JP2004233251A - レーザ検出方法、レーザ加工方法、及びレーザ加工装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】出射されるレーザ光の出力パワー、出射方向、及び波面分布の夫々の変化状態を検出可能とするとともに、当該検出結果を用いて、上記被加工対象物の加工品質の推定を可能とする。
【解決手段】出射されたレーザ光の一部を分岐して、一方のレーザ光の光軸が位置されるべき軸を遮光の中心軸として、上記中心軸に直交する遮光平面において、上記一方のレーザ光のさらに一部を遮光して回折光を発生させて、上記回折光を上記中心軸に直交する平面において受光し、上記回折光の強度、上記強度の最大位置と上記中心軸との位置ずれ、及び上記最大位置に対する強度分布の対称性の夫々を同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々を同時に検出しながら、他方のレーザ光を上記被加工対象物に照射して、上記被加工対象物の上記加工を行なう。
【選択図】図1
【解決手段】出射されたレーザ光の一部を分岐して、一方のレーザ光の光軸が位置されるべき軸を遮光の中心軸として、上記中心軸に直交する遮光平面において、上記一方のレーザ光のさらに一部を遮光して回折光を発生させて、上記回折光を上記中心軸に直交する平面において受光し、上記回折光の強度、上記強度の最大位置と上記中心軸との位置ずれ、及び上記最大位置に対する強度分布の対称性の夫々を同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々を同時に検出しながら、他方のレーザ光を上記被加工対象物に照射して、上記被加工対象物の上記加工を行なう。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ光による被加対象物の精密加工を行うレーザ加工におけるレーザ検出に関するものであり,特に、レーザ発振器から出射されるレーザ光の出力パワーや出射方向等のレーザの出射精度を検出しながら、上記被対象物の加工を行なう際に用いられるレーザ検出方法、レーザ加工方法、及びレーザ加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のレーザ光検出方法等は、様々なものが知られている。例えば、従来のレーザ光の検出を用いたレーザ加工装置の概念図を図7に示す(例えば、特許文献1参照)。図7に示すように、レーザ加工装置100は、レーザ発振器106と、レーザ発振器106より出射されたレーザ光をスポット状に集光する集光系104と、上記集光系104にて集光されたレーザ光を、スポット状にて非加工物102に照射可能に反射するビーム走査ミラー105と、被加工物102を加工可能に保持する試料設置台103とを備えている。また、図7に示すように、試料設置台103は、図示上下方向に配置された回転中心回りに自転可能となっている。また、試料設置台103の上面には、さらに、多数のCCD素子101が、被加工物102の被加工面とその設置高さ位置を同じとされて配置されており、試料設置台103の上記自転により、夫々のCCD素子101と被加工物102とのいずれか一方がレーザ光に照射されるように、互いの配置の切替えが可能となっている。また、ビーム走査ミラー105は、その反射角度が可変可能となっており、当該角度を可変させることにより、被加工物102の上記被加工面上においてレーザ光を走査させながら照射して、必要なパターンを形成することが可能となっている。また、試料設置台103の図示左側端部には、試料設置台103における上記被加工面の高さ方向及び水平方向の位置合わせを設定可能な面設定ガイド107が備えられており、集光されたレーザ光を上記スポット状にて確実に上記被加工面に照射させることが可能となっている。
【0003】
このような構成のレーザ加工装置100において、被加工物102の加工を行なう手順について説明する。
【0004】
まず、レーザ加工装置100において、試料設置台103をその回転中心回りに自転させて、レーザ光の照射位置に夫々のCCD素子101を配置させる。その後、レーザ発振器106よりレーザ光が出射させて集光系104により集光されたレーザ光が、ビーム走査ミラー105により反射されて、スポット状にて一部のCCD素子101に照射される。これにより、照射されたレーザ光のスポット位置が測定される。
【0005】
ここで、照射されるレーザ光は、そのビームエネルギーが強いため、図示されていないニュートラルフィルタが夫々のCCD素子101の上面に設置されており、エネルギーを低減して照射されるようになっている。
【0006】
また、夫々のCCD素子101としては、10μmピッチで配列された2次元アレイCCD素子が用いられているため、測定位置の分解能は略その値、すなわち、10μm程度となっている。また、夫々のCCD素子101は、レーザ光、すなわち、紫外光を観測することを目的としているため、カラー用素子ではなく、白黒用素子が用いられており、測定されるレーザ光のエネルギー強度を白黒の明るさで表示するとともに、図示していない表示部では、切り替えにより、疑似カラー表示もできるように構成されている。すなわち、測定されるレーザ光のエネルギー強度分布を色で区別して表示することが可能となっている。
【0007】
さらに、上記一部のCCD素子101にレーザ光が照射されて、そのスポット位置及び強度分布が測定された状態において、ビーム走査ミラー105の角度を可変させることにより、夫々のCCD素子101にレーザ光を走査させることにより、上記走査時における強度分布の状況をも測定することができる。
【0008】
このようにして、レーザ光のスポット位置、強度、及び走査時の強度分布等の状況の測定を行ない、加工工程に移ってよいと判断されれば、試料設置台103をその回転中心回りに自転させて、被加工物102をレーザ光の照射位置に配置させる。このとき、予め、面設定ガイド107で、高さ方向及び水平方向の位置を調整しておくことにより、夫々のCCD素子101の上面が位置された位置に、被加工物102の上記被加工面を精度よく位置させることができる。その後、被加工物102にレーザ光を照射して、被加工物102の加工が行なわれる。
【0009】
次に、従来のレーザ加工において用いられる回折光を用いたレーザ光の検出方法について、その概略構成を示す説明図を図6に示す(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
図6に示すように、このレーザ光の検出方法においては、レーザ光111の光軸112上に配置された矩形スリット113が用いられ、レーザ光111が矩形スリット113を通過することにより発生する回折光114を4分割ディテクタ115で受光することにより、レーザ光の光軸の偏差を検出を行なうというものである。
【0011】
また、図6に示すように、矩形スリット113の開口の大きさは、レーザ光111のビーム径の半分程度の大きさに形成されている。また、4分割ディテクタ115の上記受光側表面には、図示左右及び上下に受光素子が取り付けられており、夫々の受光素子において回折光114が受光されることにより検出される検出信号の差信号を使用して、図示左右方向及び上下方向のレーザ光の光軸の偏差の検出を行なうことが可能となっている。
【0012】
また、図6においては、左右方向の信号処理系しか示していないが上下方向についても同様の信号処理系が備えられており、上記差信号の処理を行うことが可能となっている。レーザ光111は光軸112に対して軸対称なので、光軸112が矩形スリット113の中心に一致した場合のみ、上記上下方向及び上記左右方向の夫々の差信号はゼロとなる。一方、上記光軸112が矩形スリット113の中心に対して、上記いずれかの方向に偏りのある場合には、その偏りのある側に発生する回折光114の強度が強くなり、回折光114の強度バランスがくずれて差信号が発生することとなる。なお、4分割ディテクタ115の中心に照射される0次光は遮光板を置きカットされるため、4分割ディテクタ115に受光されることはない。
【0013】
このようなレーザ光の検出方法において、例えば、レーザ光の波長を0.53μm、矩形スリット113の開口部(略正方形状である)の一辺を0.5mmとすると、回折光114の発生する方向は光軸112に対して、1次回折光の場合約0.09°、2次回折光の場合約0.15°傾いた方向である。矩形スリット113から30cm離れた場所に4分割ディテクタ115を配置すると、左右及び上下の夫々の方向における1次回折光間の4分割ディテクタ115の受光面での距離は約0.94mmとなるが、これは左右又は上下のいずれかの方向に十分に分離して検出することができる距離である。このようにして、回折光114を用いてレーザ光111の光軸調整を行っている。
【0014】
【特許文献1】
特開平5−228670号公報
【特許文献2】
特開平5−138383号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、レーザ加工に対する加工品質要求は年々厳しいものになってきており、熱加工としての波長的限界水準の加工孔径や、被加工物上の加工位置精度が、被加工物を載置して被加工物とレーザ光の相対位置を変化させるステージ(例えば、試料設置台103の)位置精度に限りなく近いものとなってきている。
【0016】
そのため、従来検出してきたレーザ光の出力パワー変動のみの検出では、上記水準の加工孔径や加工位置精度を満たせなくなってきたという問題がある。具体的には、レーザ光の出射方向の数ミリラジアン程度の変化も、出射されたレーザ光を集光系104等に伝送するレーザ光伝送部のレーザ光変換機能等の増大により、この程度の変化でも被加工物上の加工位置精度を満たせない場合があるという問題がある。また、レーザ発振器106から出射されるレーザ光の波面分布変動や、上記レーザ光伝送部での透過・反射光学素子による波面分布変化によって、特にマスク像投影型のレーザ光集光系においては、熱加工としての波長的限界水準の加工孔径を安定して得ることができないという問題がある。
【0017】
また、レーザ加工においては、複数の被加工物に対して順次加工を施して行くこととなるが、個々の被加工物の加工の良否判定については、レーザ加工の際に、個別に行なわれるのではなく、最終工程を経た後の完成品の検査において行なわれいるため、当該加工の際に、レーザ光の照射精度の変動が発生していた場合には、レーザ加工における工程に無駄が大きく生じることとなるという問題がある。また、個々の被加工物においても、被加工物のどの位置で上記変動により加工品質が低下したか、また、夫々の被加工物のうちのどの被加工物において、上記変動が発生して加工品質低下が発生したのかを、定量的に推定することができず、レーザ加工における作業効率を向上させることができないという問題がある。
【0018】
従って、本発明の目的は、レーザ光による被加対象物の加工を行うレーザ加工におけるレーザ検出において、出射されるレーザ光の出力パワー、出射方向、及び波面分布の夫々の変化状態を検出することができるとともに、当該検出結果を用いて、上記被加工対象物の加工品質を推定することを可能とするレーザ検出方法、レーザ加工方法、及びレーザ加工装置を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0020】
本発明の第1の発明によれば、出射されるレーザ光の光軸が位置されるべき軸を遮光の中心軸として、上記中心軸に直交する遮光平面において、上記レーザ光の一部を遮光して、上記遮光により発生する回折光を、上記遮光の中心軸に直交する平面において受光し、
上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置に対する強度分布の対称性を検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出することを特徴とするレーザ検出方法を提供する。
【0021】
また、上記第1の発明のレーザ検出方法において、上記受光の平面における上記強度分布の対称性に加えて、さらに、上記回折光の強度、及び上記強度の上記最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々を同時に検出することができる。
【0022】
本発明の第2の発明によれば、出射されるレーザ光の光軸が位置されるべき軸を位相シフトの中心軸として、上記中心軸に直交する位相シフト平面において、上記レーザ光の一部の光の位相のシフトを行なって、上記位相のシフトにより発生する回折光を、上記位相シフトの中心軸に直交する平面において受光し、
上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置に対する強度分布の対称性を検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出することを特徴とするレーザ検出方法を提供する。
【0023】
また、上記第2の発明のレーザ検出方法において、上記受光の平面における上記強度分布の対称性に加えて、さらに、上記回折光の強度、及び上記強度の上記最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々を同時に検出することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる実施の形態を説明するにあたって、まず、本明細書で用いられている用語の定義を説明する。
【0025】
用語「位相のシフト」あるいは「位相シフト」とは、光に対して部分的に光学長の異なりを生じさせることにより、上記光の当該部分の位相と他の部分の位相との間に位相の位置ずれを生じさせることをいう。
【0026】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態にかかるレーザ加工装置の一例であるレーザ加工装置20の概略構成を模式的に示す模式説明図を図1に示す。なお、レーザ加工装置20においては、本発明にかかるレーザ検出方法及びレーザ加工方法を行なうことが可能となっている。
【0028】
図1に示すように、レーザ加工装置20は、レーザ発振器1と、レーザ発振器1より出射(あるいは発振)されたレーザ光6を伝播させるレーザ光伝送部2と、レーザ光伝送部2より伝播されるレーザ光6を、被加工対象物4の加工表面にスポット状に照射可能に集光するレーザ光集光部3とを備えている。また、レーザ加工装置20は、被加工対象物4の加工のために照射されるレーザ光の出射状態の検出を行なうレーザ光検出部20aを備えている。レーザ光検出部20aは、レーザ光集光部3のレーザ発振器1側、具体的には、レーザ光集光部3とレーザ光伝送部2との間に配置され、上記出射されたレーザ光6の一部を上記検出用として分岐するレーザ光分岐部7と、上記分岐された一部のレーザ光よりの回折光を発生させる回折型光学素子8と、上記回折光を受光することにより、上記レーザ光の出射状態を検出することができる光電変換素子部9とを備えている。
【0029】
レーザ発振器1より出射されるレーザ光6は、ガウス分布状のエネルギー分布を有しており、その光軸に対して略軸対称な分布を有している。また、このレーザ光6は、連続波あるいはパルス波となっている。レーザ光6としては、例えば、炭酸ガスレーザ、Nd,Yb,Er等がドープされたYAGレーザやその高調波レーザ、アルゴンレーザ、Tiがドープされたサファイアレーザ、又は、He−Cdレーザ等がある。
【0030】
レーザ光伝送部2は、レーザ加工装置20のレイアウトにより決定されるレーザ光6の伝播ルートに基づいて配置された1又は複数の折返しミラー(図示しない)やレーザ光6のビーム径を変換可能な少なくとも1枚以上のレンズ(図示しない)や、上記折返しミラーや上記レンズ等で発生する散乱光を遮光する開口等(図示しない)を備えて構成されている。
【0031】
レーザ光集光部3は、図示しない少なくとも1枚以上のレンズを備えており、入光されるレーザ光を、所望のビーム径、ビームパターンに変換して、被加工対象物4に照射することが可能となっている。
【0032】
レーザ光分岐部7は、例えば、ビームスプリッター、偏光ビームスプリッター、ウェッジ板、又は、ウィンドウ板を備えており(いずれも図示しない)であり、入射されるレーザ光6の一部として、例えば、レーザ加工に大きな影響を与えない程度のエネルギーとして約10%以下のエネルギーを分岐することが可能となっている。なお、レーザ光分岐部7において、上記一部として分岐されたレーザ光をレーザ光6a(レーザ光6aは分岐された一方のレーザ光の一例である)とし、そのままレーザ光集光部3に入射される残りのレーザ光をレーザ光6b(レーザ光6bは分岐された他方のレーザ光の一例である)とする。なお、分岐されたレーザ光6aは、レーザ光集光部3に入射されて被加工対象物4の加工用として用いられることなく、回折型光学素子8に入射されて、その出射状態の検出用として用いられることとなる。
【0033】
レーザ加工装置20において、被加工対象物4は、図示しないステージ等に解除可能に保持されている。なお、レーザ光検出部20aにおける回折型光学素子8と光電変換素子部9の詳細な構造についての説明については後述する。
【0034】
次に、このような構成のレーザ加工装置20におけるレーザ光6bの照射による被加工対象物4の加工動作について説明する。
【0035】
まず、図1におけるレーザ加工装置20において、上記図示しないステージに被加工対象物4を解除可能に保持させる。その後、レーザ発振器1を駆動させて、レーザ光6をレーザ光伝送部2に向けて発振して出射する。レーザ光伝送部2に入射されたレーザ光6は、上記1又は複数の折返しミラーによりその伝播ルートに従って伝送させるとともに、上記レンズにより所望のビーム径に変換された状態で、レーザ光分岐部7に向けて出射される。
【0036】
レーザ光分岐部7に入射されたレーザ光6は、その一部がレーザ光6aとして分岐されて、回折型光学素子8に向けて出射されるとともに、当該分岐された残りのレーザ光6bはそのままレーザ光集光部3に向けて出射される。レーザ光集光部3に入射されたレーザ光6bは、集光されてスポット状にて、上記ステージに保持されている被加工対象物4の加工表面に照射される。
【0037】
被加工対象物4の加工表面に照射されたレーザ光6bは、被加工対象物4に吸収されることで被加工対象物4を局所的に加熱し、溶融、蒸発、又は昇華させることにより、被加工対象物4の加工が行なわれる。また、非常に短時間のパルス波(10ピコ秒以下)を有するようなレーザ光6が用いられるような場合にあっては、被加工対象物4が、当該レーザ光6の波長に対して透明であるような場合であっても、当該レーザ光6が有する高い光電界により、絶縁破壊や被加工対象物4内のわずかな不純物での吸収を基に、上記被加工対象物4の加工を行うことが可能である。一方、回折型光学素子8に入射されたレーザ光6aは、後述するように、光電変換素子部9にて、その出射状態が検出されることとなる。
【0038】
次に、レーザ光検出部20aにおける回折型光学素子8及び光電変換素子部9の構成について詳細に説明する。
【0039】
図3は、円盤形状を有する回折型光学素子8の概略構成を示す模式説明図であり、(A)はレーザ光6aの光軸と直交する方向から見た状態を示し、(B)は上記光軸沿いの方向から見た状態である。なお、図3(A)においては、図示左側から右側に向けて、レーザ光6aが伝播される。また、図3(B)は、断面図ではないが、説明の便宜上、遮光部11にハッチングを施した図としている。
【0040】
図3(A)及び(B)に示すように、回折型光学素子8は、略円盤状の形状を有しており、上記分岐されたレーザ光6aの光軸が位置されるべき軸上(すなわち、仮想直線上)に、その中心軸12が位置されるように配置されている。また、回折型光学素子8は、レーザ光6aの波長に対して透明である(すなわち、光学的透過性を有する)円盤状の光学素子基板10と、レーザ光6aの波長に対して不透明であり、レーザ光6aを透過させることなく吸収又は反射する材料により光学素子基板10の表面に形成され、かつ、光学素子基板10の径よりも小さな径を有する円盤状の遮光部11とを備えている。また、光学素子基板10と遮光部11との夫々の中心は、中心軸12上に配置されている。なお、図3(A)に示すように、遮光部11は、光学素子基板10の図示左側の表面、すなわち、レーザ光6aの入射側表面に形成されているが、このような場合に代えて、図示右側の表面、すなわち、レーザ光6aの出射側表面に形成されている場合であってもよく、さらに、光学素子基板10の夫々の表面の間に形成されているような場合であってもよい。また、遮光部11の円形状の表面が、遮光平面の一例となっており、中心軸12が遮光の中心軸の一例となっている。さらに、遮光部11の上記表面が中心軸12と直交するように、遮光部11は配置されている。
【0041】
光学素子基板10は、その円盤状の両面の互いの平行度が、レーザ光6の波長の1/20程度の形成精度を有するように形成されている。また、遮光部11は、例えば、フォトリソグラフ、マスク蒸着、又はスパッタ等の手段で、光学素子基板10の表面に金属材料により形成された円形状の単層あるいは多層の構造を有している。また、遮光部11の直径は、入射される上記分岐されたレーザ光6aのビーム径よりも小さく形成、すなわち、レーザ光6aの一部が遮光部11において遮光されて、その周囲のレーザ光6aが遮光されることなく通過されるように、上記直径が設定されることが望ましい。具体的には、入射される上記分岐されたレーザ光6aのピーク強度に対する1/e2のビーム径からその半値(50%)程度の範囲のいずれかの寸法を採用することが好ましく、より好ましくは上記半値程度の寸法を採用することが望ましい。このような範囲とされることにより、発生される回折光のサイドピークの強度を十分に取ることができ、上記回折光の検出後の分解能及びS/N比を向上させることができるため、上記回折光の検出を良好なものとすることができるという利点がある。また、光学素子基板10の直径は、上記分岐されたレーザ光6aのピーク強度に対する1/e2のビーム径の3倍以上程度の寸法とされることが望ましい。なお、遮光部11はその形状が略真円形状であることが好ましいが、このような場合に代えて、円形状に近い多角形状であるような場合であってもよい。
【0042】
また、光学素子基板10の形成材料としては、例えば、透明材料である光学材料として、紫外光のレーザ光6に対しては、石英、又はBK7等が用いられ、一方、赤外光のレーザ光6に対しては、ジンクセレン(ZnSe)、又はゲルマニウム等が用いられる。また、遮光部11の形成材料としては、例えば、レーザ光6aを透過させることなく遮断することができる上記金属材料として、アルミニウム、銅、又はクロム等が用いられる。また、光学素子基板10の夫々の表面には、入射されるレーザ光6aの反射を防止するために、反射防止膜が形成されていることが望ましく、さらに、夫々の表面における光の反射をより低減させるべく、夫々の表面の面粗さが円滑となるように、例えば、レーザ光6の波長の1/20程度の面粗さとなるように、表面仕上げが施されていることがより好ましい。
