JP2004231756A - ポリテトラフルオロエチレンシート、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】互いに測定箇所が重複しないように測定数を30として測定した厚みの変動率が6%以下であるPTFEシート、およびこのシートを延伸して多孔化するPTFE多孔質膜の製造方法を提供する。また、PTFEを含む材料を押出し成形して成形物を形成し、成形物を圧延してPTFEシートを形成し、このシートを少なくとも1軸方向に延伸して多孔化するPTFE多孔質膜の製造方法であって、成形物を平板状に押出すことを特徴とするPTFE多孔質膜の製造方法を提供する。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」と略す)シート、PTFE多孔質膜およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在知られているPTFE多孔質膜の製造方法では、PTFEファインパウダーに種々の液状潤滑剤を配合し、丸棒状に押出し、圧延を行い、液状潤滑剤を除去し、その後に延伸が行われる。延伸工程では、一般に逐次2軸延伸が用いられる。
【0003】
この製造方法では、延伸条件をどれだけ厳密に制御しても、完全に均一な延伸膜を得ることは困難であり、延伸前のPTFEシートの物性のばらつきによって、延伸ムラが発生することは否めない。圧延方向(Machine Direction、以後「MD方向」と略す)への延伸時の延伸ムラは、2軸目にMD方向と直交する方向(Transverse Direction、以後「TD方向」と略す)に延伸しても解消されることなく残り、2軸延伸膜の特性もばらつく。
【0004】
PTFE多孔質膜は、半導体工業や薬品工業などのクリーンルームで使用されるエアフィルタの濾材として、有価粉体の回収や焼却炉の粉塵の捕集に用いられるバグフィルタの濾材として、さらには、電気製品などの内圧調整用の穴からの水分の浸入を防止するための膜として、幅広く利用されている。
【0005】
例えば、半導体製造のクリーンルームに用いられるエアフィルタでは、エアフィルタの風量分布の均一性が重視される。風量分布が不均一になれば、クリーンルーム中の気流が乱れて空気溜りが生じ、その結果、半導体製造の歩留低下の原因となるガス濃度が局所的に上昇するからである。このような風量分布のばらつきは、主として、濾材の圧力損失のばらつきや、濾材の折りムラなどに起因する。
【0006】
国際公開第94/16802号パンフレットには、微小孔径、かつ圧力損失の小さいPTFE多孔質膜の製造方法が開示されているが、圧力損失のばらつきが大きいという問題を解決するものではない。
【0007】
【特許文献1】
国際公開第94/16802号パンフレット
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
現在製造されているPTFE多孔質膜には、上記したように、製造方法に起因する回避しがたい圧力損失のばらつきが存在し、エアフィルタとして用いたときの風量分布の均一性を損なっている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のPTFEシートは、互いに測定箇所が重複しないように測定数を30として測定した厚みの変動率が6%以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明のPTFE多孔質膜の製造方法は、本発明のPTFEシートを延伸して多孔化することを特徴とする。
【0011】
本発明のPTFE多孔質膜の製造方法は、PTFEを含む材料を押出し成形して成形物を形成し、前記成形物を圧延してPTFEシートを形成し、前記シートを少なくとも1軸方向に延伸して多孔化するPTFE多孔質膜の製造方法であって、前記成形物を平板状に押出すことを特徴とする。
【0012】
本発明のPTFE多孔質膜は、互いに測定箇所が重複しないように測定数を30として測定した圧力損失の平均値が50〜350Paであって、その変動率が1〜12%であることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
