JP2004229962A - 生体組織補填体の製造方法および装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】細胞の健全性を害することなく、生体組織補填材に細胞を効率的に播種する。
【解決手段】接着性の細胞Cを浮遊させた状態で含有する培地121をポリオレフィン製の容器123内に貯留するとともに、培地121内に生体組織補填材122を投入して容器123に振動を付与する生体組織補填体の製造方法を提供する。
【選択図】 図1
【解決手段】接着性の細胞Cを浮遊させた状態で含有する培地121をポリオレフィン製の容器123内に貯留するとともに、培地121内に生体組織補填材122を投入して容器123に振動を付与する生体組織補填体の製造方法を提供する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、生体組織補填体の製造方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、骨腫瘍摘出や外傷等により生じた骨の欠損部に、骨補填材を補填することにより、骨を再生させて欠損部を修復することが可能になってきている。骨補填材としては、ハイドロキシアパタイト(HAP)やリン酸三カルシウム(TCP)が知られているが、体内に異物を残さないとする考え方から、例えば、β−TCPのようなリン酸カルシウム多孔体からなる足場材が使用される。β−TCPを骨欠損部の骨細胞に接触させておくと、破骨細胞がβ−TCPを食べ、骨芽細胞が新しい骨を形成する、いわゆるリモデリングが行われる。すなわち、骨欠損部に補填された骨補填材は、経時的に自家骨に置換されていくことになる。
【0003】
一方、術後の骨欠損部の修復速度を高めるために、患者から採取した骨髄間葉系細胞を骨補填材とともに培養することにより製造される培養骨を使用することが提案されている。培養されることにより骨補填材を足場にして増殖した多くの骨髄間葉系細胞を含む培養骨を骨欠損部に補填するので、手術後に体内で細胞を増殖させる方法と比較すると、自家骨に置換されるまでの日数を大幅に短縮することができる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
このような培養骨は、一般に、患者から採取した骨髄細胞をフラスコ内で一次培養して必要細胞数まで増加させた後に、トリプシンのような蛋白質分解酵素を用いて細胞をフラスコから剥離する。そして、これを骨補填材に付着させて骨形成培地内に留置して二次培養を行うことにより製造される(例えば、非特許文献2参照。)。
【0005】
【非特許文献1】
植村他2名,「生分解性β−TCP多孔材料を用いた骨におけるティッシュエンジニアリング−生体内で強度を増す新しい材料オスフェリオン−」,メディカル朝日,朝日新聞社,2001年10月1日,第30巻,第10号,p.46−49
【非特許文献2】
吉川,「骨髄間葉系細胞による培養真皮、培養骨−骨髄間葉系細胞による再生医療−」,バイオインダストリー,株式会社シーエムシー出版,2001年,第18巻,第7号,p.46−53
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、骨補填材のような生体組織補填材は、一般に、ブロック状に形成されているので、表面に細胞を付着させる作業、すなわち細胞の播種作業は、生体組織補填材の全ての表面に一面ずつ行わなければならず、煩わしいものであった。また、細胞が播種された骨補填材をピンセット等の取り扱い器具によって何度も把持する必要があり、細胞の健全性が害される不都合が考えられる。
【0007】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、細胞の健全性を害することなく、生体組織補填材に細胞を効率的に播種することができる生体組織補填体の製造方法および装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は、以下の手段を提供する。
請求項1に係る発明は、接着性の細胞を浮遊させた状態で含有する培地をポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)製の容器内に貯留するとともに、該培地内に生体組織補填材を投入して容器に振動を付与する生体組織補填体の製造方法を提供する。
この発明によれば、培地内に浮遊している接着性の細胞が、培地内に投入された生体組織補填材に付着することにより生体組織補填体が製造される。この場合において、容器が、細胞の付着しにくいポリオレフィンにより構成されているので、細胞は容器に付着することなく、効率よく生体組織補填材に付着させられる。また、容器に振動が付与されることにより、培地内部の細胞および生体組織補填材に振動が伝達され、細胞が生体組織補填材に接触する機会が増加させられて、さらに効率よく付着させられることになる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の生体組織補填体の製造方法において、容器に付与する振動が、容器を略水平方向に往復移動させる製造方法を提供する。
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の生体組織補填体の製造方法において、容器に付与する振動が、容器を略水平軸線回りに往復揺動させる製造方法を提供する。
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の生体組織補填体の製造方法において、容器に付与する振動が、超音波発生器により付与される製造方法を提供する。
これらの発明によれば、培地中に浮遊している接着性の細胞を、培地内に投入された生体組織補填材の表面に簡易かつ効率的に付着させることが可能となる。
【0010】
請求項5に係る発明は、接着性の細胞を浮遊させた状態で含有する培地をポリオレフィン製の容器内に貯留するとともに、該培地内に生体組織補填材を投入して、生体組織補填材に振動を付与する生体組織補填体の製造方法を提供する。
