JP2004211858A - 流体伝動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造工程を簡単化してコストの削減を図る。
【解決手段】ケーシングCを構成する円筒状のカバー部材19と、このカバー部材19の左端の開口部を閉じるように設けられた左第1サイドプレート30Lとの結合が、カバー部材19の左端に設けられたテーパ状の裾部19bが、左第1サイドプレート30Lに形成されたフランジ部30fと、このフランジ部30fに取り付けられるリングギヤ12との間に挟持されることによりなされる。また、これらカバー部材19と左第1サイドプレート30Lとの間のオイルシーリングは、上記裾部19bと、左第1サイドプレート30Lの外周面と、上記フランジ部30fとにより囲まれてなる断面三角形の円環状空間内に保持されたOリング23によりなされる。
【選択図】 図1
【解決手段】ケーシングCを構成する円筒状のカバー部材19と、このカバー部材19の左端の開口部を閉じるように設けられた左第1サイドプレート30Lとの結合が、カバー部材19の左端に設けられたテーパ状の裾部19bが、左第1サイドプレート30Lに形成されたフランジ部30fと、このフランジ部30fに取り付けられるリングギヤ12との間に挟持されることによりなされる。また、これらカバー部材19と左第1サイドプレート30Lとの間のオイルシーリングは、上記裾部19bと、左第1サイドプレート30Lの外周面と、上記フランジ部30fとにより囲まれてなる断面三角形の円環状空間内に保持されたOリング23によりなされる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、四輪駆動車両の動力伝達装置等に用いられる、作動流体を介して動力伝達を行う流体伝動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、回転自在に支持されたケーシングの内部に動力伝達機構を備え、外部からの動力により回転駆動されたときにケーシング内に封入した作動流体を介してその動力伝達機構が作動するように構成された流体伝動装置は従来知られている。このような流体伝動装置の例としては、トランスミッション及びプロペラシャフトを介して伝達されたエンジンの動力を左右の後輪に分配する四輪駆動車両の動力伝達装置が挙げられる。
【0003】
このような四輪駆動車両の動力伝達装置として用いられる流体伝動装置は、プロペラシャフトを介してエンジンにより駆動され、内部に作動流体が満たされたケーシングと、このケーシング内に設置された左右一対のベーンポンプとを有して構成される。これらベーンポンプの各ロータには左右の車軸(例えば左右の後輪の車軸)が連結され、ケーシングの外周部には、プロペラシャフトの端部に取り付けられたドライブピニオンと噛合するリングギヤが結合される。左右のベーンポンプはそれぞれ吸入ポートと吐出ポートとが油路により繋げられるとともに、両ポンプの吸入ポート同士、及び吐出ポート同士も油路により繋げられる。プロペラシャフト及びリングギヤを介してエンジンによりケーシングが回転駆動されると、左右のベーンポンプは車両の走行状態に応じてポンプ作動を行い、左右の軸部材、すなわち車輪を駆動する。
【0004】
このような流体伝動装置のケーシング構造は、回転軸(上記例では車軸)を中心とする円筒状に形成されたカバー部材と、このカバー部材の端部の開口部を閉じるように設けられたサイドプレートとからなる。ここで、カバー部材とサイドプレートとは、それぞれの外周部に設けられたフランジ部同士を重ねあわせた状態で、リングギヤとともに、複数のボルトにより締め付けられることにより結合される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特許第2670785号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようにカバー部材、サイドプレート及びリングギヤがボルトにより共締めされる構成では、下のような問題点があった。先ず、カバー部材とサイドプレートとはシール性保持のため、これら両部材におけるフランジ部同士の接合面は高精度に仕上げた状態で接合する必要があり、製造コストが高くなっていた。また、両部材間のシール性を向上させるため、両部材間にはOリングが設置されるが、このようなOリングを設置するためには、少なくとも一方の部材にOリング設置用の溝を設ける必要があり、この面でも製造コストがかかっていた。更に、プロペラシャフトに取り付けられたドライブピニオンと噛合するリングギヤは、ケーシングの回転軸(左右のベーンポンプの回転軸)に対して正確に芯出しをする必要があるが、上記のようにリングギヤが上記両部材とともに共締めされる構成では、その正確な芯出しが困難であった。特に、リングギヤはプロペラシャフトからの大きな動力を伝達する必要があるため、これを締結するためのボルトは径が大きなものとならざるを得ず、その芯出しはより一層難しいものであった。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、製造工程を簡単化してコストの削減を図ることができ、更にはケーシングの外周部に取り付けられるリングギヤの芯出しを容易にして生産効率を向上させることが可能な構成の流体伝動装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するため、本発明に係る流体伝動装置は、作動流体を満たしたケーシング内に動力伝達機構を備え、ケーシングを回転軸まわりに回転させることにより作動流体を介して動力伝達機構を作動させる流体伝動装置において、ケーシングは、回転軸を中心とする円筒状に形成されたカバー部材と、カバー部材の端部の開口部を閉じるように設けられたプレート状部材(例えば、実施形態における左第1サイドプレート30L)とを有してなり、プレート状部材の外周部より半径方向外方に突出して延びたフランジ部にはリング状部材がカバー部材側から取り付けられており、カバー部材の上記端部より半径方向外方に延びて形成された裾部がフランジ部とリング状部材とにより挟持されることによりカバー部材とプレート状部材とが結合されており、裾部とプレート状部材との間に形成された円環状空間内にオイルシール部材(例えば、実施形態におけるOリング23)が保持される。このような構成では、プレート状部材の外周面にオイルシール部材を取り付けるための溝を設ける必要がないので、製造工程が簡単化され、コストの削減を図ることができる。また、上記フランジ部におけるリング状部材との接合面はシール面とはならないため、仕上げ精度は比較的粗くて済むため、この面でも製造工程を簡単化することができる。
【0009】
ここで、上記裾部はカバー部材の端部よりフランジ部側に向けてテーパ状に拡がるように形成されており、裾部と、プレート状部材の外周面と、プレート状部材のフランジ部とにより囲まれてなる断面三角形の円環状空間内にオイルシール部材が保持される。或いは、上記裾部はカバー部材の端部より上記回転軸に対してほぼ垂直になる方向に延びて形成されており、裾部におけるフランジ部との接合面に形成された上記回転軸を中心とする円環状の窪みとフランジ部との間に形成された円環状空間内にオイルシール部材が保持される。
【0010】
また、上記両流体伝動装置においては、上記リング状部材が、ケーシングを回転軸まわりに回転させる駆動力を伝達する駆動ギヤと噛合するリングギヤからなるのであれば、このリングギヤはプレート状部材のフランジ部に直接取り付けられることとなるので、その芯出しが大変容易となり、生産効率を向上させることができる。また、本発明に係る流体伝動装置では、上記回転軸が同軸状に配設された2本の軸部材からなり、動力伝達機構が、2本の軸部材それぞれに連結された2つのベーンポンプを有して構成されるハイドロリックカップリング装置からなるように構成することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施について説明する。本発明の実施形態として、本発明に係る流体伝動装置が適用されたハイドロリックカップリング装置Hを備えて構成される四輪駆動車両の動力伝達装置を図1〜図10に示している。
【0012】
図2に、この動力伝達装置のスケルトン図を示しており、先ず、この四輪駆動車両の動力伝達装置の構成を説明する。四輪駆動車両Vは車体前部に横置きに配置したエンジンEと、このエンジンEの右側面に結合したトランスミッションMとを備える。トランスミッションMの駆動出力を主駆動輪としての左右の前輪WFL,WFRに伝達する第1動力伝達系D1は、トランスミッションMの出力軸1に設けた第1スパーギヤ2と、第1スパーギヤ2に噛合する第2スパーギヤ3と、第2スパーギヤ3により駆動されるベベルギヤ式のフロントディファレンシャル4と、フロントディファレンシャル4から左右に延出して前輪WFL,WFRに接続される左右の車軸5L,5Rとから構成される。
【0013】
第1動力伝達系D1の駆動力を副駆動輪としての後輪WRL,WRRに伝達する第2動力伝達系D2は、フロントディファレンシャル4のデフボックスに設けられて第2スパーギヤ3と一体回転する第3スパーギヤ6と、第3スパーギヤ6に噛合する第4スパーギヤ7と、第4スパーギヤ7と一体に回転する第1ベベルギヤ8と、第1ベベルギヤ8に噛合する第2ベベルギヤ9と、前端に第2ベベルギヤ9を備えて車体後方に延びるプロペラシャフト10と、プロペラシャフト10の後端に設けたドライブピニオン11と、ドライブピニオン11に噛合するリングギヤ12と、リングギヤ12により駆動されるハイドロリックカップリング装置Hと、ハイドロリックカップリング装置Hから左右に延出して後輪WRL,WRRに接続される左右の車軸13L,13Rとを備える。
【0014】
次に、図1に基づいてハイドロリックカップリング装置Hの構造を説明する。ハイドロリックカップリング装置Hは左右対称に配置された左ベーンポンプPL及び右ベーンポンプPRを備える。左右のベーンポンプPL,PRは、左第1サイドプレート30L、左カムリング31L、第2サイドプレート32、右カムリング31R及び右第1サイドプレート30Rを備えており、6本のボルト21により図示のように一体に結合される。このとき、左第1サイドプレート30L、左カムリング31L、第2サイドプレート32、右カムリング31R及び右第1サイドプレート30Rはノックピン100(図9、図10参照)を用いて回転方向に位置決めされている。また、内部に左カムリング31L、第2サイドプレート32、右カムリング31R及び右第1サイドプレート30Rを収納する円筒状のカバー部材19が左第1サイドプレート30Lに取り付けられている。
【0015】
カバー部材19はその中央部が円筒状に形成されており、右端部には内周面が円筒状になるように折り曲げ形成された右方突出部19aが、また左端部には半径方向外方にテーパ状に拡がる裾部19bが設けられている。右方突出部19aの内方には、右第1サイドプレート30Rの右端部より右方に延出して設けられた断面円形状の右方延出部30gが嵌入している。カバー部材19の右方突出部19aと右第1サイドプレート30Rの右方延出部30gとの結合は、この右方延出部30gの外周面上に着脱自在に取り付けられた止め輪Sによりなされ、カバー部材19と右方延出部30gとの接合面は、右方延出部30gの外周部に設けられたOリング24によりシールされる。
【0016】
カバー部材19の左端部には、カバー部材19の左端開口部を閉じるように、左第1サイドプレート30Lの外周部より半径方向外方に突出して延びて設けられたフランジ部30fが接合される。図1及び図3に示すように、このフランジ部30fの右端面には、リングギヤ12が複数本のボルト22により取り付けられるが、このフランジ部30fにリングギヤ12を取り付けるとき、カバー部材19の上記裾部19bが、フランジ部30fとリングギヤ12との間に挟み込まれるようにし、これによりカバー部材19と左第1サイドプレート30Lとが接合されるようにする。なお、この挟み込みの際には、裾部19bの内周面側にOリング23を設置しておき、ボルト22の締め付けにより、このOリング23が裾部19aと、左第1サイドプレート30Lの外周面と、フランジ部30fの右面とにより囲まれてなる断面三角形の円環状(カバー部材19の軸方向から見たときに円環状となる)空間19c内に固定保持されるようにする。これによりカバー部材19と左第1サイドプレート30Lとの接合面はOリング23によりシールされた状態となる。ここで、図1に示すように、左第1サイドプレート30Lの外周面のうちフランジ部30fよりも右側の部分は、その少なくとも一部がカバー部材19における円筒状の部分(裾部19bでない部分)にかかるようになっているので、カバー部材19の内部に収納される他の部材(左カムリング31Lや第2サイドプレート32など)と同様、左第1サイドプレート30Lの芯出し(中心軸合わせ)を容易に行うことができる。
