JP2004226217A - 放射性物質乾式貯蔵施設 - Google Patents
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Abstract
【課題】貯蔵室の高い冷却性能を有し、貯蔵施設の安全性および信頼性を保持することができる放射性物質乾式貯蔵施設を提供することを目的とする。
【解決手段】大気中の空気は、吸気ダクト4の空気取入れ口9から取り込まれて、吸気ダクト4の空気流路の一部に設けられた熱交換器5に流入する。熱交換器5を通過することで温度が低下した空気は、貯蔵室2の床部に設けられた連通口8から貯蔵室2内に流入する。連通口8から貯蔵室2内に流入した空気は、収容体3を冷却し、収容体3内の使用済み燃料などから発生する崩壊熱の一部を奪う。そして、崩壊熱の一部を奪い温度が上昇した空気は、排気ダクト7から大気中に排気される。これによって、貯蔵室内の温度上昇を緩和し、貯蔵室の壁部の温度の許容値を超えることなく、貯蔵施設の安全性および信頼性を保持することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】大気中の空気は、吸気ダクト4の空気取入れ口9から取り込まれて、吸気ダクト4の空気流路の一部に設けられた熱交換器5に流入する。熱交換器5を通過することで温度が低下した空気は、貯蔵室2の床部に設けられた連通口8から貯蔵室2内に流入する。連通口8から貯蔵室2内に流入した空気は、収容体3を冷却し、収容体3内の使用済み燃料などから発生する崩壊熱の一部を奪う。そして、崩壊熱の一部を奪い温度が上昇した空気は、排気ダクト7から大気中に排気される。これによって、貯蔵室内の温度上昇を緩和し、貯蔵室の壁部の温度の許容値を超えることなく、貯蔵施設の安全性および信頼性を保持することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射性物質乾式貯蔵施設に係り、特に、原子力発電所から発生する使用済み燃料などの高レベル放射性物質を貯蔵する放射性物質乾式貯蔵施設に関する。
【0002】
【従来の技術】
原子力発電所から発生する使用済み燃料は、ウラン、プルトニウムなどの再使用可能な核燃料物質を回収するために再処理され、このときに発生する高レベル放射性廃棄物はガラス固化される。この放射性廃棄物のガラス固化体は、崩壊熱を発生するので、発熱量が小さくなり最終処分が可能になるまで冷却しながら貯蔵する必要がある。
【0003】
使用済み燃料の貯蔵方式には、プール内で保管する湿式貯蔵と遮蔽セル内で保管する乾式貯蔵とがある。
【0004】
湿式貯蔵は、数十年の貯蔵経験があり、安全に貯蔵する技術も確立されている一方で、運転経費が高く、放射性廃棄物の量が多いなどの欠点がある。これらの欠点は、貯蔵期間が長引くほど強調されることになる。
【0005】
乾式貯蔵は、これらの湿式貯蔵の欠点を解消するために開発された貯蔵方式で、その貯蔵形式により、キャスク貯蔵、コンクリートキャスク貯蔵、ボールト貯蔵、および、ドライウェル貯蔵などに分類される(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−235598号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
現在の放射性物質乾式貯蔵施設では、使用済み燃料を輸送する輸送容器(キャスク)に収容した状態で保管する、いわゆるキャスク貯蔵における貯蔵方式が主流である。しかしながら、キャスク貯蔵やコンクリートキャスク貯蔵においては、使用済み燃料を収容する金属製容器の収容体ごとに遮蔽機能を持たせるため、貯蔵スペース効率が悪く、施設面積が増大するといった欠点があった。
【0008】
一方、ボールト貯蔵では、放射性物質の収容体を地下に設けられたコンクリート製の貯蔵室に大量に貯蔵できるが、発熱密度が高くなるので、自然対流による除熱能力を増加させる必要がある。
【0009】
そこで本発明は、貯蔵室の高い冷却性能を有することで、貯蔵室内の温度上昇を緩和し、貯蔵室の壁部の温度の許容値を超えることなく、貯蔵施設の安全性および信頼性を保持することができる放射性物質乾式貯蔵施設を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の放射性物質乾式貯蔵施設は、吸気ダクトと排気ダクトを備え、放射性物質を収容した容器を保持する貯蔵室と、前記吸気ダクトを流れる空気を冷却する冷却手段とを具備することを特徴とする。
【0011】
この放射性物質乾式貯蔵施設によれば、冷却手段を吸気ダクトに設けることで、吸気ダクト内を流れる空気を冷却することができ、夏季日中などの外気温度の上昇に伴う、貯蔵室内の温度上昇を抑えることができる。また、冷却手段は、例えば、熱交換器などの伝熱手段で構成され、熱交換器に、例えば、冷媒槽などから冷却媒体が供給される。
【0012】
また、本発明の放射性物質乾式貯蔵施設は、吸気ダクトと排気ダクトを備え、放射性物質を収容した容器を保持する貯蔵室と、前記貯蔵室の外壁を冷却する冷却媒体が流れる冷却流路とを具備することを特徴とする。
【0013】
貯蔵室内を流れる空気以外に、貯蔵室の外壁を冷却することにより、貯蔵室の壁部の有する熱の一部を外部に取り除くことができる。これによって、貯蔵室の壁部の温度が許容値を上回ることを抑制することができる。また、多数の放射性物質を収容した容器を貯蔵した場合でも、貯蔵室内の床部の温度上昇を緩和することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設1の概要を図1を参照して説明する。図1は、第1の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設1の断面図を示す。
【0016】
第1の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設1は、貯蔵室2、収容体3、吸気ダクト4、熱交換器5、冷媒槽6、排気ダクト7で主に構成されている。
【0017】
貯蔵室2は、コンクリートで形成され、原子力発電所から発生した使用済み燃料などの放射性物質を収容した収容体3を貯蔵するものである。また、貯蔵室2の床部には、吸気ダクト4と連通する連通口8が開けられている。収容体3は、貯蔵室2の床部の連通口8を閉鎖しないように、貯蔵室2の床部に配置されている。収容体3の配置の一例として、収容体3が連通口8をまたいで配置されるものなどがあるが、この配置に限らず、連通口8から貯蔵室2に流入する空気を収容体3の表面に接触させながら流す構成であればよい。また、貯蔵室2は、地中12に配置されることが好ましいが、地表に配置することもできる。
【0018】
吸気ダクト4は、大気中の空気を貯蔵室2に供給するための空気流路である。吸気ダクト4には、大気中の空気を取り込む空気取り入れ口9が設けられている。また、吸気ダクト4の空気流路の一部に熱交換器5が設けられている。
【0019】
熱交換器5は、地中12に配置された冷媒槽6に収容された蓄冷材10と、吸気ダクト4に取り込まれた空気との間で熱交換をさせるものである。
【0020】
ここで、蓄冷材10には、比熱が比較的大きい、例えば、水やグリセリン水溶液などの液体が用いられる。蓄冷材10の比熱が大きいものほど熱交換による蓄冷材10自体の温度上昇が緩和され、外部からの動力を得なくても、長時間にわたって空気を冷却することができる。蓄冷材10に、例えば、水やグリセリン水溶液などの液体を用いた場合には、蓄冷材10を熱交換器5と容易に接触させることができ、また、蓄冷材10内の自然対流による温度の均一化を図ることができる。さらに、水やグリセリン水溶液などは、安価で、入手しやすいなどの利点がある。
【0021】
なお、蓄冷材10には、上述した理由から水やグリセリン水溶液などの液体が用いられることが好ましいが、熱伝導率の大きい、例えば、銅やアルミニウムなどの固体を用いてもよい。
【0022】
冷媒槽6は、熱伝導率の大きい材料で構成され、例えば、銅やアルミニウムなどが用いられる。また、冷媒槽6は、地表から深さ5mよりも深い地中12に配置され、冷媒槽6内の蓄冷材10の熱を地中12に放出して、蓄冷材10を冷却している。また、冷媒槽6の構成は、蓄冷材10を貯留するタンク型もの以外にも、例えば、地中に蓄冷材10の流路を配管し、蓄冷材10を循環させて、冷却する構成としてもよい。
【0023】
冷媒槽6が配置される地表から深さ5mよりも深い地中12の温度は、一年中を通して10〜15℃とほぼ一定であり、このような雰囲気中に置かれた冷媒槽6内の蓄冷材10は、ほぼその地中12の温度に等しくなる。
【0024】
排気ダクト7は、貯蔵室2において熱交換された空気を大気中に放出するための空気流路である。排気ダクト7には、大気中に空気を排気するための排気口11が設けられている。
【0025】
次に、第1の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設1における冷却動作について説明する。
【0026】
大気中の空気は、吸気ダクト4の空気取入れ口9から取り込まれて、吸気ダクト4の空気流路の一部に設けられた熱交換器5に流入する。熱交換器5で、熱交換器5を介して蓄冷材に熱を放出し、温度が低下した空気は、貯蔵室2の床部に設けられた連通口8から貯蔵室2内に流入する。連通口8から貯蔵室2内に流入した空気は、収容体3の周囲に導入され、収容体3の間を流れ、収容体3を冷却し、収容体3内の使用済み燃料などから発生する崩壊熱の一部を奪う。そして、崩壊熱の一部を奪い温度が上昇した空気は、貯蔵室2の天井部付近に浮上し、排気ダクト7に流入する。そして、排気ダクト7に流入した空気は、排気口11から大気中に排気される。
【0027】
ここで、崩壊熱の一部を奪うことによって温度が上昇した空気は、密度が小さくなるため、連通口8から流入する空気と密度差を生じ、貯蔵室2内に自然対流が発生する。この自然対流を利用して、吸気ダクト4から貯蔵室2を通過して排気ダクト7に流れる一連の空気の流動が生じる。また、自然対流の強さは、大気温度と貯蔵室2内の空気との温度差と、排気ダクト7の高さとの積に比例する。
【0028】