PTFE多孔質膜は、通常、補強のために通気性を有する支持材と積層され、枠付けされてエアフィルタユニットとして用いられる。上記した風量分布のばらつきの問題を解決するためには、PTFE多孔質膜について、互いに測定箇所が重複しないように測定数を30として測定した圧力損失の平均値が50〜350Paであり、その変動率が1〜12%以下、特に1〜5%以下であることが望ましい。
【0014】
ここで、変動率とは下記の(1)式により算出される値である。
変動率(%)=(標準偏差/平均値)×100 (1)
【0015】
本発明者らは、延伸されたPTFEシート(PTFE多孔質膜)の圧力損失の変動率と、延伸前のPTFEシートの厚みの変動率との間に相関関係があることに着目し、PTFE多孔質膜の圧力損失のばらつきを、PTFEシートの厚みムラを低減して抑制した。
【0016】
本実施の形態のPTFEシートは、互いに測定箇所が重複しないように測定数を30として測定した厚みの変動率が6%以下であることを特徴とする。PTFEシートの厚みの変動率は、特に4%以下、さらには2%以下であることが好ましい。このようなPTFEシートを延伸して多孔化すれば圧力損失のばらつきが低減されたPTFE多孔質膜を提供できる。
【0017】
以下に、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて説明する。まず、PTFEファインパウダーに液状潤滑剤を加えたペースト状の混合物を、例えば、丸棒状に予備成形し、予備成形体をペースト押出しして、成形物を得る。予備成形は、液状潤滑剤が絞り出されない程度の圧力で行えばよい。
【0018】
上記成形物は平板状とする。従来のPTFE多孔質膜の製造方法では、成形物の形状は丸棒状、棒状等であるが、平板状とすれば、厚みの変動率が6%以下のPTFEシートを容易に得ることができる。
【0019】
ここで、平板状とは、長手方向と直交する方向(幅方向)に切断したときの断面が長方形である形状を言う。この平板状の成形物は、厚さ/幅の比が、0.001〜0.05、さらには、0.001〜0.03であることが好ましい。
【0020】
液状潤滑剤としては、PTFEファインパウダーの表面を濡らすことができ、抽出や加熱することにより除去できるものであれば特に制限されず、例えば、流動パラフィン、ナフサ、ホワイトオイルなどの炭化水素を用いればよい。液状潤滑剤の添加量は、PTFEファインパウダー100重量部に対して5〜50重量部が適当である。
【0021】
次に、上記成形物を圧延することによりPTFEシートを得る。PTFEシートの厚みについて特に制限はないが、互いに測定箇所が重複しないように測定数を30として測定した厚みの平均値が、0.05〜0.5mm、特に、0.1〜0.4mmとするとよい。その厚みの変動率は6%以下である。変動率が6%を越えると、圧力損失のばらつきが小さいPTFE多孔質膜を得ることができない。変動率の下限値については特に制限はなく、通常、1%以上である。PTFEシートの幅についても特に制限はないが、50〜1000mm、特に、100〜500mmとするとよい。液状潤滑剤は、延伸前のPTFEシートから予め除去しておくとよいが、延伸後に除去してもかまわない。
【0022】
次に、PTFEシートを、少なくとも一軸方向に延伸してPTFE多孔質膜を得る。MD方向への延伸は、延伸方法について特に制限はなく、良く知られたゾーン延伸法、熱ロール延伸法などを採用すればよい。ゾーン延伸法では、図1に示すように、オーブン66内の高温雰囲気に爆して加熱しながらPTFEシート1を延伸する。上流側のロール61,62から下流側のロール63,64へと繰り出されたPTFEシート1はオーブン内の延伸領域65において徐々に多孔化され、PTFE多孔質膜2となる。熱ロール延伸法は、図2に示すように、PTFEシート1が繰り出しロール71,72から連続して繰り出され、ロール回転速度の相違により一対のロール72,73間で延伸する方法である。この場合は、ロール72近傍の延伸領域75においてPTFEシート1が延伸される。
【0023】
