JP2004232059A - 断熱性に優れた積層金属部材 - Google Patents
断熱性に優れた積層金属部材 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004232059A JP2004232059A JP2003024011A JP2003024011A JP2004232059A JP 2004232059 A JP2004232059 A JP 2004232059A JP 2003024011 A JP2003024011 A JP 2003024011A JP 2003024011 A JP2003024011 A JP 2003024011A JP 2004232059 A JP2004232059 A JP 2004232059A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- layer
- metal
- heat insulating
- thickness
- laminated
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Images
Landscapes
- Powder Metallurgy (AREA)
Abstract
【課題】ダイカストマシン用プランジャースリーブ等として有用な断熱保温性に優れた積層金属部材を提供する。
【解決手段】セラミックスの繊維又は粉末の層を挟んで、同種又は異種の金属からなる金属円筒体を同心円状に重ね合わせ、金属円筒体の重ね合わせ面を押圧する向きの加工荷重を含む熱間又は冷間加工により形成された、金属層(2)(21,22…)と金属層間に介在する圧密化された未焼結セラミックス層である熱絶縁層熱絶縁層(3)(31,32…)とからなる同心円状層構造を有している。熱絶縁層(3)の層厚は好ましくは1mm以下、最内側の金属層(21)の層厚は例えば3−15mmである。
【選択図】図4
【解決手段】セラミックスの繊維又は粉末の層を挟んで、同種又は異種の金属からなる金属円筒体を同心円状に重ね合わせ、金属円筒体の重ね合わせ面を押圧する向きの加工荷重を含む熱間又は冷間加工により形成された、金属層(2)(21,22…)と金属層間に介在する圧密化された未焼結セラミックス層である熱絶縁層熱絶縁層(3)(31,32…)とからなる同心円状層構造を有している。熱絶縁層(3)の層厚は好ましくは1mm以下、最内側の金属層(21)の層厚は例えば3−15mmである。
【選択図】図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属部材の内部にセラミックスからなる熱絶縁層を介在させた積層構造による卓抜した断熱保温性を有し、例えばダイカストマシン用プランジャースリーブ等として好適に使用される積層金属部材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイカストマシンによる非鉄金属製品の鋳造は、非鉄金属溶湯(アルミニウム合金やマグネシウム合金等)を、プランジャースリーブを介して金型のキャビティに加圧注入することにより行なわれる。プランジャースリーブは図9に示すように、後端側に給湯口(1a)を有し先端(1b)を金型(図示せず)に接続される中空円筒体であり、給湯口(1a)から中空孔(1C)内に供給される金属溶湯は、中空孔内を進退駆動されるプランジャーチップ(7)により金型内に圧入される。従ってプランジャースリーブ(1)は、中空孔内に供給される金属溶湯に対する腐蝕抵抗性,耐熱衝撃性,及び中空孔内を進退するプランジャーチップ(7)の摺動性及びその摺動に対する摩耗抵抗性を必要とする。これらの物性を具備するものとして、SKD61に代表される合金工具鋼(JIS−G4404)からなるスリーブが使用されている。
【0003】
上記鋳造操業において、プランジャースリーブに供給された非鉄金属溶湯の温度降下が大きいことが従来問題とされてきた。これは、プランジャースリーブの熱伝導率が高く(SKD61合金工具鋼の熱伝導率:約34W/m・K)、スリーブとの接触により生じる熱損失が大きいことによる。溶湯の温度不足は、鋳造品質の安定確保を困難にし、鋳造製品に湯境い・湯廻り不良等の欠陥を生じる原因となる。また温度低下によりスリーブの内面に溶湯が凝着すると、スリーブ内を進退移動するプランジャーチップの耐用寿命に悪影響を与えるほか、凝固片が鋳造製品に混入し品質を損なうことにもなる。溶湯の温度低下を見込んで溶湯の供給温度を高めに設定することは、熱エネルギーコストの負担増となるばかりか、構成部材の熱的損傷を速めることになり好ましくない。
【0004】
溶湯の温度低下を抑制するためのプランジャースリーブの工夫として、次のような方法が知られている。
a.スリーブの筒壁の肉厚内部に加熱油の流路を形成し、加熱油(例えば200℃)を循環流通させる。
b.熱伝導率の低いセラミックスリーブを金属スリーブの内面に嵌め込んで一体化する(特許文献1)
c.スリーブを、内筒部(SKD61工具鋼等)と外筒部(熱伝導率の低いステンレス鋼等)からなる2層複合構造とし、内筒部と外筒部の境界面はろう付け,拡散接合又は熱間静水圧処理等で接合する(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】
特開平2−179346号公報(p.2左上欄末行〜右上欄18行図1,図2)
【特許文献2】
特開平11−300461号公報(p.3段落[0009]−[0017])
【0006】
しかし、プランジャースリーブの筒壁内に流体流路を設け加熱油を流通して溶湯の降温を抑制する内部加熱構造(上記a)は、装置構成が複雑化しメンテナンスの負担が大きい。セラミックスリーブと金属スリーブとを嵌合一体化したスリーブ(上記b)では、セラミックス層(脆性材料である)が金属溶湯と接触するため、金属溶湯の供給に伴う熱衝撃による亀裂損傷が生じ易く安定性に乏しく、またスリーブ内面はプランジャーチップに対する摺動性を必要とするためセラミックス材種の選択が制限される。更に、内筒のまわりを低熱伝導率の外筒で被覆して界面を接合したスリーブ(上記c)の複合構造による保温効果はそれほど大きくはなく、また接合された内筒と外筒の接合界面にムラがあると、保温効果の均一性が低下しスリーブに熱歪みが生じ易くなるという難点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、断熱保温性及び構造部材としての安定性に優れ、ダイカストマシン用プランジャースリーブとして、金属溶湯の温度降下を効果的に抑制防止し、安定した加圧鋳造操業を維持することができる積層金属部材を提供するものである。
