JP2004230041A - 人工皮膚 - Google Patents
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Abstract
【課題】人間の皮膚の摩擦特性に近似する摩擦特性を有する人工皮膚を提供する。
【解決手段】本発明に係る人工皮膚10においては、擬似皮膚膜12に接触物体26が接触する際、接触物体26はまず表皮膜12表面に形成された凸部17に接触する。そして、接触物体26の接触圧力の大きさが増加して凸部17が沈下すると、接触物体26は凹部12aとも接触するようになる。つまり、人工皮膚10に対する接触物体26の圧力が小さい場合には、接触物体26は擬似皮膚膜12表面の凸部17とのみ接する。一方、人工皮膚10に対する接触物体26の圧力が大きい場合には、接触物体26は擬似皮膚膜12表面の凸部17及び凹部12aの両方と接する。ここで、凸部17の摩擦係数は凹部12aの摩擦係数より小さいので、人工皮膚10に対する接触物体26の圧力が小さい場合は、この圧力が大きい場合に比べて、低い摩擦係数で摩擦が生じる。このような摩擦特性は、人間の皮膚の摩擦特性と近似する。
【選択図】 図3
【解決手段】本発明に係る人工皮膚10においては、擬似皮膚膜12に接触物体26が接触する際、接触物体26はまず表皮膜12表面に形成された凸部17に接触する。そして、接触物体26の接触圧力の大きさが増加して凸部17が沈下すると、接触物体26は凹部12aとも接触するようになる。つまり、人工皮膚10に対する接触物体26の圧力が小さい場合には、接触物体26は擬似皮膚膜12表面の凸部17とのみ接する。一方、人工皮膚10に対する接触物体26の圧力が大きい場合には、接触物体26は擬似皮膚膜12表面の凸部17及び凹部12aの両方と接する。ここで、凸部17の摩擦係数は凹部12aの摩擦係数より小さいので、人工皮膚10に対する接触物体26の圧力が小さい場合は、この圧力が大きい場合に比べて、低い摩擦係数で摩擦が生じる。このような摩擦特性は、人間の皮膚の摩擦特性と近似する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、人工皮膚に関するものであり、特に、ロボットの表面や義肢を覆う皮膚として利用するための人工皮膚に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ロボット等の被覆に適用される人工皮膚の表面構造に関しては、ほとんど研究がすすめられていない。
【0003】
なお、乾燥状態にある人間の指と物体との間の摩擦は凝着摩擦でおこるとの見方が一般的であり、凝着摩擦は、接触圧力が増加するにつれて摩擦係数が低下するという摩擦特性を有する(図13のグラフの線A参照)。なお、図13のグラフの横軸は接触圧力(任意単位)、縦軸は摩擦係数となっている。
【0004】
【特許文献1】
特開昭64−15043号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えば人が手で物を握ったとき、手を軽く握った場合には物と手のひらとは摺動可能であり、強く握った場合には物と手のひらとは強固に結合し摺動しない。すなわち、人間の皮膚の実際の摩擦特性は、接触圧力が増加するにつれて摩擦係数が増加するものであると考えられる(図13の線B参照)。そのため、摩擦特性が凝着摩擦を示す人工皮膚では、実際の人間の皮膚と同様の摩擦特性を示さず、人間の皮膚と同様の人工皮膚が要求されるロボット等の被覆には適用できないという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、人間の皮膚の摩擦特性に近似する摩擦特性を有する人工皮膚を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明に係る人工皮膚は、表面に凹凸が形成された表皮膜を備え、表皮膜の凸部のうち、少なくともその上端の摩擦係数は、表皮膜の凹部の摩擦係数より低く、凸部は、表皮膜に接触する接触物体の接触圧力の大きさに応じて沈下することを特徴とする。
【0008】
この人工皮膚においては、表皮膜に接触物体が接触する際、接触物体はまず表皮膜の表面に形成された凸部に接触する。そして、接触物体の接触圧力の大きさが増加して凸部が沈下すると、接触物体は凹部とも接触するようになる。つまり、この人工皮膚と接触物体との接触の度合いが小さい場合、すなわち人工皮膚に対する接触物体の圧力が小さい場合には、接触物体は表皮膜表面の凸部とのみ接する。一方、人工皮膚と接触物体との接触の度合いが大きい場合、すなわち人工皮膚に対する接触物体の圧力が大きい場合には、接触物体は表皮膜表面の凸部及び凹部の両方と接する。ここで、凸部のうち、少なくともその上端の摩擦係数は凹部の摩擦係数より小さいので、人工皮膚に対する接触物体の圧力が小さい場合は、この圧力が大きい場合に比べて、低い摩擦係数での摩擦が生じる。このような摩擦特性は、人間の皮膚の摩擦特性と近似する。
【0009】
また、表皮膜は弾性を有しており、凸部のうち、少なくともその上端は、摩擦係数低減化の処理が施されて、その摩擦係数が凹部の摩擦係数より低くなっていることが好ましい。この場合、単一の材料で人工皮膚を作製することができるため、取扱い性が向上すると共に作製容易となる。
【0010】
また、表皮膜は弾性を有しており、凸部のうち、少なくともその上端は、凹部の材料の摩擦係数より低い摩擦係数の材料からなることが好ましい。この場合、凸部及び凹部の材料選択を適切におこなうことで、容易に凸部の摩擦係数を凹部の摩擦係数より低くすることができる。
【0011】
