JP4124672B2 - ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法および製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と略す)多孔質膜の製造方法および製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
PTFE多孔質膜は、PTFEファインパウダーに種々の液状潤滑剤を配合し、押し出し成形・圧延を行い、液状潤滑剤を除去し、その後に延伸して製造される。延伸工程では、一般には逐次2軸延伸が用いられる。多孔質膜の孔径は、通常は圧延方向(Machine Direction、以下、「MD方向」と略す)について行われる最初の延伸時に形成されるフィブリルの長さによって定まると考えられている。このため、MD方向への延伸時の条件は、得られる膜の特性に大きな影響を及ぼす。PTFEシートの延伸方法としては、ゾーン延伸法および熱ロール延伸法が知られている。
【0003】
図5に示すように、ゾーン延伸法では、オーブン66内の高温雰囲気に曝して加熱しながらPTFEシート51を延伸する。ロール61,62から下流側のロール63,64へと繰り出されたPTFEシート51は、オーブン66内の延伸領域65において徐々に多孔化され、PTFE多孔質膜52となる。しかし、この延伸法では、延伸領域65の長さL’が長いため、延伸により生じるネッキングが大きくなる。このため、延伸が不均一となって孔径のバラツキが大きくなり、その結果、圧力損失などPTFE多孔質膜の特性のバラツキも大きくなる。ゾーン延伸法では、加熱源として、熱風循環式の電気ヒーターやガスバーナーなどが用いられる。
【0004】
特許文献1には、延伸と焼成とを同時に行うPTFE多孔質膜の製造方法が開示されている。この方法では、PTFEの融点(327℃)以上に保持された加熱ゾーンでPTFEシートが延伸される。延伸と同時に焼成して得たPTFE多孔質膜は、高い強度を有するが、幅方向についてのPTFE多孔質膜の変化が著しくなり、製品の取り幅が小さくなる。特許文献1に記載の方法は、孔径のバラツキが大きいというゾーン延伸法が抱える問題を解決するものではない。
【0005】
図6に示すように、熱ロール延伸法では、高温に保持されたロール72によりPTFEシート51が加熱される。この方法では、ロール72近傍の領域75においてPTFEシート51が延伸される。熱ロール延伸法を用いれば、オーブンが不要となるため、PTFEシート51を繰り出すロール71,72とPTFE多孔質膜52を巻き取るロール73,74との間隔を短縮してネッキングを緩和できる。しかし、熱ロール延伸法では、延伸開始位置が変動しやすいため、延伸が不均一になって孔径のバラツキが大きくなる。
【0006】
【特許文献1】
特公昭58−25332号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
PTFE多孔質膜は、半導体工業や薬品工業のクリーンルームで使用されるエアフィルタの濾材として、価粉体の回収や焼却炉の粉塵の捕集に用いられるバグフィルタの濾材として、さらには電気製品などの内圧調整用の穴からの水分の浸入を防止するための膜などとして、幅広く利用されている。例えば、半導体製造のクリーンルームに用いられるエアフィルタでは、エアフィルタの風量分布の均一性が重視される。風量分布が不均一になれば、クリーンルーム中の気流が乱れて空気溜りが生じ、その結果、半導体製造の歩留低下の原因となるガス濃度が局所的に上昇するからである。その他の用途でも、膜内における特性を均一化するために、PTFE多孔質膜の孔径のバラツキを小さくすることが求められている。
【0008】
しかし、従来の延伸法では、PTFE多孔質膜の孔径のバラツキを十分に抑制できなかった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明では、一対のロール(第1ロールおよび第2ロール)の間でPTFEシートを加熱して延伸開始位置の変動を抑制するとともに、これらロール間において、延伸開始後のPTFEシートを、第2ロールよりも径が小さい少なくとも1つのガイドロールを経由させてネッキングを抑制することとした。
【0010】
