JP2004230663A - 木質系成形体および木質系成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の木質系成形体は、摩擦係数が高い木質系材料が擦れ合うため、摩擦抵抗が大きく、押し出し成形等の成形性に劣っていた。
【解決手段】微粒状の木質系材料10と溶融可能な溶融混合用樹脂20と球状素材30とを、同溶融混合用樹脂を溶融させながら混合することにより、木質系材料10a,10bは球状素材30を介して擦れ合おうとする、このとき球状素材30が時計回りに回転しつつ木質系材料10a,10b同士が直接擦れ合うことを妨げるため摩擦抵抗が軽減される。さらに、このような現象が溶融混合物全体で発生するため全体として流動性がよくなる。従って、成形性や混合性が向上する。
【選択図】 図2
【解決手段】微粒状の木質系材料10と溶融可能な溶融混合用樹脂20と球状素材30とを、同溶融混合用樹脂を溶融させながら混合することにより、木質系材料10a,10bは球状素材30を介して擦れ合おうとする、このとき球状素材30が時計回りに回転しつつ木質系材料10a,10b同士が直接擦れ合うことを妨げるため摩擦抵抗が軽減される。さらに、このような現象が溶融混合物全体で発生するため全体として流動性がよくなる。従って、成形性や混合性が向上する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、木質系材料と溶融混合用樹脂とを用いて成形した木質系成形体および木質系成形体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、木材の廃材等の木質系材料を有効利用するため、微粒状とされた木質系材料と熱可塑性樹脂とを加熱し、熱可塑性樹脂を溶融させながら混合して成形することにより、木質系成形体を製造している(例えば、特許文献1参照。)。なお、木質系材料の配合割合を多くすると、温度変化による変形が少なく、木質感は向上し、製品の質が向上する。
【特許文献1】
特開2002−326852号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の木質系成形体は、摩擦係数が高い木質系材料が擦れ合うため、摩擦抵抗が大きく、押し出し成形等の成形性に劣っていた。また、流動性を確保するために熱可塑性樹脂を配合割合を多くさせると、木質感が損なわれるという課題があった。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、木質成形体の成形性、混合性がよい木質系成形体および木質系成形体の製造方法の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1にかかる発明は、微粒状の木質系材料と、溶融可能な溶融混合用樹脂と、球状素材とを、同溶融混合用樹脂を溶融させながら混合して成形した構成としてある。
上記のように構成した請求項1の発明は、溶融混合時および成形時の加熱流動状態において、非溶融となる高摩擦係数の上記木質系材料同士が互いに擦れ合って流動することとなる。ここで、上記球状素材は上記木質系材料に介在して、ベアリングとして作用するため、摩擦抵抗が抑えられる。すなわち、全体として流動性が向上するため成形速度を速くすることができるとともに、成形圧力、混合圧力を軽減させることができる。
【0005】
ここで、木質系材料は、木粉,木毛,木片,木質繊維,木質パルプ,木質繊維束,等、さまざまなものを採用可能であるし、竹繊維,麻繊維,バカス,モミガラ,稲わら等セルロースを主成分とする材料を混合してもよい。
また、木質系材料は、微粒状とされていればよく、粉末状であっても本発明にいう微粒状に含まれる。なお、木質系材料の粒度を調整することによって、木質系成形体の強度を調整することができる。
【0006】
木材は家具工場や建築現場等あらゆる場面で常用されており、これらの場面で木材の切り屑が発生すればこのような切り屑を集めれば本発明における木質系材料として使用することができる。また、木材本体を家具や建築用材等の原料にした後には多量の廃材が発生するので、このような廃材を粉砕すればよい。さらに、家具や建築用材が廃棄されたときには当該廃棄物を粉砕すればよい。このような構成によれば木質系成形体のコストが非常に低くなり、また、ゴミを低減することに大きく寄与することができるし、廃棄物リサイクルを促進することもできる。
【0007】
また、各成分の適切な配合比として、請求項2にかかる発明は、上記球状素材は1〜30重量%であり、上記木質系材料は50〜79重量%である構成としてある。
上記のように構成した請求項2の発明は、1〜30重量%の上記球状素材と、50〜79重量%の上記木質系材料が混合される。すなわち、上記木質系材料を重量比で半分以上含有させることで、見た目の木質感が維持されるとともに、ビス加工性等の木材としての加工性も維持されるため、一般の木工用の加工設備で加工することが可能となる。
【0008】
上記球状素材は、溶融混合用樹脂に非溶融かつ適度に分散できる球状のものであればよく、様々なものを採用することができる。その一例として、請求項3にかかる発明は、上記球状素材は、シリカヒュームである構成としてある。