この発明によれば、請求項1に係る発明と同様に、培地内における細胞と生体組織補填材との接触の機会を増加させ、細胞を生体組織補填材に効率的に付着させることが可能となる。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の生体組織補填材の製造方法において、生体組織補填体に付与する振動が、培地内において生体組織補填材を回転させる製造方法を提供する。
この発明によれば、容器に振動を与える場合と同様に、簡易かつ効率的に細胞を生体組織補填材の表面に付着させることが可能となる。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の生体組織補填体の製造方法において、培地中に張られる網状部材上に生体組織補填材を載置する製造方法を提供する。
この発明によれば、培地内に張られた網状部材上に生体組織補填材を載置することにより、網状部材を介して生体組織補填材の下面にも細胞が付着させられることになる。したがって、細胞を全面に付着させることが可能となる。
【0013】
請求項8に係る発明は、接着性の細胞を浮遊させた状態で含有する培地を貯留するポリオレフィン製の容器と、該容器に振動を付与する加振装置とを備える生体組織補填体の製造装置を提供する。
この発明によれば、加振装置を作動させることにより容器に振動を付与するので、容器内に貯留されている培地およびその中に投入されている生体組織補填材が加振される。容器がポリオレフィン製なので、細胞を容器に付着させることなく、生体組織補填材に付着させて、効率的に生体組織補填体を製造することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態に係る生体組織補填体の製造方法および装置について、図面を参照して以下に説明する。
図2に、本実施形態に係る生体組織補填体の製造装置100の全体概要図を示す。本実施形態に係る生体組織補填体の製造装置100は、外部から観察可能な透明な壁材により密閉された空間Sの内部に、複数の培養容器101を1つずつ収容可能な複数の培養室102を備えた細胞培養部103と、前記空間S内を走行可能な走行台車104と、培養容器101内の細胞を遠心分離するための遠心分離機105と、培地交換等を行うための2台のマニピュレータ106,107(培地交換手段)と、培地、トリプシンのような蛋白質分解酵素や成長因子を貯留する容器108を、例えば、4℃の低温状態に保持する保冷室109と、一次培養された細胞を生体組織補填材に付着させる播種装置120とを備えている。
【0015】
図中符号110は、空間S内部に清浄な下降空気流を送る空気清浄部、符号111は、タッチパネル式のモニタを有する制御装置、符号112はマニピュレータ106,107の先端に着脱され、培養容器101毎に交換されるピペット113を収容するピペット収容部、符号114は、培地交換時に培養容器101を載置する作業台,符号115は、上記播種装置120を構成する加振装置を示している。
【0016】
培養容器101は、例えば、上方に開口する円形シャーレ状の容器であって、内部に培地および細胞を収容できるようになっている。また、培養容器101は、細胞の培養過程に応じて最適な環境を細胞に与えるため、培養工程が進行するにつれて底面積の広いものに移し替えられるように、種々の大きさのものが用意されている。
【0017】
前記細胞培養部103の各培養室102は、走行台車104側の開閉扉および区画壁によって密閉されることにより、他の培養室102等から隔離されるようになっている。また、各培養室102内は、所定の温度(例えば、37±0.5℃)、湿度(例えば、100%)およびCO2濃度(例えば、5%)等の培養条件が維持されるようになっている。また、これらの培養室102内の実際の温度、湿度およびCO2濃度等の培養室内情報を検出するセンサ(図示略)がそれぞれ備えられている。
【0018】
前記走行台車104には、培養容器を搭載する載置台116と、該載置台116を昇降させる昇降機構117と、載置台116に搭載された図示しない移載機構とが設けられている。移載機構は、載置台116が培養室102に位置決めされたときに、培養室102に対して培養容器101を出し入れするように構成されている。
【0019】
前記培地を貯留する容器108には、培地の溶存酸素濃度や糖度等の培地情報を検出する培地情報検出手段(図示略)が備えられている。また、培地、トリプシン、成長因子等を貯留する容器108は、マニピュレータ107に接続され、図示しないバルブの開閉によって、マニピュレータ107において培養容器101内に培地等が投入されるようになっている。
【0020】
前記制御装置111は、各細胞に対する培養のメニューを記憶しているとともに、各メニュー項目に対応して、走行台車104、マニピュレータ106,107、バルブ等の動作を制御するようになっている。また、制御装置111には、各種情報を記憶するデータベース(図示略)が備えられている。また、制御装置111には、カレンダー機能が搭載されていて、メニュー項目に対応して細胞に対して行われた培地交換等の作業の日付をデータベースに記憶することができるようになっている。また、培地交換の際には、交換された培地、供給された成長因子、ビタミン等の量や種類等を含む培地交換情報が、メニュー項目から抽出されて、記憶されるようになっている。
【0021】
前記播種装置120は、図1に示されるように、培地121および生体組織補填材122を収容可能な培養容器123と、該培養容器123を載置して、これに水平方向の振動を付与する加振装置115とを備えている。生体組織補填材122は、例えば、β−TCP多孔体からなるブロック状の骨補填材122である。前記培養容器123は、培養容器101と同等の形状をしたポリプロピレン製の容器である。
【0022】
このように構成された本実施形態に係る細胞培養装置100の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る細胞培養装置100に、患者から採取された骨髄液が投入されると、骨髄液は所定の培養容器101あるいは遠心分離容器(図示略)に収容された状態で、走行台車104によって遠心分離機まで搬送され、そこで旋回されることにより、比重の重い骨髄細胞を抽出される。
【0023】
