JP2004231110A - 情報通信システム及びこれを用いた乗員保護装置 - Google Patents
情報通信システム及びこれを用いた乗員保護装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】コンデンサの充電を、マスタ局に流れる電流を大きくすることなく、且つ迅速に行うことができる情報通信システムを提供すること。
【解決手段】マスタ局2と、点火用コンデンサを備えるスレーブ局30とを備えた情報通信システム4において、マスタ局2は、主電源23から出力される電圧にて一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサの充電を開始した後、この充電が完了する前に、当該主電源23から出力される電圧にて当該一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサの充電と並行して他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサの充電を開始する。
【選択図】 図1
【解決手段】マスタ局2と、点火用コンデンサを備えるスレーブ局30とを備えた情報通信システム4において、マスタ局2は、主電源23から出力される電圧にて一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサの充電を開始した後、この充電が完了する前に、当該主電源23から出力される電圧にて当該一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサの充電と並行して他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサの充電を開始する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報通信システム及びこれを用いた乗員保護装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、回路に流れる電流を大きくすることなく、コンデンサを充電する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
当該技術では、コンデンサに接続された抵抗と、この抵抗に並列に接続されたトランジスタを備えている。そして、コンデンサの初期充電の際はトランジスタをオフにすることで、抵抗を介してコンデンサに電流を流し、初期充電の後は、トランジスタをオンにすることで、当該トランジスタを介してコンデンサに電流を流す。
【0004】
これにより、回路に流れる電流を大きくすることなく、コンデンサを充電する。
【0005】
一方、マスタ局と、コンデンサを備えた複数のスレーブ局と、を備えた情報通信システムも知られており、この技術では、マスタ局がコンデンサを充電する。
【0006】
この技術では、マスタ局に流れる電流を小さくするために、一のコンデンサの充電が完了してから他のコンデンサの充電を開始する技術が提案されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−130876号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この技術には、全てのコンデンサの充電を完了するまでに時間がかかるという問題点があった。
【0009】
一方、この問題点を解決するために、全てのコンデンサを一括して充電する技術も提案されているが、この技術には、マスタ局に流れる電流が大きくなるという問題点があった。
【0010】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その主に目的とするところは、コンデンサの充電を、マスタ局に流れる電流を大きくすることなく、且つ迅速に行うことができる情報通信システム及びこれを用いた乗員保護装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、駆動電力充電用のコンデンサを備えた複数のスレーブ局と、各スレーブ局との間で信号の送受信を行うと共に、各スレーブ局に電力を供給する機能を有するマスタ局と、を備えた情報通信システムにおいて、マスタ局は、所定の電圧を出力する主電源と、主電源より出力される電圧を各スレーブ局へ順繰りに供給してコンデンサを充電すると共に、主電源より出力される電圧にて、一のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始した後、この充電が完了する前に、当該主電源より出力される電圧にて、当該一のスレーブ局が有するコンデンサの充電と並行して他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始する電力供給制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の情報通信システムにおいて、スレーブ局は、コンデンサとマスタ局とを接続する抵抗を備え、他のスレーブ局が有するコンデンサの充電が開始されるタイミングは、一のスレーブ局が有するコンデンサ及び抵抗により定まる時定数に基づいて設定されることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の情報通信システムにおいて、電力供給制御手段は、一のスレーブ局が有するコンデンサの充電が開始されてから時定数に対応する時間が経過した際に、他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始することを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項2または3記載の情報通信システムにおいて、抵抗の抵抗値は可変となっていることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の情報通信システムにおいて、抵抗は、この抵抗が接続されるコンデンサの充電が開始されてから当該充電が完了する前までの時間では、他の時間にて設定される抵抗値よりも高い抵抗値に設定されることを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の情報通信システムにおいて、抵抗値が変更されるタイミングは、コンデンサ及び抵抗により定まる時定数に基づいて設定されることを特徴とする。
【0017】
請求項7記載の発明は、車両に搭載され、複数のスレーブ局と、各スレーブ局との間で信号の送受信を行うマスタ局と、を備えた乗員保護装置において、スレーブ局は、センサまたは乗員保護手段のうち少なくとも一方と接続され、乗員保護手段に接続されるスレーブ局は、当該乗員保護手段に供給される電力を蓄えるコンデンサを備え、マスタ局は、所定の電圧を出力する主電源と、主電源より出力される電圧を各スレーブ局へ順繰りに供給してコンデンサを充電すると共に、主電源より出力される電圧にて、一のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始した後、この充電が完了する前に、当該主電源より出力される電圧にて、当該一のスレーブ局が有するコンデンサの充電と並行して他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始する電力供給制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の乗員保護装置において、乗員保護手段はスクイブであり、コンデンサは、当該スクイブを起爆するために用いられる電力を蓄えることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
(第一の実施の形態)
以下、本発明の第一の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
まず、本第一の実施の形態に係る乗員保護装置1の構成について、図1〜図3に基づいて説明する。ここで、図1は、乗員保護装置1の構成を示したブロック図であり、図2及び図3は、スレーブ局30の構成を示したブロック図である。
【0021】
乗員保護装置1は、図示しない車両に搭載されており、図1に示すように、マスタ局2と、複数のスレーブ局30と、エアバッグ(乗員保護手段、スクイブ)5a、シートベルト(乗員保護手段)5b及び衝突センサ6を備える。
【0022】
また、マスタ局2と複数のスレーブ局30とが回線10でリング状に連結されて、情報通信システム4が構成される。
【0023】
また、各スレーブ局30は、図2に示す制御用コンデンサ31q及び駆動電力充電用の点火用コンデンサ(コンデンサ)36を備える他、エアバッグ5a、シートベルト5b及び衝突センサ6のうち少なくとも一つが接続される。なお、エアバッグ5aまたはシートベルト5bに接続されるスレーブ局30が、点火用コンデンサ36を備える。
【0024】
マスタ局2は、主電源23と、電力供給制御部(電力供給制御手段)24と、通信処理部25と、A回線切換部26と、B回線切換部27、及び端子28a、28bを備える。
【0025】
主電源23は、所定の電圧を電力供給制御部24に出力する。
【0026】
電力供給制御部24は、主電源23から与えられる電圧等を用いて所定の制御信号20等を生成し、A回線切換部26またはB回線切換部27に出力する。
【0027】
制御信号20は、所定のデータ信号21及び電力信号22で構成される。
【0028】
データ信号21には、スレーブ局30のアドレスデータ、マスタ局2からの命令データ及び各種設定値に関するデータ等が乗せられる。
【0029】
マスタ局2からの命令としては、例えば、点火用コンデンサ36の充電を開始して欲しい旨の命令、図2に示すバススイッチ31sを閉じて欲しい旨の命令、点火用コンデンサ36の電圧を測定した結果を出力して欲しい旨の命令、及び点火用コンデンサが正常かどうかを判定した結果を出力して欲しい旨の命令等がある。
【0030】
また、設定値としては、例えば、点火用コンデンサ36の常時診断(後述する)に用いられる検査電圧VF0、VF1がある。
【0031】
電力信号22は、スレーブ局30に電力を供給するための信号であり、データ信号21よりも高い電圧の信号となっている。
【0032】
また、スレーブ局30が一つの制御信号20の受信を開始してから終了するまでの時間は500(μs)である。
【0033】
通信処理部25は、多重通信部25a及び診断機能部25bを備える。
【0034】
多重通信部25aは、A回線切換部26及びB回線切換部27に入力された信号をシリアル形式に変換する。
【0035】
診断機能部25bは、スレーブ局30からA回線切換部26またはB回線切換部27に入力された信号に基づいて、各種診断処理を行う。
【0036】
A回線切換部26は、端子28aを介して回線10に接続されており、電力供給制御部24から与えられた信号を、当該信号がシリアル形式に変換された後、回線10に出力する。また、スレーブ局30から入力された信号を通信処理部25に出力する。
【0037】
B回線切換部27は、端子28bを介して回線10に接続されており、電力供給制御部24から与えられた信号を、当該信号がシリアル形式に変換された後、回線10に出力する。また、スレーブ局30から入力された信号を通信処理部25に出力する。
【0038】
スレーブ局30は、図2に示すように、端子31a〜31eと、Aスイッチ31rと、Bスイッチ31mと、バススイッチ31s、及び回線31h〜31jを備える。
【0039】
また、制御用コンデンサ制御部31pと、スイッチ制御部32と、通信制御部33と、コマンド解読部34と、点火用コンデンサ処理部35と、制御用コンデンサ31qと、点火用コンデンサ36と、ステータス記憶部37、及びスレーブ局制御部38を備える。
【0040】
端子31aは、図1に示す回線10と回線31hを接続し、端子31bは、回線10と回線31iを接続する。
【0041】
端子31cは、制御用コンデンサ31qと制御用コンデンサ制御部31pを接続し、端子31dは、点火用コンデンサ36と点火用コンデンサ処理部35を接続する。また、端子31eはグランドに接続される回線とスレーブ局30を接続する。
【0042】
Aスイッチ31rは、回線31hと回線31jを接続し、Bスイッチ31mは回線31iと回線31jを接続する。また、バススイッチ31sは回線31hと回線31iを接続する。
【0043】
制御用コンデンサ制御部31pは、回線31h及び回線31iと接続され、端子31aまたは端子31bから入力された電力信号22を制御用コンデンサ31qに出力する。これにより、制御用コンデンサ31qが充電される。
【0044】
また、制御用コンデンサ制御部31pは、制御用コンデンサ31qに充電された電力をスレーブ局30の各構成要素に出力する。これにより、スレーブ局30の各構成要素が作動可能となる。
【0045】
スイッチ制御部32は、Aスイッチ31r、Bスイッチ31m、及びバススイッチ31sを所定のタイミングで開閉する。
【0046】
具体的には、端子31aの電圧が電力信号22の電圧からデータ信号21の電圧に落ち、且つこの電圧が所定時間継続された場合には、Aスイッチ31rを閉じる。
【0047】
同様に、 端子31bの電圧が電力信号22の電圧からデータ信号21の電圧に落ち、且つこの電圧が所定時間継続された場合には、Bスイッチ31mを閉じる。
【0048】
また、コマンド解読部34からバススイッチ31sを閉じて欲しい旨の信号を与えられた場合には、バススイッチ31sを閉じる。
【0049】
なお、スイッチ制御部32は、一旦これらのスイッチを閉じた後は、原則として、スイッチを閉じた状態に維持する。
【0050】
また、スイッチ制御部32は、これらスイッチの開閉状況に関する情報を記憶し、且つ、この開閉状況に関する情報をスレーブ局30の各構成要素に必要に応じて出力する。
【0051】
通信制御部33は、端子31aまたは端子31bから入力された制御信号20を回線31jから受信し、コマンド解読部34に出力する。また、ステータス記憶部37に記憶されているデータを取得してこのデータに関する信号を生成し、マスタ局2に出力する。
【0052】
コマンド解読部34は、通信制御部33から与えられた制御信号20を解読し、解読結果に応じて各種信号を生成し、対応する構成要素に出力する。
【0053】
例えば、制御信号20を解読した結果、検査電圧VF0、VF1を取得した場合には、当該検査電圧に関する信号を作成して、点火用コンデンサ処理部35に出力する。
【0054】
また、バススイッチ31sを閉じて欲しい旨の命令データを取得した場合には、その旨の信号を生成してスイッチ制御部32に出力する。
【0055】
点火用コンデンサ処理部35は、図3に示すように、充電用スイッチ35aと、充電用抵抗(抵抗)35bと、ダイオード35c、35dと、放電用抵抗35eと、放電用スイッチ35fと、点火用コンデンサ制御部35gと、点火用コンデンサ初期診断部35h、及び点火用コンデンサ常時診断部35iを備える。
【0056】
充電用スイッチ35aは、回線31h、31iと充電用抵抗35bを接続し、ダイオード35cは充電用抵抗35bと点火用コンデンサ36を接続する。なお、図2に示すように、ダイオード35cと点火用コンデンサ36は端子31dを介して接続される。
【0057】
ダイオード35dは、ダイオード35cと点火用コンデンサ36を接続する回線上の点Bと、スレーブ局制御部38を接続する。
【0058】
放電用抵抗35eは、点Bとダイオード35dを接続する回線上の点Cと放電用スイッチ35fを接続し、この放電用スイッチ35fはグランドに接続される。
【0059】
したがって、充電用スイッチ35aが閉じられると、マスタ局2から与えられる電力信号22が点火用コンデンサ36に供給されるので、点火用コンデンサ36が充電される。一方、放電用スイッチ35fが閉じられると、点火用コンデンサ36に充電された電力が放電される。
【0060】
点火用コンデンサ制御部35gは、充電用スイッチ35a及び放電用スイッチ35fを所定のタイミングで開閉する。
【0061】
点火用コンデンサ初期診断部35hは、イニシャル時に、充電用スイッチ35a及び放電用スイッチ35fを所定のタイミングで開閉する。また、点火用コンデンサ36の電圧を所定のタイミングで測定して当該測定の結果に関する信号を生成し、図2に示すステータス記憶部37に出力する。
【0062】
点火用コンデンサ常時診断部35iは、図示しないタイマと、フラグ設定用のレジスタを備え、イニシャル処理終了後、充電用スイッチ35a及び放電用スイッチ35fを所定のタイミングで開閉する。また、点火用コンデンサ36が正常かどうかを判定して当該判定の結果に関する信号を生成し、図2に示すステータス記憶部37に出力する。
【0063】
点火用コンデンサ36は、エアバッグ5aまたはシートベルト5bを起爆(作動)させるために用いられる電力(POWER)を蓄える。
【0064】
なお、本実施の形態では、各スレーブ局30が有する充電用抵抗35bの抵抗値及び点火用コンデンサ36の電気容量は互いに等しいものとする。したがって、各スレーブ局30が有する充電用抵抗35bの抵抗値及び点火用コンデンサ36の電気容量から算出される時定数τは、互いに等しくなる。ただし、当該充電用抵抗35bの抵抗値及び点火用コンデンサ36の電気容量を互いに異なるものとしても、本発明の効果を得ることができるのは勿論である。
【0065】
図2に示すステータス記憶部37は、点火用コンデンサ初期診断部35h、点火用コンデンサ常時診断部35i及びスレーブ局制御部38から与えられる信号の内容を記憶する。
【0066】
スレーブ局制御部38は、スレーブ局30にエアバッグ5aまたはシートベルト5bが接続されている場合には、エアバッグ5aまたはシートベルト5bの動作を制御する。例えば、点火用コンデンサ36に充電された電力をエアバッグ5aまたはシートベルト5bに供給する。
【0067】
また、エアバッグ5aまたはシートベルト5bが正常かどうかを判定し、当該判定の結果に関する信号を生成してステータス記憶部37に出力する。
【0068】
一方、スレーブ局30に衝突センサ6が接続されている場合には、衝突センサ6による検知結果を取得し、当該検知結果に関する信号を生成する。そして、当該信号をステータス記憶部37に出力する。
【0069】
エアバッグ5a及びシートベルト5bは、スレーブ局制御部38による制御により作動する。なお、作動に必要な電力は、点火用コンデンサ36から供給される。また、衝突センサ6は、車両が受けた衝撃を検知する。
【0070】
次に、乗員保護装置1による処理の手順を図4、図5、図11、図18、図19のフローチャートに沿って説明する。
【0071】
なお、以下の説明では、図1に示すように、マスタ局2に接続されている二つの回線10のうち、端子28aに接続される回線10をA回線10aとし、端子28bに接続される回線をB回線10bとする。
【0072】
また、マスタ局2は、A回線10aに制御信号20を出力するものとするが、B回線10bに制御信号20を出力するものとしても良い。
【0073】
また、図1で、右端のスレーブ局30(即ち、A回線10aに接続されたスレーブ局30)を第1スレーブ局301とし、以下、図1にて右から数えてk番目のスレーブ局30を第kスレーブ局30kとする。
【0074】
また、第1スレーブ局301から第nスレーブ局30nまでは、点火用コンデンサ36を備えるものとし、第kスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36を、「第kの点火用コンデンサ36」と称する。
