JP2003269343A - ベーンポンプ - Google Patents

ベーンポンプ

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JP2003269343A
JP2003269343A JP2002068545A JP2002068545A JP2003269343A JP 2003269343 A JP2003269343 A JP 2003269343A JP 2002068545 A JP2002068545 A JP 2002068545A JP 2002068545 A JP2002068545 A JP 2002068545A JP 2003269343 A JP2003269343 A JP 2003269343A
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vane
rotor
cam ring
port
suction
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JP2002068545A
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English (en)
Inventor
Kazunori Miyata
和典 宮田
Takuya Kurokawa
卓也 黒川
Kanji Kita
貫二 北
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Honda Motor Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 各ベーンに吸入および吐出ポートからのスラ
スト力が作用することを防止する。 【解決手段】 左右カムリング31L,31Rをそれぞ
れ左右サイドプレートにより挟んで形成されたカムリン
グの内周空間内に回転自在に左右ロータ35L,35R
を配設し、ロータの外周面に形成されたベーン溝35a
に径方向に移動可能にベーン41を保持してベーンポン
プが構成される。ベーン溝に配設されたベーンが外周方
向に付勢されてその外周端がカムリングの内周面と摺接
した状態でロータが回転駆動され、流体の吸入、吐出を
行わせる。左右サイドプレートのいずれか一方に、吸入
ポート43L,43Rおよび吐出ポート44L,44R
が形成され、左右サイドプレートの他方に、カムリング
を挟んで吸入ポートおよび吐出ポートと対称となる位置
に対称形状を有した吸入側バランス用凹部143L,1
43Rおよび吐出側バランス用凹部144L,144R
が形成されている。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、内周空間を有した
カムリングの左右側面に左右サイドプレートを接合して
取り付け、これら左右サイドプレートに囲まれたカムリ
ングの内周空間内にロータを回転自在に配設し、このロ
ータの外周面に開口して形成された複数のベーン溝にそ
れぞれベーンを径方向に移動可能に保持して構成される
ベーンポンプに関する。 【0002】 【従来の技術】このような構成のベーンポンプは従来か
ら一般的に知られており、ベーン溝に配設されたベーン
が内部圧力やスプリング等により外周方向に付勢されて
ベーンの外周端がカムリングの内周面と摺接した状態で
ロータが回転駆動され、複数のベーンに仕切られて複数
に区分けされた内周空間(これをポンプ空間と称する)
の体積を変化させ、流体の吸入、吐出を行わせるように
構成されている。このようにロータの回転に応じてベー
ンに仕切られて複数に区分けされたポンプ空間の体積が
変化するように、カムリングの内周面が所望のカム面形
状に形成されており、ロータが回転駆動されると、ベー
ンの外周端がこのカム面に摺接しながら周方向に移動
し、カム面に沿って径方向に移動するようになってい
る。 【0003】このようにロータの回転に応じてベーンに
仕切られて複数に区分けされたポンプ空間の体積を変化
させるときに、ロータの回転に伴いポンプ空間の体積が
増加する部分に吸入ポートを設け、この体積が減少する
部分に吐出ポートを設ければ、ロータの回転に伴って吸
入ポートからポンプ空間内に流体を吸入させ、ポンプ空
間から吐出ポートに流体を吐出させることが可能で、ベ
ーンポンプとして機能する。このように構成されるベー
ンポンプとしては、例えば、特開昭61−271125
号公報や、特開平2−266126号公報等に開示のも
のがあり、ここでは、四輪駆動車両における前輪側と後
輪側とを連結する連結装置を、ベーンポンプを用いて構
成した装置が示されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】ところで、上記構成に
おいてベーンポンプに吸入および吐出ポートを設ける場
合、カムリングの内周面(カム面)はベーンの外周端が
摺接するためポートを設けることができず、左右いずれ
か一方のサイドプレートに吸入および吐出ポートが形成
されている。このような場合、ロータのベーン溝内に保
持された各ベーンは外周端が上記のようにカムリング内
周面に摺接するとともに左右側端面がサイドプレート内
面に摺接しながらロータとともに回転されるのである
が、ベーンの側端面が吸入および吐出ポートと対向する
位置において、吸入および吐出ポート内圧がベーンの側
端面に作用し、ベーンにスラスト力が作用する。このよ
うにスラスト力が作用すると、各ベーンが反対側のサイ
ドプレート(吸入および吐出ポートが形成されていない
方のサイドプレート)に押し付けられ、この部分に摩
耗、かじり、摩擦による発熱等が発生するおそれがある
という問題がある。 【0005】なお、ロータ内に吸入、吐出ポートを形成
する構成のものが、特公平7−42993号公報、特開
平8−25991号公報等に開示されている。しかしな
がら、運転中において回転するロータ内に吸入、吐出ポ
ートを設けた場合、ロータの回転に伴う遠心力もしくは
遠心油圧を考慮する必要があり、その作動がロータ回転
変動の影響を受けるという問題がある。 【0006】本発明はこのような問題に鑑みたもので、
各ベーンに吸入および吐出ポートからのスラスト力が作
用することを防止できるような構成のベーンポンプを提
供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】このような目的達成のた
め、本発明においては、内周空間を有したカムリング
(例えば、実施形態における左右カムリング31L,3
1R)と、これらカムリングの左右側面に接合して取り
付けられた左右サイドプレート(例えば、実施形態にお
ける左カムリング31Lの左右に位置する左第1サイド
プレート30Lおよび左バルブプレート38Lや、右カ
ムリング31Rの左右に位置する右バルブプレート38
Rおよび右第1サイドプレート30R)と、左右サイド
プレートに囲まれたカムリングの内周空間内に回転自在
に配設されたロータ(例えば、実施形態における左右ロ
ータ35L,35R)と、ロータの外周面に開口して形
成された複数のベーン溝に径方向に移動可能に配設され
てロータに保持された複数のベーンとを有してベーンポ
ンプが構成され、ベーン溝に配設されたベーンが外周方
向に付勢されてベーンの外周端がカムリングの内周面と
摺接した状態でロータが回転駆動され、複数のベーンに
仕切られて複数に区分けされた内周空間(ポンプ空間)
の体積を変化させ、流体の吸入、吐出を行わせるように
構成される。そして、左右サイドプレートのいずれか一
方に、ロータの回転に伴い複数のベーンに仕切られて区
分けされた内周空間の体積が増加する箇所に開口する吸
入ポート(例えば、実施形態における吸入ポート43
L,43R)および内周空間の体積が減少する箇所に開
口する吐出ポート(例えば、実施形態における吐出ポー
ト44L,44R)が形成され、左右サイドプレートの
他方に、カムリングを挟んで吸入ポートおよび吐出ポー
トと対称となる位置にバランス用凹部(例えば、実施形
態における吸入側バランス用凹部143L,143Rお
よび吐出側バランス用凹部144L,144R)が形成
されている。 【0008】このような構成のベーンポンプを用いれ
ば、ロータが回転駆動されると、各ベーンは外周端が上
記のようにカムリング内周面に摺接するとともに左右側
端面がサイドプレート内面に摺接しながらロータととも
に回転される。このとき、ベーンの側端面が吸入および
吐出ポートと対向する位置において、吸入および吐出ポ
ート内圧がベーンの側端面に作用するが、これら吸入お
よび吐出ポートと対称となる位置に設けられたバランス
用凹部にもポンプ空間を介して吸入および吐出ポート内
圧が作用する。このため、ベーンの左右側端面に同一の
