JP3775291B2 - 印刷版材料及び印刷版材料の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は印刷版材料に関し、特にコンピューター・トゥー・プレート(CTP)方式により画像形成が可能な印刷版材料に関する。又、特にCTP方式により画像形成が可能な印刷版材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
印刷データのデジタル化に伴い、安価で取扱いが容易でPS版と同等の印刷適正を有したCTPが求められている。特に近年、赤外線レーザー記録による種々の方式のCTPが提案されている。
【0003】
これらCTPの一つとして、露光により印刷版材料の画像形成層の現像液への溶解性を変化させて、液現像により画像を形成する方式、一般にウェットタイプのCTPと呼ばれている方式が挙げられるが、この方式では従来のPS版と同様に現像に専用のアルカリ現像液が必要であったり、現像液の状態(温度、疲労度)によって現像性が変化し、画像再現性が得られなかったり、明室での取扱い性に制限があったりと、種々の問題を有している。
【0004】
これに対して特別な現像処理を必要としない、いわゆるドライCTP(印刷機上での現像を含む)の開発も進められている。ドライCTPは印刷装置上で直接画像記録を行い、そのまま印刷を行う、ダイレクトイメージング(DI)方式の印刷装置に適用することが可能であることからも大きな注目を集めている。
【0005】
ドライCTPの一つの方式として、アブレーションタイプのCTPが挙げられる。例えば、特開平8−507727号、同6−186750号、同6−199064号、同7−314934号、同10−58636号、同10−244773号に記載されているものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これらは、例えば、基材上に親水性層と親油性層とを何れかの層を表層として積層したものである。表層が親水性層であれば、画像様に露光し、親水性層をアブレートさせて画像様に除去して親油性層を露出することで画像部を形成することができる。この場合は親油性層上に親水性層を塗布形成して製造されるが、特に親水性層が水系塗料から形成される場合、塗布面が親油性であるため塗布時の濡れ性が大きな問題となる。一般的にはHLB値の高い、つまりは水に溶解する界面活性剤を塗料に添加して濡れ性を向上させて塗布性を改善させるが、界面活性剤によっては濡れ性は改善できるものの起泡性が生じて泡故障が問題となったり、界面活性剤が親水性層中に残存することでその親水性を劣化したりすることが問題となっている。
【0007】
一方、アブレーションを生じることなく画像形成が可能であり、かつ特別な現像液による現像処理や拭き取り処理の不要な印刷版材料の開発も進められている。例えば、特許2,938,397号や特許2,938,397号に開示されているように、親水性基材上に熱可塑性微粒子と水溶性の結合剤とを含有する画像形成機能層を有し、湿し水現像(機上現像)可能なCTPが挙げられる。この場合はサーマルレーザー露光により基材上の何れかの層が発熱し、その熱により熱可塑性微粒子が融着して画像となるものであるが、熱可塑性微粒子は外力や雰囲気の温度の影響を受けやすく、わずかな力が加わっただけで印刷時に汚れとなったり、40℃程度の高温雰囲気下に短時間置かれただけで地汚れを生じる懸念があるなど問題も多い。
【0008】
又、親水性基材としてはアルミ砂目や基材上に光熱変換素材を含有した親水性層を形成したものを使用し、この上に画像形成機能層を水系塗料として塗布形成するが、塗布面が親水性を呈していても若干の塗布性改善のために塗料中に界面活性剤を添加する場合もあり、この場合は上述と同様の問題を有している。
【0009】
更に、基材上に親水性層もしくは親水性層と基材との接着を高める目的等で形成される下層を塗布する場合にも、特に水系塗料を用いる場合には塗布性改善のための界面活性剤の添加が必要となり、泡故障や親水性低下の問題を有している。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的はCTPに好ましく適用可能で、良好な印刷性能を有し、かつ塗布故障のない印刷版材料を提供することであり、又、良好な印刷性能を有し、かつ塗布故障のない印刷版材料の製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の構成により達成された。
【0011】
1.基材上に少なくとも親水性層と画像形成機能層とをこの順に有する印刷版材料において、前記親水性層及び画像形成機能層が水系塗料を用いて塗布形成された層であり、かつ、該親水性層及び該画像形成機能層がアセチレン化合物を含有し、更に、該画像形成機能層が熱溶融性微粒子及び熱融着性微粒子の少なくとも一方を含有することを特徴とする印刷版材料。
【0015】
2.基材上に塗布形成された層の少なくとも一層が光熱変換素材を含有することを特徴とする1項記載の印刷版材料。
【0017】
3.前記アセチレン化合物がアセチレングリコール、アセチレンジオール、及びアセチレンアルコールの何れかから選択されることを特徴とする1または2項記載の印刷版材料。
【0018】
4.前記アセチレン化合物がアセチレングリコール又はアセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物であることを特徴とする3記載の印刷版材料。
【0019】
5.前記アセチレン化合物のHLB値が7以上18以下であることを特徴とする1〜4の何れか1項記載の印刷版材料。
【0020】
6.1〜5の何れか1項記載の印刷版材料の製造方法であって基材上に、揮発性アセチレン化合物を含有する水系塗料を塗布して塗布形成層を形成した後、乾燥過程にて前記揮発性アセチレン化合物の少なくとも一部を揮発させることを特徴とする印刷版材料の製造方法。
【0021】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明の印刷版材料は、基材上に少なくとも親水性層を有する印刷版材料において、前記親水性層が水系塗料を用いて塗布形成された層であり、かつ、該親水性層がアセチレン化合物を含有することを特徴とする。
【0022】
アセチレン化合物としては、アセチレングリコール、アセチレンジオール、アセチレンアルコールが好ましく、特にアセチレングリコールが好ましい。
【0023】
アセチレングリコール、アセチレンジオール、アセチレンアルコールといったアセチレン化合物は水系塗料の界面活性剤として用いた場合に良好な濡れ性と低起泡性とを発揮し、塗布欠陥を低減させる効果が著しい。
【0024】
アセチレングリコールとは、以下の構造式Aに示すようにアセチレン基を中央に持ち、左右対称の構造をした非イオン性界面活性剤であり、水系塗料に添加した際の表面エネルギー低下の程度に対して起泡性が少ない界面活性剤である。又、以下の構造式Bはアセチレングリコールにエチレンオキサイドを付加したタイプの化合物の構造式であるが、このタイプの化合物は水系塗料への添加による親水性層の親水性低下がほとんどなく、より好ましく使用することができる。
【0025】
【化1】
【0026】
特にアセチレン化合物がアセチレングリコール又はアセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物である場合には、アセチレン化合物自体が水溶性となり、湿し水を用いるタイプの印刷版材料用の水系塗料に用いても親水性層もしくは親水性基材表面の親水性を損なうことがない。
【0027】