特に、図3および図4に示すような延伸装置を用い、一対のロール間でPTFEシートを横切るように設定された帯状領域(加熱領域)8において、PTFEシート1を加熱しながらPTFEシート1を延伸することが好ましい。図1に示したゾーン延伸法では、延伸領域65の長さL’が長く、延伸により生じるネッキングが大きくなる。このため、延伸が不均一となって孔径のばらつきが大きくなり、その結果、通気度や圧力損失のばらつきも大きくなる。
【0024】
図2に示した熱ロール延伸法では、延伸開始位置が変動しやすいため、延伸が不均一になって孔径のばらつきが大きくなる。図3および図4に示した延伸装置を用いて延伸すれば、PTFEシート1が、長さを制限された帯状領域8で延伸されるので、PTFE多孔質膜の孔径のばらつきを抑制できる。また、気孔率を維持しながら平均孔径が小さいPTFE多孔質膜を得ることが容易となる。
【0025】
図4に示すように、上流側のロール12から下流側のロール13へと繰り出されたPTFEシート1には、膜の進行方向を横切る帯状の加熱領域8を通過する間に、この領域上に配置されたヒーター5(図4では図示省略)から赤外線が照射される。そして、PTFEシート1は、この加熱領域8において他の領域におけるよりも高温に達し、この領域内において延伸が開始される。赤外線が照射される加熱領域8のシート移送方向についての長さL1は、1mm〜100mm、特に10mm〜50mmが好適である。この領域が長すぎると大きな歪速度が得られず、逆に短すぎるとシート温度が十分に上昇しないことがある。歪速度とは、単位時間あたりの延伸方向への寸法の変化量であり、下記の式により表示できる。
【0026】
歪速度(%/秒)=[(巻き取り速度−繰り出し速度)/帯状領域の長さ]×100
【0027】
帯状領域8を加熱するヒーター5は、PTFEシートとの距離Lが0.1mm〜100mm、特に、0.1mm〜10mmとなるように配置するとよい。ヒーター5を膜に近づけすぎるとPTFEシートと接触することがあり、逆に遠ざけすぎると温度分布が不均一となり延伸ムラが生じやすくなる。ヒーター5としては、中波長ヒーター、低波長ヒーター、カーボンヒーターなどを用いることができる。
【0028】
加熱領域8内において多孔化されたPTFE多孔質膜2は、下流側のロール13により巻き取られていく。延伸が開始される位置(延伸開始位置9)から下流側のロール13(正確にはロール13とPTFE多孔質膜2とが接触する位置)までの距離L2は、ネッキングを制御するために、50cm以下、特に100mm以下が好ましい。間隔L2の下限値は、領域8の長さL1を保持するために1mm以上がよい。領域8の下流端は、図示したように下流側のロール13から離れていてもよいが(L3>0)、ロール13と接触していてもよい(L3=0)。
【0029】
ロール12,13間の間隔L4(正確にはPTFEシート(多孔質膜)がロールから離間している距離)は、通常、50mm〜500mm程度が適当である。間隔L4は、図示したように、加熱領域の長さL1よりも長くとるとよいが(L4>L1)、ロール間距離の短縮により弊害が生じなければ、両者をほぼ等しくしてもよい(L4=L1)。
【0030】
加熱領域と非加熱領域との間の温度勾配は、急峻であるほうが好ましい。赤外線、特に、波長が1μm〜4μm、さらには1.5μm〜3μmである赤外線は、PTFEに吸収され易いため、PTFEシートを帯状の領域において局所的な延伸可能とする放射線として適している。
【0031】
温度勾配をより急峻に保ちたい場合には、上流側のロール12および/または下流側のロール13を冷却するとよい。一方、加熱領域8においてPTFEシート1が、所望の延伸温度に達しない場合には、上流側のロール12を用いてPTFEシートを予備加熱してもよい。予備加熱のために、領域8より上流側のPTFEシート1に熱風などを吹き付けても構わない。
【0032】
