JP2004230875A - 印刷版材料及び印刷版 - Google Patents

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Masanori Miyoshi
正紀 三好
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Abstract

【課題】アルカリ現像処理が無いプロセスレスプレートであるのにもかかわらず、印刷適性、特に刷り出し性や耐刷性が優れた印刷版材料および印刷版を提供する。
【解決手段】支持体上に、親水性層、画像形成層をこの順に積層した印刷版材料において、親水性層が微粒子多孔質層であり、該微粒子多孔質層の孔の孔径分布曲線におけるピーク孔径が0.005μm以上1μm以下であることを特徴とする印刷版材料。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は印刷版材料及び印刷版に関するものであり、詳しくは、アルカリ現像処理が無いプロセスレスプレートであるのにもかかわらず、印刷適性、特に刷り出し性や耐刷性が優れた印刷版材料および印刷版に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
印刷版は一般に、親水性非画像部と親油性画像部から構成されている。そのなかでPS版として知られているものは、支持体の金属板(アルミニウム板や亜鉛板)の表面を研磨あるいは陽極酸化して親水性を付与して、これを親水性非画像部とし、これに感光性樹脂を露光、アルカリ現像処理して親油性画像部を形成することにより、製造されている。
【0003】
一方で、印刷データのデジタル化に伴い安価で取り扱いが容易でPS版と同等の印刷適性を有したCTP(コンピュウター トウー プレート)が求められている。特に近年、特別な薬剤による現像処理が不要であって、ダイレクトイメージング(DI)機能を備えた印刷機にも適用可能な、いわゆるプロセスレスプレートへの期待が高まっている。
【0004】
プロセスレスプレートについてもPS版と同様にアルミ砂目を用いる方法、またアルミ砂目上に塗布形成された親水性層により印刷適性を向上させた方式等が考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
PS版のアルミ砂目は長年にわたる種々の検討から今日の優れた性能がえられており、砂目のサブミクロンレベルから数十ミクロンにわたる多重粗さ構造が、印刷の水−インクバランスのラチチュードを広げ、且つ画像層を印刷時の摩耗から保護して耐刷性を向上させている。
【0006】
これに対してプロセスレスプレートはPS版の様にアルカリ現像処理を施さないため、砂目自身の親水性の効力を最大限に発揮できないという問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特許第2938397号明細書
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、アルカリ現像処理が無いプロセスレスプレートであるのにもかかわらず上記欠点を解消し、印刷適性、特に刷り出し性や耐刷性が優れた印刷版材料および印刷版を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
【0010】
1.支持体上に、親水性層、画像形成層をこの順に積層した印刷版材料において、親水性層が微粒子多孔質層であり、該微粒子多孔質層の孔の孔径分布曲線におけるピーク孔径が0.005μm以上1μm以下であることを特徴とする印刷版材料。
【0011】
2.支持体が、粗面化処理および陽極酸化処理を施され、大きなうねりに小ピットが重畳された二重構造の粗面形状を有し、かつ小ピットの平均開孔径d(μm)が0.1μm以上3μm以下で、小ピットの平均深さh(μm)と平均開孔径d(μm)の比h/dが0.005以上0.4以下であるアルミニウム支持体であることを特徴とする前記1記載の印刷版材料。
【0012】
3.前記アルミニウム支持体の大きなうねりの平均開孔径d(μm)が3μm以上20μm以下であることを特徴とする前記2記載の印刷版材料。
【0013】
4.陽極酸化処理を行なったアルミニウム支持体をさらにアルカリ金属ケイ酸塩で処理することを特徴とする前記2または3記載の印刷版材料。
【0014】
5.親水性層である微粒子多孔質層がシリカ層であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載の印刷版材料。
【0015】
6.前記シリカ層のシリカ粒径が0.005μm以上1μm以下であることを特徴とする前記5記載の印刷版材料。
【0016】
7.画像形成層が、熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含むことを特徴とする前記1〜6のいずれか1項記載の印刷版材料。
【0017】
8.熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子が脂肪酸アミドを含むことを特徴とする前記1〜7のいずれか1項記載の印刷版材料。
【0018】
9.支持体上の少なくとも1層に光熱変換剤を含有することを特徴とする前記1〜8のいずれか1項記載の印刷版材料。
【0019】
10.画像形成層のさらに上層に親水性オーバーコート層を有することを特徴とする前記1〜9のいずれか1項記載の印刷版材料。
【0020】
11.前記1〜10のいずれか1項記載の印刷版材料に露光を付与する工程を経て作製されることを特徴とする印刷版。
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者は上記の問題点をを種々検討した結果、支持体上に特定の親水性層を設けることにより上記欠点を解決できることを見いだし本発明を完成した。
【0022】
即ち、本発明の印刷版材料は、支持体上に、親水性層、画像形成層をこの順に積層した印刷版材料において、該親水性層が微粒子多孔質層であり、該微粒子多孔質層の孔の孔径分布曲線におけるピーク孔径が0.005μm以上1μm以下であることを特徴とする。
【0023】
本発明の親水性層である微粒子多孔質層について説明する。
本発明でいう親水性層とは、本発明の印刷版材料を印刷版として用いる際に、インクに対する親和性が低く、且つ、水に対する親和性の高い層として定義される。本発明の親水性層である微粒子多孔質層とは層の内部および表面に多数の空隙をもつ層構造を有するものである。この空隙は親水性の観点から多孔質層内部において外部に通ずる、いわゆる貫通孔であるものが特に好ましい。
【0024】
本発明の親水性層である微粒子多孔質層の孔の孔径分布曲線におけるピーク孔径は0.005μm以上1μm以下であり、好ましくは0.01μm以上0.5μm以下、さらに好ましくは0.01μm以上0.1μm以下である。0.005μm未満では画像形成層の熱溶融粒子が溶融時、親水性層の粒子間へ浸透し難くなり耐刷力が劣化することがある。また、1μmを越えると画像形成層の熱溶融粒子が溶融後、親水性層の粒子間で保持され難くなり耐刷力が劣化することがある。
【0025】
本発明の微粒子多孔質層はコロイダルシリカ、水分散性ポリマー、または両者の混合物を特定の範囲で混合したものを、支持体上に塗布、乾燥することによって得ることができる。水分散性ポリマーとしては各種ポリマーの水分散体を用いることができ、具体例としては、アクリル系ポリマー、エステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、オレフィン系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、アミド系ポリマー、およびこれらの変成物、共重合体などの分散物を用いることができる。
【0026】