更に本発明の他の目的は、高温流体等を取り扱う各種機器装置における断熱部材として、流体の熱損失を効果的に抑制防止し得る断熱保温性に優れた積層金属部材を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の積層金属部材は、セラミックスの繊維又は粉末の層を挟んで、同種又は異種の金属からなる複数の金属円筒体を同心円状に重ね合わせ、金属円筒体の重ね合わせ面を押圧する向きの加工荷重を含む熱間又は冷間加工により形成された、金属層と金属層間に介在する圧密化された未焼結セラミックス層である熱絶縁層とからなる同心円状層構造を有している。
【0009】
本発明の積層金属部材は、金属層の間に未焼結セラミックス層を介在させた積層構造の効果として卓抜した断熱性を示す。セラミックスの低熱伝導性を利用した従来の断熱部材の断熱効果は、セラミックスの層厚に依存し、従って所要の断熱効果を得ようとすれば、それに見合った厚い層厚のセラミックス層を必要とする。これと異なって、本発明の積層金属部材は、セラミックスの層厚から予測される効果を大きく超える卓抜した熱遮断性を示す。この熱遮断性は、積層構造の特異性、特に圧密化した未焼結のセラミックスからなる熱絶縁層と金属層との層境界における界面熱抵抗が著しく高いことによるものと考えられ、セラミックス層が1mm以下の極く薄い層であっても明瞭な断熱保温効果が確保される。
【0010】
なお、熱絶縁層のセラミックスについて未焼結は、焼結反応がないことのほか、軽度の焼結が許容される。焼結の度合いをセラミックス層の相対密度(通常のセラミックス焼結製品のそれは通常約95%以上である)を指標として表せば、相対密度が90%以下と低く、熱絶縁層と金属層の層境界の高い界面熱抵抗性が損なわれない軽度の焼結はここにいう未焼結に含ませることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について実施例を示す図面を参照して具体的に説明する。
図1及び図2はプランジャースリーブ等として使用される中空円筒形状を有する積層金属部材の例を示している(図1:軸方向断,図2:I−I断面)。この積層金属部材は2つの金属層(2)(21,22)とその金属層間に介在するセラミックスからなる熱絶縁層(31)とが同心円状に積層した3層構造を有している。
図3及び図4は、中空筒形状を有する積層金属部材の他の例を示している(図3:軸方向断面,図4:I−I断面図)。この積層金属部材は3つの金属層(2)(21,22,23)とそれぞれの金属層間に介在するセラミックスの熱絶縁層(3)(31,32)とからなる同心円状の5層構造を有している。
【0012】
各熱絶縁層(3)は、繊維状又は粒状セラミックスで形成され、円周方向及び軸長方向に一様な層厚をもって金属層(2)同士の層間に介在している。熱絶縁層(3)を形成するセラミックス(ガラスを含む)の材種は、例えばアルミナ(Al2O3),窒化けい素(Si3N4),ジルコニア(ZrO2),シリカ(SiO2),アルミナ−シリカ(Al2O3−SiO2)等が挙げられるが、これに限定されない。図3(図4)のように熱絶縁層(3)が複数層である場合の各層のセラミックス材種は同一種又は異種材である。
【0013】
熱絶縁層(3)の層厚は厚くする必要はない。積層構造の安定性を損なわないために1mm以下であるのが好ましく、またこのような薄い層厚とすることにより、例えば積層金属部材の製造工程や実機使用過程で生じる金属層(2)の熱膨張収縮変化に追従して変形し易く熱応力吸収緩和層としてはたらく。より好ましくは0.2〜0.5mmである。熱絶縁層(3)の緻密の程度は特に限定されないが、積層金属部材の構造部材としての堅牢性の点から、相対密度約70%以上であるのが好ましい。
【0014】
熱絶縁層(3)のセラミックスは、通常のセラミックス製品のように焼結反応を十分に進めた高密度セラミックスと異なって焼結反応が抑制されており、金属層(2)との積層境界は高い境界熱抵抗性を示す。また一般に異種材料からなる積層構造体は、製造工程や実機使用過程で材料間の熱膨張差による熱歪・亀裂等の発生が問題となるが、金属層(2)間に介在する熱絶縁層(3)は層厚の薄い未焼結のセラミックス層であることにより、金属層(2)の熱収縮変形に伴なう形状変化、例えば図5に示すように金属層(2)間で波打ち形状に変形し、熱応力の吸収緩和層として効果的に機能する。
【0015】
金属層(2)の材種は、積層金属部材の具体的用途・使用環境条件に応じて適宜選択される。ダイカストマシン用プランジャースリーブとしての積層金属部材について述べれば、最内層(金属溶湯と接触する層)である第1金属層(21)は、スリーブ材料として周知のSKD61(C:0.32−0.42%,Si:0.8−1.2%,Mn:0.5%以下,P:0.03%以下,S:0.03%以下,Cr:4.5−5.5%,Mo:1.0−1.5%,V:0.8−1.2%))に代表される合金工具鋼SKD材(JIS−G4404)を適用するのが好ましい。また、高速度工具鋼SKH材(JIS−G4403)も好適に使用される。
【0016】
上記第1金属層(21)の他の材種例として、チタン又はチタン合金のマトリックスに炭化チタンが分散相として混在した複合組織を有する焼結金属を使用することができる。その好適な複合焼結金属として、(1)チタン(Ti)をマトリックスとし、これに20〜30面積%を占める炭化チタン(TiC)が混在したTi−TiC系複合焼結金属、(2)Ti−Mo合金(Mo含有量20−35wt%)をマトリックスとし、これに20〜30面積%を占める炭化チタン(TiC)が混在したTi合金−TiC系複合焼結金属が挙げれられる。
【0017】
第1金属層(21)を除く他の金属層(2)(22,23)の材種は、第1金属層(21)と同様の合金工具鋼(SKD材)、高速度工具鋼(SKH材)、複合焼結金属(上記Ti−TiC系焼結金属)等であってもよいが、それに限定されない。第1金属層(21)と異なって金属溶湯に対する腐蝕抵抗性やプランジャースリーブの摺動性を必要としないので、例えばS45C等の機械構造用炭素鋼(JIS−G4051)やSS400等の一般構造用鋼材(JIS−G3101)等を適宜使用することができる。
【0018】
積層金属部材における積層数に本質的な制限はないが、ダイカストマシンのプランジャースリーブとして適用される中空筒体の場合、熱絶縁層(3)の層数は1〜4層程度であれば十分である。
【0019】
