JP2004308812A - 車両の動力伝達装置 - Google Patents

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Takuya Kurokawa
卓也 黒川
Kanji Kita
貫二 北
Kazunori Miyata
和典 宮田
Shigeru Nakayama
茂 中山
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Abstract

【課題】走行状態に応じた最適のトルク特性を得る。
【解決手段】左側ベーンポンプPLの吐出ポート37Lと右側ベーンポンプPRの吐出ポート37Rとを連通する油路中にオリフィスOF3を設けるとともに、左側ベーンポンプPLの吸入ポート38Lと右側ベーンポンプPRの吸入ポート38Rとを連通する油路中にオリフィスOF4を設ける。更に、オリフィスOF3を通ることなく両吐出ポート37L,37Rを連通する第1バイパス油路と、オリフィスOF4を通ることなく両吸入ポート38L,38Rを連通する第2バイパス油路とを設けたうえで、左右のカムリング31L,31Rの回転速度が所定の回転速度以上であるときに第1バイパス油路及び第2バイパス油路を開放状態にするバイパス油路開放手段(チェックバルブCVL1,CVR1,CVL2,CVR2)を設ける。
【選択図】 図11

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、動力源の駆動力を左右のベーンポンプを介して左右の駆動輪に伝達する構成の車両の動力伝達装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両に備えられて左右の駆動輪を駆動する動力伝達装置の一形態として、エンジンの駆動力を左右のベーンポンプを介して左右の駆動輪に伝達するハイドロリックカップリング装置が知られている。このハイドロカップリング装置は常時若しくは一時的に前後左右の四輪全てを駆動することができる四輪駆動車において多用されており、左右の主駆動輪(例えば左右の前輪)へはエンジンの駆動力が直接伝達される一方、左右の副駆動輪(例えば左右の後輪)へはハイドロカップリング装置を介して動力が伝達される。
【0003】
このハイドロカップリング装置はケーシングの内部に左右一対のベーンポンプを有してなる流体伝動装置であり、例えば上記構成の車両の場合には、両ベーンポンプそれぞれのロータに左右の副駆動輪の車軸が連結される。ケーシングはエンジンからの動力が伝えられるプロペラシャフトにより上記車軸まわりに回転駆動され、各ベーンポンプのカムリングと一体となって回転する。各ベーンポンプの吐出ポートと吸入ポートとは油路により連通され、これら油路の途中にはベーンポンプに負荷を発生させるためのオリフィスが設けられる。このような車両では、定速走行時のように左右の主駆動輪及び左右の副駆動輪が同じ回転速度で回転し、カムリングとロータとが同じ回転速度で回転しているときにはベーンポンプがポンプ作動を行わず左右の副駆動輪に駆動力が発生しないため、主駆動輪のみが駆動される二輪駆動状態となる。しかし、摩擦係数の低い路面において急発進を行って左右の主駆動輪がスリップした場合など主駆動輪の回転速度が副駆動輪の回転速度を上回るときには、カムリングとロータ間に回転速度差が生じてベーンポンプがポンプ作動を行い、作動流体が上記油路中のオリフィスを通過するときに生じる負荷に応じた駆動力が左右の副駆動輪に伝達されるので、主駆動輪のみならず副駆動輪も駆動されて車両は四輪駆動状態となる。
【0004】
旋回走行時には前後輪間における回転速度差及び左右の後輪間における回転速度差により左右のベーンポンプにおけるカムリングとロータとの間に回転速度差が生じ、これが左右のベーンポンプの吐出流量差となって現われるが、左右のベーンポンプは吐出ポート同士及び吸入ポート同士がそれぞれ油路により連通されているため、吐出流量の多い側のベーンポンプから吐出された作動油は吐出流量の少ない側のベーンポンプに流れ、左右の副駆動輪間の回転速度差が吸収されて差動機構としての機能が発揮される。しかし、このように左右のベーンポンプ間で作動油の流通が自由にできる状態では、左右の主駆動輪および左右の副駆動輪の一方が泥濘にはまって空転したような場合においては、摩擦係数の高い路面に接地している他方の副駆動輪に繋がるベーンポンプに大きな負荷を与えることができない(すなわち、接地している側の副駆動輪に大きな駆動力を与えることができない)ので、吐出ポート同士を繋ぐ油路及び吸入ポート同士を繋ぐ油路の両油路中にはそれぞれオリフィスが設けられている。これにより、左右の副駆動輪の一方が空転して左右のベーンポンプ間に大きな吐出流量差が発生した場合にはオリフィスの前後に圧力差が発生することとなり、接地している側の副駆動輪に動力源からの動力が伝達される(いわゆる差動制限装置と同様の働きが得られる)ので、泥濘からの脱出が可能となる。なお、上記旋回走行時に左右のベーンポンプ間を流れる作動油流量は小さく、上記オリフィスの前後で生じる圧力差は極めて小さいので、このオリフィスの存在により、上記差動機構としての働きが妨げられることはない。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−125555号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記ハイドロリックカップリング装置を備えた車両では、車両の前進走行中に急制動を行った場合には、副駆動輪の回転速度は制動を受けて路面に対してスリップしている主駆動輪の回転速度よりも大きくなり、このとき左右のベーンポンプはそれぞれ吸入ポートが吐出側となってポンプ作動を行う。この際、左右の副駆動輪の一方が摩擦係数の小さい路面に差し掛かってスリップすると、スリップした側の副駆動輪の回転速度は主駆動輪の回転速度に近づいてその相対回転速度が小さくなる一方、スリップしていない側の副駆動輪の回転速度は主駆動輪の回転速度よりも大きく、カムリングとロータとの間の相対回転速度は大きくなるので、左右のベーンポンプ間には大きな吐出流量差が発生する。このため、上記ハイドロリックカップリング装置では差動制限装置としての機能が発揮され、スリップしていない側の副駆動輪にのみ大きなトルク(制動側のトルク)が作用するので、左右の副駆動輪間にはトルク差が発生し、走行安定性が低下してしまう。このような事態を防止する手段として、左右のベーンポンプの吐出ポート同士を連通する油路中に設けられたオリフィス及び吸入ポート同士を連通する油路中に設けられたオリフィスをなくす、或いはこれらオリフィスの径を大きくして差動制限の働きを弱めるようにする対策が考えられるが、この場合には、今度は左右の副駆動輪の一方が泥濘にはまったような場合などにおいて必要な差動制限の働きが十分に発揮されなくなってしまう。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、泥濘にはまった状態からの脱出を容易にする差動制限の働きを十分に保持しつつ、急制動中に副駆動輪の一方がスリップした場合でも十分な走行安定性を確保するなど、走行状態に応じた最適のトルク特性を得ることが可能な構成の車両の動力伝達装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するため、本発明に係る車両の動力伝達装置は、左右の駆動輪(例えば、実施形態における左右の後輪WRL,WRR)を備えた車両と、車両に備えられた動力源(例えば、実施形態におけるエンジンE)と、動力源により回転駆動される左側カムリング及び左側駆動輪に連結された左側ロータが相対回転自在に配設されてなる左側ベーンポンプと、動力源により回転駆動される右側カムリング及び右側駆動輪に連結された右側ロータが相対回転自在に配設されてなる右側ベーンポンプとを有し、左側カムリングと左側ロータとの間において相対回転が生じたときに左側ベーンポンプがポンプ作動を起こして左側の駆動輪が駆動されるとともに、右側カムリングと右側ロータとの間において相対回転が生じたときに右側ベーンポンプがポンプ作動を起こして右側の駆動輪が駆動される構成の車両の動力伝達装置において、左側ベーンポンプの吐出ポート及び右側ベーンポンプの吐出ポートを連通する第1油路と、左側ベーンポンプの吸入ポート及び右側ベーンポンプの吸入ポートを連通する第2油路と、第1油路中に設けられた第1オリフィス(例えば、実施形態におけるオリフィスOF3)と、第2油路中に設けられた第2オリフィス(例えば、実施形態におけるオリフィスOF4)と、第1オリフィスを通ることなく両吐出ポートを連通する第1バイパス油路と、第2オリフィスを通ることなく両吸入ポートを連通する第2バイパス油路と、駆動輪の回転速度が所定の回転速度以上であるときに第1バイパス油路及び第2バイパス油路を開放状態にするバイパス油路開放手段とを備える。
【0009】
ここで、上記左側ベーンポンプの吐出ポートとは、車両の前進走行時に左側カムリングの回転速度が左側ロータの回転速度よりも大きくなるときに吐出側となり、車両の前進走行時に左側カムリングの回転速度が左側ロータの回転速度よりも小さくなるときに吸入側となるポートのことである。また、左側ベーンポンプの吸入ポートとは、車両の前進走行時に左側カムリングの回転速度が左側ロータの回転速度よりも大きくなるときに吸入側となり、車両の前進走行時に左側カムリングの回転速度が左側ロータの回転速度よりも小さくなるときに吐出側となるポートのことである。また、右側ベーンポンプの吐出ポートとは、車両の前進走行時に右側カムリングの回転速度が右側ロータの回転速度よりも大きくなるときに吐出側となり、車両の前進走行時に右側カムリングの回転速度が右側ロータの回転速度よりも小さくなるときに吸入側となるポートのことである。また、右側ロータの吸入ポートとは、車両の前進走行時に右側カムリングの回転速度が右側ロータの回転速度よりも大きくなるときに吸入側となり、車両の前進走行時に右側カムリングの回転速度が右側ロータの回転速度よりも小さくなるときに吐出側となるポートのことである。