上記のように構成した請求項3の発明は、木質成形体に球状素材として、シリカヒュームが混合される。ここで、シリカヒュームとは、半導体等のシリコン合金を製造する際に発生する蒸気をセラミックフィルター等で集塵した球状素材であって、粒径が0.1μm〜数十μmと非常に小さいとともに、シリカを85%以上含むため硬質である。そのため、成形、混合時に破壊されにくく球形状を維持することができる。従って、成形、混合の際に経時的にベアリング効果が劣化することがない。また、粒径が非常に小さいことから、比表面積が大きいため少量混合させただけでも、ベアリング効果を発揮させることができる。
【0009】
また、請求項4の発明のように、上記球状素材は、フライアッシュである構成としてもよい。
上記のように構成した請求項4の発明は、木質成形体に球状素材として、フライアッシュが混合される。ここで、フライアッシュとは石炭火力発電所から大量に排出される灰であって、粒径が0.1μm〜数十μmと非常に小さいとともに、シリカおよびアルミナを主成分とするため硬質である。そのため、シリカヒュームと同様に、成形、混合の際に経時的にベアリング効果が劣化することがないし、少量でベアリング効果を発揮することができる。
【0010】
以上説明した木質系成形体において、その製造方法に発明の重要な技術的思想が含まれていると捉えることも可能である。そこで、請求項5にかかる発明のように、木質系成形体の製造方法としても発明は成立する。むろん、請求項2〜請求項4に対応させた方法の発明が成立することは言うまでもない。
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1、請求項2、請求項5にかかる発明によれば、摩擦抵抗を減少させ混合性、成形性を向上させることが可能となる。
請求項3、請求項4にかかる発明によれば、さらに混合性、成形性を向上させることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
(1)球状素材を用いた木質系成形体とその製造方法:
(2)比較結果:
(3)考察:
(4)まとめ:
【0012】
(1)球状素材を用いた木質系成形体とその製造方法:
図1は、本発明の第一の実施形態にかかる木質系成形体とその製造方法を模式的に示している。本実施形態では、微粒状の木質系材料10と、熱可塑性樹脂(溶融混合用樹脂)20と、球状素材30とを所定の素材として、木質系成形体80を製造する。その際、従来から樹脂製品の押出成形に用いられる機械50〜70を利用して木質系成形体80を製造することにしている。
種々の工場等で発生する廃材を粉砕して微粒状の木質系材料10を得る態様が、本発明の好適な実施形態である。木質系材料10の粒径は種々の径が採用可能であり、後述する熱可塑性樹脂20によって木質系材料10同士が結合できるような粒径であればよい。なお、木質系材料10がより微粉化されると、木質系成形体80の強度を向上させることができる。
【0013】
熱可塑性樹脂20としては、種々の樹脂を採用可能であり、例えば、ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリスチレン,ポリメチルメタアクリレート,塩化ビニル,ナイロン,ポリカーボネート,ポリアセタール,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンテレフタレート等を使用可能である。むろん、これらの樹脂を複数組み合わせて使用してもよい。また、加熱混合機50に投入する際には、固形の原反として投入してもよいし、溶融された状態にして投入してもよい。
【0014】
上述したいずれかの樹脂のみを上記熱可塑性樹脂20とすることにより上記木質系成形体80を製造することができるが、本実施形態では、上記樹脂のいずれかを選択して熱可塑性樹脂20の主成分とするとともに、マレイン酸(所定の酸)を用いて選択された樹脂を変性したものを熱可塑性樹脂20の副成分としている。むろん、熱可塑性樹脂を変性させる酸はマレイン酸に限られないし、主成分とは異なる樹脂を変性したものを熱可塑性樹脂20の副成分としてもよい。熱可塑性樹脂20に占める変性した樹脂は、例えば1〜50重量%と様々な配合割合とすることができる。さらに、熱可塑性樹脂を酸により変性した樹脂も通常熱可塑性樹脂であるため、変性した樹脂のみを上記熱可塑性樹脂20として使用してもよい。
変性した樹脂を製造するには、例えば付加重合前の原料にマレイン酸を添加して付加重合を行えばよい。すると、付加重合後の高分子には、親水基の一つであるカルボキシル基が付加され、木質系材料10となじみが良くなっている。
【0015】
木質系材料10と熱可塑性樹脂20との配合割合は、木質系成形体の用途に応じて適宜決定可能である。一般に、木質系材料が多いと温度変化による変形は少なく、より軽量化され、木質感が向上する。一方、熱可塑性樹脂が多いと、加熱軟化した素材の流動性は大きく、製造された木質系成形体は強度を意味する機械的性能が大きくなり、耐水性が向上する。各素材10〜30の重量割合は、木質系成形体に要求される性質に応じて適宜好ましい比率を選択可能である。
【0016】
上記熱可塑性樹脂20は、微粒状の木質系材料10と球状素材30とともに加熱混合機50に投入され、加熱されながら木質系材料10と混合される。加熱混合機50は、下方に向かって径が徐々に狭まる略筒形状にされており、図示しないヒータや撹拌機やスクリュー等を備えている。そして、投入された原料をヒータにより加熱し、撹拌機により原料をかき混ぜながら混合し、スクリューにより混合された原料を下方に押し出す。
