JP2004237357A - 高温鉛フリーはんだ - Google Patents
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Abstract
【課題】半導体の内部接続やモジュール部品などのはんだ接続に使用できる柔軟で良好な接合強度を有する高温鉛フリーはんだを開発する。
【解決手段】高温はんだ材料として、260℃における液相率が30%程度を越えないことを目安にし、Zn−Sn系、Zn−In系、あるいはZn−In−Sn系合金を基本とする柔軟な合金およびこれを用いた製品。はんだ付け温度における固液共存状態か融点直上のはんだのぬれ性確保のために、加振することで接合性を改善する。また、AlやMgの微量添加により、耐高温高湿性を改善する。
【選択図】 図1
【解決手段】高温はんだ材料として、260℃における液相率が30%程度を越えないことを目安にし、Zn−Sn系、Zn−In系、あるいはZn−In−Sn系合金を基本とする柔軟な合金およびこれを用いた製品。はんだ付け温度における固液共存状態か融点直上のはんだのぬれ性確保のために、加振することで接合性を改善する。また、AlやMgの微量添加により、耐高温高湿性を改善する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品やモジュール部品のはんだ付けに必要なはんだ付け温度が280℃以上のはんだ接続を鉛フリーで実現する方法である。
【0002】
【従来の技術】
はんだ接続技術の中で、高温はんだは約260℃以上の融点(固相線温度)を有し、はんだ付け温度280℃以上で、電子部品を電子基板の回路上の接続や電子部品の内部接続に用いる方法として広く用いられている。固相線温度が260℃以上という目安は、高温はんだで接続された電子部品やモジュール部品をマザー基板へはんだ付けする際に溶融してはいけないとされることによる。高温はんだとして典型的に用いられるはんだはPb量が60〜90重量%程度のPb−Sn合金である。Pbを多量に含むことで、融点上昇するが,これは固相線温度にして183℃から275℃、液相線温度にして235℃から300℃まで変化する。はんだ付け温度は液相線温度を目安にして約50℃上の温度で設定されるので、Pb−Sn系はんだでは280℃から380℃程度が実際のはんだ付け温度として設定されている。
【0003】
Pb−Sn高温はんだの他に用いられている高温はんだには、An−Sn合金やSn−Sb合金がある。An−Sn合金は80重量%Au−Snの時に共晶点が278℃になり,20重量%Au−Snで液相線が約255℃になる。しかし、いずれの組成でも多量のAu−Sn化合物を形成し、はんだとしては脆く硬い欠点を持つ。また、価格が高いことも欠点になる。一方、Sn−Sb共晶はんだは共晶点が245℃程度であるが、Sbを更に添加することで固相線温度を260℃以上にできるが、Sbの毒性が強いためにはんだへの適用が懸念されている。
【0004】
一方、Pbの毒性や環境負荷の問題からはんだ付けにおける鉛フリー化が必要とされ、基板上への実装は幾つかの鉛フリーはんだによって実施されるようになっている。高温はんだは、基板への実装はんだよりも高温で溶けずに保持されることが必要とされる。また、特に半導体の内部接合に用いる場合には、半導体と基材との間で有効に熱を伝え,熱膨張差により生じる応力の緩和を果たすことが望まれ、このため熱伝導が良好で柔らかなはんだの開発が望まれている。現在、鉛フリーはんだとして提案されている高温はんだは、上記のAu−Sn系,Sn−Sb系の合金の他に、Zn−Sn−Al−Mg系やBi−Sn、Bi−Ag系などがあるが、Au−SnとZn−Sn−Al−Mg系は金属間化合物などの形成により大変硬く脆く、Bi−SnとBi−Ag系はBiを多量に含むために硬く脆い。さらに,Sn−Sb系は毒性が強く硬い。このように、いずれの高温鉛フリーはんだも致命的な欠点を有しており、延性に優れ熱伝導の良好な新しい材料の開発が必要とされている。
【0005】
本願では、高温鉛フリーはんだとして必要とされる、延性に優れ信頼性が高い毒性の少ないはんだ材料と、その合金を用いてはんだ付けする場合にぬれ特性を改善するためのプロセス技術を対象としている。
【0006】
【本発明が解決しようとする課題】