【0010】
このような構成を有する車両の動力伝達装置では、動力源により回転駆動される左右のカムリングと、左右の駆動輪それぞれに連結された左右のロータとの間に回転速度差が発生した場合には、カムリングとロータとの間に相対回転が生じて左右のベーンポンプがポンプ作動を起こして左右の駆動輪が駆動される。車両が旋回走行を行っているときには、左右の駆動輪間で大きな回転速度差が生じ、内輪となる駆動輪に繋がるベーンポンプからの吐出流量が、外輪となる駆動輪に繋がるベーンポンプからの吐出流量に比べて多くなるが、この場合には、吐出流量の多い側から少ない側へ第1油路若しくは第2油路を通じて作動流体が流れるので、吐出流量の多くなる側のベーンポンプに大きな負荷が作用することはない。
【0011】
また、左右の駆動輪の一方が泥濘にはまったような場合、スリップしていない側の駆動輪に繋がるベーンポンプより吐出される作動流体の流量は、スリップしている側の駆動輪に繋がるベーンポンプからの吐出流量に比べて大きくなる。ここで、スリップしている側の駆動輪に繋がるベーンポンプより吐出された作動流体は、第1油路若しくは第2油路を通じてスリップした側の駆動輪に繋がるベーンポンプ内に流入しようとするが、その流量は大きく、第1油路中に設けられた第1オリフィス若しくは第2油路中に設けられた第2オリフィスの前後では大きな圧力差が発生するため、スリップしていない側の駆動輪に繋がるベーンポンプには大きな駆動力が伝達されることとなり、車両は泥濘からの脱出が可能となる。
【0012】
また、本動力伝達装置には、左右のカムリングの回転速度が所定の回転速度以上であるときに第1バイパス油路及び第2バイパス油路を開放状態にするバイパス油路開放手段が備えられており、左右のベーンポンプ間を流れる作動流体は、低速走行時には第1オリフィス及び第2オリフィスのみを通り、高速走行時には第1オリフィス及び第2オリフィスよりもむしろ第1及び第2バイパス油路を通るようになっている。このため、左右の駆動輪間の差動制限を必要とする低速走行時には第1オリフィス及び第2オリフィスによる差動制限機能が十分に発揮されて泥沼からの容易な脱出が可能であり、左右の駆動輪間の差動制限をあまり必要としない高速走行時には左右のベーンポンプの吸入ポート同士及び吐出ポート同士がそれぞれ同圧の状態となるので、高速走行状態から制動を行ったときでも左右の駆動輪のトルクが異なることがなく、安定した走行が可能となる。このように本発明によれば、走行状態に応じた最適のトルク特性が得られる。
【0013】
ここで、上記バイパス油路開放手段は、第1バイパス油路及び第2バイパス油路中それぞれに介装された2つ1組のチェックバルブからなり、各チェックバルブは、左右のカムリングと一体となって回転するバルブボディ内に挿設されて左右のカムリングの回転軸を中心とする半径方向に移動自在なチェックボールと、チェックボールを常時バルブボディの中心方向に付勢するばね部材とからなり、チェックボールがバルブボディの回転に伴う遠心力を受けて移動することにより第1バイパス油路及び第2バイパス油路が開放状態にされるようになっている構成であることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る車両(四輪駆動車)Vは車体前部に横置きに配置したエンジンEと、このエンジンEの右側面に結合したトランスミッションMとを備える。トランスミッションMの駆動出力を主駆動輪としての左右の前輪WFL,WFRに伝達する第1動力伝達系D1は、トランスミッションMの出力軸1に設けた第1スパーギヤ2と、第1スパーギヤ2に噛合する第2スパーギヤ3と、第2スパーギヤ3により駆動されるベベルギヤ式のフロントディファレンシャル4と、フロントディファレンシャル4から左右に延出して前輪WFL,WFRに接続される左右の車軸5L,5Rとから構成される。
【0015】
第1動力伝達系D1の駆動力を副駆動輪としての後輪WRL,WRRに伝達する第2動力伝達系D2は、フロントディファレンシャル4のデフボックスに設けられて第2スパーギヤ3と一体回転する第3スパーギヤ6と、第3スパーギヤ6に噛合する第4スパーギヤ7と、第4スパーギヤ7と一体に回転する第1ベベルギヤ8と、第1ベベルギヤ8に噛合する第2ベベルギヤ9と、前端に第2ベベルギヤ9を備えて車体後方に延びるプロペラシャフト10と、プロペラシャフト10の後端に設けたドライブピニオン11と、ドライブピニオン11に噛合するリングギヤ12と、リングギヤ12により駆動されるハイドロリックカップリング装置Hと、ハイドロリックカップリング装置Hから左右に延出して後輪WRL,WRRに接続される左右の車軸13L,13Rとを備える。
【0016】
次に、図2に基づいてハイドロリックカップリング装置Hの構造を説明する。ハイドロリックカップリング装置Hは、左右対称に配置された左側ベーンポンプPL及び右側ベーンポンプPRと、これら両ベーンポンプPL,PRの間に配置されたセンタープレート50と、これら左右のベーンポンプPL,PR及びセンタープレート50を内部に収容する円筒状のカバー部材80とを備えて構成される。
【0017】
左側ベーンポンプPLは、左側サイドプレート30L、左側カムリング31L、左側バルブプレート32L、左側ロータ33L及び左側ベーン35Lを有して構成される。また、右側ベーンポンプPRは、右側サイドプレート30R、右側カムリング31R、右側バルブプレート32R、右側ロータ33R及び右側ベーン35Rを有して構成される。そして、左側サイドプレート30L、左側カムリング31L、左側バルブプレート32L、センタープレート50、右側バルブプレート32R、右側カムリング31R及び右側サイドプレート30Rは9本のボルト21により図示のように一体に結合される。なお、このとき隣り合わせとなる部材は、ノックピン(図示せず)により予め相互に位置決めされる。
【0018】
カバー部材80は中央部が円筒状に形成されており、右端部には内周面が円筒状になるように折り曲げ形成された右方突出部81が、また左端部には半径方向外方にテーパ状に拡がる裾部82が設けられている。右方突出部81の内方には右側サイドプレート30Rの右端部より右方に延出して設けられた断面円形状の右方延出部30aが嵌入している。カバー部材80の右方突出部81と右側サイドプレート30Rの右方延出部30aとの結合は、この右方延出部30aの外周面上に着脱自在に取り付けられた止め輪22によりなされ、カバー部材80と右方延出部30aとの接合面は、右方延出部30aの外周部に設けられたOリング23によりシールされる。
【0019】
カバー部材80の左端部には、カバー部材80の左端開口部を閉じるように、左側サイドプレート30Lの外周部より半径方向外方に突出して延びて設けられたフランジ部30bが接合される。図2に示すように、このフランジ部30bの右端面には、リングギヤ12が複数本のボルト24により取り付けられるが、このフランジ部30bにリングギヤ12を取り付けるとき、カバー部材80の裾部82が、フランジ部30bとリングギヤ12との間に挟み込まれるようにし、これによりカバー部材80と左側サイドプレート30Lとが接合されるようにする。なお、この挟み込みの際には、裾部82の内周面側にOリング25を設置しておき、ボルト24の締め付けにより、このOリング25が裾部82と左側サイドプレート30Lの外周面と、フランジ部30bの右面とにより囲まれてなる断面三角形の円環状(カバー部材80の軸方向から見たときに円環状となる)空間内に固定保持されるようにする。これによりカバー部材80と左側サイドプレート30Lとの接合面はOリング25によりシールされた状態となる。ここで、図2に示すように、左側サイドプレート30Lの外周面のうちフランジ部30bよりも右側の部分は、その少なくとも一部がカバー部材80における円筒状の部分(裾部82でない部分)にかかるようになっているので、カバー部材80の内部に収納される他の部材(左側カムリング31Lや左側バルブプレート32Lなど)と同様、左側サイドプレート30Lの芯出し(中心軸合わせ)を容易に行うことができる。
【0020】
左側バルブプレート32L及び右側バルブプレート32Rは或る程度厚みのある焼結金属から構成され、センタープレート50も或る程度厚みのある焼結金属から構成される。図2から分かるように、左側ベーンポンプPLは左側カムリング31L及び左側ロータ33Lの左側面に左側サイドプレート30Lを有するとともに、右側面に左側バルブプレート32Lを有して構成されており、右側ベーンポンプPRは右側カムリング31R及び右側ロータ33Rの右側面に右側サイドプレート30Rを有するとともに、左側面に右側バルブプレート32Rを有して構成されている。
【0021】
図2に示すように、左側サイドプレート30Lの左側面からは環状の左方支持部30cが左方に突出して設けられており、同様に右側サイドプレート30Rの(右方延出部30aの)右側面からは環状の右方支持部30dが右方に突出して設けられている。左方支持部30cの外周面はボールベアリング26を介してハウジング20に支持されており、右方支持部30dの外周面はボールベアリング27を介して同じくハウジング20に支持されている。
【0022】
図2に示すように、左側サイドプレート30Lの中央に設けられた軸孔30eには、これを貫通するように左側ロータシャフト90Lが設けられており、右側サイドプレート30Rの中央に設けられた軸孔30eには、これを貫通するように右側ロータシャフト90Rが設けられている。左方支持部30cの内周面にはボールベアリング93が設けられており、このボールベアリング93を介して左側ロータシャフト90Lが回転自在に支持されている。また、右方支持部30dの内周面にはボールベアリング94が設けられており、このボールベアリング94を介して右側ロータシャフト90Rが回転自在に支持されている。