また、表皮膜には、その厚さ方向に穴が形成されており、この穴には、表皮膜の摩擦係数より低い摩擦係数を有し、穴から一端部が突出する突出部材が配置され、凸部は、穴から突出した突出部材の一端部であり、凹部は、表皮表面の穴が形成された領域の残余領域であることが好ましい。この場合、突出部材の長さを調整することで凸部の高さを調整することができるため、その調整によって人工皮膚をより人間の皮膚の摩擦特性に近づけることができる。
【0012】
また、表皮膜が搭載されるベース膜を更に備え、突出部材は弾性部材を介してベース膜と接続されていることが好ましい。この場合、所望の弾性力を有する弾性部材を選択することで、突出部材の穴内への埋没しやすさを調整することができるため、その調整によってより人間の皮膚の摩擦特性に近づけることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明に係る人工皮膚の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る人工皮膚を示した斜視部分断面図であり、図2は図1のII−II線断面図である。図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る人工皮膚10は、上層の弾性体部11Aと下層のベース部11Bとの2層構造を有している。この人工皮膚10は、上層の弾性体部11Aと下層のベース部11Bとの2層構造を有している。この人工皮膚10は、ロボットの表面を覆う部材のうち、物体を把持する部分の部材40の外表面40a上に設置される。
【0015】
弾性体部11Aは、シリコーン製の擬似皮膚膜(表皮膜)12を有しており、この擬似皮膚膜12には、その厚さ方向(図の矢印Y方向)に沿う方向に断面円形の貫通孔(穴)14が設けられている。貫通孔14の内面であって、擬似皮膚膜12の厚さ方向中央付近には段部14aが形成されており、この段部14aにおいて貫通孔14の径の大きさが変わっている。すなわち、段部14aから擬似皮膚膜12の表面12a側は小径部14bであり、段部14aからベース部11B側は大径部14cとなっている。
【0016】
この貫通孔14には、円板部分16aの平面中心から円板軸方向に円柱部分16bが突出した形状のプラスチック製の押圧ピン(突出部材)16が配置されている。すなわち、貫通孔14の大径部14c側から小径部14bに、押圧ピン16の円柱部分16bが差し込まれた配置となっている。押圧ピン16の円柱部分16bの端部は略球状に成形されており、この球状端部16cが貫通孔14から擬似皮膚膜12の表面12aに突出し、凸部17が形成されている。また、この凸部17に対して低い位置にある擬似皮膚膜12の表面12a部分により凹部が形成されている。
【0017】
なお、押圧ピン16の円柱部分16b及び円板部分16aの径はそれぞれ、貫通孔14の小径部14b及び大径部14cの径以下となっているため、押圧ピン16は貫通孔14の中心軸方向、すなわち、擬似皮膚膜12の厚さ方向(図の矢印Y方向)に摺動自在となっている。なお、貫通孔14の小径部14bの径は、押圧ピン16の円板部分16aの径より小さいため、小径部14bと大径部14cの境である貫通孔14の段部14aは、押圧ピン16の摺動範囲を制限すると共に押圧ピン16の抜け落ちを防止するストッパの機能を有する。押圧ピン16の円板部分16aの面のうち、円柱部分16bが突出する面の裏面には、円板部分16aと同径のスポンジ円板(弾性部材)18が接着固定されている。なお、このスポンジ円板18も、押圧ピン16の円板部分16aと同様に、貫通孔14の大径部14c内に配置される。
【0018】
ベース部11Bはシート状のベース膜20であり、上述した弾性体部11Aと部材40の外表面40aとの間に敷設されている。このベース膜20は、部材40と直接触れるものであり、柔軟性を有するゴムシート等が好ましい。
【0019】
擬似皮膚膜12が表面12a側から接触物体26によって押圧された場合、図3に示すように、まず凸部17である押圧ピン16の球状端部16cがその接触物体26に当接し、押圧が進むにつれ、押圧ピン16がスポンジ円板18を圧縮して貫通孔14内に埋没(沈下)する。そして、図4に示すように、押圧ピン16がその上端部16cまで貫通孔14内に収まると、接触物体26は凹部(すなわち、擬似皮膚膜12の表面)12aに接する。つまり、人工皮膚10と接触物体26との接触の度合いが小さい場合、すなわち人工皮膚10に対する接触物体26の圧力(接触圧力)が小さい場合には、接触物体26は擬似皮膚膜12表面の凸部17とのみ接する(図3参照)。一方、人工皮膚10と接触物体26との接触の度合いが大きい場合、すなわち人工皮膚10に対する接触物体26の接触圧力が大きい場合には、接触物体26は擬似皮膚膜12の凸部17及び凹部12aの両方と接する(図4参照)。なお、接触物体26が人工皮膚10から離れると、スポンジ円板18の弾性力によって押圧ピン16はもとの位置に戻る。
【0020】
そして、プラスチックの摩擦係数はシリコーンの摩擦係数より低く、プラスチック製の押圧ピン16と接触物体26との間の摩擦係数は、シリコーン製の擬似皮膚膜12と接触物体との間の摩擦係数より低い。そのため、人工皮膚10に対する接触物体の圧力が大きい場合(図4参照)は、接触圧力が小さい場合(図3参照)に比べて摩擦時の摩擦係数が高い。人工皮膚10のこのような摩擦特性は、おおよそ図13のグラフに示した破線Cのようになり、接触圧力が増加するにつれて摩擦係数が増加する人間の皮膚の摩擦特性(図13の線B)と近似する。ここで図13のグラフの破線Cにおいて、P1領域は接触物体26が凸部17とのみ接触している状態であり、P3領域は接触物体26が凸部17及び凹部12aの両方と接触している状態である。なお、P2領域は、P1領域の状態からP2領域の状態へ遷移する遷移領域である。
