JP2004230512A - 切削抵抗の異なる境界面を有する材料の加工装置および加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】切削抵抗の異なる境界面を有する材料において、切削加工段差の発生を抑制することができる加工装置を提供する。
【解決手段】切削抵抗の異なる境界面を有する材料10(12,13)を切削するための切削工具21と、切削工具21の刃先位置を変位させるための変位手段22,24,25と、境界面の位置において、変位手段22,24,25を制御することで、切削工具21の切込み量を調整するための調整手段とを有する。
【選択図】 図2
【解決手段】切削抵抗の異なる境界面を有する材料10(12,13)を切削するための切削工具21と、切削工具21の刃先位置を変位させるための変位手段22,24,25と、境界面の位置において、変位手段22,24,25を制御することで、切削工具21の切込み量を調整するための調整手段とを有する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、切削抵抗の異なる境界面を有する材料の加工装置および加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
材種が異なる材料が組み合わされた加工物を切削する場合、切削抵抗の異なる境界面の位置において、切削負荷が急激に変動するため、切削加工段差が発生する。そのため、従来の加工方法においては、境界面を傾斜切削し、切削抵抗を連続的に変化させることによって、切削加工段差を削減している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平09−085501号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記公報に記載された加工方法においては、切削抵抗が異なることによる、切削工具のたわみの相違を、補正することはできない。したがって、切削加工段差の削減は、十分ではなく、例えば、中ぐり切削する場合、良好な真円度を達成することが困難である。
【0005】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、切削抵抗の異なる境界面を有する材料において、切削加工段差の発生を抑制することができる加工装置および加工方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は
切削抵抗の異なる境界面を有する材料を切削するための切削工具と、
前記切削工具の刃先位置を変位させるための変位手段と、
前記境界面の位置において、前記変位手段を制御することで、前記切削工具の切込み量を調整するための調整手段と
を有することを特徴とする加工装置である。
【0007】
上記目的を達成するための請求項12に記載の発明は、
切削抵抗の異なる境界面を有する材料を切削するための加工方法であって、
切削工具の刃先が切削抵抗の異なる境界面の位置に達すると、切削工具の刃先位置を変位させ、切削工具の切込み量を調整する
ことを特徴とする加工方法である。
【0008】
【発明の効果】
上記のように構成した本発明は以下の効果を奏する。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、切削抵抗が異なることによる切削工具のたわみの相違は、境界面の位置において切削工具の切込み量を調整することによって吸収することが可能である。したがって、切削加工段差の発生が抑制され、段差の無い加工面を得ることができる。つまり、切削抵抗の異なる境界面を有する材料において、切削加工段差の発生を抑制することができる加工装置を提供することができる。
【0010】
請求項12に記載の発明によれば、切削抵抗が異なることによる切削工具のたわみの相違は、境界面の位置において切削工具の切込み量を調整することによって吸収される。したがって、切削加工段差の発生が抑制され、段差の無い加工面を得られる。つまり、切削抵抗の異なる境界面を有する材料において、切削加工段差の発生を抑制することができる加工装置を提供することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る被削材料10を説明するための断面図である。被削材料10は、自動車用エンジンのシリンダブロック12とクランクシャフトのメインジャーナルを保持するベアリングキャップ13とが組み合わされて構成される。
【0013】
