JP4425738B2 - 鉛フリーはんだ合金、鉛フリーはんだ合金の製造方法、実装構造体、実装方法、鉛フリーヒューズ合金、鉛フリーヒューズ合金の製造方法、板状ヒューズ、鉛フリー合金および鉛フリー合金の製造方法 - Google Patents

鉛フリーはんだ合金、鉛フリーはんだ合金の製造方法、実装構造体、実装方法、鉛フリーヒューズ合金、鉛フリーヒューズ合金の製造方法、板状ヒューズ、鉛フリー合金および鉛フリー合金の製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、鉛フリーはんだ合金、鉛フリーはんだ合金の製造方法、実装構造体、実装方法、鉛フリーヒューズ合金、鉛フリーヒューズ合金の製造方法、板状ヒューズ、鉛フリー合金および鉛フリー合金の製造方法に関し、例えば、エレクトロニクス産業における電気・電子部品の回路接続や金属部材の接合に用いて好適なものである。
はんだ材料は、エレクトロニクス産業における電子部品の接続・固定などの実装を始めとし、電気的接続、機械的固着手段として広く用いられている。従来、代表的なはんだ材料としてSn−Pb系合金が用いられていたが、このSn−Pb系合金は、それが含有する鉛のため、作業環境はもとより、使用済みの製品の廃棄・回収に際して毒性が問題とされた。そこで近年、これらの環境に対する負荷を低減あるいは解消するため、これらの代替材料として、鉛を含まない、いわゆる鉛フリーはんだ材料の開発が進められている(例えば、特許文献1、2)。
この鉛フリーはんだ材料は、電子部品実装時のフロー、リフローに際して、搭載する電子部品やレジスト材あるいは樹脂類を含有する基板などへの熱的影響を回避するため、従来のSn−Pb系はんだと同様に低融点であることや、接続・固定部位の強度、信頼性などが求められる。特に、最近のエレクトロニクス実装では、部品などの微細化、高密度表面実装化の進展に伴い、これらの要請は一層厳しいものとなっている。このため、鉛フリーはんだ材料としては、これらの条件に適合する融点降下と結晶組織の微細化とを狙って、Snを主成分とし、Agおよびさらに他の成分元素を加えた共晶合金系の組成が選択され、Sn−In、Sn−Ag、Sn−Cu、Sn−Zn、Sn−Bi系の合金が開発された。特に、これまで信頼性の高いはんだとして用いられてきた実績のあるSn−Ag系ではSn−Ag−Cu合金が、また、そのほかにもSn−In、Sn−Cu、Sn−Zn、Sn−In系でもそれぞれの特性を応用したはんだの開発が進められている。
特開2000−94181号公報 特開平7−51883号公報
しかし、これらのSnを母材とするはんだ合金は、電子部品の実装時のフロー、リフローの条件下で必ずしも微細な共晶組織とはならず、通常粗大な初晶β−Sn相が発達してこれと共晶相との二相混合組織となり、材料強度などの機械的特性の低下を来たすことが問題となっている。
本発明者らは、先に、この問題に関し、Sn−Ag系はんだ材料にAlを0.1〜1wt%添加することで組織を微細化することを報告し(非特許文献1、2、3)、さらに、Sn−Ag系はんだ材料にAlを0.1〜5wt%添加することによってAl2 3 を異質核として生成させ、同時多発的に結晶を晶出させて初晶β−Sn相の組織を微細化することを提案した(特許文献3)。
小林大樹、韓 雪、田中順一、高島敏行、成田敏夫、微量元素を添加したSn−Ag合金の凝固組織、8th Symposium on "Microjoining and Assembly Technology in Electronics",(2002),pp.209-214 田中順一、鈴木直人、高島敏行、成田敏夫、Sn−Ag−Alソルダ合金の凝固組織と機械的特性、9th Symposium on "Microjoining and Assembly Technology in Electronics",(2003),pp.213-218 鈴木直人、水野宏紀、田中順一、高島敏行、成田敏夫、Sn−Ag−Al ソルダ合金箔/Cu接合における組織と熱疲労特性、MES2003 第13回マイクロエレクトロニクスシンポジウム論文集,(2003),pp.33-36 特開2003−211283号公報
この方法によれば、粗大な初晶β−Sn相を微細化して、機械的特性を著しく向上させることができた。そして、これらの粗大な初晶β−Sn相が形成される組成範囲においても、冷却速度に依存せずに均一微細な組織となるため、実装に際して、フロー、リフローのいずれでも、搭載する基板上の位置や電子部品のサイズによらず均一なはんだ付けが可能となり、また、Sn−Ag系はんだ材料の種々の組成において、共晶組成近傍のこれら過共晶から亜共晶の組成範囲で同様の効果を発揮することを突き止めた。具体的には、Ag:1〜5wt%、残部Snからなる合金に、Al:0.1〜5wt%含有させた鉛フリーはんだ材料であり、さらに、これらにおいてBi:40〜60wt%またはIn:40〜50wt%を加え、あるいはさらにこれらの組成において、Cu:0.1〜5wt%とし、In、Bi、Ni、Au、Sb、Zn、Mg、Ceから選択した元素の1乃至2以上を含有させたはんだ材料であった。
ところで、鉛フリーはんだ材料として、これらのSn−Ag系はんだ材料のみでなく、上述のように電子部品や実装基板材料に損傷を与えない低融点でかつ機械的性質などの特性の優れたはんだ材料を求めて各種の合金元素の組み合わせが試みられているが、これらのはんだ材料においても同様にSnを母材とするため、はんだ実装の際に粗大な初晶β−Sn相を生じており、これらの粗大な、共晶相よりも柔らかい粗大な初晶組織のためにはんだ材料の機械的強度などが著しく低下し、これらのはんだ材料の実用化を進める上での課題となっていた。
さらに、近年、これらのはんだ材料として、機械的強度のみでなく、熱疲労特性の向上が重要な課題となってきている。これは、基板に搭載された電子部品の高密度化が進むにつれて、これらの電子部品からの発熱に伴う、基板や電子部品の温度上昇が著しくなってくるためであり、温度変化の範囲そのものはさほど大きくはないが、はんだ材料の融点が200℃前後であって比較的低いためその影響は大きい。
