JP2004232654A - 空気静圧軸受装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】空気静圧軸受装置を安価で容易に作製する。
【解決手段】筒状の軸受体用外枠11内に、軸受体用外枠11内周面と外周部の一部が嵌合する軸体12を配置し、軸体12の外周面と軸受体用外枠11の内周面との間に形成される空間13a〜13dに収縮硬化性樹脂を充填し、収縮硬化性樹脂が軸受体用外枠11に固着して収縮することにより形成する樹脂部14a〜14dと軸体12との間に微少隙間15a〜15dを形成し、軸体12外周部と軸受体用外枠11とが嵌合した部分を削除して、軸受体用外枠11と樹脂部13a〜13dとにより軸受体16を構成する。
【効果】軸受体を製造するために専用の治具を用いることなく、また、軸受体内面の加工を高精度にせずに空気静圧軸受装置の製造することができる。
【選択図】図1
【解決手段】筒状の軸受体用外枠11内に、軸受体用外枠11内周面と外周部の一部が嵌合する軸体12を配置し、軸体12の外周面と軸受体用外枠11の内周面との間に形成される空間13a〜13dに収縮硬化性樹脂を充填し、収縮硬化性樹脂が軸受体用外枠11に固着して収縮することにより形成する樹脂部14a〜14dと軸体12との間に微少隙間15a〜15dを形成し、軸体12外周部と軸受体用外枠11とが嵌合した部分を削除して、軸受体用外枠11と樹脂部13a〜13dとにより軸受体16を構成する。
【効果】軸受体を製造するために専用の治具を用いることなく、また、軸受体内面の加工を高精度にせずに空気静圧軸受装置の製造することができる。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は軸体と該軸体を囲む筒状の軸受体を備え、前記軸体と前記軸受体との間に形成される微小隙間に圧縮空気を供給して軸体と軸受体とを相対的にスライド自在とした空気静圧軸受装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
精密工作機械や精密測定装置では、高精度の送り機構が必要とされ、そのための案内面(例えばガイドレール)にも高い形状精度等が要求されている。従来、高精度案内面として最も多く使用されているものが空気静圧軸受装置であり、該軸受装置では、送りテーブルや送りブロックの軸体を軸受体に対し空気の圧力で浮上させることで接触部分の摩擦抵抗をゼロにしている。これにより軸体と軸受体とは振動等を生じることなく相対的にスライドすることができ、該軸受装置によって送りテーブル等を高精度に案内することが可能になる。
上記空気静圧軸受装置の中でも特に軸体の断面形状が角形で軸受体が角筒状である空気静圧軸受装置は、比較的低コストで作製することができることから汎用的に使用されている。
【0003】
この空気静圧軸受装置では、軸体と軸受体との間に微小隙間を設けこの微小隙間に圧縮空気を供給するため、軸体と軸受体との対向面は精密面とする必要がある。ただし、角筒状の軸受体の内面に精密加工を施すことは難しいため、一体の角筒を使用する代わりに、図4、5に示すように、例えば4片の精密加工ブロック31a〜31dを組み合わせて角筒状となる軸受体31を作製し、この軸受体31内に軸体32を位置させて軸受装置30を構成している。
【0004】
また、静圧軸受装置において、軸体と軸受体との隙間を樹脂層で埋めることにより、軸受体を安価に製造する方法が知られている(特許文献1)。
該特許文献1によると、軸体に応じて形成された治具を軸受体の所定の位置に位置決めし、この治具と軸受体との隙間に樹脂層を充填し、高精度に作製された治具の形状及び加工精度を樹脂層に転写し、軸体を案内する軸受体の案内面上には樹脂層を被覆することにより、軸受体を製造するものである。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−144757号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、精密加工ブロックを組み立てて静圧軸受装置を製造する方法では、図5(a)及び(b)に示すように軸受体31と軸体32との間で形成される微小隙間33が所定量になるように各精密加工ブロック31a〜31dを精密に組み合わせなければならないため、組み立て、位置調整が難しく多大な労力を要し、熟練した技能が必要になる。このため、通常の転がり軸受装置に比較すると、空気静圧軸受装置の製造コストは高価になるという問題点がある。
【0007】