本発明のPTFE多孔質膜の製造方法は、離間して配置した第1ロールから第2ロールへとPTFEシートを移送しながら上記第1ロールと上記第2ロールとにより上記PTFEシートを移送方向に引っ張って延伸することにより、上記PTFEシートを連続して多孔化するに際し、上記第1ロールと上記第2ロールとの間で上記PTFEシートを加熱し、上記PTFEシートの延伸が開始される位置よりも上記第2ロール側に配置され、かつ上記第2ロールより径が小さい少なくとも1つのガイドロールを経由させて、上記PTFEシートを移送することを含む。前記製造方法は、前記加熱が、赤外線ヒーターから放射される赤外線を前記シートに照射して行われ、前記赤外線ヒーターを、前記第1ロールと前記第2ロールとの間において前記シートとの間隔が0.1mm以上100mm以下となるように配置し、前記シートの延伸が開始される位置から前記第2ロールと前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜とが接触する位置までの移送距離L 1 が、1mm以上250mm以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明のPTFE多孔質膜の製造装置は、離間して配置した第1ロールおよび第2ロールと、PTFEシートが延伸可能となるようにこのPTFEシートを加熱する加熱手段とを含み、上記第1ロールと上記第2ロールとにより上記PTFEシートを移送方向に引っ張って延伸することにより、上記PTFEシートを連続して多孔化する装置であって、上記加熱手段として、上記第1ロールと上記第2ロールとの間において上記PTFEシートとの間隔が0.1mm以上100mm以下となるように配置された赤外線ヒーターを含み、この赤外線ヒーターよりも上記第2ロール側に、上記第2ロールよりも径が小さく、上記PTFEシートが経由する少なくとも1つのガイドロールが配置されており、前記シートの延伸が開始される位置から前記第2ロールと前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜とが接触する位置までの移送距離L 1 が、1mm以上250mm以下であることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
PTFEシートは、赤外線ヒーターから放射される赤外線を照射して加熱する。赤外線ヒーターを用いれば、PTFEシートを局所的に強く加熱できる。従来のゾーン延伸法では、実用上約500mm以上にわたってPTFEシートを加熱する必要があった。長さが制限された帯状領域、例えばPTFEシートの移送方向に1〜100mmの範囲で加熱しながら延伸すると、PTFE多孔質膜の孔径のバラツキをさらに抑制できる。
【0013】
赤外線ヒーターから放射されるエネルギーが最大となる波長(最大エネルギー波長)は1μm以上4μm以下が好適である。PTFEシートの熱吸収効率が高くなり、狭い領域での加熱および延伸が可能となるからである。
【0014】
ガイドロールとしては、その径が第2ロールよりも小さいロールが用いられる。ガイドロールの径は、小さいほど狭い空間に配置することが容易となるため、30mm以下が好適である。他方、細すぎるとロールが歪みやすくなるため、ガイドロールの径は、5mm以上が好適である。
【0015】
ガイドロールは、1本であってもよいが、PTFEシートの滑りを抑制するには2本以上がよい。ただし、ガイドロールの本数が多くなると、PTFEシートのパスラインが長くなるため、却って延伸ムラが発生しやすくなる。ガイドロールの本数は2本が最適である。ガイドロールの位置は、PTFEシートの延伸が開始される位置から第2ロールまでの間であれば特に制限されない。
【0016】
ロール間に配置される少なくとも1つのガイドロールから選ばれるいずれかのガイドロールを経由させることにより、PTFEシートの移送方向を30°以上、好ましくは45°以上変更するとよい。いわゆるシート抱き角を大きくするほど、ガイドロール上でのPTFEシートの滑りを抑制できる。
【0017】
第2ロールは、第1ロールとの間でPTFEシートを引っ張ることができるように、多孔化したPTFEシートを確実に保持する必要がある。これを考慮すると、第2ロールの径は、小さすぎない範囲、50mm以上、例えば70〜200mmが好適である。第1ロールの径も、同様の理由から、上記範囲とすることが好ましい。
【0018】
PTFEシートの延伸倍率は、1.05〜50倍、特に1.2〜50倍が好ましい。ただし、延伸倍率が高すぎると、膜の耐水性が低下することがあるため、耐水性が求められる用途では、延伸倍率を、例えば5倍以下程度に制限することが好ましい。
【0019】