高温はんだは、半導体部品の内部接続やマザー基板にモジュール基板を搭載する場合のモジュール基板上の電子部品接続に多く用いられる。半導体の内部接続では、半導体をベース材料に接続するダイボンドに用いる場合が多いが、ダイボンド材は、その半導体部品が基板に実装される温度で溶融してはならないとされる。これは、ダイボンド材が溶融すると膨張流動し、接続不良や半導体部品の破壊が生じてしまうためである。これを防ぐために、基板の実装のピーク温度よりも高い固相線温度を持ち、すなわち260℃以上の固相線温度の合金が必要と言われる。また、液相線温度ははんだ付けが可能な範囲の上限になり、たとえば280℃〜350℃程度の液相線温度を持つことが望まれている。
【0007】
鉛フリーの高温はんだとしてこれまで提案されてきた合金には、固相線温度が260℃以上で液相線温度を上記に近いところに持たせるために、Au−Sn(Auが80重量%程度)、Zn−Sn−Al−Mg、Bi−Agなどがある。しかし、Au−Sn系、及びZn−Sn−Al−Mg系合金では、化合物を大量に形成し、はんだ自体が硬く脆くなる。また、Biを多量に含むBi−Ag系は、Bi自体が硬く脆いために、やはりはんだとしても硬く脆い性質が克服できない。このため、これまで提案されてきた高温鉛フリーはんだは、いずれも半導体デバイスとベース材料の間に生じる熱応力を有効には緩和できず、しばしばデバイスの破壊やはんだ接続部の割れなどを引き起こしてしまい、信頼性の高い接続が出来なかった。特に、パワー半導体の場合には、大電流を流し発熱量も大きいため、融点が高いだけではなく柔らかいはんだ接続構造で応力緩和することが望まれる。このような従来の技術を鑑みて、本発明では、信頼性の高い高温鉛フリーはんだ接続を達成するために、新しい合金設計基準を設け材料開発し、得られる材料と接続温度に適した接続プロセスを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に関わる高温鉛フリーはんだ接続技術では、従来の合金設計基準である約260℃以上の固相線温度を持つ材料と言う条件を外し、より低い固相線温度を持っていても電子部品やモジュール部品のマザー基板へのはんだ付けの際に生じる液体の体積が許容範囲にあることを目安とする。具体的には、260℃において生じる液相率を必要に応じて5〜30%以下に抑えることを基準として設ける。さらに、高温はんだ付け温度において固液共存領域にある場合でも液体の体積率に依存して流動が可能な事に着目し、高い液相線温度を持つ材料でも液相率をある程度確保することではんだ付けにおける流動を確保し、材料選択の幅を広げて,化合物を極力形成せず柔軟であり熱伝導に優れる合金を選定した。つまり、液相率が30%以上であれば液体が動き始めることを合金設計の条件として組み入れ、接合温度で固液共存領域となるか融点直上となりはんだ液体の流動が可能になる液相率で、従来の技術開発では考慮されてこなかったZn−Sn系やZn−In系などの化合物を形成しない2元合金、あるいは少量の化合物を形成するZn−Sn−In系3元系などの合金を選択する。これによって、柔軟なはんだ物性を実現することが、可能になった。ちなみに、本技術では固相線温度は200℃以下でも信頼性の高い接続を可能とし、液相線温度は最高400℃まで上昇可能になる。
【0009】
はんだ付け温度において固液共存領域になる場合のぬれ性確保のために,合金設計手法によりはんだ付け温度において液相率が30%程度を超えるような合金を設定するが、固液共存領域のはんだや融点直上のはんだは電極へのぬれが悪いので、さらにぬれを促進するためには、はんだがはんだ付け温度に置いて流動するように振動や超音波加振による接続界面形成補助を行う。これによって、ぬれが悪い場合でも欠陥を排除し有効に界面形成が達成される。
【0010】
Zn−Sn系はんだは高温や高湿環境で酸化等の影響を受けやすいため、酸化や腐食等を防ぐためには微量のAlやMgを添加しても良い。この時の添加量は、0.5重量%以上添加すると化合物を形成して大変脆く硬くなるため、添加の最大値は0.1重量%にする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に関わる高温鉛フリーはんだ接続技術の有効性に関して、開発はんだの物性と電極への接続強度などの例を用いて説明する。