【0075】
また、第kスレーブ局30が有する制御用コンデンサ31qを、「第kの制御用コンデンサ31q」と称する。
【0076】
まず、図4に示すステップS1にて、車両にイグニッションが投入されると、図1に示すマスタ局2が起動される。
【0077】
次いで、ステップS2にて、マスタ局2は各スレーブ局30が有する制御用コンデンサ31q及び点火用コンデンサ36を順繰りに充電する。
【0078】
具体的には、図5に示すステップS2aにて、マスタ局2は、A回線10aに電力信号22を出力し、この電力信号22は、第1スレーブ局301に入力される。次いで、第1スレーブ局301内部で以下の処理が行われる。
【0079】
第1スレーブ局301に入力された電力信号22は、図2に示すように、制御用コンデンサ制御部31pを介して制御用コンデンサ31qに出力される。これにより、制御用コンデンサ31qの充電が開始される。
【0080】
制御用コンデンサ31qに一定量の電力が充電されると、制御用コンデンサ制御部31pは、当該制御用コンデンサ31qに充電された電力を第1スレーブ局301の各構成要素に出力する。これにより、各構成要素が動作可能となる。
【0081】
次いで、マスタ局2は、第1スレーブ局301のアドレス設定データが乗せられた制御信号20を出力する。
【0082】
この制御信号20が第1スレーブ局301の端子31aに入力されると、当該端子31aの電圧は電力信号22の電圧からデータ信号21の電圧に落ち、さらに所定時間この電圧に維持されるので、スイッチ制御部32は、Aスイッチ31rを閉じる。
【0083】
これにより、通信制御部33に制御信号20が入力され、さらにこの制御信号20がコマンド解読部34に入力される。
【0084】
次いで、コマンド解読部34は、この制御信号20を解読して、マスタ局2により設定されたアドレスを認識し、このアドレスを図示しないメモリに保存する。
【0085】
次いで、マスタ局2は、第1スレーブ局301のアドレスデータと、第1の点火用コンデンサ36を充電して欲しい旨の命令データと、バススイッチ31sを閉じて欲しい旨の命令データとが乗せられた第1のバスクローズ用制御信号201を出力する。
【0086】
次いで、通信制御部33はこの第1のバスクローズ用制御信号201を受信し、コマンド解読部34に出力する。
【0087】
次いで、コマンド解読部34は、第1のバスクローズ用制御信号201を解読して、アドレスデータ、点火用コンデンサ36を充電して欲しい旨の命令データ及びバススイッチ31sを閉じて欲しい旨の命令データを取得する。
【0088】
次いで、当該アドレスデータがメモリに保存されているアドレスデータと等しいことを確認し、点火用コンデンサ36を充電して欲しい旨の第1の信号及びバススイッチ31sを閉じて欲しい旨の第2の信号を生成する。
【0089】
次いで、第1の信号を図3に示す点火用コンデンサ制御部35gに出力すると共に、第2の信号をスイッチ制御部32に出力する。
【0090】
次いで、点火用コンデンサ制御部35gは、第1の信号を与えられた際に充電用スイッチ35aを閉じ、スイッチ制御部32は、第2の信号を与えられた際にバススイッチ31sを閉じる。これにより、第1の点火用コンデンサ36及び第2の制御用コンデンサ31qがマスタ局2と接続される(図1〜2参照)。
【0091】
次いで、マスタ局2は電力信号22を再度出力するが、この電力信号22は第1の点火用コンデンサ36及び第2の制御用コンデンサ31qにも出力されるので、これら点火用コンデンサ36及び制御用コンデンサ31qの充電が開始される。
【0092】
次いで、図5に示すステップS2bにて、第2スレーブ局30のアドレスデータと、第2の点火用コンデンサ36を充電して欲しい旨の命令データと、バススイッチ31sを閉じて欲しい旨の命令データとが乗せられた第2のバスクローズ用制御信号202を後述する所定のタイミングで出力する。
【0093】
次いで、ステップS1aと同様の処理が行われ、第2の点火用コンデンサ36及び第3の制御用コンデンサ31qの充電が開始される。即ち、マスタ局2は、主電源23より出力される電圧にて、一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始した後、この充電が完了する前に、当該主電源23より出力される電圧にて、当該一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電と並行して他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始する。
【0094】
次いで、ステップS2cにて、乗員保護装置1は、ステップS2a〜ステップS2bまでの処理と同様の処理を全てのスレーブ局30について行う。
【0095】
これにより、ステップS2dにて、全てのスレーブ局30にアドレスが設定されると共に全ての制御用コンデンサ31q及び点火用コンデンサ36の充電が完了する。
【0096】
なお、マスタ局2は、第kの点火用コンデンサ36(2≦k≦n)の充電を開始するに際しては、第kスレーブ局30のアドレスデータと、第kの点火用コンデンサ36を充電して欲しい旨の命令データと、バススイッチ31sを閉じて欲しい旨の命令データとが乗せられた制御信号(以下、「第kのバスクローズ用制御信号」と称する)20kを以下のタイミングで出力する。
【0097】
即ち、マスタ局2は、第(k−1)の点火用コンデンサ36の充電を開始してから、第kの点火用コンデンサ36の充電を開始するまでの時間が、時定数τ(k−1)に等しくなるように、第kのバスクローズ用制御信号20kを出力する。
【0098】
したがって、乗員保護装置1は、第(k−1)の点火用コンデンサ36の充電が開始されてから時定数τ(k−1)経過するまでに、第kの点火用コンデンサ36の充電が可能な状態、即ち第kスレーブ局30kの各構成要素が動作可能となっているように構成される。
【0099】
なお、時定数τ(k−1)は、第(k−1)スレーブ局30が有する充電用抵抗35bの抵抗値及び点火用コンデンサ36の電気容量から算出されるが、上述したように、τ1=τ2=…=τk=…=τ(n−1)=τとなる。
【0100】
また、全ての点火用コンデンサ36の充電が完了した状態では、全てのスレーブ局30のバススイッチ31sが閉じられているので、マスタ局2が出力した制御信号20は、全てのスレーブ局30に入力される。
【0101】
ここで、図6に、電力信号22の電圧、充電用抵抗35bの抵抗値及び点火用コンデンサ36の電気容量をある値に設定した場合に、マスタ局2等に流れる電流が変化する様子を示す。なお、図6では、第1の点火用コンデンサ36の充電が開始される時刻をゼロとした。
【0102】
曲線100は、マスタ局2に流れる電流の大きさを示し、曲線101は、第1スレーブ局301の点A(図3参照)に流れる電流(即ち、第1の点火用コンデンサ36に流れる電流)の大きさを示す。同様に、曲線102〜105は、それぞれ第2〜第5の点火用コンデンサ36に流れる電流の大きさを示す(以下に示す図9及び図10でも同様)。
【0103】
また、図7に、時刻0、τ、2τ、3τ、…、nτにてマスタ局2及び各点火用コンデンサ36に流れる電流の大きさを示し、図8に、時刻0、τ、2τ、3τ、…、9τにてマスタ局2及び各点火用コンデンサ36に流れる電流の大きさをプロットしたグラフを示す。
【0104】
図6〜図8に示すように、マスタ局2に流れる電流は、0.1(A)よりも小さくなる。
【0105】
ここで、比較のために、図9に、図6と同一の条件の下で、一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電が実質完了してから、他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始する場合に、マスタ局2等に流れる電流が変化する様子を示す。
【0106】
また、図10に、図6と同一の条件の下で、第1〜第5の点火用コンデンサ36の充電を同時に開始する場合に、マスタ局2等に流れる電流が変化する様子を示す。
【0107】
図6に示す場合の方が、図9に示す場合に比べて、全ての点火用コンデンサ36を充電するのに必要な時間が短くなる。本実施の形態では、一の点火用コンデンサ36の充電に並行して他の点火用コンデンサ36の充電を行うからである。
【0108】
また、図6に示す場合の方が、図10に示す場合に比べて、マスタ局2に流れる電流が小さくなる。本実施の形態では、複数の点火用コンデンサ36の充電を同時に開始しないからである。
【0109】
次いで、乗員保護装置1は、図4に示すステップS3にて、点火用コンデンサ36の初期診断を行う。
【0110】
具体的には、図11に示すステップS3aにて、図1に示すマスタ局2は、一括コンデンサデスチャージコマンド(以下、「デスチャージ命令」と称する)データを乗せた制御信号(以下、「デスチャージ用制御信号」と称する)210を出力する。
【0111】
このデスチャージ用制御信号210は全てのスレーブ局30に入力されるので、各スレーブ局30の内部では、以下の処理が行われる。
【0112】
即ち、図2に示す通信制御部33は、デスチャージ用制御信号210を受信してコマンド解読部34に出力する。
【0113】
次いで、コマンド解読部34は、デスチャージ用制御信号210を解読することでデスチャージ命令を取得し、点火用コンデンサ36の電圧測定及び放電処理を行って欲しい旨の信号を生成する。
【0114】
なお、点火用コンデンサ36を有していないスレーブ局30の内部では、コマンド解読部34は当該デスチャージ用制御信号210を捨てる。同様に、以下の処理においても、点火用コンデンサ36を有していないスレーブ局30は、点火用コンデンサ36に関する制御信号を受信した場合には、当該制御信号を捨てる。
【0115】
次いで、当該信号を図3に示す点火用コンデンサ初期診断部35hに出力し、点火用コンデンサ初期診断部35hは、当該信号を与えられた際に、点火用コンデンサ36の電圧(具体的には、点Aの電圧)を測定する。さらに、当該測定された電圧を増幅して電圧Vsを得る。
【0116】
一方、充電用スイッチ35aを開くと共に放電用スイッチ35fを閉じることで、点火用コンデンサ36の放電を開始する。
【0117】
次いで、点火用コンデンサ初期診断部35hは、当該電圧Vsに関する信号(Vs_DAT_STATUS)を作成して、ステータス記憶部37に出力する。これにより、ステータス記憶部37は、電圧Vsに関するデータを記憶する。
【0118】
次いで、図11に示すステップS3bにて、図1に示すマスタ局2は、一括コンデンサチャージコマンド(以下、「チャージ命令」と称する)データを乗せた制御信号(以下「チャージ用制御信号」と称する)211を出力する。その後、電力信号22を出力する。
【0119】
このチャージ用制御信号211は全てのスレーブ局30に入力されるので、各スレーブ局30の内部では、以下の処理が行われる。
【0120】
即ち、図2に示す通信制御部33は、チャージ用制御信号211を受信してコマンド解読部34に出力する。
【0121】
次いで、コマンド解読部34は、チャージ用制御信号211を解読することでチャージ命令を取得し、点火用コンデンサ36の電圧測定及び充電処理を行って欲しい旨の信号を生成する。
【0122】
次いで、当該信号を図3に示す点火用コンデンサ初期診断部35hに出力し、点火用コンデンサ初期診断部35hは、当該信号を与えられた際に、点火用コンデンサ36の電圧を測定する。さらに、当該測定された電圧を増幅して電圧Vfを得る。
【0123】
一方、充電用スイッチ35aを閉じると共に放電用スイッチ35fを開く。これにより、マスタ局2から出力された電力信号22が点火用コンデンサ36に入力されるので、点火用コンデンサ36の充電が開始される。
【0124】
次いで、点火用コンデンサ初期診断部35hは、当該測定された電圧Vfに関する信号(Vf_DAT_STATUS)を作成して、ステータス記憶部37に出力する。これにより、ステータス記憶部37は、電圧Vfに関するデータを記憶する。
【0125】
次いで、図11に示すステップS3cにて、図1に示すマスタ局2は、ダミーのチャージ用制御信号211を出力する。
【0126】
このチャージ用制御信号211は全てのスレーブ局30に入力されるので、各スレーブ局30の内部では、以下の処理が行われる。
【0127】
即ち、図2に示す通信制御部33は、チャージ用制御信号211を受信してコマンド解読部34に出力する。
【0128】
次いで、コマンド解読部34は、チャージ用制御信号211を解読することでダミーのチャージ命令を取得し、点火用コンデンサ36の電圧測定を行って欲しい旨の信号を生成する。
【0129】
次いで、当該信号を図3に示す点火用コンデンサ初期診断部35hに出力し、点火用コンデンサ初期診断部35hは、当該信号を与えられた際に、点火用コンデンサ36の電圧を測定する。さらに、当該測定された電圧を増幅して電圧Vrを得る。
【0130】
次いで、点火用コンデンサ初期診断部35hは、当該測定された電圧Vrに関する信号(Vr_DAT_STATUS)を作成して、ステータス記憶部37に出力する。これにより、ステータス記憶部37は、電圧Vrに関するデータを記憶する。
【0131】
ここで、チャージ命令及びデスチャージ命令と、点火用コンデンサ初期診断部35hの動作と、ステータス記憶部37に記憶されるデータとの関係を図12に示す。
【0132】
図12に示すように、ステータス記憶部37には、電圧Vf、Vrのデータに関しては、点火用コンデンサ初期診断部35hによる診断処理の前は、初期値データが記憶される。
【0133】
また、ステップS3a〜S3cの処理が行われる間における、点火用コンデンサ36の充放電の様子を図13〜図14に示す。
【0134】
ここで、tsは電圧Vsが測定された時刻であり、tfは電圧Vfが測定された時刻であり、trは電圧Vrが測定された時刻である(以下に示す図15〜図16でも同様)。
【0135】
なお、チャージ命令及びデスチャージ命令が出力されるタイミングは、後述する電気容量C1、C2が適切に算出されるように設定される。
【0136】
次いで、図11に示すステップS3dにて、図1に示すマスタ局2は、各スレーブ局30が行った測定の結果を取得する。
【0137】
具体的には、取得対象のスレーブ局30のアドレスデータ、及び測定の結果を出力して欲しい旨の命令データを乗せた制御信号212を出力する。この制御信号212は全てのスレーブ局30に入力されるので、各スレーブ局30の内部では、以下の処理が行われる。
【0138】
即ち、図2に示すコマンド解読部34が当該制御信号212を解読してアドレスデータを取得し、当該アドレスデータとメモリに記憶されているアドレスデータとを比較する。
【0139】
この結果、アドレスデータが一致する場合には、測定の結果を出力して欲しい旨の信号を生成して通信制御部33に出力し、アドレスデータが一致しない場合には、当該制御信号212を捨てる。
【0140】
次いで、通信制御部33は、コマンド解読部34から当該信号を与えられた場合には、ステータス記憶部37から電圧Vs、Vf、及びVrのデータを取得し、当該データに関する信号を生成してマスタ局2に出力する。
【0141】
さらに、マスタ局2は、上述した制御信号212を、アドレスデータを適宜変更して繰り返し出力することにより、電圧Vs、Vf、及びVrのデータに関する信号を全てのスレーブ局30から出力させる。
【0142】
次いで、ステップS3eにて、マスタ局2は、各スレーブ局30から出力された信号を受信し、マスタ局2の診断機能部25bが、これら信号から電圧Vs、Vf、Vrに関するデータを取得する。
【0143】
次いで、診断機能部25bは、当該データに基づいて、各スレーブ局30が有する点火用コンデンサ36が正常かどうかを判定する。
【0144】
具体的には、電圧Vs、Vfデータと以下の式(1)を用いて、点火用コンデンサ36の電気容量C1を算出し、この電気容量C1と予め定められた理想電気容量とを比較する。
【0145】
C1=(1/(2*R1))*(Vs+Vf)*(tf−ts)/(Vs−Vf)…(1)
ここで、R1は放電用抵抗35eの抵抗値である。
【0146】
さらに、電圧Vf、Vrデータと以下の式(2)を用いて、点火用コンデンサ36の電気容量C2を算出し、この電気容量C2と上述した理想電気容量とを比較する。
【0147】
C2=(1/(2*R0))*{2*V0−(Vr+Vf)}*(tr−tf1)/(Vr−Vf)…(2)
ここで、R0は充電用抵抗35bの抵抗値であり、V0は点火用コンデンサ36の充電完了時の電圧である。
【0148】
次いで、電気容量C1、C2が何れも理想電気容量に実質等しくなる場合には、点火用コンデンサ36が正常であると判定し、それ以外の場合には、異常であると判定する。
【0149】
ここで、式(1)の導出過程を図15に基づいて説明する。
【0150】
即ち、時刻tsから時刻tfまでの時間に点火用コンデンサ36から放電された電荷量ΔQは、以下の式(1a)で近似される。
【0151】
ΔQ=(1/2)*(Is+If)*(tf−ts) …(1a)
ここで、Isは時刻tsにて点火用コンデンサ36に流れる電流であり、Ifは時刻tfにて点火用コンデンサ36に流れる電流である。
【0152】
また、Is=Vs/R1、If=Vf/R1となるので、式(1a)から以下の式(1b)が導かれる。
【0153】
ΔQ=(1/(2*R1))*(Vs+Vf)*(tf−ts) …(1b)
そして、電気容量C1は、以下の式(1c)で表されるので、当該式(1c)と式(1b)から式(1)が導かれる。
【0154】
C1=ΔQ/(Vs−Vf) …(1c)
次に、式(2)の導出過程を図16に基づいて説明する。
【0155】
即ち、時刻tfから時刻trまでの時間に点火用コンデンサ36に充電された電荷量ΔQは、以下の式(2a)で近似される。
【0156】
ΔQ=(1/2)*(Ir+If)*(tr−tf) …(2a)
ここで、Irは時刻trにて点火用コンデンサ36に流れる電流である。また、If=(V0−Vf)/R0、Ir=(V0−Vr)/R0となるので、式(2a)から以下の式(2b)が導かれる。
【0157】
ΔQ=(1/(2*R0))*(Vs+Vf)*(tf−ts) …(2b)
そして、電気容量C2は、以下の式(2c)で表されるので、当該式(2c)と式(2b)から式(1)が導かれる。
【0158】
C1=ΔQ/(Vr−Vf) …(2c)
図17に、診断機能部25bによる判定の一例として、理想電気容量C=570(μF)の点火用コンデンサ36が正常かどうかを判定した結果を示す。
【0159】
なお、本例では、図17に示すように、ts=0、tf=0.05(μs)、tr=0.1(μs)、V0=14(V)、R0=R1=250(Ω)、時定数τ=0.1425(μs)の条件の下で、判定を行っている。
【0160】
当該判定では、C1=C2=575.8(μF)と算出されるので、点火用コンデンサ36が正常であると判定する。
【0161】
次いで、図4に示すステップS4にて、診断機能部25bは、全ての点火用コンデンサ36が正常と判定されたかどうかを判定する。
【0162】
この結果、全ての点火用コンデンサ36が正常と判定された場合には、ステップS5に進む。一方、何れかの点火用コンデンサ36が異常と判定された場合(ステップS4にてNO)には、ステップS6に進む。なお、ステップS4の処理が終了した時点で、点火用コンデンサ36の初期診断が終了する。