また、上記特許文献1に示される方法では、樹脂層の形成によって軸受体の内面に要求される加工精度は小さくなるものの、形状及び加工精度を樹脂層に転写するための治具と、この治具と軸受体を高精度に位置決めするための位置決め治具とが必要となる。また、樹脂層が形成された後には、形状及び加工精度を樹脂層に転写するための治具を軸受体から取り外し、新たに軸体と軸受体を組み直さなければならない。また、上記方法では軸体と軸受体との間に隙間が形成されないため、空気静圧軸受装置としてそのまま利用することはできない。
【0008】
そこで、本発明は、軸受体を製造するために専用の治具を必要とせず、軸受体内面の加工を高精度にする必要がない空気静圧軸受装置の作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明は、軸体と前記軸体を囲む筒状の軸受体を備え、前記軸体と前記軸受体との間に微小隙間を有し、前記微小隙間に圧縮空気を供給することにより、前記軸体と前記軸受体とを相対的にスライド自在とした静圧軸受装置を製造する方法において、筒状の軸受体用外枠内に、前記軸受体用外枠内周面と外周部の一部が嵌合する軸体を配置し、前記軸体の外周面と前記軸受体用外枠の内周面との間に形成される空間に充填材を充填し、前記充填材が前記軸受体用外枠に固着して収縮することにより前記充填材と前記軸体との間に前記微小隙間を形成し、前記軸体外周部と前記軸受体用外枠とが嵌合した部分を削除して、前記軸受体用外枠と前記充填材とにより軸受体を構成することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、上記のように軸体と軸受体用外枠との間の空間に充填材を充填させて該充填材を前記外枠に固着した状態で収縮させるので、充填材と軸体との間にのみ、充填材の収縮量に見合う微小隙間が形成される。したがって所定の収縮量を有する充填材を選定することによって所望の微小隙間量が得られる。
上記充填材としては、ポリマー、テフロン(R)、フッ素系樹脂、塗料などを用いることができる。なお、充填材としては硬化性樹脂が望ましい。さらに、硬化性樹脂にテフロン(R)、フッ素系樹脂を添加させた低摩耗性の樹脂も望ましい。該硬化性樹脂は、熱や光、電子線の付与によって硬化するものや硬化剤を添加して硬化剤の作用によって硬化するものなどが挙げられる。これら硬化性樹脂は、硬化に際し収縮して上記微小隙間を形成するとともに、軸受体の一部として剛性を発揮する。
【0011】
また、本発明では、軸体と軸受体用外枠とを嵌合して充填材の充填に備えるので、特別な治具を必要とすることなく軸体を容易に位置決めすることができる。また、軸受体用外枠に嵌合された軸体は、充填材の充填に際しても充填圧力に抗して位置を維持することができ、軸体の位置ずれ等の不具合を防止する。
【0012】
ここで、本発明では、軸体は、軸方向と直交する方向に沿った断面が矩形状に形成され、前記軸受体用外枠が円筒状に形成されているものが挙げられる。また、軸体はこの他に、軸方向と直交する方向に沿った断面が多角形となる形状を有するものであってもよい。これら断面矩形状や断面多角形の軸体は、その角部を軸受体用外枠の内周面に当接させることにより軸体を軸受体用外枠に嵌合させることができる。
【0013】
また、本発明では、前記軸受体用外枠と前記軸体との間の空間に充填材を充填する前に、前記軸体の外周面のうち少なくとも前記充填材が充填されて接触する表面に、該充填材との接着性を阻害する表面処理を施しておくのが望ましい。上記表面処理としては、離形剤の塗布や平滑面とする研削などが挙げられる。
また、軸受体用外枠内面に充填材の接着性を増加させる表面処理を行うこともできる。該表面処理としては軸受体用外枠内面を粗面化する処理が例示される。上記両表面処理では、軸受体用外枠内表面における接着性に対し軸体表面における接着性が相対的に低くなるように、軸体表面と軸受体用外枠内面の一方または両方で上記表面処理を行えばよい。
【0014】
軸体と軸受体用外枠との間に充填材を充填して収縮させた後は、追加工として軸体と軸受体用外枠との嵌合部を切削等によって削除する。また、嵌合部は、軸体と軸受体用外枠との間に配置したスペーサ部材で構成することができる。スペーサ部材を用いる場合には、上記削除は、このスペーサ部材を取り除くことによって行うことができる。上記研削等による削除では、特別に高い加工精度は要求されず、製作コストの上昇は小さなものとなる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の空気静圧軸受装置の製造方法について、図1〜図3に示される好適実施形態を基に詳細に説明する。
【0016】
