JP2004233680A - 現像装置およびそれを用いた画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】定着エネルギーを削減するために軟化点を低減した低融点トナーや、着色力を高めるために顔料部数を増加させた高顔料トナーにも好適に適合できる現像装置を提供する。
【解決手段】帯電されたトナーによって、感光体ドラム2に形成されている静電潜像を現像する現像装置10において、トナーを保持し、上記感光体ドラム2上に搬送する現像ローラ13と、上記トナーを帯電させるトナー帯電手段17とを備え、上記トナー帯電手段17は、光を照射する紫外線照射器153と、光を受光して光電子を発生する光電面152とを備え、該光電面152が紫外線照射器153の周囲を覆うように形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】帯電されたトナーによって、感光体ドラム2に形成されている静電潜像を現像する現像装置10において、トナーを保持し、上記感光体ドラム2上に搬送する現像ローラ13と、上記トナーを帯電させるトナー帯電手段17とを備え、上記トナー帯電手段17は、光を照射する紫外線照射器153と、光を受光して光電子を発生する光電面152とを備え、該光電面152が紫外線照射器153の周囲を覆うように形成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、複写機、プリンタおよびファクシミリなどの電子写真装置に用いられる現像装置およびそれを用いた画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、複写機、プリンタおよびファクシミリ等の電子写真装置においては、静電潜像を担持搬送する感光体に対して現像手段にトナーが供給され、感光体の表面上の静電潜像がトナーによって現像(可視化)される。具体的には、このような現像装置では、トナーは現像ローラの表面に供給ローラにより周方向から順次供給され、現像ローラの回転により感光体へ向けて担持搬送される。
【0003】
また、上記現像ローラ上に形成されるトナー層は、供給ローラよりも現像ローラの回転方向下流側に設けられたブレードによって、現像ローラ上でその層厚が規制される。このとき同時に、トナーは、ブレードとの摩擦により電荷を帯びる(摩擦帯電)。帯電されたトナーは、現像ローラにより、さらに回転方向下流側に位置する感光体との対向部まで担持搬送されて、感光体表面上の静電潜像に対して静電的に供給され、静電潜像をトナー像として現像(可視化)する。可視化されたトナー像は、転写手段によって記録紙に転写された後、定着手段によって加熱および加圧され、記録紙上に定着される。
【0004】
一般に、感光体に形成された静電潜像にトナーを付着させて現像を行うためには、トナーに十分な電荷を付与し、トナーを飽和帯電させる必要がある。
【0005】
しかしながら、上記方式の電子写真装置では、トナーに一定量の電荷を与えることができない場合がある。具体的には、現像ローラに担持されたトナーに対して、ブレードを接触させて、該ブレードとトナーとをこすり合わせることにより、トナーを帯電させるようになっている。しかしながら、トナーに一定量の帯電を行う場合には、トナーに強い摩擦力を与える必要があり、トナー品質を損なわせる場合がある。また、例えば、強い負荷をかけることができないトナーである場合には、上記方式によって、一定量の帯電を行うことができない。
【0006】
この上記に記載の摩擦帯電方式の問題を克服するために、例えば、特許文献1、2および3に開示された技術が提案されている。
【0007】
具体的には、特許文献1、2および3には、トナーに特殊な波長の光に反応するホトクロミック化合物等を含有させ、現像装置内部でトナーに直接光を照射することによりトナーを帯電させる手法が開示されている。
【0008】
また、ホトクロミック反応を利用した光照射によるトナーについては、例えば、特許文献4、5に開示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−281473号公報(公開日:平成7年10月27日)
【0010】
【特許文献2】
特開平7−295327号公報(公開日:平成7年11月10日)
【0011】
【特許文献3】
特開平9−6132号公報(公開日:平成9年1月10日)
【0012】
【特許文献4】
特開平4−220657号公報(公開日:平成4年8月11日)
【0013】
【特許文献5】
特開平7−234536号公報(公開日:平成7年9月5日)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の構成では、以下に示す問題が生じることとなる。
【0015】
上記特許文献1〜3に記載された技術は、特殊なホトクロミック化合物を含有させたトナーに光を照射させることにより、トナーを帯電させるものである。しかしながら、トナーにホトクロミック化合物のような特殊な物質を含有させる場合、トナー中に含まれる主樹脂や顔料の含有量等が減少するために、トナーの使用量が増加することになるとともに、該ホトクロミック化合物が、顔料等に悪影響を及ぼす恐れがあり、様々な悪影響がでることは言うまでもない。また、トナー中にホトクロミック化合物のような特殊な物質を含有させることにより、トナーのコストが増加するという問題点がある。また、上記特許文献1〜3は、特殊なホトクロッミク化合物を含有させたトナーを帯電させるために、トナーに光を照射させる手法については開示されているものの、放電された電子をトナーに降り注ぐ手法については何ら示唆されていない。
【0016】
また、上記従来の構成では、層厚規制部材であるブレードはトナーの層厚を規制すると同時に、トナーを摩擦帯電させるためにも使用されている。すなわち、上記従来の構成では、トナーをブレードとの摩擦により帯電させているため、トナーにおいて所望の帯電量を得るために、ブレードを現像ローラに対して比較的大きな加圧力(F)をもって圧接させている。
【0017】
このように、ブレードによってトナーに対して大きな加圧力が作用する構成では、この加圧力によってトナーの破壊が生じる恐れがある。
【0018】
また、上記摩擦帯電方式におけるエネルギー収支では、以下のことがいえる。すなわち、現像ローラの駆動エネルギー(Ek)は、ブレードの作用によってトナー層厚規制エネルギー(Es)とトナー帯電エネルギー(Et)とに変換されるが、一部は熱ロスエネルギー(El)として消費される。
【0019】
このときに発生する熱ロスエネルギー(E1)によっては、トナーが軟化することでトナーの破壊が促進される、あるいは、軟化したトナーがブレード表面に融着してトナーの摩擦帯電特性が劣化するといった問題が生じる。
【0020】
特に、近年では、省エネ技術として、トナーの軟化点を低減させて定着エネルギーを削減する、あるいは、トナーの顔料部数を増加させて着色力を高める(トナーの耐破壊性が低下する)といったトナーの改良が進んでいる。具体的には、トナーの顔料成分を増加させることにより、同じ濃度の画像であってもトナーの付着量を減らしてトナーの消費量を低減させるトナーや、トナーの樹脂成分を低温で溶解させて低温で定着(省電力化)を可能とするトナーの採用が進められている。しかしながら、上記従来の摩擦帯電方式は、上述の如くトナーに対する加圧力や熱的負荷が大きいため、このようなトナーには適合できていない。
【0021】
また、トナーの顔料成分を多くすることによりトナーの樹脂成分の割合比が低下し、トナー強度が低下する問題がある。また、トナーの樹脂成分を低温で溶解させるトナーについては、現像装置内でのトナー攪拌時などによりトナーが溶融し固着する問題がある。
【0022】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、トナーの劣化防止、即ちトナーの破壊やブレードヘの融着防止を可能とし、現像の信頼性を向上させることができる現像装置、特に、定着エネルギーを削減するために軟化点を低減した低融点トナーや、着色力を高めるために顔料部数を増加させた高顔料トナーにも好適に適合できる現像装置およびそれを用いた画像形成装置を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる現像装置は、上記課題を解決するために、現像剤を保持するとともに潜像保持体上に搬送する現像剤担持体と、上記現像剤を帯電させる現像剤帯電手段とを備えており、帯電された現像剤によって、潜像保持体上に形成されている静電潜像を現像する現像装置において、上記現像剤帯電手段は、電子誘起部材と、該電子誘起部材に光を照射する照射手段とを備え、上記電子誘起部材は、照射手段の周囲を覆うとともに光を受光して現像剤を帯電させる光電子を発生するようになっていることを特徴としている。
【0024】
上記構成によれば、電子誘起部材が照射手段の周囲を覆うように形成されているため、電子誘起部材の表面積を大きくすることが可能となる。これにより、光電子の発生量を増加させることができる。また、上記構成によれば、現像剤の汚染から照射手段を保護することができる。すなわち、例えば、特定波長の光を受光することにより光電子を発生させるグリッドが設けられた電子誘起層をブレードと一体で形成し、該電子誘起層に光を照射することによって光電子を発生させる構成が考えられる。しかしながら、この構成においては、現像剤を搬送する現像剤担持体の回転時に現像剤が舞い上がり、グリッドに構成された電子誘起層に現像剤が付着することにより、光の照射を妨げられてしまうとともに光電子を通過させるグリッドがふさがれてしまう。このため、現像剤担持体上の現像剤を安定的に帯電することは困難である。これに対して、上記構成によれば、上記現像剤担持体に現像剤を搬送する場合に、現像剤が舞い上がり電子誘起部材に付着することがあっても、電子誘起部材は、例えばグリッド等と異なり開孔部が無いので、照射手段と電子誘起部材との間を汚染することがない。したがって、照射手段を現像剤の汚染から保護し、照射手段は、照射手段と電子誘起部材との間を遮ることなく電子誘起部材に最短距離で光を照射することが可能となり、電子誘起部材は、現像剤を帯電させる光電子を安定して発生することができる。これにより、現像剤担持体上の現像剤を安定的に帯電することができる。
【0025】
また、電子誘起部材にグリッド等がある場合には、現像剤によるグリッド等の目詰まりが発生して清掃が容易でないのに対して、上記構成によれば、電子誘起部材に付着した現像剤は、電子誘起部材を清掃することにより容易に除去することが可能であり、現像装置のメンテナンスが容易となる。
【0026】
さらに、現像剤帯電手段により現像剤担持体上の現像剤を帯電させることができるため、現像剤の帯電を、例えばブレード等による摩擦帯電のみによって行う必要がない。したがって、帯電レベルに応じてブレードの加圧力を設定する必要がなくなり、ブレードは現像剤の層厚規制に必要な程度の力にて現像剤担持体に圧接されていればよいため、現像剤の軟化および破壊を防止することができる。
【0027】
本発明にかかる現像装置は、上記構成に加え、上記電子誘起部材は、筒状または球状であることを特徴としている。
【0028】
上記構成によれば、照射手段を筒状部材または球状部材とすることにより、照射手段を覆うことが可能となるため、照射手段を保護することができる。また、照射手段として、例えば蛍光管等を用いた場合に、蛍光管の取り付け部材と共用することができる。
【0029】
本発明にかかる現像装置は、上記構成に加え、上記現像剤帯電手段は、現像剤担持体と対向する開口部を有する筐体を備えており、上記筐体に電子誘起部材が収納されていることを特徴としている。
