JP2004237775A - 四輪駆動車の動力伝達装置 - Google Patents

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Takuya Kurokawa
卓也 黒川
Kanji Kita
貫二 北
Shigeru Nakayama
茂 中山
Kazunori Miyata
和典 宮田
Yoshihiro Kanamaru
善博 金丸
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Abstract

【課題】走行状態に応じた最適のトルク特性を得る。
【解決手段】左右の後輪に繋がる左側及び右側ベーンポンプPL,PRと、左側ベーンポンプPLの吐出ポート37Lと吸入ポート38Lとを繋ぐ油路と、右側ベーンポンプPRの吐出ポート37Rと吸入ポート38Rとを繋ぐ油路と、両吐出ポート37L,37Rを繋ぐ油路と、両吸入ポート38L,38Rを繋ぐ油路とを有する。これら油路中にはオリフィスを設けるとともに、オリフィスOF5L,OF5Rを通ることなく両吐出ポートを連通する第1バイパス油路と、オリフィスOF6L,OF6Rを通ることなく両吸入ポートを連通する第2バイパス油路と、主駆動輪の回転速度の増加に応じて第1バイパス油路の開度を増大させる第1バイパス油路開放バルブ41と、主駆動輪の回転速度の増加に応じて第2バイパス油路の開度を増大させる第2バイパス油路開放バルブ45とを備える。
【選択図】 図14

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、動力源により直接駆動される主駆動輪と左右一対に配設されたベーンポンプからなるハイドロカップリング装置を介して間接的に駆動される副駆動輪とを備えて構成される四輪駆動車の動力伝達装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、四輪駆動車に備えられる動力伝達装置の一形態として、左右の主駆動輪(例えば左右の前輪)へはエンジンの駆動力が直接伝達される一方、左右の副駆動輪(例えば左右の後輪)へはハイドロカップリング装置を介して動力が伝達される形態のものが知られている。このハイドロカップリング装置はケーシングの内部に左右一対のベーンポンプを有してなる流体伝動装置であり、両ベーンポンプそれぞれのロータに左右の副駆動輪の車軸が連結される。ケーシングはエンジンからの動力が伝えられるプロペラシャフトにより上記車軸まわりに回転駆動され、各ベーンポンプのカムリングと一体となって回転する。各ベーンポンプの吐出ポートと吸入ポートとは油路により連通され、これら油路の途中にはベーンポンプに負荷を発生させるためのオリフィスが設けられる。このようなハイドロカップリング装置を用いた四輪駆動車では、定速走行時のように左右の主駆動輪及び左右の副駆動輪が同じ回転速度で回転し、カムリングとロータとが同じ回転速度で回転しているときにはベーンポンプがポンプ作動を行わず左右の副駆動輪に駆動力が発生しないため、主駆動輪のみが駆動される二輪駆動状態となる。しかし、摩擦係数の低い路面において急発進を行って左右の主駆動輪がスリップした場合など主駆動輪の回転速度が副駆動輪の回転速度を上回るときには、カムリングとロータ間に回転速度差が生じてベーンポンプがポンプ作動を行い、作動流体が上記油路中のオリフィスを通過するときに生じる負荷に応じた駆動力が左右の副駆動輪に伝達されるので、主駆動輪のみならず副駆動輪も駆動されて車両は四輪駆動状態となる。
【0003】
また、旋回走行時には前後輪間における回転速度差及び左右の後輪間における回転速度差により左右のベーンポンプにおけるカムリングとロータとの間に回転速度差が生じ、これが左右のベーンポンプの吐出流量差となって現われるが、左右のベーンポンプは吐出ポート同士及び吸入ポート同士がそれぞれ油路により連通されているため、吐出流量の多い側のベーンポンプから吐出された作動油は吐出流量の少ない側のベーンポンプに流れ、左右の副駆動輪間の回転速度差が吸収されて差動機構としての機能が発揮される。また、これにより、タイトな旋回走行時であっても、吐出流量が多くなる側のベーンポンプに大きな負荷が作用することがなくなり、いわゆるタイト・コーナ・ブレーキ現象の発生も抑制される。
しかし、このように左右のベーンポンプ間で作動油の流通が自由にできる状態では、左右の主駆動輪および左右の副駆動輪の一方が泥濘にはまって空転したような場合においては、摩擦係数の高い路面に接地している他方の副駆動輪に繋がるベーンポンプに大きな負荷を与えることができない(すなわち、接地している側の副駆動輪に大きな駆動力を与えることができない)ので、吐出ポート同士を繋ぐ油路及び吸入ポート同士を繋ぐ油路の両油路中にはそれぞれオリフィスが設けられている。これにより、左右の副駆動輪の一方が空転して左右のベーンポンプ間に大きな吐出流量差が発生した場合にはオリフィスの前後に圧力差が発生することとなり、接地している側の副駆動輪に動力源からの動力が伝達される(いわゆる差動制限装置と同様の働きが得られる)ので、泥濘からの脱出が可能となる。なお、上記旋回走行時に左右のベーンポンプ間を流れる作動油流量は小さく、上記オリフィスの前後で生じる圧力差は極めて小さいので、このオリフィスの存在により、上記差動機構としての働きが妨げられることはない。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−125555号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記ハイドロリックカップリング装置を備えた四輪駆動車では、車両の前進走行中に急制動を行った場合には、副駆動輪の回転速度は制動を受けて路面に対してスリップしている主駆動輪の回転速度よりも大きくなり、このとき左右のベーンポンプはそれぞれ吸入ポートが吐出側となってポンプ作動を行う。
この際、左右の副駆動輪の一方が摩擦係数の小さい路面に差し掛かってスリップすると、スリップした側の副駆動輪の回転速度は主駆動輪の回転速度に近づいてその相対回転速度が小さくなる一方、スリップしていない側の副駆動輪の回転速度は主駆動輪の回転速度よりも大きく、カムリングとロータとの間の相対回転速度は大きくなるので、左右のベーンポンプ間には大きな吐出流量差が発生する。
このため、上記ハイドロリックカップリング装置では差動制限装置としての機能が発揮され、スリップしていない側の副駆動輪にのみ大きなトルク(制動側のトルク)が作用するので、左右の副駆動輪間にはトルク差が発生し、走行安定性が低下してしまう。このような事態を防止する手段として、左右のベーンポンプの吐出ポート同士を連通する油路中に設けられたオリフィス及び吸入ポート同士を連通する油路中に設けられたオリフィスをなくす、或いはこれらオリフィスの径を大きくして差動制限の働きを弱めるようにする対策が考えられるが、この場合には、今度は左右の副駆動輪の一方が泥濘にはまったような場合などにおいて必要な差動制限の働きが十分に発揮されなくなってしまう。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、泥濘にはまった状態からの脱出を容易にする差動制限の働きを十分に保持しつつ、急制動中に副駆動輪の一方がスリップした場合でも十分な走行安定性を確保するなど、走行状態に応じた最適のトルク特性を得ることが可能な構成の四輪駆動車の動力伝達装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するため、本発明に係る四輪駆動車の動力伝達装置は、左右の主駆動輪(例えば、実施形態における左右の前輪WFL,WFR)及び左右の副駆動輪(例えば、実施形態における左右の後輪WRL,WRR)を備えた車両(例えば、実施形態における四輪駆動車V)と、左右の主駆動輪を駆動する動力源(例えば、実施形態におけるエンジンE)と、動力源により回転駆動される左側カムリング及び左側副駆動輪と連結された左側ロータが相対回転自在に配設されてなる左側ベーンポンプと、動力源により回転駆動される右側カムリング及び右側副駆動輪と連結された右側ロータが相対回転自在に配設されてなる右側ベーンポンプと、左側ベーンポンプの吐出ポート及び吸入ポートを連通する第1油路と、右側ベーンポンプの吐出ポート及び吸入ポートを連通する第2油路と、左側及び右側ベーンポンプの両吐出ポートを連通する第3油路と、左側及び右側ベーンポンプの両吸入ポートを連通する第4油路と、第1油路中に設けられた第1オリフィス(例えば、実施形態におけるオリフィスOF1L,OF2L)と、第2油路中に設けられた第2オリフィス(例えば、実施形態におけるオリフィスOF1R,OF2R)と、第3油路中に設けられた第3オリフィス(例えば、実施形態におけるオリフィスOF5L,OF5R)と、第4油路中に設けられた第4オリフィス(例えば、実施形態におけるオリフィスOF6L,OF6R)と、主駆動輪の回転速度の増加に応じて第1バイパス油路の開度を増大させる第1バイパス油路開放バルブと、主駆動輪の回転速度の増加に応じて第2バイパス油路の開度を増大させる第2バイパス油路開放バルブとを備える。
【0008】
ここで、上記左側ベーンポンプの吐出ポートとは、車両の前進走行時に左側カムリングの回転速度が左側ロータの回転速度よりも大きくなるときに吐出側となり、車両の前進走行時に左側カムリングの回転速度が左側ロータの回転速度よりも小さくなるときに吸入側となるポートのことである。また、左側ベーンポンプの吸入ポートとは、車両の前進走行時に左側カムリングの回転速度が左側ロータの回転速度よりも大きくなるときに吸入側となり、車両の前進走行時に左側カムリングの回転速度が左側ロータの回転速度よりも小さくなるときに吐出側となるポートのことである。また、右側ベーンポンプの吐出ポートとは、車両の前進走行時に右側カムリングの回転速度が右側ロータの回転速度よりも大きくなるときに吐出側となり、車両の前進走行時に右側カムリングの回転速度が右側ロータの回転速度よりも小さくなるときに吸入側となるポートのことである。また、右側ロータの吸入ポートとは、車両の前進走行時に右側カムリングの回転速度が右側ロータの回転速度よりも大きくなるときに吸入側となり、車両の前進走行時に右側カムリングの回転速度が右側ロータの回転速度よりも小さくなるときに吐出側となるポートのことである。