【0043】
このような構成の回折型光学素子8において、上記分岐されたレーザ光6aは、例えば、図3(A)に示すような連続された複数の波面13を持って、その光軸(すなわち、回折型光学素子8の中心軸12と一致するように配置されているはずの上記光軸)に沿って、遮光部11が形成されている光学素子基板10に入射する。遮光部11上に照射されたレーザ光6aは、当然のことながら透過することはできず遮断される。この遮断(あるいは遮光)により、遮光部11の円形状の端部において回折光である境界回折波15が発生する。また、遮光部11以外の部分では、レーザ光6aが遮断されることなく、光学素子基板10を透過して、透過光14が発生する。
【0044】
幾何光学的には、図3(A)に示す光学素子基板10の右側における遮光部11の影の内部では、レーザ光6aに起因する光が存在しないはずであるが、境界回折波15である遮光部11の端部から発生する球面波が、この影の内部に回りこむ。また、上記影の内部における中心軸12に直交する平面上での光強度は、遮光部11の円形状の端部からの上記球面波の波動光学的な重ね合わせとなり、遮光部11の上記端部での波面と相関のあるものとなる。
【0045】
次に、光電変換素子部9の概略構成を示す模式説明図を図8に示す。図8に示すように、光電変換素子部9は、略円盤状の形状を有しており、その円盤状の中心が、回折型光学素子8の中心軸12上に位置するように配置されている。また、光電変換素子部9は、光を受光可能な複数の光電変換素子と、夫々の上記光電変換素子がその表面に配置して保持する円盤状の素子プレート30とを備えている。図8に示すように、上記夫々の光電変換素子として、素子プレート30の中央部分には中央光電変換素子31が、この中央光電変換素子31を挟んでその図示上下の夫々の方向には、上下方向光電変換素子33A及び33Bが、中央光電変換素子31を挟んでその図示左右の夫々の方向には、左右方向光電変換素子32A及び32Bが配置されている。また、素子プレート30と夫々の光電変換素子31、32A、32B、33A、及び33Bは、夫々の表面が中心軸12と直交するように配置されている。なお、夫々の光電変換素子31、32A、32B、33A、及び33Bが回折光を検出ずることにより、レーザ光6を検出することができるという機能を奏する限りにおいて、中心軸12との上記直交関係に多少のズレが生じるような場合(すなわち、略直交するような場合)であってもよい。
【0046】
夫々の光電変換素子31、32A、32B、33A、及び33Bは、光が照射されて受光することにより、その受光された光の強度に応じた信号強度を有する電気信号を出力する機能を有している。このような光電変換素子としては、例えば、HgCdTe素子やSi素子などが受光から電気信号の出力(以降、電気出力という)までの時間応答性の観点から好適であるが、このような時間応答性を考慮しない場合には、熱電対も使用可能である。
【0047】
ここで、回折型光学素子8の中心軸12に直交する平面における境界回折波15の光強度分布と、素子プレート30における夫々の光電変換素子31、32A、32B、33A、及び33Bの配置との関係について説明する。まず、境界回折波15の上記平面における光強度分布を、図5(A)に示す。図5(A)においては、横軸が中心軸12を基準位置とした対称方向の上記平面上の位置を示しており、縦軸は任意単位の光強度を示している。図5(A)に示すように、境界回折波15の光強度分布は、理想的には円筒関数的な分布となっており、具体的には、中心軸12に該当する位置、すなわち、レーザ光6aの光軸位置において、主ピークP0となっており、さらに、この主ピークP0の位置を挟むようにして夫々の対称な位置に、次数の異なる複数のサイドピーク、例えば、第1サイドピークP1、第2サイドピークP2等が存在している。
【0048】
従って、このような境界回折波15の光強度分布の特徴を検出するためには、図8に示すように、素子プレート30の中央に中央光電変換素子31を配置し、第1サイドピークP1が検出されるべく同一円周上に、図示上下及び左右の夫々の方向に少なくとも4つの光電変換素子である夫々の左右方向光電変換素子32A及び32Bと、上下方向光電変換素子33A及び33Bとを配置させることが望ましい。このように配置させることで、上記境界回折波15の光強度分布における主ピークP0の光強度を中央光電変換素子31により検出することができ、また、第1サイドピークP1の光強度を4つの光電変換素子32A、32B、33A、及び33Bにより検出することができるからである。また、第1サイドピークP1の上記同一円周上に、さらに多数の光電変換素子を配置させるような場合にあっては、上記光強度の検出精度をより向上させることができる。さらに、第1サイドピークP1だけではなく、第2サイドピークP2等を検出可能な位置に光電変換素子を配置させるような場合にあっては、さらに上記光強度の検出精度を向上させることができる。また、夫々の光電変換素子31、32A、32B、33A、及び33Bは、光の受光を検出可能な電気出力を確保することができる最小受光面積を有するような光電変換素子を用いることが好ましい。なお、夫々の光電変換素子31、32A、32B、33A、及び33Bの表面が、受光の平面の一例となっている。
【0049】
なお、図3(A)に示すように、境界回折波15は遮光部11の円形状の端部で発生するが,その端部の形状は、理想的には中心軸12と略平行な面を形成するようにすることが望ましい。このような場合にあっては、当該端部より発生される境界回折波15の伝播特性を理論的なものとすることができ、光電変換素子部9における夫々の光電変換素子31、32A、32B、33A、及び33Bの夫々の配置を理論的に決定することができる。しかしながら、上述したように、遮光部11は、光学素子基板10の表面上にスパッタ等の手段で形成されているため、当該端部の形状を上記理想的なものとすることは困難であり、実際には、中心軸12に対して僅かに傾斜された面(すなわち、テーパ状の面)を形成することとなる。このような場合にあっては、当該端部において境界回折波15の発生は、上記傾斜された面上の複数点からのものとなるため、境界回折波15の伝播特性は複雑なものとなってしまう。従って、夫々の光電変換素子31、32A、32B、33A、及び33Bの最適な配置設置の決定にあたっては、実験的に求めることが好適である。
【0050】
次に、このような構成の回折型光学素子8及び光電変換素子部9により発生されて検出されるレーザ光6aの境界回折波15の様々な光強度パターンについて、図5(B)から図5(D)に示す光強度の分布図を用いて説明する。
【0051】
まず、被加工対象物4に対して良好な加工が行われている場合の境界回折波15の光強度パターンが図5(A)とすると、レーザ光6がレーザ光伝送部2を伝播後にそのエネルギーが低下した場合の境界回折波15の光強度パターンは、その波形形状が保持されるものの、全体的な強度が低下されたものとなる。このような光強度パターンの例を図5(B)に示す。また、このようにレーザ光6の出力パワーの低下が発生したような場合にあっては、光電変換素子部9において、夫々の光電変換素子31、32A、32B、33A、及び33Bの間の電気出力比は変化せず、全体的に電気出力量が低下することとなり、このような低下の発生を検出することにより、当該出力パワーの低下の発生を検出することができる。
【0052】
また、レーザ光6がレーザ光伝送部2を伝播後にその出射方向が変化した場合の境界回折波15の光強度パターンの例を図5(C)に示す。このような場合にあっては、回折型光学素子8に入射されるレーザ光6aの光軸が、回折型光学素子8の中心軸12に対して傾くこととなるため、遮光部11に照射されるレーザ光6aの夫々の波面13も傾いたものとなる。従って、図5(C)に示すように、その光強度パターンは、中心軸12に対するその最大強度の位置である主ピークP0の位置が変化し、第1サイドピークP1及び第2サイドピークP2等の夫々の光強度が、主ピークP0に対して非対称なものとなる。また、このようにレーザ光6の出射方向が変化したような場合にあっては、光電変換素子部9において、中央光電変換素子31の電気出力が低下して、さらに、左右方向光電変換素子32A及び32Bとの間、あるいは、上下方向光電変換素子33A及び33Bとの間、あるいは、夫々の左右方向光電変換素子32A及び32Bと夫々の上下方向光電変換素子33A及び33Bとの間において、電気出力比の変化が発生することとなり、当該変化の発生を検出することができる。
【0053】
さらに、レーザ光6がレーザ光伝送部2を伝播後にその波面13の分布が変化した場合の境界回折波15の光強度パターンの例を図5(D)に示す。このような場合にあっては、図5(D)に示すように、その光強度パターンは、主ピークP0、第1サイドピークP1及び第2サイドピークP2等の位置は、図5(A)の場合と比べてほとんど変化しないものの、境界回折波15の重ね合わせ状態が変化するため、夫々のピークにおける光強度が変化したものとなる。また、このようにレーザ光6の波面分布が変化したような場合にあっては、光電変換素子部9において、中央光電変換素子31の電気出力が変化しない場合であっても、左右方向光電変換素子32A及び32Bとの間、あるいは、上下方向光電変換素子33A及び33Bとの間、あるいは、夫々の左右方向光電変換素子32A及び32Bと夫々の上下方向光電変換素子33A及び33Bとの間において、電気出力比の変化が発生することとなり、当該変化の発生を検出することができる。
【0054】
このように回折型光学素子8で発生された境界回折波15を、光電変換素子部9で受光して、その光強度パターンとして検出して、特にその時間的変化を図5(A)に示す正常な状態の光強度パターンと比較することにより、レーザ光伝送部2を伝播後のレーザ光6のエネルギー(出力パワー)、出射方向,波面分布の夫々の変動の発生有無とその変化量を相対的に検出することが可能となる。具体的には、上記検出された光強度パターンと上記図5(A)に示す正常な状態の光強度パターンとにおいて、境界回折波15の光強度を比較することにより、レーザ光6のエネルギー(出力パワー)の変動及びその変化量を検出することができ、上記光強度における最大位置である主ピークP0の位置と中心軸12との位置ずれを比較することにより、レーザ光6の出射方向の変動及びその変化量を検出することができ、さらに、主ピークP0の位置に対する強度分布の対称性として、夫々の第1サイドピークP1及び夫々の第2サイドピークP2の互いの光強度の対称性を比較することにより、レーザ光6の波面分布の変動及びその変化量を検出することができる。
【0055】
また、レーザ加工装置20においては、さらに、レーザ分岐部7と回折型光学素子8との間におけるレーザ光6aの光軸上、あるいは、回折型光学素子8と光電変換素子部9との間におけるレーザ光6aの光軸上に、レンズ等を挿入して、回折型光学素子8に入射するレーザ光6aのビーム径や波面の制御を行うことや、光電変換素子部9に入射する回折波パターンのサイズを制御を行なうような場合であってもよい。このような制御を行うことにより、光電変換素子部9にて受光される境界回折波15の受光状態を、その光強度パターンの検出にあたって、最適な状態とすることができる場合もあるからである。
【0056】
ここで、レーザ加工装置20において、レーザ発振器1より出射されるレーザ光6に対して、その出力パワー、出射方向、及び、波面分布の夫々の変化が発生する一般的な要因について説明する。
【0057】
まず、レーザ光の出力パワーの変化は、例えば、レーザ発振のための反転分布を発生させるための励起に起因して発生する。すなわち、励起エネルギーの変動の発生が、略直接的にレーザ光の出力パワーの変化の発生に結び付くこととなる。
【0058】
また、レーザ光は空間的分布を持つため、その励起も空間的分布を持つことになる。このため、例えば、励起エネルギーが空間的に均一でない場合においては、励起エネルギーによる被励起媒質である固体やガス媒質に瞬間的にかつ時間的に熱分布が生じることとなる。この熱分布は媒質の屈折率変化を誘起するため、このような場合にあっては、媒質がレンズ的な役割を果たすこととなって、レーザ光の出射方向の変化を引き起こすこととなる。
【0059】
さらに、媒質の空間的な屈折率の変化は、この空間を通過するレーザ光に対して、不均一な光学長を与えることとなる。このような不均一な光学長の付与は、レーザ光の波面分布の変化を発生させることとなる。なお、このようなレーザ光の波面分布の変化や出射方向の変化は、上述のような要因に限定されることなく、その他の要因によっても発生し得る。
【0060】
例えば、レーザ加工装置を構成する際に、レーザ発振器から被加工材料に至るまでには、種々の光学部品が用いられている。例えば、折り返しミラー、伝送レンズ、さらに集光(投影)レンズ等である。これらの光学部品は当前のことながら、何らかの治具に支持(あるいは保持)されているが、この支持に非対称性(すなわち、レーザ光の光軸に対する非対称性)やひずみがあるような場合にあっては、外部からの熱や振動によって、空間的に非対称的な変動をもたらすこととなる。このような空間的な非対称的変動は、伝播するレーザ光の出射方向や波面分布に変動をもたらす要因となる。
【0061】
(回折型光学素子の変形例について)
次に、上述において説明した回折型光学素子8とは、異なる構成を有する回折型光学素子について説明する。このような回折型光学素子の一例として、円盤形状を有する回折型光学素子18の概略構成を示す模式説明図を図4に示す。なお、図4において、(A)はレーザ光6aの光軸と直交する方向から見た状態を示し、(B)は上記光軸沿いの方向から見た状態を示す。なお、図4に示す回折型光学素子18のうち、図3に示す回折型光学素子8と同じ構成部分については、同一の符号を用いて説明するものとする。なお、図4(A)においては、図示左側から右側に向けて、レーザ光6aが伝播される。また、図4(B)は断面図ではないが、説明の便宜上、透光部16にハッチングを施した図としている。
【0062】
図4(A)及び(B)に示すように、回折型光学素子18は、略円盤状の形状を有しており、上記分岐されたレーザ光6aの光軸が位置されるべき軸上に、その中心軸12が位置されるように配置されている。また、回折型光学素子18は、レーザ光6aの波長に対して透明である(すなわち、光学的透過性を有する)円盤状の光学素子基板10と、レーザ光6aの波長に対して透明であり(すなわち、光学的透過性を有し)、レーザ光6aを遮光することなく、透過させる材料により光学素子基板10の表面に形成され、かつ、光学素子基板10の径よりも小さな径を有する円盤状の透光部16とを備えている。
【0063】
また、透光部16は、例えば、切削加工、フォトリソグラフ、マスク蒸着、又はスパッタ等の手段で、光学素子基板10の表面に、上記光透過性の材料により形成された円形状の単層あるいは多層の構造を有している。なお、この透光部16の上記構造は、光学素子基板10の形成材料と同一の材料あるいは異種材料により形成された単層構造、又は、上記同一の材料と上記異種材料との多層構造、又は、上記異種材料同士の多層構造のいずれであってもよい。また、透光部16の上記光透過性の形成材料としては、例えば、光学材料として、紫外光のレーザ光6に対しては、石英、又はBK7等が用いられ、一方、赤外光のレーザ光6に対しては、ジンクセレン(ZnSe)、又はゲルマニウム等が用いられる。なお、光学素子基板10の夫々の表面と同様に、透光部16の夫々の表面にも、入射されるレーザ光6aの反射を防止するために、反射防止膜が形成されていることが望ましい。
【0064】
また、回折型光学素子8における遮光部11の直径と同様に、透光部16の直径は、入射される上記分岐されたレーザ光6aのピーク強度に対する1/e2のビーム径からその半値(50%)程度の範囲のいずれかの寸法を採用することが好ましく、より好ましくは上記半値程度の寸法を採用することが望ましい。
【0065】
また、図4(A)に示すように、透光部16は、光学素子基板10の図示左側の表面、すなわち、レーザ光6aの入射側表面に形成されているが、このような場合に代えて、図示右側の表面、すなわち、レーザ光6aの出射側表面に形成されている場合であってもよい。
【0066】
このような構成の回折型光学素子18において、上記分岐されたレーザ光6aは、例えば、図4(A)に示すような連続された複数の波面13を持って、その光軸に沿って、透光部16が形成されている光学素子基板10に入射する。光学素子基板10の表面に照射されたレーザ光6aは、透光部16が形成されている部分も含めて透過することとなる。ところが、光学素子基板10において、透光部16及び光学素子基板10を透過した透過光17と、光学素子基板10のみを透過した透過光14との間では、夫々の位相関係が異なることとなる。これは、光学素子基板10が形成されている分だけ、その光学長の異なりが発生するためである。これにより、透過光14と透過光17との間に位相ずれ、すなわち、いわゆる位相のシフトが発生する。この位相のシフトの発生により、透光部16の端部において境界回折波15が、遮光部11の場合と同様に発生する。ただし、回折型光学素子18においては、光学素子基板10の表面に形成されている透光部16においてもレーザ光6aを透過させるため、上記発生された境界回折波15は、その上記球面波の波動光学的な重ね合わせとなるだけでなく、透過光14及び透過光17ともさらに重ね合わさることとなる。
【0067】
また、透光部16を用いた場合の境界回折波15の光強度パターンは、遮光部11を用いた場合と略同一であり、その検出方法も同様である。なお、上記位相のシフトを有効に発生させるため、透光部16の光学長Lは、レーザ光の波長をλとした場合に、L=(n+1/2)λ;(ただし、nは整数)(すなわち、半波長(180度))として決定されることが望ましい。さらに,境界回折波15と透過光14及び17との重ね合わせを考慮する場合には、光学素子基板10に入射されるレーザ光6aの波面13は単純な方が好ましく、すなわち、回折型光学素子18をレーザ光6aのビームウエスト位置(波面曲率=平面、無限大)に配置させることが望ましい。なお、透光部16の円形状の表面が位相シフト平面の一例となっており、また、中心軸12が位相シフトの中心軸の一例となっている。さらに、透光部16の上記平面が中心軸12と直交するように、透過光16は配置されている。
【0068】
このように、回折型光学素子8に代えて、回折型光学素子18を用いるような場合にあっては、より精度の高い上記検出を行うことができる。具体的には、図3に示す回折型光学素子8においては、遮光部11によりレーザ光6aの一部を遮光することにより、境界回折波15を発生させているが、この境界回折波15の発生は遮光部11の端部のみからであり、レーザ光6aの波面全体を完全に反映したものではない。しかしながら、図4に示す回折型光学素子18においては、発生された境界回折波15に対して、さらに透過光14及び17を重ね合わせることができる。従って、境界回折波15の光強度パターンには、透過光14及び17も反映されることとなるため、レーザ光6aの波面13全体が上記光強度パターンに影響を与え、さらに精度の高い検出が可能となる。
【0069】
また、遮光部11と同様に、透光部16は、光学素子基板10の表面上にスパッタ等の手段で形成されているため、当該端部の形状を上記理想的なもの(すなわち、当該端部により中心軸12と略平行な面が形成されるような形状)とすることは困難であり、実際には、中心軸12に対して僅かに傾斜された面(すなわち、テーパ状の面)を形成することとなる。このような場合にあっては、当該端部において境界回折波15の発生は、上記傾斜された面上の複数点からのものとなるため、境界回折波15の伝播特性は複雑なものとなってしまう。従って、夫々の光電変換素子31、32A、32B、33A、及び33Bの最適な配置設置の決定にあたっては、実験的に求めることが好適である。
【0070】
なお、このような光電変換素子の一例として多数のCCDが光学素子基板10の表面全体に配置されて、光学素子基板10の表面全体において受光される境界回折波15の光強度パターンが検出されるような場合であってもよい。
【0071】
(光電変換素子部の出力処理について)
上述のような構成を有するレーザ加工装置20においては、光電変換素子部9にて検出されたレーザ6の夫々の変化状態に基づいて、加工処理が施される被加工対象物4の加工品質の良否判定を行なうことができる加工品質判定部40がさらに備えられている。この加工品質判定部40についてその構成及び判定手順について、詳細に説明する。
【0072】
まず、図9に、加工品質判定部40の主要な構成例を示す制御ブロック図を示す。図9に示すように、加工品質判定部40は、光電変換素子部9と接続されており、受光されるレーザ光6aの光強度パターンに基づいて、光電変換素子部9より出力される電気出力を入力することが可能となっている。また、加工品質判定部40は、レーザ光6が良好な状態で出射されている場合(すなわち、被加工対象物4の加工を良好に行い得る状態で出射されている場合)に示す上記光強度パターンに基づいて検出される電気出力を「基準データ」として予め入力しておくことができ、この「基準データ」と光電変換素子部9から実際に入力される上記電気信号とを比較することにより、実際に検出されたレーザ光6の出射状態を良否を判定することが可能となっている。
【0073】
このような機能を成し得るために、図9に示すように、加工品質判定部40は、様々な種類の被加工対象物4に応じた夫々の上記基準データをデータベースとして取り出し可能に保持するデータベース部44と、上記入力される電気出力、及び、データベース部44より加工が行なわれる被加工対象物4に応じて取り出された上記基準データを一時的に記憶して保持することが可能なメモリ部43と、上記電気出力と上記基準データとのデータ比較等を行なうとともに、当該データ比較の結果に基づいてレーザ光6による被加工対象物4の加工品質の良否判定を行なう演算部41と、上記データ比較結果、又は、上記加工品質の良否判定結果の出力を行なう出力部42とを備えている。なお、出力部42の機能としては、当該データ等を、外部に出力し得ればよく、その形態としては、例えば、モニタ、プリンタ、電気信号出力等、様々な形態のものを用い得る。
【0074】
また、演算部41は、上記電気出力と上記基準データとを、予めマッピングされたデータにマッチングさせることによって、上記データ比較、すなわち、レーザ光6の出力パワー、出射の方向、及び波面分布の変化量の算出を行ない、当該変化量が規定値を超えた場合に、上記加工品質の不良の判定を行なうことが可能となっている。
【0075】
次に、このような構成の加工品質判定部40において、上記加工品質の良否判定を行なう場合の手順について、図10に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0076】
