JP2004237089A - 生体成分測定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 簡易な構成により、複数の生体成分採取部位からの測定に対応したバイオセンサ用生体成分測定装置を提供すること。
【解決手段】 本発明は、被験者の皮膚を穿刺してサンプル血液を採取するための穿刺機構とバイオセンサ測定装置とが一体化した、生体成分測定装置セットであって、前記穿刺機構は、少なくとも、穿刺針と、装置本体に着脱自在に嵌合されるキャップとを備え、ここで、前記キャップは、穿刺の際に皮膚に接触する皮膚接触面であって、前記穿刺針がそこを通過して前記皮膚を穿刺するための開口部を有し、かつ穿刺する前記皮膚表面の形状にフィットする形状を有する皮膚接触面を備えており、複数の異なるサンプル採取部位を選択し得るように、サンプル採取部位に応じて異なる複数の前記キャップを含むことを特徴とする、生体成分測定装置セットに関する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、生体を穿刺することにより採取した生体サンプル中の特定の生体成分を測定するための測定装置および測定法に関する。特に、本発明は、サンプル採取部位と測定値とを関連づけて記憶、処理および/または表示する生体成分測定方法および装置に関する。
これまでに酵素の有する特異的触媒作用を利用した種々のタイプのバイオセンサが開発されている。特に、グルコースを定量するグルコースセンサは、臨床検査における血糖値(血液中に含まれるグルコース)測定に広く使用されている。以下、バイオセンサの一例であるグルコースセンサについて述べる。
電気化学的なグルコースの定量法としては、酵素であるグルコースオキシダーゼ(EC1.1.3.4:以下GODと略す)と酸素電極あるいは過酸化水素電極とを使用して行う方法が一般に知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
この方法は酵素反応の特異性を利用することにより、生体サンプル中のグルコースを精度良く定量することができるが、測定結果がサンプルに含まれる酸素濃度の影響を大きく受ける欠点があり、またサンプル中に酸素が存在しない場合は測定が不可能であった。
そこで、酸素を電子伝達体として用いず、フェリシアン化カリウム、フェロセン誘導体、キノン誘導体等の有機化合物や金属錯体を電子伝達体として用いる新しいタイプのグルコースセンサが開発されてきた。
このように有機化合物や金属錯体を電子伝達体として用いることにより、生体サンプル中の酸素濃度の影響を受けることなく、精度良くグルコースを定量することができるようになった。
更にこの場合、酵素および電子伝達体を含有する試薬層を乾燥状態に近い状態で電極系と一体化させることもできるので、この技術に基づいた使い捨て型のグルコースセンサを作ることが可能となり、近年広く普及してきている。
使い捨て型のグルコースセンサにおいては、測定装置に着脱可能に接続されたセンサに生体サンプルを導入するだけで容易にグルコースを測定装置で測定することができる(例えば、特許文献1参照)。
上記の様なグルコースセンサの普及により、糖尿病患者が自宅で簡単に血糖値を測定することが可能となった。その手順としては、以下のような方法が一般的である。
まず、穿刺器具に装着した針によって採取部位を穿刺する。次に、穿刺した部位から生体サンプル(ここでは血液)を搾り出す。最後にあらかじめ測定装置に装着しておいたセンサを穿刺した部位に近づけ、センサの生体サンプル供給口を搾り出した血液に接触させて、その血液をセンサのサンプル槽内に供給する。バイオセンサがその血液中のグルコースを検知することにより、血液中に含まれるグルコースを定量することが出来る。上記の様なグルコースセンサを用いた測定では、数μlオーダーの生体サンプル量で生体サンプル中の基質濃度を容易に求めることが可能である。
血糖値の測定においては、従来、指先を穿刺し血液を採取することが一般的であったが、近年指先以外、例えば前腕などで血液を採取し血糖値を測定する方法も使用されるようになってきた。
この方法は、指先に穿刺後の傷口が残らない、また指先よりも前腕の方が痛点が少ないために測定時の痛みがより少なくなるなどの利点があり、糖尿病患者が自己血糖測定をする際の選択肢を拡げている。
近年、さらに測定手順を簡易化するために、穿刺器具とグルコースセンサの測定装置が一体化した製品が販売されている。これらの製品は、穿刺器具による穿刺とセンサによる測定が一つの測定装置で可能となり、糖尿病患者の測定作業工程が短縮されるという利点がある。
このような一体型測定装置の従来例としては、現在アボット社から市販されている前腕部用のグルコース測定用のバイオセンサ測定器(ソフタック(登録商標)(Sof・TactTM))がある。図11はその概略図である。
示されるように、血液中のグルコースを測定するバイオセンサと生体を穿刺するための穿刺部材が装着された測定器91は、測定を開始するためのスイッチ93と得られた結果を表示する表示部92と生体との接触面96とを具備している。生体接触部96は、穿刺部材が突出し、生体から滲出した血液を採取するための採取孔97を備えている。この構成のバイオセンサでは、生体との接触面が前腕にフィットするように設計されているため、他の部位からの採取、例えば指先からの採取などへの適用は難しかった。
他方、食事直後などの血中グルコース濃度の変化が激しいときには、同一の被験者であっても、血液の採取部位(指先、前腕、または大腿など)によって、バイオセンサによるグルコース濃度の測定値が異なることが報告されている(例えば、非特許文献2)。したがって、食事後の経過時間によっては、同一被験者においてであっても、例えば、指先から採取したサンプルに基づく標準値と、前腕で採取したサンプルについての実際の測定値とを、直接比較することができないというような問題があった。
特開平03−202764号公報 鈴木周一編、「バイオセンサー」、講談社、1984年1月、p.100−101 John M. ELLISON、Diabetes Care vol25, No.6, 961-964, (2002)
このように、例えば血糖測定の場合、特に食後など血糖変動が大きい時には、血液の採取部位により測定で得られる血糖値が異なる場合があるが、従来の測定装置は、異なる部位で採取した血液サンプルからの測定値(例えば、前腕部で採取した血液サンプルの血糖値と指先で採取した血液サンプルの血糖値)を区別する機構を備えていなかった。
さらに、前述の従来の穿刺器具一体型の測定装置は、採取部位への接触面の構造上、生体サンプル採取部位が前腕に限定されるという問題があった。
上記従来の課題を解決するため、本発明は、サンプル採取部位を限定しない、特に指先での測定と指先以外での測定がともに可能な生体成分測定装置を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、1つの装置において、サンプリング部位とそこでの測定値とを関連付けて記憶、処理および/または表示する機構を備えた生体成分測定装置を提供することを目的とする。特に、本発明は、指先とは異なる部位で採取したサンプルについての血糖値を、サンプル採取部位およびサンプル採取時間に応じて補正する機構を備えた生体成分測定装置を提供することを目的とする。