金属層(2)(21,22,23…)の層数、層厚等は、積層金属部材の具体適用途・使用形態に応じて設計される。積層金属部材の全層厚(筒体肉厚)及び第1金属層(21)は、実機使用条件に対応した厚さを必要とするが、中間の金属層(熱絶縁層3の層数が2層以上の場合における熱絶縁層に挟まれた金属層)の層厚はそのような制限を受けない。熱絶縁層(3)が2層以上である場合の各熱絶縁層に挟まれた金属層は、熱絶縁層同士を分断する層であるので、断熱効果の点からその層厚は薄い方が有利である。例えば、図6(図は熱絶縁層が3層の例である)において、熱絶縁層(31)と(32)に挟まれた第2金属層(22)の層厚(t22)、及び熱絶縁層(32)と(33)に挟まれた第3金属層(23)の層厚(t23)のそれぞれは、第1金属層(21)の層厚(t21)を超えない厚さ(t21≧t22,t23)とするのが好ましい。
【0020】
第1金属層(21)の層厚は、所要の機械強度が保持される範囲内で薄く設計するのが有利である。例えばダイカストマシン用プランジャースリーブとして製造される積層金属部材であって、第1金属層(21)がSKD合金工具鋼やSKH高速度鋼、または前記複合焼結金属からなる場合、該金属層(21)の好ましい層厚は約3〜15mm、より好ましくは3〜10mmであり、スリーブ(1)の全肉厚及び中空孔径の大きさに応じてこの範囲内で適宜設計するのがよい。また、上記のように熱絶縁層(3)を2層以上とする場合、熱絶縁層で囲まれた金属層は第1金属層(21)の層厚以下の層厚とするのが好ましい。
【0021】
プランジャースリーブに本発明の積層構造を適用することにより、スリーブの内側層域における径方向の熱伝導率(αi)を15W/m・K以下に抑えることができる。ここに内側層域とは、図6に示すように、最外側の熱絶縁層(図の例では熱絶縁層33)で囲まれた層域(最外側の熱絶縁層33を含む)(Li)を指している。熱絶縁層(3)が1層のみの場合は、第1金属層(21)とその熱絶縁層(31)とからなる層域が内側層域(Li)である。
プランジャースリーブのサイズはダイカストマシンの規模・能力により、中空孔径は約40〜180mm スリーブ肉厚は約20〜80mmと広範に亘るが、このような一般的サイズのプランジャースリーブにおいて内側層域(Li)の熱伝導率が上記のように抑制されることにより、肉厚全体の熱伝導率を低くし改良された断熱性をもたせることができる。
【0022】
次に本発明の積層金属部材の製造について説明する。
本発明の積層金属部材は、金属層(2)の形成材料と熱絶縁層(3)の形成材料とを積層し、金属層形成材料の重ね合わせ面同士を押圧する向きの加工荷重を含む熱間等方圧加圧成形(HIP),熱間押出成形,冷間等方圧加圧成形(バルジ加工)等の加圧成形加工を行なうことにより製造される。
【0023】
図7は、中空筒形状を有する積層金属部材を製造するための金属層形成材料(20)(21,22)と熱絶縁層形成材料(31)とを積層した層材料組付け体(10)の例を示している。第1金属層材料(21)及び第2金属層材料(22)は金属円筒体(鋳造品,圧延品,焼結製品等)であり、熱絶縁層形成材料(31)はセラミックス繊維シート又はセラミックス粉末である。第1金属層材料(21)と第2金属層材料(22)との隙間に熱絶縁層材料(31)が装填され、底面側と頂面側は端板(41)(42)で閉塞(溶接w等で固定)されている。なお複数の材料を組み付けてHIP等の加圧成形に付す場合、層材料組付け体(10)の内側(図7では熱絶縁層材料31を挟む金属層材料21−22間の隙間)を真空脱気するのが通常であるが、本発明の積層金属部材の製造においては、脱気処理を省略し大気圧のままとしてよい。上記層材料組付け体(10)を、加圧成形加工に付し、加圧成形加工後、適宜の機械加工を施して目的とする積層金属部材を得る。
【0024】
ダイカストマシンのプランジャースリーブを目的とする中空円筒状の積層金属部材の製造では、第1金属層材料(21)としてSKD合金工具鋼やSKH高速度工具鋼等の円筒体、または前記焼結金属(Ti−TiC系,Ti−Mo合金−TiC系焼結金属)の円筒体を使用し、それ以外の金属層材料(22)は第1金属層材料と同種または異種(例えばS45C等の機械構造用炭素鋼、SS400等の一般構造用鋼材など)の円筒体を使用してよい。熱絶縁層材料(31)のセラミックス材種は任意であるが、繊維シートの使用は装填操作が容易で、形成される熱絶縁層(3)の均質性を確保し易い点で有利である。加圧成形加工法として熱間等方圧加圧成形(HIP)を適用する場合、温度:約300〜1000℃、加圧力:50〜200MPaの処理条件のもとに、金属層材料(20)(21.22)の塑性変形と、熱絶縁層材料(31)の焼結反応が抑制された圧密化を伴う加圧加工を効率よく達成することができる。
【0025】
前記図7の層材料組付け体(10)に加圧成形加工を施して得られる積層金属部材は、金属層(21)(22)と熱絶縁層(31)とからなる3層構造であるが、5層構造(図3,図4)及びそれ以上の層数を有する積層金属部材を製造する場合は、その層数に応じて層材料組付け体(10)(図5)の層形成材料(20)(30)を使用して上記と同様の加圧加工処理を行なえばよい。
このような異種材料を組み合せた層材料組付け体(10)に熱間等方圧加圧成形等の熱間加圧成形が施される場合、材料相互間の熱膨張・収縮量の相違による熱歪・亀裂等の熱的損傷の発生が問題となるが、本発明においては金属層(2)間の熱絶縁層(3)として介在するセラミックス層により熱応力が吸収緩和され、上記不具合を生じさせずに健全な積層金属部材を得ることができる。
【0026】
なお、第1金属層(21)が前記複合焼結金属である積層金属部材(1)を熱間等方圧加圧成形により製造する場合、図7の層材料組付け体(10)における金属層材料(21)として、焼結金属の円筒体を使用する方法に代え、焼結原料粉末(チタンまたはチタン合金粉末とセラミックス粉末の混合粉末)を使用し、熱間等方圧加圧成形過程で第1金属層の形成(焼結)と積層構造の形成とを並行して行なわせることも可能である。
【0027】
次に本発明の積層構造による断熱保温効果を熱伝導率測定試験に基づいて説明する。図8[1]に測定試料を示す。測定試料(S)は表層(51)と基層(52)及び層間の熱絶縁層(3)とからなる円盤形状ブロックである。
測定試料の製作:同図[2]に示すように、基層材料(52)の凹陥(521)に熱絶縁層材料(30)(厚さ1mm)を2〜4枚重ねて装填したうえ、表層材料(51)を被せ、HIP処理(950℃×100MPa)に付し、熱絶縁層材料(30)を押圧すると共に表層材料(51)と基層材料(52)の接触面(円周側面)を拡散接合する。
【0028】
[測定試料]
測定試料(S1)(S2)(S3)の仕様は次のとおりである。
試料サイズ:直径(D)50mm,厚さ(T)19mm,表面層厚(t)3mm
熱絶縁層の平面径(d)38mm
構成材種 :表層(51)SKD61(熱伝導率34W/m・K)
基層(52)SS400(熱伝導率59W/m・K)
熱絶縁層(3)Al2O3−SiO2繊維(熱伝導率1W/m・K)