【0030】
上記構成によれば、筐体に電子誘起部材が収納されていることから、電子誘起部材から発生した光電子が拡散することなく、筐体内に収集することができる。また、電子誘起部材から発生した光電子を、現像剤担持体と対向する開口部から放出することにより、光電子を確実に現像剤担持体に導くことができる。これにより、現像剤担持体表面にある現像剤に対してより効率的に光電子を降り注がせることが可能となり、現像剤を十分に帯電させることができる。
【0031】
また、上記構成によれば、現像担持体に現像剤を搬送する場合に、現像剤が舞い上がった場合であっても、現像剤が筐体に入り込むことをより抑制することができる。さらに、現像剤帯電手段が現像剤担持体と対向する開口部を有する筐体を備えていることにより、例えば現像剤帯電手段を潜像担持体から十分離して配置することが可能となる。この場合、現像剤帯電手段の照射手段から放出された光が潜像担持体に照射されることをより抑制することが可能となる。これにより、潜像体担持体の光による劣化をより抑制することができる。
【0032】
本発明にかかる現像装置は、上記構成に加え、上記電子誘起部材との間に電気的バイアスが印加されている光電子加速手段を備えていることを特徴としている。
【0033】
照射手段の光照射による光電効果のみでは現像剤を飽和帯電させるための十分な光電子量を得ることが困難である。これに対して、上記構成によれば、光電子加速手段を設けることにより、電子誘起部材と光電子加速手段との間に電界が発生するため、電子誘起部材から放出された光電子が加速され、気体分子と衝突する。衝突された気体分子は、電子を放出してイオン化する。気体分子より放出された電子は、電子誘起部材から放出された光電子と同様の作用をするため、急激に電子が増加する、いわゆるなだれ効果を起こす。このため、光電効果で発生した光電子を増幅させて現像剤を飽和帯電させるために十分な光電子量を発生させることができる。これにより、帯電効果が大幅に向上し、安定した現像が可能となるため、良好な画像を得ることができる。
【0034】
本発明にかかる現像装置は、上記構成に加え、上記筐体には、交流バイアスが印加されていることを特徴としている。
【0035】
上記筐体内が、例えば電気的に中立の場合、または直流バイアスが印加されている場合には、電子誘起部材にて発生された光電子が筐体内にてプラス電荷と結合し、消滅してしまう可能性がある。これに対して、上記構成とすることにより、筐体内で光電子が消滅してしまうことを抑制することが可能となる。このため、光電子を消滅させることなく筐体内にて浮遊状態とさせることができる。これにより、より効率よく現像剤担持体上の現像剤に光電子を降り注ぐことができる。
【0036】
本発明にかかる現像装置は、上記構成に加え、上記交流バイアスの周波数は、40Hz〜150Hzの範囲であることを特徴としている。
【0037】
上記構成によれば、電子誘起部材から発生した光電子を、筐体に付着させる(光電子を減衰させる)ことなく浮遊させた状態で所望の位置に搬送することができる。すなわち、光電子を浮遊させた状態で筐体のほぼ中央に集中させることにより、光電子の減衰を防止することができるとともに、電子誘起部材から発生した光電子を効率よく開口部側へ搬送することができる。また、特定の交流電圧を印加する場合に、特定の電源回路にて交流電圧を生成する必要があり、この場合にはコストアップや装置の大型化を招くことがある。これ対して、上記構成によれば、装置に供給される商用電圧を用いることが可能となるため、容易に交流バイアスを印加することができ、コストアップや装置の大型化を回避することができる。
【0038】
本発明にかかる現像装置は、上記構成に加え、上記筐体には、現像剤担持体よりも高い直流バイアスが印加されていることを特徴としている。
【0039】
上記構成によれば、筐体内に磁界を発生させることができ、光電子を容易に現像剤担持体に導くことができる。これにより、より効率よく現像剤担持体上の現像剤に光電子を降り注ぐことができる。
【0040】
本発明にかかる現像装置は、上記構成に加え、上記光電子を現像剤担持体に向かって搬送するファンを筐体に備えていることを特徴としている。
【0041】
上記構成によれば、筐体に備えられたファンの風圧により、筐体内の光電子を容易に現像剤担持体に導くことができる。これにより、より効率よく現像剤担持体上の現像剤に光電子を降り注ぐことができる。
【0042】
本発明にかかる画像形成装置は、上記課題を解決するために、上記のいずれかに記載の現像装置を備えてなることを特徴としている。
【0043】
上記構成によれば、安定した現像を可能とする画像形成装置を得ることができる。
【0044】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について図1ないし図3に基づいて説明する。まず、本実施の形態に係る現像装置の概略構成を、図1を参照して説明する。
【0045】
現像装置10は、図1に示すように、感光体ドラム(潜像担持体)2と対向するように配置され、該感光体ドラム2の表面に形成される静電潜像を、現像剤として例えば1成分系の非磁性よりなるトナー(現像剤)を用いて現像する。現像装置10は、トナーを収容する容器状の現像槽11、供給ローラ12、現像ローラ(現像剤担持体)13、トナー規制ブレード14、およびトナー帯電手段(現像剤帯電手段)17を備えた構成となっている。
【0046】
供給ローラ12は、現像装置10内に配置されており、現像ローラ13と互いの外周面同士が対面するように回転可能に連設され、現像槽11内のトナーを現像ローラ13の外周面に供給する。
【0047】
現像ローラ13は、現像装置10内に感光体ドラム2と対向する箇所にて回転可能に配置されており、供給ローラ12により供給されたトナーを感光体ドラム2に向けて担持搬送する。
【0048】
トナー規制ブレード14は、現像ローラ13の回転方向に対して、供給ローラ12の下流側、かつ感光体ドラム2の上流側にて現像ローラ13と接触して配置され、現像ローラ13表面に形成されるトナー層の層厚(現像ローラ13に担持された現像剤の厚さ)を規制する。
【0049】
さらに、現像槽11の上部には、感光体ドラム2に供給されるトナーを所定の電荷量に帯電させるためのトナー帯電手段17を備えている。このトナー帯電手段17は、ダクト(筐体)16内に、電子放出部15を備えている構成である。上記ダクト16は、現像ローラ13表面に対して対向するよう開口部を有している。すなわち、トナー帯電手段17は、現像ローラ13と対向する開口部を有しているダクト16を備え、該ダクト16内には電子放出部15が収納されている。そして、この開口部からは、電子放出部15から発生した光電子が放出されるようになっている。この開口部から放出された光電子を現像ローラ13に照射することにより、現像ローラ13表面に存在するトナーが帯電される。
【0050】
また、上記トナー帯電手段17において、ダクト16の内部にはファン18が設けられていることがより好ましい。このファン18が起こす風圧により、電子放出部15から放出された光電子を現像ローラ13側に効率よく導くことができるようになっている。
【0051】
また、電子放出部15の周囲には、ダクト16の開口部とは反対側端部の内面に、電子放出部15から放出された光電子を加速するリフレクター(光電子加速手段)19が形成されていることがより好ましい。リフレクター19は、光電面152との間に電気的バイアスが印加されており、印加されたバイアスによって光電子を加速するようになっている。また、リフレクター19とダクト16とは電気的に分離されている。これにより、光電面152とリフレクター19との間に電界が発生し、電界の作用によって光電子はリフレクター19側に引き寄せられ、加速されるようになっている。加速された光電子がダクト16内にて気体分子に衝突すると、該気体分子が電子を放出してイオン化する。このとき、気体分子より放出された電子も、電子放出部15から放出された光電子と同様の作用をするため、ダクト16内の電子が急激に増加し、いわゆる電子なだれの現象が発生する。この電子なだれによって生じた電子もトナーの帯電に寄与するため、帯電効率が大幅に向上する。
【0052】
なお、上述のように、リフレクター19と光電面152との電位差により電子なだれ現象を発生させることができるため、光電面152から発生した光電子がリフレクターに流れこまないように、リフレクターおよび光電面152間のバイアスを設定する。例えばリフレクターを−200V〜−400Vに設定するか若しくはグランドに接続すればより好ましい。
【0053】
次に、電子放出部15の詳細な構成について図1ないし図3を参照して説明し、トナー帯電手段17から放出された光電子が現像ローラ13表面に存在するトナーを帯電させる機構について説明する。
【0054】
電子放出部15は、例えば石英ガラスからなるガラス基材151、光電面(電子誘起部材)152、および紫外線照射器(照射手段)153から構成されている。上記ガラス基材151は、例えば、筒状または球状とすることができる。より具体的には、上記電子放出部15は、上記ガラス基材151の内部に紫外線照射器153が備えられ、上記ガラス基材151の外面に光電面152が形成されている。すなわち、紫外線照射器153を覆うように、ガラス基材151および光電面152が形成されている。紫外線照射器153を光電面152で覆うことにより、光電面152の表面積が大きくなるため、電子放出部15から放出される光電子量が増大する。
【0055】
上記光電面152は、例えば蒸着によって積層された、薄膜状の金およびプラチナからなっている。ただし、光電面152を形成する材料は、上述の金やプラチナに限定されるものではなく、紫外線等の光の照射を受けたときに光電効果を生じるものであれば、この他にTa等の金属、Mg−Ag等の合金、半導体、導電ポリマーなどであってもよい。また、光電面152は、蒸着等により薄膜状に形成されているため、光電面152を形成する金属等の分子間には光電子を放出可能な空間が存在している。
【0056】
上記紫外線照射器153としては、例えば、254nmの紫外線を照射するフィラメントを用いることができる。さらに、上記電子放出部15に照射される光は、上述のような紫外線に限定されるものではなく、光電面152を形成する材料に対して光電効果を起こしうる波長を有するものであれば、可視光線やX線等であってもよい。
【0057】
上記構成の電子放出部15において、電子放出部15の光電面152に紫外線が照射されると、光電面152にて光電効果による光電子が誘起される。この光電子は、主に、光電面152の紫外線の照射面側、すなわち、光電面152の紫外線照射器153と対向する面において発生する。この発生した光電子は、ガラス基材151を通過することが出来ないので、光電面152を形成する金属等の分子間に存在する空間を透過することにより、光電面152の外部方向に放出される。これにより、電子放出部15から光電子が放出される。
【0058】
また、電子放出部15から放出された光電子を、ダクト16内部に付着(光電子の減衰)させることなく浮遊させた状態にし、光電子を所望の位置に搬送するために、ダクト16には周波数が40Hz〜150Hzの範囲にある交流バイアスが印加されていることがより好ましい。ダクト16に印加する交流バイアスの周波数が低すぎる場合、光電子に与える振動が小さすぎるため、光電子の動きをコントロールすることが困難になる。また、ダクト16に印加する交流バイアスの周波数が高すぎる場合、光電子に与える振動が大きすぎるため、光電子の動きをコントロールすることが困難になるとともに、ダクト16内での光電子の移動が激しくなるため不必要な電子なだれが発生してしまう。これに対して、ダクト16に印加する交流バイアスの周波数を上記範囲とすることにより、電子放出部15から放出された光電子の動きをコントロールすることができる。これにより、光電子を浮遊させた状態でダクト16のほぼ中央に集中させることが可能となり、光電子のダクト16への付着(光電子の減衰)を防止することができる。また、電子放出部15から放出された光電子を効率よくダクト16の開口部側に搬送することができる。なお、ダクト16に印加するバイアスの電源条件を、例えば商用電源である100V、50Hz/60Hzとした場合においては、良好な結果が得られた。