抽出された骨髄細胞は、予め調製されている培地とともに適当な培養容器101内に投入され混合される。培地の一部は取り出されて感染検査に送られる。そして、骨髄細胞および培地を投入した培養容器101は走行台車104の載置台116に搭載されて、空いている培養室102まで搬送される。
この状態で、培養室102内においては骨髄液および培地が所定の温度、湿度およびCO2濃度等の培養条件に維持される。
【0024】
そして、これにより、所定時間にわたって一定培養条件下で細胞が一次培養される。細胞の培養途中の所定の交換時期には、培養室102から培養容器101が移載機構の作動により取り出される。
【0025】
培養室102から取り出された培養容器101は、走行台車104によって搬送されて、作業台114上に載置される。そこで、ピペット収容部112から新たなピペット113を装着したマニピュレータ106が、該ピペット113を培養容器101まで搬送して、ピペット113の先端を培養容器101内の培地に接触させ吸引する。ピペット113を充分な内容量のものとしておくことにより、吸引した培地をピペット113内のみに収容してピペット113ごと廃棄することができる。これにより、マニピュレータ106に培地を付着させることが防止できる。なお、吸引した廃棄培地を廃棄することなく感染検査に送ることにしてもよい。
【0026】
そして、この状態において、同じ培養容器101内でさらに培養することが必要な場合には、マニピュレータ107およびバルブの作動により培養容器101内に新たな培地等が供給される。培地等が供給されたときには、その量および種類、培地情報検出手段により検出された培地内の溶存酸素濃度や糖度等の培地情報がデータベースに記憶される。そして、新たな培地が供給された培養容器101は、再度、走行台車104によって空いている培養室102まで運ばれる。
【0027】
上記状態において、培養容器101を変えることが必要となった場合には、マニピュレータ107とバルブの作動により、トリプシンの容器108からトリプシンを供給される。これにより、培養容器101の底面に付着していた細胞が剥離される。この状態で、培養容器101は、再度、走行台車104の作動により、遠心分離機105に移動され、そこで、細胞とトリプシン入りの培地とが分離される。分離された培地は、マニピュレータ106の作動により吸引されて廃棄される。分離された細胞は、ピペット113を持ち替えたマニピュレータ106の作動により、ピペット113内に吸引され、作業台114上に用意された新たな培養容器101内に投入される。また、この培養容器101内には、マニピュレータ107とバルブの作動により新たな培地が供給される。
細胞を収容した新たな培養容器101は、走行台車104の作動により空いている培養室102まで搬送されて収容される。
【0028】
所定の培養期間が終了すると、上記と同様にして、培養容器101内から培地が廃棄された後に、培養容器101内にトリプシンが投入・混合される。これにより、培養容器101の底面に付着して成長していた間葉系幹細胞が、培養容器101の底面から剥離される。そして、このように剥離された間葉系幹細胞は、遠心分離機105にかけられることにより抽出される。
【0029】
抽出された間葉系幹細胞Cは、細胞数調整が行われた後に、図1に示されるように、骨補填材122と適当な培地121が投入された培養容器123内に混合される。骨補填材122は、予めそれを収容した培養容器123を用意しておいてもよく、いずれかのマニピュレータ106,107により培養容器123内に投入することにしてもよい。
【0030】
この場合において、培養容器123は、接着性の細胞である間葉系幹細胞Cの付着しにくいポリプロピレンにより製造されているので、該培養容器123内においては、間葉系幹細胞Cは、培養容器123の内表面に付着することなく、培地121内において浮遊させられることになる。
そして、この状態で、播種装置120を構成する加振装置115を作動させることにより、培養容器123に水平方向に往復移動する微細な振動を付与する。
【0031】
これにより、培養容器123内に投入されている骨補填材122および間葉系幹細胞Cに振動が付与される。その結果、間葉系幹細胞Cが骨補填材122に接触する機会が増加させられ、骨補填材122の各面に間葉系幹細胞Cが付着させられることになる。
このようにして、間葉系幹細胞Cが付着させられた骨補填材122は、培地121内に浸漬された状態で、走行台車104によって空いている培養室102まで搬送され、所定の温度、湿度およびCO2濃度等の培養条件に維持することにより、所定時間にわたって一定培養条件下で細胞が二次培養される。
【0032】
二次培養工程においても、一次培養工程と同様にして、定期的に培地121の交換が行われ、投入される培地121の一部および廃棄される培地121の一部がそれぞれ、感染検査に送られる。そして、所定の培養期間が経過したところで、出荷用の品質検査と感染検査のための検体抽出が行われ、製造された培養骨は所定の密封容器(図示略)に密封されて製品として提供される。
【0033】
このように、本実施形態に係る細胞培養装置100によれば、多数の検体である細胞が同時に培養され、各細胞から製品としての培養骨が自動的に製造されることになる。
この場合において、骨補填材122に細胞Cを播種する播種装置120が、間葉系幹細胞Cの付着しにくいポリプロピレン製の培養容器123と、該培養容器123を振動させる加振装置115とから構成されているので、培養容器123内面に付着して回収されない間葉系幹細胞Cをなくし、無駄なく骨補填材122に付着させることができる。
【0034】
なお、例えば、作業台114に培養容器101が載せられたときに、該培養容器101内の細胞数を検出する細胞数検出手段を作業台114に設けておき、培地交換を行う毎に細胞数を検出して記憶することにしてもよい。このようにすることにより、培養過程における細胞の成長度合いを履歴として残すことができ、また、細胞の活性度を把握するための指標とすることも可能となる。
【0035】
また、培養容器101内の細胞の感染検査を行う感染検査手段(図示略)を設けておき、その検査結果を記憶することにしてもよい。このようにすることにより、培養過程における感染症の発生の時期を履歴として残すことができる。
【0036】