熱絶縁層の層厚:試料1=0.5mm / 試料2=0.3mm / 試料3=0.2mm
【0029】
[測定条件]
測定法:温度傾斜法
測定方向:試料厚さ方向(表層側を高温側に設定)
測定温度:35−45℃
測定熱流密度:14kW/m2
試料端温度差:7.9−8.25℃
試料圧着圧力:約72kPa(装置−試料界面は高熱伝導性グリース使用)
【0030】
[測定結果]
試料全体(全肉厚)の熱伝導率(α)の測定値、及びその測定値(α)と試料構成材料の熱伝導率とからフーリエの法則に従って算出される内側層域(熱絶縁層3を含む)の見掛けの熱伝導率(αi)を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1に示したように、測定試料(S)の全体の熱伝導率及び表層部は、試料を形成する金属層材料の熱伝導率(SKD61:34w/mK,SS400:59w/mK)に比し著しく低い。ちなみに、熱絶縁層材料(30)を省略し、表層材料(51)(SKD61)と基層材料(52)(SS400)との接触界面の全体を完全に拡散接合してなる試料(表層厚3mm,全肉厚19mm)について、試料全体の熱伝導率をフーリエの法則に従って求めると、その熱伝導率(α)は約52.9W/m・Kである。これを上記表1の熱伝導率の測定値(α)と比較すると両者の差異は歴然であり、本発明の積層構造に基づく熱遮断効果は絶大である。なお、熱絶縁層を挟む界面全体の熱遮断性の均質性が高く、円筒体では円周方向及び軸長方向における偏熱とそれによる歪が少ないことも確認されている。
【0033】
【発明の効果】
本発明の積層金属部材は、金属層間にセラミックス層を介在させた積層構造の効果として卓抜した熱遮断性能を有することにより、例えばダイカストマシン用プランジャースリーブとして適用される場合は、スリーブ内の金属溶湯の温度低下を抑制し、金属溶湯の温度管理の容易化、鋳造品質の安定化、更には溶湯温度を確保に必要な熱エネルギーの節減等の効果が得られる。金属溶湯と接触する最内層(金属溶湯との接触面)が金属層であるのでセラミックス層の場合のような不安定さがなく、金属材種の選択により金属溶湯に対する腐蝕抵抗性、耐熱衝撃性及びプランジャースリーブに対する良好な摺動特性等を確保することも容易である。
本発明の積層金属部材は、このほかに高温又は低温流体を取り扱う各種機器装置における断熱保温用構造部材、例えばスチームパイプ、熱水あるいは冷却水の供給配管、高温側と低温側との隔壁材等として、熱損失の効果的な抑制防止効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の中空筒形状を有する積層金属部材の例を示す軸方向断面図である。
【図2】図1のI−I断面図である。
【図3】本発明の中空筒形状を有する積層金属部材の他の例を示す軸方向断面図である。
【図4】図3のI−I断面図である。
【図5】金属層に挟まれた熱絶縁層の形状変化を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の積層金属部材の内側層域の説明図である。
【図7】本発明の積層金属部材を製造するための層材料組付け体の例を示す断面説明図である。
【図8】実施例の熱伝導率測定試料の断面説明図([1]図)、及びその製作要領説明図([2]図)である。
【図9】プランジャースリーブの例を示す軸方向断面図である。
【符号の説明】
1:積層金属部材(プランジャースリーブ)
2(21,22,23):金属層
3(31,32):熱絶縁層
10:層材料組付け体
20(21,22):金属層材料
30(31):熱絶縁層材料
51:表層
52:基層
S:熱伝導率測定試料
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属部材の内部にセラミックスからなる熱絶縁層を介在させた積層構造による卓抜した断熱保温性を有し、例えばダイカストマシン用プランジャースリーブ等として好適に使用される積層金属部材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイカストマシンによる非鉄金属製品の鋳造は、非鉄金属溶湯(アルミニウム合金やマグネシウム合金等)を、プランジャースリーブを介して金型のキャビティに加圧注入することにより行なわれる。プランジャースリーブは図9に示すように、後端側に給湯口(1a)を有し先端(1b)を金型(図示せず)に接続される中空円筒体であり、給湯口(1a)から中空孔(1C)内に供給される金属溶湯は、中空孔内を進退駆動されるプランジャーチップ(7)により金型内に圧入される。従ってプランジャースリーブ(1)は、中空孔内に供給される金属溶湯に対する腐蝕抵抗性,耐熱衝撃性,及び中空孔内を進退するプランジャーチップ(7)の摺動性及びその摺動に対する摩耗抵抗性を必要とする。これらの物性を具備するものとして、SKD61に代表される合金工具鋼(JIS−G4404)からなるスリーブが使用されている。
【0003】
上記鋳造操業において、プランジャースリーブに供給された非鉄金属溶湯の温度降下が大きいことが従来問題とされてきた。これは、プランジャースリーブの熱伝導率が高く(SKD61合金工具鋼の熱伝導率:約34W/m・K)、スリーブとの接触により生じる熱損失が大きいことによる。溶湯の温度不足は、鋳造品質の安定確保を困難にし、鋳造製品に湯境い・湯廻り不良等の欠陥を生じる原因となる。また温度低下によりスリーブの内面に溶湯が凝着すると、スリーブ内を進退移動するプランジャーチップの耐用寿命に悪影響を与えるほか、凝固片が鋳造製品に混入し品質を損なうことにもなる。溶湯の温度低下を見込んで溶湯の供給温度を高めに設定することは、熱エネルギーコストの負担増となるばかりか、構成部材の熱的損傷を速めることになり好ましくない。
【0004】
溶湯の温度低下を抑制するためのプランジャースリーブの工夫として、次のような方法が知られている。
a.スリーブの筒壁の肉厚内部に加熱油の流路を形成し、加熱油(例えば200℃)を循環流通させる。
b.熱伝導率の低いセラミックスリーブを金属スリーブの内面に嵌め込んで一体化する(特許文献1)
c.スリーブを、内筒部(SKD61工具鋼等)と外筒部(熱伝導率の低いステンレス鋼等)からなる2層複合構造とし、内筒部と外筒部の境界面はろう付け,拡散接合又は熱間静水圧処理等で接合する(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】
特開平2−179346号公報(p.2左上欄末行〜右上欄18行図1,図2)
【特許文献2】
特開平11−300461号公報(p.3段落[0009]−[0017])
【0006】