電子機器では、これらの発熱に対して強制空冷やヒートシンクなどの機構を内部に組み込んで冷却を行っているが、発熱自体は抑制できないため、これらの電子部品の実装に用いられるはんだ材料の被る影響は回避できない。そして、これらの熱サイクルは、その電子機器の稼働中常に繰り返されるために、機器の寿命や信頼性に係り、特に、電子部品の小型化、すなわち高密度化が進むにつれてその影響もまた大きくなるため、はんだ材料の熱疲労特性向上は欠かせないものとなっている。
熱サイクルは、電子部品とこれらを搭載した基板との間の温度差および熱膨張率の差によって接合はんだ層にせん断応力を発生させるが、上記のようにこれらの電子部品の微細化・高密度化の進展によってはんだ接合面積が微小化すると共に、接合層の厚さもそれに応じて著しく薄くなる。このため、これらのはんだ接合層に対するせん断応力の作用は累積的に極めて大きくなり、従来のはんだ材料では、強度的には数値上余裕があるようであってもこれらの熱サイクルに対して十分な信頼性を確保できないものとなっている。
上記に挙げたSn系はんだ合金においても、強度的に機械的特性が向上しているのであるが、これらの熱サイクルに対する熱疲労特性に関しては未だ課題とされていた。
これらの原因は、はんだ特性に適合するべく共晶組成範囲近傍にあるこれらの合金が、冷却速度を大幅に低下(0.01〜0.05 deg/sec )させると、凝固組織は状態図から予想される共晶組織となるのに対し、はんだ実装の冷却条件下では組成が亜共晶側にシフトし、組織が粗大な初晶β−Sn相と硬く、延性の乏しい共晶相との二相混合組織となり、粗大な初晶β−Sn相は共晶組織に比べて著しく柔らかいため、これらの組織間の性質の不均一性が材料強度と共に熱疲労特性を低下させていることにあった。熱疲労サイクルを伴う場合、このような硬さの違う組織の晶出により、単に機械的特性が低下するばかりでなく、より一層疲労特性が悪化するのである。
そこで、この発明が解決しようとする課題は、Snを母材とする亜共晶組成の鉛フリーはんだ合金において、粗大な初晶β−Sn相の組織を微細化すると共に、初晶β−Sn相の硬度を高くして共晶相とほぼ同じとし、これらの組織の硬度を始めとする特性を均一とすることにより、機械的特性と共に熱疲労特性を向上させることができる鉛フリーはんだ合金およびそのような鉛フリーはんだ合金を容易に製造することができる鉛フリーはんだ合金の製造方法を提供することにある。
この発明が解決しようとする他の課題は、電気・電子部品などの各種部品、金属部材などの各種部材、各種の機器や装置などを良好な機械的特性および熱疲労特性で信頼性良く実装することができる実装構造体および実装方法を提供することにある。
この発明が解決しようとするさらに他の課題は、機械的特性および熱疲労特性に優れ、特に延性に富む鉛フリーヒューズ合金、そのような鉛フリーヒューズ合金を容易に製造することができる鉛フリーヒューズ合金の製造方法およびそのような鉛フリーヒューズ合金を用いた板状ヒューズを提供することにある。
この発明が解決しようとする課題は、より一般的には、機械的特性および熱疲労特性に優れ、例えば鉛フリーはんだ合金や鉛フリーヒューズ合金に用いて好適な鉛フリー合金およびそのような鉛フリー合金を容易に製造することができる鉛フリー合金の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、第1の発明は、
Snを母材としてAg、In、Cu、ZnおよびBiからなる群より選ばれた一種類の金属を含有する亜共晶組成の合金にAlが0.01wt%以上0.1wt%未満添加されてなることを特徴とする鉛フリーはんだ合金である。
ここで、Alの添加量は、熱疲労特性を十分に向上させる観点より、好適には0.02wt%以上0.08wt%以下、より好適には0.03wt%以上0.07wt%以下、さらに好適には0.04wt%以上0.06wt%以下である。
また、亜共晶組成の合金に含有される金属の含有量は、一般に、Agは0.5wt%以上3wt%未満、好適には0.5wt%以上2.5wt%以下、より好適には0.5wt%以上2wt%以下、さらに好適には1wt%以上2wt%以下、Inは1wt%以上8wt%以下、好適には1wt%以上6wt%未満、Cuは0.1wt%以上0.5wt%以下、Znは1wt%以上5wt%以下、Biは1wt%以上10wt%以下である。
鉛フリーはんだ合金の濡れ性や材料強度などの特性の向上のために、Snと上記の金属との亜共晶組成の合金に対して、他の金属、具体的には、Cu、In、Bi、Ni、Au、Zn、Mg、LaおよびCeからなる群より選ばれた一種類または二種類以上の金属をさらに含有させてもよい。この他の金属の含有量は、一般的には、Cuは0.05wt%以上0.5wt%以下、Inは0.05wt%以上3wt%以下、Biは0.05wt%以上3wt%以下、Niは0.05wt%以上3wt%以下、好適には0.05wt%以上1wt%以下、Auは0.05wt%以上0.5wt%以下、Znは0.05wt%以上2wt%以下、Mgは0.05wt%以上0.5wt%以下、Laは0.05wt%以上0.5wt%以下、Ceは0.05wt%以上0.5wt%以下である。
この鉛フリーはんだ合金の組成は、粗大な初晶β−Sn相が晶出する範囲にあるが、Alが0.01wt%以上0.1wt%未満と極く少量添加されていることにより、冷却速度に影響されず、はんだ実装条件下の冷却速度において金属組織の微細化を達成し、機械的特性の向上と併せて熱疲労特性を向上させることができる。