【0059】
また、現像ローラ13表面に存在するトナーを帯電させるのに必要な量の光電子をダクト16内に存在させるために、電子放出部15とリフレクター19との間に印加される電気的バイアスを調節することによって、電子放出部15から必要量の光電子が放出され、電子なだれにより必要量の光電子が発生される。このため、ダクト16は、ダクト16内に存在する光電子を減衰させずに開口部側まで誘導および搬送すればよく、ダクト16内で不必要に光電子量を増加させる必要はない。したがって、ダクト16内にて光電子の量をむやみに増加させることによって、光電子の量と感光体ドラム2の表面電位とのバランスが崩れることによる現像への悪影響を回避することができる。
【0060】
電子放出部15から放出された光電子は、電子放出部15からダクト16を通って図示する矢印方向に移動し、現像ローラ13のトナーに向けて放射され、トナーを帯電させる。なお、電子放出部15から放出された光電子は、ダクト16内で浮遊状態となるので、ファン18により気流を形成することによって、浮遊状態の光電子をダクト16外部により容易に放出することができる。
【0061】
一方、現像ローラ13に直流バイアスを印加している場合には、ダクト16に直流バイアスを印加することがより好ましい。例えば、現像ローラ13に−400V程度の直流バイアスを印加している場合には、ダクト16に現像ローラ13より高い直流バイアス(例えば、−700V〜−900V)を印加することができる。これにより、ダクト内に磁界を発生させることができるため、より一層効果的に、電子放出部15で発生した電子を現像ローラ13に導くことが可能となる。
【0062】
また、電子放出部15において、光電面152が電気的にフロートの状態であれば、光電面152が光電子を放出しつづけることができないことは容易に理解できる。このため、電子放出部15は、光電面152から放出した分の光電子を外部から供給可能な構成とする必要がある。上記構成は、図1に示すように、例えばリフレクター19と電子放出部15の光電面152との間に直接バイアスを印加して、所定の電位を確保することによって実現することができる。また、上記構成は、図3に示すように、電子放出部15の光電面152を、例えばブラシ154等の電気的接点を用いてグランドに接続することによっても実現することができる。このように、光電面152に、例えばブレードやブラシによりバイアスを印加すれば、光電面152から放出した分の光電子をより容易に供給することができる。
【0063】
ここで、上記現像装置10を備えた電子写真装置(画像形成装置)におけるプロセス部を簡単に説明する。
【0064】
上記プロセス部は、図1に示すように、主に感光体ドラム2、帯電ローラ3、露光手段(図示せず)、現像装置10、転写用放電ローラ4、クリーニング手段(図示せず)、除電手段(図示せず)、定着ローラ5からなる。また、図1中において、Pは記録用紙、Lは上記露光手段から照射されて感光体ドラム2表面に静電潜像を書き込む光ビームを示している。
【0065】
感光体ドラム2は、所定方向(図1に示す矢印A方向)に回転しており、まず、その外周表面が帯電ローラ3によって均一に帯電される。均一に帯電された感光体ドラム2の表面には、露光手段により画像データに応じて制御される光ビームLが照射され、静電潜像が形成される。
【0066】
感光体ドラム2上に形成された上記静電潜像は、感光体ドラム2の回転によって、現像装置10と対向する位置まで移動し、該現像装置10によってトナーが供給されて可視化される(感光体ドラム2上にトナー像が形成される)。このとき、現像装置10の現像ローラ13は、感光体ドラム2に供給するトナーを担持搬送するために所定方向(図1に示す矢印B方向)に回転している。
【0067】
尚、本実施の形態では、感光体ドラム2は、有機光半導体で構成されており、−700V(帯電ローラ3による帯電量)に帯電して、周速度が50mm/sでA方向に回転している。現像ローラ13は、円筒状の導電性ゴム弾性材料で構成されており、−400Vの現像バイアスが印加されて感光体ドラム2と等しい周速度でB方向に回転している。供給ローラ12は、円筒状の発泡性ゴム弾性材料で構成されており、感光体ドラム2と等しい周速度でB方向に回転している。
【0068】
転写用放電ローラ4は、感光体ドラム2上に現像によって形成されたトナー像を用紙Pに転写する。感光体ドラム2の回転方向における転写用放電ローラ4の下流側には、さらにクリーニング手段および除電手段が配置され、該クリーニング手段は転写後の感光体ドラム2表面の残留トナーを除去し、該除電手段は感光体ドラム2表面を除電する。
【0069】
トナー像が転写された後の用紙Pは定着ローラ5に搬送され、該用紙Pが上下一対の定着ローラ5の間を通過する際に加熱および加圧を受け、トナー像が用紙P上に定着される。
【0070】
次に、現像装置10における現像の詳細過程を説明する。
【0071】
現像装置10では、上述したように、供給ローラ12より現像ローラ13表面にトナーを順次供給して、現像ローラ13がトナーを保持した状態で回転運動する。これにより、現像ローラ13によって搬送されるトナーが現像ローラ13とトナー規制ブレード14の接触領域との間に案内されて、現像ローラ13上のトナーの層厚が規制される。尚、接触領域は、トナー規制ブレード14の先端に設けられている。
【0072】
トナー規制ブレード14によって現像ローラ13上に層厚規制されたトナーは、トナー帯電手段17によって、電荷を与えられ、現像に必要な帯電量まで帯電される。すなわち、トナー帯電手段17の電子放出部15において、紫外線照射器153から光電面152に紫外線が照射されることにより、光電子が発生し、この光電子がダクト16の開口部から現像ローラ13上のトナーに向けて放出され、トナーが所望の帯電量に帯電される。なお、上記紫外線照射器153の発光を、現像ローラ13の回転と同期させれば、電力消費の増加につながる不必要な発光を抑制することができるためより好ましい。また、電子放出部15の紫外線照射器153は、筒状または球状のガラス基材151および光電面152によって覆われている。これにより、電子放出部15の内部に構成された紫外線照射器153にトナーが入り込むことはないため、トナーによる光照射の障害が起こることはない。
【0073】
上記構成のトナー帯電手段17は、現像装置10として現像槽11等の他の部材と一体に構成されていてもよく、別体で構成されていてもよい。本実施の形態においては、現像槽11等の他の部材とは別体として構成されている。これにより、現像槽11にて舞い上がったトナーが、トナー帯電手段17に入り込むことをより一層抑制することができる。また、電子放出部15から発生した光電子を、ダクト16を経由して現像ローラ13上のトナーに降り注ぐことによりトナーの帯電を行うことができる。電子放出部15は現像ローラ13上のトナーとは非接触となっているため、トナーに対して無負荷の状態で帯電を行うことができる。このため、現像装置10におけるトナー規制ブレード14は、現像ローラ13に対して少なくともトナーの層厚規制に必要な程度の力にて圧接されていればよく、トナー規制ブレード14によるトナーへの加圧力および熱的負荷を大幅に低減することができる。
【0074】
また、トナー帯電手段17が現像槽11と別体で構成されている場合には、電子放出部15は、現像槽11と完全に分離された状態であるため、画像形成時など現像ローラ13の回転時に、トナーが舞い上がっても電子放出部15にトナーが付着するなどの問題をより一層回避することができ、現像槽11の影響を受けることなく安定した光電子の放出を行うことができる。
【0075】
上記トナー帯電手段17によって所定の帯電量まで帯電されたトナーは、さらに現像ローラ13の回転によって感光体ドラム2との対向部まで送られ、感光体ドラム2の表面上の静電潜像に対して、静電的に供給され、該静電潜像をトナー像として現像(可視化)する。以上により、現像装置10における現像がなされる。
【0076】
また、本実施の形態に係る現像装置10は、トナー帯電手段17を設けていることにより、従来の摩擦帯電方式を用いた現像装置に比べて、トナー規制ブレード14の圧接力を大幅に低減することができる。これにより、トナー規制ブレード14によるトナーへの加圧力および熱的負荷が大幅に低減され、トナー破壊やトナー規制ブレード14へのトナー融着といった不具合を回避できる。
【0077】
つまり、本実施の形態にかかるトナー規制ブレード14は、従来のように、トナー層厚規制機能およびトナー帯電機能の両方の機能を有する必要はなく、トナー層厚規制機能のみに特化することができる。このため、上記現像装置10では、上記トナー規制ブレード14の上記現像ローラ13に対する圧接力を従来のトナー規制ブレード14に比べて大幅に低減することができ、上記トナーに作用する負荷(機械的負荷および熱的負荷)を減少せしめて、トナーの破壊や融着を防止することができる。
【0078】
また、トナー規制ブレード14の現像ローラ13との接触領域を、例えばダイアモンドライクカーボン(以下、DLCと称する)加工に施してもよい。この場合、上記トナー規制ブレード14を、例えば、従来と同様な圧力(接触圧)で、現像ローラ13に圧接させた場合であっても、トナー層の層厚を、好適な範囲に維持することができるとともに、トナーに強いストレスを与えることがない。従って、例えば、トナーとして、従来よりも軟化点が低い低融点トナーや、顔料の含有量が従来よりも多い高顔料トナーを用いた場合でも、好適に使用することができる。これにより、例えば、高顔料トナーを用いた場合には、従来と比べて、トナーの消費量を抑制することができる。また、例えば、低融点トナーを用いた場合には、電源ON時のファーストプリンタが早くなったり、定着ローラの加熱温度を低く設定することが可能となるので、低消費電力化が可能となる。また、接触領域にDLC加工を施した場合、トナーに対するストレス(摩擦力)を従来と比べて、低減させることができる一方、摩擦によるトナーの帯電量が従来よりも低下することとなる。しかしながら、現像装置10には、トナー規制ブレード14の摩擦による帯電の他に、トナー帯電手段が設けることにより、トナーを十分に(好適に画像形成を行うことができる程度に)帯電させることができる。
【0079】
なお、上記高顔料トナーとしては、例えば、上記トナー中の顔料の含有量が7重量%以上25重量%以下の範囲内であり、かつ、顔料を主樹脂間に分散させてなる顔料分散体の表面が、帯電被覆剤を実質的に溶解させた被覆樹脂にて被覆されているトナー等が挙げられる。トナー中の顔料の含有量をトナー全体に対して7重量%以上25重量%以下にすれば、例えば、画像濃度IDが1.4となるときの印字媒体上へのトナーの付着量として0.05mg/cm2以上0.95mg/cm2以下を達成することができる。
【0080】