しかし、プランジャースリーブの筒壁内に流体流路を設け加熱油を流通して溶湯の降温を抑制する内部加熱構造(上記a)は、装置構成が複雑化しメンテナンスの負担が大きい。セラミックスリーブと金属スリーブとを嵌合一体化したスリーブ(上記b)では、セラミックス層(脆性材料である)が金属溶湯と接触するため、金属溶湯の供給に伴う熱衝撃による亀裂損傷が生じ易く安定性に乏しく、またスリーブ内面はプランジャーチップに対する摺動性を必要とするためセラミックス材種の選択が制限される。更に、内筒のまわりを低熱伝導率の外筒で被覆して界面を接合したスリーブ(上記c)の複合構造による保温効果はそれほど大きくはなく、また接合された内筒と外筒の接合界面にムラがあると、保温効果の均一性が低下しスリーブに熱歪みが生じ易くなるという難点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、断熱保温性及び構造部材としての安定性に優れ、ダイカストマシン用プランジャースリーブとして、金属溶湯の温度降下を効果的に抑制防止し、安定した加圧鋳造操業を維持することができる積層金属部材を提供するものである。
更に本発明の他の目的は、高温流体等を取り扱う各種機器装置における断熱部材として、流体の熱損失を効果的に抑制防止し得る断熱保温性に優れた積層金属部材を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の積層金属部材は、セラミックスの繊維又は粉末の層を挟んで、同種又は異種の金属からなる複数の金属円筒体を同心円状に重ね合わせ、金属円筒体の重ね合わせ面を押圧する向きの加工荷重を含む熱間又は冷間加工により形成された、金属層と金属層間に介在する圧密化された未焼結セラミックス層である熱絶縁層とからなる同心円状層構造を有している。
【0009】
本発明の積層金属部材は、金属層の間に未焼結セラミックス層を介在させた積層構造の効果として卓抜した断熱性を示す。セラミックスの低熱伝導性を利用した従来の断熱部材の断熱効果は、セラミックスの層厚に依存し、従って所要の断熱効果を得ようとすれば、それに見合った厚い層厚のセラミックス層を必要とする。これと異なって、本発明の積層金属部材は、セラミックスの層厚から予測される効果を大きく超える卓抜した熱遮断性を示す。この熱遮断性は、積層構造の特異性、特に圧密化した未焼結のセラミックスからなる熱絶縁層と金属層との層境界における界面熱抵抗が著しく高いことによるものと考えられ、セラミックス層が1mm以下の極く薄い層であっても明瞭な断熱保温効果が確保される。
【0010】
なお、熱絶縁層のセラミックスについて未焼結は、焼結反応がないことのほか、軽度の焼結が許容される。焼結の度合いをセラミックス層の相対密度(通常のセラミックス焼結製品のそれは通常約95%以上である)を指標として表せば、相対密度が90%以下と低く、熱絶縁層と金属層の層境界の高い界面熱抵抗性が損なわれない軽度の焼結はここにいう未焼結に含ませることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について実施例を示す図面を参照して具体的に説明する。
図1及び図2はプランジャースリーブ等として使用される中空円筒形状を有する積層金属部材の例を示している(図1:軸方向断,図2:I−I断面)。この積層金属部材は2つの金属層(2)(21,22)とその金属層間に介在するセラミックスからなる熱絶縁層(31)とが同心円状に積層した3層構造を有している。
図3及び図4は、中空筒形状を有する積層金属部材の他の例を示している(図3:軸方向断面,図4:I−I断面図)。この積層金属部材は3つの金属層(2)(21,22,23)とそれぞれの金属層間に介在するセラミックスの熱絶縁層(3)(31,32)とからなる同心円状の5層構造を有している。
【0012】
各熱絶縁層(3)は、繊維状又は粒状セラミックスで形成され、円周方向及び軸長方向に一様な層厚をもって金属層(2)同士の層間に介在している。熱絶縁層(3)を形成するセラミックス(ガラスを含む)の材種は、例えばアルミナ(Al2O3),窒化けい素(Si3N4),ジルコニア(ZrO2),シリカ(SiO2),アルミナ−シリカ(Al2O3−SiO2)等が挙げられるが、これに限定されない。図3(図4)のように熱絶縁層(3)が複数層である場合の各層のセラミックス材種は同一種又は異種材である。
【0013】
熱絶縁層(3)の層厚は厚くする必要はない。積層構造の安定性を損なわないために1mm以下であるのが好ましく、またこのような薄い層厚とすることにより、例えば積層金属部材の製造工程や実機使用過程で生じる金属層(2)の熱膨張収縮変化に追従して変形し易く熱応力吸収緩和層としてはたらく。より好ましくは0.2〜0.5mmである。熱絶縁層(3)の緻密の程度は特に限定されないが、積層金属部材の構造部材としての堅牢性の点から、相対密度約70%以上であるのが好ましい。
【0014】
熱絶縁層(3)のセラミックスは、通常のセラミックス製品のように焼結反応を十分に進めた高密度セラミックスと異なって焼結反応が抑制されており、金属層(2)との積層境界は高い境界熱抵抗性を示す。また一般に異種材料からなる積層構造体は、製造工程や実機使用過程で材料間の熱膨張差による熱歪・亀裂等の発生が問題となるが、金属層(2)間に介在する熱絶縁層(3)は層厚の薄い未焼結のセラミックス層であることにより、金属層(2)の熱収縮変形に伴なう形状変化、例えば図5に示すように金属層(2)間で波打ち形状に変形し、熱応力の吸収緩和層として効果的に機能する。
【0015】
金属層(2)の材種は、積層金属部材の具体的用途・使用環境条件に応じて適宜選択される。ダイカストマシン用プランジャースリーブとしての積層金属部材について述べれば、最内層(金属溶湯と接触する層)である第1金属層(21)は、スリーブ材料として周知のSKD61(C:0.32−0.42%,Si:0.8−1.2%,Mn:0.5%以下,P:0.03%以下,S:0.03%以下,Cr:4.5−5.5%,Mo:1.0−1.5%,V:0.8−1.2%))に代表される合金工具鋼SKD材(JIS−G4404)を適用するのが好ましい。また、高速度工具鋼SKH材(JIS−G4403)も好適に使用される。
【0016】
上記第1金属層(21)の他の材種例として、チタン又はチタン合金のマトリックスに炭化チタンが分散相として混在した複合組織を有する焼結金属を使用することができる。その好適な複合焼結金属として、(1)チタン(Ti)をマトリックスとし、これに20〜30面積%を占める炭化チタン(TiC)が混在したTi−TiC系複合焼結金属、(2)Ti−Mo合金(Mo含有量20−35wt%)をマトリックスとし、これに20〜30面積%を占める炭化チタン(TiC)が混在したTi合金−TiC系複合焼結金属が挙げれられる。