本発明においては造膜強度、親水性の観点からコロイダルシリカの方が特に好ましく使用できる。コロイダルシリカは、比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、良好な強度を得ることができる。コロイダルシリカとしては、例えば球状のコロイダルシリカが数珠状に連結した長鎖の構造を有するもの、および連結したシリカが枝分かれしたものを用いた場合に表面にうねり構造を有する微粒子多孔質膜を得ることができる。上記コロイダルシリカは球状シリカの一時粒子を2価以上の金属イオンを介在させ粒子−粒子間を結合させたもので、少なくとも3個以上、好ましくは5個以上、更に好ましくは7個以上連結したものをいい、更には数珠状に連結した粒子が分岐したものを包含する。
【0027】
またコロイダルシリカと他の無機粒子、例えばアルミナ、セリア、チタニアなどとの複合或いは混合粒子であっても良く、これらを介在させて連結したものでも良い。介在させる金属イオンとしては2価以上の金属イオンが好ましく、例えばCa2+、ZN2+、Mg2+、Ba2+、Al3+、Ti4+などである。とくにCa2+とした場合には、数珠状に連結及び分岐したコロイダルシリカを作製するのに好適である。
【0028】
数珠状に連結および/または分岐している場合の連結の度合いは、通常は3個以上100個以下、好ましくは5個以上50個以下、より好ましくは7個以上30個以下である。2個以下では孔形成性の点で不十分であり、100個以上では数珠状に連結および/または分岐したシリカ粒子が増粘しやすく水分散性が悪くなる傾向にある。
【0029】
またコロイダルシリカの一時粒子の粒径は、0.005μm以上1μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.005μm以上0.1μm以下、特に好ましくは0.005μm以上0.05μm以下であり、孔形成性の点で好ましい。0.005μm未満ではピーク孔径が0.005μm未満となることがある。また1μmを越えるとピーク孔径が1μmを越えることがある。
【0030】
数珠状に連結および/または分岐したコロイダルシリカを添加することにより、層の多孔性を確保しつつ、強度を維持することが可能となり、親水性層マトリクスの多孔質化材として好ましく使用できる。これらの中でも、アルカリ性である「スノーテックスPS−S」、「スノーテックスPS−M」、「スノーテックスPS−L」を用いると、親水性層の強度が向上し、また、印刷枚数が多い場合でも地汚れの発生が抑制され、特に好ましい。
【0031】
本発明の微粒子多孔質層中に本発明の効果を阻害しない範囲内で公知の添加物、例えば、無機や有機の微粒子、可塑剤、滑剤、界面活性剤、帯電防止剤、架橋材、架橋触媒、耐熱材、耐候剤、などが添加されていても良い。特に帯電防止剤の添加は製造工程で静電気による影響がなくなり、またカットシート状物質を生産する場合の重送を防止する点などで好ましく、架橋剤や架橋触媒の添加は微粒子多孔質層の塗膜強度、耐水性、対薬品性、耐熱性が改良されるので更に好ましい。本発明の親水性層である微粒子多孔質層に添加できる代表的な素材を下記に示す。
【0032】
(多孔質シリカ粒子、多孔質アルミノシリケート粒子)
多孔質シリカ粒子は、一般に湿式法または、乾式法により製造される。湿式法では、ケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、もしくは中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では、四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により、多孔性や粒径を制御することが可能である。多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。
【0033】
多孔質アルミノシリケート粒子は、例えば、特開平10−71764号に記載されている方法により製造することができる。即ち、アルミニウムアルコキシドと珪素アルコキシドを主成分として加水分解法により合成された非晶質な複合体粒子である。粒子中のアルミナとシリカの比率は1:4〜4:1の範囲で合成することが可能である。また、製造時にその他の金属のアルコキシドを添加して3成分以上の複合体粒子として製造したものも本発明に使用できる。これらの複合体粒子も製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0034】
粒子の多孔性としては、細孔容積で0.5ml/g以上であることが好ましく、0.8ml/g以上であることがより好ましく、1.0〜2.5ml/gであることが更に好ましい。
【0035】
(ゼオライト粒子)
ゼオライトは、結晶性のアルミノケイ酸塩であり、細孔径が0.3nm〜1nmの規則正しい三次元網目構造の空隙を有する多孔質体である。天然及び合成ゼオライトを合わせた一般式は、次のように表される。
【0036】
(M1、(M2)0.5(AlSi(m+n)・xH
ここで、M1、M2は交換性のカチオンであって、M1はLi、Na、K、Tl、Me(TMA)、Et(TEA)、Pr(TPA)、C152+、C16等であり、M2はCa2+、Mg2+、Ba2+、Sr2+、C18 2+等である。また、n≧mであり、m/nの値つまりはAl/Si比率は1以下となる。Al/Si比率が高いほど交換性カチオンの量が多く含まれるため極性が高く、従って親水性も高い。好ましいAl/Si比率は0.4〜1.0であり、更に好ましくは0.8〜1.0である。xは整数を表す。
【0037】
本発明で使用するゼオライト粒子としては、Al/Si比率が安定しており、又粒径分布も比較的シャープである合成ゼオライトが好ましく、例えばゼオライトA:Na12(Al12Si1248)・27HO;Al/Si比率1.0、ゼオライトX:Na86(Al86Si106384)・264HO;Al/Si比率0.811、ゼオライトY:Na56(Al56Si136384)・250HO;Al/Si比率0.412等が挙げられる。
【0038】
Al/Si比率が0.4〜1.0である親水性の高い多孔質粒子を含有することで、親水性層自体の親水性も大きく向上し、印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなる。また、指紋跡の汚れも大きく改善される。Al/Si比率が0.4未満では親水性が不充分であり、上記性能の改善効果が小さくなる。
【0039】
また、親水性層を構成する親水性層マトリクス構造は、層状粘土鉱物粒子を含有することができる。該層状粘土鉱物粒子としては、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。特に、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、更に好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する粘土鉱物粒子としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。また、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性であるものが好ましく、自由膨潤であるものが更に好ましい。
【0040】
また、上記の粘土鉱物粒子のインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(シランカップリング処理、有機バインダとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
【0041】