PTFEシートは、PTFEの融点未満の温度に加熱しながら延伸するとよい。PTFEシートを焼成する場合には、延伸したPTFE多孔質膜をさらに繰り出し、PTFEの融点以上に加熱して連続して焼成してもよい。複数回に分けてPTFEシートを延伸しても構わない。この場合には、少なくとも最初のロール間でPTFEシートをPTFEの融点未満の温度に加熱し、焼成を要する場合には、少なくとも最後のロール間でPTFEシートをPTFEの融点以上の温度に加熱するとよい。
【0020】
PTFEシートは、第1ロールおよび第2ロールの少なくとも一方を加熱または冷却しながら延伸してもよい。ロール間におけるPTFEシートの温度を制御し、あるいはPTFEシートおよび/または延伸されたPTFEシート(PTFE多孔質膜)の移送方向における温度分布を急峻にするためである。加熱と冷却とを併用してもよく、例えば、上流側のロールを加熱してPTFEシートを予備加熱しながら、下流側のロールを冷却してもよい。
【0021】
本発明を適用して延伸したPTFE多孔質膜は、2軸延伸による多孔質膜(2軸延伸膜)としてもよく、1軸方向にのみ延伸した多孔質膜(1軸延伸膜)としてもよい。2軸延伸膜とする場合には、上記ガイドロールを用いた延伸装置により延伸し、その後、延伸した方向と直交する方向に延伸するとよい。2軸延伸膜を焼成する場合、焼成工程は、2軸に延伸してから行うべきである。
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1および図2に示した延伸装置では、PTFEシート1は、ロール11,12から連続して繰り出され、赤外線ヒーター5から照射される赤外線により加熱され、ロール回転速度の相違により第1ロール12と第2ロール13との間で延伸され多孔化される。多孔化されたPTFEシートは、ガイドロール17,18を経由し、PTFE多孔質膜2としてロール13,14によって連続して巻き取られていく。繰り出し側のロール12および巻き取り側のロール13は、回転速度が制御可能な駆動ロールである。ロール11,14は、ガイドロール17,18とともに、フリーロールとしておけばよい。
【0023】
この装置では、第1ロール12と第2ロール13との間で、ガイドロール17,18を経由することにより、PTFEシート1の移送方向が、2回、90°以上変わっている。これらのガイドロールにより、延伸されたPTFEシートが保持され、幅方向における応力のバラツキが抑えられる。ガイドロール17,18の位置は、ヒーター5からの赤外線により加熱される領域6に近いほうがよいが、現実には、ロールの温度が高くなりすぎない程度にヒーター5から離すとよい。
【0024】
ヒーター5は、PTFEシート1との距離Dが0.1mm〜100mm、特に0.1mm〜10mmとなるように配置する。強く加熱する必要がある場合には距離Dを5mm以下としてもよい。ヒーターを膜に近づけすぎるとPTFEシートと接触することがあり、逆に遠ざけすぎるとシートの温度分布が不均一となり延伸ムラが生じやすくなる。赤外線ヒーターとしては、中波長ヒーター、低波長ヒーター、カーボンヒーターなどを用いることができる。
【0025】
図2に示すように、上流側の第1ロール12から下流側の第2ロール13へと繰り出されたPTFEシート1には、膜の進行方向を横切る帯状の加熱領域6を通過する間に、この領域上に配置されたヒーター(図2では図示省略)から赤外線が照射される。PTFEシートの延伸は、この領域6内の延伸開始ライン9から開始される。延伸開始ライン9から下流側の第2ロール13(正確にはロール13とPTFE多孔質膜2とが接触する位置)に至るまでにPTFEシートが移送される距離(移送距離;パスライン)L1は、ネッキングを抑制するために、1mm以上250mm以下である。
【0026】
移送距離L1が短いとシートの歪み速度が高くなる。高い歪み速度は孔径の均一化には好ましいが、歪み速度が高すぎると圧力損失が低いPTFE多孔質膜を得にくくなる。一方、単に移送距離L1を大きくとったのでは、孔径の均一性が損なわれる。しかし、ロール間で赤外線ヒーターから赤外線を照射して加熱し、かつ例えば100mm以上の移送距離L1を確保しながらPTFEシートをガイドロールにより保持しながら延伸すると、圧力損失の平均値を50Pa以下にまで引き下げても、孔径が均一化され、膜内における特性のバラツキ(例えば圧力損失のバラツキ)が小さいPTFE多孔質膜を得ることができる。
【0027】
圧力損失のバラツキは、互いに測定箇所が重複しないように測定数を24として測定した変動率を2%以下となる程度にまで抑制できる。測定箇所の定め方の例は下記実施例に示す。上記程度にまで圧力損失が低くその変動率が小さいPTFE多孔質膜は、本発明の適用により初めて製造が可能になったものであり、本発明の一側面を構成する。