図3に示した装置では、1本のヒーターが、PTFEシートの進行方向と直交するようにこのシートの上方において同シートを横切っている。このヒーターの配置は、PTFEシートを、幅方向について均一に加熱するための好ましい配置の一つである。ただし、ヒーターの位置、配置数、膜進行方向との角度は、図3に示した形態に限られない。PTFEシートが両面から加熱されるようにヒーターをシート下方に追加してもよいし、PTFEシートの同一側に複数のヒーターを配置してもよい。所定領域に赤外線を集中するために、ヒーターの周囲に熱線反射板などを配置しても構わない。
【0033】
図3および図4に示した延伸装置を用いたPTFEシートの延伸に際して、その他の条件について制限はなく、所望の特性に応じて適宜定めればよいが、通常、繰り出し側のロールの速度は0.1〜15m/分が、延伸温度は30℃〜320℃程度がそれぞれ好適である。延伸倍率は、1.05〜50倍、より好ましくは1.2倍以上とするとよい。
【0034】
こうして得たPTFE多孔質膜は、そのまま1軸延伸膜として用いてもよいが、さらにTD方向に延伸して2軸延伸膜としてもよい。また、TD方向への延伸を行ってからMD方向への延伸を行ってもよい。TD方向への延伸倍率、延伸温度も上述した範囲が好適である。TD方向への延伸は、延伸方法について特に制限はなく、良く知られたテンター法を用いればよい。
【0035】
図3、図4に示した装置により延伸したPTFE多孔質膜2は、PTFEの融点以上に加熱して焼成すると、膜の機械的強度が向上する。具体的には327℃以上、特に350℃以上で焼成するとよい。焼成方法について特に限定はないが、図5に示すようにオーブン6を用いて連続して焼成するとよい。オーブン6としては、従来、延伸(あるいは延伸および焼成)に用いられていた熱風循環式電気オーブンやガスオーブンを使用すれば足りる。ただし、加熱手段はこれらオーブンに限定されるものではない。焼成時間(焼成温度に保持した雰囲気に接触させる時間)は、通常5秒以上、特に10秒以上が好適であり、200秒以下とするとよい。
【0036】
焼成の際の繰り出しロールと巻き取りロールとの回転速度は、得ようとする膜の特性に応じて適宜調整すればよい。基本的には同速とするとよいが、さらに延伸したり、膜が垂れない程度に収縮させてもよい。焼成されたPTFE多孔質膜7からは、焼成前のPTFE多孔質膜2よりも高い強度が得られる。
【0037】
図6に示した製造装置では、延伸装置(図3)と焼成装置(図5)とが、PTFEシートを連続して延伸および焼成できるように配置されている。PTFEシート1は、PTFEの融点未満の温度で延伸されてPTFE多孔質膜2となり、引き続き融点以上の温度で焼成される。こうして、PTFEシート1は、装置内を搬送されながら、延伸かつ焼成されたPTFE多孔質膜7へと連続して加工される。
【0038】
焼成工程において、PTFE多孔質膜をさらに延伸してもよい。このように2以上の工程で延伸倍率を分担すると、孔径制御がさらに容易となる。このため、比較的孔径が大きく、かつ孔径のばらつきが小さい多孔質膜を製造しやすい。なお、焼成工程における延伸倍率は5倍以下が好ましい。焼成工程における延伸倍率は1(寸法の変化なし)としてもよく、1を下回ってもよいが、過度の収縮は好ましくないため、0.7以上とするとよい。
【0039】
また、図7に示すように、n組の一対のロールを準備し、n組の一対のロールの間においてそれぞれPTFEシート1を横切るように設定されたn個の帯状領域を加熱しながらn組の一対のロール間においてPTFEシートを順次延伸してもよい。このように延伸工程を分けて実施すると、延伸1回あたりの延伸倍率を制限しながら所望の延伸倍率を有するPTFE多孔質膜を得ることができる。したがって、孔径のばらつきがより抑制され、気孔率を維持しながら平均孔径の小さいPTFE多孔質膜が得やすくなる。
【0040】
図7に示した延伸装置では、PTFEシート1が、ロール11,12から連続して繰り出され、ロール回転速度の相違によりロール12,13間で延伸されて多孔化され、ロール13,14によって連続して巻き取られていく。多孔化されたPTFEシート2は、引き続きロール13,14から連続して繰り出され、ロール回転速度の相違によりロール14,21間でさらに延伸されて多孔化され、PTFE多孔質膜3としてロール21,22によって連続して巻き取られていく。延伸のための加熱は、ロール間に配置されたヒーター5,15からシート(多孔質膜)に照射される赤外線によって行われる。