【0021】
以上詳細に説明したように、本発明の実施形態に係る人工皮膚10においては、接触物体26の接触圧力が増加すると、接触物体26と擬似皮膚膜12の凹部12aとが接するようになるため、人工皮膚10と接触物体26との間の摩擦係数が増加する。したがって、この人工皮膚10は、その摩擦特性が人間の皮膚の摩擦特性に近似するため、ロボットや義肢等の被覆に適用することが可能である。
【0022】
それにより、例えば、この人工皮膚10で覆ったロボットハンドにおいては、ロボットハンドと物体との接触圧力を制御することにより、ロボットハンドで物体を把持した状態で物体を摺動させたり、物体を強固に把握させたりすることができる。
【0023】
また、突出部材16の長さを調整することで凸部17の高さを調整することができるため、その調整によって人工皮膚10をより人間の皮膚の摩擦特性に近づけることができる。さらに、所望の弾性力を有するスポンジ円板18を選択することで、押圧ピン16の貫通孔14内への埋没しやすさを調整することができるため、その調整によって人工皮膚10をより人間の皮膚の摩擦特性に近づけることができる。
【0024】
次に、上述した人工皮膚10とは異なる態様の人工皮膚について、図を参照しつつ説明する。
【0025】
図5は、人工皮膚10とは異なる態様の人工皮膚10Aを示した断面図である。この人工皮膚10Aは、貫通孔、押圧ピン及びスポンジ円板の形状が異なる点でのみ、人工皮膚10と異なる。すなわち、人工皮膚10Aは、直径が変化しない貫通孔14Aを有していると共に、その貫通孔14A内に押圧ピン16の円柱部分16b(図2参照)のみからなる押圧ピン16Aを有している。また、スポンジ円板18Aの径は貫通孔14Aと略同じとなっており、このスポンジ円板18Aの両平面が接着固定されることで、押圧ピン16Aの抜け落ち防止が図られている。この人工皮膚10Aにおいても、上述した人工皮膚10と同様、接触物体26の接触圧力が増加すると、接触物体26と凹部12aとが接するようになり、人工皮膚10Aと接触物体26との間の摩擦係数が増加する。
【0026】
図6は、上述の人工皮膚とは異なる態様の人工皮膚10Bを示した断面図である。この人工皮膚10Bは、スポンジ形状の点でのみ、人工皮膚10Aと異なる。すなわち、人工皮膚10Bにおいては、人工皮膚10Aのスポンジ円板18Aに代えて、擬似皮膚膜12の下に平板状のスポンジ平板50が敷設されている。スポンジ50がこのような形状であっても、接触物体26の接触圧力が増加すると押圧ピン16Aが貫通孔14内に埋没して、接触物体26と凹部12aとが接するようになるので、人工皮膚10Bと接触物体26との間の摩擦係数が増加する。なお、スポンジ平板50はその簡素な形状からスポンジ円板18Aに比して作製が容易である上、人工皮膚10Bを作製する際、そのスポンジ平板50を敷くだけいいので、スポンジ円板18Aを貫通孔14A内に配置する人工皮膚10Aに比べて人工皮膚10Bの方が作製容易である。
【0027】
図7は、上述の人工皮膚とは異なる態様の人工皮膚10Cを示した断面図である。この人工皮膚10Cは、擬似皮膚膜がスポンジ製である点、上述したスポンジ平板50と擬似皮膚膜とが一体である点でのみ、上述した人工皮膚10Bと異なる。すなわち、人工皮膚10Cにおいては、擬似皮膚膜52の材料として押圧ピン16Aの摩擦係数よりも高い摩擦係数を有するスポンジが採用されていると共に、この擬似皮膚膜52の表面(凹部)52aには断面円形で有底の穴53が複数形成されている。そして、この穴53に、上述の人工皮膚10Bと同様の押圧ピン16Aが挿入されている。このような人工皮膚10Cにおいては、接触物体26の接触圧力が増加すると押圧ピン16Aが穴53内に埋没して、押圧ピン16Aの摩擦係数より高い摩擦係数を有する、スポンジ製の擬似皮膚膜52表面の凹部52aと接触物体26とが接するようになる。それにより、人工皮膚10Cと接触物体26との間の摩擦係数が増加する。
【0028】
図8は、上述の人工皮膚とは異なる態様の人工皮膚10Dを示した断面図である。この人工皮膚10Dは、押圧ピン16Aの材質が異なる点、スポンジ円板18Aがない点でのみ、上述した人工皮膚10Aと異なる。すなわち、押圧ピン16Aの材料として高い収縮性を有するゴムが採用されている。また、押圧ピン16Aの上端部16cはプラスチックコーティング(図示せず)されており、そのため押圧ピン16Aと接触物体26との摩擦係数は、上述した人工皮膚10等と同様である。したがって、接触物体26の接触圧力が増加すると、押圧ピン16A自体が収縮して貫通孔14A内に埋没し、接触物体26と凹部12aとが接するようになるので、人工皮膚10Dと接触物体26との間の摩擦係数が増加する。また、このように収縮性のある材料で押圧ピン16Aを構成することで、上述したスポンジ円板18,18Aやスポンジ平板50を用いずに人工皮膚を作製することが可能である。
【0029】
図9は、上述の人工皮膚とは異なる態様の人工皮膚10Eの一片を示した斜視図である。この人工皮膚10Eは、上述した押圧ピンの代わりに、角棒状の押圧キー(突出部材)54が採用されている。すなわち、擬似皮膚膜12には互いに平行なキー溝(穴)56が複数本形成されており、このキー溝56内に角棒状スポンジ58を介して角棒状押圧キー54が配置されている。スポンジ58の上下面には接着剤(図示せず)が塗布されており、このスポンジ58を挟んで押圧キー54とベース膜20とが結合されている。この押圧キー54、キー溝56及びスポンジ58の相互関係は、上述の人工皮膚10Aの押圧ピン16A、貫通孔14A及びスポンジ円板18Aの相互関係と略同じである。つまり、接触物体26の接触圧力が増加すると押圧キー54がキー溝56に埋没し、接触物体26と擬似皮膚膜12表面の凹部12aとが接するようになる。それにより、人工皮膚10Eと接触物体26との間の摩擦係数が増加する。