これらの亜共晶組成において形成される組織は、通常のはんだ実装における冷却速度条件下では柔らかい粗大な初晶β−Sn相と硬い共晶組織との二相混合組織となるため材料強度を低下させ、また同時にこれらの硬さの大きく異なる組織によって熱疲労サイクルに対する疲労特性が著しく劣化する。これに対して、凝固後の組織の均一化、微細化が一つの条件として重要と考えられるが、特許文献3に開示されているように、Alが溶融合金中でAl2 3 を形成して凝固時の異質核として機能し、晶出する初晶β−Sn相の結晶粒径を一律微細化できることから、本発明者らは、熱疲労特性を向上させる条件を見い出すべく、実験および理論の両面から研究をさらに進めて結晶構造や特性を究明した。
その結果、これまでに本発明者らが得た知見からは予期できない結果が得られた。例えば、亜共晶Sn−2Ag合金について、Alを0.05wt%添加して、典型的な実装作業温度の冷却速度(5 deg/sec )の条件で凝固させると、粗大な初晶と共晶中に平均粒径が6μmの微細な亜結晶組織が形成された。この結晶粒径は、Al無添加試料に比較して約1/5に微細化されていた。これらの得られた試料は、Al無添加試料に比較して、初晶と共晶組織との硬さの差が少なくなり、より均一であった。そこで、これらの試料について熱疲労サイクル試験を行ったところ、Al添加試料はAl無添加試料に比較して熱歪みによって発生するクラック割れの進行速度が減速し、耐疲労特性が大きく向上したことが確認された。
これらの組織は、顕微鏡観察によれば、初晶が微細化されたというよりも、Al2 3 が異質核として作用することにより一様に微細な亜結晶組織が形成されて、硬さを始めとする特性の均一化を達成できたものと考えられる。
Al含有量に関しては、特許文献3に開示された研究結果においては、0.1wt%未満では効果がないとされていたところ、より詳細な研究を行った結果、0.1wt%未満の極微量でも有効であるばかりか、熱疲労特性については0.05wt%近傍で最適値となり、さらに低い0.01〜0.02wt%においても効果が認められたことである。すなわち、これらの効果に関するAl含有量は、極く微量でも有効である。
このような極微量なAl組成領域は、異質核因子として微量で効果を発揮するとはいえ、一般に合金材料においてはほとんど不可避的不純物の量的範囲あるいは誤差範囲と見なされるものであって、当初の予測を超えるものであった。
また、これらの効果は、Sn−Ag二元系のみでなく、Snを母材とした上記の金属との合金系に対して共通し、これらの亜共晶組成を有する合金系において熱疲労特性に優れた鉛フリーはんだ合金が得られた。その効果は、得られた試料の硬さにおいて、Al無添加試料に比較して、Al添加試料では初晶と共晶との組織において差が少なくなり、均一化することで得られたのである。
この鉛フリーはんだ合金は、β−Sn相がSnと上記のAg、In、Cu、ZnおよびBiからなる群より選ばれた一種類の金属との共晶相中に埋め込まれた組織からなる。このβ−Sn相は微細な亜結晶組織を形成している。具体的には、例えば、上記金属がAgである場合、このβ−Sn相の微細な亜結晶組織は平均粒径が4μm以上7μm以下、典型的には5μm以上6μm以下の結晶粒により構成されている。また、好適には、β−Sn相の亜結晶組織の結晶粒および共晶相中の結晶粒の平均粒径はいずれも4μm以上7μm以下、典型的には5μm以上6μm以下であり、ほぼ同一である。好適には、これらのβ−Sn相および共晶相は硬度もほぼ同一である。具体的には、例えば、上記金属がAgである場合、共晶相とβ−Sn相とのビッカース硬度の差が5以内である。
鉛フリーはんだ合金に含有されるAlは、その一部はAl2 3 からなる異質核として存在し、残りは結晶粒界(特に、亜結晶粒界(subgrain boundary))に析出したAlと上記の金属との金属間化合物(例えば、Ag2 Al)として存在する。すでに述べたように、Al2 3 からなる異質核は、鉛フリーはんだ合金を溶融状態から冷却したときに、これらの異質核から同時多発的に結晶を晶出させて初晶β−Sn相の組織が微細化される。また、結晶粒界に析出した金属間化合物はこの結晶粒界を強化し、鉛フリーはんだ合金の機械的特性の向上を図ることができる。
この鉛フリーはんだ合金の使用形態は、基本的にはどのようなものであってもよく、必要に応じて選ばれるものであるが、例えば、シートやバンプの形に形成されるほか、はんだペーストに使用してもよい。
第2の発明は、
Snを母材としてAg、In、Cu、ZnおよびBiからなる群より選ばれた一種類の金属を含有する亜共晶組成の合金にAlが0.01wt%以上0.1wt%未満添加されてなる鉛フリーはんだ合金の製造方法であって、
上記亜共晶組成の合金と組成が等しい第1の融液を形成する工程と、
上記第1の融液を470℃以上500℃未満の温度に加熱した後、この温度に保持しながら上記第1の融液中にAl片を投入して融解させ、第2の融液を形成する工程と、
上記Al片が上記第2の融液中に完全に融解した後、上記第2の融液の温度を下降させて凝固させる工程とを有することを特徴とするものである。
第3の発明は、
基板上にはんだ合金を用いて被実装体を接合した実装構造体において、
上記はんだ合金が、Snを母材としてAg、In、Cu、ZnおよびBiからなる群より選ばれた一種類の金属を含有する亜共晶組成の合金にAlが0.01wt%以上0.1wt%未満添加されてなる鉛フリーはんだ合金であることを特徴とするものである。
第4の発明は、
基板上にはんだ合金を用いて被実装体を接合するようにした実装方法において、
上記はんだ合金として、Snを母材としてAg、In、Cu、ZnおよびBiからなる群より選ばれた一種類の金属を含有する亜共晶組成の合金にAlが0.01wt%以上0.1wt%未満添加されてなる鉛フリーはんだ合金を用いるようにしたことを特徴とするものである。