貯蔵室2の表面温度の許容値は、貯蔵室2を形成するコンクリート強度を確保するため、一般的には65℃以下に設計されている。このような設計に基づいて構成された貯蔵室2では、例えば、夏季の日中のように外気温度が35℃の場合、崩壊熱による空気の温度上昇値を30℃以下に抑えなければならない。空気の温度上昇値を30℃以下に抑えるためには、例えば、貯蔵室2内に貯蔵する収容体3の数を制限するか、または、多くの収容体3を貯蔵する場合には、より多くの外気を導入しなければならない。しかし、多くの外気を導入する場合には、収容体3を冷却する方式が、上述したように自然対流を用いた方式であることから、放射性物質乾式貯蔵施設1の設計自体に無理が生じる。
【0029】
そこで、本発明のように吸気ダクト4の空気流路の一部に熱交換器5を設けて、吸気ダクト4を流れる空気と蓄冷材10とが熱交換し、その空気の温度を低下させることで、放射性物質乾式貯蔵施設1の設計を大きく変更することなく、貯蔵室2の冷却を行うことができる。
【0030】
(熱交換器5の構成)
次に、熱交換器5の構成について、図2を参照して説明する。図2は、熱交換器5の一例を示す断面図である。
【0031】
蓄冷材10の保冷時間は、現実的には有限であるため、蓄冷材10の冷却時間を必要とする。そこで、夏季期間中においては、外気温度が比較的低い、例えば、夜間などの時間帯や、冬季期間中においては、外気温度が低いので1日の所定の時間帯に、熱交換器5における空気と冷媒との熱交換サイクルを遮断し、その時間帯を蓄冷材10の冷却時間に利用する。
【0032】
図2には、放射性物質乾式貯蔵施設1に用いられる熱交換サイクルを遮断する機能を有する熱交換器5の断面図が示されている。
【0033】
熱交換器5は、外管20、内管21、断熱部材22で構成され、吸気ダクト4の一部に設けられている。
【0034】
外管20は、熱伝導率の大きな材料で構成された筒体で、例えば、材料には銅やアルミニウムなどが用いられる。外管20の両端部は、それぞれ吸気ダクト4と接続されている。
【0035】
内管21は、熱伝導率の大きな材料で構成され、例えば、材料には銅やアルミニウムなどが用いられる。内管21には、複数の円筒が接続された部材を外管20の内壁に接続した構成や、フィン形状の複数の板が接続された部材を外管20の内壁に接続した構成などが採られている。つまり、内管21は、熱交換器5を流れる空気との接触面積を増加させる構成ならばよい。
【0036】
断熱部材22は、熱伝導率の小さい材料で構成された筒体で、例えば、ゴムやプラスチックなどが用いられる。断熱部材22は、外管20の側面に沿って、摺動可能に配置されている。
【0037】
図2の(a)は、吸気ダクト4を流れる空気と蓄冷材10とで熱交換を行う場合の熱交換器5の構成を示した断面図である。
【0038】
断熱部材22は、吸気ダクト4側に移動され、外管20は蓄冷材10と接触する。この状態では、吸気ダクト4を流れる空気の熱は、熱交換器5を介して蓄冷材10に熱伝達され、空気は冷却される。
【0039】
図2の(b)は、吸気ダクト4を流れる空気と蓄冷材10とで熱交換を行わない場合の熱交換器5の構成を示した断面図である。
【0040】
断熱部材22が外管20の側面を覆っているので、外管20は蓄冷材10と接触しない。この状態では、吸気ダクト4を流れる空気の熱は、熱交換器5を介して蓄冷材10にほとんど熱伝達されないので、熱交換器5通過前後における空気の温度はほとんど変化しない。
【0041】
なお、断熱部材22を移動させる直線運動機構(図示しない)は、電動機またはガス圧駆動のアクチュエーターを駆動源としている。
【0042】
第1の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設1によれば、外管20の側面に沿って、摺動可能な断熱部材22を具備する熱交換器5を吸気ダクト4の空気流路の一部に設けることで、吸気ダクト4内を流れる空気を冷却することができる。これによって、夏季日中などの外気温度の上昇に伴う、貯蔵室2内の温度上昇を抑えることができる。
【0043】
(安全装置の一例)
使用済み燃料を安全に貯蔵するために、放射性物質乾式貯蔵施設は、収容体3の密封、未臨界性、除熱、放射線遮蔽などが所定の要求を満たすように、適切に設計および製作がされるが、何らかの事故時に備えて、安全装置を具備すればより安全性が高まる。そこで、安全装置として、バルブ開閉制御装置31を備えた自動バルブ30を具備した放射性物質乾式貯蔵施設1の一例について、図3を参照して説明する。
【0044】
図3は、図1の放射性物質乾式貯蔵施設1の冷媒槽6の付近の断面図を示す。図3に示すように、吸気ダクト4に、冷媒槽6内の液体状の蓄冷材10と通ずる自動バルブ30が設けられている。また、自動バルブ30は、バルブ開閉制御装置31と電気的に接続されている。
【0045】
バルブ開閉制御装置31は、異常検出器(図示しない)からの信号を受け、自動バルブ30を制御するものである。ここで、異常検出器(図示しない)は、貯蔵室2内の空気や貯蔵室2の壁部の温度を検出する温度計、吸気ダクト4や排気ダクト7を流れる空気の流量を検出する風量計などで構成される。
【0046】
異常検出器(図示しない)からの出力信号は、常時、バルブ開閉制御装置31に入力される。バルブ開閉制御装置31で、異常検出器(図示しない)からの信号に基づいて、異常が検知されると、バルブ開閉制御装置31は、自動バルブ30にバルブを開口するための信号を出力する。バルブ開閉制御装置31から信号を入力した自動バルブ30は、バルブを開き、冷媒槽6内の液体状の蓄冷材10を吸気ダクト4内に流出させる。吸気ダクト4内に流出した蓄冷材10は、貯蔵室2に流入し、収容体3を冷却する。
【0047】
放射性物質乾式貯蔵施設1において、例えば、吸気ダクト4や排気ダクト7の空気流路が、破損して塞がれた場合、または、著しく空気流路が狭められた場合には、自然対流による収容体3の冷却効果は期待できず、最悪の場合、収容体3の健全性を損なう恐れがある。しかし、貯蔵室2に供給される空気不足などに伴う、収容体3の異常温度上昇などの緊急事態が生じたとしても、空気と熱交換器5を介して熱交換させる蓄冷材10を、収容体3を貯蔵する貯蔵室2内に導入することができる。これによって、緊急時においても、収容体3の健全性が保持され、貯蔵施設の安全性を高めることができる。
【0048】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設40の概要を図4および5を参照して説明する。
【0049】
図4は、第2の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設40の断面図を示す。また、図5は、輻射シールド板41を配置した貯蔵室2の天井部の斜視図である。ここで、第1の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設1の構成と同一部分には同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【0050】
第2の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設40は、貯蔵室2、収容体3、吸気ダクト4、熱交換器5、冷媒槽6、排気ダクト7、輻射シールド板41で主に構成されている。また、第2の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設40の構成は、貯蔵室2の壁面に沿って輻射シールド板41を配置した点で第1の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設1の構成と異なる。
【0051】
輻射シールド板41は、収容体3から直接輻射熱が貯蔵室2の壁2aに伝わるのを防止し、収容体3から貯蔵室2の壁2aへの輻射伝熱量を抑制するものである。また、収容体3から崩壊熱の一部を奪うことによって温度が上昇した空気が、貯蔵室2の壁2aに接触するのを防ぐものである。
【0052】
また、輻射シールド板41は、断熱部材などの熱伝導率の小さい材料で構成され、貯蔵室2の壁面と所定の間隔をおいて、貯蔵室2の壁面に沿って配置されている。また、輻射シールド板41は、熱伝導率の小さい材料または断面積の小さい金属などで構成される複数の支持部材42を介して貯蔵室2の壁面に固定されている。さらに、床部に設けられた輻射シールド板41には、貯蔵室2の床部に設けられた連通口8から流入した空気の一部を収容体3の周囲に導入するための導入口43が開口されている。
【0053】
次に、第2の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設40における冷却動作について説明する。
【0054】
大気中の空気は、吸気ダクト4の空気取入れ口9から取り込まれて、吸気ダクト4の空気流路の一部に設けられた熱交換器5に流入する。熱交換器5で、熱交換器5を介して蓄冷材10に熱を放出し、温度が低下した空気は、貯蔵室2の床部に設けられた連通口8から貯蔵室2内に流入する。連通口8から貯蔵室2内に流入した空気の一部は、貯蔵室2の壁面と輻射シールド板41とによって形成された冷却空気流路44を輻射シールド板41を冷却しながら流れ、吸気ダクト4に流入し、排気口11から大気中に排気される。
【0055】
一方、連通口8から貯蔵室2内に流入した残りの空気は、輻射シールド板41に設けられた導入口43から収容体3の周囲に導入される。収容体3の周囲に導入された空気は、収容体3の間を流れ、収容体3を冷却し、収容体3内の使用済み燃料などから発生する崩壊熱の一部を奪う。そして、崩壊熱の一部を奪い温度が上昇した空気は、貯蔵室2の天井部付近に浮上するが、輻射シールド板41によって遮られ、排気ダクト7に流入する。そして、排気ダクト7に流入した空気は、排気口11から大気中に排気される。
【0056】
また、新しく搬入される収容体3自身の表面温度は、約180〜200℃であり、この温度に基づいて収容体3から輻射熱が放出される。この輻射熱は、輻射シールド板41に吸収され、輻射シールド板41の温度が上昇する。しかし、輻射シールド板41は熱伝導率が小さいので、輻射シールド板41の貯蔵室2の壁2aに対向する側には熱が伝導し難い。
【0057】
さらに、輻射シールド板41の貯蔵室2の壁2aに対向する側の面は、冷却空気流路44を流れる空気流によって冷却されているので、温度上昇し難い。したがって、輻射シールド板41の貯蔵室2の壁2aに対向する側の面からの2次的な輻射熱は小さく、それによる貯蔵室2の壁2aの温度上昇は小さい。また、この空気流によって、貯蔵室2の壁2aも冷却されている。