さらに、図1においては、加振装置115として機械的に培養容器123に振動を加えるものを例示したが、これに代えて、超音波振動子を培地121内に投入することにより、培地121を介して間葉系幹細胞Cや骨補填材122に振動を加えることにしてもよい。
【0037】
次に、この発明の第2の実施形態に係る生体組織補填材の製造装置について、図3を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る製造装置は、播種装置130において、第1の実施形態に係る製造装置100と相違している。
【0038】
本実施形態に係る製造装置において、播種装置130は、図3に示されるように、第1の実施形態と同様のポリプロピレン製の培養容器131と、該培養容器131を傾斜させる揺動装置134とから構成されている。揺動装置134は、前記培養容器131を固定した状態に載置する載置台135と、該載置台135を所定角度範囲にわたって往復揺動させる揺動機構136とを備えている。
揺動機構136は、例えば、モータ(図示略)等により駆動されるようになっている。
【0039】
このように構成された本実施形態に係る製造装置によれば、揺動機構136を作動させて載置台135を傾斜させることにより、該載置台135に固定されている培養容器131も傾斜させられる。したがって、培養容器131内に貯留されている培地132が培養容器131の傾斜に合わせて流動させられるので、その流動により、培地131内の間葉系幹細胞Cが骨補填材133に接触させられる機会が増加し、それによって、間葉系幹細胞Cが骨補填材133に効率的に播種されることになる。
【0040】
なお、本実施形態においては、シャーレ状の培養容器131を例に挙げて説明したが、これに代えて、図4に示されるように蓋137により密封可能な培養容器131を採用してもよい。このように構成することにより、揺動装置134による培養容器131,137の傾斜角度を上記実施形態よりも大きくすることができる。その結果、培地132内において骨補填材133を移動させ、あるいは、図4に示されるように、培養容器131底面に沿って転がらせることができる。これにより、培地132内に浮遊している間葉系幹細胞Cをさらに効率的に骨補填材133の表面に付着させることができる。特に、骨補填材133を転がらせることにより、骨補填材133の全ての表面に間葉系幹細胞Cを付着させることが可能となる。
【0041】
また、上記各実施形態においては、培養容器123,131の底面に直接骨補填材122,133を配置したが、これに代えて、図5に示されるように、培養容器123,131の底面から所定距離をあけた位置に、網状部材138を配置することにしてもよい。このように構成することで、網状部材138上に骨補填材122,133を載置して、骨補填材122,133を培養容器123,131の底面から浮かせることができる。その結果、骨補填材122,133の下面にも、網の目を介して間葉系幹細胞Cを付着させることができる。また、そのままの状態で培養室102内に配置して二次培養を行うことにより、骨補填材122,133の下面においても間葉系幹細胞Cを成長させることが可能となり、骨補填体を効率よく製造することができる。なお、網状部材138は、多数の貫通孔を有する膜状部材でもよい。
【0042】
また、上記各実施形態において、生体組織補填材122,133として、β−TCPの多孔質体からなるブロック状の骨補填材122,133を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、生体組織に親和性のある材料であれば任意のものでよく、生体吸収性の材料であればさらに好ましい。特に、生体適合性を有する多孔性のセラミックスや、コラーゲン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒアルロン酸、またはこれらの組合せを用いてもよい。また、チタン、タンタルの様な金属またはサンゴ由来のスポンジ状材料等であってもよい。
【0043】
また、上記各実施形態においては、骨補填材122,133に付着させる細胞として、骨髄液から抽出した間葉系幹細胞Cを例示したが、これに代えて、ES細胞、体性幹細胞、骨細胞や軟骨細胞等の体細胞を採用してもよい。また、自家細胞でも、他家細胞でもよい。なお、培養容器123,131としてポリプロピレン製の容器を例に挙げて説明したが、これに代えて、ポリエチレン等の他のポリオレフィン製の容器を採用してもよい。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明に係る生体組織補填体の製造方法および装置によれば、細胞を生体組織補填材に塗布するのではなく、培地中に浮遊させた細胞を生体組織補填材に付着させるので、細胞を外力によって損傷させることがなく、細胞の健全性を維持しながら、生体組織補填材に播種することができるという効果を奏する。また、細胞を生体組織補填材に滴下するのと異なり、生体組織補填材の多くの表面に細胞を付着させることができる。さらに、ポリオレフィン製の容器内において播種することにより、容器に付着する無駄な細胞をなくし、効率的に播種することができるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る生体組織補填体の製造装置における播種装置を示す一部を破断した正面図である。
【図2】図1の播種装置を備える生体組織補填体の製造装置を示す斜視図である。
【図3】この発明の第2の実施形態に係る生体組織補填体の製造装置における播種装置を一部を破断した正面図である。
【図4】図3の播種装置の変形例を示す一部を破断した正面図である。
【図5】図1〜図4の播種装置に用いられる容器の変形例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
C 間葉系幹細胞(細胞)
100 生体組織補填体の製造装置
115 加振装置
121,132 培地
122,133 骨補填材(生体組織補填材)
123,131 培養容器(容器)
134 揺動装置(加振装置)
138 網状部材
【発明の属する技術分野】