【0017】
このように、カバー部材19の左右両端の開口部はそれぞれ右第1サイドプレート30Rと左第1サイドプレート30Lとにより閉じられており、これらカバー部材19、左第1サイドプレート30L及び右第1サイドプレート30RによりケーシングCが構成される。そして、このケーシングCの内部空間内には作動流体(作動油:オイル)が満たされるとともに、動力伝達機構である左右2つのベーンポンプPL,PRが収納された状態となっている(但し、左右の第1サイドプレート30L,30Rは左右2つのベーンポンプPL,PRの一部を構成する部材であるので、動力伝達機構の一部でもある)。
【0018】
第2サイドプレート32は、薄い鋼板で形成された中央のセンタープレート37の両面に左右一対の焼結金属製のバルブプレート38L,38Rを重ね合わせて構成される。この構成から分かるように、左ベーンポンプPLは左カムリング31Lの左右側面に左右サイドプレート(左第1サイドプレート30L及び左バルブプレート38L)を接合して構成され、右ベーンポンプPRは右カムリング31Rの左右側面に左右サイドプレート(右バルブプレート38R及び右第1サイドプレート30R)を接合して構成される。
【0019】
左第1サイドプレート30Lの左側面に突出する環状の支持部30aの外周面がボールベアリング25を介してハウジング20により回転自在に支持され、この支持部30aの内周面がボールベアリング26を介して後述する左ロータシャフト27Lの外周面を回転自在に支持する。また、右第1サイドプレート30R(右方延出部30g)の右側面に突出する環状の支持部30aの外周面がボールベアリング25を介してハウジング20により回転自在に支持され、この支持部30aの内周面がボールベアリング26を介して後述する右ロータシャフト27Rの外周面を回転自在に支持する。
【0020】
左後輪WRLの車軸13Lにスプライン28により結合されて左第1サイドプレート30Lの軸孔30bを貫通する左ロータシャフト27Lの外周は、この軸孔30b内に設置されたOリング29によりシールされ、右後輪WRRの車軸13Rにスプライン28により結合されて右第1サイドプレート30Rの軸孔30bを貫通する右ロータシャフト27Rの外周は、この軸孔30bに設けられたOリング29によりシールされる。従って、前述の4個のOリング23,24,29,29によって、左右のベーンポンプPL,PRの外部への作動油の漏出が防止されるとともに、左右のベーンポンプPL,PRの内部へのエアーの侵入が防止される。
【0021】
左ロータシャフト27Lにスプライン34により結合された左ロータ35Lが、左第1サイドプレート30L、左カムリング31L及び第2サイドプレート32に囲まれた空間に回転自在に収納され、また右ロータシャフト27Rにスプライン34により結合された右ロータ35Rが、右第1サイドプレート30R、右カムリング31R及び第2サイドプレート32に囲まれた空間に回転自在に収納される。第2サイドプレート32は左ベーンポンプPL及び右ベーンポンプPRに共通する構成要素であり、その半径方向内周側においてニードルベアリング36,36を介して左ロータシャフト27及び右ロータシャフト27Rの対向部の外周を相対回転自在に支持する。
【0022】
次に、図1及び図4〜図8を参照しながら右ベーンポンプPRの構造を詳細に説明する。なお、左ベーンポンプPLの構造は右ベーンポンプPRの構造と左右鏡面対称であるため、その重複する説明は省略する。なお、右ベーンポンプPR及び左ベーンポンプPLの相対応する構成要素には、同一の参照符号にそれぞれ添字「R」及び「L」を付しており、同一参照符号の要素が左右対称位置に設けられていることを意味する。
【0023】
右カムリング31Rの内周面は概略三角形状のカム面を有するように形成されており、その内部に収納された円形の右ロータ35Rとの間に、円周方向に120°ずつ離間した3個の作動室40Rが形成されている。右ロータ35Rには外径方向に放射状に延びる8個のベーン溝35aが形成されており、これらベーン溝35a内にそれぞれ板状のベーン41が径方向に摺動自在に支持されており、それらベーン41の半径方向外端は右カムリング31Rの内周面に摺接する。右ロータ35Rの両側面には、各ベーン41の半径方向外端を右カムリング31Rの内周面に密着させるべく、環状のベーン押上げポート35b,35bが形成される。これらベーン押上げポート35b,35bは右ロータ35Rに備えられた8個のベーン溝35aの底部にそれぞれ連通する。また、各ベーン41の半径方向外端を右カムリング31Rの内周面に密着させるべく、ベーン溝35aの底部とベーン41の半径方向内端との間にコイルスプリング42が縮設される。
【0024】
図4〜図8に明瞭に示すように、第2サイドプレート32の右バルブプレート38Rの外面(右カムリング31R及び右ロータ35Rに対向する面)には、右ベーンポンプPRの有する3個の作動室40Rの内周方向両端にそれぞれ臨む3個の吸入ポート43R及び3個の吐出ポート44Rが凹設されている。吸入ポート43R及び吐出ポート44Rは、右バルブプレート38Rを貫通する連通孔h1と、右バルブプレート38Rの内面(センタープレート37に対向する面)に凹設した連通溝g1と、右バルブプレート38Rを貫通する連通孔h2とを介してベーン押上げポート35bにそれぞれ連通する。図7に示すように、連通孔h1には段状の弁座45が形成されており、右バルブプレート38Rの内面側から連通孔h1に装着したチェックボール46と上記弁座45とによってチェックバルブ47Rが構成される。このチェックバルブ47Rは、吸入ポート43R及び吐出ポート44R側からベーン押上げポート35Rへの作動油の流通を許容し、その逆方向の作動油の流通を阻止する機能を有している。チェックボール46の連通孔h1からの脱落は、センタープレート37によって阻止される。
【0025】
従って、車両の前進走行時に吐出ポート44Rが高圧になり、吸入ポート43Rが低圧になると、高圧側の吐出ポート44Rの吐出圧がベーン押上げポート35bに伝達される。また、車両の後進走行時に吸入ポート43Rが高圧になり、吐出ポート44Rが低圧になると、高圧側の吸入ポート43Rの吐出圧がベーン押上げポート35bに伝達される。
【0026】
右バルブプレート38Rの外面に凹設した3個の吸入ポート43R及び3個の吐出ポート44Rは、右バルブプレート38Rを貫通する連通孔h3と、右バルブプレート38Rの内面に凹設した連通溝g2と、右バルブプレート38Rを貫通する連通孔h4とを介して右ロータシャフト27Rの外周部に連通する。連通孔h4には段状の弁座48が形成されており、右バルブプレート38Rの内面側から連通孔h4に装着したチェックボール49と上記弁座48とによってチェックバルブ50Rが構成される。このチェックバルブ50Rは、吸入ポート43R及び吐出ポート44R側から右ロータシャフト27Rの外周部への作動油の流通を阻止し、その逆方向の作動油の流通を許容する機能を有する。
【0027】
右バルブプレート38Rの内面にはL字状をなす6個の連通溝g3が凹設されており、これら連通溝g3の一端は上記連通孔h3を介して吸入ポート43R及び吐出ポート44Rに連通する。また、右バルブプレート38Rの外面には3個の連通溝g4が凹設されており、各連通溝g4の両端は右バルブプレート38Rを貫通する連通孔h5を介して上記L字状の連通溝g3の他端に連通する。
【0028】
図8に明瞭に示すように、連通孔h5にはそれぞれ第1オリフィス51Rが設けられる。第1オリフィス51Rは図示のようにテーパ形状に形成されて方向性を有しており、車両の前進走行時に作動油が図8に矢印で示す方向に流れるときに大きな圧力損失が発生し、車両の後進走行時に作動油が逆方向に流れるときに小さな圧力損失が発生するようになっている。また、図5及び図7に示すように、左右のバルブプレート38L,38Rの吸入ポート43L,43R同士及び吐出ポート44L,44R同士を相互に連通するように、センタープレート37を貫通して第2オリフィス52がそれぞれ連通孔h3に対向する位置に形成されている。
【0029】
右第1サイドプレート30Rの左端面(すなわち、右カムリング31Rとの接合面)は、図9に示すように形成されている。各種ポート類及び油路類は全て第2サイドプレート32に設けているため、右第1サイドプレート30Rにはポート及び油路類を設ける必要がない。但し、後述するように、左右ベーンポンプPL,PRを駆動するときにベーン41に軸方向スラスト力が作用しないようにするための各3個の吸入側バランス用凹部143R及び吐出側バランス用凹部144Rが図示のように形成されている。これら吸入側バランス用凹部143Rは右バルブプレート38Rに形成された各3個の吸入ポート43Rと右カムリング31Rを挟んで対向する位置、すなわち、左右対称となる位置に形成されている。同様に、吐出側バランス用凹部144Rは右バルブプレート38Rに形成された各3個の吐出ポート44Rと右カムリング31Rを挟んで対向する位置、すなわち、左右対称となる位置に形成されている。この右第1サイドプレート30Rはボルト21により右カムリング31Rに結合されており、このときノックピン100により互いの結合位置決めが行われる。
【0030】
左第1サイドプレート30Lの右端面(すなわち、左カムリング31Lとの接合面)は、図10に示すように形成されている。この左第1サイドプレート30Lにも基本的にはポート及び油路類を設ける必要がないが、右第1サイドプレート30Rと同様に、ベーン41に軸方向スラスト力が作用しないようにするための各3個の吸入側バランス用凹部143L及び吐出側バランス凹部144Lが形成されている。これら吸入側及び吐出側バランス用凹部143L,144Lは左バルブプレート38Lに形成された各3個の吸入及び吐出ポート43L,44Lと左カムリング31Lを挟んで対向する位置、すなわち、左右対称となる位置に形成されている。この左第1サイドプレート30Lはボルト21により左カムリング31Lに結合されており、このときノックピン100により互いの結合位置決めが行われる。更に、そのフランジ部30fにリングギヤ12がボルト22により結合されており、このときノックピン101により互いの位置決めが行われる。
【0031】
図1に示すように、左右のロータシャフト27L,27Rの内部には軸方向に延びて両端が開口する貫通孔27a,27aが形成されており、そこに左右一対のリザーバ55L,55Rが設けられる。各リザーバ55L,55Rは、貫通孔27a,27aにOリング56,56を介して摺動自在に嵌合するピストン57,57と、貫通孔27a,27aの外端を閉塞するプラグ58,58と、プラグ58,58及びピストン57,57間に配置されたコイルばね59,59とを備える。プラグ58,58の近傍において、貫通孔27a,27aの内周面に2条のリリーフ溝27b,27bが軸方向に形成されており、これらのリリーフ溝27b,27bは連通孔27c,27cを介して大気に連通する。エアーの閉じ込みによりピストン57,57の移動を妨げないように、プラグ58,58の内部を通孔58a,58aが軸方向に貫通する。
【0032】
このため、ベーンポンプPL,PR内部の作動油が温度変化に応じて膨張・収縮したとき、リザーバ55L,55Rの容積が変化して作動油の容積変化を吸収することにより、作動油へのエアーの混入を防止することができる。すなわち、温度上昇により作動油が膨張すると、ピストン57,57がコイルばね59,59を圧縮して相互に離反する方向に移動してリザーバ55L,55Rの容積が増加するため、上記作動油の膨張を吸収することができる。逆に、温度低下により作動油が収縮すると、ピストン57,57がコイルばね59,59の弾発力で相互に接近する方向に移動してリザーバ55L,55Rの容積が減少するため、上記作動油の収縮を吸収するとともに、エアーのポンプ内部への吸入を防止することができる。
【0033】