本発明はまた、サンプル採取部位を限定しない、特に指先での測定と指先以外での測定がともに可能であり、かつサンプル採取部位と測定結果を関連付けて記憶、処理および/または表示することができる、穿刺器具とバイオセンサ装置とが一体化した生体成分測定装置を提供することを目的とする。
また、上記のように、指先のみならず、前腕部や大腿などの指先以外の部位でもサンプリング可能な測定器を用いて血糖値を経時的にモニタリングする場合でも、正確なモニタリングおよび被験者の治療が出来るように、採取部位と測定結果とを関連付けて記憶、処理および/または表示することができる生体成分測定装置を提供することを目的とする。特に、本発明は、指先とは異なる部位で採取されたサンプルについての血糖値を、採取部位および採取時間に応じて補正する機構を備えた生体成分測定装置を提供することを目的とする。
上記従来の課題を解決するために、本発明は、1つの局面において、被験者の皮膚を穿刺してサンプル血液を採取するための穿刺機構とバイオセンサ測定装置とが一体化した、生体成分測定装置セットを提供する。この生体成分測定装置セットにおいて、上記穿刺機構は、少なくとも穿刺針と、装置本体に着脱自在に嵌合されるキャップとを含んでいる。このキャップは、穿刺の際に皮膚に接触する皮膚接触面であって、上記穿刺針がそこを通過して皮膚を穿刺するための開口部を有し、かつ穿刺する皮膚表面の形状にフィットする形状を有する皮膚接触面を備えている。この生体成分測定装置セットは、複数の異なるサンプル採取部位を選択し得るように、サンプル採取部位に応じて異なる複数のキャップを備えていることを特徴とする。
本発明の生体成分測定装置セットの好ましい実施形態では、指先からサンプル採取するためのキャップと前腕からサンプル採取するためのキャップとを含む。さらに別の実施形態では、掌、上腕、大腿、および腹部からなる群から選択されるいずれかの部位からサンプル採取するためのキャップをさらに含む。
本発明の生体成分測定装置セットのさらに好ましい実施形態では、上記バイオセンサ測定装置は、バイオセンサ装着部を含み、バイオセンサからの測定情報を入力するための生体成分情報入力部と、サンプル採取部位の情報を入力するためのサンプル採取部位入力部と、記憶部と、生体成分情報入力部からの情報に基づいてサンプル血液中の基質濃度の算出を行うための演算部と、算出された基質濃度を表示するための表示部とを備え、ここで、算出された基質濃度とともに、入力された上記サンプル採取部位の情報を上記記憶部に記録することを特徴とする。
本発明の生体成分測定装置セットの好ましい実施形態では、上記バイオセンサは、グルコースセンサである。
本発明の生体成分測定装置セットのさらに好ましい実施形態では、算出された基質濃度とともに、入力されたサンプル採取部位の情報を表示部に表示する。
本発明の生体成分測定装置セットの別の好ましい実施形態では、上記キャップは、装置本体との嵌合部分の少なくとも一部に、当該キャップに固有の定抵抗と電気的に接続された一対の電気接触子を備える。さらに、サンプル採取部位入力部は、抵抗測定器と、当該抵抗測定器に電気的に接続された第二の一対の電気接触子であって、上記キャップが装置本体と嵌合した際に、上記一対の電気接触子と接触して電気回路を形成し、その結果、上記抵抗測定器が上記定抵抗値を検出する、第二の一対の電気接触子とを備える。この実施形態では、検出された上記定抵抗値に基づいて、サンプル採取部位を認識することを特徴とする。
本発明の生体成分測定装置セットのさらに好ましい実施形態では、上記バイオセンサ測定装置は、食事時刻または食事後の経過時間を入力するための食事時間入力部をさらに備え、記憶部は、食事後の経過時間とサンプル採取部位とに基づいて測定値を補正するための補正テーブルまたは補正式を予め格納しており、演算部は、食事時間入力部に入力された食事時刻または食事後の経過時間と、サンプル採取部位入力部に入力されたサンプル採取部位とに基づいて、記憶部に格納されている上記補正テーブルまたは上記補正式を参照して、補正された基質濃度を算出することを特徴とする。
本発明はまた、別の局面において、被験者の皮膚を穿刺してサンプル血液を採取するための穿刺機構とバイオセンサ測定装置とが一体化した、生体成分測定装置を提供する。この生体成分測定装置において、上記穿刺機構は、少なくとも穿刺針と、装置本体に着脱自在に嵌合されるキャップとを含んでいる。このキャップは、穿刺の際に皮膚に接触する皮膚接触面であって、上記穿刺針がそこを通過して皮膚を穿刺するための開口部を有する皮膚接触面を備えている。一方、上記バイオセンサ測定装置は、バイオセンサ装着部を含み、バイオセンサからの測定情報を入力するための生体成分情報入力部と、サンプル採取部位の情報を入力するためのサンプル採取部位入力部と、生体成分情報入力部からの情報に基づいてサンプル血液中の基質濃度の算出を行うための演算部と、算出された基質濃度とともに、入力されたサンプル採取部位の情報を記録するための記憶部と、算出された基質濃度を表示するための表示部とを備えている。この実施形態に係る本発明の生体成分測定装置は、上記キャップの皮膚接触面が、装置本体と嵌合した際にサンプル採取部位入力部と電気的に接続され得る皮膚との接触状態を感知するための少なくとも2つのセンサを備え、サンプル採取部位入力部が、接触状態を感知した上記センサの数および/または組み合わせによって、サンプル採取部位を認識することを特徴とする。
本発明の別の局面における生体成分測定装置の好ましい実施形態では、サンプル採取部位入力部は、上記センサの一部のみが皮膚との接触を感知した場合、サンプル採取部位を指先と認識することを特徴とする。
本発明の別の局面における生体成分測定装置のさらに好ましい実施形態では、サンプル採取部位入力部は、上記センサの全部が皮膚との接触を感知した場合、サンプル採取部位を、掌、前腕、上腕、大腿、および腹部からなる群から選択されるいずれかの部位と認識することを特徴とする。
本発明の別の局面における生体成分測定装置の別の好ましい実施形態では、上記バイオセンサ測定装置は、食事時刻または食事後の経過時間を入力するための食事時間入力部をさらに備え、記憶部は、食事後の経過時間とサンプル採取部位とに基づいて測定値を補正するための補正テーブルまたは補正式を予め格納しており、演算部は、食事時間入力部に入力された食事時刻または食事後の経過時間と、サンプル採取部位入力部に入力されたサンプル採取部位とに基づいて、記憶部に格納されている上記補正テーブルまたは上記補正式を参照して、補正された基質濃度を算出することを特徴とする。
本発明は、さらに別の局面において、バイオセンサ測定装置を提供する。このバイオセンサ測定装置は、バイオセンサ装着部を含み、バイオセンサからの測定情報を入力するための生体成分情報入力部と、サンプル採取部位の情報を入力するためのサンプル採取部位入力部と、生体成分情報入力部からの情報に基づいてサンプル血液中の基質濃度の算出を行うための演算部と、算出された基質濃度とともに、入力されたサンプル採取部位の情報を記録するための記憶部と、基質濃度を表示するための表示部とを備える。