平板状層状粘土鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態で(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)、平均粒径(粒子の最大長)が1μm未満であり、平均アスペクト比が50以上であることが好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。また、粒子物を多く含有する塗布液においては、粘土鉱物粒子の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。粒子径が上記範囲より大きくなると、塗膜に不均一性が生じて、局所的に強度が弱くなる場合がある。また、アスペクト比が上記範囲以下である場合、添加量に対する平板状の粒子数が少なくなり、増粘性が不充分となり、粒子物の沈降を抑制する効果が低減する。
【0042】
粘土鉱物粒子の含有量としては、層全体の0.1質量%〜30質量%であることが好ましく、0.1質量%〜10質量%であることがより好ましい。特に膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは少量の添加でも効果が見られるため好ましい。粘土鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加してもよいが、簡便な調液方法(メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、粘土鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを調製した後、塗布液に添加することが好ましい。
【0043】
親水性層を構成する親水性層マトリクスにはその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO/MO比率はケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
【0044】
また、金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば、「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、又は本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0045】
また、本発明の親水性層は、水溶性樹脂を含有してもよい。水溶性樹脂としては、例えば、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられるが、本発明に用いられる水溶性樹脂としては、多糖類を用いることが好ましい。
【0046】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。これは、親水性層に多糖類を含有させることにより、親水性層の表面形状を好ましい状態に形成する効果が得られるためである。
【0047】
(粒径が1μm以上の無機粒子もしくは無機素材で被覆された粒子)
本発明の親水性層に用いることのできる粒径が1μm以上の無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができるが、塗布液中での沈降を抑制するために、多孔質な金属酸化物粒子を用いることが好ましい。多孔質な金属酸化物粒子としては、前述の多孔質シリカ粒子や多孔質アルミノシリケート粒子を好ましく用いることができる。
【0048】
また、粒径が1μm以上の無機素材で被覆された粒子としては、例えば、ポリメチルメタアクリレートやポリスチレンといった有機粒子を芯材とし、芯材粒子よりも粒径の小さな無機粒子で被覆した粒子が挙げられる。無機粒子の粒径としては、芯材粒子の1/10〜1/100程度であることが好ましい。また、無機粒子としては、同様にシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができる。被覆方法としては、種々の公知の方法を用いることができるが、ハイブリダイザのような空気中で芯材粒子と被覆材粒子とを高速に衝突させて芯材粒子表面に被覆材粒子を食い込ませて固定、被覆する乾式の被覆方法を好ましく用いることができる。
【0049】
また、有機粒子の芯材を金属メッキした粒子も用いることができる。このような粒子としては、例えば、樹脂粒子に金メッキを施した積水化学工業社製の「ミクロパールAU」等が挙げられる。
【0050】
粒径は、1μm〜10μmが好ましく、更に好ましくは、1.5μm〜8μmであり、特に好ましくは、2μm〜6μmである。
【0051】
本発明では、粒径が1μm以上の粒子の添加量としては、親水性層全体の0.1質量%〜50質量%であることが好ましく、0.5質量%〜30質量%であることがより好ましい。親水性層全体としては、有機樹脂やカーボンブラック等の炭素を含有する素材の含有比率が低いことが親水性を向上させるために好ましく、これらの素材の合計が9質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。
【0052】
本発明の親水性層は公知の塗布方法により形成することができる。例えばグラビアコート、バーコート、リバースコート、キスコート、ダイコート、ディップコートなどの任意の方法を用いることができる。塗布の付量は通常0.001g/m以上1g/m以下、好ましくは0.005g/m以上0.5g/m以下、さらに好ましくは0.01g/m以上0.3g/m以下である。
【0053】
以下、画像形成層について説明する。
《熱溶融性及びまたは熱融着性微粒子を含有する画像形成層》
本発明に係る画像形成層としては、熱溶融性微粒子または、熱融着性微粒子を含有する構成が好ましく用いられる。
【0054】
(熱溶融性微粒子)
本発明に係る熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。
【0055】
保存性、インク着肉感度向上の観点から、物性としては、軟化点40℃〜120℃、融点60℃〜150℃であることが好ましく、軟化点40℃〜100℃、融点60℃〜120℃であることが更に好ましい。
【0056】
使用可能な素材としては、例えば、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800〜10000程度のものであり、また乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。
【0057】
更には、軟化点を下げたり作業性を向上させるためにこれらのワックスに、例えば、ステアリン酸アミド、リノレン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、オレイン酸アミド、マレイン酸アミド、メサコン酸アミド、シトラコン酸アミド、マロン酸アミド、アジピン酸アミド、アゼライン酸アミド、セバシン酸アミド、ピメリン酸アミド、シュウ酸アミド、こはく酸アミド、グルタル酸アミド、スベリン酸アミド、ピバル酸アミド、酪酸アミド、プロピオン酸アミド、硬化牛脂肪酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド等の脂肪酸アミド化合物、または、これらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。また、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0058】
中でも、ポリエチレン、マイクロクリスタリン、脂肪酸エステル、脂肪酸、脂肪酸アミド化合物の何れかを含有することが好ましく、特に好ましく用いられるのは、上記の脂肪酸アミド化合物である。
【0059】
これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。また、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0060】
(熱溶融性微粒子の平均粒径)
熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、また、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中及び/または、親水性層表面の微細な凹凸の隙間へ侵入することをなくし、十分な機上現像を実施可能にして地汚れを防止し、且つ、本発明の印刷版材料の解像度を向上する観点から、熱溶融性微粒子の平均粒径は0.01μm〜10μmに調整されることが好ましく、更に好ましくは、0.1μm〜3μmである。
【0061】
また、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は、公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0062】
構成層中での熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1質量%〜90質量%が好ましく、更に好ましくは、5質量%〜80質量%である。
【0063】
(熱融着性微粒子)
本発明に係る熱融着性微粒子としては、熱可塑性微粒子が挙げられ、該熱可塑性微粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は熱可塑性微粒子の分解温度より低いことが好ましい。また、熱可塑性微粒子が高分子から構成される場合は、重量平均分子量(Mw)は10,000〜1,000,000の範囲であることが好ましい。
【0064】
熱可塑性微粒子を構成する高分子の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類等が好ましく用いられる。
【0065】
熱可塑性微粒子の作製方法としては、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の重合法で作製された高分子を用いることができる。
【0066】
溶液重合法または、気相重合法等の重合法により作製された高分子を微粒子化する方法としては、高分子を有機溶媒に溶解して調製した溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、得られた溶液を水または、水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。
【0067】
また、熱可塑性微粒子は、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。また、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を含有させても良い。
【0068】
(熱融着性微粒子の平均粒径)
熱融着性微粒子(熱可塑性微粒子)は水に分散可能であることが好ましく、また、上記の熱溶融性微粒子と同様な理由から、その平均粒径は0.01μm〜10μmの範囲に調整されることが好ましく、更に好ましくは、0.1μm〜3μmである。
【0069】
また、熱融着性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0070】
構成層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全体の1質量%〜90質量%が好ましく、5質量%〜80質量%がさらに好ましい。
【0071】
(水溶性素材)
本発明に係る熱溶融性微粒子及び/または熱融着性微粒子(熱可塑性微粒子)を含有する画像形成層には、更に水溶性素材を含有することが好ましい。水溶性素材を含有することにより、印刷機上で湿し水やインクを用いて未露光部の画像形成層を除去する際に、その除去性が向上する。
【0072】
水溶性素材としては、親水性層に含有可能な素材として挙げた水溶性樹脂を用いることもできるが、本発明の画像形成層としては、糖類を用いることが好ましく、特にオリゴ糖を用いることが好ましい。オリゴ糖は水に速やかに溶解するため、印刷装置上での未露光部の画像形成層の除去も非常に速やかとなり、特別な除去操作を意識することなく、通常のPS版の刷出し操作と同様の操作で刷出すことで除去可能であり、刷出しの損紙が増加することもない。
【0073】
また、オリゴ糖は親水性層の親水性を低下させる懸念もなく、親水性層の良好な印刷適性を維持することができる。オリゴ糖は水に可溶な、一般に甘みを有する結晶性物質で、数個の単糖がグリコシド結合を形成し、脱水縮合したものである。オリゴ糖は糖をアグリコンとする一種のo−グリコシドであるから、酸で容易に加水分解されて単糖を生じ、生成する単糖の分子数によって二糖、三糖、四糖、五糖などに分類される。本発明におけるオリゴ糖とは、二糖〜十糖までのものをいう。
【0074】
これらのオリゴ糖は、還元基の有無によって、還元性オリゴ糖と非還元性オリゴ糖とに大別され、また、単一の単糖から構成されているホモオリゴ糖と、2種類以上の単糖から構成されているヘテロオリゴ糖にも分類される。オリゴ糖は、遊離状または、配糖類として天然に存在し、また、多糖の酸または、酵素による部分加水分解によっても得られる。この他酵素によるグリコシル転移によっても種々のオリゴ糖が生成する。
【0075】
オリゴ糖は通常雰囲気中では水和物として存在することが多い。また、水和物と無水物とでは融点が異なり、下記に具体例を示す。
【0076】
オリゴ糖の種類 水和物(融点℃) 無水物(融点℃)
ラフィノース(三糖) 80℃(5水和物) 118℃
トレハロース(二糖) 97℃(2水和物) 215℃
マルトース(二糖) 103℃(1水和物) 108℃
ガラクトース(二糖) 119℃(1水和物) 167℃
スクロース(二糖) 水和物無し 182℃
本発明では、糖類を含有する層を水溶液で塗布形成することが好ましく、水溶液から形成された場合は、層中に存在するオリゴ糖が水和物を形成するオリゴ糖である場合にはその融点は水和物の融点であると考えられる。上記のように、比較的低融点を有しているため、熱溶融性微粒子が溶融する温度範囲や熱融着性微粒子が融着する温度範囲でオリゴ糖も溶融するので、熱溶融性微粒子の多孔質親水性層への溶融浸透や熱融着性微粒子の融着といった画像形成上必要な作用を妨げることがなく好ましい。
【0077】
オリゴ糖の中でもトレハロースは、比較的純度の高い状態のものが工業的に安価に入手可能可能であり、水への溶解度が高いにもかかわらず、吸湿性は非常に低く、機上現像性及び保存性共に非常に良好である。
【0078】
また、オリゴ糖水和物を熱溶融させて水和水を除去した後に凝固させると(凝固後短時間のうちは)無水物の結晶となるが、トレハロースは水和物よりも無水物の融点が100℃以上も高いことが特徴的である。これは赤外線露光で熱溶融し、再凝固した直後は露光済部は高融点で溶融しにくい状態となることを意味し、バンディング等の露光時の画像欠陥を起こしにくくする効果がある。本発明の目的を達成するには、オリゴ糖の中でも特にトレハロースが好ましい。
【0079】
構成層中のオリゴ糖の含有量としては、層全体の1質量%〜90質量%が好ましく、10質量%〜80質量%がさらに好ましい。
【0080】
以下、画像形成について説明する。
《画像形成》
本発明の印刷版材料の一態様においては、画像形成は、熱により行うことができるが、特に赤外線レーザによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
【0081】
本発明に関する露光に関し、より具体的には、赤外及び/または近赤外領域で発光する、すなわち700nm〜1500nmの波長範囲で発光するレーザを使用した走査露光が好ましい。レーザとしてはガスレーザを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザを使用することが特に好ましい。
【0082】
走査露光に好適な装置としては、半導体レーザを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0083】
一般的には、