何らかの理由で作動油の温度が異常に上昇した場合、ピストン57,57はコイルばね59,59を圧縮しながら相互に離反する方向に大きく移動し、その先端が左右のロータシャフト27L,27Rの貫通孔27a,27aのリリーフ溝27b,27bに連通する。その結果、ベーンポンプPL,PRの内部空間がロータシャフト27L,27Rの貫通孔27a,27a、リリーフ溝27b,27b及び連通孔27c,27cを介して大気に連通し、膨張した作動油が連通孔27c,27cから外部に排出されることでハイドロリックカップリング装置Hの損傷が未然に防止される。
【0034】
ベーンポンプPL,PRの運転に伴って吸入ポート43L,43R(或いは吐出ポート44L,44R)が負圧になったとき、その負圧でチェックバルブ50L,50Rが開弁して吸入ポート43L,43R(或いは吐出ポート44L,44R)をリザーバ55L,55Rに連通させるので、過剰な負圧によりキャビテーションが発生するのを防止することができる。このとき、コイルばね59,59で付勢されたピストン57,57により作動油が加圧されるため、上記キャビテーションを一層効果的に防止することができる。しかも、ロータシャフト27L,27Rの貫通孔27a,27aを利用してリザーバ55L,55Rを配置したので、ベーンポンプPL,PRの吐出圧の影響を回避することが可能になるだけでなく、リザーバ55L,55Rを設けたことによるベーンポンプPL,PRの大型化を回避することができる。また、リザーバ55L,55RがベーンポンプPL,PRの回転中心部に位置することで遠心油圧の影響を受けにくくなり、更にピストン57,57の断面積を小さくすれば、コイルばね59,59のばね荷重を小さく抑えることができる。
【0035】
以上、右ベーンポンプPRの構造を中心に説明したが、左ベーンポンプPLの構造は上記右ベーンポンプPRのそれと鏡面対称であって、両者の構造は実質的に同じであるのでその説明は省略する。
【0036】
上記ハイドロリックカップリング装置Hの油圧回路を図12に示している。同図から明らかなように、左ベーンポンプPLの吸入ポート43L及び吐出ポート44Lは第2サイドプレート32の左バルブプレート38Lに設けた合計三対の第1オリフィス51Lにより相互に連通するとともに、右ベーンポンプPRの吸入ポート43R及び吐出ポート44Rは第2サイドプレート32の右バルブプレート38Rに設けた合計三対の第1オリフィス51Rにより相互に連通する。また、左右のベーンポンプPL,PRの吸入ポート43L,43Rは第2サイドプレート32のセンタープレート37を貫通する第2オリフィス52により相互に連通するとともに、左右のベーンポンプPL,PRポンプの吐出ポート44L,44Rは第2サイドプレート32のセンタープレート37を貫通する第2オリフィス52により相互に連通する。センタープレート37は薄板であるために第2オリフィス52を形成することが容易であり、また第2オリフィス52の孔径が異なるセンタープレート37を組み付けることによりLSD(Limited SlippageDifferential)効果を変えることができる。
【0037】
左ベーンポンプPLの吸入ポート43L及び吐出ポート44Lの何れか高圧側は第2サイドプレート32の左バルブプレート38Lに設けたチェックバルブ47Lを介してベーン押上げポート35bに連通し、また右ベーンポンプPRの吸入ポート43R及び吐出ポート44Rの何れか高圧側は右バルブプレート38Rに設けたチェックバルブ47Rを介してベーン押上げポート35bに連通する。左ベーンポンプPLの吸入ポート43L及び吐出ポート44Lの何れか低圧側は第2サイドプレート32の左バルブプレート38Lに設けたチェックバルブ50Lを介してリザーバ55L,55Rに連通し、また右ベーンポンプPRの吸入ポート43R及び吐出ポート44Rの何れか低圧側は第2サイドプレート32の右バルブプレート38Rに設けたチェックバルブ50Rを介してリザーバ55L,55Rに連通する。
【0038】
更に、ベーン押上げポート35b,35bとリザーバ55L,55Rとの間にリリーフバルブ61L,61R及びチョーク62L,62Rが設けられる。上記リリーフバルブ61L,61Rは仮想的なもので、左右の第1サイドプレート30L,30Rが油圧で撓むことにより、或いはボルト21が伸びることにより左右のロータ35L,35Rとの間の発生する間隙によって構成される。また、上記チョーク62L,62Rも仮想的なもので、左右の第1サイドプレート30L,30R或いは第2サイドプレート32と左右のロータ35L,35Rとの摺動部の間隙によって構成される。
【0039】
次に、前述の構成を備えたハイドロリックカップリング装置Hの作用について説明する。車両Vが定速走行する状態では、エンジンEの駆動力はトランスミッションMの出力軸1から第1スパーギヤ2、第2スパーギヤ3、フロントディファレンシャル4及び左右の車軸5L,5Rを介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。このとき、フロントディファレンシャル4の第3スパーギヤ6の回転は、第4スパーギヤ7、第1ベベルギヤ8、第2ベベルギヤ9、プロペラシャフト10、ドライブピニオン11及びリングギヤ12を介してハイドロリックカップリング装置HのベーンポンプPL,PR(すなわち、左右のカムリング31L,31R)を回転させる。一方、車両Vの走行に伴って路面から受ける摩擦力で駆動される後輪WRL,WRRの回転は、左右の車軸13L,13Rからロータシャフト27L,27Rを介して左ベーンポンプPLのロータ35L及び右ベーンポンプPRのロータ35Rに伝達される。前輪WFL,WFRにスリップが発生しておらず、従って前輪WFL,WFR及び後輪WRL,WRRの回転数が等しいときには、左右のカムリング31L,31Rの回転数と左右のロータ35L,35Rの回転数とが一致するように構成されており、両者に相対回転差が発生しない。その結果、左右のベーンポンプPL,PRポンプが作動油を吐出しないためにハイドロリックカップリング装置Hは駆動力の伝達を行わず、車両Vは前輪駆動状態になる。
【0040】
次に、低摩擦路における発進時や急加速時にエンジンEの駆動力が直接作用する前輪WFL,WFRがスリップした場合を考える。このときには前輪WFL,WFRの回転が後輪WRL,WRRの回転より高くなる。このため、前輪WFL,WFRの回転に連動する左右のベーンポンプPL,PRポンプのカムリング31R,31Lと、後輪WRL,WRRの回転に連動する左右のベーンポンプPL,PRのロータ35L,35Rとの間に所定方向の相対回転(これを正転方向の相対回転と称する)が発生する。この正転方向の相対回転は、例えば右ベーンポンプPRを例にして説明すると、図4において右カムリング31Rを固定した状態で右ロータ35Rが時計回り(矢印A方向)に回転する回転である。
【0041】
このような正転方向の相対回転が発生すると、各ベーン41は半径方向外端が右カムリング31Rの内周面に摺接しながら右ロータ35Rとともに回転される。上述したように、内周面には内周方向に120°ずつ離間した三つの作動室40Rが形成されており、その左右にテーパ部40a,40cが設けられ、中間部40bが円筒状に形成されている。右ロータ35Rとともに各ベーン41が正転方向に相対回転されると、その半径方向外端は左テーパ部40aに沿って摺接移動し、更に中間部40bに摺接しながら移動した後、右テーパ部40cに沿って摺接移動する。このため、上記のようにベーン41が摺接回転移動されると、隣り合うベーン41の間に囲まれた作動室40の内部空間(これをポンプ空間と称する)の容積が変動する。ここで、左テーパ部40aの位置に対応して吸入ポート43Rが形成されるとともに右テーパ部40cの位置に対応して吐出ポート44Rが形成されており、上記のようにポンプ空間容積の変化に対応して、吸入ポート43Rからポンプ空間内に作動油が吸入され、吐出ポート44Rから吐出される。
【0042】
ところで、このようにベーン41が右ロータ35Rとともに右カムリング31R及び左右のサイドプレート(右バルブプレート38R及び右第1サイドプレート30R)に対して相対回転移動されるときのベーン41の動きを、図4のXII−XIIに沿った断面図として図13に示している。この相対回転によりベーン41が矢印A方向に移動し、吸入ポート43Rから作動油を作動室40R内に吸入し、これがベーン41の動きに応じて圧縮されて吐出ポート44Rに吐出される。このときベーン41の半径方向外端部は右カムリング31Rの内周面(カム面)と常に摺接して移動し、ベーン41の左右側端面は左右のサイドプレート(右バルブプレート38R及び右第1サイドプレート30R)と摺接移動しつつも、吐出ポート43R及び吸入ポート44Rの位置において左右端面が開放される。このため、ベーン41の左右側端面の右バルブプレート38Rに対向する側端面には吐出ポート43R及び吸入ポート44Rの内部油圧が作用し、ベーン41が受け軸方向に作用するスラスト力(図13における矢印F1で示す力)を受ける。
【0043】
ところが、前述のように、右第1サイドプレート30Rには吐出ポート43R及び吸入ポート44Rと右カムリング31Rを挟んで対向する吸入側及び吐出側バランス用凹部143R及び144Rが形成されており、これら凹部143R,144Rにも吐出ポート43R及び吸入ポート44Rの内部油圧が作用するため、この内部油圧がベーン41の反対側側端面に逆方向スラスト力(図13における矢印F2で示す力)として作用する。すなわち、ベーン41は左右から同一の大きさで互いに対向するスラスト力を受けることになり、左右のスラスト力が相殺されてベーン41にはスラスト力が作用しなくなる。この結果、ベーン41の側端面とこれが摺接する左右のサイドプレート(右バルブプレート38R及び右第1サイドプレート30R)との接触圧が過大となる虞はなく、この部分の磨耗、かじり、発熱等の問題が生じることがない。
【0044】
以上の説明から分かるように、左右のベーンポンプPL,PRにおいてカムリング31L,31Rとロータ35L,35Rとの間に正転方向の相対回転が生じると、左右のベーンポンプPL,PRは吐出ポート44L,44Rから吐出した作動油を吸入ポート43L,43Rより吸入する。吐出ポート44L,44Rから吐出された作動油は左右の第1オリフィス51R,51Lを通過して吸入ポート43L,43Rに還流するが、その際の流通抵抗により左右のベーンポンプPL,PRに負荷が発生し、この負荷が駆動力として左右の後輪WRL,WRRに伝達される。そして、前輪WFL,WFRのスリップ時には四輪駆動状態となり、車両Vのトラクションを増加させることができる。このとき、第1オリフィス51L,51Rの径を減少させるほど、左右のベーンポンプPL,PRの負荷が増加して後輪WRL,WRRに伝達される駆動力が増加する。
【0045】
また、車両Vが低速でタイトな旋回を行うとき、左右の前輪WFL,WFRの旋回軌跡の平均半径よりも左右の後輪WRL,WRRの旋回軌跡の平均半径が小さくなるため、前輪WFL,WFRに接続された左右のカムリング31L,31Rと、後輪WRL,WRRに接続された左右のロータ35L,35Rとの間に相対回転が発生する。しかも、左右の後輪WRL,WRRの旋回軌跡の半径は旋回外輪において大きく、旋回内輪において小さいため、上記相対回転の大きさは左右のベーンポンプPL,PRで異なっている。このとき、左右のベーンポンプPL,PRの吐出ポート44L,44Rから吐出された作動油は左右の第1オリフィス51L,51Rを経て吸入ポート43L,43Rに還流し、また左右のベーンポンプPL,PRが吐出した作動油の差分は、第2オリフィス52を経て行き来することにより相殺されるため、両ベーンポンプPL,PRに大きな負荷が発生することが防止される。その結果、四輪駆動車両Vが低速でタイトな旋回を行う際に、各車輪の旋回軌跡の半径差により発生する旋回を妨げる方向のヨーモーメントを軽減することができる。
【0046】
ところで、例えば、左後輪WRLを除く左右の前輪WFL,WFR及び右後輪WRRが泥濘にはまったような場合、スリップする前輪WFL,WFRに連動してカムリング31L,31Rが回転すると、泥濘にはまって摩擦が減少している右後輪WRRも、カムリング31Rからベーン41、ロータ35R及びロータシャフト27Rを介して伝達される駆動力によりスリップしてしまう。しかしながら、このスリップにより左右後輪WRL,WRRの回転差が大きくなり第2オリフィス52を通る油量が多くなるため、この部分の流路抵抗が大きくなり、摩擦係数の高い路面に乗っている左後輪WRLにはカムリング31Lからベーン41、ロータ35L及びロータシャフト27Lを介して駆動力が伝達され、その駆動力により泥濘からの脱出が可能となる。すなわち、本実施形態のハイドロリックカップリング装置Hによれば、いわゆる作動制限機構(LSD)の機能を発揮させることが可能となる。このとき、第2オリフィス52の径を減少させるほど、上記作動制限機構の機能を強めることができる。