【0023】
左側ロータシャフト90Lの左端側は左側サイドプレート30Lの左方に突出して延びており、この左方に突出した部分には、左側後輪WRLの車軸13Lが左側ロータシャフト90Lの外周面上に設けられたスプライン91Lを介して結合される(車軸13Lは図2には図示せず)。また、右側ロータシャフト90Rの右端側は右側サイドプレート30Rの右方に突出して延びており、この右方に突出した部分には、右側後輪WRRの車軸13Rが右側ロータシャフト90Rの外周面上に設けられたスプライン91Rを介して結合される(車軸13Rは図2には図示せず)。
【0024】
左側ロータシャフト90Lの外周は、左側の軸孔30e内に設置されたオイルシール95によりシールされ、右側ロータシャフト90Rの外周は、右側の軸孔30e内に設置されたオイルシール96によりシールされる。従って、前述の2個のOリング23,25とこれら2個のオイルシール95,96とによって、左右のベーンポンプPL,PR内の作動油が外部へ漏出するのが防止されるとともに、左右のベーンポンプPL,PRの内部へのエアーの侵入が防止される。
【0025】
左側ロータシャフト90Lの外周面に設けられたスプライン92Lには、左ロータ33Lが中央部に設けられた軸孔を嵌合させて取り付けられており、これにより左側ロータ33Lは左側サイドプレート30L、左側カムリング31L及び左側バルブプレート32Lにより囲まれた空間内において回転自在に収容された状態となっている。また、右側ロータシャフト90Rの外周面に設けられたスプライン92Rには、右側ロータ33Rが中央部に設けられた軸孔を嵌合させて取り付けられており、これにより右側ロータ33Rは右側サイドプレート30R、右側カムリング31R及び右側バルブプレート32Rにより囲まれた空間内において回転自在に収容された状態になっている。また、左側バルブプレート32Lの中央部に設けられた軸孔の内周面にはローラーベアリング97Lが、また右側バルブプレート32Rの中央部に設けられた軸孔の内周面にはローラーベアリング97Rがそれぞれ設けられており、これらローラーベアリング97L,97Rにより左側ロータシャフト90Lの右端部及び右側ロータシャフト90Rの左端部がそれぞれ回転自在に支持されている。
【0026】
図2に示すように、左右のロータシャフト90L,90Rの内部には、軸方向に延びて両端が開口する貫通孔101,101が設けられている。各貫通孔101内には、外周面にOリング102を有したピストン103と、貫通孔101の外端を閉塞するプラグ104と、プラグ104及びピストン103間に設置されたコイルばね105とが備えられており、これら部材により左右のアキュムレータ100L,100Rが構成されている。ここで、エアーの閉じ込みにより各ピストン103の移動を妨げないようにするため、各プラグ104には内部を軸方向に貫通する通孔104aが設けられている。
【0027】
左右のサイドプレート30L,30R、左右のロータ33L,33R、左右のバルブプレート32L,32R及びセンタープレート50の各内周面により囲まれた空間は作動油を蓄えるリザーバ(第1リザーバRS1と称する)を構成している。また、カバー部材80と右側サイドプレート30Rとの間の空間も作動油を蓄えるリザーバ(第2リザーバRS2と称する)を構成しているが、この第2リザーバRS2は右側サイドプレート30Rを斜めに貫通して設けられた連通孔99を介して右側のロータシャフト90Lの外周面と連通しており、これにより第1リザーバRS1と第2リザーバRS2とは繋がった状態となっている。また、カバー部材80の内周面と左右のサイドプレート30L,30R、左右のカムリング31L,31R、左右のバルブプレート32L,32R及びセンタープレート50の各外周面とにより囲まれる空間もリザーバ(第3リザーバRS3と称する)を構成している。この第3リザーバRS3は上記第2リザーバRS2とカバー部材80の内面側空間を介して連通しているので、結果として第1リザーバRS1、第2リザーバRS2及び第3リザーバRS3は互いに連通しており、以下の説明において、これら3つのリザーバRS1、RS2,RS3を合わせてリザーバRSと称することにする。
【0028】
以下、図3〜図6を参照して左右のベーンポンプPL,PR及びセンタープレート50の構造を詳細に説明するが、左側ベーンポンプPLの構造は右側ベーンポンプPRの構造と左右鏡面対称であるため、主に右側の構造部材について説明して左側の構造部材についての重複説明は省略することにする。なお、右側ベーンポンプPR及び左側ベーンポンプPLの相対応する構成要素には、同一の参照符号にそれぞれ添字「R」及び「L」を付しており、同一参照符号の要素が左右鏡面対称位置に設けられていることを意味する。
【0029】
図3に示すように、右側カムリング31Rの内周面は3つの変形三日月状のカム面を有するように形成されており、その内部に収納された円形の右側ロータ33Rとの間に、円周方向に120°ずつ離間した3個の作動室34Rが形成されている。右側ロータ33Rには外径方向に放射状に延びる8個のベーン溝33aが形成されており、これらベーン溝33a内にそれぞれ板状の右側ベーン35Rが径方向に摺動自在に支持されており、これら右側ベーン35Rの半径方向外端は右側カムリング31Rの内周面に摺接している。右側ロータ33Rの両側面には環状のベーン押上げポート33b,33bが形成されており、これらベーン押上げポート33b,33bには右側ロータ33Rに備えられた上記8個のベーン溝33aそれぞれの底部が連通している。また、各右側ベーン35Rの半径方向外端を右側カムリング31Rの内周面に密着させるべく、各ベーン溝33aの底部と右側ベーン35Rの半径方向内端との間にはコイルスプリング36が縮設されている。
【0030】
図4に示すように、右側バルブプレート32Rの右面(右側カムリング31R及び右側ロータ33Rに対向する面)には、鈍角L字状に形成されてその一部が右側ベーンポンプPRの有する作動室34Rの内周面の一端側にそれぞれ臨む3個の吐出ポート37R(図3も参照)と、同じく鈍角L字状に形成されてその一部が右側ベーンポンプPRの有する作動室34Rの内周面の他端側にそれぞれ臨む計3個の吸入ポート38R(図3も参照)とが凹設されている。
【0031】
各吐出ポート37R及び各吸入ポート38Rは、図4、図5及び図7に示すように、右側バルブプレート32Rを厚さ方向に貫通して設けられた連通孔h1Rと、右側バルブプレート32Rの左面(センタープレート50に対向する面)に凹設された連通溝g1Rと、右側バルブプレート32Rの左面に凹設された円環状の連通溝g6Rと、右側バルブプレート32Rを厚さ方向に貫通して設けられた連通孔h2Rと、右側バルブプレート32Rの右面に凹設された連通溝g2Rとを介して、ベーン押上げポート33bと対向するように右側バルブプレート32Rの右面に凹設された環状の連通溝g3Rに連通している。ここで、図7に示すように、連通孔h1R内には右側バルブプレート32Rの左面側に向かってテーパ状に拡がる形状の弁座39aが設けられており、右側バルブプレート32Rの左面側から連通孔h1R内に挿着されたチェックボール39bと上記弁座39aとによってチェックバルブ39Rが構成される。このチェックバルブ39Rは、吐出ポート37R及び吸入ポート38R側から連通溝g3R(すなわちベーン押上げポート33b)側への作動油の流通を許容し、その逆方向の作動油の流通を阻止する機能を有する。なお、チェックボール39bの連通孔h1Rからの脱落はセンタープレート50によって阻止される。
【0032】
図4、図5及び図7に示すように、各吐出ポート37R及び各吸入ポート38Rはいずれも右側バルブプレート32Rを厚さ方向に貫通して設けられた連通孔h3Rと、右側バルブプレート32Rの左面に凹設された連通溝g5Rとを介してカバー部材80の内周面側に形成される前述の第3リザーバRS3と連通している。図7に示すように、連通孔h3R内には右側バルブプレート32Rの右面側に向かってテーパ状に拡がる形状の弁座40aが設けられており、右側バルブプレート32Rの右面側から連通孔h3R内に挿着されたチェックボール40bと上記弁座40aとによってチェックバルブ40Rが構成される。なお、チェックボール40bの連通孔h3Rからの脱落は右側カムリング31Rによって阻止される(左側バルブプレート32L側のチェックバルブ40Lについては左側カムリング31Lによって阻止される)。
【0033】
上記チェックバルブ40Rは、吐出ポート37R及び吸入ポート38R側からリザーバRS側への作動油の流通を阻止し、その逆方向の作動油の流通を許容する機能を有する。このため吐出ポート37Rが高圧になり、吸入ポート38Rが低圧になった場合には、吸入ポート38RがリザーバRSより作動油を吸い上げることを許容しつつ、高圧側の吐出ポート37Rから吐出された高圧の作動油がリザーバRS内に流入しないようにすることができる。一方、吸入ポート38Rが高圧になり、吐出ポート37Rが低圧になった場合には、吐出ポート37RがリザーバRSより作動油を吸い上げることを許容しつつ、高圧側の吸入ポート38Rから吐出された作動油がリザーバRS内に流入しないようにすることができる。
【0034】
図5及び図8に示すように、右側ベーンポンプPRにおける各吐出ポート37R及び各吸入ポート38Rは前述した円環状の連通溝g6Rを介して相互に連通している。この円環状の連通溝g6Rは、その一部から半径方向外方に延びて右側バルブプレート32Rの左面に凹設された連通溝g7R、センタープレート50を厚さ方向に貫通して設けられたオリフィスOF1R(図6も参照)、左側バルブプレート32Lの右面に半径方向に延びて凹設された連通溝g8L、センタープレート50を厚さ方向に貫通して設けられたオリフィスOF2R(図6も参照)、右側バルブプレート32Rの左面に半径方向に延びて凹設された連通溝g9Rを介して第3リザーバRS3に連通している。