【0163】
まず、ステップS6の処理について説明する。即ち、ステップS6にて、マスタ局2は、所定の異常処理を行う。ここで、当該異常処理としては、例えば、異常と判定された点火用コンデンサ36を有するスレーブ局30の動作を停止する処理がある。
【0164】
次に、ステップS5以降の処理について説明する。即ち、ステップS5にて、診断機能部25bは、他の診断処理を行う。ここで、当該他の診断処理としては、例えば全てのスレーブ局30のバススイッチ31s(図2参照)が閉じられているかどうかを判定する処理がある。
【0165】
この結果、異常が発見されなかった場合には、図18に示すステップS8に進む。一方、何れかの異常が発見された場合(ステップS5にてNO)には、ステップS7に進む。
【0166】
まず、ステップS7の処理について説明する。即ち、ステップS7にて、マスタ局2は、所定の異常処理を行う。ここで、当該異常処理としては、例えば、あるスレーブ局30に異常が発見された場合には、当該スレーブ局30の動作を停止する処理がある。
【0167】
次に、図18に示すステップS8以降の処理について説明する。なお、ステップS8以降の処理は、点火用コンデンサ36を有する各スレーブ局30について行われる。また、マスタ局2は、ステップS8以降の処理が行われる間、制御信号20を連続して出力する。
【0168】
即ち、ステップS8にて、図2に示す通信制御部33は、制御信号20の受信を開始したかどうかを判定する。
【0169】
この結果、制御信号20の受信を開始した場合には、ステップS9に進み、開始していない場合(ステップS8にてNO)には、ステップS8の処理を繰り返す。
【0170】
ステップS9にて、コマンド解読部34は、点火用コンデンサ36を常時診断して欲しい旨の信号を生成し、図3に示す点火用コンデンサ常時診断部35iに出力する。
【0171】
次いで、点火用コンデンサ常時診断部35iは、当該信号を与えられた際に、点火用コンデンサ常時診断要求フラグをセットし、その後、ステップS10に進む。
【0172】
ステップS10では、点火用コンデンサ36の常時診断が行われる。具体的には、図19に示すステップS10aにて、図1に示すマスタ局2は、何れかのスレーブ局30のアドレスデータ及び検査電圧VF0、VF1(<VF0)のデータが乗せられた制御信号20を出力する。
【0173】
この制御信号20は全てのスレーブ局30に入力されるので、各スレーブ局30の内部では、以下の処理が行われる。
【0174】
即ち、図2に示すコマンド解読部34が当該制御信号20を解読してアドレスデータ及び検査電圧データを取得し、当該アドレスデータとメモリに記憶されているアドレスデータとを比較する。
【0175】
この結果、アドレスデータが一致する場合には、当該検査電圧に関する信号を生成して図3に示す点火用コンデンサ常時診断部35iに出力し、アドレスデータが一致しない場合には、当該制御信号20を捨てる。
【0176】
次いで、点火用コンデンサ常時診断部35iは、コマンド解読部34から当該信号を与えられた場合には、当該信号から検査電圧のデータを取得する。これにより、マスタ局2は、スレーブ局30に検査電圧を設定する。
【0177】
次いで、マスタ局2は、上述した制御信号20を、アドレスデータを適宜変更して繰り返し出力することにより、全てのスレーブ局30に検査電圧を設定する。
【0178】
一方、検査電圧を取得した点火用コンデンサ常時診断部35iは、点火用コンデンサ36の放電を開始する時刻ta0及び点火用コンデンサ36の放電を終了する時刻ta1を設定するとともに、タイマを起動する。なお、これら時刻については、予め定められていても良い。また、タイマの初期値をゼロとする。
【0179】
次いで、検査電圧を設定されたスレーブ局30から、順次ステップS10b以降の処理を行う。
【0180】
図19に示すステップS10bにて、点火用コンデンサ常時診断部35iは、タイマが示す時刻(以下、「タイマ時刻」と称する)をチェックする。
【0181】
この結果、タイマ時刻が時刻ta0となっている場合(d_point_0)には、ステップS10cに進み、それ以外の場合(ステップS10bにてNO)には、ステップS10jに進む。まず、ステップS10c以降の処理について説明する。
【0182】
ステップS10cにて、点火用コンデンサ常時診断部35iは、点火用コンデンサ36の電圧(具体的には、図3に示す点Aの電圧)を測定し、ステップS10dにて、当該測定電圧と検査電圧VF0を比較する。
【0183】
この結果、測定電圧が検査電圧VF0以上である場合には、点火用コンデンサ36が時刻ta0では正常であると判定し、ステップS10eに進む。一方、測定電圧が検査電圧VF0未満である場合(ステップS10dにてNO)には、点火用コンデンサ36が異常であると判定し、ステップS10hに進む。まず、ステップS10e以降の処理について説明する。
【0184】
ステップS10eにて、点火用コンデンサ常時診断部35iは、点火用コンデンサ36が時刻ta0では正常である旨の信号(dp0_STATUS、図3参照)を生成し、図2に示すステータス記憶部37に出力する。これにより、ステータス記憶部37は、点火用コンデンサ36が時刻ta0では正常である旨のデータを記憶する。
【0185】
次いで、ステップS10fにて、点火用コンデンサ常時診断部35iは、充電用スイッチ35aを開くと共に放電用スイッチ35fを閉じることで、点火用コンデンサ36の放電を開始する。
【0186】
次いで、ステップS10gにて、タイマをリセットし、ステップS10bに戻る。
【0187】
次に、ステップS10h以降の処理について説明する。即ち、ステップS10hにて、点火用コンデンサ常時診断部35iは、点火用コンデンサ36が異常である旨の信号(dp0_STATUS)を生成し、ステータス記憶部37に出力する。これにより、ステータス記憶部37は、点火用コンデンサ36が異常である旨のデータを記憶する。
【0188】
次いで、ステップS10iにて、マスタ局2は、当該判定を行ったスレーブ局30のアドレスデータと、判定結果を出力して欲しい旨の命令データとが乗せられた制御信号20を出力する。この制御信号20は全てのスレーブ局30に入力され、各スレーブ局30のコマンド解読部34が当該制御信号20を解読する。
【0189】
次いで、当該アドレスデータに対応するスレーブ局30のコマンド解読部34が、判定結果を出力して欲しい旨の信号を生成して通信制御部33に出力する。
【0190】
次いで、この通信制御部33が、点火用コンデンサ36が異常である旨のデータをステータス記憶部37から取得して、当該データに関する信号を生成し、マスタ局2に出力する。
【0191】
次いで、マスタ局2は、この信号に基づいて、所定の異常処理を行う。ここで、異常処理としては、例えば、点火用コンデンサ36の異常が発見されたスレーブ局30の動作を停止する処理等がある。
【0192】
次に、ステップS10j以降の処理について説明する。即ち、ステップS10jにて、点火用コンデンサ常時診断部35iは、タイマ時刻が時刻ta1になっているかどうかをチェックする。
【0193】
この結果、タイマ時刻が時刻ta1となっている場合には、ステップS10mに進み、それ以外の場合(ステップS10jにてNO)には、ステップS10uにて、タイマを更新してステップS10bに戻る。
【0194】
ステップS10mにて、点火用コンデンサ常時診断部35iは、点火用コンデンサ36の電圧を測定し、ステップS10oにて、当該測定電圧と検査電圧VF0、VF1を比較する。
【0195】
この結果、測定電圧が検査電圧VF0未満で、且つ検査電圧VF1より大きい場合には、点火用コンデンサ36が時刻ta1では正常であると判定し、ステップS10pに進む。
【0196】
一方、それ以外の場合(ステップS10oにてNO)には、点火用コンデンサ36が異常であると判定し、ステップS10sに進む。まず、ステップS10p以降の処理について説明する。
【0197】
ステップS10pにて、点火用コンデンサ常時診断部35iは、点火用コンデンサ36が時刻ta1では正常である旨の信号(dp1_STATUS、図3参照)を生成し、ステータス記憶部37に出力する。これにより、ステータス記憶部37は、点火用コンデンサ36が時刻ta1では正常である旨のデータを記憶する。
【0198】
次いで、ステップS10qにて、点火用コンデンサ常時診断部35iは、放電用スイッチ35fを開くと共に充電用スイッチ35aを閉じる。これにより、マスタ局2から出力された電力信号22が点火用コンデンサ36に入力されるので、点火用コンデンサ36の充電が開始される。
【0199】
次いで、ステップS10rにて、タイマを更新し、ステップS10bに戻る。
【0200】
次に、ステップS10s以降の処理について説明する。即ち、ステップS10sにて、点火用コンデンサ常時診断部35iは、点火用コンデンサ36が異常である旨の信号(dp1_STATUS)を生成し、ステータス記憶部37に出力する。これにより、ステータス記憶部37は、点火用コンデンサ36が異常である旨のデータを記憶する。
【0201】
次いで、ステップS10tにて、マスタ局2は、当該判定を行ったスレーブ局30のアドレスデータと、判定結果を出力して欲しい旨の命令データとが乗せられた制御信号20を出力する。この制御信号20は全てのスレーブ局30に入力され、各スレーブ局30のコマンド解読部34が当該制御信号20を解読する。
【0202】
次いで、当該アドレスデータに対応するスレーブ局30のコマンド解読部34が、判定結果を出力して欲しい旨の信号を生成して通信制御部33に出力する。
【0203】
次いで、この通信制御部33が、点火用コンデンサ36が異常である旨のデータをステータス記憶部37から取得して、当該データに関する信号を生成し、マスタ局2に出力する。
【0204】
次いで、マスタ局2は、この信号に基づいて、所定の異常処理を行う。ここで、異常処理としては、例えば、点火用コンデンサ36の異常が発見されたスレーブ局30の動作を停止する処理等がある。
【0205】
ここで、点火用コンデンサ常時診断部35iによる処理により点火用コンデンサ36が充放電される様子の一例を、図20〜21に示した。
【0206】
ここで、図20(a)は、図1に示すA回線10aの電圧の変化を示したタイムチャートであり、図20(b)は、点火用コンデンサ36の電圧の変化を示したタイムチャートである。また、図21は、図20(b)の領域Xを拡大して示したタイムチャートである。
【0207】
本例では、スレーブ局30が制御信号20の受信を開始する時刻に、ステップS10cの処理を行い、この時刻から所定時間経過した後、ステップS10mの処理を行っている。また、本例では、点火用コンデンサ常時診断部35iは、点火用コンデンサ36が正常であると判定する。
【0208】
次に、上述したステップS1〜ステップS10までの処理を通して行った場合における、点火用コンデンサ36等の電圧変化の一例を図22に示す。
【0209】
ここで、図22(a)は、図1に示すA回線10aの電圧変化を示したタイムチャートであり、図22(b)〜(e)は、それぞれ第1スレーブ局301〜第4スレーブ局304までの点火用コンデンサ36の電圧変化を示したタイムチャートである。
【0210】
また、図22は、点火用コンデンサ36を有するスレーブ局30が4つ存在する場合(n=4)での電圧変化を示している。
【0211】
図22では、まず、時刻ゼロにてイグニッションが投入されると(図4に示すステップS1)、マスタ局2が起動される。そして、マスタ局2は、電力信号22の出力を開始する。
【0212】
次いで、時刻ゼロ〜t1の間に、第1スレーブ局301の制御用コンデンサ31qが充電され、第1スレーブ局301の各構成要素が動作可能となる。
【0213】
次いで、時刻t1にて、マスタ局2が、第1のバスクローズ用制御信号201を出力することで、第1の点火用コンデンサ36及び第2の制御用コンデンサ31qの充電が開始される(図5に示すステップS2a)。
【0214】
次いで、時刻t1から時定数τ経過した際(時刻t2)に、マスタ局2が、第2のバスクローズ用制御信号202を出力することで、第2の点火用コンデンサ36及び第3の制御用コンデンサ31qの充電が開始される(図5に示すステップS2b)。
【0215】
次いで、時刻t2から時定数τ経過した際(時刻t3)に、マスタ局2が、第3のバスクローズ用制御信号203を出力することで、第3の点火用コンデンサ36及び第4の制御用コンデンサ31qの充電が開始される(図5に示すステップS2c)。
【0216】
次いで、時刻t3から時定数τ経過した際(時刻t4)に、マスタ局2が、第4のバスクローズ用制御信号204を出力することで、第4の点火用コンデンサ36の充電が開始される(図5に示すステップS2c)。
【0217】
全ての点火用コンデンサ36の充電が終了した後、時刻t5にて、マスタ局2が、デスチャージ用制御信号210を出力することで、第1スレーブ局301〜第4スレーブ局304は、一斉に点火用コンデンサ36の電圧を測定して、電圧Vsを得る。さらに、点火用コンデンサ36の放電を開始する(図11に示すステップS3a)。
【0218】
次いで、時刻t6にて、マスタ局2が、チャージ用制御信号211を出力することで、第1スレーブ局301〜第4スレーブ局304は、一斉に点火用コンデンサ36の電圧を測定して、電圧Vfを得る。さらに、点火用コンデンサ36の充電を開始する(図11に示すステップS3b)。
【0219】
次いで、時刻t7にて、マスタ局2が、ダミーのチャージ用制御信号211を出力することで、第1スレーブ局301〜第4スレーブ局304は、一斉に点火用コンデンサ36の電圧を測定して、電圧Vrを得る(図11に示すステップS3a)。
【0220】
次いで、時刻t7〜t8の間にて、マスタ局2は、第1スレーブ局301〜第4スレーブ局304からそれぞれ電圧Vs、Vf、Vrのデータを取得して、第1〜第4の点火用コンデンサ36が正常かどうかを判定する。
【0221】
時刻t8以降では、図4に示すステップS10の処理が行われる。具体的には、時刻t9及びt11にて、各スレーブ局30の点火用コンデンサ常時診断部35iが点火用コンデンサ36の電圧を測定して検査電圧VF0と比較する(図19に示すステップS10c〜S10d)。そして、比較結果に応じた処理(本例では、ステップS10e〜S10g)を行う。
【0222】
また、時刻t10及びt12にて、点火用コンデンサ36の電圧を測定して検査電圧VF0、VF1と比較する(ステップS10m〜S10o)。そして、比較結果に応じた処理(本例ではステップS10p〜S10r)を行う。
【0223】
以上により、本実施の形態では、マスタ局2は、主電源23より出力される電圧にて、一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始した後、この充電が完了する前に、当該主電源23より出力される電圧にて、当該一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電と並行して他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始する(図5に示すステップS2a〜S2c、及び図6参照)。
【0224】
これにより、点火用コンデンサ36の充電を、情報通信システム4(即ち、乗員保護装置1)に流れる電流を大きくすることなく、且つ迅速に行うことができる。具体的には、全ての点火用コンデンサ36の充電を同時に開始する場合よりも情報通信システム4に流れる電流を小さくし、一の点火用コンデンサ36の充電が終了してから他の点火用コンデンサ36の充電を開始する場合よりも早く充電を完了することができる(図6〜図10参照)。
【0225】
また、情報通信システム4に流れる電流が大きくならないことにより、情報通信システム4からの放熱量も小さくなるので、情報通信システム4を熱耐性及び電流容量の小さい部品で構築することができる。
【0226】
具体的には、マスタ局2と各スレーブ局30とを接続する回線10を安価な細線で構成することができる。これにより、情報通信システム4が搭載された車両の重量を低減することができるので、車両燃費を向上することができる。
【0227】
また、マスタ局2の回路(特に、主電源23からの電圧をスレーブ局30に供給する回路、即ち電力供給制御部24)及びスレーブ局30の回路(特に、マスタ局2からの電圧をスレーブ局30の各構成要素に供給する回路、即ち制御用コンデンサ制御部31p)を熱耐性及び電流容量の小さい半導体で構成することができる。これにより、マスタ局2及びスレーブ局30を安価に製造することができる。
【0228】
また、マスタ局2は、一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36に流れる電流が低下し、主電源23から流すことができる電流に余裕ができた際に、当該余裕分の電流にて他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始することができる。したがって、一つの主電源23で複数の点火用コンデンサ36を充電するので、スレーブ局充電用の電源の数を少なくすることができる。
【0229】
また、他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電が開始されるタイミングは、一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36及び充電用抵抗35bにより定まる時定数τに基づいて設定される。
【0230】
これにより、一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36がある程度充電されてから他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始し、且つ情報通信システム4に流れる電流を小さく抑えることができる。
【0231】
特に、マスタ局2は、一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電が開始されてから当該時定数τに対応する時間が経過した際に、他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始する。
【0232】
これにより、一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36を6割程度充電した際に他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始することができる。
【0233】
さらに、一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36に流れる電流が当該点火用コンデンサ36に流れる最大電流の4割程度まで落ちた際に、他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始することができる(図6参照)。言い換えれば、他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始した際には、一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36に流れる電流を、当該一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36に流れる最大電流の4割程度に抑えることができる。