本発明のさらに別の局面におけるバイオセンサ測定装置の好ましい実施形態では、食事時刻または食事後の経過時間を入力するための食事時間入力部をさらに備え、記憶部は、食事後の経過時間とサンプル採取部位とに基づいて測定値を補正するための補正テーブルまたは補正式を予め格納しており、演算部は、食事時間入力部に入力された食事時刻または食事後の経過時間と、サンプル採取部位入力部に入力されたサンプル採取部位とに基づいて、記憶部に格納されている上記補正テーブルまたは上記補正式を参照して、補正された基質濃度を算出し、記憶部はさらに、上記補正された基質濃度を記憶し、表示部は、上記補正された基質濃度を表示することを特徴とする。
本発明の生体成分測定装置により、生体サンプルの採取部位と測定結果とを関連付けることにより、より正確な測定値の解釈が可能となる。また、本発明により、採取部位を認識することによって測定結果の補正方法を選択することができ、正確な測定が可能となる。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳しく説明する。
なお、以下の実施の形態においては、一例として血糖値の定量に用いる測定装置及び測定法について説明する。
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1について、図1および図2を参照して説明する。
図1は指先からの生体サンプル(ここでは、血液)採取に適合したキャップ18を備えた本発明の穿刺器具一体型の生体成分測定装置1の外観を示す概略図である。図1(A)は、装置本体を収容し、かつその一部を構成するハウジング11にキャップ18を嵌めた状態、図1(B)は、キャップ18を外した状態を示す。
生体成分測定装置1は、プラスチックなどの材料でできた、ハウジング11とキャップ18とを含む。ハウジング11には、バイオセンサ69で測定された測定値を表示するための液晶デジタルディスプレイなどから構成される表示部12、および測定を開始するためのスイッチ13が設けられている。
図1(B)に示されるように、ハウジング11は、キャップ18との嵌合部分をシールするためのガスケット14またはその他のシール機構を備えている。キャップ18は、ハウジング11に対して摩擦嵌合、デテントなどにより着脱自在に装着され得る。
キャップ18をハウジング11に嵌めたときにキャップ18で覆われるハウジング11の部分には、穿刺針ホルダ68および穿刺針70を含む穿刺部材を装着するため、および該穿刺部材が生体サンプル採取のために皮膚を穿刺する際にそこを通って移動するための穿刺部材用開口部67、ならびに採取した生体サンプル中の生体成分を測定するためのバイオセンサ69を装着するためのバイオセンサ装着用開口部66が設けられている。
ハウジング11内部には、上記の穿刺部材を穿刺部材用開口部67を介して突出させるためのアセンブリが装備されている(不図示)。このようなアセンブリとしては、例えば、特開2001−346781号公報に記載されるような、空気圧やスプリングなどを利用する公知のアセンブリが使用され得る。ハウジング11内部には、さらに、そのようなアセンブリを作動させるための、真空ポンプ、電気機器、バッテリなど(不図示)が備えられている。
ハウジング11内部には、さらに、バイオセンサ69を開口部66を介して着脱自在に装着するためのスロット(または装着部)(不図示)が備えられている。バイオセンサ69は、通常使い捨て型のものを用いる。バイオセンサ69はこのスロットに挿入される端部上に1つ以上の電気接触子(不図示)を含み、スロット内に配置される1つ以上の電気接触子(不図示)と係合している。さらに、ハウジング11内部には、このような電気接触子と電気回路で繋がったデータ処理などを行うためのCPU(不図示)、およびRAM、ROMまたは外部記憶装置などからなるデータ記憶部(不図示)が装備されている。
一方、キャップ18には、生体サンプル採取用の開口部17が設けられており、この孔を通じて、ハウジング11の穿刺部材用開口部67に装着されている穿刺針を含む穿刺部材が突出し、被験者の皮膚を穿刺する仕組みになっている。キャップ18が生体と接触する面、すなわち生体接触部19は、各採取部位の形状にフィットするような曲面を有している。例えば、図1のキャップ18の生体接触部19は、指を添えた時に指先の腹側がよくフィットするような曲面を有する形状に設計されている。
使用時には、生体サンプルを採取する被験者のサンプル採取部位の皮膚表面に生体接触部19が密着するように測定装置1を配置する。その際、生体サンプル採取用開口部17が皮膚との接触により密閉されるように、開口部17の周囲にゴムやエラストマーなどの弾性体でできたシール(不図示)が備えられていることが好ましい。
スイッチ13は、図示されるように、通常、押しボタンなどで形成されており、そのボタンを押すことによって、測定操作が開始される。具体的には、スイッチ13を押すと、ハウジング11内に装備された穿刺部材を止めている止具がはずれ、スプリングなどの機械的エネルギーに基づく機構により、ハウジング11内に取り付けられた穿刺部材が突出し、指先を穿刺する。好ましくは、スイッチ13が押されると、ハウジング11内の上述の真空ポンプ、電子機器など(不図示)が作動して真空が引かれ、開口部17で取り囲まれている皮膚が開口部17に対して引き上げられ、皮膚が充血し、そしてその皮膚に対して穿刺部材に備えられた穿刺針によって穿刺が行われる。このような穿刺は、通常プログラムを組み込んだ電子機器により予め設定されている適当な時間経過後、前出の穿刺部材用アセンブリ(不図示)を作動させて行われる。
穿刺後、バイオセンサ69が装着された上記スロットを穿刺した皮膚の方向に移動させて、測定装置1に具備したバイオセンサ69を指先から滲出した血液に接触させ、生体成分(ここでは、グルコース)の濃度を測定する。上記スロットを移動させる機構については、例えば、特開2001−346781号公報に記載されるような公知のスライド機構が使用され得る。また、スロットの動作の開始を、上記穿刺アセンブリの動作の終了とを連動させ得る。なお、スロットに装着されたバイオセンサ69の先端に滲出した血液が接触するように、測定装置1において予めスロットおよびバイオセンサ69の位置を設定しておけば、必ずしも、スロットを移動させる機構を測定装置1に設ける必要はない。
バイオセンサ69は、その生体サンプルと接触するサンプル収容部に、少なくとも一対の電極と、これらの電極に担持された、血液内のグルコースに特異的に反応するグルコースデヒドロゲナーゼと電子伝達体とを含む試薬系とを備えており(不図示)、血液がバイオセンサのサンプル収容部内に収容されると、この試薬系が血液中のグルコースと反応する。測定装置1の測定部(不図示)からバイオセンサ69の電極系に電圧を印加しつつ、上記反応による電流値の変化を含む電流値を測定装置1の生体成分情報入力部(不図示)およびCPU(不図示)で測定することで、電子伝達体の量を電気化学的に測定し血糖値を得る。
得られた測定結果は、指先から採取した生体サンプル(血液)のデータとして記憶部(不図示)に記憶されるとともに、表示部12に表示される。