【0035】
また同様に、左側ベーンポンプPLにおける各吐出ポート37L及び各吸入ポート38Lは左側バルブプレート32Lの右面に凹設された円環状の連通溝g6L(図8参照)を介して相互に連通している。そして、この円環状の連通溝g6Lは、その一部から半径方向外方に延びて左側バルブプレート32Lの右面に凹設された連通溝g7L、センタープレート50を厚さ方向に貫通して設けられたオリフィスOF1L(図6も参照)、右側バルブプレート32Rの左面に半径方向延びて凹設された連通溝g8R(図5参照)、センタープレート50を厚さ方向に貫通して設けられたオリフィスOF2L(図6も参照)、左側バルブプレート32Lの右面に半径方向に延びて凹設された連通溝g9Lを介して第3リザーバRS3に連通している。
【0036】
また、図9に示すように、右側バルブプレート32Rにおける各吐出ポート37Rより右側バルブプレート32Rを厚さ方向に貫通して設けられた連通孔h5Rと、左側バルブプレート32Lにおける各吐出ポート37Lより左側バルブプレート32Lを厚さ方向に貫通して設けられた連通孔h5Lとは、センタープレート50を厚さ方向に貫通して設けられたオリフィスOF3(図6も参照)を介して連通している。また、同じく図9に示すように、右側バルブプレート32Rにおける各吸入ポート38Rより右側バルブプレート32Rを厚さ方向に貫通して設けられた連通孔h6Rと、左側バルブプレート32Lにおける各吸入ポート38Lより左側バルブプレート32Lを厚さ方向に貫通して設けられた連通孔h6Lとは、センタープレート50を厚さ方向に貫通して設けられたオリフィスOF4(図6も参照)を介して連通している。このように、左側ベーンポンプPLの3つの吐出ポート37Lと右側ベーンポンプPRの3つの吐出ポート37Rとはそれぞれ鏡面対称に配置されたもの(ポート)同士がオリフィスOF3を介して連通しており、左側ベーンポンプPLの3つの吸入ポート38Lと右側ベーンポンプPRの3つの吸入ポート38Rとはそれぞれ鏡面対称に配置されたもの(ポート)同士がオリフィスOF4を介して連通している。
【0037】
図5及び図9に示すように、右側バルブプレート32Rの厚さ方向中間部には、一端側が連通孔h5Rの内表面上に開口して他端側が右側バルブプレート32Rの外周面上に開口したバルブ穴k1Rと、一端側が連通孔h6Rの内表面上に開口して他端側が右側バルブプレート32Rの外周面上に開口したバルブ穴k4Rとが設けられている。また、左側バルブプレート32Lの厚さ方向中間部には、一端側が連通孔h5Lの内表面上に開口して他端側が左側バルブプレート32Lの外周面上に開口したバルブ穴k1Lと、一端側が連通孔h6Lの内表面上に開口して他端側が左側バルブプレート32Lの外周面上に開口したバルブ穴k4Lとが設けられている。各バルブ穴k1R,k1L,k4R,k4Lの半径方向内方(そのバルブ穴が設けられた右又は左側バルブプレート32R,32Lの半径方向内方)側端部にはそのバルブ穴が連通する連通孔h5R,h5L,h6R,h6L側に向かってテーパ状に狭まる形状の弁座VSが設けられており、各バルブ穴の半径方向外方(そのバルブ穴が設けられた右又は左側バルブプレート32R,32Lの半径方向外方)側端部には各バルブ穴と第3リザーバRS3との間の連通を遮断するプラグPGが設けられている。
【0038】
各バルブ穴k1R,k1L,k4R,k4L内にはチェックボールCBが設けられており、各バルブ穴に設けられた弁座VSとプラグPGとの間において移動自在になっている。また、各チェックボールCBは、バルブ穴内におけるチェックボールCBとプラグPGとの間の空間内に縮設されたスプリングSPにより、常時弁座VS側に付勢されている。
【0039】
図9に示すように、右側バルブプレート32Rに設けられたバルブ穴k1Rと左側バルブプレート32Lに設けられたバルブ穴k1Lとは、右側バルブプレート32Rを厚さ方向に延びて設けられた連通油路k2R、センタープレート50を厚さ方向に貫通して設けられた連通油路k3及び左側バルブプレート32Lを厚さ方向に延びて設けられた連通油路k2Lを介して連通している。また、右側バルブプレート32Rに設けられたバルブ穴k4Rと左側バルブプレート32Lに設けられた上バルブ穴k4Lとは、右側バルブプレート32Rを厚さ方向に延びて設けられた連通油路k3R、センタープレート50を厚さ方向に貫通して設けられた連通油路k4及び左側バルブプレート32Lを厚さ方向に延びて設けられた連通油路k3Lを介して連通している。
【0040】
ここで、バルブ穴k1L、連通油路k2L,k3,k2R及びバルブ穴k1Rからなる油路を第1バイパス油路と称し、バルブ穴k1L内に設けられた弁座VS、チェックボールCB及びスプリングSPからなるチェックバルブを左側第1チェックバルブCVL1、バルブ穴k1R内に設けられた弁座VS、チェックボールCB及びスプリングSPからなるチェックバルブを右側第1チェックバルブCVR1と称することにする。また、バルブ穴k4L、連通油路k5L,k6,k5R及びバルブ穴k4Rからなる油路を第2バイパス油路と称し、バルブ穴k4L内に設けられた弁座VS、チェックボールCB及びスプリングSPからなるチェックバルブを左側第2チェックバルブCVL2、バルブ穴k4R内に設けられた弁座VS、チェックボールCB及びスプリングSPからなるチェックバルブを右側第2チェックバルブCVR2と称することにする。
【0041】
このような構成においては、第1バイパス油路中に介装された2つ1組のチェックバルブである左右両第1チェックバルブCVL1,CVR1が双方ともに開放状態(チェックボールCBが弁座VSに押し付けられていない状態)にあるときには左右の連通孔h5L,h5RはオリフィスOF3で繋がるほか第1バイパス油路を介して繋がることとなり、第2バイパス油路中に介装された2つ1組のチェックバルブである左右両第2チェックバルブCVL2,CVR2が双方ともに開放状態にあるときには左右の連通孔h6L,h6RはオリフィスOF4で繋がるほか第2バイパス油路を介して繋がることとなる。これに対し、左右の第1チェックバルブCVL1,CVR1の少なくとも一方が閉止状態(チェックボールCBが弁座VSに押し付けられている状態)にあるときには第1バイパス油路は閉止状態となるので、左右の連通孔h5L,h5RはオリフィスOF3のみで繋がることとなる。また同様に、左右の第2チェックバルブCVL2,CVR2の少なくとも一方が閉止状態にあるときには第2バイパス油路は閉止状態となるので、左右の連通孔h6L,h6RはオリフィスOF4のみで繋がることとなる。
【0042】
また、左右の第1チェックバルブCVR1,CVL1の各チェックボールCBには、常時スプリングSPによる第1バイパス油路を閉止する方向の付勢力が作用する一方で、左右のバルブプレート32L,32Rが回転するときには、上記スプリングSPの付勢力に抗して左右のバルブプレート32L,32Rの半径方向外方に移動しようとする遠心力が作用する。従って、左右のバルブプレート32L,32Rが比較的低速で回転している状態(すなわち車両Vが比較的低速で走行している状態)において、左右の吐出ポート37L,37R同士が同圧である場合(例えば車両Vが直進走行している場合)には、両第1チェックバルブCVR1,CVL1のチェックボールCBはともに弁座VSから離間し、左右の第1チェックバルブCVL1,CVR1はいずれも開放状態となる。このとき第1バイパス油路は両チェックバルブCVR1,CVL1のチェックボールCBの移動量、すなわち左右のバルブプレート32L,32Rの回転速度に応じた(車両Vの走行速度に応じた)開度で開放された状態となるが、左右の吐出ポート37L,37Rは互いに同圧であるため、オリフィスOF3は勿論、第1バイパス油路を通って流れる作動油はほとんどない。
【0043】
同様に、左右の第2チェックバルブCVR2,CVL2の各チェックボールCBには常時スプリングSPによる第2バイパス油路を閉止する方向の付勢力が作用する一方で、左右のバルブプレート32L,32Rが回転するときには、上記スプリングSPの付勢力に抗して左右のバルブプレート32L,32Rの半径方向外方に移動しようとする遠心力が作用する。従って、左右のバルブプレート32L,32Rが比較的低速で回転している状態において、左右の吸入ポート38L,38R同士が同圧である場合には、両第2チェックバルブCVR2,CVL2のチェックボールCBはともに弁座VSから離間し、左右の第2チェックバルブCVL2,CVR2はいずれも開放状態となる。このとき第2バイパス油路は両チェックバルブCVR2,CVL2のチェックボールCBの移動量、すなわち左右のバルブプレート32L,32Rの回転速度に応じた開度で開放された状態となるが、左右の吸入ポート38L,38Rは互いに同圧であるため、オリフィスOF4は勿論、第2バイパス油路を通って流れる作動油はほとんどない。
【0044】
一方、左右のバルブプレート32L,32Rが回転している状態であっても(但し、その回転速度が低い場合)、左右の吐出ポート37L,37R間に圧力差があるときには、圧力の高い吐出ポート側に繋がるチェックバルブは開放状態となるものの、圧力の低い吐出ポート側に繋がるチェックバルブは閉止状態となるので第1バイパス油路は閉止された状態となり、両吐出ポート37L,37R間を流れる作動油はオリフィスOF3を通るもののみとなる。同様に、左右のバルブプレート32L,32Rが回転している状態であっても(但し、その回転速度が低い場合)、左右の吸入ポート38L,38R間に圧力差がある場合には、圧力の高い吐出ポート側に繋がるチェックバルブは開放状態となるものの、圧力の低い吐出ポート側に繋がるチェックバルブは閉止状態となるので第2バイパス油路は閉止された状態となり、両吸入ポート38L,38R間を流れる作動油はオリフィスOF4を通るもののみとなる。図10(A)は、このように左右のバルブプレート32L,32Rが低速で回転しており、かつ左右のバルブプレート32L,32R間に圧力差がある状態における両吐出ポート37L,37R間の作動油の流れを示したものである。