また、上記低融点トナーとしては、例えば、上記トナーの融点が75℃以下であり、かつ、顔料を主樹脂間に分散させてなる顔料分散体の表面が、帯電被覆剤を実質的に溶解させた被覆樹脂にて被覆されているトナー等が挙げられる。なお、上記現像剤の融点とは、「主樹脂」の融点に相当する。つまり、上記低融点トナーとは、顔料を主樹脂間に分散させてなる顔料分散体の表面が、帯電被覆剤を実質的に溶解させた被覆樹脂にて被覆されているトナーであって、上記主樹脂の融点が75℃以下であるトナー等である。
【0081】
従来では、紙等の印字媒体上において十分高い印字濃度を得るために、印字媒体へのトナー付着量を高くしている。例えば、トナー付着量を1mg/cm2という値とし、それによって、画像濃度ID=1.4という所望の濃度を得るようにしている。また、従来では、印字媒体に、トナーをより確実に付着させるために、トナー中に含まれる主樹脂の量を多くしている。そのため、従来では、トナーの消費量が多くなるという問題がある。また、疎水性シリカ等の外添剤をトナーの表面に外添して耐電特性および流動性を制御する手法が広く用いられているが、現像漕11の中で長期に使用されている間に撹拌等の機械的なストレスにより外添剤が脱落もしくはトナー内部へ埋没してしまい、トナーの特性の劣化を引き起こすという問題がある。特に、トナー中の顔料の含有割合が、従来よりも多い、高顔料トナーを使用する場合には、主樹脂の濃度がその分低下することにより、機械的な負荷に対して弱くなり、例えば現像漕11での撹拌処理等によってトナーが破断され、破断したトナー内部の主樹脂が現像漕11等に融着してしまう可能性がある。
【0082】
また、一般に、紙等の印字媒体に転写されたトナー像を定着させるために、トナーに熱を加えて、溶融させることにより、トナー像を印字媒体に固着させる方法が用いられる。このように、トナーを溶着させる定着方法においては、トナーの溶解温度以上に印字媒体の温度を上昇させる必要があり、設定温度が高すぎると無駄な電力消費を行うばかりでなく、定着ローラ5(定着装置)を高い温度で維持するためには画像形成装置が大型化する。また、印字媒体に対して、急激に高い温度を加えるため印字媒体にカールが発生したり、電源投入時には定着ローラ5を所定の温度に上昇させる必要があるので、ファーストプリントまでに長時間を必要とする。さらに、融点の低いトナーを現像槽11で攪拌処理などによって、トナーが溶融温度に達するとトナーが破断され、破断したトナー内部の樹脂が現像漕等に融着してしまう可能性がある。
【0083】
しかしながら、本実施の形態の場合、紫外線照射器16から放出された紫外線が、電子放出部15に照射され、光電効果が起こることによって電子放出部15から光電子が放出される。そして、該電子放出部15より放出された光電子をトナーに向けて降り注ぐことによりトナーを帯電するようになっている。
【0084】
すなわち、本実施の形態にかかる現像装置10は、トナーの帯電をトナー帯電手段にて行うので、摩擦帯電で予備的に帯電を行わせるものの、トナーに対する摩擦力が従来と比べて小さい。従って、トナーに与える障害(ストレスや熱)を小さくすることが可能となるので、高顔料トナーや低融点トナーを利用することが可能となる。また、光電効果を利用した非接触の帯電方法を用いることにより、トナーの電荷量の不足に対しても、トナーにストレスを与えることなく安定した帯電量を確保することができるため、トナーへの悪影響を防止することができる。
【0085】
さらに、トナー規制ブレード14の現像ローラ13との接触領域にDLC加工を施した場合、トナー規制ブレード14は、現像ローラ13に担持されたトナーに、強いストレスをかけることなく、トナー層の層厚を規制することができる。従って、上記のような、低融点トナーや高顔料トナーをより好適に用いることができる。
【0086】
また、上記の説明では、光電効果により発生した光電子にて、トナーを帯電させる構成について説明したが、トナーを帯電させる方法については、特に限定されるものではなく、例えば、熱によって発生する電子を用いてトナーを帯電させてもよい。また、電子放出部15がダクト16内に収納されている構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電子放出部15から放出された光電子が、現像ローラ13上のトナーを帯電させることができる位置に配置されていればよい。
【0087】
【発明の効果】
以上のように、本発明にかかる現像装置は、上記現像剤帯電手段は、電子誘起部材と、該電子誘起部材に光を照射する照射手段とを備え、上記電子誘起部材は、照射手段の周囲を覆うとともに光を受光して現像剤を帯電させる光電子を発生するようになっている構成である。
【0088】
上記構成によれば、上記現像剤担持体に現像剤を搬送する場合に、現像剤が舞い上がり電子誘起部材に付着することがあっても、電子誘起部材は、例えばグリッド等と異なり開孔部が無いので、照射手段と電子誘起部材との間を汚染することがない。したがって、照射手段を現像剤の汚染から保護し、照射手段は、照射手段と電子誘起部材との間を遮ることなく電子誘起部材に最短距離で光を照射することが可能となり、電子誘起部材は、現像剤を帯電させる光電子を安定して発生することができる。これにより、現像剤担持体上の現像剤を安定的に帯電することができる。
【0089】
また、電子誘起部材に付着した現像剤は、電子誘起部材を清掃することにより容易に除去することが可能であり、現像装置のメンテナンスが容易となる。さらに、帯電レベルに応じてブレードの加圧力を設定する必要がなくなり、ブレードは現像剤の層厚規制に必要な程度の力にて現像剤担持体に圧接されていればよいため、現像剤の軟化および破壊を防止することができるという効果を奏する。
【0090】
上記の現像装置において、上記電子誘起部材は、筒状または球状である構成としてもよい。
【0091】
上記構成によれば、照射手段を筒状部材または球状部材とすることにより、照射手段を覆うことが可能となるため、照射手段を保護することができる。また、照射手段として、例えば蛍光管等を用いた場合に、蛍光管の取り付け部材と共用することができるという効果を奏する。
【0092】
上記の現像装置において、上記現像剤帯電手段は、現像剤担持体と対向する開口部を有する筐体を備えており、上記筐体に電子誘起部材が収納されている構成としてもよい。
【0093】
上記構成によれば、筐体に電子誘起部材が収納されていることから、電子誘起部材から発生した光電子が拡散することなく、筐体内に収集することができる。また、電子誘起部材から発生した光電子を、現像剤担持体と対向する開口部から放出することにより、光電子を確実に現像剤担持体に導くことができる。これにより、現像剤担持体表面にある現像剤に対してより効率的に光電子を降り注がせることが可能となり、現像剤を十分に帯電させることができる。
【0094】
また、上記構成によれば、現像担持体に現像剤を搬送する場合に、現像剤が舞い上がった場合であっても、現像剤が筐体に入り込むことをより抑制することができる。さらに、現像剤帯電手段が現像剤担持体と対向する開口部を有する筐体を備えていることにより、例えば現像剤帯電手段を潜像担持体から十分離して配置することが可能となる。この場合、現像剤帯電手段の照射手段から放出された光が潜像担持体に照射されることをより抑制することが可能となる。これにより、潜像体担持体の光による劣化をより抑制することができるという効果を奏する。
【0095】
上記の現像装置において、上記電子誘起部材との間に電気的バイアスが印加されている光電子加速手段を備えている構成としてもよい。
【0096】
上記構成によれば、光電子加速手段を設けることにより、電子誘起部材と光電子加速手段との間に電界が発生するため、電子誘起部材から放出された光電子が加速され、気体分子と衝突する。衝突された気体分子は、電子を放出してイオン化し、いわゆるなだれ効果を起こす。このため、光電効果で発生した光電子を増幅させて現像剤を飽和帯電させるために十分な光電子量を発生させることができる。これにより、帯電効果が大幅に向上し、安定した現像が可能となるため、良好な画像を得ることができるという効果を奏する。
【0097】
上記の現像装置において、上記筐体には、交流バイアスが印加されている構成としてもよい。
【0098】
上記構成によれば、筐体内で光電子が消滅してしまうことを抑制することが可能となる。このため、光電子を消滅させることなく筐体内にて浮遊状態とさせることができる。これにより、より効率よく現像剤担持体上の現像剤に光電子を降り注ぐことができるという効果を奏する。
【0099】
上記の現像装置において、上記交流バイアスの周波数は、40Hz〜150Hzの範囲である構成としてもよい。
【0100】
上記構成によれば、光電子の減衰を防止することができるとともに、電子誘起部材から発生した光電子を効率よく開口部側へ搬送することができる。また、装置に供給される商用電圧を用いることが可能となるため、容易に交流バイアスを印加することができ、コストアップや装置の大型化を回避することができるという効果を奏する。
【0101】
上記の現像装置において、上記筐体には、現像剤担持体よりも高い直流バイアスが印加されている構成としてもよい。
【0102】
上記構成によれば、筐体内に磁界を発生させることができ、光電子を容易に現像剤担持体に導くことができる。これにより、より効率よく現像剤担持体上の現像剤に光電子を降り注ぐことができるという効果を奏する。
【0103】
上記の現像装置において、上記光電子を現像剤担持体に向かって搬送するファンを筐体に備えている構成としてもよい。
【0104】
上記構成によれば、筐体に備えられたファンの風圧により、筐体内の光電子を容易に現像剤担持体に導くことができる。これにより、より効率よく現像剤担持体上の現像剤に光電子を降り注ぐことができるという効果を奏する。
【0105】
以上のように、本発明にかかる画像形成装置は、上記のいずれかに記載の現像装置を備えてなる構成である。
【0106】
上記構成によれば、安定した現像を可能とする画像形成装置を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態における画像形成装置の要部の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の電子放出部の構成を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明の電子放出部の構成を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
2 感光体ドラム(潜像担持体)
10 現像装置
11 現像槽
12 供給ローラ
13 現像ローラ(現像剤担持体)
14 トナー規制ブレード
15 電子放出部
151 ガラス基材
152 光電面(電子誘起部材)
153 紫外線照射器(照射手段)
154 ブラシ
16 ダクト(筐体)
17 トナー帯電手段(現像剤帯電手段)
18 ファン
19 リフレクター(光電子加速手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、複写機、プリンタおよびファクシミリなどの電子写真装置に用いられる現像装置およびそれを用いた画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、複写機、プリンタおよびファクシミリ等の電子写真装置においては、静電潜像を担持搬送する感光体に対して現像手段にトナーが供給され、感光体の表面上の静電潜像がトナーによって現像(可視化)される。具体的には、このような現像装置では、トナーは現像ローラの表面に供給ローラにより周方向から順次供給され、現像ローラの回転により感光体へ向けて担持搬送される。
【0003】