【0030】
図10は、上述の人工皮膚とは異なる態様の人工皮膚10Fの一片を示した斜視図である。この人工皮膚10Fは、平板状の擬似皮膚膜12上にストライプ状の凸部60が形成されている。この凸部60は、ペースト状のプラスチックを擬似皮膚膜12上にスクリーン印刷すると共に、そのプラスチックを凝固することによって形成される。すなわち、この凸部60もプラスチック製であり、シリコーン製の擬似皮膚膜12より摩擦係数が低い。この人工皮膚10Fにおいては、接触物体26の接触圧力が増加すると、ストライプ状の凸部60に押圧された擬似皮膚膜12が弾性変形して、凸部60が擬似皮膚膜12に押しこまれる。それにより、この人工皮膚10Fは、接触物体26の接触圧力が増加すると、上述の人工皮膚10A等と同様に、擬似皮膚膜12表面の凹部12aと接触物体26とが接するようになり、人工皮膚10Fと接触物体26との間の摩擦係数が増加する。なお、図10に二点鎖線で示したように、この人工皮膚10Fは、直交する2方向の凸部60,62が格子状に配列された凸部を有する態様であってもよい。
【0031】
図11は、上述の人工皮膚とは異なる態様の人工皮膚10Gの断面図である。この人工皮膚10Gは、擬似皮膚膜12が複数の隆起部(凸部)64を有しており、各凸部64の上端64aには摩擦係数低減化処理が施されている。この摩擦係数低減化処理とは、擬似皮膚膜12を構成するシリコーンに対しておこなう焼き付け処理である。それにより、凸部64の上端64aが変質し、擬似皮膚膜12のうち、その上端64aの部分の摩擦係数だけが低くなっている。したがって、擬似皮膚膜12の隆起していない部分(凹部)66及び摩擦係数低減化処理が施されていない凸部64の摩擦係数は、凸部64の上端64aの摩擦係数より高くなっている。したがって、この人工皮膚10Gにおいては、接触物体26は、まず摩擦係数低減化処理が施された凸部64の上端64aに接し、接触物体26の接触圧力が増加すると凸部64が沈下して接触物体26が凹部66にも接するようになる。したがって、接触物体26の接触圧力が増加すると、人工皮膚10Gと接触物体26との間の摩擦係数が増加する。また、この人工皮膚10Gにおいては、単一の材料(シリコーン)のみで作製されているため、取扱い性に優れると共に作製容易である。
【0032】
図12は、上述の人工皮膚とは異なる態様の人工皮膚10Hの断面図である。この人工皮膚10Hは、凸部64の上端に対して摩擦係数低減化処理を施す代わりに、擬似皮膚膜12の凹部66に擬似皮膚膜12を構成するシリコーンより摩擦係数の高いシリコーン68を塗布した、凹部70を形成した点で、上述の人工皮膚10Gと異なる。この人工皮膚10Hにおいては、接触物体26は、まず凸部64に接し、接触物体26の接触圧力が増加すると凹部70にも接するようになる。したがって、接触物体26の接触圧力が増加すると、人工皮膚10Gと接触物体26との間の摩擦係数が増加する。
【0033】
なお、上述した人工皮膚10G,10Hにおいては、図1に示した人工皮膚10のように凸部をマトリクスドット状に整列させる以外に、ストライプ状、格子状、同心円の縞模様状、人間の指紋状等に成形しても良い。
【0034】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、擬似皮膚膜の材料は、シリコーンに限定されず、ゴム、ウレタン等の弾性材料であってよく、また人工皮膚10、人工皮膚10A、人工皮膚10B、人工皮膚10C、人工皮膚10D、人工皮膚10E及び人工皮膚10Fの態様と同等の態様における疑似皮膚膜の材料においては、硬質プラスチック等の剛性材料であってもよい。また、押圧ピンの材質は、プラスチックに限定されず、硬質ゴム、金属、ガラス等でもよい。このような材料群から、擬似皮膚膜及び押圧ピンの材料を適切に選択することで、容易に凸部17の摩擦係数を凹部12aの摩擦係数より低くすることができる。
【0035】
さらに、スポンジ円板及びスポンジ平板は、適宜、シリコーン円板(平板)、ゴム円板(平板)、ウレタン円板(平板)、バネ等の弾性部材に代替することが可能である。また、上述の人工皮膚は、ロボットの物体を把持する部分の部材への適用に限定されず、ロボットの表面全般に適用してもよく、また義手や義足などの義肢に適用してもよい。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、人間の皮膚の摩擦特性に近似する摩擦特性を有する人工皮膚が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る人工皮膚の部分断面斜視図である。
【図2】図1の人工皮膚のII−II線断面図である。
【図3】人工皮膚が接触物体に押圧される様子を示した図である。
【図4】接触物体が擬似皮膚膜に接した状態を示した図である。
【図5】人工皮膚の一態様を示した断面図である。
【図6】人工皮膚の一態様を示した断面図である。
【図7】人工皮膚の一態様を示した断面図である。
【図8】人工皮膚の一態様を示した断面図である。
【図9】人工皮膚の一態様を示した斜視図である。
【図10】人工皮膚の一態様を示した斜視図である。
【図11】人工皮膚の一態様を示した断面図である。
【図12】人工皮膚の一態様を示した断面図である。
