JP2004231626A - 植物病害防除剤組成物及び微生物 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、各種農園芸作物等の植物の病害、特に灰色かび病及び菌核病に対して、一定して優れた防除能を有し、両病害の発病適温と本発明微生物の防除適温とに大きなずれがなく、人畜に対し安全性の高い新規な微生物や、かかる微生物を含有することにより長期に亘り病害防除能を保持できる植物病害防除剤組成物や、これを用いて植物及び/又は土壌を処理する植物病害の防除方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ペニシリウム・カマンベルティ(Penicillium camemberti)に属する微生物を含有することを特徴とする植物病害防除剤組成物および植物病害の防除方法により解決できる。
【解決手段】ペニシリウム・カマンベルティ(Penicillium camemberti)に属する微生物を含有することを特徴とする植物病害防除剤組成物および植物病害の防除方法により解決できる。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペニシリウム・カマンベルティ(Penicillium camemberti)に属する微生物を含有してなる植物病害防除剤組成物および該植物病害防除剤組成物を用いた植物病害防除方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の合成殺菌剤による植物病害防除に代わるべき、あるいは併用すべき手段として、環境汚染が極めて少なく、生態系に調和し、かつ防除効果の優れたものとして生物農薬が知られている。農園芸作物の病害防除、特に灰色かび病防除に用いられてきた微生物として、トリコデルマ属、グリオクラディウム属、バチルス属、ペニシリウム属、フザリウム属に属する微生物が挙げられ、これまでにこれらの微生物を含有する農園芸用殺菌剤組成物も数多く研究開発されてきた。(例えば特許文献1、特許文献2 参照)
【0003】
しかし、従来のバチルス属に属する細菌を応用した農園芸作物の病害防除方法では何れも持続性、定着性、安定性や対照の植物病原菌との生育適温の違い等、必ずしも十分であるとは言えなかった。
また、ペニシリウム属に属する真菌を応用した農園芸作物の病害防除方法特に灰色かび病の防除について報告されている。(例えば非特許文献1、非特許文献2参照)
【特許文献1】特開昭63−273470号公報
【特許文献2】特開平2−22299号公報
【非特許文献1】Phytopathology(83,No.6,615−21,1993)
【非特許文献2】Bull. International Organization of Biological Control/West Palaearctic Regional Section (IBOC/WPRS)(14,No.5,192−94,1991)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、各種農園芸作物等の植物の病害、特に灰色かび病及び菌核病に対して、一定して優れた防除能を有し、両病害の発病適温と本発明微生物の防除適温とに大きなずれがなく、人畜に対し安全性の高い新規な微生物や、かかる微生物を含有することにより長期に亘り病害防除能を保持できる植物病害防除剤組成物や、これを用いて植物及び/又は土壌を処理する植物病害の防除方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明者らは、人畜への安全性の実証されているチーズや発酵乳酸飲食料品等に利用されている微生物について各種農園芸作物の灰色かび病防除活性を有する微生物の選抜を行い、本発明の、灰色かび病病原菌の生育を妨げる糸状菌を分離、選抜した。本発明に係わる糸状菌株の形態や菌学的性質は以下の通りであった。
【0006】
菌叢は、羊毛状で白色であり後にややクリーム色を呈する。分生子柄は直接分岐してブランチ、メトレを形成しさらに梗子が箒状に配列し、箒状体を形成している。梗子の上端に球状の分生子が鎖状に着生し、箒状体は、左右非対称でAsymmetricaである。
【0007】