この発明は、生体組織補填体の製造方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、骨腫瘍摘出や外傷等により生じた骨の欠損部に、骨補填材を補填することにより、骨を再生させて欠損部を修復することが可能になってきている。骨補填材としては、ハイドロキシアパタイト(HAP)やリン酸三カルシウム(TCP)が知られているが、体内に異物を残さないとする考え方から、例えば、β−TCPのようなリン酸カルシウム多孔体からなる足場材が使用される。β−TCPを骨欠損部の骨細胞に接触させておくと、破骨細胞がβ−TCPを食べ、骨芽細胞が新しい骨を形成する、いわゆるリモデリングが行われる。すなわち、骨欠損部に補填された骨補填材は、経時的に自家骨に置換されていくことになる。
【0003】
一方、術後の骨欠損部の修復速度を高めるために、患者から採取した骨髄間葉系細胞を骨補填材とともに培養することにより製造される培養骨を使用することが提案されている。培養されることにより骨補填材を足場にして増殖した多くの骨髄間葉系細胞を含む培養骨を骨欠損部に補填するので、手術後に体内で細胞を増殖させる方法と比較すると、自家骨に置換されるまでの日数を大幅に短縮することができる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
このような培養骨は、一般に、患者から採取した骨髄細胞をフラスコ内で一次培養して必要細胞数まで増加させた後に、トリプシンのような蛋白質分解酵素を用いて細胞をフラスコから剥離する。そして、これを骨補填材に付着させて骨形成培地内に留置して二次培養を行うことにより製造される(例えば、非特許文献2参照。)。
【0005】
【非特許文献1】
植村他2名,「生分解性β−TCP多孔材料を用いた骨におけるティッシュエンジニアリング−生体内で強度を増す新しい材料オスフェリオン−」,メディカル朝日,朝日新聞社,2001年10月1日,第30巻,第10号,p.46−49
【非特許文献2】
吉川,「骨髄間葉系細胞による培養真皮、培養骨−骨髄間葉系細胞による再生医療−」,バイオインダストリー,株式会社シーエムシー出版,2001年,第18巻,第7号,p.46−53
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、骨補填材のような生体組織補填材は、一般に、ブロック状に形成されているので、表面に細胞を付着させる作業、すなわち細胞の播種作業は、生体組織補填材の全ての表面に一面ずつ行わなければならず、煩わしいものであった。また、細胞が播種された骨補填材をピンセット等の取り扱い器具によって何度も把持する必要があり、細胞の健全性が害される不都合が考えられる。
【0007】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、細胞の健全性を害することなく、生体組織補填材に細胞を効率的に播種することができる生体組織補填体の製造方法および装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は、以下の手段を提供する。
請求項1に係る発明は、接着性の細胞を浮遊させた状態で含有する培地をポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)製の容器内に貯留するとともに、該培地内に生体組織補填材を投入して容器に振動を付与する生体組織補填体の製造方法を提供する。
この発明によれば、培地内に浮遊している接着性の細胞が、培地内に投入された生体組織補填材に付着することにより生体組織補填体が製造される。この場合において、容器が、細胞の付着しにくいポリオレフィンにより構成されているので、細胞は容器に付着することなく、効率よく生体組織補填材に付着させられる。また、容器に振動が付与されることにより、培地内部の細胞および生体組織補填材に振動が伝達され、細胞が生体組織補填材に接触する機会が増加させられて、さらに効率よく付着させられることになる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の生体組織補填体の製造方法において、容器に付与する振動が、容器を略水平方向に往復移動させる製造方法を提供する。
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の生体組織補填体の製造方法において、容器に付与する振動が、容器を略水平軸線回りに往復揺動させる製造方法を提供する。
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の生体組織補填体の製造方法において、容器に付与する振動が、超音波発生器により付与される製造方法を提供する。
これらの発明によれば、培地中に浮遊している接着性の細胞を、培地内に投入された生体組織補填材の表面に簡易かつ効率的に付着させることが可能となる。
【0010】
請求項5に係る発明は、接着性の細胞を浮遊させた状態で含有する培地をポリオレフィン製の容器内に貯留するとともに、該培地内に生体組織補填材を投入して、生体組織補填材に振動を付与する生体組織補填体の製造方法を提供する。
この発明によれば、請求項1に係る発明と同様に、培地内における細胞と生体組織補填材との接触の機会を増加させ、細胞を生体組織補填材に効率的に付着させることが可能となる。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の生体組織補填材の製造方法において、生体組織補填体に付与する振動が、培地内において生体組織補填材を回転させる製造方法を提供する。
この発明によれば、容器に振動を与える場合と同様に、簡易かつ効率的に細胞を生体組織補填材の表面に付着させることが可能となる。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の生体組織補填体の製造方法において、培地中に張られる網状部材上に生体組織補填材を載置する製造方法を提供する。
この発明によれば、培地内に張られた網状部材上に生体組織補填材を載置することにより、網状部材を介して生体組織補填材の下面にも細胞が付着させられることになる。したがって、細胞を全面に付着させることが可能となる。
【0013】
請求項8に係る発明は、接着性の細胞を浮遊させた状態で含有する培地を貯留するポリオレフィン製の容器と、該容器に振動を付与する加振装置とを備える生体組織補填体の製造装置を提供する。