【0012】
まず、本開発高温鉛フリーはんだの典型的な温度と液相率の変化から最適設計される条件を示す。図1には、元素の熱力学物性値を用いてシャイルの関係式に基づくZn−30重量%Sn計算シミュレーションを行った例を示す。縦軸に温度、横軸に固相率をとっている。計算結果から、この合金が液体から冷えて固まるまでに、まず約366℃で固体が生じるが、更に温度が下がって固相率が50体積%になるのが約355℃(▲1▼)、70体積%になるのが約298℃になり(▲2▼)、この温度ではほとんど液体が流動できなくなる。また、260℃において固体の体積率は77%程になり、液体の膨張流動によって粗大な欠陥が生じ難い状態になることが示される。この合金では約330℃以上がはんだ付けの候補温度になる。ちなみに、380℃ではんだ付けを行う場合でも、融点直上であるためにぬれが不安定で粘性が高く、良好な界面を得るには保持に長時間を要する。これを短時間で達成するために、はんだの流動を促す加圧や加振処理を施すと良好な接続が得られる。
【0013】
図1
【0014】
Zn−Sn系合金及びZn−In系合金、さらにZn−Sn−In系合金に関して上記と同様の計算機シミュレーションを行い、それぞれにはんだ付け温度の目安として固相率が60体積%(液相率50体積%)になる温度と260℃における液相率が30体積%を大幅に上回らないこと(固相率で70体積%を大幅に下回らないこと)を目安として、高温はんだ付けの限界を求めた。表1には、合金組成や液相線温度をまとめて比較する。実際のはんだ付けでは、荷重を加えはんだの流動を促したり加振する事で界面形成が十分に為されるので、これらの温度に30℃〜50℃ほど上回る温度を設定できる。260℃において固相率が70体積%を下回るものを除くと、Zn−30重量%以下Sn、Zn−30重量%以下In、あるいはZn−20In−10Snなどは、許容範囲にある。
【0015】
表1
【0016】
実際の接合強度の例を表2に示す。比較材料として、従来提案されている幾つかの鉛フリーはんだ合金及びSn−90重量%Pbの例を表に載せる。はんだ付けの相手材としては、多用されるNi板で、強度評価は引張せん断試験を行った。はんだ付けは、融点または液相線温度の200℃程度上の温度とした。これが380℃を越えるものに関しては、380℃を上限としわずかな荷重を加えた。雰囲気は、窒素気流中である。表に示されるように、本発明による高温鉛フリーはんだは、いずれもぬれ性は良好でありボイド等の発生はほとんど認められない。はんだ付け直後の強度では、従来の高温鉛フリーはんだよりも高く、破面の状態から本合金が延性に優れており、柔軟な接合を可能にしている事が明らかになった。また、260℃において高温保持後の強度は、この温度における液相率が高いはんだは多少の強度劣化を示しているが、液相率が約30体積%を下回る合金は、ほとんど強度への影響は認められず、界面の剥離やボイド発生も認められなかった。このように、本合金は柔軟な接合構造を有し、はんだ付け強度も従来品より高いことが明らかになった。
【0017】
表2
【0018】
半導体部品の内部接続における本願の有効性を確認するために、図2に示すモデル部品を用いて信頼性の評価を行った。Zn−70Sn、Zn−30InおよびZn−20In−10Snの高温はんだによるはんだ付けは350℃において微小の荷重を掛けて、窒素雰囲気で行った。その結果、260℃において5分間保持してもまったく半導体部品の動作不良は生じず、内部組織にも欠陥等の発生は認められないことがわかった。
【0019】
図2
【0020】
はんだ付け温度が低い場合のぬれ性確保のために、荷重を加えるのではなく加振の効果を図3の実験方法で行った。周波数は0.1Hzとし、はんだ付け温度ははんだの液相率が50体積%となる温度を選び、はんだ付け時間は1分間、窒素気流中で実施した。結果を表3にまとめる。いずれの開発合金でも、界面に不ぬれやボイドは無く、50MPa以上の十分な接合強度が得られている。このように、はんだ付けに置いて加振することで低い温度でも良好な界面形成が為されることがわかった。
【0021】
図3
表3
【0022】