まず、図1(a)に示すように内面が嵌め合い公差内に粗く仕上げられた円筒状の軸受体用外枠11内に側面を空気静圧軸受装置の摺動面として使用可能な精度に加工した断面矩形の軸体12とを設置する。該軸体12は、前記設置に先だって、軸受体用外枠11の内径よりも僅かに大きな形状から、側面の4つの角部12a〜12dを面取り加工して該角部が軸受体用外枠11に嵌合する形状にしておくとともに、側面に離型剤を塗布しておく。
【0017】
該軸体12は、軸受体用外枠11内に設置することによって4つの角部12a〜12dのみが軸受体用外枠11の内面に嵌合し、軸受体用外枠11に囲まれる、その他の側面と軸受体用外枠11内面との間に断面円弧状の空間13a〜13dが形成される。
上記空間13a〜13dに充填材として収縮硬化する低摩擦性の樹脂を充填する。ここで、低摩擦性の樹脂を利用することにより、軸体と軸受体との相対的なスライド中に圧縮空気の供給が誤って停止した際に、軸体が樹脂との摩擦によって損傷するのを防ぐという利点がある。また、軸受体用外枠11と軸体12は嵌合しているため、樹脂を充填する時にその圧力によって軸体12の位置が移動することなく、樹脂を均一に充填することができる。なお、軸受体用外枠11の両端には樹脂が漏れないようにシール(図示せず。)がしてある。
【0018】
ここで、軸受体用外枠11内面は表面が粗く、軸体12には側面に離型剤を塗布してあるため、樹脂は図1(b)に示すように軸受体用外枠11の内面に固着して収縮硬化し、収縮硬化した樹脂部14a〜14dを形成し、該樹脂部14aから14dと軸体12側面との間に微小隙間15a〜15dを形成する。そして、軸体12の軸受体用外枠11と嵌合する側面の角部12a〜12dを追加工により削り取り、図1(c)に示すように軸受体用外枠11と樹脂部14a〜14dとにより軸受体16を構成し、空気静圧軸受装置10を得る。
【0019】
よって、本製造方法により作製した空気静圧軸受装置10は、角部12a〜12dを追加工により削り取ることにより軸体12と軸受体16との間に一体化して形成した微小隙間15に圧縮空気を供給することにより、軸受体16と軸体12とが直接接触しないようになり、軸受体16と軸体12の接触部分の摩擦係数をゼロとすることができる。この結果、軸受体16は、図2(a)及び(b)に示すように軸体12の長手方向に高精度にスライドすることができる。なお、軸受体16を固定させ、軸体12をスライド自在としてもよい。また、圧縮空気を供給するための供給穴等(図示せず)は、圧縮空気が隙間15に均等に配分されるように、軸受体16や軸体12に形成することができる。
【0020】
なお、軸受体用外枠は上述の円筒に限らず角筒状であってもよく、図3に示すように角筒状の軸受体用外枠21内に、軸受体用外枠21内周面と角部が嵌合する角柱の軸体22を配置したものであってもよい。この形態でも、軸体22の外周面と軸受体用外枠21の内周面との間に形成される空間に樹脂を充填する。樹脂は軸受体用外枠21に固着して収縮することにより樹脂部24a〜24dを形成し、樹脂部24a〜24dと軸体21との間に微小隙間25を形成する。その後、軸体22外周部と軸受体用外枠21とが嵌合した軸体22の角部部分を削除して、軸受体用外枠21と樹脂部24a〜24dとにより軸受体26を構成する。また、軸受体用外枠はその他楕円筒等の形状の筒であってもよい。
【0021】
また、軸体は上述の角柱に限らず軸受体用外枠内に設置した時に軸受体用外枠と嵌合するとともに軸受体用外枠内面と隙間を形成する形状であれば、多角柱等の適宜の形状であってもよい。
また、上記各実施形態では充填材は収縮硬化する低摩擦性の樹脂としたが、収縮硬化する材質であればその他の材質でもよい。なお、充填材の収縮量が少なく軸体との間の微小隙間が十分に形成されない場合には軸体を加工して微小隙間を形成すればよい。また、軸体12の軸受体用外枠11と嵌合する側面の角を追加工により削り取り軸体12が軸受体用外枠11と接しないようにしたが、軸受体用外枠11の軸体12と嵌合する部分を追加工により削り取り軸受体用外枠11が軸体12と接しないようにしてもよい。
【0022】
以上、本発明の空気静圧軸受装置の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、各種の改良及び変更を行ってもよいのはもちろんである。
【0023】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように本発明の空気静圧軸受装置の製造方法によれば、筒状の軸受体用外枠内に軸受体用外枠内周面と外周部の一部が嵌合する軸体を配置し、軸体の外周面と軸受体用外枠の内周面との間に形成される空間に充填材を充填し、充填材が軸受体用外枠に固着して収縮することにより充填材と軸体との間に微小隙間を形成し、軸体外周部と軸受体用外枠とが嵌合した部分を削除して、軸受体用外枠と充填材とにより軸受体を構成することができるので、軸受体を製造するために専用の治具を用いることなく、また、軸受体内面の加工を高精度にせずに空気静圧軸受装置の製造することができる。