この発明によれば、加振装置を作動させることにより容器に振動を付与するので、容器内に貯留されている培地およびその中に投入されている生体組織補填材が加振される。容器がポリオレフィン製なので、細胞を容器に付着させることなく、生体組織補填材に付着させて、効率的に生体組織補填体を製造することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態に係る生体組織補填体の製造方法および装置について、図面を参照して以下に説明する。
図2に、本実施形態に係る生体組織補填体の製造装置100の全体概要図を示す。本実施形態に係る生体組織補填体の製造装置100は、外部から観察可能な透明な壁材により密閉された空間Sの内部に、複数の培養容器101を1つずつ収容可能な複数の培養室102を備えた細胞培養部103と、前記空間S内を走行可能な走行台車104と、培養容器101内の細胞を遠心分離するための遠心分離機105と、培地交換等を行うための2台のマニピュレータ106,107(培地交換手段)と、培地、トリプシンのような蛋白質分解酵素や成長因子を貯留する容器108を、例えば、4℃の低温状態に保持する保冷室109と、一次培養された細胞を生体組織補填材に付着させる播種装置120とを備えている。
【0015】
図中符号110は、空間S内部に清浄な下降空気流を送る空気清浄部、符号111は、タッチパネル式のモニタを有する制御装置、符号112はマニピュレータ106,107の先端に着脱され、培養容器101毎に交換されるピペット113を収容するピペット収容部、符号114は、培地交換時に培養容器101を載置する作業台,符号115は、上記播種装置120を構成する加振装置を示している。
【0016】
培養容器101は、例えば、上方に開口する円形シャーレ状の容器であって、内部に培地および細胞を収容できるようになっている。また、培養容器101は、細胞の培養過程に応じて最適な環境を細胞に与えるため、培養工程が進行するにつれて底面積の広いものに移し替えられるように、種々の大きさのものが用意されている。
【0017】
前記細胞培養部103の各培養室102は、走行台車104側の開閉扉および区画壁によって密閉されることにより、他の培養室102等から隔離されるようになっている。また、各培養室102内は、所定の温度(例えば、37±0.5℃)、湿度(例えば、100%)およびCO2濃度(例えば、5%)等の培養条件が維持されるようになっている。また、これらの培養室102内の実際の温度、湿度およびCO2濃度等の培養室内情報を検出するセンサ(図示略)がそれぞれ備えられている。
【0018】
前記走行台車104には、培養容器を搭載する載置台116と、該載置台116を昇降させる昇降機構117と、載置台116に搭載された図示しない移載機構とが設けられている。移載機構は、載置台116が培養室102に位置決めされたときに、培養室102に対して培養容器101を出し入れするように構成されている。
【0019】
前記培地を貯留する容器108には、培地の溶存酸素濃度や糖度等の培地情報を検出する培地情報検出手段(図示略)が備えられている。また、培地、トリプシン、成長因子等を貯留する容器108は、マニピュレータ107に接続され、図示しないバルブの開閉によって、マニピュレータ107において培養容器101内に培地等が投入されるようになっている。
【0020】
前記制御装置111は、各細胞に対する培養のメニューを記憶しているとともに、各メニュー項目に対応して、走行台車104、マニピュレータ106,107、バルブ等の動作を制御するようになっている。また、制御装置111には、各種情報を記憶するデータベース(図示略)が備えられている。また、制御装置111には、カレンダー機能が搭載されていて、メニュー項目に対応して細胞に対して行われた培地交換等の作業の日付をデータベースに記憶することができるようになっている。また、培地交換の際には、交換された培地、供給された成長因子、ビタミン等の量や種類等を含む培地交換情報が、メニュー項目から抽出されて、記憶されるようになっている。
【0021】
前記播種装置120は、図1に示されるように、培地121および生体組織補填材122を収容可能な培養容器123と、該培養容器123を載置して、これに水平方向の振動を付与する加振装置115とを備えている。生体組織補填材122は、例えば、β−TCP多孔体からなるブロック状の骨補填材122である。前記培養容器123は、培養容器101と同等の形状をしたポリプロピレン製の容器である。
【0022】
このように構成された本実施形態に係る細胞培養装置100の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る細胞培養装置100に、患者から採取された骨髄液が投入されると、骨髄液は所定の培養容器101あるいは遠心分離容器(図示略)に収容された状態で、走行台車104によって遠心分離機まで搬送され、そこで旋回されることにより、比重の重い骨髄細胞を抽出される。
【0023】
抽出された骨髄細胞は、予め調製されている培地とともに適当な培養容器101内に投入され混合される。培地の一部は取り出されて感染検査に送られる。そして、骨髄細胞および培地を投入した培養容器101は走行台車104の載置台116に搭載されて、空いている培養室102まで搬送される。
この状態で、培養室102内においては骨髄液および培地が所定の温度、湿度およびCO2濃度等の培養条件に維持される。
【0024】
そして、これにより、所定時間にわたって一定培養条件下で細胞が一次培養される。細胞の培養途中の所定の交換時期には、培養室102から培養容器101が移載機構の作動により取り出される。
【0025】
培養室102から取り出された培養容器101は、走行台車104によって搬送されて、作業台114上に載置される。そこで、ピペット収容部112から新たなピペット113を装着したマニピュレータ106が、該ピペット113を培養容器101まで搬送して、ピペット113の先端を培養容器101内の培地に接触させ吸引する。ピペット113を充分な内容量のものとしておくことにより、吸引した培地をピペット113内のみに収容してピペット113ごと廃棄することができる。これにより、マニピュレータ106に培地を付着させることが防止できる。なお、吸引した廃棄培地を廃棄することなく感染検査に送ることにしてもよい。