【0234】
また、点火用コンデンサ36は、エアバッグ5aまたはシートベルト5bを起爆(作動)するために用いられる電力を蓄える。したがって、当該点火用コンデンサ36の充電を、情報通信システム4に流れる電流を大きくすることなく、且つ迅速に行うことができる。
【0235】
また、点火用コンデンサ36の初期診断時では、全てのスレーブ局30が一斉に点火用コンデンサ36の電圧を測定するので、マスタ局2は、短時間で点火用コンデンサ36の電圧データを取得することができる(図11に示すステップS3a〜S3e、及び図13〜図14参照)。
【0236】
これにより、マスタ局2は、短時間で点火用コンデンサ36の初期診断を行うことができる。さらには、点火用コンデンサ36の充電開始から初期診断終了までの時間を短縮することができる。
【0237】
また、初期診断終了時も、各スレーブ局30は点火用コンデンサ36の常時診断を独自に行うので、マスタ局2は、いつでも点火用コンデンサ36の異常を発見することができる(図19に示すステップS10a〜S10u参照)。
【0238】
なお、本実施の形態では、情報通信システム4をエアバッグ5a等の乗員保護部を備えた乗員保護装置1に適用することとしたが、他の装置に適用することができるのは勿論である(後述する第二の実施の形態でも同様)。
【0239】
(第二の実施の形態)
次に、本発明の第二の実施の形態を図に基づいて説明する。まず、本第二の実施の形態に係る乗員保護装置1aの構成について、図1、図2及び図23に基づいて説明する。
【0240】
乗員保護装置1aと乗員保護装置1の相異点は、図23に示すように、点火用コンデンサ処理部35の内部構造のみである。そこで、当該相異点のみ説明し、第一の実施の形態と同一の構成要素については、同一の符号を付ける。
【0241】
図23に示すように、点火用コンデンサ処理部35は、充電用抵抗部39と、ダイオード35c、35dと、放電用抵抗35eと、放電用スイッチ35fと、点火用コンデンサ制御部35gと、点火用コンデンサ初期診断部35h、及び点火用コンデンサ常時診断部35iを備える。
【0242】
充電用抵抗部39は、充電用スイッチ35a、35j、及び充電用抵抗(抵抗)35b、35gを備える。
【0243】
充電用スイッチ35jは、図2に示す回線31h、31iと充電用抵抗35mを接続し、充電用抵抗35mはダイオード35cに接続される。したがって、充電用抵抗部39は、マスタ局2と点火用コンデンサ36を接続する。なお、充電用抵抗35mの抵抗値R2は、充電用抵抗35bの抵抗値R0よりも大きい。
【0244】
点火用コンデンサ制御部35gは、上述した機能の他、イニシャル時に、充電用スイッチ35a及び充電用スイッチ35jを所定のタイミングで開閉する機能を有する。
【0245】
次いで、乗員保護装置1aによる処理の手順について説明する。ここで、乗員保護装置1aによる処理は、点火用コンデンサ36の充電時に各スレーブ局30が行う処理のみが第一の実施の形態と異なる。そこで、当該相異点のみ説明する。
【0246】
即ち、第kスレーブ局30kは、マスタ局2から第kのバスクローズ用制御信号20kを受信した後、以下の処理を行う。
【0247】
図2に示すコマンド解読部34は、当該受信された第kのバスクローズ用制御信号20kを解読して、アドレスデータ、点火用コンデンサ36を充電して欲しい旨の命令データ及びバススイッチ31sを閉じて欲しい旨の命令データを取得する。
【0248】
次いで、当該アドレスデータがメモリに保存されているアドレスデータと等しいことを確認し、点火用コンデンサ36を充電して欲しい旨の第1の信号及びバススイッチ31sを閉じて欲しい旨の第2の信号を生成する。
【0249】
次いで、第1の信号を図23に示す点火用コンデンサ制御部35gに出力すると共に、第2の信号をスイッチ制御部32に出力する。
【0250】
次いで、点火用コンデンサ制御部35gは、第1の信号を与えられた際に充電用スイッチ35jを閉じ、スイッチ制御部32は、第2の信号を与えられた際にバススイッチ31sを閉じる。
【0251】
次いで、マスタ局2は、上述したように電力信号22を出力するが、この電力信号22は第kの点火用コンデンサ36及び第(k+1)の制御用コンデンサ31qに入力されるので、これら点火用コンデンサ36及び制御用コンデンサ31qの充電が開始される。
【0252】
次いで、点火用コンデンサ制御部35gは、第kの点火用コンデンサ36の充電が開始されてから時定数τ経過した際に、充電用スイッチ35aを閉じると共に充電用スイッチ35jを開く。
【0253】
ここで、時定数τは、第一の実施の形態と同様に、充電用抵抗35bの抵抗値及び点火用コンデンサ36の電気容量から算出される。
【0254】
その後、点火用コンデンサ制御部35gは、第kの点火用コンデンサ36の充電が完了するまで、充電用スイッチ35aを閉じた状態に維持する。
【0255】
したがって、充電用抵抗部39は、第kの点火用コンデンサ36の充電が開始されてから時定数τ経過するまでの時間では、他の時間にて設定される抵抗値R0よりも高い抵抗値R2に設定される。
【0256】
ここで、電力信号22の電圧、充電用抵抗35b、35mの抵抗値及び点火用コンデンサ36の電気容量をある値に設定して上述した処理を行った場合に、第kの点火用コンデンサ36に流れる電流が変化する様子を図24に示す。
【0257】
図24中、直線110は、上述した処理を行った場合に第kの点火用コンデンサ36に流れる電流が変化する様子を示す。
【0258】
一方、直線111は、充電用抵抗部39の抵抗値を第kの点火用コンデンサ36の充電開始時からR0に設定し続けた場合に、第kの点火用コンデンサ36に流れる電流が変化する様子を示す。
【0259】
図24に示すように、第kの点火用コンデンサ36の充電が開始されてから時定数τ経過するまでの時間では、本処理の場合の方が充電用抵抗部39の抵抗値をR0に設定し続けた場合に比べて、点火用コンデンサ36に流れる電流が小さい。
【0260】
本処理の場合、当該時間では、充電用抵抗部39の抵抗値を高い抵抗値R2に設定するからである。
【0261】
同様に、第kの点火用コンデンサ36の電圧が変化する様子を図25に示す。図25中、直線120は、上述した処理を行った場合に第kの点火用コンデンサ36の電圧が変化する様子を示す。一方、直線121は、充電用抵抗部39の抵抗値を第kの点火用コンデンサ36の充電開始時からR0に設定し続けた場合に、第kの点火用コンデンサ36の電圧が変化する様子を示す。
【0262】
図25に示すように、点火用コンデンサ36の充電が完了するまでの時間は、充電用スイッチ35aのみを閉じ続けた場合とほぼ等しくなる。
【0263】
本処理では、第kの点火用コンデンサ36の充電が開始されてから時定数τ経過した後は、充電用抵抗部39の抵抗値をR0に設定するので、点火用コンデンサ36の充電速度を上げることができるからである。
【0264】
以上により、本第二の実施の形態では、第一の実施の形態と同様の効果を得ることができるほか、以下の効果を得ることができる。
【0265】
即ち、マスタ局2と点火用コンデンサ36とを接続する充電用抵抗部39の抵抗値を変更する。これにより、抵抗値を高くすることで、点火用コンデンサ36に流れる電流を小さくすることができる。
【0266】
具体的には、充電用抵抗部39の抵抗値を、点火用コンデンサ36の充電が開始されてから当該充電が完了する前までの時間では、他の時間にて設定される抵抗値よりも高く設定する(図24参照)。
【0267】
これにより、点火用コンデンサ36の充電開始時に点火用コンデンサ36及び情報通信システム4の他の構成要素に流れる突入電流を小さく抑えることができる。
【0268】
したがって、この点でも、情報通信システム4を熱耐性及び電流容量の小さい部品で構築することができる。
【0269】
また、充電用抵抗部39の抵抗値が変更されるタイミングは、点火用コンデンサ36及び充電用抵抗35bにより定まる時定数τに基づいて設定される(図24参照)。
【0270】
これにより、点火用コンデンサ36の充電完了までの時間が長くなることを防止することができると共に、突入電流を小さく抑えることができる(図25参照)。
【0271】
【発明の効果】
請求項1記載の発明では、マスタ局は、主電源より出力される電圧にて一のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始した後、この充電が完了する前に、当該主電源より出力される電圧にて当該一のスレーブ局が有するコンデンサの充電と並行して他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始する。
【0272】
したがって、コンデンサの充電を、情報通信システムに流れる電流を大きくすることなく、且つ迅速に行うことができる。
【0273】
また、情報通信システムに流れる電流が大きくならないことにより、当該情報通信システムからの放熱量も小さくなるので、情報通信システムを熱耐性及び電流容量の小さい部品で構築することができる。
【0274】
具体的には、マスタ局と各スレーブ局とを接続する回線を安価な細線で構成することができる。これにより、例えば当該情報通信システムを車両の通信システムとして使用する場合、当該車両の重量を低減することができるので、車両燃費を向上することができる。
【0275】
また、マスタ局の回路(特に、主電源からの電圧をスレーブ局に供給する回路)及びスレーブ局の回路(特に、マスタ局からの電圧をスレーブ局の各構成要素に供給する回路)を熱耐性及び電流容量の小さい半導体で構成することができる。これにより、マスタ局及びスレーブ局を安価に製造することができる。
【0276】
また、マスタ局は、一のスレーブ局が有するコンデンサに流れる電流が低下し、主電源から流すことができる電流に余裕ができた際に、当該余裕分の電流にて他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始することができる。したがって、一つの主電源で複数のコンデンサを充電するので、スレーブ局充電用の電源の数を少なくすることができる。
【0277】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明と同様の効果を得ることができる他、他のスレーブ局が有するコンデンサの充電が開始されるタイミングは、一のスレーブ局が有するコンデンサ及び抵抗により定まる時定数に基づいて設定される。
【0278】
これにより、一のスレーブ局が有するコンデンサがある程度充電されてから他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始し、且つ情報通信システムに流れる電流を小さく抑えることができる。
【0279】
請求項3記載の発明では、請求項2記載の発明と同様の効果を得ることができる他、電力供給制御手段は、一のスレーブ局が有するコンデンサの充電が開始されてから当該時定数に対応する時間が経過した際に、他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始する。
【0280】
これにより、一のスレーブ局が有するコンデンサを6割程度充電した際に他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始することができる。
【0281】
さらに、一のスレーブ局が有するコンデンサに流れる電流が当該コンデンサに流れる最大電流の4割程度まで落ちた際に、他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始することができる。言い換えれば、他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始した際には、一のスレーブ局が有するコンデンサに流れる電流を、当該一のスレーブ局が有するコンデンサに流れる最大電流の4割程度に抑えることができる。
【0282】
請求項4記載の発明では、請求項2または3記載の発明と同様の効果を得ることができる他、マスタ局とコンデンサとを接続する抵抗の抵抗値は可変となっているので、抵抗値を高くすることで、コンデンサに流れる電流を小さくすることができる。
【0283】
請求項5記載の発明では、請求項4記載の発明と同様の効果を得ることができる他、当該抵抗は、コンデンサの充電が開始されてから当該充電が完了する前までの時間では、他の時間にて設定される抵抗値よりも高い抵抗値に設定される。
【0284】
これにより、コンデンサの充電開始時にコンデンサ及び情報通信システムの他の構成要素に流れる突入電流を小さく抑えることができる。したがって、この点でも、情報通信システムを熱耐性及び電流容量の小さい部品で構築することができる。
【0285】
請求項6記載の発明では、請求項5と同様の効果を得ることができる他、当該抵抗の抵抗値が変更されるタイミングは、コンデンサ及び抵抗により定まる時定数に基づいて設定される。
【0286】
これにより、コンデンサの充電完了までの時間が長くなることを防止することができると共に、突入電流を小さく抑えることができる。
【0287】
請求項7記載の発明では、乗員保護装置は、乗員保護手段及びセンサのうち少なくとも一方に接続されたスレーブ局を備えている。
【0288】
したがって、コンデンサの充電を、乗員保護装置に流れる電流を大きくすることなく、且つ迅速に行うことができる。
【0289】
また、乗員保護装置に流れる電流が大きくならないことにより、当該乗員保護装置からの放熱量も小さくなるので、乗員保護装置を熱耐性及び電流容量の小さい部品で構築することができる。
【0290】
具体的には、マスタ局と各スレーブ局とを接続する回線を安価な細線で構成することができる。これにより、当該乗員保護装置が搭載される車両の重量を低減することができるので、車両燃費を向上することができる。
【0291】
また、マスタ局の回路(特に、電力をスレーブ局に供給する回路)及びスレーブ局の回路(特に、マスタ局からの電力をスレーブ局の各構成要素に供給する回路)を熱耐性及び電流容量の小さい半導体で構成することができる。これにより、マスタ局及びスレーブ局を安価に製造することができる。
【0292】
請求項8記載の発明では、請求項7記載の発明と同様の効果を得ることができる他、コンデンサは、スクイブを起爆させるために用いられる電力を蓄える。
【0293】
したがって、当該コンデンサの充電を、乗員保護装置に流れる電流を大きくすることなく、且つ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】乗員保護装置の構成を示したブロック図である。
【図2】スレーブ局の構成を示したブロック図である。
【図3】点火用コンデンサ処理部の構成を示したブロック図である。
【図4】乗員保護装置による処理の手順を示したフローチャートである。
【図5】乗員保護装置による処理の手順を示したフローチャートである。
【図6】マスタ局及び点火用コンデンサに流れる電流の変化の様子を示したグラフである。
【図7】時刻とマスタ局及び点火用コンデンサに流れる電流との関係を示した対応データである。
【図8】マスタ局及び点火用コンデンサに流れる電流の変化の様子を示したグラフである。
【図9】マスタ局及び点火用コンデンサに流れる電流の変化の様子を示したグラフである。
【図10】マスタ局及び点火用コンデンサに流れる電流の変化の様子を示したグラフである。
【図11】乗員保護装置による処理の手順を示したフローチャートである。
【図12】マスタ局から出力される命令の内容とスレーブ局の動作との関係を示した対応データである。
【図13】点火用コンデンサの電圧変化の様子を示したグラフである。
【図14】点火用コンデンサの電圧変化の様子を示したグラフである。
【図15】点火用コンデンサの電圧変化の様子を示したグラフである。
【図16】点火用コンデンサの電圧変化の様子を示したグラフである。
【図17】マスタ局から出力される命令の内容と各種パラメータとの関係を示した対応データである。
【図18】乗員保護装置による処理の手順を示したフローチャートである。
【図19】乗員保護装置による処理の手順を示したフローチャートである。
【図20】A回線等の電圧変化を示したタイムチャートである。
(a) A回線の電圧変化を示したタイムチャートである。
(b) 点火用コンデンサの電圧変化を示したタイムチャートである。
【図21】点火用コンデンサの電圧変化を示したタイムチャートである。
【図22】A回線等の電圧変化を示したタイムチャートである。
(a) A回線の電圧変化を示したタイムチャートである。
(b) 第1スレーブ局の電圧変化を示したタイムチャートである。
(c) 第2スレーブ局の電圧変化を示したタイムチャートである。
(d) 第3スレーブ局の電圧変化を示したタイムチャートである。
(e) 第4スレーブ局の電圧変化を示したタイムチャートである。
【図23】点火用コンデンサ処理部の構成を示したブロック図である。
【図24】点火用コンデンサに流れる電流の変化の様子を示したグラフである。
【図25】点火用コンデンサの電圧変化の様子を示したグラフである。
【符号の説明】
1、1a 乗員保護装置
2 マスタ局
4 情報通信システム
5a エアバッグ(乗員保護手段、スクイブ)
5b シートベルト(乗員保護手段)
6 衝突センサ
20 制御信号
20k バスクローズ用制御信号
21 データ信号
22 電力信号
23 主電源
24 電力供給制御部(電力供給制御手段)
30 スレーブ局
35b、35m 充電用抵抗(抵抗)
35g 点火用コンデンサ制御部
35h 点火用コンデンサ初期診断部
35i 点火用コンデンサ常時診断部
36 点火用コンデンサ(コンデンサ)
39 充電用抵抗部
τ 時定数
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報通信システム及びこれを用いた乗員保護装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、回路に流れる電流を大きくすることなく、コンデンサを充電する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
当該技術では、コンデンサに接続された抵抗と、この抵抗に並列に接続されたトランジスタを備えている。そして、コンデンサの初期充電の際はトランジスタをオフにすることで、抵抗を介してコンデンサに電流を流し、初期充電の後は、トランジスタをオンにすることで、当該トランジスタを介してコンデンサに電流を流す。
【0004】
これにより、回路に流れる電流を大きくすることなく、コンデンサを充電する。
【0005】
一方、マスタ局と、コンデンサを備えた複数のスレーブ局と、を備えた情報通信システムも知られており、この技術では、マスタ局がコンデンサを充電する。
【0006】
この技術では、マスタ局に流れる電流を小さくするために、一のコンデンサの充電が完了してから他のコンデンサの充電を開始する技術が提案されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−130876号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この技術には、全てのコンデンサの充電を完了するまでに時間がかかるという問題点があった。
【0009】
一方、この問題点を解決するために、全てのコンデンサを一括して充電する技術も提案されているが、この技術には、マスタ局に流れる電流が大きくなるという問題点があった。