かかる形態的特徴とペニシリウム・カマンベルティとして知られている(独)製品評価技術基盤機構の生物遺伝資源センター保有のペニシリウム・カマンベルティ NBRC32215株との形態比較から上記糸状菌株をペニシリウム属に属するペニシリウム・カマンベルティ(P. camemberti)と同定した。そして、これらペニシリウム・カマンベルティは、灰色かび病の他、菌核病に対しても優れた防除活性を有するばかりか、カマンベールチーズの熟成にあずかり、食品分野でも有効利用されていることから安全性の高い微生物農薬となりうる菌であることが証明され、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ペニシリウム・カマンベルティ(P. camemberti)に属する微生物を含有することを特徴とする植物病害防除剤組成物(請求項1)や、植物病害防除剤が、灰色かび病防除剤及び/又は菌核病防除剤であることを特徴とする請求項1記載の植物病害防除剤組成物(請求項2)や、請求項1〜2のいずれか記載の植物病害防除剤組成物を用いて、植物及び/又は土壌を処理することを特徴とする植物病害の防除方法(請求項3)や、植物病害防除能が、灰色かび病防除能及び/又は菌核病防除能であることを特徴とするペニシリウム・カマンベルティ(P. camemberti)(請求項4)に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の植物病害防除剤組成物としては、ペニシリウム・カマンベルティ(P.camemberti)に属する微生物を含有する組成物であれば、特に限定されるものではない。 また、本発明の植物病害防除剤組成物は、灰色かび病や菌核病に対して特に有利に用いることができる。
【0010】
本発明の植物病害防除剤組成物の製造には、ペニシリウム属に属する微生物を固体培養あるいは液体培養等の公知の手段で増殖させた菌体を用いることができる。ペニシリウム・カマンベルティは、例えばカマンベールチーズからスクリーニングにより得ることができ、かかる微生物の増殖方法としては、菌体が増殖し、胞子を生産する方法であれば、特に培地の種類や培養条件等を問わず、いずれの方法でもよいが、例えば、固体培養の場合、ポテトデキストロース寒天培地、Czapek Dox寒天培地、麦芽寒天培地、標準寒天培地等における25℃での静置培養を、液体培養の場合、ポテトデキストロース液体培地、Czapek Dox液体培地、麦芽液体培地、標準液体培地等における25℃での振盪培養を挙げることができる。また、菌体の使用形態としては、菌体自体のほか、その懸濁液ないし培養液又はこれらの濃縮物、ペースト状物、乾燥物、希釈物等のいずれの形態であっても適用することができる。
【0011】
本発明の病害防除剤組成物におけるペニシリウム・カマンベルティの濃度は、特に制限されるものではないが、1000〜2000倍に希釈した際に、分生胞子菌濃度に換算して、1×1010〜1×103cfu/ml、好ましくは1×108〜1×104cfu/mlの範囲である。また、本発明の病害防除剤組成物には通常使用される担体、界面活性剤、分散剤、補助剤等を配合させることができ、その形態としては通常の農薬のとり得る形態、例えば、粉剤、水和剤、乳剤、フロアブル剤、粒剤等の形態を採用することができる。
【0012】
上記担体としては、例えば、珪藻土、クレー、タルク、ベントナイト、ホワイトカーボン、カオリン、バーミキュライト、消石灰、珪砂、硫安、尿素等の固体担体を挙げることができる。界面活性剤及び分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンが付加したアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンが付加したアルキルエーテル、ポリオキシエチレンが付加した高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したトリスチリルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンが付加したアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルムアルデヒド縮合物、イソブチレン−無水マレイン酸の共重合体等のイオン性界面活性剤や、分散剤を挙げることができる。また、補助剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、アラビアゴム、澱粉、乳糖等を挙げることができる。
【0013】
本発明の病害防除剤組成物を乳剤として製造するには、採取・乾燥したペニシリウム・カマンベルティの分生胞子を、界面活性剤を含有する有機溶剤中に混入させた懸濁液を調製することにより行うことができる。かかる界面活性剤としては、菌胞子の発芽・生長を阻害しない性状のものであればいずれのものも適用することができ、具体的には、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等を挙げることができ、これらを1種単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。また、有機溶剤としては、例えば、大豆油、ナタネ油、ひまし油、綿実油、パーム油、サフラワー油等の植物油、スピンドル油、ヘビーホワイトオイル、ライトホワイトオイル、ミネラルスピリット、ミネラルターペン、ナフテン油、パラフィン油、農薬用マシン油等の鉱物油、シリコーンオイル等を挙げることができ、これらは1種単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0014】
