図4(b)に示すように、バンパの上下中心Vに対して衝突物Fの上下中心Fが上方(又は下方)にシフトした片当たり衝突の場合にも、高強度板3の作用によって衝撃吸収材2のセル全体で衝撃を吸収することができるので、想定以上に衝突ストロークS2が大きくなることはなく、車体(特にグリルG等)の損傷を招くことがない。
【0033】
更には、図1に示した例のように、バンパの左右両サイド又は中央部において、比較的硬い衝撃吸収材を用いることで、両サイド付近に設置されるランプや中央付近に設置されるフロントグリル等の高価な部品が損傷するのを回避できる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明の更に具体的な実施例を説明する。図5及び図6は本発明の一実施例に係るバンパ構造を示す説明図である(前述の説明と共通の部位には同一の符号を付している。)。図5は全体的な分解図であり、図6は部分的な詳細分解図である。
【0035】
図5において、フロントバンパを例に示すと、バンパ10は、車両BにおけるフロントグリルB,ランプB等の前段に装備され、車幅方向に延びたバンパビーム1と、その衝撃受け面側に装着される衝撃吸収材20と、その衝撃吸収材20の衝撃受け面側を覆うバンパフェイス40(フォグランプ孔40aを有する。)とによって主に構成される。
【0036】
バンパビーム1は、側断面視が縦長の矩形状に形成された金属製、或いはガラス繊維強化プラスチック製の中空構造部材であって、車両Bの前端部に取り付けるための左右一対のステー11が取り付けられている。衝撃吸収材20は、前述したように設定されたセル幅(L)で衝撃受け面側が縦割りに分割され、バンパビーム1側で一体化した発泡性樹脂からなる成形体であって、その衝撃受け面には高強度板を形成する樹脂板30が一体成形されている。また、バンパフェイス40は合成樹脂製(特には、軟質プラスチック)であって、前述したように衝撃圧力を広く分散させない材料が用いられる。
【0037】
衝撃吸収材20を更に詳細に説明すると、図6に示すように、衝撃受け面側から縦割りのスリット21が複数形成され、これによって分割されたセル20Aが車幅方向に沿って配列された状態になっている。そして、各セル20Aには、その衝撃受け面の全面に樹脂板30が一体成形されており、各樹脂板30には複数の貫通孔30aが設けられている。ここでは、衝撃受け面の全面に樹脂板30を設けているが、前述したように、樹脂板30は衝撃受け面を覆う大半の部分に設けるか或いは衝撃受け面の上下に渡って設けることでも、同様の機能を得ることができる。
【0038】
図7は、このような衝撃吸収材20の形成方法を示す説明図である。衝撃吸収材12は、好ましくは、発泡樹脂、なかでも最も好適な一例としてはポリプロピレンビーズ発泡体(以下、PPビーズ発泡体という)によって形成することができる。これによると、複数のセル20Aによって衝撃圧力を受ける場合(対物衝突時)には適度な硬さで衝突ストロークを短く抑えることができ、1〜3の少ない数のセル20Aで衝撃圧力を受ける場合(対人衝突時)には、充分な衝突ストロークを稼ぐことができる柔軟さを備える。
【0039】
この衝撃吸収材20は、各セル20Aの形状を有する金型22,23内に送り込まれたPPビーズ24を発泡成形することによって形成することができる。そして、この成形時に樹脂板30を型内に設置するインサート成形によって、樹脂板30と衝撃吸収材20を一体に形成することができる。
【0040】
樹脂板30は、軽衝突時の衝撃圧力が加わっても変形しない強度が備えられた板状部材であって、その中央部には、発泡前のPPビーズ24が充填可能とされた所定径の貫通孔30aが複数形成されている。そして、これらの樹脂板30が配置された金型22,23内にPPビーズ24が充填されると、貫通孔30aから空気抜きが行われることによって、PPビーズ24の未充填部位の発生を回避することができ、また、貫通孔30a内にPPビーズ24が充填されることによって、発泡後のPPビーズ発泡体、すなわち衝撃吸収材20との結合強化が維持、促進されるようになっている。そして、金型22には、樹脂板30の貫通孔30aと同様の径からなる空気抜き用の穴22aが設けられている。また、金型22内の空気は排出されるが、樹脂板30の貫通孔30aに充填されたPPビーズ24が空気穴22aから金型外に排出されるのを阻止する薄手のシャッタ25が配設されており、このシャッタ25は、樹脂板30と結合固定することがないように、その形状、材質などが配慮されている。
【0041】