【0010】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その主に目的とするところは、コンデンサの充電を、マスタ局に流れる電流を大きくすることなく、且つ迅速に行うことができる情報通信システム及びこれを用いた乗員保護装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、駆動電力充電用のコンデンサを備えた複数のスレーブ局と、各スレーブ局との間で信号の送受信を行うと共に、各スレーブ局に電力を供給する機能を有するマスタ局と、を備えた情報通信システムにおいて、マスタ局は、所定の電圧を出力する主電源と、主電源より出力される電圧を各スレーブ局へ順繰りに供給してコンデンサを充電すると共に、主電源より出力される電圧にて、一のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始した後、この充電が完了する前に、当該主電源より出力される電圧にて、当該一のスレーブ局が有するコンデンサの充電と並行して他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始する電力供給制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の情報通信システムにおいて、スレーブ局は、コンデンサとマスタ局とを接続する抵抗を備え、他のスレーブ局が有するコンデンサの充電が開始されるタイミングは、一のスレーブ局が有するコンデンサ及び抵抗により定まる時定数に基づいて設定されることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の情報通信システムにおいて、電力供給制御手段は、一のスレーブ局が有するコンデンサの充電が開始されてから時定数に対応する時間が経過した際に、他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始することを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項2または3記載の情報通信システムにおいて、抵抗の抵抗値は可変となっていることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の情報通信システムにおいて、抵抗は、この抵抗が接続されるコンデンサの充電が開始されてから当該充電が完了する前までの時間では、他の時間にて設定される抵抗値よりも高い抵抗値に設定されることを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の情報通信システムにおいて、抵抗値が変更されるタイミングは、コンデンサ及び抵抗により定まる時定数に基づいて設定されることを特徴とする。
【0017】
請求項7記載の発明は、車両に搭載され、複数のスレーブ局と、各スレーブ局との間で信号の送受信を行うマスタ局と、を備えた乗員保護装置において、スレーブ局は、センサまたは乗員保護手段のうち少なくとも一方と接続され、乗員保護手段に接続されるスレーブ局は、当該乗員保護手段に供給される電力を蓄えるコンデンサを備え、マスタ局は、所定の電圧を出力する主電源と、主電源より出力される電圧を各スレーブ局へ順繰りに供給してコンデンサを充電すると共に、主電源より出力される電圧にて、一のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始した後、この充電が完了する前に、当該主電源より出力される電圧にて、当該一のスレーブ局が有するコンデンサの充電と並行して他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始する電力供給制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の乗員保護装置において、乗員保護手段はスクイブであり、コンデンサは、当該スクイブを起爆するために用いられる電力を蓄えることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
(第一の実施の形態)
以下、本発明の第一の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
まず、本第一の実施の形態に係る乗員保護装置1の構成について、図1〜図3に基づいて説明する。ここで、図1は、乗員保護装置1の構成を示したブロック図であり、図2及び図3は、スレーブ局30の構成を示したブロック図である。
【0021】
乗員保護装置1は、図示しない車両に搭載されており、図1に示すように、マスタ局2と、複数のスレーブ局30と、エアバッグ(乗員保護手段、スクイブ)5a、シートベルト(乗員保護手段)5b及び衝突センサ6を備える。
【0022】
また、マスタ局2と複数のスレーブ局30とが回線10でリング状に連結されて、情報通信システム4が構成される。
【0023】
また、各スレーブ局30は、図2に示す制御用コンデンサ31q及び駆動電力充電用の点火用コンデンサ(コンデンサ)36を備える他、エアバッグ5a、シートベルト5b及び衝突センサ6のうち少なくとも一つが接続される。なお、エアバッグ5aまたはシートベルト5bに接続されるスレーブ局30が、点火用コンデンサ36を備える。
【0024】
マスタ局2は、主電源23と、電力供給制御部(電力供給制御手段)24と、通信処理部25と、A回線切換部26と、B回線切換部27、及び端子28a、28bを備える。
【0025】
主電源23は、所定の電圧を電力供給制御部24に出力する。
【0026】
電力供給制御部24は、主電源23から与えられる電圧等を用いて所定の制御信号20等を生成し、A回線切換部26またはB回線切換部27に出力する。
【0027】
制御信号20は、所定のデータ信号21及び電力信号22で構成される。
【0028】
データ信号21には、スレーブ局30のアドレスデータ、マスタ局2からの命令データ及び各種設定値に関するデータ等が乗せられる。
【0029】
マスタ局2からの命令としては、例えば、点火用コンデンサ36の充電を開始して欲しい旨の命令、図2に示すバススイッチ31sを閉じて欲しい旨の命令、点火用コンデンサ36の電圧を測定した結果を出力して欲しい旨の命令、及び点火用コンデンサが正常かどうかを判定した結果を出力して欲しい旨の命令等がある。
【0030】
また、設定値としては、例えば、点火用コンデンサ36の常時診断(後述する)に用いられる検査電圧VF0、VF1がある。
【0031】
電力信号22は、スレーブ局30に電力を供給するための信号であり、データ信号21よりも高い電圧の信号となっている。
【0032】
また、スレーブ局30が一つの制御信号20の受信を開始してから終了するまでの時間は500(μs)である。
【0033】
通信処理部25は、多重通信部25a及び診断機能部25bを備える。
【0034】
多重通信部25aは、A回線切換部26及びB回線切換部27に入力された信号をシリアル形式に変換する。
【0035】
診断機能部25bは、スレーブ局30からA回線切換部26またはB回線切換部27に入力された信号に基づいて、各種診断処理を行う。
【0036】
A回線切換部26は、端子28aを介して回線10に接続されており、電力供給制御部24から与えられた信号を、当該信号がシリアル形式に変換された後、回線10に出力する。また、スレーブ局30から入力された信号を通信処理部25に出力する。
【0037】
B回線切換部27は、端子28bを介して回線10に接続されており、電力供給制御部24から与えられた信号を、当該信号がシリアル形式に変換された後、回線10に出力する。また、スレーブ局30から入力された信号を通信処理部25に出力する。
【0038】
スレーブ局30は、図2に示すように、端子31a〜31eと、Aスイッチ31rと、Bスイッチ31mと、バススイッチ31s、及び回線31h〜31jを備える。
【0039】
また、制御用コンデンサ制御部31pと、スイッチ制御部32と、通信制御部33と、コマンド解読部34と、点火用コンデンサ処理部35と、制御用コンデンサ31qと、点火用コンデンサ36と、ステータス記憶部37、及びスレーブ局制御部38を備える。
【0040】
端子31aは、図1に示す回線10と回線31hを接続し、端子31bは、回線10と回線31iを接続する。
【0041】
端子31cは、制御用コンデンサ31qと制御用コンデンサ制御部31pを接続し、端子31dは、点火用コンデンサ36と点火用コンデンサ処理部35を接続する。また、端子31eはグランドに接続される回線とスレーブ局30を接続する。
【0042】
Aスイッチ31rは、回線31hと回線31jを接続し、Bスイッチ31mは回線31iと回線31jを接続する。また、バススイッチ31sは回線31hと回線31iを接続する。
【0043】
制御用コンデンサ制御部31pは、回線31h及び回線31iと接続され、端子31aまたは端子31bから入力された電力信号22を制御用コンデンサ31qに出力する。これにより、制御用コンデンサ31qが充電される。
【0044】
また、制御用コンデンサ制御部31pは、制御用コンデンサ31qに充電された電力をスレーブ局30の各構成要素に出力する。これにより、スレーブ局30の各構成要素が作動可能となる。
【0045】
スイッチ制御部32は、Aスイッチ31r、Bスイッチ31m、及びバススイッチ31sを所定のタイミングで開閉する。
【0046】
具体的には、端子31aの電圧が電力信号22の電圧からデータ信号21の電圧に落ち、且つこの電圧が所定時間継続された場合には、Aスイッチ31rを閉じる。
【0047】
同様に、 端子31bの電圧が電力信号22の電圧からデータ信号21の電圧に落ち、且つこの電圧が所定時間継続された場合には、Bスイッチ31mを閉じる。
【0048】
また、コマンド解読部34からバススイッチ31sを閉じて欲しい旨の信号を与えられた場合には、バススイッチ31sを閉じる。
【0049】
なお、スイッチ制御部32は、一旦これらのスイッチを閉じた後は、原則として、スイッチを閉じた状態に維持する。
【0050】
また、スイッチ制御部32は、これらスイッチの開閉状況に関する情報を記憶し、且つ、この開閉状況に関する情報をスレーブ局30の各構成要素に必要に応じて出力する。
【0051】
通信制御部33は、端子31aまたは端子31bから入力された制御信号20を回線31jから受信し、コマンド解読部34に出力する。また、ステータス記憶部37に記憶されているデータを取得してこのデータに関する信号を生成し、マスタ局2に出力する。
【0052】
コマンド解読部34は、通信制御部33から与えられた制御信号20を解読し、解読結果に応じて各種信号を生成し、対応する構成要素に出力する。
【0053】
例えば、制御信号20を解読した結果、検査電圧VF0、VF1を取得した場合には、当該検査電圧に関する信号を作成して、点火用コンデンサ処理部35に出力する。
【0054】
また、バススイッチ31sを閉じて欲しい旨の命令データを取得した場合には、その旨の信号を生成してスイッチ制御部32に出力する。
【0055】
点火用コンデンサ処理部35は、図3に示すように、充電用スイッチ35aと、充電用抵抗(抵抗)35bと、ダイオード35c、35dと、放電用抵抗35eと、放電用スイッチ35fと、点火用コンデンサ制御部35gと、点火用コンデンサ初期診断部35h、及び点火用コンデンサ常時診断部35iを備える。
【0056】
充電用スイッチ35aは、回線31h、31iと充電用抵抗35bを接続し、ダイオード35cは充電用抵抗35bと点火用コンデンサ36を接続する。なお、図2に示すように、ダイオード35cと点火用コンデンサ36は端子31dを介して接続される。
【0057】
ダイオード35dは、ダイオード35cと点火用コンデンサ36を接続する回線上の点Bと、スレーブ局制御部38を接続する。
【0058】
放電用抵抗35eは、点Bとダイオード35dを接続する回線上の点Cと放電用スイッチ35fを接続し、この放電用スイッチ35fはグランドに接続される。
【0059】
したがって、充電用スイッチ35aが閉じられると、マスタ局2から与えられる電力信号22が点火用コンデンサ36に供給されるので、点火用コンデンサ36が充電される。一方、放電用スイッチ35fが閉じられると、点火用コンデンサ36に充電された電力が放電される。
【0060】
点火用コンデンサ制御部35gは、充電用スイッチ35a及び放電用スイッチ35fを所定のタイミングで開閉する。
【0061】
点火用コンデンサ初期診断部35hは、イニシャル時に、充電用スイッチ35a及び放電用スイッチ35fを所定のタイミングで開閉する。また、点火用コンデンサ36の電圧を所定のタイミングで測定して当該測定の結果に関する信号を生成し、図2に示すステータス記憶部37に出力する。
【0062】
点火用コンデンサ常時診断部35iは、図示しないタイマと、フラグ設定用のレジスタを備え、イニシャル処理終了後、充電用スイッチ35a及び放電用スイッチ35fを所定のタイミングで開閉する。また、点火用コンデンサ36が正常かどうかを判定して当該判定の結果に関する信号を生成し、図2に示すステータス記憶部37に出力する。
【0063】
点火用コンデンサ36は、エアバッグ5aまたはシートベルト5bを起爆(作動)させるために用いられる電力(POWER)を蓄える。
【0064】
なお、本実施の形態では、各スレーブ局30が有する充電用抵抗35bの抵抗値及び点火用コンデンサ36の電気容量は互いに等しいものとする。したがって、各スレーブ局30が有する充電用抵抗35bの抵抗値及び点火用コンデンサ36の電気容量から算出される時定数τは、互いに等しくなる。ただし、当該充電用抵抗35bの抵抗値及び点火用コンデンサ36の電気容量を互いに異なるものとしても、本発明の効果を得ることができるのは勿論である。
【0065】
図2に示すステータス記憶部37は、点火用コンデンサ初期診断部35h、点火用コンデンサ常時診断部35i及びスレーブ局制御部38から与えられる信号の内容を記憶する。
【0066】
スレーブ局制御部38は、スレーブ局30にエアバッグ5aまたはシートベルト5bが接続されている場合には、エアバッグ5aまたはシートベルト5bの動作を制御する。例えば、点火用コンデンサ36に充電された電力をエアバッグ5aまたはシートベルト5bに供給する。
【0067】
また、エアバッグ5aまたはシートベルト5bが正常かどうかを判定し、当該判定の結果に関する信号を生成してステータス記憶部37に出力する。
【0068】
一方、スレーブ局30に衝突センサ6が接続されている場合には、衝突センサ6による検知結果を取得し、当該検知結果に関する信号を生成する。そして、当該信号をステータス記憶部37に出力する。
【0069】
エアバッグ5a及びシートベルト5bは、スレーブ局制御部38による制御により作動する。なお、作動に必要な電力は、点火用コンデンサ36から供給される。また、衝突センサ6は、車両が受けた衝撃を検知する。
【0070】
次に、乗員保護装置1による処理の手順を図4、図5、図11、図18、図19のフローチャートに沿って説明する。
【0071】
なお、以下の説明では、図1に示すように、マスタ局2に接続されている二つの回線10のうち、端子28aに接続される回線10をA回線10aとし、端子28bに接続される回線をB回線10bとする。
【0072】
また、マスタ局2は、A回線10aに制御信号20を出力するものとするが、B回線10bに制御信号20を出力するものとしても良い。
【0073】
また、図1で、右端のスレーブ局30(即ち、A回線10aに接続されたスレーブ局30)を第1スレーブ局301とし、以下、図1にて右から数えてk番目のスレーブ局30を第kスレーブ局30kとする。
【0074】
また、第1スレーブ局301から第nスレーブ局30nまでは、点火用コンデンサ36を備えるものとし、第kスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36を、「第kの点火用コンデンサ36」と称する。
【0075】
また、第kスレーブ局30が有する制御用コンデンサ31qを、「第kの制御用コンデンサ31q」と称する。
【0076】
まず、図4に示すステップS1にて、車両にイグニッションが投入されると、図1に示すマスタ局2が起動される。
【0077】
次いで、ステップS2にて、マスタ局2は各スレーブ局30が有する制御用コンデンサ31q及び点火用コンデンサ36を順繰りに充電する。
【0078】
具体的には、図5に示すステップS2aにて、マスタ局2は、A回線10aに電力信号22を出力し、この電力信号22は、第1スレーブ局301に入力される。次いで、第1スレーブ局301内部で以下の処理が行われる。
【0079】
第1スレーブ局301に入力された電力信号22は、図2に示すように、制御用コンデンサ制御部31pを介して制御用コンデンサ31qに出力される。これにより、制御用コンデンサ31qの充電が開始される。
【0080】
制御用コンデンサ31qに一定量の電力が充電されると、制御用コンデンサ制御部31pは、当該制御用コンデンサ31qに充電された電力を第1スレーブ局301の各構成要素に出力する。これにより、各構成要素が動作可能となる。
【0081】
次いで、マスタ局2は、第1スレーブ局301のアドレス設定データが乗せられた制御信号20を出力する。
【0082】
この制御信号20が第1スレーブ局301の端子31aに入力されると、当該端子31aの電圧は電力信号22の電圧からデータ信号21の電圧に落ち、さらに所定時間この電圧に維持されるので、スイッチ制御部32は、Aスイッチ31rを閉じる。
【0083】
これにより、通信制御部33に制御信号20が入力され、さらにこの制御信号20がコマンド解読部34に入力される。
【0084】
次いで、コマンド解読部34は、この制御信号20を解読して、マスタ局2により設定されたアドレスを認識し、このアドレスを図示しないメモリに保存する。
【0085】
次いで、マスタ局2は、第1スレーブ局301のアドレスデータと、第1の点火用コンデンサ36を充電して欲しい旨の命令データと、バススイッチ31sを閉じて欲しい旨の命令データとが乗せられた第1のバスクローズ用制御信号201を出力する。
【0086】
次いで、通信制御部33はこの第1のバスクローズ用制御信号201を受信し、コマンド解読部34に出力する。
【0087】
次いで、コマンド解読部34は、第1のバスクローズ用制御信号201を解読して、アドレスデータ、点火用コンデンサ36を充電して欲しい旨の命令データ及びバススイッチ31sを閉じて欲しい旨の命令データを取得する。
【0088】
次いで、当該アドレスデータがメモリに保存されているアドレスデータと等しいことを確認し、点火用コンデンサ36を充電して欲しい旨の第1の信号及びバススイッチ31sを閉じて欲しい旨の第2の信号を生成する。
【0089】
次いで、第1の信号を図3に示す点火用コンデンサ制御部35gに出力すると共に、第2の信号をスイッチ制御部32に出力する。
【0090】
次いで、点火用コンデンサ制御部35gは、第1の信号を与えられた際に充電用スイッチ35aを閉じ、スイッチ制御部32は、第2の信号を与えられた際にバススイッチ31sを閉じる。これにより、第1の点火用コンデンサ36及び第2の制御用コンデンサ31qがマスタ局2と接続される(図1〜2参照)。
【0091】
次いで、マスタ局2は電力信号22を再度出力するが、この電力信号22は第1の点火用コンデンサ36及び第2の制御用コンデンサ31qにも出力されるので、これら点火用コンデンサ36及び制御用コンデンサ31qの充電が開始される。