【0028】
ロール12,13間の間隔L2(ガイドロールがない場合のロール間のPTFEシートの移送距離)は、通常、50mm〜500mm程度が適当である。ただし、上記程度に圧力損失が低いPTFE多孔質膜を得るには、間隔L2は100mm以上に保つとよい。
【0029】
加熱領域6と非加熱領域との間の温度勾配は、急峻であるほうが好ましい。赤外線、特に波長が、1μm〜4μm、さらには1.5μm〜3μmである赤外線は、PTFEの吸収効率に優れているため、PTFEシートを帯状の領域において局所的な延伸可能とする放射線として適している。温度勾配をより急峻に保ちたい場合には、第1ロール12および第2ロール13から選ばれる少なくとも一方を冷却するとよい。加熱領域6においてPTFEシート1が、所望の延伸温度に達しない場合には、第1ロール12を用いてPTFEシートを予備加熱してもよい。予備加熱のために、領域6上流側のPTFEシート1に熱風などを吹きつけても構わない。
【0030】
図1に例示した装置では、一本のヒーターが、PTFEシートの進行方向と直交するようにシート上方においてPTFEシートを横切っている。このヒーターの配置は、PTFEシートを、幅方向について均一に加熱するための好ましい配置の一例である。ただし、ヒーターの位置、設置数、膜進行方向との角度は、図1に示した形態に限られない。PTFEシートが両面から加熱されるようにヒーターをシート下方に追加してもよいし、PTFEシートの同一側に複数のヒーターを配置してもよい。所定領域に赤外線を集中するために、ヒーターの周囲に熱線反射板などを設置しても構わない。
【0031】
従来の熱ロール延伸法のように、ロールにより加熱してから延伸を開始すると、延伸開始位置が定まりにくい。しかし、図1および図2に示したように、延伸開始位置を含む領域を局所的に強く加熱すると、延伸開始位置の変動を防止しながら大きな歪み速度でシートを延伸できる。
【0032】
PTFEシートの延伸に際してのその他条件に限定はなく、所望の特性に応じて適宜定めればよいが、通常、繰り出し側のロールの速度は0.1〜15m/分が、延伸温度は50℃〜300℃がそれぞれ好適である。
【0033】
こうして得たPTFE多孔質膜は、そのまま1軸延伸膜として用いてもよいが、さらにMD方向と直交する方向(Transverse Direction、以後、「TD方向」と略す)に延伸して2軸延伸膜としてもよい。ただし、TD方向への延伸を行ってからMD方向への延伸を行ってもよい。TD方向への延伸の延伸倍率は1.2〜50倍、延伸温度は室温〜200℃がそれぞれ好適である。1軸延伸膜とする場合には、通気度3〜100秒(JIS P8117に規定の方法による測定値)、平均孔径0.02〜3.0μmの膜とすることが好ましい。2軸延伸膜とする場合には、圧力損失10〜1000Pa、平均孔径0.05〜51.0μmとするとよい。
【0034】
図1および図2に示した装置により延伸したPTFE多孔質膜2は、さらに焼成してもよい。高い機械的強度が求められる場合には、PTFEの融点未満の温度で延伸してからPTFEの融点以上の温度、具体的には327℃以上、特に350℃以上で焼成するとよい。焼成方法について特に限定はないが、図3に示すように、オーブン8を用いて連続してPTFE膜2を焼成するとよい。オーブン8としては、従来、延伸(あるいは延伸および焼成)に用いられていた熱風循環式電気オーブンやガスオーブンを使用すれば足りる。ただし、加熱手段は、これらオーブンに限定されるものではない。焼成時間(焼成温度に保持した雰囲気に接触させる時間)は、通常5秒以上、特に10秒以上が好適であり、200秒以下とするとよい。
【0035】
焼成の際の第1ロールと第2ロールとの回転速度は、得ようとする膜の特性に応じて適宜調整すればよい。基本的には同速とするとよいが、さらに延伸したり、膜が垂れない程度に収縮させてもよい。焼成されたPTFE多孔質膜7からは、焼成前のPTFE多孔質膜2よりも高い強度が得られる。
【0036】
延伸するPTFEシートは、特に制限されないが、厚さ0.01mm〜2mm程度、特に厚さ0.01mm〜1mm程度とするとよい。PTFEシートは、従来知られている方法により得たものを用いれば足りる。PTFEシートは、一般に、PTFEファインパウダーに液状潤滑剤を加えたペースト状の混和物を予備成形し、予備成形体をペースト押し出し、圧延によりシート状に成形して作製される。なお、液状潤滑剤は、PTFEファインパウダーの表面を濡らすことができて抽出や加熱により除去できるものであれば特に制限されず、流動パラフィン、ナフサ、ホワイトオイルなどの炭化水素を用いればよい。液状潤滑剤の添加量は、PTFEファインパウダー100重量部に対して5〜50重量部が適当である。予備成形は、液状潤滑剤が絞り出されない程度の圧力で行えばよい。液状潤滑剤は、延伸するPTFEシートから予め除去しておくとよいが、延伸後に除去しても構わない。
