JP2004234993A - 走査電子顕微鏡 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電子源2から高エネルギーの荷電粒子を放出し、この高エネルギーの荷電粒子を電子銃1の対物レンズ6と試料との間で減速させて試料Sに照射する構成とする。これにより、電子源2から高エネルギーの荷電粒子を放出させることにより輝度を高め、電子銃1内の荷電粒子のエネルギーを高めることにより外部からの影響を受けにくくする。この構成として、試料チャンバー内部、対物レンズの外側側面、及び対物レンズの試料側端部内の一部にアース電位から浮かして所定電圧を印加する電極を設ける。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、荷電粒子を用いて分析、計測、観察、製造を行う装置に関し、特に、低加速の荷電粒子を試料に照射して得られる信号(反射電子、二次電子、オージェ電子、光(カソードルミネッセンス)、X線(制動輻射、特性X線等))を用いて分析、計測、観察を行う走査型電子顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子顕微鏡や電子線マイクロアナライザーなど、分析対象物の分析、計測、あるいは観察を行う装置において、荷電粒子ビームを対象物に照射することにより、試料から放出される二次電子、反射電子、オージェ電子等の信号を検出して観察や分析を行う。また、電子線描画装置やイオンビーム加工装置などの対象物の加工を行う製造装置においても、電子信号検出器を設けることにより、試料から放出される二次電子、反射電子、オージェ電子等の信号を検出して観察や分析を行うことができる。
【0003】
この荷電粒子の照射による分析、観察において、二次電子信号やSEM像を分析、観察する際には、荷電粒子の加速電圧を下げて行う場合がある。
【0004】
従来、低加速電圧による分析,観察では、荷電粒子を発生する電子銃を低加速で使用し、試料に入射する荷電粒子のエネルギーを低エネルギーとしている。低加速で電子銃を使用する場合、試料に入射する荷電粒子のエネルギーは、電子発生源のアノードとカソードとの電位差で定まる。
【0005】
図6は、走査型電子顕微鏡において通常用いられる電子光学系の一般的な構成の概略を示している。この電子光学系において、電子銃11は、電子源2,アノード3,筒体5,筒体5の外周に設けられたコンデンサレンズ4及び対物レンズ6を備え、対物レンズ6の試料側端部から放出された荷電粒子を試料Sに照射する。荷電粒子の照射により試料Sから放出された二次電子や反射電子は、図示しない電子信号検出器により検出される。
【0006】
電子源2のカソード2aとアノード3との間には、第1の電源21により電圧が印加される。低加速で電子銃を使用する場合、電子銃11内を通過する荷電粒子のエネルギーは、このカソード2aとアノード3との間の電位差で決まる。
【0007】
そのため、低加速電圧で使用する場合には、電子銃内を通過する荷電粒子のエネルギーが低いため、電子銃の筒内を通過する間に外部の交流磁界等のによる外乱の影響を受けやすいという問題がある。
【0008】
また、走査型電子顕微鏡の輝度は、試料Sに照射される荷電粒子のエネルギーで決まるため、低加速電圧で使用する場合には十分な輝度が得られず、高倍率での観察が困難であるという問題がある。
【0009】
したがって、走査型電子顕微鏡を低加速電圧で使用するには、輝度の低下と外乱の影響を受けやすいという問題がある。
【0010】
走査電子顕微鏡を低加速電圧で使用する際の空間分解能を高めるために、対物レンズの内側に筒状電極を設けて高い正電圧を印加することにより、電子銃内で荷電粒子のエネルギーを低下させる構成が提案されている。
【0011】
図7はこの構成例を説明するための電子光学系の概略図である。図7に示す電子銃11において、コンデンサレンズ4の位置に設けられた筒状電極15aには電源23によりアノード3と同電圧が印加され、対物レンズ6の位置に設けられた筒状電極15bには電源24により高い正電圧が印加されている。電子源2から高エネルギーの荷電粒子を放出させ、電子銃内はエネルギーを高い状態に保持し、筒状電極15bによりエネルギーを低下させた後に試料に照射することにより、高い空間分解能を得ている(例えば、特許文献1参照。)。
【0012】
【特許文献1】
米国特許第5,146,090号明細書
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