【0092】
次いで、図5に示すステップS2bにて、第2スレーブ局30のアドレスデータと、第2の点火用コンデンサ36を充電して欲しい旨の命令データと、バススイッチ31sを閉じて欲しい旨の命令データとが乗せられた第2のバスクローズ用制御信号202を後述する所定のタイミングで出力する。
【0093】
次いで、ステップS1aと同様の処理が行われ、第2の点火用コンデンサ36及び第3の制御用コンデンサ31qの充電が開始される。即ち、マスタ局2は、主電源23より出力される電圧にて、一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始した後、この充電が完了する前に、当該主電源23より出力される電圧にて、当該一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電と並行して他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始する。
【0094】
次いで、ステップS2cにて、乗員保護装置1は、ステップS2a〜ステップS2bまでの処理と同様の処理を全てのスレーブ局30について行う。
【0095】
これにより、ステップS2dにて、全てのスレーブ局30にアドレスが設定されると共に全ての制御用コンデンサ31q及び点火用コンデンサ36の充電が完了する。
【0096】
なお、マスタ局2は、第kの点火用コンデンサ36(2≦k≦n)の充電を開始するに際しては、第kスレーブ局30のアドレスデータと、第kの点火用コンデンサ36を充電して欲しい旨の命令データと、バススイッチ31sを閉じて欲しい旨の命令データとが乗せられた制御信号(以下、「第kのバスクローズ用制御信号」と称する)20kを以下のタイミングで出力する。
【0097】
即ち、マスタ局2は、第(k−1)の点火用コンデンサ36の充電を開始してから、第kの点火用コンデンサ36の充電を開始するまでの時間が、時定数τ(k−1)に等しくなるように、第kのバスクローズ用制御信号20kを出力する。
【0098】
したがって、乗員保護装置1は、第(k−1)の点火用コンデンサ36の充電が開始されてから時定数τ(k−1)経過するまでに、第kの点火用コンデンサ36の充電が可能な状態、即ち第kスレーブ局30kの各構成要素が動作可能となっているように構成される。
【0099】
なお、時定数τ(k−1)は、第(k−1)スレーブ局30が有する充電用抵抗35bの抵抗値及び点火用コンデンサ36の電気容量から算出されるが、上述したように、τ1=τ2=…=τk=…=τ(n−1)=τとなる。
【0100】
また、全ての点火用コンデンサ36の充電が完了した状態では、全てのスレーブ局30のバススイッチ31sが閉じられているので、マスタ局2が出力した制御信号20は、全てのスレーブ局30に入力される。
【0101】
ここで、図6に、電力信号22の電圧、充電用抵抗35bの抵抗値及び点火用コンデンサ36の電気容量をある値に設定した場合に、マスタ局2等に流れる電流が変化する様子を示す。なお、図6では、第1の点火用コンデンサ36の充電が開始される時刻をゼロとした。
【0102】
曲線100は、マスタ局2に流れる電流の大きさを示し、曲線101は、第1スレーブ局301の点A(図3参照)に流れる電流(即ち、第1の点火用コンデンサ36に流れる電流)の大きさを示す。同様に、曲線102〜105は、それぞれ第2〜第5の点火用コンデンサ36に流れる電流の大きさを示す(以下に示す図9及び図10でも同様)。
【0103】
また、図7に、時刻0、τ、2τ、3τ、…、nτにてマスタ局2及び各点火用コンデンサ36に流れる電流の大きさを示し、図8に、時刻0、τ、2τ、3τ、…、9τにてマスタ局2及び各点火用コンデンサ36に流れる電流の大きさをプロットしたグラフを示す。
【0104】
図6〜図8に示すように、マスタ局2に流れる電流は、0.1(A)よりも小さくなる。
【0105】
ここで、比較のために、図9に、図6と同一の条件の下で、一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電が実質完了してから、他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始する場合に、マスタ局2等に流れる電流が変化する様子を示す。
【0106】
また、図10に、図6と同一の条件の下で、第1〜第5の点火用コンデンサ36の充電を同時に開始する場合に、マスタ局2等に流れる電流が変化する様子を示す。
【0107】
図6に示す場合の方が、図9に示す場合に比べて、全ての点火用コンデンサ36を充電するのに必要な時間が短くなる。本実施の形態では、一の点火用コンデンサ36の充電に並行して他の点火用コンデンサ36の充電を行うからである。
【0108】
また、図6に示す場合の方が、図10に示す場合に比べて、マスタ局2に流れる電流が小さくなる。本実施の形態では、複数の点火用コンデンサ36の充電を同時に開始しないからである。
【0109】
次いで、乗員保護装置1は、図4に示すステップS3にて、点火用コンデンサ36の初期診断を行う。
【0110】
具体的には、図11に示すステップS3aにて、図1に示すマスタ局2は、一括コンデンサデスチャージコマンド(以下、「デスチャージ命令」と称する)データを乗せた制御信号(以下、「デスチャージ用制御信号」と称する)210を出力する。
【0111】
このデスチャージ用制御信号210は全てのスレーブ局30に入力されるので、各スレーブ局30の内部では、以下の処理が行われる。
【0112】
即ち、図2に示す通信制御部33は、デスチャージ用制御信号210を受信してコマンド解読部34に出力する。
【0113】
次いで、コマンド解読部34は、デスチャージ用制御信号210を解読することでデスチャージ命令を取得し、点火用コンデンサ36の電圧測定及び放電処理を行って欲しい旨の信号を生成する。
【0114】
なお、点火用コンデンサ36を有していないスレーブ局30の内部では、コマンド解読部34は当該デスチャージ用制御信号210を捨てる。同様に、以下の処理においても、点火用コンデンサ36を有していないスレーブ局30は、点火用コンデンサ36に関する制御信号を受信した場合には、当該制御信号を捨てる。
【0115】
次いで、当該信号を図3に示す点火用コンデンサ初期診断部35hに出力し、点火用コンデンサ初期診断部35hは、当該信号を与えられた際に、点火用コンデンサ36の電圧(具体的には、点Aの電圧)を測定する。さらに、当該測定された電圧を増幅して電圧Vsを得る。
【0116】
一方、充電用スイッチ35aを開くと共に放電用スイッチ35fを閉じることで、点火用コンデンサ36の放電を開始する。
【0117】
次いで、点火用コンデンサ初期診断部35hは、当該電圧Vsに関する信号(Vs_DAT_STATUS)を作成して、ステータス記憶部37に出力する。これにより、ステータス記憶部37は、電圧Vsに関するデータを記憶する。
【0118】
次いで、図11に示すステップS3bにて、図1に示すマスタ局2は、一括コンデンサチャージコマンド(以下、「チャージ命令」と称する)データを乗せた制御信号(以下「チャージ用制御信号」と称する)211を出力する。その後、電力信号22を出力する。
【0119】
このチャージ用制御信号211は全てのスレーブ局30に入力されるので、各スレーブ局30の内部では、以下の処理が行われる。
【0120】
即ち、図2に示す通信制御部33は、チャージ用制御信号211を受信してコマンド解読部34に出力する。
【0121】
次いで、コマンド解読部34は、チャージ用制御信号211を解読することでチャージ命令を取得し、点火用コンデンサ36の電圧測定及び充電処理を行って欲しい旨の信号を生成する。
【0122】
次いで、当該信号を図3に示す点火用コンデンサ初期診断部35hに出力し、点火用コンデンサ初期診断部35hは、当該信号を与えられた際に、点火用コンデンサ36の電圧を測定する。さらに、当該測定された電圧を増幅して電圧Vfを得る。
【0123】
一方、充電用スイッチ35aを閉じると共に放電用スイッチ35fを開く。これにより、マスタ局2から出力された電力信号22が点火用コンデンサ36に入力されるので、点火用コンデンサ36の充電が開始される。
【0124】
次いで、点火用コンデンサ初期診断部35hは、当該測定された電圧Vfに関する信号(Vf_DAT_STATUS)を作成して、ステータス記憶部37に出力する。これにより、ステータス記憶部37は、電圧Vfに関するデータを記憶する。
【0125】
次いで、図11に示すステップS3cにて、図1に示すマスタ局2は、ダミーのチャージ用制御信号211を出力する。
【0126】
このチャージ用制御信号211は全てのスレーブ局30に入力されるので、各スレーブ局30の内部では、以下の処理が行われる。
【0127】
即ち、図2に示す通信制御部33は、チャージ用制御信号211を受信してコマンド解読部34に出力する。
【0128】
次いで、コマンド解読部34は、チャージ用制御信号211を解読することでダミーのチャージ命令を取得し、点火用コンデンサ36の電圧測定を行って欲しい旨の信号を生成する。
【0129】
次いで、当該信号を図3に示す点火用コンデンサ初期診断部35hに出力し、点火用コンデンサ初期診断部35hは、当該信号を与えられた際に、点火用コンデンサ36の電圧を測定する。さらに、当該測定された電圧を増幅して電圧Vrを得る。
【0130】
次いで、点火用コンデンサ初期診断部35hは、当該測定された電圧Vrに関する信号(Vr_DAT_STATUS)を作成して、ステータス記憶部37に出力する。これにより、ステータス記憶部37は、電圧Vrに関するデータを記憶する。
【0131】
ここで、チャージ命令及びデスチャージ命令と、点火用コンデンサ初期診断部35hの動作と、ステータス記憶部37に記憶されるデータとの関係を図12に示す。
【0132】
図12に示すように、ステータス記憶部37には、電圧Vf、Vrのデータに関しては、点火用コンデンサ初期診断部35hによる診断処理の前は、初期値データが記憶される。
【0133】
また、ステップS3a〜S3cの処理が行われる間における、点火用コンデンサ36の充放電の様子を図13〜図14に示す。
【0134】
ここで、tsは電圧Vsが測定された時刻であり、tfは電圧Vfが測定された時刻であり、trは電圧Vrが測定された時刻である(以下に示す図15〜図16でも同様)。
【0135】
なお、チャージ命令及びデスチャージ命令が出力されるタイミングは、後述する電気容量C1、C2が適切に算出されるように設定される。
【0136】
次いで、図11に示すステップS3dにて、図1に示すマスタ局2は、各スレーブ局30が行った測定の結果を取得する。
【0137】
具体的には、取得対象のスレーブ局30のアドレスデータ、及び測定の結果を出力して欲しい旨の命令データを乗せた制御信号212を出力する。この制御信号212は全てのスレーブ局30に入力されるので、各スレーブ局30の内部では、以下の処理が行われる。
【0138】
即ち、図2に示すコマンド解読部34が当該制御信号212を解読してアドレスデータを取得し、当該アドレスデータとメモリに記憶されているアドレスデータとを比較する。
【0139】
この結果、アドレスデータが一致する場合には、測定の結果を出力して欲しい旨の信号を生成して通信制御部33に出力し、アドレスデータが一致しない場合には、当該制御信号212を捨てる。
【0140】
次いで、通信制御部33は、コマンド解読部34から当該信号を与えられた場合には、ステータス記憶部37から電圧Vs、Vf、及びVrのデータを取得し、当該データに関する信号を生成してマスタ局2に出力する。
【0141】
さらに、マスタ局2は、上述した制御信号212を、アドレスデータを適宜変更して繰り返し出力することにより、電圧Vs、Vf、及びVrのデータに関する信号を全てのスレーブ局30から出力させる。
【0142】
次いで、ステップS3eにて、マスタ局2は、各スレーブ局30から出力された信号を受信し、マスタ局2の診断機能部25bが、これら信号から電圧Vs、Vf、Vrに関するデータを取得する。
【0143】
次いで、診断機能部25bは、当該データに基づいて、各スレーブ局30が有する点火用コンデンサ36が正常かどうかを判定する。
【0144】
具体的には、電圧Vs、Vfデータと以下の式(1)を用いて、点火用コンデンサ36の電気容量C1を算出し、この電気容量C1と予め定められた理想電気容量とを比較する。
【0145】
C1=(1/(2*R1))*(Vs+Vf)*(tf−ts)/(Vs−Vf)…(1)
ここで、R1は放電用抵抗35eの抵抗値である。
【0146】
さらに、電圧Vf、Vrデータと以下の式(2)を用いて、点火用コンデンサ36の電気容量C2を算出し、この電気容量C2と上述した理想電気容量とを比較する。
【0147】
C2=(1/(2*R0))*{2*V0−(Vr+Vf)}*(tr−tf1)/(Vr−Vf)…(2)
ここで、R0は充電用抵抗35bの抵抗値であり、V0は点火用コンデンサ36の充電完了時の電圧である。
【0148】
次いで、電気容量C1、C2が何れも理想電気容量に実質等しくなる場合には、点火用コンデンサ36が正常であると判定し、それ以外の場合には、異常であると判定する。
【0149】
ここで、式(1)の導出過程を図15に基づいて説明する。
【0150】
即ち、時刻tsから時刻tfまでの時間に点火用コンデンサ36から放電された電荷量ΔQは、以下の式(1a)で近似される。
【0151】
ΔQ=(1/2)*(Is+If)*(tf−ts) …(1a)
ここで、Isは時刻tsにて点火用コンデンサ36に流れる電流であり、Ifは時刻tfにて点火用コンデンサ36に流れる電流である。
【0152】
また、Is=Vs/R1、If=Vf/R1となるので、式(1a)から以下の式(1b)が導かれる。
【0153】
ΔQ=(1/(2*R1))*(Vs+Vf)*(tf−ts) …(1b)
そして、電気容量C1は、以下の式(1c)で表されるので、当該式(1c)と式(1b)から式(1)が導かれる。
【0154】
C1=ΔQ/(Vs−Vf) …(1c)
次に、式(2)の導出過程を図16に基づいて説明する。
【0155】
即ち、時刻tfから時刻trまでの時間に点火用コンデンサ36に充電された電荷量ΔQは、以下の式(2a)で近似される。
【0156】
ΔQ=(1/2)*(Ir+If)*(tr−tf) …(2a)
ここで、Irは時刻trにて点火用コンデンサ36に流れる電流である。また、If=(V0−Vf)/R0、Ir=(V0−Vr)/R0となるので、式(2a)から以下の式(2b)が導かれる。
【0157】
ΔQ=(1/(2*R0))*(Vs+Vf)*(tf−ts) …(2b)
そして、電気容量C2は、以下の式(2c)で表されるので、当該式(2c)と式(2b)から式(1)が導かれる。
【0158】
C1=ΔQ/(Vr−Vf) …(2c)
図17に、診断機能部25bによる判定の一例として、理想電気容量C=570(μF)の点火用コンデンサ36が正常かどうかを判定した結果を示す。
【0159】
なお、本例では、図17に示すように、ts=0、tf=0.05(μs)、tr=0.1(μs)、V0=14(V)、R0=R1=250(Ω)、時定数τ=0.1425(μs)の条件の下で、判定を行っている。
【0160】
当該判定では、C1=C2=575.8(μF)と算出されるので、点火用コンデンサ36が正常であると判定する。
【0161】
次いで、図4に示すステップS4にて、診断機能部25bは、全ての点火用コンデンサ36が正常と判定されたかどうかを判定する。
【0162】
この結果、全ての点火用コンデンサ36が正常と判定された場合には、ステップS5に進む。一方、何れかの点火用コンデンサ36が異常と判定された場合(ステップS4にてNO)には、ステップS6に進む。なお、ステップS4の処理が終了した時点で、点火用コンデンサ36の初期診断が終了する。
【0163】
まず、ステップS6の処理について説明する。即ち、ステップS6にて、マスタ局2は、所定の異常処理を行う。ここで、当該異常処理としては、例えば、異常と判定された点火用コンデンサ36を有するスレーブ局30の動作を停止する処理がある。
【0164】
次に、ステップS5以降の処理について説明する。即ち、ステップS5にて、診断機能部25bは、他の診断処理を行う。ここで、当該他の診断処理としては、例えば全てのスレーブ局30のバススイッチ31s(図2参照)が閉じられているかどうかを判定する処理がある。
【0165】
この結果、異常が発見されなかった場合には、図18に示すステップS8に進む。一方、何れかの異常が発見された場合(ステップS5にてNO)には、ステップS7に進む。
【0166】
まず、ステップS7の処理について説明する。即ち、ステップS7にて、マスタ局2は、所定の異常処理を行う。ここで、当該異常処理としては、例えば、あるスレーブ局30に異常が発見された場合には、当該スレーブ局30の動作を停止する処理がある。
【0167】
次に、図18に示すステップS8以降の処理について説明する。なお、ステップS8以降の処理は、点火用コンデンサ36を有する各スレーブ局30について行われる。また、マスタ局2は、ステップS8以降の処理が行われる間、制御信号20を連続して出力する。
【0168】
即ち、ステップS8にて、図2に示す通信制御部33は、制御信号20の受信を開始したかどうかを判定する。
【0169】
この結果、制御信号20の受信を開始した場合には、ステップS9に進み、開始していない場合(ステップS8にてNO)には、ステップS8の処理を繰り返す。
【0170】
ステップS9にて、コマンド解読部34は、点火用コンデンサ36を常時診断して欲しい旨の信号を生成し、図3に示す点火用コンデンサ常時診断部35iに出力する。
【0171】
次いで、点火用コンデンサ常時診断部35iは、当該信号を与えられた際に、点火用コンデンサ常時診断要求フラグをセットし、その後、ステップS10に進む。
【0172】
ステップS10では、点火用コンデンサ36の常時診断が行われる。具体的には、図19に示すステップS10aにて、図1に示すマスタ局2は、何れかのスレーブ局30のアドレスデータ及び検査電圧VF0、VF1(<VF0)のデータが乗せられた制御信号20を出力する。
【0173】
この制御信号20は全てのスレーブ局30に入力されるので、各スレーブ局30の内部では、以下の処理が行われる。
【0174】
即ち、図2に示すコマンド解読部34が当該制御信号20を解読してアドレスデータ及び検査電圧データを取得し、当該アドレスデータとメモリに記憶されているアドレスデータとを比較する。
【0175】
この結果、アドレスデータが一致する場合には、当該検査電圧に関する信号を生成して図3に示す点火用コンデンサ常時診断部35iに出力し、アドレスデータが一致しない場合には、当該制御信号20を捨てる。
【0176】
次いで、点火用コンデンサ常時診断部35iは、コマンド解読部34から当該信号を与えられた場合には、当該信号から検査電圧のデータを取得する。これにより、マスタ局2は、スレーブ局30に検査電圧を設定する。
【0177】
次いで、マスタ局2は、上述した制御信号20を、アドレスデータを適宜変更して繰り返し出力することにより、全てのスレーブ局30に検査電圧を設定する。
【0178】
一方、検査電圧を取得した点火用コンデンサ常時診断部35iは、点火用コンデンサ36の放電を開始する時刻ta0及び点火用コンデンサ36の放電を終了する時刻ta1を設定するとともに、タイマを起動する。なお、これら時刻については、予め定められていても良い。また、タイマの初期値をゼロとする。