エチレンオキサイドの付加量によってHLB値を調整することが可能であるが、親水性層の親水性をより良好な状態で維持するためにHLB値は7以上であることが好ましく、12以上18以下であることが更に好ましい。アセチレン化合物のHLB値が7以上である場合には、アセチレン化合物自体が水溶性となり、湿し水を用いるタイプの印刷版材料用の水系塗料に用いても親水性層もしくは親水性基材表面の親水性を損なうことがない。特にHLB値が12以上では水に完全に溶解するようになるため、水への溶解度に限界のある界面活性剤を限界値を超えて添加してしまった場合に見られる未溶解の活性剤滴によるはじきの発生の懸念がなくなる。ただし、界面活性剤としての上限は18程度である。
【0028】
ここでHLB値はGriffinによるHydrophile−Lipophile Balanceであり、W.C.Griffin:J.Soc.Cosmetic Chemists,1,311(1949)や界面活性剤ハンドブック:高橋越民、難波義郎、小池基生、小林正雄 共著 工学図書株式会社版 第179頁〜182頁等に記載されており、界面活性剤に関して広く用いられている値である。
【0029】
本発明の印刷版材料の親水性層としては、印刷時に湿し水によって表面が覆われた際にインクを反発する機能を有していればよく、水系塗料を用いて塗布形成可能な種々のタイプの親水性層を挙げることができる。
【0030】
ただし、より良好な親水性を得るために、親水性層は多孔質であることが好ましく、特に親水性層を構成する素材の91質量%以上が炭素原子を含まない素材であることが好ましく、更には95質量%以上が炭素原子を含まない素材であることが好ましい。アセチレン化合物は炭素原子を含む素材であるため、上記の範囲内の量で用いることが好ましい。
【0031】
ここでいう「炭素原子を含まない素材」の質量%は層全体から有機物や有機基を持つ化合物の有機基部分、カーボンブラック、グラファイト等を除いた質量比率を意味する。炭素原子を含まない素材を炭素原子を含む素材で表面処理した素材等は、その処理に使用された素材のみを炭素原子を含む素材とみなす。
【0032】
上記は親水性層として形成された時点での素材構成であり、例えば親水性層の塗布液には含有されていても、乾燥時に揮発する素材は含まれない。又、親水性層が形成された後にその多孔質内の細孔に外部から含浸された素材は含まれない。炭素原子を含まない素材を91質量%以上、好ましくは95質量%以上とすることで、速やかな刷出しが得られ、ブランケット汚れも低減し、更に刷込んだ際にも地汚れの発生がないといったような良好な印刷性能が得られる。
【0033】
本発明の印刷版材料の親水性層に用いられる炭素原子を含まない素材としては、金属酸化物が好ましい。
【0034】
金属酸化物としては、金属酸化物微粒子を含むことが好ましい。例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。該金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良い。平均粒径としては、3〜100nmであることが好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。又、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0035】
上記金属酸化物微粒子はその造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0036】
本発明には、上記の中でも特にコロイダルシリカが好ましく使用できる。コロイダルシリカは比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、炭素原子を含まない素材が91質量%以上というような層においても良好な強度を得ることができる。
【0037】
上記コロイダルシリカとしては、後述するネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、更に、コロイダルシリカはコロイド溶液としてアルカリ性を呈することが好ましい。
【0038】
本発明に用いられるネックレス状コロイダルシリカは、1次粒子径がnmのオーダーである球状シリカの水分散系の総称である。本発明に用いられるネックレス状コロイダルシリカとは1次粒粒子径が10〜50nmの球状コロイダルシリカが50〜400nmの長さに結合した「パールネックレス状」のコロイダルシリカを意味する。パールネックレス状(即ち真珠ネックレス状)とは、コロイダルシリカのシリカ粒子が連なって結合した状態のイメージが真珠ネックレスの様な形状をしていることを意味している。ネックレス状コロイダルシリカを構成するシリカ粒子同士の結合は、シリカ粒子表面に存在する−SiOH基が脱水結合した−Si−O−Si−と推定される。ネックレス状のコロイダルシリカとしては、具体的には日産化学工業(株)製の「スノーテックス−PS」シリーズなどが挙げられる。
【0039】
製品名としては「スノーテックス−PS−S(連結した状態の平均粒子径は110nm程度)」、「スノーテックス−PS−M(連結した状態の平均粒子径は120nm程度)」及び「スノーテックス−PS−L(連結した状態の平均粒子径は170nm程度)」があり、これらにそれぞれ対応する酸性の製品が「スノーテックス−PS−S−O」、「スノーテックス−PS−M−O」及び「スノーテックス−PS−L−O」である。
【0040】
ネックレス状コロイダルシリカを添加することにより層の多孔性を確保しつつ強度を維持することが可能となり、層の多孔質化材として好ましく使用できる。
【0041】
これらの中でも、アルカリ性である「スノーテックス−PS−S」、「スノーテックス−PS−M」、「スノーテックス−PS−L」を用いると、親水性層の強度が向上し、又、印刷枚数が多い場合でも地汚れの発生が抑制され、特に好ましい。
【0042】
又、コロイダルシリカは粒子径が小さいほど結合力が強くなることが知られており、本発明には平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカを用いることが好ましく、3〜15nmであることが更に好ましい。又、前述のようにコロイダルシリカの中ではアルカリ性のものが地汚れ発生を抑制する効果が高いため、アルカリ性のコロイダルシリカを使用することが特に好ましい。
【0043】
平均粒径がこの範囲にあるアルカリ性のコロイダルシリカとしては日産化学社製の「スノーテックス−20(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−30(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−40(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−N(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−S(粒子径8〜11nm)」、「スノーテックス−XS(粒子径4〜6nm)」が挙げられる。
【0044】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカは前述のネックレス状コロイダルシリカと併用することで、層の多孔質性を維持しながら、強度を更に向上させることが可能となり、特に好ましい。
【0045】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカ/ネックレス状コロイダルシリカの比率は95/5〜5/95が好ましく、70/30〜20/80がより好ましく、60/40〜30/70が更に好ましい。
【0046】
本発明の印刷版材料の親水性層は金属酸化物として多孔質金属酸化物粒子を含むことが好ましい。多孔質金属酸化物粒子としては、後述する多孔質シリカ又は多孔質アルミノシリケート粒子もしくはゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
・多孔質シリカ粒子、多孔質アルミノシリケート粒子
多孔質シリカ粒子は一般に湿式法又は乾式法により製造される。湿式法ではケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。