【0058】
第2の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設40によれば、貯蔵室2の壁面に沿って輻射シールド板41を配置することで、崩壊熱の一部を奪うことによって温度が上昇した空気が、直接、貯蔵室2の壁に接触しないので、貯蔵室2の壁2aの温度上昇を抑制することができる。
【0059】
また、輻射シールド板41を配置することで、収容体3からの輻射熱が、直接貯蔵室2に伝わらないので、貯蔵室2の壁2aの温度上昇を抑制することができる。
【0060】
さらに、貯蔵室2の壁面と輻射シールド板41との間に空気流路を形成し、その空気流路に吸気ダクト4からの冷却された空気の一部を流すことで、輻射シールド板41および貯蔵室2の壁2aを冷却することができる。また、輻射シールド板41の貯蔵室2の壁2aに対向する側の面が冷却されることで、その面からの2次的な輻射熱を小さくすることができ、貯蔵室2の壁の温度上昇を抑制することができる。
【0061】
すなわち、第2の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設40では、第1の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設1における作用効果に加えて、貯蔵室2の壁2aの温度を、コンクリート強度を満足できる設定温度以下に容易に低減することができ、放射性物質乾式貯蔵施設の健全性を保持することができる。
【0062】
(輻射シールド板の構成例)
上述したように、輻射シールド板41に断熱部材を使用すれば、貯蔵室2の壁の温度を低減することが可能であるが、断熱部材よりも安価で、断熱部材よりも配置スペースを必要としない構成を次に示す。
【0063】
図6は、放射性物質乾式貯蔵施設40における輻射シールド部の他の構成例を示す斜視図である。
【0064】
図6に示した輻射シールド部50は、金属などで構成される薄板からなる輻射シールド板51が複数枚、所定の間隔をおいて配置されて構成されている。また、各輻射シールド板51間および輻射シールド部50と貯蔵室2の壁2a間は、熱伝導率の小さい材料または断面積の小さい金属などで構成される複数の支持部材42で固定されている。
【0065】
ここで、例えば、輻射シールド部50がn枚の同質の輻射シールド板51で構成されたとすると、収容体3から貯蔵室2の壁2aへの輻射伝熱量は、輻射シールド部50を設けない場合の輻射伝熱量の1/(n+1)倍になる。すなわち、輻射シールド部50によっても、断熱材による輻射シールド板41を用いた場合と同様に、貯蔵室2の壁2aへの輻射伝熱量を低減することができる。
【0066】
一般に2面間の輻射伝熱は、両面の配置の形状によって決まる形態係数、それぞれの面の輻射係数および温度によって輻射熱量が決定される。収容体3の表面温度は、収容体3の健全性の点からより低いほど好ましいので、自然対流による冷却効果に加え、輻射伝熱効果も積極的に利用して、収容体3の表面温度を低減させる構成を次に示す。
【0067】
図7は、放射性物質乾式貯蔵施設40における輻射シールド部の他の構成例を示す斜視図である。
【0068】
図7に示した輻射シールド部60は、貯蔵室2の天井付近に設置された輻射シールド板61にほぼ鉛直に放熱部62が接続されている。また、放熱部62は、複数の立設する収容体3の間に配置されている。
【0069】
放熱部62は、特に限定はしないが、熱伝導率の大きい金属板であることが好ましい。これは、局所的に温度の高い空気が、輻射シールド板61付近に集まり、その結果、輻射シールド板61の温度が、放熱部62の温度より高くなる。この時、放熱部62が金属であれば、輻射シールド板61の熱が、輻射シールド板61より低温の放熱部62へ移動し、輻射シールド板61の温度を低下させることができる。
【0070】
さらに、放熱部62を設けることにより、収容体3からの輻射熱を受ける面が増大し、放熱部62を設けない場合に比べて、輻射シールド板61への輻射伝熱による熱的な負荷を減少させることができる。また、放熱部62を設けることにより、収容体3を冷却した空気との伝熱面積が増加し、熱伝達を促進することができる。
【0071】
また、図7に示した放熱部62は、図8に示すように、放熱フィン62aを設けることもできる。ここで、放熱フィン62aは、輻射シールド板61とは間隔をおいて設けられている。
【0072】
放熱フィン62aを放熱部62に設けることで、表面積が増加し、その周囲を流れる空気との接触面積が増加するので、放熱部62と空気の熱伝達が促進され、放熱部62の除熱を効率よく行うことができる。
【0073】
また、放熱フィン62aによって、収容体3付近を流れる空気流が乱され、空気全体が攪拌されるので、局所的な高温空気流を抑制することができる。また、この流れの乱れによって、熱伝達が促進されている。放熱フィン62aは、輻射シールド板61とは間隔をあけて設けられているので、輻射シールド板61と放熱フィン62aとの間を流れる空気は、大きく乱されることなく、排気ダクト7へ導かれる。
【0074】
なお、図8では、放熱フィン62aは、放熱部62に重力方向(図8では下向き)に沿って設けられているが、この方向に限らず、重力に対して垂直方向または斜め方向に設けられてもよい。
【0075】
図9は、図7における放熱部62の変形例を示す斜視図である。
図9の放熱部63は、収容体3と同心的に、収容体3との間に空気流路を設けて配置された筒体である。また、放熱部63は、支持部材64を介して輻射シールド板61に固定されている。
【0076】
収容体3からの輻射熱の大部分は、放熱部63で受熱され、放熱部63は、収容体3と放熱部63との間を流れる空気、および、放熱部63の側面に沿って流れる空気によって冷却される。なお、収容体3と放熱部63との間を流れる空気は、収容体3の冷却も行っている。
【0077】
このように、収容体3の側面に面して放熱部63を設けることで、図7に示した放熱部62と比較して、輻射伝熱面積を増大することができる。なお、放熱部63の固定は、天井部の輻射シールド板61以外にも、床部に設けられた輻射シールド板61や、収容体3を支持する架台などに固定することもできる。
【0078】
また、図9に示した放熱部63は、図10に示すように、放熱フィン63aを設けることもできる。ここでは、放熱部63の固定方法は、図9に示した放熱部63と同様であるので、図10には、側面に放熱部63の構造のみを示す。なお、図示していないが、放熱フィン63aは、輻射シールド板61とは間隔をおいて設けられている。
【0079】
放熱フィン63aを放熱部63に設けることで、表面積が増加し、その周囲を流れる空気との接触面積が増加するので、放熱部63と空気の熱伝達が促進され、放熱部63の除熱を効率よく行うことができる。
【0080】
さらに、放熱フィン63aによって、収容体3付近を流れる空気流が乱され、空気全体が攪拌されるので、局所的な高温空気流を抑制することができる。また、この流れの乱れによって、熱伝達が促進されている。放熱フィン63aは、輻射シールド板61とは間隔をあけて設けられているので、輻射シールド板61と放熱フィン63aとの間を流れる空気は、大きく乱されることなく、排気ダクト7へ導かれる。
【0081】
図10に示した放熱部63には、放熱フィン63aが放熱部63の側面にのみ設けられているが、内周面にも設けてもよい。
【0082】
また、図10では、放熱フィン63aは、放熱部63に重力方向(図10では下向き)に沿って設けられているが、この方向に限らず、重力に対して垂直方向または斜め方向に設けられてもよい。
【0083】
図11には、図9における放熱部63の変形例を示す。ここでは、放熱部65a、65bの固定方法は、図に示した放熱部63と同様であるので、図11には、放熱部65a、65bの構造のみを示す。
【0084】
図11の(a)および(b)に示すように、放熱部65a、65bは、収容体3と同心的に設けられた筒体で、収容体3と放熱部65aとの間、および、放熱部65aと放熱部65bとの間に空気流路が設けられている。また、収容体3と放熱部65bとの間に設けられた放熱部65aには、複数の輻射通過口65cが開口されている。
【0085】
収容体3からの輻射熱の大部分は、放熱部65a、65bで受熱される。放熱部65aは、収容体3と放熱部65aとの間を流れる空気、および、放熱部65aと放熱部65bとの間を流れる空気によって冷却される。また、放熱部65bは、放熱部65aと放熱部65bとの間を流れる空気、および、放熱部65bの側面に沿って流れる空気によって冷却される。なお、収容体3と放熱部65aとの間を流れる空気は、収容体3の冷却も行っている。
【0086】
このように、収容体3の側面に面して放熱部65a、65bを設けることで、図7に示した放熱部62と比較して、輻射伝熱面積が増大し、かつ空気への熱伝達面積も増大するので、輻射シールド板61への輻射伝熱による熱的な負荷を減少させることができる。また、放熱部65a、65bを設けることにより、収容体3を冷却した空気との伝熱面積が増加し、熱伝達を促進することができる。
【0087】
輻射伝熱量は、物体を構成する材料の輻射係数によっても異なる。輻射係数が1に近いほど、入射してくる輻射熱を反射させることなく、熱を吸収することができる。放熱部は、熱伝導の良い金属で構成されることが好ましいが、一般的に金属の輻射係数は小さい場合が多い。
【0088】
そこで、図12に示すように、放熱部66の内周面、つまり、収容体3と対向する面に、高輻射係数材67を設けた。この高輻射係数材67は、具体的には、放射線環境下での使用では、アルミナ溶射によって形成されるが、特にこれに限定されるものではない。
【0089】
このように、放熱部66の収容体3と対向する面の輻射係数を1に近づけることで、収容体3からの輻射伝熱を促進することができる。
【0090】
なお、図4から図11に示した輻射シールド板や放熱部の収容体3と対向する面に、高輻射係数材67を設けることもできる。
【0091】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設70の概要を図13を参照して説明する。
【0092】