【0026】
そして、この状態において、同じ培養容器101内でさらに培養することが必要な場合には、マニピュレータ107およびバルブの作動により培養容器101内に新たな培地等が供給される。培地等が供給されたときには、その量および種類、培地情報検出手段により検出された培地内の溶存酸素濃度や糖度等の培地情報がデータベースに記憶される。そして、新たな培地が供給された培養容器101は、再度、走行台車104によって空いている培養室102まで運ばれる。
【0027】
上記状態において、培養容器101を変えることが必要となった場合には、マニピュレータ107とバルブの作動により、トリプシンの容器108からトリプシンを供給される。これにより、培養容器101の底面に付着していた細胞が剥離される。この状態で、培養容器101は、再度、走行台車104の作動により、遠心分離機105に移動され、そこで、細胞とトリプシン入りの培地とが分離される。分離された培地は、マニピュレータ106の作動により吸引されて廃棄される。分離された細胞は、ピペット113を持ち替えたマニピュレータ106の作動により、ピペット113内に吸引され、作業台114上に用意された新たな培養容器101内に投入される。また、この培養容器101内には、マニピュレータ107とバルブの作動により新たな培地が供給される。
細胞を収容した新たな培養容器101は、走行台車104の作動により空いている培養室102まで搬送されて収容される。
【0028】
所定の培養期間が終了すると、上記と同様にして、培養容器101内から培地が廃棄された後に、培養容器101内にトリプシンが投入・混合される。これにより、培養容器101の底面に付着して成長していた間葉系幹細胞が、培養容器101の底面から剥離される。そして、このように剥離された間葉系幹細胞は、遠心分離機105にかけられることにより抽出される。
【0029】
抽出された間葉系幹細胞Cは、細胞数調整が行われた後に、図1に示されるように、骨補填材122と適当な培地121が投入された培養容器123内に混合される。骨補填材122は、予めそれを収容した培養容器123を用意しておいてもよく、いずれかのマニピュレータ106,107により培養容器123内に投入することにしてもよい。
【0030】
この場合において、培養容器123は、接着性の細胞である間葉系幹細胞Cの付着しにくいポリプロピレンにより製造されているので、該培養容器123内においては、間葉系幹細胞Cは、培養容器123の内表面に付着することなく、培地121内において浮遊させられることになる。
そして、この状態で、播種装置120を構成する加振装置115を作動させることにより、培養容器123に水平方向に往復移動する微細な振動を付与する。
【0031】
これにより、培養容器123内に投入されている骨補填材122および間葉系幹細胞Cに振動が付与される。その結果、間葉系幹細胞Cが骨補填材122に接触する機会が増加させられ、骨補填材122の各面に間葉系幹細胞Cが付着させられることになる。
このようにして、間葉系幹細胞Cが付着させられた骨補填材122は、培地121内に浸漬された状態で、走行台車104によって空いている培養室102まで搬送され、所定の温度、湿度およびCO2濃度等の培養条件に維持することにより、所定時間にわたって一定培養条件下で細胞が二次培養される。
【0032】
二次培養工程においても、一次培養工程と同様にして、定期的に培地121の交換が行われ、投入される培地121の一部および廃棄される培地121の一部がそれぞれ、感染検査に送られる。そして、所定の培養期間が経過したところで、出荷用の品質検査と感染検査のための検体抽出が行われ、製造された培養骨は所定の密封容器(図示略)に密封されて製品として提供される。
【0033】
このように、本実施形態に係る細胞培養装置100によれば、多数の検体である細胞が同時に培養され、各細胞から製品としての培養骨が自動的に製造されることになる。
この場合において、骨補填材122に細胞Cを播種する播種装置120が、間葉系幹細胞Cの付着しにくいポリプロピレン製の培養容器123と、該培養容器123を振動させる加振装置115とから構成されているので、培養容器123内面に付着して回収されない間葉系幹細胞Cをなくし、無駄なく骨補填材122に付着させることができる。
【0034】
なお、例えば、作業台114に培養容器101が載せられたときに、該培養容器101内の細胞数を検出する細胞数検出手段を作業台114に設けておき、培地交換を行う毎に細胞数を検出して記憶することにしてもよい。このようにすることにより、培養過程における細胞の成長度合いを履歴として残すことができ、また、細胞の活性度を把握するための指標とすることも可能となる。
【0035】
また、培養容器101内の細胞の感染検査を行う感染検査手段(図示略)を設けておき、その検査結果を記憶することにしてもよい。このようにすることにより、培養過程における感染症の発生の時期を履歴として残すことができる。
【0036】
さらに、図1においては、加振装置115として機械的に培養容器123に振動を加えるものを例示したが、これに代えて、超音波振動子を培地121内に投入することにより、培地121を介して間葉系幹細胞Cや骨補填材122に振動を加えることにしてもよい。
【0037】
次に、この発明の第2の実施形態に係る生体組織補填材の製造装置について、図3を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る製造装置は、播種装置130において、第1の実施形態に係る製造装置100と相違している。
【0038】
本実施形態に係る製造装置において、播種装置130は、図3に示されるように、第1の実施形態と同様のポリプロピレン製の培養容器131と、該培養容器131を傾斜させる揺動装置134とから構成されている。揺動装置134は、前記培養容器131を固定した状態に載置する載置台135と、該載置台135を所定角度範囲にわたって往復揺動させる揺動機構136とを備えている。
揺動機構136は、例えば、モータ(図示略)等により駆動されるようになっている。
【0039】