【0047】
多孔質アルミノシリケート粒子は例えば特開平10−71764号に記載されている方法により製造される。即ち、アルミニウムアルコキシドと珪素アルコキシドを主成分として加水分解法により合成された非晶質な複合体粒子である。粒子中のアルミナとシリカの比率は1:4〜4:1の範囲で合成することが可能である。又、製造時にその他の金属のアルコキシドを添加して3成分以上の複合体粒子として製造したものも本発明に使用できる。これらの複合体粒子も製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0048】
粒子の多孔性としては、分散前の状態で細孔容積で1.0ml/g以上であることが好ましく、1.2ml/g以上であることがより好ましく、1.8〜2.5ml/g以下であることが更に好ましい。
【0049】
細孔容積は塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなるが、2.5ml/gよりも大きくなると粒子自体が非常に脆くなるため塗膜の耐久性が低下する。細孔容積が1.0ml/g未満の場合には、印刷時の汚れにくさ、水量ラチチュードの広さが不充分となる。
【0050】
粒径としては、親水性層に含有されている状態で(例えば分散時に破砕された場合も含めて)、実質的に1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることが更に好ましい。不必要に粗大な粒子が存在すると親水性層表面に多孔質で急峻な突起が形成され、突起周囲にインクが残りやすくなって非画線部汚れやブランケット汚れが劣化する場合がある。
・ゼオライト粒子
ゼオライトは結晶性のアルミノケイ酸塩であり、細孔径が0.3〜1nmの規則正しい三次元網目構造の空隙を有する多孔質体である。天然及び合成ゼオライトを合わせた一般式は、次のように表される。
【0051】
(M1、M21/2)m(AlmSinO2(m+n))・xH2O
ここで、M1、M2は交換性のカチオンであって、M1はLi+、Na+、K+、Tl+、Me4N+(TMA)、Et4N+(TEA)、Pr4N+(TPA)、C7H15N2+、C8H16N+等であり、M2はCa2+、Mg2+、Ba2+、Sr2+、C8H18N2 2+等である。又、n≧mであり、m/nの値、つまりはAl/Si比率は1以下となる。Al/Si比率が高いほど交換性カチオンの量が多く含まれるため極性が高く、従って親水性も高い。好ましいAl/Si比率は0.4〜1.0であり、更に好ましくは0.8〜1.0である。xは整数を表す。
【0052】
使用されるゼオライト粒子としては、Al/Si比率が安定しており、又粒径分布も比較的シャープである合成ゼオライトが好ましく、例えばゼオライトA:Na12(Al12Si12O48)・27H2O;Al/Si比率1.0、ゼオライトX:Na86(Al86Si106O384)・264H2O;Al/Si比率0.811、ゼオライトY:Na56(Al56Si136O384)・250H2O;Al/Si比率0.412等が挙げられる。Al/Si比率が0.4〜1.0である親水性の高い多孔質粒子を含有することで親水性層自体の親水性も大きく向上し、印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなる。又、指紋跡の汚れも大きく改善される。Al/Si比率が0.4未満では親水性が不充分であり、上記性能の改善効果が小さくなる。
【0053】
多孔質無機粒子の粒径としては、親水性層に含有されている状態で、実質的に1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることが更に好ましい。
【0054】
又、本発明の印刷版材料の親水性層は金属酸化物として、層状粘土鉱物粒子を含む。該層状粘土鉱物粒子としては、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。中でも、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、更に好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状粘土鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。又、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性であるものが好ましく、自由膨潤であるものが更に好ましい。
【0055】
又、上記の層状粘土鉱物のインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(シランカップリング処理、有機バインダとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
【0056】
層状粘土鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態で(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)、平均粒径(粒子の最大長)が20μm以下であり、又平均アスペクト比(粒子の最大長/粒子の厚さ)が20以上の薄層状であることが好ましく、平均粒径が5μm以下であり、平均アスペクト比が50以上であることが更に好ましく、平均粒径が1μm以下であり、平均アスペクト比が50以上であることが更に好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。又、粒子物を多く含有する塗布液においては、層状粘土鉱物の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。粒子径が上記範囲をはずれると、引っかきによるキズ抑制効果が低下する場合がある。又、アスペクト比が上記範囲以下である場合、柔軟性が不充分となり、同様に引っかきによるキズ抑制効果が低下する場合がある。
【0057】
層状粘土鉱物粒子の含有量としては、層全体の0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。特に膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは少量の添加でも効果が見られるため好ましい。層状粘土鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加してもよいが、簡便な調液方法(メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、層状粘土鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを作製した後、塗布液に添加することが好ましい。
【0058】
親水性層には炭素原子を含まないその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率はケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
【0059】
又、金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、又は本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0060】
これらのうち、テトラアルコキシシランを用いたゾル−ゲル法で得られるシリカ塗膜には炭素原子が含まれない。が、アルキル基を有するアルコキシシラン、例えばアルコキシトリアルコキシシランを用いると、得られるシリカ塗膜にはアルキル基が残存する。本発明においては残存するアルキル基分を炭素原子を含む素材とみなす。
【0061】
親水性層中に含有する炭素原子を含む素材の含有量としては9質量%未満が好ましく、5質量%未満が更に好ましい。