図13は、第3の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設70の断面図を示す。ここで、第1および2の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設1、40の構成と同一部分には同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【0093】
第3の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設70は、貯蔵室2、収容体3、吸気ダクト4、排気ダクト7、冷却流路71で主に構成されている。
【0094】
貯蔵室2は、コンクリートで形成され、原子力発電所から発生した使用済燃料などの放射性物質を収容した収容体3を貯蔵するものである。また、貯蔵室2は、地中12に配置されることが好ましいが、地表に配置することもできる。収容体3は、貯蔵期間中に安定に保持するために、貯蔵室2の床部に設けられた架強固な架台72によって固定されている。また、収容体3を架台72に設置することによって、収容体3の底面に空気を流し、収容体3の下方部の冷却を促進することができる。架台72の材質は、強度の観点から、金属材料で構成される。
【0095】
冷却流路71は、排気ダクト7、貯蔵室2および吸気ダクト4の外壁面に沿って、それらの外壁面を流路の一部として設けられた、冷媒が流れる流路である。冷媒には、例えば、水や空気などが用いられる。
【0096】
吸気ダクト4は、大気中の空気を貯蔵室2に供給するための空気流路である。吸気ダクト4には、大気中の空気を取り込む空気取り入れ口9が設けられている。
【0097】
排気ダクト7は、貯蔵室2において熱交換された空気を大気中に放出するための空気流路である。排気ダクト7には、大気中に空気を排気するための排気口11が設けられている。
【0098】
次に、第3の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設70における冷却動作について説明する。
【0099】
大気中の空気は、吸気ダクト4の空気取入れ口9から取り込まれて、吸気ダクト4の空気流路を流れ、貯蔵室2内に流入する。貯蔵室2内に流入した空気は、収容体3の間を流れ、収容体3を冷却し、収容体3内の使用済燃料などから発生する崩壊熱の一部を奪う。そして、崩壊熱の一部を奪い温度が上昇した空気は、貯蔵室2の天井部付近に浮上し、排気ダクト7に流入する。そして、排気ダクト7に流入した空気は、排気口11から大気中に排気される。
【0100】
ここで、崩壊熱の一部を奪うことによって温度が上昇した空気は、密度が小さくなるため、連通口8から流入する空気と密度差を生じ、貯蔵室2内に自然対流が発生する。この自然対流を利用して、吸気ダクト4から貯蔵室2を通過して排気ダクト7に流れる一連の空気の流動が生じている。
【0101】
一方、冷媒供給口73から供給された冷媒は、排気ダクト7、貯蔵室2および吸気ダクト4の外壁面に沿って、主に貯蔵室2の外壁から熱を奪いながら冷却流路71を流れる。冷却流路71を流れることによって、貯蔵室2の外壁と熱交換を行った冷媒は、冷媒排出口74から外部に排出される。
【0102】
収容体3から発する崩壊熱は、架台72を通して、貯蔵室2の床部に伝わる。貯蔵室2の床部へ伝わった熱は、貯蔵室2内を流れる空気により、冷却されるが、貯蔵される収容体3の総数、熱伝導、輻射などの条件により、貯蔵室2のコンクリートの壁部の温度が許容値を上回る可能性がある。
【0103】
しかし、第3の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設70では、貯蔵室2内を流れる除熱用の空気以外に、主に貯蔵室2の外壁部を冷却することにより、貯蔵室2の壁部の有する熱の一部を外部に取り除くことができる。これによって、貯蔵室2の壁部の温度が許容値を上回ることを抑制することができる。また、多数の収容体3を貯蔵した場合でも、貯蔵室2内の床部の温度上昇を緩和でき、壁部を構成するコンクリートの温度の許容値を超えることなく、信頼性の高い放射性物質乾式貯蔵施設を提供することができる。
【0104】
図14には、第3の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設70に、温度検出器75、冷媒供給器76および冷媒供給制御部77を付加した構成を示す。
【0105】
温度検出器75は、貯蔵室2の床部の外壁の温度を検出するもので、床部の外壁に複数個設置されている。温度検出器75は、例えば、熱電対などで構成され、電気的に接続された冷媒供給制御部77に温度検出に伴う信号を出力する。
【0106】
冷媒供給器76は、ポンプ、送風器などから構成され、冷媒を冷媒供給口73から冷却流路71に供給する。
【0107】
冷媒供給制御部77は、温度検出器75の検出結果に基づいて、冷媒供給器76における冷媒の供給流量を制御するものである。冷媒供給器76は、流調弁などでもよいが、インバータ制御による電動機を用いれば、運転費の節約になり、維持費を安くすることができる。
【0108】
貯蔵室2の床部の外壁の温度は、温度検出器75で常時検出され、温度検出器75で検出された結果は、冷媒供給制御部77に出力される。冷媒供給制御部77は、温度検出器75の検出結果から、貯蔵室2のから冷媒へ熱伝達される熱量を算出して、その結果に基づいて、冷媒供給器76を制御し、冷却流路71を流れる冷媒の流量を適切な流量に調整する。
【0109】
第3の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設70に、温度検出器75、冷媒供給器76および冷媒供給制御部77をさらに具備することで、貯蔵室2の外壁、特に床部の外壁を適切に冷却することができる。これによって、貯蔵室2内の温度上昇を緩和でき、壁部を構成するコンクリートの温度の許容値を超えることなく、信頼性の高い放射性物質乾式貯蔵施設を提供することができる。
【0110】
図15は、第3実施形態による放射性物質乾式貯蔵施設に設けられた冷却流路71への冷媒の供給方法の他の例を示す。
【0111】
図15に示すように、排気ダクト7の排気流路の途中に、回転部として機能する回転羽根78が配置され、回転羽根78と連動して回転する冷却媒体導入部として機能する外気導入回転羽根80が冷却流路71内に配置される。回転羽根78と外気導入回転羽根80は、動力伝達部として機能する回転軸部79によって連結され、回転軸部79の一部が、排気流路と冷却流路71とを隔てる排気ダクト7に開口された回転軸固定部81に固定されている。なお、外気導入回転羽根80は、冷却流路71内に外気を取り込むように設置されている。なお、回転羽根78および外気導入回転羽根80は、軸流式に限らず接線流入式のものでもよい。
【0112】
次に、回転羽根78および外気導入回転羽根80の動作について説明する。
【0113】
貯蔵室2内で熱交換された空気は、排気ダクト7に流入し、排気ダクト7内を排気口11に向かって流れる。そして、排気ダクト7内を流れる空気は、排気ダクト7内に設けられた回転羽根78を回転させる。回転羽根78の回転による動力は、回転軸部79を介して外気導入回転羽根80に伝えられ、外気導入回転羽根80が回転する。外気導入回転羽根80の回転によって、冷却流路71内に、冷媒供給口73から冷媒排出口74に向かう流れが発生し、冷媒としての大気中の空気が、冷却流路71内に取り込まれる。冷却流路71内に取り込まれた空気は、冷却流路71を流れることによって、貯蔵室2の外壁と熱交換され、冷媒排出口74から大気中にに排出される。
【0114】
この冷媒の供給方法では、外気導入回転羽根80の回転の動力源は、排気ダクト7内を自然対流によって流れる空気の運動エネルギを利用しているので、ポンプ、送風器などの冷媒供給器を動かす外部動力を必要とせず、放射性物質乾式貯蔵施設を安価に製作でき、また、放射性物質乾式貯蔵施設の運転コストを削減することができる。
【0115】
【発明の効果】
本発明の放射性物質乾式貯蔵施設によれば、貯蔵室の高い冷却性能を有することで、貯蔵室内の温度上昇を緩和し、貯蔵室の壁部の温度の許容値を超えることなく、貯蔵施設の安全性および信頼性を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設の断面図。
【図2】熱交換器の一例を示す断面図。
【図3】冷媒槽の付近の断面図。
【図4】本発明の第2の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設の断面図。
【図5】輻射シールド板を配置した貯蔵室の天井部の斜視図。
【図6】輻射シールド部の構成例を示す斜視図。
【図7】輻射シールド部の構成例を示す斜視図。
【図8】放熱フィンを有する放熱部の構成例を示す斜視図。
【図9】放熱部の構成例を示す斜視図。
【図10】放熱フィンを有する放熱部の構成例を示す斜視図。
【図11】放熱部の構成例を示す図。
【図12】高輻射係数材を有する放熱部の構成例を示す斜視図。
【図13】本発明の第3の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設の断面図。
【図14】冷却流路への冷媒の供給方法の構成例を示す断面図。
【図15】冷却流路への冷媒の供給方法の構成例を示す断面図。
【符号の説明】
1…放射性物質乾式貯蔵施設
2…貯蔵室
3…収容体
4…吸気ダクト
5…熱交換器
6…冷媒槽
7…排気ダクト
8…連通口
9…空気取り入れ口
10…蓄冷材
11…排気口
12…地中
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射性物質乾式貯蔵施設に係り、特に、原子力発電所から発生する使用済み燃料などの高レベル放射性物質を貯蔵する放射性物質乾式貯蔵施設に関する。
【0002】
【従来の技術】
原子力発電所から発生する使用済み燃料は、ウラン、プルトニウムなどの再使用可能な核燃料物質を回収するために再処理され、このときに発生する高レベル放射性廃棄物はガラス固化される。この放射性廃棄物のガラス固化体は、崩壊熱を発生するので、発熱量が小さくなり最終処分が可能になるまで冷却しながら貯蔵する必要がある。
【0003】
使用済み燃料の貯蔵方式には、プール内で保管する湿式貯蔵と遮蔽セル内で保管する乾式貯蔵とがある。
【0004】
湿式貯蔵は、数十年の貯蔵経験があり、安全に貯蔵する技術も確立されている一方で、運転経費が高く、放射性廃棄物の量が多いなどの欠点がある。これらの欠点は、貯蔵期間が長引くほど強調されることになる。