圧力が作用して互いに相殺され、ベーンにスラスト力が
作用することがなくなり、この部分の摩耗、かじり、摩
擦による発熱等の問題が発生することを確実に防止でき
る。なお、バランス用凹部を吸入および吐出ポートと対
称となる形状にするのが好ましく、このようにすれば、
ベーンの左右側端面に作用する圧力を完全に一致させて
ベーンに作用するスラスト力を完全になくすことが可能
となる。 【0009】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の好
ましい実施形態について説明する。本発明の第1実施形
態として、本発明に係るベーンポンプを用いて構成され
る後輪用ディファレンシャル機構を有する四輪駆動車両
の動力伝達装置を図1〜図9に示している。 【0010】図1にこの動力伝達装置のスケルトン図を
示しており、まず、この四輪駆動車両の動力伝達装置構
成を説明する。四輪駆動車両Vは車体前部に横置きに配
置したエンジンEと、このエンジンEの右側面に結合し
たトランスミッションMとを備える。トランスミッショ
ンMの駆動出力を主駆動輪としての左右の前輪WFL,
WFRに伝達する第1動力伝達系D1は、トランスミッ
ションMの出力軸1に設けた第1スパーギヤ2と、第1
スパーギヤ2に噛合する第2スパーギヤ3と、第2スパ
ーギヤ3により駆動されるベベルギヤ式のフロントディ
ファレンシャル4と、フロントディファレンシャル4か
ら左右に延出して主駆動輪としての前輪WFL,WFR
に接続される左右の車軸5L,5Rとから構成される。 【0011】第1動力伝達系D1の駆動力を副駆動輪と
しての後輪WRL,WRRに伝達する第2動力伝達系D
2は、フロントディファレンシャル4のデフボックッス
に設けられて第2スパーギヤ3と一体回転する第3スパ
ーギヤ6と、第3スパーギヤ6に噛合する第4スパーギ
ヤ7と、第4スパーギヤ7と一体に回転する第1ベベル
ギヤ8と、第1ベベルギヤ8に噛合する第2ベベルギヤ
9と、前端に第2ベベルギヤ9を備えて車体後方に延び
るプロペラシャフト10と、プロペラシャフト10の後
端に設けた第3ベベルギヤ11と、第3ベベルギヤ11
に噛合する第4ベベルギヤ12と、第4ベベルギヤ12
により駆動されるハイドロリックカップリング装置H
と、ハイドロリックカップリング装置Hから左右に延出
して後輪WRL,WRRに接続される左右の車軸13
L,13Rとを備える。 【0012】次に、図2に基づいてハイドロリックカッ
プリング装置Hの構造を説明する。ハイドロリックカッ
プリング装置Hは左右対称に配置された左ベーンポンプ
PLおよび右ベーンポンプPRを備える。左右のベーン
ポンプPL,PRは、左第1サイドプレート30L、左
カムリング31L、第2サイドプレート32、右カムリ
ング31Rおよび右第1サイドプレート30Rを備えて
おり、6本のボルト21により図示のように一体に結合
される。このとき、左第1サイドプレート30L、左カ
ムリング31L、第2サイドプレート32、右カムリン
グ31Rおよび右第1サイドプレート30Rはノックピ
ン100(図8,図9参照)を用いて回転方向に位置決
めされている。また、内部に左カムリング31L、第2
サイドプレート32、右カムリング31Rおよび右第1
サイドプレート30Rを収納する円筒状のケーシング1
9が左第1サイドプレート30Lに取り付けられてい
る。この取付は、ケーシング19の左端フランジ部19
fに左第1サイドプレート30Lの右端フランジ部30
fが重ね合わされて第4ベベルギヤ12と共に複数本の
ボルト22により一体結合されて行われる。なお、左第
1サイドプレート30Lおよびケーシング19の結合面
はOリング23でシールされ、右第1サイドプレート3
0Rおよびケーシング19の結合面はOリング24でシ
ールされる。 【0013】第2サイドプレート32は、薄い鋼板で形
成された中央のセンタープレート37の両面に左右一対
の焼結金属製のバルブプレート38L,38Rを重ね合
わせて構成される。この構成から分かるように、左ベー
ンポンプPLは左カムリング31Lの左右側面に左右サ
イドプレート(左第1サイドプレート30Lおよび左バ
ルブプレート38L)を接合して構成され、右ベーンポ
ンプPRは右カムリング31Rの左右側面に左右サイド
プレート(右バルブプレート38Rおよび右第1サイド
プレート30R)を接合して構成される。 【0014】左第1サイドプレート30Lの左側面に突
出する環状の支持部30aがボールベアリング25を介
してハウジング20により回転自在に支持され、この支
持部30aの内周面がボールベアリング26を介して後
述する左ロータシャフト27Lを回転自在に支持する。
また右第1サイドプレート30Rの右側面に突出する環
状の支持部30aがボールベアリング25を介してハウ
ジング20により回転自在に支持され、この支持部30
aの内周面がボールベアリング26を介して後述する右
ロータシャフト27Rを回転自在に支持する。 【0015】左後輪WRLの車軸13Lにスプライン2
8により結合されて左第1サイドプレート30Lの軸孔
30bを貫通する左ロータシャフト27Lの外周は、こ
の軸孔30b内に配設されたOリング29によりシール
され、右後輪WRRの車軸13Rにスプライン28によ
り結合されて右第1サイドプレート30Rの軸孔30b
を貫通する右ロータシャフト27Rの外周は、この軸孔
30bに配設されたOリング29によりシールされる。
従って、前記4個のOリング23,24,29,29に
よって、左右のベーンポンプPL,PRの外部への作動
油の漏出が防止されるとともに、左右のベーンポンプP
L,PRの内部へのエアーの侵入が防止される。 【0016】左ロータシャフト27Lにスプライン34
により結合された左ロータ35Lが、左第1サイドプレ
ート30L、左カムリング31Lおよび第2サイドプレ
ート32に囲まれた空間に回転自在に収納され、また右
ロータシャフト27Rにスプライン34により結合され
た右ロータ35Rが、右第1サイドプレート30R、右
カムリング31Rおよび第2サイドプレート32に囲ま
れた空間に回転自在に収納される。第2サイドプレート
32は左ベーンポンプPLおよび右ベーンポンプPRに
共通する構成要素であり、その半径方向内周面において
ニードルベアリング36,36を介して左ロータシャフ
ト27Lおよび右ロータシャフト27Rの対向部の外周
を相対回転自在に支持する。 【0017】次に、図2〜図7を参照しながら右ベーン
ポンプPRの構造を詳細に説明する。尚、左ベーンポン
プPLの構造は右ベーンポンプPRの構造と左右鏡面対
称であるため、その重複する説明は省略する。なお、右
ベーンポンプPRおよび左ベーンポンプPLの相対応す
る構成要素には、同一の参照符号にそれぞれ添字「R」
および添字「L」を付しており、同一参照符号の要素が
左右対称位置に設けられていることを意味する。 【0018】右カムリング31Rの内周面は概略3角形
状のカム面を有するように形成されており、その内部に
収納された円形の右ロータ35Rとの間に、円周方向に
120°ずつ離間した3個の作動室40Rが形成されて
いる。右ロータ35Rには外径方向に放射状に延びる8
個のベーン溝35aが形成されており、これらベーン溝
35a内にそれぞれ板状のベーン41が径方向に摺動自
在に支持されており、それらベーン41の半径方向外端
は右カムリング31Rの内周面に摺接する。右ロータ3
5Rの両側面には、各ベーン41の半径方向外端を右カ
ムリング31Rの内周面に密着させるべく環状のベーン
押上ポート35b,35bが形成される。このベーン押
上ポート35b,35bは右ロータ35Rの8個のベー
ン溝35aの底部にそれぞれ連通する。また各ベーン4
1の半径方向外端を右カムリング31Rの内周面に密着
させるべく、ベーン溝35aの底部とベーン41の半径
方向内端との間にコイルスプリング42が縮設される。 【0019】図3〜図7に明瞭に示すように、第2サイ
ドプレート32の右バルブプレート38Rの外面(右カ
ムリング31Rおよび右ロータ35Rに対向する面)に
は、右ベーンポンプPRの3個の作動室40Rの円周方
向両端にそれぞれ臨む3個の吸入ポート43Rおよび3
個の吐出ポート44Rが凹設されている。吸入ポート4
3Rおよび吐出ポート44Rは、右バルブプレート38
Rを貫通する連通孔h1と、右バルブプレート38Rの
内面(センタープレート37に対向する面)に凹設した
連通溝g1と、右バルブプレート38Rを貫通する連通
孔h2とを介してベーン押上ポート35bにそれぞれ連
通する。図6に示すように、連通孔h1には段状の弁座
45が形成されており、右バルブプレート38Rの内面
側から連通孔h1に装着したチェックボール46と前記
弁座45とによってチェックバルブ47Rが構成され