【0062】
炭素原子を含む素材としては、例えばポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられる。
【0063】
又、カチオン性樹脂を含有しても良く、カチオン性樹脂としては、ポリエチレンアミン、ポリプロピレンポリアミン等のようなポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等が挙げられる。カチオン性樹脂は微粒子状の形態で添加しても良い。これは、例えば特開平6−161101号に記載のカチオン性マイクロゲルが挙げられる。
【0064】
本発明の好ましい態様としては、親水性層中に含有される炭素原子を含む素材は水溶性であり、かつ、少なくともその一部が水溶性の状態のまま、水に溶出可能な状態で存在することが挙げられる。水溶性の素材であっても、架橋剤等によって架橋し、水に不溶の状態になると、その親水性は低下して印刷性能を劣化させる懸念がある。
【0065】
親水性層に含有される炭素原子を含む水溶性の素材としては、糖類が好ましい。親水性層に糖類を含有させることにより、後述する画像形成能を有する機能層との組み合わせにおいて、画像形成の解像度を向上させたり、耐刷性を向上させる効果が得られる。
【0066】
糖類としては、後に詳細に説明するオリゴ糖を用いることもできるが、特に多糖類を用いることが好ましい。
【0067】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。
【0068】
これは、親水性層に多糖類を含有させることにより、親水性層の表面形状を好ましい状態に形成する効果が得られるためである。
【0069】
親水性層の表面は、PS版のアルミ砂目のように0.1〜50μmピッチの凹凸構造を有することが好ましく、この凹凸により保水性や画像部の保持性が向上する。
【0070】
このような凹凸構造は、親水性層に適切な粒径のフィラーを適切な量含有させて形成することも可能であるが、親水性層の塗布液に前述のアルカリ性コロイダルシリカと前述の水溶性多糖類とを含有させ、親水性層を塗布、乾燥させる際に相分離を生じさせて形成することがより良好な印刷性能を有する構造を得ることができ、好ましい。
【0071】
凹凸構造の形態(ピッチ及び表面粗さなど)はアルカリ性コロイダルシリカの種類及び添加量、水溶性多糖類の種類及び添加量、その他添加材の種類及び添加量、塗布液の固形分濃度、ウエット膜厚、乾燥条件等で適宜コントロールすることが可能である。
【0072】
凹凸構造のピッチとしては0.2〜30μmであることがより好ましく、0.5〜20μmであることが更に好ましい。又、ピッチの大きな凹凸構造の上に、それよりもピッチの小さい凹凸構造が形成されているような多重構造の凹凸構造が形成されていてもよい。
【0073】
表面粗さとしては、Raで100〜1000nmが好ましく、150〜600nmがより好ましい。
【0074】
又、親水性層の膜厚としては、0.01〜50μmであり、好ましくは0.2〜10μmであり、更に好ましくは0.5〜3μmである。
【0075】
又、親水性層(の塗布液)には、塗布性改善等の目的で水溶性の界面活性剤を含有させることができる。Si系、又はF系等の界面活性剤を使用することができるが、特にSi元素を含む界面活性剤を使用することが印刷汚れを生じる懸念がなく、好ましい。該界面活性剤の含有量は親水性層全体(塗布液としては固形分)の0.01〜3質量%が好ましく、0.03〜1質量%が更に好ましい。
【0076】
又、親水性層はリン酸塩を含むことができる。本発明では親水性層の塗布液がアルカリ性であることが好ましいため、リン酸塩としてはリン酸三ナトリウムやリン酸水素二ナトリウムとして添加することが好ましい。リン酸塩を添加することで印刷時の網の目開きを改善する効果が得られる。リン酸塩の添加量としては、水和物を除いた有効量として0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%が更に好ましい。
【0077】
本発明の印刷版材料のもう一つの態様は、基材と親水性層との間に水系塗料を用いて塗布形成され、アセチレン化合物を含有する下層を有する印刷版材料である。
【0078】
下層は基材と親水性層との接着改善や親水性層の強度改善、親水性層と基材間の断熱等、種々の目的で形成される。下層自体は必ずしも親水性である必要はないが、下層中に含まれる界面活性剤が親水性層を塗布形成した際に親水性層中に移動する懸念があるため、塗布性改善のために添加する界面活性剤としては上述のアセチレン化合物であることが好ましい。
【0079】
又、下層を構成する素材としては上述の親水性層に添加可能な素材を用いることが可能であるが、下層に強度を望む場合は多孔質化材を添加しない、もしくは含有量を少なくすることが好ましい。
【0080】
本発明の親水性層を有する印刷版材料においては、その親水性層表面に直接、親油性素材を画像様に付与することによって画像形成が可能である。
【0081】
親油性素材を画像様に付与する方法の1つとして、公知の熱転写方式を用いる方法が挙げられる。具体的には熱転写方式のプリンタを用いて、サーマルヘッドにより熱溶融性インク層を有するインクリボンから熱溶融性インクを親水性層表面に画像様に転写させる方法が挙げられる。
【0082】
又、赤外線レーザー熱溶融転写方式のデジタルプルーフ装置を用いて、露光ドラム上に印刷版材料を親水性層を外側にして巻付け、その上に更に熱溶融性インク層を有したインクシートをインク面を親水性層に接して巻付け、画像様に赤外線レーザーで露光し、熱溶融性インクを親水性層表面に画像様に転写させる方法も挙げることができる。この場合、光熱変換素材は親水性層が含有していてもよいし、インクシート側が何れかの層に含有していてもよいし、両者ともに含有していてもよい。
【0083】
親水性層上に熱溶融性のインクで画像を形成した後に、印刷版材料を加熱して、親水性層と画像との接着をより強固なものとすることもできる。親水性層が光熱変換素材を含有している場合には、この加熱処理を赤外線レーザー照射や公知のキセノンランプ等によるフラッシュ露光を用いて行うこともできる。
【0084】
もう1つの方法としては、公知のインクジェット方式を用いる方法が挙げられる。用いるインクとしては、特許2,995,075号に開示されている油性インクや、特開平10−24550号に開示されているようなホットメルトインクや、特開平10−157053号に開示されているような常温で固体かつ疎水性の樹脂粒子が分散された油性インク、或いは常温で固体かつ疎水性の熱可塑性樹脂粒子が分散された水性インク等を用いることができる。
【0085】
インクが熱可塑性素材を含有している場合は、画像を形成した後に、印刷版材料を加熱して、親水性層と画像との接着をより強固なものとすることもできる。親水性層が光熱変換素材を含有している場合には、この加熱処理を赤外線レーザー照射や公知のキセノンランプ等によるフラッシュ露光を用いて行うこともできる。
【0086】
又、下層をインク着肉機能を兼ねたアブレーション層とし、親水性層を薄層化することで、赤外線レーザーを用いてアブレーションによる画像形成を行うこともできる。この態様の場合は親水性層の上に更に水溶性樹脂層(アブレーション飛散物の飛散防止層)を設けてもよい。
【0087】
本発明の印刷版材料は親水性基材上に更に画像形成機能層(例:熱により画像形成を行う機能層等)を有する印刷版材料である。親水性基材としてアルミ砂目を用いることも可能であるが、本発明の好ましい態様としては、基材上に少なくとも親水性層を有し、更にその上に熱により画像形成を行う機能層とを有した印刷版材料である。
【0088】
本発明の印刷版材料において、熱により行われる画像形成は、特に赤外線レーザーによる露光による画像形成であることが好ましい。
【0089】