一方、図2は前腕からの生体サンプル採取に適合したキャップ28を備えた本発明の穿刺器具一体型の生体成分測定装置2の外観を示す概略図である。図2は、ハウジング11にキャップ28を嵌めた状態を示している。図2において、図1に示す形態と相違する点は、キャップ28の生体接触部29が、前腕部からの生体サンプル採取用に適合した形状を有している点であり、生体接触部29は、被験者の前腕の皮膚に押し当てたときに、よくフィットするような形状(通常、指用のものよりも大きな径の曲面)を有している。キャップ28には、図1で示した開口部17に対応する生体サンプル採取用の開口部27が設けられており、この孔を通じて、ハウジング11の穿刺部材用開口部67(図1(B)を参照)に装着されている穿刺部材が突出し、被験者の皮膚を穿刺する仕組みになっている。キャップ28は、図1の場合と同様、ハウジング11に対して着脱自在に装着し得る。なお、キャップ28を外した状態の外観図およびその説明は、図1の場合と同様であるので、ここでは省略する。
上記のように、図1および図2に示したキャップ(18、28)は、生体サンプルの各採取部位の形状に適合するように設計されており、また、ハウジング11に対して着脱自在に装着し得る。従って、ユーザは、生体サンプルの採取部位を変えるときは、その採取部位に適合したキャップ(18、28)に付け替えるだけでよい。このようにして、1つの測定装置により、複数の異なる部位から生体試料を採取することができる。なお、ここでは、指先および前腕で採取する場合を例としてあげたが、本発明はこれらのみに限定されるわけではなく、キャップ(18、28)は、その他の生体サンプル採取部位(例えば、掌、上腕、大腿、腹部など)に適合するように設計されたものを使用することができる。
また、図1、図2、および上記の説明からも明らかなように、キャップ(18、28)は、穿刺時以外は、穿刺針を保護している。
指先以外からの血糖値測定は、痛みが少ない、あるいは指先に傷が残らないなどのメリットがあることから、近年行われることが多くなっているが、食後などの血糖値変動が大きい時には指先の血糖値と前腕の血糖値では乖離があり得ることが指摘されている。その様な場合、通常前腕から測定を行っている人であっても指先から測定することが推奨されている。
このような状況では、測定部位ごとに測定装置本体を変える必要がなく、単にキャップを付け替えるだけで一つの測定装置で複数の採取部位からの測定が可能である本発明の測定装置は、ユーザにとって便利である。
なお、図1または図2に示す本実施形態の生体成分測定装置の形状は、単に説明のために簡略化されているのみであり、こような箱型のものに限定する意図ではなく、手や指で握りやすい他の形状(例えば、筒型、扁平型、ペン型など)であってもよいことはもちろんである(以下で説明する実施形態においても同様)。
(実施の形態2)
次に、図3〜図7を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。
図3は、キャップ認識機構(端子61、62、63、64、および定抵抗65を含む)を備えた穿刺器具一体型の生体成分測定装置3の外観を示す概略図である。本発明の生体成分測定装置3は、装置本体を収容し、かつその一部を構成するプラスチック等の材料でできたハウジング31と、それに対して着脱自在に装着され得るキャップ38とを含む。図3は、指先用のキャップ38をハウジング31から外した状態を示す。
図3に示す生体成分測定装置3は、ハウジング31とキャップ38との嵌合部分に、さらに、キャップ認識機構を備えている。さらに、ハウジング31内に、データを記憶するための記憶部(図4の102を参照)、および測定時刻を計時するためのタイマ(不図示)が内蔵されている。その他の点については、図1に示したものと基本的に同じであるため、以下では詳しい説明は省略する。
図3において、ハウジング31には、バイオセンサで測定された生体成分濃度などの結果を表示するための、液晶デジタルディスプレイなどから構成された表示部32、および測定を開始するためのスイッチ33が設けられている。その他、ハウジング31には、バイオセンサ69、バイオセンサ装着用開口部66、穿刺針ホルダ68および穿刺針70、ならびに穿刺部材用開口部67が設けられている。ハウジング31はまた、キャップ38との嵌合部分をシールするためのガスケット34(他のシール機構でもよい)を備えている。
キャップ38は、ハウジング31に対して摩擦嵌合、デテントなどにより着脱自在に装着され得る。キャップ38は、指先に当てたときによくフィットするような曲面の形状に設計された生体接触部39と、生体サンプル採取用開口部37とを含む。なお、キャップ38は、着脱可能であるため、採取部位に応じて、生体接触部39が指先以外の部位(例えば、前腕または大腿など)用に設計されたもの(例えば、図2に示す生体接触部29のようなもの)が使用され得る。
本発明の実施の形態2では、ハウジング31には、さらに、キャップ38が装着された際に、キャップ38の凸部35bと嵌合するための凹部35aが設けられている。ハウジング31の凹部35aには、銅などの導電体でできた端子(61、62)が設けられており、キャップ38がハウジング31に嵌め込まれたときに、凸部35bのハウジングの凹部35aとの接触面に設けられた、同じく導電性の端子(63、64)が接触するようになっている。
キャップ38の凸部35bにおいて、端子63と端子64との間には、これらに電気的に接続されて、キャップ38に固有の定抵抗65が設けられている。
一方、ハウジング31の凹部35a上の端子61および端子62は、ハウジング31内部に設けられた抵抗測定装置(不図示)に接続されている。この抵抗測定装置は、キャップ38をハウジング31に装着したときに、凹部35a上の端子61および62と、凸部35b上の端子63および64とが接触して回路を形成すると、定抵抗65の抵抗値を検出し、それを同じくハウジング31内に設けられた測定装置3のCPU(図4の101を参照)に送る。CPUは、ハウジング31内の記憶部(図4の102を参照)に予め記憶された定抵抗の抵抗値を特定の採取部位に割り付けたデータ(不図示)を参照して、生体サンプルの採取部位(この例では、指先)を認識することができる。
このようにしてサンプル採取部位の情報は、ハウジング31内に設けられた記憶部(図4の102を参照)に測定値とともに記憶され、必要に応じて、測定値とともに、表示部32に表示される。さらに、必要に応じて、ハウジング31に内蔵されたタイマ(不図示)により計時された測定時刻の情報が、測定値とともに記憶部に記憶される。
斯くして、本発明により、1つの測定装置で、複数の異なる部位から生体サンプルを採取することができる上に、さらに、サンプル採取部位の情報が、サンプル中の生体成分測定値と共に測定装置に記憶および/または表示され得る。それにより、ユーザは、本発明の生体成分測定装置において、測定値とサンプル採取部位とを同時に認識することができる。さらにユーザは、必要に応じて、その測定値を、サンプル採取部位および採取時間の情報をもとに、補正することができるため、被験者の血糖値をより正確に知ることができ、結果として、被験者の血糖コントロールをより確実にすることができる。
本実施形態では、記憶部(図4の102を参照)を有することから、時系列毎に記録された血糖値が採取位置の情報も併せて記録されている。したがって、被験者の血糖変動状態の把握がより正確となり、血糖改善を目的とした治療をより確実に行うことができる。
図4は、上記の本発明の実施の形態2に係る生体成分測定装置3の全体構成を示すブロック図である(但し、キャップ38および穿刺部材は省略されている)。生体成分測定装置3は、CPU101、記憶部102、バイオセンサ69からの生体成分情報を入力するための生体成分情報入力部103、生体成分採取部位を入力するための採取部位入力部104、および表示部32を備えている。さらに、生体成分測定装置3は、時刻を入力するためのタイマ(不図示)を備えている。