本発明の植物病害の防除方法は、上記本発明の植物病害防除剤組成物を用いて植物病害を防除する方法であれば、特に制限されるものではなく、本発明の植物病害防除剤組成物を通常の化学農薬と同様、各種農園芸作物等の植物体や土壌に散布処理等する方法を挙げることができる。散布処理に当たっては、本発明の植物病害防除剤組成物を適当量の水等で希釈して使用することができ、散布量としては、ペニシリウム・カマンベルティの分生胞子濃度に換算して、通常1×1010〜1×103cfu/ml、好ましくは1×108〜1×104cfu/mlの範囲である。
【0015】
本発明はまた、植物病害防除能を有し、特に灰色かび病防除能及び/又は菌核病防除能を有するペニシリウム・カマンベルティを対象としている。これら微生物自体は、上述の植物病害防除剤組成物の製造に有利に用いることができる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の植物病害防除剤組成物や、これを用いた植物病害防除方法を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、ペニシリウム・カマンベルティの種類、製剤の組成割合、剤型等を自由に変更することができる。また、以下の実施例では、ペニシリウム・カマンベルティ NBRC32215を用いた。
【0017】
実施例1:ペニシリウム・カマンベルティ分生胞子懸濁液の調製
φ20mmのシャーレ内に調製したポテトデキストロース寒天培地(0.4w/v%ポテトエキス,2%グルコース,pH6.0)にペニシリウム・カマンベルティ NBRC32215株の前培養物を接種し、25℃で1週間静置培養した。培養物に水道水を注ぎ、絵筆で表面をい掻き取り、2重のガーゼで濾過し、分生胞子懸濁液を調製した。
【0018】
実施例2:植物病害防除剤組成物(粉剤)の製造
実施例1で調製したペニシリウム属菌分生胞子懸濁液(1×109cfu/ml)2重量部の胞子ペレット、珪藻土1重量部及びクレー1重量部を均一に混合し乾燥した後、粉砕して粉剤Aを得た。
【0019】
実施例3:植物病害防除剤組成物(水和剤)の製造
実施例1で調製したペニシリウム・カマンベルティ分生胞子懸濁液(1×109cfu/ml)1重量部の胞子ペレットと、スキムミルク10重量%及びグルタミン酸ナトリウム1重量%を含む水溶液1重量部とを均一に混合し、凍結後、乾燥して水和剤Bを得た。
【0020】
実施例4:植物病害防除剤組成物(粉剤)の防除効果試験
実施例2で得られた粉剤Aを水道水で1000倍に希釈して処理液を調製した。その処理液をインゲンの花器に散布した。その後、20℃でインキュベートし、24時間後灰色かび病の病原菌であるボトリシス・シネレア(Botrytis cinerea)の分生胞子懸濁液(2.0×105cfu/ml)をインゲンの花器に散布した。散布処理後、20℃で3日間インキュベートした。また、無処理を対照とし、ボトリシス・シネレア(B. cinerea)の分生胞子懸濁液(2.0×105cfu/ml)のみを散布処理した。調査は、0:B.cinereaの菌糸の生育が認められない(発病なし),1:菌糸の生育がごく一部に認められる,2:菌糸の生育が50%未満,3:花器全体に菌糸の生育が認められるの4段階で調査した。
発病度=((Σ(指数×該当花器数))/調査花器数×3)×100
また、インゲン花器の下にインゲンの葉を敷き、病斑直径を計測した。
表から明らかなようにペニシリウム・カマンベルティはインゲン灰色かび病に対して防除効果を有することが認められた。
【0021】
比較例1:ペニシリウム・ロックフォルティ( Penicillium roqueforti )のインゲン灰色か
び病防除試験
実施例2と同様に調製したペニシリウム・ロックフォルティの粉剤Bを用い、実施例4と同様の試験を実施した。試験方法および調査方法は実施例4と同様である。
表から明らかなようにペニシリウム・ロックフォルティはインゲン灰色かび病に対して、有効な防除価は認められなかった。この比較は不要と思います。公知文献記載の菌ならば比較する価値があるのですが。なので、削除したいと思います。
【0022】
【表1】
【0023】
【発明の効果】