【0041】
2対以上のロール間で延伸する装置は、図7に示した形態に限らず、例えば、予備加熱を行う場合には、図8に示すように、下流側により多くのロール21,22,23,24を配置して、ロール21,22により予備加熱をしてもよい。延伸は3回以上に分けて行ってもよい。例えば、図9に示すように、さらにヒーター35およびロール25,26を配置すれば、3段に分けて延伸したPTFE多孔質膜4を量産できる。
【0042】
多段階の延伸を行う場合にも、少なくとも1つの工程では、図3,図4を参照して上記で説明した方法を用いてPTFEシートを延伸することが好ましい。例えば、ヒーター5,15,35としては、赤外線ヒーターが好適であり、ヒーターとPTFEシート(多孔質膜)との距離(図7:La,Lb)は、好ましくは0.1〜100mmとするとよい。また、このように複数回に分けてPTFEシートを延伸する場合には、全延伸倍率を1.05〜50倍、より好ましくは1.2倍以上とするとよい。
【0043】
上記した本実施の形態の製造方法では、帯状領域のPTFEシートをPTFEの融点未満の温度に加熱しながら延伸することが好ましい。PTFEシートを焼成する場合には、延伸したPTFE多孔質膜をさらに繰り出し、PTFEの融点以上に加熱して連続して焼成するとよい。複数回に別けてPTFEシートを延伸する場合には、少なくとも最初の帯状領域のPTFEシートをPTFEの融点未満の温度に加熱し、少なくとも最後の帯状領域のPTFEシートをPTFEの融点以上の温度に加熱することが好ましい。複数回(n回)に分けてPTFEシートを延伸する場合であっても、そのすべての延伸工程において、PTFEシートをPTFEの融点未満の温度に加熱して延伸してもよい。
【0044】
【実施例】
(実施例)
PTFEファインパウダー(ダイキン工業(株)製、ポリフロンF104)100重量部に対して液状潤滑剤(ナフサ)25重量部を均一に混合し、この混合物を丸棒状に予備成形し、次いでこれを平板状(幅:200mm、厚さ:1.5mm)にペースト押出しした。この平板状の成形物を、液状潤滑剤を含んだままの状態で圧延して、長尺シートを得た。この長尺シートを、温度120℃の乾燥機内に3分間滞留するように連続的に通して液状潤滑剤を乾燥除去し、PTFEシートを作製した(厚み:平均205μm、厚みの変動率:1.0%、n=30)。このPTFEシートを、図3および図4に示した延伸装置を用いて、MD方向へ10倍延伸し(上流側ロール回転速度0.2m/分、下流側ロール回転速度2m/分、L=5mm、L1=30mm、L2=90mm、L3=65mm、L4=110mm)、1軸延伸PTFE多孔質膜を得た。ヒーター5としては、赤外線ヒーター(幅3cm、定格出力0.8kw、波長2.6μm)を用いた。延伸時のPTFEシートの温度(延伸温度)は、図10に示したように、ヒーター5の下流側に近接して配置した放射温度計10(CHINO社製、型番1R−TAR)を用いて測定したところ、190℃であった。さらにこの1軸延伸PTFE多孔質膜をテンター法によりTD方向に30倍に延伸し(延伸温度:130℃)、2軸延伸PTFE多孔質膜を得た。
【0045】
(比較例)
PTFEファインパウダー(ダイキン工業(株)製、ポリフロンF104)100重量部に対して液状潤滑剤(ナフサ)25重量部を均一に混合し、この混合物を丸棒状に予備成形し、次いでこれを丸棒状(直径:50mm)にペースト押出しした。この丸棒状の成形物を、液状潤滑剤を含んだままの状態で圧延して、長尺シートを得た。この長尺シートを温度120℃の乾燥機内に30分間滞留するように連続的に通して液状潤滑剤を乾燥除去し、PTFEシートを作製した(厚み:平均198μm、厚みの変動率:9.3%、n=30)。このPTFEシートを、実施例1と同様に図3および図4に示した延伸装置を用い、実施例1と同様な条件によりMD方向へ10倍延伸し、1軸延伸PTFE多孔質膜を得た。さらにこの1軸延伸PTFE多孔質膜をテンター法によりTD方向に30倍に延伸し(延伸温度:130℃)、2軸延伸PTFE多孔質膜を得た。
【0046】