る。このチェックバルブ47Rは、吸入ポート43Rお
よび吐出ポート44R側からベーン押上ポート35bへ
の作動油の流通を許容し、その逆方向の作動油の流通を
阻止する機能を有している。チェックボール46の連通
孔h1からの脱落は、センタープレート37によって阻
止される。 【0020】従って、車両の前進走行時に吐出ポート4
4Rが高圧になり、吸入ポート43Rが低圧になると、
高圧側の吐出ポート44Rの吐出圧がベーン押上ポート
35bに伝達される。また車両の後進走行時に吸入ポー
ト43Rが高圧になり、吐出ポート44Rが低圧になる
と、高圧側の吸入ポート43Rの吐出圧がベーン押上ポ
ート35bに伝達される。 【0021】右バルブプレート38Rの外面に凹設した
3個の吸入ポート43Rおよび3個の吐出ポート44R
は、右バルブプレート38Rを貫通する連通孔h3と、
右バルブプレート38Rの内面に凹設した連通溝g2
と、右バルブプレート38Rを貫通する連通孔h4とを
介して右ロータシャフト27Rの外周部に連通する。連
通孔h4には段状の弁座48が形成されており、右バル
ブプレート38Rの内面面側から連通孔h4に装着した
チェックボール49と前記弁座48とによってチェック
バルブ50Rが構成される。このチェックバルブ50R
は、吸入ポート43Rおよび吐出ポート44R側から右
ロータシャフト27Rの外周部への作動油の流通を阻止
し、その逆方向の作動油の流通を許容する機能を有す
る。 【0022】右バルブプレート38Rの内面にL字状を
なす6個の連通溝g3が凹設されており、これら連通溝
g3の一端は前記連通孔h3を介して吸入ポート43R
および吐出ポート44Rに連通する。また右バルブプレ
ート38Rの外面には3個の連通溝g4が凹設されてお
り、各連通溝g4の両端は右バルブプレート38Rを貫
通する連通孔h5を介して前記L字状の連通溝g3の他
端に連通する。 【0023】図7に明瞭に示すように、連通孔h5には
それぞれ第1オリフィス51R,51Rが設けられる。
第1オリフィス51R,51Rは図示のようにテーパ形
状に形成されて方向性を有しており、車両の前進走行時
に作動油が図7に矢印で示す方向に流れるときに大きな
圧力損失が発生し、車両の後進走行時に作動油が逆方向
に流れるときに小さな圧力損失が発生するようになって
いる。また、図4および図6に示すように、左右のバル
ブプレート38L,38Rの吸入ポート43L,43R
同士および吐出ポート44L,44L同士を相互に連通
するように、センタープレート37を貫通して第2オリ
フィス52がそれぞれ連通孔h3に対向する位置に形成
されている。 【0024】右第1サイドプレート30Rの左端面(す
なわち、右カムリング31Rとの接合面)は、図8に示
すように形成されている。各種ポート類および油路類は
全て第2サイドプレート32に設けているため、右第1
サイドプレート30Rにはポートおよび油路類を設ける
必要がない。但し、後述するように左右ベーンポンプP
L,PRを駆動するときにベーン41に軸方向スラスト
力が作用しないようにするための各3個の吸入側バラン
ス用凹部143Rおよび吐出側バランス用凹部144R
が図示のように形成されている。これら吸入側バランス
用凹部143Rは右バルブプレート38Rに形成された
各3個の吸入ポート43Rと右カムリング31Rを挟ん
で対向する位置、すなわち、左右対称となる位置に形成
されている。同様に、吐出側バランス用凹部144Rは
右バルブプレート38Rに形成された各3個の吐出ポー
ト44Rと右カムリング31Rを挟んで対向する位置、
すなわち、左右対称となる位置に形成されている。この
右第1サイドプレート30Rはボルト21により右カム
リング31Rに結合されており、このときノックピン1
00により互いの結合位置決めが行われる。 【0025】左第1サイドプレート30Lの右端面(す
なわち、左カムリング31Lとの接合面)は、図9に示
すように形成されている。この左第1サイドプレート3
0Lにも基本的にはポートおよび油路類を設ける必要が
ないが、右第1サイドプレート30Rと同様に、ベーン
41に軸方向スラスト力が作用しないようにするための
各3個の吸入側バランス用凹部143Lおよび吐出側バ
ランス用凹部144Lが形成されている。これら吸入側
および吐出側バランス用凹部143L,144Lは左バ
ルブプレート38Lに形成された各3個の吸入および吐
出ポート43L,44Lと左カムリング31Lを挟んで
対向する位置、すなわち、左右対称となる位置に形成さ
れている。この左第1サイドプレート30Lはボルト2
1により左カムリング31Lに結合されており、このと
きノックピン100により互いの結合位置決めが行われ
る。さらに、そのフランジ部30fに円筒状ケーシング
19の左端部フランジ部19fがボルト22により結合
されており、このときノックピン101により互いの結
合位置決めが行われる。 【0026】図2に示すように、左右のロータシャフト
27L,27Rの内部には軸方向に延びて両端が開口す
る貫通孔27a,27aが形成されており、そこに左右
一対のリザーバ55L,55Rが設けられる。各リザー
バ55L,55Rは、貫通孔27a,27aにOリング
56,56を介して摺動自在に嵌合するピストン57,
57と、貫通孔27a,27aの外端を閉塞するプラグ
58,58と、プラグ58,58およびピストン57,
57間に配置されたコイルばね59,59とを備える。
プラグ58,58の近傍において、貫通孔27a,27
aに内周面に2条のリリーフ溝27b,27bが軸方向
に形成されており、これらのリリーフ溝27b,27b
は連通孔27c,27cを介して大気に連通する。エア
ーの閉じ込みによりピストン57,57の移動を防げな
いように、プラグ58,58の内部を通孔58a,58
aが軸方向に貫通する。 【0027】このため、ベーンポンプPL,PR内部の
作動油が温度変化に応じて膨張・収縮したとき、リザー
バ55L,55Rの容積が変化して作動油の容積変化を
吸収することにより、作動油へのエアーの混入を防止す
ることができる。即ち、温度上昇により作動油が膨張す
ると、ピストン57,57がコイルばね59,59を圧
縮して相互に離反する方向に移動してリザーバ55L,
55Rの容積が増加するため、前記作動油の膨張を吸収
することができる。逆に温度低下により作動油が収縮す
ると、ピストン57,57がコイルばね59,59の弾
発力で相互に接近する方向に移動してリザーバ55L,
55Rの容積が減少するため、前記作動油の収縮を吸収
するとともに、エアーのポンプ内部への吸入を防止する
ことができる。 【0028】何らかの理由で作動油の温度が異常に上昇
した場合、ピストン57,57はコイルばね59,59
を圧縮しながら相互に離反する方向に大きく移動し、そ
の先端が左右のロータシャフト27L,27Rの貫通孔
27a,27aのリリーフ溝27b,27bに連通す
る。その結果、ベーンポンプPL,PRの内部空間のが
ロータシャフト27L,27Rの貫通孔27a,27
a、リリーフ溝27b,27bおよび連通孔27c,2
7cを介して大気に連通し、膨張した作動油が連通孔2
7c,27cから外部に排出されることでハイドロリッ
クカップリング装置Hの損傷が未然に防止される。 【0029】ベーンポンプPL,PRの運転に伴って吸
入ポート43L,43R(あるいは吐出ポート44L,
44R)が負圧になったとき、その負圧でチェックバル
ブ50L,50Rが開弁して吸入ポート43L,43R
(あるいは吐出ポート44L,44R)をリザーバ55
L,55Rに連通させるので、過剰な負圧によりキャピ
テーションが発生するのを防止することができる。この
とき、コイルばね59,59で付勢されたピストン5
7,57により作動油が加圧されるため、前記キャピテ
ーションを一層効果的に防止することができる。しかも
ロータシャフト27L,27Rの貫通孔27a,27a
を利用してリザーバ55L,55Rを配置したので、ベ
ーンポンプPL,PRの吐出圧の影響を回避することが
可能になるだけでなく、リザーバ55L,55Rを設け
たことによるベーンポンプPL,PRの大型化を回避す
ることができる。またリザーバ55L,55Rがベーン
ポンプPL,PRの回転中心部に位置することで遠心油
圧の影響を受け難くなり、更にピストン57,57の断
面積を小さくすればコイルばね59,59のばね荷重を
小さく抑えることができる。 【0030】第2サイドプレート32を中央のセンター
プレート37と、その両側を挟むように配置された左右
のバルブプレート38L,38Rとによって構成し、左
右のバルブプレート38L,38Rを貫通する連通孔h
1,h2,h3,h4,h5と、左右のバルブプレート
38L,38Rの内面に形成した連通溝g1,g2,g