本発明に関する露光に関し、より具体的には、赤外及び/又は近赤外領域で発光する、即ち700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましい。レーザーとしてはガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましい。
【0090】
走査露光に好適な装置としては、該半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0091】
一般的には、
(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式が挙げられる。
【0092】
本発明に関しては特に(3)の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)の露光方式が用いられる。
【0093】
(3)の露光方式の詳細な構成としては、例えば特開平5−131676号に開示されているような方式を用いることができる。複数の半導体レーザーを所定のビーム間ピッチで副走査方向に一列に配置するか、もしくは副走査方向には所定のビーム間ピッチで配置し、主走査方向には一定の配置ピッチで2次元的に配置する。これら半導体レーザーから発振される複数のレーザー光を光ファイバー、レンズ、ミラーといった光学系を介して縮小し、露光される材料面で露光解像度に合わせた微小光点となるように照射する。半導体レーザーを2次元的に配置した場合は、材料面の微小光点の照射配置も2次元的になるため、画像信号に対して、各半導体レーザーの発光を主走査方向の照射位置の関係に応じて遅延させる必要がある。
【0094】
レーザー光の主走査に対する副走査は、一般的にはドラム一回転に対して、露光ヘッドが露光解像度、即ち画像1ドットのサイズの露光に用いるレーザー光の本数を乗じた距離をドラム回転軸に平行な方向に移動することによって行われる。露光ヘッドの移動はドラム回転により発生する基準信号により制御されながら、露光開始から終了まで一定の速度で移動、つまりはスパイラルな露光をしてもよいし、ドラム上に保持された材料の存在しない部分(一般的には材料端部の固定機構の部分)が露光照射部を通過するタイミングで所定の移動量を間歇的に移動してもよい。或いは特開平11−133620号に開示されているように、スパイラルな露光を行いつつビームの副走査方向への傾斜を打消すような機構を用いてもよい。
【0095】
本発明においては、水系塗料を用いて塗布形成される層、つまり下層、親水性層、画像形成機能層は光熱変換素材を含有することができる。そのような光熱変換素材としては下記のような素材を添加することができる。
【0096】
一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。又、顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。カーボンとしては特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0097】
グラファイトとしては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0098】
金属としては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0099】
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、又は素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。
【0100】
前者としては、黒色酸化鉄(Fe3O4)や前述の二種以上の金属を含有する。一方後者とては、例えばSbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn2O3(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)などが挙げられる。又、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al2O3・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0101】
これらの光熱変換素材のうち、炭素原子を含む素材も、親水性層中の炭素原子を含む素材の総量が9質量%未満となるような範囲で、好ましくは5質量%未満となるような範囲で添加してもよい。
【0102】
本発明においては、光熱変換素材として金属もしくは金属酸化物であることがより好ましい。特に好ましい光熱変換素材の態様としては、金属酸化物が二種以上の金属の酸化物からなる黒色複合金属酸化物であることである。
【0103】
具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは、特開平8−27393号、特開平9−25126号、特開平9−237570号、特開平9−241529号、特開平10−231441号等に開示されている方法により製造することができる。
【0104】
本発明に用いる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系又はCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり、光熱変換効率が良好である。
【0105】
これらの複合金属酸化物は平均1次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均1次粒子径を1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均1次粒子径を0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。ただし、添加量に対する光熱変換能は、粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。
【0106】
従って、これらの複合金属酸化物粒子は、層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均1次粒子径が0.01未満となると分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。分散剤の種類は特に限定しないが、Si元素を含むSi系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0107】
これらの複合金属酸化物の添加量としては、親水性層、下層、画像形成機能層等の各写真構成層に対して0.1〜50質量%であり、1〜30質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましい。
【0108】
更に、本発明の印刷版材料に形成される画像形成機能層の構成の好ましい態様の1つとして、少なくとも熱溶融性微粒子及び熱融着性微粒子の何れかを含有することが挙げられる。
【0109】
この態様の印刷版材料の画像形成は、印刷版材料表面に画像様に熱を付与することで行われる。例えば、赤外線レーザーを照射することで、糖類を含有する層の赤外線レーザー露光部が親油性の画像部となり、未露光部の層が除去されて非画像部となる。この場合の親油化は熱溶融性微粒子の多孔質な親水性層への溶融浸透及び/又は熱融着性微粒子の融着によるものである。
【0110】
画像形成機能層にアセチレン化合物を含有させることは、前述の塗布性改善、塗布故障低減、親水性層の親水性劣化の抑制等を目的としている。
【0111】
特に画像形成機能層に熱溶融性微粒子及び/又は熱融着性微粒子を含有する場合、上記の効果に加えてアセチレン化合物がこれら微粒子表面を覆うことで画像形成前(例えば赤外線レーザーでの露光前)の保存安定性や取り扱い性が向上するという効果も得られる。
【0112】