第3および第4の発明において、被実装体は、基板上にはんだ付けにより接合することが可能である限り、基本的にはどのようなものであってもよいが、典型的には、電気・電子部品などの各種部品、金属部材などの各種部材、各種の機器や装置であり、例えば大型電源用電子機器からマイクロチップ基板に到る幅広い分野のものであってよい。基板は、被実装体を接合する対象物体であり、材質、形状、大きさ、厚さなどは種々のものであってよく、多層構造であっても、何らかの構造が作り込まれたもの(例えば、回路基板)であってもよく、導電性の有無も問わない。基板の、はんだ付けを行う面の材質は、はんだ付けが可能である限り、基本的にはどのようなものであってもよいが、Cu、Au、Ni、Wなどが一般的である。実装構造体には、電子部品などの部品をCu基板などの基板上に接合したもののほか、複数の回路基板を鉛フリーはんだ合金からなるバンプを介して接合したものなどの各種のものが含まれる。
第5の発明は、
Snを母材としてAg、In、Cu、ZnおよびBiからなる群より選ばれた一種類の金属を含有する亜共晶組成の合金にAlが0.01wt%以上0.1wt%未満添加されてなることを特徴とする鉛フリーヒューズ合金である。
第6の発明は、
Snを母材としてAg、In、Cu、ZnおよびBiからなる群より選ばれた一種類の金属を含有する亜共晶組成の合金にAlが0.01wt%以上0.1wt%未満添加されてなる鉛フリーヒューズ合金の製造方法であって、
上記亜共晶組成の合金と組成が等しい第1の融液を形成する工程と、
上記第1の融液を470℃以上500℃未満の温度に加熱した後、この温度に保持しながら上記第1の融液中にAl片を投入して融解させ、第2の融液を形成する工程と、
上記Al片が上記第2の融液中に完全に融解した後、上記第2の融液の温度を下降させて凝固させる工程とを有することを特徴とするものである。
第7の発明は、
Snを母材としてAg、In、Cu、ZnおよびBiからなる群より選ばれた一種類の金属を含有する亜共晶組成の合金にAlが0.01wt%以上0.1wt%未満添加されてなる鉛フリーヒューズ合金からなることを特徴とする板状ヒューズである。
第5〜第7の発明においては、その性質に反しない限り、第1および第2の発明に関連して説明したことが成立する。
第8の発明は、
Snを母材としてAg、In、Cu、ZnおよびBiからなる群より選ばれた一種類の金属を含有する亜共晶組成の合金にAlが0.01wt%以上0.1wt%未満添加されてなることを特徴とする鉛フリー合金である。
この鉛フリー合金は、例えば、鉛フリーはんだ合金や鉛フリーヒューズ合金に用いて好適なものである。
第9の発明は、
Snを母材としてAg、In、Cu、ZnおよびBiからなる群より選ばれた一種類の金属を含有する亜共晶組成の合金にAlが0.01wt%以上0.1wt%未満添加されてなる鉛フリー合金の製造方法であって、
上記亜共晶組成の合金と組成が等しい第1の融液を形成する工程と、
上記第1の融液を470℃以上500℃未満の温度に加熱した後、この温度に保持しながら上記第1の融液中にAl片を投入して融解させ、第2の融液を形成する工程と、
上記Al片が上記第2の融液中に完全に融解した後、上記第2の融液の温度を下降させて凝固させる工程とを有することを特徴とするものである。
第8および第9の発明においては、その性質に反しない限り、第1および第2の発明に関連して説明したことが成立する。
この発明による鉛フリーはんだ合金は、実用化されているSn−Ag二元系やSn−Ag−Cu三元系合金などに比較して優れた機械的特性と共に優れた熱疲労特性を有しており、Snを母材とする各種の合金についてこれらの特性を発揮するものであるから、大型電源用電子機器からマイクロチップ基板に到る幅広い分野の実装接合に適用されて性能向上に資するものであり、また、その組成上、高価なAgやIn量を低減しても微量のAl添加によりその特性を維持できるものであるから、コスト低減によりさらに産業の発展に寄与することができる。
また、この発明による鉛フリーヒューズ合金は、優れた機械的特性および熱疲労特性を有し、その高い延性を利用して薄い板状ヒューズなどの所望の形状に容易に加工することができる。
さらに、この発明による鉛フリー合金は、優れた機械的特性および熱疲労特性を有するため、鉛フリーはんだ合金や鉛フリーヒューズ合金として用いて好適なものである。
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
まず、Snを母材としてAg、In、Cu、ZnおよびBiからなる群より選ばれた一種類の金属を含有する亜共晶組成の合金にAlが0.01wt%以上0.1wt%未満添加されてなる鉛フリーはんだ合金のうち、Snを母材としてAgを含有する亜共晶組成の合金にAlが0.05wt%添加されてなる鉛フリーはんだ合金、すなわちSn−2Ag−0.05Alはんだ合金について、他の組成の鉛フリーはんだ合金と比較しつつ説明する。
まず、Sn−3.5Ag二元共晶合金を350℃で融解させ、純SnをAg量が2wt%または1wt%となり、かつ試料重量が合計200gになるように調合融解させ、その状態で1.8ks(30分)保持後、溶湯中にAlの設定含有量を添加し、攪拌しながら0.89ks(15分)保持し、その後冷却速度7.0 deg/sec で凝固させ、Sn−2Ag−0.1Al(比較試料)、Sn−2Ag−0.05Al、Sn−1Ag−0.1Al(比較試料)およびSn−1Ag−0.05Alの亜共晶合金の試料を作製した。
これに加え、比較試料として、実用化されているSn−3.0Ag−0.5Cu共晶合金を作製した。凝固条件は上記と同様とした。
図1に、このようにして得られたSn−2Ag−0.05Alはんだ合金の組織の光学顕微鏡写真を示す。図1には、比較試料であるSn−2Ag−0.1Alはんだ合金の組織の光学顕微鏡写真も併せて示す。図1の上図に10μmのスケールを示すように、低倍率でみると粗大な初晶β−Sn相が微細な共晶相中に埋めこまれた組織からなるが、さらに拡大すると最下図のように初晶β−Sn相は微細な亜結晶組織を形成して、共晶相と共に極めて微細な組織からなることが分かる。