【0009】
このような構成を有する四輪駆動車の動力伝達装置では、車両が定速走行しているときなど、動力源により回転駆動される左右のカムリングと、副駆動輪と連結された左右のロータとの間で回転速度差がない場合には、左右のベーンポンプはともにポンプ作動を行わず、従って左右の副駆動輪は路面から回されるだけで動力源からの動力は伝達されないので、左右の主駆動輪のみが駆動される二輪駆動状態となる。ここで、摩擦係数の低い路面において急発進した場合などにおいて、左右の主駆動輪がスリップしたようなときには主駆動輪の回転速度が副駆動輪の回転速度を上回り、カムリングとロータとは相対回転を起こして左右のベーンポンプはポンプ作動を行う。このとき左側ベーンポンプの吐出ポートより吐出された作動流体は第1油路を通じて左側ベーンポンプの吸入ポートへ送られ、右側ベーンポンプの吐出ポートより吐出された作動流体は第2油路を通じて右側ベーンポンプの吸入ポートへ送られるが、作動流体が第1油路中に設けられた第1オリフィスを通過するとき、及び第2油路中に設けられた第2オリフィスを通過するときには、その通過流量に応じた流通抵抗により負荷が発生し、左右の副駆動輪には動力源からの動力が伝達されて四輪駆動状態となる。
【0010】
ここで、車両が旋回走行を行っているときには、前後輪間における回転速度差も相俟って、左右の副駆動輪間で大きな回転速度差が生じ、内輪となる副駆動輪に繋がるベーンポンプからの吐出流量が、外輪となる副駆動輪に繋がるベーンポンプからの吐出流量に比べて多くなるのであるが、この場合には、吐出流量の多い側から少ない側へ第3油路若しくは第4油路を通じて作動流体が流れるので、吐出流量の多くなる側のベーンポンプに大きな負荷が作用することはない。
【0011】
また、左右の主駆動輪及び左右の副駆動輪の一方が泥濘にはまったような場合には、泥濘にはまって主駆動輪とともにスリップしている側の副駆動輪の回転速度は主駆動輪の回転速度に近づいてその相対回転速度差は小さくなる一方、スリップしていない側の副駆動輪と主駆動輪との間の相対回転速度は非常に大きなものとなるため、スリップしていない側の副駆動輪に繋がるベーンポンプより吐出される作動流体の流量は、スリップしている側の副駆動輪につながるベーンポンプからの吐出流量に比べて大きくなる。ここで、スリップしている側の副駆動輪に繋がるベーンポンプより吐出された作動流体は、第3油路若しくは第4油路を通じてスリップした側の副駆動輪に繋がるベーンポンプ内に流入しようとするが、その流量は大きく、第3油路中に設けられた第3オリフィス若しくは第4油路中に設けられた第4オリフィスの前後では大きな圧力差が発生するため、スリップしていない側の副駆動輪に繋がるベーンポンプには大きな駆動力が伝達されることとなり、車両は泥濘からの脱出が可能となる。
【0012】
また、前進走行中に急制動を行った場合には、副駆動輪の回転速度は制動を受けて路面に対してスリップしている主駆動輪の回転速度よりも大きくなり(このとき左右のベーンポンプはそれぞれ吸入ポートが吐出側となってポンプ作動を行う)、このような状態から、左右の後輪の一方が摩擦係数の低い路面に差し掛かってスリップした場合には、スリップしている側の後輪に繋がるベーンポンプのロータの回転速度はカムリングの回転速度に近くなり、ポンプ作動を行わなくなる(エンジンからの駆動力が伝達されなくなる)一方で、スリップしていない側の後輪に繋がるベーンポンプはポンプ作動を継続するため、左右の副駆動輪には相異なるトルクが作用するところである。しかし、本動力伝達装置を備えた車両においては、第1バイパス油路開放バルブ及び第2バイパス油路開放バルブが主駆動輪の回転速度の増加に応じて第1バイパス油路及び第2バイパス油路の開度を増大させる構成となっており、これにより吸入ポート同士及び吐出ポート同士はそれぞれほぼ同圧になろうとするので、左右の副駆動輪についてはほぼ同程度のトルクが維持されることとなり(これは、いわゆる差動制限を弱める働きである)、左右の副駆動輪間にトルク差が生じることが防止されて十分な走行安定性が確保される。
【0013】
このように本発明に係る四輪駆動車の動力伝達装置では、左右の副駆動輪を駆動する左右のベーンポンプの両吐出ポート及び両吸入ポートをそれぞれ連通する両油路中にオリフィスを設けることに加えて、これらオリフィスを通ることなく両吐出ポートを連通する第1バイパス油路及び両吸入ポートを連通する第2バイパス油路を設けるとともに、左右のカムリングの回転速度に応じた開度で両バイパス油路を開放する第1及び第2バイパス油路開放バルブを備えているため、車両の走行速度に応じて上記オリフィスの径を可変にするのと同等の効果が得られる。これにより、走行状態に応じた最適のトルク特性を得ることができるので、泥濘にはまった状態からの脱出を容易にする差動制限の機能を生かしつつ、急制動中に一方の副駆動輪がスリップした場合でも十分な走行安定性を確保することができるほか、低速走行性能の向上と高速走行性能の向上とを同時に満足させることもできる。
【0014】
なお、上記本発明に係る四輪駆動車の動力伝達装置では、第1バイパス油路開放バルブ及び第2バイパス油路開放バルブの少なくとも一方は、左右のカムリングと一体となって回転するバルブボディ(例えば、実施形態におけるセンターバルブプレート70)と、バルブボディ内に挿設されて左右のカムリングの回転軸を中心とする半径方向に移動自在なスプールとを備えてなり、そのスプールは、バルブボディの回転に伴う遠心力を受けて移動して第1バイパス油路若しくは第2バイパス油路を開放する構成となっていることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態が適用された四輪駆動車の動力伝達装置をスケルトン図により示したものであり、図2はこの四輪駆動車の動力伝達装置に備えられたハイドロリックカップリング装置Hを断面図により示したものである。図1に示すように、本実施形態に係る四輪駆動車(以下、車両と称する)Vは車体前部に横置きに配置したエンジンEと、このエンジンEの右側面に結合したトランスミッションMとを備える。トランスミッションMの駆動出力を主駆動輪としての左右の前輪WFL,WFRに伝達する第1動力伝達系D1は、トランスミッションMの出力軸1に設けた第1スパーギヤ2と、第1スパーギヤ2に噛合する第2スパーギヤ3と、第2スパーギヤ3により駆動されるベベルギヤ式のフロントディファレンシャル4と、フロントディファレンシャル4から左右に延出して前輪WFL,WFRに接続される左右の車軸5L,5Rとから構成される。
【0016】
第1動力伝達系D1の駆動力を副駆動輪としての後輪WRL,WRRに伝達する第2動力伝達系D2は、フロントディファレンシャル4のデフボックスに設けられて第2スパーギヤ3と一体回転する第3スパーギヤ6と、第3スパーギヤ6に噛合する第4スパーギヤ7と、第4スパーギヤ7と一体に回転する第1ベベルギヤ8と、第1ベベルギヤ8に噛合する第2ベベルギヤ9と、前端に第2ベベルギヤ9を備えて車体後方に延びるプロペラシャフト10と、プロペラシャフト10の後端に設けたドライブピニオン11と、ドライブピニオン11に噛合するリングギヤ12と、リングギヤ12により駆動されるハイドロリックカップリング装置Hと、ハイドロリックカップリング装置Hから左右に延出して後輪WRL,WRRに接続される左右の車軸13L,13Rとを備える。
【0017】
次に、図2に基づいてハイドロリックカップリング装置Hの構造を説明する。
ハイドロリックカップリング装置Hは、左右対称に配置された左側ベーンポンプPL及び右側ベーンポンプPRと、これら両ベーンポンプPL,PRの間に左右対称に配置された左右のセンタープレート50,60と、これら左右のセンタープレートの間に配置されたセンターバルブプレート70と、これら左右のベーンポンプPL,PR、左右のセンタープレート50,60及びセンターバルブプレート70を内部に収容する円筒状のカバー部材80とを備えて構成される。
【0018】
左側ベーンポンプPLは、左側サイドプレート30L、左側カムリング31L、左側バルブプレート32L、左側ロータ33L及び左側ベーン35Lを有して構成される。また、右側ベーンポンプPRは、右側サイドプレート30R、右側カムリング31R、右側バルブプレート32R、右側ロータ33R及び右側ベーン35Rを有して構成される。そして、左側サイドプレート30L、左側カムリング31L、左側バルブプレート32L、左側センタープレート50、センターバルブプレート70、右側センタープレート60、右側バルブプレート32R、右側カムリング31R及び右側サイドプレート30Rは9本のボルト21により図示のように一体に結合される。なお、このとき隣り合わせとなる部材は、ノックピン(図示せず)により予め相互に位置決めされる。
【0019】
カバー部材80は中央部が円筒状に形成されており、右端部には内周面が円筒状になるように折り曲げ形成された右方突出部81が、また左端部には半径方向外方にテーパ状に拡がる裾部82が設けられている。右方突出部81の内方には右側サイドプレート30Rの右端部より右方に延出して設けられた断面円形状の右方延出部30aが嵌入している。カバー部材80の右方突出部81と右側サイドプレート30Rの右方延出部30aとの結合は、この右方延出部30aの外周面上に着脱自在に取り付けられた止め輪22によりなされ、カバー部材80と右方延出部30aとの接合面は、右方延出部30aの外周部に設けられたOリング23によりシールされる。
【0020】