本発明に用いられる熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子が挙げられる。物性としては、軟化点40℃以上120℃以下、融点60℃以上150℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上100℃以下、融点60℃以上120℃以下であることが更に好ましい。融点が60℃未満では保存性が問題であり、融点が150℃よりも高い場合はインク着肉感度が低下する。
【0113】
使用可能な素材としては、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800から10000程度のものである。又、乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げたり作業性を向上させるためにこれらのワックスにステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド又はこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。又、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0114】
これらの中でもポリエチレン、マイクロクリスタリン、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。又、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0115】
又、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0116】
又、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0117】
画像形成機能層中の熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%が更に好ましい。
【0118】
本発明に用いられる熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、該熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。高分子重合体の重量平均分子量(Mw)は10,000〜1,000,000の範囲であることが好ましい。
【0119】
高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0120】
高分子重合体微粒子は乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の何れの方法で重合された高分子重合体からなるものでもよい。溶液重合法又は気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水又は水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。又、何れの方法においても、必要に応じ重合或いは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。
【0121】
又、熱融着性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱融着性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱融着性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0122】
又、熱融着性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。その被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0123】
画像形成機能層中の熱融着性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%が更に好ましい。
【0124】
又、この態様の印刷版としての画像形成機能層の付き量としては通常0.01〜10g/m2であり、好ましくは0.1〜3g/m2であり、更に好ましくは0.2〜2g/m2である。
【0125】
未露光部の層の除去を水を用いて容易に行えるように、画像形成機能層には更に水溶性素材を含有させることができる。水溶性素材としては公知の素材を用いることができるが、特に糖類を用いることが好ましい。
【0126】
画像形成機能層の未露光部の除去は、水により糖類を溶解することで行うことができるが、糖類を含む画像形成機能層は水に速やかに溶解するため、印刷装置上で湿し水を用いて除去することも十分に可能である。
【0127】
印刷装置上での画像形成機能層の除去は版胴を回転させながら水付けローラーやインクローラーを接触させて行うことができるが、糖類を含む画像形成機能層は特別な除去操作を意識することなく、通常のPS版の刷出し操作と同様の操作で刷出すことで除去可能であり、刷出しの損紙が増加することもない。
【0128】
又、糖類を用いることで、親水性層の親水性を低下させる懸念もなく、親水性層の良好な印刷性能を維持することができる。
【0129】
この態様に用いる糖類としてはオリゴ糖が好ましい。オリゴ糖を用いることで、熱溶融性微粒子の多孔質な親水性層への溶融浸透及び/又は熱融着性微粒子の融着が抑えられ、本態様での画像形成を妨げることなく、水による速やかな除去性を付与することができる。
【0130】
オリゴ糖は水に可溶の一般に甘みを有する結晶性物質で、数個の単糖がグリコシド結合によって脱水縮合したものである。オリゴ糖は糖をアグリコンとする一種のo−グリコシドであるから、酸で容易に加水分解されて単糖を生じ、生成する単糖の分子数によって二糖、三糖、四糖、五糖などに分類される。本発明におけるオリゴ糖とは、二糖〜十糖までのものをいう。
【0131】
これらのオリゴ糖は還元基の有無によって、還元性オリゴ糖と非還元性オリゴ糖とに大別され、又単一の単糖から構成されているホモオリゴ糖と、2種類以上の単糖から構成されているヘテロオリゴ糖にも分類される。
【0132】
オリゴ糖は遊離状又は配糖類として天然に存在し、又多糖の酸又は酵素による部分加水分解によっても得られる。この他酵素によるグリコシル転移によっても種々のオリゴ糖が生成する。
【0133】
オリゴ糖は通常雰囲気中では水和物として存在することが多い。又、水和物と無水物とでは融点が異なり、例を挙げると表1に示す通りである。
【0134】
【表1】
【0135】
本発明では糖類を含有する層を水溶液で塗布形成することが好ましいため、水溶液から形成された場合は、層中に存在するオリゴ糖が水和物を形成するオリゴ糖である場合は、その融点は水和物の融点であると考えられる。
【0136】
オリゴ糖の中でもトレハロースは、比較的純度の高い状態のものが工業的に安価に入手可能であり、水への溶解度が高いにもかかわらず、吸湿性は非常に低く、機上現像性及び保存性共に非常に良好である。
【0137】
又、オリゴ糖水和物を熱溶融させて水和水を除去した後に凝固させると(凝固後短時間のうちは)無水物の結晶となるが、トレハロースは水和物よりも無水物の融点が100℃以上も高いことが特徴的である。これは赤外線露光で熱溶融し、再凝固した直後は露光済部は高融点で溶融しにくい状態となることを意味し、バンディング等の露光時の画像欠陥を起こしにくくする効果がある。本発明の目的を達成するには、オリゴ糖の中でも特にトレハロースが好ましい。
【0138】
画像形成機能層中のオリゴ糖の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、10〜80質量%が更に好ましい。
【0139】