図8は、このような実施例における作用を示す説明図である。このような実施例によると、対物衝突時には、衝突物Fがバンパフェイス40(図7にあっては図示せず)を介して衝撃吸収材20の前端面上側に片当たりされた場合にも、衝撃圧力を受けた樹脂板30は、後傾した形態のまま全面的に後退移動するのに伴って衝撃圧力pを上下方向に分散し、セル20Aを全体的に圧縮変形させることによって衝撃が吸収される。この際、衝突物Fの衝突作用幅は一般に広く多数のセル20Aで衝撃圧力が分散され、また、個々のセル20Aではセル全体で衝撃を吸収することができるので、対物衝突時の衝突ストロークを抑制することが可能になり、車体損傷を防止して、リペアコストの低減化を図ることができる。
【0042】
一方、対人衝突の場合には、衝突作用幅が狭く衝突圧力も比較的小さいので、1〜3個の少ない数のセル20Aのみが衝撃吸収を担い、個々のセル20A自体は比較的柔軟な材質で形成されているので、充分な衝突ストロークを確保することができ、初期荷重を抑えて、対人衝突時の安全性も確保することができる。
【0043】
図9は、前述の実施例を改良した他の実施例を示す説明図である。この実施例では、前述のように各セル20A毎に樹脂板30を一体成形した衝撃吸収材20を、硬さの異なる複数種類形成し、特に強度が必要な部分に硬さの硬いセルを配置したものである。
【0044】
この実施例では、バンパビーム1の車幅方向において、フロントグリル位置に対応する中央部1A、左右のフォグランプ位置に対応する側部位置1A、左右のヘッドランプ位置に対応する側部位置1Aに装着される衝撃吸収材20,20,20を他の部位1Aに装着される衝撃吸収材20より硬く形成している。つまり、各衝撃吸収材20,20,20,20の硬さをE00,E01,E02,E03として、E00<E01≦E02≦E03に設定されている。衝撃吸収材20の硬さは、前述した(図7参照)型成形時の成形密度を変えることによって適宜に設定することが可能である。また、この実施例では、ランプ周辺の衝撃吸収材20,20を別に形成しているがこれらを一つのものとしてもよい。
【0045】
このような実施例の作用を図10を参照して説明する。この図は、バンパ(バンパビーム1,ステー11,衝撃吸収材20,20,20,20)の上下中心Vに対して衝突物Fの上下中心Fが上方(又は下方)にシフトした片当たり衝突時の各部における衝突ストロークの違いを示したものである。
【0046】
同図(a)はバンパビーム1の1A部位での作用を示しており、設定された衝突物Fに対して、バンパビーム1が破損しない程度で比較的大きい衝突ストロークS00が得られるように衝撃吸収材20の硬さE00が設定されている。同図(b)はバンパビーム1の1A部位での作用を示しており、設定された衝突物Fに対して、グリルGが破損しない程度の衝突ストロークS01が得られるように衝撃吸収材20の硬さE01が設定されている。同図(c)はバンパビーム1の1A部位での作用を示しており、設定された衝突物Fに対して、フォグランプBが破損しない程度の衝突ストロークS02が得られるように衝撃吸収材20の硬さE02が設定されている。同図(d)はバンパビーム1の1A部位での作用を示しており、設定された衝突物Fに対して、ランプB(B)が破損しない程度の衝突ストロークS03が得られるように衝撃吸収材20の硬さE03が設定されている。つまり、各部の衝撃吸収材20,20,20,20の硬さをE00<E01≦E02≦E03にすることで、衝突ストロークがS00<S01≦S02≦S03になるように設定されている。
【0047】
この実施例によると、前述した実施例と同様の作用が得られると共に、フロントグリルやランプ周辺のセルの硬さを硬くすることで、その周辺に局部的な対物衝突がなされた場合にも、衝突ストロークを抑えることが可能になり、フロントグリル,ランプ等の高価な部品を効果的に保護することが可能にある。
【0048】
図11は、本発明の他の実施例を示す説明図である(前述の説明と共通する部分には同一の符号を付して一部重複する説明を省略する。)。同図(a)はバンパ構造全体を示す分解図であり、同図(b)は装備時の部分断面図である。
【0049】
この実施例のバンパ構造10は、バンパフェイス41の背面側に複数の隔壁41Aによって車体幅方向に分割された複数のエリア41Bを形成し、このエリア41B内に、個別に分割された衝撃吸収材50を収めるようにしたものである。
【0050】
個別に分割成形された衝撃吸収材50は、その形状が、例えば、ほぼ同一の截頭四角錐となるように発泡成形されている。そして、各衝撃吸収材50によって形成されたセル50Aには前述した樹脂板30が一体形成されている。したがって、個々のセル50Aに関しては、個別に分離されていること以外は前述した実施例と同様である。
【0051】
そして、この実施例によると、セル50Aが完全に個別化されているので、異なる硬さのセル50Aを用意し、車幅方向の任意の位置に必要な硬さのセル50Aを装備させることができ、バンパの車幅方向に強度変化を付ける自由度が高くなる利点がある。したがって、前述した図9に示した実施例と同様に、フロントグリルの周辺に配置されるセル50Aとランプの周辺に配置されるセル50Aをその他のセルと比べて硬いものにすることで、効果的にフロントグリルやランプといった高価な部品の保護を図ることが可能になる。