図10に示すように、まず、ステップS1において、レーザ加工装置20に加工可能に保持された被加工対象物4の種類に応じた基準データが選択されて、演算部41により、データベース部44から当該基準データが取り出されて、メモリ部43に入力されて取り出し可能に記憶される。
【0077】
次に、レーザ加工装置20において、レーザ発振器1よりレーザ光6が出射されて、被加工対象物4の加工が開始される。それとともに、レーザ光分岐部7において分岐されたレーザ光6aから発せられた境界回折波15が光電変換素子部9にて受光されて、その光強度パターンが電気出力に変換されて、ステップS2において、加工品質判定部40におけるメモリ部43に取り出し可能に記憶される。
【0078】
その後、ステップS3において、メモリ部43に記憶された上記基準データと上記電気出力とが、演算部41により取り出されて、互いのデータ比較が行なわれ、出射されたレーザ光6の変化量が算出される。その後、ステップS4において、この算出された変化量に基づいて、レーザ光6による被加工対象物の加工品質の判定が演算部41により行なわれる。例えば、上記基準データ等に基づいて予め設定されている規定量を基準として、上記算出された変化量が当該規定量を超えない場合には、上記加工品質は良好な状態の許容範囲内であるものとして良判定を行ない、一方、上記変化量が当該規定量を超えるような場合には、レーザ光6の出射状態に不良が発生したものとして、上記加工品質の不良判定を行なう。なお、この判定結果は、出力部42により、加工品質判定部40の外部に出力される。また、上記加工品質の不良判定とともに、当該不良の発生内容(具体的な不良状態)や発生時間、さらに発生ポイント等も併せて出力することもできる。
【0079】
なお、本第1実施形態においては、遮光部11や透光部16を用いて、境界回折波15を発生させて、当該境界回折波15を検出することでもって、レーザ光6の出力パワー、出射方向、及び、波面分布の検出を行なっているが、このような上記検出の機能を奏する限りにおいて、遮光部11の上記表面及び透光部16の上記表面と、中心軸12との間の「直交」関係に、多少のズレが生じるような場合(すなわち、略直交に配置されているような場合)であってもよい。
【0080】
(第1実施形態による効果)
上記第1実施形態によれば、以下のような種々の効果を得ることができる。
【0081】
まず、レーザ光分岐部7にて分岐されたレーザ光6aより、回折型光学素子8にて境界回折波15を発生させて、光電変換素子部9においてこの境界回折波15の光強度パターンを受光することにより、レーザ光6aの出力パワー、出射の方向だけでなく、その波面分布をも併せて同時的に検出することができる。また、このレーザ光6aの検出結果に基づいて、分岐他方のレーザ光6bの出射状態を推定することができ、レーザ光6bの照射によりレーザ加工が施される被加工対象物4の加工品質を推定することができる。
【0082】
これにより、例えば、従来においては検出することが困難であったレーザ光における1μmレベルのひずみをも検出することが可能となり、出射されるレーザ光6の変化状態をより高い精度でもって検出することができるレーザ加工に対する加工品質を向上させることができる。例えば、熱加工としての波長的限界水準の加工孔径の加工をも安定して行なうことが可能となる。
【0083】
また、回折型光学素子8において、レーザ光6aに対して光学的透過性を有する円盤状の光学素子基板10の表面にその中心を同じとする円盤状の遮光部11が形成されていることにより、光学素子基板10に照射されるレーザ光6aのうち、遮光部11に照射されたレーザ光6aのみを遮断することでもって、遮光部11の上記円形の端部より境界回折波15を発生させることができる。このように、境界回折波15を発生させて、同位相から境界回折波15が重ね合わされた状態の光強度パターンを光電変換素子部9にて受光することにより、レーザ光6aの上記検出を確実に行なうことができる。
【0084】
また、回折型光学素子18において、レーザ光6aに対して光学的透過性を有する円盤状の光学素子基板10の表面にその中心を同じとして、同じく光学的透過性を有する円盤状の透光部16が形成されていることにより、光学素子基板10に透過するレーザ光6aのうち、透光部16及び光学素子基板10を透過する透過光17と、光学素子基板10のみをを透過する透過光14との間に光の位相のシフトを発生されることでもって、透光部16の上記円形の端部より境界回折波15を発生させることができる。この境界回折波15は、透過光14及び17ともさらに重ね合わせることができるため、境界回折波15の光強度パターンに、透過光14及び17をも反映させることができ、レーザ光6aの波面13全体が上記光強度パターンに影響を与えて、より精度の高いレーザ光6の状態の検出を行なうことができる。
【0085】
また、回折型光学素子8において遮光部11の直径を、あるいは、回折型光学素子18において、透光部16の直径を、夫々、上記分岐されたレーザ光6aのピーク強度に対する1/e2のビーム径からその半値程度の範囲のいずれかの寸法とするような場合にあっては、上記発生される境界回折波15の検出を良好なものとすることができる。
【0086】
また、上記境界回折波15の検出にあたっては、光電変換素子部9において、素子プレート30の中央、すなわち、境界回折波15の光軸が位置されるべき位置に、中央光電変換素子31を配置して、境界回折波15の第1サイドピークP1が検出されるべく同一円周上に、少なくとも4つの光電変換素子32A、32B、33A、及び33Bを、略均等な間隔でもって配置させることにより、境界回折波15の光強度分布における主ピークP0の光強度を中央光電変換素子31により検出することができ、また、第1サイドピークP1の光強度を、上記4つの光電変換素子32A、32B、33A、及び33Bにより検出することができる。このような光電変換素子部9において、全体的な光強度に低下が検出されることにより、レーザ光の出力パワーの変動(低下)を検出することができ、主ピークP0の位置の変化が検出されることにより、レーザ光の出射の方向を検出することができ、第1サイドピークP1における光強度の変化が検出されることにより、レーザ光の波面分布の変化を検出することができる。
【0087】
また、レーザ加工装置20において、加工品質判定部40が備えられていることにより、被加工対象物4に対してレーザ光6bを照射してレーザ加工を行ないながら、レーザ光分岐部7において分岐されたレーザ光6aよりの境界回折波15の光強度パターンを光電変換素子部9において受光しながら、その受光結果である電気出力を、加工品質判定部40に入力させて、レーザ光6の出射における変化状態を検出(モニタリング)することができる。これにより、加工品質判定部において、予め入力された基準データを基として、レーザ光6による被加工対象物の加工品質の不良判定を行なうことができるとともに、当該不良の発生内容(具体的な不良状態)や発生時間、さらに発生ポイント等の特定も併せて行なうことができる。
【0088】
具体的な例としては、例えば、従来のレーザ加工においては、1枚の基板(被加工対象物の一例である)上に数百〜数千個の孔をレーザ加工する際に用いられることがある。このようなレーザ加工においては、上記夫々の孔の真円度の均一性や孔位置の精度が要求され、例え1つの孔形状の不良や、位置の不良でも、その基板自体が不良となってしまう場合がある。これは、例えば、このような夫々の孔を用いて多層基板間の導通を取る際(すなわち、夫々の孔を導通孔として用いる際)に、夫々の孔内部に導電ペーストを注入するが、夫々の孔の真円度が不良だと導電ペーストが孔の下部まで達せず導通が取れなくなる場合があるという問題がある。また、位置精度に不良が生じると積層する基板間の夫々の孔位置が異なるため、やはり導通が取れない場合が生じ得るという問題がある。このような問題が発生するような場合であっても、従来のレーザ加工においては、個々の基板の不良判定は行われずに、最終工程を経た後の完成品の検査で不良判定を行なっているため、レーザ加工の段階で上記不良が発生しているような場合にあっては、その後の工程に無駄が生じることとなる。
【0089】
しかしながら、上記第1実施形態のレーザ加工装置においては、個々の孔加工精度を、当該加工に用いるレーザ光の出力パワーの変動、及び出射方向の変動のみならず、レーザ光の波面分布もモニターすることができるため、基板毎の良否判定をインラインで行うことができ、従来のように無駄な工程を発生させることを回避することができる。なお、レーザ光の出力パワーの変動は、主に孔径の変化ならびに孔深さに影響を与え、また、出射方向の変化は主に孔加工位置と孔形状に影響を与え、波面分布変化は主に孔径と孔形状に影響を与えることとなるが、これらの変化や不良の発生を、その加工を行ないながら検出(あるいはモニター)することができ、より効率的でかつ精度の高いレーザ加工を提供することができる。
【0090】
(第2実施形態)
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、本発明の第2の実施形態にかかるレーザ加工装置の一例であるレーザ加工装置50の概略構成を模式的に示す模式説明図を図2に示す。
【0091】
図2に示すように、レーザ加工装置50は、上記第1実施形態のレーザ加工装置20の構成と比べて、レーザ光集光部3に代えて、マスク像投影型レーザ光集光部5を備えている点において異なっているのみであり、その他の構成は同様となっている。なお、図2のレーザ加工装置50において、図1のレーザ加工装置20と同じ構成の部分には、同じ符号を用いて示している。
【0092】
次に、このような構成のレーザ加工装置50の構成及び動作について、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0093】
上記第1実施形態のレーザ加工装置20においては、レーザ発振器1から発振(出射)されたレーザ光6は、レーザ光伝播部2を伝播した後、少なくとも1枚以上のレンズを含むレーザ光集光部3によって、所望のビーム径、ビームパターンに変換されて被加工対象物4に照射される。
【0094】
一方、本第2実施形態のレーザ加工装置50においては、レーザ光集光部3に変わってマスク像投影型レーザ光集光部5が設置されているが、マスク像投影型レーザ光集光部5は、被加工対象物4上に加工したいパターンと相似な開口を有するマスク(図示しない)と、このマスク像を被加工対象物4上に投影する少なくとも1枚以上のレンズからなる投影レンズ(図示しない)とを備えている。
【0095】
また、上記マスクと上記投影レンズ間には、少なくとも1つ以上のガルバノミラー(図示しない)を設置することも可能であり、上記ガルバノミラーを走査することで被加工対象物4上で加工パターンを走査することが可能となる。また、上記投影レンズは、拡大若しくは縮小投影を行なうことが可能となっており、一般的には縮小投影とすることで、上記マスク上のレーザ光6のエネルギー密度を被加工対象物4上で増大させることにより、被加工対象物4の加工閾値エネルギー密度を得、逆に、上記マスク上のエネルギー密度を低減させることにより、上記マスクのレーザ光6による損傷を回避している。
【0096】
このようなマスク像投影法を用いた加工の際に、上記マスク像の回折像を投影レンズで再回折させることで被加工対象物4上にマスクパターンの加工パターンを投影させている。このため、上記マスクに入射するレーザ光6のエネルギー分布、入射方向、波面分布がより重要となるが、上記第1実施形態の場合と同様に、分岐されたレーザ光6aにより発生する境界回折波15を受光することにより、レーザ光の出力パワー、出射の方向、及び波面分布を検出することができるため、確実なレーザ加工を行なうことができる。
【0097】
(第2実施形態による効果)
上記第2実施形態によれば、マスク像投影型レーザ集光部5を備えるレーザ加工装置50においては、上記マスクに入射するレーザ光6のエネルギー分布、入射方向、波面分布がより重要となるが、上記第1実施形態の場合と同様に、分岐されたレーザ光6aにより発生する境界回折波15を受光することにより、レーザ光の出力パワー、出射の方向、及び波面分布を検出しながら上記レーザ加工を行なうことができるため、このようなレーザ光の検出をより有効なものとすることができる。
【0098】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0099】
(本発明の夫々の態様による効果)
本発明の第1態様によれば、出射されるレーザ光の光軸が位置されるべき軸を遮光の中心軸として、上記中心軸に直交する遮光平面において、上記レーザ光の一部を遮光して、上記遮光により発生する回折光を、上記遮光の中心軸に直交する平面において受光し、
上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置に対する強度分布の対称性を検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出することを特徴とするレーザ検出方法を提供する。
【0100】
上記第1態様によれば、出射されるレーザ光の一部を遮光して、上記遮光により発生する回折光を上記遮光の中心軸に直交する平面にて受光し、上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置に対する強度分布の対称性を検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出することができる。これにより、例えば、従来においては検出することが困難であったレーザ光における1μmレベルのひずみをも検出することが可能となり、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。
【0101】
本発明の第2態様によれば、上記受光の平面における上記強度分布の対称性に加えて、さらに、上記回折光の強度、及び上記強度の上記最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々を同時に検出する第1態様に記載のレーザ検出方法を提供する。
【0102】
上記第2態様によれば、上記回折光の強度分布の対称性の検出に加えて、さらに、上記受光の平面における上記回折光の強度、及び上記強度の最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び、その波面分布をも併せて同時的に検出することができる。これにより、従来から行なわれている上記レーザ光の出力パワーや上記出射の方向に加えて、上記波面分布をも検出することができ、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。また、このような検出が行なわれるレーザ光を用いたレーザ加工に対する加工品質を向上させることができ、より高精度なレーザ加工におけるレーザ光の検出を行うことができる。
【0103】
本発明の第3態様によれば、上記遮光平面は、その中心が上記中心軸上に配置された略円形状の平面であって、
上記遮光は、上記レーザ光の一部を上記略円形状に遮光することにより行なわれる第1態様又は第2態様に記載のレーザ検出方法を提供する。
【0104】
上記第3態様によれば、上記遮光平面を、その中心が上記中心軸上に配置された略円形状の平面であって、上記遮光が、上記レーザ光の一部を上記遮光平面の形状である上記略円形状に遮光することにより、上記遮光平面の端部より上記回折光を発生させることができる。これにより、上記回折光の重ね合わせ状態を上記受光の平面にて受光し、上記検出を行うことができる。
【0105】
本発明の第4態様によれば、出射されるレーザ光の一部を分岐し、
上記分岐されたレーザ光に対して、上記一部の遮光を行なって、上記検出を行なう第1態様から第3態様のいずれか1つに記載のレーザ検出方法を提供する。
【0106】
上記第4態様によれば、出射されるレーザ光の一部を分岐した後に、上記分岐されたレーザ光の一部を上記遮光して、上記検出を行うことにより、上記分岐された他方のレーザ光の出射状態を、上記検出結果より推定することができる。従って、例えば、上記他方のレーザ光を被加工対象物に照射してレーザ加工を行う場合等において、当該加工を行いながら、その加工品質を推定することができ、当該レーザ検出が用いられるレーザ加工において、より効率的かつ高精度な加工を行うことができる。
【0107】
本発明の第5態様によれば、出射されるレーザ光の光軸が位置されるべき軸を位相シフトの中心軸として、上記中心軸に直交する位相シフト平面において、上記レーザ光の一部の光の位相のシフトを行なって、上記位相のシフトにより発生する回折光を、上記位相シフトの中心軸に直交する平面において受光し、
上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置に対する強度分布の対称性を検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出することを特徴とするレーザ検出方法を提供する。
【0108】
上記第5態様によれば、出射されるレーザ光の一部の光の位相のシフトを行って、上記位相のシフトにより発生する回折光を上記位相シフトの中心軸に直交する平面にて受光し、上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置に対する強度分布の対称性の夫々を同時に検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出することができる。これにより、上記第1態様による効果と同様に、例えば、従来においては検出することが困難であったレーザ光における1μmレベルのひずみをも検出することが可能となり、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。また、このような上記位相のシフトにより発生された回折光は、上記遮光という手段を用いていないため、上記レーザ光の波面全体を上記回折光に影響させることができ、より精度の高い検出を行えるという利点がある。
【0109】
本発明の第6態様によれば、上記受光の平面における上記強度分布の対称性に加えて、さらに、上記回折光の強度、及び上記強度の上記最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々を同時に検出する第5態様に記載のレーザ検出方法を提供する。
【0110】
上記第6態様によれば、上記回折光の強度分布の対称性の検出に加えて、さらに、上記受光の平面における上記回折光の強度、及び上記強度の最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、さらに、その波面分布を併せて同時的に検出することができる。これにより、従来から行なわれている上記レーザ光の出力パワーや上記出射の方向に加えて、上記波面分布をも検出することができ、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。
【0111】
本発明の第7態様によれば、上記位相シフト平面は、その中心が上記中心軸上に配置された略円形状の平面であって、
上記位相のシフトは、上記位相シフト平面を透過された上記レーザ光の一部の光の位相を、他の上記レーザ光の光の位相よりずらすことにより行なわれる第5態様又は第6態様に記載のレーザ検出方法を提供する。
【0112】
上記第7態様によれば、上記位相シフト平面を、その中心が上記中心軸上に配置された略円形状の平面であって、上記位相のシフトが、上記位相シフト平面を透過されたレーザ光の一部の光の位相を、他の上記レーザ光の光の位相よりずらすことにより、上記位相シフト平面の端部より上記回折光を発生させることができる。これにより、上記回折光の重ね合わせ状態を上記受光の平面にて受光し、上記検出を行うことができる。
【0113】
本発明の第8態様によれば、出射されるレーザ光の一部を分岐し、
上記分岐されたレーザ光に対して、上記一部の光の位相のシフトを行って、上記検出を行なう第5態様から第7態様のいずれか1つに記載のレーザ検出方法を提供する。
【0114】
上記第8態様によれば、上記出射されるレーザ光の一部を分岐した後に、上記分岐されたレーザ光の一部の上記位相のシフトを行って、上記検出を行うことにより、上記分岐された他方のレーザ光の出射状態を、上記検出結果より推定することができる。従って、上記第4態様による効果と同様の効果を得ることができる。
【0115】
本発明の第9態様によれば、上記光の位相のシフトは、上記レーザ光におけるビームウェスト位置において行なわれる第5態様から第8態様のいずれか1つに記載のレーザ検出方法を提供する。
【0116】
上記第9態様によれば、上記光の位相のシフトを、上記レーザ光におけるビームウェスト位置にて行うことにより、上記位相のシフトが行なわれるレーザ光の波面を単純なものとすることができ、上記発生される回折光の検出をより明確かつ良好なものとすることができ、検出精度を向上させることができる。
【0117】
本発明の第10態様によれば、出射されたレーザ光を被加工対象物に照射して、上記被加工対象物の加工を行なうレーザ加工方法において、
上記出射されたレーザ光の一部を分岐して、
上記分岐された一方のレーザ光の光軸が位置されるべき軸を遮光の中心軸として、上記中心軸に直交する遮光平面において、上記一方のレーザ光のさらに一部を遮光して、上記遮光により発生する回折光を、上記遮光の中心軸に直交する平面において受光し、上記受光の平面における上記回折光の強度、上記強度の最大位置と上記中心軸との位置ずれ、及び上記最大位置に対する強度分布の対称性の夫々を同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々を同時に検出しながら、
上記分岐された他方のレーザ光を上記被加工対象物に照射して、上記被加工対象物の上記加工を行なうことを特徴とするレーザ加工方法を提供する。
【0118】
上記第10態様によれば、出射されるレーザ光の一部を分岐して、上記分岐された一方のレーザ光のさらに一部を遮光して、上記遮光により発生する回折光を上記遮光の中心軸に直交する平面にて受光し、上記受光の平面における上記回折光の強度、上記強度の最大位置と上記中心軸との位置ずれ、及び上記最大位置に対する強度分布の対称性の夫々を同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向だけでなく、その波面分布をも併せて同時的に検出することができる。
【0119】
さらに、上記分岐された他方のレーザ光により被加工対象物の加工を行いながら、その出射状態を、上記一方のレーザ光の検出結果より推定することができる。従って、上記他方のレーザ光を被加工対象物に照射して当該加工を行いながら、その加工品質を推定することができ、より効率的かつ高精度な加工を行うことができる。
【0120】