【0045】
また、上記のように左右の吐出ポート37L,37R間に圧力差がある場合であっても、左右のバルブプレート32L,32Rの回転速度が所定の速度よりも大きく、左右の第1チェックバルブCVL1,CVR1の各チェックボールCBが自身に作用する慣性力(遠心力)により左右のバルブプレート32L,32Rの半径方向外方に移動して、その重心が左右の連通孔k2L,k2Rの開口部よりも更に左右のバルブプレート32L,32Rの半径方向外方に位置した状態となるときには左右の第1チェックバルブCVL1,CVR1はいずれも開放状態となり、第1バイパス油路は開放された状態となる。このとき両吐出ポート37L,37R間を流れる作動油は、オリフィスOF3よりも、むしろ開口面積の大きい第1バイパス油路を通るようになる。同様に、左右の吸入ポート38L,38R間に圧力差がある場合であっても、左右のバルブプレート32L,32Rの回転速度が大きく、左右の第2チェックバルブCVL2,CVR2の各チェックボールCBが自身に作用する慣性力(遠心力)により左右のバルブプレート32L,32Rの半径方向外方に移動して、その重心が左右の連通孔k5L,k5Rの開口部よりも更に左右のバルブプレート32L,32Rの半径方向外方に位置した状態となるときには左右の第2チェックバルブCVL2,CVR2はいずれも開放状態となり、第2バイパス油路は開放された状態となる。このとき両吐出ポート38L,38R間を流れる作動油は、オリフィスOF4よりも、むしろ開口面積の大きい第2バイパス油路を通るようになる。図10(B)は、このように左右のバルブプレート32L,32R間に圧力差はあるが、左右のバルブプレート32L,32Rが高速で回転しているために、第1チェックバルブCVL1,CVR2を構成する各チェックボールCBの重心が左右の連通孔k2L,k2Rの開口部よりもバルブプレート32L,32Rの半径方向外方に位置した状態になっているときの両吐出ポート37L,37R間の作動油の流れを示したものである。
【0046】
図11は、上記ハイドロリックカップリング装置Hの構成を油圧回路図により示したものである。このハイドロリックカップリング装置Hでは、上述のように、右側ベーンポンプPRにおける3つの吐出ポート37Rは同圧が保持される状態で互いに連通しており、右側ベーンポンプPRにおける3つの吸入ポート38Rも同圧が保持される状態で互いに連通している。このため本油圧回路図では、記載を簡単明瞭にするため、3つの吐出ポート37Rを1つにまとめて示すとともに、3つの吸入ポート38Rを1つにまとめて示している。また同様に、左側ベーンポンプPLにおける3つの吐出ポート37Lも同圧が保持される状態で互いに連通しており、左側ベーンポンプPRにおける3つの吸入ポート38Lもやはり同圧が保持される状態で互いに連通しているので、本油圧回路図では、左側ベーンポンプPLにおける3つの吐出ポート37Lを1つにまとめて示し、左側ベーンポンプPLにおける3つの吸入ポート38Lを1つにまとめて示している。
【0047】
この油圧回路図にも示すように、本ハイドロリックカップリング装置Hでは、左側ベーンポンプPLの吐出ポート37Lは2つのオリフィスOF1L,OF2L経由でリザーバRSに通じる油路と、チェックバルブ40L経由でリザーバRSに通じる油路との2つの油路を有しており、左側ベーンポンプPLの吸入ポート38Lも2つのオリフィスOF1L,OF2L経由でリザーバRSに通じる油路と、チェックバルブ40L経由でリザーバRSに通じる油路との2つの油路を有している。ここで、車両Vの運転に伴って吐出ポート37Lが高圧側となり、吸入ポート38Lが低圧側となったときには、吐出ポート37L側のチェックバルブ40Lは吐出ポート37L内の高圧を受けて閉弁し、吸入ポート38L側のチェックバルブ40Lは吸入ポート38Lの吸入圧(負圧)により開弁する。このとき、吐出ポート37Lより吐出された高圧の作動油は連通孔h3L経由でリザーバRS内に流入することができずにオリフィスOF1L,OF2Lを通る経路でリザーバRS内に流入し、リザーバRS内の作動油は連通孔h3Lを通って吸入ポート38L内に流入する。
【0048】
また、これとは逆に、車両Vの運転に伴って吸入ポート38Lが高圧側となり、吐出ポート37Lが低圧側となったときには、吸入ポート38L側のチェックバルブ40Lは吸入ポート38L内の高圧を受けて閉弁し、吐出ポート37L側のチェックバルブ40Lは吐出ポート37Lの吸入圧により開弁する。このとき、吸入ポート38Lより吐出された高圧の作動油は連通孔h3L経由でリザーバRS内に流入することができずにオリフィスOF1L,OF2Lを通る経路でリザーバRS内に流入し、リザーバRS内の作動油は連通孔h3Lを通って吐出ポート37L内に流入する。
【0049】
また同様に、右側ベーンポンプPRの吐出ポート37Rは2つのオリフィスOF1R,OF2R経由でリザーバRSに通じる油路と、チェックバルブ40R経由でリザーバRSに通じる油路との2つの油路を有しており、右側ベーンポンプPRの吸入ポート38Rは2つのオリフィスOF1R,OF2R経由でリザーバRSに通じる油路と、チェックバルブ40R経由でリザーバRSに通じる油路との2つの油路を有している。ここで、車両Vの運転に伴って吐出ポート37Rが高圧側となり、吸入ポート38Rが低圧側となったときには、吐出ポート37R側のチェックバルブ40Rは吐出ポート37R内の高圧を受けて閉弁し、吸入ポート38R側のチェックバルブ40Rは吸入ポート38Rの吸入圧により開弁する。このとき、吐出ポート37Rより吐出された高圧の作動油は連通孔h3R経由でリザーバRS内に流入することができずにオリフィスOF1R,OF2Rを通る経路でリザーバRS内に流入し、リザーバRS内の作動油は連通孔h3Rを通って吸入ポート38R内に流入する。
【0050】
また、これとは逆に、車両Vの運転に伴って吸入ポート38Rが高圧側となり、吐出ポート37Rが低圧側となったときには、吸入ポート38R側のチェックバルブ40Rは吸入ポート38R内の高圧を受けて閉弁し、吐出ポート37R側のチェックバルブ40Rは吐出ポート37Rの吸入圧により開弁する。このとき、吸入ポート38Rより吐出された高圧の作動油は連通孔h3R経由でリザーバRS内に流入することができずにオリフィスOF1R,OF2Rを通る経路でリザーバRS内に流入し、リザーバRS内の作動油は連通孔h3Rを通って吐出ポート37R内に流入する。
【0051】
また、左側ベーンポンプPLの吐出ポート37Lと吸入ポート38Lとは、それぞれチェックバルブ39L,39Lを介して左側ロータ33Lのベーン押上げポート33bに連通しているため、これら吐出ポート37Lと吸入ポート38Lのうち高圧になる方の圧力がそのベーン押上げポート33bに作用する。これにより各左側ベーン35Lは半径方向外側に付勢され、その先端は左側カムリング31Lの内周面に圧接される。一方、低圧になる方のポートに繋がるチェックバルブ39Lはベーン押上げポート33b側から作用する圧力により閉じられる。また同様に、右側ベーンポンプPRの吐出ポート37Rと吸入ポート38Rとは、それぞれチェックバルブ39R,39Rを介して右側ロータ33Rのベーン押上げポート33bに連通しているため、これら吐出ポート37Rと吸入ポート38Rのうち高圧になる方の圧力がそのベーン押上げポート33bに作用する。これにより各右側ベーン35Rは半径方向外側に付勢され、その先端は右側カムリング31Rの内周面に圧接される。また、低圧になる方のポートに繋がるチェックバルブ39Rはベーン押上げポート33b側から作用する圧力により閉じられる。
【0052】
また、本ハイドロリックカップリング装置Hにおいては、左側ベーンポンプPLの吐出ポート37Lと右側ベーンポンプPRの吐出ポート37Rとは両連通孔h5L,h5Rを介して連通しており、左側ベーンポンプPLの吸入ポート38Lと右側ベーンポンプPRの吸入ポート38Rとは両連通孔h6L,h6Rを介して連通している。このため、左右双方のベーンポンプPL,PRの吐出流量に差がある場合には、吐出流量の多い側から少ない側に作動油が連通孔h5L,h5R若しくは連通孔h6L,h6Rを通って流れる。但し、両連通孔h5L,h5Rの間にはオリフィスOF3が設けられているため、両吐出ポート37L,37Rから吐出された作動油の流量に差がある場合には、その流量に応じた流通抵抗が働いて、オリフィスOF3の前後に圧力差が生じる。また同様に、両連通孔h6L,h6Rの間にはオリフィスOF4が設けられているため、両吸入ポート38L,38Rから吐出される作動油の流量に差がある場合には、その流量に応じた流通抵抗が働いて、オリフィスOF4の前後に圧力差が生じる。
【0053】
また、本ハイドロリックカップリング装置Hにおいては、前述したように、左右のロータシャフト90L,90Rの内部に左右のアキュムレータ100L,100Rが設けられており、ベーンポンプPL,PR内の作動油が温度変化により膨張或いは収縮したときには、第1リザーバRS1の容積が変化して作動油の容積変化が吸収されるようになっている。すなわち、温度の上昇により作動油が膨張した場合には、左右のアキュムレータ100L,100Rの各ピストン103がコイルばね105を圧縮して相互に離反する方向に移動することにより、第1リザーバRS1の容積を増大させる。これにより、ポンプ内部が高圧となって構成部材に過大な負荷がかかるような事態が防止される。一方、温度の低下により作動油が収縮した場合には、各ピストン103がコイルばね105の弾発力で相互に接近する方向に移動することにより、第1リザーバRS1の容積を減少させる。これにより、リザーバRS内にエアーが侵入するのが防止される。