【0017】
また、撹拌機やスクリューの能力は、混合される素材の流動性等の性質に応じて決定すればよい。また、素材がよく溶融混合されると、良質の木質系成形体を製造することができる。攪拌機やスクリューが稼働する際に、球状素材が攪拌機、スクリュー、混合容器等に挟まれて破壊されることがないように、これらのクリアランスより小さい粒径とするのが好ましい。例えば、スクリューと加熱混合機50の内壁とのクリアランスが500μmである場合には、混合させる球状素材の粒径を500μmより小さくすればよい。
【0018】
加熱混合機50に投入された熱可塑性樹脂20は加熱されて溶融し、木質系材料10や球状素材30と混合される。ここで、木質系材料10は多孔質であるので、木質系成形体80の構造を模式的に表す図2に示すように、溶融状態の熱可塑性樹脂20は、木質系材料10に滲み込みながら強固に付着する。木質系材料は親水性であるが、熱可塑性樹脂にはマレイン酸により親水性のカルボキシル基が付与された樹脂も併用されているので、熱可塑性樹脂は容易に親水性の木質系材料に滲み込む。すなわち、所定の酸により変性した樹脂は、疎水性の熱可塑性樹脂と親水性の木質系材料との橋渡しをさせる役目を果たすことになる。従って、熱可塑性樹脂が例えばポリプロピレンのように疎水性樹脂であっても、所定の酸により親水基を付与された樹脂が併用されることにより、熱可塑性樹脂を親水性の木質系材料に強固に付着させることが可能となる。
また、木質系材料は水酸基等が存在するため、マレイン酸により変性した樹脂に含まれるカルボキシル基等の親水基によって同樹脂となじみが良くなる。
【0019】
加熱混合機50により混合された材料は、流動体とされているため、下方に押し出され、押出機60に流れ込む。本押出機60は、図示しないスクリューを備えており、混合された材料を板状に成形して押し出す。図では、混合された材料が右方向に連続して押し出している様子を示している。そして、押出機60の材料出口に取り付けられた切断機70により、固化前の混合材料を切断する。このようにして、熱可塑性樹脂を溶融させながら混合された材料を、所定の形状に成形することができる。
【0020】
そして、切断された混合材料を冷却させると、同混合材料は固化し、木質系材料10と熱可塑性樹脂20と球状素材30とから構成される木質系成形体80となる。ここで、成形された混合材料を固化させるには、同混合材料をベルトコンベア上にて自然に冷却するようにしてもよいし、製造効率を向上させるため、空冷や水冷等、強制的に冷却するようにしてもよい。なお、溶融混合用樹脂として熱可塑性樹脂を用いることにより、加熱して木質系成形や球状素材と溶融混合させて成形し、冷却して固化させるという簡易な工程で木質系成形体を製造することができる。
【0021】
以上説明したように、微粒状の木質系材料と、熱可塑性樹脂と、球状素材とを、同熱可塑性樹脂を溶融させながら混合する木質系成形体は、以下の性質を有する。
溶融流動時の摩擦抵抗が軽減されて、流動性が向上し混合性、成形性がよくなる。図2は、本実施形態にかかる木質成形体の溶融状態を模式的に示した図である。同図において、溶融した熱可塑性樹脂に微粒状の木質系材料10と球状素材30が介在している。この状態において、溶融混合物全体が流動したために木質系材料10bが紙面下方向に動こうとした場合、球状素材30がない場合には、摩擦係数が比較的大きい木質系材料同士が直接擦れ合って摩擦抵抗を発生させるが、本図のように球状素材30が混合されていれば球状素材30を介して擦れ合おうとする。このとき、球状素材30が時計回りに回転しつつ木質系材料10a,10b同士が直接擦れ合うことを妨げるため摩擦抵抗が軽減される。さらに、このような現象が溶融混合物全体で発生するため全体として流動性がよくなる。
【0022】
さらに、上述のように混合性、成形性が向上すると通常の樹脂製品を製造する装置を利用して容易に成形を行うことができるし、射出成形等の高度の流動性を要する成形方法も利用できる。また、成形物の形状の複雑化にも対応することができる。また、成形速度を速くすることが可能となるし、混合時間が短縮されるため生産性が向上する。さらに、成形、混合圧力を低下させることが可能であるため、攪拌機やスクリューを省力化することも可能となる。一方、同等の流動性を維持したまま、混合、成形温度を低下させることも可能となるため、高温下では変質して機能性が損なわれてしまうような機能性材料を付加することが可能となる。
【0023】
(2)比較結果:
以下の試料を作成し、上述のベアリング効果を比較評価した。
試料1
木粉材:建材集塵廃材 79.0%
熱可塑性樹脂:PP 19.0%
添加剤:マレイン酸変性樹脂 2.0%
球状素材:シリカヒューム 0%
試料2
木粉材:建材集塵廃材 74.0%
熱可塑性樹脂:PP 19.0%
添加剤:マレイン酸変性樹脂 2.0%
球状素材:シリカヒューム 5.0%
試料3
木粉材:建材集塵廃材 69.0%
熱可塑性樹脂:PP 19.0%
添加剤:マレイン酸変性樹脂 2.0%
球状素材:シリカヒューム 10.0%
試料4
木粉材:建材集塵廃材 59.0%
熱可塑性樹脂:PP 19.0%
添加剤:マレイン酸変性樹脂 2.0%