【0047】
前述した低摩擦路における発進時や急加速時のように前輪WFL,WFRの回転数が後輪WRL,WRRの回転数を上回る場合には、ロータ35L,35Rが正転方向(図4の矢印A方向)に相対回転し、吸入ポート43L,43Rから作動油が吸入されて吐出ポート44L,44Rから作動油が吐出される。その結果、高圧側の吐出ポート44L,44Rに連なるチェックバルブ47L,47Rが開弁するため、高圧側の吐出ポート44L,44Rがベーン押上げポート35b,35bに連通するとともに、ベーン押上げポート35b,35bと低圧側の吸入ポート43L,43Rとの連通がこの吸入ポート43L,43Rに連なるチェックバルブ47L,47Rにより遮断される。これにより、ベーン押上げポート35b,35bに伝達された油圧によってベーン41を半径方向外側に付勢し、その先端をカムリング31L,31Rの内周面に圧接することができる。
【0048】
一方、車両が急制動を行う場合には、ABS(アンチロックブレーキシステム)等によって車輪のロック状態を制御することにより、前輪WFL,WFRが後輪WRL,WRRよりも先にロックするようにして車両の挙動に安定が図られる。このように急制動により後輪WRL,WRRの回転数が前輪WFL,WFRの回転数を上回ると、ロータ35L,35Rが逆転方向(図4の矢印B方向)に相対回転し、吐出ポート44L,44Rから作動油が吸入されて吸入ポート43L,43Rから作動油が吐出される。その結果、高圧側の吸入ポート43L,43Rに連なるチェックバルブ47L,47Rが開弁するため、高圧側の吸入ポート43L,43Rがベーン押上げポート35b,35bに連通するとともに、ベーン押上げポート35b,35bと低圧側の吐出ポート44L,44Rとの連通がこれら吐出ポート44L,44Rに連なるチェックバルブ47L,47Rにより遮断される。これにより、ベーン押上げポート35b,35bに伝達された油圧によってベーン41を半径方向外側に付勢し、その先端をカムリング31L,31Rの内周面に圧接することができる。
【0049】
ハイドロリックカップリング装置Hを備えた四輪駆動車両Vでは、前輪WFL,WFR及び後輪WRL,WRRの相対回転数差に応じて左右のベーンポンプPL,PRが負荷を発生し、前輪WFL,WFR及び後輪WRL,WRRの回転数が大きい側から回転数が小さい側に駆動力が伝達される。従って、急制動時における制動力の制御により前輪WFL,WFRが先にロックしようとすると、後輪WRL,WRRの回転数が前輪WFL,WFRの回転数を上回って後輪WRL,WRR側から前輪WFL,WFR側に駆動力が伝達されてしまい、前輪WFL,WFRのロックが抑制されて後輪WRL,WRRのロックが促進されるため、最悪の場合に前輪WFL,WFR及び後輪WRL,WRRが同時にロックして車両挙動が不安定になる可能性がある。
【0050】
これを回避すべく、本実施形態では前輪WFL,WFR及び後輪WRL,WRRの相対回転の方向によりベーンポンプPL,PRが発生する負荷の大きさに差を持たせている。すなわち、前述した低摩擦路における発進時や急加速時のように前輪WFL,WFRの回転数が後輪WRL,WRRの回転数を上回る場合には、ロータ35L,35Rが図4の矢印A方向に相対回転し、作動油が一対の第1オリフィス51L,51Rを図8に矢印で示す方向に流れて大きな圧力損失を発生する。その結果、ベーンポンプPL,PRは大きな負荷を発生して前輪WFL,WFRから後輪WRL,WRRに伝達される駆動力が増加する(図11の実線(A)参照)。
【0051】
一方、前述した急制動時のように後輪WRL,WRRの回転数が前輪WFL,WFRの回転数を上回る場合には、ロータ35L,35Rが図4の矢印B方向に相対回転し、作動油が一対の第1オリフィス51L,51Rを図8に矢印で示す方向とは逆方向に流れて小さな圧力損失を発生する。その結果、ベーンポンプPL,PRは小さな負荷を発生して後輪WRL,WRRから前輪WFL,WFRに伝達される駆動力が減少する(図11の破線(B)参照)。このため、急制動時に前輪WFL,WFRを後輪WRL,WRRに先立ってロックさせ、車両挙動が不安定になるのを未然に防止することができる。
【0052】
本発明に係る流体伝動装置が適用されたハイドロリックカップリング装置Hの作用についての説明は以上であるが、上記のように、本発明に係る流体伝動装(ハイドロリックカップリング装置H)では、ケーシングCを構成するカバー部材19と左第1サイドプレート30Lとの結合が、カバー部材19の端部(上記例では左端部)に設けられたテーパ状の裾部19bが、左第1サイドプレート30Lのフランジ部30fと、このフランジ部30fに取り付けられたリングギヤ12との間に挟持されることによりなされ、これらカバー部材19と左第1サイドプレート30Lとの間のオイルシールは、裾部19bと、左第1サイドプレート30Lの外周面(フランジ部30fよりも右側の部分)と、フランジ部30fの右面とにより囲まれてなる断面三角形の円環状空間19c内に保持されたオイルシール部材(上記例ではOリング23)によりなされる。このような構成では、左サイドプレート30Lの外周面にOリング23を取り付けるための溝を設ける必要がなく、製造工程を簡単化してコストの削減を図ることができる。また、左第1サイドプレート30Lのフランジ部30fにおけるリングギヤ12が取り付けられる面(右面)はシール面とはならず、仕上げ精度は比較的粗くてよいので、この面でも製造工程を簡単化することができる。
【0053】
また、上記流体伝動装置(ハイドロリックカップリング装置H)においては、リングギヤ12が左第1サイドプレート30Lのフランジ部30fに直接取り付けられることとなるので、その芯出し(中心軸合わせ)が大変容易となり、生産効率を向上させることができる。
【0054】
次に、本発明に係る流体伝動装置のもう1つの実施形態(第2実施形態とする)を示す。図14は第2実施形態に係る流体伝動装置の一部を示しているが、上述の実施形態(第1実施形態とする)において説明した流体伝動装置(ハイドロリックカップリング装置H)と同じ構成部品については同じ符号を付しており、その説明は省略することにする。この第2実施形態に係る流体伝動装置では、第1実施形態において説明したハイドロリックカップリング装置Hのように、カバー部材19の左端部において半径方向外方にテーパ状に広がる裾部19bではなく、半径方向外方であって、回転軸に対してほぼ垂直になる方向に延びるように裾部19dが形成されており、この裾部19dが左第1サイドプレート30Lのフランジ部30fとリングギヤ12とにより挟持されることによりカバー部材19と左第1サイドプレート30Lとが結合される。そして、裾部19dにおけるフランジ部30fとの接合面に形成された回転軸(ロータ35L,35Rの軸)を中心とする円環状の窪み19eとフランジ部30fとの間に形成された円環状空間内にOリング23が保持される。このような構成においても、上述の第1実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0055】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態において示したものに限定されない。例えば、上述の実施形態では、左第1サイドプレート30Lのフランジ部30fに取り付けられるリング状部材はケーシングCを回転軸(左右の車軸13L,13R)まわりに回転させる駆動力を伝達する駆動ギヤ(上述の例ではドライブピニオン11)と噛合するリングギヤ12であったが、このリング状部材は必ずしも動力伝達のためのギヤである必要はなく、ケーシングCを構成するカバー部材19とサイドプレート(左第1サイドプレート30L)とを結合させるために別途設けられる部材であっても構わない。また、ケーシングC内に備えられる動力伝達機構は、上述の例のようなハイドロリックカップリング装置に限られない。また、カバー部材の端部より半径方向外方に延びて形成された裾部の形状は上記実施形態に示した形状に限定されるものではなく、フランジ部とリング状部材とにより挟持されることによりカバー部材とプレート状部材とが結合され、かつ、裾部とプレート状部材との間に形成された円環状空間内にオイルシール部材が保持され得る形状であれば、その他の形状であってもよい。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る流体伝動装置では、ケーシングを構成するカバー部材とプレート状部材との結合が、カバー部材の端部に設けられて半径方向外方に延びた裾部が、プレート状部材に形成されたフランジ部と、このフランジ部に取り付けられるリング状部材との間に挟持されることによりなされ、これらカバー部材とプレート状部材との間のオイルシーリングは、上記裾部とプレート状部材との間に形成された円環状空間内に保持されたオイルシール部材によりなされる。このような構成では、プレート状部材の外周面にオイルシール部材を取り付けるための溝を設ける必要がないので、製造工程が簡単化され、コストの削減を図ることができる。また、上記フランジ部におけるリング状部材との接合面はシール面とはならないため、仕上げ精度は比較的粗くて済むため、この面でも製造工程を簡単化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る流体伝動装置が適用されたハイドロリックカップリング装置の一例を示す断面図である。
【図2】上記ハイドロリックカップリング装置を備えて構成される四輪駆動車両の動力伝達経路を示すスケルトン図である。
【図3】上記ハイドロリックカップリング装置におけるカバー部材と左第1サイドプレートとの結合部近傍の拡大図である。
【図4】図1における矢視IV−IVより見た上記ハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図5】図1における矢視V−Vより見た上記ハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図6】図1における矢視VI−VIより見た上記ハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図7】図5における矢視VII−VIIより見た上記ハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図8】図5における矢視VIII−VIIIより見た上記ハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図9】図1における矢視IX−IXより見た上記ハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図10】図1における矢視X−Xより見た上記ハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図11】上記ハイドロリックカップリング装置におけるオリフィスプレートの作用を説明するグラフである。
【図12】上記ハイドロリックカップリング装置の構成を示す油圧回路図である。
【図13】図4における矢視XIII−XIIIより見た上記ハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る流体伝動装置が適用されたハイドロリックカップリング装置の一部を示す図である。
【符号の説明】
H ハイドロリックカップリング装置
C ケーシング
PL,PR 左右ベーンポンプ
12 リングギヤ
19 カバー部材
19b 裾部
22 ボルト
23 Oリング
30L,30R 左右第1サイドプレート
30f 左第1サイドプレートのフランジ部
31L,31R 左右カムリング
35L,35R 左右ロータ
【発明の属する技術分野】
本発明は、四輪駆動車両の動力伝達装置等に用いられる、作動流体を介して動力伝達を行う流体伝動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、回転自在に支持されたケーシングの内部に動力伝達機構を備え、外部からの動力により回転駆動されたときにケーシング内に封入した作動流体を介してその動力伝達機構が作動するように構成された流体伝動装置は従来知られている。このような流体伝動装置の例としては、トランスミッション及びプロペラシャフトを介して伝達されたエンジンの動力を左右の後輪に分配する四輪駆動車両の動力伝達装置が挙げられる。