カバー部材80の左端部には、カバー部材80の左端開口部を閉じるように、左側サイドプレート30Lの外周部より半径方向外方に突出して延びて設けられたフランジ部30bが接合される。図2に示すように、このフランジ部30bの右端面には、リングギヤ12が複数本のボルト24により取り付けられるが、このフランジ部30bにリングギヤ12を取り付けるとき、カバー部材80の裾部82が、フランジ部30bとリングギヤ12との間に挟み込まれるようにし、これによりカバー部材80と左側サイドプレート30Lとが接合されるようにする。なお、この挟み込みの際には、裾部82の内周面側にOリング25を設置しておき、ボルト24の締め付けにより、このOリング25が裾部82と左側サイドプレート30Lの外周面と、フランジ部30bの右面とにより囲まれてなる断面三角形の円環状(カバー部材80の軸方向から見たときに円環状となる)空間内に固定保持されるようにする。これによりカバー部材80と左側サイドプレート30Lとの接合面はOリング25によりシールされた状態となる。ここで、図2に示すように、左側サイドプレート30Lの外周面のうちフランジ部30bよりも右側の部分は、その少なくとも一部がカバー部材80における円筒状の部分(裾部82でない部分)にかかるようになっているので、カバー部材80の内部に収納される他の部材(左側カムリング31Lや左側バルブプレート32Lなど)と同様、左側サイドプレート30Lの芯出し(中心軸合わせ)を容易に行うことができる。
【0021】
左側バルブプレート32L及び右側バルブプレート32Rは或る程度厚みのある焼結金属から構成され、左側センタープレート50及び右側センタープレート60は薄い鋼板で形成される。また、中央のセンターバルブプレート70も或る程度厚みのある焼結金属から構成される。図2から分かるように、左側ベーンポンプPLは左側カムリング31L及び左側ロータ33Lの左側面に左側サイドプレート30Lを有するとともに、右側面に左側バルブプレート32Lを有して構成されており、右側ベーンポンプPRは右側カムリング31R及び右側ロータ33Rの右側面に右側サイドプレート30Rを有するとともに、左側面に右側バルブプレート32Rを有して構成されている。
【0022】
図2に示すように、左側サイドプレート30Lの左側面からは環状の左方支持部30cが左方に突出して設けられており、同様に右側サイドプレート30Rの(右方延出部30aの)右側面からは環状の右方支持部30dが右方に突出して設けられている。左方支持部30cの外周面はボールベアリング26を介してハウジング20に支持されており、右方支持部30の外周面はボールベアリング27を介して同じくハウジング20に支持されている。
【0023】
図2に示すように、左側サイドプレート30Lの中央に設けられた軸孔30eには、これを貫通するように左側ロータシャフト90Lが設けられており、右側サイドプレート30Rの中央に設けられた軸孔30eには、これを貫通するように右側ロータシャフト90Rが設けられている。左方支持部30cの内周面にはボールベアリング93が設けられており、このボールベアリング93を介して左側ロータシャフト90Lが回転自在に支持されている。また、右方支持部30dの内周面にはボールベアリング94が設けられており、このボールベアリング94を介して右側ロータシャフト90Rが回転自在に支持されている。
【0024】
左側ロータシャフト90Lの左端側は左側サイドプレート30Lの左方に突出して延びており、この左方に突出した部分には、左側後輪WRLの車軸13Lが左側ロータシャフト90Lの外周面上に設けられたスプライン91Lを介して結合される(車軸13Lは図2には図示せず)。また、右側ロータシャフト90Rの右端側は右側サイドプレート30Rの右方に突出して延びており、この右方に突出した部分には、右側後輪WRRの車軸13Rが右側ロータシャフト90Rの外周面上に設けられたスプライン91Rを介して結合される(車軸13Rは図2には図示せず)。
【0025】
左側ロータシャフト90Lの外周は、左側の軸孔30e内に設置されたオイルシール95によりシールされ、右側ロータシャフト90Rの外周は、右側の軸孔30e内に設置されたオイルシール96によりシールされる。従って、前述の2個のOリング23,25とこれら2個のオイルシール95,96とによって、左右のベーンポンプPL,PR内の作動油が外部へ漏出するのが防止されるとともに、左右のベーンポンプPL,PRの内部へのエアーの侵入が防止される。
【0026】
左側ロータシャフト90Lの外周面に設けられたスプライン92Lには、左ロータ33Lが中央部に設けられた軸孔を嵌合させて取り付けられており、これにより左側ロータ33Lは左側サイドプレート30L、左側カムリング31L及び左側バルブプレート32Lにより囲まれた空間内において回転自在に収容された状態となっている。また、右側ロータシャフト90Rの外周面に設けられたスプライン92Rには、右側ロータ33Rが中央部に設けられた軸孔を嵌合させて取り付けられており、これにより右側ロータ33Rは右側サイドプレート30R、右側カムリング31R及び右側バルブプレート32Rにより囲まれた空間内において回転自在に収容された状態になっている。また、左側バルブプレート32Lの中央部に設けられた軸孔の内周面にはローラーベアリング97Lが、また右側バルブプレート32Rの中央部に設けられた軸孔の内周面にはローラーベアリング97Rがそれぞれ設けられており、これらローラーベアリング97L,97Rにより左側ロータシャフト90Lの右端部及び右側ロータシャフト90Rの左端部がそれぞれ回転自在に支持されている。
【0027】
図2に示すように、左右のロータシャフト90L,90Rの内部には、軸方向に延びて両端が開口する貫通孔101,101が設けられている。各貫通孔101内には、外周面にOリング102を有したピストン103と、貫通孔101の外端を閉塞するプラグ104と、プラグ104及びピストン103間に設置されたコイルばね105とが備えられており、これら部材により左右のアキュムレータ100L,100Rが構成されている。ここで、エアーの閉じ込みにより各ピストン103の移動を妨げないようにするため、各プラグ104には内部を軸方向に貫通する通孔104aが設けられている。
【0028】
左右のサイドプレート30L,30R、左右のロータ33L,33R、左右のバルブプレート32L,32R、左右のセンタープレート50,60及びセンターバルブプレート70の各内周面により囲まれた空間は作動油を蓄えるリザーバ(第1リザーバRS1と称する)を構成している。また、カバー部材80と右側サイドプレート30Rとの間の空間も作動油を蓄えるリザーバ(第2リザーバRS2と称する)を構成しているが、この第2リザーバRS2は右側のロータシャフトLの外周面と右側サイドプレート30Rを斜めに貫通して設けられた連通孔99を介して連通しており、第1リザーバRS1と第2リザーバRSとは繋がった状態となっている。また、カバー部材80の内周面と左右のサイドプレート30L,30R、左右のカムリング31L,31R、左右のバルブプレート32L,32R、左右のセンタープレート50,60及びセンターバルブプレート70の各外周面とにより囲まれる空間もリザーバ(第3リザーバRS3と称する)を構成しているが、この第3リザーバRS3は後述する左右のバルブプレート32L,32Rそれぞれを半径方向に貫通する複数の連通孔h4L,h4Rを介して第1リザーバRS1と連通している。このように第1リザーバRS1、第2リザーバRS2及び第3リザーバRS3は互いに連通しており、以下の説明において、これら3つのリザーバRS1、RS2,RS3を合わせてリザーバRSと称する。
【0029】
図3〜図8はそれぞれ図2中における矢視III−III、IV−IV、V−V、VI−VI、VII−VII、VIII−VIIIから見たハイドロリックカップリング装置Hの断面図であり、図9〜図13はいずれもハイドロリックカップリング装置Hにおける左側バルブプレート32L、左側センタープレート50、センターバルブプレート70、右側センタープレート60、右側バルブプレート32R及びカバー部材80の一部についての断面図である。以下,これらの図を参照して左右のベーンポンプPL,PR、左右のセンタープレート50,60及びセンターバルブプレート70の構造を詳細に説明するが、左側ベーンポンプPLの構造は右側ベーンポンプPRの構造と左右鏡面対称であり、また左側センタープレート50の構造は右側センタープレート60の構造と左右鏡面対称であるため、主に右側の構造部材について説明して左側の構造部材についての重複説明は省略することにする。なお、右側ベーンポンプPR及び左側ベーンポンプPLの相対応する構成要素には、同一の参照符号にそれぞれ添字「R」及び「L」を付しており、同一参照符号の要素が左右鏡面対称位置に設けられていることを意味する。右側センタープレート60と左側センタープレート50についても同様とする。
【0030】
図3に示すように、右側カムリング31Rの内周面は3つの変形三日月状のカム面を有するように形成されており、その内部に収納された円形の右側ロータ33Rとの間に、円周方向に120°ずつ離間した3個の作動室34Rが形成されている。右側ロータ33Rには外径方向に放射状に延びる8個のベーン溝33aが形成されており、これらベーン溝33a内にそれぞれ板状の右側ベーン35Rが径方向に摺動自在に支持されており、これら右側ベーン35Rの半径方向外端は右側カムリング31Rの内周面に摺接している。右側ロータ33Rの両側面には環状のベーン押上げポート33b,33bが形成されており、これらベーン押上げポート33b,33bには右側ロータ33Rに備えられた上記8個のベーン溝33aそれぞれの底部が連通している。また、各右側ベーン35Rの半径方向外端を右側カムリング31Rの内周面に密着させるべく、各ベーン溝33aの底部とベーン35Rの半径方向内端との間にはコイルスプリング36が縮設されている。
【0031】
図4に示すように、右側バルブプレート32Rの右面(右側カムリング31R及び右側ロータ33Rに対向する面)には、L字状に形成されてその一部が右側ベーンポンプPRの有する作動室34Rの内周面の一端側にそれぞれ臨む3個の吐出ポート37R(図3も参照)と、同じくL字状に形成されてその一部が右側ベーンポンプPRの有する作動室34Rの内周面の他端側にそれぞれ臨む計3個の吸入ポート38R(図3も参照)とが凹設されている。