【0017】
第1金属層(21)を除く他の金属層(2)(22,23)の材種は、第1金属層(21)と同様の合金工具鋼(SKD材)、高速度工具鋼(SKH材)、複合焼結金属(上記Ti−TiC系焼結金属)等であってもよいが、それに限定されない。第1金属層(21)と異なって金属溶湯に対する腐蝕抵抗性やプランジャースリーブの摺動性を必要としないので、例えばS45C等の機械構造用炭素鋼(JIS−G4051)やSS400等の一般構造用鋼材(JIS−G3101)等を適宜使用することができる。
【0018】
積層金属部材における積層数に本質的な制限はないが、ダイカストマシンのプランジャースリーブとして適用される中空筒体の場合、熱絶縁層(3)の層数は1〜4層程度であれば十分である。
【0019】
金属層(2)(21,22,23…)の層数、層厚等は、積層金属部材の具体適用途・使用形態に応じて設計される。積層金属部材の全層厚(筒体肉厚)及び第1金属層(21)は、実機使用条件に対応した厚さを必要とするが、中間の金属層(熱絶縁層3の層数が2層以上の場合における熱絶縁層に挟まれた金属層)の層厚はそのような制限を受けない。熱絶縁層(3)が2層以上である場合の各熱絶縁層に挟まれた金属層は、熱絶縁層同士を分断する層であるので、断熱効果の点からその層厚は薄い方が有利である。例えば、図6(図は熱絶縁層が3層の例である)において、熱絶縁層(31)と(32)に挟まれた第2金属層(22)の層厚(t22)、及び熱絶縁層(32)と(33)に挟まれた第3金属層(23)の層厚(t23)のそれぞれは、第1金属層(21)の層厚(t21)を超えない厚さ(t21≧t22,t23)とするのが好ましい。
【0020】
第1金属層(21)の層厚は、所要の機械強度が保持される範囲内で薄く設計するのが有利である。例えばダイカストマシン用プランジャースリーブとして製造される積層金属部材であって、第1金属層(21)がSKD合金工具鋼やSKH高速度鋼、または前記複合焼結金属からなる場合、該金属層(21)の好ましい層厚は約3〜15mm、より好ましくは3〜10mmであり、スリーブ(1)の全肉厚及び中空孔径の大きさに応じてこの範囲内で適宜設計するのがよい。また、上記のように熱絶縁層(3)を2層以上とする場合、熱絶縁層で囲まれた金属層は第1金属層(21)の層厚以下の層厚とするのが好ましい。
【0021】
プランジャースリーブに本発明の積層構造を適用することにより、スリーブの内側層域における径方向の熱伝導率(αi)を15W/m・K以下に抑えることができる。ここに内側層域とは、図6に示すように、最外側の熱絶縁層(図の例では熱絶縁層33)で囲まれた層域(最外側の熱絶縁層33を含む)(Li)を指している。熱絶縁層(3)が1層のみの場合は、第1金属層(21)とその熱絶縁層(31)とからなる層域が内側層域(Li)である。
プランジャースリーブのサイズはダイカストマシンの規模・能力により、中空孔径は約40〜180mm スリーブ肉厚は約20〜80mmと広範に亘るが、このような一般的サイズのプランジャースリーブにおいて内側層域(Li)の熱伝導率が上記のように抑制されることにより、肉厚全体の熱伝導率を低くし改良された断熱性をもたせることができる。
【0022】
次に本発明の積層金属部材の製造について説明する。
本発明の積層金属部材は、金属層(2)の形成材料と熱絶縁層(3)の形成材料とを積層し、金属層形成材料の重ね合わせ面同士を押圧する向きの加工荷重を含む熱間等方圧加圧成形(HIP),熱間押出成形,冷間等方圧加圧成形(バルジ加工)等の加圧成形加工を行なうことにより製造される。
【0023】
図7は、中空筒形状を有する積層金属部材を製造するための金属層形成材料(20)(21,22)と熱絶縁層形成材料(31)とを積層した層材料組付け体(10)の例を示している。第1金属層材料(21)及び第2金属層材料(22)は金属円筒体(鋳造品,圧延品,焼結製品等)であり、熱絶縁層形成材料(31)はセラミックス繊維シート又はセラミックス粉末である。第1金属層材料(21)と第2金属層材料(22)との隙間に熱絶縁層材料(31)が装填され、底面側と頂面側は端板(41)(42)で閉塞(溶接w等で固定)されている。なお複数の材料を組み付けてHIP等の加圧成形に付す場合、層材料組付け体(10)の内側(図7では熱絶縁層材料31を挟む金属層材料21−22間の隙間)を真空脱気するのが通常であるが、本発明の積層金属部材の製造においては、脱気処理を省略し大気圧のままとしてよい。上記層材料組付け体(10)を、加圧成形加工に付し、加圧成形加工後、適宜の機械加工を施して目的とする積層金属部材を得る。
【0024】
ダイカストマシンのプランジャースリーブを目的とする中空円筒状の積層金属部材の製造では、第1金属層材料(21)としてSKD合金工具鋼やSKH高速度工具鋼等の円筒体、または前記焼結金属(Ti−TiC系,Ti−Mo合金−TiC系焼結金属)の円筒体を使用し、それ以外の金属層材料(22)は第1金属層材料と同種または異種(例えばS45C等の機械構造用炭素鋼、SS400等の一般構造用鋼材など)の円筒体を使用してよい。熱絶縁層材料(31)のセラミックス材種は任意であるが、繊維シートの使用は装填操作が容易で、形成される熱絶縁層(3)の均質性を確保し易い点で有利である。加圧成形加工法として熱間等方圧加圧成形(HIP)を適用する場合、温度:約300〜1000℃、加圧力:50〜200MPaの処理条件のもとに、金属層材料(20)(21.22)の塑性変形と、熱絶縁層材料(31)の焼結反応が抑制された圧密化を伴う加圧加工を効率よく達成することができる。
【0025】
前記図7の層材料組付け体(10)に加圧成形加工を施して得られる積層金属部材は、金属層(21)(22)と熱絶縁層(31)とからなる3層構造であるが、5層構造(図3,図4)及びそれ以上の層数を有する積層金属部材を製造する場合は、その層数に応じて層材料組付け体(10)(図5)の層形成材料(20)(30)を使用して上記と同様の加圧加工処理を行なえばよい。
このような異種材料を組み合せた層材料組付け体(10)に熱間等方圧加圧成形等の熱間加圧成形が施される場合、材料相互間の熱膨張・収縮量の相違による熱歪・亀裂等の熱的損傷の発生が問題となるが、本発明においては金属層(2)間の熱絶縁層(3)として介在するセラミックス層により熱応力が吸収緩和され、上記不具合を生じさせずに健全な積層金属部材を得ることができる。
【0026】
なお、第1金属層(21)が前記複合焼結金属である積層金属部材(1)を熱間等方圧加圧成形により製造する場合、図7の層材料組付け体(10)における金属層材料(21)として、焼結金属の円筒体を使用する方法に代え、焼結原料粉末(チタンまたはチタン合金粉末とセラミックス粉末の混合粉末)を使用し、熱間等方圧加圧成形過程で第1金属層の形成(焼結)と積層構造の形成とを並行して行なわせることも可能である。