これにより、例えば、従来においては検出することが困難であったレーザ光における1μmレベルのひずみをも検出することが可能となり、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができ、さらに、このような検出が行なわれるレーザ光を用いたレーザ加工に対する加工品質を向上させることができる。
【0121】
本発明の第11態様によれば、上記遮光平面は、その中心が上記中心軸上に配置された略円形状の平面であって、
上記遮光は、上記一方のレーザ光の一部を上記略円形状に遮光することにより行なわれる第10態様に記載のレーザ加工方法を提供する。
【0122】
上記第11態様によれば、上記遮光平面を、その中心が上記中心軸上に配置された略円形状の平面であって、上記遮光が、上記一方のレーザ光の一部を上記遮光平面の形状である上記略円形状に遮光することにより、上記遮光平面の端部より上記回折光を発生させることができる。これにより、上記回折光の重ね合わせ状態を上記受光の平面にて受光し、上記検出を行うことができる。
【0123】
本発明の第12態様によれば、出射されたレーザ光を被加工対象物に照射して、上記被加工対象物の加工を行なうレーザ加工方法において、
上記出射されたレーザ光の一部を分岐して、
上記分岐された一方のレーザ光の光軸が位置されるべき軸を位相シフトの中心軸として、上記中心軸に直交する位相シフト平面において、上記一方のレーザ光のさらに一部の光の位相のシフトを行なって、上記位相のシフトにより発生する回折光を、上記位相シフトの中心軸に直交する平面において受光し、上記受光の平面における上記回折光の強度、上記強度の最大位置と上記中心軸との位置ずれ、及び上記最大位置に対する強度分布の対称性の夫々を同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々を同時に検出しながら、
上記分岐された他方のレーザ光を上記被加工対象物に照射して、上記被加工対象物の上記加工を行なうことを特徴とするレーザ加工方法を提供する。
【0124】
上記第12態様によれば、出射されるレーザ光の一部を分岐して、上記分岐された一方のレーザ光のさらに一部の光の位相のシフトを行って、上記位相のシフトにより発生する回折光を上記位相シフトの中心軸に直交する平面にて受光し、上記受光の平面における上記回折光の強度、上記強度の最大位置と上記中心軸との位置ずれ、及び上記最大位置に対する強度分布の対称性の夫々を同時に検出することにより、上記一方のレーザ光の出力パワー、上記出射の方向だけでなく、その波面分布をも併せて同時的に検出することができる。
【0125】
さらに、上記分岐された他方のレーザ光により被加工対象物の加工を行いながら、その出射状態を、上記一方のレーザ光の検出結果より推定することができる。従って、上記他方のレーザ光を被加工対象物に照射して当該加工を行いながら、その加工品質を推定することができ、より効率的かつ高精度な加工を行うことができる。
【0126】
これにより、上記第10態様による効果と同様に、例えば、従来においては検出することが困難であったレーザ光における1μmレベルのひずみをも検出することが可能となり、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。また、このような上記位相のシフトにより発生された回折光は、上記遮光という手段を用いていないため、上記レーザ光の波面全体を上記回折光に影響させることができ、より精度の高い検出を行えるという利点がある。
【0127】
本発明の第13態様によれば、上記位相シフト平面は、その中心が上記中心軸上に配置された略円形状の平面であって、
上記位相のシフトは、上記位相シフト平面を透過した上記一方のレーザ光の一部の光の位相を、他の上記レーザ光の光の位相よりずらすことにより行なわれる第12態様に記載のレーザ加工方法を提供する。
【0128】
上記第13態様によれば、上記位相シフト平面を、その中心が上記中心軸上に配置された略円形状の平面であって、上記位相のシフトが、上記位相シフト平面を透過された上記一方のレーザ光の一部の光の位相を、他の上記レーザ光の光の位相よりずらすことにより、上記位相シフト平面の端部より上記回折光を発生させることができる。これにより、上記回折光の重ね合わせ状態を上記受光の平面にて受光し、上記検出を行うことができる。
【0129】
本発明の第14態様によれば、上記光の位相のシフトは、上記一方のレーザ光におけるビームウェスト位置において行なわれる第12態様又は第13態様に記載のレーザ加工方法を提供する。
【0130】
上記第14態様によれば、上記光の位相のシフトを、上記一方のレーザ光におけるビームウェスト位置にて行うことにより、上記位相のシフトが行なわれるレーザ光の波面を単純なものとすることができ、上記発生される回折光の検出をより明確かつ良好なものとすることができ、検出精度を向上させることができる。
【0131】
本発明の第15態様によれば、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々の変化状態を、上記被加工対象物の上記加工と同時に検出することにより、上記他方のレーザ光による上記被加工対象物の上記加工の品質の良否を判定する第12態様から第14態様のいずれか1つに記載のレーザ加工方法を提供する。
【0132】
上記第15態様によれば、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々の変化状態を、上記被加工対象物の上記加工と同時に検出して、上記他方のレーザ光による上記被加工対象物の上記加工の品質の良否を判定することにより、個々の上記被加工対象物ごとの上記加工品質の良否判定をインラインで行うことができる。従って、従来のように無駄な工程を発生させることを回避することができ、より効率的でかつ精度の高いレーザ加工を提供することができる。
【0133】
本発明の第16態様によれば、レーザ発振器と、レーザ光伝送部と、レーザ光集光部とを備え、上記レーザ発振器より発振されたレーザ光を上記レーザ光伝送部により伝送して、上記レーザ光集光部を通して被加工対象物に照射することにより、上記被加工対象物の加工を行なうレーザ加工装置において、
上記レーザ光集光部の上記レーザ発振器側に配置され、上記発振されたレーザ光の一部を分岐するレーザ光分岐部と、
上記レーザ光分岐部により分岐された上記一部のレーザ光よりの回折光をその中心軸沿いに発生させる回折型光学素子と、
上記発生された回折光を上記回折型光学素子の上記中心軸に直交する平面において受光可能であって、上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置に対する強度分布の対称性を検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出可能な光電変換素子とを備えることを特徴とするレーザ加工装置を提供する。
【0134】
上記第16態様によれば、レーザ発振器より出射されるレーザ光の一部をレーザ光分岐部にて分岐し、回折型光学素子により上記分岐された一方のレーザ光のさらに一部よりの回折光を発生させて、光電変換素子において、上記回折光を受光し、上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置に対する強度分布の対称性を検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出することができる。これにより、従来においては検出することが困難であったレーザ光における1μmレベルのひずみをも検出することが可能となり、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。
【0135】
さらに、上記レーザ光分岐部にて分岐された他方のレーザ光により被加工対象物の加工を行いながら、その出射状態を、上記光電変換素子による上記一方のレーザ光の検出結果より推定することができる。従って、上記他方のレーザ光を被加工対象物に照射して当該加工を行いながら、その加工品質を推定することができ、より効率的かつ高精度な加工を行うことができるレーザ加工装置を提供することができる。
【0136】
本発明の第17態様によれば、上記光電変換素子は、上記回折光の強度分布の対称性の検出に加えて、さらに、上記受光の平面における上記回折光の強度、及び上記強度の上記最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々を同時に検出可能である第16態様に記載のレーザ加工装置を提供する。
【0137】
上記第17態様によれば、上記光電変換素子が、上記回折光の強度分布の対称性の検出に加えて、さらに、上記受光の平面における上記回折光の強度、及び上記強度の最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、さらに、その波面分布を同時的に検出することができる。これにより、従来から行なわれている上記レーザ光の出力パワーや上記出射の方向の検出に加えて、上記波面分布をも検出することができ、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。
【0138】
本発明の第18態様によれば、上記光電変換素子による上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々の変化状態の検出結果に基づいて、上記レーザ光の照射による上記被加工対象物の加工の品質の良否判定を行なう加工品質判定部を、さらに備える第17態様に記載のレーザ加工装置を提供する。
【0139】
上記第18態様によれば、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々の変化状態を、上記被加工対象物の上記加工と同時に検出して、上記他方のレーザ光による上記被加工対象物の上記加工の品質の良否の判定を、加工品質判定部にて行うことにより、個々の上記被加工対象物ごとの上記加工品質の良否判定をインラインで、すなわち、当該加工と並行して当該検出を同時的に行うことができる。従って、従来のように無駄な工程を発生させることを回避することができ、より効率的でかつ精度の高いレーザ加工を行うことができるレーザ加工装置を提供することができる。
【0140】
本発明の第19態様によれば、上記レーザ光集光部は、マスク像投影型のレーザ光集光部である第16態様から第18態様のいずれか1つに記載のレーザ加工装置を提供する。
【0141】
上記第19態様によれば、上記レーザ光集光部がマスク像投影型のレーザ光集光部である場合にあっては、その特性上、上記レーザ光集光部に入射するレーザ光のエネルギー分布、入射方向、さらに波面分布がより重要となるため、上記レーザ光の検出を行いながら、上記加工を行うことがより有効なものとすることができる。
【0142】
本発明の第20態様によれば、上記回折型光学素子は、上記中心軸上にその中心が配置されるとともに上記中心軸と直交して配置されて、上記分岐されたレーザ光の一部を遮光可能であって、かつ、上記分岐されたレーザ光のビーム径よりも小さな径を有する略円盤状の遮光部を備え、
上記遮光部は、上記中心軸に直交する平面沿いにおいて、略円形状に上記分岐されたレーザ光の一部を遮光することにより、上記回折光を発生させる第16態様から第19態様のいずれか1つに記載のレーザ加工装置を提供する。
【0143】
上記第20態様によれば、上記回折型光学素子において、その中心軸上に配置された中心を有し、上記レーザ光の一部を遮光可能な遮光部が備えられていることにより、上記レーザ光のうちの上記遮光部に照射されたレーザ光のみを遮断することでもって、上記遮光部の上記円形状の端部より上記回折光を発生させることができる。このように、上記回折光を発生させて、同位相から上記回折光が重ね合わされた状態の光を上記光電変換素子にて受光することにより、上記レーザ光の上記検出を確実に行なうことができる。
【0144】
本発明の第21態様によれば、上記回折型光学素子は、上記中心軸上にその中心が配置されるとともに上記中心軸と直交して配置されて、上記分岐されたレーザ光を透過可能であって、かつ、上記分岐されたレーザ光のビーム径よりも小さな径を有する略円盤状の透光部を備え、
上記透光部は、上記中心軸に直交する平面沿いにおいて、略円盤状に上記分岐されたレーザ光の一部を透過させて、上記透光部を透過されていない上記レーザ光の光の位相に対して、上記透過された上記レーザ光の光の位相のシフトを行なうことにより、上記回折光を発生させる第16態様から第19態様のいずれか1つに記載のレーザ加工装置を提供する。
【0145】
上記第21態様によれば、上記回折型光学素子において、その中心軸上に配置された中心を有し、上記レーザ光の一部を透過可能な透光部が備えられていることにより、上記レーザ光のうちの上記透光部を透過しないレーザ光に対して、上記透光部を透過されたレーザ光の位相のシフトを行うことでもって、上記透光部の上記円形状の端部より上記回折光を発生させることができる。このように、上記回折光を発生させて、上記回折光を上記光電変換素子にて受光することにより、上記レーザ光の上記検出を確実に行なうことができる。
【0146】
また、このような上記位相のシフトにより発生された上記回折光は、上記遮光という手段を用いていないため、上記レーザ光の波面全体を上記回折光に影響させることができ、より精度の高い検出を行えるという利点がある。
【0147】
本発明の第22態様によれば、上記透光部は、上記分岐されたレーザ光におけるビームウェスト位置に配置されている第21態様に記載のレーザ加工装置を提供する。
【0148】
上記第22態様によれば、上記透光部を上記レーザ光におけるビームウェスト位置に配置させて上記位相のシフトを行うことにより、上記位相のシフトが行なわれるレーザ光の波面を単純なものとすることができ、上記発生される回折光の検出をより明確かつ良好なものとすることができ、検出精度を向上させることができる。
【0149】
【発明の効果】
本発明の上記第1の発明によれば、出射されるレーザ光の一部を遮光して、上記遮光により発生する回折光を上記遮光の中心軸に直交する平面にて受光し、上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置に対する強度分布の対称性を検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出することができる。これにより、例えば、従来においては検出することが困難であったレーザ光における1μmレベルのひずみをも検出することが可能となり、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。
【0150】
また、上記回折光の強度分布の対称性の検出に加えて、さらに、上記受光の平面における上記回折光の強度、及び上記強度の最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び、その波面分布をも併せて同時的に検出することができる。これにより、従来から行なわれている上記レーザ光の出力パワーや上記出射の方向に加えて、上記波面分布をも検出することができ、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。また、このような検出が行なわれるレーザ光を用いたレーザ加工に対する加工品質を向上させることができ、より高精度なレーザ加工におけるレーザ光の検出を行うことができる。
【0151】
本発明の上記第2の発明によれば、出射されるレーザ光の一部の光の位相のシフトを行って、上記位相のシフトにより発生する回折光を上記位相シフトの中心軸に直交する平面にて受光し、上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置に対する強度分布の対称性の夫々を同時に検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出することができる。これにより、上記第1の発明による効果と同様に、例えば、従来においては検出することが困難であったレーザ光における1μmレベルのひずみをも検出することが可能となり、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。また、このような上記位相のシフトにより発生された回折光は、上記遮光という手段を用いていないため、上記レーザ光の波面全体を上記回折光に影響させることができ、より精度の高い検出を行えるという利点がある。
【0152】
また、上記回折光の強度分布の対称性の検出に加えて、さらに、上記受光の平面における上記回折光の強度、及び上記強度の最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、さらに、その波面分布を併せて同時的に検出することができる。これにより、従来から行なわれている上記レーザ光の出力パワーや上記出射の方向に加えて、上記波面分布をも検出することができ、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態にのレーザ加工装置の概略構成を示す模式説明図である。
【図2】本発明の第2実施形態にのレーザ加工装置の概略構成を示す模式説明図である。
【図3】上記第1実施形態のレーザ加工装置における回折型光学素子の構成を示す模式図であり、(A)はレーザ光の光軸に直交する方向から見た模式図であり、(B)は上記光軸沿いの方向から見た模式図である。
【図4】上記第1実施形態のレーザ加工装置における変形例にかかる回折型光学素子の構成を示す模式図であり、(A)はレーザ光の光軸に直交する方向から見た模式図であり、(B)は上記光軸沿いの方向から見た模式図である。
【図5】光電変換素子部にて受光される境界回折波の光強度パターンを示す図であり、(A)は正常状態であり、(B)は出力パワーが低下した状態であり、(C)は出射方向が変化した状態であり、(D)は波面分布が変化した状態である。
【図6】従来の回折光を用いたレーザ光の検出方法を示す模式説明図である。
【図7】従来のレーザ光の検出方法を示す模式説明図である。
【図8】上記第1実施形態のレーザ加工装置における光電変換素子部の構成を示す模式説明図である。
【図9】上記第1実施形態のレーザ加工装置における加工品質判定部の構成を示すブロック図である。
【図10】上記加工品質判定部における加工品質の判定手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…レーザ発振器、2…レーザ光伝送部、3…レーザ光集光部、4…被加工対象物、5…マスク像投影型レーザ光集光部、6、6a及び6b…レーザ光、7…レーザ光分岐部、8…回折型光学素子、9…光電変換素子部、10…光学素子基板、11…遮光部、12…中心軸、13…波面、14及び17…透過光、15…境界回折波、16…透光部、20及び50…レーザ加工装置、30…素子プレート、31…中央光電変換素子、32A及びB…左右方向光電変換素子、33A及びB…上下方向光電変換素子、40…加工品質判定部、41…演算部、42…出力部、43…メモリ部、44…データベース部、P0…主ピーク、P1…第1サイドピーク。
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ光による被加対象物の精密加工を行うレーザ加工におけるレーザ検出に関するものであり,特に、レーザ発振器から出射されるレーザ光の出力パワーや出射方向等のレーザの出射精度を検出しながら、上記被対象物の加工を行なう際に用いられるレーザ検出方法、レーザ加工方法、及びレーザ加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のレーザ光検出方法等は、様々なものが知られている。例えば、従来のレーザ光の検出を用いたレーザ加工装置の概念図を図7に示す(例えば、特許文献1参照)。図7に示すように、レーザ加工装置100は、レーザ発振器106と、レーザ発振器106より出射されたレーザ光をスポット状に集光する集光系104と、上記集光系104にて集光されたレーザ光を、スポット状にて非加工物102に照射可能に反射するビーム走査ミラー105と、被加工物102を加工可能に保持する試料設置台103とを備えている。また、図7に示すように、試料設置台103は、図示上下方向に配置された回転中心回りに自転可能となっている。また、試料設置台103の上面には、さらに、多数のCCD素子101が、被加工物102の被加工面とその設置高さ位置を同じとされて配置されており、試料設置台103の上記自転により、夫々のCCD素子101と被加工物102とのいずれか一方がレーザ光に照射されるように、互いの配置の切替えが可能となっている。また、ビーム走査ミラー105は、その反射角度が可変可能となっており、当該角度を可変させることにより、被加工物102の上記被加工面上においてレーザ光を走査させながら照射して、必要なパターンを形成することが可能となっている。また、試料設置台103の図示左側端部には、試料設置台103における上記被加工面の高さ方向及び水平方向の位置合わせを設定可能な面設定ガイド107が備えられており、集光されたレーザ光を上記スポット状にて確実に上記被加工面に照射させることが可能となっている。
【0003】
このような構成のレーザ加工装置100において、被加工物102の加工を行なう手順について説明する。
【0004】
まず、レーザ加工装置100において、試料設置台103をその回転中心回りに自転させて、レーザ光の照射位置に夫々のCCD素子101を配置させる。その後、レーザ発振器106よりレーザ光が出射させて集光系104により集光されたレーザ光が、ビーム走査ミラー105により反射されて、スポット状にて一部のCCD素子101に照射される。これにより、照射されたレーザ光のスポット位置が測定される。
【0005】
ここで、照射されるレーザ光は、そのビームエネルギーが強いため、図示されていないニュートラルフィルタが夫々のCCD素子101の上面に設置されており、エネルギーを低減して照射されるようになっている。
【0006】
また、夫々のCCD素子101としては、10μmピッチで配列された2次元アレイCCD素子が用いられているため、測定位置の分解能は略その値、すなわち、10μm程度となっている。また、夫々のCCD素子101は、レーザ光、すなわち、紫外光を観測することを目的としているため、カラー用素子ではなく、白黒用素子が用いられており、測定されるレーザ光のエネルギー強度を白黒の明るさで表示するとともに、図示していない表示部では、切り替えにより、疑似カラー表示もできるように構成されている。すなわち、測定されるレーザ光のエネルギー強度分布を色で区別して表示することが可能となっている。
【0007】
さらに、上記一部のCCD素子101にレーザ光が照射されて、そのスポット位置及び強度分布が測定された状態において、ビーム走査ミラー105の角度を可変させることにより、夫々のCCD素子101にレーザ光を走査させることにより、上記走査時における強度分布の状況をも測定することができる。
【0008】