本発明の植物病害防除剤組成物は、各種農園芸作物等の植物の病害、特に灰色かび病や菌核病に対して、一定して優れた防除能を有し、長期に亘り病害防除能を保持することができ、かかる植物病害防除剤組成物を用いた本発明の植物病害の防除方法によれば、植物病害防除剤組成物を各種農園芸作物等の植物や、土壌に散布する等の方法により、植物の病害、特に灰色かび病及び菌核病に対して効果的に防除することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペニシリウム・カマンベルティ(Penicillium camemberti)に属する微生物を含有してなる植物病害防除剤組成物および該植物病害防除剤組成物を用いた植物病害防除方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の合成殺菌剤による植物病害防除に代わるべき、あるいは併用すべき手段として、環境汚染が極めて少なく、生態系に調和し、かつ防除効果の優れたものとして生物農薬が知られている。農園芸作物の病害防除、特に灰色かび病防除に用いられてきた微生物として、トリコデルマ属、グリオクラディウム属、バチルス属、ペニシリウム属、フザリウム属に属する微生物が挙げられ、これまでにこれらの微生物を含有する農園芸用殺菌剤組成物も数多く研究開発されてきた。(例えば特許文献1、特許文献2 参照)
【0003】
しかし、従来のバチルス属に属する細菌を応用した農園芸作物の病害防除方法では何れも持続性、定着性、安定性や対照の植物病原菌との生育適温の違い等、必ずしも十分であるとは言えなかった。
また、ペニシリウム属に属する真菌を応用した農園芸作物の病害防除方法特に灰色かび病の防除について報告されている。(例えば非特許文献1、非特許文献2参照)
【特許文献1】特開昭63−273470号公報
【特許文献2】特開平2−22299号公報
【非特許文献1】Phytopathology(83,No.6,615−21,1993)
【非特許文献2】Bull. International Organization of Biological Control/West Palaearctic Regional Section (IBOC/WPRS)(14,No.5,192−94,1991)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、各種農園芸作物等の植物の病害、特に灰色かび病及び菌核病に対して、一定して優れた防除能を有し、両病害の発病適温と本発明微生物の防除適温とに大きなずれがなく、人畜に対し安全性の高い新規な微生物や、かかる微生物を含有することにより長期に亘り病害防除能を保持できる植物病害防除剤組成物や、これを用いて植物及び/又は土壌を処理する植物病害の防除方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明者らは、人畜への安全性の実証されているチーズや発酵乳酸飲食料品等に利用されている微生物について各種農園芸作物の灰色かび病防除活性を有する微生物の選抜を行い、本発明の、灰色かび病病原菌の生育を妨げる糸状菌を分離、選抜した。本発明に係わる糸状菌株の形態や菌学的性質は以下の通りであった。
【0006】
菌叢は、羊毛状で白色であり後にややクリーム色を呈する。分生子柄は直接分岐してブランチ、メトレを形成しさらに梗子が箒状に配列し、箒状体を形成している。梗子の上端に球状の分生子が鎖状に着生し、箒状体は、左右非対称でAsymmetricaである。
【0007】
かかる形態的特徴とペニシリウム・カマンベルティとして知られている(独)製品評価技術基盤機構の生物遺伝資源センター保有のペニシリウム・カマンベルティ NBRC32215株との形態比較から上記糸状菌株をペニシリウム属に属するペニシリウム・カマンベルティ(P. camemberti)と同定した。そして、これらペニシリウム・カマンベルティは、灰色かび病の他、菌核病に対しても優れた防除活性を有するばかりか、カマンベールチーズの熟成にあずかり、食品分野でも有効利用されていることから安全性の高い微生物農薬となりうる菌であることが証明され、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ペニシリウム・カマンベルティ(P. camemberti)に属する微生物を含有することを特徴とする植物病害防除剤組成物(請求項1)や、植物病害防除剤が、灰色かび病防除剤及び/又は菌核病防除剤であることを特徴とする請求項1記載の植物病害防除剤組成物(請求項2)や、請求項1〜2のいずれか記載の植物病害防除剤組成物を用いて、植物及び/又は土壌を処理することを特徴とする植物病害の防除方法(請求項3)や、植物病害防除能が、灰色かび病防除能及び/又は菌核病防除能であることを特徴とするペニシリウム・カマンベルティ(P. camemberti)(請求項4)に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の植物病害防除剤組成物としては、ペニシリウム・カマンベルティ(P.camemberti)に属する微生物を含有する組成物であれば、特に限定されるものではない。 また、本発明の植物病害防除剤組成物は、灰色かび病や菌核病に対して特に有利に用いることができる。