シリンダブロック12は、アルミニウム合金製である。ベアリングキャップ13は、鋳鉄製である。したがって、被削材料10は、切削抵抗の異なる境界面(接合面)11を有する。なお、被削部位は、クランクシャフトベアリング孔14の内面である。
【0014】
図2は、本発明の実施の形態に係る加工装置20を説明するための側面図である。加工装置20は、切削工具21と、切削工具21の刃先位置を変位させるための変位手段と、コントローラ(不図示)とを有する。切削工具21は、切削部位であるクランクシャフトベアリング孔14(14a〜e)の内面を切削するために使用される。コントローラは、境界面11の位置において、変位手段を制御することで、切削工具21の切込み量を調整するための調整手段としての機能を有する。
【0015】
したがって、切削抵抗(切削背分力)が異なることによる切削工具(刃先)のたわみの相違は、切削工具の切込み量を調整することによって吸収される。したがって、切削抵抗の異なる境界面を有する材料において、切削加工段差の発生が抑制され、段差の無い加工面を得ることができる。
【0016】
詳述すると、切削工具21は、小軸23に取付けられる。小軸23は、主軸26の先端に取付けられている。したがって、小軸23を移動させながら回転させることで、切削工具21によってクランクシャフトベアリング孔14の内面を切削し、仕上げ加工を施すことが可能である。なお、小軸23は、例えば、ボーリングアーバやボーリングバーである。
【0017】
切削工具21の刃先位置を変位させるための変位手段は、小軸23に配置される駆動手段22と、小軸23と主軸26の間に配置される傾斜手段とを有する。
【0018】
駆動手段22は、切削工具に連結された圧電素子(駆動源)22aを有し、圧電素子22aの変位により、切削工具21の刃先位置を直接移動させることが可能である。つまり、駆動手段22は、切削工具21を被削部位(クランクシャフトベアリング孔14)に対して近接あるいは離間させることができる。
【0019】
圧電素子22aは、微小変位が可能で、高応答性を有するアクチュエータであり、切削工具21の切込み量が微小であっても、瞬時かつ高精度に制御することができる点で好ましい。しかし、駆動手段22は、圧電素子22aを有するものに限定されず、例えば、電動機や空圧あるいは油圧を駆動源として適用することも可能である。
【0020】
なお、電動機を駆動源として適用する場合、駆動手段22は、電動機と切削工具21とに連結され、電動機の回転運動を切削工具21の直進運動に変換するための伝動機構を有することが必要である。また、空圧あるいは油圧を駆動源として適用する場合、駆動手段22は、例えば、切削工具21に連結され、切削工具21を直進運動させる、空圧あるいは油圧によって作動するシリンダ手段を有する。
【0021】
傾斜手段は、小軸23が連結される弾性変形部24と、弾性変形部を変形させるための変形手段25とを有する。変形手段25は、駆動源として弾性変形部24に連結された圧電素子(不図示)を有する。
【0022】
したがって、圧電素子の変位により、小軸23を主軸26に対して傾斜させ、小軸23に取付けられている切削工具21の刃先位置を移動させることが可能である。しかし、変形手段25は、圧電素子を有するものに限定されず、例えば、電動機や空圧あるいは油圧を駆動源として適用することも可能である。
【0023】
なお、電動機を駆動源として適用する場合、変形手段25は、例えば、電動機の回転運動を直進運動に変換し、弾性変形部24を押圧することで弾性変形部24を変形させるための伝動機構を有することが必要である。
【0024】
また、空圧あるいは油圧を駆動源として適用する場合、変形手段25は、例えば、弾性変形部24と主軸の間に配置されて、弾性変形部24を押圧して変形させる、空圧あるいは油圧によって作動するシリンダ手段を有する。さらに、空圧あるいは油圧を、弾性変形部24に直接付加することによって、弾性変形部を変形させる構成を適用することも可能である。
【0025】
なお、駆動手段22および傾斜手段の一方を、必要に応じ省略することも可能である。
【0026】
加工装置20は、さらに、切削工具21の刃先位置を検出するための刃先位置検出手段27と、境界面11の位置を検出するための境界面検出手段とを有する。
【0027】
刃先位置検出手段27は、例えば、ロータリーエンコーダあるいはリニアスケールであり、主軸26の後端部に取付けられる。刃先位置検出手段27を設けることは、切削抵抗の異なる境界面11の位置における切削工具21の刃先位置を精度良く調整できる点で好ましい。
【0028】