【0024】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空気静圧軸受装置の製造方法の一実施形態の説明に供する図であり、(a)は充填材の充填前、(b)は充填材の硬化後、(c)は軸体の角部を追加工によって削除した、軸受装置完成後の断面図である。
【図2】本発明の空気静圧軸受装置の製造方法の一実施形態による空気静圧軸受装置の全体構成を示す図であり、(a)は概略的斜視図、(b)は軸方向の断面図である。
【図3】本発明の空気静圧軸受装置の製造方法の他の実施形態の説明に供する概略的断面図である。
【図4】従来の空気静圧軸受装置の製造方法の説明に供する図であり、精密ブロックの組み付けを示す概略図である。
【図5】同じく、(a)は断面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
10、30 空気静圧軸受装置
11、21 軸受体用外枠
12、22、32 軸体
12a、12b、12c、12d 角部
13a、13b、13c、13d 空間
14a、14b、14c、14d 樹脂部
15、15a、15b、15c、15d、33 微小隙間
16、26、31 軸受体
31a、31b、31c、31d 精密加工ブロック
【発明の属する技術分野】
本発明は軸体と該軸体を囲む筒状の軸受体を備え、前記軸体と前記軸受体との間に形成される微小隙間に圧縮空気を供給して軸体と軸受体とを相対的にスライド自在とした空気静圧軸受装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
精密工作機械や精密測定装置では、高精度の送り機構が必要とされ、そのための案内面(例えばガイドレール)にも高い形状精度等が要求されている。従来、高精度案内面として最も多く使用されているものが空気静圧軸受装置であり、該軸受装置では、送りテーブルや送りブロックの軸体を軸受体に対し空気の圧力で浮上させることで接触部分の摩擦抵抗をゼロにしている。これにより軸体と軸受体とは振動等を生じることなく相対的にスライドすることができ、該軸受装置によって送りテーブル等を高精度に案内することが可能になる。
上記空気静圧軸受装置の中でも特に軸体の断面形状が角形で軸受体が角筒状である空気静圧軸受装置は、比較的低コストで作製することができることから汎用的に使用されている。
【0003】
この空気静圧軸受装置では、軸体と軸受体との間に微小隙間を設けこの微小隙間に圧縮空気を供給するため、軸体と軸受体との対向面は精密面とする必要がある。ただし、角筒状の軸受体の内面に精密加工を施すことは難しいため、一体の角筒を使用する代わりに、図4、5に示すように、例えば4片の精密加工ブロック31a〜31dを組み合わせて角筒状となる軸受体31を作製し、この軸受体31内に軸体32を位置させて軸受装置30を構成している。
【0004】
また、静圧軸受装置において、軸体と軸受体との隙間を樹脂層で埋めることにより、軸受体を安価に製造する方法が知られている(特許文献1)。
該特許文献1によると、軸体に応じて形成された治具を軸受体の所定の位置に位置決めし、この治具と軸受体との隙間に樹脂層を充填し、高精度に作製された治具の形状及び加工精度を樹脂層に転写し、軸体を案内する軸受体の案内面上には樹脂層を被覆することにより、軸受体を製造するものである。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−144757号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、精密加工ブロックを組み立てて静圧軸受装置を製造する方法では、図5(a)及び(b)に示すように軸受体31と軸体32との間で形成される微小隙間33が所定量になるように各精密加工ブロック31a〜31dを精密に組み合わせなければならないため、組み立て、位置調整が難しく多大な労力を要し、熟練した技能が必要になる。このため、通常の転がり軸受装置に比較すると、空気静圧軸受装置の製造コストは高価になるという問題点がある。
【0007】