【0003】
このような四輪駆動車両の動力伝達装置として用いられる流体伝動装置は、プロペラシャフトを介してエンジンにより駆動され、内部に作動流体が満たされたケーシングと、このケーシング内に設置された左右一対のベーンポンプとを有して構成される。これらベーンポンプの各ロータには左右の車軸(例えば左右の後輪の車軸)が連結され、ケーシングの外周部には、プロペラシャフトの端部に取り付けられたドライブピニオンと噛合するリングギヤが結合される。左右のベーンポンプはそれぞれ吸入ポートと吐出ポートとが油路により繋げられるとともに、両ポンプの吸入ポート同士、及び吐出ポート同士も油路により繋げられる。プロペラシャフト及びリングギヤを介してエンジンによりケーシングが回転駆動されると、左右のベーンポンプは車両の走行状態に応じてポンプ作動を行い、左右の軸部材、すなわち車輪を駆動する。
【0004】
このような流体伝動装置のケーシング構造は、回転軸(上記例では車軸)を中心とする円筒状に形成されたカバー部材と、このカバー部材の端部の開口部を閉じるように設けられたサイドプレートとからなる。ここで、カバー部材とサイドプレートとは、それぞれの外周部に設けられたフランジ部同士を重ねあわせた状態で、リングギヤとともに、複数のボルトにより締め付けられることにより結合される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特許第2670785号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようにカバー部材、サイドプレート及びリングギヤがボルトにより共締めされる構成では、下のような問題点があった。先ず、カバー部材とサイドプレートとはシール性保持のため、これら両部材におけるフランジ部同士の接合面は高精度に仕上げた状態で接合する必要があり、製造コストが高くなっていた。また、両部材間のシール性を向上させるため、両部材間にはOリングが設置されるが、このようなOリングを設置するためには、少なくとも一方の部材にOリング設置用の溝を設ける必要があり、この面でも製造コストがかかっていた。更に、プロペラシャフトに取り付けられたドライブピニオンと噛合するリングギヤは、ケーシングの回転軸(左右のベーンポンプの回転軸)に対して正確に芯出しをする必要があるが、上記のようにリングギヤが上記両部材とともに共締めされる構成では、その正確な芯出しが困難であった。特に、リングギヤはプロペラシャフトからの大きな動力を伝達する必要があるため、これを締結するためのボルトは径が大きなものとならざるを得ず、その芯出しはより一層難しいものであった。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、製造工程を簡単化してコストの削減を図ることができ、更にはケーシングの外周部に取り付けられるリングギヤの芯出しを容易にして生産効率を向上させることが可能な構成の流体伝動装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するため、本発明に係る流体伝動装置は、作動流体を満たしたケーシング内に動力伝達機構を備え、ケーシングを回転軸まわりに回転させることにより作動流体を介して動力伝達機構を作動させる流体伝動装置において、ケーシングは、回転軸を中心とする円筒状に形成されたカバー部材と、カバー部材の端部の開口部を閉じるように設けられたプレート状部材(例えば、実施形態における左第1サイドプレート30L)とを有してなり、プレート状部材の外周部より半径方向外方に突出して延びたフランジ部にはリング状部材がカバー部材側から取り付けられており、カバー部材の上記端部より半径方向外方に延びて形成された裾部がフランジ部とリング状部材とにより挟持されることによりカバー部材とプレート状部材とが結合されており、裾部とプレート状部材との間に形成された円環状空間内にオイルシール部材(例えば、実施形態におけるOリング23)が保持される。このような構成では、プレート状部材の外周面にオイルシール部材を取り付けるための溝を設ける必要がないので、製造工程が簡単化され、コストの削減を図ることができる。また、上記フランジ部におけるリング状部材との接合面はシール面とはならないため、仕上げ精度は比較的粗くて済むため、この面でも製造工程を簡単化することができる。
【0009】
ここで、上記裾部はカバー部材の端部よりフランジ部側に向けてテーパ状に拡がるように形成されており、裾部と、プレート状部材の外周面と、プレート状部材のフランジ部とにより囲まれてなる断面三角形の円環状空間内にオイルシール部材が保持される。或いは、上記裾部はカバー部材の端部より上記回転軸に対してほぼ垂直になる方向に延びて形成されており、裾部におけるフランジ部との接合面に形成された上記回転軸を中心とする円環状の窪みとフランジ部との間に形成された円環状空間内にオイルシール部材が保持される。
【0010】
また、上記両流体伝動装置においては、上記リング状部材が、ケーシングを回転軸まわりに回転させる駆動力を伝達する駆動ギヤと噛合するリングギヤからなるのであれば、このリングギヤはプレート状部材のフランジ部に直接取り付けられることとなるので、その芯出しが大変容易となり、生産効率を向上させることができる。また、本発明に係る流体伝動装置では、上記回転軸が同軸状に配設された2本の軸部材からなり、動力伝達機構が、2本の軸部材それぞれに連結された2つのベーンポンプを有して構成されるハイドロリックカップリング装置からなるように構成することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施について説明する。本発明の実施形態として、本発明に係る流体伝動装置が適用されたハイドロリックカップリング装置Hを備えて構成される四輪駆動車両の動力伝達装置を図1〜図10に示している。
【0012】
図2に、この動力伝達装置のスケルトン図を示しており、先ず、この四輪駆動車両の動力伝達装置の構成を説明する。四輪駆動車両Vは車体前部に横置きに配置したエンジンEと、このエンジンEの右側面に結合したトランスミッションMとを備える。トランスミッションMの駆動出力を主駆動輪としての左右の前輪WFL,WFRに伝達する第1動力伝達系D1は、トランスミッションMの出力軸1に設けた第1スパーギヤ2と、第1スパーギヤ2に噛合する第2スパーギヤ3と、第2スパーギヤ3により駆動されるベベルギヤ式のフロントディファレンシャル4と、フロントディファレンシャル4から左右に延出して前輪WFL,WFRに接続される左右の車軸5L,5Rとから構成される。
【0013】
第1動力伝達系D1の駆動力を副駆動輪としての後輪WRL,WRRに伝達する第2動力伝達系D2は、フロントディファレンシャル4のデフボックスに設けられて第2スパーギヤ3と一体回転する第3スパーギヤ6と、第3スパーギヤ6に噛合する第4スパーギヤ7と、第4スパーギヤ7と一体に回転する第1ベベルギヤ8と、第1ベベルギヤ8に噛合する第2ベベルギヤ9と、前端に第2ベベルギヤ9を備えて車体後方に延びるプロペラシャフト10と、プロペラシャフト10の後端に設けたドライブピニオン11と、ドライブピニオン11に噛合するリングギヤ12と、リングギヤ12により駆動されるハイドロリックカップリング装置Hと、ハイドロリックカップリング装置Hから左右に延出して後輪WRL,WRRに接続される左右の車軸13L,13Rとを備える。
【0014】
次に、図1に基づいてハイドロリックカップリング装置Hの構造を説明する。ハイドロリックカップリング装置Hは左右対称に配置された左ベーンポンプPL及び右ベーンポンプPRを備える。左右のベーンポンプPL,PRは、左第1サイドプレート30L、左カムリング31L、第2サイドプレート32、右カムリング31R及び右第1サイドプレート30Rを備えており、6本のボルト21により図示のように一体に結合される。このとき、左第1サイドプレート30L、左カムリング31L、第2サイドプレート32、右カムリング31R及び右第1サイドプレート30Rはノックピン100(図9、図10参照)を用いて回転方向に位置決めされている。また、内部に左カムリング31L、第2サイドプレート32、右カムリング31R及び右第1サイドプレート30Rを収納する円筒状のカバー部材19が左第1サイドプレート30Lに取り付けられている。
【0015】
カバー部材19はその中央部が円筒状に形成されており、右端部には内周面が円筒状になるように折り曲げ形成された右方突出部19aが、また左端部には半径方向外方にテーパ状に拡がる裾部19bが設けられている。右方突出部19aの内方には、右第1サイドプレート30Rの右端部より右方に延出して設けられた断面円形状の右方延出部30gが嵌入している。カバー部材19の右方突出部19aと右第1サイドプレート30Rの右方延出部30gとの結合は、この右方延出部30gの外周面上に着脱自在に取り付けられた止め輪Sによりなされ、カバー部材19と右方延出部30gとの接合面は、右方延出部30gの外周部に設けられたOリング24によりシールされる。
【0016】
カバー部材19の左端部には、カバー部材19の左端開口部を閉じるように、左第1サイドプレート30Lの外周部より半径方向外方に突出して延びて設けられたフランジ部30fが接合される。図1及び図3に示すように、このフランジ部30fの右端面には、リングギヤ12が複数本のボルト22により取り付けられるが、このフランジ部30fにリングギヤ12を取り付けるとき、カバー部材19の上記裾部19bが、フランジ部30fとリングギヤ12との間に挟み込まれるようにし、これによりカバー部材19と左第1サイドプレート30Lとが接合されるようにする。なお、この挟み込みの際には、裾部19bの内周面側にOリング23を設置しておき、ボルト22の締め付けにより、このOリング23が裾部19aと、左第1サイドプレート30Lの外周面と、フランジ部30fの右面とにより囲まれてなる断面三角形の円環状(カバー部材19の軸方向から見たときに円環状となる)空間19c内に固定保持されるようにする。これによりカバー部材19と左第1サイドプレート30Lとの接合面はOリング23によりシールされた状態となる。ここで、図1に示すように、左第1サイドプレート30Lの外周面のうちフランジ部30fよりも右側の部分は、その少なくとも一部がカバー部材19における円筒状の部分(裾部19bでない部分)にかかるようになっているので、カバー部材19の内部に収納される他の部材(左カムリング31Lや第2サイドプレート32など)と同様、左第1サイドプレート30Lの芯出し(中心軸合わせ)を容易に行うことができる。
【0017】
このように、カバー部材19の左右両端の開口部はそれぞれ右第1サイドプレート30Rと左第1サイドプレート30Lとにより閉じられており、これらカバー部材19、左第1サイドプレート30L及び右第1サイドプレート30RによりケーシングCが構成される。そして、このケーシングCの内部空間内には作動流体(作動油:オイル)が満たされるとともに、動力伝達機構である左右2つのベーンポンプPL,PRが収納された状態となっている(但し、左右の第1サイドプレート30L,30Rは左右2つのベーンポンプPL,PRの一部を構成する部材であるので、動力伝達機構の一部でもある)。
【0018】
第2サイドプレート32は、薄い鋼板で形成された中央のセンタープレート37の両面に左右一対の焼結金属製のバルブプレート38L,38Rを重ね合わせて構成される。この構成から分かるように、左ベーンポンプPLは左カムリング31Lの左右側面に左右サイドプレート(左第1サイドプレート30L及び左バルブプレート38L)を接合して構成され、右ベーンポンプPRは右カムリング31Rの左右側面に左右サイドプレート(右バルブプレート38R及び右第1サイドプレート30R)を接合して構成される。
【0019】
左第1サイドプレート30Lの左側面に突出する環状の支持部30aの外周面がボールベアリング25を介してハウジング20により回転自在に支持され、この支持部30aの内周面がボールベアリング26を介して後述する左ロータシャフト27Lの外周面を回転自在に支持する。また、右第1サイドプレート30R(右方延出部30g)の右側面に突出する環状の支持部30aの外周面がボールベアリング25を介してハウジング20により回転自在に支持され、この支持部30aの内周面がボールベアリング26を介して後述する右ロータシャフト27Rの外周面を回転自在に支持する。