従来の走査型電子顕微鏡を低加速電圧で使用するには、輝度が低下して高倍率での観察が難しいという問題と、外乱の影響を受けやすいという問題がある。また、提案される構成の走査型電子顕微鏡では、電子源から高エネルギーを放出させることにより高い輝度が期待され、また、電子銃内に筒状電極を設けることにより外乱の影響を受けにくいことが期待されるが、コンデンサレンズ、及び対物レンズの内側にそれぞれ筒状の電極を設けると共に、異なる電圧を印加する構成を必要とするため、電子銃の構成が複雑になるという問題がある。
【0014】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、簡易な構成で、高い輝度が得られ外乱の影響を受けにくい走査型電子顕微鏡を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の走査型電子顕微鏡の第1の態様は、低エネルギーの荷電粒子を試料に照射し、試料から発生する信号を検出する走査電子顕微鏡において、荷電粒子の外乱による影響を受けにくくすると共に高い輝度を得られるように、高エネルギーで電子源から発せられた荷電粒子を試料側で減速させるようにしたものであり、対物レンズから見て試料側の電位をアースに対して浮かす(所定の電圧を与える)ことにより、前記高エネルギーの荷電粒子を対物レンズと試料との間で減速させて試料に照射し、低加速電圧による分析及び観察を行う。
【0016】
これにより、電子源から発せられて対物レンズから放出されるまでの間は、荷電粒子は高エネルギーであるため、外乱による影響を受けにくく高輝度を得ることができる。また、対物レンズと試料との間で減速させることにより、試料には低エネルギーの荷電粒子を照射することができる。
【0017】
対物レンズから見て試料側の電位をアースに対して浮かす構成は、試料チャンバー内部、対物レンズの外側側面、及び対物レンズの試料側端部内の一部に電極を設け、この電極にアース電位から浮かして所定電圧を印加することにより形成する。
【0018】
この電極構成は、試料チャンバー内部、対物レンズの外側側面、及び対物レンズの試料側端部内の一部であり、電子銃内に筒状の電極を設ける構成と比較して簡易な構成とすることができる。また、これら各部を一体で形成するようにしてもよく、走査型電子顕微鏡の形成も容易となる。
【0019】
本発明の走査型電子顕微鏡の第2の態様は、低エネルギーの荷電粒子を試料に照射し、試料から発生する信号を検出する走査電子顕微鏡において、試料に対する対物レンズによる電界の影響を抑制するものであり、試料チャンバー内部、対物レンズの外側側面、及び対物レンズの試料側端部内の一部にアース電位から浮かして所定電圧を印加する電極を備えた構成とし、この電極により対物レンズから試料側への電界の漏れを抑制する。電極の先端位置は、対物レンズに試料側端部において、対物レンズ中心と対物レンズの試料側端部の間とし、対物レンズの外側で信号の検出を行う。
【0020】
この電極により、対物レンズの電界が試料側に漏れることが抑制されるため、試料から発生した二次電子や反射電子が対物レンズに引く込まれることを防止することができ、試料から放出された信号は対物レンズの電界に影響されることなく検出することができる。
【0021】
対物レンズから電界が漏れることがないため、対物レンズの試料側端部に信号を検出する検出器を備える構成とすることもできる。これにより、試料から発生し、対物レンズ側に向かって放出された信号(二次電子や反射電子、オージェ電子)等を検出することができる。
【0022】
また、本発明の走査型電子顕微鏡は、電子顕微鏡や電子線マイクロアナライザーなど、分析対象物の分析、計測、あるいは観察を行う装置に適用するほか、電子線描画装置やイオンビーム加工装置などの対象物の加工を行う製造装置においても、電子信号検出器を設けることにより適用することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。 図1は本発明の走査型電子顕微鏡を説明するための概略ブロック図であり、図1(a)は電子光学系の概略を示し、図1(b)は電子光学系の電圧状態を示している。
【0024】
電子銃1は、電子源2,アノード3,コンデンサレンズ4及び対物レンズ6を、荷電粒子の照射方向に向かって順に配置すると共に、コンデンサレンズ4及び対物レンズ6の内側には筒体5が設けられる。電子源2のカソード2aとアノード3との間には第1の電源21により電圧V1の加速電圧が印加され、カソード2aから引き出された荷電粒子が加速されて筒体5内に向かって放出される。筒体5を通る荷電粒子は、コンデンサレンズ4により集束され、対物レンズ6により試料S上に集光される。
【0025】
電子銃1の先端部分には、試料Sを内部に真空状態で保持する試料チャンバー7が設けられ、二次電子検出器30や電子エネルギーアナライザー31が設けられ、荷電粒子の照射により試料Sから放出される二次電子、反射電子やオージェ電子を検出する。
【0026】