また、上記特許文献1に示される方法では、樹脂層の形成によって軸受体の内面に要求される加工精度は小さくなるものの、形状及び加工精度を樹脂層に転写するための治具と、この治具と軸受体を高精度に位置決めするための位置決め治具とが必要となる。また、樹脂層が形成された後には、形状及び加工精度を樹脂層に転写するための治具を軸受体から取り外し、新たに軸体と軸受体を組み直さなければならない。また、上記方法では軸体と軸受体との間に隙間が形成されないため、空気静圧軸受装置としてそのまま利用することはできない。
【0008】
そこで、本発明は、軸受体を製造するために専用の治具を必要とせず、軸受体内面の加工を高精度にする必要がない空気静圧軸受装置の作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明は、軸体と前記軸体を囲む筒状の軸受体を備え、前記軸体と前記軸受体との間に微小隙間を有し、前記微小隙間に圧縮空気を供給することにより、前記軸体と前記軸受体とを相対的にスライド自在とした静圧軸受装置を製造する方法において、筒状の軸受体用外枠内に、前記軸受体用外枠内周面と外周部の一部が嵌合する軸体を配置し、前記軸体の外周面と前記軸受体用外枠の内周面との間に形成される空間に充填材を充填し、前記充填材が前記軸受体用外枠に固着して収縮することにより前記充填材と前記軸体との間に前記微小隙間を形成し、前記軸体外周部と前記軸受体用外枠とが嵌合した部分を削除して、前記軸受体用外枠と前記充填材とにより軸受体を構成することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、上記のように軸体と軸受体用外枠との間の空間に充填材を充填させて該充填材を前記外枠に固着した状態で収縮させるので、充填材と軸体との間にのみ、充填材の収縮量に見合う微小隙間が形成される。したがって所定の収縮量を有する充填材を選定することによって所望の微小隙間量が得られる。
上記充填材としては、ポリマー、テフロン(R)、フッ素系樹脂、塗料などを用いることができる。なお、充填材としては硬化性樹脂が望ましい。さらに、硬化性樹脂にテフロン(R)、フッ素系樹脂を添加させた低摩耗性の樹脂も望ましい。該硬化性樹脂は、熱や光、電子線の付与によって硬化するものや硬化剤を添加して硬化剤の作用によって硬化するものなどが挙げられる。これら硬化性樹脂は、硬化に際し収縮して上記微小隙間を形成するとともに、軸受体の一部として剛性を発揮する。
【0011】
また、本発明では、軸体と軸受体用外枠とを嵌合して充填材の充填に備えるので、特別な治具を必要とすることなく軸体を容易に位置決めすることができる。また、軸受体用外枠に嵌合された軸体は、充填材の充填に際しても充填圧力に抗して位置を維持することができ、軸体の位置ずれ等の不具合を防止する。
【0012】
ここで、本発明では、軸体は、軸方向と直交する方向に沿った断面が矩形状に形成され、前記軸受体用外枠が円筒状に形成されているものが挙げられる。また、軸体はこの他に、軸方向と直交する方向に沿った断面が多角形となる形状を有するものであってもよい。これら断面矩形状や断面多角形の軸体は、その角部を軸受体用外枠の内周面に当接させることにより軸体を軸受体用外枠に嵌合させることができる。
【0013】
また、本発明では、前記軸受体用外枠と前記軸体との間の空間に充填材を充填する前に、前記軸体の外周面のうち少なくとも前記充填材が充填されて接触する表面に、該充填材との接着性を阻害する表面処理を施しておくのが望ましい。上記表面処理としては、離形剤の塗布や平滑面とする研削などが挙げられる。
また、軸受体用外枠内面に充填材の接着性を増加させる表面処理を行うこともできる。該表面処理としては軸受体用外枠内面を粗面化する処理が例示される。上記両表面処理では、軸受体用外枠内表面における接着性に対し軸体表面における接着性が相対的に低くなるように、軸体表面と軸受体用外枠内面の一方または両方で上記表面処理を行えばよい。
【0014】
軸体と軸受体用外枠との間に充填材を充填して収縮させた後は、追加工として軸体と軸受体用外枠との嵌合部を切削等によって削除する。また、嵌合部は、軸体と軸受体用外枠との間に配置したスペーサ部材で構成することができる。スペーサ部材を用いる場合には、上記削除は、このスペーサ部材を取り除くことによって行うことができる。上記研削等による削除では、特別に高い加工精度は要求されず、製作コストの上昇は小さなものとなる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の空気静圧軸受装置の製造方法について、図1〜図3に示される好適実施形態を基に詳細に説明する。
【0016】