さらに、図2に、上記の実施形態および比較試料の鉛フリーはんだ合金の初晶β−Sn相と共晶相との硬さの関係をマイクロビッカース硬度試験により求めた結果を示す。特徴的なことは、共晶相間の硬さにはAgやAlの量を変化させても大きな違いが見られなかったが、初晶β−Sn相間の硬さには違いが明確に現れた。すなわち、Al添加した試料ではいずれも無添加試料に比較して、初晶β−Sn相の硬さが大きく増大し、しかも両者の固さが近接してほぼ等しくなる傾向が見られる。特に、Alを0.05wt%添加した試料では、両者のビッカース硬度(Hv)の差は5以内に収まっている。このように初晶β−Sn相中の硬さが増大したことで共晶相の硬さに近くなり、試料全体の硬さが均一一様化している。この初晶β−Sn相の硬さがAl添加で増大する要因は、溶湯中でAlの酸化により形成されたAl2 3 が凝固時の異質核として機能し、初晶β−Sn相に微細な組織を形成するためである。
図3に、上記の実施形態および比較試料の鉛フリーはんだ合金の機械的特性を評価するために、引っ張り試験を実施した結果を示す。試験機には、株式会社島津製作所製オートグラフを用いた。試験は、有効長さ50mmの間隔で試験片の標点を定め、荷重下におけるその間の変位をCCDカメラにより連続的に追跡することで行った。ステンレス鋼製鋳型に鋳込み、JIS規格の試験片を作製した。融解条件は、上記試料調製条件と同様で、鋳込み時の冷却速度は8.2 deg/sec であった。得られた応力−歪み曲線(図3の右図)から、傾きが変曲する領域を分類し、総歪み量の割合比を求めた。図3の右図において、Zone1は最大応力達成までの領域、Zone2は応力が直線的に降下する領域、Zone3は急激に応力が降下する領域を示す。
この結果より、Alを添加した合金は、いずれも無添加合金のSn−3Ag−0.5Cu合金より大きく歪み量を増したことが分かる。一般的に、はんだ材料は、延性が高い試料が良好とされていることから、歪み量の増加は、はんだ材料としての機械的特性が向上したと言うことができる。
図4に、上記の実施形態および比較試料の鉛フリーはんだ合金の熱疲労特性を評価するための試験結果を示す。用いた基板は、面積が15cm2 、厚さが3mmのCu基板で、はんだ厚さ200μmから300μmで接合した。
なお、はんだ接合面となる片面のCu基板には無電解めっきにより、厚さ3μmのNi膜を形成し、さらに実装条件の熱膨張率を再現するために、はんだ接合面の反対側にセラミック層を形成してCu基板の熱膨張を拘束して基板間のはんだ接合層に実装条件と同様の繰り返し応力が及ぶようにした上で接合している。熱サイクル温度は、−40℃から125℃で、各30分間保持して1サイクルとした。クラックの発生と伝播長さは、非破壊検査に用いられる超音波顕微鏡により測定した。初期のクラック長さはAl無添加試料のSn−3Ag−0.5Cu合金が、クラック伝播の進行を最も抑制しているが、サイクル数が増加すると急激に伝播速度が速くなり、破断に到る。
しかし、Al添加試料では、その傾斜から分かるように初期のクラック発生と伝播速度は速いが、サイクル数の増加に伴い、緩やかに速度を遅延させ、50〜100サイクル時には、Al無添加試料のSn−3Ag−0.5Cu合金の1/3の伝播速度となった。
このように、Alを添加した試料は、Al無添加試料に比較して熱歪みによって発生したクラックの進行速度が減速し、耐疲労特性が著しく向上しており、Alを添加した試料はAl無添加試料に比較して総じて熱サイクル疲労特性に優れた合金であることが実証された。
また、Al添加量とクラック伝播速度の関係を求めると、図4から明らかなように、Al含有量が0.05wt%の時に最も効果を発揮することが判明した。この耐熱疲労特性の向上の理由としては、凝固組織内の初晶β−Sn相と共晶相との硬さの違いが少なくなったこと、組織内に一律に分散する微細な亜結晶組織による粒界の強化が挙げられる。特に、Al無添加の比較試料では、クラックの伝播が基板と平行に直線的に進行するのに対し、Al添加試料では、微細な結晶粒界に沿って複雑な形で進行するために、破断に到るまでの進行速度が大きく異なる、すなわち耐久性が向上することから有利である。
また、上記の実施形態および比較試料の鉛フリーはんだ合金の応力−歪み曲線を図5に示す。上記で明らかになったように、この実施形態の鉛フリーはんだ合金は延性に優れていることが同図から読み取れるが、これらの曲線はいずれもZone2以降の領域で比較試料よりも上に位置し、機械的特性においても優れていることが分かる。
以上の試験結果から分かるように、図1に示す金属組織を有する上記の実施形態のSnを母材とする鉛フリー合金は、これらの組織全体の硬度を始めとする特性を均一化することによって、図2、図3および図5に示すとおり、強度と併せて延性をも著しく向上しており、図4に示すように熱サイクルに対する耐クラック特性を向上している。これらの特性により、この実施形態による鉛フリー合金は、はんだ材料として使用するとき、機械的特性と共に熱疲労特性において優れた効果を発揮することができる。
ここで、Sn−Agはんだ合金中へのAl添加による結晶粒微細化効果について詳細に説明する。
Sn−Agはんだ合金中にAlが添加されたものと、Al無添加のSn−Agはんだ合金との組織観察から、大きな違いは初晶β−Sn相内に形成する亜結晶組織の結晶粒の粒径の大きさであった。Alが添加されたSn−Agはんだ合金では、Al無添加のSn−Agはんだ合金に比較して1/5程度の径に結晶粒が微細化された。この微細化機構にはAlから変化したAl2 3 の形成が寄与している。例えば、Sn−2Ag合金を融解させてその中にAlを微量添加したとき、溶湯中に存在する酸素とAlとが結合してAl2 3 を形成する。また溶湯の表面では、表面酸素と結合し同様にAl2 3 を形成する。表面に形成されたAl2 3 は大部分表面ドロスとして排除される。溶湯中に形成されたAl2 3 は、Sn−2Ag合金が凝固する際に、核生成触媒(nucleation catalysis)として機能し結晶核、すなわち異質核を多数形成する。この異質核が初晶β−Sn相内に形成される亜結晶組織の結晶粒を微細化する。一方、Al無添加試料では、はんだ中に含まれる不純物しか、核生成触媒として機能しないため、形成される亜結晶組織の結晶粒も粗大化している。この形成機構がAlの効果を高める要素の一つである。