また、上記現像ローラ上に形成されるトナー層は、供給ローラよりも現像ローラの回転方向下流側に設けられたブレードによって、現像ローラ上でその層厚が規制される。このとき同時に、トナーは、ブレードとの摩擦により電荷を帯びる(摩擦帯電)。帯電されたトナーは、現像ローラにより、さらに回転方向下流側に位置する感光体との対向部まで担持搬送されて、感光体表面上の静電潜像に対して静電的に供給され、静電潜像をトナー像として現像(可視化)する。可視化されたトナー像は、転写手段によって記録紙に転写された後、定着手段によって加熱および加圧され、記録紙上に定着される。
【0004】
一般に、感光体に形成された静電潜像にトナーを付着させて現像を行うためには、トナーに十分な電荷を付与し、トナーを飽和帯電させる必要がある。
【0005】
しかしながら、上記方式の電子写真装置では、トナーに一定量の電荷を与えることができない場合がある。具体的には、現像ローラに担持されたトナーに対して、ブレードを接触させて、該ブレードとトナーとをこすり合わせることにより、トナーを帯電させるようになっている。しかしながら、トナーに一定量の帯電を行う場合には、トナーに強い摩擦力を与える必要があり、トナー品質を損なわせる場合がある。また、例えば、強い負荷をかけることができないトナーである場合には、上記方式によって、一定量の帯電を行うことができない。
【0006】
この上記に記載の摩擦帯電方式の問題を克服するために、例えば、特許文献1、2および3に開示された技術が提案されている。
【0007】
具体的には、特許文献1、2および3には、トナーに特殊な波長の光に反応するホトクロミック化合物等を含有させ、現像装置内部でトナーに直接光を照射することによりトナーを帯電させる手法が開示されている。
【0008】
また、ホトクロミック反応を利用した光照射によるトナーについては、例えば、特許文献4、5に開示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−281473号公報(公開日:平成7年10月27日)
【0010】
【特許文献2】
特開平7−295327号公報(公開日:平成7年11月10日)
【0011】
【特許文献3】
特開平9−6132号公報(公開日:平成9年1月10日)
【0012】
【特許文献4】
特開平4−220657号公報(公開日:平成4年8月11日)
【0013】
【特許文献5】
特開平7−234536号公報(公開日:平成7年9月5日)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の構成では、以下に示す問題が生じることとなる。
【0015】
上記特許文献1〜3に記載された技術は、特殊なホトクロミック化合物を含有させたトナーに光を照射させることにより、トナーを帯電させるものである。しかしながら、トナーにホトクロミック化合物のような特殊な物質を含有させる場合、トナー中に含まれる主樹脂や顔料の含有量等が減少するために、トナーの使用量が増加することになるとともに、該ホトクロミック化合物が、顔料等に悪影響を及ぼす恐れがあり、様々な悪影響がでることは言うまでもない。また、トナー中にホトクロミック化合物のような特殊な物質を含有させることにより、トナーのコストが増加するという問題点がある。また、上記特許文献1〜3は、特殊なホトクロッミク化合物を含有させたトナーを帯電させるために、トナーに光を照射させる手法については開示されているものの、放電された電子をトナーに降り注ぐ手法については何ら示唆されていない。
【0016】
また、上記従来の構成では、層厚規制部材であるブレードはトナーの層厚を規制すると同時に、トナーを摩擦帯電させるためにも使用されている。すなわち、上記従来の構成では、トナーをブレードとの摩擦により帯電させているため、トナーにおいて所望の帯電量を得るために、ブレードを現像ローラに対して比較的大きな加圧力(F)をもって圧接させている。
【0017】
このように、ブレードによってトナーに対して大きな加圧力が作用する構成では、この加圧力によってトナーの破壊が生じる恐れがある。
【0018】
また、上記摩擦帯電方式におけるエネルギー収支では、以下のことがいえる。すなわち、現像ローラの駆動エネルギー(Ek)は、ブレードの作用によってトナー層厚規制エネルギー(Es)とトナー帯電エネルギー(Et)とに変換されるが、一部は熱ロスエネルギー(El)として消費される。
【0019】
このときに発生する熱ロスエネルギー(E1)によっては、トナーが軟化することでトナーの破壊が促進される、あるいは、軟化したトナーがブレード表面に融着してトナーの摩擦帯電特性が劣化するといった問題が生じる。
【0020】
特に、近年では、省エネ技術として、トナーの軟化点を低減させて定着エネルギーを削減する、あるいは、トナーの顔料部数を増加させて着色力を高める(トナーの耐破壊性が低下する)といったトナーの改良が進んでいる。具体的には、トナーの顔料成分を増加させることにより、同じ濃度の画像であってもトナーの付着量を減らしてトナーの消費量を低減させるトナーや、トナーの樹脂成分を低温で溶解させて低温で定着(省電力化)を可能とするトナーの採用が進められている。しかしながら、上記従来の摩擦帯電方式は、上述の如くトナーに対する加圧力や熱的負荷が大きいため、このようなトナーには適合できていない。
【0021】
また、トナーの顔料成分を多くすることによりトナーの樹脂成分の割合比が低下し、トナー強度が低下する問題がある。また、トナーの樹脂成分を低温で溶解させるトナーについては、現像装置内でのトナー攪拌時などによりトナーが溶融し固着する問題がある。
【0022】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、トナーの劣化防止、即ちトナーの破壊やブレードヘの融着防止を可能とし、現像の信頼性を向上させることができる現像装置、特に、定着エネルギーを削減するために軟化点を低減した低融点トナーや、着色力を高めるために顔料部数を増加させた高顔料トナーにも好適に適合できる現像装置およびそれを用いた画像形成装置を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる現像装置は、上記課題を解決するために、現像剤を保持するとともに潜像保持体上に搬送する現像剤担持体と、上記現像剤を帯電させる現像剤帯電手段とを備えており、帯電された現像剤によって、潜像保持体上に形成されている静電潜像を現像する現像装置において、上記現像剤帯電手段は、電子誘起部材と、該電子誘起部材に光を照射する照射手段とを備え、上記電子誘起部材は、照射手段の周囲を覆うとともに光を受光して現像剤を帯電させる光電子を発生するようになっていることを特徴としている。
【0024】
上記構成によれば、電子誘起部材が照射手段の周囲を覆うように形成されているため、電子誘起部材の表面積を大きくすることが可能となる。これにより、光電子の発生量を増加させることができる。また、上記構成によれば、現像剤の汚染から照射手段を保護することができる。すなわち、例えば、特定波長の光を受光することにより光電子を発生させるグリッドが設けられた電子誘起層をブレードと一体で形成し、該電子誘起層に光を照射することによって光電子を発生させる構成が考えられる。しかしながら、この構成においては、現像剤を搬送する現像剤担持体の回転時に現像剤が舞い上がり、グリッドに構成された電子誘起層に現像剤が付着することにより、光の照射を妨げられてしまうとともに光電子を通過させるグリッドがふさがれてしまう。このため、現像剤担持体上の現像剤を安定的に帯電することは困難である。これに対して、上記構成によれば、上記現像剤担持体に現像剤を搬送する場合に、現像剤が舞い上がり電子誘起部材に付着することがあっても、電子誘起部材は、例えばグリッド等と異なり開孔部が無いので、照射手段と電子誘起部材との間を汚染することがない。したがって、照射手段を現像剤の汚染から保護し、照射手段は、照射手段と電子誘起部材との間を遮ることなく電子誘起部材に最短距離で光を照射することが可能となり、電子誘起部材は、現像剤を帯電させる光電子を安定して発生することができる。これにより、現像剤担持体上の現像剤を安定的に帯電することができる。
【0025】
また、電子誘起部材にグリッド等がある場合には、現像剤によるグリッド等の目詰まりが発生して清掃が容易でないのに対して、上記構成によれば、電子誘起部材に付着した現像剤は、電子誘起部材を清掃することにより容易に除去することが可能であり、現像装置のメンテナンスが容易となる。
【0026】
さらに、現像剤帯電手段により現像剤担持体上の現像剤を帯電させることができるため、現像剤の帯電を、例えばブレード等による摩擦帯電のみによって行う必要がない。したがって、帯電レベルに応じてブレードの加圧力を設定する必要がなくなり、ブレードは現像剤の層厚規制に必要な程度の力にて現像剤担持体に圧接されていればよいため、現像剤の軟化および破壊を防止することができる。
【0027】
本発明にかかる現像装置は、上記構成に加え、上記電子誘起部材は、筒状または球状であることを特徴としている。
【0028】
上記構成によれば、照射手段を筒状部材または球状部材とすることにより、照射手段を覆うことが可能となるため、照射手段を保護することができる。また、照射手段として、例えば蛍光管等を用いた場合に、蛍光管の取り付け部材と共用することができる。
【0029】
本発明にかかる現像装置は、上記構成に加え、上記現像剤帯電手段は、現像剤担持体と対向する開口部を有する筐体を備えており、上記筐体に電子誘起部材が収納されていることを特徴としている。
【0030】
上記構成によれば、筐体に電子誘起部材が収納されていることから、電子誘起部材から発生した光電子が拡散することなく、筐体内に収集することができる。また、電子誘起部材から発生した光電子を、現像剤担持体と対向する開口部から放出することにより、光電子を確実に現像剤担持体に導くことができる。これにより、現像剤担持体表面にある現像剤に対してより効率的に光電子を降り注がせることが可能となり、現像剤を十分に帯電させることができる。
【0031】
また、上記構成によれば、現像担持体に現像剤を搬送する場合に、現像剤が舞い上がった場合であっても、現像剤が筐体に入り込むことをより抑制することができる。さらに、現像剤帯電手段が現像剤担持体と対向する開口部を有する筐体を備えていることにより、例えば現像剤帯電手段を潜像担持体から十分離して配置することが可能となる。この場合、現像剤帯電手段の照射手段から放出された光が潜像担持体に照射されることをより抑制することが可能となる。これにより、潜像体担持体の光による劣化をより抑制することができる。
【0032】
本発明にかかる現像装置は、上記構成に加え、上記電子誘起部材との間に電気的バイアスが印加されている光電子加速手段を備えていることを特徴としている。
【0033】
照射手段の光照射による光電効果のみでは現像剤を飽和帯電させるための十分な光電子量を得ることが困難である。これに対して、上記構成によれば、光電子加速手段を設けることにより、電子誘起部材と光電子加速手段との間に電界が発生するため、電子誘起部材から放出された光電子が加速され、気体分子と衝突する。衝突された気体分子は、電子を放出してイオン化する。気体分子より放出された電子は、電子誘起部材から放出された光電子と同様の作用をするため、急激に電子が増加する、いわゆるなだれ効果を起こす。このため、光電効果で発生した光電子を増幅させて現像剤を飽和帯電させるために十分な光電子量を発生させることができる。これにより、帯電効果が大幅に向上し、安定した現像が可能となるため、良好な画像を得ることができる。
【0034】
本発明にかかる現像装置は、上記構成に加え、上記筐体には、交流バイアスが印加されていることを特徴としている。
【0035】