【0054】
次に、上述の構成を備えた本発明に係る車両の動力伝達装置であるハイドロリックカップリング装置Hの車両Vの走行状態に応じた具体的な作動について説明する。車両Vが前進或いは後進走行している状態では、エンジンEの駆動力はトランスミッションMの出力軸1から第1スパーギヤ2、第2スパーギヤ3、フロントディファレンシャル4及び左右の車軸5L,5Rを介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。このとき、フロントディファレンシャル4の第3スパーギヤ6の回転は、第4スパーギヤ7、第1ベベルギヤ8、第2ベベルギヤ9、プロペラシャフト10、ドライブピニオン11及びリングギヤ12を介してハイドロリックカップリング装置Hの左右のカムリング31L,31Rを回転させる。一方、車両Vの走行に伴って路面から受ける摩擦力で駆動される後輪WRL,WRRの回転は、左右の車軸13L,13Rからロータシャフト90L,90Rを介して左右のベーンポンプPL,PRのロータ33L,33Rに伝達される。本車両Vでは、前輪WFL,WFRの回転速度と後輪WRL,WRRの回転速度とが等しいときには、左右のカムリング31L,31Rの回転速度と左右のロータ33L,33Rの回転速度とが一致するように構成される。
【0055】
ここで、車両Vが定速走行或いは通常の加減速走行を行っており、前輪WFL,WFRの回転速度と後輪WRL,WRRの回転速度とが等しいときには、左側カムリング31Lと左側ロータ33Lとの間、及び右側カムリング31Rと右側ロータ33Rとの間で相対回転が発生しない。その結果、左右のベーンポンプPL,PRはポンプ作動を行わず、ハイドロリックカップリング装置Hは駆動力の伝達を行わないので、車両Vは前輪のみが駆動される二輪駆動状態となる。
【0056】
車両Vが低摩擦路において急発進を行ったとき等において、エンジンEの駆動力が直接作用する前輪WFL,WFRが路面上をスリップしたときには、前輪WFL,WFRの回転速度が後輪WRL,WRRの回転速度よりも大きくなる。この場合には、前輪WFL,WFRの回転に連動して回転作動する左右のベーンポンプPL,PRのカムリング31R,31Lと、後輪WRL,WRRの回転に連動して回転作動する左右のベーンポンプPL,PRのロータ33L,33Rとの間に相対回転が発生する(このときの相対回転方向を正転方向とする)。この正転方向の相対回転は、例えば右側ベーンポンプPRを例にすると、図3において右側カムリング31Rを固定した状態で右側ロータ33Rが反時計回り(矢印A方向)に回転する方向の回転である。
【0057】
このように前輪WFL,WFRの回転速度が後輪WRL,WRRの回転速度を上回り、ロータ33L,33Rがカムリング31L,31Rに対して正転方向に相対回転する場合には、吸入ポート38L,38Rから作動油が吸入されて吐出ポート37L,37Rから作動油が吐出される。この際、高圧側となる吐出ポート37L,37Rから吐出された作動油はチェックバルブ39L,39Rを開弁してベーン押上げポート33b,33bに流入し、各ベーン35L,35Rの先端をカムリング31L,31Rの内周面に押し付ける。
【0058】
ベーン押上げポート33b,33b内に流入した高圧の作動油によりカムリング31L,31Rの内周面に圧接された各ベーン35L,35Rは、その半径方向外端部をカムリング31L,31Rの内周面に摺接させながらロータ33L,33Rとともに回転する。ここで、上述したように、カムリング31L,31Rの内周面には内周方向に120°ずつ離間した三つの作動室(右側ベーンポンプPRでは前述の3つの作動室34R)が形成されており、しかもこれら各作動室は変形三日月状に形成されているので、ロータ33L,33Rとともに各ベーン35L,35Rが正転方向に相対回転すると、作動室内において隣り合うベーン同士、カムリング31L,31Rの内周面及びロータ33L,33Rの外周面により囲まれてなる空間(これをポンプ空間と称する)の容積が変動する。これにより、作動室内にある各ベーン35L,35Rの進行方向前方は高圧領域となるとともに、進行方向後方は低圧領域となる。
【0059】
これによりリザーバRS内の作動油は吸入ポート38L,38R側のチェックバルブ40L,40Rを介して吸入ポート38L,38Rに吸い上げられた後、吐出ポート37L,37Rより高圧の作動油となって吐出される。この吐出ポート37L,37Rより吐出された高圧の作動油はオリフィスOF1L,OF2L或いはオリフィスOF1R,OF2Rを通過して減圧された後リザーバRSに戻るので、結局作動油は左側ベーンポンプPLでは吐出ポート37Lと吸入ポート38Lとの間で還流し、右側ベーンポンプPRでは吐出ポート37Rと吸入ポート38Rとの間で還流することとなる。
【0060】
このように、吐出ポート37L,37Rより吐出された高圧の作動油はそれぞれオリフィス(オリフィスOF1L,OF2L或いはオリフィスOF1R,OF2R)を通過して流れるが、上記各オリフィスを通過するときには通過流量に応じた流通抵抗を受けるので、左右のベーンポンプPL,PRには負荷が発生する。この負荷によりロータ33L,33Rはカムリング31L,31Rから駆動力を受けることとなり、この駆動力が左右の後輪WRL,WRRに伝達される。このため本車両Vでは、上記のように前輪WFL,WFRが路面上をスリップしたときには、前輪のみならず後輪も駆動される四輪駆動状態となり、車両Vのトラクションが増加する。なお、上記オリフィス(オリフィスOF1L,OF2L,OF1R,OF2R)の径が小さいときほど左右のベーンポンプPL,PRの負荷は増大し、後輪WRL,WRRの駆動力は大きくなる。
【0061】
車両Vが低速で旋回走行(前進と後進との両方を含む)を行うときには、前輪WFL,WFRの平均旋回半径よりも左右の後輪WRL,WRRの平均旋回半径の方が小さくなり、かつ後輪WRL,WRRの内輪側は外輪側よりも旋回半径が小さくなるため、左側カムリング31Lと左側ロータ33Lとの間、及び右側カムリング31Rと右側ロータ33Rとの間にはそれぞれ相対回転が発生する。また、左側カムリング31Lと左側ロータ33Lとの間の相対回転速度と、右側カムリング31Rと右側ロータ33Rとの間の相対回転速度とは相異なったものとなる。このような場合にも左側ベーンポンプPLの吐出ポート37Lから吐出された作動油はオリフィスOF1L,OF2Lを経て左側ベーンポンプPLの吸入ポート38Lに還流し、右側ベーンポンプPRの吐出ポート37Rから吐出された作動油はオリフィスOF1R,OF2Rを経て右側ベーンポンプPRの吸入ポート38Rに還流するのであるが、左右のベーンポンプPL,PR間では、吐出した作動油の流量に差が生じるため、吐出流量の多い側から少ない側へ両吐出ポート37L,37Rを繋ぐ油路を介して作動油が流れることとなる。
【0062】
例えば、車両Vが低速で左方向に旋回走行する場合には、左側後輪WRLが内輪となり、右側後輪WRRが外輪となるが、このとき左側ベーンポンプPLにおける左側カムリング31Lと左側ロータ33Lとの間の相対回転速度の方が、右側ベーンポンプPRにおける右側カムリング31Rと右側ロータ33Rとの間の相対回転速度よりも大きくなる。このため、右側ベーンポンプPRが吐出する作動油の流量よりも左側ベーンポンプPLが吐出する作動油の流量の方が大きくなり、その差分は、両吐出ポート37L,37R同士を繋ぐ油路(両連通孔h5L,h5Rを含む油路)を経て流れるとともに、両吸入ポート38L,38R同士を繋ぐ油路(両連通孔h6L,h6Rを含む油路)を経て流れるので、左右の副駆動輪WRL,WRR間の回転速度差が吸収されて差動機構としての機能が発揮される。また、これにより、タイトな旋回走行時であっても、吐出流量が多くなる側のベーンポンプに大きな負荷が作用することがなくなり、いわゆるタイト・コーナ・ブレーキ現象の発生も抑制される。なお、両吐出ポート37L,37R同士を繋ぐ油路中にはオリフィスOF3が介在し、両吸入ポート38L,38R同士を繋ぐ油路中にはオリフィスOF4が介在するが、上記旋回走行時に左右のベーンポンプPL,PR間を流れる作動油流量は小さく、オリフィスOF3,OF4それぞれの前後で生じる圧力差は極めて少ないので、上記差動機構としての働きが妨げられることはない。
【0063】
なお、このとき第1バイパス油路中に介装された左右の第1チェックバルブCVL1,CVR1のうち作動油の吐出圧力が高い側(ここでは吐出流量が多い側に等しい)の吐出ポートに接続するものは開弁するものの、作動油の吐出圧力が低い側(ここでは吐出流量が少ない側に等しい)の吐出ポートに接続するものは閉弁するため第1バイパス油路は閉止状態となる(上述の図10(A)に示す状態)。同様に、第2バイパス油路中に介装された左右の第2チェックバルブCVL2,CVR2のうち作動油の吐出圧力が高い側(ここでは吐出流量が多い側に等しい)の吸入ポートに接続するものは開弁するものの、作動油の吐出圧力が低い側(ここでは吐出流量が少ない側に等しい)の吸入ポートに接続するものは閉弁するため第2バイパス油路は閉止状態となる。よって、このように車両Vが低速で旋回走行する際に、左右の吐出ポート37L,37R間において作動油が第1バイパス油路を通って流れることはなく、また左右の吸入ポート38L,38R間において作動油が第2バイパス油路を通って流れることはない。
【0064】
次に、後輪WRL,WRRの一方、例えば左側後輪WRLを除く左右の前輪WFL,WFR及び右後輪WRRが泥濘にはまった場合を考える。この場合には、泥濘にはまった左右の前輪WFL,WFRはスリップして高速回転(空転)し、これに伴って左右のカムリング31L,31Rも高速で回転するのであるが、右側後輪WRRは前輪WFL,WFRと同様に泥濘にはまって路面抵抗が低下しているため、エンジンEからの動力が伝達されても前輪WFL,WFRと同様高速で回転(空転)してしまう。このため右側カムリング31Rの回転速度と右側ロータ33Rの回転速度とは極めて近いものとなり、その相対回転速度差は小さくなる一方で、スリップしていない側の左側後輪WRLに繋がる左側ロータ33Lと左側カムリング31Lとの間の相対回転速度は非常に大きなものとなり、左側ベーンポンプPLより吐出される作動油の流量は、右側ベーンポンプPRより吐出される作動油の流量に比べて大きくなる。