3と、左右のバルブプレート38L,38Rの外面に形
成した連通溝g4とによって左右のベーンポンプPL,
PRの全ての油路を構成したので、それら油路を第2サ
イドプレート32に集中的に配置し、左右の第1サイド
プレート30L,30Rの構成を単純化することが可能
になる(具体的には、図8および図9に示すように、吸
入側および吐出側バランス用凹部143R,143L,
144R,144Lが設けられるだけの構成となる)。
さらに、油路の短縮や第2サイドプレート32のサブア
センブリ化による組付工数の削減を図ることができ、ハ
イドロリックカップリング装置Hの小型化を図ることが
できる。 【0031】チェックバルブ47L,47Rを左右のバ
ルブプレート38L,38Rの連通孔h1の内部に配置
し、チェックバルブ50L,50Rを左右のバルブプレ
ート38L,38Rの連通孔h4の内部に配置したの
で、それらチェックバルブ47L,47R,50L,5
0Rを左右のバルブプレート38L,38Rにコンパク
トに組み付けることができるだけでなく、作動油のリー
クを効果的に抑制することができる。特に、ロータ35
L,35Rの側面に臨む切換バルブによって前記チェッ
クバルブ47L,47Rの機能を持たせた従来のものに
比べて、ロータ35L,35Rの側面からの作動油のリ
ーク量を大幅に低減することができる。 【0032】左右のバルブプレート38L,38Rの連
通孔h1,h2,h3,h4,h5および連通溝g1,
g2,g3,g4は全て厚み方向(ロータシャフト27
L,27Rの方向)に形成されているため、該バルブプ
レート38L,38Rを焼結型取りで製作することが可
能となり、コストダウンに寄与することができる。また
左右のバルブプレート38L,38Rの吸入ポート43
L,43R同士および吐出ポート44L,44R同士を
第2オリフィス52で相互に連通させたので、この第2
オリフィス52を吸入ポート43L,43Rおよび吐出
ポート44R,44Rに連通させる特別の油路が不要に
なり、加工工数の削減に寄与することができる。 【0033】第1オリフィス51L,51Rを2個ずつ
直列に配置したので、そのオリフィス径を大きくしても
必要な圧力損失を発生させることが可能となり、異物に
よる第1オリフィス51L,51Rの詰まりを効果的に
防止することができるだけでなく、孔加工が容易であり
生産性も向上させることができる。 【0034】以上、右ベーンポンプPRの構造を中心に
説明したが、左ベーンポンプPLの構造は前記右ベーン
ポンプPRのそれと鏡面対称であって両者の構造は実質
的に同じであるのでその説明は省略する。 【0035】上記ハイドロリックカップリング装置Hの
油圧回路を図11に示している。同図から明らかなよう
に、左ベーンポンプPLの吸入ポート43Lおよび吐出
ポート44Lは第2サイドプレート32の左バルブプレ
ート38Lに設けた合計三対の第1オリフィス51Lに
より相互に連通するとともに、右ベーンポンプPRの吸
入ポート43Rおよび吐出ポート44Rは第2サイドプ
レート32の右バルブプレート38Rに設けた合計三対
の第1オリフィス51Rにより相互に連通する。また左
右のベーンポンプPL,PRの吸入ポート43L,43
Rは第2サイドプレート32のセンタープレート37を
貫通する第2オリフィス52により相互に連通するとと
もに、左右のベーンポンプPL,PRの吐出ポート44
L,44Rは第2サイドプレート32のセンタープレー
ト37を貫通する第2オリフィス52により相互に連通
する。センタープレート37は薄板であるために第2オ
リフィス52を形成することが容易であり、また第2オ
リフィス52の孔径が異なるセンタープレート37を組
み付けることによりLSD(Limited Slippage Differe
ntial)効果を変えることが可能となる。 【0036】左ベーンポンプPLの吸入ポート43Rお
よび吐出ポート44Lの何れか高圧側は第2サイドプレ
ート32の左バルブプレート38Lに設けたチェックバ
ルブ47Lを介してベーン押上ポート35bに連通し、
また右ベーンポンプPRの吸入ポート43Rおよび吐出
ポート44Rの何れか高圧側の右バルブプレート38R
に設けたチェックバルブ47Rを介してベーン押上ポー
ト35bに連通する。左ベーンポンプPLの吸入ポート
43Lおよび吐出ポート44Lの何れか低圧側は第2サ
イドプレート32の左バルブプレート38Lに設けたチ
ェックバルブ50Lを介してリザーバ55L,55Rに
連通し、また右ベーンポンプPRの吸入ポート43Rお
よび吐出ポート44Rの何れか低圧側は第2サイドプレ
ート32の右バルブプレート38Rに設けたチェックバ
ルブ50Rを介してリザーバ55L,55Rに連通す
る。 【0037】更に、ベーン押上ポート35b,35bと
リザーバ55L,55Rとの間にリリーフバルブ61
L,61Rおよびチョーク62L,62Rが設けられ
る。前記リリーフバルブ61L,61Rは仮想的なもの
で、左右の第1サイドプレート30L,30Rが油圧で
撓むことにより、あるいはボルト21が伸びることによ
り左右のロータ35L,35Rとの間に発生する間隙に
よって構成される。また前記チョーク62L,62Rも
仮想的なもので、左右の第1サイドプレート30L,3
0Rあるいは第2サイドプレート32と左右のロータ3
5L,35Rとの摺動部の間隙によって構成される。 【0038】次に、前述の構成を備えた本発明の第1実
施形態の作用について説明する。車両Vが定速走行する
状態では、エンジンEの駆動力はトランスミッションM
の出力軸1から第1スパーギヤ2、第2スパーギヤ3、
フロントディファレンシャル4および左右の車軸5L,
5Rを介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
このとき、フロントディファレンシャル4の第3スパー
ギヤ6の回転は、第4スパーギヤ7、第1ベベルギヤ
8、第2ベベルギヤ9、プロペラシャフト10、第3ベ
ベルギヤ11および第4ベベルギヤ12を介してハイド
ロリックカップリング装置HのベーンポンプPL,PR
(即ち、左右のカムリング31L,31R)を回転させ
る。一方、車両Vの走行に伴って路面から受ける摩擦力
で駆動される後輪WRL,WRRの回転は、左右の車軸
13L,13Rからロータシャフト27L,27Rを介
して左ベーンポンプPLのロータ35Lおよび右ベーン
ポンプPRのロータ35Rに伝達される。前輪WFL,
WFRにスリップが発生しておらず、従って前輪WF
L,WFRにおよび後輪WRL,WRRの回転数が等し
いときには、左右のカムリング31L,31Rの回転数
と左右のロータ35L,35Rの回転数とが一致するよ
うに構成されており、両者に相対回転差が発生しない。
その結果、左右のベーンポンプPL,PRが作動油を吐
出しないためにハイドロリックカップリング装置Hは駆
動力の伝達を行わず、車両Vは前輪駆動状態になる。 【0039】次に、低摩擦路における発進時や急加速時
にエンジンEの駆動力が直接作用する前輪WFL,WF
Rがスリップした場合を考える。このときには前輪WF
L,WFRの回転が後輪WRL,WRRの回転より高く
なる。このため、前輪WFL,WFRの回転に連動する
左右のベーンポンプPL,PRのカムリング31L,3
1Rと、後輪WRL,WRRの回転に連動する左右のベ
ーンポンプPL,PRのロータ35L,35Rとの間に
所定方向の相対回転(これを正転方向の相対回転と称す
る)が発生する。この正転方向の相対回転は、例えば右
ベーンポンプPRを例にして説明すると、図3において
右カムリング31Rを固定した状態で右ロータ35Rが
時計回り(矢印A方向)に回転する回転である。 【0040】このような正転方向の相対回転が発生する
と、各ベーン41は半径方向外端が右カムリング31R
の内周面に摺接しながら右ロータ35Rとともに回転さ
れる。上述したように、内周面には円周方向に120°
ずつ離間した三つの作動室40Rが形成されており、そ
の左右にテーパ部40a,40cが設けられ、中間部4
0bが円筒状に形成されている。右ロータ35Rととも
に各ベーン41が正転方向に相対回転されると、その半
径方向外端は左テーパ部40aに沿って摺接移動し、さ
らに中間部40bに摺接しながら移動した後、右テーパ
部40cに沿って摺接移動する。このため、上記のよう
にベーン41が摺接回転移動されると、隣り合うベーン
41の間に囲まれた作動室40の内部空間(これをポン
プ空間と称する)の容積が変動する。ここで、左テーパ
部40aの位置に対応して吸入ポート43Rが形成され
るとともに右テーパ部40cの位置に対応して吐出ポー
ト44Rが形成されており、上記のようにポンプ空間容
積の変化に対応して、吸入ポート43Rからポンプ空間