球状素材:シリカヒューム 20.0%
試料5
木粉材:建材集塵廃材 49.0%
熱可塑性樹脂:PP 19.0%
添加剤:マレイン酸変性樹脂 2.0%
球状素材:シリカヒューム 30.0%
試料6
木粉材:建材集塵廃材 74.0%
熱可塑性樹脂:PP 19.0%
添加剤:マレイン酸変性樹脂 2.0%
球状素材:フライアッシュ 5.0%
試料7
木粉材:建材集塵廃材 69.0%
熱可塑性樹脂:PP 19.0%
添加剤:マレイン酸変性樹脂 2.0%
球状素材:フライアッシュ 10.0%
試料8
木粉材:建材集塵廃材 59.0%
熱可塑性樹脂:PP 19.0%
添加剤:マレイン酸変性樹脂 2.0%
球状素材:フライアッシュ 20.0%
試料9
木粉材:建材集塵廃材 49.0%
熱可塑性樹脂:PP 19.0%
添加剤:マレイン酸変性樹脂 2.0%
球状素材:フライアッシュ 30.0%
以上の試料1〜試料5について、1)成形速度、2)比重、3)吸水率、4)曲げ強度、5)曲げヤング率について物性試験を行った結果を図3〜図10に示す。
【0024】
シリカヒュームを増量していくほど、球状素材が混合されていない試料1の各物性、1)成形速度、2)比重、3)吸水率、4)曲げ強度、5)曲げヤング率との差が顕著となっている。また、フライアッシュについても増量していくと1)成形速度が改善される。
図4および図10は、1)成形速度を示している。このように、シリカヒューム、フライアッシュを増量していくほど成形速度が向上している。また、ともに5%混合しただけでも、試料1の0.34m/minから、試料2の0.40m/min、試料6の0.36m/minに上昇しており改善効果が見られる。
【0025】
図5は、2)比重を示している。2)比重については、シリカヒュームを増量していくほど大きくなる傾向にある。
図6は、3)吸水率を示している。同図において、シリカヒュームを増量していくほど吸水率は低下する。また、試料2においても試料1より3.23%の改善効果が見られる。
図7は、4)曲げ強度を示している。4)曲げ強度についても試料2でも試料1より3.60Mpaの改善が見られる。
図8は、5)曲げヤング率を示している。5)曲げヤング率については、シリカヒュームを増量していくほど改善されていく。特に、試料5では試料1より1.81GPa増加し大きな改善が見られる。
【0026】
(3)考察
以上の比較から、球状素材(シリカヒューム、フライアッシュ)を配合することにより成形性、混合性が遙かに向上することが分かる。これは、本発明の意図するところであり、要因、効果は上述したとおりである。また、特にシリカヒューム、フライアッシュは超微粒状であるため比表面積が大きく小重量でもベアリング効果が発揮できるため、球状素材を5%程度配合させただけでも本効果は発揮されることが分かる。従って、球状素材を大量に混合させる必要がなく、必然的に木質系材料の配合比を多く保つことができるので、成形後には靭性、ビス加工性、見た目の質感等の木質系材料特有の利点を維持させることも可能となる。すなわち、成形、混合時には、通常の樹脂成形用の樹脂混合、成形用装置を利用して製造することができるとともに、成形後には通常の木工機械で加工することが可能となる。従って、いずれも専用設備を設ける必要がないため、設備投資が高額なものとなることもない。また、特にシリカヒューム、フライアッシュはともに超微粒状であるため、成形後の切断加工等の切削加工において、ブレード、ドリル等の摩耗が低減される。
【0027】
一方、機械的特性を示す3)吸水率、4)曲げ強度、5)曲げヤング率についても、球状素材を配合させることで改善が見られている。さらには、シリカヒューム、フライアッシュともに、木質系材料、溶融混合用樹脂よりも熱、圧力による体積変化が少ないため、より成形物の寸法精度が向上するものと考えられる。いずれも、球状素材として硬質のセラミック成分を配合したことにより、本来の木質成形体の性質にセラミックの利点が加えられたものである。このように、混合される球状素材の物性によっては、ベアリング効果以外の有益な効果も発揮させることができる。例えば、球状素材としてフェライト材を採用すれば電磁波進入防止機能を持たせることができるし、ガラスバルーン等の中空状の球状素材を採用すれば比重を低下させ軽量化することができる。
【0028】
(4)まとめ:
以上説明したように、本発明によると、球状素材の配合により、成形性、混合性が向上して木質系材料の有効利用を促進させることが可能な木質系成形体および木質系成形体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】木質系成形体とその製造方法を模式的に示す図である。
【図2】木質系成形体の構造を模式的に示す図である。
【図3】比較試験の結果を示した図である。
【図4】比較試験の結果を示した図である。
【図5】比較試験の結果を示した図である。
【図6】比較試験の結果を示した図である。
【図7】比較試験の結果を示した図である。
【図8】比較試験の結果を示した図である。
【図9】比較試験の結果を示した図である。
【図10】比較試験の結果を示した図である。
【符号の説明】
10…木質系材料
20…熱可塑性樹脂(溶融混合用樹脂)
30…球状素材
50…加熱混合機
60…押出機
70…切断機
80…木質系成形体
【発明の属する技術分野】