(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザビームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザビームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザビームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式が挙げられる。
【0084】
本発明に関しては、特に(3)項記載の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)項記載の露光方式が用いられる。
【0085】
以下、光熱変換素剤について説明する。
《光熱変換素材》
請求項7に記載のような、本発明の印刷版材料の一態様においては、支持体上の少なくとも1層、例えば、本発明に係る親水性層、下層及びその他に設けられる層が光熱変換素材を含有することが好ましい。
【0086】
光熱変換素材としては下記のような素材を添加することができる。
(赤外吸収色素)
一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、同64−33547号、特開平1−160683号、同1−280750号、同1−293342号、同2−2074号、同3−26593号、同3−30991号、同3−34891号、同3−36093号、同3−36094号、同3−36095号、同3−42281号、同3−97589号、同3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
(顔料)
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。カーボンとしては、特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0088】
(グラファイト)
グラファイトとしては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0089】
(金属)
金属としては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0090】
(金属酸化物)
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。前者としては、黒色酸化鉄(Fe)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。後者としては、例えば、SbをドープしたSnO(ATO)、Snを添加したIn(ITO)、TiO、TiOを還元したTiO(酸化チタン、一般的にはチタンブラック)などが挙げられる。また、これらの金属酸化物で芯材(BaSO、TiO、9Al・2BO、KO・nTiO等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は、0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0091】
これらの光熱変換素材のうち、二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物がより好ましい素材として挙げられ、具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは、特開平8−27393号、同9−25126号、同9−237570号、同9−241529号、同10−231441号等に開示されている方法により製造することができる。
【0092】
本発明に用いる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり、光熱変換効率が良好である。
【0093】
これらの複合金属酸化物は、平均一次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均一次粒子径が0.01μm〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均一次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均一次粒子径が0.01μm〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。ただし、添加量に対する光熱変換能は、粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。したがって、これらの複合金属酸化物粒子は、層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均一次粒子径が0.01未満となると分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01質量%〜5質量%が好ましく、0.1質量%〜2質量%がより好ましい。
【0094】
これらの複合金属酸化物の添加量としては、親水性層や下層に対して0.1質量%〜50質量%の範囲が好ましく、更に好ましくは、1質量%〜30質量%であり、特に好ましくは、3質量%〜25質量%である。
【0095】
以下、親水性オーバーコート層について説明する。
《親水性オーバーコート層》
本発明において、画像形成層の上層に親水性オーバーコート層を有することが好ましい。親水性オーバーコート層は画像形成機能層のすぐ上の層であってもよいし、また画像形成層と親水性オーバーコート層の間に中間層が設けられてもよい。親水性オーバーコート層は印刷機上で除去可能であることが好ましい。
【0096】
本発明において親水性オーバーコート層は、水溶性樹脂又は水溶性樹脂を部分的に架橋した水膨潤性樹脂を含有することが好ましい。
【0097】
かかる水溶性樹脂は、水溶性の天然高分子及び合成高分子から選ばれ、架橋剤とともに用い、塗布乾燥された皮膜がフィルム形成能を有するものである。本発明に好ましく用いられる水溶性樹脂の具体例としては、天然高分子では、アラビアガム、水溶性大豆多糖類、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルローズ等)、その変性体、ホワイトデキストリン、プルラン、酵素分解エーテル化デキストリン等、合成高分子では、ポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニルの加水分解率65%以上のもの)、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリアクリル酸共重合体、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリアクリルアミド、その共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、その共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸共重合体、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、等を挙げることができる。また、目的に応じて、これらの樹脂を二種以上混合して用いることもできる。しかし、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0098】
水溶性樹脂の少なくとも1種以上を部分架橋し、親水性オーバーコート層を形成する場合、架橋は、水溶性樹脂の有する反応性官能基を用いて架橋反応することにより行われる。架橋反応は、共有結合性の架橋であっても、イオン結合性の架橋であってもよい。
【0099】