【0032】
各吐出ポート37R及び各吸入ポート38Rは、図4、図5及び図9に示すように、右側バルブプレート32Rを厚さ方向に貫通して設けられた連通孔h1Rと、右側バルブプレート32Rの左面(右側センタープレート60に対向する面)に凹設された連通溝g1Rと、右側バルブプレート32Rを厚さ方向に貫通して設けられた連通孔h2Rと、右側バルブプレート32Rの右面に凹設された連通溝g2Rとを介して、ベーン押上げポート33bと対向するように右側バルブプレート32Rの右面に凹設された環状の連通溝g3Rに連通している。ここで、図9に示すように、連通孔h1R内には段状の弁座39aが設けられており、右側バルブプレート32Rの左面側から連通孔h1R内に装着されたチェックボール39bと上記弁座39aとによってチェックバルブ39Rが構成される。このチェックバルブ39Rは、吐出ポート37R及び吸入ポート38R側から連通溝g3R(すなわちベーン押上げポート33b)への作動油の流通を許容し、その逆方向の作動油の流通を阻止する機能を有する。なお、チェックボール39bの連通孔h1Rからの脱落は右側センタープレート60によって(左側バルブプレート32L側のチェックバルブ39Lについては左側センタープレート50によって)阻止される。
【0033】
図4、図5及び図10に示すように、各吐出ポート37R及び各吸入ポート38Rはいずれも、右側バルブプレート32Rを厚さ方向に貫通して設けられた連通孔h3Rと、右側バルブプレート32Rの左面に凹設された連通溝g5Rとを介してカバー部材80の内周面側に形成される前述の第3リザーバRS3と連通している。なお、この第3リザーバRS3は前述のように、右側バルブプレート32Rの内周面から外周面まで貫通するように半径方向に延びて設けられた連通孔h4R(図11参照)及び左側バルブプレート32Lの内周面から外周面まで貫通するように半径方向に延びて設けられた連通孔h4L(図11参照)を介して第1リザーバRS1に連通している。ここで、図10に示すように、連通孔h3R内には段状の弁座40aが設けられており、右側バルブプレート32Rの右面側から連通孔h3R内に装着されたチェックボール40bと上記弁座40aとによってチェックバルブ40Rが構成される。なお、チェックボール40bの連通孔h3Rからの脱落は右側カムリング31Rによって(左側バルブプレート32L側のチェックバルブ40Lについては左側カムリング31Lによって)阻止される。
【0034】
このチェックバルブ40Rは、吐出ポート37R及び吸入ポート38R側からリザーバRS側への作動油の流通を阻止し、その逆方向の作動油の流通を許容する機能を有する。このため吐出ポート37Rが高圧になり、吸入ポート38Rが低圧になった場合には、吸入ポート38RがリザーバRSより作動油を吸い上げることを許容しつつ、高圧側の吐出ポート37Rから吐出された高圧の作動油がリザーバRS内に流入しないようにすることができる。一方、吸入ポート38Rが高圧になり、吐出ポート37Rが低圧になった場合には、吐出ポート37RがリザーバRSより作動油を吸い上げることを許容しつつ、高圧側の吸入ポート38Rから吐出された作動油がリザーバRS内に流入しないようにすることができる。
【0035】
図4、図5及び図12に示すように、各吐出ポート37Rは右側バルブプレート32Rを厚さ方向に貫通して設けられた連通孔h5R、右側バルブプレート32Rの左面に凹設された連通溝g6R、右側センタープレート60を厚さ方向に貫通して設けられた連通孔h6R(図6も参照)及びセンターバルブプレート70の右面に凹設された環状の連通溝g7R(図7も参照)を介して相互に連通している。そして、この円環状の連通溝g7Rは図7及び図10に示すように、その一部から半径方向外方に伸びてセンターバルブプレート70の右面に凹設された連通溝g8R、右側センタープレート60を厚さ方向に貫通して設けられたオリフィスOF1R(図6も参照)、右側バルブプレート32Rの左面に半径方向に延びて凹設された連通溝g9R、右側センタープレート60を厚さ方向に貫通して設けられたオリフィスOF2R(図6も参照)、センターバルブプレート70の右面に半径方向に延びて凹設された連通溝g10Rを介して第3リザーバRS3に連通している。
【0036】
また、図4、図5及び図12に示すように、各吸入ポート38Rは右側バルブプレート32Rを厚さ方向に貫通して設けられた連通孔h7R、右側バルブプレート32Rの左面に半径方向に延びて凹設された連通溝g11R及び右側バルブプレート32Rの左面に凹設された環状の連通溝g12Rを介して相互に連通している。そして、この円環状の連通溝g12Rは図5及び図11に示すように、その一部から半径方向外方に伸びて右側バルブプレート32Rの左面側に凹設された連通溝g13R、右側センタープレート60を厚さ方向に貫通して設けられたオリフィスOF3R(図6も参照)、センターバルブプレート70の右面に半径方向に延びて凹設された連通溝g14R(図7も参照)、右側センタープレート60を厚さ方向に貫通して設けられたオリフィスOF4R(図6も参照)、右側バルブプレート32Rの左面に半径方向に延びて凹設された連通溝g15Rを介して第3リザーバRS3に連通している。
【0037】
更に、図12に示すように、右側バルブプレート32Rの左面に凹設された上述の連通溝g6Rは、右側センタープレート60を厚さ方向に貫通して設けられたオリフィスOF5R(図6も参照)、センターバルブプレート70を厚さ方向に貫通して設けられた連通孔h8(図7も参照)及び左側センタープレート50を厚さ方向に貫通して設けられたオリフィスOF5Lを介して左側バルブプレート32Lの右面に凹設された連通溝g6Lに連通している。また、右側バルブプレート32Rの左面に凹設された上述の連通溝g11Rは右側センタープレート60を厚さ方向に貫通して設けられたオリフィスOF6R(図6も参照)、センターバルブプレート70を厚さ方向に貫通して設けられた連通孔h9(図7も参照)及び左側センタープレート50を厚さ方向に貫通して設けられたオリフィスOF6Lを介して左側バルブプレート32Lの右面に凹設された連通溝g11Lに連通している。このように、左側ベーンポンプPLの3つの吐出ポート37Lと右側ベーンポンプPRの3つの吐出ポート37Rとはそれぞれ鏡面対称に配置されたもの(ポート)同士が2つのオリフィスOF5L,OF5Rを介して連通しており、左側ベーンポンプPLの3つの吸入ポート38Lと右側ベーンポンプPRの3つの吸入ポート38Rとはそれぞれ鏡面対称に配置されたもの(ポート)同士が2つのオリフィスOF6L,OF6Rを介して連通している。
【0038】
図7及び図13上段に示すように、センターバルブプレート70の右面には、上記環状の連通溝g7Rの一部より半径方向外方に伸びて凹設された連通溝g16Rが設けられている。この連通溝g16Rは、センターバルブプレート70を厚さ方向に同軸的に延びて設けられた2つの連通孔h10R,h10L及びこれら両連通孔h10R,h10Lの間に位置してセンターバルブプレート70の厚さ方向中間部に半径方向に延びて設けられた第1バルブ穴h11(図8も参照)を介してセンターバルブプレート70の左面に形成された連通溝g16Lに連通している。また、図13に示すように、第1バルブ穴h11は第3リザーバRS3と連通するとともに、センターバルブプレート70を半径方向に延びて設けられた連通孔h12及びセンターバルブプレート70の内周面側に取り付けられたリング状部材72を厚さ方向に貫通して設けられた第1連通孔72a(図8も参照)を介して第1リザーバRS1と連通している。
【0039】
第1バルブ穴h11内には図13上段に示すように、スプール42及びリターンスプリング43からなる第1バイパス油路開放バルブ41が設けられている。
スプール42は、第1バルブ穴h11内に納められて軸方向(上下方向)に摺動移動できるようになっており、その中間部には自身の外周を一周するように設けられた連通溝42aが備えられている。リターンスプリング43は第1バルブ穴h11内におけるスプール42の上方空間内に縮設されており(リターンスプリング43は下端部がスプール42に、また上端部が第1バルブ穴h11内に取り付けられた止め輪44に下方より当接して第1バルブ穴h11内に保持される)、スプール42を常時下方に付勢している。スプール42は、連通孔h12内の作動油の圧力が比較的小さいときには、リターンスプリング43による下方への付勢力を受けて第1バルブ穴h11のシート部h11aに上方から押し付けられた状態となる。この状態では、スプール42の外周に設けられた上記連通溝42aは左右の連通孔h10L,h10Rよりも下方に位置し、両連通孔h10L,h10Rはスプール42の円筒状の側面により遮断される(図13に示す状態)。一方、連通孔h12内の作動油の圧力が高まり、これがリターンスプリング43の付勢力に打ち勝ったときには、スプール42は上方に移動するので連通溝42aが両連通孔h10L,h10Rと繋がり、これより両連通孔h10L,h10Rは連通する。
【0040】
図5及び図13下段に示すように、右側バルブプレート32Rの左面には、上記環状の連通溝g12Rの一部より半径方向外方に延びて凹設された連通溝g17Rが設けられている。この連通溝g17Rは、右側センタープレート60を厚さ方向に貫通して設けられた連通孔h13R(図6も参照)、センターバルブプレート70を厚さ方向に同軸的に延びて設けられた2つの連通孔h14R,h14L及びこれら両連通孔h14R,h14Lの間に位置してセンターバルブプレート70の厚さ方向中間部に半径方向に延びて設けられた第2バルブ穴h15(図8も参照)、左側センタープレート50を厚さ方向に貫通して設けられた連通孔h13Lを介して左側バルブプレート32Lの右面に形成された連通溝g17Lに連通している。また、図13に示すように、第2バルブ穴h15は第3リザーバRS3と連通するとともに、センターバルブプレート70を半径方向に延びて設けられた連通孔h16及び上記リング状部材72を厚さ方向に貫通して設けられた第2連通孔72b(図8も参照)を介して第1リザーバRS1と連通している。