内に作動油が吸入され、吐出ポート44Rから吐出され
る。 【0041】ところで、このようにベーン41が右ロー
タ35Rとともに右カムリング31Rおよび左右のサイ
ドプレート(右バルブプレート38Rおよび右第1サイ
ドプレート30R)に対して相対回転移動されるときの
ベーン41の動きを、図3の矢印XII−XIIに沿った断面
図として図12に示している。この相対回転によりベー
ン41が矢印A方向に移動し、吸入ポート43Rから作
動油を作動室40R内に吸入し、これがベーン41の動
きに応じて圧縮されて吐出ポート44Rに吐出される。
このときベーン41の半径方向外端部は右カムリング3
1Rの内周面(カム面)と常に摺接して移動し、ベーン
41の左右側端面は左右のサイドプレート(右バルブプ
レート38Rおよび右第1サイドプレート30R)と摺
接移動しつつも、吐出ポート43Rおよび吸入ポート4
4Rの位置において左右端面が開放される。このため、
ベーン41の左右側端面のうちの右バルブプレート38
Rに対向する側端面に、吐出ポート43Rおよび吸入ポ
ート44Rの内部油圧が作用し、ベーン41が受け軸方
向に作用するスラスト力(図12における矢印F1で示
す力)を受ける。 【0042】ところが、前述のように、右第1サイドプ
レート30Rには吐出ポート43Rおよび吸入ポート4
4Rと右カムリング31Rを挟んで対向する吸入側およ
び吐出側バランス用凹部143Rおよび144Rが形成
されおり、これら凹部143R,144Rにも吐出ポー
ト43Rおよび吸入ポート44Rの内部油圧が作用する
ため、この内部油圧がベーン41の反対側側端面に逆方
向スラスト力(図12における矢印F2で示す力)とし
て作用する。すなわち、ベーン41は左右から同一の大
きさで互いに対向するスラスト力を受けることになり、
左右のスラスト力が相殺されてベーン41にはスラスト
力が作用しなくなる。この結果、ベーン41の側端面と
これが摺接する左右のサイドプレート(右バルブプレー
ト38Rおよび右第1サイドプレート30R)との接触
圧が過大となるおそれはなく、この部分の摩耗、かじ
り、発熱等の問題が生じることがない。 【0043】以上の説明から分かるように、左右のベー
ンポンプPL,PRにおいてカムリング31L,31R
とロータ35L,35Rとの間に正転方向の相対回転が
生じると、左右のベーンポンプPL,PRは吐出ポート
44L,44Rから吐出した作動油を吸入ポート43
L,43Rより吸入する。吐出ポート44L,44Rか
ら吐出された作動油は左右の第1オリフィス51L,5
1Rを通過して吸入ポート43L,43Rに還流する
が、その際の流通抵抗により左右のベーンポンプPL,
PRに負荷が発生し、この負荷が駆動力として左右の後
輪WRL,WRRに伝達される。而して、前輪WFL,
WFRのスリップ時には四輪駆動状態となり、車両Vの
トラクションを増加させることができる。このとき、第
1オリフィス51L,51Rの径を減少させるほど、左
右のベーンポンプPL,PRの負荷が増加して後輪WR
L,WRRに伝達される駆動力が増加する。 【0044】また、車両Vが低速でタイトな旋回を行う
とき、左右の前輪WFL,WFRの旋回軌跡の平均半径
よりも左右の後輪WRL,WRRの旋回軌跡の平均半径
が小さくなるため、前輪WFL,WFRに接続された左
右のカムリング31L,31Rと、後輪WRL,WRR
に接続された左右のロータ35L,35Rとの間に相対
回転が発生する。しかも左右の後輪WRL,WRRの旋
回軌跡の半径は旋回外輪において大きく、旋回内輪にお
いて小さいため、前記相対回転の大きさは左右のベーン
ポンプPL,PRで異なっている。このとき、左右のベ
ーンポンプPL,PRの吐出ポート44L,44Rから
吐出された作動油は左右の第1オリフィス51L,51
Rを経て吸入ポート43L,43Rに還流し、また左右
のベーンポンプPL,PRが吐出した作動油の差分は、
第2オリフィス52を経て行き来することにより相殺さ
れるため、両ベーンポンプPL,PRに大きな負荷が発
生することが防止される。その結果、四輪駆動車両Vが
低速でタイトな旋回を行う際に、各車輪の旋回軌跡の半
径差により発生する旋回を防げる方向のヨーモーメント
を軽減することができる。 【0045】ところで、例えば、左後輪WRLを除く左
右の前輪WFL,WFRおよび右後輪WRRが泥濘には
まったような場合、スリップする前輪WFL,WFRに
連動してカムリング31L,31Rが回転すると、泥濘
にはまって摩擦が減少している右後輪WRRも、カムリ
ング31Rからベーン41、ロータ35Rおよびロータ
シャフト27Rを介して伝達される駆動力によりスリッ
プしてしまう。しかしながら、このスリップにより左右
後輪WRL,WRRの回転差が大きくなり第2オリフィ
ス52を通る油量が多くなるため、この部分の流路抵抗
が大きくなり、摩擦係数の高い路面に乗っている左後輪
WRLにはカムリング32Lからベーン41、ロータ3
5Lおよびロータシャフト27Lを介して駆動力が伝達
され、その駆動力により泥濘からの脱出が可能となる。
即ち、本実施形態のハイドロリックカップリング装置H
によれば、所謂作動制限機構(LSD)の機能を発揮さ
せることが可能となる。このとき、第2オリフィス52
の径を減少させるほど、前記作動制限機構を強めること
ができる。 【0046】前述した低摩擦路における発進時や急加速
時のように前輪WFL,WFRの回転数が後輪WRL,
WRRの回転数を上回る場合には、ロータ35L,35
Rが正転方向(図3の矢印A方向)に相対回転し、吸入
ポート43L,43Rから作動油が吸入されて吐出ポー
ト44L,44Rから作動油が吐出される。その結果、
高圧側の吐出ポート44L,44Rに連なるチェックバ
ルブ47L,47Rが開弁するため、高圧側の吐出ポー
ト44L,44Rがベーン押上ポート35b,35bに
連通するとともに、ベーン押上ポート35b,35bと
低圧側の吸入ポート43L,43Rとの連通が該吸入ポ
ート43L,43Rに連なるチェックバルブ47L,4
7Rにより遮断される。而して、ベーン押上ポート35
b,35bに伝達された油圧によってベーン41を半径
方向外側に付勢し、その先端をカムリング31L,31
Rの内周面に圧接することができる。 【0047】一方、車両が急制動を行う場合には、AB
S(アンチロックブレーキシステム)等によって車輪の
ロック状態を制御することにより、前輪WFL,WFR
が後輪WRL,WRRよりも先にロックするようにして
車両の挙動に安定が図られる。このように急制動により
後輪WRL,WRRの回転数が前輪WFL,WFRの回
転数を上回ると、ロータ35L,35Rが逆転方向(図
3の矢印B方向)に相対回転し、吐出ポート44L,4
4Rから作動油が吸入されて吸入ポート43L,43R
から作動油が吐出される。その結果、高圧側の吸入ポー
ト43L,43Rに連なるチェックバルブ47L,47
Rが開弁するため、高圧側の吸入ポート43L,43R
がベーン押上ポート35b,35bに連通するととも
に、ベーン押上ポート35b,35bと低圧側の吐出ポ
ート44L,44Rとの連通が該吐出ポート44L,4
4Rに連なるチェックバルブ47L,47Rにより遮断
される。而して、ベーン押上ポート35b,35bに伝
達された油圧によってベーン41を半径方向外側に付勢
し、その先端をカムリング31L,31Rの内周面に圧
接することができる。 【0048】ハイドロリックカップリング装置Hを備え
た四輪駆動車両Vでは、前輪WFL,WFRおよび後輪
WRL,WRRの相対回転数差に応じて左右のベーンポ
ンプPL,PRが負荷を発生し、前輪WFL,WFRお
よび後輪WRL,WRRの回転数が大きい側から回転数
が小さい側に駆動力が伝達される。従って、急制動時に
おける制動力の制御により前輪WFL,WFRが先にロ
ックしようとすると、後輪WRL,WRRの回転数が前
輪WFL,WFRの回転数を上回って後輪WRL,WR
R側から前輪WFL,WFR側に駆動力が伝達されてし
まい、前輪WFL,WFRのロックが抑制されて後輪W
RL,WRRのロックが促進されるため、最悪の場合に
前輪WFL,WFRおよび後輪WRL,WRRが同時に
ロックして車両挙動が不安定になる可能性がある。 【0049】これを回避すべく、本実施形態では前輪W
FL,WFRおよび後輪WRL,WRRの相対回転の方
向によりベーンポンプPL,PRが発生する負荷の大き
さに差を持たせている。すなわち、前述した低摩擦路に
おける発進時や急加速時にように前輪WFL,WFRの
回転数が後輪WRL,WRRの回転数を上回る場合に
は、ロータ35L,35Rが図3の矢印A方向に相対回
転し、作動油が一対の第1オリフィス51L,51Rを
図7に矢印で示す方向に流れて大きな圧力損失を発生す