本発明の走査型電子顕微鏡は、電子銃1の試料側の端部の外側に、電子銃から放出された荷電粒子を減速する電極10を備える。この電極10は、試料チャンバー7の内部(図1中において符号Aで示す)、対物レンズ6の外側側面(図1中において符号Bで示す)、及び対物レンズ6の試料側端部内の一部(図1中において符号Cで示す)に、アース電位から浮かした状態で設けられる。電極10は、アース電位から浮かした状態とするために、試料チャンバー7に対して絶縁物8を介して支持される。また、電極10には、第2電源22により所定電圧V2が印加される。なお、対物レンズ6の試料側端部内において、電極10の先端位置は、対物レンズ6の中心Pと対物レンズ6の試料側先端との間とする。
【0027】
図1(b)に示す電位状態において、カソード2aとアノード3との間に第1の電源21により電圧V1が印加され、アノード3はアース20により接地されているため、カソード2aからアノード3の間において、−V1から0に向かう電位勾配が形成される。この電位勾配により荷電粒子は加速される。
【0028】
また、筒体5はアース20により接地されており筒体5内には電位勾配がないため、加速された荷電粒子は等速度で筒5内を通過し、対物レンズ6の試料側端部に至る。試料Sには第2電源22により電圧V2が印加されているため、対物レンズ5の試料側Cから試料Sの間において、0から−V2に向かう電位勾配が形成される。この電位勾配により荷電粒子は減速される。
【0029】
したがって、電子源2と試料Sとの間における電位差Epは、(V1−V2)となり(なお、V1>V2とする)、電子源2からは高い電圧V1により高エネルギーの荷電粒子が放出され、試料Sには電位差Ep(=(V1−V2))により減速された荷電粒子が照射される。輝度は、電子源のカソードとアノードとの電位差で決まるため、本発明によれば、カソードとアノードの電位差を大きくすることができ、これにより、電子源2から放出される荷電粒子のエネルギーを高エネルギーとすることができ、高い輝度を得ることができる。また、荷電粒子は、筒体5内を高いエネルギーを持って通過するため、外部磁場等の外乱の影響を受けにくいという効果を得ることができる。また、電子銃の試料側の端部外側において減速させることにより、低加速による分析や観察を行うことができる。
【0030】
図2は、電子銃の試料側端部における電極の構成、及び電位分布を示す図である。図2において、対物レンズ6は磁極6a及び磁極6bを備え、対物レンズ6の先端の内側の一部の位置(図中のCで示す位置)まで筒体5の先端5aが延びている。また、この対物レンズ6の先端の内側の一部の位置(図中のCで示す位置)には、試料側から電極10の一部10aが延びている。この電極の一部10aは、試料チャンバーの内部及び対物レンズの側部外側に設けられる電極と一体あるいは電気的に接続して形成することができ、第2の電源22により電圧V2の負電圧が印加されている。なお、電極10は板あるいはメッシュで構成することができる。
【0031】
図2において、筒体5の先端5aと電極10の一部10aとは対向して配置され、筒体5はアース20により接地され、電極10は電圧V2の負電圧が印加されているため、対物レンズの試料側端部からは試料側に向かって図中の破線の等電位面12で示すような電位分布が形成される。この等電位面12は、図中のCで示す位置から試料S側に向かって平坦な特性となり、対物レンズ6の端部から試料S側には形成されない。
【0032】
この電位分布により、対物レンズの電界は試料S側への漏れが抑制され、また、荷電粒子の照射により試料Sから放出された二次電子や反射電子等の信号が、対物レンズ6に引き込まれないようにして、試料S側における信号への影響を防ぐことができる。
【0033】
これにより、図3に示すように、対物レンズ6の試料側先端部に二次電子検出器30を配置し、対物レンズの外側位置において二次電子や反射電子やオージェ電子等の信号を検出することができる。反射電子等は入射電子と180度反対方向に置くことが最良であり、しかも電子線の入射の妨げにならないように配置しなければならず、この対物レンズの外側位置で検出することにより、試料から電子源方向に放出される信号を効率よく検出することができる。二次電子検出器30は、例えば、光電子倍増管(PMT:Photo Multiplier Tube)等を用いることができる。
【0034】
二次電子検出器30は、電極10の任意の位置に検出面が試料S側となるように配置することができる。図4は、二次電子検出器30の配置例を説明するための概略図である。図4(a)に示す配置例では、二次電子検出器30を試料チャンバー7に対して絶縁体9を介して支持すると共に、電極10に設けた開口部10bを通して検出面30aが試料S側となるように取り付けている。
【0035】