【0020】
左後輪WRLの車軸13Lにスプライン28により結合されて左第1サイドプレート30Lの軸孔30bを貫通する左ロータシャフト27Lの外周は、この軸孔30b内に設置されたOリング29によりシールされ、右後輪WRRの車軸13Rにスプライン28により結合されて右第1サイドプレート30Rの軸孔30bを貫通する右ロータシャフト27Rの外周は、この軸孔30bに設けられたOリング29によりシールされる。従って、前述の4個のOリング23,24,29,29によって、左右のベーンポンプPL,PRの外部への作動油の漏出が防止されるとともに、左右のベーンポンプPL,PRの内部へのエアーの侵入が防止される。
【0021】
左ロータシャフト27Lにスプライン34により結合された左ロータ35Lが、左第1サイドプレート30L、左カムリング31L及び第2サイドプレート32に囲まれた空間に回転自在に収納され、また右ロータシャフト27Rにスプライン34により結合された右ロータ35Rが、右第1サイドプレート30R、右カムリング31R及び第2サイドプレート32に囲まれた空間に回転自在に収納される。第2サイドプレート32は左ベーンポンプPL及び右ベーンポンプPRに共通する構成要素であり、その半径方向内周側においてニードルベアリング36,36を介して左ロータシャフト27及び右ロータシャフト27Rの対向部の外周を相対回転自在に支持する。
【0022】
次に、図1及び図4〜図8を参照しながら右ベーンポンプPRの構造を詳細に説明する。なお、左ベーンポンプPLの構造は右ベーンポンプPRの構造と左右鏡面対称であるため、その重複する説明は省略する。なお、右ベーンポンプPR及び左ベーンポンプPLの相対応する構成要素には、同一の参照符号にそれぞれ添字「R」及び「L」を付しており、同一参照符号の要素が左右対称位置に設けられていることを意味する。
【0023】
右カムリング31Rの内周面は概略三角形状のカム面を有するように形成されており、その内部に収納された円形の右ロータ35Rとの間に、円周方向に120°ずつ離間した3個の作動室40Rが形成されている。右ロータ35Rには外径方向に放射状に延びる8個のベーン溝35aが形成されており、これらベーン溝35a内にそれぞれ板状のベーン41が径方向に摺動自在に支持されており、それらベーン41の半径方向外端は右カムリング31Rの内周面に摺接する。右ロータ35Rの両側面には、各ベーン41の半径方向外端を右カムリング31Rの内周面に密着させるべく、環状のベーン押上げポート35b,35bが形成される。これらベーン押上げポート35b,35bは右ロータ35Rに備えられた8個のベーン溝35aの底部にそれぞれ連通する。また、各ベーン41の半径方向外端を右カムリング31Rの内周面に密着させるべく、ベーン溝35aの底部とベーン41の半径方向内端との間にコイルスプリング42が縮設される。
【0024】
図4〜図8に明瞭に示すように、第2サイドプレート32の右バルブプレート38Rの外面(右カムリング31R及び右ロータ35Rに対向する面)には、右ベーンポンプPRの有する3個の作動室40Rの内周方向両端にそれぞれ臨む3個の吸入ポート43R及び3個の吐出ポート44Rが凹設されている。吸入ポート43R及び吐出ポート44Rは、右バルブプレート38Rを貫通する連通孔h1と、右バルブプレート38Rの内面(センタープレート37に対向する面)に凹設した連通溝g1と、右バルブプレート38Rを貫通する連通孔h2とを介してベーン押上げポート35bにそれぞれ連通する。図7に示すように、連通孔h1には段状の弁座45が形成されており、右バルブプレート38Rの内面側から連通孔h1に装着したチェックボール46と上記弁座45とによってチェックバルブ47Rが構成される。このチェックバルブ47Rは、吸入ポート43R及び吐出ポート44R側からベーン押上げポート35Rへの作動油の流通を許容し、その逆方向の作動油の流通を阻止する機能を有している。チェックボール46の連通孔h1からの脱落は、センタープレート37によって阻止される。
【0025】
従って、車両の前進走行時に吐出ポート44Rが高圧になり、吸入ポート43Rが低圧になると、高圧側の吐出ポート44Rの吐出圧がベーン押上げポート35bに伝達される。また、車両の後進走行時に吸入ポート43Rが高圧になり、吐出ポート44Rが低圧になると、高圧側の吸入ポート43Rの吐出圧がベーン押上げポート35bに伝達される。
【0026】
右バルブプレート38Rの外面に凹設した3個の吸入ポート43R及び3個の吐出ポート44Rは、右バルブプレート38Rを貫通する連通孔h3と、右バルブプレート38Rの内面に凹設した連通溝g2と、右バルブプレート38Rを貫通する連通孔h4とを介して右ロータシャフト27Rの外周部に連通する。連通孔h4には段状の弁座48が形成されており、右バルブプレート38Rの内面側から連通孔h4に装着したチェックボール49と上記弁座48とによってチェックバルブ50Rが構成される。このチェックバルブ50Rは、吸入ポート43R及び吐出ポート44R側から右ロータシャフト27Rの外周部への作動油の流通を阻止し、その逆方向の作動油の流通を許容する機能を有する。
【0027】
右バルブプレート38Rの内面にはL字状をなす6個の連通溝g3が凹設されており、これら連通溝g3の一端は上記連通孔h3を介して吸入ポート43R及び吐出ポート44Rに連通する。また、右バルブプレート38Rの外面には3個の連通溝g4が凹設されており、各連通溝g4の両端は右バルブプレート38Rを貫通する連通孔h5を介して上記L字状の連通溝g3の他端に連通する。
【0028】
図8に明瞭に示すように、連通孔h5にはそれぞれ第1オリフィス51Rが設けられる。第1オリフィス51Rは図示のようにテーパ形状に形成されて方向性を有しており、車両の前進走行時に作動油が図8に矢印で示す方向に流れるときに大きな圧力損失が発生し、車両の後進走行時に作動油が逆方向に流れるときに小さな圧力損失が発生するようになっている。また、図5及び図7に示すように、左右のバルブプレート38L,38Rの吸入ポート43L,43R同士及び吐出ポート44L,44R同士を相互に連通するように、センタープレート37を貫通して第2オリフィス52がそれぞれ連通孔h3に対向する位置に形成されている。
【0029】
右第1サイドプレート30Rの左端面(すなわち、右カムリング31Rとの接合面)は、図9に示すように形成されている。各種ポート類及び油路類は全て第2サイドプレート32に設けているため、右第1サイドプレート30Rにはポート及び油路類を設ける必要がない。但し、後述するように、左右ベーンポンプPL,PRを駆動するときにベーン41に軸方向スラスト力が作用しないようにするための各3個の吸入側バランス用凹部143R及び吐出側バランス用凹部144Rが図示のように形成されている。これら吸入側バランス用凹部143Rは右バルブプレート38Rに形成された各3個の吸入ポート43Rと右カムリング31Rを挟んで対向する位置、すなわち、左右対称となる位置に形成されている。同様に、吐出側バランス用凹部144Rは右バルブプレート38Rに形成された各3個の吐出ポート44Rと右カムリング31Rを挟んで対向する位置、すなわち、左右対称となる位置に形成されている。この右第1サイドプレート30Rはボルト21により右カムリング31Rに結合されており、このときノックピン100により互いの結合位置決めが行われる。
【0030】
左第1サイドプレート30Lの右端面(すなわち、左カムリング31Lとの接合面)は、図10に示すように形成されている。この左第1サイドプレート30Lにも基本的にはポート及び油路類を設ける必要がないが、右第1サイドプレート30Rと同様に、ベーン41に軸方向スラスト力が作用しないようにするための各3個の吸入側バランス用凹部143L及び吐出側バランス凹部144Lが形成されている。これら吸入側及び吐出側バランス用凹部143L,144Lは左バルブプレート38Lに形成された各3個の吸入及び吐出ポート43L,44Lと左カムリング31Lを挟んで対向する位置、すなわち、左右対称となる位置に形成されている。この左第1サイドプレート30Lはボルト21により左カムリング31Lに結合されており、このときノックピン100により互いの結合位置決めが行われる。更に、そのフランジ部30fにリングギヤ12がボルト22により結合されており、このときノックピン101により互いの位置決めが行われる。
【0031】
図1に示すように、左右のロータシャフト27L,27Rの内部には軸方向に延びて両端が開口する貫通孔27a,27aが形成されており、そこに左右一対のリザーバ55L,55Rが設けられる。各リザーバ55L,55Rは、貫通孔27a,27aにOリング56,56を介して摺動自在に嵌合するピストン57,57と、貫通孔27a,27aの外端を閉塞するプラグ58,58と、プラグ58,58及びピストン57,57間に配置されたコイルばね59,59とを備える。プラグ58,58の近傍において、貫通孔27a,27aの内周面に2条のリリーフ溝27b,27bが軸方向に形成されており、これらのリリーフ溝27b,27bは連通孔27c,27cを介して大気に連通する。エアーの閉じ込みによりピストン57,57の移動を妨げないように、プラグ58,58の内部を通孔58a,58aが軸方向に貫通する。
【0032】
このため、ベーンポンプPL,PR内部の作動油が温度変化に応じて膨張・収縮したとき、リザーバ55L,55Rの容積が変化して作動油の容積変化を吸収することにより、作動油へのエアーの混入を防止することができる。すなわち、温度上昇により作動油が膨張すると、ピストン57,57がコイルばね59,59を圧縮して相互に離反する方向に移動してリザーバ55L,55Rの容積が増加するため、上記作動油の膨張を吸収することができる。逆に、温度低下により作動油が収縮すると、ピストン57,57がコイルばね59,59の弾発力で相互に接近する方向に移動してリザーバ55L,55Rの容積が減少するため、上記作動油の収縮を吸収するとともに、エアーのポンプ内部への吸入を防止することができる。
【0033】
何らかの理由で作動油の温度が異常に上昇した場合、ピストン57,57はコイルばね59,59を圧縮しながら相互に離反する方向に大きく移動し、その先端が左右のロータシャフト27L,27Rの貫通孔27a,27aのリリーフ溝27b,27bに連通する。その結果、ベーンポンプPL,PRの内部空間がロータシャフト27L,27Rの貫通孔27a,27a、リリーフ溝27b,27b及び連通孔27c,27cを介して大気に連通し、膨張した作動油が連通孔27c,27cから外部に排出されることでハイドロリックカップリング装置Hの損傷が未然に防止される。
【0034】
ベーンポンプPL,PRの運転に伴って吸入ポート43L,43R(或いは吐出ポート44L,44R)が負圧になったとき、その負圧でチェックバルブ50L,50Rが開弁して吸入ポート43L,43R(或いは吐出ポート44L,44R)をリザーバ55L,55Rに連通させるので、過剰な負圧によりキャビテーションが発生するのを防止することができる。このとき、コイルばね59,59で付勢されたピストン57,57により作動油が加圧されるため、上記キャビテーションを一層効果的に防止することができる。しかも、ロータシャフト27L,27Rの貫通孔27a,27aを利用してリザーバ55L,55Rを配置したので、ベーンポンプPL,PRの吐出圧の影響を回避することが可能になるだけでなく、リザーバ55L,55Rを設けたことによるベーンポンプPL,PRの大型化を回避することができる。また、リザーバ55L,55RがベーンポンプPL,PRの回転中心部に位置することで遠心油圧の影響を受けにくくなり、更にピストン57,57の断面積を小さくすれば、コイルばね59,59のばね荷重を小さく抑えることができる。
【0035】
以上、右ベーンポンプPRの構造を中心に説明したが、左ベーンポンプPLの構造は上記右ベーンポンプPRのそれと鏡面対称であって、両者の構造は実質的に同じであるのでその説明は省略する。
【0036】