【0005】
乾式貯蔵は、これらの湿式貯蔵の欠点を解消するために開発された貯蔵方式で、その貯蔵形式により、キャスク貯蔵、コンクリートキャスク貯蔵、ボールト貯蔵、および、ドライウェル貯蔵などに分類される(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−235598号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
現在の放射性物質乾式貯蔵施設では、使用済み燃料を輸送する輸送容器(キャスク)に収容した状態で保管する、いわゆるキャスク貯蔵における貯蔵方式が主流である。しかしながら、キャスク貯蔵やコンクリートキャスク貯蔵においては、使用済み燃料を収容する金属製容器の収容体ごとに遮蔽機能を持たせるため、貯蔵スペース効率が悪く、施設面積が増大するといった欠点があった。
【0008】
一方、ボールト貯蔵では、放射性物質の収容体を地下に設けられたコンクリート製の貯蔵室に大量に貯蔵できるが、発熱密度が高くなるので、自然対流による除熱能力を増加させる必要がある。
【0009】
そこで本発明は、貯蔵室の高い冷却性能を有することで、貯蔵室内の温度上昇を緩和し、貯蔵室の壁部の温度の許容値を超えることなく、貯蔵施設の安全性および信頼性を保持することができる放射性物質乾式貯蔵施設を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の放射性物質乾式貯蔵施設は、吸気ダクトと排気ダクトを備え、放射性物質を収容した容器を保持する貯蔵室と、前記吸気ダクトを流れる空気を冷却する冷却手段とを具備することを特徴とする。
【0011】
この放射性物質乾式貯蔵施設によれば、冷却手段を吸気ダクトに設けることで、吸気ダクト内を流れる空気を冷却することができ、夏季日中などの外気温度の上昇に伴う、貯蔵室内の温度上昇を抑えることができる。また、冷却手段は、例えば、熱交換器などの伝熱手段で構成され、熱交換器に、例えば、冷媒槽などから冷却媒体が供給される。
【0012】
また、本発明の放射性物質乾式貯蔵施設は、吸気ダクトと排気ダクトを備え、放射性物質を収容した容器を保持する貯蔵室と、前記貯蔵室の外壁を冷却する冷却媒体が流れる冷却流路とを具備することを特徴とする。
【0013】
貯蔵室内を流れる空気以外に、貯蔵室の外壁を冷却することにより、貯蔵室の壁部の有する熱の一部を外部に取り除くことができる。これによって、貯蔵室の壁部の温度が許容値を上回ることを抑制することができる。また、多数の放射性物質を収容した容器を貯蔵した場合でも、貯蔵室内の床部の温度上昇を緩和することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設1の概要を図1を参照して説明する。図1は、第1の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設1の断面図を示す。
【0016】
第1の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設1は、貯蔵室2、収容体3、吸気ダクト4、熱交換器5、冷媒槽6、排気ダクト7で主に構成されている。
【0017】
貯蔵室2は、コンクリートで形成され、原子力発電所から発生した使用済み燃料などの放射性物質を収容した収容体3を貯蔵するものである。また、貯蔵室2の床部には、吸気ダクト4と連通する連通口8が開けられている。収容体3は、貯蔵室2の床部の連通口8を閉鎖しないように、貯蔵室2の床部に配置されている。収容体3の配置の一例として、収容体3が連通口8をまたいで配置されるものなどがあるが、この配置に限らず、連通口8から貯蔵室2に流入する空気を収容体3の表面に接触させながら流す構成であればよい。また、貯蔵室2は、地中12に配置されることが好ましいが、地表に配置することもできる。
【0018】
吸気ダクト4は、大気中の空気を貯蔵室2に供給するための空気流路である。吸気ダクト4には、大気中の空気を取り込む空気取り入れ口9が設けられている。また、吸気ダクト4の空気流路の一部に熱交換器5が設けられている。
【0019】
熱交換器5は、地中12に配置された冷媒槽6に収容された蓄冷材10と、吸気ダクト4に取り込まれた空気との間で熱交換をさせるものである。
【0020】
ここで、蓄冷材10には、比熱が比較的大きい、例えば、水やグリセリン水溶液などの液体が用いられる。蓄冷材10の比熱が大きいものほど熱交換による蓄冷材10自体の温度上昇が緩和され、外部からの動力を得なくても、長時間にわたって空気を冷却することができる。蓄冷材10に、例えば、水やグリセリン水溶液などの液体を用いた場合には、蓄冷材10を熱交換器5と容易に接触させることができ、また、蓄冷材10内の自然対流による温度の均一化を図ることができる。さらに、水やグリセリン水溶液などは、安価で、入手しやすいなどの利点がある。
【0021】
なお、蓄冷材10には、上述した理由から水やグリセリン水溶液などの液体が用いられることが好ましいが、熱伝導率の大きい、例えば、銅やアルミニウムなどの固体を用いてもよい。
【0022】
冷媒槽6は、熱伝導率の大きい材料で構成され、例えば、銅やアルミニウムなどが用いられる。また、冷媒槽6は、地表から深さ5mよりも深い地中12に配置され、冷媒槽6内の蓄冷材10の熱を地中12に放出して、蓄冷材10を冷却している。また、冷媒槽6の構成は、蓄冷材10を貯留するタンク型もの以外にも、例えば、地中に蓄冷材10の流路を配管し、蓄冷材10を循環させて、冷却する構成としてもよい。
【0023】
冷媒槽6が配置される地表から深さ5mよりも深い地中12の温度は、一年中を通して10〜15℃とほぼ一定であり、このような雰囲気中に置かれた冷媒槽6内の蓄冷材10は、ほぼその地中12の温度に等しくなる。
【0024】
排気ダクト7は、貯蔵室2において熱交換された空気を大気中に放出するための空気流路である。排気ダクト7には、大気中に空気を排気するための排気口11が設けられている。
【0025】
次に、第1の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設1における冷却動作について説明する。
【0026】
大気中の空気は、吸気ダクト4の空気取入れ口9から取り込まれて、吸気ダクト4の空気流路の一部に設けられた熱交換器5に流入する。熱交換器5で、熱交換器5を介して蓄冷材に熱を放出し、温度が低下した空気は、貯蔵室2の床部に設けられた連通口8から貯蔵室2内に流入する。連通口8から貯蔵室2内に流入した空気は、収容体3の周囲に導入され、収容体3の間を流れ、収容体3を冷却し、収容体3内の使用済み燃料などから発生する崩壊熱の一部を奪う。そして、崩壊熱の一部を奪い温度が上昇した空気は、貯蔵室2の天井部付近に浮上し、排気ダクト7に流入する。そして、排気ダクト7に流入した空気は、排気口11から大気中に排気される。
【0027】
ここで、崩壊熱の一部を奪うことによって温度が上昇した空気は、密度が小さくなるため、連通口8から流入する空気と密度差を生じ、貯蔵室2内に自然対流が発生する。この自然対流を利用して、吸気ダクト4から貯蔵室2を通過して排気ダクト7に流れる一連の空気の流動が生じる。また、自然対流の強さは、大気温度と貯蔵室2内の空気との温度差と、排気ダクト7の高さとの積に比例する。
【0028】
貯蔵室2の表面温度の許容値は、貯蔵室2を形成するコンクリート強度を確保するため、一般的には65℃以下に設計されている。このような設計に基づいて構成された貯蔵室2では、例えば、夏季の日中のように外気温度が35℃の場合、崩壊熱による空気の温度上昇値を30℃以下に抑えなければならない。空気の温度上昇値を30℃以下に抑えるためには、例えば、貯蔵室2内に貯蔵する収容体3の数を制限するか、または、多くの収容体3を貯蔵する場合には、より多くの外気を導入しなければならない。しかし、多くの外気を導入する場合には、収容体3を冷却する方式が、上述したように自然対流を用いた方式であることから、放射性物質乾式貯蔵施設1の設計自体に無理が生じる。
【0029】
そこで、本発明のように吸気ダクト4の空気流路の一部に熱交換器5を設けて、吸気ダクト4を流れる空気と蓄冷材10とが熱交換し、その空気の温度を低下させることで、放射性物質乾式貯蔵施設1の設計を大きく変更することなく、貯蔵室2の冷却を行うことができる。
【0030】
(熱交換器5の構成)
次に、熱交換器5の構成について、図2を参照して説明する。図2は、熱交換器5の一例を示す断面図である。
【0031】
蓄冷材10の保冷時間は、現実的には有限であるため、蓄冷材10の冷却時間を必要とする。そこで、夏季期間中においては、外気温度が比較的低い、例えば、夜間などの時間帯や、冬季期間中においては、外気温度が低いので1日の所定の時間帯に、熱交換器5における空気と冷媒との熱交換サイクルを遮断し、その時間帯を蓄冷材10の冷却時間に利用する。
【0032】
図2には、放射性物質乾式貯蔵施設1に用いられる熱交換サイクルを遮断する機能を有する熱交換器5の断面図が示されている。
【0033】
熱交換器5は、外管20、内管21、断熱部材22で構成され、吸気ダクト4の一部に設けられている。
【0034】
外管20は、熱伝導率の大きな材料で構成された筒体で、例えば、材料には銅やアルミニウムなどが用いられる。外管20の両端部は、それぞれ吸気ダクト4と接続されている。
【0035】
内管21は、熱伝導率の大きな材料で構成され、例えば、材料には銅やアルミニウムなどが用いられる。内管21には、複数の円筒が接続された部材を外管20の内壁に接続した構成や、フィン形状の複数の板が接続された部材を外管20の内壁に接続した構成などが採られている。つまり、内管21は、熱交換器5を流れる空気との接触面積を増加させる構成ならばよい。
【0036】
断熱部材22は、熱伝導率の小さい材料で構成された筒体で、例えば、ゴムやプラスチックなどが用いられる。断熱部材22は、外管20の側面に沿って、摺動可能に配置されている。
【0037】
図2の(a)は、吸気ダクト4を流れる空気と蓄冷材10とで熱交換を行う場合の熱交換器5の構成を示した断面図である。
【0038】
断熱部材22は、吸気ダクト4側に移動され、外管20は蓄冷材10と接触する。この状態では、吸気ダクト4を流れる空気の熱は、熱交換器5を介して蓄冷材10に熱伝達され、空気は冷却される。