酸化や湿度環境での劣化を抑えるために、Al及びMgの単独あるいは複合微量添加の効果を確認した。添加量は、合金が脆く硬くならない条件とし選定、50ppmの例を表4に示す。はんだ付け相手材はCu板を選び、はんだ付け条件加振しない場合の上記と同様に置いた。AlやMgの添加されない合金では、徐々に表面から酸化が進行し、特に界面近傍で劣化が進む。これに対して、AlやMgを微量に含む場合、酸化は進むもののその速度が遅くなることがわかる。このように、AlやMgの微量添加は、本合金の酸化進行をある程度抑制することができることがわかった。
【0023】
表4
【0024】
この様に、今まで提案されている高温鉛フリーはんだによる接続では不可能であった柔軟で且つ強固な接続が本技術によって可能になることが明らかになった。また、260℃の保持によっても、発生する液相率を抑えることで良好な高温はんだとしての特性を維持できることが明らかになった。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、これまで不可能であった柔軟で強固な柔軟で且つ強固な接続が、Zn−(Sn、In)系合金を基本とする本技術によって可能になることが明らかになった。また、260℃の保持によっても、発生する液相率を抑えることで良好な高温はんだとしての特性を維持できることが明らかになった。本技術によって、これまでの高温鉛フリーはんだの抱える問題を克服し、鉛フリーはんだ技術の推進とともにその利用範囲を拡大するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】Zn−30重量%Sn合金のシャイル関係式による冷却過程における固相率変化の計算例。
【図2】内部接続信頼性評価のためのモデル半導体部品模式図。
【図3】加振はんだ付け実験の模式図。
【表1】高温はんだの各種物性。
【表2】高温はんだのNiに対するぬれ性とはんだ付け強度。
【表3】高温はんだ付け強度に及ぼす加振の影響。
【表4】高温はんだ付けしたCu接合界面の酸化に寄る影響へ及ぼすAlとMg添加効果。
【符号の説明】
1 高温はんだ
2 Si半導体
3 樹脂モールド
4 配線ワイヤ
5 Sn−Ag−Cuはんだ
6 リード線
7 Cu放熱板
8 樹脂基板
9 Cuランド配線
10 Ni板
11 高温はんだシート
12 ベース
13 加振装置
14 加振ジグ
15 窒素雰囲気電気炉
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品やモジュール部品のはんだ付けに必要なはんだ付け温度が280℃以上のはんだ接続を鉛フリーで実現する方法である。
【0002】
【従来の技術】
はんだ接続技術の中で、高温はんだは約260℃以上の融点(固相線温度)を有し、はんだ付け温度280℃以上で、電子部品を電子基板の回路上の接続や電子部品の内部接続に用いる方法として広く用いられている。固相線温度が260℃以上という目安は、高温はんだで接続された電子部品やモジュール部品をマザー基板へはんだ付けする際に溶融してはいけないとされることによる。高温はんだとして典型的に用いられるはんだはPb量が60〜90重量%程度のPb−Sn合金である。Pbを多量に含むことで、融点上昇するが,これは固相線温度にして183℃から275℃、液相線温度にして235℃から300℃まで変化する。はんだ付け温度は液相線温度を目安にして約50℃上の温度で設定されるので、Pb−Sn系はんだでは280℃から380℃程度が実際のはんだ付け温度として設定されている。
【0003】
Pb−Sn高温はんだの他に用いられている高温はんだには、An−Sn合金やSn−Sb合金がある。An−Sn合金は80重量%Au−Snの時に共晶点が278℃になり,20重量%Au−Snで液相線が約255℃になる。しかし、いずれの組成でも多量のAu−Sn化合物を形成し、はんだとしては脆く硬い欠点を持つ。また、価格が高いことも欠点になる。一方、Sn−Sb共晶はんだは共晶点が245℃程度であるが、Sbを更に添加することで固相線温度を260℃以上にできるが、Sbの毒性が強いためにはんだへの適用が懸念されている。
【0004】