このようにして、レーザ光のスポット位置、強度、及び走査時の強度分布等の状況の測定を行ない、加工工程に移ってよいと判断されれば、試料設置台103をその回転中心回りに自転させて、被加工物102をレーザ光の照射位置に配置させる。このとき、予め、面設定ガイド107で、高さ方向及び水平方向の位置を調整しておくことにより、夫々のCCD素子101の上面が位置された位置に、被加工物102の上記被加工面を精度よく位置させることができる。その後、被加工物102にレーザ光を照射して、被加工物102の加工が行なわれる。
【0009】
次に、従来のレーザ加工において用いられる回折光を用いたレーザ光の検出方法について、その概略構成を示す説明図を図6に示す(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
図6に示すように、このレーザ光の検出方法においては、レーザ光111の光軸112上に配置された矩形スリット113が用いられ、レーザ光111が矩形スリット113を通過することにより発生する回折光114を4分割ディテクタ115で受光することにより、レーザ光の光軸の偏差を検出を行なうというものである。
【0011】
また、図6に示すように、矩形スリット113の開口の大きさは、レーザ光111のビーム径の半分程度の大きさに形成されている。また、4分割ディテクタ115の上記受光側表面には、図示左右及び上下に受光素子が取り付けられており、夫々の受光素子において回折光114が受光されることにより検出される検出信号の差信号を使用して、図示左右方向及び上下方向のレーザ光の光軸の偏差の検出を行なうことが可能となっている。
【0012】
また、図6においては、左右方向の信号処理系しか示していないが上下方向についても同様の信号処理系が備えられており、上記差信号の処理を行うことが可能となっている。レーザ光111は光軸112に対して軸対称なので、光軸112が矩形スリット113の中心に一致した場合のみ、上記上下方向及び上記左右方向の夫々の差信号はゼロとなる。一方、上記光軸112が矩形スリット113の中心に対して、上記いずれかの方向に偏りのある場合には、その偏りのある側に発生する回折光114の強度が強くなり、回折光114の強度バランスがくずれて差信号が発生することとなる。なお、4分割ディテクタ115の中心に照射される0次光は遮光板を置きカットされるため、4分割ディテクタ115に受光されることはない。
【0013】
このようなレーザ光の検出方法において、例えば、レーザ光の波長を0.53μm、矩形スリット113の開口部(略正方形状である)の一辺を0.5mmとすると、回折光114の発生する方向は光軸112に対して、1次回折光の場合約0.09°、2次回折光の場合約0.15°傾いた方向である。矩形スリット113から30cm離れた場所に4分割ディテクタ115を配置すると、左右及び上下の夫々の方向における1次回折光間の4分割ディテクタ115の受光面での距離は約0.94mmとなるが、これは左右又は上下のいずれかの方向に十分に分離して検出することができる距離である。このようにして、回折光114を用いてレーザ光111の光軸調整を行っている。
【0014】
【特許文献1】
特開平5−228670号公報
【特許文献2】
特開平5−138383号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、レーザ加工に対する加工品質要求は年々厳しいものになってきており、熱加工としての波長的限界水準の加工孔径や、被加工物上の加工位置精度が、被加工物を載置して被加工物とレーザ光の相対位置を変化させるステージ(例えば、試料設置台103の)位置精度に限りなく近いものとなってきている。
【0016】
そのため、従来検出してきたレーザ光の出力パワー変動のみの検出では、上記水準の加工孔径や加工位置精度を満たせなくなってきたという問題がある。具体的には、レーザ光の出射方向の数ミリラジアン程度の変化も、出射されたレーザ光を集光系104等に伝送するレーザ光伝送部のレーザ光変換機能等の増大により、この程度の変化でも被加工物上の加工位置精度を満たせない場合があるという問題がある。また、レーザ発振器106から出射されるレーザ光の波面分布変動や、上記レーザ光伝送部での透過・反射光学素子による波面分布変化によって、特にマスク像投影型のレーザ光集光系においては、熱加工としての波長的限界水準の加工孔径を安定して得ることができないという問題がある。
【0017】
また、レーザ加工においては、複数の被加工物に対して順次加工を施して行くこととなるが、個々の被加工物の加工の良否判定については、レーザ加工の際に、個別に行なわれるのではなく、最終工程を経た後の完成品の検査において行なわれいるため、当該加工の際に、レーザ光の照射精度の変動が発生していた場合には、レーザ加工における工程に無駄が大きく生じることとなるという問題がある。また、個々の被加工物においても、被加工物のどの位置で上記変動により加工品質が低下したか、また、夫々の被加工物のうちのどの被加工物において、上記変動が発生して加工品質低下が発生したのかを、定量的に推定することができず、レーザ加工における作業効率を向上させることができないという問題がある。
【0018】
従って、本発明の目的は、レーザ光による被加対象物の加工を行うレーザ加工におけるレーザ検出において、出射されるレーザ光の出力パワー、出射方向、及び波面分布の夫々の変化状態を検出することができるとともに、当該検出結果を用いて、上記被加工対象物の加工品質を推定することを可能とするレーザ検出方法、レーザ加工方法、及びレーザ加工装置を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0020】
本発明の第1の発明によれば、出射されるレーザ光の光軸が位置されるべき軸を遮光の中心軸として、上記中心軸に直交する遮光平面において、上記レーザ光の一部を遮光して、上記遮光により発生する回折光を、上記遮光の中心軸に直交する平面において受光し、
上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置に対する強度分布の対称性を検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出することを特徴とするレーザ検出方法を提供する。
【0021】
また、上記第1の発明のレーザ検出方法において、上記受光の平面における上記強度分布の対称性に加えて、さらに、上記回折光の強度、及び上記強度の上記最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々を同時に検出することができる。
【0022】
本発明の第2の発明によれば、出射されるレーザ光の光軸が位置されるべき軸を位相シフトの中心軸として、上記中心軸に直交する位相シフト平面において、上記レーザ光の一部の光の位相のシフトを行なって、上記位相のシフトにより発生する回折光を、上記位相シフトの中心軸に直交する平面において受光し、
上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置に対する強度分布の対称性を検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出することを特徴とするレーザ検出方法を提供する。
【0023】
また、上記第2の発明のレーザ検出方法において、上記受光の平面における上記強度分布の対称性に加えて、さらに、上記回折光の強度、及び上記強度の上記最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々を同時に検出することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる実施の形態を説明するにあたって、まず、本明細書で用いられている用語の定義を説明する。
【0025】
用語「位相のシフト」あるいは「位相シフト」とは、光に対して部分的に光学長の異なりを生じさせることにより、上記光の当該部分の位相と他の部分の位相との間に位相の位置ずれを生じさせることをいう。
【0026】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態にかかるレーザ加工装置の一例であるレーザ加工装置20の概略構成を模式的に示す模式説明図を図1に示す。なお、レーザ加工装置20においては、本発明にかかるレーザ検出方法及びレーザ加工方法を行なうことが可能となっている。
【0028】
図1に示すように、レーザ加工装置20は、レーザ発振器1と、レーザ発振器1より出射(あるいは発振)されたレーザ光6を伝播させるレーザ光伝送部2と、レーザ光伝送部2より伝播されるレーザ光6を、被加工対象物4の加工表面にスポット状に照射可能に集光するレーザ光集光部3とを備えている。また、レーザ加工装置20は、被加工対象物4の加工のために照射されるレーザ光の出射状態の検出を行なうレーザ光検出部20aを備えている。レーザ光検出部20aは、レーザ光集光部3のレーザ発振器1側、具体的には、レーザ光集光部3とレーザ光伝送部2との間に配置され、上記出射されたレーザ光6の一部を上記検出用として分岐するレーザ光分岐部7と、上記分岐された一部のレーザ光よりの回折光を発生させる回折型光学素子8と、上記回折光を受光することにより、上記レーザ光の出射状態を検出することができる光電変換素子部9とを備えている。
【0029】
レーザ発振器1より出射されるレーザ光6は、ガウス分布状のエネルギー分布を有しており、その光軸に対して略軸対称な分布を有している。また、このレーザ光6は、連続波あるいはパルス波となっている。レーザ光6としては、例えば、炭酸ガスレーザ、Nd,Yb,Er等がドープされたYAGレーザやその高調波レーザ、アルゴンレーザ、Tiがドープされたサファイアレーザ、又は、He−Cdレーザ等がある。
【0030】
レーザ光伝送部2は、レーザ加工装置20のレイアウトにより決定されるレーザ光6の伝播ルートに基づいて配置された1又は複数の折返しミラー(図示しない)やレーザ光6のビーム径を変換可能な少なくとも1枚以上のレンズ(図示しない)や、上記折返しミラーや上記レンズ等で発生する散乱光を遮光する開口等(図示しない)を備えて構成されている。
【0031】
レーザ光集光部3は、図示しない少なくとも1枚以上のレンズを備えており、入光されるレーザ光を、所望のビーム径、ビームパターンに変換して、被加工対象物4に照射することが可能となっている。
【0032】
レーザ光分岐部7は、例えば、ビームスプリッター、偏光ビームスプリッター、ウェッジ板、又は、ウィンドウ板を備えており(いずれも図示しない)であり、入射されるレーザ光6の一部として、例えば、レーザ加工に大きな影響を与えない程度のエネルギーとして約10%以下のエネルギーを分岐することが可能となっている。なお、レーザ光分岐部7において、上記一部として分岐されたレーザ光をレーザ光6a(レーザ光6aは分岐された一方のレーザ光の一例である)とし、そのままレーザ光集光部3に入射される残りのレーザ光をレーザ光6b(レーザ光6bは分岐された他方のレーザ光の一例である)とする。なお、分岐されたレーザ光6aは、レーザ光集光部3に入射されて被加工対象物4の加工用として用いられることなく、回折型光学素子8に入射されて、その出射状態の検出用として用いられることとなる。
【0033】
レーザ加工装置20において、被加工対象物4は、図示しないステージ等に解除可能に保持されている。なお、レーザ光検出部20aにおける回折型光学素子8と光電変換素子部9の詳細な構造についての説明については後述する。
【0034】
次に、このような構成のレーザ加工装置20におけるレーザ光6bの照射による被加工対象物4の加工動作について説明する。
【0035】
まず、図1におけるレーザ加工装置20において、上記図示しないステージに被加工対象物4を解除可能に保持させる。その後、レーザ発振器1を駆動させて、レーザ光6をレーザ光伝送部2に向けて発振して出射する。レーザ光伝送部2に入射されたレーザ光6は、上記1又は複数の折返しミラーによりその伝播ルートに従って伝送させるとともに、上記レンズにより所望のビーム径に変換された状態で、レーザ光分岐部7に向けて出射される。
【0036】
レーザ光分岐部7に入射されたレーザ光6は、その一部がレーザ光6aとして分岐されて、回折型光学素子8に向けて出射されるとともに、当該分岐された残りのレーザ光6bはそのままレーザ光集光部3に向けて出射される。レーザ光集光部3に入射されたレーザ光6bは、集光されてスポット状にて、上記ステージに保持されている被加工対象物4の加工表面に照射される。
【0037】
被加工対象物4の加工表面に照射されたレーザ光6bは、被加工対象物4に吸収されることで被加工対象物4を局所的に加熱し、溶融、蒸発、又は昇華させることにより、被加工対象物4の加工が行なわれる。また、非常に短時間のパルス波(10ピコ秒以下)を有するようなレーザ光6が用いられるような場合にあっては、被加工対象物4が、当該レーザ光6の波長に対して透明であるような場合であっても、当該レーザ光6が有する高い光電界により、絶縁破壊や被加工対象物4内のわずかな不純物での吸収を基に、上記被加工対象物4の加工を行うことが可能である。一方、回折型光学素子8に入射されたレーザ光6aは、後述するように、光電変換素子部9にて、その出射状態が検出されることとなる。
【0038】
次に、レーザ光検出部20aにおける回折型光学素子8及び光電変換素子部9の構成について詳細に説明する。
【0039】
図3は、円盤形状を有する回折型光学素子8の概略構成を示す模式説明図であり、(A)はレーザ光6aの光軸と直交する方向から見た状態を示し、(B)は上記光軸沿いの方向から見た状態である。なお、図3(A)においては、図示左側から右側に向けて、レーザ光6aが伝播される。また、図3(B)は、断面図ではないが、説明の便宜上、遮光部11にハッチングを施した図としている。
【0040】
図3(A)及び(B)に示すように、回折型光学素子8は、略円盤状の形状を有しており、上記分岐されたレーザ光6aの光軸が位置されるべき軸上(すなわち、仮想直線上)に、その中心軸12が位置されるように配置されている。また、回折型光学素子8は、レーザ光6aの波長に対して透明である(すなわち、光学的透過性を有する)円盤状の光学素子基板10と、レーザ光6aの波長に対して不透明であり、レーザ光6aを透過させることなく吸収又は反射する材料により光学素子基板10の表面に形成され、かつ、光学素子基板10の径よりも小さな径を有する円盤状の遮光部11とを備えている。また、光学素子基板10と遮光部11との夫々の中心は、中心軸12上に配置されている。なお、図3(A)に示すように、遮光部11は、光学素子基板10の図示左側の表面、すなわち、レーザ光6aの入射側表面に形成されているが、このような場合に代えて、図示右側の表面、すなわち、レーザ光6aの出射側表面に形成されている場合であってもよく、さらに、光学素子基板10の夫々の表面の間に形成されているような場合であってもよい。また、遮光部11の円形状の表面が、遮光平面の一例となっており、中心軸12が遮光の中心軸の一例となっている。さらに、遮光部11の上記表面が中心軸12と直交するように、遮光部11は配置されている。
【0041】
光学素子基板10は、その円盤状の両面の互いの平行度が、レーザ光6の波長の1/20程度の形成精度を有するように形成されている。また、遮光部11は、例えば、フォトリソグラフ、マスク蒸着、又はスパッタ等の手段で、光学素子基板10の表面に金属材料により形成された円形状の単層あるいは多層の構造を有している。また、遮光部11の直径は、入射される上記分岐されたレーザ光6aのビーム径よりも小さく形成、すなわち、レーザ光6aの一部が遮光部11において遮光されて、その周囲のレーザ光6aが遮光されることなく通過されるように、上記直径が設定されることが望ましい。具体的には、入射される上記分岐されたレーザ光6aのピーク強度に対する1/e2のビーム径からその半値(50%)程度の範囲のいずれかの寸法を採用することが好ましく、より好ましくは上記半値程度の寸法を採用することが望ましい。このような範囲とされることにより、発生される回折光のサイドピークの強度を十分に取ることができ、上記回折光の検出後の分解能及びS/N比を向上させることができるため、上記回折光の検出を良好なものとすることができるという利点がある。また、光学素子基板10の直径は、上記分岐されたレーザ光6aのピーク強度に対する1/e2のビーム径の3倍以上程度の寸法とされることが望ましい。なお、遮光部11はその形状が略真円形状であることが好ましいが、このような場合に代えて、円形状に近い多角形状であるような場合であってもよい。
【0042】
また、光学素子基板10の形成材料としては、例えば、透明材料である光学材料として、紫外光のレーザ光6に対しては、石英、又はBK7等が用いられ、一方、赤外光のレーザ光6に対しては、ジンクセレン(ZnSe)、又はゲルマニウム等が用いられる。また、遮光部11の形成材料としては、例えば、レーザ光6aを透過させることなく遮断することができる上記金属材料として、アルミニウム、銅、又はクロム等が用いられる。また、光学素子基板10の夫々の表面には、入射されるレーザ光6aの反射を防止するために、反射防止膜が形成されていることが望ましく、さらに、夫々の表面における光の反射をより低減させるべく、夫々の表面の面粗さが円滑となるように、例えば、レーザ光6の波長の1/20程度の面粗さとなるように、表面仕上げが施されていることがより好ましい。
【0043】
このような構成の回折型光学素子8において、上記分岐されたレーザ光6aは、例えば、図3(A)に示すような連続された複数の波面13を持って、その光軸(すなわち、回折型光学素子8の中心軸12と一致するように配置されているはずの上記光軸)に沿って、遮光部11が形成されている光学素子基板10に入射する。遮光部11上に照射されたレーザ光6aは、当然のことながら透過することはできず遮断される。この遮断(あるいは遮光)により、遮光部11の円形状の端部において回折光である境界回折波15が発生する。また、遮光部11以外の部分では、レーザ光6aが遮断されることなく、光学素子基板10を透過して、透過光14が発生する。
【0044】
幾何光学的には、図3(A)に示す光学素子基板10の右側における遮光部11の影の内部では、レーザ光6aに起因する光が存在しないはずであるが、境界回折波15である遮光部11の端部から発生する球面波が、この影の内部に回りこむ。また、上記影の内部における中心軸12に直交する平面上での光強度は、遮光部11の円形状の端部からの上記球面波の波動光学的な重ね合わせとなり、遮光部11の上記端部での波面と相関のあるものとなる。
【0045】
次に、光電変換素子部9の概略構成を示す模式説明図を図8に示す。図8に示すように、光電変換素子部9は、略円盤状の形状を有しており、その円盤状の中心が、回折型光学素子8の中心軸12上に位置するように配置されている。また、光電変換素子部9は、光を受光可能な複数の光電変換素子と、夫々の上記光電変換素子がその表面に配置して保持する円盤状の素子プレート30とを備えている。図8に示すように、上記夫々の光電変換素子として、素子プレート30の中央部分には中央光電変換素子31が、この中央光電変換素子31を挟んでその図示上下の夫々の方向には、上下方向光電変換素子33A及び33Bが、中央光電変換素子31を挟んでその図示左右の夫々の方向には、左右方向光電変換素子32A及び32Bが配置されている。また、素子プレート30と夫々の光電変換素子31、32A、32B、33A、及び33Bは、夫々の表面が中心軸12と直交するように配置されている。なお、夫々の光電変換素子31、32A、32B、33A、及び33Bが回折光を検出ずることにより、レーザ光6を検出することができるという機能を奏する限りにおいて、中心軸12との上記直交関係に多少のズレが生じるような場合(すなわち、略直交するような場合)であってもよい。
【0046】
夫々の光電変換素子31、32A、32B、33A、及び33Bは、光が照射されて受光することにより、その受光された光の強度に応じた信号強度を有する電気信号を出力する機能を有している。このような光電変換素子としては、例えば、HgCdTe素子やSi素子などが受光から電気信号の出力(以降、電気出力という)までの時間応答性の観点から好適であるが、このような時間応答性を考慮しない場合には、熱電対も使用可能である。
【0047】
ここで、回折型光学素子8の中心軸12に直交する平面における境界回折波15の光強度分布と、素子プレート30における夫々の光電変換素子31、32A、32B、33A、及び33Bの配置との関係について説明する。まず、境界回折波15の上記平面における光強度分布を、図5(A)に示す。図5(A)においては、横軸が中心軸12を基準位置とした対称方向の上記平面上の位置を示しており、縦軸は任意単位の光強度を示している。図5(A)に示すように、境界回折波15の光強度分布は、理想的には円筒関数的な分布となっており、具体的には、中心軸12に該当する位置、すなわち、レーザ光6aの光軸位置において、主ピークP0となっており、さらに、この主ピークP0の位置を挟むようにして夫々の対称な位置に、次数の異なる複数のサイドピーク、例えば、第1サイドピークP1、第2サイドピークP2等が存在している。
【0048】
従って、このような境界回折波15の光強度分布の特徴を検出するためには、図8に示すように、素子プレート30の中央に中央光電変換素子31を配置し、第1サイドピークP1が検出されるべく同一円周上に、図示上下及び左右の夫々の方向に少なくとも4つの光電変換素子である夫々の左右方向光電変換素子32A及び32Bと、上下方向光電変換素子33A及び33Bとを配置させることが望ましい。このように配置させることで、上記境界回折波15の光強度分布における主ピークP0の光強度を中央光電変換素子31により検出することができ、また、第1サイドピークP1の光強度を4つの光電変換素子32A、32B、33A、及び33Bにより検出することができるからである。また、第1サイドピークP1の上記同一円周上に、さらに多数の光電変換素子を配置させるような場合にあっては、上記光強度の検出精度をより向上させることができる。さらに、第1サイドピークP1だけではなく、第2サイドピークP2等を検出可能な位置に光電変換素子を配置させるような場合にあっては、さらに上記光強度の検出精度を向上させることができる。また、夫々の光電変換素子31、32A、32B、33A、及び33Bは、光の受光を検出可能な電気出力を確保することができる最小受光面積を有するような光電変換素子を用いることが好ましい。なお、夫々の光電変換素子31、32A、32B、33A、及び33Bの表面が、受光の平面の一例となっている。
【0049】