生体成分情報入力部103は、バイオセンサ69を装着するためのスロット(不図示)、バイオセンサ69の端子と係合する、上記スロット内に設けられた電気接触子(不図示)、および当該電気接触子と電気的に接続され、バイオセンサ69からの電流値を電圧パルスに変換してCPU101に入力するため電気回路(不図示)等から構成され、バイオセンサ69からの基質濃度に関する情報をCPU101に入力する。生体成分情報入力部103には、CPU101の制御によりバイオセンサの測定電極に電圧を印可するための駆動電源、バイオセンサの測定電極とサンプルとが接触することによって発生した電流を電圧に変換するための電流/電圧変換回路(不図示)及び該電流/電圧変換回路からの電圧値をパルスに変換するA/D変換回路(不図示)等が含まれ得る。
一方、採取部位入力部104は、ハウジング31に設けられた凹部35aおよびその上に設けられた端子61および端子62(図3を参照)、ならびにこれらと電気的に接続され、かつCPUと電気的に接続された抵抗測定装置(不図示)等から構成され、キャップ38(図3を参照)に固有の抵抗値を検出してCPU101に入力する。
記憶部102は、RAM、ROM、または外部記憶装置などの記憶媒体から構成され、生体成分情報入力部103、採取部位入力部104、およびCPU101等からの情報を記憶する。
表示部32は、液晶デジタルディスプレイなどの表示機器から構成され、測定結果、測定時刻、測定部位などの情報を表示する。
図5は、図4に全体構成として示した測定装置におけるCPU101の処理動作を示すフローチャートである。
図5に示す処理動作は、スイッチ33を押すまたは触るなどのユーザの動作によって開始する。スイッチ33に対して上記ユーザの操作が行われると、CPU101は、測定装置3の穿刺機構を作動させて、被験者の測定部位の皮膚を穿刺し、血液を滲出させる。ステップS11において、CPU101は、バイオセンサ69から生体成分(基質)の濃度に関する情報を含んだ電気的シグナルを、生体成分情報入力部103を介して取得する。具体的には、穿刺により滲出した血液サンプルにバイオセンサ69が接触して、バイオセンサ69のサンプル収容部に血液サンプルが収容される。十分な血液が収容された後、バイオセンサ69の測定電極間に電圧を印可し、バイオセンサ69からの基質濃度に関する情報を含んだ電気的シグナルを取得する。次いで、CPU101は、ステップS12において、その信号に基づいて基質の濃度を算出する。基質濃度の算出においては、例えば、記憶部102に予め格納されているアルゴリズムを適用することによって、試料における基質の濃度に関連させることができる。ステップS13において、CPU101は、採取部位入力部104を介して入力された採取部位情報(例えば、定抵抗65の抵抗値)に基づいて特定の採取部位を取得し、ステップS14において、算出濃度と特定された採取部位とを記憶部102に記憶する。
ステップS15において、それらの情報を表示するか否かを判断し、表示する場合(S15:Yes)、表示部32において、ステップS16において結果を表示した後、処理を終了する。表示しない場合(S15:No)は、処理を終了する。ここで、表示するか否かの判断は、例えば、ユーザの操作に依存するように構成し得る。例えば、表示用ボタン(不図示)などを測定装置3に設けて、ユーザがボタンを押すことにより表示/非表示を選択するようにすればよい。なお、このような表示/非表示の判断ステップ(ステップS15)を設けず、すべての測定結果を表示するようにしてもよい。
このようにして、測定結果とサンプル(ここでは、血液)の採取部位とを関連付けることが可能となる。測定結果と血液の採取部位とを関連付けて記憶部に記録しておくことで、被験者の血糖値を管理している際に、測定データをより効果的に使用することが可能となる。必要に応じて、ステップS14において算出濃度と採取部位とを記憶部102に記憶する際に、採取時刻も併せて記憶するようにしてもよい。それにより、測定値の時系列的な解析が可能となる。
本実施の形態では、測定装置内に穿刺部材とバイオセンサとを別々に収容していたが、穿刺部材とバイオセンサが一体化しているようなものを用いてもよい。
また、本実施の形態2では、血液の採取部位の表面とよく一致する形状をしたキャップ38とハウジング31のキャップ認識機構(61,62,63,64、および65)を用いて、血液の採取部位を認識したが、採取部位の認識方法は、これに限定されない。
例えば、図6に示すように、キャップ48の生体接触部49に設けられた生体サンプル採取用開口部47の周囲に皮膚の接触状態を感知するセンサを複数個(81、82、83、および84)配置し、これらのセンサが感知するシグナルの組み合わせにより血液の採取部位を認識してもよい。
より具体的に説明すると、キャップ48はその頂部に、ほぼ平らな面を有する生体接触部49を備える。図6に示されるように、生体接触部49は、指先のように接触面の比較的小さな部位および前腕のように接触面の比較的大きな部位のいずれにも対応できるように、キャップ48の頂部に比較的小さい平面を有するように構成されていることが好ましい。生体接触部49には、皮膚との接触を感知するためのセンサ81、82、83、および84が設けられている。ここで、例えば、血液サンプルを指先から採取する場合には、皮膚の生体接触部49に対する接触面積が小さいために、4つのセンサのうちの一部のみ(例えば、センサ81およびセンサ83)が皮膚との接触を感知する。一方、血液サンプルを、前腕から採取する場合、皮膚の生体接触部49に対する接触面積が比較的大きいため、4つのセンサ全部(センサ81、82、83および84)が、皮膚との接触を感知する。
ここで、センサ(81、82、83および84)は、測定装置のハウジング41内のCPU(不図示)に接続されており、CPUは、4つのセンサ全部から皮膚との接触検知シグナルを受けた場合に、サンプリング部位が前腕であると判断し、4つのセンサのうちの一部のみ(例えば、2つのセンサ(例えば、センサ81および83))から皮膚との接触検知シグナルを受けた場合に、サンプリング部位が指先であると判断するように設定することにより、サンプリング部位の情報を入力することが可能となる。このような皮膚の接触状態を感知するセンサとしては、例えば、タッチセンサ、触覚センサ、電極を用いてその抵抗変化を計測する方法、光源を設置しその反射光を計測する方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。センサ(81、82、83および84)と、ハウジング41内部のCPUとの接続は、図3に示したものと同様に、キャップ48とハウジング41の嵌合部分に電気接触子などを設けて行うことができる。また、センサは、キャップ48ではなく、ハウジング41側に設けてもよい。その場合、キャップ48にはそれらのセンサのための開口部(不図示)を設けてもよい。
なお、装備するセンサの数は、通常2つ以上であればよく、上記の例のように、4つに限定されるわけではない。