一方、Pbの毒性や環境負荷の問題からはんだ付けにおける鉛フリー化が必要とされ、基板上への実装は幾つかの鉛フリーはんだによって実施されるようになっている。高温はんだは、基板への実装はんだよりも高温で溶けずに保持されることが必要とされる。また、特に半導体の内部接合に用いる場合には、半導体と基材との間で有効に熱を伝え,熱膨張差により生じる応力の緩和を果たすことが望まれ、このため熱伝導が良好で柔らかなはんだの開発が望まれている。現在、鉛フリーはんだとして提案されている高温はんだは、上記のAu−Sn系,Sn−Sb系の合金の他に、Zn−Sn−Al−Mg系やBi−Sn、Bi−Ag系などがあるが、Au−SnとZn−Sn−Al−Mg系は金属間化合物などの形成により大変硬く脆く、Bi−SnとBi−Ag系はBiを多量に含むために硬く脆い。さらに,Sn−Sb系は毒性が強く硬い。このように、いずれの高温鉛フリーはんだも致命的な欠点を有しており、延性に優れ熱伝導の良好な新しい材料の開発が必要とされている。
【0005】
本願では、高温鉛フリーはんだとして必要とされる、延性に優れ信頼性が高い毒性の少ないはんだ材料と、その合金を用いてはんだ付けする場合にぬれ特性を改善するためのプロセス技術を対象としている。
【0006】
【本発明が解決しようとする課題】
高温はんだは、半導体部品の内部接続やマザー基板にモジュール基板を搭載する場合のモジュール基板上の電子部品接続に多く用いられる。半導体の内部接続では、半導体をベース材料に接続するダイボンドに用いる場合が多いが、ダイボンド材は、その半導体部品が基板に実装される温度で溶融してはならないとされる。これは、ダイボンド材が溶融すると膨張流動し、接続不良や半導体部品の破壊が生じてしまうためである。これを防ぐために、基板の実装のピーク温度よりも高い固相線温度を持ち、すなわち260℃以上の固相線温度の合金が必要と言われる。また、液相線温度ははんだ付けが可能な範囲の上限になり、たとえば280℃〜350℃程度の液相線温度を持つことが望まれている。
【0007】
鉛フリーの高温はんだとしてこれまで提案されてきた合金には、固相線温度が260℃以上で液相線温度を上記に近いところに持たせるために、Au−Sn(Auが80重量%程度)、Zn−Sn−Al−Mg、Bi−Agなどがある。しかし、Au−Sn系、及びZn−Sn−Al−Mg系合金では、化合物を大量に形成し、はんだ自体が硬く脆くなる。また、Biを多量に含むBi−Ag系は、Bi自体が硬く脆いために、やはりはんだとしても硬く脆い性質が克服できない。このため、これまで提案されてきた高温鉛フリーはんだは、いずれも半導体デバイスとベース材料の間に生じる熱応力を有効には緩和できず、しばしばデバイスの破壊やはんだ接続部の割れなどを引き起こしてしまい、信頼性の高い接続が出来なかった。特に、パワー半導体の場合には、大電流を流し発熱量も大きいため、融点が高いだけではなく柔らかいはんだ接続構造で応力緩和することが望まれる。このような従来の技術を鑑みて、本発明では、信頼性の高い高温鉛フリーはんだ接続を達成するために、新しい合金設計基準を設け材料開発し、得られる材料と接続温度に適した接続プロセスを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に関わる高温鉛フリーはんだ接続技術では、従来の合金設計基準である約260℃以上の固相線温度を持つ材料と言う条件を外し、より低い固相線温度を持っていても電子部品やモジュール部品のマザー基板へのはんだ付けの際に生じる液体の体積が許容範囲にあることを目安とする。具体的には、260℃において生じる液相率を必要に応じて5〜30%以下に抑えることを基準として設ける。さらに、高温はんだ付け温度において固液共存領域にある場合でも液体の体積率に依存して流動が可能な事に着目し、高い液相線温度を持つ材料でも液相率をある程度確保することではんだ付けにおける流動を確保し、材料選択の幅を広げて,化合物を極力形成せず柔軟であり熱伝導に優れる合金を選定した。つまり、液相率が30%以上であれば液体が動き始めることを合金設計の条件として組み入れ、接合温度で固液共存領域となるか融点直上となりはんだ液体の流動が可能になる液相率で、従来の技術開発では考慮されてこなかったZn−Sn系やZn−In系などの化合物を形成しない2元合金、あるいは少量の化合物を形成するZn−Sn−In系3元系などの合金を選択する。これによって、柔軟なはんだ物性を実現することが、可能になった。ちなみに、本技術では固相線温度は200℃以下でも信頼性の高い接続を可能とし、液相線温度は最高400℃まで上昇可能になる。