次に、Al添加の効果として予測できるもうひとつのことは、溶湯中に溶解したAl2 3 以外のAlの寄与である。Sn−2Ag合金に融解したAlはSnより親和力の強いAgと結合し、Ag2 Al化合物を形成し、亜結晶粒界に濃化していることが、X線マイクロアナライザーによる分析により確認できた。この亜結晶粒界へのAg2 Alの濃化が粒界を強化し、はんだ合金の強度を高めている要因である。また、はんだ合金は低融点金属であることから、少しの温度変化で再結晶化が起き易い。例えば、無添加Sn−3Ag−0.5Cuはんだを温度上昇させると、結晶粒は粗大化する。しかし、Al添加はんだ合金では相当な長時間の温度上昇でも、結晶粒の粗大化傾向は観察されない。このことから、結晶粒界に形成されたAg2 Al化合物が結晶粒の移動のピン止め効果を発揮しているものと考えられる。
以上の試験では、Sn−Ag合金についてその熱疲労特性に関する性質を確認したが、Sn−Ag合金に限らず、Snを母材とする亜共晶組成の合金においては凝固過程で同様に粗大な初晶β−Sn相を形成して共晶相との二相混合組織を形成し、同様に熱疲労特性の悪化を生じるのである。そして、上記に確認した初晶β−Sn相の形成過程が同様に進行するが、Al添加による上記の効果は初晶β−Sn相の凝固過程で得られるものであるから、これらのSnを母相とする合金に共通するのである。
従って、同様の機構によりこれらの熱疲労特性の向上が可能な合金として、Sn−Ag合金のほかに、Sn−In合金、Sn−Cu合金、Sn−Zn合金、Sn−Bi合金を挙げることができる。
また、これらの二元系合金に対して、その特性向上のため添加する第三の合金元素としても、これらの初晶形成に影響しない範囲において含有することができ、そのような合金元素として、これらに加えてCu、In、Bi、Ni、Au、Zn、Mg、La、Ceを挙げることができる。
表1にこの発明による鉛フリーはんだ合金(母材Sn)の組成範囲を示す。
Figure 0004425738
ここで、これらの合金組成について説明すると次のとおりである。
(1)Al含有量について
亜共晶Sn−Ag合金において、Alを0.05wt%添加し、典型的な実装作業温度の冷却速度(5 deg/sec )で凝固させると、粗大な初晶中と共晶相中に平均粒径が5μmの微細な亜結晶組織が形成された。結晶粒径は、Al無添加試料と比較して1/5に微細化されたものであった。これらの効果は、Al添加量0.03〜0.07wt%で最大効果が得られた。
(2)Inなど他の合金元素の含有量について
Snからなる母材に含有させるInの最低含有量の1.0wt%は、純Snに対して明確に組織の相違、すなわちこの発明のAl添加の作用が確認できる組成の下限である。以下、Ag:0.5wt%、Cu:0.1wt%、Zn:1.0wt%、Bi:1.0wt%の下限値は、いずれも同じく純Snに対して明確に組織の相違、すなわちこの発明のAl添加の作用が確認できる組成の下限である。これらの金属の組成の上限については、初晶β−Sn相における組織の微細化と初晶相の硬度を共晶相と近づけるという機構からして必ずしも既に述べた範囲に限らないと考えられるが、好適な範囲を選定したものである。さらに、これらに加える第3元素について、Ni、Auは、実装時の電子部品基板材料として使用されている関係から実装時に溶湯に混入されたりする。これらの元素の効果は、はんだ合金の濡れ性を改善することである。従って、熱疲労特性に加えて上記の第3元素として添加される場合の好適範囲を挙げている。Mg、La、Ceは、材料組織の粒界間隙部を強化し、材料強度を高める元素として知られているが、同様に第3元素として添加される場合の熱疲労特性との関係で好適範囲を挙げている。
表2は、Alの添加量をより細かく変えた鉛フリーはんだ合金の試料を作製し、熱疲労特性の測定を行った結果を示す。測定方法は先に述べた方法と同様である。
Figure 0004425738
表2において、試料7〜12がこの発明の鉛フリーはんだ合金の試料、他の試料1〜6は比較試料である。ここで、試料7はSn−2Ag−0.05Al合金、試料8はSn−1Ag−0.05Al合金、試料9はSn−2Ag−0.07Al合金、試料10はSn−2Ag−0.03Al合金、試料11はSn−2In−0.05Al合金、試料12はSn−2In−0.05Al−0.1Ni合金である。また、試料1はSn−3Ag−0.5Cu合金、試料2はSn−0.1Al合金、試料3は純Sn、試料4はSn−2Ag合金、試料5はSn−2Ag−0.1Al合金、試料6はSn−1Ag−0.1Al合金である。表2より、熱サイクル数が300の時のクラック長さは、試料1〜6では7.86〜26.8mmと長いのに対し、試料7〜12では4.85〜5.8mmと極めて短くなっている。
図6に、Sn−2Ag−xAl合金においてxを0、0.03、0.05、0.07、0.1と変えた試料(それぞれ試料4、10、7、9、5)について、xに対して熱サイクル数300の時のクラック長さをプロットした図を示す。図6より、xが0.1未満になるとクラック長さは急激に減少し、0.01〜0.09の範囲ではクラック長さは10mm程度以下と相当程度短くなり、0.02〜0.08の範囲ではクラック長さは7mm程度以下とさらに短くなり、0.03〜0.07の範囲では6mm程度以下とより一層短くなり、0.05付近では5.2mmと最も短くなっている。
次に、この発明による鉛フリーはんだ合金の製造方法を、Sn−2Ag−0.05Al合金の製造を例にとって説明する。