【0039】
図2の(b)は、吸気ダクト4を流れる空気と蓄冷材10とで熱交換を行わない場合の熱交換器5の構成を示した断面図である。
【0040】
断熱部材22が外管20の側面を覆っているので、外管20は蓄冷材10と接触しない。この状態では、吸気ダクト4を流れる空気の熱は、熱交換器5を介して蓄冷材10にほとんど熱伝達されないので、熱交換器5通過前後における空気の温度はほとんど変化しない。
【0041】
なお、断熱部材22を移動させる直線運動機構(図示しない)は、電動機またはガス圧駆動のアクチュエーターを駆動源としている。
【0042】
第1の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設1によれば、外管20の側面に沿って、摺動可能な断熱部材22を具備する熱交換器5を吸気ダクト4の空気流路の一部に設けることで、吸気ダクト4内を流れる空気を冷却することができる。これによって、夏季日中などの外気温度の上昇に伴う、貯蔵室2内の温度上昇を抑えることができる。
【0043】
(安全装置の一例)
使用済み燃料を安全に貯蔵するために、放射性物質乾式貯蔵施設は、収容体3の密封、未臨界性、除熱、放射線遮蔽などが所定の要求を満たすように、適切に設計および製作がされるが、何らかの事故時に備えて、安全装置を具備すればより安全性が高まる。そこで、安全装置として、バルブ開閉制御装置31を備えた自動バルブ30を具備した放射性物質乾式貯蔵施設1の一例について、図3を参照して説明する。
【0044】
図3は、図1の放射性物質乾式貯蔵施設1の冷媒槽6の付近の断面図を示す。図3に示すように、吸気ダクト4に、冷媒槽6内の液体状の蓄冷材10と通ずる自動バルブ30が設けられている。また、自動バルブ30は、バルブ開閉制御装置31と電気的に接続されている。
【0045】
バルブ開閉制御装置31は、異常検出器(図示しない)からの信号を受け、自動バルブ30を制御するものである。ここで、異常検出器(図示しない)は、貯蔵室2内の空気や貯蔵室2の壁部の温度を検出する温度計、吸気ダクト4や排気ダクト7を流れる空気の流量を検出する風量計などで構成される。
【0046】
異常検出器(図示しない)からの出力信号は、常時、バルブ開閉制御装置31に入力される。バルブ開閉制御装置31で、異常検出器(図示しない)からの信号に基づいて、異常が検知されると、バルブ開閉制御装置31は、自動バルブ30にバルブを開口するための信号を出力する。バルブ開閉制御装置31から信号を入力した自動バルブ30は、バルブを開き、冷媒槽6内の液体状の蓄冷材10を吸気ダクト4内に流出させる。吸気ダクト4内に流出した蓄冷材10は、貯蔵室2に流入し、収容体3を冷却する。
【0047】
放射性物質乾式貯蔵施設1において、例えば、吸気ダクト4や排気ダクト7の空気流路が、破損して塞がれた場合、または、著しく空気流路が狭められた場合には、自然対流による収容体3の冷却効果は期待できず、最悪の場合、収容体3の健全性を損なう恐れがある。しかし、貯蔵室2に供給される空気不足などに伴う、収容体3の異常温度上昇などの緊急事態が生じたとしても、空気と熱交換器5を介して熱交換させる蓄冷材10を、収容体3を貯蔵する貯蔵室2内に導入することができる。これによって、緊急時においても、収容体3の健全性が保持され、貯蔵施設の安全性を高めることができる。
【0048】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設40の概要を図4および5を参照して説明する。
【0049】
図4は、第2の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設40の断面図を示す。また、図5は、輻射シールド板41を配置した貯蔵室2の天井部の斜視図である。ここで、第1の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設1の構成と同一部分には同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【0050】
第2の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設40は、貯蔵室2、収容体3、吸気ダクト4、熱交換器5、冷媒槽6、排気ダクト7、輻射シールド板41で主に構成されている。また、第2の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設40の構成は、貯蔵室2の壁面に沿って輻射シールド板41を配置した点で第1の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設1の構成と異なる。
【0051】
輻射シールド板41は、収容体3から直接輻射熱が貯蔵室2の壁2aに伝わるのを防止し、収容体3から貯蔵室2の壁2aへの輻射伝熱量を抑制するものである。また、収容体3から崩壊熱の一部を奪うことによって温度が上昇した空気が、貯蔵室2の壁2aに接触するのを防ぐものである。
【0052】
また、輻射シールド板41は、断熱部材などの熱伝導率の小さい材料で構成され、貯蔵室2の壁面と所定の間隔をおいて、貯蔵室2の壁面に沿って配置されている。また、輻射シールド板41は、熱伝導率の小さい材料または断面積の小さい金属などで構成される複数の支持部材42を介して貯蔵室2の壁面に固定されている。さらに、床部に設けられた輻射シールド板41には、貯蔵室2の床部に設けられた連通口8から流入した空気の一部を収容体3の周囲に導入するための導入口43が開口されている。
【0053】
次に、第2の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設40における冷却動作について説明する。
【0054】
大気中の空気は、吸気ダクト4の空気取入れ口9から取り込まれて、吸気ダクト4の空気流路の一部に設けられた熱交換器5に流入する。熱交換器5で、熱交換器5を介して蓄冷材10に熱を放出し、温度が低下した空気は、貯蔵室2の床部に設けられた連通口8から貯蔵室2内に流入する。連通口8から貯蔵室2内に流入した空気の一部は、貯蔵室2の壁面と輻射シールド板41とによって形成された冷却空気流路44を輻射シールド板41を冷却しながら流れ、吸気ダクト4に流入し、排気口11から大気中に排気される。
【0055】
一方、連通口8から貯蔵室2内に流入した残りの空気は、輻射シールド板41に設けられた導入口43から収容体3の周囲に導入される。収容体3の周囲に導入された空気は、収容体3の間を流れ、収容体3を冷却し、収容体3内の使用済み燃料などから発生する崩壊熱の一部を奪う。そして、崩壊熱の一部を奪い温度が上昇した空気は、貯蔵室2の天井部付近に浮上するが、輻射シールド板41によって遮られ、排気ダクト7に流入する。そして、排気ダクト7に流入した空気は、排気口11から大気中に排気される。
【0056】
また、新しく搬入される収容体3自身の表面温度は、約180〜200℃であり、この温度に基づいて収容体3から輻射熱が放出される。この輻射熱は、輻射シールド板41に吸収され、輻射シールド板41の温度が上昇する。しかし、輻射シールド板41は熱伝導率が小さいので、輻射シールド板41の貯蔵室2の壁2aに対向する側には熱が伝導し難い。
【0057】
さらに、輻射シールド板41の貯蔵室2の壁2aに対向する側の面は、冷却空気流路44を流れる空気流によって冷却されているので、温度上昇し難い。したがって、輻射シールド板41の貯蔵室2の壁2aに対向する側の面からの2次的な輻射熱は小さく、それによる貯蔵室2の壁2aの温度上昇は小さい。また、この空気流によって、貯蔵室2の壁2aも冷却されている。
【0058】
第2の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設40によれば、貯蔵室2の壁面に沿って輻射シールド板41を配置することで、崩壊熱の一部を奪うことによって温度が上昇した空気が、直接、貯蔵室2の壁に接触しないので、貯蔵室2の壁2aの温度上昇を抑制することができる。
【0059】
また、輻射シールド板41を配置することで、収容体3からの輻射熱が、直接貯蔵室2に伝わらないので、貯蔵室2の壁2aの温度上昇を抑制することができる。
【0060】
さらに、貯蔵室2の壁面と輻射シールド板41との間に空気流路を形成し、その空気流路に吸気ダクト4からの冷却された空気の一部を流すことで、輻射シールド板41および貯蔵室2の壁2aを冷却することができる。また、輻射シールド板41の貯蔵室2の壁2aに対向する側の面が冷却されることで、その面からの2次的な輻射熱を小さくすることができ、貯蔵室2の壁の温度上昇を抑制することができる。
【0061】
すなわち、第2の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設40では、第1の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設1における作用効果に加えて、貯蔵室2の壁2aの温度を、コンクリート強度を満足できる設定温度以下に容易に低減することができ、放射性物質乾式貯蔵施設の健全性を保持することができる。
【0062】
(輻射シールド板の構成例)
上述したように、輻射シールド板41に断熱部材を使用すれば、貯蔵室2の壁の温度を低減することが可能であるが、断熱部材よりも安価で、断熱部材よりも配置スペースを必要としない構成を次に示す。
【0063】
図6は、放射性物質乾式貯蔵施設40における輻射シールド部の他の構成例を示す斜視図である。
【0064】
図6に示した輻射シールド部50は、金属などで構成される薄板からなる輻射シールド板51が複数枚、所定の間隔をおいて配置されて構成されている。また、各輻射シールド板51間および輻射シールド部50と貯蔵室2の壁2a間は、熱伝導率の小さい材料または断面積の小さい金属などで構成される複数の支持部材42で固定されている。
【0065】
ここで、例えば、輻射シールド部50がn枚の同質の輻射シールド板51で構成されたとすると、収容体3から貯蔵室2の壁2aへの輻射伝熱量は、輻射シールド部50を設けない場合の輻射伝熱量の1/(n+1)倍になる。すなわち、輻射シールド部50によっても、断熱材による輻射シールド板41を用いた場合と同様に、貯蔵室2の壁2aへの輻射伝熱量を低減することができる。
【0066】