上記筐体内が、例えば電気的に中立の場合、または直流バイアスが印加されている場合には、電子誘起部材にて発生された光電子が筐体内にてプラス電荷と結合し、消滅してしまう可能性がある。これに対して、上記構成とすることにより、筐体内で光電子が消滅してしまうことを抑制することが可能となる。このため、光電子を消滅させることなく筐体内にて浮遊状態とさせることができる。これにより、より効率よく現像剤担持体上の現像剤に光電子を降り注ぐことができる。
【0036】
本発明にかかる現像装置は、上記構成に加え、上記交流バイアスの周波数は、40Hz〜150Hzの範囲であることを特徴としている。
【0037】
上記構成によれば、電子誘起部材から発生した光電子を、筐体に付着させる(光電子を減衰させる)ことなく浮遊させた状態で所望の位置に搬送することができる。すなわち、光電子を浮遊させた状態で筐体のほぼ中央に集中させることにより、光電子の減衰を防止することができるとともに、電子誘起部材から発生した光電子を効率よく開口部側へ搬送することができる。また、特定の交流電圧を印加する場合に、特定の電源回路にて交流電圧を生成する必要があり、この場合にはコストアップや装置の大型化を招くことがある。これ対して、上記構成によれば、装置に供給される商用電圧を用いることが可能となるため、容易に交流バイアスを印加することができ、コストアップや装置の大型化を回避することができる。
【0038】
本発明にかかる現像装置は、上記構成に加え、上記筐体には、現像剤担持体よりも高い直流バイアスが印加されていることを特徴としている。
【0039】
上記構成によれば、筐体内に磁界を発生させることができ、光電子を容易に現像剤担持体に導くことができる。これにより、より効率よく現像剤担持体上の現像剤に光電子を降り注ぐことができる。
【0040】
本発明にかかる現像装置は、上記構成に加え、上記光電子を現像剤担持体に向かって搬送するファンを筐体に備えていることを特徴としている。
【0041】
上記構成によれば、筐体に備えられたファンの風圧により、筐体内の光電子を容易に現像剤担持体に導くことができる。これにより、より効率よく現像剤担持体上の現像剤に光電子を降り注ぐことができる。
【0042】
本発明にかかる画像形成装置は、上記課題を解決するために、上記のいずれかに記載の現像装置を備えてなることを特徴としている。
【0043】
上記構成によれば、安定した現像を可能とする画像形成装置を得ることができる。
【0044】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について図1ないし図3に基づいて説明する。まず、本実施の形態に係る現像装置の概略構成を、図1を参照して説明する。
【0045】
現像装置10は、図1に示すように、感光体ドラム(潜像担持体)2と対向するように配置され、該感光体ドラム2の表面に形成される静電潜像を、現像剤として例えば1成分系の非磁性よりなるトナー(現像剤)を用いて現像する。現像装置10は、トナーを収容する容器状の現像槽11、供給ローラ12、現像ローラ(現像剤担持体)13、トナー規制ブレード14、およびトナー帯電手段(現像剤帯電手段)17を備えた構成となっている。
【0046】
供給ローラ12は、現像装置10内に配置されており、現像ローラ13と互いの外周面同士が対面するように回転可能に連設され、現像槽11内のトナーを現像ローラ13の外周面に供給する。
【0047】
現像ローラ13は、現像装置10内に感光体ドラム2と対向する箇所にて回転可能に配置されており、供給ローラ12により供給されたトナーを感光体ドラム2に向けて担持搬送する。
【0048】
トナー規制ブレード14は、現像ローラ13の回転方向に対して、供給ローラ12の下流側、かつ感光体ドラム2の上流側にて現像ローラ13と接触して配置され、現像ローラ13表面に形成されるトナー層の層厚(現像ローラ13に担持された現像剤の厚さ)を規制する。
【0049】
さらに、現像槽11の上部には、感光体ドラム2に供給されるトナーを所定の電荷量に帯電させるためのトナー帯電手段17を備えている。このトナー帯電手段17は、ダクト(筐体)16内に、電子放出部15を備えている構成である。上記ダクト16は、現像ローラ13表面に対して対向するよう開口部を有している。すなわち、トナー帯電手段17は、現像ローラ13と対向する開口部を有しているダクト16を備え、該ダクト16内には電子放出部15が収納されている。そして、この開口部からは、電子放出部15から発生した光電子が放出されるようになっている。この開口部から放出された光電子を現像ローラ13に照射することにより、現像ローラ13表面に存在するトナーが帯電される。
【0050】
また、上記トナー帯電手段17において、ダクト16の内部にはファン18が設けられていることがより好ましい。このファン18が起こす風圧により、電子放出部15から放出された光電子を現像ローラ13側に効率よく導くことができるようになっている。
【0051】
また、電子放出部15の周囲には、ダクト16の開口部とは反対側端部の内面に、電子放出部15から放出された光電子を加速するリフレクター(光電子加速手段)19が形成されていることがより好ましい。リフレクター19は、光電面152との間に電気的バイアスが印加されており、印加されたバイアスによって光電子を加速するようになっている。また、リフレクター19とダクト16とは電気的に分離されている。これにより、光電面152とリフレクター19との間に電界が発生し、電界の作用によって光電子はリフレクター19側に引き寄せられ、加速されるようになっている。加速された光電子がダクト16内にて気体分子に衝突すると、該気体分子が電子を放出してイオン化する。このとき、気体分子より放出された電子も、電子放出部15から放出された光電子と同様の作用をするため、ダクト16内の電子が急激に増加し、いわゆる電子なだれの現象が発生する。この電子なだれによって生じた電子もトナーの帯電に寄与するため、帯電効率が大幅に向上する。
【0052】
なお、上述のように、リフレクター19と光電面152との電位差により電子なだれ現象を発生させることができるため、光電面152から発生した光電子がリフレクターに流れこまないように、リフレクターおよび光電面152間のバイアスを設定する。例えばリフレクターを−200V〜−400Vに設定するか若しくはグランドに接続すればより好ましい。
【0053】
次に、電子放出部15の詳細な構成について図1ないし図3を参照して説明し、トナー帯電手段17から放出された光電子が現像ローラ13表面に存在するトナーを帯電させる機構について説明する。
【0054】
電子放出部15は、例えば石英ガラスからなるガラス基材151、光電面(電子誘起部材)152、および紫外線照射器(照射手段)153から構成されている。上記ガラス基材151は、例えば、筒状または球状とすることができる。より具体的には、上記電子放出部15は、上記ガラス基材151の内部に紫外線照射器153が備えられ、上記ガラス基材151の外面に光電面152が形成されている。すなわち、紫外線照射器153を覆うように、ガラス基材151および光電面152が形成されている。紫外線照射器153を光電面152で覆うことにより、光電面152の表面積が大きくなるため、電子放出部15から放出される光電子量が増大する。
【0055】
上記光電面152は、例えば蒸着によって積層された、薄膜状の金およびプラチナからなっている。ただし、光電面152を形成する材料は、上述の金やプラチナに限定されるものではなく、紫外線等の光の照射を受けたときに光電効果を生じるものであれば、この他にTa等の金属、Mg−Ag等の合金、半導体、導電ポリマーなどであってもよい。また、光電面152は、蒸着等により薄膜状に形成されているため、光電面152を形成する金属等の分子間には光電子を放出可能な空間が存在している。
【0056】
上記紫外線照射器153としては、例えば、254nmの紫外線を照射するフィラメントを用いることができる。さらに、上記電子放出部15に照射される光は、上述のような紫外線に限定されるものではなく、光電面152を形成する材料に対して光電効果を起こしうる波長を有するものであれば、可視光線やX線等であってもよい。
【0057】
上記構成の電子放出部15において、電子放出部15の光電面152に紫外線が照射されると、光電面152にて光電効果による光電子が誘起される。この光電子は、主に、光電面152の紫外線の照射面側、すなわち、光電面152の紫外線照射器153と対向する面において発生する。この発生した光電子は、ガラス基材151を通過することが出来ないので、光電面152を形成する金属等の分子間に存在する空間を透過することにより、光電面152の外部方向に放出される。これにより、電子放出部15から光電子が放出される。
【0058】
また、電子放出部15から放出された光電子を、ダクト16内部に付着(光電子の減衰)させることなく浮遊させた状態にし、光電子を所望の位置に搬送するために、ダクト16には周波数が40Hz〜150Hzの範囲にある交流バイアスが印加されていることがより好ましい。ダクト16に印加する交流バイアスの周波数が低すぎる場合、光電子に与える振動が小さすぎるため、光電子の動きをコントロールすることが困難になる。また、ダクト16に印加する交流バイアスの周波数が高すぎる場合、光電子に与える振動が大きすぎるため、光電子の動きをコントロールすることが困難になるとともに、ダクト16内での光電子の移動が激しくなるため不必要な電子なだれが発生してしまう。これに対して、ダクト16に印加する交流バイアスの周波数を上記範囲とすることにより、電子放出部15から放出された光電子の動きをコントロールすることができる。これにより、光電子を浮遊させた状態でダクト16のほぼ中央に集中させることが可能となり、光電子のダクト16への付着(光電子の減衰)を防止することができる。また、電子放出部15から放出された光電子を効率よくダクト16の開口部側に搬送することができる。なお、ダクト16に印加するバイアスの電源条件を、例えば商用電源である100V、50Hz/60Hzとした場合においては、良好な結果が得られた。
【0059】
また、現像ローラ13表面に存在するトナーを帯電させるのに必要な量の光電子をダクト16内に存在させるために、電子放出部15とリフレクター19との間に印加される電気的バイアスを調節することによって、電子放出部15から必要量の光電子が放出され、電子なだれにより必要量の光電子が発生される。このため、ダクト16は、ダクト16内に存在する光電子を減衰させずに開口部側まで誘導および搬送すればよく、ダクト16内で不必要に光電子量を増加させる必要はない。したがって、ダクト16内にて光電子の量をむやみに増加させることによって、光電子の量と感光体ドラム2の表面電位とのバランスが崩れることによる現像への悪影響を回避することができる。
【0060】
電子放出部15から放出された光電子は、電子放出部15からダクト16を通って図示する矢印方向に移動し、現像ローラ13のトナーに向けて放射され、トナーを帯電させる。なお、電子放出部15から放出された光電子は、ダクト16内で浮遊状態となるので、ファン18により気流を形成することによって、浮遊状態の光電子をダクト16外部により容易に放出することができる。
【0061】
一方、現像ローラ13に直流バイアスを印加している場合には、ダクト16に直流バイアスを印加することがより好ましい。例えば、現像ローラ13に−400V程度の直流バイアスを印加している場合には、ダクト16に現像ローラ13より高い直流バイアス(例えば、−700V〜−900V)を印加することができる。これにより、ダクト内に磁界を発生させることができるため、より一層効果的に、電子放出部15で発生した電子を現像ローラ13に導くことが可能となる。