る。その結果、ベーンポンプPL,PRは大きな負荷を
発生して前輪WFL,WFRから後輪WRL,WRRに
伝達される駆動力が増加する(図10の(A)実線参
照)。 【0050】一方、前述した急制動時のように後輪WR
L,WRRの回転数が前輪WFL,WFRの回転数を上
回る場合には、ロータ35L,35Rが図3の矢印B方
向に相対回転し、作動油が一対の第1オリフィス51
L,51Rを図7に矢印で示す方向と逆方向に流れて小
さな圧力損失を発生する。その結果、ベーンポンプP
L,PRは小さな負荷を発生して後輪WRL,WRRか
ら前輪WFL,WFRに伝達される駆動力が減少する
(図10の破線(B)参照)。而して、急制動時に前輪
WFL,WFRを後輪WRL,WRRに先立ってロック
させ、車両挙動が不安定になるのを未然に防止すること
ができる。 【0051】次に、本発明の第2実施形態について図1
3〜図15を参照して以下に説明する。第2実施形態を
示す図13および第1実施形態を示す図1を比較すると
明らかなように、第2実施形態は第2動力伝達系D2の
構造において前記第1実施形態と異なっている。即ち、
第2実施形態の第2動力伝達系D2はプロペラシャフト
10の後端とベベルギヤ式のリヤディファレンシャル1
4との間にハイドロリックカップリング装置Hを備えて
おり、このハイドロリックカップリング装置Hには本発
明を適用した単一のベーンポンプPが設けられている。 【0052】このハイドロリックカップリング装置Hの
構造について図14を参照して説明する。ハイドロリッ
クカップリング装置HのベーンポンプPは、図2に示す
第1実施形態のハイドロリックカップリング装置Hの右
ベーンポンプPRと実質的に同じ構成を備えるもので、
基本的にベーンポンプPの構成要素の符号には、右ベー
ンポンプPRの対応する構成要素と同じ符号、あるいは
対応する構成要素の符号から添字「R」を除いたものを
用いている。 【0053】ベーンポンプPは、第1サイドプレート3
0、カムリング31、第2サイドプレート32およびエ
ンドプレート71を備えており、それらはノックピンに
より回転方向に位置決めされた状態で、6本のボルト2
1を用いて一体に結合されている。第2サイドプレート
32は、第1実施形態例のバルブプレート38Rと同じ
構造を有しており、エンドプレート71は第1実施形態
センタープレート37と同じ機能を有している。但し、
エンドプレート71は、センタープレート37の第2オ
リフィス52(図6参照)を備えていない。第1サイド
プレート30、カムリング31、第2サイドプレート3
2およびエンドプレート71の外側を覆う円筒状のケー
シング19は、クリップ72でエンドプレート71に係
止されている。 【0054】リヤディファレンシャル14(図13参
照)のハウジング73には第3ベベルギヤ11(図13
参照)の軸部11aがローラベアリング74を介して支
持されており、エンドプレート71にボルト75により
固定されたカップリング76に前記第3ベベルギヤ11
の軸部11aがスプライン結合77してナット78で固
定されている。 【0055】第1サイドプレート30および第2サイド
プレート32にそれぞれボールベアリング26およびニ
ードルベアリング36を介してロータシャフト27が支
持されており、このロータシャフト27の前端にスプラ
イン結合79されたカップリング80がボルト81によ
りプロペラシャフト10の後端に連結されている。ロー
タシャフト27にスプライン結合34されたロータ35
が、第1サイドプレート30、カムリング31および第
2サイドプレート32に囲まれた空間に回転自在に収納
されている。ロータ35に放射状に形成された8個のベ
ーン溝35aにそれぞれ板状のベーン41が摺動自在に
支持されており、それらベーン41の半径方向外端はカ
ムリング31に内周面に摺接する。 【0056】第1サイドプレート30の左端面(すなわ
ち、カムリング31との接合面)は、図8に示すように
形成されており、第1の実施形態における右第1サイド
プレート30Rの左端面と同一の形状に形成されてい
る。すなわち、第1サイドプレート30の左端面には、
ベーンポンプPを駆動するときにベーン41に軸方向ス
ラスト力が作用しないようにするための各3個の吸入側
バランス用凹部143および吐出側バランス用凹部14
4が図示のように形成されている。これら吸入側および
吐出側バランス用凹部143,144は第2サイドプレ
ート32に形成された各3個の吸入ポートおよび吐出ポ
ート(ここでは図示せず)とカムリング31を挟んで対
向する位置、すなわち、左右対称となる位置に形成され
ている。 【0057】このベーンポンプPにおいても、エンドプ
レート71およびケーシング19間をOリング23でシ
ールし、第1サイドプレート30およびケーシング19
間をOリング24でシールし、更に第1サイドプレート
30の軸孔30bを貫通するロータシャフト27の外周
をOリング29でシールすることにより、ベーンポンプ
Pの外部への作動油の漏出を防止し、かつベーンポンプ
Pの内部へのエアーの侵入を防止している。 【0058】ベーンポンプPの内部構造および油路等の
構造は、前記図3〜図5で説明した第1実施形態の右ベ
ーンポンプPRのものと同一であるため、その重複する
説明は省略する。但し、図15の油圧回路図を図11の
油圧回路図(第1実施形態)と比較すると明らかなよう
に、第2実施形態は単一のベーンポンプPだけを備える
ため、左右のベーンポンプPL,PRを接続する第2オ
リフィス52が廃止されている。 【0059】図14に示すように、ロータシャフト27
に内部には軸方向に延びて両端が開口する貫通孔27a
が形成されており、そこにリザーバ55が設けられる。
リザーバ55は、貫通孔27aにOリング56を介して
摺動自在に嵌合するピストン57と、貫通孔27aの外
端を閉塞するプラグ58と、プラグ58およびピストン
57間に配置されたコイルばね59とを備える。プラグ
58に近傍において、貫通孔27aの内周面に2条のリ
リーフ溝27b,27bが軸方向に形成されており、こ
のリリーフ溝27b,27bは連通孔27c,27cを
介して大気に連通する。ピストン57の移動を防げない
ように、プラグ58の内部を通孔58aが軸方向に貫通
する。 【0060】このような構成のため、ベーンポンプPの
内部の作動油が温度変化に応じて膨張・収縮したとき、
リザーバ55の容積が変化して作動油の容積変化を吸収
することにより、作動油へのエアーの混入を防止するこ
とができる。また、何らかの理由で作動油の温度が異常
に上昇した場合、ピストン57はコイルばね59を圧縮
しながら図中右方向に大きく移動し、その先端がロータ
シャフト27の貫通孔27aのリリーフ溝27b,27
bに連通する。その結果、ベーンポンプPの内部空間の
がロータシャフト27の貫通孔27a、リリーフ溝27
b,27bおよび連通孔27c,27cを介して大気に
連通し、膨張した作動油が連通孔27c,27cから外
部に排出されることでハイドロリックカップリング装置
Hの損傷が未然に防止される。 【0061】ベーンポンプPの運転に伴って吸入ポート
43(あるいは吐出ポート44)が負圧になったとき、
その負圧でチェックバルブ50が開弁して吸入ポート4
3(あるいは吐出ポート44)をリザーバ55に連通さ
せるので、過剰な負圧によりキャピテーションが発生す
るのを防止することができる。このとき、コイルばね5
9で付勢されたピストン57により作動油が加圧される
ため、前記キャピテーションを一層効果的に防止するこ
とができる。しかもロータシャフト27の貫通孔27a
を利用してリザーバ55を配置したので、ベーンポンプ
Pの吐出圧の影響を回避することが可能になるだけでな
く、リザーバ55を設けたことによるベーンポンプPの
大型化を回避することができる。 【0062】第1実施形態では左右のベーンポンプP
L,PRが左右の車軸13L,13Rに設けられている
のに対し、本第2実施形態ではベーンポンプPは前記車
軸13L,13Rに対して増速されたプロペラシャフト
10に設けられているので、ベーンポンプPを比較的に
高回転・低トルクで使用することができ、ベーンポンプ
Pの容量を低減して小型化およびコストダウンを図るこ
とができる。 【0063】本実施形態に特有の効果として、ベーンポ
ンプPのロータシャフト27が主駆動輪である前輪WF
L,WFRに連動するプロペラシャフト10により駆動
されるので、前輪WFL,WFRがスリップすると同時
にロータ35が回転してベーン41に遠心力が作用し、
ベーンポンプPの起動時にベーン41とカムリング31
との間のシール性を高めて応答性を向上させることがで
きる。 【0064】以上のように構成された本発明の第2実施
形態の作用について説明する。車両Vが定速走行する状