【図13】接触圧力と摩擦係数との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H…人工皮膚、12,52…擬似皮膚膜、12a,52a,66,70…凹部、14,14A…貫通孔、16,16A…押圧ピン、17,54,60,62,64…凸部、18,18A,50,58…スポンジ、20…ベース膜、53…穴、54…押圧キー、56…キー溝。
【発明の属する技術分野】
本発明は、人工皮膚に関するものであり、特に、ロボットの表面や義肢を覆う皮膚として利用するための人工皮膚に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ロボット等の被覆に適用される人工皮膚の表面構造に関しては、ほとんど研究がすすめられていない。
【0003】
なお、乾燥状態にある人間の指と物体との間の摩擦は凝着摩擦でおこるとの見方が一般的であり、凝着摩擦は、接触圧力が増加するにつれて摩擦係数が低下するという摩擦特性を有する(図13のグラフの線A参照)。なお、図13のグラフの横軸は接触圧力(任意単位)、縦軸は摩擦係数となっている。
【0004】
【特許文献1】
特開昭64−15043号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えば人が手で物を握ったとき、手を軽く握った場合には物と手のひらとは摺動可能であり、強く握った場合には物と手のひらとは強固に結合し摺動しない。すなわち、人間の皮膚の実際の摩擦特性は、接触圧力が増加するにつれて摩擦係数が増加するものであると考えられる(図13の線B参照)。そのため、摩擦特性が凝着摩擦を示す人工皮膚では、実際の人間の皮膚と同様の摩擦特性を示さず、人間の皮膚と同様の人工皮膚が要求されるロボット等の被覆には適用できないという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、人間の皮膚の摩擦特性に近似する摩擦特性を有する人工皮膚を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明に係る人工皮膚は、表面に凹凸が形成された表皮膜を備え、表皮膜の凸部のうち、少なくともその上端の摩擦係数は、表皮膜の凹部の摩擦係数より低く、凸部は、表皮膜に接触する接触物体の接触圧力の大きさに応じて沈下することを特徴とする。
【0008】
この人工皮膚においては、表皮膜に接触物体が接触する際、接触物体はまず表皮膜の表面に形成された凸部に接触する。そして、接触物体の接触圧力の大きさが増加して凸部が沈下すると、接触物体は凹部とも接触するようになる。つまり、この人工皮膚と接触物体との接触の度合いが小さい場合、すなわち人工皮膚に対する接触物体の圧力が小さい場合には、接触物体は表皮膜表面の凸部とのみ接する。一方、人工皮膚と接触物体との接触の度合いが大きい場合、すなわち人工皮膚に対する接触物体の圧力が大きい場合には、接触物体は表皮膜表面の凸部及び凹部の両方と接する。ここで、凸部のうち、少なくともその上端の摩擦係数は凹部の摩擦係数より小さいので、人工皮膚に対する接触物体の圧力が小さい場合は、この圧力が大きい場合に比べて、低い摩擦係数での摩擦が生じる。このような摩擦特性は、人間の皮膚の摩擦特性と近似する。
【0009】
また、表皮膜は弾性を有しており、凸部のうち、少なくともその上端は、摩擦係数低減化の処理が施されて、その摩擦係数が凹部の摩擦係数より低くなっていることが好ましい。この場合、単一の材料で人工皮膚を作製することができるため、取扱い性が向上すると共に作製容易となる。
【0010】
また、表皮膜は弾性を有しており、凸部のうち、少なくともその上端は、凹部の材料の摩擦係数より低い摩擦係数の材料からなることが好ましい。この場合、凸部及び凹部の材料選択を適切におこなうことで、容易に凸部の摩擦係数を凹部の摩擦係数より低くすることができる。
【0011】
また、表皮膜には、その厚さ方向に穴が形成されており、この穴には、表皮膜の摩擦係数より低い摩擦係数を有し、穴から一端部が突出する突出部材が配置され、凸部は、穴から突出した突出部材の一端部であり、凹部は、表皮表面の穴が形成された領域の残余領域であることが好ましい。この場合、突出部材の長さを調整することで凸部の高さを調整することができるため、その調整によって人工皮膚をより人間の皮膚の摩擦特性に近づけることができる。
【0012】
また、表皮膜が搭載されるベース膜を更に備え、突出部材は弾性部材を介してベース膜と接続されていることが好ましい。この場合、所望の弾性力を有する弾性部材を選択することで、突出部材の穴内への埋没しやすさを調整することができるため、その調整によってより人間の皮膚の摩擦特性に近づけることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明に係る人工皮膚の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る人工皮膚を示した斜視部分断面図であり、図2は図1のII−II線断面図である。図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る人工皮膚10は、上層の弾性体部11Aと下層のベース部11Bとの2層構造を有している。この人工皮膚10は、上層の弾性体部11Aと下層のベース部11Bとの2層構造を有している。この人工皮膚10は、ロボットの表面を覆う部材のうち、物体を把持する部分の部材40の外表面40a上に設置される。
【0015】