このように構成された本実施形態に係る製造装置によれば、揺動機構136を作動させて載置台135を傾斜させることにより、該載置台135に固定されている培養容器131も傾斜させられる。したがって、培養容器131内に貯留されている培地132が培養容器131の傾斜に合わせて流動させられるので、その流動により、培地131内の間葉系幹細胞Cが骨補填材133に接触させられる機会が増加し、それによって、間葉系幹細胞Cが骨補填材133に効率的に播種されることになる。
【0040】
なお、本実施形態においては、シャーレ状の培養容器131を例に挙げて説明したが、これに代えて、図4に示されるように蓋137により密封可能な培養容器131を採用してもよい。このように構成することにより、揺動装置134による培養容器131,137の傾斜角度を上記実施形態よりも大きくすることができる。その結果、培地132内において骨補填材133を移動させ、あるいは、図4に示されるように、培養容器131底面に沿って転がらせることができる。これにより、培地132内に浮遊している間葉系幹細胞Cをさらに効率的に骨補填材133の表面に付着させることができる。特に、骨補填材133を転がらせることにより、骨補填材133の全ての表面に間葉系幹細胞Cを付着させることが可能となる。
【0041】
また、上記各実施形態においては、培養容器123,131の底面に直接骨補填材122,133を配置したが、これに代えて、図5に示されるように、培養容器123,131の底面から所定距離をあけた位置に、網状部材138を配置することにしてもよい。このように構成することで、網状部材138上に骨補填材122,133を載置して、骨補填材122,133を培養容器123,131の底面から浮かせることができる。その結果、骨補填材122,133の下面にも、網の目を介して間葉系幹細胞Cを付着させることができる。また、そのままの状態で培養室102内に配置して二次培養を行うことにより、骨補填材122,133の下面においても間葉系幹細胞Cを成長させることが可能となり、骨補填体を効率よく製造することができる。なお、網状部材138は、多数の貫通孔を有する膜状部材でもよい。
【0042】
また、上記各実施形態において、生体組織補填材122,133として、β−TCPの多孔質体からなるブロック状の骨補填材122,133を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、生体組織に親和性のある材料であれば任意のものでよく、生体吸収性の材料であればさらに好ましい。特に、生体適合性を有する多孔性のセラミックスや、コラーゲン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒアルロン酸、またはこれらの組合せを用いてもよい。また、チタン、タンタルの様な金属またはサンゴ由来のスポンジ状材料等であってもよい。
【0043】
また、上記各実施形態においては、骨補填材122,133に付着させる細胞として、骨髄液から抽出した間葉系幹細胞Cを例示したが、これに代えて、ES細胞、体性幹細胞、骨細胞や軟骨細胞等の体細胞を採用してもよい。また、自家細胞でも、他家細胞でもよい。なお、培養容器123,131としてポリプロピレン製の容器を例に挙げて説明したが、これに代えて、ポリエチレン等の他のポリオレフィン製の容器を採用してもよい。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明に係る生体組織補填体の製造方法および装置によれば、細胞を生体組織補填材に塗布するのではなく、培地中に浮遊させた細胞を生体組織補填材に付着させるので、細胞を外力によって損傷させることがなく、細胞の健全性を維持しながら、生体組織補填材に播種することができるという効果を奏する。また、細胞を生体組織補填材に滴下するのと異なり、生体組織補填材の多くの表面に細胞を付着させることができる。さらに、ポリオレフィン製の容器内において播種することにより、容器に付着する無駄な細胞をなくし、効率的に播種することができるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る生体組織補填体の製造装置における播種装置を示す一部を破断した正面図である。
【図2】図1の播種装置を備える生体組織補填体の製造装置を示す斜視図である。
【図3】この発明の第2の実施形態に係る生体組織補填体の製造装置における播種装置を一部を破断した正面図である。
【図4】図3の播種装置の変形例を示す一部を破断した正面図である。
【図5】図1〜図4の播種装置に用いられる容器の変形例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
C 間葉系幹細胞(細胞)
100 生体組織補填体の製造装置
115 加振装置
121,132 培地
122,133 骨補填材(生体組織補填材)
123,131 培養容器(容器)
134 揺動装置(加振装置)
138 網状部材
Claims (8)
- 接着性の細胞を浮遊させた状態で含有する培地をポリオレフィン製の容器内に貯留するとともに、
該培地内に生体組織補填材を投入して容器に振動を付与する生体組織補填体の製造方法。 - 容器に付与する振動が、容器を略水平方向に往復移動させる請求項1に記載の生体組織補填体の製造方法。
- 容器に付与する振動が、容器を略水平軸線回りに往復揺動させる請求項1に記載の生体組織補填体の製造方法。
- 容器に付与する振動が、超音波発生器により付与される請求項1に記載の生体組織補填体の製造方法。
- 接着性の細胞を浮遊させた状態で含有する培地をポリオレフィン製の容器内に貯留するとともに、
該培地内に生体組織補填材を投入して、生体組織補填材に振動を付与する生体組織補填体の製造方法。 - 生体組織補填体に付与する振動が、培地内において生体組織補填材を回転させる請求項5に記載の生体組織補填体の製造方法。
- 培地中に張られる網状部材上に生体組織補填材を載置する請求項1から請求項6のいずれかに記載の生体組織補填体の製造方法。
- 接着性の細胞を浮遊させた状態で含有する培地を貯留するポリオレフィン製の容器と、
該容器に振動を付与する加振装置とを備える生体組織補填体の製造装置。
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