実施例および比較例について、PTFEシートの厚さは、互いに測定箇所が重複しないように任意に選択した30箇所について測定した値の平均値であり、厚みの変動率は、(1)式から算出した値である。
【0047】
実施例および比較例の2軸延伸PTFE多孔質膜について、下記の方法により圧力損失を測定し、圧力損失の平均値、およびその変動率を表1に示した。圧力損失は、互いに測定箇所が重複しないように任意に選択した30箇所について測定した。
【0048】
[圧力損失] サンプルを有効面積100cm2の円形ホルダーにセットした状態で、風速5.3cm/sで空気を通過させたときの圧力損失を圧力計(マノメーター)で測定した。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すように、実施例では比較例よりも、圧力損失の変動率が小さく、圧力損失のばらつきが低減されていることが分かる。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、圧力損失のばらつきが低減されたPTFE多孔質膜を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のPTFE多孔質膜の製造方法に用いる延伸装置の一例を示す断面図
【図2】本発明のPTFE多孔質膜の製造方法に用いる延伸装置の一例を示す断面図
【図3】本発明のPTFE多孔質膜の製造方法に用いる延伸装置の一例を示す断面図
【図4】図3に示した延伸装置の加熱領域を示すための図
【図5】延伸したPTFE多孔質膜をさらに焼成する装置の一例を示す断面図
【図6】本発明のPTFE多孔質膜の製造方法に用いた製造装置の一例であって延伸に引き続き焼成を行う装置を示す断面図
【図7】本発明のPTFE多孔質膜の製造方法に用いた延伸装置の一例であって複数のヒーターにより連続して延伸を行う装置を示す断面図
【図8】本発明のPTFE多孔質膜の製造方法に用いた延伸装置の一例であって複数のヒーターにより連続して延伸を行う別の装置を示す断面図
【図9】本発明のPTFE多孔質膜の製造方法に用いた延伸装置の一例であって複数のヒーターにより連続して延伸を行うまた別の装置を示す断面図
【図10】実施例において用いた延伸装置における温度計の配置を示す平面図
【符号の説明】
1 PTFEシート
2,3,4 延伸されたPTFEシート(PTFE多孔質膜)
5,15,35 ヒーター
6,66 オーブン
7 焼成されたPTFE多孔質膜
8 帯状領域(加熱領域)
9 延伸開始位置
10 放射温度計
11〜14,21〜26,61〜64,71〜74 ロール
65,75 延伸領域
Claims (4)
- 互いに測定箇所が重複しないように測定数を30として測定した厚みの変動率が6%以下であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレンシート。
- 請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレンシートを延伸して多孔化することを特徴とするポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法。
- ポリテトラフルオロエチレンを含む材料を押出し成形して成形物を形成し、前記成形物を圧延してポリテトラフルオロエチレンシートを形成し、前記シートを少なくとも1軸方向に延伸して多孔化するポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法であって、前記成形物を平板状に押出すことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法。
- 互いに測定箇所が重複しないように測定数を30として測定した圧力損失の平均値が50〜350Paであって、その変動率が1〜12%であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン多孔質膜。
Priority Applications (1)
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