【0065】
このように左側ベーンポンプPLからの吐出流量が右側ベーンポンプPRからの吐出流量よりも大きくなると、左側ベーンポンプPLから吐出された作動油は右側ベーンポンプPR側へ流れようとする。ここで、もし両ベーンポンプPL,PRの吐出ポート37L,37R同士を繋ぐ油路(連通孔h5L,h5Rを含む油路)中にオリフィスOF3が介在していないのであれば、左側ベーンポンプPLから吐出された作動油は流通抵抗なく右側ベーンポンプPR側に移動できるため吐出ポート37Lは高圧に保たれず、吐出ポート37Lから吐出された作動油はオリフィスOF1L,OF2Lを通過しなくなるので右側後輪WRRのみならず左側後輪WRLにも駆動力が伝達しない状態となってしまうところである。しかし、前述のように、両ベーンポンプPL,PRの吐出ポート37L,37R同士を繋ぐ油路中にはオリフィスOF3が介在しているため、本ケースのように左右のベーンポンプPL,PRからの作動油の吐出流量の差が極めて大きい場合には、このオリフィスOF3の流路抵抗により、左側ベーンポンプPLから吐出された作動油の右側ベーンポンプPR側への流通は規制されることとなり、オリフィスOF3の前後に圧力差が発生して左側ベーンポンプPLの吐出ポート37Lは高圧に保持される。
【0066】
これにより、左側ベーンポンプPLの吐出ポート37Lより吐出された作動油はオリフィスOF1L,OF2Lを通過して負荷が発生するようになるので、左側ロータ33Lには左側カムリング31Lから駆動力が伝達されることとなり、車両Vは泥濘から脱出することができる。このように、本実施形態に示すハイドロリックカップリング装置Hでは、いわゆる差動制限装置(LSD)と同様の機能を備えており、上記オリフィスOF3の径を小さくしておくほど、その機能を強めることができる。なお、このとき第1バイパス油路中に介装された左右の第1チェックバルブCVL1,CVR1のうち作動油の吐出流量が多い側の吐出ポートに接続するものは開弁するものの、作動油の吐出流量が少ない側の吐出ポートに接続するものは閉弁するため第1バイパス油路は閉止状態となる。同様に、第2バイパス油路中に介装された左右の第2チェックバルブCVL2,CVR2のうち作動油の吐出流量が多い側の吸入ポートに接続するものは開弁するものの、作動油の吐出流量が少ない側の吸入ポートに接続するものは閉弁するため第2バイパス油路は閉止状態となる。よって、左右の吐出ポート37L,37R間において作動油が第1バイパス油路を通って流れることはなく、また左右の吸入ポート38L,38R間において作動油が第2バイパス油路を通って流れることはないため、上記差動制限機能は妨げられない。
【0067】
また、前進走行中に急制動を行い、前輪WFL,WFRがロック気味となる場合には(このとき前輪WFL,WFRは路面上をスリップする)、後輪WRL,WRRの回転速度が前輪WFL,WFRの回転速度を上回る。これにより左右のベーンポンプPL,PRのカムリング31R,31Lとロータ33L,33Rとの間には逆転方向の相対回転が発生する。この逆転方向の相対回転は、例えば右側ベーンポンプPRを例にすると、図3において右側カムリング31Rを固定した状態で右側ロータ33Rが時計回り(矢印B方向)に回転する方向の回転である。
【0068】
このように後輪WRL,WRRの回転速度が前輪WFL,WFRの回転速度を上回り、ロータ33L,33Rがカムリング31L,31Rに対して逆転方向に相対回転する場合には、吐出ポート37L,37Rから作動油が吸入されて吸入ポート38L,38Rから作動油が吐出される。この際、高圧側となる吸入ポート38L,38Rから吐出された作動油はチェックバルブ39L,39Rを開弁してベーン押上げポート33b,33bに流入し、各ベーン35L,35Rの先端をカムリング31L,31Rの内周面に押し付ける。
【0069】
ベーン押上げポート33b,33b内に流入した高圧の作動油によりカムリング31L,31Rの内周面に圧接された各ベーン35L,35Rは、その半径方向外端部をカムリング31L,31Rの内周面に摺接させながらロータ33L,33Rとともに回転する。これにより、作動室内にある各ベーン35L,35Rの進行方向前方は高圧領域となるとともに、進行方向後方は低圧領域となる。
【0070】
これによりリザーバRS内の作動油は吐出ポート37L,37R側のチェックバルブ40L,40Rを介して吐出ポート37L,37Rに吸い上げられた後、吸入ポート38L,38Rより高圧の作動油となって吐出される。この吸入ポート38L,38Rより吐出された高圧の作動油はオリフィスOF1L,OF2L或いはオリフィスOF1R,OF2Rを通過して減圧された後リザーバRSに戻るので、結局作動油は左側ベーンポンプPLでは吸入ポート38Lと吐出ポート37Lとの間で還流し、右側ベーンポンプPRでは吸入ポート38Rと吐出ポート37Rとの間で還流することとなる。
【0071】
このように、吸入ポート38L,38Rより吐出された高圧の作動油はそれぞれオリフィス(オリフィスOF1L,OF2L或いはオリフィスOF1R,OF2R)を通過して流れるが、このとき上記各オリフィスを通過するときに通過流量に応じた流通抵抗を受けるので、左右のベーンポンプPL,PRには負荷が発生し、左右の後輪WRL、WRRに車両Vの前進を妨げる方向の力、すなわち制動力が伝達される。
【0072】
ここで、車両Vが前進後進を問わず所定速度以上の高速で走行しており、従って左右のカムリング31L,31Rが所定の回転速度以上で回転しているときには、左右の第1チェックバルブCVL1,CVR1は開放状態を保持して第1バイパス油路は開放状態が維持される(上述の図10(B)に示す状態)。これにより左右のベーンポンプPL,PRの両吐出ポート37L,37R間を流れる作動油のほとんどはオリフィスOF3よりもむしろ第1バイパス油路を通るようになり、両吐出ポート37L,37Rはほぼ同圧となる。また、同様に車両Vが前進後進を問わず所定速度以上の高速で走行しており、従って左右のカムリング31L,31Rが所定の回転速度以上で回転しているときには、左右の第2チェックバルブCVL2,CVR2は開放状態を保持して第2バイパス油路は開放状態が維持される。これにより左右のベーンポンプPL,PRの両吐出ポート38L,38R間を流れる作動油のほとんどはオリフィスOF4よりもむしろ第2バイパス油路を通るようになり、両吐出ポート38L,38Rはほぼ同圧となる。
【0073】
このような状態において、左右の後輪WRL,WRRの一方、例えば右側後輪WRRが摩擦係数の低い路面に差し掛かってスリップした場合には、スリップしている側の右側後輪WRRに繋がる右側ベーンポンプPRの右側ロータ33Rの回転速度は右側カムリング31Rの回転速度に近くなり、ポンプ作動を行わなくなる(エンジンEからの駆動力が伝達されなくなる)一方で、スリップしていない側の左側後輪WRLに繋がるベーンポンプPLはポンプ作動を継続するため、左右の後輪WRL,WRRには相異なるトルクが作用するところである。しかし、左右のベーンポンプPL,PRは上述のように、吸入ポート38L,38R同士及び吐出ポート37L,37R同士がそれぞれほぼ同圧となっているため、左右の後輪WRL,WRRについてはほぼ同程度のトルクが維持される(すなわち差動制限機能の抑止効果が得られる)。これにより、進走行中に制動を行ったときに左右の後輪WRL,WRRのトルクが異なって走行状態が不安定になるのが防止される。また、前進走行中に急制動を行っている場合に左側後輪WRLがスリップした場合も同様であって、このときにも左右の後輪WRL,WRRのトルクは同程度に維持されるので,上記と同様の効果が得られる。
【0074】
このように本発明に係る車両の動力伝達装置(上記ハイドロリックカップリング装置H)には、左右のカムリング31L,31Rの回転速度が所定の回転速度以上であるときに第1バイパス油路及び第2バイパス油路を開放状態にするバイパス油路開放手段(具体的には左右の第1チェックバルブCVL1,CVR1及び第2チェックバルブCVL2,CVR2)が備えられており、左右のベーンポンプPL,PR間を流れる作動油は、低速走行時にはオリフィスOF3,OF4のみを通り、高速走行時にはオリフィスOF3,OF4よりもむしろ第1バイパス油路及び第2バイパス油路を通るようになっている。このため、左右の副駆動輪間(後輪WRL,WRR)の差動制限を必要とする低速走行時にはオリフィスOF3,OF4による差動制限機能が十分に発揮されて泥沼からの容易な脱出が可能であり、左右の副駆動輪間の差動制限をあまり必要としない高速走行時には左右のベーンポンプPL,PRの吐出ポート37L,37R同士及び吸入ポート38L,38R同士がそれぞれ同圧の状態となるので、高速走行状態から制動を行ったときでも左右の副駆動輪のトルクが異なることがなく、安定した走行が可能となる。このようにこのように本ハイドロリックカップリング装置Hによれば、走行状態に応じた最適のトルク特性が得られる。
【0075】
ここで、各チェックバルブが開弁するときの条件はチェックボールCBを閉弁方向に付勢するスプリングSPのばね定数を変えることにより所望に調節することができるので、このハイドロリックカップリング装置Hが適用される各車両ごとに第1チェックバルブCVL1、CVR1及び第2チェックバルブCVL2,CVR2それぞれの作動特性を与えることが可能である。更に、本ハイドロリックカップリング装置Hでは、低速走行時にはオリフィスOF3,OF4の影響が強くなる一方で、高速走行時にはこれらオリフィスの影響が小さくなるので、低速走行性能の向上と高速走行性能の向上とを同時に満足させることも可能である。