あるいは、採取部位認識のためのさらに別の方法では、例えば、採取部位入力手段として、複数の入力スイッチを利用することもできる。具体的には、装置本体のハウジングに、例えば、ハウジング内部のCPUに接続された前腕選択用のスイッチおよび指先選択用のスイッチを設け(不図示)、測定操作を開始する際に、サンプリング部位によっていずれかのスイッチを押すことにより、測定操作を開始すると共に、サンプル採取部位を入力するようにし得る。そのようなスイッチは、押しボタンのようなものであり得る。なお、測定開始用のスイッチは、これらの採取部位入力用のスイッチとは別に設けてもよいし、またはこれらのスイッチを測定開始用のスイッチと兼用してもよい。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3について、図7〜図10を参照して説明する。
前述のように、測定者が食事を取った直後は血液の採取部位によって血糖値の変動が大きい。このような場合、指先での測定値に比べ前腕での測定値の方が一定時間遅れた血糖変動の挙動をとることが多い(John M. ELLISON、Diabetes Care vol25, No.6, 961-964, (2002)を参照)。そこで、このような条件で測定した結果に基づいて補正式を予め作成し、食事後の経過時間に応じて前腕部での血糖値を補正できるようにすることが考えられる。
そのような条件での測定値の例として、ここでは、前出のJohn M. ELLISON (2002)に記載される食事前後の指先での測定値と前腕での測定値を使用する。John M. ELLISON (2002)では、空腹時においては、指先での測定値と前腕での測定値の差は殆どないが、食後60分、90分、120分では、指先での測定値は前腕での測定値よりも約10%、約8%、約2%高値を示すことが記載されている。食後150分では、指先での測定値は前腕での測定値の差は殆どないが、食後180分では指先での測定値よりは前腕の測定値よりも約5%低値である。したがって、例えば食後60分の時に、前腕から採取した血液で測定を行った場合、得られた結果を約10%高くすることで、指先からの測定値と見積もることができる。一方、食後180分では、前腕から採取した血液での測定の結果を約5%低くすることで、指先からの測定値と見積もることができる。なお、このデータは一例にすぎず、被験者に応じて他の補正度合もあり得る。
このような補正は、例えば、図7に示すような補正係数を実際の測定値に掛けることによって行うことができる。図7は、上記John M. ELLISON (2002)のデータに基づいて求めた補正係数の時間依存性を示す。同図において、縦軸(y軸)は前腕で採取した血液サンプルについての補正のための補正係数を示し、横軸(x軸)は食事後の経過時間を示す。なお、ここでは、補正係数は食事後の時間の一次関数で表される仮定したが、これに限定する意図ではなく、他の関数(例えば、二次関数、指数関数など)で表され得る。食事後の各経過時間において測定した前腕からの血液のグルコース濃度の測定値に、図7のグラフで示される補正係数を掛けることにより、補正値を得ることができる。例えば、前腕における食事後60分でのグルコース濃度の測定値が、70mg/dlであった場合、図7の補正係数を用いれば、時間が60分での補正係数(=1.11)を掛けて、77.4mg/dlが補正後の値となる。
あるいは、予め実験データに基づく補正テーブルを作成しておき、血液サンプルの採取部位及び食事後の時間を当てはめることで、補正率を決定するようにしてもよい。実験データは、被験者毎に取得することが好ましい。
このように、食事後の経過時間に応じて指先以外の部位(例えば、前腕)での採血の結果を補正することで、指先から採取した血液について測定した血糖値と比較することができ、測定時間や測定部位に依存せずに、正確な血糖値のモニタリングが可能となる。以下、このような操作を測定装置において行う実施形態について、図面を参照して、詳しく説明する。
図8は、食事後の経過時間を入力することができる本発明の実施の形態3に係る生体成分測定装置5の構成を示す概略図である。同図において、測定装置5は、ハウジング51と、キャップ38とを含む。図8に示す測定装置と、図3に示す測定装置との違いは、図8に示す測定装置5には、食事後の時間を入力する手段である食事時間入力部36が含まれている点である。それ以外の部分は図3と同様であるため、説明を省略する。
食事時間入力部36は、ユーザが食事をした時刻または食事後の経過時間を入力するために、例えば、0〜9までの数字を入力できるプッシュ式ボタンで構成されている。食事時刻または食事後の経過時間を入力できるものであれば、上記プッシュ式ボタンに限らず、タッチパネルなどの他の入力手段を用いてもよい。
図9を参照して、本発明の実施の形態3についてさらに説明する。図9は、図8にその外観の概略を示した本発明の実施の形態3に係る生体成分測定装置の全体構成を示すブロック図である(但し、キャップ38および穿刺部材は省略されている)。この図において、図4に示すブロック図と異なる点は、食事時間入力部36がさらに含まれている点、および記憶部202に食事後の経過時間およびサンプリング部位に基づいて測定値を補正するための補正式または補正テーブルが格納されている点である。
ユーザが食事時間入力部36を介して食事時刻を入力すると、その情報がCPU101に伝達され、さらに必要に応じて、記憶部202に記録される。この食事時刻の情報は、食事後の経過時間に応じて、バイオセンサで測定されたサンプル中の基質濃度を補正するために利用される。なお、食事時刻を入力する代わりに、食事後の経過時間を直接入力するようにしてもよい。
記憶部202は、ROM、RAM、または外部記憶装置などの記憶媒体から構成され、生体成分情報入力部103、採取部位入力部104、食事時間入力部36およびCPU101等からの情報を記憶する。さらに記憶部202は、食事後の経過時間およびサンプリング部位に応じて測定値を補正するために予め記憶された補正式または補正テーブルを含んでいる。
図10は、図9に全体構成として示した測定装置におけるCPU101の処理動作を示すフローチャートである。
図10に示す処理動作は、スイッチ33を押すまたは触るなどのユーザの動作によって開始する。スイッチ33に対して上記ユーザの操作が行われると、CPU101は、測定装置5の穿刺機構を作動させて、被験者の測定部位の皮膚を穿刺し、血液を滲出させる。ステップS21において、CPU101は、バイオセンサ69から生体成分(ここでは、グルコース)の濃度に関する情報を含んだ電気的信号を、生体成分情報入力部103を介して取得する。具体的には、穿刺により滲出した血液サンプルにバイオセンサ69が接触して、バイオセンサ69のサンプル収容部に血液サンプルが収容される。十分な血液が収容された後、バイオセンサ69の測定電極間に電圧を印可し、バイオセンサ69からの基質濃度に関する情報を含んだ電気的シグナルを取得する。次いで、CPU101は、ステップS22において、その信号に基づいて基質の濃度を算出する。基質濃度の算出においては、例えば、記憶部202に予め格納されているアルゴリズムを適用することによって、試料における基質の濃度に関連させることができる。ステップS23において、CPU101は、採取部位入力部104を介して入力された、採取部位情報(例えば、定抵抗65の抵抗値)を取得して特定の採取部位を認識する。
