JP2004230532A - 人工表皮 - Google Patents

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雄大 多々良
Masahiro Umiga
正博 海賀
Takashi Hayashi
隆志 林
Shigeki Sugano
重樹 菅野
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Abstract

【課題】センシング感度の向上が図られた人工表皮を提供する。
【解決手段】本発明に係る人工表皮10は、複数のセンシングポイント20bを有するセンシング面20aにおいて、接触物体26の圧力分布を検出するセンサ20と、センシング面20a上に搭載されると共に、センシングポイント20bの位置に対応する表面12a位置に突部17を有する弾性体部10Aとを備える。この人工表皮10においては、その表面12aに接触物体26が接触する際、弾性体部10Aの突部17がまず接触物体26に当接される。この突部17内においては、人工表皮10の面方向(矢印Z方向)への圧力の分散が抑制される。そのため、接触物体26の接触による圧力は、センサ20のセンシングポイント20bに集中する。したがって、接触物体26が人工表皮10の表面12aに接触した際、その接触物体26の圧力分布を感度よく検出することができる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧力の測定に適用される人工表皮に関し、特に、ロボットの表面を覆う皮膚として利用するための人工表皮に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ロボットの被覆に適用される人工皮膚の表面構造に関しては、ほとんど研究がすすめられていない。
【0003】
【特許文献1】
特開昭64−15043号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、上記特許文献1には、硬度の異なる二種類の材料で構成される義手に関する技術が開示されており、その材料として熱可塑性プラスチック(ポリ塩化ビニル)及び気泡性材料が示されているものの、義手の使用に際し化粧手袋をかぶせる旨の記載があり、やはり人工皮膚の表面構造に関しては全く考慮されていない。したがって、ロボットの触覚センサ上に上記特許文献1に示されたようなポリ塩化ビニル製の平坦な弾性膜を搭載して、人工表皮を作製した場合には、以下のような問題があった。
【0005】
すなわち、図7に示すように、ロボットのセンサ設置部材70のセンサ設置面70a上に設置されるセンサ72と、そのセンサ72上に搭載される弾性膜74とを備えた人工表皮76においては、その表面76a側から接触物体78を接触させた場合、接触物体78の接触に伴って弾性膜74内部に発生する応力は弾性膜の厚さ方向(図の矢印X方向)だけでなく厚さ方向から傾いた方向にもはたらき、その結果として接触による圧力が分散する。そのため、圧力値の検出をおこなうセンサ72は、そのセンシングポイント72aにおいて、接触物体78が人工表皮76を押圧した際の圧力を感度よく検出することができず、接触物体78が人工表皮76を押圧する領域や圧力値を精度よく検出することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、センシング感度の向上が図られた人工表皮を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る人工表皮は、複数のセンシングポイントを有するセンシング面において、接触物体の圧力分布を検出するセンサと、センシング面上に搭載されると共に、センシングポイントの位置に対応する表面位置に突部を有する表皮膜とを備える。
【0008】
この人工表皮においては、その表面に接触物体が接触する際、表皮膜の突部がまず接触物体に当接される。この突部内においては、人工表皮の面方向への圧力の分散が抑制される。そのため、接触物体の接触による圧力は、表皮膜の突部の位置に対応する位置に配置されたセンサのセンシングポイントに集中する。したがって、接触物体が人工表皮の表面に接触した際、その接触物体の圧力分布を感度よく検出することができる。
【0009】
また、表皮膜は弾性を有し、突部は、センシングポイントの位置に対応する表皮膜の表面領域が隆起して形成されていることが好ましい。この場合、単一の材料で表皮膜を構成することが可能であり、人工表皮の構造が簡素になるため、作製が容易になると共に取扱い性が向上する。
【0010】
また、表皮膜は、センシングポイントの位置に対応する位置に、この表皮膜を厚さ方向に貫通する押圧部材を有しており、突部は、表皮膜の表面側に突出した押圧部材の一端部であることが好ましい。この場合、接触物体が人工表皮の表面に接触した際の圧力は、押圧部材を介してセンサのセンシングポイントに伝達されるため、人工表皮の面方向への圧力分散がさらに抑制される。したがって、押圧部材の位置に対応した位置に配置されたセンサのセンシングポイントにおいて、接触物体が接触した際の圧力を感度よく検出することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明に係る人工表皮の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る人工表皮を示した斜視部分断面図であり、図2は図1のII−II線断面図である。図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る人工表皮10は、上層の弾性体部10Aと下層のセンサ部10Bとの2層構造を有している。この人工表皮10は、ロボットの表面を覆う部材のうち、物体を把持する部分の部材40の外表面(センサ設置面)40a上に設置され、部材40に接触する接触物体から受ける圧力の分布状況、すなわち加圧位置とその位置における圧力の大きさとを検出する。