本発明は、木質系材料と溶融混合用樹脂とを用いて成形した木質系成形体および木質系成形体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、木材の廃材等の木質系材料を有効利用するため、微粒状とされた木質系材料と熱可塑性樹脂とを加熱し、熱可塑性樹脂を溶融させながら混合して成形することにより、木質系成形体を製造している(例えば、特許文献1参照。)。なお、木質系材料の配合割合を多くすると、温度変化による変形が少なく、木質感は向上し、製品の質が向上する。
【特許文献1】
特開2002−326852号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の木質系成形体は、摩擦係数が高い木質系材料が擦れ合うため、摩擦抵抗が大きく、押し出し成形等の成形性に劣っていた。また、流動性を確保するために熱可塑性樹脂を配合割合を多くさせると、木質感が損なわれるという課題があった。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、木質成形体の成形性、混合性がよい木質系成形体および木質系成形体の製造方法の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1にかかる発明は、微粒状の木質系材料と、溶融可能な溶融混合用樹脂と、球状素材とを、同溶融混合用樹脂を溶融させながら混合して成形した構成としてある。
上記のように構成した請求項1の発明は、溶融混合時および成形時の加熱流動状態において、非溶融となる高摩擦係数の上記木質系材料同士が互いに擦れ合って流動することとなる。ここで、上記球状素材は上記木質系材料に介在して、ベアリングとして作用するため、摩擦抵抗が抑えられる。すなわち、全体として流動性が向上するため成形速度を速くすることができるとともに、成形圧力、混合圧力を軽減させることができる。
【0005】
ここで、木質系材料は、木粉,木毛,木片,木質繊維,木質パルプ,木質繊維束,等、さまざまなものを採用可能であるし、竹繊維,麻繊維,バカス,モミガラ,稲わら等セルロースを主成分とする材料を混合してもよい。
また、木質系材料は、微粒状とされていればよく、粉末状であっても本発明にいう微粒状に含まれる。なお、木質系材料の粒度を調整することによって、木質系成形体の強度を調整することができる。
【0006】
木材は家具工場や建築現場等あらゆる場面で常用されており、これらの場面で木材の切り屑が発生すればこのような切り屑を集めれば本発明における木質系材料として使用することができる。また、木材本体を家具や建築用材等の原料にした後には多量の廃材が発生するので、このような廃材を粉砕すればよい。さらに、家具や建築用材が廃棄されたときには当該廃棄物を粉砕すればよい。このような構成によれば木質系成形体のコストが非常に低くなり、また、ゴミを低減することに大きく寄与することができるし、廃棄物リサイクルを促進することもできる。
【0007】
また、各成分の適切な配合比として、請求項2にかかる発明は、上記球状素材は1〜30重量%であり、上記木質系材料は50〜79重量%である構成としてある。
上記のように構成した請求項2の発明は、1〜30重量%の上記球状素材と、50〜79重量%の上記木質系材料が混合される。すなわち、上記木質系材料を重量比で半分以上含有させることで、見た目の木質感が維持されるとともに、ビス加工性等の木材としての加工性も維持されるため、一般の木工用の加工設備で加工することが可能となる。
【0008】
上記球状素材は、溶融混合用樹脂に非溶融かつ適度に分散できる球状のものであればよく、様々なものを採用することができる。その一例として、請求項3にかかる発明は、上記球状素材は、シリカヒュームである構成としてある。
上記のように構成した請求項3の発明は、木質成形体に球状素材として、シリカヒュームが混合される。ここで、シリカヒュームとは、半導体等のシリコン合金を製造する際に発生する蒸気をセラミックフィルター等で集塵した球状素材であって、粒径が0.1μm〜数十μmと非常に小さいとともに、シリカを85%以上含むため硬質である。そのため、成形、混合時に破壊されにくく球形状を維持することができる。従って、成形、混合の際に経時的にベアリング効果が劣化することがない。また、粒径が非常に小さいことから、比表面積が大きいため少量混合させただけでも、ベアリング効果を発揮させることができる。
【0009】
また、請求項4の発明のように、上記球状素材は、フライアッシュである構成としてもよい。
上記のように構成した請求項4の発明は、木質成形体に球状素材として、フライアッシュが混合される。ここで、フライアッシュとは石炭火力発電所から大量に排出される灰であって、粒径が0.1μm〜数十μmと非常に小さいとともに、シリカおよびアルミナを主成分とするため硬質である。そのため、シリカヒュームと同様に、成形、混合の際に経時的にベアリング効果が劣化することがないし、少量でベアリング効果を発揮することができる。
【0010】
以上説明した木質系成形体において、その製造方法に発明の重要な技術的思想が含まれていると捉えることも可能である。そこで、請求項5にかかる発明のように、木質系成形体の製造方法としても発明は成立する。むろん、請求項2〜請求項4に対応させた方法の発明が成立することは言うまでもない。