架橋により、親水性オーバーコート層表面の粘着性が低下して取り扱い性がよくなるが、架橋が進み過ぎると親水性オーバーコート層が親油性に変化して、印刷機上における親水性オーバーコート層の除去が困難になるので、適度な部分架橋が好ましい。好ましい部分架橋の程度は、25℃の水中に印刷用原板を浸したときに、30秒〜10分間では親水性オーバーコート層が溶出せず残存しているが、10分以上では溶出が認められる程度である。
【0100】
架橋反応に用いられる化合物(架橋剤)としては、架橋性を有する公知の多官能性化合物が挙げられ、ポリエポキシ化合物、ポリアミン化合物、ポリイソシアネート化合物、シラン化合物、チタネート化合物、アルデヒド化合物、多価金属塩化合物、ヒドラジンなどが挙げられる。該架橋反応は公知の触媒を添加し、反応を促進することもできる。具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0101】
ポリエポキシ化合物の具体例としては、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノール類もしくはそれらの水素添加物とエピハロヒドリンとのポリ縮合物、などが挙げられる。
【0102】
ポリアミン化合物の具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミン、などが挙げられる。
【0103】
ポリイソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、液状ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、などの芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート、またポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物、などが挙げられる。
【0104】
シラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、などが挙げられる。
【0105】
チタネート化合物としては、テトラエチルオルトシリケート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリアクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピル(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、イソプロピルトリインステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリジシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2ージアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、などが挙げられる。
【0106】
アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、などが挙げられる。
【0107】
多価金属塩化合物としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、コバルト、マンガン、ニッケル等の金属の水溶性塩が挙げられる。
【0108】
これらの架橋剤は単独または2種以上を混合して使用することが可能である。これらの架橋剤のうち特に好ましい架橋剤は、水溶性の架橋剤であるが、非水溶性のものは分散剤によって水に分散して使用することができる。
【0109】
特に好ましい水溶性樹脂と架橋剤の組み合わせとしては、カルボン酸含有水溶性樹脂/多価金属化合物、カルボン酸含有水溶性樹脂/水溶性エポキシ樹脂、水酸基含有樹脂/ジアルデヒド類が挙げられる。
【0110】
架橋剤の好適な添加量は、水溶性樹脂の2〜10質量%である。この範囲内で印刷機上での親水性オーバーコート層の除去性を損なうことなく、良好な耐水性が得られる。
【0111】
本発明においては、親水性オーバーコート層は、後述する光熱変換素材を含有することが好ましい。
【0112】
その他、親水性オーバーコート層には塗布の均一性を確保する目的で、水溶液塗布の場合には主に非イオン系界面活性剤を添加することができる。この様な非イオン系界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等を挙げることができる。上記非イオン系界面活性剤のオーバーコート層の全固形物中に占める割合は、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは1〜3質量%である。
【0113】
本発明において、親水性オーバーコート層の乾燥塗布量は、0.1〜0.4g/m2が好ましく、更に好ましい範囲は0.15〜0.25g/mである。この範囲内で、印刷機上での親水性オーバーコート層の除去性を損なうことなく、良好な汚れ防止、傷付き防止、指紋跡付着防止およびアブレーションカスの発生低減ができる。
【0114】
以下、本発明に係る支持体について説明する。
《支持体》
支持体(基材、基板などともいう)としては、印刷版の基板として使用される公知の材料を使用することができる。例えば、金属板、プラスチックフィルム、ポリオレフィン等で処理された紙、上記材料を適宜貼り合わせた複合基材等が挙げられる。基材の厚さとしては、印刷機に取り付け可能であれば特に制限されるものではないが、50μm〜500μmのものが一般的に取り扱いやすい。
【0115】
本発明では金属板が好ましく、鉄、ステンレス、アルミニウム等が挙げられるが、比重と剛性との関係から特にアルミニウムが好ましい。本発明に用いられるアルミニウム支持体は、純アルミニウムを用いたアルミニウム支持体材料又はアルミニウム合金を用いたアルミニウム支持体材料から得られる。該アルミニウム合金を用いたアルミニウム支持体材料には、例えば珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムとの合金が用いられ、該アルミニウム支持体の表面は大きなうねりに小ピットが重畳された二重構造の粗面形状を有している。図1および図2は上記アルミニウム支持体の一例を示す拡大断面図であり、図2は図1の一部をさらに拡大したものである。1は小ピット、2は大きなうねりを表し、d(μm)は小ピット1の平均開孔径、h(μm)は平均深さ、d(μm)は大きなうねり2の平均開孔径を表す。図中小ピットの平均開孔径d(μm)が0.1以上3μm以下で、該小ピットの平均深さh(μm)と平均開孔径d(μm)の比h/dが0.005以上0.4以下であることが本発明においては好ましく、0.01以上0.38以下であることがより好ましく、0.02以上0.35以下であることが特に好ましい。本発明に用いられるアルミニウム支持体の表面を上記構成の粗面形状とすることにより、該アルミニウム支持体上に感光層を設けてポジ型PS版を形成し、露光処理及び現像処理したとき、残膜や、指紋汚れを生ずることがなく、良質の印刷画像が得られ、また、該アルミニウム支持体の表面が上記構成の粗面形状を有していない場合は上記効果が発揮されない。平均開孔径d(μm)が0.1以上3μm以下の範囲外では印刷時のインク湿し水供給においての湿し水量許容範囲が狭くなり印刷物が汚れや易くなることがある。h/dが0.4を越えると印刷時のインク湿し水供給においての湿し水量許容範囲が狭くなり印刷物が汚れや易くなることがある。また、0.005未満ではまた湿し水量許容範囲が狭くなり印刷物が汚れや易くなることがある。
【0116】
また、上記アルミニウム支持体の表面の大きなうねりの平均開孔径d2(μm)は3μm以上20μm以下とするのが好ましく、該大きなうねりの平均開孔径が上記範囲外の場合はやはり残膜や、指紋汚れを生じ易くなる。
【0117】
〈支持体の処理〉