【0052】
更に具体的に説明すると、フロントグリルやランプ前方のバンパビーム1の部位には硬めのセル50A,50Aが結合固定され、それ以外のバンパビーム1の部位には柔らかめの衝撃吸収材50Aが結合固定される。そして、これらのセルからなる衝撃吸収材50は、バンパフェイス41に形成されたエリア41B内にそれぞれ収められている。
【0053】
そして、衝撃圧力を受けた樹脂板30は、隔壁41Aによって安定した形態で、全面的に後退移動するのに伴って衝撃圧力を上下方向に分散し、衝撃吸収材50を全体的に圧縮変形させることによって、その衝撃吸収がなされる。
【0054】
したがって、前述の実施例と同様に、対物衝突時の片当たりから車両を保護することができ、また、フロントグリルやランプの取付位置に合わせて、硬さの異なった衝撃吸収材50を適切に配置できるので、局部的な対物衝突の際にも衝撃吸収材50が過剰に変形することが抑制され、フロントグリルやランプが破損するのを防止できる。
【0055】
更にはこの実施例によると、異なった車種やデザインのものであっても、分割された衝撃吸収材50の配列を適宜変化させるだけで、それぞれの車両前部構造に合ったバンパの強度を確保することができ、バンパ10を構成する部材の共有化を図り、製作コストを大幅に削減することができる。
【0056】
【発明の効果】
本発明はこのように構成されるので、バンパ構造において、対人衝突時の安全性を確保しながら、車体の損傷防止を図ることが可能である。また、片当たり時の局部的な衝撃圧力に対しても有効に車体保護機能を発揮することができ、更には、グリルやランプといった高価部品に対しても効果的に損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るバンパ構造を概念的に示す説明図である(同図(a)は平面図,同図(b)は側面図)。
【図2】本発明の一実施形態に係るバンパ構造の高強度板の配設状態を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態の作用を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態の作用を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施例に係るバンパ構造を示す説明図(全体的な分解図)である。
【図6】本発明の一実施例に係るバンパ構造を示す説明図(部分的な詳細分解図)である。
【図7】実施例の衝撃吸収材における形成方法を示す説明図である。
【図8】実施例の作用を示す説明図である。
【図9】他の実施例を示す説明図である。
【図10】他の実施例の作用を示す説明図である。
【図11】他の実施例を示す説明図である。
【図12】従来技術の課題を示す説明図である。
【符号の説明】
1 バンパビーム 11 ステー
2,20,20,20,20,20,50 衝撃吸収材
2A1〜n ,20A,50A セル
3 高強度板
30 樹脂板
4,40,41 バンパフェイス

Claims (7)

  1. 車両の端部に装備され、車幅方向に延びたバンパビームに衝撃吸収材が装着されたバンパ構造であって、
    前記衝撃吸収材は、所定幅毎に複数縦割りに分割され、独立して衝撃吸収を担うことができる複数のセルからなり、各セルの衝撃受け面に高強度板を設けていることを特徴とするバンパ構造。
  2. 前記高強度板は、前記衝撃受け面の少なくとも上下に渡って設けられることを特徴とする請求項1記載のバンパ構造。
  3. 前記高強度板は、前記衝撃受け面の全面に設けられることを特徴とする請求項1記載のバンパ構造。
  4. 前記複数のセルは、一部のセルにおいて異なる硬さを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のバンパ構造。
  5. 前記複数のセルは、グリル又はランプの周辺で硬さが硬く形成されることを特徴とする請求項4に記載のバンパ構造。
  6. 前記衝撃吸収部材は、軟質材で形成されたバンパフェイスで覆われていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のバンパ構造。
  7. 前記各セルの幅Lは、対人衝突時の想定衝突作用幅d以下であり、且つL≒d/n(n=2,3,…)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のバンパ構造。
JP2003027338A 2003-02-04 2003-02-04 バンパ構造 Pending JP2004237810A (ja)

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