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1、請求項2、請求項5にかかる発明によれば、摩擦抵抗を減少させ混合性、成形性を向上させることが可能となる。
請求項3、請求項4にかかる発明によれば、さらに混合性、成形性を向上させることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
(1)球状素材を用いた木質系成形体とその製造方法:
(2)比較結果:
(3)考察:
(4)まとめ:
【0012】
(1)球状素材を用いた木質系成形体とその製造方法:
図1は、本発明の第一の実施形態にかかる木質系成形体とその製造方法を模式的に示している。本実施形態では、微粒状の木質系材料10と、熱可塑性樹脂(溶融混合用樹脂)20と、球状素材30とを所定の素材として、木質系成形体80を製造する。その際、従来から樹脂製品の押出成形に用いられる機械50〜70を利用して木質系成形体80を製造することにしている。
種々の工場等で発生する廃材を粉砕して微粒状の木質系材料10を得る態様が、本発明の好適な実施形態である。木質系材料10の粒径は種々の径が採用可能であり、後述する熱可塑性樹脂20によって木質系材料10同士が結合できるような粒径であればよい。なお、木質系材料10がより微粉化されると、木質系成形体80の強度を向上させることができる。
【0013】
熱可塑性樹脂20としては、種々の樹脂を採用可能であり、例えば、ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリスチレン,ポリメチルメタアクリレート,塩化ビニル,ナイロン,ポリカーボネート,ポリアセタール,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンテレフタレート等を使用可能である。むろん、これらの樹脂を複数組み合わせて使用してもよい。また、加熱混合機50に投入する際には、固形の原反として投入してもよいし、溶融された状態にして投入してもよい。
【0014】
上述したいずれかの樹脂のみを上記熱可塑性樹脂20とすることにより上記木質系成形体80を製造することができるが、本実施形態では、上記樹脂のいずれかを選択して熱可塑性樹脂20の主成分とするとともに、マレイン酸(所定の酸)を用いて選択された樹脂を変性したものを熱可塑性樹脂20の副成分としている。むろん、熱可塑性樹脂を変性させる酸はマレイン酸に限られないし、主成分とは異なる樹脂を変性したものを熱可塑性樹脂20の副成分としてもよい。熱可塑性樹脂20に占める変性した樹脂は、例えば1〜50重量%と様々な配合割合とすることができる。さらに、熱可塑性樹脂を酸により変性した樹脂も通常熱可塑性樹脂であるため、変性した樹脂のみを上記熱可塑性樹脂20として使用してもよい。
変性した樹脂を製造するには、例えば付加重合前の原料にマレイン酸を添加して付加重合を行えばよい。すると、付加重合後の高分子には、親水基の一つであるカルボキシル基が付加され、木質系材料10となじみが良くなっている。
【0015】
木質系材料10と熱可塑性樹脂20との配合割合は、木質系成形体の用途に応じて適宜決定可能である。一般に、木質系材料が多いと温度変化による変形は少なく、より軽量化され、木質感が向上する。一方、熱可塑性樹脂が多いと、加熱軟化した素材の流動性は大きく、製造された木質系成形体は強度を意味する機械的性能が大きくなり、耐水性が向上する。各素材10〜30の重量割合は、木質系成形体に要求される性質に応じて適宜好ましい比率を選択可能である。
【0016】
上記熱可塑性樹脂20は、微粒状の木質系材料10と球状素材30とともに加熱混合機50に投入され、加熱されながら木質系材料10と混合される。加熱混合機50は、下方に向かって径が徐々に狭まる略筒形状にされており、図示しないヒータや撹拌機やスクリュー等を備えている。そして、投入された原料をヒータにより加熱し、撹拌機により原料をかき混ぜながら混合し、スクリューにより混合された原料を下方に押し出す。
【0017】
また、撹拌機やスクリューの能力は、混合される素材の流動性等の性質に応じて決定すればよい。また、素材がよく溶融混合されると、良質の木質系成形体を製造することができる。攪拌機やスクリューが稼働する際に、球状素材が攪拌機、スクリュー、混合容器等に挟まれて破壊されることがないように、これらのクリアランスより小さい粒径とするのが好ましい。例えば、スクリューと加熱混合機50の内壁とのクリアランスが500μmである場合には、混合させる球状素材の粒径を500μmより小さくすればよい。
【0018】
加熱混合機50に投入された熱可塑性樹脂20は加熱されて溶融し、木質系材料10や球状素材30と混合される。ここで、木質系材料10は多孔質であるので、木質系成形体80の構造を模式的に表す図2に示すように、溶融状態の熱可塑性樹脂20は、木質系材料10に滲み込みながら強固に付着する。木質系材料は親水性であるが、熱可塑性樹脂にはマレイン酸により親水性のカルボキシル基が付与された樹脂も併用されているので、熱可塑性樹脂は容易に親水性の木質系材料に滲み込む。すなわち、所定の酸により変性した樹脂は、疎水性の熱可塑性樹脂と親水性の木質系材料との橋渡しをさせる役目を果たすことになる。従って、熱可塑性樹脂が例えばポリプロピレンのように疎水性樹脂であっても、所定の酸により親水基を付与された樹脂が併用されることにより、熱可塑性樹脂を親水性の木質系材料に強固に付着させることが可能となる。