なお、図3(A)に示すように、境界回折波15は遮光部11の円形状の端部で発生するが,その端部の形状は、理想的には中心軸12と略平行な面を形成するようにすることが望ましい。このような場合にあっては、当該端部より発生される境界回折波15の伝播特性を理論的なものとすることができ、光電変換素子部9における夫々の光電変換素子31、32A、32B、33A、及び33Bの夫々の配置を理論的に決定することができる。しかしながら、上述したように、遮光部11は、光学素子基板10の表面上にスパッタ等の手段で形成されているため、当該端部の形状を上記理想的なものとすることは困難であり、実際には、中心軸12に対して僅かに傾斜された面(すなわち、テーパ状の面)を形成することとなる。このような場合にあっては、当該端部において境界回折波15の発生は、上記傾斜された面上の複数点からのものとなるため、境界回折波15の伝播特性は複雑なものとなってしまう。従って、夫々の光電変換素子31、32A、32B、33A、及び33Bの最適な配置設置の決定にあたっては、実験的に求めることが好適である。
【0050】
次に、このような構成の回折型光学素子8及び光電変換素子部9により発生されて検出されるレーザ光6aの境界回折波15の様々な光強度パターンについて、図5(B)から図5(D)に示す光強度の分布図を用いて説明する。
【0051】
まず、被加工対象物4に対して良好な加工が行われている場合の境界回折波15の光強度パターンが図5(A)とすると、レーザ光6がレーザ光伝送部2を伝播後にそのエネルギーが低下した場合の境界回折波15の光強度パターンは、その波形形状が保持されるものの、全体的な強度が低下されたものとなる。このような光強度パターンの例を図5(B)に示す。また、このようにレーザ光6の出力パワーの低下が発生したような場合にあっては、光電変換素子部9において、夫々の光電変換素子31、32A、32B、33A、及び33Bの間の電気出力比は変化せず、全体的に電気出力量が低下することとなり、このような低下の発生を検出することにより、当該出力パワーの低下の発生を検出することができる。
【0052】
また、レーザ光6がレーザ光伝送部2を伝播後にその出射方向が変化した場合の境界回折波15の光強度パターンの例を図5(C)に示す。このような場合にあっては、回折型光学素子8に入射されるレーザ光6aの光軸が、回折型光学素子8の中心軸12に対して傾くこととなるため、遮光部11に照射されるレーザ光6aの夫々の波面13も傾いたものとなる。従って、図5(C)に示すように、その光強度パターンは、中心軸12に対するその最大強度の位置である主ピークP0の位置が変化し、第1サイドピークP1及び第2サイドピークP2等の夫々の光強度が、主ピークP0に対して非対称なものとなる。また、このようにレーザ光6の出射方向が変化したような場合にあっては、光電変換素子部9において、中央光電変換素子31の電気出力が低下して、さらに、左右方向光電変換素子32A及び32Bとの間、あるいは、上下方向光電変換素子33A及び33Bとの間、あるいは、夫々の左右方向光電変換素子32A及び32Bと夫々の上下方向光電変換素子33A及び33Bとの間において、電気出力比の変化が発生することとなり、当該変化の発生を検出することができる。
【0053】
さらに、レーザ光6がレーザ光伝送部2を伝播後にその波面13の分布が変化した場合の境界回折波15の光強度パターンの例を図5(D)に示す。このような場合にあっては、図5(D)に示すように、その光強度パターンは、主ピークP0、第1サイドピークP1及び第2サイドピークP2等の位置は、図5(A)の場合と比べてほとんど変化しないものの、境界回折波15の重ね合わせ状態が変化するため、夫々のピークにおける光強度が変化したものとなる。また、このようにレーザ光6の波面分布が変化したような場合にあっては、光電変換素子部9において、中央光電変換素子31の電気出力が変化しない場合であっても、左右方向光電変換素子32A及び32Bとの間、あるいは、上下方向光電変換素子33A及び33Bとの間、あるいは、夫々の左右方向光電変換素子32A及び32Bと夫々の上下方向光電変換素子33A及び33Bとの間において、電気出力比の変化が発生することとなり、当該変化の発生を検出することができる。
【0054】
このように回折型光学素子8で発生された境界回折波15を、光電変換素子部9で受光して、その光強度パターンとして検出して、特にその時間的変化を図5(A)に示す正常な状態の光強度パターンと比較することにより、レーザ光伝送部2を伝播後のレーザ光6のエネルギー(出力パワー)、出射方向,波面分布の夫々の変動の発生有無とその変化量を相対的に検出することが可能となる。具体的には、上記検出された光強度パターンと上記図5(A)に示す正常な状態の光強度パターンとにおいて、境界回折波15の光強度を比較することにより、レーザ光6のエネルギー(出力パワー)の変動及びその変化量を検出することができ、上記光強度における最大位置である主ピークP0の位置と中心軸12との位置ずれを比較することにより、レーザ光6の出射方向の変動及びその変化量を検出することができ、さらに、主ピークP0の位置に対する強度分布の対称性として、夫々の第1サイドピークP1及び夫々の第2サイドピークP2の互いの光強度の対称性を比較することにより、レーザ光6の波面分布の変動及びその変化量を検出することができる。
【0055】
また、レーザ加工装置20においては、さらに、レーザ分岐部7と回折型光学素子8との間におけるレーザ光6aの光軸上、あるいは、回折型光学素子8と光電変換素子部9との間におけるレーザ光6aの光軸上に、レンズ等を挿入して、回折型光学素子8に入射するレーザ光6aのビーム径や波面の制御を行うことや、光電変換素子部9に入射する回折波パターンのサイズを制御を行なうような場合であってもよい。このような制御を行うことにより、光電変換素子部9にて受光される境界回折波15の受光状態を、その光強度パターンの検出にあたって、最適な状態とすることができる場合もあるからである。
【0056】
ここで、レーザ加工装置20において、レーザ発振器1より出射されるレーザ光6に対して、その出力パワー、出射方向、及び、波面分布の夫々の変化が発生する一般的な要因について説明する。
【0057】
まず、レーザ光の出力パワーの変化は、例えば、レーザ発振のための反転分布を発生させるための励起に起因して発生する。すなわち、励起エネルギーの変動の発生が、略直接的にレーザ光の出力パワーの変化の発生に結び付くこととなる。
【0058】
また、レーザ光は空間的分布を持つため、その励起も空間的分布を持つことになる。このため、例えば、励起エネルギーが空間的に均一でない場合においては、励起エネルギーによる被励起媒質である固体やガス媒質に瞬間的にかつ時間的に熱分布が生じることとなる。この熱分布は媒質の屈折率変化を誘起するため、このような場合にあっては、媒質がレンズ的な役割を果たすこととなって、レーザ光の出射方向の変化を引き起こすこととなる。
【0059】
さらに、媒質の空間的な屈折率の変化は、この空間を通過するレーザ光に対して、不均一な光学長を与えることとなる。このような不均一な光学長の付与は、レーザ光の波面分布の変化を発生させることとなる。なお、このようなレーザ光の波面分布の変化や出射方向の変化は、上述のような要因に限定されることなく、その他の要因によっても発生し得る。
【0060】
例えば、レーザ加工装置を構成する際に、レーザ発振器から被加工材料に至るまでには、種々の光学部品が用いられている。例えば、折り返しミラー、伝送レンズ、さらに集光(投影)レンズ等である。これらの光学部品は当前のことながら、何らかの治具に支持(あるいは保持)されているが、この支持に非対称性(すなわち、レーザ光の光軸に対する非対称性)やひずみがあるような場合にあっては、外部からの熱や振動によって、空間的に非対称的な変動をもたらすこととなる。このような空間的な非対称的変動は、伝播するレーザ光の出射方向や波面分布に変動をもたらす要因となる。
【0061】
(回折型光学素子の変形例について)
次に、上述において説明した回折型光学素子8とは、異なる構成を有する回折型光学素子について説明する。このような回折型光学素子の一例として、円盤形状を有する回折型光学素子18の概略構成を示す模式説明図を図4に示す。なお、図4において、(A)はレーザ光6aの光軸と直交する方向から見た状態を示し、(B)は上記光軸沿いの方向から見た状態を示す。なお、図4に示す回折型光学素子18のうち、図3に示す回折型光学素子8と同じ構成部分については、同一の符号を用いて説明するものとする。なお、図4(A)においては、図示左側から右側に向けて、レーザ光6aが伝播される。また、図4(B)は断面図ではないが、説明の便宜上、透光部16にハッチングを施した図としている。
【0062】
図4(A)及び(B)に示すように、回折型光学素子18は、略円盤状の形状を有しており、上記分岐されたレーザ光6aの光軸が位置されるべき軸上に、その中心軸12が位置されるように配置されている。また、回折型光学素子18は、レーザ光6aの波長に対して透明である(すなわち、光学的透過性を有する)円盤状の光学素子基板10と、レーザ光6aの波長に対して透明であり(すなわち、光学的透過性を有し)、レーザ光6aを遮光することなく、透過させる材料により光学素子基板10の表面に形成され、かつ、光学素子基板10の径よりも小さな径を有する円盤状の透光部16とを備えている。
【0063】
また、透光部16は、例えば、切削加工、フォトリソグラフ、マスク蒸着、又はスパッタ等の手段で、光学素子基板10の表面に、上記光透過性の材料により形成された円形状の単層あるいは多層の構造を有している。なお、この透光部16の上記構造は、光学素子基板10の形成材料と同一の材料あるいは異種材料により形成された単層構造、又は、上記同一の材料と上記異種材料との多層構造、又は、上記異種材料同士の多層構造のいずれであってもよい。また、透光部16の上記光透過性の形成材料としては、例えば、光学材料として、紫外光のレーザ光6に対しては、石英、又はBK7等が用いられ、一方、赤外光のレーザ光6に対しては、ジンクセレン(ZnSe)、又はゲルマニウム等が用いられる。なお、光学素子基板10の夫々の表面と同様に、透光部16の夫々の表面にも、入射されるレーザ光6aの反射を防止するために、反射防止膜が形成されていることが望ましい。
【0064】
また、回折型光学素子8における遮光部11の直径と同様に、透光部16の直径は、入射される上記分岐されたレーザ光6aのピーク強度に対する1/e2のビーム径からその半値(50%)程度の範囲のいずれかの寸法を採用することが好ましく、より好ましくは上記半値程度の寸法を採用することが望ましい。
【0065】
また、図4(A)に示すように、透光部16は、光学素子基板10の図示左側の表面、すなわち、レーザ光6aの入射側表面に形成されているが、このような場合に代えて、図示右側の表面、すなわち、レーザ光6aの出射側表面に形成されている場合であってもよい。
【0066】
このような構成の回折型光学素子18において、上記分岐されたレーザ光6aは、例えば、図4(A)に示すような連続された複数の波面13を持って、その光軸に沿って、透光部16が形成されている光学素子基板10に入射する。光学素子基板10の表面に照射されたレーザ光6aは、透光部16が形成されている部分も含めて透過することとなる。ところが、光学素子基板10において、透光部16及び光学素子基板10を透過した透過光17と、光学素子基板10のみを透過した透過光14との間では、夫々の位相関係が異なることとなる。これは、光学素子基板10が形成されている分だけ、その光学長の異なりが発生するためである。これにより、透過光14と透過光17との間に位相ずれ、すなわち、いわゆる位相のシフトが発生する。この位相のシフトの発生により、透光部16の端部において境界回折波15が、遮光部11の場合と同様に発生する。ただし、回折型光学素子18においては、光学素子基板10の表面に形成されている透光部16においてもレーザ光6aを透過させるため、上記発生された境界回折波15は、その上記球面波の波動光学的な重ね合わせとなるだけでなく、透過光14及び透過光17ともさらに重ね合わさることとなる。
【0067】
また、透光部16を用いた場合の境界回折波15の光強度パターンは、遮光部11を用いた場合と略同一であり、その検出方法も同様である。なお、上記位相のシフトを有効に発生させるため、透光部16の光学長Lは、レーザ光の波長をλとした場合に、L=(n+1/2)λ;(ただし、nは整数)(すなわち、半波長(180度))として決定されることが望ましい。さらに,境界回折波15と透過光14及び17との重ね合わせを考慮する場合には、光学素子基板10に入射されるレーザ光6aの波面13は単純な方が好ましく、すなわち、回折型光学素子18をレーザ光6aのビームウエスト位置(波面曲率=平面、無限大)に配置させることが望ましい。なお、透光部16の円形状の表面が位相シフト平面の一例となっており、また、中心軸12が位相シフトの中心軸の一例となっている。さらに、透光部16の上記平面が中心軸12と直交するように、透過光16は配置されている。
【0068】
このように、回折型光学素子8に代えて、回折型光学素子18を用いるような場合にあっては、より精度の高い上記検出を行うことができる。具体的には、図3に示す回折型光学素子8においては、遮光部11によりレーザ光6aの一部を遮光することにより、境界回折波15を発生させているが、この境界回折波15の発生は遮光部11の端部のみからであり、レーザ光6aの波面全体を完全に反映したものではない。しかしながら、図4に示す回折型光学素子18においては、発生された境界回折波15に対して、さらに透過光14及び17を重ね合わせることができる。従って、境界回折波15の光強度パターンには、透過光14及び17も反映されることとなるため、レーザ光6aの波面13全体が上記光強度パターンに影響を与え、さらに精度の高い検出が可能となる。
【0069】
また、遮光部11と同様に、透光部16は、光学素子基板10の表面上にスパッタ等の手段で形成されているため、当該端部の形状を上記理想的なもの(すなわち、当該端部により中心軸12と略平行な面が形成されるような形状)とすることは困難であり、実際には、中心軸12に対して僅かに傾斜された面(すなわち、テーパ状の面)を形成することとなる。このような場合にあっては、当該端部において境界回折波15の発生は、上記傾斜された面上の複数点からのものとなるため、境界回折波15の伝播特性は複雑なものとなってしまう。従って、夫々の光電変換素子31、32A、32B、33A、及び33Bの最適な配置設置の決定にあたっては、実験的に求めることが好適である。
【0070】
なお、このような光電変換素子の一例として多数のCCDが光学素子基板10の表面全体に配置されて、光学素子基板10の表面全体において受光される境界回折波15の光強度パターンが検出されるような場合であってもよい。
【0071】
(光電変換素子部の出力処理について)
上述のような構成を有するレーザ加工装置20においては、光電変換素子部9にて検出されたレーザ6の夫々の変化状態に基づいて、加工処理が施される被加工対象物4の加工品質の良否判定を行なうことができる加工品質判定部40がさらに備えられている。この加工品質判定部40についてその構成及び判定手順について、詳細に説明する。
【0072】
まず、図9に、加工品質判定部40の主要な構成例を示す制御ブロック図を示す。図9に示すように、加工品質判定部40は、光電変換素子部9と接続されており、受光されるレーザ光6aの光強度パターンに基づいて、光電変換素子部9より出力される電気出力を入力することが可能となっている。また、加工品質判定部40は、レーザ光6が良好な状態で出射されている場合(すなわち、被加工対象物4の加工を良好に行い得る状態で出射されている場合)に示す上記光強度パターンに基づいて検出される電気出力を「基準データ」として予め入力しておくことができ、この「基準データ」と光電変換素子部9から実際に入力される上記電気信号とを比較することにより、実際に検出されたレーザ光6の出射状態を良否を判定することが可能となっている。
【0073】
このような機能を成し得るために、図9に示すように、加工品質判定部40は、様々な種類の被加工対象物4に応じた夫々の上記基準データをデータベースとして取り出し可能に保持するデータベース部44と、上記入力される電気出力、及び、データベース部44より加工が行なわれる被加工対象物4に応じて取り出された上記基準データを一時的に記憶して保持することが可能なメモリ部43と、上記電気出力と上記基準データとのデータ比較等を行なうとともに、当該データ比較の結果に基づいてレーザ光6による被加工対象物4の加工品質の良否判定を行なう演算部41と、上記データ比較結果、又は、上記加工品質の良否判定結果の出力を行なう出力部42とを備えている。なお、出力部42の機能としては、当該データ等を、外部に出力し得ればよく、その形態としては、例えば、モニタ、プリンタ、電気信号出力等、様々な形態のものを用い得る。
【0074】
また、演算部41は、上記電気出力と上記基準データとを、予めマッピングされたデータにマッチングさせることによって、上記データ比較、すなわち、レーザ光6の出力パワー、出射の方向、及び波面分布の変化量の算出を行ない、当該変化量が規定値を超えた場合に、上記加工品質の不良の判定を行なうことが可能となっている。
【0075】
次に、このような構成の加工品質判定部40において、上記加工品質の良否判定を行なう場合の手順について、図10に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0076】
図10に示すように、まず、ステップS1において、レーザ加工装置20に加工可能に保持された被加工対象物4の種類に応じた基準データが選択されて、演算部41により、データベース部44から当該基準データが取り出されて、メモリ部43に入力されて取り出し可能に記憶される。
【0077】
次に、レーザ加工装置20において、レーザ発振器1よりレーザ光6が出射されて、被加工対象物4の加工が開始される。それとともに、レーザ光分岐部7において分岐されたレーザ光6aから発せられた境界回折波15が光電変換素子部9にて受光されて、その光強度パターンが電気出力に変換されて、ステップS2において、加工品質判定部40におけるメモリ部43に取り出し可能に記憶される。
【0078】
その後、ステップS3において、メモリ部43に記憶された上記基準データと上記電気出力とが、演算部41により取り出されて、互いのデータ比較が行なわれ、出射されたレーザ光6の変化量が算出される。その後、ステップS4において、この算出された変化量に基づいて、レーザ光6による被加工対象物の加工品質の判定が演算部41により行なわれる。例えば、上記基準データ等に基づいて予め設定されている規定量を基準として、上記算出された変化量が当該規定量を超えない場合には、上記加工品質は良好な状態の許容範囲内であるものとして良判定を行ない、一方、上記変化量が当該規定量を超えるような場合には、レーザ光6の出射状態に不良が発生したものとして、上記加工品質の不良判定を行なう。なお、この判定結果は、出力部42により、加工品質判定部40の外部に出力される。また、上記加工品質の不良判定とともに、当該不良の発生内容(具体的な不良状態)や発生時間、さらに発生ポイント等も併せて出力することもできる。
【0079】
なお、本第1実施形態においては、遮光部11や透光部16を用いて、境界回折波15を発生させて、当該境界回折波15を検出することでもって、レーザ光6の出力パワー、出射方向、及び、波面分布の検出を行なっているが、このような上記検出の機能を奏する限りにおいて、遮光部11の上記表面及び透光部16の上記表面と、中心軸12との間の「直交」関係に、多少のズレが生じるような場合(すなわち、略直交に配置されているような場合)であってもよい。
【0080】
(第1実施形態による効果)
上記第1実施形態によれば、以下のような種々の効果を得ることができる。
【0081】
まず、レーザ光分岐部7にて分岐されたレーザ光6aより、回折型光学素子8にて境界回折波15を発生させて、光電変換素子部9においてこの境界回折波15の光強度パターンを受光することにより、レーザ光6aの出力パワー、出射の方向だけでなく、その波面分布をも併せて同時的に検出することができる。また、このレーザ光6aの検出結果に基づいて、分岐他方のレーザ光6bの出射状態を推定することができ、レーザ光6bの照射によりレーザ加工が施される被加工対象物4の加工品質を推定することができる。
【0082】
これにより、例えば、従来においては検出することが困難であったレーザ光における1μmレベルのひずみをも検出することが可能となり、出射されるレーザ光6の変化状態をより高い精度でもって検出することができるレーザ加工に対する加工品質を向上させることができる。例えば、熱加工としての波長的限界水準の加工孔径の加工をも安定して行なうことが可能となる。
【0083】
また、回折型光学素子8において、レーザ光6aに対して光学的透過性を有する円盤状の光学素子基板10の表面にその中心を同じとする円盤状の遮光部11が形成されていることにより、光学素子基板10に照射されるレーザ光6aのうち、遮光部11に照射されたレーザ光6aのみを遮断することでもって、遮光部11の上記円形の端部より境界回折波15を発生させることができる。このように、境界回折波15を発生させて、同位相から境界回折波15が重ね合わされた状態の光強度パターンを光電変換素子部9にて受光することにより、レーザ光6aの上記検出を確実に行なうことができる。
【0084】
また、回折型光学素子18において、レーザ光6aに対して光学的透過性を有する円盤状の光学素子基板10の表面にその中心を同じとして、同じく光学的透過性を有する円盤状の透光部16が形成されていることにより、光学素子基板10に透過するレーザ光6aのうち、透光部16及び光学素子基板10を透過する透過光17と、光学素子基板10のみをを透過する透過光14との間に光の位相のシフトを発生されることでもって、透光部16の上記円形の端部より境界回折波15を発生させることができる。この境界回折波15は、透過光14及び17ともさらに重ね合わせることができるため、境界回折波15の光強度パターンに、透過光14及び17をも反映させることができ、レーザ光6aの波面13全体が上記光強度パターンに影響を与えて、より精度の高いレーザ光6の状態の検出を行なうことができる。
【0085】
また、回折型光学素子8において遮光部11の直径を、あるいは、回折型光学素子18において、透光部16の直径を、夫々、上記分岐されたレーザ光6aのピーク強度に対する1/e2のビーム径からその半値程度の範囲のいずれかの寸法とするような場合にあっては、上記発生される境界回折波15の検出を良好なものとすることができる。
【0086】