印刷版材料の製造に当たっては、基材上に、揮発性アセチレン化合物を含有する水系塗料を塗布して塗布形成層を形成した後、乾燥過程にて該揮発性アセチレン化合物の少なくとも一部を揮発させる方法を採用する。
【0140】
アセチレン化合物として揮発性アセチレン化合物を用いると塗布形成層の塗布乾燥過程で揮発させることが可能となり、塗膜中に残すことなく塗料の濡れ性を改善することができる。これによりアセチレン化合物が塗膜中に残ることによる不具合(例えば積層塗布適性など)を解消することが可能となる。
【0141】
【実施例】
以下、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、以下の「部」は「質量部」を表す。
(基材)
基材1
水系塗布用の下引き層が設けられた厚さ188μmのPETフィルム(HS74:帝人社製)を用いた。
基材2
水系塗布用の下引き層が設けられた厚さ50μmのPETフィルム(HS74:帝人社製)を用いた。ただし、基材2の場合は下引き層を塗布形成後に240μmのアルミ板と接着剤を用いて貼合し、40℃で48時間のエイジングを行って、PET/アルミ複合版とした。
基材3
厚さ0.24mmのアルミ板:AA1050を水酸化ナトリウム水溶液を用いて脱脂した。アルミの溶解量は2g/m2であった。次いで塩酸水溶液を用いて公知の方法で電解粗面化を行い、水洗の後、水酸化ナトリウム水溶液で溶解量1g/m2の条件でエッチングし、水洗した。次いで硫酸水溶液を用いて公知の方法で陽極酸化を行い、2g/m2のAD層を形成した。十分に水洗した後に、70℃の1質量%リン酸水素二ナトリウム水溶液に30秒間浸漬した。次いで、十分に洗浄した後に乾燥して基材3を得た。表面粗さはRaで600nmであった。
【0142】
実施例1
(1)画像形成機能層塗布液の作製
以下の組成、手順で画像形成機能層塗布液1〜5を作製した。
・画像形成機能層塗布液1
下記の組成に純水を加えて固形分を5質量%とし、十分に攪拌混合した後に濾過して、画像形成機能層塗布液1を得た。
【0143】
上記アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物のサーフィノール465を下記の素材に変更した以外は同様にして画像形成機能層塗布液2〜5を得た。
・画像形成機能層塗布液2
アセチレングリコール エチレンオキサイド付加物:サーフィノール485
(エアープロダクツ社製、HLB値 17)
・画像形成機能層塗布液3
Si系界面活性剤 FZ2161(日本ユニカー社製)
・画像形成機能層塗布液4
F系界面活性剤 フタージェント251(ネオス社製)
・画像形成機能層塗布液5
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル:エマルゲン LS−114
(花王社製、HLB値 14)
(2)印刷版材料の作製
上記で作製した基材3に上記各画像形成機能層塗布液を乾燥付量が0.8g/m2となるように塗布し、50℃で3分間乾燥して印刷版材料を得た。
【0144】
印刷版材料は、(a)特別な操作を行わないもの、(b)80℃で3分間保持したもの、(c)5mmφのゴム球を先端に取り付けたペンで画像形成機能層表面を荷重を50gから50g刻みで500gまで変えて擦ったものの3種類をそれぞれ作製した。
(3)画像形成
各印刷版材料を露光ドラムに巻付け固定した。露光には波長830nm、スポット径8μmのレーザービームを用い、露光エネルギーを350mJ/cm2として、4000dpi、175線で画像を形成した。尚、dpiとは2.54cm当たりのドット数を表す。
(4)印刷方法
露光後の印刷版材料を現像無しで印刷装置:三菱重工業社製DAIYA1F−1に取り付け、コート紙、湿し水:アストロマーク3(日研化学研究所社製)2%、インク(東洋インク社製トーヨーキングハイエコーM墨)を使用して印刷を行った。
(5)印刷評価
印刷版材料に対し、以下のような評価を行った。得られた結果を表2に示す。
・刷り出し特性
上述の(a)の印刷版材料を使用し、刷り出し時の非画像部汚れの程度を評価した。
【0145】
○・・・地汚れなし
△・・・僅かに地汚れあり
×・・・強い地汚れあり
・高温耐性
上述の(b)の印刷版材料を使用し、刷り出しから500枚目の印刷物で、地汚れの程度を評価した。
【0146】
○・・・地汚れなし
△・・・僅かに地汚れあり
×・・・強い地汚れあり
・擦り圧力汚れ耐性
上述の(c)の印刷版材料を使用し、刷り出しから500枚目の印刷物で、ゴム球を先端に取り付けたペンで擦った部分が汚れとして残っている最低荷重を評価した。
【0147】
○・・・300g以上
△・・・200以上300g未満
×・・・100以上200g未満
××・・・100g未満
【0148】
【表2】
【0149】
表2から明らかなように、アセチレン化合物を含有する塗布液を使用した印刷版材料1、2の印刷評価は、刷り出し特性、高温耐性、擦り圧力汚れ耐性の何れも優れていることが判る。しかしながらアセチレン化合物の代替として別の活性剤等を使用した印刷版材料3〜5は上記評価の何れかが劣っており、実用に適していない結果となった。
【0150】
実施例2
(1)下層塗布液の作製
下記の組成、手順で下層塗布液1〜4を作製した。
上記組成に純水を加えて固形分15質量%とし、十分に攪拌混合した後、濾過して下層塗布液1とした。
上記組成に純水を加えて固形分15質量%とし、十分に攪拌混合した後、濾過して下層塗布液2とした。
・下層塗布液3
上記アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物のサーフィノール465を下記の素材に変更した以外は下層塗布液2同様にして下層塗布液3を得た。
【0151】
Si系界面活性剤 FZ2161(日本ユニカー社製)
・下層塗布液4
上記アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物のサーフィノール465を下記の素材に変更した以外は下層塗布液2同様にして下層塗布液4を得た。
【0152】
F系界面活性剤 フタージェント251(ネオス社製)
(2)親水性層塗布液の作製
下記の組成、手順でそれぞれの親水性層塗布液を作製した。
【0153】
最初に、光熱変換素材及びフィラーを含む親水性層用ペーストを作製した。
(フィラー分散液の作製)
下記の組成のフィラー分散液を作製した。
素材を上記の順に混合し、十分に攪拌した。次いで、下記の組成の親水性層用ペーストを作製した。混合、分散にはホモジナイザー(日本精機製作所製)を用い、10,000rpmで10分間の分散を行った。これにより固形分25質量%の水分散した親水性層用ペーストを得た。
下記の組成を十分に混合してコロイダルシリカ混合液1〜4を作製した。
・コロイダルシリカ混合液2の組成
上記アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物のサーフィノール465を下記の素材に変更した以外はコロイダルシリカ混合液1の組成と同様にしてコロイダルシリカ混合液2を得た。
【0154】
Si系界面活性剤 FZ2161(日本ユニカー社製)
・コロイダルシリカ混合液3の組成
上記アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物のサーフィノール465を下記の素材に変更した以外はコロイダルシリカ混合液1の組成と同様にしてコロイダルシリカ混合液3を得た。
【0155】
F系界面活性剤 フタージェント251(ネオス社製)
・コロイダルシリカ混合液4の組成
上記アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物のサーフィノール465を下記の素材に変更した以外はコロイダルシリカ混合液1の組成と同様にしてコロイダルシリカ混合液4を得た。
【0156】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル:エマルゲン LS−114
(花王社製、HLB値 14)