アルミニウム支持体を得るための上記アルミニウム支持体材料は、強固な汚れや自然酸化皮膜を除去する等のため、苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いて溶解処理が行われ、溶解処理後の残留アルカリ成分を中和するため、燐酸、硝酸、硫酸、塩酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬して中和処理が行われる。なお、必要により上記アルミニウム支持材料表面の油脂、錆、ごみなどを除去するため、トリクレン、シンナー等による溶剤脱脂、ケロシン、トリエタノール等のエマルジョンを用いてエマルジョン脱脂処理を行ってもよい。
【0118】
上記アルカリ水溶液を用いた溶解処理及び酸による中和処理の次には後記電気化学的粗面化処理が行われるが、中和処理に使用する酸の種類および組成を電気化学的粗面化処理に使用する酸のそれに合わせることが特に好ましい。
【0119】
上記アルカリ水溶液を用いた溶解処理に先だって、機械的粗面化処理が行われてもよい。機械的粗面化処理の方法は特に限定されないが、ブラシ研磨、ホーニング研磨が好ましい。ブラシ研磨では、例えば毛径0.2〜1mmのブラシ毛を植毛した円筒状ブラシを回転し、接触面に研磨材を水に分散させたスラリーを供給しながらアルミニウム支持体材料表面に押しつけて粗面化処理を行う。ホーニング研磨では、研磨材を水に分散させたスラリーをノズルより圧力をかけて射出し、アルミニウム支持体材料表面に斜めから衝突させて粗面化処理を行う。さらに、予め粗面化処理されたシートをアルミニウム支持体材料表面に張り合わせ、圧力をかけて粗面パターンを転写することにより機械的粗面化処理を行うこともできる。
【0120】
なお、上記機械的粗面化処理を行う場合は、特に上記溶剤脱脂処理又はエマルジョン脱脂処理を省略することができる。
【0121】
上記(必要により脱脂処理)アルカリ溶解処理及び酸による中和処理を行った後、アルミニウム支持体材料の表面は酸性電解液中で交流電流を用いて電気化学的粗面化処理が行われる。本発明では該酸性電解液中での電気化学的粗面化処理の過程で0.6〜5秒の休止時間を設け、かつ1回の電気化学的粗面化処理の電気量を100C/dm以下とすることを必須の要件としている。上記のように電気化学的粗面化処理を複数回に分けて行う場合は、上記休止時間が0.6秒未満で、かつ1回の電気化学的粗面化処理の電気量が100C/dmを越えると開孔径が20μmより大きい粗大ピットの生成を抑制することができず、また、上記休止時間が5秒を越えるとアルミニウム支持体の製造に時間がかかり過ぎて生産性が悪くなる。
【0122】
上記電気化学的粗面化処理の電解液としては、塩酸、硝酸等が用いられるが、塩酸がより好ましい。電解液には、必要に応じて硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、蓚酸等を加えることができるが、酢酸が特に好ましい。電気化学的粗面化処理において印加される電圧は、1〜50Vが好ましく、5〜30Vが更に好ましい。電流密度(ピーク値)は、10〜200A/dmが好ましく、20〜150A/dmが更に好ましい。電気量は、全処理工程を合計して100〜2000C/dmが好ましく、200〜1000C/dmが更に好ましい。温度は、10〜50℃が好ましく、15〜45℃が更に好ましい。
【0123】
また、塩酸濃度は0.1〜5質量%が好ましく、電解に使用する電流波形は正弦波、矩形波、台形波、鋸歯状波等、求める粗面化形状により適宜選択されるが、特に正弦波が好ましい。電気化学的粗面化処理されたアルミニウム支持体材料は、表面のスマット等を除去したり、粗面のピット形状をコントロールする等のために酸またはアルカリの水溶液に浸漬して表面のエッチング処理が行われる。上記酸としては、例えば硫酸、過硫酸、フッ酸、燐酸、硝酸、塩酸等が含まれ、上記アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が含まれる。これらの中でも、アルカリの水溶液を用いるのが好ましく、該アルカリの0.05〜40%水溶液を用い20〜90℃の液温において5秒〜5分処理するのがよく、該アルカリの水溶液で表面をエッチングした後に、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、或いはそれらの混酸に浸漬して中和処理が行なわれる。
【0124】
上記中和処理が行われたアルミニウム支持体材料はさらに陽極酸化処理されて本発明に係るアルミニウム支持体が得られる。ここで、中和に使用する酸の種類を陽極酸化処理に使用する酸のそれに合わせることが特に好ましい。
【0125】
上記陽極酸化処理に用いられる電解液としては多孔質酸化皮膜を形成するものであれば如何なる電解液でもよいが、一般には硫酸、燐酸、蓚酸、クロム酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等、或るいはこれらの2種類以上を組み合わせた混酸が用いられる。陽極酸化の処理条件は使用する電解液により種々変化するので一概に特定することはできないが、一般的には、電解液の濃度が1〜80質量%、温度5〜70℃、電流密度1〜60A/dm、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲が適当である。好ましいのは硫酸法で、通常直流電流で処理が行われるが、交流を用いることもできる。ここで、硫酸の濃度は10〜50質量%、温度20〜50℃、電流密度1〜20A/dmで10秒〜5分間電解処理されるのが好ましく、また電解液中にはアルミニウムイオンが含まれているのが好ましい。
【0126】
上記陽極酸化処理して得られたアルミニウム支持体は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、珪酸ソーダ処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム塩処理等の公知の方法を用いて行うことができる。
【0127】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0128】
実施例1
《支持体調製》
厚さ0.24mmのJIS1050のアルミニウム支持体材料を、50℃に保たれた1%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、溶解量が2g/mになるように溶解処理を行い水洗した後、次に行う電気化学的粗面化処理で使用する電解液と同組成の水溶液に10秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。
【0129】
次いでこのアルミニウム支持体材料を、電流密度50A/dm、正弦波交流を用いて表1に示した条件(電解液組成、1回当たりの処理電気量、電解処理回数、休止時間)で電気化学的粗面化処理を行った。該電気化学的粗面化処理後は、50℃に保たれた1%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、溶解量が2g/mになるようにアルカリ溶解処理し、さらに水洗した後、25℃に保たれた10%硫酸水溶液中に10秒間浸漬して中和処理し、その後水洗した。
【0130】
次いで、20%硫酸水溶液中で、直流を用い、温度25℃、電流密度5A/dmで陽極酸化皮膜質量が2.0g/mとなるよう陽極酸化処理した後、水洗、乾燥して5種類のアルミニウム支持体を得た。こうして得られたアルミニウム支持体表面の、大きなうねりの平均開孔径d(μm)、小ピットの平均開孔径d(μm)及び小ピットの平均深さh(μm)と平均開孔径d(μm)との比h/dを後述の方法により測定し、その結果を表1に示した。
【0131】
その後、上記アルミニウム支持体を70℃の2.5%珪酸ナトリウム水溶液で1分間、表1記載のように処理(珪酸処理)し、水洗乾燥して本発明に係るアルミニウム支持体1〜5を得た。なお、上記アルミニウム支持体5は珪酸ナトリウム処理を施さなかった。
【0132】