【0062】
また、電子放出部15において、光電面152が電気的にフロートの状態であれば、光電面152が光電子を放出しつづけることができないことは容易に理解できる。このため、電子放出部15は、光電面152から放出した分の光電子を外部から供給可能な構成とする必要がある。上記構成は、図1に示すように、例えばリフレクター19と電子放出部15の光電面152との間に直接バイアスを印加して、所定の電位を確保することによって実現することができる。また、上記構成は、図3に示すように、電子放出部15の光電面152を、例えばブラシ154等の電気的接点を用いてグランドに接続することによっても実現することができる。このように、光電面152に、例えばブレードやブラシによりバイアスを印加すれば、光電面152から放出した分の光電子をより容易に供給することができる。
【0063】
ここで、上記現像装置10を備えた電子写真装置(画像形成装置)におけるプロセス部を簡単に説明する。
【0064】
上記プロセス部は、図1に示すように、主に感光体ドラム2、帯電ローラ3、露光手段(図示せず)、現像装置10、転写用放電ローラ4、クリーニング手段(図示せず)、除電手段(図示せず)、定着ローラ5からなる。また、図1中において、Pは記録用紙、Lは上記露光手段から照射されて感光体ドラム2表面に静電潜像を書き込む光ビームを示している。
【0065】
感光体ドラム2は、所定方向(図1に示す矢印A方向)に回転しており、まず、その外周表面が帯電ローラ3によって均一に帯電される。均一に帯電された感光体ドラム2の表面には、露光手段により画像データに応じて制御される光ビームLが照射され、静電潜像が形成される。
【0066】
感光体ドラム2上に形成された上記静電潜像は、感光体ドラム2の回転によって、現像装置10と対向する位置まで移動し、該現像装置10によってトナーが供給されて可視化される(感光体ドラム2上にトナー像が形成される)。このとき、現像装置10の現像ローラ13は、感光体ドラム2に供給するトナーを担持搬送するために所定方向(図1に示す矢印B方向)に回転している。
【0067】
尚、本実施の形態では、感光体ドラム2は、有機光半導体で構成されており、−700V(帯電ローラ3による帯電量)に帯電して、周速度が50mm/sでA方向に回転している。現像ローラ13は、円筒状の導電性ゴム弾性材料で構成されており、−400Vの現像バイアスが印加されて感光体ドラム2と等しい周速度でB方向に回転している。供給ローラ12は、円筒状の発泡性ゴム弾性材料で構成されており、感光体ドラム2と等しい周速度でB方向に回転している。
【0068】
転写用放電ローラ4は、感光体ドラム2上に現像によって形成されたトナー像を用紙Pに転写する。感光体ドラム2の回転方向における転写用放電ローラ4の下流側には、さらにクリーニング手段および除電手段が配置され、該クリーニング手段は転写後の感光体ドラム2表面の残留トナーを除去し、該除電手段は感光体ドラム2表面を除電する。
【0069】
トナー像が転写された後の用紙Pは定着ローラ5に搬送され、該用紙Pが上下一対の定着ローラ5の間を通過する際に加熱および加圧を受け、トナー像が用紙P上に定着される。
【0070】
次に、現像装置10における現像の詳細過程を説明する。
【0071】
現像装置10では、上述したように、供給ローラ12より現像ローラ13表面にトナーを順次供給して、現像ローラ13がトナーを保持した状態で回転運動する。これにより、現像ローラ13によって搬送されるトナーが現像ローラ13とトナー規制ブレード14の接触領域との間に案内されて、現像ローラ13上のトナーの層厚が規制される。尚、接触領域は、トナー規制ブレード14の先端に設けられている。
【0072】
トナー規制ブレード14によって現像ローラ13上に層厚規制されたトナーは、トナー帯電手段17によって、電荷を与えられ、現像に必要な帯電量まで帯電される。すなわち、トナー帯電手段17の電子放出部15において、紫外線照射器153から光電面152に紫外線が照射されることにより、光電子が発生し、この光電子がダクト16の開口部から現像ローラ13上のトナーに向けて放出され、トナーが所望の帯電量に帯電される。なお、上記紫外線照射器153の発光を、現像ローラ13の回転と同期させれば、電力消費の増加につながる不必要な発光を抑制することができるためより好ましい。また、電子放出部15の紫外線照射器153は、筒状または球状のガラス基材151および光電面152によって覆われている。これにより、電子放出部15の内部に構成された紫外線照射器153にトナーが入り込むことはないため、トナーによる光照射の障害が起こることはない。
【0073】
上記構成のトナー帯電手段17は、現像装置10として現像槽11等の他の部材と一体に構成されていてもよく、別体で構成されていてもよい。本実施の形態においては、現像槽11等の他の部材とは別体として構成されている。これにより、現像槽11にて舞い上がったトナーが、トナー帯電手段17に入り込むことをより一層抑制することができる。また、電子放出部15から発生した光電子を、ダクト16を経由して現像ローラ13上のトナーに降り注ぐことによりトナーの帯電を行うことができる。電子放出部15は現像ローラ13上のトナーとは非接触となっているため、トナーに対して無負荷の状態で帯電を行うことができる。このため、現像装置10におけるトナー規制ブレード14は、現像ローラ13に対して少なくともトナーの層厚規制に必要な程度の力にて圧接されていればよく、トナー規制ブレード14によるトナーへの加圧力および熱的負荷を大幅に低減することができる。
【0074】
また、トナー帯電手段17が現像槽11と別体で構成されている場合には、電子放出部15は、現像槽11と完全に分離された状態であるため、画像形成時など現像ローラ13の回転時に、トナーが舞い上がっても電子放出部15にトナーが付着するなどの問題をより一層回避することができ、現像槽11の影響を受けることなく安定した光電子の放出を行うことができる。
【0075】
上記トナー帯電手段17によって所定の帯電量まで帯電されたトナーは、さらに現像ローラ13の回転によって感光体ドラム2との対向部まで送られ、感光体ドラム2の表面上の静電潜像に対して、静電的に供給され、該静電潜像をトナー像として現像(可視化)する。以上により、現像装置10における現像がなされる。
【0076】
また、本実施の形態に係る現像装置10は、トナー帯電手段17を設けていることにより、従来の摩擦帯電方式を用いた現像装置に比べて、トナー規制ブレード14の圧接力を大幅に低減することができる。これにより、トナー規制ブレード14によるトナーへの加圧力および熱的負荷が大幅に低減され、トナー破壊やトナー規制ブレード14へのトナー融着といった不具合を回避できる。
【0077】
つまり、本実施の形態にかかるトナー規制ブレード14は、従来のように、トナー層厚規制機能およびトナー帯電機能の両方の機能を有する必要はなく、トナー層厚規制機能のみに特化することができる。このため、上記現像装置10では、上記トナー規制ブレード14の上記現像ローラ13に対する圧接力を従来のトナー規制ブレード14に比べて大幅に低減することができ、上記トナーに作用する負荷(機械的負荷および熱的負荷)を減少せしめて、トナーの破壊や融着を防止することができる。
【0078】
また、トナー規制ブレード14の現像ローラ13との接触領域を、例えばダイアモンドライクカーボン(以下、DLCと称する)加工に施してもよい。この場合、上記トナー規制ブレード14を、例えば、従来と同様な圧力(接触圧)で、現像ローラ13に圧接させた場合であっても、トナー層の層厚を、好適な範囲に維持することができるとともに、トナーに強いストレスを与えることがない。従って、例えば、トナーとして、従来よりも軟化点が低い低融点トナーや、顔料の含有量が従来よりも多い高顔料トナーを用いた場合でも、好適に使用することができる。これにより、例えば、高顔料トナーを用いた場合には、従来と比べて、トナーの消費量を抑制することができる。また、例えば、低融点トナーを用いた場合には、電源ON時のファーストプリンタが早くなったり、定着ローラの加熱温度を低く設定することが可能となるので、低消費電力化が可能となる。また、接触領域にDLC加工を施した場合、トナーに対するストレス(摩擦力)を従来と比べて、低減させることができる一方、摩擦によるトナーの帯電量が従来よりも低下することとなる。しかしながら、現像装置10には、トナー規制ブレード14の摩擦による帯電の他に、トナー帯電手段が設けることにより、トナーを十分に(好適に画像形成を行うことができる程度に)帯電させることができる。
【0079】
なお、上記高顔料トナーとしては、例えば、上記トナー中の顔料の含有量が7重量%以上25重量%以下の範囲内であり、かつ、顔料を主樹脂間に分散させてなる顔料分散体の表面が、帯電被覆剤を実質的に溶解させた被覆樹脂にて被覆されているトナー等が挙げられる。トナー中の顔料の含有量をトナー全体に対して7重量%以上25重量%以下にすれば、例えば、画像濃度IDが1.4となるときの印字媒体上へのトナーの付着量として0.05mg/cm2以上0.95mg/cm2以下を達成することができる。
【0080】
また、上記低融点トナーとしては、例えば、上記トナーの融点が75℃以下であり、かつ、顔料を主樹脂間に分散させてなる顔料分散体の表面が、帯電被覆剤を実質的に溶解させた被覆樹脂にて被覆されているトナー等が挙げられる。なお、上記現像剤の融点とは、「主樹脂」の融点に相当する。つまり、上記低融点トナーとは、顔料を主樹脂間に分散させてなる顔料分散体の表面が、帯電被覆剤を実質的に溶解させた被覆樹脂にて被覆されているトナーであって、上記主樹脂の融点が75℃以下であるトナー等である。
【0081】
従来では、紙等の印字媒体上において十分高い印字濃度を得るために、印字媒体へのトナー付着量を高くしている。例えば、トナー付着量を1mg/cm2という値とし、それによって、画像濃度ID=1.4という所望の濃度を得るようにしている。また、従来では、印字媒体に、トナーをより確実に付着させるために、トナー中に含まれる主樹脂の量を多くしている。そのため、従来では、トナーの消費量が多くなるという問題がある。また、疎水性シリカ等の外添剤をトナーの表面に外添して耐電特性および流動性を制御する手法が広く用いられているが、現像漕11の中で長期に使用されている間に撹拌等の機械的なストレスにより外添剤が脱落もしくはトナー内部へ埋没してしまい、トナーの特性の劣化を引き起こすという問題がある。特に、トナー中の顔料の含有割合が、従来よりも多い、高顔料トナーを使用する場合には、主樹脂の濃度がその分低下することにより、機械的な負荷に対して弱くなり、例えば現像漕11での撹拌処理等によってトナーが破断され、破断したトナー内部の主樹脂が現像漕11等に融着してしまう可能性がある。
【0082】
また、一般に、紙等の印字媒体に転写されたトナー像を定着させるために、トナーに熱を加えて、溶融させることにより、トナー像を印字媒体に固着させる方法が用いられる。このように、トナーを溶着させる定着方法においては、トナーの溶解温度以上に印字媒体の温度を上昇させる必要があり、設定温度が高すぎると無駄な電力消費を行うばかりでなく、定着ローラ5(定着装置)を高い温度で維持するためには画像形成装置が大型化する。また、印字媒体に対して、急激に高い温度を加えるため印字媒体にカールが発生したり、電源投入時には定着ローラ5を所定の温度に上昇させる必要があるので、ファーストプリントまでに長時間を必要とする。さらに、融点の低いトナーを現像槽11で攪拌処理などによって、トナーが溶融温度に達するとトナーが破断され、破断したトナー内部の樹脂が現像漕等に融着してしまう可能性がある。