また、図4(b)に示す配置例では、同様に、二次電子検出器30を試料チャンバー7に対して絶縁体9を介して支持すると共に、電極10に設けた断面がL字状の開口部10cを通して検出面30aが試料S側となるように取り付けている。図4(b)に示す例では、二次電子検出器30の先端に電極10が設けられる。この電極により、二次電子検出器30の前に電界によるレンズが形成される。このレンズを構成する電極10の電位をチャンバー内の電位と同じにすることによりレンズの効率を向上させることができる。
【0036】
図4(a),(b)において、電極10には負の所定電圧(例えば、第2の電源22による電圧V2)が印加されているため、二次電子検出器30に向かう信号を引き込むことはない。
【0037】
図5は、電子エネルギーアナライザー31の配置例を説明するための概略図である。図5示す配置例では、電子エネルギーアナライザー31を試料チャンバー7に対して絶縁体9を介して支持すると共に、電極10に設けた開口部10dを通して検出面31aが試料S側となるように取り付けている。電極10には負の所定電圧(例えば、第2の電源22による電圧V2)が印加されているため、電子エネルギーアナライザー31に向かう信号を引き込むことはない。
【0038】
本発明の電極は、対物レンズの外側に設ける構成であるため、簡易な構成とすることができる。
【0039】
また、試料から電子銃側に向かって放出される信号を検出するには、対物レンズの試料側先端部分に電子信号検出器を配置する必要があるが、通常は、試料から放出される信号が対物レンズに引き込まれるため十分な検出強度を得ることができない。これに対して、本発明によれば、対物レンズ内に信号を引き込むことがないため、試料側先端部分に電子信号検出器を配置し、試料から電子銃側に向かって放出される信号を効率よく検出することができる。
【0040】
本発明の走査型電子顕微鏡は、上記した電子銃、チャンバー、電極、電子信号検出器や電子エネルギーアナライザー等の構成を備える。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、簡易な構成で、高い輝度が得られ、外乱の影響を受けにくい走査型電子顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の走査型電子顕微鏡を説明するための概略ブロック図である。
【図2】電子銃の試料側端部における電極の構成、及び電位分布を示す図である。
【図3】本発明の電子信号検出器の配置例を説明するための概略図である。
【図4】本発明の電子信号検出器の配置例を説明するための概略図である。
【図5】本発明の電子エネルギーアナライザーの配置例を説明するための概略図である。
【図6】走査型電子顕微鏡において通常用いられる電子光学系の一般的な構成の概略を示している。
【図7】従来の走査型電子顕微鏡の一構成例を説明するための電子光学系の概略図である。
【符号の説明】
1…電子銃、2…電子源、3…アノード、4…コンデンサレンズ、5…筒体、5a…先端、6…対物レンズ、6a,6b…磁極、7…試料チャンバー、8,9…絶縁物、10,10a…電極、10b,10c,10d…開口部、11…電子銃、12…等電位面、15a,15b…筒状電極、20…アース、21…第1の電源、22…第2の電源、24,23…電源、30…二次電子検出器、30a…検出面、31…電子エネルギーアナライザー、31a…検出面、S…試料。
Claims (5)
- 荷電粒子を試料に照射し、試料から発生する信号を検出する走査電子顕微鏡において、
対物レンズから見て試料側の電位をアースに対して浮かすことにより、電子源から放出された荷電粒子を対物レンズと試料との間で減速させ、試料に照射することを特徴とする、走査型電子顕微鏡。 - 前記電位は、試料チャンバー内部、対物レンズの外側側面、及び対物レンズの試料側端部内の一部にアース電位から浮かして所定電圧を印加する電極により形成することを特徴とする、請求項1に記載の走査型電子顕微鏡。
- 低エネルギーの荷電粒子を試料に照射し、試料から発生する信号を検出する走査電子顕微鏡において、
試料チャンバー内部、対物レンズの外側側面、及び対物レンズの試料側端部内の一部にアース電位から浮かして所定電圧を印加する電極を備え、
前記電極により、対物レンズから試料側への電界の漏れを抑制することを特徴とする、走査型電子顕微鏡。 - 前記対物レンズの試料側端部において、前記電極の先端位置は対物レンズ中心と対物レンズの試料側端部の間であることを特徴とする、請求項3に記載の走査電子顕微鏡。
- 前記対物レンズの試料側端部に信号を検出する検出器を備えることを特徴とする、請求項3又は4に記載の走査型電子顕微鏡。
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