【0013】
弾性体部10Aは、シリコーン製の擬似皮膚膜(表皮膜)12を有しており、この擬似皮膚膜12には、その厚さ方向(図の矢印Y方向)に沿う方向に断面円形の貫通孔14が設けられている。貫通孔14の内面であって、擬似皮膚膜12の厚さ方向中央付近には段部14aが形成されており、この段部14aにおいて貫通孔14の径の大きさが変わっている。すなわち、段部14aから擬似皮膚膜12の表面12a側は小径部14bであり、段部14aからセンサ部10B側は大径部14cとなっている。
【0014】
この貫通孔14には、円板部分16aの平面中心から円板軸方向に円柱部分16bが突出した形状のプラスチック製の押圧ピン(押圧部材)16が配置されている。すなわち、貫通孔14の大径部14c側から小径部14bに、押圧ピン16の円柱部分16bが差し込まれた配置となっている。押圧ピン16の円柱部分16bの端部は略球状に成形されており、この球状端部16cが貫通孔14から擬似皮膚膜12の表面12aに突出し、突部17が形成されている。
【0015】
なお、押圧ピン16の円柱部分16b及び円板部分16aの径はそれぞれ、貫通孔14の小径部14b及び大径部14cの径以下となっているため、押圧ピン16は貫通孔14の中心軸方向、すなわち、擬似皮膚膜12の厚さ方向(図の矢印Y方向)に摺動自在となっている。なお、貫通孔14の小径部14bの径は、押圧ピン16の円板部分16aの径より小さいため、小径部14bと大径部14cの境である貫通孔14の段部14aは、押圧ピン16の摺動範囲を制限すると共に押圧ピン16の抜け落ちを防止するストッパの機能を有する。押圧ピン16の円板部分16aの面のうち、円柱部分16bが突出する面の裏面には、円板部分16aと同径のスポンジ円板18が接着固定されている。なお、このスポンジ円板18も、押圧ピン16の円板部分16aと同様に、貫通孔14の大径部14cに配置される。
【0016】
センサ部10Bはシート状のセンサ20であり、上述した弾性体部10Aと部材40の外表面40aとの間に敷設されている。このセンサ20は、縦ライン部分22と横ライン部分24とが格子状に重ね合わせ配列された、いわゆる静電容量型タクタイルセンサであり、このセンサ20の上面がセンシング面20aとなっている。このセンサ20は、図示しない測定装置により、センシング面20aの領域のうち、縦ライン部分22と横ライン部分24とが交差する領域20bにおける静電容量の変化を測定する。そして、その静電容量の変化から、この領域(センシングポイント)20bにおける重ね合わせ方向(図の矢印Y方向)の圧力を測定する。なお、センサ20は、静電容量型タクタイルセンサ以外に、抵抗型タクタイルセンサ等でもよく、抵抗型タクタイルセンサにおいては抵抗値の変化に基づきセンシングポイントの圧力が測定される。
【0017】
弾性体部10Aとセンサ部10Bとは、押圧ピン16に取り付けられたスポンジ円板18の位置と、センサ20のセンシングポイント20bとが一致するように重畳されている。したがって、図3に示すように、擬似皮膚膜12が表面12a側から接触物体26によって押圧された場合、まず突部17である押圧ピン16の球状端部16cがその接触物体26に当接し、押圧が進むにつれ、押圧ピン16がスポンジ円板18を圧縮して貫通孔14内に埋没する。そして、圧縮されたスポンジ円板18の弾性力によりセンサ20のセンシングポイント20bが加圧され、このセンシングポイント20bにおける圧力検出がおこなわれる。このとき、人工表皮10のうち接触物体26に接触している部分は、押圧ピン16だけであるため、接触物体26からの押圧力は、押圧ピン16を通してセンサ20に伝達される。したがって、接触物体26の接触による圧力は、人工表皮10の面方向(図の矢印Z方向)への分散が抑制され、接触物体26の接触面26a直下のセンシングポイント20bに集中する。なお、接触物体26が人工表皮10から離れると、スポンジ円板18の弾性力によって押圧ピン16はもとの位置に戻る。
【0018】
以上詳細に説明したように、本発明の実施形態に係る人工表皮10においては、接触物体26の接触による圧力が押圧ピン16を介してセンサ20に伝達されるため、接触物体26が人工表皮10の表面12aに接触した際、その接触物体26の圧力分布を感度よく検出することができ、従来の人工表皮76(図7参照)に比べてセンシング感度が向上する。なお、押圧ピン16の球状端部16cが貫通孔14内に全て埋没して、擬似皮膚膜12の表面12aが接触物体26のからの押圧力をうける場合であっても、その押圧力はより硬度の高い押圧ピン16を介してセンサ20に伝達されるため、接触物体26の圧力分布を感度よく検出することができる。
【0019】