図3および図4は、切削抵抗の異なる境界面11を検出する方法を説明するための断面図およびグラフである。図に示されるように、アルミニウム合金製のシリンダブロック12と鋳鉄製のベアリングキャップ13の境界面11の位置において、切削抵抗は急激に変化する。そのため、切削工具21に加えられる圧力を測定することで、境界面11の位置を検出することが可能である。なお、符号15は、切屑を示している。
【0029】
境界面検出手段は、例えば、圧力センサである。境界面11の位置が同一でない多様な被削材料が、適用される場合、境界面検出手段を設けることは、切削工具21の刃先調整の位置を、その都度設定する必要がない点で好ましい。
【0030】
圧力センサは、圧電素子によって構成することが可能である。したがって、本実施の形態においては、駆動手段22が有する圧電素子22aを、圧力センサとして兼用している。
【0031】
次に、本発明の実施の形態に係る加工方法を説明する。図5は、切削工具21の切込み量と切削抵抗との関係を示しているグラフ、図6は、荷重と小軸の変位量との関係を示しているグラフ、図7は、比較例に係る切削面を説明するためのグラフ、図8は、本発明の実施の形態に係る切削面を説明するためのグラフである。なお、切削工具21の刃先は、CBN(立方晶窒化硼素焼結体)、切削工具21の切込み量は、0.1mm、切削速度は、200m/分、切削送り量は、0.05mm/回転である。
【0032】
まず、主軸26を回転させ、切削工具21の刃先位置を移動させ、クランクベアリング孔14aに微小切込ませる。そして、切削工具21に連結された圧電素子22aによって、切削工具21に加えられる圧力を測定することで、切削抵抗が切り替わる時点を検出すると共に、刃先位置検出手段27によって、前記時点における位置つまり境界面の位置を、検出する。なお、境界面11の位置を予め設定している場合は、上記検出工程は、省略することも可能である。
【0033】
次に、検出された切削抵抗の切り替わる位置(境界面11の位置)に達すると、切削工具21の刃先位置を変位させ、切削工具21の切込み量(設定値)を調整し、クランクベアリング孔14a〜cの内面を切削することで仕上げ加工を施す。
【0034】
詳述すると、切削工具21の切込み量は、0.1mmに設定されているため、切削抵抗との関係(図5参照)から、アルミニウム合金製のシリンダブロック12および鋳鉄製のベアリングキャップ13の切削抵抗は、10.3Nおよび22.7Nとなる。切削抵抗に対応する荷重と小軸23の変位量との関係(図6参照)から、小軸23のたわみは、シリンダブロック12およびベアリングキャップ13に関し、2.9μmおよび5.3μmとなる。
【0035】
したがって、切削工具21のたわみの相違を考慮せず、切削工具21の切込み量を調整しない比較例においては、図7に示されるように、切削抵抗の切り替わる位置において、切削加工段差の発生がする。
【0036】
そのため、境界面11の位置において、切削工具21の切込み量(設定値)を、切削工具21のたわみの相違量(2.4μm=5.3μm−2.9μm)で調整し、ベアリングキャップ13を切削する。その結果、図8に示されるように、切削抵抗が異なることによる切削工具のたわみの相違は、吸収される。したがって、切削加工段差の発生が抑制され、段差の無い加工面が得られる。
【0037】
なお、シリンダブロック12を切削する場合、切削工具21の切込み量を設定値に対して2.9μm補正し、ベアリングキャップ13を切削する場合、切削工具21の切込み量を設定値に対して5.3μm補正することによっても、切削工具21のたわみの相違を吸収することが可能である。
【0038】
次に、被削材料10(シリンダブロック12およびベアリングキャップ13)を反転させ、クランクシャフトベアリング孔14e,14dを、切削工具21によって同様に切削する。この結果、クランクシャフトベアリング孔14(14a〜14e)は、切削加工段差を有しない良好な真円度が得られる。
【0039】
以上のように、本実施の形態においては、切削抵抗の異なる境界面を有する材料において、切削加工段差の発生を抑制することができる加工装置および加工方法を提供することができる。特に、中ぐり切削に適用する場合、良好な真円度を達成することが可能である。
【0040】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変することができる。
【0041】
例えば、切削抵抗の異なる境界面を有する材料は、異種材料からなる部品を接合したものに加え、異種材料からなる部品を機械的に当接したものを適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る被削材料を説明するための断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る加工装置を説明するための側面図である。