《大きなうねりの平均開孔径d(μm)、小ピットの平均開孔径d(μm)及び小ピットの平均深さh(μm)と平均開孔径d(μm)との比h/dの測定》
いずれもアルミニウム支持体表面のSEM写真(Scanning Electron Microscope写真)を撮影して測定した。
【0133】
大きなうねりの平均開孔径d(μm)については、1000倍のSEM写真を用い、輪郭が明確に判別できるうねり1個づつの長径と短径とを測定してその平均をうねりの開孔径とし、該SEM写真中で測定した大きなうねりの開孔径の和を、測定した大きなうねり数で割って求めた。また、小ピットの平均開孔径d(μm)については5000倍のSEM写真を用い、大きなうねりの場合と同様の手法で求めた。
【0134】
小ピットの平均深さh(μm)と平均開孔径d(μm)との比h/dは、断面の5000倍〜20000倍のSEM写真を用いて、断面がピットのほぼ中央を分断しているピットを選んで測定した。
【0135】
【表1】
Figure 2004230875
【0136】
《親水性層塗布液の調製》
下記表2の組成を十分に混合攪拌した後、濾過して親水性層塗布液1、2を作製した。
【0137】
【表2】
Figure 2004230875
【0138】
(表2中、単位記載のない数値は質量部を示す)
《親水性層を有する支持体サンプル001〜011の作製》
上記親水性層塗布液1、2を各アルミニウム支持体1〜5上にワイヤーバー#3を用いて乾燥付量が0.05g/mとなるように塗布し、30m長の100℃に温度設定された乾燥ゾーン内を搬送スピード15m/分の速度で通過させ、親水性層1、2を表3記載のように塗設して支持体01〜11を作製した。なお、塗布後は、いずれのサンプルも60℃で1日間のエイジングを行なった。
【0139】
【表3】
Figure 2004230875
【0140】
《印刷版材料001〜011の作製》
上記で作製した、支持体01〜11について、下記表4に記載の画像形成層塗布液を、ワイヤーバー#5を用いて乾燥付量が0.6g/mとなるように塗布し、30mの長さの60℃に設定された乾燥ゾーンを搬送スピード15m/分の速度で通過させ、更に、50℃で3分間乾燥して赤外線レーザ露光用である印刷版材料001〜011を各々作製した。
【0141】
【表4】
Figure 2004230875
【0142】
【化1】
Figure 2004230875
【0143】
《評価方法》
〈ピーク孔径〉
印刷版材料について、親水性層(微粒子多孔質層)の孔の孔径分布曲線におけるピーク孔径を、下記方法により求めた。
【0144】
即ち、印刷版材料の親水性層(微粒子多孔質層)を、1万倍で撮影した電子顕微鏡表面写真の孔の部分をマーキングし、QUant:met−720型イメージアナライザー(イメージアナライジングコンピューター社製)を用いて画像処理を行い各孔径を真円に換算した時の最小径孔径と最大孔径の間を10μm単位で分割し、各分割部における孔の個数を測定した。この測定値から、縦軸を単位面積当たりの孔数、横軸を孔径として孔径分布曲線を描き、孔径分布曲線のピークにおける孔径を、孔径分布曲線におけるピーク孔径として求めた。
【0145】
《印刷版0001〜0011の評価》
(a)赤外線レーザ方式による画像形成
上記の印刷版材料001〜011を各々露光ドラムに巻付け固定した。露光には、波長830nm、スポット径約18μmのレーザビームを用い、露光エネルギーを300mJ/cmとした条件で、2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で画像を形成した。これを各々印刷版0001〜0011とする。
【0146】
(b)上記の印刷版0001〜0011について、下記の印刷方法により、印刷版としての諸特性を評価した。
【0147】
印刷方法
印刷装置として、三菱重工業社製のDAIYA1F−1を用いて、コート紙と、湿し水としてアストロマーク3(日研化学研究所製)の2質量%溶液、インクとして、東洋インク社製のトーヨーキングハイエコーM紅を使用して印刷を行った。
【0148】
〈刷り出し性〉
刷り出し時、良好なS/N比(非画像部に地汚れが無く、すなわち、画像形成層の非画像部が印刷機上で除去され、かつ、画像部の濃度が適正範囲となっている)を有した印刷物が得られるまでの印刷枚数を評価した。枚数が少ないほど優れている。40枚以上では実用上問題がある。
【0149】
〈耐刷性〉
印刷した画像の3%の小点の欠落、またはベタ部の濃度低下のいずれかが確認された段階で耐刷終点とし、その枚数を求めた。
【0150】
結果を表5に示す。
【0151】
【表5】
Figure 2004230875
【0152】
表5から明らかなように、本発明の場合に、刷り出し性が優れ刷り出し時の損紙が低減され、且つ耐刷性に優れていることがわかる。
【0153】
【発明の効果】
本発明により、アルカリ現像処理が無いプロセスレスプレートであるのにもかかわらず、印刷適性、特に刷り出し性や耐刷性が優れた印刷版材料および印刷版を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルミニウム支持体の拡大断面図である。
【図2】図1の1部をさらに拡大した拡大断面図である。
【符号の説明】
1 小ピット
2 大きなうねり
小ピット1の平均開孔径
h 小ピット1の平均深さ
大きなうねり2の平均開孔径

Claims (11)

  1. 支持体上に、親水性層、画像形成層をこの順に積層した印刷版材料において、親水性層が微粒子多孔質層であり、該微粒子多孔質層の孔の孔径分布曲線におけるピーク孔径が0.005μm以上1μm以下であることを特徴とする印刷版材料。
  2. 支持体が、粗面化処理および陽極酸化処理を施され、大きなうねりに小ピットが重畳された二重構造の粗面形状を有し、かつ小ピットの平均開孔径d(μm)が0.1μm以上3μm以下で、小ピットの平均深さh(μm)と平均開孔径d(μm)の比h/dが0.005以上0.4以下であるアルミニウム支持体であることを特徴とする請求項1記載の印刷版材料。
  3. 前記アルミニウム支持体の大きなうねりの平均開孔径d(μm)が3μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項2記載の印刷版材料。
  4. 陽極酸化処理を行なったアルミニウム支持体をさらにアルカリ金属ケイ酸塩で処理することを特徴とする請求項2または3記載の印刷版材料。
  5. 親水性層である微粒子多孔質層がシリカ層であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の印刷版材料。
  6. 前記シリカ層のシリカ粒径が0.005μm以上1μm以下であることを特徴とする請求項5記載の印刷版材料。
  7. 画像形成層が、熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の印刷版材料。
  8. 熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子が脂肪酸アミドを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の印刷版材料。
  9. 支持体上の少なくとも1層に光熱変換剤を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の印刷版材料。
  10. 画像形成層のさらに上層に親水性オーバーコート層を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の印刷版材料。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項記載の印刷版材料に露光を付与する工程を経て作製されることを特徴とする印刷版。
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