態では、エンジンEの駆動力は出力軸1から第1スパー
ギヤ2、第2スパーギヤ3、フロントディファレンシャ
ル4および左右の車軸5L,5Rを介して左右の前輪W
FL,WFRに伝達される。このとき、フロントディフ
ァレンシャル4の第3スパーギヤ6の回転は、第4スパ
ーギヤ7、第1ベベルギヤ8、第2ベベルギヤ9および
プロペラシャフト10を介してハイドロリックカップリ
ング装置HのベーンポンプPのロータシャフト27およ
びロータ35を回転させる。一方、車両Vの走行に伴っ
て路面から受ける摩擦力で駆動される後輪WRL,WR
Rの回転は、左右の車軸13L,13Rからリヤディフ
ァレンシャル14、第4ベベルギヤ12および第3ベベ
ルギヤ11を介してベーンポンプPのカムリング31を
回転させる。前輪WFL,WFRにスリップが発生して
おらず、従って前輪WFL,WFRおよび後輪WRL,
WRRの回転数が等しいときには、ロータ35の回転数
とカムリング31の回転数とが一致して相対回転が発生
しない。その結果、ベーンポンプPが作動油を吐出しな
いためにハイドロリックカップリング装置Hは駆動力の
伝達を行わず、車両Vは前輪駆動状態になる。 【0065】一方、低摩擦路における発進時や急加速時
にエンジンEの駆動力が直接作用する前輪WFL,WF
Rがスリップすると、前輪WFL,WFRの回転に連動
するベーンポンプPのロータ35と、後輪WRL,WR
Rの回転に連動するベーンポンプPのカムリング31と
の間に正転方向の相対回転が発生し、ベーンポンプPは
吐出ポート44から吐出した作動油を吸入ポート43よ
り吸入する。吐出ポート44から吐出された作動油は第
1オリフィス51を通過して吸入ポート43Lに還流す
るが、その際の流通抵抗によりベーンポンプPに負荷が
発生し、この負荷が駆動力として左右の後輪WRL,W
RRに伝達される。而して、前輪WFL,WFRのスリ
ップ時には四輪駆動状態となり、車両Vのトラクション
を増加させることができる。このとき、第1オリフィス
51の径を減少させるほど、ベーンポンプPの負荷が増
加して後輪WRL,WRRに伝達される駆動力が増加す
る。 【0066】前述した低摩擦路における発進時や急加速
時のように前輪WFL,WFRの回転数が後輪WRL,
WRRの回転数を上回る場合には、ロータ35が正転方
向に相対回転し、吸入ポート43から作動油が吸入され
て吐出ポート44から作動油が吐出される。その結果、
高圧側の吐出ポート44に連なるチェックバルブ47が
開弁するため、高圧側の吐出ポート44がベーン押上ポ
ート35bに連通するとともに、ベーン押上ポート35
bと低圧側の吸入ポート43との連通が該吸入ポート4
3に連なるチェックバルブ47により遮断される。而し
て、ベーン押上ポート35bに伝達された油圧によって
ベーン41を半径方向外側に付勢し、その先端をカムリ
ング31の内周面に圧接することが可能となる。 【0067】車両が急制動を行う場合には、ABS(ア
ンチロックブレーキシステム)等によって車輪のロック
状態を制御することにより、前輪WFL,WFRが後輪
WRL,WRRよりも先にロックするようにして車両の
挙動に安定が図られる。このように急制動により後輪W
RL,WRRの回転数が前輪WFL,WFRの回転数を
上回ると、ロータ35が逆転方向に相対回転し、吐出ポ
ート44から作動油が吸入されて吸入ポート43から作
動油が吐出される。その結果、高圧側の吸入ポート43
に連なるチェックバルブ47が開弁するため、高圧側の
吸入ポート43がベーン押上ポート35bに連通すると
ともに、ベーン押上ポート35bと低圧側の吐出ポート
44との連通が該吐出ポート44に連なるチェックバル
ブ47により遮断される。而して、ベーン押上ポート3
5bに伝達された油圧によってベーン41を半径方向外
側に付勢し、その先端をカムリング31の内周面に圧接
することができる。 【0068】ところで、上述のようにロータ35が正転
方向もしくは逆転方向に相対回転するときに、ベーン4
1の左右側端面は左右のサイドプレート(第1および第
2サイドプレート30,32)と摺接移動しつつも、第
2サイドプレート32に形成された吐出ポートおよび吸
入ポートと対向する位置において左右端面が開放され
る。このため、ベーン41の左右側端面のうちの第2サ
イドプレート32に対向する側端面に、吐出ポートおよ
び吸入ポートの内部油圧が作用し、ベーン41が受け軸
方向に作用するスラスト力を受ける。ところが、前述の
ように、第1サイドプレート30にはこれら吐出ポート
および吸入ポートとカムリング31を挟んで対向する吸
入側および吐出側バランス用凹部143および144が
形成されおり、これら凹部143,144にも吐出ポー
トおよび吸入ポートの内部油圧が作用するため、この内
部油圧がベーン41の反対側側端面に逆方向スラスト力
として作用する。すなわち、ベーン41は左右から同一
の大きさで互いに対向するスラスト力を受けることにな
り、左右のスラスト力が相殺されてベーン41にはスラ
スト力が作用しなくなる。この結果、ベーン41の側端
面とこれが摺接する第1および第2サイドプレート3
0,32との接触圧が過大となるおそれはなく、この部
分の摩耗、かじり、発熱等の問題が生じることがない。 【0069】本第2実施形態においても、前輪WFL,
WFRおよび後輪WRL,WRRの相対回転に方向によ
りベーンポンプPL,PRが発生する負荷の大きさに差
を持たせている。すなわち、前述した低摩擦路における
発進時や急加速時にように前輪WFL,WFRの回転数
が後輪WRL,WRRの回転数を上回る場合には、作動
油が一対の第1オリフィス51を図7に矢印で示す方向
に流れて大きな圧力損失を発生する。その結果、ベーン
ポンプPは大きな負荷を発生して前輪WFL,WFRか
ら後輪WRL,WRRに伝達される駆動力が増加する
(図10の(A)実線参照)。 【0070】一方、前述した急制動時のように後輪WR
L,WRRの回転数が前輪WFL,WFRの回転数を上
回る場合には、作動油が一対の第1オリフィス51を図
7に矢印で示す方向と逆方向に流れて小さな圧力損失を
発生する。その結果、ベーンポンプPは小さな負荷を発
生して後輪WRL,WRRから前輪WFL,WFRに伝
達される駆動力が減少する(図10の破線(B)参
照)。而して、急制動時に前輪WFL,WFRを後輪W
RL,WRRに先立ってロックさせ、車両挙動が不安定
になるのを未然に防止することができる。 【0071】図16は本発明の第3実施形態を示すもの
で、第2実施形態を示す図14に対応するものである。
第3実施形態ではベーンポンプPの取付方向が第2実施
形態と逆になっており、プロペラシャフト10に第1サ
イドプレート30、カムリング31、第2サイドプレー
ト32およびエンドプレート71が接続されており、第
3ベベルギヤ11側にロータシャフト27およびロータ
35が接続されている。即ち、プロペラシャフト10は
ボルト81でエンドプレート71に結合され、第3ベベ
ルギヤ11の軸部の11aは、スプライン結合77、カ
ップリング76、ボルト75、カップリング80および
スプライン結合79を介してロータシャフト27に結合
されている。 【0072】この第3実施形態に係るベーンポンプPに
おいて、第1サイドプレート30の右端面(すなわち、
カムリング31との接合面)は、図8に示すように形成
されており、第1の実施形態における右第1サイドプレ
ート30Rの左端面および第2実施形態における第1サ
イドプレート30の左端面と同一の形状に形成されてい
る。すなわち、第1サイドプレート30の左端面には、
ベーンポンプPを駆動するときにベーン41に軸方向ス
ラスト力が作用しないようにするための各3個の吸入側
バランス用凹部143および吐出側バランス用凹部14
4が図示のように形成されている。これら吸入側および
吐出側バランス用凹部143,144は第2サイドプレ
ート32に形成された各3個の吸入ポートおよび吐出ポ
ート(ここでは図示せず)とカムリング31を挟んで対
向する位置、すなわち、左右対称となる位置に形成され
ている。 【0073】これにより、ロータ35が正転方向もしく
は逆転方向に相対回転するときに、ベーン41の左右側
端面が第1および第2サイドプレート30,32と摺接
移動しつつ、第2サイドプレート32に形成された吐出
ポートおよび吸入ポートと対向する位置において左右端
面が開放されたとき、ベーン41には左右方向片側(図
16における右側)から吐出ポートおよび吸入ポートの
内部油圧が作用し、左右方向反対側(図16における左
側)から吸入側および吐出側バランス用凹部143およ
び144を介して吐出ポートおよび吸入ポートの内部油
圧と同一の油圧が作用する。このため、ベーン41は左
右から同一の大きさで互いに対向するスラスト力を受け