【0037】
【実施例】
(実施例1)
PTFEファインパウダー100重量部に対して液状潤滑剤(ケロシン)を20重量部加えて得たペースト状の混和物を予備成型し、ぺースト押し出しにより丸棒状に成形し、さらに圧延した。圧延して得たPTFEシート(厚さ:0.2mm)を130℃に加熱して液状潤滑剤を蒸発除去した。
【0038】
こうして得たPTFEシートを、図1および図2に示した延伸装置を用いて延伸した。この延伸装置では、上流側のロール11,12と下流側のロール13,14とが、それぞれ回転速度を任意に制御するためのロール駆動手段に接続している。これらロール11〜14の径は120mmとした。一方、ガイドロール(フリーロール)17,18の径は10mmとした。ヒーター5としては、赤外線ヒーター(幅3cm、定格出力0.8kW、最大エネルギー波長2.6μm)を用いた。ヒーター5とPTFEシートとの間隔は2mmに調整した。ロール12,13間の間隔(図2:L2)は150mmとした。延伸時のPTFEシートの温度は、図4に示したように、ヒーター5の下流側に近接して配置した放射温度計10(CHINO社製,型番1R−TAP)を用いて測定した。
【0039】
上流側ロールからの繰り出し速度を0.6m/分、下流側ロールによる巻き取り速度を6m/分としてPTFEシートを多孔化した。延伸開始ライン7から第2ロール13までのPTFEシートのパスライン(図2:L1)は約200mmであった。放射温度計で測定した膜の温度(延伸温度)は173℃であった。
【0040】
PTFEシートに、2点(TD方向)×6点(MD方向)の標点群をMD方向に沿って4カ所形成した。標点群内における点間隔は10mmとした。延伸後の標点間隔を測定し、延伸倍率の平均値および変動率を計算した。延伸倍率の平均値は9.7倍、変動率は1.25%であった。
【0041】
(実施例2)
実施例1で得た1軸延伸膜を、テンター延伸装置を用いてTD方向へさらに延伸し、2軸延伸膜を得た。TD方向の延伸は、延伸倍率を30倍、延伸温度は室温とした。こうして得た2軸延伸PTFE多孔質膜について、圧力損失を測定した。測定は、互いに重複しないように任意に選択した複数点について行った。TD方向1点×MD方向25点の計25点について測定したところ、圧力損失の平均値は134Pa、変動率は1.96%となった。さらに、測定数をTD方向4点×MD方向6点の24として測定したところ、圧力損失の平均値は135Pa、変動率は1.84%となった。
【0042】
なお、圧力損失としては、有効面積100cm2の円形ホルダーにPTFE多孔質膜をセットした状態で、風速5.3cm/秒で空気を通過させたときの圧力損失を圧力計(マノメータ)で測定した値を採用した。
【0043】
なお、変動率は、以下の式により算出できる。
変動率(%)=(標準偏差/平均値)×100
【0044】
(比較例1)
ガイドロール17,18を除いてこれらのロールを経由させない以外は実施例1と同様にしてPTFEシートを延伸した。PTFEシートのパスライン(図2:L1)は約150mmに短縮された。しかし、実施例1と同様にして測定した延伸倍率の平均値および変動率は、それぞれ9.8倍、2.08%となった。
【0045】
(比較例2)
比較例1で得た1軸延伸膜を、テンター延伸装置を用いてTD方向へさらに延伸し、2軸延伸膜を得た。TD方向の延伸は、実施例2と同様にして行った。こうして得たPTFE多孔質膜について、実施例2と同様にして圧力損失を測定した。TD方向4点×MD方向6点の計24点について測定したところ、圧力損失の平均値は120Pa、変動率は2.68%となった。TD方向1点×MD方向25点の計25点について測定したところ、圧力損失の平均値は128Pa、変動率は2.17%となった。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、孔径のバラツキが小さく、特性が均一化されたPTFE多孔質膜を得ることができる。特に、本発明によれば、圧力損失が低く、かつ膜内におけるバラツキも小さいPTFE多孔質膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のPTFE多孔質膜の製造装置の一形態を示す断面図である。