一般に2面間の輻射伝熱は、両面の配置の形状によって決まる形態係数、それぞれの面の輻射係数および温度によって輻射熱量が決定される。収容体3の表面温度は、収容体3の健全性の点からより低いほど好ましいので、自然対流による冷却効果に加え、輻射伝熱効果も積極的に利用して、収容体3の表面温度を低減させる構成を次に示す。
【0067】
図7は、放射性物質乾式貯蔵施設40における輻射シールド部の他の構成例を示す斜視図である。
【0068】
図7に示した輻射シールド部60は、貯蔵室2の天井付近に設置された輻射シールド板61にほぼ鉛直に放熱部62が接続されている。また、放熱部62は、複数の立設する収容体3の間に配置されている。
【0069】
放熱部62は、特に限定はしないが、熱伝導率の大きい金属板であることが好ましい。これは、局所的に温度の高い空気が、輻射シールド板61付近に集まり、その結果、輻射シールド板61の温度が、放熱部62の温度より高くなる。この時、放熱部62が金属であれば、輻射シールド板61の熱が、輻射シールド板61より低温の放熱部62へ移動し、輻射シールド板61の温度を低下させることができる。
【0070】
さらに、放熱部62を設けることにより、収容体3からの輻射熱を受ける面が増大し、放熱部62を設けない場合に比べて、輻射シールド板61への輻射伝熱による熱的な負荷を減少させることができる。また、放熱部62を設けることにより、収容体3を冷却した空気との伝熱面積が増加し、熱伝達を促進することができる。
【0071】
また、図7に示した放熱部62は、図8に示すように、放熱フィン62aを設けることもできる。ここで、放熱フィン62aは、輻射シールド板61とは間隔をおいて設けられている。
【0072】
放熱フィン62aを放熱部62に設けることで、表面積が増加し、その周囲を流れる空気との接触面積が増加するので、放熱部62と空気の熱伝達が促進され、放熱部62の除熱を効率よく行うことができる。
【0073】
また、放熱フィン62aによって、収容体3付近を流れる空気流が乱され、空気全体が攪拌されるので、局所的な高温空気流を抑制することができる。また、この流れの乱れによって、熱伝達が促進されている。放熱フィン62aは、輻射シールド板61とは間隔をあけて設けられているので、輻射シールド板61と放熱フィン62aとの間を流れる空気は、大きく乱されることなく、排気ダクト7へ導かれる。
【0074】
なお、図8では、放熱フィン62aは、放熱部62に重力方向(図8では下向き)に沿って設けられているが、この方向に限らず、重力に対して垂直方向または斜め方向に設けられてもよい。
【0075】
図9は、図7における放熱部62の変形例を示す斜視図である。
図9の放熱部63は、収容体3と同心的に、収容体3との間に空気流路を設けて配置された筒体である。また、放熱部63は、支持部材64を介して輻射シールド板61に固定されている。
【0076】
収容体3からの輻射熱の大部分は、放熱部63で受熱され、放熱部63は、収容体3と放熱部63との間を流れる空気、および、放熱部63の側面に沿って流れる空気によって冷却される。なお、収容体3と放熱部63との間を流れる空気は、収容体3の冷却も行っている。
【0077】
このように、収容体3の側面に面して放熱部63を設けることで、図7に示した放熱部62と比較して、輻射伝熱面積を増大することができる。なお、放熱部63の固定は、天井部の輻射シールド板61以外にも、床部に設けられた輻射シールド板61や、収容体3を支持する架台などに固定することもできる。
【0078】
また、図9に示した放熱部63は、図10に示すように、放熱フィン63aを設けることもできる。ここでは、放熱部63の固定方法は、図9に示した放熱部63と同様であるので、図10には、側面に放熱部63の構造のみを示す。なお、図示していないが、放熱フィン63aは、輻射シールド板61とは間隔をおいて設けられている。
【0079】
放熱フィン63aを放熱部63に設けることで、表面積が増加し、その周囲を流れる空気との接触面積が増加するので、放熱部63と空気の熱伝達が促進され、放熱部63の除熱を効率よく行うことができる。
【0080】
さらに、放熱フィン63aによって、収容体3付近を流れる空気流が乱され、空気全体が攪拌されるので、局所的な高温空気流を抑制することができる。また、この流れの乱れによって、熱伝達が促進されている。放熱フィン63aは、輻射シールド板61とは間隔をあけて設けられているので、輻射シールド板61と放熱フィン63aとの間を流れる空気は、大きく乱されることなく、排気ダクト7へ導かれる。
【0081】
図10に示した放熱部63には、放熱フィン63aが放熱部63の側面にのみ設けられているが、内周面にも設けてもよい。
【0082】
また、図10では、放熱フィン63aは、放熱部63に重力方向(図10では下向き)に沿って設けられているが、この方向に限らず、重力に対して垂直方向または斜め方向に設けられてもよい。
【0083】
図11には、図9における放熱部63の変形例を示す。ここでは、放熱部65a、65bの固定方法は、図に示した放熱部63と同様であるので、図11には、放熱部65a、65bの構造のみを示す。
【0084】
図11の(a)および(b)に示すように、放熱部65a、65bは、収容体3と同心的に設けられた筒体で、収容体3と放熱部65aとの間、および、放熱部65aと放熱部65bとの間に空気流路が設けられている。また、収容体3と放熱部65bとの間に設けられた放熱部65aには、複数の輻射通過口65cが開口されている。
【0085】
収容体3からの輻射熱の大部分は、放熱部65a、65bで受熱される。放熱部65aは、収容体3と放熱部65aとの間を流れる空気、および、放熱部65aと放熱部65bとの間を流れる空気によって冷却される。また、放熱部65bは、放熱部65aと放熱部65bとの間を流れる空気、および、放熱部65bの側面に沿って流れる空気によって冷却される。なお、収容体3と放熱部65aとの間を流れる空気は、収容体3の冷却も行っている。
【0086】
このように、収容体3の側面に面して放熱部65a、65bを設けることで、図7に示した放熱部62と比較して、輻射伝熱面積が増大し、かつ空気への熱伝達面積も増大するので、輻射シールド板61への輻射伝熱による熱的な負荷を減少させることができる。また、放熱部65a、65bを設けることにより、収容体3を冷却した空気との伝熱面積が増加し、熱伝達を促進することができる。
【0087】
輻射伝熱量は、物体を構成する材料の輻射係数によっても異なる。輻射係数が1に近いほど、入射してくる輻射熱を反射させることなく、熱を吸収することができる。放熱部は、熱伝導の良い金属で構成されることが好ましいが、一般的に金属の輻射係数は小さい場合が多い。
【0088】
そこで、図12に示すように、放熱部66の内周面、つまり、収容体3と対向する面に、高輻射係数材67を設けた。この高輻射係数材67は、具体的には、放射線環境下での使用では、アルミナ溶射によって形成されるが、特にこれに限定されるものではない。
【0089】
このように、放熱部66の収容体3と対向する面の輻射係数を1に近づけることで、収容体3からの輻射伝熱を促進することができる。
【0090】
なお、図4から図11に示した輻射シールド板や放熱部の収容体3と対向する面に、高輻射係数材67を設けることもできる。
【0091】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設70の概要を図13を参照して説明する。
【0092】
図13は、第3の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設70の断面図を示す。ここで、第1および2の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設1、40の構成と同一部分には同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【0093】
第3の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設70は、貯蔵室2、収容体3、吸気ダクト4、排気ダクト7、冷却流路71で主に構成されている。
【0094】
貯蔵室2は、コンクリートで形成され、原子力発電所から発生した使用済燃料などの放射性物質を収容した収容体3を貯蔵するものである。また、貯蔵室2は、地中12に配置されることが好ましいが、地表に配置することもできる。収容体3は、貯蔵期間中に安定に保持するために、貯蔵室2の床部に設けられた架強固な架台72によって固定されている。また、収容体3を架台72に設置することによって、収容体3の底面に空気を流し、収容体3の下方部の冷却を促進することができる。架台72の材質は、強度の観点から、金属材料で構成される。
【0095】
冷却流路71は、排気ダクト7、貯蔵室2および吸気ダクト4の外壁面に沿って、それらの外壁面を流路の一部として設けられた、冷媒が流れる流路である。冷媒には、例えば、水や空気などが用いられる。
【0096】
吸気ダクト4は、大気中の空気を貯蔵室2に供給するための空気流路である。吸気ダクト4には、大気中の空気を取り込む空気取り入れ口9が設けられている。
【0097】
排気ダクト7は、貯蔵室2において熱交換された空気を大気中に放出するための空気流路である。排気ダクト7には、大気中に空気を排気するための排気口11が設けられている。
【0098】
次に、第3の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設70における冷却動作について説明する。
【0099】
大気中の空気は、吸気ダクト4の空気取入れ口9から取り込まれて、吸気ダクト4の空気流路を流れ、貯蔵室2内に流入する。貯蔵室2内に流入した空気は、収容体3の間を流れ、収容体3を冷却し、収容体3内の使用済燃料などから発生する崩壊熱の一部を奪う。そして、崩壊熱の一部を奪い温度が上昇した空気は、貯蔵室2の天井部付近に浮上し、排気ダクト7に流入する。そして、排気ダクト7に流入した空気は、排気口11から大気中に排気される。
【0100】
ここで、崩壊熱の一部を奪うことによって温度が上昇した空気は、密度が小さくなるため、連通口8から流入する空気と密度差を生じ、貯蔵室2内に自然対流が発生する。この自然対流を利用して、吸気ダクト4から貯蔵室2を通過して排気ダクト7に流れる一連の空気の流動が生じている。