ることになり、左右のスラスト力が相殺されてベーン4
1にはスラスト力が作用しなくなる。この結果、第3の
実施形態に係るベーンポンプPにおいても、ベーン41
の側端面とこれが摺接する第1および第2サイドプレー
ト30,32との接触圧が過大となるおそれはなく、こ
の部分の摩耗、かじり、発熱等の問題が生じることがな
い。 【0074】本実施形態でも、前輪WFL,WFRと後
輪WRL,WRRとの相対回転により、カムリング31
およびロータ35が相対回転してベーンポンプPが作動
するようになっており、前記第2実施形態と同様に四輪
駆動機能を発揮することができ、更にリザーバ55によ
る効果、ベーンポンプPをプロペラシャフト10に設け
たことによる効果も第1実施形態と同様である。但し、
ベーンポンプPを第2実施形態に対して前後逆に取り付
けたことにより、次のような特別の効果を得ることがで
きる。 【0075】即ち、ロータ35に複数の遠心バルブを放
射状の設け、高速走行時にロータ35の回転が高まると
遠心バルブが開弁してベーンポンプPを無負荷状態に切
り換えるようにした場合、設定車速で遠心バルブを開弁
させるにはロータ35の回転数が主駆動輪である前輪W
FL,WFRのスリップの影響を受けないようにする必
要がある。従って、仮にロータ35が前輪WFL,WF
Rに接続されていると、車速が設定車速以下でも前輪W
FL,WFRがスリップして回転数が増加したときに遠
心バルブが開弁してしまう問題があるが、本第3実施形
態の如くロータ35が副駆動輪である後輪WRL,WR
Rに接続されていれば上記問題を解消することができ
る。 【0076】以上、本発明の実施形態を詳述したが、本
発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行
うことが可能である。例えば、実施形態のハイドロリッ
クカップリング装置Hは第1サイドプレート30,30
L,30R、カムリング31,31L,31Rおよび第
2サイドプレート32がケーシング19に収納されてい
るが、本発明はケーシング19を備えずに、第1サイド
プレート30,30L,30R、カムリング31,31
L,31Rおよび第2サイドプレート32が直接露出し
たハイドロリックカップリング装置Hに対しても適用す
ることができる。ロータシャフト27,27L,27R
の貫通孔27aに形成されるリリーフ溝27b,27b
の本数は適宜設定可能であり、直線状の溝に代えて螺旋
状の溝とすることも可能である。 【0077】 【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
左右サイドプレートのいずれか一方に、ロータの回転に
伴い複数のベーンに仕切られて区分けされた内周空間の
体積が増加する箇所に開口する吸入ポートおよび内周空
間の体積が減少する箇所に開口する吐出ポートが形成さ
れ、左右サイドプレートの他方に、カムリングを挟んで
吸入ポートおよび吐出ポートと対称となる位置にバラン
ス用凹部が形成されてベーンポンプが形成されているの
で、この構成のベーンポンプにおいてロータが回転駆動
されると、各ベーンは外周端が上記のようにカムリング
内周面に摺接するとともに左右側端面がサイドプレート
内面に摺接しながらロータとともに回転され、ベーンの
側端面が吸入および吐出ポートと対向する位置におい
て、吸入および吐出ポート内圧がベーンの側端面に作用
するが、これら吸入および吐出ポートと対称となる位置
に設けられたバランス用凹部にもポンプ空間を介して吸
入および吐出ポート内圧が作用する。このため、ベーン
の左右側端面に同一の圧力が作用して互いに相殺され、
ベーンにスラスト力が作用することがなくなり、この部
分の摩耗、かじり、摩擦による発熱等の問題が発生する
ことを確実に防止できる。なお、バランス用凹部を吸入
および吐出ポートと対称となる形状にするのが好まし
く、このようにすれば、ベーンの左右側端面に作用する
圧力を完全に一致させてベーンに作用するスラスト力を
完全になくすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の第1実施形態に係るベーンポンプを用
いて構成される後輪用ディファレンシャル機構を有する
四輪駆動車両の動力伝達経路を示すスケルトン図であ
る。 【図2】上記後輪用ディファレンシャル機構を構成する
ハイドロカップリング装置を示す断面図である。 【図3】上記ハイドロカップリング装置の図2の矢印II
I−IIIに沿った断面図である。 【図4】上記ハイドロカップリング装置の図2の矢印IV
−IVに沿った断面図である。 【図5】上記ハイドロカップリング装置の図2の矢印V
−Vに沿った断面図である。 【図6】上記ハイドロカップリング装置の図4の矢印VI
−VIに沿った断面図である。 【図7】上記ハイドロカップリング装置の図4の矢印VI
I−VIIに沿った断面図である。 【図8】上記ハイドロカップリング装置の図2の矢印VI
II−VIIIに沿った端面図である。 【図9】上記ハイドロカップリング装置の図2の矢印IX
−IXに沿った端面図である。 【図10】上記ハイドロカップリング装置におけるオリ
フィスプレートの作用を説明するグラフである。 【図11】上記ハイドロカップリング装置の構成を示す
油圧回路図である。 【図12】上記ハイドロカップリング装置の構成の一部
を図3の矢印XII−XIIに沿って示す断面図である。 【図13】本発明の第2実施形態に係るベーンポンプを
用いて構成されるセンターディファレンシャル機構を有
する四輪駆動車両の動力伝達経路を示すスケルトン図で
ある。 【図14】上記センターディファレンシャル機構を構成
するハイドロカップリング装置を示す断面図である。 【図15】上記第2の実施形態に係るハイドロカップリ
ング装置の構成を示す油圧回路図である。 【図16】本発明の第3実施形態に係るベーンポンプを
用いて構成されるセンターディファレンシャル機構を構
成するハイドロカップリング装置を示す段面図である。 【符号の説明】 30L,30R 左右第1サイドプレート 31L,31R 左右カムリング 35a ベーン溝 35L,35R 左右ロータ 38L,38R 左右バルブプレート 41 ベーン 43L,43R 吸入ポート 44L,44R 吐出ポート 143L,143R 吸入側バランス用凹部 144L,144R 吐出側バランス用凹部
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】 【提出日】平成14年3月15日(2002.3.1
5) 【手続補正1】 【補正対象書類名】図面 【補正対象項目名】図2 【補正方法】変更 【補正内容】 【図2】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 北 貫二 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内 Fターム(参考) 3H040 AA03 BB04 BB09 BB11 CC09 CC18 DD06 3H044 AA02 BB05 BB08 CC16 CC19 DD04 DD11

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 内周空間を有したカムリングと、前記カ
    ムリングの左右側面に接合して取り付けられた左右サイ
    ドプレートと、前記左右サイドプレートに囲まれた前記
    カムリングの内周空間内に回転自在に配設されたロータ
    と、前記ロータの外周面に開口して形成された複数のベ
    ーン溝に径方向に移動可能に配設されて前記ロータに保
    持された複数のベーンとを有し、前記ベーン溝に配設さ
    れた前記ベーンが外周方向に付勢されて前記ベーンの外
    周端が前記カムリングの内周面と摺接した状態で前記ロ
    ータが回転駆動され、前記複数のベーンに仕切られて複
    数に区分けされた前記内周空間の体積を変化させ、流体
    の吸入、吐出を行わせるように構成されたベーンポンプ
    において、 前記左右サイドプレートのいずれか一方に、前記ロータ
    の回転に伴い前記複数のベーンに仕切られて区分けされ
    た前記内周空間の体積が増加する箇所に開口する吸入ポ
    ートおよび前記内周空間の体積が減少する箇所に開口す
    る吐出ポートが形成され、 前記左右サイドプレートの他方に、前記カムリングを挟
    んで前記吸入ポートおよび前記吐出ポートと対称となる
    位置にバランス用凹部が形成されていることを特徴とす
    るベーンポンプ。
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