【0010】
本発明の植物病害防除剤組成物の製造には、ペニシリウム属に属する微生物を固体培養あるいは液体培養等の公知の手段で増殖させた菌体を用いることができる。ペニシリウム・カマンベルティは、例えばカマンベールチーズからスクリーニングにより得ることができ、かかる微生物の増殖方法としては、菌体が増殖し、胞子を生産する方法であれば、特に培地の種類や培養条件等を問わず、いずれの方法でもよいが、例えば、固体培養の場合、ポテトデキストロース寒天培地、Czapek Dox寒天培地、麦芽寒天培地、標準寒天培地等における25℃での静置培養を、液体培養の場合、ポテトデキストロース液体培地、Czapek Dox液体培地、麦芽液体培地、標準液体培地等における25℃での振盪培養を挙げることができる。また、菌体の使用形態としては、菌体自体のほか、その懸濁液ないし培養液又はこれらの濃縮物、ペースト状物、乾燥物、希釈物等のいずれの形態であっても適用することができる。
【0011】
本発明の病害防除剤組成物におけるペニシリウム・カマンベルティの濃度は、特に制限されるものではないが、1000〜2000倍に希釈した際に、分生胞子菌濃度に換算して、1×1010〜1×103cfu/ml、好ましくは1×108〜1×104cfu/mlの範囲である。また、本発明の病害防除剤組成物には通常使用される担体、界面活性剤、分散剤、補助剤等を配合させることができ、その形態としては通常の農薬のとり得る形態、例えば、粉剤、水和剤、乳剤、フロアブル剤、粒剤等の形態を採用することができる。
【0012】
上記担体としては、例えば、珪藻土、クレー、タルク、ベントナイト、ホワイトカーボン、カオリン、バーミキュライト、消石灰、珪砂、硫安、尿素等の固体担体を挙げることができる。界面活性剤及び分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンが付加したアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンが付加したアルキルエーテル、ポリオキシエチレンが付加した高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したトリスチリルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンが付加したアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルムアルデヒド縮合物、イソブチレン−無水マレイン酸の共重合体等のイオン性界面活性剤や、分散剤を挙げることができる。また、補助剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、アラビアゴム、澱粉、乳糖等を挙げることができる。
【0013】
本発明の病害防除剤組成物を乳剤として製造するには、採取・乾燥したペニシリウム・カマンベルティの分生胞子を、界面活性剤を含有する有機溶剤中に混入させた懸濁液を調製することにより行うことができる。かかる界面活性剤としては、菌胞子の発芽・生長を阻害しない性状のものであればいずれのものも適用することができ、具体的には、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等を挙げることができ、これらを1種単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。また、有機溶剤としては、例えば、大豆油、ナタネ油、ひまし油、綿実油、パーム油、サフラワー油等の植物油、スピンドル油、ヘビーホワイトオイル、ライトホワイトオイル、ミネラルスピリット、ミネラルターペン、ナフテン油、パラフィン油、農薬用マシン油等の鉱物油、シリコーンオイル等を挙げることができ、これらは1種単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0014】
本発明の植物病害の防除方法は、上記本発明の植物病害防除剤組成物を用いて植物病害を防除する方法であれば、特に制限されるものではなく、本発明の植物病害防除剤組成物を通常の化学農薬と同様、各種農園芸作物等の植物体や土壌に散布処理等する方法を挙げることができる。散布処理に当たっては、本発明の植物病害防除剤組成物を適当量の水等で希釈して使用することができ、散布量としては、ペニシリウム・カマンベルティの分生胞子濃度に換算して、通常1×1010〜1×103cfu/ml、好ましくは1×108〜1×104cfu/mlの範囲である。
【0015】