【0009】
はんだ付け温度において固液共存領域になる場合のぬれ性確保のために,合金設計手法によりはんだ付け温度において液相率が30%程度を超えるような合金を設定するが、固液共存領域のはんだや融点直上のはんだは電極へのぬれが悪いので、さらにぬれを促進するためには、はんだがはんだ付け温度に置いて流動するように振動や超音波加振による接続界面形成補助を行う。これによって、ぬれが悪い場合でも欠陥を排除し有効に界面形成が達成される。
【0010】
Zn−Sn系はんだは高温や高湿環境で酸化等の影響を受けやすいため、酸化や腐食等を防ぐためには微量のAlやMgを添加しても良い。この時の添加量は、0.5重量%以上添加すると化合物を形成して大変脆く硬くなるため、添加の最大値は0.1重量%にする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に関わる高温鉛フリーはんだ接続技術の有効性に関して、開発はんだの物性と電極への接続強度などの例を用いて説明する。
【0012】
まず、本開発高温鉛フリーはんだの典型的な温度と液相率の変化から最適設計される条件を示す。図1には、元素の熱力学物性値を用いてシャイルの関係式に基づくZn−30重量%Sn計算シミュレーションを行った例を示す。縦軸に温度、横軸に固相率をとっている。計算結果から、この合金が液体から冷えて固まるまでに、まず約366℃で固体が生じるが、更に温度が下がって固相率が50体積%になるのが約355℃(▲1▼)、70体積%になるのが約298℃になり(▲2▼)、この温度ではほとんど液体が流動できなくなる。また、260℃において固体の体積率は77%程になり、液体の膨張流動によって粗大な欠陥が生じ難い状態になることが示される。この合金では約330℃以上がはんだ付けの候補温度になる。ちなみに、380℃ではんだ付けを行う場合でも、融点直上であるためにぬれが不安定で粘性が高く、良好な界面を得るには保持に長時間を要する。これを短時間で達成するために、はんだの流動を促す加圧や加振処理を施すと良好な接続が得られる。
【0013】
図1
【0014】
Zn−Sn系合金及びZn−In系合金、さらにZn−Sn−In系合金に関して上記と同様の計算機シミュレーションを行い、それぞれにはんだ付け温度の目安として固相率が60体積%(液相率50体積%)になる温度と260℃における液相率が30体積%を大幅に上回らないこと(固相率で70体積%を大幅に下回らないこと)を目安として、高温はんだ付けの限界を求めた。表1には、合金組成や液相線温度をまとめて比較する。実際のはんだ付けでは、荷重を加えはんだの流動を促したり加振する事で界面形成が十分に為されるので、これらの温度に30℃〜50℃ほど上回る温度を設定できる。260℃において固相率が70体積%を下回るものを除くと、Zn−30重量%以下Sn、Zn−30重量%以下In、あるいはZn−20In−10Snなどは、許容範囲にある。
【0015】
表1
【0016】
実際の接合強度の例を表2に示す。比較材料として、従来提案されている幾つかの鉛フリーはんだ合金及びSn−90重量%Pbの例を表に載せる。はんだ付けの相手材としては、多用されるNi板で、強度評価は引張せん断試験を行った。はんだ付けは、融点または液相線温度の200℃程度上の温度とした。これが380℃を越えるものに関しては、380℃を上限としわずかな荷重を加えた。雰囲気は、窒素気流中である。表に示されるように、本発明による高温鉛フリーはんだは、いずれもぬれ性は良好でありボイド等の発生はほとんど認められない。はんだ付け直後の強度では、従来の高温鉛フリーはんだよりも高く、破面の状態から本合金が延性に優れており、柔軟な接合を可能にしている事が明らかになった。また、260℃において高温保持後の強度は、この温度における液相率が高いはんだは多少の強度劣化を示しているが、液相率が約30体積%を下回る合金は、ほとんど強度への影響は認められず、界面の剥離やボイド発生も認められなかった。このように、本合金は柔軟な接合構造を有し、はんだ付け強度も従来品より高いことが明らかになった。
【0017】
表2
【0018】