上記ハイドロリックカップリング装置Hの油圧回路を図12に示している。同図から明らかなように、左ベーンポンプPLの吸入ポート43L及び吐出ポート44Lは第2サイドプレート32の左バルブプレート38Lに設けた合計三対の第1オリフィス51Lにより相互に連通するとともに、右ベーンポンプPRの吸入ポート43R及び吐出ポート44Rは第2サイドプレート32の右バルブプレート38Rに設けた合計三対の第1オリフィス51Rにより相互に連通する。また、左右のベーンポンプPL,PRの吸入ポート43L,43Rは第2サイドプレート32のセンタープレート37を貫通する第2オリフィス52により相互に連通するとともに、左右のベーンポンプPL,PRポンプの吐出ポート44L,44Rは第2サイドプレート32のセンタープレート37を貫通する第2オリフィス52により相互に連通する。センタープレート37は薄板であるために第2オリフィス52を形成することが容易であり、また第2オリフィス52の孔径が異なるセンタープレート37を組み付けることによりLSD(Limited SlippageDifferential)効果を変えることができる。
【0037】
左ベーンポンプPLの吸入ポート43L及び吐出ポート44Lの何れか高圧側は第2サイドプレート32の左バルブプレート38Lに設けたチェックバルブ47Lを介してベーン押上げポート35bに連通し、また右ベーンポンプPRの吸入ポート43R及び吐出ポート44Rの何れか高圧側は右バルブプレート38Rに設けたチェックバルブ47Rを介してベーン押上げポート35bに連通する。左ベーンポンプPLの吸入ポート43L及び吐出ポート44Lの何れか低圧側は第2サイドプレート32の左バルブプレート38Lに設けたチェックバルブ50Lを介してリザーバ55L,55Rに連通し、また右ベーンポンプPRの吸入ポート43R及び吐出ポート44Rの何れか低圧側は第2サイドプレート32の右バルブプレート38Rに設けたチェックバルブ50Rを介してリザーバ55L,55Rに連通する。
【0038】
更に、ベーン押上げポート35b,35bとリザーバ55L,55Rとの間にリリーフバルブ61L,61R及びチョーク62L,62Rが設けられる。上記リリーフバルブ61L,61Rは仮想的なもので、左右の第1サイドプレート30L,30Rが油圧で撓むことにより、或いはボルト21が伸びることにより左右のロータ35L,35Rとの間の発生する間隙によって構成される。また、上記チョーク62L,62Rも仮想的なもので、左右の第1サイドプレート30L,30R或いは第2サイドプレート32と左右のロータ35L,35Rとの摺動部の間隙によって構成される。
【0039】
次に、前述の構成を備えたハイドロリックカップリング装置Hの作用について説明する。車両Vが定速走行する状態では、エンジンEの駆動力はトランスミッションMの出力軸1から第1スパーギヤ2、第2スパーギヤ3、フロントディファレンシャル4及び左右の車軸5L,5Rを介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。このとき、フロントディファレンシャル4の第3スパーギヤ6の回転は、第4スパーギヤ7、第1ベベルギヤ8、第2ベベルギヤ9、プロペラシャフト10、ドライブピニオン11及びリングギヤ12を介してハイドロリックカップリング装置HのベーンポンプPL,PR(すなわち、左右のカムリング31L,31R)を回転させる。一方、車両Vの走行に伴って路面から受ける摩擦力で駆動される後輪WRL,WRRの回転は、左右の車軸13L,13Rからロータシャフト27L,27Rを介して左ベーンポンプPLのロータ35L及び右ベーンポンプPRのロータ35Rに伝達される。前輪WFL,WFRにスリップが発生しておらず、従って前輪WFL,WFR及び後輪WRL,WRRの回転数が等しいときには、左右のカムリング31L,31Rの回転数と左右のロータ35L,35Rの回転数とが一致するように構成されており、両者に相対回転差が発生しない。その結果、左右のベーンポンプPL,PRポンプが作動油を吐出しないためにハイドロリックカップリング装置Hは駆動力の伝達を行わず、車両Vは前輪駆動状態になる。
【0040】
次に、低摩擦路における発進時や急加速時にエンジンEの駆動力が直接作用する前輪WFL,WFRがスリップした場合を考える。このときには前輪WFL,WFRの回転が後輪WRL,WRRの回転より高くなる。このため、前輪WFL,WFRの回転に連動する左右のベーンポンプPL,PRポンプのカムリング31R,31Lと、後輪WRL,WRRの回転に連動する左右のベーンポンプPL,PRのロータ35L,35Rとの間に所定方向の相対回転(これを正転方向の相対回転と称する)が発生する。この正転方向の相対回転は、例えば右ベーンポンプPRを例にして説明すると、図4において右カムリング31Rを固定した状態で右ロータ35Rが時計回り(矢印A方向)に回転する回転である。
【0041】
このような正転方向の相対回転が発生すると、各ベーン41は半径方向外端が右カムリング31Rの内周面に摺接しながら右ロータ35Rとともに回転される。上述したように、内周面には内周方向に120°ずつ離間した三つの作動室40Rが形成されており、その左右にテーパ部40a,40cが設けられ、中間部40bが円筒状に形成されている。右ロータ35Rとともに各ベーン41が正転方向に相対回転されると、その半径方向外端は左テーパ部40aに沿って摺接移動し、更に中間部40bに摺接しながら移動した後、右テーパ部40cに沿って摺接移動する。このため、上記のようにベーン41が摺接回転移動されると、隣り合うベーン41の間に囲まれた作動室40の内部空間(これをポンプ空間と称する)の容積が変動する。ここで、左テーパ部40aの位置に対応して吸入ポート43Rが形成されるとともに右テーパ部40cの位置に対応して吐出ポート44Rが形成されており、上記のようにポンプ空間容積の変化に対応して、吸入ポート43Rからポンプ空間内に作動油が吸入され、吐出ポート44Rから吐出される。
【0042】
ところで、このようにベーン41が右ロータ35Rとともに右カムリング31R及び左右のサイドプレート(右バルブプレート38R及び右第1サイドプレート30R)に対して相対回転移動されるときのベーン41の動きを、図4のXII−XIIに沿った断面図として図13に示している。この相対回転によりベーン41が矢印A方向に移動し、吸入ポート43Rから作動油を作動室40R内に吸入し、これがベーン41の動きに応じて圧縮されて吐出ポート44Rに吐出される。このときベーン41の半径方向外端部は右カムリング31Rの内周面(カム面)と常に摺接して移動し、ベーン41の左右側端面は左右のサイドプレート(右バルブプレート38R及び右第1サイドプレート30R)と摺接移動しつつも、吐出ポート43R及び吸入ポート44Rの位置において左右端面が開放される。このため、ベーン41の左右側端面の右バルブプレート38Rに対向する側端面には吐出ポート43R及び吸入ポート44Rの内部油圧が作用し、ベーン41が受け軸方向に作用するスラスト力(図13における矢印F1で示す力)を受ける。
【0043】
ところが、前述のように、右第1サイドプレート30Rには吐出ポート43R及び吸入ポート44Rと右カムリング31Rを挟んで対向する吸入側及び吐出側バランス用凹部143R及び144Rが形成されており、これら凹部143R,144Rにも吐出ポート43R及び吸入ポート44Rの内部油圧が作用するため、この内部油圧がベーン41の反対側側端面に逆方向スラスト力(図13における矢印F2で示す力)として作用する。すなわち、ベーン41は左右から同一の大きさで互いに対向するスラスト力を受けることになり、左右のスラスト力が相殺されてベーン41にはスラスト力が作用しなくなる。この結果、ベーン41の側端面とこれが摺接する左右のサイドプレート(右バルブプレート38R及び右第1サイドプレート30R)との接触圧が過大となる虞はなく、この部分の磨耗、かじり、発熱等の問題が生じることがない。
【0044】
以上の説明から分かるように、左右のベーンポンプPL,PRにおいてカムリング31L,31Rとロータ35L,35Rとの間に正転方向の相対回転が生じると、左右のベーンポンプPL,PRは吐出ポート44L,44Rから吐出した作動油を吸入ポート43L,43Rより吸入する。吐出ポート44L,44Rから吐出された作動油は左右の第1オリフィス51R,51Lを通過して吸入ポート43L,43Rに還流するが、その際の流通抵抗により左右のベーンポンプPL,PRに負荷が発生し、この負荷が駆動力として左右の後輪WRL,WRRに伝達される。そして、前輪WFL,WFRのスリップ時には四輪駆動状態となり、車両Vのトラクションを増加させることができる。このとき、第1オリフィス51L,51Rの径を減少させるほど、左右のベーンポンプPL,PRの負荷が増加して後輪WRL,WRRに伝達される駆動力が増加する。
【0045】
また、車両Vが低速でタイトな旋回を行うとき、左右の前輪WFL,WFRの旋回軌跡の平均半径よりも左右の後輪WRL,WRRの旋回軌跡の平均半径が小さくなるため、前輪WFL,WFRに接続された左右のカムリング31L,31Rと、後輪WRL,WRRに接続された左右のロータ35L,35Rとの間に相対回転が発生する。しかも、左右の後輪WRL,WRRの旋回軌跡の半径は旋回外輪において大きく、旋回内輪において小さいため、上記相対回転の大きさは左右のベーンポンプPL,PRで異なっている。このとき、左右のベーンポンプPL,PRの吐出ポート44L,44Rから吐出された作動油は左右の第1オリフィス51L,51Rを経て吸入ポート43L,43Rに還流し、また左右のベーンポンプPL,PRが吐出した作動油の差分は、第2オリフィス52を経て行き来することにより相殺されるため、両ベーンポンプPL,PRに大きな負荷が発生することが防止される。その結果、四輪駆動車両Vが低速でタイトな旋回を行う際に、各車輪の旋回軌跡の半径差により発生する旋回を妨げる方向のヨーモーメントを軽減することができる。
【0046】
ところで、例えば、左後輪WRLを除く左右の前輪WFL,WFR及び右後輪WRRが泥濘にはまったような場合、スリップする前輪WFL,WFRに連動してカムリング31L,31Rが回転すると、泥濘にはまって摩擦が減少している右後輪WRRも、カムリング31Rからベーン41、ロータ35R及びロータシャフト27Rを介して伝達される駆動力によりスリップしてしまう。しかしながら、このスリップにより左右後輪WRL,WRRの回転差が大きくなり第2オリフィス52を通る油量が多くなるため、この部分の流路抵抗が大きくなり、摩擦係数の高い路面に乗っている左後輪WRLにはカムリング31Lからベーン41、ロータ35L及びロータシャフト27Lを介して駆動力が伝達され、その駆動力により泥濘からの脱出が可能となる。すなわち、本実施形態のハイドロリックカップリング装置Hによれば、いわゆる作動制限機構(LSD)の機能を発揮させることが可能となる。このとき、第2オリフィス52の径を減少させるほど、上記作動制限機構の機能を強めることができる。
【0047】
前述した低摩擦路における発進時や急加速時のように前輪WFL,WFRの回転数が後輪WRL,WRRの回転数を上回る場合には、ロータ35L,35Rが正転方向(図4の矢印A方向)に相対回転し、吸入ポート43L,43Rから作動油が吸入されて吐出ポート44L,44Rから作動油が吐出される。その結果、高圧側の吐出ポート44L,44Rに連なるチェックバルブ47L,47Rが開弁するため、高圧側の吐出ポート44L,44Rがベーン押上げポート35b,35bに連通するとともに、ベーン押上げポート35b,35bと低圧側の吸入ポート43L,43Rとの連通がこの吸入ポート43L,43Rに連なるチェックバルブ47L,47Rにより遮断される。これにより、ベーン押上げポート35b,35bに伝達された油圧によってベーン41を半径方向外側に付勢し、その先端をカムリング31L,31Rの内周面に圧接することができる。
【0048】
一方、車両が急制動を行う場合には、ABS(アンチロックブレーキシステム)等によって車輪のロック状態を制御することにより、前輪WFL,WFRが後輪WRL,WRRよりも先にロックするようにして車両の挙動に安定が図られる。このように急制動により後輪WRL,WRRの回転数が前輪WFL,WFRの回転数を上回ると、ロータ35L,35Rが逆転方向(図4の矢印B方向)に相対回転し、吐出ポート44L,44Rから作動油が吸入されて吸入ポート43L,43Rから作動油が吐出される。その結果、高圧側の吸入ポート43L,43Rに連なるチェックバルブ47L,47Rが開弁するため、高圧側の吸入ポート43L,43Rがベーン押上げポート35b,35bに連通するとともに、ベーン押上げポート35b,35bと低圧側の吐出ポート44L,44Rとの連通がこれら吐出ポート44L,44Rに連なるチェックバルブ47L,47Rにより遮断される。これにより、ベーン押上げポート35b,35bに伝達された油圧によってベーン41を半径方向外側に付勢し、その先端をカムリング31L,31Rの内周面に圧接することができる。