【図3】切削抵抗の異なる境界面の位置を検出する方法を説明するための断面図である。
【図4】切削抵抗の異なる境界面の位置を検出する方法を説明するためのグラフである。
【図5】本発明の実施の形態に係る加工方法における切削工具の切込み量と切削抵抗との関係を示しているグラフである。
【図6】荷重と小軸の変位量との関係を示しているグラフである。
【図7】比較例に係る切削面を説明するためのグラフである。
【図8】本発明の実施の形態に係る切削面を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
10…被削材料、
11…境界面、
12…シリンダブロック、
13…ベアリングキャップ、
14(14a〜14e)…クランクシャフトベアリング孔、
15…切屑、
20…加工装置、
21…切削工具、
22…駆動手段、
22a…圧電素子、
23…小軸、
24…弾性変形部、
25…変形手段、
26…主軸、
27…刃先位置検出手段。
【発明の属する技術分野】
本発明は、切削抵抗の異なる境界面を有する材料の加工装置および加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
材種が異なる材料が組み合わされた加工物を切削する場合、切削抵抗の異なる境界面の位置において、切削負荷が急激に変動するため、切削加工段差が発生する。そのため、従来の加工方法においては、境界面を傾斜切削し、切削抵抗を連続的に変化させることによって、切削加工段差を削減している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平09−085501号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記公報に記載された加工方法においては、切削抵抗が異なることによる、切削工具のたわみの相違を、補正することはできない。したがって、切削加工段差の削減は、十分ではなく、例えば、中ぐり切削する場合、良好な真円度を達成することが困難である。
【0005】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、切削抵抗の異なる境界面を有する材料において、切削加工段差の発生を抑制することができる加工装置および加工方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は
切削抵抗の異なる境界面を有する材料を切削するための切削工具と、
前記切削工具の刃先位置を変位させるための変位手段と、
前記境界面の位置において、前記変位手段を制御することで、前記切削工具の切込み量を調整するための調整手段と
を有することを特徴とする加工装置である。
【0007】
上記目的を達成するための請求項12に記載の発明は、
切削抵抗の異なる境界面を有する材料を切削するための加工方法であって、
切削工具の刃先が切削抵抗の異なる境界面の位置に達すると、切削工具の刃先位置を変位させ、切削工具の切込み量を調整する
ことを特徴とする加工方法である。
【0008】
【発明の効果】
上記のように構成した本発明は以下の効果を奏する。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、切削抵抗が異なることによる切削工具のたわみの相違は、境界面の位置において切削工具の切込み量を調整することによって吸収することが可能である。したがって、切削加工段差の発生が抑制され、段差の無い加工面を得ることができる。つまり、切削抵抗の異なる境界面を有する材料において、切削加工段差の発生を抑制することができる加工装置を提供することができる。
【0010】
請求項12に記載の発明によれば、切削抵抗が異なることによる切削工具のたわみの相違は、境界面の位置において切削工具の切込み量を調整することによって吸収される。したがって、切削加工段差の発生が抑制され、段差の無い加工面を得られる。つまり、切削抵抗の異なる境界面を有する材料において、切削加工段差の発生を抑制することができる加工装置を提供することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る被削材料10を説明するための断面図である。被削材料10は、自動車用エンジンのシリンダブロック12とクランクシャフトのメインジャーナルを保持するベアリングキャップ13とが組み合わされて構成される。
【0013】