【0083】
しかしながら、本実施の形態の場合、紫外線照射器16から放出された紫外線が、電子放出部15に照射され、光電効果が起こることによって電子放出部15から光電子が放出される。そして、該電子放出部15より放出された光電子をトナーに向けて降り注ぐことによりトナーを帯電するようになっている。
【0084】
すなわち、本実施の形態にかかる現像装置10は、トナーの帯電をトナー帯電手段にて行うので、摩擦帯電で予備的に帯電を行わせるものの、トナーに対する摩擦力が従来と比べて小さい。従って、トナーに与える障害(ストレスや熱)を小さくすることが可能となるので、高顔料トナーや低融点トナーを利用することが可能となる。また、光電効果を利用した非接触の帯電方法を用いることにより、トナーの電荷量の不足に対しても、トナーにストレスを与えることなく安定した帯電量を確保することができるため、トナーへの悪影響を防止することができる。
【0085】
さらに、トナー規制ブレード14の現像ローラ13との接触領域にDLC加工を施した場合、トナー規制ブレード14は、現像ローラ13に担持されたトナーに、強いストレスをかけることなく、トナー層の層厚を規制することができる。従って、上記のような、低融点トナーや高顔料トナーをより好適に用いることができる。
【0086】
また、上記の説明では、光電効果により発生した光電子にて、トナーを帯電させる構成について説明したが、トナーを帯電させる方法については、特に限定されるものではなく、例えば、熱によって発生する電子を用いてトナーを帯電させてもよい。また、電子放出部15がダクト16内に収納されている構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電子放出部15から放出された光電子が、現像ローラ13上のトナーを帯電させることができる位置に配置されていればよい。
【0087】
【発明の効果】
以上のように、本発明にかかる現像装置は、上記現像剤帯電手段は、電子誘起部材と、該電子誘起部材に光を照射する照射手段とを備え、上記電子誘起部材は、照射手段の周囲を覆うとともに光を受光して現像剤を帯電させる光電子を発生するようになっている構成である。
【0088】
上記構成によれば、上記現像剤担持体に現像剤を搬送する場合に、現像剤が舞い上がり電子誘起部材に付着することがあっても、電子誘起部材は、例えばグリッド等と異なり開孔部が無いので、照射手段と電子誘起部材との間を汚染することがない。したがって、照射手段を現像剤の汚染から保護し、照射手段は、照射手段と電子誘起部材との間を遮ることなく電子誘起部材に最短距離で光を照射することが可能となり、電子誘起部材は、現像剤を帯電させる光電子を安定して発生することができる。これにより、現像剤担持体上の現像剤を安定的に帯電することができる。
【0089】
また、電子誘起部材に付着した現像剤は、電子誘起部材を清掃することにより容易に除去することが可能であり、現像装置のメンテナンスが容易となる。さらに、帯電レベルに応じてブレードの加圧力を設定する必要がなくなり、ブレードは現像剤の層厚規制に必要な程度の力にて現像剤担持体に圧接されていればよいため、現像剤の軟化および破壊を防止することができるという効果を奏する。
【0090】
上記の現像装置において、上記電子誘起部材は、筒状または球状である構成としてもよい。
【0091】
上記構成によれば、照射手段を筒状部材または球状部材とすることにより、照射手段を覆うことが可能となるため、照射手段を保護することができる。また、照射手段として、例えば蛍光管等を用いた場合に、蛍光管の取り付け部材と共用することができるという効果を奏する。
【0092】
上記の現像装置において、上記現像剤帯電手段は、現像剤担持体と対向する開口部を有する筐体を備えており、上記筐体に電子誘起部材が収納されている構成としてもよい。
【0093】
上記構成によれば、筐体に電子誘起部材が収納されていることから、電子誘起部材から発生した光電子が拡散することなく、筐体内に収集することができる。また、電子誘起部材から発生した光電子を、現像剤担持体と対向する開口部から放出することにより、光電子を確実に現像剤担持体に導くことができる。これにより、現像剤担持体表面にある現像剤に対してより効率的に光電子を降り注がせることが可能となり、現像剤を十分に帯電させることができる。
【0094】
また、上記構成によれば、現像担持体に現像剤を搬送する場合に、現像剤が舞い上がった場合であっても、現像剤が筐体に入り込むことをより抑制することができる。さらに、現像剤帯電手段が現像剤担持体と対向する開口部を有する筐体を備えていることにより、例えば現像剤帯電手段を潜像担持体から十分離して配置することが可能となる。この場合、現像剤帯電手段の照射手段から放出された光が潜像担持体に照射されることをより抑制することが可能となる。これにより、潜像体担持体の光による劣化をより抑制することができるという効果を奏する。
【0095】
上記の現像装置において、上記電子誘起部材との間に電気的バイアスが印加されている光電子加速手段を備えている構成としてもよい。
【0096】
上記構成によれば、光電子加速手段を設けることにより、電子誘起部材と光電子加速手段との間に電界が発生するため、電子誘起部材から放出された光電子が加速され、気体分子と衝突する。衝突された気体分子は、電子を放出してイオン化し、いわゆるなだれ効果を起こす。このため、光電効果で発生した光電子を増幅させて現像剤を飽和帯電させるために十分な光電子量を発生させることができる。これにより、帯電効果が大幅に向上し、安定した現像が可能となるため、良好な画像を得ることができるという効果を奏する。
【0097】
上記の現像装置において、上記筐体には、交流バイアスが印加されている構成としてもよい。
【0098】
上記構成によれば、筐体内で光電子が消滅してしまうことを抑制することが可能となる。このため、光電子を消滅させることなく筐体内にて浮遊状態とさせることができる。これにより、より効率よく現像剤担持体上の現像剤に光電子を降り注ぐことができるという効果を奏する。
【0099】
上記の現像装置において、上記交流バイアスの周波数は、40Hz〜150Hzの範囲である構成としてもよい。
【0100】
上記構成によれば、光電子の減衰を防止することができるとともに、電子誘起部材から発生した光電子を効率よく開口部側へ搬送することができる。また、装置に供給される商用電圧を用いることが可能となるため、容易に交流バイアスを印加することができ、コストアップや装置の大型化を回避することができるという効果を奏する。
【0101】
上記の現像装置において、上記筐体には、現像剤担持体よりも高い直流バイアスが印加されている構成としてもよい。
【0102】
上記構成によれば、筐体内に磁界を発生させることができ、光電子を容易に現像剤担持体に導くことができる。これにより、より効率よく現像剤担持体上の現像剤に光電子を降り注ぐことができるという効果を奏する。
【0103】
上記の現像装置において、上記光電子を現像剤担持体に向かって搬送するファンを筐体に備えている構成としてもよい。
【0104】
上記構成によれば、筐体に備えられたファンの風圧により、筐体内の光電子を容易に現像剤担持体に導くことができる。これにより、より効率よく現像剤担持体上の現像剤に光電子を降り注ぐことができるという効果を奏する。
【0105】
以上のように、本発明にかかる画像形成装置は、上記のいずれかに記載の現像装置を備えてなる構成である。
【0106】
上記構成によれば、安定した現像を可能とする画像形成装置を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態における画像形成装置の要部の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の電子放出部の構成を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明の電子放出部の構成を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
2 感光体ドラム(潜像担持体)
10 現像装置
11 現像槽
12 供給ローラ
13 現像ローラ(現像剤担持体)
14 トナー規制ブレード
15 電子放出部
151 ガラス基材
152 光電面(電子誘起部材)
153 紫外線照射器(照射手段)
154 ブラシ
16 ダクト(筐体)
17 トナー帯電手段(現像剤帯電手段)
18 ファン
19 リフレクター(光電子加速手段)
Claims (9)
- 現像剤を保持するとともに潜像保持体上に搬送する現像剤担持体と、上記現像剤を帯電させる現像剤帯電手段とを備えており、帯電された現像剤によって、潜像保持体上に形成されている静電潜像を現像する現像装置において、
上記現像剤帯電手段は、電子誘起部材と、該電子誘起部材に光を照射する照射手段とを備え、
上記電子誘起部材は、照射手段の周囲を覆うとともに光を受光して現像剤を帯電させる光電子を発生するようになっていることを特徴とする現像装置。 - 上記電子誘起部材は、筒状または球状であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
- 上記現像剤帯電手段は、現像剤担持体と対向する開口部を有する筐体を備えており、上記筐体に電子誘起部材が収納されていることを特徴とする請求項1または2に記載の現像装置。
- 上記電子誘起部材との間に電気的バイアスが印加されている光電子加速手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の現像装置。
- 上記筐体には、交流バイアスが印加されていることを特徴とする請求項4に記載の現像装置。
- 上記交流バイアスの周波数は、40Hz〜150Hzの範囲であることを特徴とする請求項5に記載の現像装置。
- 上記筐体には、現像剤担持体よりも高い直流バイアスが印加されていることを特徴とする請求項4に記載の現像装置。
- 上記光電子を現像剤担持体に向かって搬送するファンを筐体に備えていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の現像装置。
- 上記請求項1ないし8のいずれか1項に記載の現像装置を備えてなることを特徴とする画像形成装置。
Priority Applications (1)
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JP2003022513A JP2004233680A (ja) | 2003-01-30 | 2003-01-30 | 現像装置およびそれを用いた画像形成装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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Family Applications (1)
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Country Status (1)
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JP (1) | JP2004233680A (ja) |
-
2003
- 2003-01-30 JP JP2003022513A patent/JP2004233680A/ja not_active Withdrawn
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