まず、図1(a)に示すように内面が嵌め合い公差内に粗く仕上げられた円筒状の軸受体用外枠11内に側面を空気静圧軸受装置の摺動面として使用可能な精度に加工した断面矩形の軸体12とを設置する。該軸体12は、前記設置に先だって、軸受体用外枠11の内径よりも僅かに大きな形状から、側面の4つの角部12a〜12dを面取り加工して該角部が軸受体用外枠11に嵌合する形状にしておくとともに、側面に離型剤を塗布しておく。
【0017】
該軸体12は、軸受体用外枠11内に設置することによって4つの角部12a〜12dのみが軸受体用外枠11の内面に嵌合し、軸受体用外枠11に囲まれる、その他の側面と軸受体用外枠11内面との間に断面円弧状の空間13a〜13dが形成される。
上記空間13a〜13dに充填材として収縮硬化する低摩擦性の樹脂を充填する。ここで、低摩擦性の樹脂を利用することにより、軸体と軸受体との相対的なスライド中に圧縮空気の供給が誤って停止した際に、軸体が樹脂との摩擦によって損傷するのを防ぐという利点がある。また、軸受体用外枠11と軸体12は嵌合しているため、樹脂を充填する時にその圧力によって軸体12の位置が移動することなく、樹脂を均一に充填することができる。なお、軸受体用外枠11の両端には樹脂が漏れないようにシール(図示せず。)がしてある。
【0018】
ここで、軸受体用外枠11内面は表面が粗く、軸体12には側面に離型剤を塗布してあるため、樹脂は図1(b)に示すように軸受体用外枠11の内面に固着して収縮硬化し、収縮硬化した樹脂部14a〜14dを形成し、該樹脂部14aから14dと軸体12側面との間に微小隙間15a〜15dを形成する。そして、軸体12の軸受体用外枠11と嵌合する側面の角部12a〜12dを追加工により削り取り、図1(c)に示すように軸受体用外枠11と樹脂部14a〜14dとにより軸受体16を構成し、空気静圧軸受装置10を得る。
【0019】
よって、本製造方法により作製した空気静圧軸受装置10は、角部12a〜12dを追加工により削り取ることにより軸体12と軸受体16との間に一体化して形成した微小隙間15に圧縮空気を供給することにより、軸受体16と軸体12とが直接接触しないようになり、軸受体16と軸体12の接触部分の摩擦係数をゼロとすることができる。この結果、軸受体16は、図2(a)及び(b)に示すように軸体12の長手方向に高精度にスライドすることができる。なお、軸受体16を固定させ、軸体12をスライド自在としてもよい。また、圧縮空気を供給するための供給穴等(図示せず)は、圧縮空気が隙間15に均等に配分されるように、軸受体16や軸体12に形成することができる。
【0020】
なお、軸受体用外枠は上述の円筒に限らず角筒状であってもよく、図3に示すように角筒状の軸受体用外枠21内に、軸受体用外枠21内周面と角部が嵌合する角柱の軸体22を配置したものであってもよい。この形態でも、軸体22の外周面と軸受体用外枠21の内周面との間に形成される空間に樹脂を充填する。樹脂は軸受体用外枠21に固着して収縮することにより樹脂部24a〜24dを形成し、樹脂部24a〜24dと軸体21との間に微小隙間25を形成する。その後、軸体22外周部と軸受体用外枠21とが嵌合した軸体22の角部部分を削除して、軸受体用外枠21と樹脂部24a〜24dとにより軸受体26を構成する。また、軸受体用外枠はその他楕円筒等の形状の筒であってもよい。
【0021】
また、軸体は上述の角柱に限らず軸受体用外枠内に設置した時に軸受体用外枠と嵌合するとともに軸受体用外枠内面と隙間を形成する形状であれば、多角柱等の適宜の形状であってもよい。
また、上記各実施形態では充填材は収縮硬化する低摩擦性の樹脂としたが、収縮硬化する材質であればその他の材質でもよい。なお、充填材の収縮量が少なく軸体との間の微小隙間が十分に形成されない場合には軸体を加工して微小隙間を形成すればよい。また、軸体12の軸受体用外枠11と嵌合する側面の角を追加工により削り取り軸体12が軸受体用外枠11と接しないようにしたが、軸受体用外枠11の軸体12と嵌合する部分を追加工により削り取り軸受体用外枠11が軸体12と接しないようにしてもよい。
【0022】
以上、本発明の空気静圧軸受装置の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、各種の改良及び変更を行ってもよいのはもちろんである。
【0023】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように本発明の空気静圧軸受装置の製造方法によれば、筒状の軸受体用外枠内に軸受体用外枠内周面と外周部の一部が嵌合する軸体を配置し、軸体の外周面と軸受体用外枠の内周面との間に形成される空間に充填材を充填し、充填材が軸受体用外枠に固着して収縮することにより充填材と軸体との間に微小隙間を形成し、軸体外周部と軸受体用外枠とが嵌合した部分を削除して、軸受体用外枠と充填材とにより軸受体を構成することができるので、軸受体を製造するために専用の治具を用いることなく、また、軸受体内面の加工を高精度にせずに空気静圧軸受装置の製造することができる。