シリンダブロック12は、アルミニウム合金製である。ベアリングキャップ13は、鋳鉄製である。したがって、被削材料10は、切削抵抗の異なる境界面(接合面)11を有する。なお、被削部位は、クランクシャフトベアリング孔14の内面である。
【0014】
図2は、本発明の実施の形態に係る加工装置20を説明するための側面図である。加工装置20は、切削工具21と、切削工具21の刃先位置を変位させるための変位手段と、コントローラ(不図示)とを有する。切削工具21は、切削部位であるクランクシャフトベアリング孔14(14a〜e)の内面を切削するために使用される。コントローラは、境界面11の位置において、変位手段を制御することで、切削工具21の切込み量を調整するための調整手段としての機能を有する。
【0015】
したがって、切削抵抗(切削背分力)が異なることによる切削工具(刃先)のたわみの相違は、切削工具の切込み量を調整することによって吸収される。したがって、切削抵抗の異なる境界面を有する材料において、切削加工段差の発生が抑制され、段差の無い加工面を得ることができる。
【0016】
詳述すると、切削工具21は、小軸23に取付けられる。小軸23は、主軸26の先端に取付けられている。したがって、小軸23を移動させながら回転させることで、切削工具21によってクランクシャフトベアリング孔14の内面を切削し、仕上げ加工を施すことが可能である。なお、小軸23は、例えば、ボーリングアーバやボーリングバーである。
【0017】
切削工具21の刃先位置を変位させるための変位手段は、小軸23に配置される駆動手段22と、小軸23と主軸26の間に配置される傾斜手段とを有する。
【0018】
駆動手段22は、切削工具に連結された圧電素子(駆動源)22aを有し、圧電素子22aの変位により、切削工具21の刃先位置を直接移動させることが可能である。つまり、駆動手段22は、切削工具21を被削部位(クランクシャフトベアリング孔14)に対して近接あるいは離間させることができる。
【0019】
圧電素子22aは、微小変位が可能で、高応答性を有するアクチュエータであり、切削工具21の切込み量が微小であっても、瞬時かつ高精度に制御することができる点で好ましい。しかし、駆動手段22は、圧電素子22aを有するものに限定されず、例えば、電動機や空圧あるいは油圧を駆動源として適用することも可能である。
【0020】
なお、電動機を駆動源として適用する場合、駆動手段22は、電動機と切削工具21とに連結され、電動機の回転運動を切削工具21の直進運動に変換するための伝動機構を有することが必要である。また、空圧あるいは油圧を駆動源として適用する場合、駆動手段22は、例えば、切削工具21に連結され、切削工具21を直進運動させる、空圧あるいは油圧によって作動するシリンダ手段を有する。
【0021】
傾斜手段は、小軸23が連結される弾性変形部24と、弾性変形部を変形させるための変形手段25とを有する。変形手段25は、駆動源として弾性変形部24に連結された圧電素子(不図示)を有する。
【0022】
したがって、圧電素子の変位により、小軸23を主軸26に対して傾斜させ、小軸23に取付けられている切削工具21の刃先位置を移動させることが可能である。しかし、変形手段25は、圧電素子を有するものに限定されず、例えば、電動機や空圧あるいは油圧を駆動源として適用することも可能である。
【0023】
なお、電動機を駆動源として適用する場合、変形手段25は、例えば、電動機の回転運動を直進運動に変換し、弾性変形部24を押圧することで弾性変形部24を変形させるための伝動機構を有することが必要である。
【0024】
また、空圧あるいは油圧を駆動源として適用する場合、変形手段25は、例えば、弾性変形部24と主軸の間に配置されて、弾性変形部24を押圧して変形させる、空圧あるいは油圧によって作動するシリンダ手段を有する。さらに、空圧あるいは油圧を、弾性変形部24に直接付加することによって、弾性変形部を変形させる構成を適用することも可能である。
【0025】
なお、駆動手段22および傾斜手段の一方を、必要に応じ省略することも可能である。
【0026】
加工装置20は、さらに、切削工具21の刃先位置を検出するための刃先位置検出手段27と、境界面11の位置を検出するための境界面検出手段とを有する。
【0027】
刃先位置検出手段27は、例えば、ロータリーエンコーダあるいはリニアスケールであり、主軸26の後端部に取付けられる。刃先位置検出手段27を設けることは、切削抵抗の異なる境界面11の位置における切削工具21の刃先位置を精度良く調整できる点で好ましい。
【0028】