【0027】
次に本発明の積層構造による断熱保温効果を熱伝導率測定試験に基づいて説明する。図8[1]に測定試料を示す。測定試料(S)は表層(51)と基層(52)及び層間の熱絶縁層(3)とからなる円盤形状ブロックである。
測定試料の製作:同図[2]に示すように、基層材料(52)の凹陥(521)に熱絶縁層材料(30)(厚さ1mm)を2〜4枚重ねて装填したうえ、表層材料(51)を被せ、HIP処理(950℃×100MPa)に付し、熱絶縁層材料(30)を押圧すると共に表層材料(51)と基層材料(52)の接触面(円周側面)を拡散接合する。
【0028】
[測定試料]
測定試料(S1)(S2)(S3)の仕様は次のとおりである。
試料サイズ:直径(D)50mm,厚さ(T)19mm,表面層厚(t)3mm
熱絶縁層の平面径(d)38mm
構成材種 :表層(51)SKD61(熱伝導率34W/m・K)
基層(52)SS400(熱伝導率59W/m・K)
熱絶縁層(3)Al2O3−SiO2繊維(熱伝導率1W/m・K)
熱絶縁層の層厚:試料1=0.5mm / 試料2=0.3mm / 試料3=0.2mm
【0029】
[測定条件]
測定法:温度傾斜法
測定方向:試料厚さ方向(表層側を高温側に設定)
測定温度:35−45℃
測定熱流密度:14kW/m2
試料端温度差:7.9−8.25℃
試料圧着圧力:約72kPa(装置−試料界面は高熱伝導性グリース使用)
【0030】
[測定結果]
試料全体(全肉厚)の熱伝導率(α)の測定値、及びその測定値(α)と試料構成材料の熱伝導率とからフーリエの法則に従って算出される内側層域(熱絶縁層3を含む)の見掛けの熱伝導率(αi)を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1に示したように、測定試料(S)の全体の熱伝導率及び表層部は、試料を形成する金属層材料の熱伝導率(SKD61:34w/mK,SS400:59w/mK)に比し著しく低い。ちなみに、熱絶縁層材料(30)を省略し、表層材料(51)(SKD61)と基層材料(52)(SS400)との接触界面の全体を完全に拡散接合してなる試料(表層厚3mm,全肉厚19mm)について、試料全体の熱伝導率をフーリエの法則に従って求めると、その熱伝導率(α)は約52.9W/m・Kである。これを上記表1の熱伝導率の測定値(α)と比較すると両者の差異は歴然であり、本発明の積層構造に基づく熱遮断効果は絶大である。なお、熱絶縁層を挟む界面全体の熱遮断性の均質性が高く、円筒体では円周方向及び軸長方向における偏熱とそれによる歪が少ないことも確認されている。
【0033】
【発明の効果】
本発明の積層金属部材は、金属層間にセラミックス層を介在させた積層構造の効果として卓抜した熱遮断性能を有することにより、例えばダイカストマシン用プランジャースリーブとして適用される場合は、スリーブ内の金属溶湯の温度低下を抑制し、金属溶湯の温度管理の容易化、鋳造品質の安定化、更には溶湯温度を確保に必要な熱エネルギーの節減等の効果が得られる。金属溶湯と接触する最内層(金属溶湯との接触面)が金属層であるのでセラミックス層の場合のような不安定さがなく、金属材種の選択により金属溶湯に対する腐蝕抵抗性、耐熱衝撃性及びプランジャースリーブに対する良好な摺動特性等を確保することも容易である。
本発明の積層金属部材は、このほかに高温又は低温流体を取り扱う各種機器装置における断熱保温用構造部材、例えばスチームパイプ、熱水あるいは冷却水の供給配管、高温側と低温側との隔壁材等として、熱損失の効果的な抑制防止効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の中空筒形状を有する積層金属部材の例を示す軸方向断面図である。
【図2】図1のI−I断面図である。
【図3】本発明の中空筒形状を有する積層金属部材の他の例を示す軸方向断面図である。
【図4】図3のI−I断面図である。
【図5】金属層に挟まれた熱絶縁層の形状変化を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の積層金属部材の内側層域の説明図である。
【図7】本発明の積層金属部材を製造するための層材料組付け体の例を示す断面説明図である。
【図8】実施例の熱伝導率測定試料の断面説明図([1]図)、及びその製作要領説明図([2]図)である。
【図9】プランジャースリーブの例を示す軸方向断面図である。
【符号の説明】
1:積層金属部材(プランジャースリーブ)
2(21,22,23):金属層
3(31,32):熱絶縁層
10:層材料組付け体
20(21,22):金属層材料
30(31):熱絶縁層材料
51:表層
52:基層
S:熱伝導率測定試料
Claims (8)
- セラミックスの繊維又は粉末の層を挟んで、同種又は異種の金属からなる金属円筒体を同心円状に重ね合わせ、金属円筒体の重ね合わせ面を押圧する向きの加工荷重を含む熱間又は冷間加工により形成された、金属層と金属層間に介在する圧密化された未焼結セラミックス層である熱絶縁層とからなる同心円状層構造を有することを特徴とする断熱性に優れた積層金属部材。
- 熱絶縁層の層厚は1mm以下である請求項1に記載の積層金属部材。
- 2層以上の熱絶縁層を有し、熱絶縁層に挟まれた各金属層のそれぞれの層厚は、最内側の金属層の層厚以下である請求項1又は請求項2に記載の積層金属部材。
- ダイカストマシン用プランジャースリーブである請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の積層金属部材。
- 最内側の金属層が、合金工具鋼、合金高速度工具鋼、又はチタンもしくはチタン合金マトリックスに炭化チタンが分散した複合組織を有する焼結金属からなる請求項4に記載の積層金属部材。
- 最内側の金属層の層厚は3〜15mmである請求項5に記載の積層金属部材。
- 最外側に位置する熱絶縁層で囲まれた内側層域(最外側の熱絶縁層を含む)における径方向の熱伝導率が15W/m・K以下である請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の積層金属部材。