ステップS24において、採取部位が指先か否かを判断し、指先である場合(S24:Yes)、ステップS27において算出濃度と特定された採取部位とを記憶部202に記憶する。次いで、ステップS28において、それらの情報を表示するか否かを判断し、表示する場合(S28:Yes)、ステップS29において表示部32に結果を表示した後、処理を終了する。表示しない場合(S28:No)は、処理を終了する。ここで、表示するか否かの判断は、例えば、ユーザの操作に依存するように構成し得る。例えば、表示用ボタン(不図示)などを測定装置5に設けて、ユーザがボタンを押すことにより表示/非表示を選択するようにすればよい。なお、このような表示/非表示の判断ステップ(ステップS28)を設けず、すべての測定結果を表示するようにしてもよい。
一方、ステップS24において、採取部位が指先以外(例えば、前腕)である場合(S24:No)、ステップS25において食事後の経過時間を取得し、次いでステップS26において、記憶部202に記憶した補正式(例えば、図7に示すような)または補正テーブルを参照して補正係数または補正率を求め、それを用いて食事後の時間に基づいて補正した測定値を得る。なお、補正係数または補正率は、被験者によって異なることが多いため、被験者ごとに個々に求めておくことが好ましい。次いで、補正された測定値をステップS27において、採取部位情報とともに記憶部202に記憶する。次いで、ステップS28において、それらの情報を表示するか否か判断し、表示する場合(S28:Yes)、ステップS29において表示部32に結果を表示した後、処理を終了する。表示しない場合、(S28:No)は、処理を終了する。
このように、本実施の形態3では、前腕などの指先以外の部位でサンプリングした血液について血糖値を測定する場合のように、食事後の時間によって、指先でサンプリングする場合と比較してサンプル中の基質濃度の測定値に差異があるようなときに、指先以外の部位でサンプリングしたサンプル中の基質濃度を上記のような補正係数を使用して補正することによって、指先でサンプリングした試料についての他の測定結果と対比可能にすることができる。
それにより、サンプリング部位によらず、基質濃度(例えば、血糖値)の正確なモニタリングが可能となり、結果として、被験者に対するより適切な処置を行うことが可能となる。
なお、上記の例では、指先以外の部位での測定値を指先での測定値に対して補正したが、どの部位の測定値を基準とするかは、目的に応じて適宜最適なものを選択し得る。
また、上記の例では、採取部位情報の入力方法として、キャップと装置本体との嵌合部分に備えられた採取部位認識機構を使用する形態を示したが、これに限定される意図ではなく、例えば、図6に示したようなセンサを使用する形態、または採取部位を入力するための付加的なスイッチ(単数または複数)を使用する形態などの他の形態であってもよい。
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
以上の実施の形態1〜3におけるキャップの材質としては、プラスチックなどがよい。生体と接触する部分は一部ゴムなど弾性があるもので形成すると皮膚との密着性が上がりより確実に測定が出来る。
以上の実施の形態1〜3におけるバイオセンサとは、生体サンプル中の特定の成分を同定、または定量できるようなセンサであれば良い。その測定方法は、電気化学的であっても良いし、光学的であってもよい。
上記実施の形態1〜3に示したバイオセンサの一例としては、酵素としてグルコースに特異的に反応するグルコースオキシダーゼ、あるいはグルコースデヒドロゲナーゼを、電子伝達体としてフェロシアン化カリウムを使用し、電極を用いて電気化学的なシグナル応答を得ることによりグルコースを定量するものがある。これらの酵素や電子伝達体に限定されない。
酸化還元酵素としては、生体サンプル中に含まれる測定対象物である基質に対応したものが用いられ、例えば、フルクトースデヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼ、キサンチンオキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ等が挙げられる。
電子伝達体としては、p−ベンゾキノン、フェナジンメトサルフェート、メチレンブルー、フェロセン誘導体等があげられる。また、酸素を電子伝達体とした場合にも電流応答が得られる。電子伝達体は、これらの一種または二種以上が使用される。
また、以上の実施の形態1〜3では生体サンプルの採取部位を指先と前腕について示したが、これに限定されない。例えば、掌、上腕、大腿、腹部などを採取部位としてもよい。掌とは親指の付け根の部分であってもよいし、小指球部であってもよい。
キャップを使用して測定する場合であれば、各採取部位の形状に合わせてキャップの形状を決定すれば良い。
また、以上の実施の形態では生体サンプルとして全血を使用したが、採取部位および採取時間に応じて測定値が変動する被験物質を含むサンプルであれば、これに限定されない。また、基質(測定対象)はグルコースに限定されるものではない。例えば、間質液、唾液、汗、尿、骨髄液などの他の生体サンプルに含まれる他の基質に対しても適用可能である。
本発明の生体成分測定装置により、生体サンプルの採取部位と測定結果とを関連付けることにより、より正確な測定値の解釈が可能となるため、被験者の状態の正確なモニタリングのためのバイオセンサ測定装置等として有用である。
本発明の一実施形態に係る、指先からの血液採取に適合したキャップ18を備えた穿刺器具一体型の生体成分測定装置の外観を示す概略図。(A)ハウジング11にキャップ18を嵌めた状態;(B)キャップ18を外した状態 本発明の一実施形態に係る、前腕からの生体サンプル採取に適合したキャップ28を備えた穿刺器具一体型の生体成分測定装置2の外観を示す概略図 本発明の一実施形態に係る、キャップ認識機構(端子61、62、63、64、および定抵抗65を含む)を備えた穿刺器具一体型の生体成分測定装置3の外観を示す概略図 本発明の一実施形態に係る、生体成分測定装置3の全体構成を示すブロック図(但し、キャップ38および穿刺部材は省略されている) 図4に全体構成として示した測定装置におけるCPU101の処理動作を示すフローチャート 本発明の一実施形態に係る、皮膚の接触状態を感知するセンサを複数個配置した生体接触部を有するキャップを備える生体成分測定装置4の外観を示す概略図 食事後の経過時間に基づいて測定値を補正するための補正係数の時間依存性を示すグラフ 食事後の経過時間を入力することができる本発明の一実施形態に係る生体成分測定装置5の外観を示す概略図 図8に示す本発明の一実施形態に係る生体成分測定装置の全体構成を示すブロック図 図9に全体構成として示した測定装置におけるCPU101の処理動作を示すフローチャート 従来例のグルコース測定用のバイオセンサの概略図
符号の説明
1,2,3,4,5 生体成分測定装置
11,31,41,51 ハウジング
12,32,42 表示部
13,33,43 スイッチ
14,34 ガスケット
17,27,37,47 生体サンプル採取用開口部
18,28,38,48 キャップ
19,29,39,49 生体接触部
35a 凹部
35b 凸部
36 食事時間入力部
61,62,63,64 端子
65 定抵抗
66 バイオセンサ装着用開口部
67 穿刺部材用開口部
68 ニードルホルダ
69 バイオセンサ
70 ニードル
81,82,83,84 接触感知センサ