図3および図4は、切削抵抗の異なる境界面11を検出する方法を説明するための断面図およびグラフである。図に示されるように、アルミニウム合金製のシリンダブロック12と鋳鉄製のベアリングキャップ13の境界面11の位置において、切削抵抗は急激に変化する。そのため、切削工具21に加えられる圧力を測定することで、境界面11の位置を検出することが可能である。なお、符号15は、切屑を示している。
【0029】
境界面検出手段は、例えば、圧力センサである。境界面11の位置が同一でない多様な被削材料が、適用される場合、境界面検出手段を設けることは、切削工具21の刃先調整の位置を、その都度設定する必要がない点で好ましい。
【0030】
圧力センサは、圧電素子によって構成することが可能である。したがって、本実施の形態においては、駆動手段22が有する圧電素子22aを、圧力センサとして兼用している。
【0031】
次に、本発明の実施の形態に係る加工方法を説明する。図5は、切削工具21の切込み量と切削抵抗との関係を示しているグラフ、図6は、荷重と小軸の変位量との関係を示しているグラフ、図7は、比較例に係る切削面を説明するためのグラフ、図8は、本発明の実施の形態に係る切削面を説明するためのグラフである。なお、切削工具21の刃先は、CBN(立方晶窒化硼素焼結体)、切削工具21の切込み量は、0.1mm、切削速度は、200m/分、切削送り量は、0.05mm/回転である。
【0032】
まず、主軸26を回転させ、切削工具21の刃先位置を移動させ、クランクベアリング孔14aに微小切込ませる。そして、切削工具21に連結された圧電素子22aによって、切削工具21に加えられる圧力を測定することで、切削抵抗が切り替わる時点を検出すると共に、刃先位置検出手段27によって、前記時点における位置つまり境界面の位置を、検出する。なお、境界面11の位置を予め設定している場合は、上記検出工程は、省略することも可能である。
【0033】
次に、検出された切削抵抗の切り替わる位置(境界面11の位置)に達すると、切削工具21の刃先位置を変位させ、切削工具21の切込み量(設定値)を調整し、クランクベアリング孔14a〜cの内面を切削することで仕上げ加工を施す。
【0034】
詳述すると、切削工具21の切込み量は、0.1mmに設定されているため、切削抵抗との関係(図5参照)から、アルミニウム合金製のシリンダブロック12および鋳鉄製のベアリングキャップ13の切削抵抗は、10.3Nおよび22.7Nとなる。切削抵抗に対応する荷重と小軸23の変位量との関係(図6参照)から、小軸23のたわみは、シリンダブロック12およびベアリングキャップ13に関し、2.9μmおよび5.3μmとなる。
【0035】
したがって、切削工具21のたわみの相違を考慮せず、切削工具21の切込み量を調整しない比較例においては、図7に示されるように、切削抵抗の切り替わる位置において、切削加工段差の発生がする。
【0036】
そのため、境界面11の位置において、切削工具21の切込み量(設定値)を、切削工具21のたわみの相違量(2.4μm=5.3μm−2.9μm)で調整し、ベアリングキャップ13を切削する。その結果、図8に示されるように、切削抵抗が異なることによる切削工具のたわみの相違は、吸収される。したがって、切削加工段差の発生が抑制され、段差の無い加工面が得られる。
【0037】
なお、シリンダブロック12を切削する場合、切削工具21の切込み量を設定値に対して2.9μm補正し、ベアリングキャップ13を切削する場合、切削工具21の切込み量を設定値に対して5.3μm補正することによっても、切削工具21のたわみの相違を吸収することが可能である。
【0038】
次に、被削材料10(シリンダブロック12およびベアリングキャップ13)を反転させ、クランクシャフトベアリング孔14e,14dを、切削工具21によって同様に切削する。この結果、クランクシャフトベアリング孔14(14a〜14e)は、切削加工段差を有しない良好な真円度が得られる。
【0039】
以上のように、本実施の形態においては、切削抵抗の異なる境界面を有する材料において、切削加工段差の発生を抑制することができる加工装置および加工方法を提供することができる。特に、中ぐり切削に適用する場合、良好な真円度を達成することが可能である。
【0040】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変することができる。
【0041】
例えば、切削抵抗の異なる境界面を有する材料は、異種材料からなる部品を接合したものに加え、異種材料からなる部品を機械的に当接したものを適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る被削材料を説明するための断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る加工装置を説明するための側面図である。