- 加工温度300〜1000℃、加圧力50〜200MPaの熱間等方圧加圧加工による加圧成形体である請求項5〜8のいずれか1項に記載の積層金属部材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003024011A JP2004232059A (ja) | 2003-01-31 | 2003-01-31 | 断熱性に優れた積層金属部材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003024011A JP2004232059A (ja) | 2003-01-31 | 2003-01-31 | 断熱性に優れた積層金属部材 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004232059A true JP2004232059A (ja) | 2004-08-19 |
Family
ID=32952660
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003024011A Withdrawn JP2004232059A (ja) | 2003-01-31 | 2003-01-31 | 断熱性に優れた積層金属部材 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004232059A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN106908373A (zh) * | 2017-03-09 | 2017-06-30 | 青海大学 | 熔融盐介质中低密度纤维材料腐蚀行为的实验方法 |
CN107159866A (zh) * | 2016-03-08 | 2017-09-15 | 东芝机械株式会社 | 非铁金属合金熔液用的供液管、供液管组装体及非铁金属铸造系统 |
-
2003
- 2003-01-31 JP JP2003024011A patent/JP2004232059A/ja not_active Withdrawn
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN107159866A (zh) * | 2016-03-08 | 2017-09-15 | 东芝机械株式会社 | 非铁金属合金熔液用的供液管、供液管组装体及非铁金属铸造系统 |
CN106908373A (zh) * | 2017-03-09 | 2017-06-30 | 青海大学 | 熔融盐介质中低密度纤维材料腐蚀行为的实验方法 |
CN106908373B (zh) * | 2017-03-09 | 2019-05-10 | 青海大学 | 熔融盐介质中低密度纤维材料腐蚀行为的实验方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR102208400B1 (ko) | 경사 기능 재료로 이루어진 신규한 조성물을 갖는 금속 또는 세라믹 물품의 성형방법과 그 성형방법을 포함하는 물품 | |
KR101370751B1 (ko) | 클래드 빌릿, 클래드 빌릿 제조 방법 및 클래드 파이프 또는 배관 제조 방법 | |
CN102199033B (zh) | 功能梯度材料形状及该形状的制造方法 | |
JPS5852451A (ja) | 耐熱・断熱性軽合金部材およびその製造方法 | |
JPH09194909A (ja) | 複合材料およびその製造方法 | |
WO2022089331A1 (zh) | 一种高性能结构件的固态复合增材的制造方法 | |
JPWO2004087351A1 (ja) | ダイカストマシン用断熱プランジャースリーブ | |
EP0595075A2 (en) | Microlaminated composites and method for preparing them | |
JP2004232059A (ja) | 断熱性に優れた積層金属部材 | |
JP2014069224A (ja) | 鋳造装置、該鋳造装置の製造方法及び鋳造成形品の製造方法 | |
SE440496B (sv) | Sett att konsolidera pulver i en behallare genom utovning av tryck pa behallarens utsida samt apparat for genomforande av settet | |
FI20197024A1 (fi) | Menetelmä monimateriaalisen valssin valmistamiseksi ja monimateriaalivalssi | |
JP2019177416A (ja) | ダイカスト用スリーブ | |
JPH028894B2 (ja) | ||
JP2005186145A (ja) | 断熱性・耐熱変形性に優れた積層円筒体及びダイカストマシン用プランジャースリーブ | |
JP2712460B2 (ja) | 金属粉末クラッド管押出ビレットと断熱鋼管 | |
WO2012092979A1 (en) | Pressure vessel sealing | |
JP4475427B2 (ja) | プランジャスリーブおよびその製造方法 | |
JP6281385B2 (ja) | 圧延ロール用超硬合金製外層の製造方法 | |
JP2005205666A (ja) | 断熱性・耐熱変形性に優れた積層円筒体及びダイカストマシン用プランジャースリーブ | |
KR20050113260A (ko) | 다이캐스팅 머신용 단열 플런저 슬리브 | |
WO2022095111A1 (zh) | 芯轴部件的制作方法、芯轴部件及应用其的纺织机械 | |
JP2001200931A (ja) | 複合合金スリーブを含むプラスチック成型用加熱シリンダ | |
Wojtaszek et al. | Manufacturing and properties of al-al alloy bimetallic composites obtained from powders by hot extrusion | |
JPH11300459A (ja) | ダイカストマシン用スリーブ |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Effective date: 20050908 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 |
|
A761 | Written withdrawal of application |
Effective date: 20061227 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761 |
|
A521 | Written amendment |
Effective date: 20061227 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 |