【0041】
第2バルブ穴h15内には図13下段に示すように、スプール46及びリターンスプリング47からなる第2バイパス油路開放バルブ45が設けられている。
スプール46は、第2バルブ穴h15内に納められて軸方向(上下方向)に摺動移動できるようになっており、その中間部には自身の外周を一周するように設けられた連通溝46aが備えられている。リターンスプリング47は第2バルブ穴h15内におけるスプール46の下方空間内に縮設されており(リターンスプリング47は上端部がスプール46に、また下端部が第2バルブ穴h15内に取り付けられた止め輪48に上方より当接して第2バルブ穴h15内に保持される)、スプール46を常時上方に付勢している。スプール46は、連通孔h16内の作動油の圧力が比較的小さいときには、リターンスプリング47による上方への付勢力を受けて第2バルブ穴h15のシート部h15aに下方から押し付けられた状態となる。この状態では、スプール46の外周に設けられた上記連通溝46aは左右の連通孔h14L,h14Rよりも上方に位置し、両連通孔h14L,h14Rはスプール46の円筒状の側面により遮断される(図13に示す状態)。一方、連通孔h16内の作動油の圧力が高まり、これがリターンスプリング47の付勢力に打ち勝ったときには、スプール46は下方に移動するので連通溝46aが両連通孔h14L,h14Rと繋がり、これより両連通孔h14L,h14Rは連通する。
【0042】
図14は、上記ハイドロリックカップリング装置Hの構成を油圧回路図により示したものである。このハイドロリックカップリング装置Hでは、上述のように、右側ベーンポンプPRにおける3つの吐出ポート37Rは同圧が保持される状態で互いに連通しており、右側ベーンポンプPRにおける3つの吸入ポート38Rも同圧が保持される状態で互いに連通している。このため本油圧回路図では、記載を簡単明瞭にするため、3つの吐出ポート37Rを1つにまとめて示すとともに、3つの吸入ポート38Rを1つにまとめて示している。また同様に、左側ベーンポンプPLにおける3つの吐出ポート37Lも同圧が保持される状態で互いに連通しており、左側ベーンポンプPRにおける3つの吸入ポート38Lもやはり同圧が保持される状態で互いに連通しているので、本油圧回路図では、左側ベーンポンプPLにおける3つの吐出ポート37Lを1つにまとめて示し、左側ベーンポンプPLにおける3つの吸入ポート38Lを1つにまとめて示している。
【0043】
この油圧回路図にも示すように、本ハイドロリックカップリング装置Hでは、左側ベーンポンプPLの吐出ポート37Lは2つのオリフィスOF1L,OF2L経由でリザーバRSに通じる油路と、チェックバルブ40L経由でリザーバRSに通じる油路との2つの油路を有しており、左側ベーンポンプPLの吸入ポート38Lは2つのオリフィスOF3L,OF4L経由でリザーバRSに通じる油路と、チェックバルブ40L経由でリザーバRSに通じる油路との2つの油路を有している。このため、左側ベーンポンプPLは、車両Vの運転に伴って吐出ポート37Lが高圧側となり、吸入ポート38Lが低圧側となったときには、吐出ポート37L側のチェックバルブ40Lは吐出ポート37L内の高圧を受けて閉弁するので、吐出ポート37Lより吐出された高圧の作動油は連通孔h3L経由でリザーバRS内に流入することができず、オリフィスOF1L,OF2Lを通る経路でリザーバRS内に流入する。一方、吸入ポート38L側のチェックバルブ40Lは、吸入ポート38Lの吸入圧(負圧)により開弁するので、リザーバRS内の作動油は連通孔h3Lを通って吸入ポート38L内に流入する。
【0044】
また、これとは逆に、車両Vの運転に伴って吸入ポート38Lが高圧側となり、吐出ポート37Lが低圧側となったときには、吸入ポート38L側のチェックバルブ40Lは吸入ポート39L内の高圧を受けて閉弁するので、吸入ポート38Lより吐出された高圧の作動油は連通孔h3L経由でリザーバRS内に流入することができず、オリフィスOF3L,OF4Lを通る経路でリザーバRS内に流入する。一方、吐出ポート37L側のチェックバルブ40Lは、吐出ポート37Lの吸入圧により開弁するので、リザーバRS内の作動油は連通孔h3Lを通って吐出ポート37L内に流入する。
【0045】
また、右側ベーンポンプPRの吐出ポート37Rは2つのオリフィスOF1R,OF2R経由でリザーバRSに通じる油路と、チェックバルブ40R経由でリザーバRSに通じる油路との2つの油路を有しており、右側ベーンポンプPRの吸入ポート38Rは2つのオリフィスOF3R,OF4R経由でリザーバRSに通じる油路と、チェックバルブ40R経由でリザーバRSに通じる油路との2つの油路を有している。このため、右側ベーンポンプPRは、車両Vの運転に伴って吐出ポート37Rが高圧側となり、吸入ポート38Rが低圧側となったときには、吐出ポート37Rより吐出された高圧の作動油は、吐出ポート37R側のチェックバルブ40Rは吐出ポート37R内の高圧を受けて閉弁するので、吐出ポート37Rより吐出された高圧の作動油は連通孔h3R経由でリザーバRS内に流入することができず、オリフィスOF1R,OF2Rを通る経路でリザーバRS内に流入する。一方、吸入ポート38R側のチェックバルブ40Rは、吸入ポート38Rの吸入圧により開弁するので、リザーバRS内の作動油は連通孔h3Rを通って吸入ポート38R内に流入する。
【0046】
また、これとは逆に、車両Vの運転に伴って吸入ポート38Rが高圧側となり、吐出ポート37Rが低圧側となったときには、吸入ポート38R側のチェックバルブ40Rは吸入ポート38R内の高圧を受けて閉弁するので、吸入ポート38Rより吐出された高圧の作動油は連通孔h3R経由でリザーバRS内に流入することができず、オリフィスOF3R,OF4Rを通る経路でリザーバRS内に流入する。一方、吐出ポート37R側のチェックバルブ40Rは、吐出ポート37Rの吸入圧により開弁するので、リザーバRS内の作動油は連通孔h3Rを通って吐出ポート37R内に流入する。
【0047】
また、左側ベーンポンプPLの吐出ポート37Lと吸入ポート38Lとは、それぞれチェックバルブ39L,39Lを介して左側ロータ33Lのベーン押上げポート33bに連通しているため、これら吐出ポート37Lと吸入ポート38Lのうち高圧になる方の圧力がそのベーン押上げポート33bに作用する。これにより各左側ベーン35Lは半径方向外側に付勢され、その先端は左側カムリング31Lの内周面に圧接される。一方、低圧になる方のポートに繋がるチェックバルブ39Lはベーン押上げポート33b側から作用する圧力により閉じられる。
また同様に、右側ベーンポンプPRの吐出ポート37Rと吸入ポート38Rとは、それぞれチェックバルブ39R,39Rを介して右側ロータ33Rのベーン押上げポート33bに連通しているため、これら吐出ポート37Rと吸入ポート38Rのうち高圧になる方の圧力がそのベーン押上げポート33bに作用する。これにより各右側ベーン35Rは半径方向外側に付勢され、その先端は右側カムリング31Rの内周面に圧接される。また、低圧になる方のポートに繋がるチェックバルブ39Rがベーン押上げポート33b側から作用する圧力により閉じられる。
【0048】
また、本ハイドロリックカップリング装置Hにおいては、左側ベーンポンプPLの吐出ポート37Lと右側ベーンポンプPRの吐出ポート37Rとは連通孔h8介して連通しており、左側ベーンポンプPLの吸入ポート38Lと右側ベーンポンプPRの吸入ポート38Rとは連通孔h9を介して連通している。このため、左右双方のベーンポンプPL,PRの吐出流量に差がある場合には、吐出流量の多い側から少ない側に作動油が連通孔h8、h9を通って流れる。但し、上記連通孔h8の前後にはオリフィスOF5L,OF5Rが設けられているため、両吐出ポート37L,37Rから吐出される作動油の流量に差がある場合には、その流量に応じた流通抵抗が働いて、オリフィスOF5L,OF5Rの前後に圧力差が生じる。また同様に、上記連通孔h9の前後にはオリフィスOF6L,OF6Rが設けられているため、両吸入ポート37L,37Rの少なくとも一方が吐出側となってこれら両吸入ポート37L,37Rからから吐出される作動油の流量に差がある場合には、その流量に応じた流通抵抗が働いて、オリフィスOF6L,OF6Rの前後に圧力差が生じる。
【0049】
また、本ハイドロリックカップリング装置Hにおいては、前述したように、左右のロータシャフト90L,90Rの内部に左右のアキュムレータ100L,100Rが設けられており、ベーンポンプPL,PR内の作動油が温度変化により膨張或いは収縮したときには、第1リザーバRS1の容積が変化して作動油の容積変化が吸収されるようになっている。すなわち、温度の上昇により作動油が膨張した場合には、左右のアキュムレータ100L,100Rの各ピストン103がコイルばね105を圧縮して相互に離反する方向に移動することにより、第1リザーバRS1の容積を増大させる。これにより、ポンプ内部が高圧となって構成部材に過大な負荷がかかるような事態が防止される。一方、温度の低下により作動油が収縮した場合には、各ピストン103がコイルばね105の弾発力で相互に接近する方向に移動することにより、第1リザーバRS1の容積を減少させる。これにより、リザーバRS内にエアーが侵入してくるのが防止される。
【0050】
また、本ハイドロリックカップリング装置Hは、両オリフィスOF5L,OF5Rを通ることなく左右のベーンポンプPL,PRの両吐出ポート37L,37Rを連通する第1バイパス油路(具体的には連通溝g16L,連通孔h10L,h10R,連通溝g16R)と、前輪(主駆動輪)WFL,WFR(すなわち左右のカムリング31L,31R)の回転速度の増加に応じて上記第1バイパス油路の開度を増大させるように作動する第1バイパス油路開放バルブ41と、両オリフィスOF6L,OF6Rを通ることなく左右のベーンポンプPL,PRの両吸入ポート38L,38Rを連通する第2バイパス油路(具体的には連通溝g17L,連通孔h13L,h14L,h14R,h13R,連通溝g17R)と、前輪(主駆動輪)WFL,WFRの回転速度の増加に応じて上記第2バイパス油路の開度を増大させるように作動する第2バイパス油路開放バルブ45とを有している。