次に、上述した人工表皮の異なる態様について、図4及び図5を参照しつつ説明する。図4は人工表皮10とは異なる人工表皮30を示した斜視部分断面図であり、図5は図4に示した人工表皮30のV−V線断面図である。人工表皮30は、スポンジ形状の点でのみ、人工表皮10と異なる。すなわち、人工表皮30においては、人工表皮10のスポンジ18に代えて、擬似皮膚膜12とセンサ20との間に平板状のスポンジ平板32が敷設されている。スポンジ32がこのような形状であっても、接触物体26の接触による圧力は押圧ピン16を介してセンサ20に伝達されると共に、接触物体26が人工表皮10から離れた場合にはスポンジ32の弾性力によって押圧ピン16がもとの位置に戻る。
【0020】
したがって、本発明の実施形態に係る人工表皮30においても、接触物体26の接触による圧力が押圧ピン16を介してセンサ20に伝達されるため、接触物体26が人工表皮30の表面12aに接触した際、その接触物体26の圧力分布を感度よく検出することができるため、従来の人工表皮76(図7参照)に比べてセンシング感度が向上する。また、スポンジ平板32はその簡素な形状からスポンジ円板18に比して作製が容易である上、人工表皮30を作製する際、そのスポンジ平板32をセンサ20上に敷くだけいいので、スポンジ円板18を貫通孔14内に配置する人工表皮10に比べて、人工表皮30は作製容易となっている。
【0021】
次に、上述した人工表皮10及び人工表皮30とは異なる態様について、図6を参照しつつ説明する。図6は人工表皮10及び人工表皮30とは異なる人工表皮34を示した断面図である。この人工表皮34は、上述した人工表皮10及び人工表皮30とは弾性体部10Aの部分のみ異なる。すなわち、人工表皮34の弾性体部34Aは、シリコーン製の擬似皮膚膜36のみで構成されている。この擬似皮膚膜36は、センサ20のセンシングポイント20bの位置において、その上面の領域が隆起した形状となっており、その隆起部分が突部38となっている。
【0022】
人工表皮34の上面34a側から接触物体26が接触すると、この突部38にまず接触物体26の接触面26aが当接する。そして、この突部38の面方向(図の矢印Z方向)にはシリコーンが存在しないため、突部38においては、接触物体26の接触による押圧力の面方向への分散は抑制される。したがって、この人工表皮34においても、接触物体の接触による圧力がセンシングポイント20bに集中して伝達される。そのため、接触物体26が人工表皮10の表面12aに接触した際、その接触物体26の圧力分布を感度よく検出することができ、従来の人工表皮76(図7参照)に比べてセンシング感度が向上する。
【0023】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、擬似皮膚膜の材料は、シリコーンに限定されず、ゴム、ウレタン等の弾性材料であってよく、また人工表皮10及び人工表皮30の態様と同等の態様における疑似皮膚膜の材料においては、硬質プラスチック等の剛性材料であってもよい。また、押圧ピンとセンサとの間のスポンジ円板及びスポンジ平板は、適宜、シリコーン円板(平板)、ゴム円板(平板)、ウレタン円板(平板)、バネ等の弾性部材に代替することが可能である。さらに、人工表皮表面の突起の数は、センサのセンシングポイントの数と一致しなくてもよく、適宜増減することができる。また、上述の人工表皮は、ロボットの物体を把持する部分の部材への適用に限定されず、ロボットの表面全般に適用してもよく、また義手や義足などの義肢に適用してもよい。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、センシング感度の向上が図られた人工表皮が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る人工表皮の斜視部分断面図である。
【図2】図1の人工表皮のII−II線断面図である。
【図3】図1の人工表皮に接触物体が接触する様子を示した図である。
【図4】人工表皮の異なる態様を示した斜視部分断面図である。
【図5】図4の人工表皮のV−V線断面図である。
【図6】人工表皮の異なる態様を示した断面図である。
【図7】従来技術に係る人工表皮を示した断面図である。
【符号の説明】
10,30,34,76…人工表皮、12,36,74…擬似皮膚膜、14…貫通孔、16…押圧ピン、17,38…突部、18,32…スポンジ、20…センサ、20a…センシング面、20b…センシングポイント、26,78…接触物体、40,70…ロボットの部材。

Claims (3)

  1. 複数のセンシングポイントを有するセンシング面において、接触物体の圧力分布を検出するセンサと、
    前記センシング面上に搭載されると共に、前記センシングポイントの位置に対応する表面位置に突部を有する表皮膜とを備える人工表皮。
  2. 前記表皮膜は弾性を有し、前記突部は、前記センシングポイントの位置に対応する前記表皮膜の表面領域が隆起して形成されている、請求項1に記載の人工表皮。
  3. 前記表皮膜は、前記センシングポイントの位置に対応する位置に、この表皮膜を厚さ方向に貫通する押圧部材を有しており、
    前記突部は、前記表皮膜の表面側に突出した前記押圧部材の一端部である、請求項1に記載の人工表皮。
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