101 CPU
102,202 記憶部
103 生体成分情報入力部
104 採取部位入力部


Claims (14)

  1. 被験者の皮膚を穿刺してサンプル血液を採取するための穿刺機構とバイオセンサ測定装置とが一体化した、生体成分測定装置セットであって、
    前記穿刺機構は、少なくとも、
    穿刺針と、
    装置本体に着脱自在に嵌合されるキャップとを備え、
    ここで、前記キャップは、穿刺の際に皮膚に接触する皮膚接触面であって、前記穿刺針がそこを通過して前記皮膚を穿刺するための開口部を有し、かつ穿刺する前記皮膚表面の形状にフィットする形状を有する皮膚接触面を備えており、
    複数の異なるサンプル採取部位を選択し得るように、サンプル採取部位に応じて異なる複数の前記キャップを含むことを特徴とする、生体成分測定装置セット。
  2. 指先からサンプル採取するためのキャップと前腕からサンプル採取するためのキャップとを含む、請求項1に記載の生体成分測定装置セット。
  3. さらに、掌、上腕、大腿、および腹部からなる群から選択されるいずれかの部位からサンプル採取するためのキャップを含む、請求項2に記載の生体成分測定装置セット。
  4. 前記バイオセンサ測定装置は、
    バイオセンサ装着部を含み、バイオセンサからの測定情報を入力するための生体成分情報入力部と、
    サンプル採取部位の情報を入力するためのサンプル採取部位入力部と、
    記憶部と、
    前記生体成分情報入力部からの情報に基づいてサンプル血液中の基質濃度の算出を行うための演算部と、
    算出された基質濃度を表示するための表示部とを備え、
    算出された基質濃度とともに、入力された前記サンプル採取部位の情報を前記記憶部に記録することを特徴とする、請求項1に記載の生体成分測定装置セット。
  5. 前記バイオセンサは、グルコースセンサである、請求項4に記載の生体成分測定装置セット。
  6. 算出された基質濃度とともに、入力された前記サンプル採取部位の情報を前記表示部に表示する、請求項4に記載の生体成分測定装置セット。
  7. 前記キャップは、装置本体との嵌合部分の少なくとも一部に、当該キャップに固有の定抵抗と電気的に接続された一対の電気接触子を備え、
    前記サンプル採取部位入力部は、抵抗測定器と、当該抵抗測定器に電気的に接続された第二の一対の電気接触子であって、前記キャップが前記装置本体と嵌合した際に、前記一対の電気接触子と接触して電気回路を形成し、その結果、前記抵抗測定器が前記定抵抗値を検出する、第二の一対の電気接触子とを備え、
    前記検出された定抵抗値に基づいて、サンプル採取部位を認識する、請求項4に記載の生体成分測定装置セット。
  8. 前記バイオセンサ測定装置は、食事時刻または食事後の経過時間を入力するための食事時間入力部をさらに備え、
    前記記憶部は、食事後の経過時間とサンプル採取部位とに基づいて測定値を補正するための補正テーブルまたは補正式を予め格納しており、
    前記演算部は、前記食事時間入力部に入力された食事時刻または食事後の経過時間と、前記サンプル採取部位入力部に入力されたサンプル採取部位とに基づいて、前記記憶部に格納されている前記補正テーブルまたは前記補正式を参照して、補正された基質濃度を算出することを特徴とする、請求項4に記載の生体成分測定装置セット。
  9. 被験者の皮膚を穿刺してサンプル血液を採取するための穿刺機構とバイオセンサ測定装置とが一体化した、生体成分測定装置であって、
    前記穿刺機構は、少なくとも、
    穿刺針と、
    装置本体に着脱自在に嵌合されるキャップとを備え、
    ここで、前記キャップは、穿刺の際に皮膚に接触する皮膚接触面であって、前記穿刺針がそこを通過して前記皮膚を穿刺するための開口部を有する皮膚接触面を備えており、
    前記バイオセンサ測定装置は、
    バイオセンサ装着部を含み、バイオセンサからの測定情報を入力するための生体成分情報入力部と、
    サンプル採取部位の情報を入力するためのサンプル採取部位入力部と、
    前記生体成分情報入力部からの情報に基づいてサンプル血液中の基質濃度の算出を行うための演算部と、
    算出された基質濃度とともに、入力された前記サンプル採取部位の情報を記録するための記憶部と、
    算出された基質濃度を表示するための表示部とを備え、
    ここで、前記キャップの前記皮膚接触面は、装置本体と嵌合した際に前記サンプル採取部位入力部と電気的に接続され得る皮膚との接触状態を感知するための少なくとも2つのセンサを備え、
    前記サンプル採取部位入力部は、接触状態を感知した前記センサの数および/または組み合わせによって、サンプル採取部位を認識することを特徴とする、生体成分測定装置。
  10. 前記サンプル採取部位入力部は、前記センサの一部のみが皮膚との接触を感知した場合、サンプル採取部位を指先と認識することを特徴とする、請求項9に記載の生体成分測定装置。
  11. 前記サンプル採取部位入力部は、前記センサの全部が皮膚との接触を感知した場合、サンプル採取部位を、掌、前腕、上腕、大腿、および腹部からなる群から選択されるいずれかの部位と認識することを特徴とする、請求項9に記載の生体成分測定装置。
  12. 前記バイオセンサ測定装置は、食事時刻または食事後の経過時間を入力するための食事時間入力部をさらに備え、
    前記記憶部は、食事後の経過時間とサンプル採取部位とに基づいて測定値を補正するための補正テーブルまたは補正式を予め格納しており、
    前記演算部は、前記食事時間入力部に入力された食事時刻または食事後の経過時間と、前記サンプル採取部位入力部に入力されたサンプル採取部位とに基づいて、前記記憶部に格納されている前記補正テーブルまたは前記補正式を参照して、補正された基質濃度を算出することを特徴とする、請求項9に記載の生体成分測定装置。
  13. バイオセンサ測定装置であって、
    バイオセンサ装着部を含み、バイオセンサからの測定情報を入力するための生体成分情報入力部と、
    サンプル採取部位の情報を入力するためのサンプル採取部位入力部と、
    前記生体成分情報入力部からの情報に基づいてサンプル血液中の基質濃度の算出を行うための演算部と、
    算出された基質濃度とともに、入力された前記サンプル採取部位の情報を記録するための記憶部と、
    基質濃度を表示するための表示部とを備える、バイオセンサ測定装置。
  14. 食事時刻または食事後の経過時間を入力するための食事時間入力部をさらに備え、
    前記記憶部は、食事後の経過時間とサンプル採取部位とに基づいて測定値を補正するための補正テーブルまたは補正式を予め格納しており、
    前記演算部は、前記食事時間入力部に入力された食事時刻または食事後の経過時間と、前記サンプル採取部位入力部に入力されたサンプル採取部位とに基づいて、前記記憶部に格納されている前記補正テーブルまたは前記補正式を参照して、補正された基質濃度を算出し、
    前記記憶部はさらに、前記補正された基質濃度を記憶し、
    前記表示部は、前記補正された基質濃度を表示することを特徴とする、請求項13に記載のバイオセンサ測定装置。

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