弾性体部11Aは、シリコーン製の擬似皮膚膜(表皮膜)12を有しており、この擬似皮膚膜12には、その厚さ方向(図の矢印Y方向)に沿う方向に断面円形の貫通孔(穴)14が設けられている。貫通孔14の内面であって、擬似皮膚膜12の厚さ方向中央付近には段部14aが形成されており、この段部14aにおいて貫通孔14の径の大きさが変わっている。すなわち、段部14aから擬似皮膚膜12の表面12a側は小径部14bであり、段部14aからベース部11B側は大径部14cとなっている。
【0016】
この貫通孔14には、円板部分16aの平面中心から円板軸方向に円柱部分16bが突出した形状のプラスチック製の押圧ピン(突出部材)16が配置されている。すなわち、貫通孔14の大径部14c側から小径部14bに、押圧ピン16の円柱部分16bが差し込まれた配置となっている。押圧ピン16の円柱部分16bの端部は略球状に成形されており、この球状端部16cが貫通孔14から擬似皮膚膜12の表面12aに突出し、凸部17が形成されている。また、この凸部17に対して低い位置にある擬似皮膚膜12の表面12a部分により凹部が形成されている。
【0017】
なお、押圧ピン16の円柱部分16b及び円板部分16aの径はそれぞれ、貫通孔14の小径部14b及び大径部14cの径以下となっているため、押圧ピン16は貫通孔14の中心軸方向、すなわち、擬似皮膚膜12の厚さ方向(図の矢印Y方向)に摺動自在となっている。なお、貫通孔14の小径部14bの径は、押圧ピン16の円板部分16aの径より小さいため、小径部14bと大径部14cの境である貫通孔14の段部14aは、押圧ピン16の摺動範囲を制限すると共に押圧ピン16の抜け落ちを防止するストッパの機能を有する。押圧ピン16の円板部分16aの面のうち、円柱部分16bが突出する面の裏面には、円板部分16aと同径のスポンジ円板(弾性部材)18が接着固定されている。なお、このスポンジ円板18も、押圧ピン16の円板部分16aと同様に、貫通孔14の大径部14c内に配置される。
【0018】
ベース部11Bはシート状のベース膜20であり、上述した弾性体部11Aと部材40の外表面40aとの間に敷設されている。このベース膜20は、部材40と直接触れるものであり、柔軟性を有するゴムシート等が好ましい。
【0019】
擬似皮膚膜12が表面12a側から接触物体26によって押圧された場合、図3に示すように、まず凸部17である押圧ピン16の球状端部16cがその接触物体26に当接し、押圧が進むにつれ、押圧ピン16がスポンジ円板18を圧縮して貫通孔14内に埋没(沈下)する。そして、図4に示すように、押圧ピン16がその上端部16cまで貫通孔14内に収まると、接触物体26は凹部(すなわち、擬似皮膚膜12の表面)12aに接する。つまり、人工皮膚10と接触物体26との接触の度合いが小さい場合、すなわち人工皮膚10に対する接触物体26の圧力(接触圧力)が小さい場合には、接触物体26は擬似皮膚膜12表面の凸部17とのみ接する(図3参照)。一方、人工皮膚10と接触物体26との接触の度合いが大きい場合、すなわち人工皮膚10に対する接触物体26の接触圧力が大きい場合には、接触物体26は擬似皮膚膜12の凸部17及び凹部12aの両方と接する(図4参照)。なお、接触物体26が人工皮膚10から離れると、スポンジ円板18の弾性力によって押圧ピン16はもとの位置に戻る。
【0020】
そして、プラスチックの摩擦係数はシリコーンの摩擦係数より低く、プラスチック製の押圧ピン16と接触物体26との間の摩擦係数は、シリコーン製の擬似皮膚膜12と接触物体との間の摩擦係数より低い。そのため、人工皮膚10に対する接触物体の圧力が大きい場合(図4参照)は、接触圧力が小さい場合(図3参照)に比べて摩擦時の摩擦係数が高い。人工皮膚10のこのような摩擦特性は、おおよそ図13のグラフに示した破線Cのようになり、接触圧力が増加するにつれて摩擦係数が増加する人間の皮膚の摩擦特性(図13の線B)と近似する。ここで図13のグラフの破線Cにおいて、P1領域は接触物体26が凸部17とのみ接触している状態であり、P3領域は接触物体26が凸部17及び凹部12aの両方と接触している状態である。なお、P2領域は、P1領域の状態からP2領域の状態へ遷移する遷移領域である。
【0021】
以上詳細に説明したように、本発明の実施形態に係る人工皮膚10においては、接触物体26の接触圧力が増加すると、接触物体26と擬似皮膚膜12の凹部12aとが接するようになるため、人工皮膚10と接触物体26との間の摩擦係数が増加する。したがって、この人工皮膚10は、その摩擦特性が人間の皮膚の摩擦特性に近似するため、ロボットや義肢等の被覆に適用することが可能である。
【0022】
それにより、例えば、この人工皮膚10で覆ったロボットハンドにおいては、ロボットハンドと物体との接触圧力を制御することにより、ロボットハンドで物体を把持した状態で物体を摺動させたり、物体を強固に把握させたりすることができる。
【0023】
また、突出部材16の長さを調整することで凸部17の高さを調整することができるため、その調整によって人工皮膚10をより人間の皮膚の摩擦特性に近づけることができる。さらに、所望の弾性力を有するスポンジ円板18を選択することで、押圧ピン16の貫通孔14内への埋没しやすさを調整することができるため、その調整によって人工皮膚10をより人間の皮膚の摩擦特性に近づけることができる。
【0024】
次に、上述した人工皮膚10とは異なる態様の人工皮膚について、図を参照しつつ説明する。
【0025】