【図2】 図1の製造装置の平面図である。
【図3】 延伸したPTFE多孔質膜をさらに焼成する装置の一形態を示す断面図である。
【図4】 実施例において用いた延伸装置における温度計の配置を示す平面図である。
【図5】 従来のゾーン延伸法によるPTFE多孔質膜の製造装置を示す断面図である。
【図6】 従来の熱ロール延伸法によるPTFE多孔質膜の製造装置を示す断面図である。
【符合の説明】
1 PTFEシート
2 延伸されたPTFEシート(PTFE多孔質膜)
5 赤外線ヒーター
6 加熱領域
7 焼成されたPTFE多孔質膜
8 オーブン
9 延伸開始ライン
10 放射温度計
11〜14 第1ロール,第2ロール
17,18 ガイドロール
Claims (7)
- 離間して配置した第1ロールから第2ロールへとポリテトラフルオロエチレンシートを移送しながら前記第1ロールと前記第2ロールとにより前記シートを移送方向に引っ張って延伸することにより、前記シートを連続して多孔化するポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法であって、
前記第1ロールと前記第2ロールとの間で前記シートを加熱し、
前記シートの延伸が開始される位置よりも前記第2ロール側に配置され、前記第2ロールより径が小さい少なくとも1つのガイドロールを経由させて、前記シートを移送することを含み、
前記加熱が、赤外線ヒーターから放射される赤外線を前記シートに照射して行われ、
前記赤外線ヒーターを、前記第1ロールと前記第2ロールとの間において前記シートとの間隔が0.1mm以上100mm以下となるように配置し、
前記シートの延伸が開始される位置から前記第2ロールと前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜とが接触する位置までの移送距離L 1 が、1mm以上250mm以下である製造方法。 - 前記少なくとも1つのガイドロールから選ばれるいずれかのガイドロールを経由させることにより、前記シートの移送方向を30°以上変更する請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法。
- 前記第1ロールと前記第2ロールとの間隔L 2 が、50〜500mmである請求項1または2に記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法。
- 離間して配置した第1ロールおよび第2ロールと、ポリテトラフルオロエチレンシートが延伸可能となるように前記シートを加熱する加熱手段とを含み、前記第1ロールと前記第2ロールとにより前記シートを移送方向に引っ張って延伸することにより、前記シートを連続して多孔化するポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造装置であって、
前記加熱手段として、前記第1ロールと前記第2ロールとの間において前記シートとの間隔が0.1mm以上100mm以下となるように配置された赤外線ヒーターを含み、
前記赤外線ヒーターよりも前記第2ロール側に、前記第2ロールよりも径が小さく、前記シートが経由する少なくとも1つのガイドロールが配置されており、
前記シートの延伸が開始される位置から前記第2ロールと前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜とが接触する位置までの移送距離L 1 が、1mm以上250mm以下であるポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造装置。 - 前記少なくとも1つのガイドロールから選ばれるいずれかのガイドロールを経由させることにより、前記シートの移送方向を30°以上変更する請求項4に記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造装置。
- 前記赤外線ヒーターから放射されるエネルギーが最大となる波長が1μm以上4μm以下である請求項4または5に記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造装置。
- 前記第1ロールと前記第2ロールとの間隔L 2 が、50〜500mmである請求項4〜6のいずれかに記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造装置。
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