まず、Sn−3.5wt%Ag二元共晶合金を300℃以上350℃以下、例えば350℃の電気炉内でアルミナ坩堝を用い融解させた後、純Sn(99.998wt%)をAg量が2wt%になるように調合融解させる。融解後30分保持する。Alの添加には純Al(99.998wt%)の片を用い、350℃で融解中のSn−2wt%Ag合金を470℃以上500℃未満の温度まで昇温して15分保持後、これに大気中にてAl片を投入し、融解させる。ここで、470℃以上500℃未満の温度まで昇温してAl片を融解させるのは、この温度範囲では、Al片の表面酸化膜が壊れて融液との濡れ性が良好となって溶け込むことにより短時間で融解することができ、しかも表面からの酸素による酸化を防止するためである。なお、500℃以上の温度になるとSnの表層酸化が異常に促進される。AlがAl2 3 に変化する時の酸素は、あくまで溶湯中に存在する溶存酸素だけで反応することが望ましい。なぜなら、表層からの酸素と反応するとスラグとして表層に堆積し、溶湯中に存在するAlの最適な量が変化するためである。
AlがSn−2wt%Ag合金に完全に融解した後、500℃で60分保持し、その後350℃に温度を降下させ、30分保持後、鋳型に鋳込み母材とした。
なお、Alは空気で酸化されやすいため、一般的な概念としてAlが多くはんだ中に含まれると濡れ性を劣化させることが指摘されている。濡れ性の評価実験よりAl添加量が0.1wt%においては活性なフラックスを使用しないと良好な接合が得られないのに対し、Al添加量が0.01wt%以上0.1wt%未満に減量すると一般の低活性フラックスを用いても、Sn−3Ag−0.5Cuはんだ並みの接合性が得られることを確認している。
次に、この発明による鉛フリーはんだ合金を用いて電子部品を実装する方法について説明する。この電子部品は、例えば、セラミックパッケージを用いたパワーモジュールやパワーデバイスなどであるが、これに限定されるものではない。
図7Aに示すように、電子部品11の一方の面に取り付けられたCu基板12の接合面に例えば無電解めっきにより例えば厚さ3μmのNi膜13を形成し、その表面に低活性ロジン系フラックス(図示せず)を塗布する。
一方、図7Bに示すように、ベース基板としてのCu基板14の接合面に低活性ロジン系フラックス(図示せず)を塗布する。
次に、この発明による鉛フリーはんだ合金をあらかじめ200μmの厚さになるようにシート状に加工しておき、図7Cに示すように、この鉛フリーはんだ合金シート15を間に挟んでCu基板14上に電子部品11のCu基板12を載せる。
そして、240℃に加熱し、鉛フリーはんだ合金が溶融してからCu基板14、12同士を擦り合わせることにより接合を行う。
以上により、図7Dに示すように、電子部品11がベース基板としてのCu基板14上にはんだ付けにより接合される。符号16ははんだ接合層を示す。このはんだ接合層16の組成は基本的に鉛フリーはんだ合金シート15の組成と同じである。
この実装方法によれば、電子部品11が例えばパワーモジュールやパワーデバイスなどの動作時の発熱が多く、かつ、電子部品11とCu基板14との熱膨張係数の差が大きく、熱サイクルによるはんだ接合層16の熱疲労特性が問題となるものであっても、既に述べたように、はんだ接合層16の熱疲労特性が極めて優れているため、はんだ接合層16の耐久性が高く、長期にわたって高い接合強度を維持することができる。
次に、この発明による鉛フリーはんだ合金からなるバンプを用いて電子部品および多層回路基板の積層体を形成する方法について説明する。
図8Aに示すように、この積層体の形成方法では、回路基板21、22、23および電子部品24をこの発明による鉛フリーはんだ合金からなるバンプ25を介して順次積層する。ここで、回路基板23と電子部品24との間のバンプ25は、電子部品24の下面にBGA(ball grid array)として格子状に形成され、回路基板23上の電極または配線パターン(図示せず)と接続されている。また、回路基板21、22、23の間のバンプ25は、これらの回路基板21、22、23の電極または配線パターン(図示せず)を相互に接続するように形成されている。回路基板21、22、23の両面の電極または配線パターンはスルーホールなどにより電気的に接続されている。
次に、図8Bに示すように、バンプ25を溶融して回路基板21、22、23および電子部品24を相互に接合する。
以上により、回路基板21、22、23および電子部品24がバンプ25により相互に接合された積層体が形成される。
この積層体の形成法によれば、電子部品24が例えばパワーモジュールやパワーデバイスなどの動作時の発熱が多く、かつ、電子部品24と回路基板23との熱膨張係数の差が大きく、また、回路基板21、22、23相互の熱膨張係数が大きく、熱サイクルによるバンプ25の熱疲労特性が問題となるものであっても、既に述べたように、バンプ25の熱疲労特性が極めて優れているため、バンプ25の耐久性が高く、長期にわたって高い接合強度を維持することができる。また、バンプ25の熱疲労特性が極めて優れているため、バンプ25を高密度に密集して形成しても支障がなく、例えば電子部品24として多ピンのLSIをバンプ25を用いて高い信頼性で接合することができる。
以上、この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態において挙げた数値、構成、形状、材料、原料、プロセスなどはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構成、形状、材料、原料、プロセスなどを用いてもよい。
Sn−2Ag−0.05Alはんだ合金における初晶β−Sn相および共晶相の組織状態を示す図面代用写真である。 この発明の実施形態による鉛フリーはんだ合金および比較試料における初晶β−Sn相および共晶相の硬さ試験の結果を示す略線図である。 この発明の実施形態による鉛フリーはんだ合金および比較試料の引張り試験後の歪み量の割合比を示す略線図である。 この発明の実施形態による鉛フリーはんだ合金および比較試料の熱疲労サイクル数とクラック伝播長さとの関係を示す略線図である。 この発明の実施形態による鉛フリーはんだ合金および比較試料の引張り試験の応力−歪み曲線を示す略線図である。 Sn−2Ag−xAlはんだ合金におけるxとクラックの長さとの関係を示す略線図である。 この発明の実施形態による電子部品の実装方法を説明するための略線図である。 この発明の実施形態による積層体の製造方法を説明するための略線図である。