【0179】
次いで、検査電圧を設定されたスレーブ局30から、順次ステップS10b以降の処理を行う。
【0180】
図19に示すステップS10bにて、点火用コンデンサ常時診断部35iは、タイマが示す時刻(以下、「タイマ時刻」と称する)をチェックする。
【0181】
この結果、タイマ時刻が時刻ta0となっている場合(d_point_0)には、ステップS10cに進み、それ以外の場合(ステップS10bにてNO)には、ステップS10jに進む。まず、ステップS10c以降の処理について説明する。
【0182】
ステップS10cにて、点火用コンデンサ常時診断部35iは、点火用コンデンサ36の電圧(具体的には、図3に示す点Aの電圧)を測定し、ステップS10dにて、当該測定電圧と検査電圧VF0を比較する。
【0183】
この結果、測定電圧が検査電圧VF0以上である場合には、点火用コンデンサ36が時刻ta0では正常であると判定し、ステップS10eに進む。一方、測定電圧が検査電圧VF0未満である場合(ステップS10dにてNO)には、点火用コンデンサ36が異常であると判定し、ステップS10hに進む。まず、ステップS10e以降の処理について説明する。
【0184】
ステップS10eにて、点火用コンデンサ常時診断部35iは、点火用コンデンサ36が時刻ta0では正常である旨の信号(dp0_STATUS、図3参照)を生成し、図2に示すステータス記憶部37に出力する。これにより、ステータス記憶部37は、点火用コンデンサ36が時刻ta0では正常である旨のデータを記憶する。
【0185】
次いで、ステップS10fにて、点火用コンデンサ常時診断部35iは、充電用スイッチ35aを開くと共に放電用スイッチ35fを閉じることで、点火用コンデンサ36の放電を開始する。
【0186】
次いで、ステップS10gにて、タイマをリセットし、ステップS10bに戻る。
【0187】
次に、ステップS10h以降の処理について説明する。即ち、ステップS10hにて、点火用コンデンサ常時診断部35iは、点火用コンデンサ36が異常である旨の信号(dp0_STATUS)を生成し、ステータス記憶部37に出力する。これにより、ステータス記憶部37は、点火用コンデンサ36が異常である旨のデータを記憶する。
【0188】
次いで、ステップS10iにて、マスタ局2は、当該判定を行ったスレーブ局30のアドレスデータと、判定結果を出力して欲しい旨の命令データとが乗せられた制御信号20を出力する。この制御信号20は全てのスレーブ局30に入力され、各スレーブ局30のコマンド解読部34が当該制御信号20を解読する。
【0189】
次いで、当該アドレスデータに対応するスレーブ局30のコマンド解読部34が、判定結果を出力して欲しい旨の信号を生成して通信制御部33に出力する。
【0190】
次いで、この通信制御部33が、点火用コンデンサ36が異常である旨のデータをステータス記憶部37から取得して、当該データに関する信号を生成し、マスタ局2に出力する。
【0191】
次いで、マスタ局2は、この信号に基づいて、所定の異常処理を行う。ここで、異常処理としては、例えば、点火用コンデンサ36の異常が発見されたスレーブ局30の動作を停止する処理等がある。
【0192】
次に、ステップS10j以降の処理について説明する。即ち、ステップS10jにて、点火用コンデンサ常時診断部35iは、タイマ時刻が時刻ta1になっているかどうかをチェックする。
【0193】
この結果、タイマ時刻が時刻ta1となっている場合には、ステップS10mに進み、それ以外の場合(ステップS10jにてNO)には、ステップS10uにて、タイマを更新してステップS10bに戻る。
【0194】
ステップS10mにて、点火用コンデンサ常時診断部35iは、点火用コンデンサ36の電圧を測定し、ステップS10oにて、当該測定電圧と検査電圧VF0、VF1を比較する。
【0195】
この結果、測定電圧が検査電圧VF0未満で、且つ検査電圧VF1より大きい場合には、点火用コンデンサ36が時刻ta1では正常であると判定し、ステップS10pに進む。
【0196】
一方、それ以外の場合(ステップS10oにてNO)には、点火用コンデンサ36が異常であると判定し、ステップS10sに進む。まず、ステップS10p以降の処理について説明する。
【0197】
ステップS10pにて、点火用コンデンサ常時診断部35iは、点火用コンデンサ36が時刻ta1では正常である旨の信号(dp1_STATUS、図3参照)を生成し、ステータス記憶部37に出力する。これにより、ステータス記憶部37は、点火用コンデンサ36が時刻ta1では正常である旨のデータを記憶する。
【0198】
次いで、ステップS10qにて、点火用コンデンサ常時診断部35iは、放電用スイッチ35fを開くと共に充電用スイッチ35aを閉じる。これにより、マスタ局2から出力された電力信号22が点火用コンデンサ36に入力されるので、点火用コンデンサ36の充電が開始される。
【0199】
次いで、ステップS10rにて、タイマを更新し、ステップS10bに戻る。
【0200】
次に、ステップS10s以降の処理について説明する。即ち、ステップS10sにて、点火用コンデンサ常時診断部35iは、点火用コンデンサ36が異常である旨の信号(dp1_STATUS)を生成し、ステータス記憶部37に出力する。これにより、ステータス記憶部37は、点火用コンデンサ36が異常である旨のデータを記憶する。
【0201】
次いで、ステップS10tにて、マスタ局2は、当該判定を行ったスレーブ局30のアドレスデータと、判定結果を出力して欲しい旨の命令データとが乗せられた制御信号20を出力する。この制御信号20は全てのスレーブ局30に入力され、各スレーブ局30のコマンド解読部34が当該制御信号20を解読する。
【0202】
次いで、当該アドレスデータに対応するスレーブ局30のコマンド解読部34が、判定結果を出力して欲しい旨の信号を生成して通信制御部33に出力する。
【0203】
次いで、この通信制御部33が、点火用コンデンサ36が異常である旨のデータをステータス記憶部37から取得して、当該データに関する信号を生成し、マスタ局2に出力する。
【0204】
次いで、マスタ局2は、この信号に基づいて、所定の異常処理を行う。ここで、異常処理としては、例えば、点火用コンデンサ36の異常が発見されたスレーブ局30の動作を停止する処理等がある。
【0205】
ここで、点火用コンデンサ常時診断部35iによる処理により点火用コンデンサ36が充放電される様子の一例を、図20〜21に示した。
【0206】
ここで、図20(a)は、図1に示すA回線10aの電圧の変化を示したタイムチャートであり、図20(b)は、点火用コンデンサ36の電圧の変化を示したタイムチャートである。また、図21は、図20(b)の領域Xを拡大して示したタイムチャートである。
【0207】
本例では、スレーブ局30が制御信号20の受信を開始する時刻に、ステップS10cの処理を行い、この時刻から所定時間経過した後、ステップS10mの処理を行っている。また、本例では、点火用コンデンサ常時診断部35iは、点火用コンデンサ36が正常であると判定する。
【0208】
次に、上述したステップS1〜ステップS10までの処理を通して行った場合における、点火用コンデンサ36等の電圧変化の一例を図22に示す。
【0209】
ここで、図22(a)は、図1に示すA回線10aの電圧変化を示したタイムチャートであり、図22(b)〜(e)は、それぞれ第1スレーブ局301〜第4スレーブ局304までの点火用コンデンサ36の電圧変化を示したタイムチャートである。
【0210】
また、図22は、点火用コンデンサ36を有するスレーブ局30が4つ存在する場合(n=4)での電圧変化を示している。
【0211】
図22では、まず、時刻ゼロにてイグニッションが投入されると(図4に示すステップS1)、マスタ局2が起動される。そして、マスタ局2は、電力信号22の出力を開始する。
【0212】
次いで、時刻ゼロ〜t1の間に、第1スレーブ局301の制御用コンデンサ31qが充電され、第1スレーブ局301の各構成要素が動作可能となる。
【0213】
次いで、時刻t1にて、マスタ局2が、第1のバスクローズ用制御信号201を出力することで、第1の点火用コンデンサ36及び第2の制御用コンデンサ31qの充電が開始される(図5に示すステップS2a)。
【0214】
次いで、時刻t1から時定数τ経過した際(時刻t2)に、マスタ局2が、第2のバスクローズ用制御信号202を出力することで、第2の点火用コンデンサ36及び第3の制御用コンデンサ31qの充電が開始される(図5に示すステップS2b)。
【0215】
次いで、時刻t2から時定数τ経過した際(時刻t3)に、マスタ局2が、第3のバスクローズ用制御信号203を出力することで、第3の点火用コンデンサ36及び第4の制御用コンデンサ31qの充電が開始される(図5に示すステップS2c)。
【0216】
次いで、時刻t3から時定数τ経過した際(時刻t4)に、マスタ局2が、第4のバスクローズ用制御信号204を出力することで、第4の点火用コンデンサ36の充電が開始される(図5に示すステップS2c)。
【0217】
全ての点火用コンデンサ36の充電が終了した後、時刻t5にて、マスタ局2が、デスチャージ用制御信号210を出力することで、第1スレーブ局301〜第4スレーブ局304は、一斉に点火用コンデンサ36の電圧を測定して、電圧Vsを得る。さらに、点火用コンデンサ36の放電を開始する(図11に示すステップS3a)。
【0218】
次いで、時刻t6にて、マスタ局2が、チャージ用制御信号211を出力することで、第1スレーブ局301〜第4スレーブ局304は、一斉に点火用コンデンサ36の電圧を測定して、電圧Vfを得る。さらに、点火用コンデンサ36の充電を開始する(図11に示すステップS3b)。
【0219】
次いで、時刻t7にて、マスタ局2が、ダミーのチャージ用制御信号211を出力することで、第1スレーブ局301〜第4スレーブ局304は、一斉に点火用コンデンサ36の電圧を測定して、電圧Vrを得る(図11に示すステップS3a)。
【0220】
次いで、時刻t7〜t8の間にて、マスタ局2は、第1スレーブ局301〜第4スレーブ局304からそれぞれ電圧Vs、Vf、Vrのデータを取得して、第1〜第4の点火用コンデンサ36が正常かどうかを判定する。
【0221】
時刻t8以降では、図4に示すステップS10の処理が行われる。具体的には、時刻t9及びt11にて、各スレーブ局30の点火用コンデンサ常時診断部35iが点火用コンデンサ36の電圧を測定して検査電圧VF0と比較する(図19に示すステップS10c〜S10d)。そして、比較結果に応じた処理(本例では、ステップS10e〜S10g)を行う。
【0222】
また、時刻t10及びt12にて、点火用コンデンサ36の電圧を測定して検査電圧VF0、VF1と比較する(ステップS10m〜S10o)。そして、比較結果に応じた処理(本例ではステップS10p〜S10r)を行う。
【0223】
以上により、本実施の形態では、マスタ局2は、主電源23より出力される電圧にて、一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始した後、この充電が完了する前に、当該主電源23より出力される電圧にて、当該一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電と並行して他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始する(図5に示すステップS2a〜S2c、及び図6参照)。
【0224】
これにより、点火用コンデンサ36の充電を、情報通信システム4(即ち、乗員保護装置1)に流れる電流を大きくすることなく、且つ迅速に行うことができる。具体的には、全ての点火用コンデンサ36の充電を同時に開始する場合よりも情報通信システム4に流れる電流を小さくし、一の点火用コンデンサ36の充電が終了してから他の点火用コンデンサ36の充電を開始する場合よりも早く充電を完了することができる(図6〜図10参照)。
【0225】
また、情報通信システム4に流れる電流が大きくならないことにより、情報通信システム4からの放熱量も小さくなるので、情報通信システム4を熱耐性及び電流容量の小さい部品で構築することができる。
【0226】
具体的には、マスタ局2と各スレーブ局30とを接続する回線10を安価な細線で構成することができる。これにより、情報通信システム4が搭載された車両の重量を低減することができるので、車両燃費を向上することができる。
【0227】
また、マスタ局2の回路(特に、主電源23からの電圧をスレーブ局30に供給する回路、即ち電力供給制御部24)及びスレーブ局30の回路(特に、マスタ局2からの電圧をスレーブ局30の各構成要素に供給する回路、即ち制御用コンデンサ制御部31p)を熱耐性及び電流容量の小さい半導体で構成することができる。これにより、マスタ局2及びスレーブ局30を安価に製造することができる。
【0228】
また、マスタ局2は、一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36に流れる電流が低下し、主電源23から流すことができる電流に余裕ができた際に、当該余裕分の電流にて他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始することができる。したがって、一つの主電源23で複数の点火用コンデンサ36を充電するので、スレーブ局充電用の電源の数を少なくすることができる。
【0229】
また、他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電が開始されるタイミングは、一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36及び充電用抵抗35bにより定まる時定数τに基づいて設定される。
【0230】
これにより、一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36がある程度充電されてから他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始し、且つ情報通信システム4に流れる電流を小さく抑えることができる。
【0231】
特に、マスタ局2は、一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電が開始されてから当該時定数τに対応する時間が経過した際に、他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始する。
【0232】
これにより、一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36を6割程度充電した際に他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始することができる。
【0233】
さらに、一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36に流れる電流が当該点火用コンデンサ36に流れる最大電流の4割程度まで落ちた際に、他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始することができる(図6参照)。言い換えれば、他のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36の充電を開始した際には、一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36に流れる電流を、当該一のスレーブ局30が有する点火用コンデンサ36に流れる最大電流の4割程度に抑えることができる。
【0234】
また、点火用コンデンサ36は、エアバッグ5aまたはシートベルト5bを起爆(作動)するために用いられる電力を蓄える。したがって、当該点火用コンデンサ36の充電を、情報通信システム4に流れる電流を大きくすることなく、且つ迅速に行うことができる。
【0235】
また、点火用コンデンサ36の初期診断時では、全てのスレーブ局30が一斉に点火用コンデンサ36の電圧を測定するので、マスタ局2は、短時間で点火用コンデンサ36の電圧データを取得することができる(図11に示すステップS3a〜S3e、及び図13〜図14参照)。
【0236】
これにより、マスタ局2は、短時間で点火用コンデンサ36の初期診断を行うことができる。さらには、点火用コンデンサ36の充電開始から初期診断終了までの時間を短縮することができる。
【0237】
また、初期診断終了時も、各スレーブ局30は点火用コンデンサ36の常時診断を独自に行うので、マスタ局2は、いつでも点火用コンデンサ36の異常を発見することができる(図19に示すステップS10a〜S10u参照)。
【0238】
なお、本実施の形態では、情報通信システム4をエアバッグ5a等の乗員保護部を備えた乗員保護装置1に適用することとしたが、他の装置に適用することができるのは勿論である(後述する第二の実施の形態でも同様)。
【0239】
(第二の実施の形態)
次に、本発明の第二の実施の形態を図に基づいて説明する。まず、本第二の実施の形態に係る乗員保護装置1aの構成について、図1、図2及び図23に基づいて説明する。
【0240】
乗員保護装置1aと乗員保護装置1の相異点は、図23に示すように、点火用コンデンサ処理部35の内部構造のみである。そこで、当該相異点のみ説明し、第一の実施の形態と同一の構成要素については、同一の符号を付ける。
【0241】
図23に示すように、点火用コンデンサ処理部35は、充電用抵抗部39と、ダイオード35c、35dと、放電用抵抗35eと、放電用スイッチ35fと、点火用コンデンサ制御部35gと、点火用コンデンサ初期診断部35h、及び点火用コンデンサ常時診断部35iを備える。
【0242】
充電用抵抗部39は、充電用スイッチ35a、35j、及び充電用抵抗(抵抗)35b、35gを備える。
【0243】
充電用スイッチ35jは、図2に示す回線31h、31iと充電用抵抗35mを接続し、充電用抵抗35mはダイオード35cに接続される。したがって、充電用抵抗部39は、マスタ局2と点火用コンデンサ36を接続する。なお、充電用抵抗35mの抵抗値R2は、充電用抵抗35bの抵抗値R0よりも大きい。
【0244】
点火用コンデンサ制御部35gは、上述した機能の他、イニシャル時に、充電用スイッチ35a及び充電用スイッチ35jを所定のタイミングで開閉する機能を有する。
【0245】
次いで、乗員保護装置1aによる処理の手順について説明する。ここで、乗員保護装置1aによる処理は、点火用コンデンサ36の充電時に各スレーブ局30が行う処理のみが第一の実施の形態と異なる。そこで、当該相異点のみ説明する。
【0246】
即ち、第kスレーブ局30kは、マスタ局2から第kのバスクローズ用制御信号20kを受信した後、以下の処理を行う。
【0247】
図2に示すコマンド解読部34は、当該受信された第kのバスクローズ用制御信号20kを解読して、アドレスデータ、点火用コンデンサ36を充電して欲しい旨の命令データ及びバススイッチ31sを閉じて欲しい旨の命令データを取得する。
【0248】
次いで、当該アドレスデータがメモリに保存されているアドレスデータと等しいことを確認し、点火用コンデンサ36を充電して欲しい旨の第1の信号及びバススイッチ31sを閉じて欲しい旨の第2の信号を生成する。