また、木質系材料は水酸基等が存在するため、マレイン酸により変性した樹脂に含まれるカルボキシル基等の親水基によって同樹脂となじみが良くなる。
【0019】
加熱混合機50により混合された材料は、流動体とされているため、下方に押し出され、押出機60に流れ込む。本押出機60は、図示しないスクリューを備えており、混合された材料を板状に成形して押し出す。図では、混合された材料が右方向に連続して押し出している様子を示している。そして、押出機60の材料出口に取り付けられた切断機70により、固化前の混合材料を切断する。このようにして、熱可塑性樹脂を溶融させながら混合された材料を、所定の形状に成形することができる。
【0020】
そして、切断された混合材料を冷却させると、同混合材料は固化し、木質系材料10と熱可塑性樹脂20と球状素材30とから構成される木質系成形体80となる。ここで、成形された混合材料を固化させるには、同混合材料をベルトコンベア上にて自然に冷却するようにしてもよいし、製造効率を向上させるため、空冷や水冷等、強制的に冷却するようにしてもよい。なお、溶融混合用樹脂として熱可塑性樹脂を用いることにより、加熱して木質系成形や球状素材と溶融混合させて成形し、冷却して固化させるという簡易な工程で木質系成形体を製造することができる。
【0021】
以上説明したように、微粒状の木質系材料と、熱可塑性樹脂と、球状素材とを、同熱可塑性樹脂を溶融させながら混合する木質系成形体は、以下の性質を有する。
溶融流動時の摩擦抵抗が軽減されて、流動性が向上し混合性、成形性がよくなる。図2は、本実施形態にかかる木質成形体の溶融状態を模式的に示した図である。同図において、溶融した熱可塑性樹脂に微粒状の木質系材料10と球状素材30が介在している。この状態において、溶融混合物全体が流動したために木質系材料10bが紙面下方向に動こうとした場合、球状素材30がない場合には、摩擦係数が比較的大きい木質系材料同士が直接擦れ合って摩擦抵抗を発生させるが、本図のように球状素材30が混合されていれば球状素材30を介して擦れ合おうとする。このとき、球状素材30が時計回りに回転しつつ木質系材料10a,10b同士が直接擦れ合うことを妨げるため摩擦抵抗が軽減される。さらに、このような現象が溶融混合物全体で発生するため全体として流動性がよくなる。
【0022】
さらに、上述のように混合性、成形性が向上すると通常の樹脂製品を製造する装置を利用して容易に成形を行うことができるし、射出成形等の高度の流動性を要する成形方法も利用できる。また、成形物の形状の複雑化にも対応することができる。また、成形速度を速くすることが可能となるし、混合時間が短縮されるため生産性が向上する。さらに、成形、混合圧力を低下させることが可能であるため、攪拌機やスクリューを省力化することも可能となる。一方、同等の流動性を維持したまま、混合、成形温度を低下させることも可能となるため、高温下では変質して機能性が損なわれてしまうような機能性材料を付加することが可能となる。
【0023】
(2)比較結果:
以下の試料を作成し、上述のベアリング効果を比較評価した。
試料1
木粉材:建材集塵廃材 79.0%
熱可塑性樹脂:PP 19.0%
添加剤:マレイン酸変性樹脂 2.0%
球状素材:シリカヒューム 0%
試料2
木粉材:建材集塵廃材 74.0%
熱可塑性樹脂:PP 19.0%
添加剤:マレイン酸変性樹脂 2.0%
球状素材:シリカヒューム 5.0%
試料3
木粉材:建材集塵廃材 69.0%
熱可塑性樹脂:PP 19.0%
添加剤:マレイン酸変性樹脂 2.0%
球状素材:シリカヒューム 10.0%
試料4
木粉材:建材集塵廃材 59.0%
熱可塑性樹脂:PP 19.0%
添加剤:マレイン酸変性樹脂 2.0%
球状素材:シリカヒューム 20.0%
試料5
木粉材:建材集塵廃材 49.0%
熱可塑性樹脂:PP 19.0%
添加剤:マレイン酸変性樹脂 2.0%
球状素材:シリカヒューム 30.0%
試料6
木粉材:建材集塵廃材 74.0%
熱可塑性樹脂:PP 19.0%
添加剤:マレイン酸変性樹脂 2.0%
球状素材:フライアッシュ 5.0%
試料7
木粉材:建材集塵廃材 69.0%
熱可塑性樹脂:PP 19.0%
添加剤:マレイン酸変性樹脂 2.0%
球状素材:フライアッシュ 10.0%
試料8
木粉材:建材集塵廃材 59.0%
熱可塑性樹脂:PP 19.0%
添加剤:マレイン酸変性樹脂 2.0%
球状素材:フライアッシュ 20.0%
試料9
木粉材:建材集塵廃材 49.0%
熱可塑性樹脂:PP 19.0%
添加剤:マレイン酸変性樹脂 2.0%
球状素材:フライアッシュ 30.0%
以上の試料1〜試料5について、1)成形速度、2)比重、3)吸水率、4)曲げ強度、5)曲げヤング率について物性試験を行った結果を図3〜図10に示す。
【0024】
シリカヒュームを増量していくほど、球状素材が混合されていない試料1の各物性、1)成形速度、2)比重、3)吸水率、4)曲げ強度、5)曲げヤング率との差が顕著となっている。また、フライアッシュについても増量していくと1)成形速度が改善される。