【0051】
ここで、第1バイパス油路開放バルブ41は、左右のカムリング31L,31Rの回転によりスプール41に作用する遠心力(この遠心力は、スプール41が左右のカムリング31L,31Rの回転中心軸より遠ざかる方向に作用する)がスプール41をリターンスプリング43の付勢力に抗して開弁方向に付勢する力F1aと、リターンスプリング43がスプール41を閉弁方向に付勢する力F2aとの関係が、F1a>F2aとなったときに、その力の差の大きさ(F1a−F2a)に応じた開度で開弁し、連通孔h10Lと連通孔h10Rとを連通させる。同様に、第2バイパス油路開放バルブ45は、左右のカムリング31L,31Rの回転によりスプール46に作用する遠心力(この遠心力は、スプール46が左右のカムリング31L,31Rの回転中心軸より遠ざかる方向に作用する)がスプール46をリターンスプリング47の付勢力に抗して開弁方向に付勢する力F1bと、リターンスプリング47がスプール46を閉弁方向に付勢する力F2bとの関係が、F1b>F2bとなったときに、その力の差の大きさ(F1b−F2b)に応じた開度で開弁し、連通孔h14Lと連通孔h14Rとを連通させる。なお、スプール42,46が開弁するための条件は、リターンスプリング43,47のばね定数の値を選択することにより任意に設定することが可能である。
【0052】
次に、上述の構成を備えた本発明に係る四輪駆動車の動力伝達装置であるハイドロリックカップリング装置Hの車両Vの走行状態に応じた具体的な作動について説明する。車両Vが前進或いは後進走行している状態では、エンジンEの駆動力はトランスミッションMの出力軸1から第1スパーギヤ2、第2スパーギヤ3、フロントディファレンシャル4及び左右の車軸5L,5Rを介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。このとき、フロントディファレンシャル4の第3スパーギヤ6の回転は、第4スパーギヤ7、第1ベベルギヤ8、第2ベベルギヤ9、プロペラシャフト10、ドライブピニオン11及びリングギヤ12を介してハイドロリックカップリング装置Hの左右のカムリング31L,31Rを回転させる。一方、車両Vの走行に伴って路面から受ける摩擦力で駆動される後輪WRL,WRRの回転は、左右の車軸13L,13Rからロータシャフト90L,90Rを介して左右のベーンポンプPL,PRのロータ33L,33Rに伝達される。本車両Vでは、前輪WFL,WFRの回転速度と後輪WRL,WRRの回転速度とが等しいときには、左右のカムリング31L,31Rの回転速度と左右のロータ33L,33Rの回転速度とが一致するように構成される。
【0053】
ここで、車両Vが定速走行或いは通常の加減速走行を行っており、前輪WFL,WFRの回転速度と後輪WRL,WRRの回転速度とが等しいときには、左側カムリング31Lと左側ロータ33Lとの間、及び右側カムリング31Rと右側ロータ33Rとの間で相対回転が発生しない。その結果、左右のベーンポンプPL,PRはポンプ作動を行わず、ハイドロリックカップリング装置Hは駆動力の伝達を行わないので、車両Vは前輪のみが駆動される二輪駆動状態となる。
【0054】
車両Vが低摩擦路において急発進を行ったとき等において、エンジンEの駆動力が直接作用する前輪WFL,WFRがスリップしたときには、前輪WFL,WFRの回転速度が後輪WRL,WRRの回転速度よりも大きくなる。この場合には、前輪WFL,WFRの回転に連動して回転作動する左右のベーンポンプPL,PRポンプのカムリング31R,31Lと、後輪WRL,WRRの回転に連動して回転作動する左右のベーンポンプPL,PRのロータ33L,33Rとの間に相対回転が発生する(このときの相対回転方向を正転方向とする)。この正転方向の相対回転は、例えば右側ベーンポンプPRを例にすると、図3において右側カムリング31Rを固定した状態で右側ロータ33Rが反時計回り(矢印A方向)に回転する方向の回転である。
【0055】
このように前輪WFL,WFRの回転速度が後輪WRL,WRRの回転速度を上回り、ロータ33L,33Rがカムリング31L,31Rに対して正転方向に相対回転する場合には、吸入ポート38L,38Rから作動油が吸入されて吐出ポート37L,37Rから作動油が吐出される。この際、高圧側となる吐出ポート37L,37Rから吐出された作動油はチェックバルブ39L,39Rを開弁してベーン押上げポート33b,33bに流入し、各ベーン35L,35Rの先端をカムリング31L,31Rの内周面に押し付ける。
【0056】
ベーン押上げポート33b,33b内に流入した高圧の作動油によりカムリング31L,31Rの内周面に圧接された各ベーン35L,35Rは、その半径方向外端部をカムリング31L,31Rの内周面に摺接させながらロータ33L,33Rとともに回転する。ここで、上述したように、カムリング31L,31Rの内周面には内周方向に120°ずつ離間した三つの作動室(右側ベーンポンプPRでは前述の3つの作動室34R)が形成されており、しかもこれら各作動室は変形三日月状に形成されているので、ロータ33L,33Rとともに各ベーン35L,35Rが正転方向に相対回転すると、作動室内において隣り合うベーン同士、カムリング31L,31Rの内周面及びロータ33L,33Rの外周面により囲まれてなる空間(これをポンプ空間と称する)の容積が変動する。これにより、作動室内にある各ベーン35L,35Rの進行方向前方は高圧領域となるとともに、進行方向後方は低圧領域となる。
【0057】
これによりリザーバRS内の作動油は吸入ポート38L,38R側のチェックバルブ40L,40Rを介して吸入ポート38L,38Rに吸い上げられた後、吐出ポート37L,37Rより高圧の作動油となって吐出される。この吐出ポート37L,37Rより吐出された高圧の作動油は、吐出ポート37L,37R側のオリフィス(オリフィスOF1L,OF2L或いはオリフィスOF1R,OF2R)を通過し、減圧された後リザーバRSに戻されるので、結局作動油は左側ベーンポンプPLでは吐出ポート37Lと吸入ポート38Lとの間,右側ベーンポンプPRでは吐出ポート37Rと吸入ポート38Rとの間で還流することになる。
【0058】
このように、吐出ポート37L,37Rより吐出された高圧の作動油はそれぞれオリフィス(オリフィスOF1L,OF2L或いはオリフィスOF1R,OF2R)を通過して流れるが、上記各オリフィスを通過するときには通過流量に応じた流通抵抗を受けるので、これにより左右のベーンポンプPL,PRに負荷が発生する。この負荷によりロータ33L,33Rはカムリング31L,31Rから駆動力を受けることとなり、この駆動力が左右の後輪WRL,WRRに伝達される。このため本車両Vでは、上記のように前輪WFL,WFRがスリップしたときには前輪のみならず後輪も駆動される四輪駆動状態となり、車両Vのトラクションが増加する。なお、上記オリフィス(オリフィスOF1L,OF2L,OF1R,OF2R)の径が小さいときほど左右のベーンポンプPL,PRの負荷は増大し、後輪WRL,WRRの駆動力は大きくなる。
【0059】
車両Vが旋回走行を行うときには、前輪WFL,WFRの平均旋回半径よりも左右の後輪WRL,WRRの平均旋回半径の方が小さくなり、かつ後輪WRF,WRRの内輪側は外輪側よりも平均旋回半径が小さくなるため、左側カムリング31Lと左側ロータ33Lとの間、及び右側カムリング31Rと右側ロータ33Rとの間にはそれぞれ相対回転が発生する。また、左側カムリング31Lと左側ロータ33Lとの間の相対回転速度と、右側カムリング31Rと右側ロータ33Rとの間の相対回転速度とは相異なったものとなる。このような場合にも左側ベーンポンプPLの吐出ポート37Lから吐出された作動油はオリフィスOF1L,OF2Lを経て左側ベーンポンプPLの吸入ポート38Lに還流し、右側ベーンポンプPRの吐出ポート37Rから吐出された作動油はオリフィスOF1R,OF2Rを経て右側ベーンポンプPRの吸入ポート38Rに還流するのであるが、左右のベーンポンプPL,PR間では、吐出した作動油の流量に差が生じるため、吐出流量の多い側から少ない側へ両吐出ポート37L,37Rを繋ぐ油路を介して作動油が流れることとなる。
【0060】
例えば、車両が左方向に旋回走行する場合には、左側後輪WRLが内輪となり、右側後輪WRRが外輪となるが、このとき左側ベーンポンプPLにおける左側カムリング31Lと左側ロータ33Lとの間の相対回転速度の方が、右側ベーンポンプPRにおける右側カムリング31Rと右側ロータ33Rとの間の相対回転速度よりも大きくなる。このため、右側ベーンポンプPRが吐出する作動油の流量よりも左側ベーンポンプPLが吐出する作動油の流量の方が大きくなり、その差分は、両吐出ポート37L,37R同士を繋ぐ油路(連通孔h8を含む油路)を経て流れるので、左右の副駆動輪WRL,WRR間の回転速度差が吸収されて差動機構としての機能が発揮される。また、これにより、タイトな旋回走行時であっても、吐出流量が多くなる側のベーンポンプに大きな負荷が作用することがなくなり、いわゆるタイト・コーナ・ブレーキ現象の発生も抑制される。なお、両吐出ポート37L,37R同士を繋ぐ油路中にはオリフィスOF5L,OF5Rが介在するが、上記旋回走行時に左右のベーンポンプPL,PR間を流れる作動油流量は小さく、オリフィスOF5L,OF5Rの前後で生じる圧力差は極めて少ないので、上記差動機構としての働きが妨げられることはない。
【0061】
次に、後輪WRL,WRRの一方、例えば左側後輪WRLを除く左右の前輪WFL,WFR及び右後輪WRRが泥濘にはまった場合を考える。この場合には、泥濘にはまった左右の前輪WFL,WFRはスリップして高速回転(空転)し、これに伴って左右のカムリング31L,31Rも高速で回転するのであるが、右側後輪WRRは前輪WFL,WFRと同様に泥濘にはまって路面抵抗が低下しているため、エンジンEからの動力が伝達されても前輪WFL,WFRと同様高速で回転(空転)してしまう。このため右側カムリング31Rの回転速度と右側ロータ33Rの回転速度とは極めて近いものとなり、その相対回転速度差は小さくなる一方で、スリップしていない側の左側後輪WFLに繋がる左側ロータ33Lと左側カムリング31Lとの間の相対回転速度は非常に大きなものとなり、左側ベーンポンプPLより吐出される作動油の流量は、右側ベーンポンプPRより吐出される作動油の流量に比べて大きくなる。