【0024】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空気静圧軸受装置の製造方法の一実施形態の説明に供する図であり、(a)は充填材の充填前、(b)は充填材の硬化後、(c)は軸体の角部を追加工によって削除した、軸受装置完成後の断面図である。
【図2】本発明の空気静圧軸受装置の製造方法の一実施形態による空気静圧軸受装置の全体構成を示す図であり、(a)は概略的斜視図、(b)は軸方向の断面図である。
【図3】本発明の空気静圧軸受装置の製造方法の他の実施形態の説明に供する概略的断面図である。
【図4】従来の空気静圧軸受装置の製造方法の説明に供する図であり、精密ブロックの組み付けを示す概略図である。
【図5】同じく、(a)は断面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
10、30 空気静圧軸受装置
11、21 軸受体用外枠
12、22、32 軸体
12a、12b、12c、12d 角部
13a、13b、13c、13d 空間
14a、14b、14c、14d 樹脂部
15、15a、15b、15c、15d、33 微小隙間
16、26、31 軸受体
31a、31b、31c、31d 精密加工ブロック
Claims (4)
- 軸体と前記軸体を囲む筒状の軸受体を備え、
前記軸体と前記軸受体との間に微小隙間を有し、
前記微小隙間に圧縮空気を供給することにより、前記軸体と前記軸受体とを相対的にスライド自在とした空気静圧軸受装置を製造する方法において、
筒状の軸受体用外枠内に、前記軸受体用外枠内周面と外周部の一部が嵌合する軸体を配置し、前記軸体の外周面と前記軸受体用外枠の内周面との間に形成される空間に充填材を充填し、前記充填材が前記軸受体用外枠に固着して収縮することにより前記充填材と前記軸体との間に前記微小隙間を形成し、前記軸体外周部と前記軸受体用外枠とが嵌合した部分を削除して、前記軸受体用外枠と前記充填材とにより軸受体を構成することを特徴とする空気静圧軸受装置の製造方法。 - 前記軸体は、軸方向と直交する方向に沿った断面が矩形状に形成され、前記軸受体用外枠が円筒状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の空気静圧軸受装置の製造方法。
- 前記充填材が硬化樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の空気静圧軸受装置の製造方法。
- 前記軸受体用外枠と前記軸体との間の空間に充填材を充填する前に、前記軸体の外周面のうち少なくとも前記充填材が充填されて接触する表面に、該充填材との接着性を阻害する表面処理を施しておくことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気静圧軸受装置の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003018355A JP2004232654A (ja) | 2003-01-28 | 2003-01-28 | 空気静圧軸受装置の製造方法 |
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JP2003018355A JP2004232654A (ja) | 2003-01-28 | 2003-01-28 | 空気静圧軸受装置の製造方法 |
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ID=32948503
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013194816A (ja) * | 2012-03-19 | 2013-09-30 | Sumitomo Heavy Ind Ltd | エアガイド装置 |
JP5916929B1 (ja) * | 2015-06-18 | 2016-05-11 | 株式会社滝澤鉄工所 | 非円形加工装置 |
-
2003
- 2003-01-28 JP JP2003018355A patent/JP2004232654A/ja active Pending
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