【0049】
ハイドロリックカップリング装置Hを備えた四輪駆動車両Vでは、前輪WFL,WFR及び後輪WRL,WRRの相対回転数差に応じて左右のベーンポンプPL,PRが負荷を発生し、前輪WFL,WFR及び後輪WRL,WRRの回転数が大きい側から回転数が小さい側に駆動力が伝達される。従って、急制動時における制動力の制御により前輪WFL,WFRが先にロックしようとすると、後輪WRL,WRRの回転数が前輪WFL,WFRの回転数を上回って後輪WRL,WRR側から前輪WFL,WFR側に駆動力が伝達されてしまい、前輪WFL,WFRのロックが抑制されて後輪WRL,WRRのロックが促進されるため、最悪の場合に前輪WFL,WFR及び後輪WRL,WRRが同時にロックして車両挙動が不安定になる可能性がある。
【0050】
これを回避すべく、本実施形態では前輪WFL,WFR及び後輪WRL,WRRの相対回転の方向によりベーンポンプPL,PRが発生する負荷の大きさに差を持たせている。すなわち、前述した低摩擦路における発進時や急加速時のように前輪WFL,WFRの回転数が後輪WRL,WRRの回転数を上回る場合には、ロータ35L,35Rが図4の矢印A方向に相対回転し、作動油が一対の第1オリフィス51L,51Rを図8に矢印で示す方向に流れて大きな圧力損失を発生する。その結果、ベーンポンプPL,PRは大きな負荷を発生して前輪WFL,WFRから後輪WRL,WRRに伝達される駆動力が増加する(図11の実線(A)参照)。
【0051】
一方、前述した急制動時のように後輪WRL,WRRの回転数が前輪WFL,WFRの回転数を上回る場合には、ロータ35L,35Rが図4の矢印B方向に相対回転し、作動油が一対の第1オリフィス51L,51Rを図8に矢印で示す方向とは逆方向に流れて小さな圧力損失を発生する。その結果、ベーンポンプPL,PRは小さな負荷を発生して後輪WRL,WRRから前輪WFL,WFRに伝達される駆動力が減少する(図11の破線(B)参照)。このため、急制動時に前輪WFL,WFRを後輪WRL,WRRに先立ってロックさせ、車両挙動が不安定になるのを未然に防止することができる。
【0052】
本発明に係る流体伝動装置が適用されたハイドロリックカップリング装置Hの作用についての説明は以上であるが、上記のように、本発明に係る流体伝動装(ハイドロリックカップリング装置H)では、ケーシングCを構成するカバー部材19と左第1サイドプレート30Lとの結合が、カバー部材19の端部(上記例では左端部)に設けられたテーパ状の裾部19bが、左第1サイドプレート30Lのフランジ部30fと、このフランジ部30fに取り付けられたリングギヤ12との間に挟持されることによりなされ、これらカバー部材19と左第1サイドプレート30Lとの間のオイルシールは、裾部19bと、左第1サイドプレート30Lの外周面(フランジ部30fよりも右側の部分)と、フランジ部30fの右面とにより囲まれてなる断面三角形の円環状空間19c内に保持されたオイルシール部材(上記例ではOリング23)によりなされる。このような構成では、左サイドプレート30Lの外周面にOリング23を取り付けるための溝を設ける必要がなく、製造工程を簡単化してコストの削減を図ることができる。また、左第1サイドプレート30Lのフランジ部30fにおけるリングギヤ12が取り付けられる面(右面)はシール面とはならず、仕上げ精度は比較的粗くてよいので、この面でも製造工程を簡単化することができる。
【0053】
また、上記流体伝動装置(ハイドロリックカップリング装置H)においては、リングギヤ12が左第1サイドプレート30Lのフランジ部30fに直接取り付けられることとなるので、その芯出し(中心軸合わせ)が大変容易となり、生産効率を向上させることができる。
【0054】
次に、本発明に係る流体伝動装置のもう1つの実施形態(第2実施形態とする)を示す。図14は第2実施形態に係る流体伝動装置の一部を示しているが、上述の実施形態(第1実施形態とする)において説明した流体伝動装置(ハイドロリックカップリング装置H)と同じ構成部品については同じ符号を付しており、その説明は省略することにする。この第2実施形態に係る流体伝動装置では、第1実施形態において説明したハイドロリックカップリング装置Hのように、カバー部材19の左端部において半径方向外方にテーパ状に広がる裾部19bではなく、半径方向外方であって、回転軸に対してほぼ垂直になる方向に延びるように裾部19dが形成されており、この裾部19dが左第1サイドプレート30Lのフランジ部30fとリングギヤ12とにより挟持されることによりカバー部材19と左第1サイドプレート30Lとが結合される。そして、裾部19dにおけるフランジ部30fとの接合面に形成された回転軸(ロータ35L,35Rの軸)を中心とする円環状の窪み19eとフランジ部30fとの間に形成された円環状空間内にOリング23が保持される。このような構成においても、上述の第1実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0055】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態において示したものに限定されない。例えば、上述の実施形態では、左第1サイドプレート30Lのフランジ部30fに取り付けられるリング状部材はケーシングCを回転軸(左右の車軸13L,13R)まわりに回転させる駆動力を伝達する駆動ギヤ(上述の例ではドライブピニオン11)と噛合するリングギヤ12であったが、このリング状部材は必ずしも動力伝達のためのギヤである必要はなく、ケーシングCを構成するカバー部材19とサイドプレート(左第1サイドプレート30L)とを結合させるために別途設けられる部材であっても構わない。また、ケーシングC内に備えられる動力伝達機構は、上述の例のようなハイドロリックカップリング装置に限られない。また、カバー部材の端部より半径方向外方に延びて形成された裾部の形状は上記実施形態に示した形状に限定されるものではなく、フランジ部とリング状部材とにより挟持されることによりカバー部材とプレート状部材とが結合され、かつ、裾部とプレート状部材との間に形成された円環状空間内にオイルシール部材が保持され得る形状であれば、その他の形状であってもよい。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る流体伝動装置では、ケーシングを構成するカバー部材とプレート状部材との結合が、カバー部材の端部に設けられて半径方向外方に延びた裾部が、プレート状部材に形成されたフランジ部と、このフランジ部に取り付けられるリング状部材との間に挟持されることによりなされ、これらカバー部材とプレート状部材との間のオイルシーリングは、上記裾部とプレート状部材との間に形成された円環状空間内に保持されたオイルシール部材によりなされる。このような構成では、プレート状部材の外周面にオイルシール部材を取り付けるための溝を設ける必要がないので、製造工程が簡単化され、コストの削減を図ることができる。また、上記フランジ部におけるリング状部材との接合面はシール面とはならないため、仕上げ精度は比較的粗くて済むため、この面でも製造工程を簡単化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る流体伝動装置が適用されたハイドロリックカップリング装置の一例を示す断面図である。
【図2】上記ハイドロリックカップリング装置を備えて構成される四輪駆動車両の動力伝達経路を示すスケルトン図である。
【図3】上記ハイドロリックカップリング装置におけるカバー部材と左第1サイドプレートとの結合部近傍の拡大図である。
【図4】図1における矢視IV−IVより見た上記ハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図5】図1における矢視V−Vより見た上記ハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図6】図1における矢視VI−VIより見た上記ハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図7】図5における矢視VII−VIIより見た上記ハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図8】図5における矢視VIII−VIIIより見た上記ハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図9】図1における矢視IX−IXより見た上記ハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図10】図1における矢視X−Xより見た上記ハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図11】上記ハイドロリックカップリング装置におけるオリフィスプレートの作用を説明するグラフである。
【図12】上記ハイドロリックカップリング装置の構成を示す油圧回路図である。
【図13】図4における矢視XIII−XIIIより見た上記ハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る流体伝動装置が適用されたハイドロリックカップリング装置の一部を示す図である。
【符号の説明】
H ハイドロリックカップリング装置
C ケーシング
PL,PR 左右ベーンポンプ
12 リングギヤ
19 カバー部材
19b 裾部
22 ボルト
23 Oリング
30L,30R 左右第1サイドプレート
30f 左第1サイドプレートのフランジ部
31L,31R 左右カムリング
35L,35R 左右ロータ
Claims (5)
- 作動流体を満たしたケーシング内に動力伝達機構を備え、前記ケーシングを回転軸まわりに回転させることにより前記作動流体を介して前記動力伝達機構を作動させる流体伝動装置において、
前記ケーシングは、前記回転軸を中心とする円筒状に形成されたカバー部材と、前記カバー部材の端部の開口部を閉じるように設けられたプレート状部材とを有してなり、
前記プレート状部材の外周部より半径方向外方に突出して延びたフランジ部にはリング状部材が前記カバー部材側から取り付けられており、
前記カバー部材の前記端部より半径方向外方に延びて形成された裾部が前記フランジ部と前記リング状部材とにより挟持されることにより前記カバー部材と前記プレート状部材とが結合されており、
前記裾部と前記プレート状部材との間に形成された円環状空間内にオイルシール部材が保持されたことを特徴とする流体伝動装置。 - 前記裾部は前記カバー部材の前記端部より前記フランジ部側に向けてテーパ状に拡がるように形成されており、
前記裾部と、前記プレート状部材の外周面と、前記プレート状部材の前記フランジ部とにより囲まれてなる断面三角形の円環状空間内に前記オイルシール部材が保持されたことを特徴とする請求項1記載の流体伝動装置。 - 前記裾部は前記カバー部材の前記端部より前記回転軸に対してほぼ垂直になる方向に延びて形成されており、
前記裾部における前記フランジ部との接合面に形成された前記回転軸を中心とする円環状の窪みと前記フランジ部との間に形成された円環状空間内に前記オイルシール部材が保持されたことを特徴とする請求項1記載の流体伝動装置。 - 前記リング状部材が、前記ケーシングを前記回転軸まわりに回転させる駆動力を伝達する駆動ギヤと噛合するリングギヤからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の流体伝動装置。
- 前記回転軸が同軸状に配設された2本の軸部材からなり、前記動力伝達機構が、前記2本の軸部材それぞれに連結された2つのベーンポンプを有して構成されるハイドロリックカップリング装置からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の流体伝動装置。
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2003
- 2003-01-08 JP JP2003001782A patent/JP2004211858A/ja active Pending
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