【0062】
このように左側ベーンポンプPLからの吐出流量が右側ベーンポンプPRからの吐出流量よりも大きくなると、左側ベーンポンプPRから吐出された作動油は右側ベーンポンプPR側へ流れようとする。ここで、もし両ベーンポンプPL,PRの吐出ポート37L,37R同士を繋ぐ油路(連通孔h8を含む油路)中にオリフィスOF5L,OF5Rが介在していないのであれば、左側ベーンポンプPLから吐出された作動油は流通抵抗なく右側ベーンポンプPR側に移動できるため吐出ポート37Lは高圧に保たれず、吐出ポート37Lから吐出された作動油はオリフィスOF1L,OF2Lを通過しなくなるので右側後輪WRRのみならず左側後輪WRLにも駆動力が伝達しない状態となってしまうところである。
しかし、前述のように、両ベーンポンプPL,PRの吐出ポート37L,37R同士を繋ぐ油路中には2つのオリフィスOF5L,OF5Rが介在しているため、本ケースのように左右のベーンポンプPL,PRからの作動油の吐出流量の差が極めて大きい場合には、これらオリフィスOF5L,OF5Rの流路抵抗により、左側ベーンポンプPLから吐出された作動油の右側ベーンポンプPR側への流通は規制されることとなり、オリフィスOF5L、OF5Rの前後に圧力差が発生して左側ベーンポンプPLの吐出ポート37Lは高圧に保持される。これにより、左側ベーンポンプPLの吐出ポート37Lより吐出された作動油はオリフィスOF1L,OF2Lを通過して負荷が発生するようになるので、左側ロータ33Lには左側カムリング31Lから駆動力が伝達されることとなり、車両Vは泥濘から脱出することができる。このように、本実施形態に示すハイドロリックカップリング装置Hでは、いわゆる作動制限装置(LSD)と同様の機能を備えており、上記2つのオリフィスOF5L,OF5Rの径を小さくしておくほど、その機能を強めることができる。
【0063】
前進走行中に急制動を行い、前輪WFL,WFRがロック気味となる場合には(このとき前輪WFL,WFRはスリップする)、後輪WRL,WRRの回転速度が前輪WFL,WFRの回転速度を上回る。これにより左右のベーンポンプPL,PRのカムリング31R,31Lとロータ33L,33Rとの間には逆転方向の相対回転が発生する。この逆転方向の相対回転は、例えば右側ベーンポンプPRを例にすると、図3において右側カムリング31Rを固定した状態で右側ロータ33Rが時計回り(矢印B方向)に回転する方向の回転である。
【0064】
このように後輪WRL,WRRの回転速度が前輪WFL,WFRの回転速度を上回り、ロータ33L,33Rがカムリング31L,31Rに対して逆転方向に相対回転する場合には、吐出ポート37L,37Rから作動油が吸入されて吸入ポート38L,38Rから作動油が吐出される。この際、高圧側となる吸入ポート38L,38Rから吐出された作動油はチェックバルブ39L,39Rを開弁してベーン押上げポート33b,33bに流入し、各ベーン35L,35Rの先端をカムリング31L,31Rの内周面に押し付ける。
【0065】
ベーン押上げポート33b,33b内に流入した高圧の作動油によりカムリング31L,31Rの内周面に圧接された各ベーン35L,35Rは、その半径方向外端部がカムリング31L,31Rの内周面に摺接させながらロータ33L,33Rとともに回転する。これにより、作動室内にある各ベーン35L,35Rの進行方向前方は高圧領域となるとともに、進行方向後方は低圧領域となる。
【0066】
これによりリザーバRS内の作動油は吐出ポート37L,37R側のチェックバルブ40L,40Rを介して吐出ポート37L,37Rに吸い上げられた後、吸入ポート38L,38Rより高圧の作動油となって吐出される。この吸入ポート38L,38Rより吐出された高圧の作動油は、吸入ポート38L,38R側のオリフィス(オリフィスOF3L,OF4L或いはオリフィスOF3R,OF4R)を通過し、減圧された後リザーバRSに戻されるので、結局作動油は左側ベーンポンプPLでは吸入ポート38Lと吐出ポート37Lとの間,右側ベーンポンプPRでは吸入ポート38Rと吐出ポート37Rとの間で還流することになる。
【0067】
このように、吸入ポート38L,38Rより吐出された高圧の作動油はそれぞれオリフィス(オリフィスOF3L,OF4L或いはオリフィスOF3R,OF4R)を通過して流れるが、このとき上記各オリフィスを通過するときに通過流量に応じた流通抵抗を受けるので、これにより左右のベーンポンプPL,PRに負荷が発生し、左右の後輪WRL、WRRに車両Vの前進を妨げる方向の力、すなわち制動力が伝達される。
【0068】
ここで、車両が前進後進を問わず所定速度以上で走行しており、左右のカムリング31L,31Rが所定の回転速度以上で回転しているときには、第1バイパス油路開放バルブ41のスプール42は第1バイパス油路を開放するので、両連通孔h10L,h10Rは第1バルブ穴h11を介して連通する。これにより左右のベーンポンプPL,PRの両吐出ポート37L,37R間を流れる作動油の一部はオリフィスOF5L,OF5Rを避けて第1バイパス油路を通るようになり、第1バイパス油路の開度(すなわちスプール42の開度)が大きいときには、両吐出ポート37L,37R間を流れる全ての作動油が第1バイパス油路を通るようになって、吐出ポート37L,37R同士はほぼ同圧となる。また、同様に第2バイパス油路開放バルブ45のスプール46は第2バイパス油路を開放するので、両連通孔h14L,h14Rは第2バルブ穴h15を介して連通する。これにより左右のベーンポンプPL,PRの両吸入ポート38L,38R間を流れる作動油の一部はオリフィスOF6L,OF6Rを避けて第2バイパス油路を通るようになり、第2バイパス油路の開度(すなわちスプール46の開度)が大きいときには、両吸入ポート38L,38R間を流れる全ての作動油が第2バイパス油路を通るようになって、吸入ポート38L,38R同士もほぼ同圧となる。
【0069】
このような状態において、左右の後輪WRL,WRRの一方、例えば右側後輪WRRが摩擦係数の低い路面に差し掛かってスリップした場合には、スリップしている側の右側後輪WRRに繋がる右側ベーンポンプPRの右側ロータ33Rの回転速度は右側カムリング31Rの回転速度に近くなり、ポンプ作動を行わなくなる(エンジンEからの駆動力が伝達されなくなる)一方で、スリップしていない側の左側後輪WRLに繋がるベーンポンプPLはポンプ作動を継続するため、左右の副駆動輪には相異なるトルクが作用するところである。しかし、左右のベーンポンプPL,PRは上述のように、吸入ポート38L,38R同士及び吐出ポート37L,37R同士がそれぞれほぼ同圧となっているため、左右の副駆動輪WRL,WRRについてはほぼ同程度のトルクが維持される。これは、いわゆる差動制限を弱める働きであり、前進走行中に急制動を行った場合において、左右の後輪の一方がスリップしたときであっても、左右の後輪WRL,WRR間にトルク差が生じて車両走行が不安定になるような事態が防止される。また、これにより泥濘にはまった状態からの脱出を容易にする差動制限の働きが不十分になることもない。
【0070】
また、前進走行中に急制動を行っている場合に左側後輪WRLがスリップした場合も同様であって、このときにも左右の副駆動輪WRL,WRRのトルクは同程度に維持されるので,上記効果を得ることができる。
【0071】
このように本発明に係る四輪駆動車の動力伝達装置(上記は井戸トリックカップリング装置H)では、左右の副駆動輪(上述の例では左右の後輪WRL,WRR)を駆動する左右のベーンポンプPL,PRの両吐出ポート37L,37R及び両吸入ポート38L,38Rをそれぞれ連通する両油路中にオリフィスを設けることに加えて、これらオリフィスを通ることなく両吐出ポート37L,37Rを連通する第1バイパス油路及び両吸入ポート38L,38Rを連通する第2バイパス油路を設けるとともに、前輪(主駆動輪)WFL,WFRの回転速度の増加に応じて両バイパス油路の開度を増大させる第1及び第2バイパス油路開放バルブ41,45を備えているため、車両Vの走行速度に応じて上記オリフィスの径を可変にするのと同等の効果が得られる。これにより、走行状態に応じた最適のトルク特性を得ることができるので、泥濘にはまった状態からの脱出を容易にする差動制限の機能を生かしつつ、急制動中に一方の副駆動輪がスリップした場合でも十分な走行安定性を確保することができる。
【0072】
ここで、第1バイパス油路開放バルブ41が開弁するときの条件はスプール42を閉弁方向に付勢するリターンスプリング43のばね定数を変えることにより所望に調節することができ、また第2バイパス油路開放バルブ45が開弁するときの条件はスプール46を閉弁方向に付勢するリターンスプリング47のばね定数を変えることにより所望に調節することができるので、このハイドロリックカップリング装置Hが適用される各車両ごとに両バルブ41,45の作動特性を与えることが可能である。
【0073】
また、本ハイドロリックカップリング装置Hでは、低速走行時にはオリフィスOF5L,OF5R,OF6L,OF6Rの影響を強くし、高速走行時にはこれらオリフィスの影響を小さくすることにより、低速走行性能の向上と高速走行性能の向上とを同時に満足させることも可能である。
【0074】