図5は、人工皮膚10とは異なる態様の人工皮膚10Aを示した断面図である。この人工皮膚10Aは、貫通孔、押圧ピン及びスポンジ円板の形状が異なる点でのみ、人工皮膚10と異なる。すなわち、人工皮膚10Aは、直径が変化しない貫通孔14Aを有していると共に、その貫通孔14A内に押圧ピン16の円柱部分16b(図2参照)のみからなる押圧ピン16Aを有している。また、スポンジ円板18Aの径は貫通孔14Aと略同じとなっており、このスポンジ円板18Aの両平面が接着固定されることで、押圧ピン16Aの抜け落ち防止が図られている。この人工皮膚10Aにおいても、上述した人工皮膚10と同様、接触物体26の接触圧力が増加すると、接触物体26と凹部12aとが接するようになり、人工皮膚10Aと接触物体26との間の摩擦係数が増加する。
【0026】
図6は、上述の人工皮膚とは異なる態様の人工皮膚10Bを示した断面図である。この人工皮膚10Bは、スポンジ形状の点でのみ、人工皮膚10Aと異なる。すなわち、人工皮膚10Bにおいては、人工皮膚10Aのスポンジ円板18Aに代えて、擬似皮膚膜12の下に平板状のスポンジ平板50が敷設されている。スポンジ50がこのような形状であっても、接触物体26の接触圧力が増加すると押圧ピン16Aが貫通孔14内に埋没して、接触物体26と凹部12aとが接するようになるので、人工皮膚10Bと接触物体26との間の摩擦係数が増加する。なお、スポンジ平板50はその簡素な形状からスポンジ円板18Aに比して作製が容易である上、人工皮膚10Bを作製する際、そのスポンジ平板50を敷くだけいいので、スポンジ円板18Aを貫通孔14A内に配置する人工皮膚10Aに比べて人工皮膚10Bの方が作製容易である。
【0027】
図7は、上述の人工皮膚とは異なる態様の人工皮膚10Cを示した断面図である。この人工皮膚10Cは、擬似皮膚膜がスポンジ製である点、上述したスポンジ平板50と擬似皮膚膜とが一体である点でのみ、上述した人工皮膚10Bと異なる。すなわち、人工皮膚10Cにおいては、擬似皮膚膜52の材料として押圧ピン16Aの摩擦係数よりも高い摩擦係数を有するスポンジが採用されていると共に、この擬似皮膚膜52の表面(凹部)52aには断面円形で有底の穴53が複数形成されている。そして、この穴53に、上述の人工皮膚10Bと同様の押圧ピン16Aが挿入されている。このような人工皮膚10Cにおいては、接触物体26の接触圧力が増加すると押圧ピン16Aが穴53内に埋没して、押圧ピン16Aの摩擦係数より高い摩擦係数を有する、スポンジ製の擬似皮膚膜52表面の凹部52aと接触物体26とが接するようになる。それにより、人工皮膚10Cと接触物体26との間の摩擦係数が増加する。
【0028】
図8は、上述の人工皮膚とは異なる態様の人工皮膚10Dを示した断面図である。この人工皮膚10Dは、押圧ピン16Aの材質が異なる点、スポンジ円板18Aがない点でのみ、上述した人工皮膚10Aと異なる。すなわち、押圧ピン16Aの材料として高い収縮性を有するゴムが採用されている。また、押圧ピン16Aの上端部16cはプラスチックコーティング(図示せず)されており、そのため押圧ピン16Aと接触物体26との摩擦係数は、上述した人工皮膚10等と同様である。したがって、接触物体26の接触圧力が増加すると、押圧ピン16A自体が収縮して貫通孔14A内に埋没し、接触物体26と凹部12aとが接するようになるので、人工皮膚10Dと接触物体26との間の摩擦係数が増加する。また、このように収縮性のある材料で押圧ピン16Aを構成することで、上述したスポンジ円板18,18Aやスポンジ平板50を用いずに人工皮膚を作製することが可能である。
【0029】
図9は、上述の人工皮膚とは異なる態様の人工皮膚10Eの一片を示した斜視図である。この人工皮膚10Eは、上述した押圧ピンの代わりに、角棒状の押圧キー(突出部材)54が採用されている。すなわち、擬似皮膚膜12には互いに平行なキー溝(穴)56が複数本形成されており、このキー溝56内に角棒状スポンジ58を介して角棒状押圧キー54が配置されている。スポンジ58の上下面には接着剤(図示せず)が塗布されており、このスポンジ58を挟んで押圧キー54とベース膜20とが結合されている。この押圧キー54、キー溝56及びスポンジ58の相互関係は、上述の人工皮膚10Aの押圧ピン16A、貫通孔14A及びスポンジ円板18Aの相互関係と略同じである。つまり、接触物体26の接触圧力が増加すると押圧キー54がキー溝56に埋没し、接触物体26と擬似皮膚膜12表面の凹部12aとが接するようになる。それにより、人工皮膚10Eと接触物体26との間の摩擦係数が増加する。
【0030】
図10は、上述の人工皮膚とは異なる態様の人工皮膚10Fの一片を示した斜視図である。この人工皮膚10Fは、平板状の擬似皮膚膜12上にストライプ状の凸部60が形成されている。この凸部60は、ペースト状のプラスチックを擬似皮膚膜12上にスクリーン印刷すると共に、そのプラスチックを凝固することによって形成される。すなわち、この凸部60もプラスチック製であり、シリコーン製の擬似皮膚膜12より摩擦係数が低い。この人工皮膚10Fにおいては、接触物体26の接触圧力が増加すると、ストライプ状の凸部60に押圧された擬似皮膚膜12が弾性変形して、凸部60が擬似皮膚膜12に押しこまれる。それにより、この人工皮膚10Fは、接触物体26の接触圧力が増加すると、上述の人工皮膚10A等と同様に、擬似皮膚膜12表面の凹部12aと接触物体26とが接するようになり、人工皮膚10Fと接触物体26との間の摩擦係数が増加する。なお、図10に二点鎖線で示したように、この人工皮膚10Fは、直交する2方向の凸部60,62が格子状に配列された凸部を有する態様であってもよい。
【0031】