【図3】切削抵抗の異なる境界面の位置を検出する方法を説明するための断面図である。
【図4】切削抵抗の異なる境界面の位置を検出する方法を説明するためのグラフである。
【図5】本発明の実施の形態に係る加工方法における切削工具の切込み量と切削抵抗との関係を示しているグラフである。
【図6】荷重と小軸の変位量との関係を示しているグラフである。
【図7】比較例に係る切削面を説明するためのグラフである。
【図8】本発明の実施の形態に係る切削面を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
10…被削材料、
11…境界面、
12…シリンダブロック、
13…ベアリングキャップ、
14(14a〜14e)…クランクシャフトベアリング孔、
15…切屑、
20…加工装置、
21…切削工具、
22…駆動手段、
22a…圧電素子、
23…小軸、
24…弾性変形部、
25…変形手段、
26…主軸、
27…刃先位置検出手段。
Claims (15)
- 切削抵抗の異なる境界面を有する材料を切削するための切削工具と、
前記切削工具の刃先位置を変位させるための変位手段と、
前記境界面の位置において、前記変位手段を制御することで、前記切削工具の切込み量を調整するための調整手段と
を有することを特徴とする加工装置。 - 前記変位手段の駆動源は、圧電素子であることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
- 前記変位手段の駆動源は、電動機であることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
- 前記変位手段は、
前記切削工具が取付けられる小軸に配置されて、前記切削工具を前記材料の被削部位に対して近接あるいは離間させるための駆動手段、および/または、
前記小軸と主軸との間に配置されて、前記小軸を前記主軸に対して傾斜させるための傾斜手段
を有することを特徴とする請求項1に記載の加工装置。 - 前記傾斜手段は、前記小軸が連結される弾性変形部と、前記弾性変形部を変形させるための変形手段とを有することを特徴とする請求項4に記載の加工装置。
- 前記変形手段は、空圧あるいは油圧を、前記弾性変形部に付加することによって、前記弾性変形部を変形させることを特徴とする請求項5に記載の加工装置。
- 前記変形手段は、空圧あるいは油圧によって作動するシリンダ手段によって、前記弾性変形部を押圧することによって、前記弾性変形部を変形させることを特徴とする請求項5に記載の加工装置。
- 前記刃先位置を検出するための検出手段を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の加工装置。
- 前記検出手段は、ロータリーエンコーダあるいはリニアスケールであることを特徴とする請求項8に記載の加工装置。
- 前記境界面の位置を検出するための検出手段を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の加工装置。
- 前記検出手段は、切削抵抗を測定するための圧力センサを有することを特徴とする請求項10記載の加工装置。
- 切削抵抗の異なる境界面を有する材料を切削するための加工方法であって、
切削工具の刃先が切削抵抗の異なる境界面の位置に達すると、切削工具の刃先位置を変位させ、切削工具の切込み量を調整する
ことを特徴とする加工方法。 - 前記境界面の位置は、予め設定されていることを特徴とする請求項12に記載の加工方法。
- 前記境界面の位置は、少なくとも測定された切削抵抗を利用して設定されることを特徴とする請求項12に記載の加工方法。
- 前記境界面の位置は、少なくとも検出された刃先位置を利用して設定されることを特徴とする請求項12に記載の加工方法。
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JP2011011293A (ja) * | 2009-07-02 | 2011-01-20 | Honda Motor Co Ltd | ワークの内径加工方法及び装置 |
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-
2003
- 2003-01-30 JP JP2003021944A patent/JP2004230512A/ja not_active Withdrawn
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