図4および図10は、1)成形速度を示している。このように、シリカヒューム、フライアッシュを増量していくほど成形速度が向上している。また、ともに5%混合しただけでも、試料1の0.34m/minから、試料2の0.40m/min、試料6の0.36m/minに上昇しており改善効果が見られる。
【0025】
図5は、2)比重を示している。2)比重については、シリカヒュームを増量していくほど大きくなる傾向にある。
図6は、3)吸水率を示している。同図において、シリカヒュームを増量していくほど吸水率は低下する。また、試料2においても試料1より3.23%の改善効果が見られる。
図7は、4)曲げ強度を示している。4)曲げ強度についても試料2でも試料1より3.60Mpaの改善が見られる。
図8は、5)曲げヤング率を示している。5)曲げヤング率については、シリカヒュームを増量していくほど改善されていく。特に、試料5では試料1より1.81GPa増加し大きな改善が見られる。
【0026】
(3)考察
以上の比較から、球状素材(シリカヒューム、フライアッシュ)を配合することにより成形性、混合性が遙かに向上することが分かる。これは、本発明の意図するところであり、要因、効果は上述したとおりである。また、特にシリカヒューム、フライアッシュは超微粒状であるため比表面積が大きく小重量でもベアリング効果が発揮できるため、球状素材を5%程度配合させただけでも本効果は発揮されることが分かる。従って、球状素材を大量に混合させる必要がなく、必然的に木質系材料の配合比を多く保つことができるので、成形後には靭性、ビス加工性、見た目の質感等の木質系材料特有の利点を維持させることも可能となる。すなわち、成形、混合時には、通常の樹脂成形用の樹脂混合、成形用装置を利用して製造することができるとともに、成形後には通常の木工機械で加工することが可能となる。従って、いずれも専用設備を設ける必要がないため、設備投資が高額なものとなることもない。また、特にシリカヒューム、フライアッシュはともに超微粒状であるため、成形後の切断加工等の切削加工において、ブレード、ドリル等の摩耗が低減される。
【0027】
一方、機械的特性を示す3)吸水率、4)曲げ強度、5)曲げヤング率についても、球状素材を配合させることで改善が見られている。さらには、シリカヒューム、フライアッシュともに、木質系材料、溶融混合用樹脂よりも熱、圧力による体積変化が少ないため、より成形物の寸法精度が向上するものと考えられる。いずれも、球状素材として硬質のセラミック成分を配合したことにより、本来の木質成形体の性質にセラミックの利点が加えられたものである。このように、混合される球状素材の物性によっては、ベアリング効果以外の有益な効果も発揮させることができる。例えば、球状素材としてフェライト材を採用すれば電磁波進入防止機能を持たせることができるし、ガラスバルーン等の中空状の球状素材を採用すれば比重を低下させ軽量化することができる。
【0028】
(4)まとめ:
以上説明したように、本発明によると、球状素材の配合により、成形性、混合性が向上して木質系材料の有効利用を促進させることが可能な木質系成形体および木質系成形体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】木質系成形体とその製造方法を模式的に示す図である。
【図2】木質系成形体の構造を模式的に示す図である。
【図3】比較試験の結果を示した図である。
【図4】比較試験の結果を示した図である。
【図5】比較試験の結果を示した図である。
【図6】比較試験の結果を示した図である。
【図7】比較試験の結果を示した図である。
【図8】比較試験の結果を示した図である。
【図9】比較試験の結果を示した図である。
【図10】比較試験の結果を示した図である。
【符号の説明】
10…木質系材料
20…熱可塑性樹脂(溶融混合用樹脂)
30…球状素材
50…加熱混合機
60…押出機
70…切断機
80…木質系成形体
Claims (5)
- 微粒状の木質系材料と、溶融可能な溶融混合用樹脂と、球状素材とを、同溶融混合用樹脂を溶融させながら混合して成形したことを特徴とする木質系成形体。
- 上記球状素材は1〜30重量%であり、上記木質系材料は50〜79重量%であることを特徴とする請求項1に記載の木質系成形体。
- 上記球状素材は、シリカヒュームであることを特徴とする請求項1〜請求項2のいずれかに記載の木質系成形体。
- 上記球状素材は、フライアッシュであることを特徴とする請求項1〜請求項2のいずれかに記載の木質系成形体。
- 微粒状の木質系材料と、溶融可能な溶融混合用樹脂と、球状素材とを、同溶融混合用樹脂を溶融させながら混合して成形することを特徴とする木質系成形体の製造方法。
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JP2003020852A JP2004230663A (ja) | 2003-01-29 | 2003-01-29 | 木質系成形体および木質系成形体の製造方法 |
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- 2003-01-29 JP JP2003020852A patent/JP2004230663A/ja active Pending
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