本発明はまた、植物病害防除能を有し、特に灰色かび病防除能及び/又は菌核病防除能を有するペニシリウム・カマンベルティを対象としている。これら微生物自体は、上述の植物病害防除剤組成物の製造に有利に用いることができる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の植物病害防除剤組成物や、これを用いた植物病害防除方法を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、ペニシリウム・カマンベルティの種類、製剤の組成割合、剤型等を自由に変更することができる。また、以下の実施例では、ペニシリウム・カマンベルティ NBRC32215を用いた。
【0017】
実施例1:ペニシリウム・カマンベルティ分生胞子懸濁液の調製
φ20mmのシャーレ内に調製したポテトデキストロース寒天培地(0.4w/v%ポテトエキス,2%グルコース,pH6.0)にペニシリウム・カマンベルティ NBRC32215株の前培養物を接種し、25℃で1週間静置培養した。培養物に水道水を注ぎ、絵筆で表面をい掻き取り、2重のガーゼで濾過し、分生胞子懸濁液を調製した。
【0018】
実施例2:植物病害防除剤組成物(粉剤)の製造
実施例1で調製したペニシリウム属菌分生胞子懸濁液(1×109cfu/ml)2重量部の胞子ペレット、珪藻土1重量部及びクレー1重量部を均一に混合し乾燥した後、粉砕して粉剤Aを得た。
【0019】
実施例3:植物病害防除剤組成物(水和剤)の製造
実施例1で調製したペニシリウム・カマンベルティ分生胞子懸濁液(1×109cfu/ml)1重量部の胞子ペレットと、スキムミルク10重量%及びグルタミン酸ナトリウム1重量%を含む水溶液1重量部とを均一に混合し、凍結後、乾燥して水和剤Bを得た。
【0020】
実施例4:植物病害防除剤組成物(粉剤)の防除効果試験
実施例2で得られた粉剤Aを水道水で1000倍に希釈して処理液を調製した。その処理液をインゲンの花器に散布した。その後、20℃でインキュベートし、24時間後灰色かび病の病原菌であるボトリシス・シネレア(Botrytis cinerea)の分生胞子懸濁液(2.0×105cfu/ml)をインゲンの花器に散布した。散布処理後、20℃で3日間インキュベートした。また、無処理を対照とし、ボトリシス・シネレア(B. cinerea)の分生胞子懸濁液(2.0×105cfu/ml)のみを散布処理した。調査は、0:B.cinereaの菌糸の生育が認められない(発病なし),1:菌糸の生育がごく一部に認められる,2:菌糸の生育が50%未満,3:花器全体に菌糸の生育が認められるの4段階で調査した。
発病度=((Σ(指数×該当花器数))/調査花器数×3)×100
また、インゲン花器の下にインゲンの葉を敷き、病斑直径を計測した。
表から明らかなようにペニシリウム・カマンベルティはインゲン灰色かび病に対して防除効果を有することが認められた。
【0021】
比較例1:ペニシリウム・ロックフォルティ( Penicillium roqueforti )のインゲン灰色か
び病防除試験
実施例2と同様に調製したペニシリウム・ロックフォルティの粉剤Bを用い、実施例4と同様の試験を実施した。試験方法および調査方法は実施例4と同様である。
表から明らかなようにペニシリウム・ロックフォルティはインゲン灰色かび病に対して、有効な防除価は認められなかった。この比較は不要と思います。公知文献記載の菌ならば比較する価値があるのですが。なので、削除したいと思います。
【0022】
【表1】
【0023】
【発明の効果】
本発明の植物病害防除剤組成物は、各種農園芸作物等の植物の病害、特に灰色かび病や菌核病に対して、一定して優れた防除能を有し、長期に亘り病害防除能を保持することができ、かかる植物病害防除剤組成物を用いた本発明の植物病害の防除方法によれば、植物病害防除剤組成物を各種農園芸作物等の植物や、土壌に散布する等の方法により、植物の病害、特に灰色かび病及び菌核病に対して効果的に防除することができる。
Claims (4)
- ペニシリウム・カマンベルティ(Penicillium camemberti)に属する微生物を含有することを特徴とする植物病害防除剤組成物。
- 防除対象病害が、灰色かび病及び/又は菌核病である請求項1記載の植物病害防除剤組成物。
- ペニシリウム・カマンベルティ(Penicillium camemberti)に属する微生物を含有する植物病害防除剤組成物を用いて、植物及び/又は土壌を処理することを特徴とする植物病害の防除方法。
- 灰色かび病防除能及び/又は菌核病防除能を有することを特徴とするペニシリウム・カマンベルティ(P. camemberti)。
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