また、上記境界回折波15の検出にあたっては、光電変換素子部9において、素子プレート30の中央、すなわち、境界回折波15の光軸が位置されるべき位置に、中央光電変換素子31を配置して、境界回折波15の第1サイドピークP1が検出されるべく同一円周上に、少なくとも4つの光電変換素子32A、32B、33A、及び33Bを、略均等な間隔でもって配置させることにより、境界回折波15の光強度分布における主ピークP0の光強度を中央光電変換素子31により検出することができ、また、第1サイドピークP1の光強度を、上記4つの光電変換素子32A、32B、33A、及び33Bにより検出することができる。このような光電変換素子部9において、全体的な光強度に低下が検出されることにより、レーザ光の出力パワーの変動(低下)を検出することができ、主ピークP0の位置の変化が検出されることにより、レーザ光の出射の方向を検出することができ、第1サイドピークP1における光強度の変化が検出されることにより、レーザ光の波面分布の変化を検出することができる。
【0087】
また、レーザ加工装置20において、加工品質判定部40が備えられていることにより、被加工対象物4に対してレーザ光6bを照射してレーザ加工を行ないながら、レーザ光分岐部7において分岐されたレーザ光6aよりの境界回折波15の光強度パターンを光電変換素子部9において受光しながら、その受光結果である電気出力を、加工品質判定部40に入力させて、レーザ光6の出射における変化状態を検出(モニタリング)することができる。これにより、加工品質判定部において、予め入力された基準データを基として、レーザ光6による被加工対象物の加工品質の不良判定を行なうことができるとともに、当該不良の発生内容(具体的な不良状態)や発生時間、さらに発生ポイント等の特定も併せて行なうことができる。
【0088】
具体的な例としては、例えば、従来のレーザ加工においては、1枚の基板(被加工対象物の一例である)上に数百〜数千個の孔をレーザ加工する際に用いられることがある。このようなレーザ加工においては、上記夫々の孔の真円度の均一性や孔位置の精度が要求され、例え1つの孔形状の不良や、位置の不良でも、その基板自体が不良となってしまう場合がある。これは、例えば、このような夫々の孔を用いて多層基板間の導通を取る際(すなわち、夫々の孔を導通孔として用いる際)に、夫々の孔内部に導電ペーストを注入するが、夫々の孔の真円度が不良だと導電ペーストが孔の下部まで達せず導通が取れなくなる場合があるという問題がある。また、位置精度に不良が生じると積層する基板間の夫々の孔位置が異なるため、やはり導通が取れない場合が生じ得るという問題がある。このような問題が発生するような場合であっても、従来のレーザ加工においては、個々の基板の不良判定は行われずに、最終工程を経た後の完成品の検査で不良判定を行なっているため、レーザ加工の段階で上記不良が発生しているような場合にあっては、その後の工程に無駄が生じることとなる。
【0089】
しかしながら、上記第1実施形態のレーザ加工装置においては、個々の孔加工精度を、当該加工に用いるレーザ光の出力パワーの変動、及び出射方向の変動のみならず、レーザ光の波面分布もモニターすることができるため、基板毎の良否判定をインラインで行うことができ、従来のように無駄な工程を発生させることを回避することができる。なお、レーザ光の出力パワーの変動は、主に孔径の変化ならびに孔深さに影響を与え、また、出射方向の変化は主に孔加工位置と孔形状に影響を与え、波面分布変化は主に孔径と孔形状に影響を与えることとなるが、これらの変化や不良の発生を、その加工を行ないながら検出(あるいはモニター)することができ、より効率的でかつ精度の高いレーザ加工を提供することができる。
【0090】
(第2実施形態)
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、本発明の第2の実施形態にかかるレーザ加工装置の一例であるレーザ加工装置50の概略構成を模式的に示す模式説明図を図2に示す。
【0091】
図2に示すように、レーザ加工装置50は、上記第1実施形態のレーザ加工装置20の構成と比べて、レーザ光集光部3に代えて、マスク像投影型レーザ光集光部5を備えている点において異なっているのみであり、その他の構成は同様となっている。なお、図2のレーザ加工装置50において、図1のレーザ加工装置20と同じ構成の部分には、同じ符号を用いて示している。
【0092】
次に、このような構成のレーザ加工装置50の構成及び動作について、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0093】
上記第1実施形態のレーザ加工装置20においては、レーザ発振器1から発振(出射)されたレーザ光6は、レーザ光伝播部2を伝播した後、少なくとも1枚以上のレンズを含むレーザ光集光部3によって、所望のビーム径、ビームパターンに変換されて被加工対象物4に照射される。
【0094】
一方、本第2実施形態のレーザ加工装置50においては、レーザ光集光部3に変わってマスク像投影型レーザ光集光部5が設置されているが、マスク像投影型レーザ光集光部5は、被加工対象物4上に加工したいパターンと相似な開口を有するマスク(図示しない)と、このマスク像を被加工対象物4上に投影する少なくとも1枚以上のレンズからなる投影レンズ(図示しない)とを備えている。
【0095】
また、上記マスクと上記投影レンズ間には、少なくとも1つ以上のガルバノミラー(図示しない)を設置することも可能であり、上記ガルバノミラーを走査することで被加工対象物4上で加工パターンを走査することが可能となる。また、上記投影レンズは、拡大若しくは縮小投影を行なうことが可能となっており、一般的には縮小投影とすることで、上記マスク上のレーザ光6のエネルギー密度を被加工対象物4上で増大させることにより、被加工対象物4の加工閾値エネルギー密度を得、逆に、上記マスク上のエネルギー密度を低減させることにより、上記マスクのレーザ光6による損傷を回避している。
【0096】
このようなマスク像投影法を用いた加工の際に、上記マスク像の回折像を投影レンズで再回折させることで被加工対象物4上にマスクパターンの加工パターンを投影させている。このため、上記マスクに入射するレーザ光6のエネルギー分布、入射方向、波面分布がより重要となるが、上記第1実施形態の場合と同様に、分岐されたレーザ光6aにより発生する境界回折波15を受光することにより、レーザ光の出力パワー、出射の方向、及び波面分布を検出することができるため、確実なレーザ加工を行なうことができる。
【0097】
(第2実施形態による効果)
上記第2実施形態によれば、マスク像投影型レーザ集光部5を備えるレーザ加工装置50においては、上記マスクに入射するレーザ光6のエネルギー分布、入射方向、波面分布がより重要となるが、上記第1実施形態の場合と同様に、分岐されたレーザ光6aにより発生する境界回折波15を受光することにより、レーザ光の出力パワー、出射の方向、及び波面分布を検出しながら上記レーザ加工を行なうことができるため、このようなレーザ光の検出をより有効なものとすることができる。
【0098】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0099】
(本発明の夫々の態様による効果)
本発明の第1態様によれば、出射されるレーザ光の光軸が位置されるべき軸を遮光の中心軸として、上記中心軸に直交する遮光平面において、上記レーザ光の一部を遮光して、上記遮光により発生する回折光を、上記遮光の中心軸に直交する平面において受光し、
上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置に対する強度分布の対称性を検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出することを特徴とするレーザ検出方法を提供する。
【0100】
上記第1態様によれば、出射されるレーザ光の一部を遮光して、上記遮光により発生する回折光を上記遮光の中心軸に直交する平面にて受光し、上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置に対する強度分布の対称性を検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出することができる。これにより、例えば、従来においては検出することが困難であったレーザ光における1μmレベルのひずみをも検出することが可能となり、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。
【0101】
本発明の第2態様によれば、上記受光の平面における上記強度分布の対称性に加えて、さらに、上記回折光の強度、及び上記強度の上記最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々を同時に検出する第1態様に記載のレーザ検出方法を提供する。
【0102】
上記第2態様によれば、上記回折光の強度分布の対称性の検出に加えて、さらに、上記受光の平面における上記回折光の強度、及び上記強度の最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び、その波面分布をも併せて同時的に検出することができる。これにより、従来から行なわれている上記レーザ光の出力パワーや上記出射の方向に加えて、上記波面分布をも検出することができ、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。また、このような検出が行なわれるレーザ光を用いたレーザ加工に対する加工品質を向上させることができ、より高精度なレーザ加工におけるレーザ光の検出を行うことができる。
【0103】
本発明の第3態様によれば、上記遮光平面は、その中心が上記中心軸上に配置された略円形状の平面であって、
上記遮光は、上記レーザ光の一部を上記略円形状に遮光することにより行なわれる第1態様又は第2態様に記載のレーザ検出方法を提供する。
【0104】
上記第3態様によれば、上記遮光平面を、その中心が上記中心軸上に配置された略円形状の平面であって、上記遮光が、上記レーザ光の一部を上記遮光平面の形状である上記略円形状に遮光することにより、上記遮光平面の端部より上記回折光を発生させることができる。これにより、上記回折光の重ね合わせ状態を上記受光の平面にて受光し、上記検出を行うことができる。
【0105】
本発明の第4態様によれば、出射されるレーザ光の一部を分岐し、
上記分岐されたレーザ光に対して、上記一部の遮光を行なって、上記検出を行なう第1態様から第3態様のいずれか1つに記載のレーザ検出方法を提供する。
【0106】
上記第4態様によれば、出射されるレーザ光の一部を分岐した後に、上記分岐されたレーザ光の一部を上記遮光して、上記検出を行うことにより、上記分岐された他方のレーザ光の出射状態を、上記検出結果より推定することができる。従って、例えば、上記他方のレーザ光を被加工対象物に照射してレーザ加工を行う場合等において、当該加工を行いながら、その加工品質を推定することができ、当該レーザ検出が用いられるレーザ加工において、より効率的かつ高精度な加工を行うことができる。
【0107】
本発明の第5態様によれば、出射されるレーザ光の光軸が位置されるべき軸を位相シフトの中心軸として、上記中心軸に直交する位相シフト平面において、上記レーザ光の一部の光の位相のシフトを行なって、上記位相のシフトにより発生する回折光を、上記位相シフトの中心軸に直交する平面において受光し、
上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置に対する強度分布の対称性を検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出することを特徴とするレーザ検出方法を提供する。
【0108】
上記第5態様によれば、出射されるレーザ光の一部の光の位相のシフトを行って、上記位相のシフトにより発生する回折光を上記位相シフトの中心軸に直交する平面にて受光し、上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置に対する強度分布の対称性の夫々を同時に検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出することができる。これにより、上記第1態様による効果と同様に、例えば、従来においては検出することが困難であったレーザ光における1μmレベルのひずみをも検出することが可能となり、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。また、このような上記位相のシフトにより発生された回折光は、上記遮光という手段を用いていないため、上記レーザ光の波面全体を上記回折光に影響させることができ、より精度の高い検出を行えるという利点がある。
【0109】
本発明の第6態様によれば、上記受光の平面における上記強度分布の対称性に加えて、さらに、上記回折光の強度、及び上記強度の上記最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々を同時に検出する第5態様に記載のレーザ検出方法を提供する。
【0110】
上記第6態様によれば、上記回折光の強度分布の対称性の検出に加えて、さらに、上記受光の平面における上記回折光の強度、及び上記強度の最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、さらに、その波面分布を併せて同時的に検出することができる。これにより、従来から行なわれている上記レーザ光の出力パワーや上記出射の方向に加えて、上記波面分布をも検出することができ、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。
【0111】
本発明の第7態様によれば、上記位相シフト平面は、その中心が上記中心軸上に配置された略円形状の平面であって、
上記位相のシフトは、上記位相シフト平面を透過された上記レーザ光の一部の光の位相を、他の上記レーザ光の光の位相よりずらすことにより行なわれる第5態様又は第6態様に記載のレーザ検出方法を提供する。
【0112】
上記第7態様によれば、上記位相シフト平面を、その中心が上記中心軸上に配置された略円形状の平面であって、上記位相のシフトが、上記位相シフト平面を透過されたレーザ光の一部の光の位相を、他の上記レーザ光の光の位相よりずらすことにより、上記位相シフト平面の端部より上記回折光を発生させることができる。これにより、上記回折光の重ね合わせ状態を上記受光の平面にて受光し、上記検出を行うことができる。
【0113】
本発明の第8態様によれば、出射されるレーザ光の一部を分岐し、
上記分岐されたレーザ光に対して、上記一部の光の位相のシフトを行って、上記検出を行なう第5態様から第7態様のいずれか1つに記載のレーザ検出方法を提供する。
【0114】
上記第8態様によれば、上記出射されるレーザ光の一部を分岐した後に、上記分岐されたレーザ光の一部の上記位相のシフトを行って、上記検出を行うことにより、上記分岐された他方のレーザ光の出射状態を、上記検出結果より推定することができる。従って、上記第4態様による効果と同様の効果を得ることができる。
【0115】
本発明の第9態様によれば、上記光の位相のシフトは、上記レーザ光におけるビームウェスト位置において行なわれる第5態様から第8態様のいずれか1つに記載のレーザ検出方法を提供する。
【0116】
上記第9態様によれば、上記光の位相のシフトを、上記レーザ光におけるビームウェスト位置にて行うことにより、上記位相のシフトが行なわれるレーザ光の波面を単純なものとすることができ、上記発生される回折光の検出をより明確かつ良好なものとすることができ、検出精度を向上させることができる。
【0117】
本発明の第10態様によれば、出射されたレーザ光を被加工対象物に照射して、上記被加工対象物の加工を行なうレーザ加工方法において、
上記出射されたレーザ光の一部を分岐して、
上記分岐された一方のレーザ光の光軸が位置されるべき軸を遮光の中心軸として、上記中心軸に直交する遮光平面において、上記一方のレーザ光のさらに一部を遮光して、上記遮光により発生する回折光を、上記遮光の中心軸に直交する平面において受光し、上記受光の平面における上記回折光の強度、上記強度の最大位置と上記中心軸との位置ずれ、及び上記最大位置に対する強度分布の対称性の夫々を同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々を同時に検出しながら、
上記分岐された他方のレーザ光を上記被加工対象物に照射して、上記被加工対象物の上記加工を行なうことを特徴とするレーザ加工方法を提供する。
【0118】
上記第10態様によれば、出射されるレーザ光の一部を分岐して、上記分岐された一方のレーザ光のさらに一部を遮光して、上記遮光により発生する回折光を上記遮光の中心軸に直交する平面にて受光し、上記受光の平面における上記回折光の強度、上記強度の最大位置と上記中心軸との位置ずれ、及び上記最大位置に対する強度分布の対称性の夫々を同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向だけでなく、その波面分布をも併せて同時的に検出することができる。
【0119】
さらに、上記分岐された他方のレーザ光により被加工対象物の加工を行いながら、その出射状態を、上記一方のレーザ光の検出結果より推定することができる。従って、上記他方のレーザ光を被加工対象物に照射して当該加工を行いながら、その加工品質を推定することができ、より効率的かつ高精度な加工を行うことができる。
【0120】
これにより、例えば、従来においては検出することが困難であったレーザ光における1μmレベルのひずみをも検出することが可能となり、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができ、さらに、このような検出が行なわれるレーザ光を用いたレーザ加工に対する加工品質を向上させることができる。
【0121】
本発明の第11態様によれば、上記遮光平面は、その中心が上記中心軸上に配置された略円形状の平面であって、
上記遮光は、上記一方のレーザ光の一部を上記略円形状に遮光することにより行なわれる第10態様に記載のレーザ加工方法を提供する。
【0122】
上記第11態様によれば、上記遮光平面を、その中心が上記中心軸上に配置された略円形状の平面であって、上記遮光が、上記一方のレーザ光の一部を上記遮光平面の形状である上記略円形状に遮光することにより、上記遮光平面の端部より上記回折光を発生させることができる。これにより、上記回折光の重ね合わせ状態を上記受光の平面にて受光し、上記検出を行うことができる。
【0123】
本発明の第12態様によれば、出射されたレーザ光を被加工対象物に照射して、上記被加工対象物の加工を行なうレーザ加工方法において、
上記出射されたレーザ光の一部を分岐して、
上記分岐された一方のレーザ光の光軸が位置されるべき軸を位相シフトの中心軸として、上記中心軸に直交する位相シフト平面において、上記一方のレーザ光のさらに一部の光の位相のシフトを行なって、上記位相のシフトにより発生する回折光を、上記位相シフトの中心軸に直交する平面において受光し、上記受光の平面における上記回折光の強度、上記強度の最大位置と上記中心軸との位置ずれ、及び上記最大位置に対する強度分布の対称性の夫々を同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々を同時に検出しながら、
上記分岐された他方のレーザ光を上記被加工対象物に照射して、上記被加工対象物の上記加工を行なうことを特徴とするレーザ加工方法を提供する。
【0124】
上記第12態様によれば、出射されるレーザ光の一部を分岐して、上記分岐された一方のレーザ光のさらに一部の光の位相のシフトを行って、上記位相のシフトにより発生する回折光を上記位相シフトの中心軸に直交する平面にて受光し、上記受光の平面における上記回折光の強度、上記強度の最大位置と上記中心軸との位置ずれ、及び上記最大位置に対する強度分布の対称性の夫々を同時に検出することにより、上記一方のレーザ光の出力パワー、上記出射の方向だけでなく、その波面分布をも併せて同時的に検出することができる。
【0125】
さらに、上記分岐された他方のレーザ光により被加工対象物の加工を行いながら、その出射状態を、上記一方のレーザ光の検出結果より推定することができる。従って、上記他方のレーザ光を被加工対象物に照射して当該加工を行いながら、その加工品質を推定することができ、より効率的かつ高精度な加工を行うことができる。
【0126】
これにより、上記第10態様による効果と同様に、例えば、従来においては検出することが困難であったレーザ光における1μmレベルのひずみをも検出することが可能となり、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。また、このような上記位相のシフトにより発生された回折光は、上記遮光という手段を用いていないため、上記レーザ光の波面全体を上記回折光に影響させることができ、より精度の高い検出を行えるという利点がある。
【0127】
本発明の第13態様によれば、上記位相シフト平面は、その中心が上記中心軸上に配置された略円形状の平面であって、
上記位相のシフトは、上記位相シフト平面を透過した上記一方のレーザ光の一部の光の位相を、他の上記レーザ光の光の位相よりずらすことにより行なわれる第12態様に記載のレーザ加工方法を提供する。
【0128】
上記第13態様によれば、上記位相シフト平面を、その中心が上記中心軸上に配置された略円形状の平面であって、上記位相のシフトが、上記位相シフト平面を透過された上記一方のレーザ光の一部の光の位相を、他の上記レーザ光の光の位相よりずらすことにより、上記位相シフト平面の端部より上記回折光を発生させることができる。これにより、上記回折光の重ね合わせ状態を上記受光の平面にて受光し、上記検出を行うことができる。
【0129】
本発明の第14態様によれば、上記光の位相のシフトは、上記一方のレーザ光におけるビームウェスト位置において行なわれる第12態様又は第13態様に記載のレーザ加工方法を提供する。
【0130】
上記第14態様によれば、上記光の位相のシフトを、上記一方のレーザ光におけるビームウェスト位置にて行うことにより、上記位相のシフトが行なわれるレーザ光の波面を単純なものとすることができ、上記発生される回折光の検出をより明確かつ良好なものとすることができ、検出精度を向上させることができる。
【0131】
本発明の第15態様によれば、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々の変化状態を、上記被加工対象物の上記加工と同時に検出することにより、上記他方のレーザ光による上記被加工対象物の上記加工の品質の良否を判定する第12態様から第14態様のいずれか1つに記載のレーザ加工方法を提供する。
【0132】
上記第15態様によれば、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々の変化状態を、上記被加工対象物の上記加工と同時に検出して、上記他方のレーザ光による上記被加工対象物の上記加工の品質の良否を判定することにより、個々の上記被加工対象物ごとの上記加工品質の良否判定をインラインで行うことができる。従って、従来のように無駄な工程を発生させることを回避することができ、より効率的でかつ精度の高いレーザ加工を提供することができる。