【0101】
一方、冷媒供給口73から供給された冷媒は、排気ダクト7、貯蔵室2および吸気ダクト4の外壁面に沿って、主に貯蔵室2の外壁から熱を奪いながら冷却流路71を流れる。冷却流路71を流れることによって、貯蔵室2の外壁と熱交換を行った冷媒は、冷媒排出口74から外部に排出される。
【0102】
収容体3から発する崩壊熱は、架台72を通して、貯蔵室2の床部に伝わる。貯蔵室2の床部へ伝わった熱は、貯蔵室2内を流れる空気により、冷却されるが、貯蔵される収容体3の総数、熱伝導、輻射などの条件により、貯蔵室2のコンクリートの壁部の温度が許容値を上回る可能性がある。
【0103】
しかし、第3の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設70では、貯蔵室2内を流れる除熱用の空気以外に、主に貯蔵室2の外壁部を冷却することにより、貯蔵室2の壁部の有する熱の一部を外部に取り除くことができる。これによって、貯蔵室2の壁部の温度が許容値を上回ることを抑制することができる。また、多数の収容体3を貯蔵した場合でも、貯蔵室2内の床部の温度上昇を緩和でき、壁部を構成するコンクリートの温度の許容値を超えることなく、信頼性の高い放射性物質乾式貯蔵施設を提供することができる。
【0104】
図14には、第3の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設70に、温度検出器75、冷媒供給器76および冷媒供給制御部77を付加した構成を示す。
【0105】
温度検出器75は、貯蔵室2の床部の外壁の温度を検出するもので、床部の外壁に複数個設置されている。温度検出器75は、例えば、熱電対などで構成され、電気的に接続された冷媒供給制御部77に温度検出に伴う信号を出力する。
【0106】
冷媒供給器76は、ポンプ、送風器などから構成され、冷媒を冷媒供給口73から冷却流路71に供給する。
【0107】
冷媒供給制御部77は、温度検出器75の検出結果に基づいて、冷媒供給器76における冷媒の供給流量を制御するものである。冷媒供給器76は、流調弁などでもよいが、インバータ制御による電動機を用いれば、運転費の節約になり、維持費を安くすることができる。
【0108】
貯蔵室2の床部の外壁の温度は、温度検出器75で常時検出され、温度検出器75で検出された結果は、冷媒供給制御部77に出力される。冷媒供給制御部77は、温度検出器75の検出結果から、貯蔵室2のから冷媒へ熱伝達される熱量を算出して、その結果に基づいて、冷媒供給器76を制御し、冷却流路71を流れる冷媒の流量を適切な流量に調整する。
【0109】
第3の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設70に、温度検出器75、冷媒供給器76および冷媒供給制御部77をさらに具備することで、貯蔵室2の外壁、特に床部の外壁を適切に冷却することができる。これによって、貯蔵室2内の温度上昇を緩和でき、壁部を構成するコンクリートの温度の許容値を超えることなく、信頼性の高い放射性物質乾式貯蔵施設を提供することができる。
【0110】
図15は、第3実施形態による放射性物質乾式貯蔵施設に設けられた冷却流路71への冷媒の供給方法の他の例を示す。
【0111】
図15に示すように、排気ダクト7の排気流路の途中に、回転部として機能する回転羽根78が配置され、回転羽根78と連動して回転する冷却媒体導入部として機能する外気導入回転羽根80が冷却流路71内に配置される。回転羽根78と外気導入回転羽根80は、動力伝達部として機能する回転軸部79によって連結され、回転軸部79の一部が、排気流路と冷却流路71とを隔てる排気ダクト7に開口された回転軸固定部81に固定されている。なお、外気導入回転羽根80は、冷却流路71内に外気を取り込むように設置されている。なお、回転羽根78および外気導入回転羽根80は、軸流式に限らず接線流入式のものでもよい。
【0112】
次に、回転羽根78および外気導入回転羽根80の動作について説明する。
【0113】
貯蔵室2内で熱交換された空気は、排気ダクト7に流入し、排気ダクト7内を排気口11に向かって流れる。そして、排気ダクト7内を流れる空気は、排気ダクト7内に設けられた回転羽根78を回転させる。回転羽根78の回転による動力は、回転軸部79を介して外気導入回転羽根80に伝えられ、外気導入回転羽根80が回転する。外気導入回転羽根80の回転によって、冷却流路71内に、冷媒供給口73から冷媒排出口74に向かう流れが発生し、冷媒としての大気中の空気が、冷却流路71内に取り込まれる。冷却流路71内に取り込まれた空気は、冷却流路71を流れることによって、貯蔵室2の外壁と熱交換され、冷媒排出口74から大気中にに排出される。
【0114】
この冷媒の供給方法では、外気導入回転羽根80の回転の動力源は、排気ダクト7内を自然対流によって流れる空気の運動エネルギを利用しているので、ポンプ、送風器などの冷媒供給器を動かす外部動力を必要とせず、放射性物質乾式貯蔵施設を安価に製作でき、また、放射性物質乾式貯蔵施設の運転コストを削減することができる。
【0115】
【発明の効果】
本発明の放射性物質乾式貯蔵施設によれば、貯蔵室の高い冷却性能を有することで、貯蔵室内の温度上昇を緩和し、貯蔵室の壁部の温度の許容値を超えることなく、貯蔵施設の安全性および信頼性を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設の断面図。
【図2】熱交換器の一例を示す断面図。
【図3】冷媒槽の付近の断面図。
【図4】本発明の第2の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設の断面図。
【図5】輻射シールド板を配置した貯蔵室の天井部の斜視図。
【図6】輻射シールド部の構成例を示す斜視図。
【図7】輻射シールド部の構成例を示す斜視図。
【図8】放熱フィンを有する放熱部の構成例を示す斜視図。
【図9】放熱部の構成例を示す斜視図。
【図10】放熱フィンを有する放熱部の構成例を示す斜視図。
【図11】放熱部の構成例を示す図。
【図12】高輻射係数材を有する放熱部の構成例を示す斜視図。
【図13】本発明の第3の実施の形態の放射性物質乾式貯蔵施設の断面図。
【図14】冷却流路への冷媒の供給方法の構成例を示す断面図。
【図15】冷却流路への冷媒の供給方法の構成例を示す断面図。
【符号の説明】
1…放射性物質乾式貯蔵施設
2…貯蔵室
3…収容体
4…吸気ダクト
5…熱交換器
6…冷媒槽
7…排気ダクト
8…連通口
9…空気取り入れ口
10…蓄冷材
11…排気口
12…地中
Claims (15)
- 吸気ダクトと排気ダクトを備え、放射性物質を収容した容器を保持する貯蔵室と、
前記吸気ダクトを流れる空気を冷却する冷却手段と
を具備することを特徴とする放射性物質乾式貯蔵施設。 - 前記冷却手段が、
前記吸気ダクトを流れる空気を冷却する伝熱手段と、
前記伝熱手段に冷却媒体を供給する冷媒槽と
を具備することを特徴とする請求項1記載の放射性物質乾式貯蔵施設。 - 前記伝熱手段が、
前記伝熱手段と前記冷却媒体との伝熱経路を遮断可能に配置された遮断部材を具備することを特徴とする請求項2記載の放射性物質乾式貯蔵施設。 - 前記放射性物質乾式貯蔵施設が、
前記冷媒槽に収容された前記冷却媒体を前記吸気ダクト内に流出させる冷媒流出部をさらに具備することを特徴とする請求項2または3記載の放射性物質乾式貯蔵施設。 - 吸気ダクトと排気ダクトを備え、放射性物質を収容した容器を保持する貯蔵室と、
前記貯蔵室の外壁を冷却する冷却媒体が流れる冷却流路と
を具備することを特徴とする放射性物質乾式貯蔵施設。 - 前記放射性物質乾式貯蔵施設が、
前記冷却流路に前記冷却媒体を供給する冷媒供給部と、
前記冷却媒体によって冷却される前記貯蔵室の外壁に設置され、前記貯蔵室の外壁の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部によって検出された検出結果に基づいて、前記冷媒供給部における前記冷却媒体の供給流量を制御する冷媒供給制御部と
をさらに具備することを特徴とする請求項5記載の放射性物質乾式貯蔵施設。 - 前記放射性物質乾式貯蔵施設が、
前記排気ダクト内に設けられた回転部と、
前記冷却流路内に設けられ、冷却媒体を前記冷却流路に導く冷却媒体導入部と、
前記回転部の動力を前記冷却媒体導入部に伝える動力伝達部と
をさらに具備することを特徴とする請求項5記載の放射性物質乾式貯蔵施設。 - 前記放射性物質乾式貯蔵施設が、
前記貯蔵室の内壁に沿って、所定の空隙をおいて配置された輻射シールド部をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の放射性物質乾式貯蔵施設。 - 前記輻射シールド部が、
複数の金属板を所定の空隙をおいて積層して構成されたことを特徴とする請求項8記載の放射性物質乾式貯蔵施設。 - 前記輻射シールド部が、
前記貯蔵室に配列された複数の前記容器との間に、前記容器の側面に対向するように前記輻射シールド部に接続された板状の金属体を具備することを特徴とする請求項8記載の放射性物質乾式貯蔵施設。 - 前記輻射シールド部が、
前記貯蔵室に配列された複数の前記容器のそれぞれの側面を、所定の空隙を設けて囲むように設置された筒状の金属体を具備することを特徴とする請求項8記載の放射性物質乾式貯蔵施設。 - 前記輻射シールド部が、
前記貯蔵室に配列された複数の前記容器のそれぞれの側面を、前記容器に対して同心的に所定の空隙を設けて囲むように設置された複数の筒状の金属体を具備することを特徴とする請求項8記載の放射性物質乾式貯蔵施設。 - 前記複数の筒状の金属体の最外周を構成する前記金属体を除いて、少なくとも最内周を構成する前記金属体に貫通孔が穿設されたことを特徴とする請求項12記載の放射性物質乾式貯蔵施設。
- 前記金属体の表面に、凸形状部を設けたことを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項記載の放射性物質乾式貯蔵施設。
- 前記金属体の前記容器に面した側の表面が、前記金属体を構成する金属材料の輻射係数よりも大きい材料で形成されていることを特徴とする請求項10乃至14のいずれか1項記載の放射性物質乾式貯蔵施設。
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