半導体部品の内部接続における本願の有効性を確認するために、図2に示すモデル部品を用いて信頼性の評価を行った。Zn−70Sn、Zn−30InおよびZn−20In−10Snの高温はんだによるはんだ付けは350℃において微小の荷重を掛けて、窒素雰囲気で行った。その結果、260℃において5分間保持してもまったく半導体部品の動作不良は生じず、内部組織にも欠陥等の発生は認められないことがわかった。
【0019】
図2
【0020】
はんだ付け温度が低い場合のぬれ性確保のために、荷重を加えるのではなく加振の効果を図3の実験方法で行った。周波数は0.1Hzとし、はんだ付け温度ははんだの液相率が50体積%となる温度を選び、はんだ付け時間は1分間、窒素気流中で実施した。結果を表3にまとめる。いずれの開発合金でも、界面に不ぬれやボイドは無く、50MPa以上の十分な接合強度が得られている。このように、はんだ付けに置いて加振することで低い温度でも良好な界面形成が為されることがわかった。
【0021】
図3
表3
【0022】
酸化や湿度環境での劣化を抑えるために、Al及びMgの単独あるいは複合微量添加の効果を確認した。添加量は、合金が脆く硬くならない条件とし選定、50ppmの例を表4に示す。はんだ付け相手材はCu板を選び、はんだ付け条件加振しない場合の上記と同様に置いた。AlやMgの添加されない合金では、徐々に表面から酸化が進行し、特に界面近傍で劣化が進む。これに対して、AlやMgを微量に含む場合、酸化は進むもののその速度が遅くなることがわかる。このように、AlやMgの微量添加は、本合金の酸化進行をある程度抑制することができることがわかった。
【0023】
表4
【0024】
この様に、今まで提案されている高温鉛フリーはんだによる接続では不可能であった柔軟で且つ強固な接続が本技術によって可能になることが明らかになった。また、260℃の保持によっても、発生する液相率を抑えることで良好な高温はんだとしての特性を維持できることが明らかになった。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、これまで不可能であった柔軟で強固な柔軟で且つ強固な接続が、Zn−(Sn、In)系合金を基本とする本技術によって可能になることが明らかになった。また、260℃の保持によっても、発生する液相率を抑えることで良好な高温はんだとしての特性を維持できることが明らかになった。本技術によって、これまでの高温鉛フリーはんだの抱える問題を克服し、鉛フリーはんだ技術の推進とともにその利用範囲を拡大するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】Zn−30重量%Sn合金のシャイル関係式による冷却過程における固相率変化の計算例。
【図2】内部接続信頼性評価のためのモデル半導体部品模式図。
【図3】加振はんだ付け実験の模式図。
【表1】高温はんだの各種物性。
【表2】高温はんだのNiに対するぬれ性とはんだ付け強度。
【表3】高温はんだ付け強度に及ぼす加振の影響。
【表4】高温はんだ付けしたCu接合界面の酸化に寄る影響へ及ぼすAlとMg添加効果。
【符号の説明】
1 高温はんだ
2 Si半導体
3 樹脂モールド
4 配線ワイヤ
5 Sn−Ag−Cuはんだ
6 リード線
7 Cu放熱板
8 樹脂基板
9 Cuランド配線
10 Ni板
11 高温はんだシート
12 ベース
13 加振装置
14 加振ジグ
15 窒素雰囲気電気炉
Claims (5)
- Sn、或いはInの1種以上を最大50重量%含み、残部がZn及び不可避不純物からなることを特徴とするはんだ用Zn合金。
- SnやInの添加割合を調節し、260℃に於いて固相率が70体積%程度を越え、はんだ付け温度に於いて固相率が約60体積%程度以下となるZn合金。
- 耐酸化性や高温高湿耐性を上げるために、AlやMgを0.5重量%以下の量で添加するZn合金。
- 融点直上で粘性が高い状態の液体や固液共存状態のはんだのぬれ広がりを促進するために、加振や撹拌などの塑性流動を利用する方法。
- 上記組成のはんだ合金で接続された電子部品,回路基板及びそれらより構成される電子機器。
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