【0133】
本発明の第16態様によれば、レーザ発振器と、レーザ光伝送部と、レーザ光集光部とを備え、上記レーザ発振器より発振されたレーザ光を上記レーザ光伝送部により伝送して、上記レーザ光集光部を通して被加工対象物に照射することにより、上記被加工対象物の加工を行なうレーザ加工装置において、
上記レーザ光集光部の上記レーザ発振器側に配置され、上記発振されたレーザ光の一部を分岐するレーザ光分岐部と、
上記レーザ光分岐部により分岐された上記一部のレーザ光よりの回折光をその中心軸沿いに発生させる回折型光学素子と、
上記発生された回折光を上記回折型光学素子の上記中心軸に直交する平面において受光可能であって、上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置に対する強度分布の対称性を検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出可能な光電変換素子とを備えることを特徴とするレーザ加工装置を提供する。
【0134】
上記第16態様によれば、レーザ発振器より出射されるレーザ光の一部をレーザ光分岐部にて分岐し、回折型光学素子により上記分岐された一方のレーザ光のさらに一部よりの回折光を発生させて、光電変換素子において、上記回折光を受光し、上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置に対する強度分布の対称性を検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出することができる。これにより、従来においては検出することが困難であったレーザ光における1μmレベルのひずみをも検出することが可能となり、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。
【0135】
さらに、上記レーザ光分岐部にて分岐された他方のレーザ光により被加工対象物の加工を行いながら、その出射状態を、上記光電変換素子による上記一方のレーザ光の検出結果より推定することができる。従って、上記他方のレーザ光を被加工対象物に照射して当該加工を行いながら、その加工品質を推定することができ、より効率的かつ高精度な加工を行うことができるレーザ加工装置を提供することができる。
【0136】
本発明の第17態様によれば、上記光電変換素子は、上記回折光の強度分布の対称性の検出に加えて、さらに、上記受光の平面における上記回折光の強度、及び上記強度の上記最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々を同時に検出可能である第16態様に記載のレーザ加工装置を提供する。
【0137】
上記第17態様によれば、上記光電変換素子が、上記回折光の強度分布の対称性の検出に加えて、さらに、上記受光の平面における上記回折光の強度、及び上記強度の最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、さらに、その波面分布を同時的に検出することができる。これにより、従来から行なわれている上記レーザ光の出力パワーや上記出射の方向の検出に加えて、上記波面分布をも検出することができ、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。
【0138】
本発明の第18態様によれば、上記光電変換素子による上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々の変化状態の検出結果に基づいて、上記レーザ光の照射による上記被加工対象物の加工の品質の良否判定を行なう加工品質判定部を、さらに備える第17態様に記載のレーザ加工装置を提供する。
【0139】
上記第18態様によれば、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々の変化状態を、上記被加工対象物の上記加工と同時に検出して、上記他方のレーザ光による上記被加工対象物の上記加工の品質の良否の判定を、加工品質判定部にて行うことにより、個々の上記被加工対象物ごとの上記加工品質の良否判定をインラインで、すなわち、当該加工と並行して当該検出を同時的に行うことができる。従って、従来のように無駄な工程を発生させることを回避することができ、より効率的でかつ精度の高いレーザ加工を行うことができるレーザ加工装置を提供することができる。
【0140】
本発明の第19態様によれば、上記レーザ光集光部は、マスク像投影型のレーザ光集光部である第16態様から第18態様のいずれか1つに記載のレーザ加工装置を提供する。
【0141】
上記第19態様によれば、上記レーザ光集光部がマスク像投影型のレーザ光集光部である場合にあっては、その特性上、上記レーザ光集光部に入射するレーザ光のエネルギー分布、入射方向、さらに波面分布がより重要となるため、上記レーザ光の検出を行いながら、上記加工を行うことがより有効なものとすることができる。
【0142】
本発明の第20態様によれば、上記回折型光学素子は、上記中心軸上にその中心が配置されるとともに上記中心軸と直交して配置されて、上記分岐されたレーザ光の一部を遮光可能であって、かつ、上記分岐されたレーザ光のビーム径よりも小さな径を有する略円盤状の遮光部を備え、
上記遮光部は、上記中心軸に直交する平面沿いにおいて、略円形状に上記分岐されたレーザ光の一部を遮光することにより、上記回折光を発生させる第16態様から第19態様のいずれか1つに記載のレーザ加工装置を提供する。
【0143】
上記第20態様によれば、上記回折型光学素子において、その中心軸上に配置された中心を有し、上記レーザ光の一部を遮光可能な遮光部が備えられていることにより、上記レーザ光のうちの上記遮光部に照射されたレーザ光のみを遮断することでもって、上記遮光部の上記円形状の端部より上記回折光を発生させることができる。このように、上記回折光を発生させて、同位相から上記回折光が重ね合わされた状態の光を上記光電変換素子にて受光することにより、上記レーザ光の上記検出を確実に行なうことができる。
【0144】
本発明の第21態様によれば、上記回折型光学素子は、上記中心軸上にその中心が配置されるとともに上記中心軸と直交して配置されて、上記分岐されたレーザ光を透過可能であって、かつ、上記分岐されたレーザ光のビーム径よりも小さな径を有する略円盤状の透光部を備え、
上記透光部は、上記中心軸に直交する平面沿いにおいて、略円盤状に上記分岐されたレーザ光の一部を透過させて、上記透光部を透過されていない上記レーザ光の光の位相に対して、上記透過された上記レーザ光の光の位相のシフトを行なうことにより、上記回折光を発生させる第16態様から第19態様のいずれか1つに記載のレーザ加工装置を提供する。
【0145】
上記第21態様によれば、上記回折型光学素子において、その中心軸上に配置された中心を有し、上記レーザ光の一部を透過可能な透光部が備えられていることにより、上記レーザ光のうちの上記透光部を透過しないレーザ光に対して、上記透光部を透過されたレーザ光の位相のシフトを行うことでもって、上記透光部の上記円形状の端部より上記回折光を発生させることができる。このように、上記回折光を発生させて、上記回折光を上記光電変換素子にて受光することにより、上記レーザ光の上記検出を確実に行なうことができる。
【0146】
また、このような上記位相のシフトにより発生された上記回折光は、上記遮光という手段を用いていないため、上記レーザ光の波面全体を上記回折光に影響させることができ、より精度の高い検出を行えるという利点がある。
【0147】
本発明の第22態様によれば、上記透光部は、上記分岐されたレーザ光におけるビームウェスト位置に配置されている第21態様に記載のレーザ加工装置を提供する。
【0148】
上記第22態様によれば、上記透光部を上記レーザ光におけるビームウェスト位置に配置させて上記位相のシフトを行うことにより、上記位相のシフトが行なわれるレーザ光の波面を単純なものとすることができ、上記発生される回折光の検出をより明確かつ良好なものとすることができ、検出精度を向上させることができる。
【0149】
【発明の効果】
本発明の上記第1の発明によれば、出射されるレーザ光の一部を遮光して、上記遮光により発生する回折光を上記遮光の中心軸に直交する平面にて受光し、上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置に対する強度分布の対称性を検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出することができる。これにより、例えば、従来においては検出することが困難であったレーザ光における1μmレベルのひずみをも検出することが可能となり、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。
【0150】
また、上記回折光の強度分布の対称性の検出に加えて、さらに、上記受光の平面における上記回折光の強度、及び上記強度の最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び、その波面分布をも併せて同時的に検出することができる。これにより、従来から行なわれている上記レーザ光の出力パワーや上記出射の方向に加えて、上記波面分布をも検出することができ、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。また、このような検出が行なわれるレーザ光を用いたレーザ加工に対する加工品質を向上させることができ、より高精度なレーザ加工におけるレーザ光の検出を行うことができる。
【0151】
本発明の上記第2の発明によれば、出射されるレーザ光の一部の光の位相のシフトを行って、上記位相のシフトにより発生する回折光を上記位相シフトの中心軸に直交する平面にて受光し、上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置に対する強度分布の対称性の夫々を同時に検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出することができる。これにより、上記第1の発明による効果と同様に、例えば、従来においては検出することが困難であったレーザ光における1μmレベルのひずみをも検出することが可能となり、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。また、このような上記位相のシフトにより発生された回折光は、上記遮光という手段を用いていないため、上記レーザ光の波面全体を上記回折光に影響させることができ、より精度の高い検出を行えるという利点がある。
【0152】
また、上記回折光の強度分布の対称性の検出に加えて、さらに、上記受光の平面における上記回折光の強度、及び上記強度の最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、さらに、その波面分布を併せて同時的に検出することができる。これにより、従来から行なわれている上記レーザ光の出力パワーや上記出射の方向に加えて、上記波面分布をも検出することができ、上記出射されるレーザ光の変化状態をより高い精度でもって検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態にのレーザ加工装置の概略構成を示す模式説明図である。
【図2】本発明の第2実施形態にのレーザ加工装置の概略構成を示す模式説明図である。
【図3】上記第1実施形態のレーザ加工装置における回折型光学素子の構成を示す模式図であり、(A)はレーザ光の光軸に直交する方向から見た模式図であり、(B)は上記光軸沿いの方向から見た模式図である。
【図4】上記第1実施形態のレーザ加工装置における変形例にかかる回折型光学素子の構成を示す模式図であり、(A)はレーザ光の光軸に直交する方向から見た模式図であり、(B)は上記光軸沿いの方向から見た模式図である。
【図5】光電変換素子部にて受光される境界回折波の光強度パターンを示す図であり、(A)は正常状態であり、(B)は出力パワーが低下した状態であり、(C)は出射方向が変化した状態であり、(D)は波面分布が変化した状態である。
【図6】従来の回折光を用いたレーザ光の検出方法を示す模式説明図である。
【図7】従来のレーザ光の検出方法を示す模式説明図である。
【図8】上記第1実施形態のレーザ加工装置における光電変換素子部の構成を示す模式説明図である。
【図9】上記第1実施形態のレーザ加工装置における加工品質判定部の構成を示すブロック図である。
【図10】上記加工品質判定部における加工品質の判定手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…レーザ発振器、2…レーザ光伝送部、3…レーザ光集光部、4…被加工対象物、5…マスク像投影型レーザ光集光部、6、6a及び6b…レーザ光、7…レーザ光分岐部、8…回折型光学素子、9…光電変換素子部、10…光学素子基板、11…遮光部、12…中心軸、13…波面、14及び17…透過光、15…境界回折波、16…透光部、20及び50…レーザ加工装置、30…素子プレート、31…中央光電変換素子、32A及びB…左右方向光電変換素子、33A及びB…上下方向光電変換素子、40…加工品質判定部、41…演算部、42…出力部、43…メモリ部、44…データベース部、P0…主ピーク、P1…第1サイドピーク。
Claims (22)
- 出射されるレーザ光(6a)の光軸が位置されるべき軸を遮光の中心軸(12)として、上記中心軸に直交する遮光平面(11)において、上記レーザ光の一部を遮光して、上記遮光により発生する回折光(15)を、上記遮光の中心軸に直交する平面(31、32A、32B、33A、33B)において受光し、
上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置(P0)に対する強度分布の対称性を検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出することを特徴とするレーザ検出方法。 - 上記受光の平面における上記強度分布の対称性に加えて、さらに、上記回折光の強度、及び上記強度の上記最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々を同時に検出する請求項1に記載のレーザ検出方法。
- 上記遮光平面(11)は、その中心が上記中心軸上に配置された略円形状の平面であって、
上記遮光は、上記レーザ光の一部を上記略円形状に遮光することにより行なわれる請求項1又は2に記載のレーザ検出方法。 - 出射されるレーザ光(6)の一部を分岐し、
上記分岐されたレーザ光(6a)に対して、上記一部の遮光を行なって、上記検出を行なう請求項1から3のいずれか1つに記載のレーザ検出方法。 - 出射されるレーザ光(6a)の光軸が位置されるべき軸を位相シフトの中心軸(12)として、上記中心軸に直交する位相シフト平面(16)において、上記レーザ光の一部の光の位相のシフトを行なって、上記位相のシフトにより発生する回折光(15)を、上記位相シフトの中心軸に直交する平面(31、32A、32B、33A、33B)において受光し、
上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置(P0)に対する強度分布の対称性を検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出することを特徴とするレーザ検出方法。 - 上記受光の平面における上記強度分布の対称性に加えて、さらに、上記回折光の強度、及び上記強度の上記最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々を同時に検出する請求項5に記載のレーザ検出方法。
- 上記位相シフト平面(16)は、その中心が上記中心軸上に配置された略円形状の平面であって、
上記位相のシフトは、上記位相シフト平面を透過された上記レーザ光の一部の光(17)の位相を、他の上記レーザ光の光(14)の位相よりずらすことにより行なわれる請求項5又は6に記載のレーザ検出方法。 - 出射されるレーザ光(6)の一部を分岐し、
上記分岐されたレーザ光(6a)に対して、上記一部の光の位相のシフトを行って、上記検出を行なう請求項5から7のいずれか1つに記載のレーザ検出方法。 - 上記光の位相のシフトは、上記レーザ光におけるビームウェスト位置において行なわれる請求項5から8のいずれか1つに記載のレーザ検出方法。
- 出射されたレーザ光(6)を被加工対象物(4)に照射して、上記被加工対象物の加工を行なうレーザ加工方法において、
上記出射されたレーザ光の一部を分岐して、
上記分岐された一方のレーザ光(6a)の光軸が位置されるべき軸を遮光の中心軸(12)として、上記中心軸に直交する遮光平面(11)において、上記一方のレーザ光のさらに一部を遮光して、上記遮光により発生する回折光(15)を、上記遮光の中心軸に直交する平面(31、32A、32B、33A、33B)において受光し、上記受光の平面における上記回折光の強度、上記強度の最大位置(P0)と上記中心軸との位置ずれ、及び上記最大位置に対する強度分布の対称性の夫々を同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々を同時に検出しながら、
上記分岐された他方のレーザ光(6b)を上記被加工対象物に照射して、上記被加工対象物の上記加工を行なうことを特徴とするレーザ加工方法。 - 上記遮光平面(11)は、その中心が上記中心軸上に配置された略円形状の平面であって、
上記遮光は、上記一方のレーザ光の一部を上記略円形状に遮光することにより行なわれる請求項10に記載のレーザ加工方法。 - 出射されたレーザ光(6)を被加工対象物(4)に照射して、上記被加工対象物の加工を行なうレーザ加工方法において、
上記出射されたレーザ光の一部を分岐して、
上記分岐された一方のレーザ光(6a)の光軸が位置されるべき軸を位相シフトの中心軸(12)として、上記中心軸に直交する位相シフト平面(16)において、上記一方のレーザ光のさらに一部の光の位相のシフトを行なって、上記位相のシフトにより発生する回折光(15)を、上記位相シフトの中心軸に直交する平面(31、32A、32B、33A、33B)において受光し、上記受光の平面における上記回折光の強度、上記強度の最大位置(P0)と上記中心軸との位置ずれ、及び上記最大位置に対する強度分布の対称性の夫々を同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々を同時に検出しながら、
上記分岐された他方のレーザ光(6b)を上記被加工対象物に照射して、上記被加工対象物の上記加工を行なうことを特徴とするレーザ加工方法。 - 上記位相シフト平面(16)は、その中心が上記中心軸上に配置された略円形状の平面であって、
上記位相のシフトは、上記位相シフト平面を透過した上記一方のレーザ光の一部の光(17)の位相を、他の上記レーザ光の光(14)の位相よりずらすことにより行なわれる請求項12に記載のレーザ加工方法。 - 上記光の位相のシフトは、上記一方のレーザ光におけるビームウェスト位置において行なわれる請求項12又は13に記載のレーザ加工方法。
- 上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々の変化状態を、上記被加工対象物の上記加工と同時に検出することにより、上記他方のレーザ光による上記被加工対象物の上記加工の品質の良否を判定する請求項12から14のいずれか1つに記載のレーザ加工方法。
- レーザ発振器(1)と、レーザ光伝送部(2)と、レーザ光集光部(3又は5)とを備え、上記レーザ発振器より発振されたレーザ光(6)を上記レーザ光伝送部により伝送して、上記レーザ光集光部を通して被加工対象物(4)に照射することにより、上記被加工対象物の加工を行なうレーザ加工装置(20又は50)において、
上記レーザ光集光部の上記レーザ発振器側に配置され、上記発振されたレーザ光の一部を分岐するレーザ光分岐部(7)と、
上記レーザ光分岐部により分岐された上記一部のレーザ光(6a)よりの回折光(15)をその中心軸(12)沿いに発生させる回折型光学素子(8又は18)と、
上記発生された回折光を上記回折型光学素子の上記中心軸に直交する平面において受光可能であって、上記受光の平面における上記回折光の強度の最大位置(P0)に対する強度分布の対称性を検出することにより、上記レーザ光の波面分布を検出可能な光電変換素子(31、32A、32B、33A、33B)とを備えることを特徴とするレーザ加工装置。 - 上記光電変換素子は、上記回折光の強度分布の対称性の検出に加えて、さらに、上記受光の平面における上記回折光の強度、及び上記強度の上記最大位置と上記中心軸との位置ずれの夫々をも同時に検出することにより、上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々を同時に検出可能である請求項16に記載のレーザ加工装置。
- 上記光電変換素子による上記レーザ光の出力パワー、上記出射の方向、及び波面分布の夫々の変化状態の検出結果に基づいて、上記レーザ光の照射による上記被加工対象物の加工の品質の良否判定を行なう加工品質判定部(40)を、さらに備える請求項17に記載のレーザ加工装置。
- 上記レーザ光集光部は、マスク像投影型のレーザ光集光部(5)である請求項16から18のいずれか1つに記載のレーザ加工装置。
- 上記回折型光学素子(8)は、上記中心軸上にその中心が配置されるとともに上記中心軸と直交して配置されて、上記分岐されたレーザ光の一部を遮光可能であって、かつ、上記分岐されたレーザ光のビーム径よりも小さな径を有する略円盤状の遮光部(12)を備え、
上記遮光部は、上記中心軸に直交する平面沿いにおいて、略円形状に上記分岐されたレーザ光の一部を遮光することにより、上記回折光を発生させる請求項16から19のいずれか1つに記載のレーザ加工装置。 - 上記回折型光学素子(18)は、上記中心軸上にその中心が配置されるとともに上記中心軸と直交して配置されて、上記分岐されたレーザ光を透過可能であって、かつ、上記分岐されたレーザ光のビーム径よりも小さな径を有する略円盤状の透光部(16)を備え、
上記透光部は、上記中心軸に直交する平面沿いにおいて、略円盤状に上記分岐されたレーザ光の一部を透過させて、上記透光部を透過されていない上記レーザ光の光(14)の位相に対して、上記透過された上記レーザ光の光(17)の位相のシフトを行なうことにより、上記回折光を発生させる請求項16から19のいずれか1つに記載のレーザ加工装置。 - 上記透光部は、上記分岐されたレーザ光におけるビームウェスト位置に配置されている請求項21に記載のレーザ加工装置。
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