【0249】
次いで、第1の信号を図23に示す点火用コンデンサ制御部35gに出力すると共に、第2の信号をスイッチ制御部32に出力する。
【0250】
次いで、点火用コンデンサ制御部35gは、第1の信号を与えられた際に充電用スイッチ35jを閉じ、スイッチ制御部32は、第2の信号を与えられた際にバススイッチ31sを閉じる。
【0251】
次いで、マスタ局2は、上述したように電力信号22を出力するが、この電力信号22は第kの点火用コンデンサ36及び第(k+1)の制御用コンデンサ31qに入力されるので、これら点火用コンデンサ36及び制御用コンデンサ31qの充電が開始される。
【0252】
次いで、点火用コンデンサ制御部35gは、第kの点火用コンデンサ36の充電が開始されてから時定数τ経過した際に、充電用スイッチ35aを閉じると共に充電用スイッチ35jを開く。
【0253】
ここで、時定数τは、第一の実施の形態と同様に、充電用抵抗35bの抵抗値及び点火用コンデンサ36の電気容量から算出される。
【0254】
その後、点火用コンデンサ制御部35gは、第kの点火用コンデンサ36の充電が完了するまで、充電用スイッチ35aを閉じた状態に維持する。
【0255】
したがって、充電用抵抗部39は、第kの点火用コンデンサ36の充電が開始されてから時定数τ経過するまでの時間では、他の時間にて設定される抵抗値R0よりも高い抵抗値R2に設定される。
【0256】
ここで、電力信号22の電圧、充電用抵抗35b、35mの抵抗値及び点火用コンデンサ36の電気容量をある値に設定して上述した処理を行った場合に、第kの点火用コンデンサ36に流れる電流が変化する様子を図24に示す。
【0257】
図24中、直線110は、上述した処理を行った場合に第kの点火用コンデンサ36に流れる電流が変化する様子を示す。
【0258】
一方、直線111は、充電用抵抗部39の抵抗値を第kの点火用コンデンサ36の充電開始時からR0に設定し続けた場合に、第kの点火用コンデンサ36に流れる電流が変化する様子を示す。
【0259】
図24に示すように、第kの点火用コンデンサ36の充電が開始されてから時定数τ経過するまでの時間では、本処理の場合の方が充電用抵抗部39の抵抗値をR0に設定し続けた場合に比べて、点火用コンデンサ36に流れる電流が小さい。
【0260】
本処理の場合、当該時間では、充電用抵抗部39の抵抗値を高い抵抗値R2に設定するからである。
【0261】
同様に、第kの点火用コンデンサ36の電圧が変化する様子を図25に示す。図25中、直線120は、上述した処理を行った場合に第kの点火用コンデンサ36の電圧が変化する様子を示す。一方、直線121は、充電用抵抗部39の抵抗値を第kの点火用コンデンサ36の充電開始時からR0に設定し続けた場合に、第kの点火用コンデンサ36の電圧が変化する様子を示す。
【0262】
図25に示すように、点火用コンデンサ36の充電が完了するまでの時間は、充電用スイッチ35aのみを閉じ続けた場合とほぼ等しくなる。
【0263】
本処理では、第kの点火用コンデンサ36の充電が開始されてから時定数τ経過した後は、充電用抵抗部39の抵抗値をR0に設定するので、点火用コンデンサ36の充電速度を上げることができるからである。
【0264】
以上により、本第二の実施の形態では、第一の実施の形態と同様の効果を得ることができるほか、以下の効果を得ることができる。
【0265】
即ち、マスタ局2と点火用コンデンサ36とを接続する充電用抵抗部39の抵抗値を変更する。これにより、抵抗値を高くすることで、点火用コンデンサ36に流れる電流を小さくすることができる。
【0266】
具体的には、充電用抵抗部39の抵抗値を、点火用コンデンサ36の充電が開始されてから当該充電が完了する前までの時間では、他の時間にて設定される抵抗値よりも高く設定する(図24参照)。
【0267】
これにより、点火用コンデンサ36の充電開始時に点火用コンデンサ36及び情報通信システム4の他の構成要素に流れる突入電流を小さく抑えることができる。
【0268】
したがって、この点でも、情報通信システム4を熱耐性及び電流容量の小さい部品で構築することができる。
【0269】
また、充電用抵抗部39の抵抗値が変更されるタイミングは、点火用コンデンサ36及び充電用抵抗35bにより定まる時定数τに基づいて設定される(図24参照)。
【0270】
これにより、点火用コンデンサ36の充電完了までの時間が長くなることを防止することができると共に、突入電流を小さく抑えることができる(図25参照)。
【0271】
【発明の効果】
請求項1記載の発明では、マスタ局は、主電源より出力される電圧にて一のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始した後、この充電が完了する前に、当該主電源より出力される電圧にて当該一のスレーブ局が有するコンデンサの充電と並行して他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始する。
【0272】
したがって、コンデンサの充電を、情報通信システムに流れる電流を大きくすることなく、且つ迅速に行うことができる。
【0273】
また、情報通信システムに流れる電流が大きくならないことにより、当該情報通信システムからの放熱量も小さくなるので、情報通信システムを熱耐性及び電流容量の小さい部品で構築することができる。
【0274】
具体的には、マスタ局と各スレーブ局とを接続する回線を安価な細線で構成することができる。これにより、例えば当該情報通信システムを車両の通信システムとして使用する場合、当該車両の重量を低減することができるので、車両燃費を向上することができる。
【0275】
また、マスタ局の回路(特に、主電源からの電圧をスレーブ局に供給する回路)及びスレーブ局の回路(特に、マスタ局からの電圧をスレーブ局の各構成要素に供給する回路)を熱耐性及び電流容量の小さい半導体で構成することができる。これにより、マスタ局及びスレーブ局を安価に製造することができる。
【0276】
また、マスタ局は、一のスレーブ局が有するコンデンサに流れる電流が低下し、主電源から流すことができる電流に余裕ができた際に、当該余裕分の電流にて他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始することができる。したがって、一つの主電源で複数のコンデンサを充電するので、スレーブ局充電用の電源の数を少なくすることができる。
【0277】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明と同様の効果を得ることができる他、他のスレーブ局が有するコンデンサの充電が開始されるタイミングは、一のスレーブ局が有するコンデンサ及び抵抗により定まる時定数に基づいて設定される。
【0278】
これにより、一のスレーブ局が有するコンデンサがある程度充電されてから他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始し、且つ情報通信システムに流れる電流を小さく抑えることができる。
【0279】
請求項3記載の発明では、請求項2記載の発明と同様の効果を得ることができる他、電力供給制御手段は、一のスレーブ局が有するコンデンサの充電が開始されてから当該時定数に対応する時間が経過した際に、他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始する。
【0280】
これにより、一のスレーブ局が有するコンデンサを6割程度充電した際に他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始することができる。
【0281】
さらに、一のスレーブ局が有するコンデンサに流れる電流が当該コンデンサに流れる最大電流の4割程度まで落ちた際に、他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始することができる。言い換えれば、他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始した際には、一のスレーブ局が有するコンデンサに流れる電流を、当該一のスレーブ局が有するコンデンサに流れる最大電流の4割程度に抑えることができる。
【0282】
請求項4記載の発明では、請求項2または3記載の発明と同様の効果を得ることができる他、マスタ局とコンデンサとを接続する抵抗の抵抗値は可変となっているので、抵抗値を高くすることで、コンデンサに流れる電流を小さくすることができる。
【0283】
請求項5記載の発明では、請求項4記載の発明と同様の効果を得ることができる他、当該抵抗は、コンデンサの充電が開始されてから当該充電が完了する前までの時間では、他の時間にて設定される抵抗値よりも高い抵抗値に設定される。
【0284】
これにより、コンデンサの充電開始時にコンデンサ及び情報通信システムの他の構成要素に流れる突入電流を小さく抑えることができる。したがって、この点でも、情報通信システムを熱耐性及び電流容量の小さい部品で構築することができる。
【0285】
請求項6記載の発明では、請求項5と同様の効果を得ることができる他、当該抵抗の抵抗値が変更されるタイミングは、コンデンサ及び抵抗により定まる時定数に基づいて設定される。
【0286】
これにより、コンデンサの充電完了までの時間が長くなることを防止することができると共に、突入電流を小さく抑えることができる。
【0287】
請求項7記載の発明では、乗員保護装置は、乗員保護手段及びセンサのうち少なくとも一方に接続されたスレーブ局を備えている。
【0288】
したがって、コンデンサの充電を、乗員保護装置に流れる電流を大きくすることなく、且つ迅速に行うことができる。
【0289】
また、乗員保護装置に流れる電流が大きくならないことにより、当該乗員保護装置からの放熱量も小さくなるので、乗員保護装置を熱耐性及び電流容量の小さい部品で構築することができる。
【0290】
具体的には、マスタ局と各スレーブ局とを接続する回線を安価な細線で構成することができる。これにより、当該乗員保護装置が搭載される車両の重量を低減することができるので、車両燃費を向上することができる。
【0291】
また、マスタ局の回路(特に、電力をスレーブ局に供給する回路)及びスレーブ局の回路(特に、マスタ局からの電力をスレーブ局の各構成要素に供給する回路)を熱耐性及び電流容量の小さい半導体で構成することができる。これにより、マスタ局及びスレーブ局を安価に製造することができる。
【0292】
請求項8記載の発明では、請求項7記載の発明と同様の効果を得ることができる他、コンデンサは、スクイブを起爆させるために用いられる電力を蓄える。
【0293】
したがって、当該コンデンサの充電を、乗員保護装置に流れる電流を大きくすることなく、且つ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】乗員保護装置の構成を示したブロック図である。
【図2】スレーブ局の構成を示したブロック図である。
【図3】点火用コンデンサ処理部の構成を示したブロック図である。
【図4】乗員保護装置による処理の手順を示したフローチャートである。
【図5】乗員保護装置による処理の手順を示したフローチャートである。
【図6】マスタ局及び点火用コンデンサに流れる電流の変化の様子を示したグラフである。
【図7】時刻とマスタ局及び点火用コンデンサに流れる電流との関係を示した対応データである。
【図8】マスタ局及び点火用コンデンサに流れる電流の変化の様子を示したグラフである。
【図9】マスタ局及び点火用コンデンサに流れる電流の変化の様子を示したグラフである。
【図10】マスタ局及び点火用コンデンサに流れる電流の変化の様子を示したグラフである。
【図11】乗員保護装置による処理の手順を示したフローチャートである。
【図12】マスタ局から出力される命令の内容とスレーブ局の動作との関係を示した対応データである。
【図13】点火用コンデンサの電圧変化の様子を示したグラフである。
【図14】点火用コンデンサの電圧変化の様子を示したグラフである。
【図15】点火用コンデンサの電圧変化の様子を示したグラフである。
【図16】点火用コンデンサの電圧変化の様子を示したグラフである。
【図17】マスタ局から出力される命令の内容と各種パラメータとの関係を示した対応データである。
【図18】乗員保護装置による処理の手順を示したフローチャートである。
【図19】乗員保護装置による処理の手順を示したフローチャートである。
【図20】A回線等の電圧変化を示したタイムチャートである。
(a) A回線の電圧変化を示したタイムチャートである。
(b) 点火用コンデンサの電圧変化を示したタイムチャートである。
【図21】点火用コンデンサの電圧変化を示したタイムチャートである。
【図22】A回線等の電圧変化を示したタイムチャートである。
(a) A回線の電圧変化を示したタイムチャートである。
(b) 第1スレーブ局の電圧変化を示したタイムチャートである。
(c) 第2スレーブ局の電圧変化を示したタイムチャートである。
(d) 第3スレーブ局の電圧変化を示したタイムチャートである。
(e) 第4スレーブ局の電圧変化を示したタイムチャートである。
【図23】点火用コンデンサ処理部の構成を示したブロック図である。
【図24】点火用コンデンサに流れる電流の変化の様子を示したグラフである。
【図25】点火用コンデンサの電圧変化の様子を示したグラフである。
【符号の説明】
1、1a 乗員保護装置
2 マスタ局
4 情報通信システム
5a エアバッグ(乗員保護手段、スクイブ)
5b シートベルト(乗員保護手段)
6 衝突センサ
20 制御信号
20k バスクローズ用制御信号
21 データ信号
22 電力信号
23 主電源
24 電力供給制御部(電力供給制御手段)
30 スレーブ局
35b、35m 充電用抵抗(抵抗)
35g 点火用コンデンサ制御部
35h 点火用コンデンサ初期診断部
35i 点火用コンデンサ常時診断部
36 点火用コンデンサ(コンデンサ)
39 充電用抵抗部
τ 時定数
Claims (8)
- 駆動電力充電用のコンデンサを備えた複数のスレーブ局と、前記各スレーブ局との間で信号の送受信を行うと共に、各スレーブ局に電力を供給する機能を有するマスタ局と、を備えた情報通信システムにおいて、
前記マスタ局は、
所定の電圧を出力する主電源と、
前記主電源より出力される電圧を前記各スレーブ局へ順繰りに供給して前記コンデンサを充電すると共に、前記主電源より出力される電圧にて、一のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始した後、この充電が完了する前に、当該主電源より出力される電圧にて、当該一のスレーブ局が有するコンデンサの充電と並行して他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始する電力供給制御手段と、を備えることを特徴とする情報通信システム。 - 請求項1記載の情報通信システムにおいて、
前記スレーブ局は、前記コンデンサと前記マスタ局とを接続する抵抗を備え、前記他のスレーブ局が有するコンデンサの充電が開始されるタイミングは、前記一のスレーブ局が有するコンデンサ及び抵抗により定まる時定数に基づいて設定されることを特徴とする情報通信システム。 - 請求項2記載の情報通信システムにおいて、
前記電力供給制御手段は、前記一のスレーブ局が有するコンデンサの充電が開始されてから前記時定数に対応する時間が経過した際に、前記他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始することを特徴とする情報通信システム。 - 請求項2または3記載の情報通信システムにおいて、
前記抵抗の抵抗値は可変となっていることを特徴とする情報通信システム。 - 請求項4記載の情報通信システムにおいて、
前記抵抗は、この抵抗が接続されるコンデンサの充電が開始されてから当該充電が完了する前までの時間では、他の時間にて設定される抵抗値よりも高い抵抗値に設定されることを特徴とする情報通信システム。 - 請求項5記載の情報通信システムにおいて、
前記抵抗値が変更されるタイミングは、前記コンデンサ及び抵抗により定まる時定数に基づいて設定されることを特徴とする情報通信システム。 - 車両に搭載され、複数のスレーブ局と、前記各スレーブ局との間で信号の送受信を行うマスタ局と、を備えた乗員保護装置において、
前記スレーブ局は、センサまたは乗員保護手段のうち少なくとも一方と接続され、
前記乗員保護手段に接続されるスレーブ局は、当該乗員保護手段に供給される電力を蓄えるコンデンサを備え、
前記マスタ局は、
所定の電圧を出力する主電源と、
前記主電源より出力される電圧を前記各スレーブ局へ順繰りに供給して前記コンデンサを充電すると共に、前記主電源より出力される電圧にて、一のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始した後、この充電が完了する前に、当該主電源より出力される電圧にて、当該一のスレーブ局が有するコンデンサの充電と並行して他のスレーブ局が有するコンデンサの充電を開始する電力供給制御手段と、を備えることを特徴とする情報通信システム。 - 請求項7記載の乗員保護装置において、
前記乗員保護手段はスクイブであり、
前記コンデンサは、当該スクイブを起爆するために用いられる電力を蓄えることを特徴とする乗員保護装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003023978A JP2004231110A (ja) | 2003-01-31 | 2003-01-31 | 情報通信システム及びこれを用いた乗員保護装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003023978A JP2004231110A (ja) | 2003-01-31 | 2003-01-31 | 情報通信システム及びこれを用いた乗員保護装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2004231110A true JP2004231110A (ja) | 2004-08-19 |
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ID=32952634
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP (1) | JP2004231110A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7352556B2 (en) | 2004-02-04 | 2008-04-01 | Honda Motor Co., Ltd. | Charging method for squib |
-
2003
- 2003-01-31 JP JP2003023978A patent/JP2004231110A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US7352556B2 (en) | 2004-02-04 | 2008-04-01 | Honda Motor Co., Ltd. | Charging method for squib |
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