例えば、従来のハイドロリックカップリング装置ように、左右のベーンポンプPL,PRの両吐出ポート37L,37Rがオリフィス(上記例におけるオリフィスOF5L,OF5Rに相当)を介した油路のみで繋がれている構成では、このオリフィス径が低速走行時を基準に定められ,低速走行からの加速性能が良好になるようにオリフィス径が設定されている(オリフィス径が小さめに設定されている)場合には、高速走行状態から舵を切ったときにオーバーステアが発生し易くなるという欠点が生じ、これとは逆に、上記オリフィス径が高速走行時を基準に定められ、高速走行時におけるオーバーステアが発生しにくくなるようにオリフィス径が設定されている(オリフィス径が大きめに設定されている)場合には、低速走行時にターンインがしにくくなるという欠点が生じてしまう。しかし、本ハイドロリックカップリング装置においては、車両の走行速度(すなわち前輪WFL,WFRの回転速度)が大きくなるほど第1バイパス油路の開度が大きくなるような構成としておけば、低速走行時にはオリフィスOF5L,OF5Rの径が小さく、また高速走行時にはオリフィスOF5L,OF5Rの径が大きくなるような可変オリフィスを備えているのと同等の効果が得られるので、低速走行時における上記欠点と高速走行時における上記欠点とを同時に解消することが可能となる。
【0075】
また、従来のように、左右のベーンポンプPL,PRの両吸入ポート38L,38Rがオリフィス(上記例におけるオリフィスOF6L,OF6Rに相当)を介した油路のみで繋がれている構成では、このオリフィス径が低速走行時を基準に定められ,低速走行からの減速性能が良好になるようにオリフィス径が設定されている(オリフィス径が小さめに設定されている)場合には、高速走行状態から舵を切ったときにタックインが過度に行われて車両が不安定となり、これとは逆に、上記オリフィス径が高速走行時を基準に定められ、高速走行時のタックインが過度にならないようにオリフィス径が設定されている(オリフィス径が大きめに設定されている)場合には、低速走行からのターンインがしにくくなるという欠点を生じる。しかし、本ハイドロリックカップリング装置においては、車両の走行速度(すなわち前輪WFL,WFRの回転速度)が大きくなるほど第2バイパス油路の開度が大きくなるような構成としておけば、低速走行時にはオリフィスOF6L,OF6Rの径が小さく、また高速走行時にはオリフィスOF6L,OF6Rの径が大きくなるような可変オリフィスを備えているのと同等の効果が得られるので、低速走行時における上記欠点と高速走行時における上記欠点とを同時に解消することが可能となる。
【0076】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態において示したものに限定されない。例えば、上述の実施形態では、第1バイパス油路開放バルブ及び第2バイパス油路開放バルブは、それぞれ左右のカムリングと一体となって回転するバルブボディであるセンターバルブプレートと、このセンターバルブプレート内に挿設されて左右のカムリングの回転軸を中心とする半径方向に移動自在なスプールとを備えてなり、スプールは、センターバルブプレートの回転に伴う遠心力を受けて移動して第1バイパス油路若しくは第2バイパス油路を開放する構成であったが、これは別途設けたセンサ等により左右のカムリング若しくはセンターバルブプレートの回転速度を検出し、この検出した情報に基づいて、電磁力等によりスプールを駆動する構成であってもよい。
【0077】
また、上述の実施形態では、動力源(上記例ではエンジンE)により直接駆動される主駆動輪が前輪WFL,WFRであり、また主駆動輪と連動して回転する左右のベーンポンプを介して駆動される副駆動輪が後輪WRL,WRRであったが、これらの構成を逆にして、主駆動輪を後輪WRL,WRRとし、副駆動輪が前輪WFL,WFRとなるようにしてもよい。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る四輪駆動車の動力伝達装置では、左右の副駆動輪を駆動する左右のベーンポンプの両吐出ポート及び両吸入ポートをそれぞれ連通する両油路中にオリフィスを設けることに加えて、これらオリフィスを通ることなく両吐出ポートを連通する第1バイパス油路及び両吸入ポートを連通する第2バイパス油路を設けるとともに、主駆動輪の回転速度の増加に応じて両バイパス油路の開度を増大させる第1及び第2バイパス油路開放バルブを備えている。このため、車両の走行速度に応じて上記オリフィスの径を可変にするのと同等の効果が得られ、走行状態に応じた最適のトルク特性を得ることができるので、泥濘にはまった状態からの脱出を容易にする差動制限の機能を生かしつつ、急制動中に一方の副駆動輪がスリップした場合でも十分な走行安定性を確保することができるほか、低速走行性能の向上と高速走行性能の向上とを同時に満足させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態が適用された四輪駆動車の動力伝達装置の構成を示すスケルトン図である。
【図2】上記四輪駆動車の動力伝達装置に備えられたハイドロリックカップリング装置Hの断面図である。
【図3】図2中における矢視III−IIIから見たハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図4】図2中における矢視IV−IVから見たハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図5】図2中における矢視V−Vから見たハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図6】図2中における矢視VI−VIから見たハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図7】図2中における矢視VII−VIIから見たハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図8】図2中における矢視VIII−VIIIから見たハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図9】ハイドロリックカップリング装置における左側バルブプレート、左側センタープレート、センターバルブプレート、右側センタープレート、右側バルブプレート及びカバー部材の一部についての断面図である。
【図10】ハイドロリックカップリング装置における左側バルブプレート、左側センタープレート、センターバルブプレート、右側センタープレート、右側バルブプレート及びカバー部材の一部についての断面図である。
【図11】ハイドロリックカップリング装置における左側バルブプレート、左側センタープレート、センターバルブプレート、右側センタープレート、右側バルブプレート及びカバー部材の一部についての断面図である。
【図12】ハイドロリックカップリング装置における左側バルブプレート、左側センタープレート、センターバルブプレート、右側センタープレート、右側バルブプレート及びカバー部材の一部についての断面図である。
【図13】ハイドロリックカップリング装置における左側バルブプレート、左側センタープレート、センターバルブプレート、右側センタープレート、右側バルブプレート及びカバー部材の一部についての断面図である。
【図14】ハイドロリックカップリング装置の構成を示す油圧回路図である。
【符号の説明】
V 四輪駆動車
E エンジン
H ハイドロリックカップリング装置
WFL,WFR 左右の前輪
WRL,WRR 左右の後輪
PL 左側ベーンポンプ
PR 右側ベーンポンプ
31L 左側カムリング
31R 右側カムリング
33L 左側ロータ
33R 右側ロータ
37L 左側ベーンポンプの吐出ポート
37R 右側ベーンポンプの吸入ポート
38L 左側ベーンポンプの吐出ポート
38R 右側ベーンポンプの吸入ポート
41 第1バイパス油路開放バルブ
45 第2バイパス油路開放バルブ
OF1L,OF2L オリフィス
OF1R,OF2R オリフィス
OF3L,OF4L オリフィス
OF3R,OF4R オリフィス
OF5L,OF5R オリフィス
OF6L,OF6R オリフィス

Claims (2)

  1. 左右の主駆動輪及び左右の副駆動輪を備えた車両と、
    前記左右の主駆動輪を駆動する動力源と、
    前記動力源により回転駆動される左側カムリング及び前記左側副駆動輪と連結された左側ロータが相対回転自在に配設されてなる左側ベーンポンプと、
    前記動力源により回転駆動される右側カムリング及び前記右側副駆動輪と連結された右側ロータが相対回転自在に配設されてなる右側ベーンポンプと、
    前記左側ベーンポンプの吐出ポート及び吸入ポートを連通する第1油路と、
    前記右側ベーンポンプの吐出ポート及び吸入ポートを連通する第2油路と、
    前記左側及び右側ベーンポンプの前記両吐出ポートを連通する第3油路と、
    前記左側及び右側ベーンポンプの前記両吸入ポートを連通する第4油路と、
    前記第1油路中に設けられた第1オリフィスと、
    前記第2油路中に設けられた第2オリフィスと、
    前記第3油路中に設けられた第3オリフィスと、
    前記第4油路中に設けられた第4オリフィスと、
    前記第3オリフィスを通ることなく前記両吐出ポートを連通する第1バイパス油路と、
    前記第4オリフィスを通ることなく前記両吸入ポートを連通する第2バイパス油路と、
    前記主駆動輪の回転速度の増加に応じて前記第1バイパス油路の開度を増大させる第1バイパス油路開放バルブと、
    前記主駆動輪の回転速度の増加に応じて前記第2バイパス油路の開度を増大させる第2バイパス油路開放バルブとを備えたことを特徴とする四輪駆動車の動力伝達装置。
  2. 前記第1バイパス油路開放バルブ及び前記第2バイパス油路開放バルブの少なくとも一方は、前記左右のカムリングと一体となって回転するバルブボディと、前記バルブボディ内に挿設されて前記左右のカムリングの回転軸を中心とする半径方向に移動自在なスプールとを備えてなり、前記スプールは、前記バルブボディの回転に伴う遠心力を受けて移動して前記第1バイパス油路若しくは前記第2バイパス油路を開放することを特徴とする請求項1記載の四輪駆動車の動力伝達装置。
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