図11は、上述の人工皮膚とは異なる態様の人工皮膚10Gの断面図である。この人工皮膚10Gは、擬似皮膚膜12が複数の隆起部(凸部)64を有しており、各凸部64の上端64aには摩擦係数低減化処理が施されている。この摩擦係数低減化処理とは、擬似皮膚膜12を構成するシリコーンに対しておこなう焼き付け処理である。それにより、凸部64の上端64aが変質し、擬似皮膚膜12のうち、その上端64aの部分の摩擦係数だけが低くなっている。したがって、擬似皮膚膜12の隆起していない部分(凹部)66及び摩擦係数低減化処理が施されていない凸部64の摩擦係数は、凸部64の上端64aの摩擦係数より高くなっている。したがって、この人工皮膚10Gにおいては、接触物体26は、まず摩擦係数低減化処理が施された凸部64の上端64aに接し、接触物体26の接触圧力が増加すると凸部64が沈下して接触物体26が凹部66にも接するようになる。したがって、接触物体26の接触圧力が増加すると、人工皮膚10Gと接触物体26との間の摩擦係数が増加する。また、この人工皮膚10Gにおいては、単一の材料(シリコーン)のみで作製されているため、取扱い性に優れると共に作製容易である。
【0032】
図12は、上述の人工皮膚とは異なる態様の人工皮膚10Hの断面図である。この人工皮膚10Hは、凸部64の上端に対して摩擦係数低減化処理を施す代わりに、擬似皮膚膜12の凹部66に擬似皮膚膜12を構成するシリコーンより摩擦係数の高いシリコーン68を塗布した、凹部70を形成した点で、上述の人工皮膚10Gと異なる。この人工皮膚10Hにおいては、接触物体26は、まず凸部64に接し、接触物体26の接触圧力が増加すると凹部70にも接するようになる。したがって、接触物体26の接触圧力が増加すると、人工皮膚10Gと接触物体26との間の摩擦係数が増加する。
【0033】
なお、上述した人工皮膚10G,10Hにおいては、図1に示した人工皮膚10のように凸部をマトリクスドット状に整列させる以外に、ストライプ状、格子状、同心円の縞模様状、人間の指紋状等に成形しても良い。
【0034】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、擬似皮膚膜の材料は、シリコーンに限定されず、ゴム、ウレタン等の弾性材料であってよく、また人工皮膚10、人工皮膚10A、人工皮膚10B、人工皮膚10C、人工皮膚10D、人工皮膚10E及び人工皮膚10Fの態様と同等の態様における疑似皮膚膜の材料においては、硬質プラスチック等の剛性材料であってもよい。また、押圧ピンの材質は、プラスチックに限定されず、硬質ゴム、金属、ガラス等でもよい。このような材料群から、擬似皮膚膜及び押圧ピンの材料を適切に選択することで、容易に凸部17の摩擦係数を凹部12aの摩擦係数より低くすることができる。
【0035】
さらに、スポンジ円板及びスポンジ平板は、適宜、シリコーン円板(平板)、ゴム円板(平板)、ウレタン円板(平板)、バネ等の弾性部材に代替することが可能である。また、上述の人工皮膚は、ロボットの物体を把持する部分の部材への適用に限定されず、ロボットの表面全般に適用してもよく、また義手や義足などの義肢に適用してもよい。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、人間の皮膚の摩擦特性に近似する摩擦特性を有する人工皮膚が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る人工皮膚の部分断面斜視図である。
【図2】図1の人工皮膚のII−II線断面図である。
【図3】人工皮膚が接触物体に押圧される様子を示した図である。
【図4】接触物体が擬似皮膚膜に接した状態を示した図である。
【図5】人工皮膚の一態様を示した断面図である。
【図6】人工皮膚の一態様を示した断面図である。
【図7】人工皮膚の一態様を示した断面図である。
【図8】人工皮膚の一態様を示した断面図である。
【図9】人工皮膚の一態様を示した斜視図である。
【図10】人工皮膚の一態様を示した斜視図である。
【図11】人工皮膚の一態様を示した断面図である。
【図12】人工皮膚の一態様を示した断面図である。
【図13】接触圧力と摩擦係数との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H…人工皮膚、12,52…擬似皮膚膜、12a,52a,66,70…凹部、14,14A…貫通孔、16,16A…押圧ピン、17,54,60,62,64…凸部、18,18A,50,58…スポンジ、20…ベース膜、53…穴、54…押圧キー、56…キー溝。
Claims (5)
- 表面に凹凸が形成された表皮膜を備え、
前記表皮膜の凸部のうち、少なくともその上端の摩擦係数は、前記表皮膜の凹部の摩擦係数より低く、
前記凸部は、前記表皮膜に接触する接触物体の接触圧力の大きさに応じて沈下する、人工皮膚。 - 前記表皮膜は弾性を有しており、
前記凸部のうち、少なくともその上端は、摩擦係数低減化の処理が施されて、その摩擦係数が前記凹部の摩擦係数より低くなっている、請求項1に記載の人工皮膚。 - 前記表皮膜は弾性を有しており、
前記凸部のうち、少なくともその上端は、前記凹部の材料の摩擦係数より低い摩擦係数の材料からなる、請求項1に記載の人工皮膚。 - 前記表皮膜には、その厚さ方向に穴が形成されており、
この穴には、前記表皮膜の摩擦係数より低い摩擦係数を有し、前記穴から一端部が突出する突出部材が配置され、
前記凸部は、前記穴から突出した前記突出部材の一端部であり、前記凹部は、前記表皮表面の前記穴が形成された領域の残余領域である、人工皮膚。 - 前記表皮膜が搭載されるベース膜を更に備え、前記突出部材は弾性部材を介して前記ベース膜と接続されている、請求項4に記載の人工皮膚。
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