下記の組成を十分に攪拌混合した後、濾過して親水性層塗布液1〜4を得た。
・親水性層塗布液1
親水性層用ペースト 28.00部
コロイダルシリカ混合液1 72.00部
親水性層用ペーストを攪拌しながらコロイダルシリカ混合液1を少しずつ添加して希釈し、固形分20質量%の塗布液とした。
・親水性層塗布液2
コロイダルシリカ混合液1に変えてコロイダルシリカ混合液2を用いた以外は親水性層塗布液1と同様にして親水性層塗布液2を得た。
・親水性層塗布液3
コロイダルシリカ混合液1に変えてコロイダルシリカ混合液3を用いた以外は親水性層塗布液1と同様にして親水性層塗布液3を得た。
・親水性層塗布液4
コロイダルシリカ混合液1に変えてコロイダルシリカ混合液4を用いた以外は親水性層塗布液1と同様にして親水性層塗布液4を得た。
(3)画像形成機能層塗布液の作製
以下の組成、手順で画像形成機能層塗布液6を作製した。
・画像形成機能層塗布液6
下記の組成を十分に攪拌混合した後に濾過して、画像形成機能層塗布液6を得た。
【0157】
(4)印刷版材料の作製
基材2を用い、塗布ラインでラインスピード20m/minでワイヤーバーを用いて下層、親水性層及び画像形成機能層の各層の塗布液を塗布した。下層及び親水性層の組合せを表3に示した。
【0158】
塗布膜厚は乾燥膜厚で、下層が1.0μm、親水性層が1.5μm、画像形成機能層が0.6μmであった。塗布乾燥条件は、下層、親水性層が90℃、画像形成機能層が60℃であった。又、親水性層まで塗布した後、60℃で24時間のエイジングを行った後、画像形成機能層の塗布を行った。
(5)画像形成
得られた印刷版材料を露光ドラムに巻付け固定した。露光には波長830nm、スポット径8μmのレーザービームを用い、露光エネルギーを250mJ/cm2として、4000dpi、175線で画像を形成した。
(6)印刷方法
露光後の印刷版材料を現像無しで印刷装置:三菱重工業社製DAIYA1F−1に取り付け、上質紙(大昭和製紙社製しらおい)、湿し水:アストロマーク3(日研化学研究所社製)2%、インク(東洋インク社製トーヨーキングハイエコーM紅)を使用して印刷を行った。
(7)評価
1万枚までの印刷を行い、地汚れや塗布欠陥の状況を評価した。結果を表3に示した。
・地汚れ
○・・・なし
×・・・あり
・塗布欠陥
−はじき故障(故障数/m2)−
◎・・・0.2未満
○・・・0.2以上1未満
△・・・1以上5未満
×・・・5以上
−泡故障(故障数/m2)−
◎・・・0.2未満
○・・・0.2以上1未満
△・・・1以上5未満
×・・・5以上
【0159】
【表3】
【0160】
以下に各印刷版材料1〜8の印刷評価の詳細を記載する。尚、地汚れは印刷版材料4以外は無しであった。
印刷版材料1:全般的に汚れ無し
印刷版材料2:泡故障に起因する汚れ有り
印刷版材料3:泡故障に起因する汚れ有り
印刷版材料4:泡故障に起因する汚れ有り
印刷版材料5:下層のはじき故障部分の親水性層の削れに起因する汚れ有り
印刷版材料6:全般的に汚れ無し
印刷版材料7:下層のはじき、泡故障部分の親水性層の削れに起因する汚れ有り
印刷版材料8:下層のはじき、泡故障部分の親水性層の削れに起因する汚れ有り
表3から明らかなように、本発明の構成を採用した印刷版材料はCTPに好ましく適用可能であり、しかも地汚れ、塗布欠陥が改善されており、優れた印刷性能を有していることが判る。具体的には、印刷版材料1と6は地汚れが全く発生せず実用に適している結果となった。一方比較例については、地汚れの発生及び/又は塗布欠陥が顕著に生じており、実用に適していない結果となった。
【0161】
実施例3
アブレーションタイプの印刷版材料の作製を、以下のように基材1上にアブレート下層塗布液、親水性層塗布液、水溶性保護層塗布液を塗布して行った。
(1)アブレート下層塗布液の作製、塗布
下記の組成のアブレート下層塗布液を作製し、濾過した後、前記基材1上に#10のワイヤーバーを用いて塗布し、55℃で5分間乾燥した。
これらに純水を加えて固形分20質量%とし、十分に攪拌混合した。
(2)親水性層塗布液の作製、塗布
前記基材1上に塗布・形成されたアブレート下層上に下記組成の親水性層塗布液5を0.5μmの乾燥膜厚となるように塗布し、70℃で5分間乾燥した。親水性層の塗布故障は見られなかった。
・親水性層塗布液5の作製
下記の手順で親水性層塗布液5を作製した。最初に、下記の組成のゾルゲル液を素材の順に混合し、全体を室温で1時間攪拌した。
(ゾルゲル液)
テトラメトキシシラン 20.00部
エタノール 40.00部
純水 39.98部
硝酸 0.02部
次いで、下記の組成に純水を加えて固形分20質量%とし、サンドグラインダーと0.5mmφジルコニアビーズを用いて30分間分散した。得られた液を濾過して親水性層塗布液5を得た。
(3)水溶性保護層塗布液の作製、塗布
次いで、水溶性保護層として、カルボキシメチルセルロースナトリウム(関東化学社製、試薬)の3質量%の塗布液を作製し、濾過した後、前記親水性層の上に#5のワイヤーバーを用いて塗布し、70℃で5分間乾燥し、印刷版材料を作製した。層の付き量は0.3g/m2であった。しかし、水溶性保護層は親水性層塗布液5中の界面活性剤の溶出の影響を受けて乾燥過程でムラを生じた。
(4)画像形成/印刷方法/評価
この印刷版材料を露光ドラムに巻付け固定した。露光には波長830nm、スポット径8μmのレーザービームを用い、露光エネルギー400mJ/cm2で、4000dpi、175線で画像を形成した。しかし、保護層がムラにより厚膜となった部分はアブレーションせずに均一な画像形成ができなかった。
【0162】
上記印刷版材料の親水性層塗布液5で使用したF系界面活性剤フタージェント251を揮発性アセチレンアルコール:オルフィンB(日信化学工業社製)に変更した以外は同様にして印刷版材料を作製した。
【0163】
揮発性のアセチレンアルコールを界面活性剤として用いたことにより、親水性層の塗布故障もなく、かつ保護層も均一に塗布形成することができた。この印刷版材料を先の実施例と同様の条件で画像形成したところ、均一な画像形成ができた。
【0164】
【発明の効果】
本発明によれば、水系塗料を用いて塗布形成された塗布層を有する印刷版材料の塗布故障を低減し、かつ良好な印刷性能を有するという顕著に優れた効果を奏する。即ち、CTPに対して取り扱い性に優れ、良好な印刷性能と保存性を有すると共に塗布故障のない印刷版材料が得られる。
Claims (6)
- 基材上に少なくとも親水性層と画像形成機能層とをこの順に有する印刷版材料において、前記親水性層及び画像形成機能層が水系塗料を用いて塗布形成された層であり、かつ、該親水性層及び該画像形成機能層がアセチレン化合物を含有し、更に、該画像形成機能層が熱溶融性微粒子及び熱融着性微粒子の少なくとも一方を含有することを特徴とする印刷版材料。
- 基材上に塗布形成された層の少なくとも一層が光熱変換素材を含有することを特徴とする請求項1項記載の印刷版材料。
- 前記アセチレン化合物がアセチレングリコール、アセチレンジオール、及びアセチレンアルコールの何れかから選択されることを特徴とする請求項1または2項記載の印刷版材料。
- 前記アセチレン化合物がアセチレングリコール又はアセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物であることを特徴とする請求項3記載の印刷版材料。
- 前記アセチレン化合物のHLB値が7以上18以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の印刷版材料。
- 請求項1〜5の何れか1項記載の印刷版材料の製造方法であって基材上に、揮発性アセチレン化合物を含有する水系塗料を塗布して塗布形成層を形成した後、乾燥過程にて前記揮発性アセチレン化合物の少なくとも一部を揮発させることを特徴とする印刷版材料の製造方法。
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