【0076】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態において示したものに限定されない。例えば、上述の実施形態ではバイパス油路開放手段が第1バイパス油路及び第2バイパス油路中それぞれに介装された2つ1組のチェックバルブ(具体的には第1バイパス油路中に介装された左右の第1チェックバルブCVL1,CVR1及び第2バイパス油路中に介装された第2チェックバルブCVL2,CVR2)からなっており、各チェックバルブは、左右のカムリング31L,31Rと一体となって回転するバルブボディ(ここでは左右のバルブプレート32L,32R)内に挿設されて左右のカムリング31L,31Rの回転軸を中心とする半径方向に移動自在なチェックボールCBと、このチェックボールCBを常時バルブボディの中心方向に付勢するばね部材(スプリングSP)とからなり、チェックボールCBがバルブボディの回転に伴う遠心力を受けて移動することにより第1バイパス油路及び第2バイパス油路を開放状態にする構成となっていたが、これは一例であり、他の構成(例えばバルブボディ内でスプールを作動させる構成)であってもよい。しかし、バイパス油路開放手段を上記のようにチェックバルブを用いた構成とすれば、コンタミ等による影響を受けにくくなるため、簡易な構成ながらバイパス油路の開放・閉止制御を正確に行うことが可能となる。また、スプールを使用する場合にはシール性を確保する必要があるため加工コストが高くなってしまうが、上記例ではチェックバルブを用いているため、加工コストを下げて安価なものとすることができる。
【0077】
また、上述の実施形態では、左右のバルブプレート32L,32Rの回転に伴う遠心力を受けて移動するチェックボールCBにより第1バイパス油路及び第2バイパス油路が開放される構成であったが、これは別途設けたセンサ等により左右のカムリング31L,31Rの回転速度を検出し、この検出した情報に基づいて電磁力等によりスプール等を動かすことにより、主駆動輪(上記例では前輪WFL,WFR)の回転速度が所定の回転速度以上であるときに第1バイパス油路及び第2バイパス油路を開放状態にする構成としてもよい。
【0078】
また、上述の実施形態では、動力源(上記例ではエンジンE)により直接駆動される主駆動輪が前輪WFL,WFRであり、また主駆動輪と連動して回転する左右のベーンポンプPL,PRを介して駆動される副駆動輪が後輪WRL,WRRであったが、これらの構成を逆にして、主駆動輪を後輪WRL,WRRとし、副駆動輪が前輪WFL,WFRとなるようにしてもよい。
【0079】
また、上述の実施形態では、ハイドロリックカップリング装置を介してエンジンにより間接的に駆動される左右の駆動輪(上記例では左右の副駆動輪である後輪WRL,WRR)に加えて、エンジンにより直接駆動される左右の駆動輪(上記例では左右の主駆動輪である前輪WFL,WFR)を有してなる四輪駆動車が本発明に係る車両の動力伝達装置の適用対象として示されていたが、本発明に係る動力伝達装置はこのような四輪駆動車に限られず、左右の駆動輪を有した車両(例えば前後左右四つの車輪のうち、一の左右一組の車輪のみが駆動輪であり、他の左右一組の車輪が従動輪である通常の二輪駆動車両)に対して広く適用することが可能である。但し、上記二輪駆動車両の場合には、通常の定速走行時等において駆動力が得られるようにする必要から、定速走行時において左右のカムリングの回転速度が左右のロータの回転速度よりも大きくなるようにするなど、カムリンクとロータとの間の相対回転の具合を上述の四輪駆動車の場合とは異ならせておく必要がある。
【0080】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る車両の動力伝達装置には、左右のカムリングの回転速度が所定の回転速度以上であるときに第1バイパス油路及び第2バイパス油路を開放状態にするバイパス油路開放手段が備えられており、左右のベーンポンプ間を流れる作動流体は、低速走行時には第1オリフィス及び第2オリフィスのみを通り、高速走行時には第1オリフィス及び第2オリフィスよりもむしろ第1及び第2バイパス油路を通るようになっている。このため、左右の駆動輪間の差動制限を必要とする低速走行時には第1オリフィス及び第2オリフィスによる差動制限機能が十分に発揮されて泥沼からの容易な脱出が可能であり、左右の駆動輪間の差動制限をあまり必要としない高速走行時には左右のベーンポンプの吸入ポート同士及び吐出ポート同士がそれぞれ同圧の状態となるので、高速走行状態から制動を行ったときでも左右の駆動輪のトルクが異なることがなく、安定した走行が可能となる。このように本発明によれば、走行状態に応じた最適のトルク特性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態が適用された車両の動力伝達装置の構成を示すスケルトン図である。
【図2】上記車両の動力伝達装置に備えられたハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図3】図2中における矢視III−IIIから見たハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図4】図2中における矢視IV−IVから見たハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図5】図2中における矢視V−Vから見たハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図6】図2中における矢視VI−VIから見たハイドロリックカップリング装置の断面図である。
【図7】ハイドロリックカップリング装置における左側バルブプレート、センタープレート、右側バルブプレート及びカバー部材の一部についての断面図である。
【図8】ハイドロリックカップリング装置における左側バルブプレート、センタープレート、右側バルブプレート及びカバー部材の一部についての断面図である。
【図9】ハイドロリックカップリング装置における左側バルブプレート、センタープレート、右側バルブプレート及びカバー部材の一部についての断面図である。
【図10】左右の吐出ポート間に圧力差がある場合における両吐出ポート間の作動油の流れを示す図であり、(A)は左右のバルブプレートが低速で回転している場合、(B)は左右のバルブプレートが高速で回転している場合である。
【図11】ハイドロリックカップリング装置の構成を示す油圧回路図である。
【符号の説明】
V 車両
E エンジン
H ハイドロリックカップリング装置
WFL,WFR 左右の前輪
WRL,WRR 左右の後輪
PL 左側ベーンポンプ
PR 右側ベーンポンプ
31L 左側カムリング
31R 右側カムリング
33L 左側ロータ
33R 右側ロータ
37L 左側ベーンポンプの吐出ポート
37R 右側ベーンポンプの吸入ポート
38L 左側ベーンポンプの吐出ポート
38R 右側ベーンポンプの吸入ポート
OF1L,OF2L オリフィス
OF1R,OF2R オリフィス
OF3 オリフィス
OF4 オリフィス
CVL1,CVR1 左右の第1チェックバルブ
CVL2,CVR2 左右の第2チェックバルブ

Claims (2)

  1. 左右の駆動輪を備えた車両と、前記車両に備えられた動力源と、前記動力源により回転駆動される左側カムリング及び前記左側駆動輪に連結された左側ロータが相対回転自在に配設されてなる左側ベーンポンプと、前記動力源により回転駆動される右側カムリング及び前記右側駆動輪に連結された右側ロータが相対回転自在に配設されてなる右側ベーンポンプとを有し、前記左側カムリングと前記左側ロータとの間において相対回転が生じたときに前記左側ベーンポンプがポンプ作動を起こして前記左側の駆動輪が駆動されるとともに、前記右側カムリングと前記右側ロータとの間において相対回転が生じたときに前記右側ベーンポンプがポンプ作動を起こして前記右側の駆動輪が駆動される構成の車両の動力伝達装置において、
    前記左側ベーンポンプの吐出ポート及び前記右側ベーンポンプの吐出ポートを連通する第1油路と、
    前記左側ベーンポンプの吸入ポート及び前記右側ベーンポンプの吸入ポートを連通する第2油路と、
    前記第1油路中に設けられた第1オリフィスと、
    前記第2油路中に設けられた第2オリフィスと、
    前記第1オリフィスを通ることなく前記両吐出ポートを連通する第1バイパス油路と、
    前記第2オリフィスを通ることなく前記両吸入ポートを連通する第2バイパス油路と、
    前記左右のカムリングの回転速度が所定の回転速度以上であるときに前記第1バイパス油路及び前記第2バイパス油路を開放状態にするバイパス油路開放手段とを備えたことを特徴とする車両の動力伝達装置。
  2. 前記バイパス油路開放手段は、前記第1バイパス油路及び前記第2バイパス油路中それぞれに介装された2つ1組のチェックバルブからなり、前記各チェックバルブは、前記左右のカムリングと一体となって回転するバルブボディ内に挿設されて前記左右のカムリングの回転軸を中心とする半径方向に移動自在なチェックボールと、前記チェックボールを常時前記バルブボディの中心方向に付勢するばね部材とからなり、前記チェックボールが前記バルブボディの回転に伴う遠心力を受けて移動することにより前記第1バイパス油路及び前記第2バイパス油路が開放状態にされるようになっていることを特徴とする請求項1記載の車両の動力伝達装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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