符号の説明
11、24…電子部品、12、14…Cu基板、13…Ni膜、15…鉛フリーはんだ合金シート、16…はんだ接合層、21、22、23…回路基板、25…バンプ

Claims (19)

  1. SnとAgとからなる亜共晶組成の合金にAlが0.02mass%以上0.08mass%以下添加されてなることを特徴とする鉛フリーはんだ合金。
  2. Alが0.03mass%以上0.07mass%以下添加されてなることを特徴とする請求項1記載の鉛フリーはんだ合金。
  3. Bi、Niからなる群より選ばれた一種類または二種類をそれぞれ0.05mass%以上3mass%以下さらに含有することを特徴とする請求項1または2記載の鉛フリーはんだ合金。
  4. Biを0.05mass%以上3mass%以下含有することを特徴とする請求項3記載の鉛フリーはんだ合金。
  5. SnとAgとからなる亜共晶組成の合金にAlが0.02mass%以上0.08mass%以下添加されてなる鉛フリーはんだ合金の製造方法であって、
    上記亜共晶組成の合金と組成が等しい第1の融液を形成する工程と、
    上記第1の融液を470℃以上500℃未満の温度に加熱した後、この温度に保持しながら上記第1の融液中にAl片を投入して融解させ、第2の融液を形成する工程と、
    上記Al片が上記第2の融液中に完全に融解した後、上記第2の融液の温度を下降させて凝固させる工程とを有することを特徴とする鉛フリーはんだ合金の製造方法。
  6. 上記鉛フリーはんだ合金がBi、Niからなる群より選ばれた一種類または二種類をそれぞれ0.05mass%以上3mass%以下さらに含有することを特徴とする請求項5記載の鉛フリーはんだ合金の製造方法。
  7. 基板上にはんだ合金を用いて被実装体を接合した実装構造体において、
    上記はんだ合金が、SnとAgとからなる亜共晶組成の合金にAlが0.02mass%以上0.08mass%以下添加されてなる鉛フリーはんだ合金であることを特徴とする実装構造体。
  8. 上記鉛フリーはんだ合金がBi、Niからなる群より選ばれた一種類または二種類をそれぞれ0.05mass%以上3mass%以下さらに含有することを特徴とする請求項7記載の実装構造体。
  9. 基板上にはんだ合金を用いて被実装体を接合するようにした実装方法において、
    上記はんだ合金として、SnとAgとからなる亜共晶組成の合金にAlが0.02mass%以上0.08mass%以下添加されてなる鉛フリーはんだ合金を用いるようにしたことを特徴とする実装方法。
  10. 上記鉛フリーはんだ合金がBi、Niからなる群より選ばれた一種類または二種類をそれぞれ0.05mass%以上3mass%以下さらに含有することを特徴とする請求項9記載の実装方法。
  11. SnとAgとからなる亜共晶組成の合金にAlが0.02mass%以上0.08mass%以下添加されてなることを特徴とする鉛フリーヒューズ合金。
  12. Bi、Niからなる群より選ばれた一種類または二種類をそれぞれ0.05mass%以上3mass%以下さらに含有することを特徴とする請求項11記載の鉛フリーヒューズ合金。
  13. SnとAgとからなる亜共晶組成の合金にAlが0.02mass%以上0.08mass%以下添加されてなる鉛フリーヒューズ合金の製造方法であって、
    上記亜共晶組成の合金と組成が等しい第1の融液を形成する工程と、
    上記第1の融液を470℃以上500℃未満の温度に加熱した後、この温度に保持しながら上記第1の融液中にAl片を投入して融解させ、第2の融液を形成する工程と、
    上記Al片が上記第2の融液中に完全に融解した後、上記第2の融液の温度を下降させて凝固させる工程とを有することを特徴とする鉛フリーヒューズ合金の製造方法。
  14. 上記鉛フリーヒューズ合金がBi、Niからなる群より選ばれた一種類または二種類をそれぞれ0.05mass%以上3mass%以下さらに含有することを特徴とする請求項13記載の鉛フリーヒューズ合金の製造方法。
  15. SnとAgとからなる亜共晶組成の合金にAlが0.02mass%以上0.08mass%以下添加されてなる鉛フリーヒューズ合金からなることを特徴とする板状ヒューズ。
  16. 上記鉛フリーヒューズ合金がBi、Niからなる群より選ばれた一種類または二種類をそれぞれ0.05mass%以上3mass%以下さらに含有することを特徴とする請求項15記載の板状ヒューズ。
  17. SnとAgとからなる亜共晶組成の合金にAlが0.02mass%以上0.08mass%以下添加されてなることを特徴とする鉛フリー合金。
  18. Bi、Niからなる群より選ばれた一種類または二種類をそれぞれ0.05mass%以上3mass%以下さらに含有することを特徴とする請求項17記載の鉛フリー合金。
  19. SnとAgとからなる亜共晶組成の合金にAlが0.02mass%以上0.08mass%以下添加されてなる鉛フリー合金の製造方法であって、
    上記亜共晶組成の合金と組成が等しい第1の融液を形成する工程と、
    上記第1の融液を470℃以上500℃未満の温度に加熱した後、この温度に保持しながら上記第1の融液中にAl片を投入して融解させ、第2の融液を形成する工程と、
    上記Al片が上記第2の融液中に完全に融解した後、上記第2の融液の温度を下降させて凝固させる工程とを有することを特徴とする鉛フリー合金の製造方法。
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